(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】逆流防止弁
(51)【国際特許分類】
F16K 15/14 20060101AFI20240725BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F16K15/14 A
E03C1/12 Z
(21)【出願番号】P 2020034297
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笹川 知久
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148129(JP,A)
【文献】実開平2-30586(JP,U)
【文献】特開2003-239343(JP,A)
【文献】実開昭53-41712(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0182447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
E03C 1/12- 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路と、
流体の
前記流路上に設けた弁座部と、
前記弁座部に当接することで下流側からの流体の通過を防止する弁本体と、からなり、
前記弁本体は、
前記流路の上流方向に延出される、
前記弁本体を保持する弁軸部を備え、
前記流路内には
前記弁軸部を保持固定する保持部を設けると共に、
前記流路の内側面から
前記保持部までを保持するアーム部を、一つだけで構成し
、
前記アーム部の上流側の面に、前記流路の内側面と前記アーム部の接続部分から、反対方向の端部に向かうほど、下流側に向かう傾斜部を備えたことを特徴とする逆流防止弁。
【請求項2】
流体の流路と、
流体の
前記流路上に設けた弁座部と、
前記弁座部に当接することで下流側からの流体の通過を防止する弁本体と、からなり、
前記弁本体は、
前記流路の上流方向に延出される、
前記弁本体を保持する弁軸部を備え、
前記流路内には
前記弁軸部を保持固定する保持部を設けると共に、
前記流路の内側面から
前記保持部までを二つ以上のアーム部にて保持してなり、
全ての
前記アーム部は、
前記流路の軸方向視、
前記流路を等分した領域の一方よりも狭い範囲にすべて備えられてなることを特徴とする逆流防止弁。
【請求項3】
前記逆流防止弁において、
前記アーム部の上流側の面に、
前記流路の内側面と
前記アーム部の接続部分から、反対方向の端部に向かうほど、下流側に向かう傾斜部を備えたことを特徴とする、請求項
2に記載の逆流防止弁。
【請求項4】
前記逆流防止弁において、
前記弁本体を、
前記弁座部に当接する略板状の弾性変形可能な素材からなる弁体部、
前記弁体部に備えた
前記弁軸部、から構成したことを特徴とする、請求項1
乃至請求項
3のいずれか一つに記載の逆流防止弁。
【請求項5】
前記逆流防止弁を、筒状の管体部を備えた継手部材の内部に設けたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の逆流防止弁。
【請求項6】
前記逆流防止弁を、槽体又は床面の排水を行う排水口か、
前記排水口から連続した配管上に設けたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の逆流防止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体など流体の流路を形成する配管等、または流体である排水が流入する排水口等について、配管内部の流体が上流から下流には支障なく流れると共に、下流から上流への逆流は防止する、逆流防止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体や気体等の流体を通過させるため、管体や継手部材を組み合わせて排水や排気等を行う配管構造が知られている。これらの配管構造は、上流から下流へと気体や液体を通過させるためのものであるが、下流側の配管で気体又は液体が大量に生じる等して、気体又は液体が逆流を生じる場合がある。下流側に排出された気体や液体は、排出の過程で汚物や危険な物質が混入する場合があり、このような汚染された流体が逆流して配管内を汚染したり、流入元に溢れることは不具合である。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されたような、配管内に上流から下流には支障なく流れると共に、下流から上流への逆流は防止する、配管の逆流防止弁を備えて流体の逆流を防ぐ構造が提案されている。
特許文献1に記載の逆流防止弁を備えた逆流防止弁継手は、流体である排水を通過させる排水用の配管に対して用いられる継手部材であって、以下に記載する継手本体と、逆流防止弁ユニットと、から構成される。
継手本体は、流体の流路を形成する管体部、管体部の上流側端部、及び下流側端部に備えられた接続部、管体部内に備えられた収納部、管部分の側面に設けられた収納部と連通する開口部、からなる。
逆流防止弁ユニットは、以下に記載する、弁本体と、逆流防止弁ユニット本体と、ロック部材と、から構成されてなる。
弁本体は、円盤状の弁体部と、該弁体部に対して略垂直に設けられた弁軸部と、から構成される。
逆流防止弁ユニット本体は、側面に蓋部分を備えた略板状の部材で、蓋部分の側面にパッキングを備えると共に、中央部分に排水の流路を設け、排水の流路上に弁体部と当接する弁座部を、流路の中心部分に弁軸部を保持固定する保持部を、それぞれ備えてなる。該保持部は、流路の内側面から2本のアーム部を保持部まで延出することで流路の中心位置で固定しており、2本のアーム部は保持部を中心に、対向する位置関係に配置されている。
ロック部材は、円盤状の部材であって、逆流防止弁ユニット本体の蓋部分に回動自在に取り付けられると共に、その側面に、回転により継手部材の開口部と嵌合する回転ロック構造を備えてなる。
【0004】
上記逆流防止弁継手は、次のようにして排水用の配管上に施工されてなる。
継手本体の上端側の接続部を上流側の配管に、下端側の接続部を下流側の配管に、それぞれ接続する。
次に、継手本体の開口部から逆流防止弁ユニットを挿通し、蓋部分が開口を閉塞するようにして継手本体内に配置した上で、継手本体の開口部とロック部材を回転させて開口部を回転ロックにて閉塞することで、逆流防止弁ユニットが排水配管に施工される。
上流側から排水が行われた場合、排水は、上流側の配管から、継手本体内部に侵入し、弁本体内部に流入する。ある程度弁本体内、又はその上流の継手本体内に排水が溜まると、溜まった排水の圧力によって、弁体部が弾性変形して弁体部が弁座部から離間して流路が開口し、内部に溜まった排水が流出して、継手部材内を通過し、下流側の配管に排出される。
一方、下流側から排水が逆流した場合、弁体部と弁座部とは、逆流する排水の圧力により強く近接し、流路の閉塞を確実に行うため、排水は弁体部を通過することができず、排水の逆流が防止される。
また、逆流防止弁継手のメンテナンスや清掃が必要な場合は、ロック部材と開口部の回転ロックを解除し、逆流防止弁ユニットを取り出すことで、メンテナンスや清掃などを行うことができる。必要な作業が終了した後は、再び開口部から逆流防止弁ユニット本体を挿入し、ロック部材と開口部を回転ロックにて接続することで、支障なく排水配管を利用することができる。
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような特許文献1に記載の逆流防止弁は、排水配管に備えられる逆流防止弁であるが、排水は通常は洗浄などの目的に使用された後の水で有り、例えば流し台の排水であれば食材や調理後の塵芥が、洗面台や浴槽・浴室、床排水口の排水であれば塵芥や毛髪等が混入している。
ここで、特許文献1に記載の逆流防止弁は、アーム部が、排水の流路の中心に配置された保持部を中心として2本、対向する位置関係に配置されている。
このため、排水の中に塵芥、特に毛髪や一部の食材等柔らかく細長い塵芥(以下、「毛髪など」と記載)が混入していると、アーム部にこの毛髪など細長い塵芥が跨ぐように引っかかってしまい、排水が流れても流下せずに留まり続けて不衛生になる、といった問題があった。また、逆流防止弁の止水箇所、つまり弁体部と弁座部の上流側の近傍に、上記した毛髪などが留まり続けていると、閉塞の際に弁体部と弁座部の間に該毛髪など塵芥の端部などが挟まって閉塞を不完全な状態とし、逆流した排水が逆流防止弁を超えて上流側に侵入してしまう恐れがあった。
本発明は上記問題点に鑑み発明されたものであって、保持部と、該保持部をアーム部によって流路上に配置する逆流防止弁において、アーム部に塵芥、特に特に毛髪や一部の食材等柔らかく細長い塵芥が混入していても、該塵芥がアーム部に引っかかって留まってしまう事なく、容易に下流側に流出させて処理することができる逆流防止弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
流体の流路と、流体の前記流路上に設けた弁座部と、前記弁座部に当接することで下流側からの流体の通過を防止する弁本体と、からなり、
前記弁本体は、前記流路の上流方向に延出される、前記弁本体を保持する弁軸部を備え、前記流路内には前記弁軸部を保持固定する保持部を設けると共に、前記流路の内側面から前記保持部までを保持するアーム部を、一つだけで構成し、
前記アーム部の上流側の面に、前記流路の内側面と前記アーム部の接続部分から、反対方向の端部に向かうほど、下流側に向かう傾斜部を備えたことを特徴とする逆流防止弁である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、
流体の流路と、
流体の前記流路上に設けた弁座部と、
前記弁座部に当接することで下流側からの流体の通過を防止する弁本体と、からなり、
前記弁本体は、前記流路の上流方向に延出される、前記弁本体を保持する弁軸部を備え、前記流路内には前記弁軸部を保持固定する保持部を設けると共に、前記流路の内側面から前記保持部までを二つ以上のアーム部にて保持してなり、
全ての前記アーム部は、前記流路の軸方向視、前記流路を等分した領域の一方よりも狭い範囲にすべて備えられてなることを特徴とする逆流防止弁。
である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、
前記逆流防止弁において、前記アーム部の上流側の面に、前記流路の内側面と前記アーム部の接続部分から、反対方向の端部に向かうほど、下流側に向かう傾斜部を備えたことを特徴とする、請求項2に記載の逆流防止弁である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、
前記逆流防止弁において、前記弁本体を、前記弁座部に当接する略板状の弾性変形可能な素材からなる弁体部、前記弁体部に備えた前記弁軸部、から構成したことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の逆流防止弁である。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、
前記逆流防止弁を、筒状の管体部を備えた継手部材の内部に設けたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の逆流防止弁である。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、
前記逆流防止弁を、槽体又は床面の排水を行う排水口か、前記排水口から連続した配管上に設けたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の逆流防止弁である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、請求項2に記載の発明では、排水に塵芥、特に毛髪などが混入していた場合に、アーム部それ自体が減少したことで、これら毛髪などが排水に混入していても、アーム部に絡まることが無くなる。
また、アーム部に、上流側に向かって延出する要素が無ければ、アーム部に毛髪などが絡まったとしても、排水によりアーム部の端部から流出して絡まり続けることなく、容易に下流側に排出することができる。
上記効果は、特に、請求項3に記載した、弁座部に当接する略板状の弾性変形可能な素材からなる弁体部、該弁本体に備えた弁軸部を備えた弁本体を有する逆流防止弁において効果的に機能する。
また、請求項4に記載の本発明においては、アーム部の上流側の面に、流路の接続側から、反対方向の端部に向かうほど、下流側に向かう傾斜部を備えたことで、より容易にアーム部に絡まった塵芥、毛髪などが流出しやすくすることができる。
請求項5、請求項6に記載の発明においては、上記逆流防止弁を使用する場所や機材を明確にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1の逆流防止弁の開口状態を示す断面図である。
【
図3】
図1の継手部材の平面方向での断面図である。
【
図4】第一実施例の逆流防止弁ユニットを取り出した状態を示す断面図である。
【
図7】
図6の逆流防止弁ユニットを示す断面図である。
【
図8】
図7の逆流防止弁ユニットの開口状態を示す断面図である。
【
図10】第二実施例の逆流防止弁ユニットの部材構成を示す断面図である。
【
図11】アーム部を複数設けた実施例の、平面方向での断面図である。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至
図5に示した、本発明の第一実施例の逆流防止弁を採用した排水配管は、以下に記載する、継手本体1と、逆流防止弁ユニット2と、から構成されてなり、上流側の配管P及び下流側の配管Pに施工される。
継手本体1は、流体の流路を形成する直管状の管体部1aと、管体部1a内部に備えられ上流側及び下流側の配管Pと連通する収納部1bと、管体部1aの側面に設けられた収納部1bと連通する開口部1cと、からなる。
逆流防止弁ユニット2は、以下に記載する、弁本体5と、逆流防止弁ユニット本体3と、ロック部材6と、から構成されてなる。
弁本体5は、弾性素材からなる、円盤状、即ち略板状の弁体部5aと、該弁体部5aの中央から弁体部5aに対して垂直に設けられた弁軸部5bと、から構成されてなる。該弁本体5は、傘に似た形状となるため、一般的にはアンブレラ弁と呼ばれる形状である。
逆流防止弁ユニット本体3は、側面に開口部1cを閉塞する蓋部3aを備えた、略筒状を成す部材であって、円筒状部分の上流側の面には収納部1bとの当接面を備え、この当接面と蓋部3a側面上にパッキングを備えてなる。また筒状部分は排水の流路となる円形の通水路3eを形成すると共に、該通水路3eの下流側の面の周囲に弁座部3cを備えてなる。また、弁座部3cには、その中央に、弁軸部5bが通水路3eの上流方向に向かって取り付けられる取付口3fを備えた保持部3dが備えられ、更に該保持部3dから通水路3eの内側面まで延出されるアーム部4が構成されてなる。
本実施例のアーム部4について詳述すると、アーム部4は、円筒形状を成す流路の軸方向視では、
図3に示したように、アーム部4は円形形状の中心位置にある保持部3dから、流路の内側面に向かって直線状のリブを一本だけ延出した形状である。
即ち、本実施例は、流路の内側面から保持部までを保持するアーム部を、一つだけで構成した逆流防止弁を採用した継手部材である。
また、アーム部4は、
図1、
図2等に示したアーム部4の側面方向の断面視から明らかなように、アーム部4の上流側の面に、流路の内側面から、反対方向の端部、即ち保持部3d側に向かうほど、下流側に向かう傾斜部4aを備えてなる。
また、蓋部3aは円盤状であって、逆流防止弁ユニット本体3の側面に逆流防止弁ユニット本体3と一体に構成されてなり、円盤部分の側面に環状のパッキングを備え、施工完了後継手本体1の開口部1cを閉塞するように構成されてなる。
ロック部材6は、円盤状の部材であって、逆流防止弁ユニット本体3の蓋部3aに回動自在に取り付けられ、施工完了時継手本体1の開口部1cに回転ロックにより嵌合することで、継手本体1内部の収納部1bに逆流防止弁ユニット本体3の弁本体5や弁座部3c部分等が収納され、また蓋部3aが開口部1cを閉塞した状態を維持固定するように機能する。
尚、施工現場などに搬入される前に、逆流防止弁ユニット本体3は、弁軸部5bを弁座部3c側(下流側)から保持部3dの取付口3fに挿通し、弁体部5aが弁座部3cに当接するように、弁本体5を取り付けしてなる。また、ロック部材6を逆流防止弁ユニット本体3の蓋部3aに回動自在に取り付けてなる。
尚、本実施例においては、弁座部3c内の流路に上流側から流体、即ち排水の圧力が作用すると、弁本体5の弁体部5aが弾性変形して弁座部3cから離間し、排水を通過させる。
【0016】
上記逆流防止弁は、次のようにして排水用の配管上に施工されてなる。
継手本体1の上端を上流側の配管Pに、下端を下流側の配管Pに、それぞれ接続する。
次に、継手本体1の開口部1cから逆流防止弁ユニット2の逆流防止弁部分(弁本体5及び弁座部3cの部分)を挿通し、継手本体1内に弁本体5、及び弁座部3c部分を配置した上で、継手本体1の開口部1cを蓋部3aで閉塞し、更にロック部材6と開口部1cとを回転ロックにて嵌合させ閉塞することで、逆流防止弁が排水配管に施工される。
【0017】
上記のように構成された逆流防止弁を備えた排水配管は、排水が無い場合、
図1のように、弁本体5が弁座部3cに当接して排水の流路を閉塞した状態となる。
この排水配管において、下流側から排水が逆流した場合、弁体部5aと弁座部3cの当接は、下流側から逆流水の水圧が加えられることによってより近接し、流路の閉塞を確実に行うため、排水は逆流防止弁を通過することができず、排水の逆流が防止される。また、排水が無い状態でも弁体部5aと弁座部3cとが当接しているため、下流側からの臭気や害虫類などが上流側に逆流することを防止することができる。
【0018】
上流側から排水が行われた場合、排水は、上流側の配管Pから、継手本体1内部に侵入し、逆流防止弁ユニット本体3の通水路3e上であって、弁体部5a上に流入する。ある程度逆流防止弁ユニット本体3の通水路3e上や、弁体部5aよりも上流の継手本体1内に排水が溜まると、溜まった排水の圧力によって、
図2のように、弁体部5aが弾性変形して弁座部3cから離間することで、排水の流路が開口し、逆流防止弁ユニット本体3や継手本体1内部に溜まった排水が流出して、逆流防止弁ユニット本体3の通水路3eを通過し、下流側の配管Pに排出される。
排水が完了すると、自身の弾性によって弁体部5aが
図1の形状に復帰し、弁体部5aが再び弁座部3cに当接して、排水の流路が閉塞される。
【0019】
上記逆流防止弁を採用した継手部材において、メンテナンスや清掃が必要な場合は、ロック部材6と開口部1cとの回転ロックを解除し、
図4のように、逆流防止弁ユニット2を取り出すことで、メンテナンスや清掃などを行うことができる。必要な作業が終了した後は、再び開口部1cから逆流防止弁ユニット本体3を挿入し、ロック部材6と開口部1cを回転ロックにて接続することで、支障なく排水配管を利用することができる。
【0020】
排水の中に塵芥、特に毛髪などが混入していた場合、アーム部4にこの毛髪などが跨ぐように引っかかってしまっても、上流から下流に向かって流れる排水によって、傾斜部4aに沿って塵芥や毛髪などが下流に流下され、保持部3dの端部から流路に流出してアーム部4上に留まり続けることが無い。このため、塵芥や毛髪などが留まり続けて不衛生になる、毛髪などが閉塞の際に弁体部と弁座部の間に挟まって閉塞を不完全な状態としてしまう、といった問題を解消することができる。
【0021】
尚、上記第一実施例の逆流防止弁を採用した排水継手は、流路を上下方向に配置する以外に、横方向に向けて配置するように使用する場合もある。この場合、流路の軸方向視、中心よりも上方にアーム部4が配置されていれば、アーム部4に毛髪などが跨ぐように引っかかったとしてもそのままアーム部4端部より落下し下流側に流下する。
また、流路の軸方向視、中心よりも下方にアーム部4が配置され、アーム部4に毛髪などが跨ぐように引っかかった場合には、塵芥や毛髪は、排水の都度アーム部4の傾斜部4aに沿って流下することで、アーム部4の端部側に移動し、アーム部4端部より下流側に流下する。
結果として、アーム部4がどのような方向に配置されたとしても、アーム部4に毛髪などが跨ぐように引っかかった場合に、塵芥や毛髪などがアーム部4に留まり続けることなく、下流側に排出される。
【0022】
次に、本発明の第二実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図6乃至
図10に示した、本発明の第二実施例の逆流防止弁を採用した排水配管は、トイレ室の床面等、建物内において、使用や洗浄などの際に排水が頻繁に生じる床面に設けられる排水口に関するものであって、以下に記載する、床排水口7と、逆流防止弁ユニット2と、床下の配管Pと、から構成されてなる。
床排水口7は、トイレ室など使用・清掃によって床面上に頻繁に洗浄水など排水が生じる床面に設けられた開口であって、その内部に逆流防止弁ユニット2を着脱自在に接続できるよう構成されてなる。
床下の配管Pは、
図6に示したように、床排水口7が設けられる床面の床下空間において施工された排水配管であって、若干の下り勾配を備えて横方向に向かって配置された管体と、その端部において上方に向かって屈曲したエルボ管とからなり、該エルボ管の上端は、床排水口7の下端に接続されてなる。
逆流防止弁ユニット2は、以下に記載する弁本体5及び逆流防止弁ユニット本体3から構成される。
弁本体5は、弾性素材からなる、円盤状の弁体部5aと、該弁体部5aの中央から弁体部5aに対して垂直に設けられた弁軸部5bと、から構成されてなる。該弁本体5は、傘に似た形状となるため、一般的にはアンブレラ弁と呼ばれる形状である。
逆流防止弁ユニット本体3は、略円筒形状を成す部材であって、その内部は排水の流路となる円形の通水路3eを備えると共に、該通水路3eの下流側の面の周囲に弁座部3cを備えてなる。
また、弁座部3cには、その中央に、弁軸部5bが通水路3eの上流方向に向かって取り付けられる取付口3fを備えた保持部3dが備えられ、更に該保持部3dから通水路3eの内側面まで延出されるアーム部4が構成されてなる。
本実施例のアーム部4について詳述すると、円筒形状を成す流路の軸方向視では、
図9に示したように、アーム部4は円形形状の中心位置にある保持部3dから、流路の内側面に向かって約90度の角度の扇形形状部分からなるアームを一本だけ延出した形状である。
即ち、本実施例は、流路の内側面から保持部までを保持するアーム部を、一つだけで構成した逆流防止弁を採用した排水配管である。
また、アーム部4は、
図7、
図8に示したアーム部4の側面方向の断面視から明らかなように、アーム部4の上流側の面に、流路の内側面から、反対方向の端部、即ち保持部3d側に向かうほど、下流側に向かう傾斜部4aを備えてなる。
使用時において、床排水口7に接続された逆流防止弁ユニット2は、逆流防止弁ユニット本体3の外側面が、床排水口7の内側面に水密的に接続されるように構成されてなる。
【0023】
上記のように構成された床面とその排水配管において、排水が無い場合、
図6、又は
図7のように、床排水口7内の弁本体5が弁座部3cに当接して排水の流路を閉塞した状態となる。
床下の配管Pの下流側から排水が逆流した場合、弁体部5aと弁座部3cの当接は、下流側から逆流水の水圧が加えられることによってより近接し、流路の閉塞を確実に行うため、排水は逆流防止弁を通過することができず、排水の逆流が防止される。また、排水が無い状態でも弁体部5aと弁座部3cとが当接しているため、下流側からの臭気や害虫類などが上流側に逆流することを防止することができる。
【0024】
清掃などの理由によって、床面上に排水が生じると、排水は床面上から床排水口7内に流入する。このようにして床排水口7内に排水が行われた場合、排水は、逆流防止弁ユニット本体3の通水路3e上であって、弁体部5a上に流入する。ある程度、弁本体5よりも上流の通水路3a内に排水が溜まると、溜まった排水の圧力によって、
図8のように、弁体部5aが弾性変形して弁座部3cから離間する方向に変形して排水の流路が開口し、逆流防止弁ユニット本体3や継手本体1内部に溜まった排水が流出され、逆流防止弁ユニット本体3の通水路3eを通過し、下流側の配管Pに排出される。
排水が完了すると、排水の水圧が解消して、弁体部5aが弾性により元の形状に戻り、弁体部5aが再び弁座部3cに当接して、排水の流路が閉塞される。
【0025】
上記逆流防止弁を採用した排水配管において、メンテナンスや清掃が必要な場合は、床排水口7から逆流防止弁ユニット2との接続を解除し、逆流防止弁ユニット2を取り出すことで、メンテナンスや清掃などを行うことができる。必要な作業が終了した後は、再び床排水口7から逆流防止弁ユニット2を接続する。
【0026】
排水の中に塵芥、特に毛髪などが混入していた場合、アーム部4にこの毛髪などが跨ぐように引っかかってしまった場合であっても、上流から下流に向かって流れる排水によって、傾斜部4aに沿って塵芥や毛髪などが下流に流下され、保持部3dの端部から流路に流出してアーム部4上に留まり続けることが無い。このため、塵芥や毛髪などが留まり続けて不衛生になる、毛髪などが閉塞の際に弁体部と弁座部の間に挟まって閉塞を不完全な状態としてしまう、といった問題を解消することができる。
【0027】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものでは無く、発明の主旨を変更しない範囲で自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、逆流防止弁を採用する部分として、配管中の排水継手、また床排水口とその排水配管を記載してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、槽体の底面に設けた排水口に備えられる逆流防止弁としても良い。槽体としては、流し台のシンク、洗面台の洗面ボウル、または浴室の防水パン等の槽体が考えられる。また液体に限定せず、流体である気体の配管に採用しても良い。
【0028】
また、上記実施例では、流路の内側面から保持部までを保持するアーム部を、一つだけで構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、流路の軸方向視、流路を等分した一方の領域よりも狭い範囲、特に望ましくは
図11に示したように流路を四等分した領域の一方の領域内に、複数(
図11の実施例では2つ)のアーム部が配置されるように構成しても良い。この場合でも、複数のアーム部4を跨ぐようにして毛髪等が引っかかった場合には、保持部3dの端部から流路に流出してアーム部4上に留まり続けることが無い。このため、アーム部4が一つの場合と同様に、塵芥や毛髪などが留まり続けて不衛生になる、毛髪などが閉塞の際に弁体部と弁座部の間に挟まって閉塞を不完全な状態としてしまう、といった問題を解消することができる。
但し、複数のアーム部4が、対向する位置に配置されると、アーム部4の端部から塵芥や毛髪などが流下することが不可能となるため、本発明の機能を果たすためには、流路の軸方向視、流路を等分した一方の領域よりも狭い範囲、特に望ましくは流路を四等分した領域の一方の領域内に、複数のアーム部4が配置されるように構成することが求められる。
【0029】
また、上記実施例では、傾斜部4aは流路の内側面から保持部3dまで連続して形成されてなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、傾斜部4aの途中部分に流路に対して傾斜していない段部を設けても、傾斜部4aが逆勾配となっていない限り、塵芥や毛髪などを支障なく下流側に流出させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 継手本体 1a 管体部
1b 収納部 1c 開口部
2 逆流防止弁ユニット 3 逆流防止弁ユニット本体
3a 蓋部 3b 筒部分
3c 弁座部 3d 保持部
3e 通水路 3f 取付口
4 アーム部 4a 傾斜部
5 弁本体 5a 弁体部
5b 弁軸部 6 ロック部材
7 床排水口 P 配管