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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】逆流防止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/14 20060101AFI20240725BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20240725BHJP
   E03C 1/298 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F16K15/14 A
E03C1/12 C
E03C1/12 E
E03C1/298
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020028721
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021134796
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 源希
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-105557(JP,A)
【文献】特開2019-148129(JP,A)
【文献】特開2003-239343(JP,A)
【文献】実開昭64-12970(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
E03C 1/12- 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路と、
流体の前記流路の周囲に設けた弁座部と、
前記弁座部に当接することで下流側からの流体の通過を防止する弁本体と、
からなり、
前記弁本体は、前記弁座部に当接する略板状の弾性変形可能な素材からなる弁体部と、前記流路の方向に延びる弁軸部とを備え、
前記弁軸部は前記流路の方向に進退可能に前記流路内に配置され、
前記弁本体は前記弁座部に当接するように付勢されるものであって、
流体が流れる際の前記弁体部への圧力により、前記弁体部が弾性変形することで前記弁座部と離間し、上流側からの流体を通過させて第一の開口状態とする開閉機構と、
前記開閉機構の開口時において、流体が流れる際の前記弁体部への圧力により、前記弁体部が前記弁座部から離間する方向に前記弁本体が移動して前記流路を前記第一の開口状態よりも広くした第二の開口状態とする拡大機構と、
を備えたことを特徴とする逆流防止弁。
【請求項2】
前記逆流防止弁を、筒状の管体部を備えた継手部材の内部に設けたことを特徴とする、請求項に記載の逆流防止弁。
【請求項3】
前記管体部の側面に開口部を設け、
前記開口部より、前記逆流防止弁を着脱自在に構成したことを特徴とする、請求項に記載の逆流防止弁。
【請求項4】
前記逆流防止弁を、床面の排水を行う排水口に備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の逆流防止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体など流体の流路を形成する配管等、または流体である排水が流入する排水口等について、配管内部の流体が上流から下流には支障なく流れると共に、下流から上流への逆流は防止する、逆流防止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体や気体等の流体を通過させるため、管体や継手部材を組み合わせて排水や排気等を行う配管構造が知られている。これらの配管構造は、上流から下流へと気体や液体を通過させるためのものであるが、下流側の配管で気体又は液体が大量に生じる等して、気体又は液体が逆流を生じる場合がある。下流側に排出された気体や液体は、排出の過程で汚物や危険な物質が混入する場合があり、このような汚染された流体が逆流して配管内を汚染したり、流入元に溢れることは不具合である。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されたような、配管内に上流から下流には支障なく流れると共に、下流から上流への逆流は防止する、配管の逆流防止弁を備えて流体の逆流を防ぐ構造が提案されている。
特許文献1に記載の逆流防止弁を備えた逆流防止弁継手は、流体である排水を通過させる排水用の配管に対して用いられる継手部材であって、以下に記載する継手本体と、逆流防止弁ユニットと、から構成される。
継手本体は、流体の流路を形成する管体部、管体部の上流側端部、及び下流側端部に備えられた接続部、管体部内に備えられた収納部、管部分の側面に設けられた収納部と連通する開口部、からなる。
逆流防止弁ユニットは、以下に記載する、弁本体と、逆流防止弁ユニット本体と、ロック部材と、から構成されてなる。
弁本体は、円盤状の弁体部と、該弁体部に対して略垂直に設けられた弁軸部と、から構成される。
逆流防止弁ユニット本体は、側面に蓋部分を備えた略板状の部材で、蓋部分の側面にパッキングを備えると共に、中央部分に排水の流路を設け、排水の流路の周囲に弁体部と当接する弁座部を、流路の中央に弁軸部を固定する固定部を、それぞれ設けてなる。
ロック部材は、円盤状の部材であって、逆流防止弁ユニット本体の蓋部分に回動自在に取り付けられると共に、その側面に、回転により継手部材の開口部と嵌合する回転ロック構造を備えてなる。
【0004】
上記逆流防止弁継手は、次のようにして排水用の配管上に施工されてなる。
継手本体の上端側の接続部を上流側の配管に、下端側の接続部を下流側の配管に、それぞれ接続する。
次に、継手本体の開口部から逆流防止弁ユニットを挿通し、蓋部分が開口を閉塞するようにして継手本体内に配置した上で、継手本体の開口部とロック部材を回転させて開口部を回転ロックにて閉塞することで、逆流防止弁ユニットが排水配管に施工される。
上流側から排水が行われた場合、排水は、上流側の配管から、継手本体内部に侵入し、弁本体内部に流入する。ある程度弁本体内、又はその上流の継手本体内に排水が溜まると、溜まった排水の圧力によって、弁体部が弾性変形して弁体部が弁座部から離間して流路が開口し、内部に溜まった排水が流出して、継手部材内を通過し、下流側の配管に排出される。
一方、下流側から排水が逆流した場合、弁本体と弁座部とは、逆流する排水の圧力により強く近接し、流路の閉塞を確実に行うため、排水は弁本体を通過することができず、排水の逆流が防止される。
また、逆流防止弁継手のメンテナンスや清掃が必要な場合は、ロック部材と開口部の回転ロックを解除し、逆流防止弁ユニットを取り出すことで、メンテナンスや清掃などを行うことができる。必要な作業が終了した後は、再び開口部から逆流防止弁ユニット本体を挿入し、ロック部材と開口部を回転ロックにて接続することで、支障なく排水配管を利用することができる。
【0005】
【文献】特開2019-148129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような、常時流路を閉塞し、流体を通過させる場合のみ開口する逆流防止弁において、上流から下流への流体の圧力が小さくても、つまり流体が少量でも開口するように構成するためには、弁体部が弁座部に当接する際の圧力を小さくする必要がある。このような小さな圧力に対応して確実に開口する逆流防止弁は、弁体部と弁座部の当接箇所を小さくする等、全体的に小型化した構成とする場合が多く、この場合流体が通過する流路も小さくなるため、流体の処理性能は悪化する。
しかし、大量の流体を迅速に処理できるように流路の開口を大きくした場合、その流路を閉塞する弁体部と弁座部も大型化し、大型化した当接箇所の全体を確実に閉塞させるためには、弁体部が弁座部に接する際の圧力を充分に大きくする必要がある。すると、上流から下流に流れる流体が少量で、作用する圧力が小さい場合では、弁体部が弁座部から離間せず開口しない逆流防止弁となってしまう。
即ち、特許文献1に記載の逆流防止弁は、容易に流路を開口する代わりに流体の処理性能が低いか、または流体の処理性能は高い代わりに流体の圧力が高くならない限り流路の開口が行われないか、のいずれかしか選択できず、容易に流路を開口し、且つ流体の処理性能が高い逆流防止弁とすることはできなかった。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、常時流路を閉塞する構成の逆流防止弁において、上流からの流体が少量でも容易に開口し、且つ大量に流体が生じた場合でも迅速に処理することができる逆流防止弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
流体の流路と、流体の前記流路の周囲に設けた弁座部と、前記弁座部に当接することで下流側からの流体の通過を防止する弁本体と、からなり、
前記弁本体は、前記弁座部に当接する略板状の弾性変形可能な素材からなる弁体部と、前記流路の方向に延びる弁軸部とを備え、前記弁軸部は前記流路の方向に進退可能に前記流路内に配置され、前記弁本体は前記弁座部に当接するように付勢されるものであって、
流体が流れる際の前記弁体部への圧力により、前記弁体部が弾性変形することで前記弁座部と離間し、上流側からの流体を通過させて第一の開口状態とする開閉機構と、前記開閉機構の開口時において、流体が流れる際の前記弁体部への圧力により、前記弁体部が前記弁座部から離間する方向に前記弁本体が移動して前記流路を前記第一の開口状態よりも広くした第二の開口状態とする拡大機構と、を備えたことを特徴とする逆流防止弁である。
【0011】
請求項に記載の本発明は、
前記逆流防止弁を、筒状の管体部を備えた継手部材の内部に設けたことを特徴とする、請求項に記載の逆流防止弁である。
【0012】
請求項に記載の本発明は、
前記管体部の側面に開口部を設け、前記開口部より、前記逆流防止弁を着脱自在に構成したことを特徴とする、請求項に記載の逆流防止弁である。
【0013】
請求項に記載の本発明は、
前記逆流防止弁を、床面の排水を行う排水口に備えたことを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の逆流防止弁である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明では、逆流防止弁において、少量の流体を処理する場合に開口する第一の開口状態と、流体が大量に生じた場合に迅速にその処理を行う第二の開口状態を備えてなる。これによって、上流からの流体が少量でも容易に開口し、且つ大量に流体が生じた場合でも迅速に処理することができる逆流防止弁とすることができる。、逆流防止弁の構成を明確化することができる。
請求項、請求項に記載の逆流防止弁においては、上記逆流防止弁を排水配管の流路の配管内に配置することができ、逆流防止弁を容易に利用することができる。
請求項に記載の逆流防止弁においては、上記逆流防止弁を床面の排水配管の流路の配管上に配置することができ、逆流防止弁を容易に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施例の施工状態を示す断面図である。
図2図1の逆流防止弁の第一の開口状態を示す断面図である。
図3図1の逆流防止弁の第二の開口状態を示す断面図である。
図4】第一実施例の逆流防止弁ユニットを取り出した状態を示す断面図である。
図5】第一実施例の部材構成を示す断面図である。
図6】第二実施例の施工状態を示す断面図である。
図7図6の逆流防止弁ユニットを示す断面図である。
図8図7の逆流防止弁ユニットの第一の開口状態を示す断面図である。
図9図7の逆流防止弁ユニットの第二の開口状態を示す断面図である。
図10】第二実施例の逆流防止弁ユニットの部材構成を示す断面図である。
【実施例
【0016】
以下に、本発明の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。図1乃至図5に示した、本発明の第一実施例の逆流防止弁継手を採用した排水配管は、以下に記載する、継手本体1と、逆流防止弁ユニット2と、から構成されてなり、上流側の配管P及び下流側の配管Pに施工される。
継手本体1は、流体の流路を形成する直管状の管体部1aと、管体部1a内部に備えられ上流側及び下流側の配管Pと連通する収納部1bと、管体部1aの側面に設けられた収納部1bと連通する開口部1cと、からなる。
逆流防止弁ユニット2は、以下に記載する、弁本体4と、逆流防止弁ユニット本体3と、ロック部材5と、から構成されてなる。
弁本体4は、弾性素材からなる、円盤状の弁体部4aと、該弁体部4aの中央から弁体部4aに対して垂直に設けられた弁軸部4bと、から構成されてなる。該弁本体4は、傘に似た形状となるため、一般的にはアンブレラ弁と呼ばれる形状である。
また、弁軸部4bの端部には、後述するスプリング部材7を弁軸部4bの周囲に配置した状態で抜脱することを防止するストッパー部材4cを備えてなる。
逆流防止弁ユニット本体3は、側面に開口部1cを閉塞する蓋部3aを備えた、略筒状を成す部材であって、板状部分の上流側の面には収納部1bとの当接面を備え、この当接面と蓋部3a側面上にパッキングを備えてなる。また筒状部分は排水の流路となる円形の通水路3eを形成すると共に、該通水路3eの下流側の面の周囲に弁座部3cを備えてなる。また、弁座部3cには、その中央に、弁軸部4bが通水路3eの軸方向、即ち排水の流路方向に沿って進退可能に配置される貫通孔を備えた取付部3dと、該取付部3dから通水路3eの内側面まで延出されるアームと、から構成されてなる。尚、図1乃至図5の図示において、アームは取付部3dに隠れて見えない位置に設けられているため図示されていない。また、施工完了時、弁軸部4bと取付部3dの間には、弁体部4aが弁座部3c側に向かうように弁軸部4bを付勢する、スプリング部材7を備えてなる。該スプリング部材7は、弁軸部4b端部のストッパー部材4cと取付部3dとの間で伸張方向に作用するため、結果として、弁本体4を、弁体部4aが弁座部3cに当接する方向に移動させる。
また、蓋部3aは円盤状であって、逆流防止弁ユニット本体3の側面に逆流防止弁ユニット本体3と一体に構成されてなり、円盤部分の側面に環状のパッキングを備え、施工完了後継手本体1の開口部1cを閉塞するように構成されてなる。
ロック部材5は、円盤状の部材であって、逆流防止弁ユニット本体3の蓋部3aに回動自在に取り付けられ、施工完了時継手本体1の開口部1cに回転ロックにより嵌合することで、継手本体1内部の収納部1bに逆流防止弁ユニット本体3の弁本体4や弁座部3c部分等が収納され、また蓋部3aが開口部1cを閉塞した状態を維持固定するように機能する。
尚、施工現場などに搬入される前に、逆流防止弁ユニット本体3は、弁軸部4bを弁座部3c側(下流側)から取付部3dの貫通孔に挿通し、更に弁軸部4bの周囲にストッパー部材4cを利用してスプリング部材7を配置することで、弁体部4aが弁座部3cに当接するように弁軸部4bを付勢してなる。また、ロック部材5を逆流防止弁ユニット本体3の蓋部3aに回動自在に取り付けてなる。
尚、本実施例においては、弁座部3c内の流路に上流側から流体、即ち排水の圧力が作用すると、まず弁本体4の弁体部4aが弾性変形して弁座部3cから離間し、排水を通過させる。そして、排水の圧力が、上記弁体部4aが弾性変形する圧力を超えた所定の高さまで高まると、弁軸部4bに備えられたスプリング部材7が収縮し、弁軸部4bが下流側に移動して排水の流路が拡大する。
即ち、本実施例の逆流防止弁は、流体が流れる際の弁体部4aへの圧力により、弁体部4aが弾性変形することで弁座部3cと離間し流路を開口する開閉機構を備え、更に流体が流れる際の弁体部4aへの圧力により、弁体部4aが弁座部3cから離間する方向に弁本体4が移動して流路を広くする拡大機構を備えた逆流防止弁であり、弁体部4aが弾性変形を開始する流体の圧力より、スプリング部材7が収縮を開始する流体の圧力の方が大きな圧力が必要となるように構成されてなる。
【0017】
上記逆流防止弁は、次のようにして排水用の配管上に施工されてなる。
継手本体1の上端を上流側の配管Pに、下端を下流側の配管Pに、それぞれ接続する。
次に、継手本体1の開口部1cから逆流防止弁ユニット2の逆流防止弁部分(弁本体4及び弁座部3cの部分)を挿通し、継手本体1内に弁本体4、及び弁座部3c部分を配置した上で、継手本体1の開口部1cを蓋部3aで閉塞し、更にロック部材5と開口部1cとを回転ロックにて嵌合させ閉塞することで、逆流防止弁が排水配管に施工される。
【0018】
上記のように構成された逆流防止弁を備えた排水配管は、排水が無い場合、図1のように、弁本体4が弁座部3cに当接して排水の流路を閉塞した状態となる。
この時、弁本体4はスプリング部材7による付勢によって、弁体部4aが弁座部3cに当接する方向に移動している。
下流側から排水が逆流した場合、弁体部4aと弁座部3cの当接は、下流側から逆流水の水圧が加えられることによってより近接し、流路の閉塞を確実に行うため、排水は逆流防止弁を通過することができず、排水の逆流が防止される。また、排水が無い状態でも弁体部4aと弁座部3cとが当接しているため、下流側からの臭気や害虫類などが上流側に逆流することを防止することができる。
【0019】
上流側から排水が行われた場合、排水は、上流側の配管Pから、継手本体1内部に侵入し、逆流防止弁ユニット本体3の通水路3e上であって、弁体部4a上に流入する。ある程度逆流防止弁ユニット本体3の通水路3e上や、弁本体4よりも上流の継手本体1内に排水が溜まると、溜まった排水の圧力によって、図2のように、弁体部4aが弾性変形して弁座部3cから離間することで、排水の流路が開口し、逆流防止弁ユニット本体3や継手本体1内部に溜まった排水が流出して、逆流防止弁ユニット本体3の通水路3eを通過し、下流側の配管Pに排出される。
【0020】
排水が少量で、排水の圧力がスプリング部材7の弾性変形が生じない程度の圧力しか作用しなかった場合は、排水が完了すると、弁体部4aの弾性によって弁体部4aが図1の形状に復帰し、弁体部4aが再び弁座部3cに当接して、排水の流路が閉塞される。
【0021】
一方、排水が大量に行われ、弁体部4aが弾性変形を行って排水を処理していても、流路上のスプリング部材7の付勢に抗してスプリング部材7が収縮を生じるほど弁本体4が受ける排水の圧力が高い場合、図3に示したようにスプリング部材7が収縮し、スプリング部材7が収縮した長さだけ弁体部4aと弁座部3cがより一層離間し、離間した分排水の流路が拡大する。排水の流路が拡大することで、継手部材の排水の処理性能が向上し、排水が迅速に処理できることとなる。
排水の処理が行われて、流路の水圧が下がり、逆流防止弁の弁体部4aが受ける水圧が下がり、スプリング部材7が収縮を生じるほどの圧力でなくなると、スプリング部材7は伸張して当初の位置に戻り、図2にあるように、弁本体4だけが弾性変形して流路を開放した状態に戻る。この後、排水が完了すると、弁体部4aの弾性によって弁体部4aが図1の形状に復帰し、弁体部4aが再び弁座部3cに当接して、排水の流路が閉塞される。
【0022】
上記逆流防止弁継手において、メンテナンスや清掃が必要な場合は、ロック部材5と開口部1cとの回転ロックを解除し、図4のように、逆流防止弁ユニット2を取り出すことで、メンテナンスや清掃などを行うことができる。必要な作業が終了した後は、再び開口部1cから逆流防止弁ユニット本体3を挿入し、ロック部材5と開口部1cを回転ロックにて接続することで、支障なく排水配管を利用することができる。
【0023】
次に、本発明の第二実施例を、図面を参照しつつ説明する。図6乃至図10に示した、本発明の第二実施例の逆流防止弁を採用した排水配管は、トイレ室の床面等、建物内において、使用や洗浄などの際に排水が頻繁に生じる床面に設けられる排水口に関するものであって、以下に記載する、床排水口6と、逆流防止弁ユニット2と、床下の配管Pと、から構成されてなる。
トイレ室は、建物内の、便器など衛生機器を備えた部屋であって、その床面はタイルなど耐水性のある素材で形成されており、床面は、床面に設けられた床排水口6に向かって緩やかな傾斜が形成されている。トイレ室の清掃の際には、床面上に洗浄水を流して床面に付着した汚れを流下させる場合がある。
床排水口6は、トイレ室の床面に設けられた開口であって、その内部に逆流防止弁ユニット2を着脱自在に接続できるよう構成されてなる。
床下の配管Pは、図6に示したように、トイレ室の床下空間において施工された排水配管であって、若干の下り勾配を備えて横方向に向かって配置された管体と、その端部において上方に向かって屈曲したエルボ管とからなり、該エルボ管の上端は、床排水口6の下端に接続されてなる。
逆流防止弁ユニット2は、以下に記載する弁本体4及び逆流防止弁ユニット本体3から構成される。
弁本体4は、弾性素材からなる、円盤状の弁体部4aと、該弁体部4aの中央から弁体部4aに対して垂直に設けられた弁軸部4bと、から構成されてなる。該弁本体4は、傘に似た形状となるため、一般的にはアンブレラ弁と呼ばれる形状である。
また、弁軸部4bの端部には、後述するスプリング部材7を弁軸部4bの周囲に配置した状態で抜脱することを防止するストッパー部材4cを備えてなる。
逆流防止弁ユニット本体3は、略円筒形状を成す部材であって、その内部は排水の流路となる円形の通水路3eを備えると共に、該通水路3eの下流側の面の周囲に弁座部3cを備えてなる。
また、弁座部3cには、その中央に、弁軸部4bが通水路3eの軸方向、即ち排水の流路方向に沿って進退可能に配置される貫通孔を備えた取付部3dと、該取付部3dから通水路3eの内側面まで延出されるアームと、から構成されてなる。尚、図6乃至図10の図示において、アームは取付部3dに隠れて見えない位置に設けられているため図示されていない。また、施工完了時、弁軸部4bと取付部3dの間には、弁体部4aが弁座部3c側に向かうように弁軸部4bを付勢する、スプリング部材7を備えてなる。
該スプリング部材7は、弁軸部4b端部のストッパー部材4cと取付部3dとの間で伸張方向に作用するため、結果として、弁本体4を、弁体部4aが弁座部3cに当接する方向に移動させる。
使用時において、床排水口6に接続された逆流防止弁ユニット2は、逆流防止弁ユニット本体3の外側面が、床排水口6の内側面に水密的に接続されるように構成されてなる。
尚、本実施例においては、弁座部3c内の流路に上流側から流体、即ち排水の圧力が作用すると、まず弁軸部4bに備えられたスプリング部材7が収縮し、弁軸部4bが下流側に移動することで、弁体部4aが弁座部3cから離間して排水を通過させる。そして、排水の圧力が、上記スプリング部材7が弾性変形して収縮する圧力を超えた所定の高さまで高まると、弁本体4の弁体部4aが弁座部3cから離間する方向に弾性変形して排水の流路が拡大する。
即ち、本実施例の逆流防止弁は、流体が流れる際の弁体部4aへの圧力により、弁体部4aが弁座部3cから離間する方向に弁本体4が移動して流路を開口する開閉機構を備え、更に流体が流れる際の弁体部4aへの圧力により弁体部4aが弁座部3cと離間する方向に弾性変形して流路を広くする拡大機構を備えた逆流防止弁であり、スプリング部材7が収縮を開始する流体の圧力より、弁体部4aが弾性変形を開始する流体の圧力の方が大きな圧力が必要となるように構成されてなる。
【0024】
上記のように構成されたトイレ室において、排水が無い場合、図6、又は図7のように、床排水口6内の弁本体4が弁座部3cに当接して排水の流路を閉塞した状態となる。
この時、弁本体4はスプリング部材7による付勢によって、弁体部4aが弁座部3cに当接する方向に移動している。
床下の配管Pの下流側から排水が逆流した場合、弁体部4aと弁座部3cの当接は、下流側から逆流水の水圧が加えられることによってより近接し、流路の閉塞を確実に行うため、排水は逆流防止弁を通過することができず、排水の逆流が防止される。また、排水が無い状態でも弁体部4aと弁座部3cとが当接しているため、下流側からの臭気や害虫類などが上流側に逆流することを防止することができる。
【0025】
トイレ室の清掃などの理由によって、トイレ室の床面上に排水が生じると、排水は床面上から床排水口6内に流入する。このようにして床排水口6内に排水が行われた場合、排水は、逆流防止弁ユニット本体3の通水路3e上であって、弁体部4a上に流入する。ある程度、弁本体4よりも上流の通水路3a内に排水が溜まると、溜まった排水の圧力によって、図8のように、スプリング部材7が弾性変形して収縮し、弁軸部4bが、弁体部4aが弁座部3cから離間する方向に移動し、結果弁本体4全体が移動することで、弁体部4aが弁座部3cから離間して排水の流路が開口し、逆流防止弁ユニット本体3や継手本体1内部に溜まった排水が流出され、逆流防止弁ユニット本体3の通水路3eを通過し、下流側の配管Pに排出される。
【0026】
排水が少量で、排水の圧力が弁体部4aの弾性変形が生じない程度の圧力しか作用しなかった場合は、排水が完了すると、排水の水圧が解消して、スプリング部材7が再び伸張し、弁軸部4bが、弁体部4aが弁座部3cに当接する方向に移動することで、弁本体4が図7の位置に復帰し、弁体部4aが再び弁座部3cに当接して、排水の流路が閉塞される。
【0027】
一方、例えばバケツに溜めた排水を一度に流す等して排水が大量に行われ、スプリング部材7が弾性変形して収縮し、弁体部4aが弁座部3cから離間することで排水を処理していても、流路上の弁体部4aが弾性変形を生じるほど弁本体4が受ける排水の圧力が高い場合、図9に示したように弁本体4が排水の水圧によって弁座部3cから離間するように弾性変形を生じ、弾性変形により弁体部4aが離間した分排水の流路が拡大する。排水の流路が拡大することで、床排水口6の排水の処理性能が向上し、排水が迅速に処理できることとなる。
排水の処理が行われて、流路の水圧が下がり、逆流防止弁の弁体部4aが受ける水圧が下がり、弁体部4aが弾性変形を生じるほどの圧力でなくなると、弁体部4aは当初の形状に戻り、図7にあるように、スプリング部材7の収縮によって弁体部4aが弁座部3cから離間していることだけによって流路を開放した状態に戻る。この後、排水が完了すると、排水の水圧が解消して、スプリング部材7が再び伸張し、弁軸部4bが、弁体部4aが弁座部3cに当接する方向に移動することで、弁本体4が図7の位置に復帰し、弁体部4aが再び弁座部3cに当接して、排水の流路が閉塞される。
【0028】
上記逆流防止弁継手において、メンテナンスや清掃が必要な場合は、床排水口6から逆流防止弁ユニット2との接続を解除し、逆流防止弁ユニット2を取り出すことで、メンテナンスや清掃などを行うことができる。必要な作業が終了した後は、再び開口部1cから逆流防止弁ユニット2を接続する。
【0029】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、発明の主旨を変更しない範囲で自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、逆流防止弁の機構の一つとしてスプリング部材7を弾性体として利用しているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、スプリング部材7に替えて磁石の吸引/反発を利用した機構として採用しても構わない。
また、上記実施例では、逆流防止弁が採用される配管Pは液体である排水を流すための排水配管であったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、気体を通過させるための配管Pであっても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1 継手本体 1a 管体部
1b 収納部 1c 開口部
2 逆流防止弁ユニット 3 逆流防止弁ユニット本体
3a 蓋部 3b 筒部分
3c 弁座部 3d 取付部
3e 通水路 4 弁本体
4a 弁体部 4b 弁軸部
4c ストッパー部材 5 ロック部材
6 床排水口 7 スプリング部材
P 配管
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10