(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ケーブル分岐構造体
(51)【国際特許分類】
G05G 9/00 20060101AFI20240725BHJP
F16C 1/10 20060101ALI20240725BHJP
F16C 1/18 20060101ALI20240725BHJP
F16C 1/22 20060101ALI20240725BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20240725BHJP
B60T 11/06 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
G05G9/00 A
F16C1/10 F
F16C1/18
F16C1/22 A
G05G1/04 Z
B60T11/06
(21)【出願番号】P 2021016371
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390003816
【氏名又は名称】株式会社ユーエイ
(73)【特許権者】
【識別番号】592242327
【氏名又は名称】日本フレックス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】雄島 耕太
(72)【発明者】
【氏名】羽田 智樹
(72)【発明者】
【氏名】寺浦 崇行
(72)【発明者】
【氏名】山本 喬之
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-113605(JP,A)
【文献】特開2010-143290(JP,A)
【文献】特開2002-29205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 9/00
F16C 1/10
F16C 1/18
F16C 1/22
G05G 1/04
B60T 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周溝(11)及びインナーケーブル先端止着部(12)を有する内円盤体(1)と、
該内円盤体(1)が一軸心(L
0 )廻りに回転可能として嵌合された静止外輪体(2)と、
から成る円盤組体(10)
を、複数枚重ね合わせて、積層構造体(5)を構成し、
さらに、上記積層構造体(5)の全ての上記内円盤体(1)は、一軸心(L
0 )廻りに一体回転させるための係止連結手段(K)を備え、
一本の駆動コントロールケーブル(C
1 )は、上記積層構造体(5)の一枚の静止外輪体(2)の
2つの溝部(21)(22)の一方の溝部(21)に嵌込まれて、駆動アウターケーシング(C
11)の先端(31)は
上記一方の溝部(21)に止着され、かつ、駆動インナーケーブル(C
12)は上記内円盤体(1)の上記外周溝(11)に巻設されて先端(32)が内円盤体(1)の上記インナーケーブル先端止着部(12)に止着され、
分岐用の複数本の従動コントロールケーブル(C
2 )は、上記積層構造体(5)の各々別の静止外輪体(2)の
2つの溝部(21)(22)のいずれか一方に嵌込まれて、従動アウターケーシング(C
21)の先端(33)は止着され、かつ、従動インナーケーブルは内部の上記内円盤体(1)の上記外周溝(11)に巻設されて先端が内円盤体(1)の上記インナーケーブル先端止着部(12)に止着され、
上記積層構造体(5)を構成する上記内円盤体(1)の全てが、同一形状かつ同一寸法であって、かつ、上記積層構造体(5)を構成する上記静止外輪体(2)の全てが、同一形状かつ同一寸法であり、
一本の駆動コントロールケーブル(C
1 )の駆動力を、全ての上記内円盤体(1)の上記一軸心(L
0 )廻りの一体回転を介して、全ての複数本の従動コントロールケーブル(C
2 )に分岐伝達するよう構成したことを特徴とするケーブル分岐構造体。
【請求項2】
複数枚の上記円盤組体(10)が重ね合わされて成る上記積層構造体(5)における、上記一軸心(L
0 )方向の中央乃至中央近傍位置に存在する中央円盤組体(10Y)に、上記駆動コントロールケーブル(C
1 )を、配設した請求項1記載のケーブル分岐構造体。
【請求項3】
移動体(M)の下面(26B)における中央領域(P)に、上記積層構造体(5)を取付け、上記移動体(M)の複数の回転輪(28)と上記積層構造体(5)とを、上記従動コントロールケーブル(C
2 )にて連結すると共に、
上記移動体(M)に付設した操作レバー(30)と、上記積層構造体(5)とを、上記駆動コントロールケーブル(C
1 )にて連結し、
一本の操作レバー(30)によって、複数の回転輪(28)を操舵自在に構成した請求項1又は2記載のケーブル分岐構造体。
【請求項4】
移動体(M)の下面(26B)における中央領域(P)に、上記積層構造体(5)を取付け、上記移動体(M)の複数の回転輪(28)の制動部と上記積層構造体(5)とを、上記従動コントロールケーブル(C
2 )にて連結すると共に、
上記移動体(M)に付設した制動レバー(30B)と、上記積層構造体(5)とを、上記駆動コントロールケーブル(C
1 )にて連結し、
一本の制動レバー(30B)によって、複数の回転輪(28)を制動自在に構成した請求項1又は2記載のケーブル分岐構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル分岐構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アウターケーシング(導管)内にインナーケーブル(内索)を往復動自在に挿通したコントロールケーブルが、農業作業機械や車両等に広く用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6441414号公報
【文献】特開2018-196329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コントロールケーブルは、曲げ剛性が高いため車両等へ多数本のコントロールケーブルを配索する作業が困難な場合があった。また、コントロールケーブルは、直線状態ではインナーケーブルの操作抵抗は小さいが、曲率半径が小さくなれば操作抵抗が増加する特性を有する。
例えば、特許文献2に示す農業作業機械に於ては、コントロールケーブルは、大きなS字状に弯曲させて配索しているが、それは曲率半径を所定値以上に維持する必要性の故である。
【0005】
ところで、台車等の移動体において4個以上の複数の回転輪を同時に制動(又は操舵)させるためには、一個のブレーキ操作部と、(回転輪の個数に応じた)複数本のコントロールケーブルを、必要としていた。そのために、前述の所定値以上の曲率半径をもって、全てのコントロールケーブルを回転輪に取付けると、大きなスペースを必要とし、移動体本来の載置運搬物等の積込むスペースが犠牲となり、又は、移動体の下面に、全てのコントロールケーブルを配索することができない場合もある。
【0006】
そこで本発明は、従来のこのような問題点を解決して、一本の駆動コントロールケーブルをもって、複数の被作動部の各々に連繋された複数本の従動コントロールケーブルを、作動させて、全体のコントロールケーブルの配索スペースをコンパクト化し、配索作業を容易かつ迅速に行うことができるケーブル分岐構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、外周溝及びインナーケーブル先端止着部を有する内円盤体と;該内円盤体が一軸心廻りに回転可能として嵌合された静止外輪体と;から成る円盤組体を、複数枚重ね合わせて、積層構造体を構成し;さらに、上記積層構造体の全ての上記内円盤体は、一軸心廻りに一体回転させるための係止連結手段を備え;一本の駆動コントロールケーブルは、上記積層構造体の一枚の静止外輪体の2つの溝部の一方の溝部に嵌込まれて、駆動アウターケーシングの先端は上記一方の溝部に止着され、かつ、駆動インナーケーブルは上記内円盤体の上記外周溝に巻設されて先端が内円盤体の上記インナーケーブル先端止着部に止着され;分岐用の複数本の従動コントロールケーブルは、上記積層構造体の各々別の静止外輪体の2つの溝部のいずれか一方に嵌込まれて、従動アウターケーシングの先端は止着され、かつ、従動インナーケーブルは内部の上記内円盤体の上記外周溝に巻設されて先端が内円盤体の上記インナーケーブル先端止着部に止着され;上記積層構造体を構成する上記内円盤体の全てが、同一形状かつ同一寸法であって、かつ、上記積層構造体を構成する上記静止外輪体の全てが、同一形状かつ同一寸法であり;一本の駆動コントロールケーブルの駆動力を、全ての上記内円盤体の上記一軸心廻りの一体回転を介して、全ての複数本の従動コントロールケーブルに分岐伝達するよう構成したものである。
【0008】
また、複数枚の上記円盤組体が重ね合わされて成る上記積層構造体における、上記一軸心方向の中央乃至中央近傍位置に存在する中央円盤組体に、上記駆動コントロールケーブルを、配設したものである。
【0009】
また、移動体の下面における中央領域に、上記積層構造体を取付け、上記移動体の複数の回転輪と上記積層構造体とを、上記従動コントロールケーブルにて連結すると共に;上記移動体に付設した操作レバーと、上記積層構造体とを、上記駆動コントロールケーブルにて連結し;一本の操作レバーによって、複数の回転輪を操舵自在に構成したものである。
【0010】
また、移動体の下面における中央領域に、上記積層構造体を取付け、上記移動体の複数の回転輪の制動部と上記積層構造体とを、上記従動コントロールケーブルにて連結すると共に;上記移動体に付設した制動レバーと、上記積層構造体とを、上記駆動コントロールケーブルにて連結し;一本の制動レバーによって、複数の回転輪を制動自在に構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一本の駆動コントロールケーブルによって、全ての複数本の従動コントロールケーブルを同時に作動できる。しかも、円盤体を複数枚重ね合わせた積層構造体は、コンパクトであり、移動体下面に簡単に取着できる。かつ、小さな曲率半径をもって、従動コントロールケーブルを曲げる必要がなくなり、操作時の抵抗を低減できる。さらに、内円盤体1及び静止外輪体2の各々は、同一形状かつ同一寸法のもので済むので、同一金型,同一加工治具等をもって、能率良く、安価に、製作できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の一形態を示し、積層構造体及びコントロールケーブルの配置を例示した斜視図である。
【
図2】積層構造体の円盤体とコントロールケーブルとの取付構造を説明すると共に円盤体の具体的形状を示した分解斜視図である。
【
図3】駆動コントロールケーブルと、対応する一枚の円盤体との止着・取付構造を例示する平面図である。
【
図4】円盤体を例示し、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【
図6】移動体(台車)への応用例を示す正面図である。
【
図7】移動体(台車)への応用例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1~
図5に示す本発明の実施の一形態に於て、C
1 は一本の駆動コントロールケーブル、C
2 は複数本(図例では4本)の従動コントロールケーブルを示し、本発明に係るケーブル分岐構造体Zは、一本の駆動コントロールケーブルC
1 の駆動力を、全ての複数本の従動コントロールケーブルC
2 に、分岐伝達するものである。
【0014】
このケーブル分岐構造体Zは、内円盤体1と、この内円盤体1が一軸心L0 廻りに回転可能として嵌合された(円形環状の)外輪体2と、から成る円盤組体10を、複数枚(図例では5枚)備える。
【0015】
即ち、上記円盤組体10を複数枚重ね合わせて、短円柱状の積層構造体5を構成している。具体的には、円形上蓋3と円形下蓋4をもって、5枚重ね合わせとした円盤組体10…を、上下から挟んで、枢支軸6を串挿状に挿入して、組立てられている。なお、組立状態で枢支軸6の軸心は、前記一軸心L0 に該当することとなる。また、枢支軸6は、一端に外鍔を有し、他端に抜止め用キャップ体7が固着される。
【0016】
そして、各内円盤体1は、外周溝11、及び、インナーケーブル(内索)先端止着部12を、有する。
図2と
図3では、この止着部12は円形孔であり、インナーケーブル(内索)先端のタイコエンド8が嵌着状として、止着される。
しかも、積層構造体5として組立てられた全ての内円盤体1…は、上記一軸心L
0 廻りに一体回転させるための係止連結手段Kを、備える(
図5参照)。即ち、全ての(図例では5枚の)内円盤体1…は、常に一体として回転する。
【0017】
この係止連結手段Kについて説明する。
図3と
図4等に示すように、各内円盤体1の一面(上面)に円形凹窪部13を形成すると共に、この円形凹窪部13の内周面に凹凸歯14を設け、さらに、各内円盤体1の他面(下面)に凹凸歯15を有する低い突隆部16を設けている。即ち、係止連結手段Kは、上下隣接する内円盤体1,1を一軸心L
0 廻りに小角度調整自在として、噛合させて、上下隣接する内円盤体1,1を相互に係止(連結)できる。
【0018】
他方、
図2,
図3,
図5に示したように、外輪体2には、周方向に等ピッチにて8個の小角筒部18が突設され、
上下に隣り合う外輪体2の小角筒部18に対して、挿入可能として、45°毎に、相対的回転方向位置を変更自在であり、かつ、重ね合わせた積層構造体5では、全ての外輪体2…が一軸心L
0 廻りに非回転状態となって連結される構造である。
【0019】
そして、一本の駆動コントロールケーブルC
1 は、積層構造体5の一枚の(円盤組体10の)静止外輪体2の溝部21に嵌込まれて、その(駆動)アウターケーシングC
11の先端31は、その溝部21に止着される。
アウターケーシングC
11の先端31には、一般に、キャップが固着されているので、このキャップを溝部21に嵌込んで止着する。この止着によって、
図3に示すように、アウターケーシングC
11は、前後いずれにも移動しない。
【0020】
また、
図3から判るように、溝部21の内方向への延長線は、内円盤体1の円形の外周溝11に対して「接線」に略一致させている。従って、このような溝部21の外径寄りに止着された先端31から、さらに延びる(駆動)インナーケーブルC
12は、内側の内円盤体1の外周溝11に(例えば、300°以下の中心角度にて)巻設されている。
【0021】
かつ、外周溝11に巻設されるインナーケーブルC
12の先端32は、内円盤体1のインナーケーブル先端止着部12に、止着される。(
図3では、いわゆるタイコエンド8を上記先端32に固着して、円形孔から成る止着部12に、止着している。)
【0022】
次に、4本の従動コントロールケーブルC
2 は、残りの4枚の静止外輪体2の溝部22に嵌込まれて、そのアウターケーシングC
21の先端33は、その溝部22に止着される。
アウターケーシングC
21の先端33には、一般に、キャップが固着されているので、このキャップを溝部22に嵌込んで止着する。この止着によって、
図3に示すように、アウターケーシングC
21は、前後いずれにも移動しない。
【0023】
また、
図2及び
図1から判るように、積層構造体5の外周面から突出状かつ延伸状の従動コントロールケーブルC
2 ,C
2 ,C
2 ,C
2 と、前述の駆動コントロールケーブルC
1とは、一軸心L
0 から見て、右廻りと左廻りに、相互に逆側から接線方向へ突出(延伸)する。
【0024】
なお、従動コントロールケーブルC
2 用として、
図3に示した円盤組体10を流用するには、同図の左上方位置に示す溝部21Yを使用すれば良い。つまり、従動コントロールケーブルC
2 のアウターケーシングC
21の先端(キャップ)を、上記溝部21Yに止着すれば良い。
そして、従動インナーケーブル(図示省略)は、円盤組体10の内部の内円盤体1の外周溝11に巻設されて、先端が内円盤体1の前記インナーケーブル先端止着部12に止着される。
【0025】
巻設方向は、既説の駆動インナーケーブルC
12と、従動インナーケーブルとは、左巻きと右巻きとして、相互逆とする。
そして、
図1と
図2に示したように、一本の駆動コントロールケーブルC
1 が連繋されるのは、前記一軸心L
0 方向の中央乃至中央近傍位置に存在する中央円盤組体10Yとする。言い換えれば、円盤組体10の枚数が図例の如く奇数の場合は、真に中央の位置のものを選定する。他方、枚数が偶数の場合は、中央に最も近い2枚の内のいずれか一枚を選定する(これを中央近傍位置と言う)。
【0026】
次に、
図6と
図7に於て、移動体Mの一例として、4輪操舵の台車25を示し、この台車25における荷物を搭載する床台26の下面26Bに、積層構造体5を取付けた具体(応用)例を示す。
図7に於て、移動体M(床台26)の下面26Bにおける中央領域Pに、積層構造体5を取付ける中央領域Pは、例えば、移動体M(床台26)の縦横各寸法の40%以内の領域とするのが好ましい。特に、4個の回転輪(キャスター)28,28,28,28から等しい距離に、積層構造体5を配設するのが望ましい。
【0027】
そして、4個の回転輪(車輪)28…と積層構造体5とを、4本の従動コントロールケーブルC2 …にて、連結する。
さらに、台車25の床台26から立設された押し力付与枠体29に、操作レバー30を付設する。
この操作レバー30と、移動体M(床台26)の下面26Bに付設された積層構造体5とを、一本の駆動コントロールケーブルC1 にて、連結する。
【0028】
このように、一本の操作レバー30によって複数(図例では4個)の回転輪(車輪)28を操舵自在に構成される。
なお、
図7では、前輪・後輪を逆位相に操舵する構成である。この逆位相操舵は、移動体M(台車25)を左や右に曲がる場合にその曲率半径が小さくなり、小廻りを可能とする利点がある。また、図示省略するが、順位相に応用するも自由である。また、
図6では、従動コントロールケーブルC
2 を点線をもって簡略図示している。
【0029】
次に、
図6,
図7に代わる本発明の別の実施の形態について、(
図6,
図7を参考としながら、)以下、説明する。
即ち、本発明を移動体M(台車25)の制動(ブレーキ)の操作システムに応用した実施形態であって、移動体M(台車25の床台26)の下面26Bにおける中央領域Pに、積層構造体5を取付け、上記移動体M(台車25)の複数個(4個)の回転輪(車輪)28の制動部(図示省略)と、積層構造体5とを、従動コントロールケーブルC
2 にて連結する。
【0030】
そして、移動体Mの一部、例えば、台車25の押し力付与枠体29に、付設した制動(ブレーキ)レバー30Bと、積層構造体5とを、一本の駆動コントロールケーブルC1 にて連結する。
一本の制動レバー30Bによって、複数(4個)の回転輪(車輪)28を、制動自在とした。
【0031】
なお、制動(ブレーキ)レバー30Bと積層構造体5とを連結する駆動コントロールケーブルC1 の途中に、一度制動ブレーキ30Bを引く力を付与すれば、その引く力をロック(維持)し、その後、2度目の引く力を付与するとリリースするロック・リリース機構(図示省略)を介設するのも望ましい。即ち、パーキングブレーキの機能をも付与可能である。
【0032】
なお、
図6,
図7では、回転輪(車輪)28を4個の場合を例示したが、これを6個や8個等に増加させるも自由である。その場合には、円盤組体10の数を増加し、かつ、従動コントロールケーブルC
2 の本数を増加して、対応できる。
また、本発明は台車25以外の各種の移動体Mにも広く応用できる。
【0033】
本発明は、以上詳述したように、外周溝11及びインナーケーブル先端止着部12を有する内円盤体1と;該内円盤体1が一軸心L0 廻りに回転可能として嵌合された静止外輪体2と;から成る円盤組体10を、複数枚重ね合わせて、積層構造体5を構成し;さらに、上記積層構造体5の全ての上記内円盤体1は、一軸心L0 廻りに一体回転させるための係止連結手段Kを備え;一本の駆動コントロールケーブルC1 は、上記積層構造体5の一枚の静止外輪体2の2つの溝部21,22の一方の溝部21に嵌込まれて、駆動アウターケーシングC11の先端31は上記一方の溝部21に止着され、かつ、駆動インナーケーブルC12は上記内円盤体1の上記外周溝11に巻設されて先端32が内円盤体1の上記インナーケーブル先端止着部12に止着され;分岐用の複数本の従動コントロールケーブルC2 は、上記積層構造体5の各々別の静止外輪体2の2つの溝部21,22のいずれか一方に嵌込まれて、従動アウターケーシングC21の先端33は止着され、かつ、従動インナーケーブルは内部の上記内円盤体1の上記外周溝11に巻設されて先端が内円盤体1の上記インナーケーブル先端止着部12に止着され;上記積層構造体5を構成する上記内円盤体1の全てが、同一形状かつ同一寸法であって、かつ、上記積層構造体5を構成する上記静止外輪体2の全てが、同一形状かつ同一寸法であり;一本の駆動コントロールケーブルC1 の駆動力を、全ての上記内円盤体1の上記一軸心L0 廻りの一体回転を介して、全ての複数本の従動コントロールケーブルC2 に分岐伝達するよう構成したので、コントロールケーブルの配索に必要な空間(スペース)のコンパクト化(減少)が可能となり、スッキリとした配索を実現できる。従って、コントロールケーブルの配索作業を、容易かつ迅速に行い得る。さらに、全てのコントロールケーブル(インナーケーブル)の操作抵抗合計値を、著しく低減できる。また、一本の駆動コントロールケーブルC1 によって作動する従動コントロールケーブルC2 の延伸配設方向を自由自在に設定し易くなり、しかも、(円盤組体10の増減によって)上記従動コントロールケーブルC2 を簡単に増減可能である。
また、内円盤体1及び静止外輪体2の各々は、同一形状かつ同一寸法のもので済むので、同一金型,同一加工治具等をもって、能率良く、安価に、製作できる利点もある。
【0034】
また、複数枚の上記円盤組体10が重ね合わされて成る上記積層構造体5における、上記一軸心L0 方向の中央乃至中央近傍位置に存在する中央円盤組体10Yに、上記駆動コントロールケーブルC1 を、配設したので、一本の駆動コントロールケーブルC1 の駆動力は、2分割されて、従動コントロールケーブルC2 用の円盤組体10の内円盤体1…に、略均等に伝達され、力学上、バランスが良く、内円盤体1が回転して、各従動コントロールケーブルC2 に円滑に伝達されてゆく。
【0035】
また、移動体Mの下面26Bにおける中央領域Pに、上記積層構造体5を取付け、上記移動体Mの複数の回転輪28と上記積層構造体5とを、上記従動コントロールケーブルC2 にて連結すると共に;上記移動体Mに付設した操作レバー30と、上記積層構造体5とを、上記駆動コントロールケーブルC1 にて連結し;一本の操作レバー30によって、複数の回転輪28を操舵自在に構成したので、上方の空間がスッキリとなって、各種装置を付設可能となり、あるいは、荷物(被運搬物)の載せ降ろしを、円滑に行い得る。
また、積層構造体5が下面26Bの中央領域Pに有るため、各回転輪28へは正確かつ均等に操舵力が伝達できる。
【0036】
また、移動体Mの下面26Bにおける中央領域Pに、上記積層構造体5を取付け、上記移動体Mの複数の回転輪28の制動部と上記積層構造体5とを、上記従動コントロールケーブルC2 にて連結すると共に;上記移動体Mに付設した制動レバー30Bと、上記積層構造体5とを、上記駆動コントロールケーブルC1 にて連結し;一本の制動レバー30Bによって、複数の回転輪28を制動自在に構成したので、上方の空間がスッキリとなって、各種装置を付設でき、あるいは、荷物(被運搬物)の載せ降ろしを、円滑に行い得る。
また、積層構造体5が下面26Bの中央領域Pに有って、各回転輪28までの従動コントロールケーブルC2 の長さを相等しくすることができて、各回転輪28に制動力を付与する瞬間及び制動力の大きさを一致させることができる。即ち、4個(又はそれ以上)の回転輪28…を同時かつ均等に制動できる。
しかも、一台の移動体Mに要するコントロールケーブルC1 ,C2 の全長を短くすることができると共に、配索作業が容易かつ迅速に行い得る。かつ、コントロールケーブルC1 ,C2 が他の物体(被搬送物)に干渉したり、損傷することも、著しく低減(防止)できる。
【符号の説明】
【0037】
1 内円盤体
2 静止外輪体
5 積層構造体
10 円盤組体
10Y 中央円盤組体
11 外周溝
12 インナーケーブル先端止着部
21 溝部
22 溝部
26B 下面
28 回転輪
30 操作レバー
30B 制動レバー
31 先端
32 先端
33 先端
C1 駆動コントロールケーブル
C2 従動コントロールケーブル
C11 駆動アウターケーシング
C12 駆動インナーケーブル
C21 従動アウターケーシング
K 係止連結手段
L0 一軸心
M 移動体
P 中央領域