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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】靴磨き装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 23/02 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A47L23/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019237019
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104208
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 智博
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-509948(JP,A)
【文献】特開平10-314090(JP,A)
【文献】特開平11-192196(JP,A)
【文献】特開2003-089991(JP,A)
【文献】特開平01-317422(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0053687(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106820462(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107811597(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110251042(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L23/00-23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴を収納する収納庫と、
前後方向に延びる回転軸線まわりに回転可能に前記収納庫によって支持され、靴の爪先が前側に向くように前記収納庫内の靴を支持する支持部と、
前記支持部を回転させる駆動力を発生する駆動部と、
靴用の艶出し液を貯留する艶出し液貯留部と、
前記艶出し液貯留部内の艶出し液を前記収納庫内の靴に噴射する噴射口を有するノズルと、
前記艶出し液貯留部およびノズルを前記収納庫内で前後方向にスライドさせるスライド機構とを含む、靴磨き装置。
【請求項2】
前記収納庫内の靴に接触するモップ部をさらに含む、請求項1に記載の靴磨き装置。
【請求項3】
靴用の洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、
前記艶出し液貯留部内の艶出し液と前記洗浄液貯留部内の洗浄液とを切り替えて前記ノズルに供給する供給部とをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の靴磨き装置。
【請求項4】
噴射停止時には前記噴射口が横または上を向くように前記ノズルの姿勢を変更する変更部をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の靴磨き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴磨き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特公昭63-11892号公報は、人手により靴磨きが行われることを開示している。革靴などの靴磨きの一般的な作業手順として、作業者は、まず靴をブラッシングして汚れを落としてから、市販の艶出しクリームや艶出しスプレーを靴に塗布して靴の艶出しを行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
靴の艶出しを自動で行えると、便利である。
【0004】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、靴の艶出しを自動で行える靴磨き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、靴を収納する収納庫と、靴用の艶出し液を貯留する艶出し液貯留部と、前記艶出し液貯留部内の艶出し液を前記収納庫内の靴に噴射する噴射口を有するノズルとを含む、靴磨き装置である。
【0006】
また、本発明は、前記靴磨き装置が、前記ノズルを前記収納庫内でスライドさせるスライド機構をさらに含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記靴磨き装置が、回転可能に前記収納庫によって支持され、前記収納庫内の靴を支持する支持部と、前記支持部を回転させる駆動力を発生する駆動部とをさらに含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記靴磨き装置が、靴用の洗浄液を貯留する洗浄液貯留部と、前記艶出し液貯留部内の艶出し液と前記洗浄液貯留部内の洗浄液とを切り替えて前記ノズルに供給する供給部とをさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記靴磨き装置が、噴射停止時には前記噴射口が横または上を向くように前記ノズルの姿勢を変更する変更部をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、靴磨き装置の収納庫に靴を収納すれば、その後、艶出し液貯留部内の艶出し液がノズルの噴射口から収納庫内の靴に噴射されるので、手作業でなくても靴に艶出し液を塗布することができる。そのため、靴の艶出しを自動で行える。
【0011】
また、本発明によれば、ノズルがスライド機構によって収納庫内でスライドするので、ノズルの噴射口から噴射される艶出し液を収納庫内の靴の広範囲に塗布することができる。そのため、靴の広範囲における艶出しを自動で行える。
【0012】
また、本発明によれば、収納庫内の靴は、駆動部の駆動力によって回転する支持部によって支持されるので、靴が支持部とともに回転することによって姿勢を変えることにより、靴においてノズルの噴射口からの艶出し液が塗布される領域を変更することができる。これにより、収納庫内の靴において艶出し液を塗布すべき全ての領域に、艶出し液を漏れなく塗布することができる。そのため、靴全体の艶出しを自動で行える。
【0013】
また、本発明によれば、洗浄液貯留部内の洗浄液と艶出し液貯留部内の艶出し液とが、供給部によってノズルに切替供給されるので、ノズルの噴射口から収納庫内の靴に洗浄液および艶出し液を選択的に噴射することができる。これにより、靴磨き装置では、収納庫内の靴に洗浄液を塗布して靴を洗浄してから、この靴に艶出し液を塗布して靴を艶出しすることができる。つまり、靴磨き装置では、靴の洗浄および艶出しを自動で行える。
【0014】
また、本発明によれば、少なくとも艶出し液の噴射停止時には、ノズルの姿勢が変更されて噴射口が横または上を向くので、例えば、靴への艶出し液の塗布後に艶出し液が噴射口から不意に垂れて靴に付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施形態に係る洗濯機および靴磨き装置の斜視図である。
図2】靴磨き装置の斜視図である。
図3】靴磨き装置における洗浄液および艶出し液についての配管図である。
図4図2とは違う方向から見た靴磨き装置の斜視図である。
図5】靴磨き装置の平面図である。
図6図5のA-A矢視断面図である。
図7図5のB-B矢視断面図である。
図8】靴磨き装置において実行される処理を示すフローチャートである。
図9】靴磨き装置において実行される処理を示すフローチャートである。
図10】靴磨き装置において実行される処理を示すフローチャートである。
図11】靴を支持する支持部が180度位置にあるときの靴磨き装置の縦断面正面図である。
図12】支持部が0度位置にあるときの靴磨き装置の縦断面正面図である。
図13】支持部が左45度位置にあるときの靴磨き装置の縦断面正面図である。
図14】支持部が左90度位置にあるときの靴磨き装置の縦断面正面図である。
図15】支持部が右150度位置にあるときの靴磨き装置の縦断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機100および靴磨き装置1の斜視図である。以下では、図1の洗濯機100および靴磨き装置1を正面から見たときを基準として、これらの左右方向X、前後方向Yおよび上下方向Zを定義する。左右方向Xは、図1の左上側に相当する左側X1と、図1の右下側に相当する右側X2とを含む。前後方向Yは、図1の左下側に相当する前側Y1と、図1の右上側に相当する後側Y2とを含む。上下方向Zは、図1の上側に相当する上側Z1と、図1の下側に相当する下側Z2とを含む。左右方向Xおよび前後方向Yは、横方向、詳しくは水平方向に含まれる。上下方向Zは、垂直方向、換言すれば洗濯機100や靴磨き装置1の高さ方向と同じである。
【0017】
洗濯機100の一例は、水平または略水平に沿って前後方向Yに延びる回転軸線を有する回転ドラム(図示せず)を内蔵したドラム式洗濯機である。洗濯機100は、ボックス状の筐体101を有する。筐体101の正面部101Aには、回転ドラムに洗濯物を出し入れするための出入口101Bが形成される。正面部101Aには、出入口101Bを開閉する扉102が設けられる。正面部101Aにおける出入口101Bの周辺には、使用者向けの情報が表示される表示部103と、ダイヤルなどによって構成されて洗濯機100の運転のために使用者によって操作される操作部104とが設けられる。
【0018】
靴磨き装置1は、洗濯機100の下側Z2に配置される。この実施形態では、靴磨き装置1と洗濯機100とが別々の装置であって、洗濯機100が靴磨き装置1の上に載せられるが、靴磨き装置1は、洗濯機100の一部として、筐体101の下部に内蔵されてもよい。いずれにせよ、靴磨き装置1は、洗濯機100の下部スペースを有効利用して配置される。靴磨き装置1は、その外殻をなす直方体ボックス状のキャビネット2と、引出部3とを含む。キャビネット2の下面の四隅には、床面などの水平な載置面に接触する脚4が1つずつ設けられる。
【0019】
引出部3は、正面扉5と収納庫6とを含み、キャビネット2によって前後方向Yへスライド可能に支持される。図1における引出部3は、収容位置にある。収容位置の引出部3では、収納庫6が、キャビネット2の内部空間に収容された状態にある。正面扉5は、前後方向Yに一致した板厚方向を有する板状に形成され、キャビネット2よりも前側Y1に配置される。左右方向Xにおける正面扉5の両端部は、キャビネット2よりも外側へ突出して配置される。正面扉5の上端面には、使用者が引出部3をスライドさせるために指を掛ける凹部5Aと、靴磨き装置1の運転のために使用者によって操作される操作部5Bとが、例えば左側X1からこの順番で設けられる。
【0020】
図2は、収納庫6の斜視図である。収納庫6は、キャビネット2よりも一回り小さい樹脂製または金属製の直方体であって、正面扉5の後側Y2に配置される。収納庫6は、正面扉5に固定される前壁6Aと、前壁6Aの後側Y2に配置された後壁6Bと、前壁6Aおよび後壁6Bの左端間に架設された左壁6Cと、前壁6Aおよび後壁6Bの右端間に架設された右壁6Dとを有する。収納庫6は、前壁6Aおよび後壁6Bの下端間に架設されるとともに左壁6Cおよび右壁6Dの下端間にも架設された矩形状の底壁6Eも有する。前壁6Aの前面部と、後壁6Bの後面部と、左壁6Cの左面部と、右壁6Dの右面部と、底壁6Eの下面部(後述する下面部6H)とは、収納庫6における複数、具体的には5つの外面部である。
【0021】
収納庫6は、前壁6A、後壁6B、左壁6C、右壁6Dおよび底壁6Eによって囲まれた直方体状の内部空間6Fを有する。内部空間6Fは、一足の靴Sを収納できる大きさを有する。この実施形態における靴Sは、革靴であるが、革靴以外の靴であってもよい。収納庫6の上端には、前壁6A、後壁6B、左壁6Cおよび右壁6Dの各上端によって区画されて収納庫6の内部空間6Fを上側Z1へ開放した矩形状の出入口6Gが形成される。
【0022】
底壁6Eの上面部には、底壁6Eの中央部によって支持されて縦軸まわりに回転可能な円盤状の回転盤7と、回転盤7を挟んで十字に配置された4つの隆起部8とが設けられる。各隆起部8は、回転盤7寄りに配置されて回転盤7から離れるにつれて上側Z1へ傾斜した三角形状の第1傾斜面8Aと、第1傾斜面8Aにおける二辺にそれぞれ接続された一対の第2傾斜面8Bとを有する。一対の第2傾斜面8Bは、底壁6Eの上面部から上側Z1へ隆起した山型をなす。
【0023】
引出部3は、収納庫6内において一足の靴Sをそれぞれ支持する一対の支持部11と、回転盤7に取り付けられたモップ部12と、靴Sに洗浄液や艶出し液を噴射するための噴射ユニット13とをさらに含む。
【0024】
一対の支持部11は、左側X1の左支持部11Lと、右側X2の右支持部11Rとによって構成される。左支持部11Lと右支持部11Rとは、平面視において回転盤7を基準に左右対称に配置される。各支持部11は、いわゆるシューキーパと同様の構造を有する。具体的には、各支持部11は、収納庫6の後壁6Bによって支持された円盤状の根元部11Aと、根元部11Aの外周部の周上1箇所から前側Y1へ延びるロッド部11Bと、ロッド部11Bの途中に設けられた踵支持部11Cと有する。各支持部11は、ロッド部11Bの前側Y1に設けられた爪先支持部11Dと、爪先支持部11Dから後側Y2へ延びてロッド部11Bに連結された一対の針金状の連結部11Eとを有する。
【0025】
根元部11Aは、その中心を通って前後方向Yに延びる回転軸線J(後述する図7参照)まわりに360度回転可能である。そのため、支持部11全体も回転軸線Jまわりに回転可能である。ロッド部11Bには、一対の連結部11Eが差し込まれる溝11Fと、溝11Fの左右両側に設けられて前後方向Yに並ぶ複数の調節穴11Gとが形成される。踵支持部11Cは、前後方向Yに延びるロッド部11Bに直交するようにロッド部11Bから突出して配置される。爪先支持部11Dは、踵支持部11Cの突出方向とは反対の方向に膨出した円弧面を有する半円筒状である。一対の連結部11Eの後端部は、互いに離れるように折り曲げられ、ロッド部11Bにおけるいずれかの調節穴11Gに1つずつ嵌め込まれる。各連結部11Eの後端部が嵌め込まれる調節穴11Gを変更することによって、ロッド部11Bからの各連結部11Eの前側Y1への突出量を調節し、これにより、靴Sのサイズに応じて支持部11の前後方向Yの長さを調節することができる。
【0026】
ロッド部11Bの後端が根元部11Aの下端に位置するときの支持部11は、回転軸線Jまわりの回転方向における0度位置にある。ロッド部11Bが根元部11Aの上端に位置するときの支持部11は、回転方向における180度位置にある。以下では、各支持部11の回転方向における位置つまり回転位置について、正面視における0度位置を基準として、0度位置から時計回りの位置を「左」と「回転角度」との組み合わせによって定義したり、0度位置から反時計回りの位置を「右」と「回転角度」との組み合わせによって定義したりすることがある。例えば、図2における各支持部11の位置は、0度位置から正面視で反時計回りに135度回転した「右135度位置」にある。
【0027】
モップ部12は、例えば円盤状に形成された布製のモップによって構成される。モップ部12の中央部は、回転盤7を包み込むことによって回転盤7に取り付けられることにより、回転盤7を介して収納庫6の底壁6Eによって支持される。そのため、モップ部12全体は、回転盤7と一体回転可能である。モップ部12の中央部には、回転盤7を包む込んだ状態を維持するために互いに密着した一対の面ファスナ12Aが設けられる。
【0028】
噴射ユニット13は、スライド機構15と、スライド機構15によって収納庫6の内部空間6Fの上部でスライドさせられるスライドユニット16とを含む。噴射ユニット13は、靴用の洗浄液いわゆるリムーバを貯留する容器である洗浄液貯留部17と、靴用の艶出し液を貯留する容器である艶出し液貯留部18とをさらに含む。
【0029】
スライド機構15は、収納庫6の内部空間6Fを左右に二等分するように前後方向Yに延びて前壁6Aおよび後壁6Bの上端間に架設されたレール部21と、レール部21の後端部に設けられた駆動ローラ22と、レール部21の前端部に設けられた従動ローラ23とを含む。レール部21の後端部は、後壁6Bを貫通して後壁6Bよりも後側Y2に配置され、レール部21の前端部は、前壁6Aを貫通して前壁6Aよりも前側Y1に配置される。駆動ローラ22および従動ローラ23のそれぞれは、左右方向Xに延びる回転軸線まわりに回転可能である。
【0030】
スライド機構15は、後壁6Bの後面部6Iの上端部に設けられて駆動ローラ22に連結された駆動モータ24と、駆動ローラ22および従動ローラ23に掛けられて上下方向Zに扁平で前後方向Yに長い環状のベルト25とを含む。駆動モータ24が作動すると、駆動ローラ22が駆動回転し、ベルト25が周回移動する。これに応じて従動ローラ23が従動回転する。駆動モータ24は、駆動ローラ22が正逆回転するように作動することができ、駆動ローラ22の回転方向に応じて、ベルト25の周回方向が変化する。
【0031】
スライドユニット16は、左右方向Xに延びる板状であってベルト25に固定されたブラケット26と、左右方向Xにおけるブラケット26の両端部に設けられた左右一対のノズル27と、各ノズル27の姿勢を変更する変更部28とをさらに含む。ブラケット26がベルト25に固定されるので、スライドユニット16は、ベルト25の周回移動に応じて前後方向Yにスライド可能である。図2に示すスライドユニット16は、スライド範囲における後端の後退位置にある。スライド範囲における前端まで前進した時のスライドユニット16は、前進位置にあり、収納庫6の内部空間6Fの前端に配置される。スライドユニット16の待機位置は、この実施形態では前進位置であるが、後進位置であってもよい。
【0032】
各ノズル27は、例えば、洗浄液や艶出し液を噴射するための噴射口27Aが先端部に形成された管状であり、各ノズル27の根元部がブラケット26に固定される。この状態における各ノズル27は、図2において実線で示す待機位置と、図2において破線で示す噴射位置との間で、左右方向Xに延びる回動軸線まわりに回動可能である。待機位置にあるノズル27は、噴射口27Aが横を向くように水平な姿勢をとる。この実施形態では、待機位置にあるノズル27の噴射口27Aは、前側Y1を向くが、例えば左側X1または右側X2を向いてもよい。噴射位置にあるノズル27は、噴射口27Aが下側Z2を向くように垂直な姿勢をとる。
【0033】
変更部28は、電動のモータなどによって構成されたアクチュエータであり、伝達機構(図示せず)を介して各ノズル27に連結される。変更部28は、一対のノズル27を一括回動させる。そのため、一対のノズル27では、一方のノズル27が待機位置にあるときには他方のノズル27も待機位置にあり、一方のノズル27が噴射位置にあるときには他方のノズル27も噴射位置にある。後述するように、洗浄液や艶出し液の噴射停止時には、変更部28は、待機位置に配置されるように各ノズル27の姿勢を変更し、各ノズル27の噴射口27Aを横に向ける。なお、待機位置にあるときの各ノズル27の噴射口27Aは、真横でなく真上または斜め上を向いてもよい。
【0034】
図3は、靴磨き装置1における洗浄液および艶出し液についての配管図である。噴射ユニット13は、洗浄液貯留部17および艶出し液貯留部18のそれぞれと各ノズル27とをつなぐ流路である供給路29と、供給路29の途中に設けられた電動の切替弁である供給部30とをさらに含む。洗浄液貯留部17および艶出し液貯留部18は、この実施形態ではスライドユニット16の一部としてブラケット26に固定されるが(図2参照)、例えば収納庫6に固定されてもよく、その場合の供給路29は、スライドユニット16のスライドを邪魔しないように長めに設定される。
【0035】
供給路29は、洗浄液貯留部17と供給部30とをつなぐ第1上流路29Aと、艶出し液貯留部18と供給部30とをつなぐ第2上流路29Bと、供給部30からノズル27へ向けて延びる中流路29Cと、中流路29Cから分岐して一対のノズル27にそれぞれつながる一対の下流路29Dとを含む。洗浄液貯留部17内の洗浄液は、第1上流路29Aに供給される。噴射ユニット13は、洗浄液貯留部17内の洗浄液を第1上流路29Aに圧送するポンプを含んでもよい。艶出し液貯留部18内の艶出し液は、第2上流路29Bに供給される。噴射ユニット13は、艶出し液貯留部18内の艶出し液を第2上流路29Bに圧送するポンプを含んでもよい。
【0036】
供給部30は、例えば多方弁であり、洗浄液貯留部17内から第1上流路29Aに供給された洗浄液と、艶出し液貯留部18内から第2上流路29Bに供給された艶出し液とを選択的に中流路29Cに供給したり、中流路29Cへの洗浄液および艶出し液の供給を停止したりする。中流路29Cに供給された洗浄液または艶出し液は、下流路29Dから各ノズル27に供給されて、一対のノズル27の噴射口27Aから収納庫6内つまり内部空間6Fに一斉にスプレー噴射される。つまり、供給部30は、洗浄液貯留部17内の洗浄液と艶出し液貯留部18内の艶出し液とを切り替えて各ノズル27に供給する。なお、これらの洗浄液や艶出し液は、引圧によって各ノズル27に供給されてもよい。
【0037】
図4は、図2とは違う方向から見た靴磨き装置1の斜視図である。引出部3は、モップ部12が取り付けられた回転盤7を回転させる駆動力を発生する第1駆動部31と、一対の支持部11のそれぞれを回転させる駆動力を発生する第2駆動部32と、第2駆動部32の駆動力を各支持部11に伝達する伝達機構33とを含む。
【0038】
第1駆動部31は、電動のモータであり、収納庫6が有する複数の外面部における一つである底壁6Eの下面部6Hの中央部に設けられる。第1駆動部31は、発生した駆動力を出力する出力軸31A(図2参照)を有する。出力軸31Aは、底壁6Eを貫通して上側Z1へ突出し、収納庫6内の回転盤7に同軸上で固定される。第2駆動部32も、電動のモータであり、第1駆動部31が設けられた下面部6Hに設けられ、具体的には、第1駆動部31に後側Y2から隣接するように下面部6Hの後端部に配置される。第2駆動部32は、発生した駆動力を出力する出力軸32Aを有する。出力軸32Aは、後側Y2へ突出し、その後端部は、下面部6Hよりも後側Y2に配置される。
【0039】
伝達機構33は、第2駆動部32の出力軸32Aに取り付けられた駆動歯車34と、一対の支持部11のそれぞれに1つずつ取り付けられた左右一対の従動歯車35と、これらの従動歯車35のそれぞれと噛み合う中継歯車36と、第2駆動部32の駆動力を駆動歯車34から中継歯車36に伝達する伝達部37とを有する。
【0040】
駆動歯車34は、出力軸32Aと一体回転可能な平歯車である。従動歯車35に関連して、各支持部11の根元部11A(図2参照)には、根元部11Aの中心から後側Y2へ突出して収納庫6の後壁6Bを貫通した回転軸11Hが設けられる。前述した回転軸線J(図7参照)は、回転軸11Hの中心を通る。各従動歯車35は、各支持部11の回転軸11Hの後端部に1つずつ直結された平歯車であり、対応する支持部11と一体回転可能である。中継歯車36は、後壁6Bから後側Y2へ突出した支持軸38によって回転可能に支持された平歯車であり、駆動歯車34よりも大径であるが、従動歯車35よりも小径である。中継歯車36は、左右の従動歯車35の間に配置され、かつ駆動歯車34の上側Z1に配置される。中継歯車36は、左右の従動歯車35のそれぞれと噛み合う大歯車36Aと、大歯車36Aと同軸上に配置されて大歯車36Aの前面部に固定された小歯車36Bとを有する。伝達部37は、駆動歯車34と小歯車36Bとに掛けられる歯付きのエンドレスベルトである。第2駆動部32が作動して駆動力を発生すると、この駆動力は、駆動歯車34から出力されて伝達部37を周回移動させ、中継歯車36を回転させる。これにより、中継歯車36と噛み合った左右の従動歯車35が、互いに同じ方向に回転する。
【0041】
収納庫6の底壁6Eには、その左端縁および右端縁から1つずつ下側Z2へ延びる板状のガード39が一対設けられる。一対のガード39の下端部は、互いに接近する方向に折り曲げられる。第1駆動部31および第2駆動部32は、一対のガード39の間に配置されるので、外部と衝突しないように一対のガード39によって保護された状態にある。
【0042】
靴磨き装置1は、CPUやメモリやタイマなどを含むマイコンによって構成された制御部40(図1参照)をさらに含む。制御部40には、前述した操作部5B(図1参照)、駆動モータ24、変更部28、供給部30、第1駆動部31および第2駆動部32のそれぞれが電気的に接続される。靴磨き装置1は、各支持部11の回転位置を検出して制御部40に入力するセンサなどの検出部(図示せず)や、スライドユニット16の前後方向Yの位置を検出して制御部40に入力する別の検出部(図示せず)を含んでもよい。
【0043】
次に、靴磨き装置1において実行される洗浄運転について詳しく説明する。この洗浄運転は、靴Sから埃やゴミなどの汚れを除去する汚れ除去工程と、汚れが除去された靴Sを磨く磨き工程とを含む。汚れ除去工程には、比較的汚れの少ない靴Sを想定した通常除去コースと、通常コースよりも汚れのひどい靴Sを洗浄するしっかり除去コースという複数のコースがある。磨き工程には、簡単磨きコースと、簡単磨きコースよりも靴Sをしっかり磨くしっかり磨きコースという複数のコースがある。使用者は、正面扉5の操作部5Bを操作することによって、汚れ除去工程および磨き工程のそれぞれにおけるコースを選択することができる。なお、使用者は、操作部5Bを操作することによって、汚れ除去工程および磨き工程の一方を省略することもできる。使用者によるコースの選択結果は、制御部40に一時記憶される。
【0044】
洗浄運転の開始に先立って、使用者は、靴磨き装置1の引出部3を引出位置まで引き出して収納庫6の出入口6Gを開放し、一足の靴Sを出入口6Gから収納庫6内に収納する。その際、図5を参照して、使用者は、それぞれの支持部11の爪先支持部11Dおよび踵支持部11Cを、この順番で靴Sの履き口SHに挿通した後に、靴Sの内部空間に挿入する。これにより、収納庫6内では、一足の靴Sが、互いの爪先が前側Y1を向いて左右方向Xに並んだ状態で一対の支持部11によってそれぞれ支持される。なお、図5では、モップ部12、洗浄液貯留部17、艶出し液貯留部18および変更部28などの図示が省略される。
【0045】
また、図5と、図5のA-A矢視断面図である図6と、図5のB-B矢視断面図である図7とでは、各支持部11は右135度位置にあるが、靴Sの収納時における各支持部11の待機位置は、0度位置(図12参照)である。そのため、各支持部11によって支持された各靴Sは、下向きの姿勢にある。下向きになった一対の靴Sのそれぞれでは、甲部分SUおよび履き口SHが真下を向いて、靴底SZが真上を向く。また、この状態において、それぞれの支持部11の回転軸線Jは、回転軸線Jの延びる方向である前後方向Yから見て、支持部11によって支持された靴Sの輪郭(図7において靴Sを示した二点鎖線)の内側に配置される。
【0046】
支持部11によって支持された状態における一足の靴Sのそれぞれの内部空間では、支持部11の爪先支持部11Dが、靴Sの内側から靴底SZに接触した状態にあり、支持部11の踵支持部11Cが、靴Sの内側から靴Sの踵部分SKに接触した状態にある。このような2点接触によって爪先支持部11Dと踵支持部11Cとが靴Sの内部空間で突っ張った状態にあるので、一足の靴Sのそれぞれは、対応する支持部11によって、支持部11から不意に外れないように支持される。その後、使用者は、引出部3を、収容位置まで戻す。これにより、洗浄運転の準備が完了する。
【0047】
図8図10は、洗浄運転において制御部40によって実行される処理を示すフローチャートである。図8を参照して、洗浄運転の開始に伴い、まず、制御部40は、今回の汚れ除去工程のコースを確認する(ステップS1)。今回の汚れ除去工程がしっかり除去コースであれば(ステップS1でYES)、制御部40は、第2駆動部32を作動させて各支持部11を180度位置(図11参照)まで回転させることによって、各支持部11によって支持された靴Sを上向きにする(ステップS2)。上向きになった一対の靴Sのそれぞれでは、甲部分SUおよび履き口SHが真上を向いて、靴底SZが真下を向く。なお、以下では、靴Sの外面において靴底SZ以外の部分を、靴Sの表面ということがある。
【0048】
次に、制御部40は、これらの靴Sに洗浄液を塗布する(ステップS3)。具体的には、制御部40は、まず、噴射ユニット13の変更部28を作動させることによってスライドユニット16の左右一対のノズル27を待機位置から噴射位置まで回動させて各ノズル27の噴射口27Aを下向きにする。このとき、左側X1のノズル27は、左支持部11Lによって支持された靴Sに対して、左右方向Xにおいて同じかつ上側Z1の位置に配置される(図11参照)。また、右側X2のノズル27は、右支持部11Rによって支持された靴Sに対して、左右方向Xにおいて同じかつ上側Z1の位置に配置される(図11参照)。
【0049】
そして、制御部40は、供給部30を制御することによって洗浄液貯留部17内の洗浄液を各ノズル27に供給して各ノズル27の噴射口27Aから靴Sに噴射しつつ(図11の破線を参照)、駆動モータ24を作動させることによってスライドユニット16を前後方向Yにスライドさせる。このとき、ノズル27の噴射口27Aから噴射された洗浄液が靴Sの表面の全域に万遍なく塗布されるように、スライドユニット16は、待機位置である前進位置から後進位置まで少なくともスライドする。後進位置までスライドしたスライドユニット16は、洗浄液がさらに念入りに靴Sの表面に塗布されるように、前進位置まで戻ることによって一往復してもよいし、一往復以上スライドしてもよい。洗浄液が塗布された靴Sの表面では、汚れが分解されたり浮き出たりする。制御部40は、スライドユニット16のスライドを終了させると、供給部30を制御して洗浄液の噴射を停止した後に、変更部28を作動させることによってスライドユニット16の左右一対のノズル27を噴射位置から待機位置まで回動させる。また、このときのスライドユニット16は、前進位置にある。
【0050】
このように靴Sに洗浄液を塗布した制御部40は、第2駆動部32を作動させて各支持部11を0度位置(図12参照)まで回転させることによって、各支持部11によって支持された靴Sを下向きにする(ステップS4)。
【0051】
次に、制御部40は、第1駆動部31を作動させて、回転盤7およびモップ部12の回転を開始する(ステップS5)。モップ部12は、収納庫6内で下向きになった一対の靴Sのそれぞれに下側Z2から接触しながら回転する。特に、モップ部12は、収納庫6の底壁6Eの上面部に十字に配置された4つの隆起部8のそれぞれを乗り越える際に、上側Z1へ盛り上がることによって靴Sに積極的に接触する。モップ部12の回転中において、制御部40は、第2駆動部32を作動させて各支持部11を回転させることによって、一対の靴Sのそれぞれの姿勢を変更する(ステップS6)。具体的には、モップ部12が靴Sの表面における靴底SZの近くまで届くように、制御部40は、各支持部11を、0度位置から時計回りや半時計回りに45度回転させたり(図13参照)、0度位置から時計回りや半時計回りに90度回転させたりする(図14参照)。なお、0度位置からの支持部11の回転角度は、45度や90度以外の任意の角度であってもよい。また、モップ部12は、一方向にのみ連続回転してもよいし、正転および逆転を繰り返してもよい。
【0052】
このようにモップ部12が靴Sの表面に接触することにより、靴Sの表面の汚れが洗浄液とともにモップ部12に拭き取られる。そして、モップ部12の回転開始から所定時間が経過すると(ステップS7でYES)、制御部40は、第1駆動部31を停止させてモップ部12の回転を停止する(ステップS8)。これにより、汚れ除去工程が終了する。なお、回転中のモップ部12が靴Sに引っ掛かった場合には、モップ部12の一対の面ファスナ12A(図2参照)が互いに分離することによって、回転盤7が一対の面ファスナ12Aの間を通ってモップ部12から外れる。これにより、靴Sに引っ掛かったままモップ部12が回転し続けることによって靴Sが傷むことを防止できる。
【0053】
汚れ除去工程の終了後、制御部40は、今回の磨き工程のコースを確認する(ステップS9)。今回の磨き工程がしっかり磨きコースでも簡単磨きコースでもない場合、つまり、磨き工程自体が省略される場合には(ステップS9でNOかつステップS10でNO)、先ほどの汚れ除去工程の終了に応じて、今回の洗浄運転全体が終了になる。なお、汚れ除去工程では靴Sの汚れがモップ部12に拭き取られるが、使用者は、適当なタイミングに、モップ部12の一対の面ファスナ12Aを分離してモップ部12を回転盤7から取り外して水洗いなどすることによってモップ部12をメンテナンスすることができる。
【0054】
今回の磨き工程が簡単磨きコースである場合には(ステップS9でNOかつステップS10でYES)、制御部40は、簡単磨きコースとして、第1駆動部31を作動させてモップ部12を回転させながら第2駆動部32を作動させて靴Sの姿勢を変更する(ステップS11)。これにより、汚れ除去工程において汚れが取り除かれた靴Sの表面が、回転するモップ部12によって軽く拭かれることにより、簡単に磨かれる。
【0055】
今回の磨き工程がしっかり磨きコースである場合には(ステップS9でYES)、図9を参照して、制御部40は、しっかり簡単磨きコースを開始し、まず、第2駆動部32を作動させて各支持部11を180度位置まで回転させることによって一対の靴Sを上向きにする(ステップS12)。そして、制御部40は、スライドユニット16の左右一対のノズル27を待機位置から噴射位置まで回動させる(ステップS13)。
【0056】
次に、制御部40は、スライドユニット16を前進位置から後側Y2へスライドさせて、ノズル27を、靴Sの甲部分SUの前端付近の真上の第1位置(図6参照)まで移動させる(ステップS14)。そして、制御部40は、供給部30を制御することによって艶出し液貯留部18内の艶出し液を各ノズル27に供給して各ノズル27の噴射口27Aから靴Sに噴射する(ステップS15)。このとき、制御部40は、第2駆動部32を作動させることによって各支持部11を180度位置から左150度位置および右150度位置(図15参照)のそれぞれまで回転させることにより、一対の靴Sを左右つまり時計回り反時計回りに30度ずつ回転させる(ステップS15)。これにより、それぞれの靴Sの甲部分SUの先端部の全域に艶出し液が塗布される。
【0057】
次に、制御部40は、スライドユニット16をさらに後側Y2へスライドさせて、噴射位置のノズル27を、靴Sの甲部分SUの途中付近の真上の第2位置(図6参照)まで移動させる(ステップS16)。そして、制御部40は、ステップS15と同様に、艶出し液を各ノズル27の噴射口27Aから靴Sに噴射しつつ、一対の靴Sを左右に30度ずつ回転させる(ステップS17)。これにより、それぞれの靴Sの甲部分SUの途中の全域に艶出し液が塗布される。
【0058】
次に、制御部40は、スライドユニット16をさらに後側Y2へスライドさせて、噴射位置のノズル27を、靴Sの甲部分SUの後端付近の真上の第3位置(図6参照)まで移動させる(ステップS18)。そして、制御部40は、ステップS15およびS17と同様に、艶出し液を各ノズル27の噴射口27Aから靴Sに噴射しつつ、一対の靴Sを左右に30度ずつ回転させる(ステップS19)。これにより、それぞれの靴Sの甲部分SUの後端の全域に艶出し液が塗布される。このように、スライドユニット16の移動と停止とが繰り返され、スライドユニット16の停止中に靴Sが左右に回転する間に靴Sの甲部分SUの前端、途中および後端に順番に艶出し液が噴射されることによって、甲部分SUの全域に艶出し液が満遍なく塗布される。制御部40は、このように甲部分SUに艶出し液を塗布した後に、供給部30を制御して艶出し液の噴射を停止する。
【0059】
使用者は、事前に正面扉5の操作部5Bを操作することによって、靴Sの側面SSにも艶出し液を塗布するかどうかを選択することができる。側面SSとは、甲部分SU以外の靴Sの表面において爪先から踵までの領域である(図15参照)。図10を参照して、靴Sの側面SSにも艶出し液を塗布する必要があれば(ステップS20でYES)、その準備のために、制御部40は、スライドユニット16の左右一対のノズル27を変更部28によって噴射位置から待機位置まで回動させて(ステップS21)、スライドユニット16を前側Y1へスライドさせて前進位置に戻す(ステップS22)。スライドユニット16が前進位置に戻ったとき、各支持部11は180度位置にあって、一対の靴Sは、上向きの状態にある。
【0060】
次に、制御部40は、第2駆動部32を作動させることによって、各支持部11を180度位置から左135度位置まで回転させることにより、一対の靴Sを正面視で左つまり反時計回りに45度回転させる(ステップS23)。そして、制御部40は、スライドユニット16の左右一対のノズル27を待機位置から噴射位置まで回動させてから(ステップS24)、スライドユニット16を前進位置から後進位置までスライドさせながら艶出し液を各ノズル27の噴射口27Aから各靴Sにおける右側X2の側面SSに噴射する(ステップS25)。これにより、それぞれの靴Sにおける右側X2の側面SSにおいて爪先から踵までの全域に艶出し液が満遍なく塗布される。支持部11が左135度位置にあれば、ノズル27から噴射された艶出し液が靴Sの靴底SZに付着しない。
【0061】
次に、制御部40は、第2駆動部32を作動させることによって、各支持部11を右135度位置まで回転させることにより、一対の靴Sを正面視で右つまり時計回りに45度回転させる(ステップS26)。そして、制御部40は、スライドユニット16を後進位置から前進位置までスライドさせながら艶出し液を各ノズル27の噴射口27Aから各靴Sにおける左側X1の側面SSに噴射する(ステップS27)。これにより、それぞれの靴Sにおける左側X1の側面SSにおいて爪先から踵までの全域に艶出し液が満遍なく塗布される。支持部11が右135度位置(図15参照)にあれば、ノズル27から噴射された艶出し液が靴Sの靴底SZに付着しない。
【0062】
以上により、一対の靴Sのそれぞれでは、表面の全域つまり甲部分SUおよび左右の側面SSの全域に艶出し液が塗布される。そして、スライドユニット16が前進位置に戻ると、制御部40は、供給部30を制御して艶出し液の噴射を停止した後に、スライドユニット16の左右一対のノズル27を噴射位置から待機位置まで回動させる(ステップS28)。靴Sの側面SSに艶出し液を塗布する必要がなければ(ステップS20でNO)、制御部40は、ステップS21~S27の処理を省略して、ノズル27を噴射位置から待機位置まで回動させる(ステップS28)。
【0063】
使用者は、事前に正面扉5の操作部5Bを操作することによって、艶出し液が塗布された靴Sにおいて艶出し液を拭き取るかどうかを選択することができる。艶出し液の拭き取りが必要でなければ(ステップS29でNO)、磨ぎ工程が終了であり、今回の洗浄運転全体が終了になる。艶出し液の拭き取りが必要である場合には(ステップS29でYES)、制御部40は、第1駆動部31を作動させてモップ部12を回転させながら第2駆動部32を作動させて靴Sの姿勢を変更する(ステップS30)。これにより、靴Sの表面が、回転するモップ部12によって乾拭きされることにより、靴Sの表面から艶出し液が拭き取られて靴Sの乾燥時間が短縮するとともに、靴Sの表面の輝きが増す。艶出し液の拭き取りが終了すると、磨ぎ工程、つまり今回の洗浄運転全体が終了になる。洗浄運転終了後に、使用者は、靴磨き装置1の引出部3を引出位置まで引き出して収納庫6の出入口6Gから靴Sを取り出す。
【0064】
以上のように、靴磨き装置1の収納庫6に靴Sを収納すれば、その後、艶出し液貯留部18内の艶出し液がノズル27の噴射口27Aから収納庫6内の靴Sに噴射されるので、手作業でなくても靴Sに艶出し液を塗布することができる。そのため、靴Sの艶出しを自動で行える。
【0065】
特に、ノズル27がスライド機構15によって収納庫6内でスライドするので、ノズル27の噴射口27Aから噴射される艶出し液を収納庫6内の靴Sにおける広範囲に塗布することができる。さらに、収納庫6内の靴Sは、第2駆動部32の駆動力によって回転する支持部11によって支持されるので、靴Sが支持部11とともに回転することによって姿勢を変えることにより、靴Sにおいてノズル27の噴射口27Aからの艶出し液が塗布される領域を変更することができる。これにより、収納庫6内の靴Sにおいて艶出し液の塗布を避けたい領域以外の全ての領域に、艶出し液を漏れなく塗布することができる。以上により、靴S全体の艶出しを自動で行える。靴Sにおいて艶出し液の塗布を避けたい領域として、靴底SZ以外に、例えば靴紐などが挙げられる。なお、汚れ除去工程の際に、靴Sの表面だけでなく靴底SZにも洗浄液が塗布されてもよい。
【0066】
また、洗浄液貯留部17内の洗浄液と艶出し液貯留部18内の艶出し液とが、供給部30によってノズル27に切替供給されるので、ノズル27の噴射口27Aから収納庫6内の靴Sに洗浄液および艶出し液を選択的に噴射することができる。これにより、靴磨き装置1では、収納庫6内の靴Sに洗浄液を塗布して靴Sを洗浄してから、この靴Sに艶出し液を塗布して靴Sを艶出しすることができる。つまり、靴磨き装置1では、靴Sの洗浄および艶出しを自動で行える。また、洗浄液や艶出し液の噴射停止時には、ノズル27の姿勢が変更されて噴射口27Aが横または上を向くので、例えば、靴Sへの艶出し液の塗布後に艶出し液が噴射口27Aから不意に垂れて靴Sに付着することを防止できる。
【0067】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、ノズル27は、収納庫6内における定位置に固定されてもよい。また、例えば収納庫6の底壁6Eなどにファンなどの送風部を設けてもよい。ノズル27からの艶出し液の噴射時に送風部が靴Sの靴底SZ側から送風することにより、艶出し液が靴底SZに届きにくいので、艶出し液が靴底SZに付着することを防止できる。また、この実施形態では、収納庫6の内部空間6Fは、一足の靴Sを収納できる大きさを有するが、片方の靴Sを収納する大きさだけ有してもよい。その場合には、支持部11は、一対でなく一つだけ設けられればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 靴磨き装置
6 収納庫
11 支持部
15 スライド機構
17 洗浄液貯留部
18 艶出し液貯留部
27 ノズル
27A 噴射口
28 変更部
30 供給部
32 第2駆動部
S 靴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15