(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】受発注支援装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240725BHJP
G06Q 30/06 20230101ALI20240725BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/06
(21)【出願番号】P 2024074277
(22)【出願日】2024-05-01
【審査請求日】2024-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514018984
【氏名又は名称】PRONI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】栗山 規夫
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516420(JP,A)
【文献】特開2020-107275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の課題の受付けからベンダーへの発注に至るまでの受発注プロセスの受発注に関連する受発注関連情報が記憶された受発注データベースと、
前記受発注プロセスの各段階を示す受発注ステージに従って前記利用者との会話を行うように指示する前提条件情報が記憶された初期設定記憶部と、
前記利用者との会話における前記利用者の回答情報を受け付ける情報受付部と、
前記受発注データベースの前記受発注関連情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、前記受発注プロセスにおいて前記利用者に提示する受発注支援情報を文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、前記受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部と、
前記受発注プロセスの開始時に、前記初期設定記憶部の前記前提条件情報を、前記大規模言語モデルの前記プロンプトに含めることで、前記受発注ステージに従った会話を前記利用者との間で行うことを、前記大規模言語モデルにおける前記受発注支援情報の生成の前提条件として指示する初期設定プロンプト生成部と、
前記受発注プロセスの開始後における前記情報受付部で受け付けられた前記回答情報を、前記大規模言語モデル部の前記プロンプトに含めることで、前記前提条件に基づいて前記受発注ステージに適合した前記受発注支援情報を前記大規模言語モデルに生成させる受発注プロンプト生成部と
を有する、受発注支援装置。
【請求項2】
前記初期設定記憶部は、
前記受発注ステージにおける前記利用者との会話内容に基づいて、業務内容、要件、発注条件を含む要件整理情報を前記ベンダーに正式に伝えるための提案依頼書を作成するように指示する依頼書作成指示情報が記憶されており、
前記初期設定プロンプト生成部は、
前記初期設定記憶部の前記依頼書作成指示情報を、前記大規模言語モデルの前記プロンプトに含めることで、前記提案依頼書を前記受発注支援情報として前記大規模言語モデルに生成させる
請求項1に記載の受発注支援装置。
【請求項3】
前記受発注データベースは、
前記利用者に関連する利用者情報と、前記ベンダーに関するベンダー情報とを前記受発注関連情報として記憶しており、
前記初期設定記憶部は、
前記受発注ステージが候補ベンダー調査ステージである場合において、前記利用者情報と前記ベンダー情報と、インターネット経由で検索された検索ベンダー情報とに基づいて、前記利用者にとって有力なパートナー候補となる推奨ベンダーを提案するように指示する推奨ベンダー提案情報が記憶されており、
前記初期設定プロンプト生成部は、
前記初期設定記憶部の前記推奨ベンダー提案情報を、前記大規模言語モデルの前記プロンプトに含めることで、前記候補ベンダー調査ステージで提案される前記推奨ベンダーを前記受発注支援情報として前記大規模言語モデルに生成させる
請求項1に記載の受発注支援装置。
【請求項4】
前記初期設定記憶部は、
前記受発注ステージが発注ステージである場合において、契約予定の前記ベンダーの社内決裁のための稟議書を作成するように指示する稟議書指示情報が記憶されており、
前記初期設定プロンプト生成部は、
前記初期設定記憶部の前記稟議書指示情報を、前記大規模言語モデルの前記プロンプトに含めることで、前記発注ステージで作成される前記稟議書を前記受発注支援情報として前記大規模言語モデルに生成させる
請求項1に記載の受発注支援装置。
【請求項5】
外部端末と通信可能な通信部と、
前記受発注支援情報に基づいて前記通信部を制御する通信制御部(通常の機械学習)と、
前記外部端末との通信が確立された場合において、前記外部端末との通話内容を示す通話情報を、前記大規模言語モデル部の前記プロンプトに含めることで、前記外部端末との通話に適合した前記受発注支援情報を前記大規模言語モデルに生成させる外部通話プロンプト生成部と
を有する、請求項1に記載の受発注支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受発注支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受発注を支援する分野において、発注者に最適な発注先を提供可能にする試みが活発に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発注者である利用者の操作に基づいて建物の工事内容と必要な製品を決定し、その工事を請け負える業者候補を選定する技術が開示されている。具体的には、利用者の操作により施工内容決定手段と製品決定手段で工事内容と製品を決め、その内容に基づいて業者候補決定手段が工事を請け負える業者を選抜し、利用者の操作で最終的な発注先となる業者候補を決定する技術が開示されている。
【0004】
これにより、特許文献1の技術によれば、施工内容決定手段などの各手段が発注先の業者候補を決めて利用者による選択を可能にすることで、利用者による発注者の選択を容易に行うことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の技術は、施工内容決定手段などの各手段が発注先の業者候補を決めて利用者による選択を可能にしているが、利用者の課題の受付けから業者への発注に至るまでの受発注プロセス全体の受発注活動における支援が不十分である点においてさらなる改良の余地がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、受発注プロセス全体における十分な支援により受発注活動を容易に行うことを可能にする受発注支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを利用し、利用者の課題の受付けからベンダーへの発注に至るまでの受発注ステージに従った会話を利用者との間で行うことによって、上記の目的を達成できることを見いだした。そして、本発明者らは、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明は、利用者の課題の受付けからベンダーへの発注に至るまでの受発注プロセスの受発注に関連する受発注関連情報が記憶された受発注データベースと、
前記受発注プロセスの各段階を示す受発注ステージに従って前記利用者との会話を行うように指示する前提条件情報が記憶された初期設定記憶部と、
前記利用者との会話における前記利用者の回答情報を受け付ける情報受付部と、
前記受発注データベースの前記受発注関連情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、前記受発注プロセスにおいて前記利用者に提示する受発注支援情報を文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、前記受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部と、
前記受発注プロセスの開始時に、前記初期設定記憶部の前記前提条件情報を、前記大規模言語モデルの前記プロンプトに含めることで、前記受発注ステージに従った会話を前記利用者との間で行うことを、前記大規模言語モデルにおける前記受発注支援情報の生成の前提条件として指示する初期設定プロンプト生成部と、
前記受発注プロセスの開始後における前記情報受付部で受け付けられた前記回答情報を、前記大規模言語モデル部の前記プロンプトに含めることで、前記前提条件に基づいて前記受発注ステージに適合した前記受発注支援情報を前記大規模言語モデルに生成させる受発注プロンプト生成部と
を有する、受発注支援装置である。
【0010】
本発明によれば、受発注プロセスの開始時に、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルに対して受発注ステージに従った会話を行うように初期設定し、受発注プロセスの開始後における利用者との会話の回答情報をプロンプトに含めることで、人間のコンシェルジュと会話するように、即ち、利用者が大規模言語モデルに入力するためのプロンプトを記述することなく簡単な問診や自然言語のやり取りだけで発注先を探すなどの受発注活動を十分に支援することが可能になる。これにより、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルによる受発注プロセス全体における十分な支援により受発注活動を容易に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルによる受発注プロセス全体における十分な支援により受発注活動を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態の受発注支援装置の情報の流れを示す説明図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の受発注支援装置の情報の流れを示す説明図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の受発注支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、利用者端末の表示画面を示す説明図である。
【
図5】
図5は、利用者端末の表示画面を示す説明図である。
【
図6】
図6は、利用者データベースの説明図である。
【
図7】
図7は、ベンダーデータベースの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明するものである。
【0014】
(受発注支援装置1)
図1に示すように、受発注支援装置1は、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを利用し、利用者4の課題の受付けからベンダーへの発注に至るまでの受発注ステージに従った会話を利用者4との間で行うように、受発注関連情報を記憶した受発注データベース121と、前提条件情報を記憶した初期設定記憶部16と、利用者4の回答情報を受け付ける情報受付部111と、受発注支援情報の生成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部113と、前提条件情報をプロンプトに含める初期設定プロンプト生成部114と、回答情報をプロンプトに含める受発注プロンプト生成部115とを有した構成にされている。
【0015】
(受発注支援装置1:受発注データベース121)
詳細に説明すると、受発注支援装置1は、利用者4の課題の受付けからベンダーへの発注に至るまでの受発注プロセスの受発注に関連する受発注関連情報が記憶された受発注データベース121を有している。
【0016】
ここで、「利用者4」は、特定の商品やサービスの発注を行う個人や企業の担当者である。例えば、小売業の購買担当者、製造業の資材調達担当者、サービス業の外注管理担当者の他、中小企業の経営者、フリーランス、スタートアップ企業のメンバー、営業担当者などが該当する。
【0017】
「課題」は、利用者4が現在直面している問題や困難のことであり、品質確保、納期管理、コスト削減、仕様の詳細化、サプライヤー管理、発注ミス防止、契約条件交渉、在庫管理などの様々な課題要素が含まれる。具体的には、利用者4が特定の商品やサービスを必要としている場合に、その要件に最適なベンダーを見つけることや、コストや納期などの条件を満たすベンダーとの交渉を行うことなどが課題となる。
【0018】
「ベンダー」は、商品やサービスを提供する企業や個人のことであり、利用者4が発注したい商品やサービスを供給することができる様々な業種や分野の提供者を意味する。ベンダーとしては、システム開発会社、Web制作会社、デザイン会社、コンサルティング会社、翻訳会社、物流会社、印刷会社、フリーランスなどが例示される。
【0019】
「受発注プロセス」は、利用者4が抱える課題の受付けから、ベンダーへの実際の発注に至るまでの一連の流れであり、受発注プロセスの各段階を示す複数の受発注ステージを有している。具体的には、先ず利用者4から課題を受け付ける(課題ステージ)。次にその課題を解決するためのアイディアを形成し(アイディア形成ステージ)、外注が適切か内製が適切かの判断を支援する(外注or内製ステージ)。外注が適切と判断された場合、候補となるベンダーを調査し(候補ベンダー調査ステージ)、利用者4の要件にマッチするベンダーの選定を支援する(マッチングステージ)。選定されたベンダーと利用者4との間における商談を支援し(商談ステージ)、利用者4からベンダーへの発注を支援する(発注ステージ)という一連のプロセスである。なお、受発注プロセスは、発注ステージ後において、利用者4がベンダーに対して代金を支払う支払いステージ、利用者4が取引完了後にベンダーを評価する評価ステージを有してもよい。
【0020】
「課題ステージ」は、利用者4が直面している問題や必要としている解決策を明確にする初期段階であり、受発注支援装置1は、この課題ステージを通じて、利用者4のニーズを正確に理解し、この理解に基づいて適切なアイディア形成やベンダー選定を行うための基礎とする。例えば、利用者4が飲食業の経営者である場合、課題ステージでは「新しいレストランの開店に伴い、厨房機器やインテリアの調達が必要」といった課題を提示したり、IT企業の担当者であれば、「システムのセキュリティを強化するための新しいソフトウェアの導入が必要」といった課題を提出する場合である。なお、課題は顕在化されたものと、潜在的なものとの二種類が存在する。例えば、経営陣交流会で知人から「導入して良かったSaaS(Software as a Service)製品を聞く」などの気づきがあるような場合である。このような課題により、大規模言語モデルは、顕在化された発注(社員が増えて手狭になったのでオフィス移転をする等)に至るアイディア形成に限らず、潜在的な発注可能性(グループウェアを導入することで組織活性化が図られ、社員の定着率が上がる等)のアイディア形成にも活用することができる。
【0021】
「アイディア形成ステージ」は、利用者4が抱える課題を解決するための具体的なアイディアや解決策を考え出す段階であり、利用者4の課題に対して、どのような商品やサービスが必要であるか、またはどのようなアプローチが適切であるかを検討する。例えば、利用者4が製造業であり、生産ラインの効率化を課題としている場合、アイディア形成ステージでは、自動化機械の導入、生産プロセスの再設計、品質管理システムの改善などのアイディアを検討する。そして、受発注支援装置1は、アイディア形成プロセスを支援することで、利用者4が効率的に課題を解決するための適切な方向性を見出すことができるようにする。
【0022】
「外注or内製ステージ」は、利用者4が解決策を実現するために、自社で生産(内製)するか、外部のベンダーに委託(外注)するかを決定する段階であり、コスト、品質、納期、リソースの利用可能性など、様々な要因を考慮して最適な選択を利用者4ができるように支援する。例えば、利用者4がアパレル企業であり、新しい服のコレクションを生産することを考えている場合、外注or内製ステージでは、自社での生産能力、コスト削減の可能性、品質管理のしやすさ、納期の厳密さなどを考慮して、生産を自社で行うか、外部の製造業者に委託するかを決定する。また、ITサービス企業であれば、新しいシステム開発を自社の開発チームで行うか、外部の開発会社に委託するかを検討する。このようなケースにおいて、受発注支援装置1は、利用者4が自社のリソースと目標を最も効果的に活用するための戦略を決定することができるように、外注or内製ステージを通じて、利用者4が適切な判断を下すための情報提供やアドバイスを行う。
【0023】
「候補ベンダー調査ステージ」は、外注が適切と判断された場合に、利用者4の要件に合致する可能性のあるベンダーを探し出して評価する段階であり、利用者4のニーズに応じて、適切な商品やサービスを提供できるベンダーのリストを作成し、それぞれのベンダーの信頼性、価格設定、品質基準、納期実績などを調査する。例えば、利用者4が建築会社であり、新しい建築プロジェクトのために建材を調達する必要がある場合、候補ベンダー調査ステージでは、建材を供給できるベンダーのリストを作成し、それぞれのベンダーが提供する材料の品質、コスト効率、納期の信頼性などを評価する。このようなケースにおいて、受発注支援装置1は、利用者4が最終的なベンダー選定に向けて、適切な候補を絞り込むための情報を収集することができるように、候補ベンダー調査ステージを通じて、利用者4が効率的に候補ベンダーの情報を収集し、評価するための支援を行う。
【0024】
「マッチングステージ」は、候補ベンダー調査ステージで収集した情報を基に、利用者4の具体的な要件に最も適合するベンダーを選定する段階であり、利用者4のニーズと候補ベンダーの提供する商品やサービスの特徴を照らし合わせ、最適なマッチングを行う。なお、ベンダーの選定は、
図2のベンダーデータベース1212に登録されているベンダーを優先し、該当するベンダーが登録されていない場合は、インターネット5を介して未登録のベンダーを探し出すという手順で行われる。例えば、利用者4がホテル経営者であり、客室のリノベーションのために家具やインテリアアイテムを発注する場合、マッチングステージでは、スタイル、品質、価格、納期などの要件に基づいて、最適な家具供給ベンダーを選定する。このようなケースにおいて、受発注支援装置1は、利用者4のニーズに最も適合するベンダーを効率的に特定し、最終的な選定を行うことができるように、マッチングステージを通じて、利用者4が適切なベンダーとの契約に進むための支援を行う。
【0025】
また、ベンダー選定時のマッチングにおいては、受発注データベース121に蓄積された発注者である利用者4と受注者であるベンダーの企業概要、発注内容、受注実績などの受発注関連情報を自然言語処理により大規模言語モデル部113が分析し、自然言語処理技術を活用して、利用者4の回答情報、受発注関連情報などを理解し、相互のニーズと能力を照らし合わせることで、発注内容に最も適合するベンダーの特徴を識別し、これに基づいて候補者リストを生成する。さらに、過去の成功事例や業界のトレンド、市場データを分析して、利用者4とベンダーのマッチング精度を向上させる。これにより、単に要件が一致するだけでなく、戦略的な視点から最適なパートナーシップを形成できるようにする。そして、このようにして作成した候補リストを利用者4に提示する。なお、候補リストには、各候補の詳細なプロファイルとともに、どのようにしてその候補が選ばれたかの理由も付記されていることが好ましい。また、候補リストには、各候補ごとに、無駄なコスト要因が存在すれば、その無駄なコスト要因に関するレポートも付記されることが好ましい。
【0026】
「商談ステージ」は、マッチングステージで選定されたベンダーと利用者4との間で具体的な取引条件を交渉する段階であり、価格、納期、支払い条件、品質保証、アフターサービスなどの詳細な契約条件について話し合い、双方が合意に達することを目指すステージである。例えば、利用者4がレストラン経営者であり、食材の定期的な供給を受けるためにベンダーと契約を結ぶ場合、商談ステージでは、食材の品質基準、価格設定、納品スケジュール、緊急時の対応策などについてベンダーと交渉する。このようなケースにおいて、受発注支援装置1は、利用者4とベンダーの双方にとって最適な契約条件を確定し、互いに納得のいく合意を形成することができるように、商談ステージを通じて、利用者4が効果的な交渉を行い、適切な契約を締結するための支援を行う。
【0027】
「発注ステージ」は、商談ステージで合意された条件に基づいて、利用者4がベンダーに対して正式な発注を行う段階であり、発注書の作成、契約書の締結、発注内容の最終確認などが行われる。例えば、利用者4が小売店経営者であり、新しい季節の商品を仕入れる場合、発注ステージでは、選定されたベンダーに対して商品の種類、数量、価格、納期などが記載された発注書を送付する。このようなケースにおいて、受発注支援装置1は、利用者4とベンダーとの間で合意された条件に基づき、商品やサービスの供給を正式に依頼できるように、発注ステージを通じて、利用者4が発注書の作成や契約締結などの手続きをスムーズに行い、発注プロセスを完了するための支援を行う。
【0028】
「受発注に関連する受発注関連情報」は、受発注プロセスにおいて利用者4とベンダーとの間で交換される情報、および受発注プロセスを管理・実行するために必要な情報のことであり、受発注プロセスを円滑に進めるために必要となる様々な情報である。具体的には、利用者4や企業の基本情報である利用者情報、取引先ベンダー企業の情報であるベンダー情報、過去の受発注実績データ、商品やサービスの仕様情報、価格情報、在庫情報、納期情報、決済条件情報などが含まれる。また、受発注に関連する業務ルールや規定、マニュアル、テンプレートなども受発注関連情報に含まれる。例えば、発注手順や承認フロー、見積書や発注書の雛形、受発注に関する契約書や規約なども該当する。さらに、受発注プロセスを効率化するための過去の分析データや、ベストプラクティスなども受発注関連情報に含まれる。具体的には、リードタイム分析、在庫適正水準の分析、発注タイミングの最適化データなどである。
【0029】
「利用者情報」は、受発注プロセスにおいて利用者の基本情報や取引に関連する情報である。具体的には、利用者企業の正式名称などの企業名、企業の所在地や登記住所、電話番号、ファックス番号、メールアドレスなどの連絡先情報、受発注に関わる担当者の氏名、従業員数や資本金の額などの企業規模、企業が属する業界や事業内容、過去の受発注実績や取引の履歴、企業の信用度や信頼性に関する信用情報、現在抱えている課題や特定の取引における要望、取引条件や契約書において重視する契約条件の優先事項などが例示される。
【0030】
「ベンダー情報」は、受発注プロセスにおける取引先ベンダーに関連する情報である。具体的には、ベンダー企業の正式名称、ベンダーの所在地や事業所の住所、ベンダーの電話番号、ファックス番号、メールアドレスなどの連絡先、取引における主要な連絡窓口となる担当者の氏名、ベンダーが提供する商品やサービスの種類、業界分類、ベンダーの従業員数や年間売上など、企業の規模を示す情報、ベンダーが設立された設立年度、過去の取引の実績や、主要な取引先の情報、ISOなど、品質管理に関する認証の有無(品質認証)、ベンダーが保有する技術や専門知識に関する情報、過去の納期遵守率や、納期に関する特記事項、支払い履歴や信用格付けなど、ベンダーの信用に関する情報、ベンダーが提供する製品やサービスのカタログや仕様書などが例示される。また、ベンダー情報には、実際に起こったトラブルと解決方法の情報が含まれていてもよい。
【0031】
以上の受発注関連情報が記憶された受発注データベース121は、受発注記憶部12に設けられている。受発注記憶部12は、受発注支援情報の生成に特化した大規模言語モデルを効率的に機能させるため、大量のデータを迅速に処理し、アクセスするために十分な性能を持つサーバ群に構築されている。また、受発注データベース121は、効率的なデータ管理とアクセスをサポートするために、データベース管理システムを使用して構築されている。受発注データベース121の詳細については後述する。
【0032】
なお、上記の受発注プロセスにおいて、SWOT分析や3C分析などの経営理論を用いて、課題を整理した上で、発注候補をリコメンドする処理が大規模言語モデルを利用して行われることが好ましい。
【0033】
ここで、「SWOT分析」は、組織やプロジェクトの強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を特定し評価するための分析手法であり、この分析を通じて、企業は自社の競争優位を理解し、戦略を計画する際の有用な洞察を得ることができる。なお、「強み」は企業が持つ競争上の優位点や資源、能力など、他社に比べて優れている点である。「弱み」は競争において不利になる要素や、改善が必要な領域を指す。「機会」は市場や業界内で利用可能な成長や収益向上の機会を捉える。「脅威」は競争環境や規制など、企業の成長を妨げる外部からのリスクである。
【0034】
「3C分析」は、企業(Company)、顧客(Customers)、競合他社(Competitors)の三つの要素を分析する手法であり、市場における自社の位置を明確にし、顧客ニーズの理解を深め、競争戦略を練るのに役立つものである。
【0035】
SWOT分析と3C分析は、受発注プロセスの中で主に初期段階で実施されることが好ましい。具体的には、課題ステージにおいて、利用者4から課題を受け付ける際に、SWOT分析と3C分析を使用して、その課題の根底にある要因を理解し、企業の現在の状況を把握する。これにより、課題の本質とその影響をより明確に捉えることが可能になる。
【0036】
また、アイディア形成ステージにおいて、課題に対する解決策を考える際に、SWOT分析と3C分析を使用して、どのようなアプローチが有効かを判断する。SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境を考慮した戦略を形成するのに役立つ。一方、3C分析は、市場内での自社の立ち位置、競合他社との比較、顧客ニーズの理解に役立つ。そして、これらの分析を通じて、外注か内製かの選択肢を評価する外注or内製ステージへと情報を提供し、その後のステージにおける意思決定に役立てられる。
【0037】
(受発注支援装置1:初期設定記憶部16)
受発注支援装置1は、受発注プロセスの各段階を示す受発注ステージに従って利用者4との会話を行うように指示する前提条件情報が記憶された初期設定記憶部16を有している。
【0038】
ここで、「前提条件情報」は、利用者4との会話を受発注プロセスの各ステージに沿って適切に進めるための指示情報のことである。具体的には、受発注プロセスの各ステージ(課題ステージ、アイディア形成ステージ、外注or内製ステージ、候補ベンダー調査ステージ、マッチングステージ、商談ステージ、発注ステージ)における会話の進め方や、そのステージで必要となる情報収集項目、判断基準などが含まれる。
【0039】
例えば、課題ステージの前提条件情報には、利用者4が抱える課題を明確にするための質問、課題の原因や背景を分析するための質問、課題解決の目標を設定するための質問が含まれてもよい。アイディア形成ステージの前提条件情報には、課題解決のための様々な解決策を検討するための質問、ブレインストーミングやマインドマップなどの手法を用いて、アイディアを創出するための質問、各解決策のメリットとデメリットを分析するための質問が含まれてもよい。外注or内製ステージの前提条件情報には、外注する場合のメリットとデメリットを分析するための質問、内製する場合のメリットとデメリットを分析するための質問が含まれてもよい。
【0040】
候補ベンダー調査ステージの前提条件情報には、候補となるベンダーの情報を収集するための質問、サービス内容、料金、実績などを比較検討するための質問が含まれてもよい。マッチングステージの前提条件情報には、利用者4の要件にマッチするベンダーを選定するための質問、ベンダーに対して連絡を取り、商談の日程を調整するための質問が含まれてもよい。商談ステージの前提条件情報には、選定したベンダーと利用者4との間における商談を支援するための質問、契約内容の確認、見積もりの交渉などを支援するための質問が含まれてもよい。なお、「見積もりの交渉」には、まず「概算見積」を貰い、その後商談などで条件を詰め「正式見積」となった上で、複数ベンダーのサービス内容と見積もり金額を比較して決定するという内容が含まれていてもよい。発注ステージの前提条件情報には、利用者4からベンダーへの発注を支援するための質問、発注書の作成、送付などを支援するための質問が含まれてもよい。
【0041】
また、前提条件情報は、受発注プロセスの各段階を示す受発注ステージに従って利用者4との会話を行うため、現行の受発注ステージを終了し、次の受発注ステージへ移行するための条件や指示が含まれている。具体的には、移行条件の確認として「課題の詳細が十分に理解されましたか?」、「必要な情報がすべて提供されましたか?」など、現行ステージの目的が達成されたことを確認するための質問と、次のステージへの案内として「次に、解決策のアイディアを形成しましょう」、「外注か内製かを判断するための情報を集めましょう」など、次のステージへの移行を促すための指示と、確認と承認として「次のステージに進んでよろしいですか?」など、利用者4の同意を得るための確認文と、移行条件の指示として「アイディア形成ステージに移行するには、以下の情報が必要です。」など、次のステージに必要な情報や条件を提示するための条件文とが含まれている。
【0042】
これらの文言を含む前提条件情報は、利用者4が受発注支援装置1を利用する場合における大規模言語モデルが最初に読み込む初期設定用のプロンプトに含まれることになり、利用者4との対話を通じて、受発注プロセスをスムーズに進めるために必要なガイドラインを提供する。そして、前提条件情報は、現在のステージが完了した際の次のステージへの移行を明示し、次のステージで必要となる対応を具体的に指示することで、大規模言語モデルが円滑に利用者4と会話を進めることを可能にする。
【0043】
なお、利用者4が受発注支援装置1を利用する場合における最初の処理動作は、初期設定用のプロンプトを大規模言語モデルに自動的に読み込ませることである。第1の自動読込方法としては、受発注支援装置1の初期設定記憶部16を初期設定サーバとして構築しておき、利用者4が受発注支援装置1にアクセスすると、受発注支援装置1の初期設定プロンプト生成部114から初期設定サーバに対して前提条件情報の取得要求が送信され、初期設定サーバが要求を受けて前提条件情報を読み出し、大規模言語モデルに読み込ませる方法がある。
【0044】
また、第2の自動読込方法としては、初期設定情報の内容を記述したJavaScriptファイルをクライアントサイド(利用者端末2)で読み込むように、HTMLファイルに組み込んでおき、利用者4が受発注支援装置1のWebページにアクセスすると、ブラウザ上でJavaScriptファイルが自動的に実行され、初期設定情報の内容が読み込まれるようにしておく。そして、読み込まれた初期設定情報が大規模言語モデルに送信され、大規模言語モデルに読み込まれるようにする方法である。この場合、初期設定記憶部16はメモリやストレージで構成することができる。
【0045】
(受発注支援装置1:初期設定記憶部16:初期設定用のプロンプトの具体例)
前提条件情報を含む初期設定用のプロンプトの具体例を示すと、以下の通りである。
【0046】
(前提) あなたは受発注プロセスを完全にサポートする発注エージェントAIです。利用者4に代わって、課題の把握からベンダー選定、商談、発注までの一連の受発注プロセスの各ステージをコンシェルジェとして支援及び代行する。各ステージでは利用者4からのフィードバックを積極的に求め、それに基づいてプロセスを適宜調整しながら、受発注プロセス全体を支援してください。プロセスの円滑な進行と、利用者4の利益最大化を常に意識してください。市場状況や利用者4のニーズの変化に柔軟に対応し、最適な解決策を提供してください。
【0047】
(受発注プロセス) ステージは、1.課題意識の把握 2.アイディア形成支援 3.外注か内製かの判断支援 4.候補ベンダー調査と推奨 5.ベンダーとのマッチングと商談代行 6.発注書類作成と発注代行です。
【0048】
(受発注プロセスの対応) 各ステージでは以下の対応を行ってください。ステージ1は、課題意識の把握である。具体的には、利用者4から課題の詳細と背景を質問し、明確な情報を収集する。課題の本質と解決の方向性を分析する。課題の把握が完了したら、次のアイディア形成ステージに進む。ステージ2は、アイディア形成支援である。具体的には、利用者4の課題解決につながる最適なアイディアを提案する。利用者4と協力して最適なアイディアを選定し、利用者4の最終的な承認を得る。アイディアが決定したら、次の外注か内製の判断ステージに進む。
【0049】
ステージ3は、外注か内製かの判断支援である。具体的には、利用者4の状況を総合的に判断し、外注が適切か内製が適切か提案する。外注を選択した場合は次の候補ベンダー調査ステージへ進む。内製を選択した場合は、受発注プロセスを終了する。ステージ4は、候補ベンダー調査と推奨である。具体的には、利用者4の要件に基づき、複数の最適ベンダーを調査する。ベンダーの詳細な比較評価を行い、最終候補を利用者4に提案する。候補ベンダーが決定したら、次のマッチングと商談ステージに進む。
【0050】
ステージ5は、ベンダーとのマッチングと商談代行である。具体的には、利用者4に代わってベンダーとの条件調整や価格交渉を行う。最終的な受注条件で利用者4の承認を得る。受注条件が承認されたら、次の発注書類作成と発注ステージに進む。ステージ6は発注書類作成と発注代行である。具体的には、承認された条件で発注に必要な書類(提案依頼書、見積書、発注書等)を作成する。利用者4に代わってベンダーへ発注を行い、プロセスを完了する。
【0051】
(受発注支援装置1:情報受付部111)
受発注支援装置1は、利用者4との会話における利用者4の回答情報を受け付ける情報受付部111を有している。ここで、「回答情報」は、利用者4が受発注支援装置1に対して提供する回答や応答のことであり、利用者4と受発注支援装置1との対話中に収集され、受発注プロセスの進行に必要なデータとして利用される。例えば、課題の原因や背景、課題解決のための方法、課題解決に必要なスキルや経験などのような課題に関する情報、各解決策のメリットとデメリット、各解決策の実現可能性とリスク、各解決策にかかる費用と期間などのような解決策に関する情報、候補となるベンダーのリスト、各ベンダーのサービス内容、料金、実績、各ベンダーの強みと弱みのようなベンダーに関する情報が例示される。
【0052】
情報受付部111は、利用者4により利用者端末2に入力された回答情報を受け付ける入力機能を備えている。また、情報受付部111は、入力機能に加えて、利用者4が音声で質問や要求を入力できるようにする音声入力機能、利用者4が質問や要求に関連するファイルを添付できるようにするファイル添付機能、入力された質問や要求を大規模言語モデル部113に送信するモデル送信機能を備えている。
【0053】
また、情報受付部111は、アクティベート機能を有している。アクティベート機能は、認証された利用者端末2及び管理者端末7とだけデータ通信を可能にする。管理者端末7は、受発注支援装置1を管理する担当者が操作する端末装置である。アクティベート機能は、特定の利用者端末2や管理者端末7から送信されたアクティベート信号が、事前に設定された認証情報に合致しているか否かを検証する。認証方法としては、パスワード認証や生体認証、ワンタイムパスワード認証、ICチップが埋め込まれたカードを利用したスマートカード認証などの1以上の認証要素を組み合わせた認証態様が例示される。これにより、受発注支援装置1は、認証された利用者端末2や管理者端末7とだけデータ通信が可能になるため、情報が流出し難いものになっている。
【0054】
なお、アクティベート機能は、特定のベンダー端末3との認証に使用されてもよい。また、アクティベート機能は、制御部11と受発注記憶部12及び初期設定記憶部16のサーバとの間においても備えられ、認証された制御部11と受発注記憶部12及び初期設定記憶部16との間だけのデータ通信を可能にされていてもよい。この場合は、受発注記憶部12及び初期設定記憶部16が制御部11から離れた場所に設置され、インターネット5などのデータ通信によりアクセス可能にされている場合において、外部からの不正アクセスを防御することができる。
【0055】
(受発注支援装置1:大規模言語モデル部113)
受発注支援装置1は、受発注支援情報の生成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部113を有している。大規模言語モデル部113は、受発注データベース121の受発注関連情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、受発注プロセスにおいて利用者4に提示する受発注支援情報を文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを有している。なお、大規模言語モデル部113は、APIを通じて受発注支援情報を他者に提供するように構成されていてもよい。大規模言語モデル部113は、自身が生成した高価値な受発注支援情報を広く他のビジネスやシステムと共有されることで、受発注プロセスの効率化を市場全体に拡張することが可能になる。また、大規模言語モデル部113は、他の組織(企業や大学など)からAPIを介して提供された大規模言語モデルを用いるものであってもよい。さらに、大規模言語モデル部113の大規模言語モデルと、他の組織の大規模言語モデルとがAPIを介して連携されてもよい。
【0056】
ここで、「自然言語処理」は、コンピュータが自然言語で書かれた文章や音声データを理解して目的に応じた処理を実行できるようにするものである。具体的には、自然言語を構成する最小の単位である「形態素」に分解することにより品詞などの情報を付与する形態素解析、自然言語の文法的構造を解析することにより文の構造や意味を明らかにする構文解析、自然言語の意味を解析することにより単語や文の意味を理解し、論理的な判断や推論を行う意味解析、文の前後の文脈を考慮しながら自然言語を理解する文脈解析、自然言語を用いた対話や文章の中から話者や書き手の意図を抽出する意図解析などが例示される。これにより、「自然言語処理」は、形態素解析や構文解析、意味解析、文脈解析、意図解析などの処理を組み合わせて自然言語を処理し、本実施形態の受発注活動を支援する受発注支援情報の生成や機械翻訳、自動要約、質問応答システム、音声認識などを可能にしている。
【0057】
「プロンプト」は、大規模言語モデル部113に入力される単語や文章のことであり、大規模言語モデルが受発注支援情報を生成するための出発点となる。なお、プロンプトに基づいた大規模言語モデルによる受発注支援情報の生成が、通常(従来)の機械学習との大きな相違点となる。通常の機械学習では、モデルが教師データから学習し、入力データに対して出力データを予測する。例えば、画像認識の機械学習モデルは、猫と犬の画像の教師データから学習し、入力画像が猫か犬かを分類する。一方、大規模言語モデルによる受発注支援情報の生成では、モデルが教師データに加えて、モデルに生成して欲しい出力データに関する指示や情報を提供するプロンプトから学習する。
【0058】
詳細に説明すると、通常の機械学習では、モデルは教師データに含まれる内容しか生成できない一方、大規模言語モデルはプロンプトによって、教師データに含まれない新しい内容を生成することができる。例えば、教師データに、20代女性会社員の会話しか含まれていない場合でも、プロンプトによって、50代男性会社員の会話も生成することができる。また、通常の機械学習では、モデルは教師データに含まれる内容のバリエーションしか生成できない一方、大規模言語モデルはプロンプトによって、教師データに含まれない新しいバリエーションの出力データを生成することができる。例えば、教師データに、利用者視点の会話しか含まれていない場合でも、プロンプトによって、ベンダー視点の会話も生成することができる。また、通常の機械学習では、モデルは教師データに含まれる内容を再帰的に組み合わせることでしか新しい内容を生成できない一方、大規模言語モデルはプロンプトによって、教師データに含まれない創造的な内容を生成することができる。例えば、教師データに、既存の課題解決の説明しか含まれていない場合でも、プロンプトによって、全く新しい視点からの課題解決のアイデアを生成することができる。
【0059】
「大規模言語モデル」は、自然言語処理において用いられる確率モデルの一種であり、与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測するためのモデルである。具体的には、言語モデルは、与えられた単語列や文章の出現確率を計算したり、複数の単語列や文章の出現確率を比較することによって、次の単語や文を予測するときに、その文脈に基づいて最もありそうな単語や文を自動的に生成したり、特定の条件を満たす文を生成することを可能にしている。
【0060】
また、大規模言語モデルは、受発注支援情報の作成に特化されている。これにより、大規模言語モデル部113は、受発注データベース121の受発注関連情報に基づいて、自然言語処理を用いて受発注支援情報の作成に特化することで、生成精度と効率を向上させることができる。具体的には、受発注関連情報に関連する語彙や文法、例文、テンプレートなどを重点的に学習することで、より現実的で具体的な受発注支援情報を生成することができるとともに、生成プロセスを最適化することで、より短時間で生成することができる。
【0061】
(受発注支援装置1:初期設定プロンプト生成部114)
受発注支援装置1は、受発注支援情報の生成の前提条件として指示する初期設定プロンプト生成部114を有している。初期設定プロンプト生成部114は、受発注プロセスの開始時に、初期設定記憶部16の前提条件情報を大規模言語モデルのプロンプトに含めることで、受発注ステージに従った会話を利用者4との間で行うことを、大規模言語モデルにおける受発注支援情報の生成の前提条件として指示する機能を有している。
【0062】
初期設定プロンプト生成部114は、大規模言語モデルを備えた大規模言語モデル部113とは別の機能モジュールとして実装されていることが好ましい。この理由は、初期設定プロンプト生成部114が受発注プロセスに基づいて適切なプロンプトを生成する役割を持ち、大規模言語モデル部113が自然言語処理を行う役割を持っているため、これらを独立したモジュールとすることで、それぞれの役割が明確になり、システムの設計とメンテナンスが容易になるからである。また、初期設定プロンプト生成部114を独立したモジュールとして実装することで、受発注プロセスの変更や大規模言語モデルの更新があった場合にも、柔軟に対応することができるからである。
【0063】
初期設定プロンプト生成部114は、初期設定記憶部16から前提条件情報を受け取るための情報受付インターフェースと、受け取った前提条件情報をもとに、受発注プロセスの各ステージに対応する初期設定用のプロンプトを生成するプロンプト生成ロジックと、生成された初期設定用のプロンプトを大規模言語モデル部113に送信するためのプロンプト送信インターフェースとを有している。
【0064】
なお、初期設定プロンプト生成部114は、ルールベースのロジック回路で構築されてもよいし、機械学習モデルを用いて構築されてもよい。ルールベースの場合は、明示的な条件分岐や移行ルールを用いて初期設定用のプロンプトが生成される。一方、機械学習モデルを用いた場合は、受発注プロセスのデータから学習したモデルを用いて、より柔軟なプロンプトの生成が可能になる。このような構成により、初期設定プロンプト生成部114は、受発注プロセスの開始時に適切な初期設定用のプロンプトを生成し、大規模言語モデル部113に送信することで、受発注プロセスに応じた会話を効果的に開始することを可能にしている。
【0065】
さらに、初期設定プロンプト生成部114は、受発注プロセスの制御ロジックをスクリプト言語やプログラミング言語で記述し、それに基づいて初期設定用のプロンプトを動的に生成するスクリプトやプログラムによる実装方式で実現されていてもよい。例えば、初期設定記憶部16から前提条件情報を取得し、それをもとに初期設定用のプロンプトを生成するためのJavaScriptコードをHTMLファイルに組み込んでおき、利用者4が受発注支援装置のWebページにアクセスすると、ブラウザ上でスクリプトが実行されるようにする。スクリプトは、初期設定記憶部16から前提条件情報を取得し、初期設定用のプロンプトを生成し、大規模言語モデル部113へ送信し、大規模言語モデルにおいて受発注支援情報を生成させる方式であってもよい。この場合は、初期設定プロンプト生成部114は、クライアントサイド(JavaScript)とサーバサイド(初期設定記憶部16)の両方にまたがる機能モジュールとして存在することになる。
【0066】
(受発注支援装置1:受発注プロンプト生成部115)
受発注支援装置1は、受発注プロセスの開始後における情報受付部111で受け付けられた回答情報を、大規模言語モデル部113のプロンプトに含めることで、前提条件に基づいて受発注ステージに適合した受発注支援情報を大規模言語モデルに生成させる受発注プロンプト生成部115を有している。
【0067】
受発注プロンプト生成部115は、大規模言語モデル部113から独立したモジュールとして存在することが好ましい。この理由は、初期設定プロンプト生成部114と同様に、受発注プロンプト生成部115が利用者4からの回答情報をもとに適切なプロンプトを生成する役割を持っており、大規模言語モデル部113が有した自然言語処理の役割とは異なる。このため、両者を独立したモジュールとして扱うことで、それぞれの役割を明確に区分し、システムの設計とメンテナンスを容易にすることができるからである。また、受発注プロンプト生成部115を独立したモジュールとして実装することで、受発注プロセスの変更や大規模言語モデルの更新があった場合にも、柔軟に対応することができるからである。
【0068】
受発注プロンプト生成部115は、情報受付部111から受け取った回答情報を受け入れるためのインターフェースと、受け取った回答情報をもとに、受発注プロセスの現在のステージに適合したプロンプトを生成するプロンプト生成ロジックとを有している。プロンプト生成ロジックは、回答情報を解析して受発注プロセスにおける現在の状況や利用者4の意図を理解し、それに基づいて適切なプロンプトテンプレートを選択するためのものである。この選択には、条件分岐が使用され、回答情報と合致するプロンプトテンプレートが選択される。なお、プロンプトテンプレートは、事前に用意されている。このようなプロンプト生成ロジックにより、受発注プロセスの現在のステージに応じた適切なプロンプトが生成され、大規模言語モデル部113に送信されることになる。
【0069】
また、受発注プロンプト生成部115は、生成されたプロンプトを大規模言語モデル部113に送信するためのプロンプト送信インターフェースを備えている。さらに、受発注プロンプト生成部115は、受発注プロセスの現在のステージや進行状況を管理するための状態管理機能を有している。状態管理機能は、受発注プロセスの現在のステージや進行状況を追跡し、この情報をプロンプト生成ロジックに提供するものである。これにより、プロンプト生成ロジックは、どのステージに対応するプロンプトを生成すべきかを判断し、適切なプロンプトテンプレートを選択可能になっている。例えば、受発注プロセスが「アイディア形成ステージ」にある場合、プロンプト生成ロジックは、アイディア形成に関連する質問や指示を含むテンプレートを選択する。また、選択されたテンプレートに現在の状況に関連する情報や変数を埋め込むことで、現在のステージに適合したプロンプトを生成し、利用者4からの回答情報に基づいて次のステージへの移行を判断可能になっている。
【0070】
(受発注支援装置1:全体構成)
以上のように、受発注支援装置1は、利用者4の課題の受付けからベンダーへの発注に至るまでの受発注プロセスの受発注に関連する受発注関連情報が記憶された受発注データベース121と、受発注プロセスの各段階を示す受発注ステージに従って利用者4との会話を行うように指示する前提条件情報が記憶された初期設定記憶部16と、利用者4との会話における利用者4の回答情報を受け付ける情報受付部111と、受発注データベース121の受発注関連情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、受発注プロセスにおいて利用者4に提示する受発注支援情報を文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部113と、受発注プロセスの開始時に、初期設定記憶部16の前提条件情報を、大規模言語モデルのプロンプトに含めることで、受発注ステージに従った会話を利用者4との間で行うことを、大規模言語モデルにおける受発注支援情報の生成の前提条件として指示する初期設定プロンプト生成部114と、受発注プロセスの開始後における情報受付部111で受け付けられた回答情報を、大規模言語モデル部113のプロンプトに含めることで、前提条件に基づいて受発注ステージに適合した受発注支援情報を大規模言語モデルに生成させる受発注プロンプト生成部115とを有している。
【0071】
上記の構成によれば、受発注プロセスの開始時に、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルに対して受発注ステージに従った会話を行うように初期設定し、受発注プロセスの開始後における利用者4との会話の回答情報をプロンプトに含めることで、人間のコンシェルジュと会話するように、即ち、利用者4が大規模言語モデルに入力するためのプロンプトを記述することなく簡単な問診や自然言語のやり取りだけで発注先を探すなどの受発注活動を十分に支援することが可能になる。これにより、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルによる受発注プロセス全体における十分な支援により受発注活動を容易に行うことが可能になる。
【0072】
なお、受発注支援装置1は、他社のシステム(マーケットプレイス、SaaS((Software as a Service)、イントラネット、Slack(登録商標)など)に組み込むためのAPI(Application Programming Interface)サービスを提供可能にされていてもよい。
【0073】
また、上記の構成によれば、
図2に示すように、受発注支援装置1は、各データベース1211~1216を備えた受発注データベース121の利用者情報やベンダー情報などの受発注関連情報を用いて、大規模言語モデル部113が学習し、情報受付部111の回答情報を機械学習の説明変数に相当するものとし、初期設定プロンプト生成部114及び受発注プロンプト生成部115からのプロンプトに応じて、大規模言語モデル部113が受発注支援情報を機械学習の目的変数に相当するものとして生成することになる。
【0074】
これにより、受発注支援装置1は、回答情報を受け取り、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを用いて、受発注プロセスに適した受発注支援情報を生成することで、受発注活動を十分に支援することが可能になる。特に、通常の機械学習ではなく、大規模言語モデルを受発注支援情報の生成に用いることで、教師データに含まれない新しい内容やバリエーションを生成することができるため、課題内容や状況に合わせて、柔軟で多様な受発注支援情報を生成することができるとともに、教師データに含まれない創造的な内容を生成することができる。
【0075】
さらに、大規模言語モデルが、学習によって精度を向上することができるため、過去の成功例から学び、より効果的な受発注支援情報を継続的に生成することができる。即ち、受発注プロセスの成果を分析し、改善点を反映した受発注支援情報を生成したり、利用者4やベンダーからのフィードバックを反映し、利用者4にとって一層満足度の高い受発注支援情報を生成することができる。
【0076】
このように、受発注支援装置1は、大規模言語モデルを使用することで、通常の機械学習アプローチでは実現が困難な高度な機能を提供している。具体的には、自然言語処理を用いた複雑なテキスト生成や、コンテキストに基づいた内容の生成など、大規模言語モデルの特有の能力を活用している。通常の機械学習モデルでは、主に数値データやカテゴリデータを用いた予測、分類、クラスタリングなどが一般的であり、大規模なテキストデータを処理し、新たなテキストを生成するという点では限界がある。一方、大規模言語モデルは、大量のテキストデータから言語のパターンを学習し、与えられたプロンプトに基づいて新しいテキストを生成することが得意であることから、受発注支援情報のように多様で複雑な言語の使用が求められる状況では、大規模言語モデルを用いたアプローチがより適切であり、従来の機械学習手法だけでは実現が難しい機能の提供が可能になっている。
【0077】
図3に示すように、受発注支援装置1は、情報受付部111、大規模言語モデル部113、初期設定プロンプト生成部114、及び受発注プロンプト生成部115に加えて、外部通話プロンプト生成部112、通信制御部116、端末制御部117及び通信部13を有している。通信部13を除く各部111~117は、コンピュータである制御部11に含まれている。制御部11に含まれる各部の一部又は全部は、ハードウェア及びソフトウェアの何れで構成されていても良い。情報受付部111への入力は、利用者4が操作する利用者端末2のキーボード等の入力部22で行われる。また、大規模言語モデル部113により作成された受発注支援情報は、利用者端末2のディスプレイ等の出力部21に表示される。
【0078】
通信部13は、利用者4が操作する利用者端末2、管理者が操作する管理者端末7、及びベンダーの担当者が操作するベンダー端末3にインターネット5を介してデータ通信可能にそれぞれ接続されている。管理者端末7を操作する管理者は、利用者端末2及び受発注支援装置1間のやり取りを監視しており、状況に応じて人間のコンシェルジュとして介入しサポートに入ることが可能にされている。これにより、受発注支援装置1と人間が協働する形式のコンシェルジュサービスを実現することが可能になっている。尚、通信部13と利用者端末2及び管理者端末7とのデータ通信は、インターネット5に限定されるものではなく、専用線やLAN(Local Area Network)などの情報通信網が用いられてもよいし、近距離通信用の無線通信規であるBluetooth(登録商標)が用いられてもよい。また、通信部13と利用者端末2及び管理者端末7とのデータ通信は、情報漏洩を防止するため、専用線であってもよい。さらに、通信部13と利用者端末2及び管理者端末7とは、インターネット5を介してデータ通信する場合、VPN(Virtual Private Network)機能を有していることが好ましい。通信部13、利用者端末2及び管理者端末7にVPN機能を組み込んだ場合は、例えば、利用者端末2からのデータ通信がVPN接続を経由するため、外部の不正アクセスから保護され、安全な通信が確保される。尚、利用者端末2、管理者端末7及びベンダー端末3は、一般的なパーソナルコンピュータやラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などの情報処理装置である。
【0079】
端末制御部117は、利用者端末2の表示画面を受発注支援情報の閲覧や回答情報の入力に適した画面に設定するユーザーインターフェース機能を有している。具体的には、端末制御部117は、
図4に示すように、受発注プロセスの各ステージにおける回答情報及び受発注支援情報を確認するために必要な情報を要約して表示する要約画面211、利用者4が回答情報を入力するための相談ボックス画面212、及び受発注支援情報を表示する支援ボックス画面213を含むユーザーインターフェースを利用者端末2の表示画面に形成する。
【0080】
例えば、相談ボックス画面212において、「抱えている課題:利用者は、オンライン販売の競争が激化し、従来の販売戦略では売り上げが減少しているという課題を抱えています。求める要件:広告を通じて新しい顧客層にアプローチし、ブランド認知度を高めること・・・」などが表示されている。そして、利用者端末2が「私のビジネスに合ったWeb広告運用のベンダーを紹介してください。」と音声入力やキー入力が行われると、この内容が相談ボックス画面212に表示された後、大規模言語モデル部113からの受発注支援情報として「マッチング結果」が支援ボックス画面213に表示される。このように、通信制御部116は、ユーザーインターフェース機能により、利用者4に対して受発注プロセスに必要な情報を効果的に把握させ、受発注支援装置1との会話を通じて適切な回答や決定を行わせることを容易にしている。
【0081】
図3に示すように、受発注支援装置1は、入力受付部1192に接続された入力装置15と、表示制御部1191に接続された表示装置14とを有している。入力装置15は、キーボードやマウス、タッチパネル、音声入力装置などが例示される。表示装置14は、液晶表示装置などが例示される。これにより、受発注支援装置1は、一般的なパーソナルコンピュータやラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などの情報処理装置により構成することが可能になっている。受発注支援装置1は、入力装置15及び表示装置14の少なくとも一つが欠如されていてもよい。この場合は、入力装置15及び表示装置14が図示しない外部端末に備えられるため、受発注支援装置1を受発注支援情報作成サーバとして使用することができる。さらに、受発注支援装置1が利用者端末2として用いられ、利用者4が大規模言語モデル部113で生成される支援情報の支援を受けながら、受発注支援装置1において利用者4との会話を通じた受発注支援情報の作成が行われてもよい。
【0082】
尚、本実施形態においては、受発注支援装置1の機能が情報処理装置に搭載された場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、クラウドコンピューティングに受発注支援装置1の機能が搭載されてもよい。この場合は、クラウドコンピューティングにより、必要に応じてコンピュータリソースが追加されることによって、大量の固有運用情報や共通運用情報を処理することができ、より高速かつ効率的な処理が可能になると共に、利用者4が大幅に増えた場合でも、処理能力を容易に拡張して対応することができる。
【0083】
また、受発注支援装置1は、ベンダー端末3を含む外部端末と通信可能な通信部13と、受発注支援情報に基づいて通信部13を制御する通信制御部116と、外部端末との通信が確立された場合において、外部端末との通話内容を示す通話情報を、大規模言語モデル部113のプロンプトに含めることで、外部端末との通話に適合した受発注支援情報を大規模言語モデルに生成させる外部通話プロンプト生成部112とを有している。ここで、「外部端末」は、ベンダーの担当者や利用者4が持つ個人端末、ベンダー企業のサーバ、会食予約サービスや旅行予約サービスなどの特定のサービスを提供するクラウドプラットフォーム、レストランやホテルなどで使われるPOSシステムや大規模なリテールチェーンが使用する注文管理システムなどが例示される。
【0084】
通信制御部116は、受発注支援装置1内で通信機能を管理し、外部端末との通信を適切に制御する機能を有している。具体的には、通信制御部116は、通信インターフェース(有線または無線)を管理し、通信部13と連携してデータの送受信を行う通信インターフェース管理機能と、受信データと送信データを管理し、データの整合性とセキュリティを保つデータ送受信管理機能と、異なる通信プロトコルをサポートし、これらのプロトコルに従ってデータの形式を整える通信プロトコル管理機能と、通信データのセキュリティを確保するための通信セキュリティ管理機能と、通信の詳細を記録する通信ログ管理機能と備えている。
【0085】
外部通話プロンプト生成部112は、外部端末との通信が確立された場合に、その通話内容を解析し、適切な受発注支援情報を生成するためのプロンプトを大規模言語モデル部113に提供する機能を有している。具体的には、通話の内容、トーン、発言の順番、キーワードなどの通話データを外部端末から受け取る通話情報受信インターフェース機能と、受け取った通話データを自然言語処理技術や音声認識技術により解析し、通話の内容や話題などを理解する通話内容解析モジュール機能と、解析結果に基づき、受発注支援情報の生成に適したプロンプトを作成するプロンプト生成ロジックと、生成されたプロンプトを大規模言語モデル部113に送信するプロンプト送信インターフェース機能と、通信制御部116と連携し、通信部13を介して外部端末との通信を適切に制御する通信制御連携機能とを有している。
【0086】
上記の構成によれば、受発注支援装置1は、外部端末との通話が大規模言語モデルの受発注支援情報により可能になることで、利用者4が選定したツールを提供する企業やベンダー、サービスを提供する企業に問い合わせを行ったり、会食予約、出張手配、会議室手配、消耗品等の発注などの利用者4が抱える煩雑な業務に対する秘書サービスを提供することが可能になる。
【0087】
また、受発注支援装置1は、ベンダーに発注する場合の提案依頼書を作成する機能を有している。具体的には、初期設定記憶部16は、受発注ステージにおける利用者4との会話内容に基づいて、業務内容、要件、発注条件を含む要件整理情報をベンダーに正式に伝えるための提案依頼書を作成するように指示する依頼書作成指示情報が記憶されており、初期設定プロンプト生成部114は、初期設定記憶部16の依頼書作成指示情報を、大規模言語モデルのプロンプトに含めることで、提案依頼書を受発注支援情報として大規模言語モデルに生成させる構成を有している。
【0088】
ここで、「提案依頼書(Request for Proposal, RFP)は、特定のプロジェクトやサービスに対してベンダーから提案を求める公式文書であり、プロジェクトの範囲、要件、期待される成果物、および提出期限など、提案に必要な詳細情報をベンダーに提供することを目的として作成されるものである。
【0089】
上記の構成によれば、依頼書作成指示情報を大規模言語モデル部113のプロンプトに含めることで、大規模言語モデル部113が利用者との会話から必要な情報を取り出し、それを基に提案依頼書を受発注支援情報として自動生成する。そして、例えば、
図5に示すように、利用者端末2を通じて利用者4に提案依頼書を確認させた後に、選択したベンダーに送信する。これにより、提案依頼書を作成する負担を軽減することができるとともに、受発注プロセスをよりスムーズかつ効率的に進行させることができる。
【0090】
また、受発注支援装置1は、受発注データベース121が、利用者4に関連する利用者情報と、ベンダーに関するベンダー情報とを受発注関連情報として記憶しており、初期設定記憶部16が、受発注ステージが候補ベンダー調査ステージである場合において、利用者情報とベンダー情報と、インターネット5経由で検索された検索ベンダー情報とに基づいて、利用者4にとって有力なパートナー候補となる推奨ベンダーを提案するように指示する推奨ベンダー提案情報が記憶されており、初期設定プロンプト生成部114が、初期設定記憶部16の推奨ベンダー提案情報を、大規模言語モデルのプロンプトに含めることで、候補ベンダー調査ステージで提案される推奨ベンダーを受発注支援情報として大規模言語モデルに生成させる構成にされている。
【0091】
上記の構成によれば、受発注支援装置1は、利用者情報とベンダー情報と検索ベンダー情報とを活用して推奨ベンダーを自動的に提案するため、利用者4による手動でのベンダー検索や評価に要する時間と労力が削減され、迅速に適切なベンダーを選定できるようになる。また、受発注記憶部12に保存された推奨ベンダー提案情報を基に、大規模言語モデルが受発注関連情報を生成することで、データに基づいた確かな意思決定が可能になるため、利用者4のニーズに最も適合するベンダーが選ばれる確率が高まることになる。さらに、推奨されるベンダーの選定理由がデータに基づいているため、プロセスの透明性が向上し、特定のベンダーが推奨されたかを理解しやすく、その選定プロセスに対する信頼感を利用者4に持たせることができる。
【0092】
なお、推奨ベンダー提案情報には、推奨ベンダーを選定する具体的な方法が記載されていてもよい。例えば、ベンダー情報及び検索ベンダー情報における受注者の強みや実績、評判、料金などの選定要素に基づいて、最適なパートナーとなる推奨ベンダーを選定するという指示内容が含まれていてもよい。また、例えば、候補となるベンダーを50社などの複数社ピックアップし、これらのベンダーのベンダー情報が希望する条件にマッチしているかどうかを解析し、その解析結果を〇×で評価した評価一覧表を、評価理由のコメント付きで出力するという指示内容が含まれていてもよい。
【0093】
また、受発注支援装置1は、初期設定記憶部16において、受発注ステージが発注ステージである場合において、契約予定のベンダーの社内決裁のための稟議書を作成するように指示する稟議書指示情報が記憶されており、初期設定プロンプト生成部114が、初期設定記憶部16の稟議書指示情報を、大規模言語モデルのプロンプトに含めることで、発注ステージで作成される稟議書を受発注支援情報として大規模言語モデルに生成させる構成にされている。
【0094】
上記の構成によれば、稟議書の自動生成により、手作業での文書作成にかかる時間を大幅に削減することができるとともに、人間による入力ミスや情報の不整合による文書内の誤りを最小限に抑えることができる。また、稟議書が迅速に作成されることで、決裁プロセスが加速し、プロジェクトや発注活動におけるリードタイムを短縮させることができる。
【0095】
(受発注データベース121)
次に、受発注データベース121について詳細に説明する。受発注データベース121は、受発注記憶部12に保存されている。受発注記憶部12は、制御部11に対してデータ通信可能に接続されている。受発注記憶部12は、ハードディスクで構成されていてもよいし、ハードディスクとメモリとの組み合わせで構成されていてもよい。ハードディスクとメモリとを組み合わせた構成の場合は、データベースが使用するデータや索引などの一部が必要に応じてメモリにキャッシュされることによって、データベースへのアクセスを高速化することが可能になる。尚、受発注記憶部12は、受発注支援装置1とは別に、インターネット5などの情報通信網に接続されたデータサーバであってもよい。また、受発注記憶部12は、データベース毎に設けられた複数のデータサーバで構成されていてもよい。
【0096】
図2に示すように、受発注データベース121は、利用者データベース1211と、ベンダーデータベース1212と、アイミツ情報データベース1213と、チャットログデータベース1214と、業務支援データベース1215と、その他のデータベース1216とを有している。
【0097】
図6に示すように、利用者データベース1211は、利用者の基本情報に加えて、取引に関連する情報がテーブルテータの形態で記憶されている。具体的には、企業名、業種、従業員数、課題分野、発注内容、必須条件、希望条件などの項目を有し、各項目に対応付けて利用者要素が記憶されることで、1件の利用者情報とされている。例えば、企業IDが「C001」の場合、企業名がABC株式会社、業種が製造業、従業員数が200名、課題分野がマーケティング、発注内容が新製品の販促企画、必須条件が同業他社の実績、希望条件が低予算などの利用者要素を含む利用者情報が記憶される。また、企業IDが「C002」の場合、企業名がXYZ商事、業種が卸売業、従業員数が50名、課題分野が人事・労務、発注内容が人事評価制度導入、必須条件が中小企業の実績、希望条件がリモート対応可などの利用者要素を含む利用者情報が記憶される。
【0098】
利用者データベース1211への利用者情報の登録は、通常、受発注支援装置1の導入段階や利用者4が受発注支援装置1を初めて使用する際に行われる。例えば、受発注支援装置1を導入する場合、新たな利用者4が受発注支援装置1を使用することになった場合、プロジェクトや取引の開始時、定期的な情報更新、利用者4からの自己申告による情報提供のタイミングで行われる。
【0099】
図7に示すように、ベンダーデータベース1212は、ベンダーID、会社名、所在地、連絡先、ウェブサイトなどの項目を有し、各項目に対応付けてベンダー要素が記憶されることで、1件のベンダー情報とされている。例えば、ベンダーIDが「ベンダーA」である場合、会社名が株式会社A、所在地が東京都渋谷区、連絡先が03-1234-5678、ウェブサイトがwwwA、代表者名が山田太郎、設立年月日が2000年1月1日、資本金が1億円、従業員数が100人、事業内容がソフトウェア開発、主要製品・サービスがCRMシステム、実績・導入事例が大手企業への導入、技術力・専門性がAI開発、顧客リストが企業X、企業Y、認証・資格がISO9001などの利用者要素を含む利用者情報が記憶される。
【0100】
ベンダーデータベース1212にベンダー情報が登録されるタイミングは、新規ベンダーの登録時、既存ベンダーの情報更新時、ベンダー情報の定期的なレビュー時、ベンダー情報の完全性や正確性を確認する監査やコンプライアンスチェック時などのタイミングで行われる。
【0101】
アイミツ情報データベース1213は、受発注プロセスをサポートするための多岐にわたる情報を記憶している。例えば、アイミツ情報データベース1213には、業界別のベンダーパフォーマンス評価や市場動向、サプライチェーンの効率性に関するデータなどが記憶されている。具体的には、アイミツ情報データベース1213には、各ベンダーの過去のプロジェクト成功率やクライアントである利用者4からのフィードバック評価など、パフォーマンスに関する情報、ベンダーのサプライチェーンに関する透明性や効率性についてのデータ、価格データが記憶されている。
【0102】
チャットログデータベース1214は、受発注支援装置1と利用者4とのやり取りが行われる全ての通信記録を保存するデータベースである。チャットログデータベース1214には、利用者4と受発注支援装置1との間で行われるチャットの対話内容が詳細に記録されている。例えば、日時、利用者4の識別情報、交換されたメッセージのテキスト内容が含まれる。具体的には、チャットログデータベース1214に保存される情報は、利用者4の問い合わせ内容、受発注支援装置1からの応答である受発注支援情報、利用者4のフィードバックや追加の質問など、対話形式でのやり取りが全て含まれる。
【0103】
業務支援データベース1215は、受発注プロセスの効率化と質の向上を支援するためのマニュアルやノウハウに関連する情報を記憶している。具体的には、業務支援データベース1215は、各種業務手順の詳細な説明、業務実行のベストプラクティス、トラブルシューティングのガイドライン、業務効率化のためのテクニックや戦略などの情報を記憶している。また、業務支援データベース1215は、過去の事例研究やプロジェクトのレビューを集約して保管することで、類似の状況が発生した際に参照することが可能にされている。これにより、業務支援データベース1215は、以前に成功した方法や避けるべき失敗例を学ぶことができ、課題解決への適正な対応も可能にしている。
【0104】
その他のデータベース1216は、業界特有の規制、法律遵守の要件、安全基準などの受発注プロセスにおいて法的な要件を満たすために重要な規制とコンプライアンスの情報、消費者行動の分析、競合他社の動向、市場の成長予測など市場調査データ、緊急対応プランや危機管理プロトコルのような情報を記憶している。このように、その他のデータベース1216は、受発注プロセスにおいてさまざまな特別なニーズに対応し、大規模言語モデルの学習を支援するための多様な情報を提供可能にしている。
【0105】
(受発注活動支援プログラム)
図3に示すように、受発注支援装置1において、情報受付部111、外部通話プロンプト生成部112、大規模言語モデル部113、初期設定プロンプト生成部114、受発注プロンプト生成部115、通信制御部116、及び端末制御部117は、ハードウェア及びソフトウェアの何れで構成されていてもよい。これらの各部111~117は、少なくとも制御部11の一部を構成している。各部111~117がソフトウェアにより構成されている場合は、制御部11であるコンピュータに、受発注支援情報の作成に特化された自然言語処理のための言語モデルを利用することにより、受発注支援情報を生成する受発注活動支援プログラムをコンピュータ(制御部11)に実行させるようになっている。
【0106】
具体的な一例を示すと、受発注活動支援プログラムは、利用者4の課題の受付けからベンダーへの発注に至るまでの受発注プロセスの受発注に関連する受発注関連情報が記憶された受発注データベース121と、受発注プロセスの各段階を示す受発注ステージに従って利用者4との会話を行うように指示する前提条件情報が記憶された初期設定記憶部16と、受発注データベース121の受発注関連情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、受発注プロセスにおいて利用者4に提示する受発注支援情報を文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部113とを有したコンピュータ(制御部11)に、利用者4との会話における利用者4の回答情報を受け付ける情報受付処理ステップ(S1)と、受発注プロセスの開始時に、初期設定記憶部16の前提条件情報を、大規模言語モデルのプロンプトに含めることで、受発注ステージに従った会話を利用者4との間で行うことを、大規模言語モデルにおける受発注支援情報の生成の前提条件として指示する初期設定プロンプト生成処理ステップ(S2)と、受発注プロセスの開始後における情報受付処理ステップ(S1)で受け付けられた回答情報を、大規模言語モデル部113のプロンプトに含めることで、前提条件に基づいて受発注ステージに適合した受発注支援情報を大規模言語モデルに生成させる受発注プロンプト生成処理ステップ(S3)とを実行させるためのプログラムである。尚、受発注活動支援プログラムは、制御部11における各部111~117の機能を処理ステップとしてコンピュータに実行させるようになっていてもよい。
【0107】
上記の構成によれば、受発注プロセスの開始時に、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルに対して受発注ステージに従った会話を行うように初期設定し、受発注プロセスの開始後における利用者4との会話の回答情報をプロンプトに含めることで、人間のコンシェルジュと会話するように、即ち、利用者4が大規模言語モデルに入力するためのプロンプトを記述することなく簡単な問診や自然言語のやり取りだけで発注先を探すなどの受発注活動を十分に支援することが可能になる。これにより、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルによる受発注プロセス全体における十分な支援により受発注活動を容易に行うことが可能になる。
【0108】
また、受発注活動支援プログラムは、パーソナルコンピュータやタブレット端末などの情報処理装置にインストールするだけの作業で、情報処理装置を受発注支援装置1として機能させることができる。尚、プログラムは、CD-ROMやUSBメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されてもよいし、インターネットなどの双方向やテレビ放送などの一方向の通信網や通信回線を介して配付されてもよい。
【0109】
(受発注活動支援方法)
受発注支援装置1は、コンピュータ(制御部11)に受発注活動支援方法を実行させるようになっている。具体的には、利用者4の課題の受付けからベンダーへの発注に至るまでの受発注プロセスの受発注に関連する受発注関連情報が記憶された受発注データベース121と、受発注プロセスの各段階を示す受発注ステージに従って利用者4との会話を行うように指示する前提条件情報が記憶された初期設定記憶部16と、受発注データベース121の受発注関連情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、受発注プロセスにおいて利用者4に提示する受発注支援情報を文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部113とを有したコンピュータ(制御部11)に、利用者4との会話における利用者4の回答情報を受け付ける情報受付処理と、受発注プロセスの開始時に、初期設定記憶部16の前提条件情報を、大規模言語モデルのプロンプトに含めることで、受発注ステージに従った会話を利用者4との間で行うことを、大規模言語モデルにおける受発注支援情報の生成の前提条件として指示する初期設定プロンプト生成処理と、受発注プロセスの開始後における情報受付処理で受け付けられた回答情報を、大規模言語モデル部113のプロンプトに含めることで、前提条件に基づいて受発注ステージに適合した受発注支援情報を大規模言語モデルに生成させる受発注プロンプト生成処理とを実行させるための方法である。
【0110】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものである。よって、それら変更例及び修正例は、本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 受発注支援装置
2 利用者端末
3 ベンダー端末
4 利用者
5 インターネット
7 管理者端末
11 制御部
12 受発注記憶部
13 通信部
14 表示装置
15 入力装置
16 初期設定記憶部
111 情報受付部
112 外部通話プロンプト生成部
113 大規模言語モデル部
114 初期設定プロンプト生成部
115 受発注プロンプト生成部
116 通信制御部
117 端末制御部
【要約】
【課題】受発注プロセス全体における十分な支援により受発注活動を容易に行うことを可能にする。
【解決手段】本発明の受発注支援装置1は、受発注データベース121の受発注関連情報に基づいて、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、受発注支援情報を生成するように学習及び調整が行われることで、受発注支援情報の作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部113と、利用者4との会話における利用者4の回答情報を受け付ける情報受付部111と、大規模言語モデルにおける受発注支援情報の生成の前提条件として指示する初期設定プロンプト生成部114と、前提条件に基づいて受発注ステージに適合した受発注支援情報を大規模言語モデルに生成させる受発注プロンプト生成部115とを有している。
【選択図】
図1