IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人神戸大学の特許一覧

<>
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図1
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図2
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図3
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図4
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図5
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図6
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図7
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図8
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図9
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図10
  • 特許-中空微粒子の製造方法及び中空微粒子 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】中空微粒子の製造方法及び中空微粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/22 20060101AFI20240725BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20240725BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240725BHJP
   C08F 2/16 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08F20/22
C08L33/16
C09D201/00
C08F2/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022535366
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025578
(87)【国際公開番号】W WO2022009917
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2020118644
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】南 秀人
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-126737(JP,A)
【文献】特開昭61-087734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00- 20/70
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09D 201/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素モノマー、架橋性モノマー、相分離促進剤非重合性溶剤及び分散安定剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る分散工程、及び、
前記含フッ素モノマー及び前記架橋性モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む中空微粒子を得る重合工程、を含み、
前記含フッ素モノマーは、含フッ素アクリルモノマーであり、
前記含フッ素樹脂は、前記架橋性モノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して30~90質量%であり、
前記相分離促進剤は、芳香族ビニルポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニルポリマー、ポリ酢酸ビニル及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記溶液中の前記相分離促進剤の含有量は、前記非重合性溶剤1質量部に対して0.01~0.5質量部であり、
前記分散安定剤は、高分子分散安定剤であり、
前記溶液中の前記分散安定剤の含有量は、前記溶液1質量部に対して0.005~1質量部であることを特徴とする中空微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記含フッ素モノマーは、下記一般式(C):
CH=CX-COORf (C
(式中、Xは、H、CH、F、Cl又はCFである。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキル基である。)
で表される含フッ素アクリルモノマー(C)である請求項1記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記相分離促進剤は、
室温で前記非重合性溶剤に溶解し、かつ、
前記相分離促進剤のSp値をSA(J/cm1/2、前記非重合性溶剤のSp値をSB(J/cm1/2とした時、下記式:
│SA-SB│ < 3(J/cm1/2の関係を満たす
請求項1又は2記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記相分離促進剤は、下記一般式:
CH=CX
(式中、Xは、H、CH、F、Cl、又は、CFである。Yは、Cl、C、C、COOR、又は、OCOR(ここで、R、R、R、R及びRは、独立して、H、OH、又は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~40のアルキル基である。)である。)で表されるモノマーに基づく重合単位を含むポリマーである
請求項1~のいずれかに記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記相分離促進剤は、芳香族ビニルポリマー、及び、ポリアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~のいずれかに記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記含フッ素モノマーは、フッ素含有率が30質量%以上である請求項1~のいずれかに記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記非重合性溶剤は、芳香族炭化水素、エステル、又は、炭素数8~18の飽和炭化水素、若しくは、これらのハロゲン置換体である請求項1~のいずれかに記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記分散工程は、
50℃以上の温度で前記溶液を水に分散させて分散液を得る工程、又は、
50℃未満の温度で前記溶液を水に分散させて分散液を得て、得られた分散液を50℃以上の温度に加熱する工程、
である請求項1~のいずれかに記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記分散工程の後、重合工程の前に、更に、油溶性開始剤を前記分散液に添加する工程を含む請求項1~のいずれかに記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記重合工程で得られた中空微粒子から前記非重合性溶剤を除去する除去工程を含む請求項1~のいずれかに記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記中空微粒子は、平均粒径が1.0μm以上である請求項1~10のいずれかに記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項12】
含フッ素モノマーに基づく重合単位及び架橋性モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂Dと、相分離促進剤を含み、平均粒径が1.0μm以上であり、
前記含フッ素モノマーは、含フッ素アクリルモノマーであり、
前記含フッ素樹脂は、前記架橋性モノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して30~90質量%であり、
前記相分離促進剤は、芳香族ビニルポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニルポリマー、ポリ酢酸ビニル及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記相分離促進剤の含有量は、前記含フッ素樹脂Dに対して1~50質量%であることを特徴とする中空微粒子。
【請求項13】
前記含フッ素モノマーは、下記一般式(C):
CH=CX-COORf (C
(式中、Xは、H、CH、F、Cl又はCFである。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキル基である。)
で表される含フッ素アクリルモノマー(C)である
請求項12記載の中空微粒子。
【請求項14】
前記相分離促進剤は、下記一般式:
CH=CX
(式中、Xは、H、CH、F、Cl、又は、CFである。Yは、Cl、C、C、COOR、又は、OCOR(ここで、R、R、R、R及びRは、独立して、H、OH、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~40のアルキル基である。)である。)で表されるモノマーに基づく重合単位を含むポリマーである請求項12又は13記載の中空微粒子。
【請求項15】
前記相分離促進剤は、芳香族ビニルポリマー、及び、ポリアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1214のいずれかに記載の中空微粒子。
【請求項16】
前記含フッ素樹脂Dは、フッ素含有率が15質量%以上である請求項1215のいずれかに記載の中空微粒子。
【請求項17】
前記含フッ素樹脂Dを含むシェル及び中空部からなり、単孔構造を有する請求項1216のいずれかに記載の中空微粒子。
【請求項18】
請求項1217のいずれかに記載の中空微粒子を含む硬化性組成物。
【請求項19】
請求項1218のいずれかに記載の中空微粒子を含むコーティング組成物。
【請求項20】
電子材料用である請求項1219のいずれかに記載の中空微粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中空微粒子の製造方法及び中空微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子内部に空隙を有する中空微粒子は、軽量化、低屈折率化、低誘電性付与等に優れており、種々検討が行われている。こうした中空微粒子としては、従来、無機粒子が用いられていたが、無機粒子はその重量が重いため、最近では無機粒子に代えて、重合体による中空微粒子が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フッ素原子を有する樹脂を含有する中空樹脂微粒子であって、平均粒径が10~200nm、空隙率が10%以上、かつ、屈折率が1.30以下であることを特徴とする中空樹脂微粒子が記載されている。
【0004】
特許文献2には、分散安定剤の水溶液中に、目的成分、特定のモノマー成分、特定の補助ポリマー及び開始剤を含む混合物を分散させ、懸濁重合を行うことを特徴とする目的成分内包微粒子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-213366号公報
【文献】特開2003-96108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が大きい中空微粒子を製造することができる製造方法を提供する。本開示はまた、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が大きい中空微粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、含フッ素モノマー、相分離促進剤及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る分散工程、及び、前記含フッ素モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む中空微粒子を得る重合工程、を含むことを特徴とする中空微粒子の製造方法に関する。
【0008】
上記含フッ素モノマーは、下記一般式(B):
CX=CYZ (B
(式中、X、X及びYは、独立して、H、CH、F又はClである。Zは、F、-Q-Rf-Y(Qは、単結合、-O-、-O-(C=O)-、又は、-C(=O)-O-である。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキレン基である。Yは、F、H、-OH、-COOH、-COOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基))で示される基、下記式:
【化1】
(式中、X~X10は、独立して、水素原子、フッ素原子、又は、炭素数1~8のフッ素もしくは塩素で置換されてもよい炭化水素基である)で示される基、又は、-SOHである。ただし、X、X、Y及びZのいずれかにFを1つ以上含む。)で表される単量体(B)であることが好ましい。
また、上記含フッ素モノマーは、下記一般式(C):
CH=CX-COORf (C
(式中、Xは、H、CH、F、Cl又はCFである。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキル基である。)で表される含フッ素アクリルモノマー(C)であることがより好ましい。
【0009】
上記相分離促進剤は、室温で前記非重合性溶剤に溶解し、かつ、上記相分離促進剤のSp値をSA(J/cm1/2、前記非重合性溶剤のSp値をSB(J/cm1/2とした時、下記式:
│SA-SB│ < 3(J/cm1/2
の関係を満たすことが好ましい。
上記相分離促進剤は、また、下記一般式:
CH=CX
(式中、Xは、H、CH、F、Cl、又は、CFである。Yは、Cl、C、C、COOR、又は、OCOR(ここで、R、R、R、R及びRは、独立して、H、OH、又は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~40のアルキル基である。)である。)で表されるモノマーに基づく重合単位を含むポリマーであることが好ましく、芳香族ビニルポリマー、及び、ポリアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0010】
上記含フッ素モノマーは、フッ素含有率が30質量%以上であることが好ましい。
【0011】
上記溶液は、更に架橋性モノマーを含むことが好ましい。
【0012】
上記非重合性溶剤は、芳香族炭化水素、エステル、又は、炭素数8~18の飽和炭化水素、若しくは、これらのハロゲン置換体であることが好ましい。
【0013】
上記分散工程は、50℃以上の温度で前記溶液を水に分散させて分散液を得る工程、又は、
50℃未満の温度で前記溶液を水に分散させて分散液を得て、得られた分散液を50℃以上の温度に加熱する工程、であることが好ましい。
本開示の製造方法はまた、上記分散工程の後、重合工程の前に、更に、油溶性開始剤を前記分散液に添加する工程を含むことが好ましい。
【0014】
上記重合工程で得られた中空微粒子から上記非重合性溶剤を除去する除去工程を含むことが好ましい。
【0015】
上記中空微粒子は、平均粒径が1.0μm以上であることが好ましい。
【0016】
本開示はまた、含フッ素モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂Dを含み、平均粒径が1.0μm以上であることを特徴とする中空微粒子にも関する。
【0017】
上記含フッ素モノマーは、下記一般式(B):
CX=CYZ (B
(式中、X、X及びYは、独立して、同一又は異なって、H、CH、F又はClである。Zは、F、-Q-Rf-Y(Qは、単結合、-O-、-O-(C=O)-、又は、-C(=O)-O-である。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキレン基である。Yは、F、H、-OH、-COOH、-COOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基))で示される基、下記式:
【化2】
(式中、X~X10は、独立して、水素原子、フッ素原子、又は、炭素数1~8のフッ素もしくは塩素で置換されてもよい炭化水素基である)で示される基、又は、-SOHである。ただし、X、X、Y及びZのいずれかにFを1つ以上含む。)で表される単量体(B)であることが好ましい。
上記含フッ素モノマーはまた、下記一般式(C):
CH=CX-COORf (C
(式中、Xは、H、CH、F、Cl又はCFである。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキル基である。)
で表される含フッ素アクリルモノマー(C)であることが好ましい。
【0018】
上記中空微粒子は、さらに相分離促進剤を含むことが好ましい。
上記相分離促進剤は、下記一般式:
CH=CX
(式中、Xは、H、CH、F、Cl、又は、CFである。Yは、Cl、C、C、COOR、又は、OCOR(ここで、R、R、R、R及びRは、独立して、H、OH、又は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~40のアルキル基である。)である。)で表されるモノマーに基づく重合単位を含むポリマーであることが好ましく、芳香族ビニルポリマー、及び、ポリアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
上記含フッ素樹脂Dは、更に、架橋性モノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
上記含フッ素樹脂Dはまた、フッ素含有率が15質量%以上であることが好ましい。
【0020】
本開示の中空微粒子は、上記含フッ素樹脂Dを含むシェル及び中空部からなり、単孔構造を有することが好ましい。
【0021】
本開示はまた、上記中空微粒子を含む硬化性組成物にも関する。
【0022】
本開示は更に、上記中空微粒子を含むコーティング組成物にも関する。
【0023】
本開示の中空微粒子は、電子材料用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本開示の中空微粒子の製造方法は、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が大きい中空微粒子を製造することができる。また、本開示の中空微粒子は含フッ素樹脂を含むものであるにも関わらず、平均粒径が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1(a)は、実施例1における重合前の懸濁滴、図1(b)は重合後の中空微粒子の光学顕微鏡写真である。
図2図2は、実施例1における重合後の中空微粒子のSEM写真である。
図3図3(a)は、実施例2における重合前の懸濁滴、図3(b)は重合後の微粒子の光学顕微鏡写真である。
図4図4(a)は、比較例2における重合前の懸濁滴、図4(b)は重合後の微粒子の光学顕微鏡写真である。
図5図5(a)は、実施例4における重合前の懸濁滴、図5(b)は重合後の中空微粒子の光学顕微鏡写真である。
図6図6(a)は、実施例4で得られた粒子のSEM写真、図6(b)は、シェル壁のEDX mapping、図6(c)は、粒子を破砕したSEM写真である。
図7図7(a)は、実施例5における重合前の懸濁滴の光学顕微鏡写真である。
図8図8(a)は、実施例5における重合後の中空微粒子の光学顕微鏡写真、図8(b)は重合後の中空微粒子のSEM写真である。
図9】製膜1で作製したフィルム2の断面SEM写真の一例である。
図10】製膜1で作製したフィルム2の断面SEM写真の一例である。
図11】実施例にて作製したフィルムについて、微粒子添加量を横軸に、誘電正接を縦軸にとったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、含フッ素モノマー、相分離促進剤及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る分散工程、及び、前記含フッ素モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む中空微粒子を得る重合工程、を含むことを特徴とする中空微粒子の製造方法に関する。
本開示者等が検討したところ、含フッ素モノマーを重合して含フッ素樹脂を含む中空微粒子を得る場合、従来の方法では平均粒径の大きな中空微粒子を得ることが困難であった。本開示者等は、含フッ素モノマー、相分離促進剤及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させてから重合することによって、含フッ素樹脂を含む中空微粒子であっても、その平均粒径を大きくすることができることを見出し、本開示の中空微粒子の製造方法を完成したものである。
【0027】
上記分散工程は、含フッ素モノマー、相分離促進剤及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る工程である。上記溶液を分散させることで液滴が形成され、この液滴中で含フッ素モノマーを重合することができる。この時、相分離促進剤によって相分離が促進され、フッ素樹脂を含む場合であっても、平均粒径の大きな中空微粒子を得ることができる。
【0028】
上記含フッ素モノマーとしては、含フッ素アクリルモノマー、含フッ素スチレンモノマー、含フッ素オレフィン等が挙げられ特に限定されないが、例えば、下記一般式(B):
CX=CYZ (B
(式中、X、X及びYは、独立して、H、CH、F又はClである。Zは、F、-Q-Rf-Y(Qは、単結合、-O-、-O-(C=O)-、又は、-C(=O)-O-である。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキレン基である。Yは、F、H、-OH、-COOH、-COOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基))で示される基、下記式:
【化3】
(式中、X~X10は、独立して、水素原子、フッ素原子、又は、炭素数1~8のフッ素もしくは塩素で置換されてもよい炭化水素基である)で示される基、又は、-SOHである。ただし、X、X、Y及びZのいずれかにFを1つ以上含む。)で表される単量体(B)であることが好ましい。
【0029】
重合性の観点から、上記X及びXは、独立して、H、CH又はFであることが好ましく、X及びXは同一でF又はHであることがより好ましく、同一でHであることが更に好ましい。
【0030】
重合性およびポリマーの耐熱性の観点から、上記Yは、H、CH又はFであることが好ましく、CH又はFであることがより好ましく、CHであることが更に好ましい。
【0031】
上記Zは、F、-Q-Rf-Yで示される基、又は、下記式:
【化4】
で示される基であることが好ましい。
【0032】
重合性の観点から、一般式(B)におけるZは、-Q-Rf-Y(Qは、単結合、-O-、-O-(C=O)-、又は、-C(=O)-O-である)で示される基であることがより好ましい。
【0033】
モノマーの合成の容易性の観点から、上記Qは、単結合、-O-(C=O)-、又は、-C(=O)-O-であることが好ましく、-O-(C=O)-、又は、-C(=O)-O-であることがより好ましく、-C(=O)-O-であることが更に好ましい。
【0034】
ポリマーの耐熱性、電気特性の観点から、上記Rfの炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。上記Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含まない含フッ素アルキレン基であることが好ましく、-CH-Rf-X(Rfは、直鎖又は分岐の炭素数1~19の含フッ素アルキレン基である。Xは、H又はFである。)で示される基であることがより好ましく、上記Rfの炭素数は1~9が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましい。
【0035】
電気特性の観点から、上記Yは、F、H、又は、-COOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基)であることが好ましく、H又はFであることがより好ましく、Fであることが更に好ましい。
【0036】
上記X~X10における炭化水素基は、非フッ素アルキル基、又は、含フッ素アルキル基であることが好ましい。また、上記炭化水素基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
【0037】
上述した含フッ素オレフィンとしては、官能基を有する含フッ素オレフィン(1)、官能基非含有含フッ素オレフィン(2)、及び、環状含フッ素オレフィン(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0038】
(1)官能基を有する含フッ素オレフィン
官能基を有する含フッ素オレフィン(1)としては、下記式(3):
【化5】
(式中、X11、X12およびX13は同じかまたは異なり、HまたはF;X14はH、F、CF;hは0~2の整数;iは0または1;Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;Zは-OH、CHOH、-COOH、カルボン酸誘導体、-SOH、スルホン酸誘導体、エポキシ基およびシアノ基よりなる群から選ばれる官能基)で示されるモノマーが好ましく、なかでも、CH=CFCFORf-Z(式中、RfおよびZは前記と同じ)で示されるモノマーがより好ましい。より具体的には、
【化6】
(式中、Zは前記と同じ)などのモノマーが好ましくあげられる。
【0039】
官能基を有する含フッ素オレフィン(1)としてはまた、CF=CFORf-Z(式中、RfおよびZは前記と同じ)で示されるモノマーも好ましく例示でき、より具体的には、
【化7】
(式中、Zは前記と同じ)などのモノマーがあげられる。
【0040】
その他、官能基を有する含フッ素オレフィン(1)としては、
【0041】
【化8】
(式中、Rf及びZは前記と同じ)
【0042】
などがあげられ、より具体的には、
【化9】
(式中、Zは前記と同じ)などがあげられる。ただし、-OH基、-COOH基、-SOH基を有するモノマーは電気特性を低下させる可能性があるため、電気特性を低下させない範囲の量であることが好ましい。
【0043】
官能基を有する含フッ素オレフィン(1)としては、中でも、CH=CF-CF-O-(CF(CF)-CF-CF(CF)CHOH(式中、n=0~9)、CH=CF-CF-O-(CF(CF)-CF-CF(CF)COOH(式中、n=0~9)、CH=CF-CF-O-(CF(CF)-CF-CF(CF)CN(式中、n=0~9)、又は、CF=CF-O-(CFCF(CF)O)-(CF-Z(式中、ZはCOOH、SOH又はCNであり、m=1~6、n=0~6である。)が好ましい。
【0044】
(2)官能基非含有含フッ素オレフィン
官能基非含有含フッ素オレフィン(2)は、電気特性をより向上させる点で好ましい。また、この単量体を選択することでポリマーの機械的特性やガラス転移温度などを調整できる点でも好ましいものである。
【0045】
上記官能基非含有含フッ素オレフィン(2)としては、式(4):
【0046】
【化10】
【0047】
(式中、X15、X16およびX18は同じかまたは異なり、HまたはF;X17はH、FまたはCF;h1、i1およびjは0または1;ZはH、FまたはCl;Rfは炭素数1~20の含フッ素アルキレン基または炭素数2~100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
【0048】
具体例としては、CH=CH-(CFF(n=1~10)、CH=CF-CF-O-(CF(CF)-CF-CF(CF)H(n=0~9)、
【化11】
などのモノマーが好ましくあげられる。
中でも、CF=CF、CF=CF-O-(CFF(n=1~5)、CH=CF-CF-O-(CF(CF)-CF-CF(CF)H(n=0~5)、CH=CH-(CFF(n=1~6)、CF=CF-CF、CF=CFCl、又は、CF=CHが好ましい。
【0049】
(3)環状含フッ素オレフィン
環状含フッ素オレフィン(3)は、電気特性をさらに高めることが可能となる点、さらに、高ガラス転移温度の含フッ素中空微粒子が得られ、さらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。環状含フッ素オレフィン(3)としては、脂肪族環状構造を有するモノマー(3-1)と、環化重合性ジエンモノマー(3-2)があげられる。
【0050】
(3-1)脂肪族環状構造を有するモノマー
上記脂肪族環状構造を有するモノマー(3-1)は、環を構成する炭素原子の少なくとも1個が炭素-炭素不飽和二重結合を構成する炭素原子であり、脂肪族環状構造を有するモノマーである。脂肪族環状構造を有するモノマーにおける脂肪族環は、エーテル結合を有する環であることが好ましく、また、炭素原子に結合した水素原子を有しない単量体であることがより好ましい。脂肪族環状構造を有するモノマーは、環を構成する隣接する炭素原子間に二重結合を有する単量体(例えば下式(a)、(c)、(a-1)~(a-5))であるか、または、環を構成する炭素原子と環外の炭素原子との間に二重結合を有する単量体(例えば下式(a-6)、(a-7))である。
【化12】
[式中、R12~R15はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
【化13】
[式中、R16~R19はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。]
【化14】
【0051】
脂肪族環状構造を有するモノマー(3-1)としては特に、(a-1)、(a-3)、(a-6)及び(a-7)で示される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、(a-1)、(a-3)及び(a-7)で示される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0052】
(3-2)環化重合性ジエンモノマー
環化重合性ジエンモノマー(3-2)は、環化重合しうるジエン系含フッ素モノマーである。例えば下式(b):
CF=CF-Q-CF=CF ・・・(b)
[式中、Qは、エーテル結合を有していてもよく、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5(好ましくは1~3)の、直鎖又は分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である]で表されるモノマーが挙げられる。上記フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0053】
上記Qは、エーテル結合を有するパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。その場合、該パーフルオロアルキレン基におけるエーテル結合は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性に優れる点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。式(b)で表されるモノマーとしては、パーフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)、パーフルオロ(3,5-ジオキサへプタジエン)、パーフルオロ(3,5-ジオキサ-4,4-ジメチルへプタジエン)等が挙げられる。特に、パーフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)が好ましい。
【0054】
また、上記式(b)で表される単量体の環化重合により形成される単位としては、下式(II-1)~(II-4)が挙げられる。下式が示すように、式(II-1)~(II-3)は、2つの二重結合を構成する4つの炭素原子が重合体の主鎖を構成しており、式(II-4)は、2つの二重結合を構成する末端の2つの炭素原子のみが重合体の主鎖を構成する。また、式(II-1)のように、2つの二重結合を構成する4つの炭素原子のうち、2つがQとともに脂肪族環を構成してもよいし、(式(II-2)と式(II-3)のように、3つの二重結合がQとともに脂肪族環を構成してもよいし、式(II-4)のように、4つの二重結合がQとともに脂肪族環を構成してもよい。また、Qを含む脂肪族環としては5員環および6員環が生成しやすく、環化重合により生成する重合体は5員環または6員環を有する単位を主たる単位とする重合体となる。
【0055】
【化15】
【0056】
上記含フッ素オレフィンとしては、官能基を有する含フッ素オレフィン(1)、官能基非含有含フッ素オレフィン(2)、及び、環状含フッ素オレフィン(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、官能基非含有含フッ素オレフィン(2)、及び、環状含フッ素オレフィン(3)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、環状含フッ素オレフィン(3)が更に好ましい。
【0057】
上記含フッ素モノマーとしては、下記一般式:
CX=CY
(式中、X、X及びYは、独立して、H、CH、F又はClである。Zは、下記式:
【化16】
(式中、X~X10は、独立して、水素原子、フッ素原子、又は、炭素数1~8のフッ素もしくは塩素で置換されてもよい炭化水素基である)で示される基である。ただし、X、X、Y及びZのいずれかにFを1つ以上含む。)で表される含フッ素スチレンモノマーであることも好ましい。
上記炭素数1~8のフッ素もしくは塩素で置換されてもよい炭化水素基は、耐熱性の観点から、炭素数1~4のフッ素で置換されてもよい炭化水素基が好ましく、炭素数1~2のフッ素で置換されてもよい炭化水素基がより好ましく、-CFもしくはCHが最も好ましい。
上記含フッ素スチレンモノマーとしては、CH=CH-C、CF=CF-C、CH=C(CH)-C、CF=CF-C-CH、及び、CF=CF-C-CFからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、中でも、CH=CH-C、及び、CF=CF-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0058】
上記含フッ素モノマーとしては、含フッ素アクリルモノマー、含フッ素スチレンモノマー及び含フッ素オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、含フッ素アクリルモノマーがより好ましい。例えば、フルオロアルキルアクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、2-フルオロ フルオロアルキルアクリレート、及び、2-クロロ フルオロアルキルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0059】
上記含フッ素モノマーは、下記一般式(C):
CH=CX-COORf (C
(式中、Xは、H、CH、F、Cl又はCFである。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキル基である。)で表される含フッ素アクリルモノマー(C)であることがより好ましい。
【0060】
重合性の観点から、Xは、H、CH又はFであることが好ましく、耐熱性の観点からCH又はFであることがより好ましく、モノマー安定性の観点からCHであることが更に好ましい。
【0061】
電気特性および耐熱性の観点から、Rfの炭素数は1~10が好ましく、2~8がより好ましく、2~6であることが更に好ましい。
【0062】
上記含フッ素アクリルモノマー(C)としては
CH=C(CH)COOCHCF(3FM)、
CH=C(CH)COOCHCFCFH(4FM)、
CH=C(CH)COOCHCFCF(5FM)、
CH=C(CH)COOCHCFCFHCF(6FM)、
CH=C(CH)COOCH(CFCFH(8FM)、
CH=C(CH)COOCHCH(CFCF(9FM)、
CH=C(CH)COOCH(CFCFH(12FM)、
CH=C(CH)COOCHCH(CFCF(13FM)、
CH=C(CH)COOCH(CF(HFIP-MA)、
CH=C(CH)COOCHCCH(CF(6FNP-M)、
CH=C(CH)COOCHCF(CF)OCFCFCF(6FOn0-MA)、
また、これらに対応する各アクリレート、各2-フルオロアクリレート、各2-クロロアクリレートを例示することができる。
【0063】
上記の2-フルオロ フルオロアルキルアクリレートとしては例えば、
CH=CFCOOCHCF(3FF)
CH=CFCOOCHCFCFH(4FF)、
CH=CFCOOCHCFCF(5FF)、
CH=CFCOOCH(CFCFH(8FF)、
CH=CFCOOCHCH(CFCF(9FF)、
CH=CFCOOCH(CFCFH(12FF)、
CH=CFCOOCHCH(CFCF(13FF)、
CH=CFCOOCH(CF(HFIP-F)、
CH=CFCOOCHCCH(CF(6FNP-F)
などを例示することができる。
【0064】
上記の2-クロロ フルオロアルキルアクリレートとしては例えば、
CH=C(Cl)COOCHCH(CFCF(9FCLA)、
CH=C(Cl)COOCHCH(CFCF(13FCLA)
などを例示することができる。
【0065】
上記のフルオロアルキルアクリレートとしては
CH=CHCOOCH(CFCFH(8FA)、
CH=CHCOOCHCH(CFCF(9FA)、
CH=CHCOOCH(CFCFH(12FA)、
CH=CHCOOCHCH(CFCF(13FA)、
CH=CHCOOCH(CF(HFIP-A)、
CH=CHCOOCHCCH(CF(6FNP-A)、
などを例示することができる。
【0066】
上記含フッ素モノマーは、耐熱性、電気特性の観点からは、含フッ素オレフィンが好ましく、(a-1)、(a-3)、(a-6)及び(a-7)で示される単量体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、(a-1)、(a-3)及び(a-7)で示される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0067】
上記含フッ素モノマーは、フッ素含有率が30質量%以上であることが好ましい。本開示の製造方法によれば、フッ素含有率が30質量%以上である含フッ素モノマーを使用する場合であっても、平均粒径が大きい中空微粒子を製造することができる。含フッ素モノマーのフッ素含有率は、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。また、フッ素含有率の上限は特に限定されないが、フッ素含有率は80質量%であってよく、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0068】
上記含フッ素モノマーとしては、特に、3FM、5FM、13FM、HFIP-A、HFIP-MA、HFIP-F、3FF、5FF、13FF、6FNP-A、6FNP-M、及び、6FNP-Fからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、3FM、5FM、13FM、3FF、5FF、13FF、HFIP-MA、HFIP-F、及び、HFIP-Aからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0069】
上記含フッ素モノマー、相分離促進剤及び非重合性溶剤を含む溶液は、更に、含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーを含むことも好ましい。
【0070】
上記含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、架橋性モノマー、非含フッ素モノマー(但し、架橋性モノマーを除く)等が挙げられる。
【0071】
上記架橋性モノマーとしては、重合性反応基、特に重合性2重結合を2個以上(特に、2~4個)有する多官能性モノマーが挙げられる。多官能性モノマーを使用することにより、得られる中空微粒子の強度を向上させることができる。上記溶液は、更に架橋性モノマーを含むことが好ましい。
【0072】
上記多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジアリル化合物又はトリアリル化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられる。
中でも、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びジビニル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、ジビニルベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用できる。
また、上記多官能アクリレートモノマーの一部がフッ素置換された含フッ素多官能アクリレートモノマーも電気特性を向上させる点で好ましい。そのような含フッ素多官能アクリレートモノマーとしては、エチレングリコールジαフルオロアクリレート、ジエチレングリコールジαフルオロアクリレート、トリエチレングリコールジαフルオロアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジαフルオロアクリレート、トリメチロールプロパンジαフルオロアクリレート等のジαフルオロアクリレート;トリメチロールプロパントリαフルオロアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリαフルオロアクリレート、ペンタエリスリトールトリαフルオロアクリレート等のトリαフルオロアクリレート;ペンタエリスリトールテトラαフルオロアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサαフルオロアクリレート、CH=CX-COO-CH(CFCFCH-OCO-CX=CH(ここでXはH、CH、F、又は、Clであり、n=1~10)、CH=CX-COO-CHCF(CF)-O-(CFCF(CF)O)CF(CF)CH-OCO-CX=CH(ここでXはH、CH、F、又は、Clであり、n=1~20)などがあげられる。また、CF=CF-O-(CF-O-CF=CF(式中、n=1~20)、CF=CF-(O-CFCF(CF))-O-CF=CF(式中、n=1~20)、CF=CF-(CF-CF=CF(式中、n=1~20)などもあげられる。
【0073】
上記非含フッ素モノマー(但し、架橋性モノマーを除く)としては特に限定されないが、フッ素原子を含まず、重合性反応基を1個有する単官能性モノマーが挙げられる。
上記単官能性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ネオノナン酸ビニルエステル(商品名ベオバ9)、ネオデカン酸ビニルエステル(商品名ベオバ10)、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー;ビニルピリジン、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン、ポリジメチルシロキサンマクロモノマー等が挙げられる。なかでも、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及び、イソボルニルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が、含フッ素モノマーとの相溶性やTgが高くなるといった観点から好ましい。
【0074】
上記溶液は、モノマーの含有量が、上記非重合性溶剤1質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部であり、更に好ましくは0.8~3.5質量部である。
なお、上記モノマーの含有量は、含フッ素モノマーのみを重合する場合には含フッ素モノマーの使用量であり、含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーを重合する場合には含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーの合計量である。
上記溶液において、含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー(架橋性モノマー及び非含フッ素モノマー)の割合は目的とする含フッ素樹脂に応じて適宜設定すればよい。
【0075】
上記相分離促進剤は、重合工程における相分離を促進できるものであれば限定されないが、ポリマーであることが好ましく、重量平均分子量が3000以上であることが好ましい。
上記重量平均分子量は、GPC測定におけるPS換算重量平均分子量に準拠して求めることができる。
【0076】
上記相分離促進剤は、室温(例えば、25℃)で非重合性溶剤に溶解し、かつ、上記相分離促進剤のSp値をSA(J/cm1/2、非重合性溶剤のSp値をSB(J/cm1/2とした時、下記式:
│SA-SB│ < 3(J/cm1/2の関係を満たす化合物であることが好ましい。上記相分離促進剤は、上記│SA-SB│が2未満であることがより好ましく、1未満であることが更に好ましい。
【0077】
上記相分離促進剤としては、例えば、芳香族ビニルポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニルポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル等が挙げられる。
【0078】
上記芳香族ビニルポリマーとしては、ポリスチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル・スチレン樹脂等が挙げられ、特に、ポリスチレンが好ましい。
【0079】
上記ポリアルキル(メタ)アクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート等が挙げられ、特に、ポリメチルメタクリレートが好ましい。
【0080】
上記相分離促進剤は、溶解性と疎水性の観点から、下記一般式:
CH=CX
(式中、Xは、H、CH、F、Cl、又は、CFである。Yは、Cl、C、C、COOR、又は、OCOR(ここで、R、R、R、R及びRは、独立して、H、OH、又は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~40のアルキル基である。)である。)で表されるモノマーに基づく重合単位を含むポリマーであることが好ましい。
【0081】
上記溶液は、相分離促進剤の含有量が、上記非重合性溶剤1質量部に対して0.01~0.5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02~0.3質量部であり、更に好ましくは0.05~0.2質量部である。
【0082】
上記溶液は、更に開始剤を含むことも好ましい。開始剤は分散工程の前に上記溶液に添加してもよいし、分散工程の後、重合工程の前に上記分散液に添加してもよい。
【0083】
上記開始剤としては、油溶性開始剤が挙げられ、上記溶液を水に分散して形成される液滴中で含フッ素モノマー(又は、含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)の重合を開始させるものであり、従来から使用されているものを使用することができる。
例えば、ラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチルー2-メチルプロピオンアミド)等のアゾ化合物や、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物等の単量体に可溶なものが挙げられる。また、紫外線等の光により重合開始する光重合開始剤を用いてもよい。このような光重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されているものを使用することができる。
上記開始剤としては、アゾ化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アゾ化合物が好ましく、中でも、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び、アゾビスイソブチロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。
【0084】
上記非重合性溶剤としては、含フッ素モノマー、及び、相分離促進剤、並びに、必要に応じて使用される含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー、開始剤等を溶解させることができ、且つ、得られる含フッ素樹脂に対する相溶性が低い溶剤を使用することができる。得られる含フッ素樹脂に対する相溶性が低いことによって、得られる含フッ素樹脂の相分離を促進し、中空微粒子の製造を可能とする。
非重合性溶剤としてより好ましくは、含フッ素モノマー、及び、相分離促進剤、並びに、必要に応じて使用される含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー、開始剤等を溶解させることができ、得られる含フッ素樹脂を溶解させない溶剤である。
【0085】
上記非重合性溶剤としては、上記含フッ素樹脂に対して相溶性が低い性質を有し、かつ、非重合性溶剤と水間の界面張力(γ)と、本開示の製造方法の条件下で含フッ素モノマー(及び、必要に応じて使用される含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)を非重合性溶剤に溶解してなる溶液を重合に供して得られるポリマー吸着表面と水間の界面張力(γ)(mN/m)との関係において、γ≧γのような条件が成立する溶剤を使用できる。
【0086】
上記非重合性溶剤としては、例えば、上記モノマー(含フッ素モノマー、又は、含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)の重合温度において液状であり、モノマーと混合でき、モノマーと反応せず、かつ、加熱等により容易に蒸散させることができるものが好ましく、芳香族炭化水素、エステル、又は、飽和炭化水素、若しくは、これらのハロゲン置換体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記飽和炭化水素及びそのハロゲン置換体としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘキサデカン、シクロヘキサン、デカン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモナフタレン、ジクロロメタン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン等が挙げられる。
上記エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
また、含フッ素樹脂への相溶性が低ければ含フッ素アルカン、含フッ素ハロアルカン、含フッ素芳香族化合物および含フッ素エーテル(例えばヒドロフルオロエーテル(HFE))のような含フッ素溶剤も好ましい。例えば、パーフルオロヘキサン、1,3-トリフルオロメチルベンゼン、パーフルオロトリヘプチルアミン、パーフルオロトリブチルアミンなどが好適である。
【0087】
上記含フッ素溶剤としては、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、及びハイドロフルオロエーテルから選択される少なくとも一種も好ましい。これらの含フッ素溶剤は、含フッ素オレフィン、特にPF-MMDを使用する場合に特に好適である。
【0088】
上記パーフルオロ芳香族化合物は、例えば、1個以上のパーフルオロアルキル基を有してもよいパーフルオロ芳香族化合物である。パーフルオロ芳香族化合物が有する芳香環はベンゼン環、ナフタレン環、及びアントラセン環からなる群から選択される少なくとも1種の環であってよい。パーフルオロ芳香族化合物は芳香環を1個以上(例えば、1個、2個、又は、3個)有してもよい。置換基としてのパーフルオロアルキル基は、例えば直鎖状又は分岐状の、C1-C6、C1-C5、又はC1-C4パーフルオロアルキル基であり、直鎖状又は分岐状のC1-C3パーフルオロアルキル基が好ましい。置換基の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。置換基が複数あるときは同一又は異なっていてよい。パーフルオロ芳香族化合物の例は、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエン、パーフルオロキシレン、パーフルオロナフタレンを包含する。パーフルオロ芳香族化合物の好ましい例は、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエンを包含する。
【0089】
上記パーフルオロトリアルキルアミンは、例えば、3つの直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基で置換されたアミンである。当該パーフルオロアルキル基の炭素数は例えば1~10であり、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である。当該パーフルオロアルキル基は同一又は異なっていてもよく、同一であることが好ましい。パーフルオロトリアルキルアミンの例としては、パーフルオロトリメチルアミン、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリイソプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリsec-ブチルアミン、パーフルオロトリtert-ブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリイソペンチルアミン、パーフルオロトリネオペンチルアミンが挙げられ、パーフルオロトリプロピルアミン、又は、パーフルオロトリブチルアミンが好ましい。
【0090】
上記パーフルオロアルカンは、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のC3-C12(好ましくはC3-C10、より好ましくはC3-C6)パーフルオロアルカンである。パーフルオロアルカンの例としては、パーフルオロペンタン、パーフルオロ-2-メチルペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ-2-メチルヘキサン、パーフルオロへプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ(メチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(ジメチルシクロヘキサン)(例:パーフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン))、パーフルオロデカリンが挙げられ、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロへプタン、又は、パーフルオロオクタンが好ましい。
【0091】
上記ハイドロフルオロカーボンは、例えば、C3-C8ハイドロフルオロカーボンである。ハイドロフルオロカーボンの例としては、CFCHCFH、CFCHCFCH、CFCHFCHFC、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、CFCFCFCFCHCH、CFCFCFCFCFCHF、CFCFCFCFCFCFCHCHが挙げられ、CFCHCFH、又は、CFCHCFCHが好ましい。
【0092】
上記パーフルオロ環状エーテルは、例えば、1個以上のパーフルオロアルキル基を有してもよいパーフルオロ環状エーテルである。パーフルオロ環状エーテルが有する環は3~6員環であってよい。パーフルオロ環状エーテルが有する環は環構成原子として1個以上の酸素原子を有してよい。当該環は、好ましくは1又は2個、より好ましくは1個の酸素原子を有する。置換基としてのパーフルオロアルキル基は、例えば直鎖状又は分岐状の、C1-C6、C1-C5、又はC1-C4パーフルオロアルキル基である。好ましいパーフルオロアルキル基は直鎖状又は分岐状のC1-C3パーフルオロアルキル基である。置換基の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。置換基が複数あるときは同一又は異なっていてよい。パーフルオロ環状エーテルの例は、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-メチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-エチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-プロピルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロピランを包含する。パーフルオロ環状エーテルの好ましい例は、パーフルオロ-5-エチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-ブチルテトラヒドロフランを包含する。
【0093】
上記ハイドロフルオロエーテルは、例えば、フッ素含有エーテルである。ハイドロフルオロエーテルの地球温暖化係数(GWP)は400以下が好ましく、300以下がより好ましい。ハイドロフルオロエーテルの例としては、CFCFCFCFOCH、CFCFCF(CF)OCH、CFCF(CF)CFOCH、CFCFCFCFOC、CFCHOCFCHF、CCF(OCH)C、トリフルオロメチル1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(HFE-227me)、ジフルオロメチル1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチルエーテル(HFE-227mc)、トリフルオロメチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(HFE-227pc)、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE-245mf)、及び2,2-ジフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル(HFE-245pf)が挙げられる。ハイドロフルオロエーテルとしては、CFCHOCFCHF、CCF(OCH)Cや、CFCFCFCFOCH、CFCFCFCFOC等の下記式(D1):
21-O-R22 (D1)
[式中、R21は、直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。]で表される化合物が好ましく、上記式(D1)で表される化合物がより好ましい。
【0094】
単孔構造の中空微粒子を製造する観点から、非重合性溶剤としては、芳香族炭化水素、エステル、又は、炭素数8~18の飽和炭化水素、若しくは、これらのハロゲン置換体からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、トルエン、及び、キシレンからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、トルエンが特に好ましい。
【0095】
本開示の製造方法では、非重合性溶剤の種類を変えることで単孔構造にも、多孔構造にもすることができる。多孔構造になるか単孔構造になるのかの理由は定かではないが、生成した含フッ素樹脂と溶剤の組合せにおいて、完全に非相溶の系では単孔構造になり、若干相溶性がある場合は多孔構造を示す。
完全に非相溶の系とは、生成した含フッ素樹脂が非重合性溶剤中に5質量%、重合温度の条件で6時間経過後に目視で膨潤していない系であればよい。例えば、非重合性溶剤として上記飽和炭化水素類を用いることで単孔構造の中空微粒子を製造することができる。
【0096】
上記非重合性溶剤の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、モノマー(即ち、含フッ素モノマー、又は、含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)1質量部に対して、0.1~10質量部、特に0.5~5質量部とするのが好ましい。
【0097】
上記溶液は、更に分散安定剤を含むことが好ましい。分散安定剤を含むことによって、相分離をより促進させることができ、粒子径の大きい中空微粒子を得ることができる。
【0098】
上記分散安定剤としては、モノマー成分、相分離促進剤及び非重合性溶剤を含む溶液を、水中に分散して形成した液滴が、合一しないようにする作用を有するものを広い範囲から使用できる。
【0099】
例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルイミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸-g-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸)共重合体等の高分子分散安定剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。このなかでも、ポリビニルアルコール等の高分子分散安定剤が好ましい。また、含フッ素アニオン界面活性剤等を使用することもできる。
【0100】
上記分散安定剤の含有量は、上記溶液1質量部に対して、0.005~1質量部であることが好ましく、0.01~0.1質量部であることがより好ましい。
【0101】
上記分散工程は、含フッ素モノマー、相分離促進剤、及び、非重合性溶剤、並びに、必要に応じて使用される含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー、開始剤、分散安定剤等を含む溶液を水に分散させて分散液を得る工程である。
分散方法としては、例えば、ホモジナイザーや膜乳化法など機械的せん断力による分散方法等の公知の方法を種々採用できる。分散の際の温度条件は、0℃以上100℃未満であってよく、0~90℃が好ましい。分散工程における上記溶液が開始剤を含む場合、使用する開始剤の分解に影響する温度以下である必要があり、通常は室温付近以下、特に0~30℃程度であるのが好ましい。
【0102】
上記分散方法では、上記溶液が分散されて形成される液滴の大きさは単分散ではなく、一般に種々の異なる粒子径の液滴が混在したものとなる。従って、最終的に得られる中空微粒子も異なる粒子径を有する。
一方、分散方法を選択することにより、液滴の大きさを均一にして、単分散の液滴を得ることもできる。そのような単分散液滴を得る方法としては、例えば、多孔質ガラス(SPG)を利用した膜乳化法による単分散液滴を作製する方法を挙げることができる。このような粒子径が均一に揃った単分散の液滴を調製した場合は、最終的に得られる中空微粒子も粒子径が均一に揃った単分散となる。
いずれの場合も、上記液滴の平均粒径は、所望とする中空微粒子の平均粒径に応じて適宜決定すればよい。
【0103】
上記分散工程は、50℃以上(好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上)の温度で前記溶液を水に分散させて分散液を得る分散工程A、又は、50℃未満の温度で前記溶液を水に分散させて分散液を得て、得られた分散液を50℃以上(好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上)の温度に加熱する分散工程B、であることも好ましい。上記工程を採用することによって、含フッ素モノマーのフッ素含有率が高い場合であっても、分散液が相分離せず、重合を効率よく進行させることができる。
【0104】
本開示の製造方法は、分散工程の後、重合工程の前に、更に油溶性開始剤を上記分散液に添加する工程を含むことも好ましい。上記のように分散工程を比較的高温(例えば50℃以上)で行う場合、上記溶液に予め開始剤を添加していると、分散工程で重合が開始するおそれがある。従って、分散工程の後、重合工程の前に、更に開始剤を上記分散液に添加することによって、分散工程を比較的高温で行うこともできる。
【0105】
上記重合工程は、少なくとも含フッ素モノマーを重合するものであればよく、含フッ素モノマーのみを重合してもよいし、含フッ素モノマーと、上述した含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーとを重合するものであってもよい。
【0106】
上記重合工程では、従来公知のマイクロエマルジョン重合、ミニエマルジョン重合、マイクロサスペンジョン重合等の重合方法に準ずる方法を用いることができる。上記重合工程における重合は、懸濁重合であってもよい。上記溶液が分散された分散液を懸濁重合に供するには、該分散液を撹拌しながら加熱すればよい。
【0107】
重合温度としては、上記含フッ素モノマー(及び、必要に応じて使用される含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)が開始剤により重合開始されるに足りる温度であれば特に限定されないが、一般には、10~90℃であり、特に好ましくは30~80℃である。
【0108】
上記重合は、所望の中空微粒子が得られるまで行う。重合に要する時間は、使用する含フッ素モノマー(及び、必要に応じて使用される含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)、重合開始剤及び非重合性溶剤の種類等により変動するが、一般には3~24時間程度である。
【0109】
また、重合に際しては、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0110】
こうして重合を行うことにより、含フッ素モノマー(又は、含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)、相分離促進剤及び非重合性溶剤を含む溶液の液滴中で、含フッ素モノマー(又は、含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)が重合する。
得られたポリマーは、相分離促進剤及び非重合性溶剤の存在により相分離が促進され、その結果、単層構造のシェル、即ち、含フッ素モノマーに基づく重合単位(又は含フッ素モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーに基づく重合単位)を含む含フッ素樹脂を含むシェルが形成される。一方、中空部であるコア部には、非重合性溶剤が内包された状態となる。
【0111】
このようにして得られた中空微粒子は、分散液のままで使用してもよく、また、濾過し、必要に応じて水洗した後、粉体の形態で、各種用途に供することができる。
さらに、分散液や粉体の形態の中空微粒子から非重合性溶剤を除去した形態で各種用途に供することもできる。従って、本開示の中空微粒子の製造方法は、得られた中空微粒子から上記非重合性溶剤を除去する除去工程を含むことも好ましい。
除去工程は、中空部に存在する非重合性溶剤を除去できる方法であれば特に限定されないが、例えば、非重合性溶剤を中空部に内在する中空微粒子を加熱する方法、非重合性溶剤を自然蒸発させる方法、減圧処理等が挙げられる。簡便性、経済性の観点からは加熱による除去が好ましく、加熱温度は非重合性溶剤等により適宜設定すればよいが、温度20~300℃、圧力1~100000Pa程度の条件下で加熱することが好ましい。
【0112】
なお、本開示において、中空微粒子の中空とは、中空部に空気が存在する場合だけでなく、上記非重合性溶剤等が中空部に存在している場合も含む趣旨である。
【0113】
上記構成を有することによって、本開示の製造方法は、平均粒径が1.0μm以上である中空微粒子を製造することができる。中空微粒子の平均粒径は、1.0μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましく、5.0μm以上が更に好ましい。上記平均粒径は、粒子安定性の観点から、50.0μm以下が好ましく、30.0μm以下がより好ましい。
上記平均粒径は、DLS(動的光散乱法)の方法により測定することができる。もしくは、光学顕微鏡写真から粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出することもでき、その場合、粒子数が合計50以上になるように写真を複数枚撮影して解析する事が望ましい。
本開示の製造方法ではまた、以下に示す本開示の中空微粒子を製造することができる。
【0114】
本開示の中空微粒子は、含フッ素モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂Dを含み、平均粒径が1.0μm以上である。本開示の中空微粒子は、いわゆる入れ子構造を有するものであってもよいが、含フッ素樹脂Dを含むシェル及び中空部からなり、単孔構造を有することが好ましい。
なお、本明細書において、「単孔構造」とは、多孔質状等のように複数の空隙を有する場合は含まず、ただ1つの閉じた空隙を有する構造のことをいう。また、以下の説明において、中空微粒子の空隙以外の部分を「シェル」という。
【0115】
本開示の中空微粒子の粒子径は、上述した製造方法において、液滴の大きさを変化させることにより調節することができるが、従来の方法では、含フッ素樹脂を含む中空微粒子において、平均粒径を大きくすることは困難であった。
上述した本開示の製造方法を用いることにより、含フッ素樹脂を含む中空微粒子であっても平均粒径を大きくすることができ、平均粒径が1.0μm以上である中空微粒子を製造することができる。
【0116】
本開示の中空微粒子は、平均粒径が1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、5.0μm以上であることが更に好ましい。また、平均粒径は50.0μm以下であることが好ましく、40.0μm以下であることがより好ましく、30.0μm以下であることが更に好ましい。
上記平均粒径は、DLS(動的光散乱法)の方法により測定することができる。もしくは、光学顕微鏡写真から粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出することもでき、その場合、粒子数が合計50以上になるように写真を複数枚撮影して解析する事が望ましい。
【0117】
本開示の中空微粒子は、含フッ素樹脂Dを含むシェル及び中空部からなり、単孔構造を有することが好ましく、上記中空部の孔径が、中空微粒子の直径に対して、66~95%であることが好ましい。上記中空部の孔径は、中空微粒子の直径に対して66%以上がより好ましく、74%以上が更に好ましく、79%以上が特に好ましい。また、95%以下が好ましく、93%以下がより好ましく、90%以下が更に好ましく、88%以下が特に好ましい。
上記中空部の孔径は、中空微粒子のTEM写真の画像解析を粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出することができる。具体的には、TEM写真中の約200個の中空微粒子を無作為に抽出し、内半径(R1)を計測することで下記式により中空部の孔径を算出することができる。
中空部の孔径=R1×2
【0118】
本開示の中空微粒子は、中空微粒子の直径に対するシェルの厚さの割合が17%以下であることが好ましい。上記割合は13%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、9%以下が特に好ましい。シェルの厚さが薄いと空隙率が高くなるため、より低誘電率の中空微粒子とすることができる。
上記割合は、中空微粒子の強度の観点から、4%以上が好ましく、6%以上が更に好ましい。
上記シェルの厚さは、中空微粒子のTEM写真の画像解析を粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出することができる。具体的には、TEM写真中の約200個の中空微粒子を無作為に抽出し、内半径(R1)と外半径(R2)を計測することで下記式によりシェルの厚さを算出することができる。
シェルの厚さ=R2-R1
【0119】
本開示の中空微粒子は、空隙率が30体積%以上であることが好ましい。空隙率は、40体積%以上がより好ましく、50体積%以上が更に好ましく、55体積%以上が特に好ましい。空隙率が高いと、中空微粒子の比誘電率を低くすることができ、電材用途に好適である。空隙率の上限は特に限定されないが、中空微粒子の強度の観点から、80体積%以下が好ましく、70体積%以下がより好ましい。
上記空隙率は中空微粒子のTEM写真の画像解析を粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出することができる。具体的には、TEM写真中の約200個の中空微粒子を無作為に抽出し、内半径(R1)と外半径(R2)を計測することで下記式により空隙率を算出することができる。
空隙率(%)=(R1/R2)×100
【0120】
本開示の中空微粒子は、屈折率が1.40以下であることが好ましい。屈折率は、1.35以下がより好ましく、1.30以下が更に好ましく、1.25以下が特に好ましい。屈折率の下限値は特に限定されないが、例えば、1.10以上であってよい。
上記屈折率は、液浸法により求める値である。
【0121】
上記含フッ素樹脂Dは、含フッ素モノマーに基づく重合単位のみからなるものであってもよいし、含フッ素モノマーに基づく重合単位及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーに基づく重合単位を含むものであってもよい。
上記含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーとしては、上述した架橋性モノマー、非含フッ素モノマー(但し架橋性モノマーを除く)が挙げられる。
【0122】
中空微粒子のシェルを強固なものとできることから、上記含フッ素樹脂Dは、含フッ素モノマーに基づく重合単位及び架橋性モノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。中空微粒子のシェルが強固になるため、シェルの厚さを薄くし、空隙率を高くすることができる。
【0123】
上記架橋性モノマーとしては、本開示の製造方法において例示したものが挙げられ、重合性2重結合を2個以上有する多官能性モノマーが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンがより好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0124】
上記含フッ素樹脂Dは、上記架橋性モノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。架橋性モノマーに基づく重合単位が上記範囲であることによって、得られる中空微粒子を強度に優れ、かつ、電気特性にも優れるものとすることができる。
【0125】
上記含フッ素樹脂Dにおいて、上記非含フッ素モノマーに基づく重合単位は、全重合単位に対して0~70質量%であることが好ましく、より好ましくは、0~50質量%である。
【0126】
上記含フッ素樹脂Dは、フッ素含有率が15質量%以上であることが好ましい。フッ素含有率が15質量%以上であることによって、より電気特性、耐水性に優れる。上記フッ素含有率は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。このような含フッ素樹脂Dを含み、平均粒径が1.0μm以上である中空微粒子は、上述した本開示の製造方法、特に、分散工程が分散工程A又は分散工程Bである製造方法により得ることができる。
【0127】
上記含フッ素樹脂Dにおいて、含フッ素モノマー、架橋性モノマー、非含フッ素モノマー(但し架橋性モノマーを除く)としては、本開示の製造方法と同じモノマーが挙げられる。
【0128】
上記含フッ素樹脂Dにおいて、含フッ素モノマーとしては、含フッ素アクリルモノマー、含フッ素スチレンモノマー、含フッ素オレフィン等が挙げられ特に限定されないが、下記一般式(B):
CX=CYZ (B
(式中、X、X及びYは、独立して、同一又は異なって、H、CH、F又はClである。Zは、F、又は、-Q-Rf-Y(Qは、単結合、-O-、-O-(C=O)-、又は、-C(=O)-O-である。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキレン基である。Yは、F、H、-OH、-COOH、-COOR(Rは、炭素数1~20のアルキル基))で示される基、下記式:
【化17】
(式中、X~X10は、独立して、水素原子、フッ素原子、又は、炭素数1~8のフッ素もしくは塩素で置換されてもよい炭化水素基である)で示される基、又は、-SOHである。ただし、X、X、Y及びZのいずれかにFを1つ以上含む。)で表される単量体(B)であることが好ましい。一般式(B)中のX、X、Y及びZとしては、上述した一般式(B)中のX、X、Y及びZと同じものを好適に採用できる。
【0129】
上記含フッ素樹脂Dにおいて、含フッ素モノマーは、下記一般式(C):
CH=CX-COORf (C
(式中、Xは、H、CH、F、Cl又はCFである。Rfは、炭素原子間にエーテル結合を含んでもよい、炭素数1~20の含フッ素アルキル基である。)
で表される含フッ素アクリルモノマー(C)であることが特に好ましい。一般式(C)中のX及びRfとしては、上述した一般式(C)中のX及びRfと同じものを好適に採用できる。
上記含フッ素アクリルモノマー(C)としては、本開示の製造方法の含フッ素アクリルモノマー(C)と同じものが挙げられる。
【0130】
上記含フッ素モノマーとしては、特に、3FM、5FM、13FM、HFIP-A、3FF、5FF、13FF、HFIP-MA、及び、HFIP-Fからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、3FM、5FM、13FM、HFIP-MA及び、HFIP-Aからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0131】
上記含フッ素樹脂Dは、含フッ素アクリルモノマー(C)と、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びジビニル化合物からなる群より選択される少なくとも1種に基づく架橋性モノマー(E)とを含むポリマーであることが好ましい。
上記含フッ素樹脂Dは、上記含フッ素モノマー(C)に基づく重合単位(C)と上記架橋性モノマー(E)に基づく重合単位との質量比(含フッ素モノマー(C)/架橋性モノマー(E))が、80/20~20/80(質量比)であることが好ましく、70/30~30/70(質量比)であることがより好ましく、60/40~40/60(質量比)であることが更に好ましい。
【0132】
上記含フッ素モノマーは、耐熱性、電気特性の観点からは、含フッ素オレフィンであることが好ましく、官能基を有する含フッ素オレフィン(1)、官能基非含有含フッ素オレフィン(2)、及び、環状含フッ素オレフィン(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、官能基非含有含フッ素オレフィン(2)、及び、環状含フッ素オレフィン(3)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、環状含フッ素オレフィン(3)が更に好ましい。また、環状含フッ素オレフィン(3)としては、上述した(a-1)、(a-3)、(a-6)及び(a-7)で示される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、(a-1)、(a-3)及び(a-7)で示される単量体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0133】
上記含フッ素樹脂Dは、比誘電率(1kHz)が5.0以下であることが好ましい。比誘電率は、4.0以下がより好ましく、3.7以下が更に好ましく、3.5以下が特に好ましい。比誘電率の下限値は特に限定されないが、例えば、1.1以上であってよい。
上記比誘電率は、JIS C 2138に準じた測定方法より求める値である。
【0134】
上記含フッ素樹脂Dは、屈折率が1.40以下であることが好ましい。屈折率は、1.39以下がより好ましく、1.38以下が特に好ましい。屈折率の下限値は特に限定されないが、例えば、1.30以上であってよく、非重合性溶剤への溶解性の観点からは1.35以上が好ましい。
上記屈折率は、液浸法により求める値である。
【0135】
本開示の中空微粒子は、相分離促進剤を含むことが好ましい。相分離促進剤としては、上述した中空微粒子の製造方法で記載した相分離促進剤が挙げられる。上述した中空微粒子の製造方法のように相分離促進剤を使用する方法で製造することによって、中空微粒子が相分離促進剤を含む中空微粒子が得られる。上記相分離促進剤は、中空微粒子のシェルに含まれることとなる。
上記相分離促進剤の含有量は、例えば、含フッ素樹脂Dに対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
上記相分離促進剤の含有量は、含フッ素樹脂に対して1質量%以上であってよく、5質量%以上であってよい。
【0136】
本開示の中空微粒子において、低誘電性、低屈折率の観点から、中空部は気体であることが好ましく、空気であることがより好ましい。
【0137】
本開示の中空微粒子は、中空であるため低誘電性に優れ、高周波特性に優れるため、電子材料用途に好適である。すなわち、本開示の中空微粒子は電子材料用であることが好ましい。
【0138】
本開示の中空微粒子は、上記含フッ素樹脂Dを含み、平均粒径が1.0μm以上であることから、誘電率を低くすることができるとともに、同体積で用いた場合の表面積を小さくすることができるため、低誘電材料として用いられる樹脂組成物に好適である。平均粒径が小さいと比表面積が増えるため、界面に付着した水分等の影響で電気特性が著しく低下する。
本開示はまた、絶縁性樹脂中に本開示の中空微粒子が分散された樹脂組成物を提供する。上記絶縁性樹脂としては特に限定されず、例えば、含フッ素樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等が挙げられる。なかでも、含フッ素樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、及び、メラミン樹脂等が好適である。これらの絶縁性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0139】
上記低誘電材料における中空微粒子の含有量は特に限定されず、各用途で要求される特性に従って適宜設定すればよく、例えば、絶縁性樹脂100質量部当たり、10~90質量部であってよい。
【0140】
本開示の中空微粒子及び本開示の硬化性組成物を使用する電子材料用途としては特に限定されないが、プリント配線板、アンテナ基板や高周波コネクタの部材層間絶縁膜等が挙げられる。特に、5G、6Gで使用される高周波対応基板において有用である。
【0141】
本開示の中空微粒子は、中空であるため低屈折性に優れるため、低屈折率が要求される種々の用途に適用可能である。すなわち、本開示の中空微粒子は低屈折材料用であることが好ましい。
【0142】
低屈折材料として使用する場合、例えば、反射防止フィルム、屈折率調整剤、光学接着剤用添加フィラー、低屈折率レンズ材料、プリズム等に好適に使用できる。
【0143】
本開示の中空微粒子を適当なバインダーに分散させて反射防止フィルム用コーティング剤とすれば、容易に反射防止フィルムを作製できる。本開示の中空微粒子は、低屈折率であり、耐アルカリ性、バインダーに対する分散性にも優れることから、得られる反射防止フィルムは、透明基板の反射を効率的に抑えることができ、汚れ及び洗浄に強く、機械的強度にも優れる。
本開示の中空微粒子とバインダーとを含有する反射防止フィルム用コーティング剤、本開示の中空微粒子又は本開示の反射防止フィルム用コーティング剤を用いてなる反射防止フィルムもまた、本開示の1つである。
【0144】
本開示の反射防止フィルム用コーティング剤は、本開示の中空微粒子とバインダーとを含有する。
上記バインダーとしては、透明であり、成膜可能な材料であれば特に限定はされず、樹脂等の有機系材料、無機系材料のいずれも用いることができる。
上記有機系材料としては、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブタノイルセルロース、アセチルプロピオニルセルロースアセテート、ニトロセルロース等のセルロース誘導体;ポリアミド、ポリカーボネート、特公昭48-40414号公報に記載されたポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン1,2-ジフェノキシエタン-4,4-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート、又は、これらの各種含フッ素樹脂等の比較的低屈折率の透明樹脂等が挙げられる。
なお、上記バインダーとして透明樹脂を用いる場合には、ガラス転移温度が本開示の中空微粒子のガラス転移温度よりも低いものを用いることが好ましい。これにより、バインダーが製膜時に中空微粒子間の結着剤の役割を果たし充分な膜強度を得ることができる。
【0145】
上記無機系材料としては、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物が挙げられ、具体的には例えば、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ-i-プロポキシド、チタンテトラ-n-プロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド、チタンテトラ-sec-ブトキシド、チタンテトラ-tert-ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ-i-プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ-i-プロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-sec-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-tert-ブトキシド等の金属アルコレート化合物;ジ-イソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ-ブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ-エトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ビスアセチルアセトンジルコニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ-n-ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ-i-プロポキシドモノメチルアセトアセテート、トリ-n-ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテート等のキレート化合物;炭酸ジルコニールアンモニウム又はジルコニウムを主成分とする活性無機ポリマー等が挙げられる。
【0146】
本開示の中空微粒子とバインダーとの配合比率としては特に限定されないが、中空微粒子の配合量の好ましい下限は5体積%、好ましい上限は95体積%である。5体積%未満であると、得られる反射防止フィルムの屈折率を充分に低くできないことがあり、95体積%を超えると、得られる反射防止フィルムの機械強度が劣ることがある。より好ましい下限は30体積%、より好ましい上限は90体積%であり、更に好ましい下限は50体積%、更に好ましい上限は80体積%である。
【0147】
本開示の反射防止フィルム用コーティング剤は、上記バインダーとして硬化型のものを用いる場合にはバインダー中に中空微粒子が懸濁したエマルジョンであってもよく、また、それ以外の場合には適宜の揮発性溶媒に希釈したものであってもよい。
上記希釈溶媒としては特に限定されないが、組成物の安定性、濡れ性、揮発性等から、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が好適である。これらの希釈溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0148】
本開示の反射防止フィルムは、本開示の反射防止フィルム用コーティング剤を離型フィルム等上、又は、直接透明基板上に塗工した後、乾燥する方法により作製することができる。
本開示の反射防止用コーティング剤を塗工する方法としては特に限定されず、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
【0149】
本開示の反射防止フィルム用コーティング剤を離型フィルム等上、又は、直接透明基板上に塗工した後、加熱乾燥等により塗膜を形成し、その後、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等を行い塗膜を硬化させることにより、本開示の反射防止フィルムが得られる。
【0150】
本開示の反射防止フィルムは、表面が平滑であることが好ましい。本明細書において表面が平滑とは、JIS B0601に規定される方法により算出した表面荒れRzが0.2μm以下であることを意味する。
表面が平滑であることにより本開示の反射防止フィルムは、表面での光の乱反射によって全体が白っぽくなることがなく、また、表面に指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着しにくく、一度付着した汚れも容易に除去することができる。
【0151】
本開示の反射防止フィルムは、本開示の反射防止フィルム用コーティング剤を用いてなる層の他に、更に、基材層を有していてもよい。基材層を有することにより、本開示の反射防止フィルムは機械的強度が向上し、取扱い性が向上する。
上記基材層としては、透明であれば特に限定されないが、成形性や機械的強度の点から、例えば、上記バインダーとして用いることができる透明樹脂等からなるものが好適である。
【0152】
本開示の反射防止フィルムの厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は0.05μm、好ましい上限は100μmである。0.05μm未満であると、耐擦傷性が不充分となることがあり、100μmを超えると、フィルムが割れやすくなることがある。
また、本開示の反射防止フィルムが上記基材層を有する場合、基材層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は50μm、好ましい上限は500μmである。50μm未満であると、本開示の反射防止フィルムの強度が劣ることがあり、500μmを超えると、本開示の反射防止フィルムの透明性が劣り、内部の視覚情報が見えにくくなることがある。
【実施例
【0153】
次に本開示を実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0154】
[実施例1]
含フッ素モノマーとして2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)を、架橋性モノマーとしてエチレングリコールジメタクリレート(EGDM)を、油相の溶媒として相分離促進剤としてポリスチレン(PS)(重合度2,000)(Sp値18.4(J/cm1/2)を溶解させたトルエン溶液(Sp値18.2(J/cm1/2)を、開始剤として、低温開始剤2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)を、分散安定剤としてPn=1700、ケン化度=88%のポリビニルアルコール(PVA)を用いた。
下記表1の組成に従い、PSを溶解させたトルエン溶液に架橋性モノマーであるEGDM、含フッ素モノマーである3FMを重量比1:1で加え、さらに開始剤V-70を溶解させた均一な油相を水媒体にホモジナイザーを用いることにより分散させ懸濁滴を作製した。これを、窒素雰囲気下にて30℃で5時間、400rpmで攪拌して重合することによってフッ素樹脂含有中空微粒子を作製した。
【0155】
図1(a)に重合前の懸濁滴、図1(b)に重合後の中空微粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合前の光学顕微鏡写真では、均一な懸濁滴が確認された。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造の粒子が得られていることが示唆された。得られた中空微粒子を乾燥後、SEMサンプルを作成し、あえて破砕したものを観察すると図2に示すように乾燥状態においても明確に中空構造を有していることが示された。実施例1で得られたサンプルを、以下「3FM1:1」とする。
【0156】
[比較例1]
PS及びトルエンを加えないこと以外は、実施例1と同様にして重合を行ったところ、中空構造を持たない中実粒子が得られた。比較例1で得られたサンプルを、以下「3FM中実」と記載する。
【0157】
[実施例2]
架橋性モノマーであるEGDMと含フッ素モノマーである3FMを質量比1:2(0.22g:0.44g)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして重合を行い、含フッ素樹脂含有中空微粒子を作製した。図3(a)に重合前の懸濁滴、図3(b)に重合後の中空微粒子の光学顕微鏡写真を示す。中空構造の内壁が少し乱れているように観察されるものの、「3FM1:1」と同様に中空微粒子が得られていることが確認された。得られたサンプルを、以下「3FM1:2」と記載する。
なお、粒子径が10μm以上と大きい中空微粒子は、粒子の中に粒子が生成した入れ子構造が形成されていることが確認された。これは、最外殻へポリマーが移動する前に析出した結果と考えられる。
【0158】
[実施例3]
下記表1の組成に従い、各成分の種類及び量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして重合を行い、含フッ素樹脂含有中空微粒子を作製した。表1中、5FMはCH=C(CH)COOCHCFCFで示される2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレートである。
光学顕微鏡観察の結果、実施例1及び2で使用した3FMと同様に中空微粒子が得られていることを確認した。
【0159】
[比較例2]
下記表1のように各成分の種類及び量を変更したこと、重合における回転数を400rpmにしたこと以外は、実施例1と同様にして重合を行い、含フッ素樹脂含有中空微粒子を作製した。表1中、13FMはCH=C(CH)COOCHCH(CFCFで示される1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルメタクリレート(13FM)である。
【0160】
図4(a)に重合前の懸濁滴、図4(b)に重合後の粒子の光学顕微鏡写真を示す。図4(b)で示されるように、中空微粒子が得られなかったことを確認した。得られたサンプルを、以下「13FM中実」と記載する。
【0161】
[実施例4]
下記表1のように各成分の種類及び量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして重合を行い、含フッ素樹脂含有中空微粒子を作製した。
【0162】
図5(a)に重合前の懸濁滴、図5(b)に重合後の粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合前の光学顕微鏡写真から、均一な懸濁滴が観察された。また、重合後の光学顕微鏡写真から、PSを10質量%で含む系では明瞭なシェル壁が確認され、含フッ素樹脂をシェル壁に含有する中空微粒子が作製されたことが示唆された。
図6(a)に得られた粒子のSEM写真、図6(b)にシェル壁のEDX mapping、図6(c)に粒子を破砕したSEM写真を示す。SEM写真から、作製された粒子が真球状で滑らかな粒子であることが分かった。EDX mappingでシェル壁の元素分析を行ったところ、シェル壁にフッ素が含有されていることも確認した。さらに、この粒子を破砕したものをSEMにて観察し、粒子内部が中空であることも確認した。これらの結果から、PSを10質量%で含む系では含フッ素樹脂をシェル壁に含有した中空微粒子が作製された。以下、このサンプルを「13FM1:1」と記載する。
【表1】
【0163】
[実施例5]
下記表2の組成に従い、PSを溶解させたトルエン溶液にEGDM及び13FMを25℃で溶解させた均一な油相を、水媒体にホモジナイザーを用いることにより分散させ懸濁滴を作製した。これを、窒素雰囲気下にて70℃に上昇させた後、BPOを懸濁液に添加し、70℃で5時間、400rpmで攪拌して重合することによってフッ素樹脂含有中空微粒子を作製した。なお、表2中、BPOは中温開始剤の過酸化ベンゾイルである。
【0164】
【表2】
【0165】
図7(a)に重合前の光学顕微鏡写真、図8(a)に重合後の光学顕微鏡写真、図8(b)に重合後のSEM写真を示す。図8(a)から明瞭なシェル壁が形成されており、図8(b)に示される、破砕した粒子のSEM写真から、粒子内部が中空であることも確認し、目的としていたフッ素含有率の高い中空微粒子の作製に成功した。
【0166】
[評価]
実施例及び比較例で得られた微粒子の物性を評価した。サンプリングおよび前処理条件としては、合成したエマルション液を十分静置し、沈殿した部分から注意してスポイドで適量採取する。それを風乾後、送風式乾燥機にて80℃、24時間の条件で乾燥した。このサンプルに関して元素分析、熱分析(TG/DTA、DSC)、をおこなった。
【0167】
[フッ素含有率]
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメーター、オリオン社製 901型)で測定することにより求めた(質量%)。
フッ素の元素分析を行い、分析値(F質量%)からポリマー中の含フッ素モノマーの組成(質量%)を算出した。ここでPSの量は架橋剤の10質量%として一律に計算した。結果を表3に示す。
【0168】
【表3】
【0169】
[熱分解温度]
示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製 STA7200)を用い、空気雰囲気の条件で昇温速度10℃/分の条件で、サンプルの質量減少率が1質量%となった時点の温度を測定した。結果を表4にまとめる。
【0170】
【表4】
【0171】
[ガラス転移温度]
DSC(示差走査熱量計:日立ハイテクサイエンス社製 DSC7000)を用いて、30℃から200℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温(ファーストラン)-降温-昇温(セカンドラン)させ、セカンドランにおける吸熱曲線の中間点をガラス転移温度(℃)としたが、いずれのサンプルも、十分架橋されていたため、表5に示すように、明瞭なガラス転移温度(Tg)や融点(Tm)は観測できなかった。
【0172】
【表5】
【0173】
〔粒子径〕
中空微粒子の光学顕微鏡写真の画像解析を粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出した。具体的には異なる場所の写真を撮影し、粒子数として合計50以上になるようにして平均粒径、最大粒径、最小粒径、CV値を算出した。結果を表6に示す。
【表6】
【0174】
[製膜1]
ダイキン工業社製フッ素樹脂ディスパージョンSE-405(固形分濃度50%)に、得られた中空微粒子ディスパージョン3FM1:2を適量ブレンド後、超音波洗浄機にて15分間混合させた。その後、15ミルに調整したドクターブレードでPET基板上に製膜し、室温で乾燥後、60℃の送風乾燥機で12時間乾燥させた。得られたフィルムで各種測定をおこなった。厚みはマイクロメーターを用いてPET基板こみで測定した後、PET基板単体の値を引く事でフィルム膜厚とした。膜厚の測定は5点平均とした。また、3FM1:2の含有量はフッ素元素分析の結果から計算してもとめた。
また、3FM中実を使用したフィルム、微粒子を添加しないSE-405のみで形成したフィルムも同様にして作製した。結果を表7に示す。
【0175】
【表7】
【0176】
[断面SEM観察]
上記で製膜したフィルム(微粒子:3FM1:2、微粒子添加量:14.0質量%)の断面SEM写真を図9及び10に示す。粒子単体のSEM観察においても観測されていた入れ子構造が断面SEMにおいても観測され、また、中空構造も確認された。径の大きい粒子では入れ子構造が確認され、径の小さい粒子では中空構造が確認された。
【0177】
[誘電率及び誘電正接]
上記で製膜したフィルムの両面に真空中でアルミニウムを蒸着しサンプルとした。このサンプルをLCRメーターにて、25℃で、周波数1kHzでの静電容量及び誘電正接を測定した。得られた各静電容量から比誘電率を算出し、誘電率とした。結果を下記表8に示す。
【0178】
【表8】
【0179】
誘電正接(tanδ)の結果をグラフにまとめたものを図11のグラフに示す。複合則に従って、今回の系のtanδが線形近似されたとすると、グラフで示したように、中実微粒子を混合した結果は、ほぼ理論曲線にのるが、中空微粒子の結果は明らかに下にはずれ、これは、空気(中空)の効果であると考えられる。
【0180】
[製膜2]
中空微粒子として13FM1:1を使用し、上記製膜1と同様にして下記表9及び10に示すフィルムを作製し、フィルムの膜厚、比誘電率、誘電正接を測定した。いずれのフィルムも中空微粒子を使用しないSE405単独で作製したフィルムと比較して、比誘電率、誘電正接ともに低下した。
【0181】
【表9】
【0182】
【表10】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11