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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240724BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023505382
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2022034525
(87)【国際公開番号】W WO2023063016
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2021167335
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-156691(JP,A)
【文献】特開2018-064055(JP,A)
【文献】特開平09-082683(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0002913(US,A1)
【文献】国際公開第2014/141974(WO,A1)
【文献】特開2018-107313(JP,A)
【文献】特開2012-060101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
内部に冷媒流路が形成された金属含有材料の冷却基材と、
前記セラミック基材の下面と前記冷却基材の上面とを接合する第1金属接合層と、
前記セラミック基材を上下方向に貫通するセラミック基材内ガス通路と、
前記第1金属接合層を上下方向に貫通して前記セラミック基材内ガス通路に連通する第1金属接合層内ガス穴と、
前記冷却基材の下面に設けられたガス導入口から前記第1金属接合層内ガス穴を介して前記セラミック基材内ガス通路に連通する冷却基材内ガス通路と、
前記セラミック基材内ガス通路、前記第1金属接合層内ガス穴及び前記冷却基材内ガス通路によって構成された、熱伝導ガスが供給されるガス供給路と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記ガス供給路は、前記第1金属接合層内ガス穴の周壁及び前記冷却基材内ガス通路の周壁のうち前記ウエハ載置面を上から見たときに視野に入る部分と視野に入らない部分とを有し、前記視野に入る部分は絶縁膜で覆われているが、前記視野に入らない部分は絶縁膜で覆われておらず、
40~400℃における、前記セラミック基材を構成するセラミック材料の線熱膨張係数をX1[/K]とし、前記冷却基材を構成する材料の線熱膨張係数をX2[/K]としたとき、X1とX2との差の絶対値は、1.5×10-6/K以下である、ウエハ載置台。
【請求項2】
40~400℃における、前記絶縁膜を構成する材料の線熱膨張係数をX3[/K]としたとき、X1とX2との差、X2とX3との差及びX3とX1との差の各絶対値は、1.5×10-6/K以下である、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記セラミック基材内ガス通路は、複数設けられ、
前記第1金属接合層内ガス穴は、複数の前記セラミック基材内ガス通路のそれぞれに対応して設けられ、
前記冷却基材内ガス通路は、前記ガス導入口から前記冷却基材のうち前記冷媒流路よりも上側の所定位置まで延びたあと前記所定位置で複数の分配部に分かれ、前記分配部のそれぞれが前記第1金属接合層内ガス穴を介して前記セラミック基材内ガス通路に連通する、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記冷却基材は、複数の層状部材を第2金属接合層を介して接合したものであり、
前記第2金属接合層は、前記冷却基材内ガス通路が貫通する第2金属接合層内ガス穴を有し、
前記第2金属接合層内ガス穴の周壁は、前記絶縁膜で覆われている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記第1金属接合層は、厚さが1mm以下である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記金属含有材料は、金属マトリックス複合材料である、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項7】
前記視野に入る部分は前記セラミック基材内ガス通路の開口から上下方向に延びる直線部分であり、前記視野に入らない部分は前記冷却基材の内部で横方向に延びる部分である、請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電電極を埋設したアルミナなどのセラミック基材と、アルミニウムなどの金属からなる冷却基材とを、樹脂層を介して接合したウエハ載置台が知られている(例えば特許文献1参照)。こうしたウエハ載置台によれば、樹脂層によってセラミック基材と冷却基材との熱膨張差の影響を緩和することができる。樹脂層の代わりに金属接合層を用いてセラミック基材と冷媒流路を備えた冷却機材とを接合したウエハ載置台も知られている(例えば特許文献2,3)。金属接合層は、樹脂層に比べて熱伝導率が高いため、ハイパワープラズマでウエハを処理する場合に要求される抜熱能力を実現することができる。その一方、金属接合層は、樹脂層に比べてヤング率が大きく応力緩和性が低いため、セラミック基材と冷却基材との熱膨張差の影響を緩和することがほとんどできない。そのため、特許文献2,3では、冷却基材の材料として、セラミック基材と熱膨張係数差の小さい金属マトリックス複合材料(MMC)を用いている。こうしたウエハ載置台では、ウエハ載置面に設けられた複数の小突起に支持されたウエハからの抜熱を高めるために、ウエハ載置台の下面からウエハ載置面に至るガス供給路を介して、ウエハの裏面に熱伝導ガスを供給することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-287344号公報
【文献】特許第5666748号公報
【文献】特許第5666749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガス供給路の周壁に金属接合層や冷却基材が露出していると、その露出部分で金属を含むパーティクルが発生してウエハを汚染したり、プラズマを発生させたときにその露出部分で放電が起きたりするおそれがあった。そのため、ガス供給路の耐食性を向上させることが望まれていた。また、ガス供給路の耐食性を長期にわたって維持することも望まれていた。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、セラミック基材と冷却基材とを金属接合層で接合したウエハ載置台において、ウエハ載置面にガスを供給するガス供給路内の耐食性を向上させると共にその耐食性を長期にわたって維持することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
内部に冷媒流路が形成された金属含有材料の冷却基材と、
前記セラミック基材と下面と前記冷却基材の上面とを接合する第1金属接合層と、
前記セラミック基材を上下方向に貫通するセラミック基材内ガス通路と、
前記第1金属接合層を上下方向に貫通して前記セラミック基材内ガス通路に連通する第1金属接合層内ガス穴と、
前記冷却基材の下面に設けられたガス導入口から前記第1金属接合層内ガス穴を介して前記セラミック基材内ガス通路に連通する冷却基材内ガス通路と、
前記セラミック基材内ガス通路、前記第1金属接合層内ガス穴及び前記冷却基材内ガス通路によって構成されたガス供給路と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記ガス供給路において、少なくとも、前記第1金属接合層内ガス穴の周壁及び前記冷却基材内ガス通路の周壁のうち前記ウエハ載置面を上から見たときに視野に入る部分は、絶縁膜で覆われており、
40~400℃における、前記セラミック基材を構成するセラミック材料の線熱膨張係数をX1[/K]とし、前記金属含有材料の線熱膨張係数をX2[/K]としたとき、X1とX2との差の絶対値は、1.5×10-6/K以下である、
ものである。
【0007】
本発明のウエハ載置台では、ガス供給路において、少なくとも、第1金属接合層内ガス穴の周壁及び冷却基材内ガス通路の周壁のウエハ載置面を上から見たときに視野に入る部分は、絶縁膜で覆われている。そのため、こうした部分から金属を含むパーティクルが発生するのを防止したり、ウエハ載置面の上方でプラズマを発生させたときにこれらの部分で放電が起きるのを防止したりすることができる。その結果、ガス供給路の耐食性が向上する。また、40~400℃における、セラミック基材を構成するセラミック材料の線熱膨張係数をX1[/K]とし、金属含有材料の線熱膨張係数をX2[/K]としたとき、X1とX2との差の絶対値は、1.5×10-6/K以下である。そのため、ウエハ載置台の製造時や使用時に、セラミック基材と冷却基材との熱膨張差によって第1金属接合層が変形しにくくなるため、絶縁膜が割れたり剥がれたりするのを防止することができる。したがって、絶縁膜の耐食性を長期間にわたって維持することができる。なお、本明細書では、40℃と400℃の長さを測定して求めた線熱膨張係数を、40~400℃における線熱膨張係数と称する。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、ウエハ載置台が向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]上述したウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記絶縁膜を構成する材料の線熱膨張係数をX3[/K]としたとき、X1とX2との差、X2とX3との差及びX3とX1との差の各絶対値は、1.5×10-6/K以下であってもよい。こうすれば、絶縁膜の耐食性をより長期間にわたって維持することができる。
【0010】
[3]上述したウエハ載置台(前記[1]又は[2]に記載のウエハ載置台)において、前記セラミック基材内ガス通路は、複数設けられていてもよく、前記第1金属接合層内ガス穴は、複数の前記セラミック基材内ガス通路のそれぞれに対応して設けられていてもよく、前記冷却基材内ガス通路は、前記ガス導入口から前記冷却基材のうち前記冷媒流路よりも上側の所定位置まで延びたあと前記所定位置で複数の分配部に分かれ、前記分配部のそれぞれが前記第1金属接合層内ガス穴を介して前記セラミック基材内ガス通路に連通していてもよい。こうすれば、1つのガス導入口に対して複数のセラミック基材内ガス通路へガスを分配することができる。また、冷却基材内ガス通路は、冷却基材のうち冷媒流路よりも上側の所定位置で複数の分配部に分かれているため、冷媒流路同士の間を仕切る壁部と1箇所で交差する。そのため、冷却基材内ガス通路が壁部と複数箇所で交差する場合に比べて、冷媒流路の設計の自由度が高くなり、均熱性を向上させやすくなる。
【0011】
[4]上述したウエハ載置台(前記[1]~[3]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記ガス供給路の周壁全体は、前記絶縁膜で覆われていてもよい。こうすれば、ガス供給路の周壁のうちウエハ載置面を上から見たときに視野に入る部分だけでなくそれ以外の部分も絶縁膜で覆われているため、耐食性がより向上する。
【0012】
[5]上述したウエハ載置台(前記[1]~[4]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記冷却基材は、複数の層状部材を第2金属接合層を介して接合したものであってもよく、前記第2金属接合層は、前記冷却基材内ガス通路が貫通する第2金属接合層内ガス穴を有していてもよく、前記第2金属接合層内ガス穴の周壁は、前記絶縁膜で覆われていてもよい。こうすれば、冷却基材が複数の層状部材を第2金属接合を介して接合したものである場合において、第2金属接合層内ガス穴も絶縁膜で覆われているため、耐食性がより向上する。
【0013】
[6]上述したウエハ載置台(前記[1]~[5]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記第1金属接合層は、厚さが1mm以下であってもよい。こうすれば、第1金属接合層の変形がセラミック基材と冷却基材とによって抑制され易いため絶縁膜の耐食性をより十分期間にわたって維持することができる。
【0014】
[7]上述したウエハ載置台(前記[1]~[6]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記金属含有材料は金属マトリックス複合材料であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ウエハ載置台10の平面図。
図2図1のA-A断面図。
図3図2のB部分の拡大図。
図4図2のC部分の拡大図。
図5図2のD部分の拡大図。
図6】ウエハ載置台10の製造工程図。
図7】ウエハ載置台10の製造工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1はウエハ載置台10の平面図、図2図1のA-A断面図、図3図2のB部分の拡大図、図4図2のC部分の拡大図、図5図2のD部分の拡大図である。本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0017】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバの内部に設けられた設置板に固定されている。ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、冷却基材30と、第1金属接合層41を備えている。
【0018】
セラミック基材20は、円形のウエハ載置面21aを有する中央部21の外周に、環状のフォーカスリング載置面25aを有する外周部25を備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。ウエハ載置面21aには、ウエハWと当接可能な複数の小突起22が設けられている。また、セラミック基材20には、セラミック基材20を上下方向に貫通して、小突起22同士の間に開口する複数(本実施形態では12)のセラミック基材内ガス通路23(ガス供給路38の一部)が形成されている。ウエハ載置面21aには、ウエハWが載置され、FR載置面25aには、フォーカスリングが載置される。セラミック基材20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。FR載置面25aは、ウエハ載置面21aに対して一段低くなっている。
【0019】
セラミック基材20の中央部21は、ウエハ載置面21aに近い側に、ウエハ吸着用電極24を内蔵している。ウエハ吸着用電極24は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極24は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電電極である。セラミック基材20のうちウエハ吸着用電極24よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極24には、ウエハ吸着用直流電源50が給電端子52を介して接続されている。給電端子52は、冷却基材30及び第1金属接合層41を上下方向に貫通する貫通穴に配置された絶縁管53を通過して、セラミック基材20の下面からウエハ吸着用電極24に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源50とウエハ吸着用電極24との間には、ローパスフィルタ(LPF)51が設けられている。
【0020】
冷却基材30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路34と、冷却基材内ガス通路36とを備えている。冷媒流路34は、図示しない冷媒供給路及び冷媒排出路に接続されており、冷媒排出路から排出された冷媒は温度調整されたあと再び冷媒供給路に戻される。冷却基材内ガス通路36は、冷却基材30の下面に設けられたガス導入口35から第1金属接合層内ガス穴41aを介してセラミック基材内ガス通路23に連通している。冷却基材内ガス通路36は、流通部36aと分配部36bとを備える。流通部36aは、ガス導入口35から冷媒流路34よりも上側の所定位置まで上下方向に延びた部分である。流通部36aは、冷媒流路34同士の間を仕切る壁部39と1箇所で交差している。それぞれの分配部36bは、冷媒流路34よりも上側の所定位置で流通部36aから複数に分かれている部分である。分配部36bは、第1金属接合層41に形成された第1金属接合層内ガス穴41aを介して、セラミック基材内ガス通路23に連通している。
【0021】
冷却基材30は、円板状の第1~第3層状部材31~33が第2金属接合層42,43を介して接合されたものである。第1~第3層状部材31~33は、金属含有材料(例えば、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC)ともいう))で作製されたものである。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。セラミック基材20がアルミナ基材の場合、冷却基材30に用いるMMCとしてはAlSiCやSiSiCTiなどが好ましい。なお、40~400℃における線熱膨張係数は、アルミナが7.2×10-6/Kであり、AlSiC(SiC75%)が7.8×10-6/Kであり、SiSiCTiが7.3×10-6/Kであり、AlSiC(SiC85%)が5.6×10-6/Kである。
【0022】
第2金属接合層42は、図2に示すように、第1層状部材31の上面と第2層状部材32の下面とを接合する。また、第2金属接合層43は、第2層状部材32の上面と第3層状部材33の下面とを接合する。第2金属接合層42,43は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。第2金属接合層42、43は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。第2金属接合層42,43には、冷却基材内ガス通路36(流通部36a)が貫通する第2金属接合層内ガス穴42a,43aが形成されている。
【0023】
第1金属接合層41は、セラミック基材20の下面と冷却基材30(第3層状部材33)の上面とを接合する。第1金属接合層41には、第1金属接合層41を上下方向に貫通してセラミック基材内ガス通路23に連通する第1金属接合層内ガス穴41aが形成されている。第1金属接合層内ガス穴41aは、それぞれのセラミック基材内ガス通路23に対応して設けられている。第1金属接合層41は、AlやAl-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材により構成されている。第1金属接合層41は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。第1金属接合層41は、例えばTCBにより形成される。第1金属接合層41は、厚さが1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
【0024】
冷却基材30は、給電端子62を介してRF電源60に接続されている。RF電源60と冷却基材30との間には、ハイパスフィルタ(HPF)61が設けられている。
【0025】
冷却基材30の冷却基材内ガス通路36には、ガスを供給可能なガス供給源70が取付けられている。ガス供給源70は、冷却基材内ガス通路36(流通部36a、第2金属接合層内ガス穴42a,43a及び分配部36b)、第1金属接合層内ガス穴41a及びセラミック基材内ガス通路23を介して、ウエハWの裏面にHeなどの熱伝導ガスを供給する。
【0026】
セラミック基材内ガス通路23、第1金属接合層内ガス穴41a及び冷却基材内ガス通路36によって構成され、ウエハWの裏面までガスの供給をするための経路を、ガス供給路38(図3参照)と称する。ガス供給路38の周壁のうちウエハ載置面21aを上から見たときに視野に入る部分(少なくとも、第1金属接合層内ガス穴41aの周壁及び冷却基材内ガス通路36の周壁のうちウエハ載置面21aを上から見たときに視野に入る部分)、すなわちセラミック基材内ガス通路23の開口から上下方向に延びる直線部分(例えば図2に示すB部分及びC部分)は、図3,4に示すように、絶縁膜44で覆われている。本実施形態では、更に、ガス供給路38の周壁のうちウエハ載置面21aを上から見たときに視野に入らない部分、すなわち冷却基材30の内部で横方向(水平方向)に延びる部分(例えば、図2のD部分)も、図5に示すように、絶縁膜44で覆われている。すなわち、ガス供給路38の周壁全体は、絶縁膜44で覆われている。
【0027】
ここで、40~400℃における、セラミック基材20を構成するセラミック材料の線熱膨張係数をX1[/K]とし、冷却基材30(第1~第3層状部材31~33)に使用するMMCの線熱膨張係数をX2[/K]とし、絶縁膜44を構成する絶縁材料の線熱膨張係数をX3[/K]とする。このとき、X1とX2との差の絶対値、X2とX3との差の絶対値及びX3とX1との差の絶対値は、1.5×10-6/K以下であることが好ましく、1.0×10-6/K以下であることがより好ましく、0.5×10-6/K以下であることが更に好ましい。セラミック基材20がアルミナ製の場合、第1~第3層状部材31~33は、SiSiCTiかAlSiC製であることが好ましい。アルミナの熱膨張係数とSiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数とは、概ね同じだからである。また、その場合、絶縁膜44を構成する絶縁材料は、アルミナであることが好ましい。
【0028】
セラミック基材20の外周部25の側面、第1金属接合層41の外周、冷却基材30の側面(第1~第3層状部材31~33及び第2金属接合層42,43の側面)及び冷却基材30(第3層状部材33)の上面のうち第1金属接合層41で覆われていない部分は、絶縁膜45で被覆されている。絶縁膜45としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。
【0029】
次に、ウエハ載置台10の製造例を、図6及び図7を用いて説明する。図6及び図7はウエハ載置台10の製造工程図である。なお、図6及び図7では図2と同じ断面を図示している。まず、セラミック基材20の元となるセラミック焼結体120をセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(図6A)。セラミック焼結体120は、ウエハ吸着用電極24を内蔵している。次にセラミック焼結体120の下面からウエハ吸着用電極24まで穴154aを空けると共に、最終的にセラミック基材内ガス通路23となる穴123を形成する(図6B)。そして、穴154aに給電端子52を挿入しウエハ吸着用電極24と接合する(図6C)。
【0030】
これと並行して、MMCの第1~第3プレート131~133を作製する(図6D)。次に、第1プレート131に、最終的に冷却基材内ガス通路36の流通部36aとなる穴136a及び給電端子52を挿入するための穴154bを形成する。これにより、第1プレート131は第1層状部材31となる(図6E)。次に、第2プレート132に、最終的に冷媒流路34となる穴134、最終的に冷却基材内ガス通路36の流通部36aとなる穴136a及び給電端子52を挿入するための穴154cを形成する。これにより、第2プレート132は、第2層状部材32となる(図6E)。そして、第3プレート133に、最終的に分配部36bとなる穴136b及び給電端子52を挿入するための穴154dを形成する。これにより、第3プレート133は、第3層状部材33となる(図6E)。
【0031】
SiSiCTi製の第1~第3プレート131~133は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0032】
続いて、金属接合材141~143を用意する。金属接合材141は、セラミック焼結体120の下面と第3層状部材33の上面とを接合するためのものである。金属接合材142は、第1層状部材31の上面と第2層状部材32の下面とを接合するためのものである。金属接合材143は、第2層状部材32の上面と第3層状部材33の下面とを接合するためのものである。金属接合材141には、穴123と穴136bとに連通する貫通穴141a(最終的に第1金属接合層内ガス穴41aとなる)や穴154aと穴154dとに連通する貫通穴141bを設けておく。金属接合材142には、第1層状部材31の穴136aと第2層状部材32の穴136aとに連通する貫通穴142a(最終的には第2金属接合層内ガス穴42aとなる)や穴154bと穴154cとに連通する貫通穴142bを設けておく。金属接合材143には、穴136aと穴136bとに連通する貫通穴143a(最終的には第2金属接合層内ガス穴43aとなる)や穴154cと穴154dとに連通する貫通穴143bを設けておく。
【0033】
続いて、図6Fに示すように、第1層状部材31の上面と第2層状部材32の下面との間に金属接合材142を配置し、第2層状部材32の上面と第3層状部材33の下面との間に金属接合材143を配置し、第3層状部材33の上面とセラミック焼結体120の下面との間に金属接合材141を配置する。セラミック焼結体120の給電端子52を第1~第3層状部材31~33の穴154b~154dに挿入すると共に金属接合材142,143の貫通穴142b,143bに挿入し、セラミック焼結体120を第3層状部材33の上面に配置された金属接合材141の上にのせる。これにより、第1層状部材31と、金属接合材142と、第2層状部材32と、金属接合材143と、第3層状部材33と、金属接合材141と、セラミック焼結体120とを下から順に積層した積層体210を得る。
【0034】
次に、この積層体210を加熱しながら加圧することにより(TCB接合)、接合体110を得る(図7A)。接合体110は、冷却基材30の上面に、第1金属接合層41を介して、セラミック焼結体120が接合されたものである。接合体110は、周壁に絶縁膜44が形成される前のガス供給路38を有する。冷却基材30は、第1層状部材31と第2層状部材32と第3層状部材33とが第2金属接合層42,43を介して接合されたものである。冷却基材30は、内部に冷媒流路34を有する。
【0035】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0036】
次に、CVDやゾルゲル法等により、ガス供給路38の周壁全体を覆うように絶縁材料層を形成する。そして、接合体110を熱処理する。これにより、絶縁材料層は焼成されて絶縁膜44となり、ガス供給路38の周壁全体が絶縁膜44で覆われる(図7B)。
【0037】
次に、セラミック焼結体120の外周を切削して段差を形成する。そして、セラミック焼結体120の上面に、小突起22を形成するためのマスクを貼り付け、ブラストメディアを噴射してブラスト加工を行い、その後マスクを外す。ブラスト加工により小突起22が形成される。これにより、セラミック焼結体120は、中央部21、ウエハ載置面21a、外周部25及び小突起22を備えたセラミック基材20となる(図7C)。
【0038】
そして、セラミック基材20の外周部25の側面、第1金属接合層41の外周、冷却基材30の側面(第1~第3層状部材31~33及び第2金属接合層42,43の側面)及び冷却基材30の上面のうち第1金属接合層41で覆われていない部分に、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜45を形成する(図7D)。そして、穴154b~154d、貫通穴142b、貫通穴143b及び貫通穴141bが連通して形成された穴54に絶縁管53を挿入すると共に、冷却基材30の下面と給電端子62とを接合して、ウエハ載置台10を得る(図7D)。
【0039】
次に、ウエハ載置台10の使用例について説明する。ウエハ載置台10は図示しないチャンバの設置板に固定されている。チャンバの天井面には、プロセスガスを多数のガス噴出孔からチャンバの内部へ放出するシャワーヘッドが配置されている。
【0040】
ウエハ載置台10のFR載置面25aには、フォーカスリングが載置され、ウエハ載置面21aには、円板状のウエハWが載置される。このフォーカスリングは、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。この状態で、ウエハ吸着用電極24にウエハ吸着用直流電源50の直流電流を印加してウエハWをウエハ載置面21aに吸着させる。また、ガス供給源70に接続されたガス供給路38からウエハWの裏面にガス(例えばヘリウム等の熱伝導ガス)を供給している。そして、チャンバの内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッドからプロセスガスを供給しながら冷却基材30にRF電源60からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッドとの間にプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVDを施したり、エッチングを施したりする。なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリングも消耗するが、フォーカスリングはウエハWに比べて厚いため、フォーカスリングの交換は複数枚のウエハWを処理したあと行われる。
【0041】
以上説明したウエハ載置台10では、ガス供給路38において、少なくとも、第1金属接合層内ガス穴41aの周壁及び冷却基材内ガス通路36の周壁のうちウエハ載置面21aを上から見たときに視野に入る部分は、絶縁膜44で覆われている。そのため、こうした部分から金属を含むパーティクルが発生するのを防止したり、ウエハ載置面21aの上方でプラズマを発生させたときにこれらの部分で放電が起きるのを防止したりすることができる。その結果、ガス供給路の耐食性が向上する。また、40~400℃における、セラミック基材を構成するセラミック材料の線熱膨張係数をX1[/K]とし、金属含有材料の線熱膨張係数をX2[/K]としたとき、X1とX2との差の絶対値は、1.5×10-6/K以下である。そのため、ウエハ載置台10の製造時や使用時に、セラミック基材20と冷却基材30との熱膨張差によって第1金属接合層41が変形しにくくなるため、絶縁膜44が割れたり剥がれたりするのを防止することができる。したがって、絶縁膜44の耐食性を長期間にわたって維持することができる。
【0042】
また、ウエハ載置台10では、40~400℃における、絶縁膜44を構成する絶縁材料の線熱膨張係数をX3としたとき、X1とX2との差、X2とX3との差及びX3とX1との差の各絶対値は、1.5×10-6/K以下である。したがって、絶縁膜44の耐食性を長期間にわたって維持することができる。
【0043】
更に、ウエハ載置台10では、セラミック基材内ガス通路23は、複数設けられており、第1金属接合層内ガス穴41aは、複数のセラミック基材内ガス通路23のそれぞれに対応して設けられており、冷却基材内ガス通路36は、ガス導入口35から冷却基材30のうち冷媒流路34よりも上側の所定位置まで延びたあと所定位置で複数の分配部36bに分かれ、分配部36bのそれぞれが第1金属接合層内ガス穴41aを介してセラミック基材内ガス通路23に連通している。そのため、1つのガス導入口35に対して複数のセラミック基材内ガス通路23へガスを分配することができる。また、冷却基材内ガス通路36は、冷却基材30のうち冷媒流路34よりも上側の所定位置で複数の分配部36bに分かれているため、冷媒流路34同士の間を仕切る壁部39と1箇所で交差する。そのため、冷却基材内ガス通路36が壁部39と複数箇所で交差する場合に比べて、冷媒流路34の設計の自由度が高くなり、均熱性を向上させやすくなる。
【0044】
そして、ウエハ載置台10では、ガス供給路38の周壁全体は、絶縁膜44で覆われている。そのため、ガス供給路38の周壁のうちウエハ載置面21aを上から見たときに視野に入る部分だけでなくそれ以外の部分も絶縁膜44で覆われているため、耐食性がより向上する。
【0045】
更にまた、ウエハ載置台10では、冷却基材30は、第1~第3層状部材31~33を第2金属接合層42,43を介して接合したものであり、第2金属接合層42,43は、冷却基材内ガス通路36が貫通する第2金属接合層内ガス穴42a,43aを有しており、第2金属接合層内ガス穴42a,43aの周壁は、絶縁膜44で覆われている。したがって、第1~第3層状部材31~33を第2金属接合層42,43を介して接合したものである場合において、第2金属接合層内ガス穴42a,43aも絶縁膜44で覆われているため、耐食性がより向上する。
【0046】
そしてまた、ウエハ載置台10では、第1金属接合層41の厚みは1mm以下である。そのため、第1金属接合層41の変形がセラミック基材20と冷却基材30とによって抑制され易く、絶縁膜44の耐食性をより長期間にわたって維持することができる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、ガス導入口35は、冷却基材30の下面に1つ設けられ、ガス導入口35に対応するガス供給路38が1つ設けられていたが、これに限定されない。例えば、ガス導入口35は、冷却基材30の下面に複数設けられており、ガス導入口35のそれぞれに対して、ガス供給路38が設けられていてもよい。
【0049】
上述した実施形態では、冷却基材30は第1~第3層状部材31~33を第2金属接合層42,43を介して接合するものとしたが、これに限定されない。例えば、2つの層状部材を第2金属接合層を介して接合したものとしてもよいし、4つ以上の層状部材を第2金属接合層を介して接合したものとしてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、図6Aのセラミック焼結体120はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、図2に示すように分配部36bのうちの1つは、流通部36aから横方向(水平方向)に延びる部分を有さず、上下方向に延びたあと、第1金属接合層内ガス穴41aを介してセラミック基材内ガス通路23に連通していたが、これに限定されない。例えば、すべての分配部36bは、流通部36aから上下方向には延びる部分を有さず、横方向に延びたあと、第1金属接合層内ガス穴41aを介してセラミック基材内ガス通路23に連通するものとしてもよい。
【0052】
上述した実施形態において、ガス供給路38の周壁全体が、絶縁膜44で覆われていたが、これに限定されない。例えば、ガス供給路38の周壁のうちウエハ載置面21aを上から見たときに視野に入る部分が絶縁膜44で覆われていれば、視野に入らない部分は、絶縁膜44で覆われていなくてもよい。
【0053】
上述した実施形態において、セラミック基材20は、RF電極を内蔵していてもよいし、ヒータ電極を内蔵していてもよい。また、ウエハ載置台10には、ウエハWをウエハ載置面21aから持ち上げるためのリフトピンを挿通可能なリフトピン穴が形成されていてもよい。
【0054】
本出願は、2021年10月12日に出願された日本国特許出願第2021-167335号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えばウエハをプラズマ処理する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 ウエハ載置台、20 セラミック基材、21 中央部、21a ウエハ載置面、22 小突起、23 セラミック基材内ガス通路、24 ウエハ吸着用電極、25 外周部、25a フォーカスリング載置面、30 冷却基材、31 第1層状部材、32 第2層状部材、33 第3層状部材、34 冷媒流路、35 ガス導入口、36 冷却基材内ガス通路、36a 流通部、36b 分配部、38 ガス供給路、39 壁部、41 第1金属接合層、41a 第1金属接合層内ガス穴、42 第2金属接合層、42a 第2金属接合層内ガス穴、43 第2金属接合層、43a 第2金属接合層内ガス穴、44 絶縁膜、45 絶縁膜、50 ウエハ吸着用直流電源、52 給電端子、53 絶縁管、54 穴、60 RF電源、61 ハイパスフィルタ(HPF)、62 給電端子、70 ガス供給源、110 接合体、120 セラミック焼結体、123 穴、131 第1プレート、132 第2プレート、133 第3プレート、134 穴、136a 穴、136b 穴、141 金属接合材、141a 貫通穴、141b 貫通穴、142 金属接合材、142a 貫通穴、142b 貫通穴、143 金属接合材、143a 貫通穴、143b 貫通穴、154a 穴、154b 穴、154c 穴、154d 穴、210 積層体、W ウエハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7