(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】廃棄物の超臨界酸化
(51)【国際特許分類】
C02F 11/06 20060101AFI20240725BHJP
C02F 11/10 20060101ALI20240725BHJP
C02F 1/74 20230101ALI20240725BHJP
B09B 3/45 20220101ALI20240725BHJP
【FI】
C02F11/06 B ZAB
C02F11/06 A
C02F11/10 Z
C02F1/74 101
B09B3/45
(21)【出願番号】P 2021521947
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 US2019040704
(87)【国際公開番号】W WO2020010316
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-07-05
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521005786
【氏名又は名称】ビヨンド ザ ドーム、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストラウド、マシュー、ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】マンキューソ、ソフィー
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-524871(JP,A)
【文献】特表2017-529478(JP,A)
【文献】特開昭57-004225(JP,A)
【文献】特開昭51-148266(JP,A)
【文献】国際公開第2012/177907(WO,A1)
【文献】特開平09-201590(JP,A)
【文献】特開2015-093231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
C02F1/70-1/78
B09B1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ストリームを圧縮するように構成された圧縮器と、
水性超臨界廃棄物供給ストリームおよび圧縮された前記酸化剤ストリームから固体廃棄物および反応器流出物を生成するように構成された超臨界反応器と、
前記反応器流出物の少なくとも一部により駆動されるように構成されたガス膨張器と
を備
え、
前記反応器流出物のコンポーネントを分離して、加圧された気相反応器流出物ストリームを形成して、前記ガス膨張器を駆動するように構成されたガス/液体分離器をさらに備える、システム。
【請求項2】
前記ガス膨張器はタービンである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記圧縮器、前記超臨界反応器、および前記ガス膨張器は、ブレイトンサイクルエンジンを構成する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記圧縮器と前記ガス膨張器との間で熱を交換するように構成された伝熱ループをさらに備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
前記反応器流出物と加圧された前記気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、加圧された前記気相反応器流出物ストリームを加熱するように構成された熱交換器をさらに備える、請求項
1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガス膨張器は、加熱された加圧された前記気相反応器流出物ストリームにより駆動されるように構成される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記熱交換器は、加圧された廃棄物供給ストリームと、前記反応器流出物と、加圧された前記気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、それにより、加圧された前記廃棄物供給ストリームを超臨界状態に加熱して超臨界廃棄物ストリームを形成することと、前記反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成することとを行うように構成された、加圧された熱交換器である、請求項
5または6に記載のシステム。
【請求項8】
前記酸化剤ストリームはN
2を含み、前記反応器流出物の前記少なくとも一部は前記N
2を含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記反応器流出物のコンポーネントを分離して、前記N
2を含む加圧された気相反応器流出物ストリームを形成するように構成されたガス/液体分離器をさらに備える、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記反応器流出物の前記少なくとも一部は、前記超臨界反応器で生成されたCO
2を含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記ガス膨張器は、前記反応器流出物の非水性部分により駆動されるように構成される、請求項1から
10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記反応器流出物から水を除去するように構成されたガス/液体分離器をさらに備える、請求項1から
11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記圧縮器および前記ガス膨張器に動作可能に接続されるように構成されたモータ/発電機をさらに備える、請求項1から
12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
酸化剤ストリームを圧縮する段階と、
超臨界反応器において、水性超臨界廃棄物供給ストリームおよび圧縮された前記酸化剤ストリームから固体廃棄物および反応器流出物を生成する段階と、
ガス/液体分離器によって、前記反応器流出物のコンポーネントを分離して加圧された気相反応器流出物ストリームを形成する段階と、
作業を発生させるために
前記加圧された気相反応器流出物ストリームを膨張
させ、ガス膨張器を駆動する段階と
を備える方法。
【請求項15】
前記酸化剤ストリームを圧縮する圧縮器と、前記
気相反応器流出物
ストリームを膨張させる
前記ガス膨張器との間で熱を交換する段階をさらに備える、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化剤ストリームを圧縮する段階と前記
気相反応器流出物
ストリームを膨張させる段階は、等温プロセスである、請求項
14または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化剤ストリームを圧縮する段階は、100℃以下の酸化剤ストリームの温度の上昇により実行される、請求項
14または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化剤ストリームを圧縮する段階は、50℃以下の酸化剤ストリームの温度の上昇により実行される、請求項
14または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応器流出物と加圧された気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、加圧された前記気相反応器流出物ストリームを加熱する段階をさらに備える、請求項
14に記載の方法。
【請求項20】
加圧された廃棄物供給ストリームと、前記反応器流出物と、加圧された気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、それにより、加圧された前記廃棄物供給ストリームを超臨界状態に加熱して前記水性超臨界廃棄物供給ストリームを形成することと、前記反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成することとを行う段階をさらに備える、請求項
14に記載の方法。
【請求項21】
前記酸化剤ストリームはN
2を含み、
前記気相反応器流出物ストリームは前記N
2を含む、請求項
14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記気相反応器流出物ストリームを形成する段階は、前記反応器流出物のコンポーネントを分離して、前記N
2を含む加圧された気相反応器流出物ストリームを形成する段階を
含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記
気相反応器流出物
ストリームは、前記超臨界反応器で生成されたCO
2を含む、請求項
14から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記反応器流出物の部分は非水性である、請求項
14から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記
気相反応器流出物
ストリームにより前記ガス膨張器を駆動する段階の前に、前記反応器流出物から水を除去する段階をさらに備える、請求項
14から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ガス膨張器は、混合相反応器流出物により駆動され、前記混合相反応器流出物を気相流出物および液相流出物に分離する、
請求項14から19または請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
掃気熱交換器と
前記ガス膨張器との間で交換する段階をさらに備える、請求項
14から26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
PCTリクエストフォームは、本出願の一部として本明細書と同時に出願されている。同時に出願されたPCTリクエストフォームに記載されているように、本出願が利益または優先権を主張する各出願は、そのすべてが、すべての目的のために、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
廃水処理とは、廃水を、水サイクルに戻されることまたはそうでない場合は使用されることができる処理された流出物に変換するプロセスであり、通常は、いくつかの処理ステップを含む。例えば、下水の処理は、前処理の次に2つまたは3つの処理作業を含み得る。前処理ステップにおいて、大きい物体および砂が除去され得る。また、前処理は、廃水供給ストリームにおける変化を緩和するための流れの等化を含み得る。前処理された下水は、沈殿槽を通って流れ、スラッジと呼ばれる懸濁固形物を沈殿させる。スラッジは、沈殿された懸濁固体、ならびに、固体を沈殿させるのに使用される凝集剤と生体物質を分解するのに使用される微生物とを含み得る。スラッジは次に、嫌気性分解で部分的に処理され、これは処理されたスラッジとメタンとを生成する。処理されたスラッジは脱水され、脱水されたスラッジはバイオソリッドと呼ばれる。
【0003】
バイオソリッドは、有益な使用のために土地に適用されてもよく、埋め立て地に行ってもよく、または焼却されてもよい。有益な使用は、有毒汚染物が存在しないことを確実にすべく、強く規制されているが、しかしながら、規制は、多くの場合、主に金属および一般的な病原体などの狭い種類のセットに焦点を合わせている。新たに確認された毒素は、多くの場合、新たに出現した汚染物質と呼ばれ規制されておらず、特定の技術により除去されない場合がある。新たに出現した汚染物質の例は、残留消毒剤、難燃剤、および合成ホルモンなどの薬剤を含む。
【0004】
バイオソリッドは、嫌気性分解を経て、メタンを生成し得る。埋め立て空間は限定されており、また、メタンを生成する。メタンは電力を生成するのに使用され得るが、多くの場合は使用されない。メタンが使用される場合、発電プロセスはより複雑であり、従来のガスベースの発電プロセスより汚い。焼却は汚染物を生成し、エネルギー集中的であり、著しい量の燃料を必要とする。有益な使用、埋め立て、焼却および嫌気性分解が限定されていることを考慮すると、廃棄物を処理および削減する代替的な方法があった方が望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本明細書には、廃棄物のエネルギー効率の良い超臨界水酸化のための方法、システムおよび装置が提供される。本明細書に説明されている超臨界水酸化プロセスおよびシステムは、以下の特徴のうち1または複数を組み込み得る:エネルギー効率の良い方式でのプラント規模の動作を含む動作のために大量の酸化剤を圧縮すること、酸化剤として空気を使用すること、エネルギー回収のためにタービンまたは他のガス膨張器を駆動するのに反応器流出物を使用すること、反応器流出物の圧力および熱を回収すること。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、エネルギーニュートラルまたはエネルギーポジティブである。これらの特徴は、様々な組み合わせで実装され得る。
【0006】
本開示の1つの態様は、酸化剤ストリームを圧縮するように構成された圧縮器と、水性超臨界廃棄物供給ストリームおよび圧縮された酸化剤ストリームから固体廃棄物および反応器流出物を生成するように構成された超臨界反応器と、反応器流出物の少なくとも一部により駆動されるように構成されたガス膨張器とを含むシステムに関する。ガス膨張器の例は、タービン、ピストン、およびスクロール膨張器を含む。いくつかの実施形態において、圧縮器、超臨界反応器、およびガス膨張器は、ブレイトンサイクルエンジンを形成する。いくつかの実施形態において、システムは、圧縮器とガス膨張器との間で熱を交換するように構成された伝熱ループを含む。いくつかの実施形態において、システムはさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して、加圧された気相反応器流出物ストリームを形成して、ガス膨張器を駆動するように構成されたガス/液体分離器を含む。いくつかのそのような実施形態において、システムはさらに、反応器流出物と加圧された気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、加圧された気相反応器流出物ストリームを加熱するように構成された熱交換器を含む。いくつかの実施形態において、ガス膨張器は、加熱された加圧された気相反応器流出物ストリームにより駆動されるように構成される。いくつかのそのような実施形態において、熱交換器は、加圧された廃棄物供給ストリームと、反応器流出物と、加圧されたガス反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、それにより、加圧された廃棄物供給ストリームを超臨界状態に加熱して超臨界廃棄物ストリームを形成することと、反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成することとを行うように構成された、加圧された熱交換器である。
【0007】
いくつかの実施形態において、酸化剤ストリームは、N2と、N2を含む反応器流出物の少なくとも一部とを含む。いくつかのそのような実施形態において、システムはさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して、N2を含む加圧された気相反応器流出物ストリームを形成するように構成されたガス/液体分離器を含む。いくつかの実施形態において、膨張された反応器流出物の部分は、反応器で生成されたCO2を含む。いくつかの実施形態において、ガス膨張器は、反応器流出物の非水性部分により駆動されるように構成される。いくつかの実施形態において、システムはさらに、反応器流出物から水を除去するように構成されたガス/液体分離器を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、酸化剤ストリームを圧縮する段階と、超臨界反応器において、水性超臨界廃棄物供給ストリームおよび圧縮された酸化剤ストリームから固体廃棄物および反応器流出物を生成する段階と、作業を発生させるために反応器流出物の少なくとも一部を膨張させる段階とを含む方法に関する。いくつかの実施形態において、方法はさらに、酸化剤ストリームを圧縮する圧縮器と、反応器流出物の少なくとも一部を膨張させるガス膨張器との間で熱を交換する段階を含む。いくつかの実施形態において、方法はさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して加圧された気相反応器流出物ストリームを形成する段階であって、ここで、加圧された気相反応器流出物ストリームは、作業を発生させるために膨張される、形成する段階を含む。いくつかのそのような実施形態において、方法はさらに、反応器流出物と加圧された気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、気相反応器流出物ストリームを加熱する段階を含む。いくつかの実施形態において、方法はさらに、加圧された廃棄物供給ストリームと、反応器流出物と、加圧されたガス反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、それにより、加圧された廃棄物供給ストリームを超臨界状態に加熱して水性超臨界廃棄物ストリームを形成することと、反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成することとを行う段階を含む。いくつかの実施形態において、酸化剤ストリームは、N2と、N2を含む反応器流出物の少なくとも一部とを含む。いくつかのそのような実施形態において、方法はさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して、N2を含む加圧された気相反応器流出物ストリームを形成する段階を含む。いくつかの実施形態において、反応器流出物の少なくとも一部は、超臨界反応器で生成されたCO2を含む。いくつかの実施形態において、膨張された反応器流出物の部分は非水性である。いくつかの実施形態において、方法はさらに、反応器流出物の少なくとも一部を膨張させる段階の前に、反応器流出物から水を除去する段階を含む。いくつかの実施形態において、膨張器は、混合相反応器流出物により駆動され、混合相反応器流出物を気相流出物および液相流出物に分離する。
【0009】
本開示の別の態様は、廃棄物の超臨界水酸化のためのシステムに関し、当該システムは、超臨界廃棄物供給ストリームから固体廃棄物および超臨界反応器流出物を生成するように構成された超臨界反応器と、超臨界反応器と連通しており、超臨界反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成するように構成された回収熱交換器であって、加圧された混合相反応器流出物は、加圧された液相反応器流出物および加圧された気相反応器流出物を含む、回収熱交換器と、加圧された液相反応器流出物を減圧することと、水性廃棄物供給ストリームを加圧することとを行うように構成された圧力交換器とを含む。いくつかの実施形態において、システムはさらに、加圧された混合相反応器流出物のコンポーネントを分離して、加圧された液相反応器流出物ストリームおよび加圧された気相反応器流出物ストリームを形成するように構成されたガス/液体分離器を含む。いくつかのそのような実施形態において、システムはさらに、加圧された気相反応器流出物により駆動されるように構成されたガス膨張器を含む。いくつかのそのような実施形態において、ガス膨張器はタービンである。いくつかの実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームは非水性である。いくつかのそのような実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームはN2を含む。いくつかのそのような実施形態において、加圧された気相反応器流出物は、超臨界反応器で生成されたCO2を含む。いくつかの実施形態において、システムはさらに、気流を圧縮するように構成された圧縮器であって、ここで、加圧された気相反応器流出物は気流からのN2を含む、圧縮器を含む。いくつかのそのような実施形態において、圧縮器は、ガス膨張器により駆動されるように構成される。いくつかの実施形態において、回収熱交換器はさらに、加圧された気相反応器流出物を加熱するように構成される。いくつかの実施形態において、システムはさらに、酸化剤ストリームを圧縮するように構成された圧縮器であって、ここで、超臨界反応器は圧縮された酸化剤を受け取るように構成された、圧縮器を含む。いくつかの実施形態において、圧力交換器は、ポンプに接続された膨張器を備える。いくつかの実施形態において、圧力交換器は、ダイレクトインターフェース圧力交換器を備える。
【0010】
本開示の別の態様は、超臨界廃棄物供給ストリームから固体廃棄物および超臨界反応器流出物を生成する段階と、超臨界反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成する段階であって、加圧された混合相反応器流出物は、加圧された液相反応器流出物および加圧された気相反応器流出物を含む、段階と、加圧された液相反応器流出物と水性廃棄物供給ストリームとの間で圧力を交換して水性廃棄物供給ストリームを加圧する段階とを含む方法に関する。
【0011】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、加圧された混合相反応器流出物のコンポーネントを分離して、加圧された液相反応器流出物ストリームおよび加圧された気相反応器流出物ストリームを形成する段階を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、作業を発生させるために加圧された気相反応器流出物を膨張させる段階を含む。いくつかの実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームは非水性である。いくつかの実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームはN2を含む。いくつかの実施形態において、加圧された気相反応器流出物はCO2を含む。いくつかの実施形態において、方法はさらに、気流を圧縮する段階であって、ここで、加圧された気相反応器流出物は気流からのN2を含む、圧縮する段階を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、加圧された気相反応器流出物を加熱する段階を含む。いくつかのそのような実施形態において、加圧された気相反応器流出物を加熱する段階は、加圧された気相反応器流出物と超臨界反応器流出物との間で熱を交換する段階を含む。いくつかの実施形態において、膨張器は、混合相反応器流出物により駆動され、混合相反応器流出物を気相流出物および液相流出物に分離させるように構成される。
【0014】
本開示の別の態様は、周囲温度および圧力における水性供給ストリームから有機廃棄物を含む超臨界水性流体を生成する段階と、酸化剤を周囲圧力から超臨界水性流体に近い圧力または超臨界水性流体の圧力に圧縮する段階と、超臨界水性流体および圧縮された酸化剤を超臨界反応器に導入する段階と、超臨界水性流体における有機廃棄物を酸化させる段階と、反応器から固体、H2O、およびCO2を排出する段階とを含む方法に関し、ここで当該方法はエネルギーニュートラルまたはエネルギーポジティブである。いくつかの実施形態において、酸化剤は空気であり、N2は反応器から排出される。
【0015】
本開示の別の態様は、空気を圧縮するように構成された圧縮器と、超臨界水性廃棄物供給ストリームおよび圧縮された空気を受け取り、固体廃棄物と、H2O、CO2、およびN2を含む超臨界反応器流出物とを生成するように構成された超臨界反応器と、超臨界反応器と連通しており、加圧された水性廃棄物供給ストリームと超臨界反応器流出物との間で熱を交換して、それにより、加圧された水性廃棄物供給ストリームを超臨界または超臨界に近い状態に加熱して超臨界水性廃棄物供給ストリームを形成することと、超臨界反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成することとを行うように構成された回収熱交換器システムと、回収熱交換器システムと連通しており、加圧された混合相反応器流出物を受け取り分離して、H2Oを含む加圧された液相反応器流出物ストリームと加圧された気相反応器流出物ストリームとを形成するように構成されたガス/液体分離器と、ガス/液体分離器と連通しており、加圧された液相反応器流出物ストリームと水性廃棄物供給ストリームとの間で圧力を交換して、水性廃棄物供給ストリームを加圧し、加圧された水性廃棄物供給ストリームを形成するように構成された圧力交換器と、加圧された気相反応器流出物ストリームにより駆動されるように構成され、圧縮器を駆動するように構成されたタービンまたは他のガス膨張器とを含む、廃棄物の超臨界酸化のためのシステムに関する。
【0016】
いくつかの実施形態において、システムはさらに、タービンまたは他のガス膨張器の上流にあり、超臨界反応器および回収熱交換器システムと連通しており、超臨界反応器流出物と加圧された気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して加圧された気相反応器流出物ストリームを加熱するように構成された、第2熱交換器システムを含む。いくつかの実施形態において、システムはさらに、圧縮器から第2熱交換器システムの上流の加熱された加圧された気相反応器流出物ストリームに、圧縮された空気を配管するように構成された配管を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、回収熱交換器システムはさらに、加圧された気相反応器流出物ストリームと熱を交換して、加圧された気相反応器流出物ストリームを加熱するように構成される。いくつかの実施形態において、加圧された液相反応器流出物ストリームはさらに、CO2を含む。いくつかのそのような実施形態において、システムはさらに、圧力交換器と連通するCO2/液体分離器であって、加圧された液相反応器流出物ストリームを受け取り、加圧された液相反応器流出物ストリームが圧力交換器で減圧された後、H2OからCO2を分離するように構成された、CO2/液体分離器を含む。いくつかの実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームはN2を含む。いくつかの実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームはCO2を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、ガス/液体分離器は、H2Oを含む加圧された液相反応器流出物ストリームを、さらなる冷却のために回収熱交換器システムに戻すように構成される。いくつかの実施形態において、ガス/液体分離器は、加圧された気相反応器流出物ストリームを、加熱のために回収熱交換器システムに戻すように構成される。いくつかの実施形態において、システムはさらに、以下のうち1または複数を行うように構成された1または複数の補助フローストリームを含む:水性廃棄物供給ストリームを希釈すること、加圧された液相反応器流出物を冷却すること、システムの熱的バランスを保つこと、動作中にシステムを洗浄すること。
【0019】
いくつかの実施形態において、圧力交換器は、液相反応器流出物ストリームと水性廃棄物供給ストリームとが混合しないように液密である。いくつかの実施形態において、回収熱交換器システムは複数の熱交換器を含む。いくつかの実施形態において、システムはさらに、回収熱交換器システムの下流にあり、超臨界水性廃棄物供給ストリームを加熱するように構成された超臨界反応器の上流にあるまたは当該超臨界反応器に組み込まれたヒータを含む。
【0020】
本開示の別の態様は、気流を圧縮する段階と、圧縮された気流および超臨界水性廃棄物供給ストリームを超臨界反応器に導入する段階と、超臨界反応器で固体廃棄物および超臨界反応器流出物を生成する段階と、超臨界反応器流出物と加圧された水性廃棄物供給ストリームとの間で熱を交換して、超臨界反応器流出物を冷却してそれにより加圧された混合相反応器流出物を形成することと、加圧された水性廃棄物供給ストリームを加熱してそれにより超臨界水性廃棄物供給ストリームを形成することとを行う、交換する段階と、加圧された混合相反応器流出物を分離して加圧された気相反応器流出物ストリームおよび加圧された液相反応器流出物ストリームを形成する段階であって、加圧された液相反応器流出物ストリームはH2Oを含む、形成する段階と、加圧された液相反応器流出物ストリームと水性廃棄物供給ストリームとの間で圧力を交換して、液相反応器流出物ストリームを減圧し、水性廃棄物供給ストリームを加圧し、加圧された水性廃棄物供給ストリームを形成する、交換する段階と、加圧された気相反応器流出物ストリームをタービンまたは他のガス膨張器に導入して、タービンまたは他のガス膨張器を駆動して、作業を発生させ、ここで作業は気流を圧縮させるのに使用される、導入する段階とを含む方法に関する。
【0021】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、タービンまたは他のガス膨張器に導入する段階の前に、加圧された気相反応器流出物ストリームを加熱する段階を含む。いくつかのそのような実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームを加熱する段階は、超臨界反応器流出物と熱を交換する段階を含む。いくつかの実施形態において、方法はさらに、タービンまたは他のガス膨張器に導入する前に、加圧された気相反応器流出物ストリームに圧縮された空気を追加する段階を含む。いくつかの実施形態において、加圧された液相反応器流出物ストリームはさらに、CO2を含む。いくつかのそのような実施形態において、方法はさらに、加圧された液相反応器流出物ストリームが減圧された後、H2OからCO2を分離する段階を含む。いくつかの実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームはN2を含む。いくつかの実施形態において、加圧された気相反応器流出物ストリームはCO2を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、以下のうち1または複数のための1または複数の補助フローストリームを追加する段階を含む:水性廃棄物供給ストリームを希釈すること、加圧された液相反応器流出物を冷却すること、システムの熱的バランスを保つこと、動作中に洗浄すること。
【0023】
本開示の別の態様は、空気を圧縮するように構成された圧縮器と、超臨界水性廃棄物供給ストリームおよび圧縮された空気を受け取り、固体廃棄物と、H2O、CO2、およびN2を備える超臨界反応器流出物とを生成するように構成された超臨界反応器と、超臨界反応器と連通しており、加圧された水性廃棄物供給ストリームと超臨界反応器流出物との間で熱を交換して、それにより、加圧された水性廃棄物供給ストリームを超臨界または超臨界に近い状態に加熱して超臨界水性廃棄物供給ストリームを形成することと、超臨界反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成することとを行うように構成された回収熱交換器システムと、加圧された混合相反応器流出物ストリームにより駆動されるように構成されたガス膨張器と、水性廃棄物供給ストリームを加圧して加圧された水性廃棄物供給ストリームを形成するように構成されたポンプと、ガス膨張器、圧縮器およびポンプに接続されたモータ/発電機とを備える、廃棄物の超臨界酸化のためのシステムに関する。
【0024】
本明細書に説明されている方法およびシステムにより処理され得る水性廃棄物供給ストリームの例は、廃水、下水スラッジ、バイオソリッド、食品廃棄物、有機医療廃棄物および無機廃棄物を含む。
【0025】
本開示の別の態様は、酸化剤ストリームを圧縮するように構成された圧縮器と、水性廃棄物供給ストリームおよび圧縮された酸化剤ストリームから固体廃棄物および反応器流出物を生成するように構成された反応器と、反応器流出物の少なくとも一部により駆動されるように構成されたガス膨張器とを備えるシステムに関する。
【0026】
ガス膨張器の例は、タービン、ピストン膨張器、およびスクロール膨張器を含む。いくつかの実施形態において、圧縮器、超臨界反応器、およびガス膨張器は、ブレイトンサイクルエンジンを形成する。いくつかの実施形態において、システムは、圧縮器とガス膨張器との間で熱を交換するように構成された伝熱ループを含む。いくつかの実施形態において、システムはさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して、加圧された気相反応器流出物ストリームを形成して、ガス膨張器を駆動するように構成されたガス/液体分離器を含む。いくつかのそのような実施形態において、システムはさらに、反応器流出物と加圧された気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、気相反応器流出物ストリームを加熱するように構成された熱交換器を含む。いくつかの実施形態において、ガス膨張器は、加熱された加圧された気相反応器流出物ストリームにより駆動されるように構成される。いくつかのそのような実施形態において、熱交換器は、加圧された廃棄物供給ストリームと、反応器流出物と、加圧されたガス反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、それにより、加圧された廃棄物供給ストリームを加熱して廃棄物ストリームを形成することと、反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成することとを行うように構成された、加圧された熱交換器である。
【0027】
いくつかの実施形態において、酸化剤ストリームは、N2と、N2を含む反応器流出物の少なくとも一部とを含む。いくつかのそのような実施形態において、システムはさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して、N2を含む加圧された気相反応器流出物ストリームを形成するように構成されたガス/液体分離器を含む。いくつかの実施形態において、膨張された反応器流出物の部分は、反応器で生成されたCO2を含む。いくつかの実施形態において、ガス膨張器は、反応器流出物の非水性部分により駆動されるように構成される。いくつかの実施形態において、システムはさらに、反応器流出物から水を除去するように構成されたガス/液体分離器を含む。
【0028】
本開示の別の態様は、酸化剤ストリームを圧縮する段階と、反応器において、廃棄物供給ストリームおよび圧縮された酸化剤ストリームから固体廃棄物および反応器流出物を生成する段階と、作業を発生させるために反応器流出物の少なくとも一部を膨張させる段階とを備える方法に関する。いくつかの実施形態において、反応は、反応器流出物が亜臨界圧であるように、亜臨界圧であってよい。
【0029】
方法はさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して加圧された気相反応器流出物ストリームを形成する段階であって、ここで、加圧された気相反応器流出物ストリームは、作業を発生させるために膨張される、形成する段階を含み得る。いくつかの実施形態において、方法はさらに、酸化剤ストリームを圧縮する圧縮器と、反応器流出物の少なくとも一部を膨張させるガス膨張器との間で熱を交換する段階を含む。いくつかの実施形態において、方法はさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して加圧された気相反応器流出物ストリームを形成する段階であって、ここで、加圧された気相反応器流出物ストリームは、作業を発生させるために膨張される、形成する段階を含む。いくつかのそのような実施形態において、方法はさらに、反応器流出物と加圧された気相反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、気相反応器流出物ストリームを加熱する段階を含む。いくつかの実施形態において、方法はさらに、加圧された廃棄物供給ストリームと、反応器流出物と、加圧されたガス反応器流出物ストリームとの間で熱を交換して、それにより、加圧された廃棄物供給ストリームを加熱して水性超臨界廃棄物ストリームを形成することと、反応器流出物を冷却して加圧された混合相反応器流出物を形成することとを行う段階を含む。いくつかの実施形態において、酸化剤ストリームは、N2と、N2を含む反応器流出物の少なくとも一部とを含む。いくつかのそのような実施形態において、方法はさらに、反応器流出物のコンポーネントを分離して、N2を含む加圧された気相反応器流出物ストリームを形成する段階を含む。いくつかの実施形態において、反応器流出物の少なくとも一部は、反応器で生成されたCO2を含む。いくつかの実施形態において、膨張された反応器流出物の部分は非水性である。いくつかの実施形態において、方法はさらに、反応器流出物の少なくとも一部を膨張させる段階の前に、反応器流出物から水を除去する段階を含む。いくつかの実施形態において、膨張器は、混合相反応器流出物により駆動され、混合相反応器流出物を気相流出物および液相流出物に分離する。
【0030】
本開示のこれらの特徴および他の特徴は、関連図面を参照して以下に示される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本明細書に説明されている廃棄物の超臨界水酸化のためのエネルギー効率の良いプロセス、システム、および装置の応用例を示す。
【
図2】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する。
【
図3】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図4】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図5】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図6】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図7】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図8】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図9】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図10】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図11】廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する図である。
【
図12】本明細書に説明されているシステムの実装に使用され得る熱交換器の概略的な例を示す。
【
図13】本明細書に説明されているシステムの実装に使用され得る超臨界反応器の概略的な例を示す。
【
図14】本明細書に説明されているシステムの実装に使用され得る圧縮器の概略的な例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書には、廃棄物のエネルギー効率の良い超臨界水酸化のための方法、システムおよび装置が提供される。本明細書に説明されている超臨界水酸化プロセスおよびシステムは、以下の特徴のうち1または複数を組み込み得る:プラント規模の動作およびそれよりも小さい規模の動作のためのエネルギー効率の良い方式での大量の酸化剤を圧縮すること、酸化剤として空気を使用すること、エネルギー回収のためにガス膨張器を駆動するのに反応器流出物を使用すること、反応器流出物の圧力および熱を回収すること。これらの特徴は、任意の適切な組み合わせで実装されてよい。例えば、システムは、酸化剤として空気を使用することのために、ガス膨張器を駆動するための反応器流出物のために、および/または反応器流出物の圧力および熱を回収することのために構成され得る。
【0033】
以下の説明の多くが、有機廃棄物を含む廃水の処理の観点から示されるが、本明細書に説明されているプロセス、システム、および装置は、酸化され得るあらゆる種類の無機廃棄物または有機廃棄物の処理に適用され得る。さらに、プロセス、システム、および装置は、以前の処理作業を経た廃棄物または経ていない廃棄物を用いて実装され得る。本明細書に説明されている方法、システム、および装置を使用して処理され得る廃棄物供給の追加の例は、以下にさらに提供される。
【0034】
図1は、本明細書に説明されている廃棄物の超臨界水酸化のためのエネルギー効率の良いプロセス、システム、および装置がどのように実装され得るかの例を示す。101において、超臨界酸化がない廃水処理プロセスの例が示される。
図1に示される廃水処理プロセスは、例えば、地域の廃水処理プラントで実行され得る。
【0035】
廃水は、処理された水およびスラッジ、有機成分を1から5質量%含み得る半固体材料またはスラリを生成するように処理される。いくつかの例において、スラッジは、生物学的分解により部分的に処理され、メタンを生成する。残りの固体はバイオソリッドと呼ばれ、分解プロセスに使用された有機物および微生物を含み得る。
【0036】
バイオソリッドは、12‐18質量%およびそれよりも高い質量%の有機成分を含み得、
図1に指示されるようなトラック輸送により廃水プラントから除去され、燃料消費、交通、および有害な排出につながり得る。輸送されたバイオソリッドは、焼却されてもよく、埋め立て地において処分されてもよく、または有益な使用のために土地に適用されてもよい。焼却は、NO
x、SO
x、COおよび微粒子を含む汚染物を生成する。埋め立て処分は、空間が必要で、メタンを生成し、地下水への浸出につながり得る。土地への応用もメタンを生成し、重金属、ダイオキシンおよび新たに出現した汚染物質などの汚染物質を土地に拡散させ得る。
【0037】
103において、本明細書に説明されているプロセスおよびシステムがどのように実装され得るかの例が示される。この例において、嫌気性分解により生成されたバイオソリッドは、本明細書に説明されているように、エネルギー効率の良い超臨界水酸化(SCWO)により処理され得る。これは、きれいな水と無機物とを生成する。有機物を酸化させる場合に、小量の二酸化炭素が生成され、それは排出されてもよく、または産業での使用のために取得されてもよい。無機物は、再使用または埋め立て処分のために輸送され得る。特に、埋め立て地において処分され得る材料の量は、101に示された例における量よりも著しく少ない場合がある。バイオソリッドの有機物質の酸化は、発熱反応であり、エネルギーを生成する。回収されたバイオソリッドの超臨界酸化により生成されたエネルギーは以下にさらに説明される。いくつかの実施形態において、エネルギー効率の良いSCWOプロセスは、エネルギーニュートラルまたはエネルギーポジティブである。
【0038】
105において、本明細書に説明されているプロセスおよびシステムが、廃水処理に関連してどのように実装され得るかの別の例が提供される。この例において、下水スラッジはエネルギー効率の良いSCWOにより処理され、上記のようにきれいな水、エネルギー、および無機物を生成する。
【0039】
図1は、廃棄物処理における超臨界水酸化プロセスの実装の2つの例を提供するが、それはまた、流入される廃水そのものを処理するのに使用されてもよく、ならびに、産業プロセス、農業プロセス、または、さまざまな無機廃棄物または有機廃棄物の供給のための他の地域での応用に使用されてもよい。
【0040】
超臨界水酸化は、酸化剤と、酸化される廃棄物とを、超臨界状態の、すなわち水性混合物の臨界点を上回る温度および圧力の、水性混合物において反応させる段階を含む。その臨界点を上回ると、混合物は、酸化を促進する固有のプロパティを有する単相流体である。亜臨界水は極性溶媒であるが、超臨界水は非極性溶媒に近い作用をする。結果として、炭化水素、酸素(O2)、および窒素(N2)などの非極性化合物は、水性超臨界環境において溶解性が高く、その一方、無機塩類などの極性化合物は溶解性がはるかに低い。
【0041】
これまで、超臨界水酸化は、酸化剤を提供するという課題に部分的に起因して、大規模の応用では実用的ではなかった。水の臨界温度および圧力は、374℃且つ3200psiaである。純酸素は、液体の形で保存する必要があり得、生成および提供にコストがかかる。空気は、より容易に提供され得るが、それを圧縮するために大きい圧縮器と大量のエネルギーとを必要とする。例えば、いくつかの応用においては、反応器に充分な空気を提供するために、1分あたり8ガロン(gpm)の供給、1メガワット(MW)のエネルギーが使用され得る。エネルギー要件の大部分に起因して、現在の技術を使用する廃棄物処理のための超臨界水酸化のコストは、多くの潜在的応用にとっては非常に高い。
【0042】
超臨界水酸化の別の課題は、超臨界水において溶解性の低い無機塩類と他の極性種の存在である。これは、沈殿した塩の蓄積による腐食および詰まりにつながる。
【0043】
本明細書には、地域の廃棄物処理および産業廃棄物処理を含む大規模の応用の実装を可能にする、廃棄物の超臨界水酸化のためのエネルギー効率の良いプロセス、システム、よび装置が提供される。プロセスおよびシステムは、廃棄物供給そのものからエネルギーを回収し得る。有機物質の酸化はエネルギーを生成する発熱反応であるが、超臨界水の性質により、そのエネルギーを反応器流出物から回収することは困難である。例えば圧力が降下し、超臨界水が水蒸気になると、塩の可溶性は低下し、塩の沈殿が発生し得る。この沈殿は、例えば塩に対して低い耐性を有するタービンの場合に困難をもたらす。超臨界水は液体の水より少ない溶解塩を有するが、既存のタービンが処理できる量より数倍多い塩を分解する。
【0044】
様々な実施形態によると、本明細書に説明されているプロセスおよびシステムは、以下の特徴のうち1または複数を有する:膨張器を使用した超臨界反応器流出物のエネルギーの回収、熱回収の次の超臨界反応器流出物の圧力回収、廃棄物供給ストリームの温度および/または圧力を上昇させるための反応器流出物の熱および/または圧力の回収、圧縮エネルギーの回収による空気または他のガスの酸化剤としてのエネルギー効率の良い使用。
図2から
図6は、廃水の超臨界水酸化のためのシステムの例を提供する。
図2から
図6における例は、これらの特徴の各々を含み得るが、これらの特徴は特定の実施形態において独立して使用され得ることが理解されよう。
【0045】
図2において、廃棄物供給は低温且つ低圧でシステムに入る。廃棄物供給は、酸化される廃棄物を含む任意の水性供給である。廃棄物は有機であってもよく、または無機であってもよく、さらに以下で提供される特定の例を含む。様々な実施形態によると、それはあらかじめ処理されてもよく、または処理されなくてもよい。
図1は、廃棄物供給がスラッジおよびバイオソリッドである例と、廃水、農業廃棄物および産業廃棄物を含む他の例とを示す。水性廃棄物供給は、いくつかの実施形態において、1wt%から15wt%の間の廃棄物であり得る。
【0046】
図2から
図11の例において、様々なストリームは、「low T」、「low P」、「high T」、および「high P」とラベリングされる。低温且つ低圧は通常、周囲または周囲に近い状況を、高温且つ高圧は通常、臨界温度および圧力に近いまたはそれを上回る状況をそれぞれ指す。しかしながら、当業者であれば、温度および圧力は熱バランスの効率、システムコンポーネントにわたっての圧力降下などによって変化し得ることを理解する。例えば、以下の例における回収熱交換器システムのサイズは、膨張中に発生する冷却の一部を可能にすることにより、縮小され得る。したがって、一例において、「low T」は低温域における温度を、「high T」は、特定の例における低温がその範囲内で変化し得るように、高温域における温度などを指し得る。いくつかの実施形態において、システムは、希釈、フラッシュ、洗浄のための1または複数の補助フローを含み、システムの熱的バランスを保ち、化学物質を追加し得る。補助フローは、任意の適切な位置にあってよい。
【0047】
廃棄物供給ストリームは、大気条件(例えば、約25℃且つ14.7psia)に入ってよい。廃棄物供給ストリームは、圧力交換器(PX)202で加圧され、加圧された廃棄物供給ストリームを生成する。以下にさらに説明されるように、本明細書に説明されている例において、圧力交換器202は、反応器流出物から圧力を回収するのに使用される。しかしながら、いくつかの実施形態において、廃棄物供給ストリームは、圧力交換器202の代わりにまたはそれに加えて、ポンプを使用して加圧され得る。補助フローは、加圧される前にまたは加圧された後に、廃棄物供給ストリームに追加され得る。加圧された廃棄物供給ストリームは次に、低温であるが、水の臨界点を上回る圧力にある。1つの例において、圧力は、約3500psiaである。
【0048】
加圧された廃棄物供給ストリームは次に、回収熱交換器システム204に入る。回収熱交換器システム204は、1または複数の熱交換器を含み、超臨界反応器流出物から熱を回収するように構成される。加圧された廃棄物供給は、廃棄物供給が超臨界状態にあるように、水の臨界温度にまたはそれを上回る温度に加熱される。いくつかの実施形態において、加圧された廃棄物供給は、超臨界になるように、約400℃から650℃の間の温度に加熱される。他の実施形態において、それは回収熱交換器402から出るときに臨界温度を下回り、別のヒータまたは反応器で追加の加熱を行う場合がある。
【0049】
超臨界廃棄物供給ストリームは次に、供給ヒータ206によりさらに加熱され得る。供給ヒータ206は、いくつかの実施形態においては示されなくてもよく、または、超臨界反応器208に組み込まれてもよい。供給ヒータ206は、反応器流出物が生成され回収熱交換器システム204の熱源となる前に、プロセスを開始するのに使用され得る。プロセスの開始における他の加熱方法、例えば、ケロシンを廃棄物供給ストリームに追加することは、供給ヒータ206の代わりにまたはそれに加えて使用され得る。プロセスが一旦開始されると、供給ヒータ206は使用されてもよく、または使用されなくてもよい。
【0050】
上記のように、廃棄物供給は、超臨界流体として超臨界反応器208に入るが、他の実施形態においては、内蔵ヒータまたは発熱反応による熱を使用して、反応器の超臨界温度に至る場合がある。また、反応器208には加圧された酸化剤ストリームが入り、これは加熱されてもよく、または加熱されなくてもよい。多くの実施形態においては、空気が酸化剤であるが、空気の他に純酸素、酸素を豊富な空気、または他の酸素を含有するガス混合物が使用され得る。(非ガス混合物は、以下にさらに説明されるように、特定の実施形態において使用され得る。)空気は78体積%のN2であり、圧縮するために大量のエネルギーが使用される。以下にさらに記載されるように、このエネルギーは回収される。いくつかの実施形態において、酸化剤は、反応器または熱回収システムに入る前に、廃棄物供給ストリームに追加され得る。
【0051】
反応は、固体と超臨界反応器流出物とを生成し、これらは、回収熱交換器システム204の高温側に流れる。固体流出物は、液相流出物とともに輸送されてもよく、または、離散的または連続的に反応器から除去されてもよい。超臨界反応器流出物は、回収熱交換器システム204で冷却され、気相流出物および液相流出物を含む混合相反応器流出物になる。混合相反応器流出物は、低温且つ高圧である。低温は、水の気化温度をかなり下回り、いくつかの実施形態においては25℃と50℃の間である。回収熱交換器システム204にわたって、最小限の圧力降下があり得る。
【0052】
液相流出物は、H2Oを含み、いくつかの実施形態においては、CO2を含む。空気が酸化剤である実施形態において、気相流出物はN2を含み、少量のO2を含み得る。混合相流出物は次に、ガス/液体分離器214に導入され、2つの相を分離する。加圧された液相流出物は次に、圧力交換器202に導入され、上記のように流入される廃棄物供給ストリームを加圧する。一旦減圧されると、液相流出物は分離器216に導入され得る。分離器216は、存在する場合、きれいな水とCO2とを分離する。
【0053】
高圧且つ低温である気相流出物は、回収熱交換器システム204に戻され、加熱され、高圧且つ高温でシステムを出て、膨張器212を駆動する。膨張器212は結果として、超臨界反応器208に導入される酸化剤を圧縮する圧縮器210を駆動する。圧縮器210、超臨界反応器208、および膨張器212(タービンであってよい)は、ブレイトンサイクルエンジンを形成する。いくつかの実施形態において、圧縮された酸化剤は、圧縮器210を圧縮により加熱されたままにする。
【0054】
図1の例示的な超臨界水酸化システムにおいて、酸化剤を圧縮するのに使用されるエネルギーは、いくつかの方法で回収される。さらに、反応により生成されるエネルギーは、エネルギー効率の良い酸化のために、いくつかの実施形態ではエネルギーニュートラルまたはエネルギーポジティブな酸化のために、取得されてもよい。
【0055】
まず、熱および圧力が、回収熱交換器システム204および圧力交換器202内の超臨界反応器流出物から回収される。特に、圧力回収は、熱回収の後に、且つ超臨界反応器流出物が混合相反応器流出物に変換された後に実行される。これは、圧力が液相反応器流出物から回収されることを可能にする。また、反応器流出物は、反応器流出物から水が除去された後に、膨張器212を駆動するのに使用される。これは、気相反応器流出物が、水中に存在する塩からダメージを受けることなく膨張器(例えば、タービン)を駆動することを可能にする。いくつかの実施形態において、システムは、様々な修正とともに、これらの特徴のうち1または複数を組み込み得る。例えば、いくつかの実施形態において、反応器流出物は、あらゆる水の除去プロセスが実行された後に、タービンを駆動するのに使用され得る。
【0056】
様々な修正は、
図2を参照して説明されたシステムに対して行われ得る。例えば、任意のガス膨張器が、ピストンおよびスクロール膨張器を含む特定のシステムに、必要に応じてタービンの代わりに、本明細書に説明されているシステムにおいて使用され得る。さらに、
図2における例はブレイトンサイクルを使用するが、エネルギーは、エリクソンサイクルなどの他の熱力学サイクルを使用して回収されてもよい。
【0057】
図3は、様々な実施形態による廃棄物の超臨界水酸化のためのシステムの別の例を示す。
図3におけるシステムは、
図2におけるシステムと同様であるが、回収熱交換器システム204に入る前に超臨界反応器流出物から一部の熱を回収するように構成された熱交換器218を含む。そのようなシステムは、超臨界反応器208において大量のエネルギーを生成する高有機成分を有する廃棄物供給ストリームに特に有用であり得る。回収された熱は、膨張器212を駆動するのに使用され得、さらなる作業を発生させ、結果として電気に変換され得る。熱交換器218の低温側の例示的な温度は、約400℃‐450℃で、熱交換器218の高温側の例示的な温度は、約600℃‐650℃であり得る。回収熱交換器システム204から出た後、気相流出物は、熱交換器218でさらに加熱される。いくつかの実施形態において、圧縮器210からの酸化剤は、熱交換器218に入る気相流出物ストリームに注入され、質量流量を増加させる。
【0058】
上記のように、回収熱交換器システムは、様々な実施形態に従って、1または複数の熱交換器を含み得る。
図2および
図3の例において、回収熱交換器システムは、水が除去された後に、廃棄物供給ストリーム、反応器流出物ストリーム、および気相反応器流出物ストリームの3つのストリームの間で熱を交換するものとして示される。熱交換器の回収システムは、3つのストリーム間で熱を交換するために3つの熱交換器または複数の熱交換器を使用し得る。
【0059】
図4は、廃棄物の超臨界水酸化のための別のシステムの例を示す。
図4の例において、超臨界反応器208で生成された二酸化炭素(CO
2)は、膨張器212を駆動するのに使用される。これは、超臨界反応器流出物を、水は液化するがCO
2は気相のままである温度に冷却することにより行なわれ得る。例えば、超臨界反応器流出物は、450℃の温度で回収熱交換器システムに入り、200℃‐250℃(
図4に示された「Med T」の例)に冷却され、混合相反応器流出物を形成し得る。混合相反応器流出物は次に、ガス/液体分離器214で、気相流出物および液相流出物に分離される。気相流出物はCO
2を含む。
図4に示される例においては、空気を酸化剤として、気相流出物はN
2、O
2およびCO
2を含む。液相流出物はH
2Oであり、これはlow T、例えば25℃にさらに冷却され、圧力交換器202に流れ、圧力交換器202は液体の水を減圧し、廃棄物供給ストリームを加圧する。
【0060】
いくつかの実施形態において、気相熱交換器は、膨張器212に導入されるために再び加熱される前に、熱交換器420でさらに冷却される。熱交換器420は、回収熱交換器システム204のコンポーネントとみなされ得るが、説明のために別個のコンポーネントとして示される。超臨界反応器流出物から熱が完全に回収される前にガス/液体分離を実行することにより、反応で生成された大量のCO
2は、膨張器212を駆動することと、例えば、膨張器212、圧縮器210、および超臨界反応器208により定義されるブレイトンサイクルエンジンにおいて電力を生成することとに使用され得る。いくつかの実施形態において、例えば
図3に示されるように、超臨界反応器流出物が回収熱交換器システム204に達する前に冷却するために追加の熱交換器が使用され得る。
【0061】
上記のように、回収熱交換器システムは、1または複数の熱交換器を含み得る。
図5および
図6は、気相反応器流出物がCO
2を含むシステムの代替的な構成の例を示す。
図5の例において、CO
2を含む気相反応器流出物は、ガス/液体分離の温度で、例えば、200℃‐250℃で、膨張器212に導入される。熱回収システム204は、熱交換器522と熱交換器524との2つの熱交換器(HX)を含み、これらは共に、加圧された廃棄物供給を水の臨界点を上回る温度に加熱して、超臨界廃棄物供給を生成する。熱交換器524は、超臨界反応器流出物を冷却して、ガス/液体分離器214に流れる混合相反応器流出物を形成し、熱交換器522は、液体反応器流出物(すなわち、H
2O)を低温に冷却する。
【0062】
図6の例において、熱回収システム204は、上記のように熱交換器522を含み、3つのストリーム間で熱を交換する3つの熱交換器626を含み、熱交換器522を出る廃棄物供給ストリームを加熱して超臨界状態にすることと、ガス/液体分離の後に気相流出物を加熱して膨張器212を駆動することと、ガス/液体分離の前に超臨界反応器流出物を冷却して混合相反応器流出物を形成することとを行う。
【0063】
図2に戻って参照すると、高圧且つ高温である気相流出物は、回収熱交換器システム204に戻され、加熱され、システムを出て、膨張器212を駆動する。いくつかの実施形態において、膨張は低い(例えば、周囲に近い)温度で、再加熱することなく実行される。これは
図7に示されており、様々な実施形態による廃棄物の超臨界水酸化のためのシステムの別の例を示す。
【0064】
図7の例において、超臨界反応器流出物は回収熱交換器システム704に入る。ここで、回収熱交換器システムは、超臨界反応器流出物をlow Tに冷却し、加圧された廃棄物供給ストリームを加熱する単一の二流体熱交換器であり得る。超臨界反応器流出物は、上記のように、気相流出物および液相流出物を含む混合相反応器流出物になる。混合相反応器流出物は、低温且つ高圧である。低温は、水の気化温度をかなり下回り、いくつかの実施形態においては25℃と50℃の間である。回収熱交換器システム704にわたって、最小限の圧力降下があり得る。液相流出物は、H
2Oを含み、いくつかの実施形態においては、CO
2を含む。空気が酸化剤である実施形態において、気相流出物はN
2を含み、少量のO
2を含み得る。混合相流出物は次に、ガス/液体分離器714に導入され、2つの相を分離する。
【0065】
図7の例において、気相流出物は次に、低温(例えば40℃)で膨張器712に導入される。膨張器は、気相流出物をさらに冷却し、大きい圧力降下が与えられるとそれを著しく冷却する場合がある。膨張器712は結果として、超臨界反応器708に導入される酸化剤を圧縮する圧縮器710を駆動する。この例において、酸化剤は低温であり、加熱されることができるように、回収熱交換器システム704に導入される前に廃棄物供給に導入され得る。液相流出物は膨張器705に導入され、膨張器705は、ポンプ703を駆動して廃棄物供給を加圧するのに使用できる。上記のように、加圧された廃棄物供給は、圧縮された酸化剤と低温で混合され、次に、加熱のために回収熱交換器システム704に導入される。次に、供給ヒータ706は、加圧された廃棄物ストリームおよび酸化剤をさらに過熱することと、反応器の流入液を形成することとに使用され得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、反応器流出物の膨張により生成された作業は、
図8に関連して以下に説明するように、低い(例えば、周囲に近い)温度で、気相流出物を再加熱することなく実行される。熱は、他の方法で提供されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、熱は圧縮器から膨張器に伝達される。他の実施形態において、膨張器に入るストリームは、周囲温度を上回るが反応温度を下回る中温であり得る。熱は、
図11に関連して以下にさらに説明される例を用いて、他のサブシステムまたはプロセスから掃気され得る。
【0067】
図8は、様々な実施形態による廃棄物の超臨界水酸化のためのシステムの別の例を示す。
図3におけるシステムは
図7におけるシステムと同様であるが、モータ/発電機720を含む。ポンプ703、膨張器/圧力交換器705、圧縮器710、膨張器712、およびモータ/発電機720は、単一のシャフトシステムとして示される。このように、システムは、プロセスを開始し、プロセスからエネルギーを取り除くことができるモータ/発電機720に取り付けられた1つの作業伝達シャフトで作動する一連の圧縮器および膨張器を含む。必要に応じて、複数シャフトシステムを含む他の構成が使用され得ることが理解されよう。
【0068】
図8におけるシステムは、圧縮器710と膨張器712との間に伝熱ループを含む。伝熱ループは、いくつかの方法で構成され得る。例えば、ポンプおよび配管システムは、水グリコール混合物などの伝熱流体を圧縮器ブロックから膨張器ブロックに循環させるのに使用され得る。圧縮器および膨張器のブロックは、ヒータ伝達流体がそれぞれのプロセスの近くを循環することを可能にするように設計され得る。酸化剤を圧縮することはガスを加熱し、気相流出物を膨張させることはそれを冷却する。
図8の例において、圧縮器710は熱源であり、膨張器712はヒートシンクである。伝熱流体は、圧縮器ブロックと膨張器ブロックとの間を循環して、ガスを1つの温度に近く維持し得る。したがって、圧力が伝達され電力を生成している間、酸化剤および気相流出物は低温のままである。これはいくつかの理由で有利であり得る。まず、等温膨張および圧縮が最も効率的である。次に、潤滑剤が圧縮器710に使用されることを可能にし得る。そうでない場合に圧縮により生じる非常に高い温度は、潤滑剤の熱分解温度を上回る場合がある。また、圧縮器710と膨張器712との間の伝熱ループの使用は、他の熱回収コンポーネントを不要にさせる。
【0069】
図8の例において、圧縮器710および膨張器712は、圧力回収のために使用されるエリクソンサイクルの一部であり得る。
図9を参照すると、圧縮器710、膨張器712、および伝熱ループが示される。酸化剤(プロセスへのガス供給)が圧縮されている間に、熱が伝達され得る。熱は、1つの温度、例えば、25℃または40℃で、膨張器712に伝達される。(圧力におけるプロセスからの)ガス流出物が膨張すると、それは、膨張が等温になるように、伝達された熱を受け入れる。圧縮および膨張は等温である。圧縮熱は熱源として作用し、その一方、膨張冷却はコールドシンクとして作用する。熱は、そうでない場合は変化する温度で伝達される。
【0070】
熱は、任意のモードによって伝達され得る。例えば、往復するピストンの圧縮器および膨張器が使用されるとき、伝熱流体は、単一の温度に留まるのに十分な流体を用いて、圧縮器ブロックから膨張器ブロックに循環され得る。また、熱はピストンによって直接伝達され得る。いくつかの実施形態において、チャンバブロックに取り付けられた伝熱ロッドフィンを収容するピストンが使用され得る。そのようなピストンの例は、
図14に関連して以下に説明される。この構成は、チャンバ内の伝熱表面を増加させ、膨張または圧縮プロセス中にエリクソンサイクルの効率に近づくのに充分な伝熱を可能にする。
【0071】
以下にさらに説明される
図14は、伝熱を可能にする圧縮器または膨張器の例を提供する。エリクソンサイクルにおいて、熱付加および熱拒絶は等圧であり、圧縮および膨張は等温である。等温プロセスは、圧縮性流体の圧力交換に効率的である。しかしながら、伝熱ループにわたって、いくつかの温度差(ΔT)があり得ることが理解されよう。いくつかの実施形態において、閾値ΔTは、プロセスのエネルギーをニュートラルにするのに十分低い閾値である。これは、供給ストリームにおける有機物の量に依存し得、プロセスに燃料を提供する。すなわち、ΔTは、50℃、40℃、30℃、20℃、10℃、5℃または1℃以下であり得る。この文脈で使用されるように、用語「等温(isothermal)」は、10℃またはそれより低いΔTを有することを指しており、用語「等温に近い(near isothermal)」は、10℃より高く50℃以下であるΔTを有することを指す。
【0072】
圧縮中に生成される(または膨張中に使用される)熱を伝達することは、圧縮器および膨張器での段階の必要を排除または減少させ得る。大きな全体圧力比(例えば、3500psi:周囲)は、より少ない段階で実現され得、またはいくつかの実施形態においては単一の段階で実現され得る。段階の減少に加えて、圧縮性流体の圧力回収は、プロセスにおいていくつかの熱が追加または除去されるので、複雑な回収熱交換器の必要を排除し得る。圧縮器‐膨張器の伝熱と、圧縮器の熱付加と、膨張器の熱除去との比は、特定のシステムに依存する。
【0073】
図10は、様々な実施形態による廃棄物の超臨界水酸化のためのシステムの別の例を示す。
図10のシステムは、
図8のシステムと同様であるが、膨張器712がすべての流体(混合相流出物)を処理する。
図8のシステムにおけるように、圧縮器および膨張器は、圧縮または膨張中に熱が除去されたまたは提供された等温であり得る。混合相流出物は分離され、膨張器712において液相流出物および気相流出物を形成する。これは、部品の数を減らすことを可能にして、また、処理された水が膨張のための熱源として作用することを可能にする。すなわち、混合相流出物に存在する水は熱を提供し、膨張中の冷却を防止することに役立つ。
【0074】
図11は、様々な実施形態による廃棄物の超臨界水酸化のためのシステムの別の例を示す。
図10のシステムは
図8のシステムと同様であるが、膨張器712に供給される超臨界反応器708で生成されたいくつかの熱を掃気するために熱交換器724が使用される。熱交換器は、回収熱交換器システム704の一部であり得る。熱は、熱交換器724を正しく配置することにより、膨張器712に供給されるシステムの他の部分から掃気され得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、液体酸化剤が、過酸化水素を含む例とともに使用され得る。結果として得られる二酸化炭素と過剰な酸素ガスとは、上記のように、様々な実施形態に従って圧力回収のために膨張され得る。例えば、過酸化水素混合物は、必要な酸素を供給するのに使用される。超臨界酸化反応は、混合物を水と二酸化炭素とに変換する。二酸化炭素は分離され、次に、圧力回収のために膨張され得る。
【0076】
上記の例で述べられたように、多くの実施形態において、空気は、酸化剤ストリームとして使用され得る。亜酸化窒素または同様の種が生成されるとき、それらは、エネルギー回収または酸化剤としての再使用のために再取得され得る。上記の例は、CO
2を生成する有機廃棄物の酸化を主に説明する。しかしながら、システムは、他の供給および反応生成物を用いて同様に実装され得ることが理解されよう。さらに、エネルギー回収システムは、亜臨界圧または亜臨界温度での反応を含む非超臨界発熱反応によって実装され得る。すなわち、圧力回収および/または熱回収は、加圧されたおよび/または加熱された状態であるが、必ずしも超臨界とは限らない状態における発熱反応に対して実装され得る。そのようなシステムにおいて、任意の適切な反応器が使用され得る。特定の実施形態において、廃棄物の酸化は、超臨界温度で実行され得るが、亜臨界圧で実行され得る。そのような実施形態において、
図2から
図11に関連して上記に説明されたシステムおよび方法のうちいずれかは、適宜修正され得る。
[熱交換器]
【0077】
本明細書に説明されているシステムおよび方法における様々な実施形態によると、その回収熱交換器システムおよびコンポーネントは熱的にバランスが保たれており、その結果、熱交換器またはシステムの高温側または低温側におけるストリームのピンチ、温度差が比較的に小さくなる。例えば、様々な実施形態によると、15℃、10℃または5℃の最高ピンチが存在する。いくつかの実施形態において、より大きいピンチ値が許容され得る。いくつかの実施形態において、システムの熱的バランスを保つことは、
図2から
図4、および
図6を参照して上記に説明されたように、分離後の気相流出物を加熱することを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、熱交換器は、伝熱表面におけるファウリングを防止または軽減するように構成される。
図12は、高い伝熱率および低いファウリングに使用され得る熱交換器の例を示す。
図12における熱交換器は、一連のディスクとバッフルとを有しており、2つの流体間で熱を交換するように構成され、2つの流体の一方は外側チャンバによって流れ、他方は内側チャンバによって流れる。
図12の例において、外側チャンバは内壁(ラベリングされたライニング)と熱交換面とにより定義される。各々が内壁から延伸する一連のバッフルは、熱交換器の長さに沿って配列される。外側流体は、一連のバッフルと熱交換面とに沿って、熱交換器の一端から他端に運ばれる。バッフルは、環形を含む任意の適切な形状であり得る。内側チャンバは、熱交換器表面により定義される。各々が中心軸に沿って中心に位置づけられる一連のディスクは、熱交換器の長さに沿って配列される。内側流体は、一連のディスクと熱交換面とに沿って、熱交換器の一端から他端に運ばれる。ディスクは、円形を含む任意の適切な形状であり得る。バッフルとディスクとは、全体の流体の流れ方向に対して垂直な面にあるものと示されるが、様々な角度にもある。
図12に見られるように、バッフルの外形寸法は内壁の寸法に等しく、ディスクの外形寸法は内壁の寸法より小さい。バッフルおよび/またはディスクは、回転、振動または変換により移動し、ファウリングを減らすように構成され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、反応物または中和物質が熱交換器に導入され、ファウリングを減らし得る。これは、熱交換器の端部で、または、ディスク、バッフルまたは内壁を通して含む熱交換器に沿った部分において、行われ得る。いくつかの実施形態において、熱平衡流体が同様の方式で導入され得る。いくつかの実施形態において、ディスク、バッフルおよび内壁のうち1または複数は、材料の蓄積を防止または減少させるべく、反応触媒を含んでもよく、または反応触媒であってもよい。
【0080】
触媒作用、混合性の向上、および洗浄のために、追加の材料または構造が熱交換器内に配置され得る。いくつかの実施形態において、材料は犠牲的であり得、消費後に置き換えられ得る。洗浄およびスクレープのコンポーネントが熱交換器に含まれる。内壁、バッフルおよびディスクは、加熱または帯電のために構成され得る。例えば、1または複数のコンポーネントは電極であり得る。
【0081】
図2から
図11に関連して説明されたものなどのいくつかの実施形態において、回収熱交換器システムは、すべてのストリームが高圧で加圧される。そのような実施形態において、熱交換器のハウジングは、鋼などの高圧外囲器を支持するように構成された材料である。すべての流体ストリームが同じ圧力であるので、内壁、ディスク、バッフルおよび伝熱表面を含む内面が高圧材料である必要はない。いくつかの実施形態において、内壁は、除去され、洗浄されまたは置き換えられ得る、除去可能なライニングである。ライニング材料の例は、チタニウムを含み、溶接され得るか、またはそうでない場合はハウジングに取り付けられ得る。いくつかの実施形態において、すべての内部コンポーネントは、ディスクおよびバッフルの形状にされたチタニウムシートを含んでもよく、または、コーティングディスクおよびバッフル構造を含んでもよい。
[反応器]
【0082】
本明細書に説明されている実装において使用される超臨界反応器は、槽型反応器およびパイプ型反応器を含む、高圧、高温、および高ファウリングにおいて、または腐食環境において使用され得る任意の反応器であり得る。本明細書に説明されている実装において使用され得る反応器の概略的な例が、
図13に提供される。反応器は、供給(F)および空気(A)または他の酸化剤ストリームのための入口と、生成物(M)ストリームのための出口とを含む。
【0083】
各々が内壁から延伸する一連のバッフルは、反応器の長さに沿って配列される。バッフルは、環形を含む任意の適切な形状であり得る。各々が中心軸に沿って中心に位置づけられる一連のディスクは、バッフル間に散在する反応器の長さに沿って配列される。ディスクは、円形を含む任意の適切な形状であり得る。
【0084】
バッフルとディスクとは、全体の流体の流れ方向に対して垂直な面にあるものと示されるが、様々な角度にもある。バッフルおよび/またはディスクは、回転、振動または変換により移動し、ファウリングを減らすように構成され得る。バッフルの外形寸法は内壁の寸法に等しく、ディスクの外形寸法は内壁の寸法より小さい。動作において、反応物は、バッフルに沿って径方向内側へ、ディスクに沿っておよびその間で外側へと交互に運ばれる。
【0085】
ディスクおよびバッフルの存在は、反応量を増加させることなく、反応の経路長を増加させる。その効果は、より完全な反応、より良い混合反応、およびより短い滞留時間である。加えて、同じ経路長を供給しつつ、他の種類の反応器より少ない反応器材料が使用される。これは、耐食性材料を使用する場合と、高圧で発生する反応とにおいて特に重要であり得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、反応物または中和物質が、ディスク、バッフルまたは内壁を通して含む反応器に沿った部分において、反応器に導入され得る。いくつかの実施形態において、ディスク、バッフルおよび内壁のうち1または複数は、反応触媒を含んでもよく、または反応触媒であってもよい。触媒作用、混合性の向上、および洗浄のために、追加の材料または構造が反応器内に配置され得る。いくつかの実施形態において、材料は犠牲的であり得、消費後に置き換えられ得る。洗浄およびスクレープのコンポーネントが反応器に含まれる。内壁、バッフルおよびディスクは、加熱または帯電のために構成され得る。例えば、1または複数のコンポーネントは電極であり得る。
【0087】
超臨界反応の場合、ハウジングは高圧外囲器を支持するために構成された材料である。材料の例は鋼を含む。すべての流体ストリームが同じ圧力であるので、内壁、ディスク、バッフルおよび伝熱表面を含む内面が高圧材料である必要はない。いくつかの実施形態において、内壁は、除去され、洗浄されまたは置き換えられ得る、除去可能なライニングである。ライニング材料の例は、チタニウムを含み、溶接され得るか、またはそうでない場合はハウジングに取り付けられ得る。いくつかの実施形態において、すべての内部コンポーネントは、ディスクおよびバッフルの形状にされたチタニウムシートを含んでもよく、または、コーティングディスクおよびバッフル構造を含んでもよい。
[圧力交換器]
【0088】
液体流出物からの圧力は、圧力交換器を使用したいくつかの方法で回収され得る。圧力交換器は、等圧または圧力降下の構成において動作するタービンまたは容積式装置のような遠心装置であり得る。水圧は、シャフトワークに変換され、ポンプまたは発電機に伝達されてよく、または、ピストンもしくはダイレクトインターフェースによって流入される供給に直接適用されてよい。ダイレクトインターフェースおよびピストン構成は非常に効率的で、多くの場合98%を超える効率を有する。しかしながら、流入される廃棄物が液体流出物と接触できないときには、これらの構成は回避されるべきである。
[伝熱を行う圧縮器/膨張器]
【0089】
いくつかの実装において、システムは、圧縮または膨張中の伝熱のために構成された圧縮器および/または膨張器を使用して実装され得る。本明細書に説明されている実装において使用され得る反応器の概略的な例が、
図14に提供される。
図14において、圧縮器1410が示されるが、当該装置はガス膨張器として実装されてもよいことが理解されよう。圧縮器1410は、伝熱ロッドフィン1454を有するピストン1452を含む。動的シール1456は、ピストン1452とガス入口/出口との間の圧縮領域をシールする。圧縮中に、ピストン1452は、伝熱ロッドフィン1454と往復伝熱ロッドフィン1464とが噛み合うように、指示された方向に移動する。熱は、循環する伝熱流体を用いて、指示された方向に伝達される。ガス膨張器として実装されるときは、伝熱の方向およびガス入口/出口の方向は逆である。
[供給例]
【0090】
プロセス、システム、および装置は、水から様々な物質を除去するのに使用され得る。比較的に複雑な廃棄物供給の例は、限定されないが、不凍液、炭、ディーゼル燃料、人糞、大腸菌、家庭雑排水、油圧流体、産業用バイオスラッジ、ケロシン、モータ油、塗料、紙、パラフィン油、医薬廃棄物、推進剤、肥料、製紙工場のスラッジ、汚染された土壌、廃油、および木製繊維を含む。供給から除去され得る無機物質の例は、限定されないが、水酸化アルミニウム、アルミニウム、アンモニア、アンモニウム塩、ホウ酸、臭化物、カルシウム塩、フッ化物、塩酸、フッ化水素酸、塩化鉄、酸化鉄、塩化鉛、硫酸鉛、水酸化リチウム、硫酸リチウム、マグネシウム塩、カリウム塩、シリカ、ナトリウム塩、硫黄、硫酸、二酸化チタン、塩化亜鉛および硫酸亜鉛を含む。供給から除去され得る有機物質の例は、限定されないが、酢酸、ベンゼン、セルロース、クロロホルム、シアン化物、シクロヘキサン、DDT、デキストロース、ジクロロエチレン、ジニトロトルエン、エタノール、酢酸エチル、イソオクタン、メルカプタン、ニトロベンゼン、オクタクロロスチレン、フェノール、ポリ塩化ビフェニール、スクロース、界面活性剤、トリフルオロ酢酸および尿素を含む。
【0091】
当業者であれば、
図2から
図14に提供された例の様々なコンポーネントおよびサブシステムがまとめてまたは他のシステムとともに使用され得ることを理解するであろう。本発明は図示された実施形態に関連して具体的に説明されているが、本開示に基づいて様々な変更、修正および適合が行われ得、それらは本発明の範囲内であることを意図していることが理解されよう。本発明は開示された実施形態と関連して説明されているが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、むしろ特許請求の範囲の範囲内に含まれる様々な修正および同等の構成を網羅することを意図していることが理解されるであろう。