(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】陸海空用の乗り物
(51)【国際特許分類】
B64C 37/00 20060101AFI20240725BHJP
B64C 35/00 20060101ALI20240725BHJP
B64C 29/00 20060101ALI20240725BHJP
B60F 5/02 20060101ALI20240725BHJP
B60F 3/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B64C37/00
B64C35/00
B64C29/00 A
B60F5/02
B60F3/00 A
(21)【出願番号】P 2023174879
(22)【出願日】2023-10-09
【審査請求日】2023-10-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523383370
【氏名又は名称】三原 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】三原 啓一
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特許第7225519(JP,B2)
【文献】特開2023-043294(JP,A)
【文献】中国実用新案第208369697(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第116461266(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105034729(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 37/00
B64C 35/00
B64C 29/00
B60F 5/02
B60F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上走行、水上走行及び飛行が可能な陸海空用の乗り物であって、
車体と、
前記乗り物の走行及び飛行のための複数のタイヤユニットと、
前記タイヤユニットに駆動力を供給する駆動機構と、
前記乗り物のドライバーからの操作や指令に基づいて前記駆動機構及びクラッチ機構を制御する制御部と、を備え、
前記タイヤユニットは、
対となる車輪部と、前記対となる車輪部の内部空間に組み込まれたプロペラと、を備え
、
前記プロペラは、
水平方向に延出する円筒形状の回転軸と、
前記回転軸の半径方向に沿って外方に延出される複数の羽根と、を有し、
前記対となる車輪部のうち、前記乗り物の内側に配置される車輪部の中心軸には、前記回転軸が挿通される挿通孔が形成されている一方、前記乗り物の外側に配置される車輪部の中心軸には、前記回転軸が着脱可能に出し入れされる凹溝が形成され、
前記駆動機構は、モータ駆動部及びクラッチ機構を備え、
当該モータ駆動部は、前記回転軸に連結されており、
前記回転軸は、前記車輪部の中心軸に形成された前記挿通孔に挿通され、且つ前記プロペラの羽根が一体化されている、ことを特徴とする陸海空用の乗り物。
【請求項2】
前記車輪部は、
地面との接地面となる円環状のタイヤと、
前記タイヤが取り付けられる円環状のホイールと、
前記ホイールの強度を補強するために前記ホイールの内周面に渡って懸架された複数のスポークと、
前記対となる車輪部の一方のホイールから他方の前記ホイールに向かって水平方向に延出された複数の連結棒と、を有することを特徴とする請求項1記載の陸海空用の乗り物。
【請求項3】
前記連結棒は三角柱形状を有することを特徴とする請求項2記載の陸海空用の乗り物。
【請求項4】
前記クラッチ機構は、前記プロペラを回転させるための第一回転子、前記対となる車輪部を回転させるための第二回転子に駆動力を供給するか否かを決定する、ことを特徴とする請求項1記載の陸海空用の乗り物。
【請求項5】
対となる車輪部と、前記対となる車輪部の内部空間に組み込まれたプロペラと、を備えるタイヤユニットであって、
前記車輪部は、
地面との接地面となる円環状のタイヤと、
前記タイヤが取り付けられる円環状のホイールと、
前記ホイールの強度を補強するために前記ホイールの内周面に渡って懸架された複数のスポークと、
前記対となる車輪部の一方のホイールから他方の前記ホイールに向かって水平方向に延出された複数の連結棒と、を有し
、
前記プロペラは、
水平方向に延出する円筒形状の回転軸と、
前記回転軸の半径方向に沿って外方に延出される複数の羽根と、を有し、
前記対となる車輪部のうち、内側に配置される車輪部の中心軸には、前記回転軸が挿通される挿通孔が形成されている一方、外側に配置される車輪部の中心軸には、前記回転軸が着脱可能に出し入れされる凹溝が形成され、
前記タイヤユニットに駆動力を供給する駆動機構は、モータ駆動部及びクラッチ機構を備え、
当該モータ駆動部は、前記回転軸に連結されており、
前記回転軸は、前記車輪部の中心軸に形成された前記挿通孔に挿通され、且つ前記プロペラの羽根が一体化されている、ことを特徴とするタイヤユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸海空用の乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂空飛ぶ自動車、又は飛行車は、近年の技術の進歩により、実現性が高まっている。但し、未だ一般的な移動手段ではなく、いくつかのプロトタイプやコンセプトが存在する。例えばテラフージャは車のように道路を走行し、空中ではプロペラを使用して飛行する。パラジェット・スカイカーは、車両として陸上を移動し、空中では大型のパラセイルを展開して飛行する。また、エアモビルは自動車のような外観を持ち、空中でプロペラを使用して飛行する。
【0003】
また、日本における空飛ぶ自動車の発明は様々あり、例えば、車輪による地上走行と車輪に組み込まれたプロペラを利用した飛行とを実現でき、地上走行と飛行との移行をスムースに行うことができる空陸両用移動体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、飛行に必要とされる揚力を確保し得ると共に、飛行時以外に邪魔にならない翼を備えた飛行可能な飛行機が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-43294号公報
【文献】特開2006-213225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のところ、空飛ぶ自動車は高価で、一般消費者には手の届かないものだが、コストを削減し、経済的にアクセス可能とすれば、将来的に一般的な交通手段として実現する可能性もあり、技術が進行するにつれて、現実的になると予測される。しかしながら、上述のように空飛ぶ自動車は、未だに比較的大型のプロペラやエンジンを用いて、どちらかと言えばドローンに近い形状を有するものが大半である。
【0006】
また、引例1に示される空陸両用移動体は、車輪の枠体の外部に組み込まれたプロペラ、及び駆動機構に備わるモータを利用して飛行するが、地上走行から飛行に移行する際には、車輪及びプロペラを90度回動させて水平状態にした後に飛行を開始する必要性があり、効率性に未だ問題点がある。
【0007】
さらに、より安全性と効率性を向上させた空飛ぶ自動車の構造や機構に関しては未だに改善の余地があることは疑いがない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、車輪による陸上走行のみではなく、海上(水上)走行やプロペラを利用した飛行をより効率的に実現できる陸海空用の乗り物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、地上走行、水上走行及び飛行が可能な陸海空用の乗り物であって、 車体と、前記乗り物の走行及び飛行のための複数のタイヤユニットと、前記タイヤユニットに駆動力を供給する駆動機構と、前記乗り物のドライバーからの操作や指令に基づいて前記駆動機構及びクラッチ機構を制御する制御部と、を備え、前記タイヤユニットは、対となる車輪部と、前記対となる車輪部の内部空間に組み込まれたプロペラと、を備え、前記プロペラは、水平方向に延出する円筒形状の回転軸と、前記回転軸の半径方向に沿って外方に延出される複数の羽根と、を有し、前記対となる車輪部のうち、前記乗り物の内側に配置される車輪部の中心軸には、前記回転軸が挿通される挿通孔が形成されている一方、前記乗り物の外側に配置される車輪部の中心軸には、前記回転軸が着脱可能に出し入れされる凹溝が形成され、前記駆動機構は、モータ駆動部及びクラッチ機構を備え、当該モータ駆動部は、前記回転軸に連結されており、前記回転軸は、前記車輪部の中心軸に形成された前記挿通孔に挿通され、且つ前記プロペラの羽根が一体化されていることを特徴とする。
【0010】
この陸海空用の乗り物において、前記車輪部は、地面との接地面となる円環状のタイヤと、前記タイヤが取り付けられる円環状のホイールと、前記ホイールの強度を補強するために前記ホイールの内周面に渡って懸架された複数のスポークと、前記対となる車輪部の一方のホイールから他方の前記ホイールに向かって水平方向に延出された複数の連結棒と、を有することが好ましい。
【0011】
この陸海空用の乗り物において、前記連結棒は三角柱形状を有することが好ましい。
【0015】
この陸海空用の乗り物において、前記クラッチ機構は、前記プロペラを回転させるための第一回転子、前記対となる車輪部を回転させるための第二回転子に駆動力を供給するか否かを決定することが好ましい。
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、対となる車輪部と、前記対となる車輪部の内部空間に組み込まれたプロペラと、を備えるタイヤユニットであって、前記車輪部は、地面との接地面となる円環状のタイヤと、前記タイヤが取り付けられる円環状のホイールと、前記ホイールの強度を補強するために前記ホイールの内周面に渡って懸架された複数のスポークと、前記対となる車輪部の一方のホイールから他方の前記ホイールに向かって水平方向に延出された複数の連結棒と、を有し、前記プロペラは、水平方向に延出する円筒形状の回転軸と、前記回転軸の半径方向に沿って外方に延出される複数の羽根と、を有し、前記対となる車輪部のうち、内側に配置される車輪部の中心軸には、前記回転軸が挿通される挿通孔が形成されている一方、外側に配置される車輪部の中心軸には、前記回転軸が着脱可能に出し入れされる凹溝が形成され、前記タイヤユニットに駆動力を供給する駆動機構は、モータ駆動部及びクラッチ機構を備え、当該モータ駆動部は、前記回転軸に連結されており、前記回転軸は、前記車輪部の中心軸に形成された前記挿通孔に挿通され、且つ前記プロペラの羽根が一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る陸海空用の乗り物は、車体と、乗り物の走行及び飛行のための複数のタイヤユニットと、タイヤユニットに駆動力を供給する駆動機構と、ドライバーからの操作や指令に基づいて駆動機構及びクラッチ機構を制御する制御部と、を備える。タイヤユニットは、対となる車輪部と、この対となる車輪部の内部空間に組み込まれたプロペラと、を備える。この構成により、本発明に係る陸海空用の乗り物では、車輪による陸上走行のみではなく、海上(水上)走行やプロペラを利用した飛行をより効率的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る陸海空用の乗り物の側面図である。
【
図2】同上陸海空用の乗り物の内部構造を説明する正面図である。
【
図3】(a)同上陸海空用の乗り物に備わるタイヤユニットの分解斜視図、(b)同上タイヤユニットの斜視図である。
【
図4】他の形態の連結棒を有する同上タイヤユニットの斜視図である。
【
図5】他の形態を有する同上タイヤユニットの斜視図である。
【
図6】(a)及び(b)同上陸海空用の乗り物に備わるクラッチ機構の動作説明図である。
【
図7】同上陸海空用の乗り物の上面視からの説明図である。
【
図8】他の形態を有する陸海空用の乗り物の内部構造を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る陸海空用の乗り物に関して図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る陸海空用の乗り物が使用される場所は特に限定されるものではなく、車輪による陸上走行のみならず、相対する車輪の内部に組み込まれたプロペラを上手に利用した飛行や海上(水上)走行を実現できる。
【0020】
<陸海空用の乗り物の全体構造>
最初に、本実施の形態に係る陸海空用の乗り物(以下、乗り物と記載)の全体構造に関して、
図1及び
図2を参照して説明する。乗り物1は、地上走行、水上走行及び飛行が可能な陸海空用の乗り物であって、車体2と、乗り物1の走行・飛行のための複数のタイヤユニット3と、タイヤユニット3に駆動力を供給する駆動機構4と、ドライバーからの操作や指令に基づいて駆動機構4や後述するクラッチ機構42を制御する制御部5を備える。すなわち、乗車時にはドライバーが運転状態を物理手段で制御部5に対して指令し、タイヤユニット3の状態が陸上、海上(水上)、飛行のための夫々の状態に遷移して運転状態が切り替わる。
【0021】
車体2は、軽量且つ耐久性のある素材(例えば高張力鋼板やアルミ、強化樹脂など)で構成される。
図1及び
図2に示す場合、車体2はJIS規格内であり、例えば、前後(2人乗り)、全長3400mm、全高200mm、75%比率(全長25.5cm、全高15cm内)で製作する。タイヤユニット3は例えば直径120cm、幅30cm程度の大きさとなる。また、車体2にはドア2a、タラップ2b及び下辺窓2cが設けられている。車体2は、水上での運転を可能にする為、(前後に下辺窓がある)車底(船底)はお椀形状をして水上浮力を得る形にする。また、車体2とタイヤユニット3との間に水の侵入を防ぐ防水加工をする事が好ましい。
【0022】
<タイヤユニット3>
次に、本実施の形態に係るタイヤユニット3の構成に関して
図3を参照して説明する。
図3は、乗り物1に備わるタイヤユニットの分解斜視図を示し、タイヤユニット3は、対となる車輪部31a,31bと、車輪部31a,31bの内部空間に組み込まれたプロペラ32と、を備える。このように、タイヤユニット3では、タイヤ全体をゴムで覆う形状ではなく、対となる車輪部31a,31bの内部空間に自由に空気が吸入又は排出できる空気の通り道を作っている。
【0023】
車輪部31a,31bは、地面との接地面となりゴムなどで形成された円環状のタイヤ31cと、タイヤ31cが取り付けられる円環状のホイール31dと、ホイール31dの強度を補強するためにホイール31dの内周面に渡って懸架された複数のスポーク31eと、対となる車輪部31a,31bの一方のホイール31dから他方のホイール31dに向かって水平方向に延出された複数の連結棒31fと、を有する。なお、この連結棒31fによって、対となる車輪部31a,31bが一体回転する。連結棒31fは棒形状に限定されるものではなく
図4に示すような三角柱形状とすることで、車輪部31a,31bとプロペラ32とを一緒に走行時、車輪部31a,31bの周囲の空気をより効率的に内部空間に送り込み、プロペラ32が効率的に風力を発する。なお、円環状のタイヤ31cはゴミなどで形成されるが、内部にチューブを入れて、自転車やバイクの様な弾力性を持たせても良い。
【0024】
本図において、相対する車輪部31a,31bは軽量化のため、自転車やバイクの様なスポーク31eを有する。強度が必要な場合は、必要に応じて太く大きなスポーク31eにしても良い。また、対となる2つの車輪部31a,31bの幅を大きく取ることによって、より多くの空気をプロペラ32に取り入れることができ、且つプロペラ32の羽根32bの幅をより大きくすることでより効率的に揚力を得ることができる。なお、プロペラ32が高速回転すると危険なイメージがあるが、プロペラ32の周囲に配置された車輪部31a,31bはプロペラ32の高速回転時には止まっているので安全である。
【0025】
プロペラ32は、水平方向に延出する円筒形状の回転軸32aと、回転軸32aの半径方向(すなわち垂直方向)に沿って外方に延出される複数の羽根32bと、を有する。複数枚の羽根32bは、所定間隔で回転軸32aに一体化された構造を有している。なお、
図3における羽根32bの枚数は8枚であるが、羽根32bの枚数はこれに限定されるものではない。
【0026】
相対する車輪部31a,31bの中心軸構造は異なる。すなわち、駆動機構4に近く乗り物1の内側に配置される車輪部31aの中心軸には、回転軸32aが挿通される挿通孔31aaが形成されている。一方、乗り物1の外側に配置される車輪部31bの中心軸には、回転軸32aが着脱可能に出し入れされる凹溝31baが形成されている。このような構造によって、後述するクラッチ機構に基づいて、プロペラ32だけを回したり、車輪部31a,31bだけを回したり、又は車輪部31a,31b及びプロペラ32を一体化して回すことができる。この結果、乗り物1の陸海空の運転状態の切り替えを効率的に行い、スピードの調整を行うことができる。
【0027】
なお、車輪部31a,31bの周りはネジやビズなどでの取り外しが可能な形状として、プロペラ32のメンテナンスを行う場合にも対応できる形状とする。タイヤ31cは、ゴム、シリコン、強化プラスチックなどの緩衝材(カーボンなど)を取り付けて、振動を抑制する構造にしても良い。ホイール31d、スポーク31e及びプロペラ32の羽根32bの素材には例えば金属、金属化合物、プラスチック、カーボンなどの軽量で且つ強度のあるジュラルシン、アルミニウム、鉄などの素材を使う。
【0028】
なお、タイヤユニット3の車輪部31a,31bの数は上述のような2つに限定されるものではなく、
図5に示すような3つ以上の車輪部31a,31b,31cとしても良い。例えば、タイヤ31cの地面と設置する面のゴム又はシリコンなどでできた部分は車重に応じて、2本の車輪部に限らず、3本以上に車輪部31a,31b,31a´という風に増やしても良い。この場合、プロペラ32の羽根32bの幅をより大きくすることで、より効率的に揚力を得ることができる。また、車輪部31a,31b,31a´の内部に組み込まれるプロペラ32の数を2以上に増やし、乗り物1の空中での方向転換をスムースにすることも考え得る。さらに、外からプロペラ32への異物の侵入を防ぐために、網状のカバーをタイヤユニット3の外周面に装着しても良い。
【0029】
このように、本実施の形態では、タイヤユニット3の中心部分にプロペラ32を装着して、左右対称方向より強力な風を発生させることによって乗り物1の全体を浮上させる。また、車輪部31a,31bとプロペラ32との一体化によって、車体2の後方にプロペラを配置するなど二次動力を使用しないでも走行できるようになる。
【0030】
<駆動機構4>
次に、本実施の形態に係る陸海空用の乗り物1に備わる駆動機構4に関して説明する。
図2に示すように、回転軸32aは車輪部31a,31b及びプロペラ32を回転駆動させる駆動機構4に連結される。具体的には、この駆動機構4は、モータ駆動部41及びクラッチ機構42を備える。そして、モータ駆動部41及びクラッチ機構42を作動することによって、タイヤユニット3の車輪部31a,31b、プロペラ32を夫々独立して駆動できる。
【0031】
モータ駆動部41は、回転軸32に連結されており、回転軸32は車輪部31aの中心軸に形成された挿通孔31aaに挿通され、且つプロペラ32の羽根32bが一体化されている。なお、回転軸32を回転させる典型的な駆動源としてはモータやエンジンがあるが、仮にスピードを上げて走るためにロケットエンジンなどを取り付けても構わない。
【0032】
クラッチ機構42は、物を嵌合したり切り離しを行う機械要素であって、本実施の形態においては機械的に噛み合う構造の方式を用いる。当該クラッチ機構42は、車輪部31a,31b/プロペラ32に対してモータ駆動部41から供給される駆動力の供給のオン/オフを行う機構であって、プロペラ32の回転軸32aは、タイヤユニット3の車輪部31a,31bに対して嵌合切り離し可能である。
【0033】
次に、クラッチ機構42の詳細に関しては
図6を参照しながら説明する。クラッチ機構42において、
図6(a)に示すように、プロペラ32を回転させるための第一回転子A、車輪部31a,31bを回転させるための第二回転子Bに駆動力を供給するか否かを決定する。例えば、モータ駆動部41からの回転駆動力を伝える回転体Cとの嵌合を第一回転子Aのみにするとプロペラ32のみが回転する状態(ここでは説明のために第一クラッチ状態と呼ぶ)となる。
【0034】
一方、
図6(b)に示す方向に回転体Cの配置を移動させて(本図においては右方向に移動させ)、回転体Cと第一回転子A及び第二回転子Bを嵌合させると、プロペラ32及び車輪部31a,31bを同時に回転させる状態(ここでは説明のために第二クラッチ状態と呼ぶ)に移行する。さらに、回転体Cと第二回転子Bのみとを嵌合させると車輪部31a,31bのみを回転させる状態(ここでは、第三クラッチ状態と呼ぶ)に移行する。このように第一~第三クラッチ状態への移行することで、タイヤユニット3の車輪部31a,31bとプロペラ32とをそれぞれ独立に回転させることができる。
【0035】
<制御部5>
次に、制御部5の動作に関して説明する。制御部5は、乗り物1のドライバーから陸上走行の指令を受けると、回転体Cの嵌合状態を第二回転子Bのみになるように回転軸Cの配置を調整し(第三クラッチ状態に調整し)、且つ回転軸32aを回転させるモータ駆動部41を用いて車輪部31a,31bの回転数を制御する。なお、一般道ではギアを変えて低速でしっかりと、ゆっくりと走行できる回転数に制御することが好ましい。
【0036】
制御部5は、乗り物1のドライバーから飛行の指令を受けると、回転体Cの嵌合状態を第一回転子Aのみになるように回転軸体Cの配置を調整し(第一クラッチ状態に調整し)、且つ回転軸32aを回転させるモータ駆動部41を用いてプロペラ32の回転数を制御する。
【0037】
また制御部5は、乗り物1のドライバーから海上走行の指令を受けると、回転体Cの嵌合状態を第一回転子A及び第二回転子Bとなるように回転軸体Cの配置を調整し(第二クラッチ状態に調整し)、且つ回転軸32aを回転させるモータ駆動部41を用いて回転数を制御する。
【0038】
次に、乗り物1の大きさや内装レイアウトに関して
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7に示す場合、乗り物1は、タイヤユニット3の4輪に、プロペラ32を用いて左右対称な風力を発生させることによって、乗り物1の全体を浮上させて陸海空走行を自由に選択できる。また、例えば日本は河川が多いので、空中走行時は市街地をできるだけ避けて、河川の上空を利用してトラブルやアクシデントの発生を避けながら飛行して、山、川、海の遭難や災害活動などにも対応できる性能を有する車とできる。
【0039】
図7に示す場合、乗り物1においてはタイヤユニット3を120cm直径で取っている。このため、この車体の乗員スペースはシート7が2列で配置された二人乗車となる、なお、前後にタイヤユニット3をずらせば4名乗車も可能なスペースである。
図8に示す乗り物1はJIS規格外の場合(4~5人乗り)であって、タイヤユニット3は直径300cm、幅110cmで複数のプロペラ32が内蔵される。
【0040】
なお、
図1及び
図2に示すように、飛行中の乗り物1が風の抵抗を受けるためのウイング6を設けてもよい。該ウイング6を設ければ、4つのタイヤユニット3が発生する揚力が小さくても乗り物1を浮揚させることができる。すると、プロペラ32の大きさを小さくできるので、駆動機構4を小型化・軽量化できる。
【0041】
また、乗り物1を例えば物資を運ぶ場合に限定すれば一人用でも良いが、災害用などの利便性を考えれば4人乗りが好ましい。しかしながら、タイヤユニット3の形状がかなり大きくなるためJIS規格内で乗車スペースを確保するため、例えば室内レイアウトとして3列シートとすることも考え得る。また図示はしていないが椅子の脚形状をアーチ型にして、椅子と椅子との脚の間に、足を伸ばすことができるスペースを作ることも考え得る。
【0042】
以上の説明のように、本発明は地上走行、水上走行及び飛行が可能な陸海空用の乗り物1であって、 車体2と、乗り物1の走行及び飛行のための複数のタイヤユニット3と、タイヤユニット3に駆動力を供給する駆動機構4と、乗り物1のドライバーからの操作や指令に基づいて駆動機構4及びクラッチ機構42を制御する制御部5と、を備える。タイヤユニット3は、対となる車輪部31a,31bと、対となる車輪部31a,31bの内部空間に組み込まれたプロペラ32と、を備える。この構成により、乗り物1では車輪部31a,31bによる陸上走行のみではなく、海上(水上)走行やプロペラ32を利用した飛行をより効率的に実現できる。また、このタイヤユニット3は、プロペラ32内蔵の一体型である為、空中からの離着陸に対しての振動吸収装置のショックアブゾーバーやタンパー等を車体2側に装着していることが好ましい。車重が重い場合は着陸時に簡易スタンドを装着しても構わない。
【0043】
また、タイヤユニット3では、相対する車輪部31a,31bの内部空間プロペラ32を内蔵させるため、プロペラ32のみ、又は車輪部31a,31bを同時に又は別々に駆動させることができる。また、プロペラ32と車輪部31a,31bとが一体化しているので、乗り物として軽量化・最小化できる。さらに、車輪部31a,31bとプロペラ32を同時に走行している時には、車輪部31a,31bの周りの空気をより力強く内部に送り込み、風力を発生させることができる。また、海上や砂地での走行時に効率よく水を又は砂などをかきわけて、スムースな走行に繋げることができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る乗り物1は、陸上(一般道)、水上、雪上(砂利道や悪路を走行)、海上、空中などで使用できる。また、一般的なドローンと比較して陸上、海上で運行できる。また、流れの緩やかな河などでの運行ができることは大きなメリットである。また、高速道路などで渋滞するところでも使用ができる。悪路や冠水した道路でも流れが速くなければ使える。また、災害現場にピンポイントで行って、人の救助又は物資を届けることができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る乗り物1では、プロペラ32を大きくすることで、飛行直前に車輪部31a,31bを90度回動させる必要性が無く、効率的に且つ短時間で地上走行から飛行に移行できる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、本発明に係るタイヤユニット3を備えるラジコンなどの人の乗らない小型機材としても良い。この場合、乗り物1に搭載できる物の量が多くなり、人が遠隔で操作したり自動で災害地の地上走行や飛行ができる。
【符号の説明】
【0047】
1 陸海空用の乗り物
2 車体
3 タイヤユニット
31a,31b 車輪部
31aa 挿通孔
31ba 凹溝
31c タイヤ
31d ホイール
31e スポーク
31f 連結棒
32 プロペラ
32a 回転軸
32b 羽根
4 駆動機構
41 モータ駆動部
42 クラッチ機構
5 制御部
A 第一回転子
B 第二回転子
C 回転体
【要約】
【課題】車輪による陸上走行のみではなく、海上(水上)走行やプロペラを利用した飛行をより効率的に実現できる陸海空用の乗り物を提供する。
【解決手段】陸海空用の乗り物1は、 車体2と、乗り物1の走行及び飛行のための複数のタイヤユニット3と、タイヤユニット3に駆動力を供給する駆動機構4と、乗り物1のドライバーからの操作や指令に基づいて駆動機構4及びクラッチ機構42を制御する制御部5と、を備える。タイヤユニット3は、対となる車輪部31a,31bと、対となる車輪部31a,31bの内部空間に組み込まれたプロペラ32と、を備える。
【選択図】
図2