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  • 特許-塗膜除去装置及び塗膜除去方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】塗膜除去装置及び塗膜除去方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 1/00 20060101AFI20240725BHJP
   B24C 9/00 20060101ALI20240725BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20240725BHJP
   B24C 7/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B24C1/00 C
B24C9/00 M
B24C5/02 A
B24C9/00 G
B24C7/00 Z
B24C9/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023191616
(22)【出願日】2023-11-09
【審査請求日】2023-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523425256
【氏名又は名称】ヘイセイ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523425957
【氏名又は名称】株式会社トリニティ
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】前田 正憲
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-151568(JP,A)
【文献】特開平05-111873(JP,A)
【文献】特開2005-271174(JP,A)
【文献】特開2006-326819(JP,A)
【文献】特開2012-135852(JP,A)
【文献】特開平04-283075(JP,A)
【文献】実開平07-020253(JP,U)
【文献】特開2005-052922(JP,A)
【文献】特開2012-016804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00 - 11/00
E04G 23/02
B08B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜を除去する除去対象物に対して設置され、負圧状態で除去作業を行う作業空間を形成する隔離ボックスであって、前記除去対象物に設置する設置面側が開口し、前記設置面と対向する前面側が透明な樹脂製シートで形成され、前記前面側には作業者が前記作業空間内で作業を行うためのグローブが設置される隔離ボックスと、
前記隔離ボックス内において、前記除去対象物の塗膜を除去するための研磨材を、圧縮空気を用いて噴射するブラストガンと、
圧縮空気で駆動され、前記隔離ボックス内の噴射された研磨材及び前記除去対象物から除去された塗膜を吸引してタンクに回収するバキュームクリーナと、
前記ブラストガンと前記バキュームクリーナに供給する圧縮空気を作るコンプレッサーと、を備える塗膜除去装置であって、
前記ブラストガンにおける圧縮空気の噴射により発生する負圧で研磨材を前記バキュームクリーナの前記タンクから吸引することにより、研磨材を前記ブラストガンに供給し、
前記隔離ボックスの下面は、樹脂製のパネルで形成され、研磨材を回収する研磨材回収口を有し、前記下面は前記研磨材回収口に向かって下方に傾斜し、
それぞれバルブで開閉可能な第1の出口と第2の出口を有し、前記研磨材回収口に接続される分岐部を備え、前記第1の出口は前記バキュームクリーナに接続され、前記第2の出口は研磨材を回収する回収容器が取り付けられることを特徴とする塗膜除去装置。
【請求項2】
記隔離ボックスが、樹脂製シートで形成される接続部により、前記除去対象物と気密状態で接続されることを特徴とする請求項1に記載の塗膜除去装置。
【請求項3】
記バキュームクリーナは、前記タンク内に開口する研磨材送出口を有し、前記研磨材送出口から前記ブラストガンに研磨材が供給されることを特徴とする請求項1に記載の塗膜除去装置。
【請求項4】
塗膜を除去する除去対象物に対して設置され、負圧状態で除去作業を行う作業空間を形成する隔離ボックスであって、前記除去対象物に設置する設置面側が開口し、前記設置面と対向する前面側が透明な樹脂製シートで形成され、前記前面側には作業者が前記作業空間内で作業を行うためのグローブが設置される隔離ボックスと、
前記隔離ボックス内において、前記除去対象物の塗膜を除去するための研磨材を、圧縮空気を用いて噴射するブラストガンと、
圧縮空気で駆動され、前記隔離ボックス内の噴射された研磨材及び前記除去対象物から除去された塗膜を吸引してタンクに回収するバキュームクリーナと、
前記ブラストガンと前記バキュームクリーナに供給する圧縮空気を作るコンプレッサーと、を備える塗膜除去装置を用いて行う塗膜除去方法であって、
前記ブラストガンにおける圧縮空気の噴射により発生する負圧で研磨材を前記バキュームクリーナの前記タンクから吸引することにより、研磨材を前記ブラストガンに供給し、研磨剤を前記ブラストガンと前記バキュームクリーナとの間で循環させて塗膜除去を行い、
前記隔離ボックスの下面は、樹脂製のパネルで形成され、研磨材を回収する研磨材回収口を有し、前記下面は前記研磨材回収口に向かって下方に傾斜しており、前記ブラストガンから噴射された研磨剤は前記研磨材回収口から前記バキュームクリーナに回収され、
前記塗膜除去装置は、それぞれバルブで開閉可能な第1の出口と第2の出口を有し前記研磨材回収口に接続される分岐部を備え、前記第1の出口は前記バキュームクリーナに接続され、前記第2の出口は研磨材を回収する回収容器が取り付けられ、除去作業が終了した場合に前記第2の出口から前記回収容器に使用済みの研磨材を回収することを特徴とする塗膜除去方法。
【請求項5】
記隔離ボックスが、樹脂製シートで形成される接続部により、前記除去対象物と気密
状態で接続されることを特徴とする請求項4に記載の塗膜除去方法。
【請求項6】
記バキュームクリーナは、前記タンク内に開口する研磨材送出口を有し、前記研磨材送出口から前記ブラストガンに研磨材が供給されることを特徴とする請求項4に記載の塗膜除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜を除去する塗膜除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラスト技術を用いた塗膜の除去処理が行われている。ブラスト作業により塗膜を除去する場合、除去した塗膜の粉塵や研磨材が飛散するため、飛散を防止する処理が必要である。また、作業者は防護服を装着する必要があった。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、設置面を覆うように設けられ、底面が開口した作業ボックスと、作業ボックスの底部に設けられ設置面と密着する密着部材と、作業ボックス内でブラストを行うためのノズルを有するブラスト装置などを備えたブラスト作業治具が開示されている。特許文献1の装置によれば、作業ボックス内でブラスト作業を行えるので、粉塵や研磨材の飛散を防止でき、作業者も防護服等を装着することなく作業できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-111873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置の場合には、作業ボックスを設置面に密着させるための専用の密着部材が必要であるため、予め密着部材を用意しておく必要があり、任意の様々な異なる形状の作業面に対応することは難しい。また、基本的には平滑な面以外には密着部材を取り付けることができないため、複雑な形状の作業面に適用することは難しい。
【0006】
また、特許文献1の装置では、粉塵や研磨材を吸引ホース10で吸引し、エアーサイクロン16やHEPAフィルタ17により回収するとしている。しかし、塗膜にポリ塩化ビフェニル(PCB)や、鉛やクロム等の重金属などの有害物質が含まれる場合、より確実に除去した塗膜の飛散を防止しつつ回収する必要があるが、特許文献1の装置、方法では粉塵が飛散する可能性がある。具体的には、作業完了後にエアーサイクロン16で回収された粉塵を飛散させずに廃棄処理まで完了できる必要があるが、エアーサイクロン16において粉塵を回収した回収容器を取り外す際に、粉塵が周囲に飛散する可能性がある。そのため、塗膜に有害物質が含まれる場合には、特許文献1の装置では飛散防止の機能が不十分である。
【0007】
そこで本願は、様々な形状の除去対象物の塗膜除去が可能であり、有害物質を含むような塗膜を除去する場合でも飛散を防止して除去可能な塗膜除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本願の実施の形態の要旨は以下の通りである。
【0009】
(1)塗膜を除去する除去対象物に対して設置され、負圧状態で除去作業を行う作業空間を形成する隔離ボックスであって、前記除去対象物に設置する設置面側が開口し、前記設置面と対向する前面側が透明な樹脂製シートで形成され、前記前面側には作業者が前記作業空間内で作業を行うためのグローブが設置される隔離ボックスと、
前記隔離ボックス内において、前記除去対象物の塗膜を除去するための研磨材を、圧縮空気を用いて噴射するブラストガンと、
圧縮空気で駆動され、前記隔離ボックス内の噴射された研磨材及び前記除去対象物から除去された塗膜を吸引してタンクに回収するバキュームクリーナと、
前記ブラストガンと前記バキュームクリーナに供給する圧縮空気を作るコンプレッサーと、を備える塗膜除去装置であって、
前記ブラストガンにおける圧縮空気の噴射により発生する負圧で研磨材を前記バキュームクリーナの前記タンクから吸引することにより、研磨材を前記ブラストガンに供給することを特徴とする塗膜除去装置。
【0010】
(2)前記隔離ボックスが、樹脂製シートで形成される接続部により、前記除去対象物と気密状態で接続されることを特徴とする上記(1)に記載の塗膜除去装置。
【0011】
(3) 前記隔離ボックスに連結される研磨材回収ホースと吸引ホースを備え、前記バキュームクリーナは前記研磨材回収ホースと前記吸引ホースから吸引することを特徴とする請求項1に記載の塗膜除去装置。
【0012】
(4) 前記隔離ボックスの下面は、樹脂製のパネルで形成され、研磨材を回収する研磨材回収口を有し、前記下面は前記研磨材回収口に向かって下方に傾斜していることを特徴とする上記(1)に記載の塗膜除去装置。
【0013】
(5) それぞれバルブで開閉可能な第1の出口と第2の出口を有し、前記研磨材回収口に接続される分岐部を備え、
前記第1の出口は前記バキュームクリーナに接続され、前記第2の出口は研磨材を回収する回収容器が取り付けられることを特徴とする上記(4)に記載の塗膜除去装置。
【0014】
(6) 前記バキュームクリーナは、前記タンク内に開口する研磨材送出口を有し、前記研磨材送出口から前記ブラストガンに研磨材が供給されることを特徴とする上記(1)に記載の塗膜除去装置。
【0015】
(7) 塗膜を除去する除去対象物に対して設置され、負圧状態で除去作業を行う作業空間を形成する隔離ボックスであって、前記除去対象物に設置する設置面側が開口し、前記設置面と対向する前面側が透明な樹脂製シートで形成され、前記前面側には作業者が前記作業空間内で作業を行うためのグローブが設置される隔離ボックスと、
前記隔離ボックス内において、前記除去対象物の塗膜を除去するための研磨材を、圧縮空気を用いて噴射するブラストガンと、
圧縮空気で駆動され、前記隔離ボックス内の噴射された研磨材及び前記除去対象物から除去された塗膜を吸引してタンクに回収するバキュームクリーナと、
前記ブラストガンと前記バキュームクリーナに供給する圧縮空気を作るコンプレッサーと、を備える塗膜除去装置を用いて行う塗膜除去方法であって、
前記ブラストガンにおける圧縮空気の噴射により発生する負圧で研磨材を前記バキュームクリーナの前記タンクから吸引することにより、研磨材を前記ブラストガンに供給し、研磨剤を前記ブラストガンと前記バキュームクリーナとの間で循環させて塗膜除去を行うことを特徴とする塗膜除去方法。
【0016】
(8) 前記隔離ボックスが、樹脂製シートで形成される接続部により、前記除去対象物と気密状態で接続されることを特徴とする上記(7)に記載の塗膜除去方法。
【0017】
(9) 前記隔離ボックスに連結される研磨材回収ホースと吸引ホースを備え、前記バキュームクリーナは前記研磨材回収ホースと前記吸引ホースから吸引することを特徴とする上記(7)に記載の塗膜除去方法。
【0018】
(10) 前記隔離ボックスの下面は、樹脂製のパネルで形成され、研磨材を回収する研磨材回収口を有し、前記下面は前記研磨材回収口に向かって下方に傾斜しており、前記ブラストガンから噴射された研磨剤は前記研磨材回収口から前記バキュームクリーナに回収されることを特徴とする上記(7)に記載の塗膜除去方法。
【0019】
(11) 前記塗膜除去装置は、それぞれバルブで開閉可能な第1の出口と第2の出口を有し、前記研磨材回収口に接続される分岐部を備え、前記第1の出口は前記バキュームクリーナに接続され、前記第2の出口は研磨材を回収する回収容器が取り付けられ、除去作業が終了した場合に前記第2の出口から前記回収容器に使用済みの研磨材を回収することを特徴とする上記(10)に記載の塗膜除去方法。
【0020】
(12) 前記バキュームクリーナは、前記タンク内に開口する研磨材送出口を有し、前記研磨材送出口から前記ブラストガンに研磨材が供給されることを特徴とする上記(7)に記載の塗膜除去方法。
【発明の効果】
【0021】
実施形態の一態様によれば、様々な形状の除去対象物の塗膜除去が可能であり、有害物質を含むような塗膜を除去する場合でも飛散を防止して除去可能な塗膜除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の塗膜除去装置の概略図である。
図2】実施形態の隔離ボックスの構成を示す斜視図である。
図3】実施形態の隔離ボックスの構成を示す側面図である。
図4】実施形態のバキュームクリーナの構造を示す構成図である。
図5】実施形態の塗膜除去方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本実施形態の塗膜除去装置を説明する。図1は、本実施形態の塗膜除去装置1の構成を示す概略図である。本実施形態の塗膜除去装置1は、塗膜除去を行う作業面の形状に応じて隔離された作業空間を形成し、その作業空間内を負圧に保って除去した粉塵の飛散を確実に防止し、作業後においても回収した研磨材や粉塵等が外部に飛散、流出することなく安全に作業を完了することができるものである。
【0024】
本実施形態の塗膜除去装置1は、隔離ボックス2と、ブラストガン4と、グローブ6と、バキュームクリーナ8と、コンプレッサー10と、エアタンク12と、分岐管14、16と、バルブ18、20などを備える。また、これらの各部は、各種ホース22~29によって接続されている。塗膜除去装置1は、隔離ボックス2内で、作業者がグローブ6によってブラストガン4を握り、研磨材を塗膜除去対象物100に対して噴射して、塗膜除去対象物100の塗膜を除去することができる装置である。
【0025】
本実施形態の図1などにおいて、塗膜除去対象物100は、一例として断面形状がI型(又はH型)の鋼製の橋げたを示しており、塗膜除去装置1を用いて橋げたの側面の塗膜を除去する場合について説明する。ただし、塗膜除去対象物は橋げたに限定されず、塗膜が形成された橋梁の他の部分であってもよい。また、橋梁以外にも、タンク(石油貯蔵タンク、ガスタンクなど)、水門、船舶、洞門、その他の様々な設備等の塗膜をブラスト処理で除去するために本実施形態の塗膜除去装置1を用いることができる。
【0026】
そして後述するように、塗膜除去対象物100と塗膜除去装置1の隔離ボックス2とを隙間なく設置して密閉された作業空間内で塗膜を除去することができる。そのため様々な形状、構造の対象物に対して、塗膜に含まれる有害物質を外部に飛散させることなく塗膜除去を行うことができる。例えば、ポリ塩化ビフェニル(PCB)や、鉛、クロム等の重金属などの有害物質が含まれるような塗膜の除去を行う場合に有用である。
【0027】
塗膜除去装置1の各部について説明する。まず隔離ボックス2は、ブラストを行う作業空間を形成するための作業ボックスである。隔離ボックス2の構成について、隔離ボックス2の斜視図を図2に示し、側面図を図3に示す。隔離ボックス2は、フレーム50と各面(フレーム以外の部分)を構成する透明なシートやパネルによって構成される。透明なシートやパネルとすることで、隔離ボックス2内を確認しながら除去作業を行うことができる。隔離ボックス2の塗膜除去対象物100に設置される側が設置面側であり、設置面に対向しグローブ6用のグローブポート6aが配置される側が、作業者が立って作業を行う前面側である。
【0028】
フレーム50は、ほぼ直方体状の形状であるが、本実施形態では前面側の上部は作業者が作業しやすいように傾斜フレーム50fによって傾斜した形状となっている。但しこのような形状に限定されず、隔離ボックス2内でブラストガン4を操作できる空間を確保できる箱形形状であればよい。フレーム50は、上端の上端フレーム50aと、中段の中段フレーム50cと、下端の下端フレーム50dと、前面バー50bと、前面柱50eと、傾斜フレーム50fと、設置面柱50gなどで構成される。隔離ボックス2の設置面(背面)側を除き、上端フレーム50aから中段フレーム50cまでの範囲の各面(上面、前面、両側面、下面)が、透明なシート(あるいはフィルム)又はパネルで塞がれている。換言すれば、隔離ボックス2は設置面側だけが開口している。なお、本実施形態では隔離空間より下までフレームが存在する例を示しているが、隔離空間を形成できれば良く、中段フレーム50cより下側のフレームを省略してもよい。また、図3に示すように、隔離ボックス2を設置する高さに応じて、フレーム50の下に脚部を配置したり、移動しやすくするために脚部に車輪を設置したりしてもよい。
【0029】
このフレーム50によって形成される各面部分のうち、少なくともグローブ6(グローブポート6a)が配置される前面52aは、透明なシートにより塞がれる。本実施形態では、図2において破線で囲んだ灰色の塗りつぶし範囲が前面52aである。本実施形態では、前面側の前面バー50bから、中段フレーム50cまでの範囲の前面52aが透明なシートによって塞がれる。
【0030】
前面52a等に使用するシートは、透明な樹脂製のシートやフィルムであればよい。そして、隔離ボックス2の設置時に、任意の形状にカットして使用できるものであればよい。樹脂製のシートとしては例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンや、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのシートを用いることができる。シートは、養生テープなどの粘着テープを用いてフレーム50等に取り付けることができる。シートを取り付ける際には、隔離ボックス2内の気密性が保たれるように、フレーム50などとの間に隙間が形成されないようにする。また、使用するシートは、隔離ボックス2内の負圧により引っ張られても破損せず、グローブ6で作業をした場合にも破損しない程度の強度を有するシートがよい。また、ブラストして跳ね返った研磨材が当たっても破損しないような強度を有するシートがよい。シートの厚みは特に限定されないが、0.15mm以上が好ましい。
【0031】
前面52aをシートで形成することで、作業後の撤去作業の際にグローブ6部分だけを取り外すよりも、シートとシートに取り付けられているグローブとをまとめて取り外す方が、撤去作業を迅速に行うことができ、作業効率がよい。また、前面52aが柔軟性のあるシートであることにより、作業の自由度が高く、ブラスト作業を行いやすい。具体的には、前面が樹脂パネルの場合にはパネルに体が当たるので腕の途中までしか腕を差し込むことができない。一方、前面52aがシートである場合は、シートが変形するので腕を奥まで差し込んで作業することが可能であり、ブラスト作業が容易である。これにより除去対象物100が複雑な形状でもブラストガン4を操作して塗膜除去を確実に行うことができる。また、作業が容易であるので迅速に作業を行うことができる。
【0032】
前面バー50bより上方の上面52b及び両側面52c(図2において、一点鎖線で囲んだ斜線ハッチングの範囲)は、前面52aと同様の透明なシートで形成されてもよいし、透明な樹脂パネルで形成されてもよい。なお、本実施形態の隔離ボックス2は上面52bが一部傾斜面を含む構造であるが、前面バー50bが上端フレーム50aと同じ上端の位置であってもよい。その場合、上面52bは傾斜面を含まず、前面52aの傾斜面が上端まで続く形状である。
【0033】
中段フレーム50cに形成される下面52dは本実施形態では樹脂パネルで形成されることが好ましい。下面52dは必ずしも透明でなくてもよいが、作業が行いやすいので透明であるのが好ましい。下面52dには研磨材回収口60が形成され、接続される分岐部30、研磨材回収ホース27を介してバキュームクリーナ8に研磨材や粉塵が吸引されて回収される。下面52dは、中段フレーム50cより下方に形成される研磨材回収口60に向かって下方に傾斜する面で形成される。本実施形態では一例として4つの三角形の面を組みわせた傾斜面を示す。下方への傾斜面により、噴射した研磨材が研磨材回収口60に流れやすくなり、研磨材の回収が容易になる。
【0034】
また、下面52dが樹脂パネルで形成されると、バキュームクリーナ8による吸引で隔離ボックス2内が負圧になっても内側に変形しにくいので、上述の傾斜が維持され、研磨材の回収が容易な状態を保つことができ、より円滑に研磨材を回収できる。
【0035】
なお、バキュームクリーナ8によって研磨材が吸引されるため、下面52dは必ずしも傾斜していなくてもよく、平坦であってもよい。また、下面52dを前面52aと同様の透明なシートで形成してもよい。下面52dをシートで形成すると負圧でシートが変形するが、変形してもバキュームクリーナ8による吸引力で研磨材を回収可能である。
【0036】
前面52a以外の面に透明な樹脂パネルを用いる場合、その樹脂としては、アクリル樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどを用いることができる。
【0037】
そして、隔離ボックス2と塗膜除去対象物100との間を、上述のシートで塞ぎ、隔離ボックス2と塗膜除去対象物100とで形成される作業空間が密閉空間になるようにする。図3に示すように、塗膜除去対象物100がI型鋼の橋げたの側面の場合は、隔離ボックス2に対向する鋼板(ウェブ)部分とその上下にある鋼板(フランジ)部分とで形成される隙間が左右に生じる。そのため、その隙間を埋めて隔離ボックス2と接続する接続部52eのシートが設置される。接続部52eは、図3において破線で囲んだ灰色の塗りつぶし範囲で示している。接続部52eは、隔離ボックス2の両側面52cの位置で塗膜除去対象物100との隙間を塞ぐようにシートを貼り付けて形成される。そして、シートの隔離ボックス2側の端部が、フレーム50などに対して養生テープで固定される。接続部52eは、側面側だけでなく、塗膜除去対象物100の上部との接続箇所や、下部との接続箇所にも形成される。図3の例では、I型鋼の下のフランジと、隔離ボックス2の下面52dとの間には段差があって隙間が生じるため、フランジ側から下面52dまでを気密状態で塞ぐようにシートを設置する。
【0038】
接続部52eのシートは、1枚のシートを筒状にして、塗膜除去対象物100と隔離ボックス2との接続部に生じる全ての隙間を1枚で塞いでもよい。また、側面用、上側用、下側用など、別々のシートを用意してシート同士をつなげて全ての隙間を塞いでもよい。接続部52eを形成するシートの取り付けには、上述のように養生テープなどの粘着テープを用いることができる。このように接続部52eで隔離ボックス2が接続されることにより、塗膜除去対象物100との間に密閉された隔離空間を形成することができる。
【0039】
隔離ボックス2の前面52aには、左右のグローブ6(グローブポート6a)の他に、エアホース接続口54や、研磨材供給ホース接続口56が配置される。なお、図1においては、わかりやすくするためにエアホース接続口54や研磨材供給ホース接続口56をグローブ6の位置と上下にずらして示している。エアホース接続口54や研磨材供給ホース接続口56は、前面52aの適宜の位置に配置することができる。エアホース接続口54にはエアホース24が接続され、エアタンク12から圧縮空気が供給される。研磨材供給ホース接続口56には研磨材供給ホース26が接続され、バキュームクリーナ8から研磨材が搬送されてブラストガン4まで供給される。また、必要に応じて作業終了後に隔離ボックス2内を洗浄する水を供給するためのホースを通す水供給ホース接続口を、前面52a等の適宜の位置に配置することができる。
【0040】
隔離ボックス2の片側の側面52cの上方には、吸気口58が形成されている。吸気口58は吸引ホース28が接続され、分岐管16等を介して接続されるバキュームクリーナ8によって主に空気が吸引される。粉塵が吸気口58から吸引されてもよい。研磨材回収口60だけでなく吸気口58からも吸引されることで、研磨材回収口60に研磨材等が流れて空気の吸引量が低下しても吸気口58から吸引されるので、隔離ボックス2内を確実に負圧に維持することができる。
【0041】
この吸気口58及び研磨材回収口60からバキュームクリーナ8によって吸引される空気量は、隔離ボックス2内が負圧になるように調整される。すなわち、ブラストガン4から隔離ボックス2内に供給される空気の量よりもバキュームクリーナ8によって吸引される空気の量の方が多くなるように調整される。隔離ボックス2内の気圧の調整は、コンプレッサー10やエアタンク12の圧力調整弁や、ホースの途中に適宜配置されるバルブ18、20などによって調整することができる。
【0042】
隔離ボックス2の少なくとも前面がシートで塞がれることにより、後述する作業の際に隔離ボックス2内が負圧になっているか否かを一目で確認することができる。すなわち、塗膜除去作業中は粉塵などが飛散しないようにブラストガン4から供給される空気よりもバキュームクリーナ8によって吸引される空気を多くして、内部を負圧にする。この際に、隔離ボックス2の少なくとも前面52aがシートであることにより、負圧であればシート部分が内側に引っ張られるように変形した状態となる。そのため、隔離ボックス2内が負圧であることを目視で確認でき、安全に除去作業を行うことができる。
【0043】
ブラストガン4は、塗膜を除去する研磨材を噴射する器具である。ブラストガン4は、ガン形状のものでもよいし、ノズル形状のものでもよい。本実施形態のブラストガン4は、エアタンク12からエアホース24を介して供給される圧縮空気の流れによってガン内に負圧を発生させ、その負圧により研磨材を吸引しつつ、圧縮空気によって研磨材を噴射することでブラスト処理を行う。研磨材は、研磨材供給ホース26を介して接続されるバキュームクリーナ8から吸い込んで供給される。なお、ブラストガン4とバキュームクリーナ8は、バキュームクリーナ8から研磨材を吸引してブラストガン4に供給できれば、必ずしも研磨材供給ホース26で直接接続されていなくてもよく、バルブなどが途中に配置されてもよい。
【0044】
そして、本実施形態のブラストガン4では、ブラストガン4とバキュームクリーナ8との間で研磨材を循環させてブラスト処理を行う。すなわち、ブラストガン4から噴射された研磨材と除去された塗膜の粉塵は、バキュームクリーナ8により、隔離ボックス2下方の研磨材回収口60に吸い込まれる。そして、分岐部30、研磨材回収ホース27を介してバキュームクリーナ8に回収されると、再びバキュームクリーナ8から研磨材が吸い出されて、研磨材供給ホース26を介してブラストガン4に供給されるという循環を繰り返して、ブラスト処理を行うことができる。つまり、ブラストガンから噴射された研磨材は、研磨材回収口60、研磨材回収ホース27、バキュームクリーナ8、研磨材供給ホース26、ブラストガン4の順で本装置の循環経路を循環して、連続してブラスト処理に利用される。
【0045】
研磨材を循環させてブラスト処理を行うことにより、少ない研磨材の量でブラスト処理を行うことができる。研磨材の使用量を少なくできることで、使用済みの研磨材の量を減らすことができ、結果的に作業後の汚染された廃棄物の量を減らすことができる。また、廃棄物の量が少ないことで、廃棄処理の扱いが容易になり、粉塵の飛散をより確実に防ぐことができる。
【0046】
グローブ6は、隔離ボックス2内でブラスト処理などの作業を行うために用いられる。作業者はグローブ6に両手を通してブラストガン4を保持し、隔離ボックス2内でブラストガン4の位置や向きを自由に変えてブラスト処理を行うことができる。グローブ6は、隔離ボックス2の前面52aのシートに設けられるグローブポート6aに取り付けられる。グローブ6は、隔離ボックス2の密閉状態を維持できる構造であって作業性が確保できればどのような材質、構造であってもよい。例えば、グローブ6全体がゴムで形成されてもよいし、腕部分は樹脂シートで形成され手の部分だけゴム製の手袋で形成されてもよい。
【0047】
バキュームクリーナ8は、隔離ボックス2から噴射された研磨材や除去された塗膜を吸引回収するための装置である。バキュームクリーナ8の構造を図4に示す。図4(a)がバキュームクリーナの構成を示す概略図であり、図4(b)は(a)中に示すA-A位置での断面概略図である。バキュームクリーナ8は、吸引物を回収して溜めるタンク8aと、蓋8bと、圧縮エア供給口8cと、エア排出口8dと、吸引ホース接続口8eと、フロート8fなどを有する。本実施形態のバキュームクリーナ8はさらに研磨材送出口8gを有する。研磨材送出口8gは、タンク8aの下方に形成されタンク8a内に開口しており、研磨材供給ホース26が接続され、回収された研磨材がタンク8a内からブラストガン4に送出される。
【0048】
本実施形態のバキュームクリーナ8は、エア駆動式のバキュームクリーナである。コンプレッサー10及びエアタンク12から、エアホース23、25を介して圧縮エア供給口8cから供給される圧縮空気がエア排出口8dから排出されることによって、タンク内を負圧にして、それを利用して研磨材及び粉塵を隔離ボックス2から吸引することができる。バキュームクリーナ8をエア駆動式とすることにより、バキュームクリーナ8の電源が不要であり、1つのコンプレッサー10及びエアタンク12によって、ブラスト処理と塗膜や研磨材の回収の両方を行うことができる。
【0049】
図4に示すように、吸引された研磨材や除去された塗膜の粉塵は、吸引ホース29を通って吸引ホース接続口8eからタンク8a内に流入する。そして、ブラストガン4からの吸引力によって、研磨材は研磨材送出口8gに吸い込まれ、再びブラストガン4に送出されてブラスト処理に使用される。タンク8a内とエア排出口8dの間には、HEPAフィルタなどのフィルタが配置され、粉塵は外部に流出せず空気だけが排出される。
【0050】
コンプレッサー10及びエアタンク12は、圧縮空気を形成する装置である。コンプレッサー10によって圧縮空気を作り、エアタンク12はその圧縮空気を貯蔵し、随時ブラストガン4やバキュームクリーナ8に圧縮空気を供給する。コンプレッサー10及びエアタンク12によって作られる圧縮空気は、ブラストガン4に供給され、研磨材の吸引及び吹き付けに用いられる。また、圧縮空気はバキュームクリーナ8に供給され、上述の通りバキュームクリーナ8を駆動するために用いられる。エアタンク12及びコンプレッサー10は圧力調整弁を有し、供給する圧縮空気の圧力を調整できることが好ましい。
【0051】
コンプレッサー10の種類は特に限定されず、エンジン式やモーター式の任意の圧縮方式のコンプレッサーを使用することができる。また、コンプレッサー10のみで適切に圧縮空気を供給できる場合には、エアタンク12を省略してもよい。
【0052】
分岐管14は、エアタンク12から供給された圧縮空気を、ブラストガン4に供給する経路と、バキュームクリーナ8に供給する経路とに分岐する。なお、エアタンク12から直接2つのホースに圧縮空気を供給できる場合は、分岐管14を省略してもよい。分岐管16は、隔離ボックス2から吸引を行う研磨材回収ホース27と吸引ホース28を合流させる分岐であり、その下流側で吸引ホース29を介してバキュームクリーナ8に接続される。
【0053】
バルブ18はエアタンク12とブラストガン4の間に配置され、エアタンク12から供給される圧縮空気の供給量を調整したり供給を停止させたりするために用いられる。バルブ20はエアタンク12とバキュームクリーナ8の間に配置され、同じくエアタンク12から供給される圧縮空気の供給量を調整したり、供給を停止させたりするために用いられる。
【0054】
エアホース22~25は、コンプレッサー10からの圧縮空気を供給するためのホースである。エアホース22は、コンプレッサー10とエアタンク12、エアホース23はエアタンク12と分岐管14、エアホース24は分岐管14とブラストガン4、エアホース25は分岐管14とバキュームクリーナ8と、をそれぞれ接続する。
【0055】
研磨材供給ホース26は、バキュームクリーナ8からブラストガン4に研磨材を供給するためのホースである。研磨材供給ホース26は、隔離ボックス2の研磨材供給ホース接続口56に接続される。研磨材回収ホース27は、噴射された研磨材を研磨材回収口60からバキュームクリーナ8に回収するためのホースであり、本実施形態では分岐部30のバルブ31側の出口に接続される。吸引ホース28は、隔離ボックス2の吸気口58に接続され、バキュームクリーナ8の吸引力により、隔離ボックス2内の空気を吸引するために用いられる。吸引ホース29は、分岐管16により研磨材回収ホース27と吸引ホース28と接続され、バキュームクリーナ8に接続されるホースである。なお、本実施形態で用いる各ホース22~29は、必ずしも1本のホースで形成される必要はなく、複数本のホースをつなげて形成されてもよい。
【0056】
分岐部30は、研磨材回収口60に接続される分岐であり、研磨材回収ホース27が取り付けられてバキュームクリーナ8と接続される第1の出口と、作業完了後に研磨材を回収する回収容器である回収袋33が取り付けられる第2の出口とを有する。それぞれの出口にはバルブ31、32が配置され、開閉できる。ブラスト作業中において研磨材を循環させる場合は第1の出口のバルブ31を開き、第2の出口のバルブ32を閉じる。一方、回収袋33に研磨材を回収する場合は、バルブ31を閉じ、バルブ32を開いて回収作業を行う。回収袋33に使用済みの研磨材及び粉塵が回収されることで、作業終了時に粉塵が外部に飛散することなく研磨材を回収することができる。バルブ32の第2の出口は、隔離ボックス2内を水で洗浄する場合にタンクなどを取り付けて排水に利用することもできる。
【0057】
塗膜除去装置1はさらに差圧計21を備えることができる。差圧計21は、隔離ボックス2内が負圧になっていることを確認するために用いる。差圧計21は2つの測定ポートを備える公知の差圧計(マノメータ)を用いることができる。例えば、差圧計21を隔離ボックス2の外に配置する場合は、負圧側の測定ポートに接続したチューブを隔離ボックス2内に設置し、正圧側の測定ポートでボックス外の気圧(大気圧)を測定することで、ボックス内外の差圧を測定できる。以上が本実施形態の塗膜除去装置1の構成である。
【0058】
次に、本実施形態の塗膜除去装置1を用いて行う塗膜除去方法について説明する。図5は、塗膜除去方法の各工程を示すフローチャートである。まず、隔離ボックス2の設置を行う(ステップ101)。密閉状態で隔離ボックス2を設置できれば設置手順は限定されないが、例えば、前面52aにシートが貼られていない状態の隔離ボックス2の設置面側(背面側)を塗膜除去対象物100に対して密着させて配置する。そして、接続部52eのシートを設置して、塗膜除去対象物100と隔離ボックス2の間に隙間が生じないように接続する。
【0059】
そして両側のグローブポート6aにもグローブ6が装着された状態で前面52aのシートをフレーム50に設置する。研磨材供給ホース接続口56やエアホース接続口54において、ホースと接続口とを養生テープ等により気密状態で固定する。また、研磨材供給ホース接続口56に通された研磨材供給ホース26と、エアホース接続口54に通されたエアホース24をブラストガン4と接続する。
【0060】
シートの取り付けには、上述の通り養生テープなどの粘着テープを用いる。なお、前面52aや接続部52e以外の面もシートで構成する場合は、同様にシートを貼り付けてもよいし、予めその面に貼り付けておいてもよい。
【0061】
次に、その他の機器を設置する(ステップ102)。具体的には、コンプレッサー10やエアタンク12、バキュームクリーナ8などを各種ホースで接続する。また、隔離ボックス2と、バキュームクリーナ8やエアタンク12などを各ホースで接続する。また、分岐部30のバルブ31を開き、バルブ32を閉じた状態にする。なお、ステップ101と102はこの順番に限られず、並行して行ってもよいし逆の順番でもよい。
【0062】
以上の準備工程が完了したら、ブラスト処理を行う(ステップ103)。具体的には、まずバキュームクリーナ8のタンク8aに研磨材を投入する。そして、コンプレッサー10を駆動させ、バルブ18、20等を開けて、圧縮空気をブラストガン4及びバキュームクリーナ8に供給する。そして、作業者がグローブ6でブラストガン4を操作して、研磨材をバキュームクリーナ8から供給してブラストガン4から噴射させる。なお、隔離ボックス2を設置して最初にブラスト処理を始める際には、隔離ボックス2内において、下面52dあるいは容器などに研磨材を溜めておき、そこからブラストガン4で研磨材を直接吸引して噴射してもよい。研磨材を吸引し終わったら、研磨材供給ホース26の先端をブラストガン4に接続し、上述のように研磨材を循環させて連続してブラストを行うことができる。
【0063】
本実施形態の塗膜除去装置1では、隔離ボックス2内においてグローブ6でブラストガン4を保持し、自由に位置や向きを変えることができる。そのため、例えば図1図3に示すように橋げたの添接部におけるボルトの頭部など、複雑な形状により塗膜の除去が難しい箇所であっても、確実にブラスト処理を行って塗膜を除去することができる。
【0064】
接続部52eのシートで区画された範囲の塗膜除去対象物100について、塗膜の除去が完了したらブラスト処理を終了する。なお、ブラスト処理の開始前やブラスト中は、作業者は隔離ボックス2のシート(前面52a)がボックスの内側に変形しているかどうかや、差圧計21を確認し、隔離ボックス2内が負圧状態であることを随時確認する。
【0065】
次に、研磨材や剥離した塗料を回収する(ステップ104)。まず、分岐部30のバルブ32側の出口に回収袋33を取り付ける。そしてバルブ31を閉じ、バルブ32を空ける。これにより、ブラストガン4から噴射された研磨材や除去された塗膜は、研磨材回収口60から回収袋33に流れて回収される。
【0066】
このような方法で回収することで、回収時や廃棄時に塗膜の粉塵や、使用済みの研磨材が外部に飛散することがなく、安全に回収作業、廃棄作業を行うことができる。なお、塗膜除去装置1内において密閉状態が維持されている場合において、継続して研磨材を使用する場合には、バキュームクリーナ8に研磨材を回収してもよい。ブラストガン4でブラストを行わずにバキュームクリーナ8を動作させることで、バキュームクリーナ8内に研磨材を回収できる。
【0067】
研磨材等の回収が完了したら、隔離ボックス2等の撤去を行う(ステップ105)。隔離ボックス2内は、除去された塗膜の粉塵などが付着している。そのため、まず隔離ボックス2内に例えば前面52aに水供給ホース接続口を設けて予め水を供給するホースを通しておき、作業終了後に水を供給し、隔離ボックス2内の壁面などを水洗いして粉塵等を取り除くことが好ましい。流した水は、隔離ボックス2の研磨材回収口60の分岐部30の第2の出口に排水用のタンクを接続して回収する。塗膜除去対象物100にも水を流して付着している粉塵を取り除く。また、ホースを通して水洗いする代わりに、隔離ボックス2内に水を入れた噴霧器を予め入れておき、作業終了後に隔離ボックス2内や塗膜除去対処物100に水を噴霧して濡らす作業を行ってもよい。水で濡らすことによっても撤去時に粉塵が飛散することを防ぐことができる。
【0068】
水洗いが完了したら、前面52aや接続部52eなどのシートを取り外して、廃棄する。シート部分は水で洗い流しているため、取り外しの際に粉塵が飛散することを防ぐことができる。そして、隔離ボックス2や他の装置を撤去する。以上が本実施形態の塗膜除去方法の流れである。
【0069】
なお、続けて塗膜除去対象物100の隣接する位置などに対して塗膜除去処理を続けて行う場合には、隔離ボックス2等を次のブラスト位置に移動してステップ101からの手順を繰り返して塗膜除去処理を行うことができる。
【0070】
以上の本実施形態によれば、除去された塗膜の粉塵の飛散を防止しつつ、一度のブラスト処理により塗膜を確実に除去することができる。すなわち、除去された粉塵の飛散も防止しながら、塗膜除去対象物100の表面から塗膜を確実に除去できる。また、作業者は防護服などを着用することなく作業を行うことができる。
【0071】
また、従来のように塗膜対象物の全体を大規模に隔離して塗膜除去を行う場合には、準備や撤去に時間を要するが、本実施形態によれば処理を行う部分のみに対して隔離ボックス2を設置して必要な隔離処理を行うだけであるので、短時間で設置、作業、撤去が可能である。例えば鉄道の橋梁の塗膜除去作業の場合、その日の最終列車から次の始発列車までの限られた時間に行われる場合がある。そのような場合でも、本実施形態によれば設置作業や撤去作業を速やかに行うことができるので、迅速な塗膜除去作業が可能である。また、作業者が防護服などを着用する必要が無いことによっても、作業を迅速に行うことができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、除去された塗膜や、使用済みの塗膜が付着した研磨材を密閉された作業空間内でそのまま廃棄可能な回収袋33等の容器に回収することができる。一方で、例えばバキュームクリーナのタンクに回収する場合は、回収した研磨材や粉塵を取り出すためにタンクを開けたときやタンクから別の袋に移す必要があり、その際に粉塵が舞って飛散する可能性が高い。しかし、本実施形態によれば、密閉空間内でそのまま廃棄可能な状態で回収まで行えるので、廃棄時における飛散も確実に防ぐことができる。
【0073】
また、本実施形態では、研磨材を循環させて塗膜除去を行うため、研磨材の使用量を必要最小限にすることができる。研磨材の使用量を抑えることで、作業終了時に発生する汚染された研磨材の廃棄物量も減らすことができる。廃棄物の量が少ないことで、撤去時などの作業効率も向上する。
【0074】
なお、本実施形態においては塗膜除去対象物100がI型の橋げたである場合を例としたが、当然ながら平面的な塗膜除去対象物100に対して塗膜除去を行うこともできる。その場合は、隔離ボックス2のフレーム50の設置面(背面)側を塗膜除去対象物の対象面に密着させて配置し、塗膜除去対象物100との隙間を接続部52eで塞いで密閉状態にすればよい。
【0075】
また、隔離ボックス2を横方向や上下方向に伸縮可能なフレームで構成してもよい。この場合、除去対象物100の大きさに応じて隔離ボックス2の大きさを変更することができるので、様々な大きさの除去対象物100に対して対応することができる。例えば、隔離ボックス2の上面52b、前面52a、下面52dを任意の大きさにその場で加工可能な樹脂シートで形成すれば、1つのフレーム50で様々な幅の作業空間に対応することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 塗膜除去装置
2 隔離ボックス
4 ブラストガン
6 グローブ
8 バキュームクリーナ
10 コンプレッサー
12 エアタンク
14、16 分岐管
18、20 バルブ
22~25 エアホース
26 研磨材供給ホース
27 研磨材回収ホース
28、29 吸引ホース
50 フレーム
52e 接続部
54 エアホース接続口
56 研磨材供給ホース接続口
58 吸気口
60 研磨材回収口
【要約】
【課題】除去した塗膜の飛散を防止可能な塗膜除去装置を提供する。
【解決手段】塗膜除去対象物に対して設置され、負圧状態の作業空間を形成し、少なくとも除去対象物と対向する前面部が透明な樹脂製シートで形成され、前面部には作業者が作業空間内で作業を行うためのグローブが設置される隔離ボックスと、隔離ボックス内において、除去対象物の塗膜を除去するための研磨材を噴射するブラストガンと、圧縮空気で駆動され、隔離ボックス内と連結される研磨材回収ホースを介して隔離ボックス内の噴射された研磨材及び除去された塗膜を吸引して回収するバキュームクリーナと、ブラストガンとバキュームクリーナに供給する圧縮空気を作るコンプレッサーとを備え、ブラストガンとバキュームクリーナとがホースで連結され、ブラストガンの圧縮空気の噴射に伴う負圧で研磨材をバキュームクリーナから吸引してブラストガンに供給する塗膜除去装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5