IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スイコー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-管状体及び管付きタンク 図1
  • 特許-管状体及び管付きタンク 図2
  • 特許-管状体及び管付きタンク 図3
  • 特許-管状体及び管付きタンク 図4
  • 特許-管状体及び管付きタンク 図5
  • 特許-管状体及び管付きタンク 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】管状体及び管付きタンク
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/133 20060101AFI20240725BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20240725BHJP
   F16L 47/02 20060101ALI20240725BHJP
   B65D 88/06 20060101ALI20240725BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20240725BHJP
   B65D 90/22 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F16L9/133
F16L41/02
F16L47/02
B65D88/06 B
B65D90/00 H
B65D90/22 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020068192
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165562
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】506117840
【氏名又は名称】スイコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂木 博之
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-008352(JP,A)
【文献】特開2006-292045(JP,A)
【文献】特開2011-231913(JP,A)
【文献】特開昭62-135178(JP,A)
【文献】特開平01-087989(JP,A)
【文献】特開平03-024392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0009315(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0000928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/133
F16L 41/02
F16L 47/02
B65D 88/06
B65D 90/00
B65D 90/22
B60K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成される内管部と、
前記内管部の外面の少なくとも一部を覆う外被部と、
タンクに溶着される溶着面と、を備え、
前記内管部は、前記タンクに形成された孔部に差し込まれる筒状の挿入部を有し、
前記溶着面は、前記内管部と前記外被部との境界部を有し、かつ前記挿入部の外方に位置しており、
前記境界部が前記タンクの外部に位置する状態で、前記溶着面が前記タンクに溶着され、かつ前記挿入部が前記孔部の内周面に溶着されるように構成されている、
管状体。
【請求項2】
前記溶着面は、前記境界部を含む部分が前記タンクの外面に溶着されるように構成されている、
請求項1に記載の管状体。
【請求項3】
前記内管部及び前記外被部は、各々、熱可塑性樹脂を含み、
前記溶着面は、前記内管部及び前記外被部の各々の外面の一部を含み、かつ前記タンクの前記外面に熱溶着されるように構成されている、
請求項1又は2に記載の管状体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂はポリエチレンを含み、
前記外被部はカーボンを更に含む、
請求項3に記載の管状体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の管状体と、
前記タンクと、を備え、
前記境界部が前記タンクの外部に位置する状態で、前記溶着面が前記タンクに溶着され、かつ前記挿入部が前記孔部の内周面に溶着されている、
管付きタンク。
【請求項6】
前記タンクが内側層と外側層とを有し、
前記挿入部の外面が前記内側層と前記外側層とに溶着されている、
請求項5に記載の管付きタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に管状体及び管付きタンクに関し、より詳細には、内管部と外被部とを備えた管状体及びこれを備えた管付きタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多層回転成形品の配管用継手が記載されている。多層回転成形品は、内側の第1の樹脂層と、外側の第2の樹脂層と、第1の樹脂層と第2の樹脂層との間の混合樹脂層とを備えている。配管用継手は、第1の樹脂層と同系統の樹脂から成形された筒状の内側樹脂層と、第2の樹脂層と同系統の樹脂から成形され、内側樹脂層を覆う外側樹脂層とを備えている。多層回転成形品の孔部周辺の第2の樹脂層と溶着させるフランジ部が外側樹脂層に形成されている。多層回転成形品の孔部に嵌められる筒状部が、内側樹脂層と外側樹脂層とから形成されている。孔部の第1の樹脂層と接する筒状部の部分が、内側樹脂層のみから形成されている。多層回転成形品は、水などの液体を貯めるタンクである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-231913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、多層回転成形品の孔部に嵌められる筒状部が、内側樹脂層と外側樹脂層とから形成されているため、筒状部における内側樹脂層と外側樹脂層との境界部が多層回転成形品(タンク)の内側に位置することになる。したがって、多層回転成形品に貯められた液体が液圧で上記境界部から配管用継手の内部(内側樹脂層と外側樹脂層との間)に浸透しやすいという問題があった。
【0005】
本開示は、内部に液体が浸透しにくい管状体及びこの管状体を備える管付きタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る管状体は、筒状に形成される内管部と、前記内管部の外面の少なくとも一部を覆う外被部と、タンクに溶着される溶着面と、を備える。前記溶着面は、前記内管部と前記外被部との境界部を有する。前記境界部が前記タンクの外部に位置する状態で、前記溶着面が前記タンクに溶着されるように構成されている。
【0007】
本開示の一態様に係る管付きタンクは、前記管状体と、タンクと、を備える。前記境界部が前記タンクの外部に位置する状態で、前記溶着面が前記タンクに溶着されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、溶着面は、内管部と外被部との境界部がタンクの外部に位置する状態で、タンクに溶着されるように構成されているため、タンクに貯められる液体が境界部に浸透しにくくなり、内部に液体が浸透しにくい管状体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、本開示に係る管付きタンクの一実施形態を示す斜視図である。図1Bは、図1Aの一部を示す斜視図である。
図2図2Aは、本開示に係る管状体に使用する内管部を示す側面図である。図2Bは、本開示に係る管状体の一実施形態を示す正面図である。図2Cは、本開示に係る管状体の一実施形態を示す側面図である。図2Dは、本開示に係る管状体の一実施形態を示す背面図である。
図3図3は、本開示に係る管状体の一実施形態を示す斜視図である。
図4図4は、本開示に係る管付きタンクの製造工程を示す断面図である。
図5図5は、本開示に係る管付きタンクの一実施形態を示す一部の断面図である。
図6図6は、本開示に係る管状体の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る管付きタンク7は、管状体1と、タンク5と、を備える(図1A参照)。管状体1は、例えば、配管用継手として形成されている。すなわち、管状体1には、配管の端部が接続可能に形成されている。タンク5は、例えば、水溶液などの液体を貯めるものである。タンク5の内側空間と管状体1の内部流路とは連通しており、管状体1の内部流路を通じて、タンク5の内側空間に貯めた液体を排出したり、あるいは、タンク5の内側空間に液体を注入したりすることができる。なお、本開示における「液体」とは、多少粘度を有していてもよく、内部流路を流れることが可能な流動物が含まれる。管状体1は、タンク5の外面51から外方に向かって突出して設けられている。管状体1は、後端部がタンク5の外面51に溶着されて取り付けられている(図1B参照)。
【0011】
本実施形態に係る管状体1は、内管部2と、外被部3と、溶着面4と、を備える(図2A~D及び図3参照)。内管部2は内部流路を有して筒状に形成される。外被部3は内管部2の外面21の少なくとも一部を覆うように設けられている。溶着面4は管状体1の後端面であって、タンク5に溶着される。溶着面4は、内管部2と外被部3との境界部6を有する。すなわち、管状体1の後端面において、内管部2と外被部3との境界部分が露出している。そして、溶着面4は、境界部6がタンク5の外部に位置する状態で、タンク5に溶着されるように構成されている。
【0012】
本実施形態に係る管状体1は、内管部2と外被部3との境界部6がタンク5の外部に位置する状態で、溶着面4がタンク5に溶着されるように構成されているため、タンク5に貯められる液体が境界部6に浸透しにくくなる。したがって、内部(内管部2と外被部3との間)に液体が浸透しにくい。
【0013】
(2)詳細
(管付きタンク7)
図1Aに示すように、本実施形態に係る管付きタンク7は、管状体1と、タンク5と、を備える。管状体1は、管状体1として形成されている。タンク5は、液体を貯める容器である。図1Bに示すように、管状体1はタンク5の外面51から外方に向かって突出している。管付きタンク7は、一つのタンク5に対して複数の管状体1を有していてもよい。また管状体1は、タンク5の側面下部に設けられているが、この位置以外の任意の位置に管状体1を設けてもよく、例えば、管状体1はタンク5の側面上部に設けることができる。
【0014】
(管状体1の概要)
本実施形態に係る管状体1は、内管部2と、外被部3と、溶着面4と、を備えている。
【0015】
内管部2は筒状に形成されている。内管部2は前後方向に延びる軸Gを有している。また内管部2は内側に軸方向に延びる内部流路22を有している。内部流路22は内管部2の前端面23と後端面24との両方に開口している。
【0016】
(内管部2)
図2Aに示すように、内管部2は、第1内フランジ部25と、第2内フランジ部26と、内胴部27と、挿入部28と、を有している。第1内フランジ部25と、第2内フランジ部26と、内胴部27と、挿入部28とは一体に形成されている。第1内フランジ部25は内胴部27の前端に形成されている。第2内フランジ部26は内胴部27の後端に形成されている。したがって、内胴部27は、第1内フランジ部25と第2内フランジ部26との間に形成されている。内胴部27は略円筒状に形成され、その外周面は凹凸面として形成されている。この凹凸面は、内胴部27の周方向に沿った溝部271と凸条272とで構成されている。
【0017】
第1内フランジ部25及び第2内フランジ部26は、各々、内管部2の軸Gを中心として内胴部27の全周にわたって形成されている。また第1内フランジ部25の外径及び第2内フランジ部26の外径は、各々、内胴部27の外径よりも大きく形成されている。第1内フランジ部25の前端面(内胴部27と反対側の面)は内管部2の前端面23を構成している。第2内フランジ部26の後端面(内胴部27と反対側の面)は内管部2の後端面24を構成している。また第1内フランジ部25及び第2内フランジ部26の周面も凹凸面に形成されている。
【0018】
挿入部28は後端面24から後方に突出して形成されている。挿入部28は後端面24における内部流路22の開口を囲うように形成されている。すなわち、挿入部28は内管部2の軸を中心として内部流路22の開口を全周にわたって囲うように形成されている。挿入部28の後端面24からの突出寸法は、特に限定されないが、タンク5の周壁57の厚みと同じか、周壁57の厚みよりもやや大きめに形成することができる。また挿入部28は基部側(後端面24側)の外径よりも先端側の外径の方が小さくなるように形成されている。これにより、挿入部28を先細りに形成することができ、孔部52に差し込みやすくなる。すなわち、内管部2は、タンク5に形成された孔部52に差し込まれる筒状の挿入部28を有する。
【0019】
内管部2は樹脂成形品を使用することができる。後述のように、内管部2は溶着面4の一部を構成するため、内管部2(の少なくとも溶着面4を構成する部分)は熱等により溶融することが好ましい。したがって、内管部2は熱により溶融可能な熱可塑性樹脂製の樹脂成形品であることが好ましい。つまり、内管部2は、熱可塑性樹脂を含む。また溶着面4は比較的低温で溶融するほうが、設備の小型化及び省コスト化の観点から好ましい。したがって、内管部2はポリオレフィン製の樹脂成形品であることが好ましい。さらに、内管部2は、ポリオレフィンの中でも、入手が容易で、汎用性の高い樹脂で形成されることが好ましく、ポリエチレン又はポリプロピレンであることが好ましい。加えて、内管部2は耐熱性、ガスバリア性、耐薬品性及び耐溶剤性等の観点から、ポリエチレン製の樹脂成形品であることが好ましい。すなわち、内管部2を形成する熱可塑性樹脂はポリエチレンを含む。内部管2は、タンク5の外面の材質と同材質で且つタンク5の内面と同じ処方(顔料及び添加剤)であることが望ましい。
【0020】
内管部2は、更にポリエチレンのナチュラル材であることが好ましい。すなわち、内管部2は、顔料や染料などの着色剤や酸化防止剤などの添加剤が添加されていないポリエチレンで形成されていることが好ましい。この場合、内管部2の内部流路22を流れる液体に着色剤や添加剤が不純物として混入することがなく、液体の品質低下を抑制することができる。つまり、内部流路22を流れる液体は、内管部2の内面に接触して流動することになるが、この際、内管部2に着色剤が含まれていると、液体に着色剤が溶け出して液体を汚染するおそれがある。したがって、内管部2は着色剤で着色されていないナチュラル材のポリエチレンで形成されるのが好ましい。
【0021】
内管部2は、各種の成形方法で成形することが可能であり、例えば、射出成形法、回転成形法、圧縮成形法、トランスファ成形法、押出成形法、ブロー成形法、注型法、真空成形法及び積層成形法の群れから選ばれる少なくとも1つを採用することができる。これらの中でも、連続成形が可能で生産性の高い射出成形法を採用することが好ましい。内管部2を、例えば、射出成形法によって成形する場合、射出成形法に適したポリエチレンを用いることができる。このようなポリエチレンは、例えば、メルトフローレート(MFR)が0.05~75g/10分の範囲であることが好ましく、特に好ましくは、2~40g/10分の範囲である。また、好ましいポリエチレンの融点としては、90~150℃の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは120~140℃の範囲内である。なお、ポリエチレンのMFR及び融点は、分子量やグレード等で調整することができる。またポリエチレン系樹脂の融点は、例えば、日本工業規格(JIS)K7121(示差走査熱量測定)に従い測定することができる。
【0022】
(外被部3)
図2Cに示すように、外被部3は、第1外フランジ部35と、第2外フランジ部36と、外胴部37と、リブ部38と、を有している。第1外フランジ部35と、第2外フランジ部36と、外胴部37と、リブ部38とは一体に形成されている。第1外フランジ部35は外胴部37の前端に形成されている。第2外フランジ部36は外胴部37の後端に形成されている。したがって、外胴部37は、第1外フランジ部35と第2外フランジ部36との間に形成されている。外胴部37は略円筒状に形成され、その内周面は凹凸面として形成されている。この凹凸面は、内胴部27の外周面の凹凸面と噛み合うように形成されている。したがって、内管部2と外被部3とが管状体1の軸方向に沿って相互にずれにくくすることができる。なお、管状体1の軸は内管部2の軸Gと同一である。
【0023】
第1外フランジ部35及び第2外フランジ部36は、各々、外被部3の軸を中心として外胴部37の全周にわたって形成されている。また第1外フランジ部35の外径及び第2外フランジ部36の外径は、各々、外胴部37の外径よりも大きく形成されている。第1外フランジ部35の前端面(外胴部37と反対側の面)は外被部3の前端面33を構成している。第2外フランジ部36の後端面(外胴部37と反対側の面)は外被部3の後端面34を構成している。なお、外被部3の軸は、管状体1の軸及び内管部2の軸と同一である。
【0024】
第1外フランジ部35は、配管を固定するための台座としての機能を有している。すなわち、第1外フランジ部35に配管の端部が固定されることにより、管状体1と配管とが接続される。第1外フランジ部35は複数の固定孔351を有している。複数の固定孔351は配管を固定する際にボルト留め用の孔として形成されている。複数の固定孔351は外被部3の軸回りに所定の間隔を介して配置されている。また各固定孔351は、第1外フランジ部35を厚み方向(外被部3の軸)に貫通して形成されている。
【0025】
リブ部38は外胴部37の外面と第1外フランジ部35の後端面との間に形成されている。外被部3は複数のリブ部38を有している。複数のリブ部38は外被部3の軸回りに所定の間隔を介して配置されている。リブ部38は第1外フランジ部35を支持する機能を有する。したがって、リブ部38は、外被部3の軸に沿って、第1外フランジ部35に加わる力で、第1外フランジ部35が変形したり破損したりするのを抑制する。第1外フランジ部35に加わる力とは、例えば、第1外フランジ部35に配管を固定する際に生じる力である。
【0026】
外被部3は樹脂成形体である。後述のように、外被部3は溶着面4の一部を構成するため、外被部3(の少なくとも溶着面4を構成する部分)は熱等により溶融することが好ましい。したがって、外被部3は熱により溶融可能な熱可塑性樹脂製の樹脂成形体であることが好ましい。つまり、外被部3は、熱可塑性樹脂を含む。また溶着面4は比較的低温で溶融するほうが、設備の小型化及び省コスト化の観点から好ましい。したがって、外被部3はポリオレフィン製の樹脂成形体であることが好ましい。さらに、外被部3は、ポリオレフィンの中でも、入手が容易で、汎用性の高い樹脂で形成されることが好ましく、ポリエチレン又はポリプロピレンであることが好ましい。加えて、外被部3は耐薬品性及び耐衝撃性等の観点から、ポリエチレン製の樹脂成形品であることが好ましい。このように内管部2と外被部3とは、同じ種類の樹脂で形成されるのが好ましい。例えば、内管部2と外被部3とは、いずれもポリエチレンで形成されるのが好ましい。すなわち、外被部3を形成する熱可塑性樹脂はポリエチレンを含む。
【0027】
外被部3は、ポリエチレンの非ナチュラル材であることが好ましい。すなわち、外被部3は、顔料や染料などの着色剤で着色されているポリエチレンで形成されていることが好ましい。つまり、内管部2は着色剤による液体の汚染を低減するために、ナチュラル材が使用されているが、外被部3は内部流路22を流れる液体に接触することがないため、ナチュラル材で形成する必要がない。一方、外被部3は管状体1の外面の大部分を構成するため、太陽光に曝されやすい。したがって、外被部3は、耐光性を向上させるために、着色剤や紫外線吸収剤などの添加剤を含有する非ナチュラル材のポリエチレンで形成されるのが好ましい。この場合、着色剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラックを使用することができる。すなわち、外被部3はカーボンを更に含んでいる。着色剤がカーボンブラックの場合、外被部3の全量に対してカーボンの含有量が0.1~3.0質量%であることが好ましく、これにより、外被部3の耐光性が向上する。内管部2はポリエチレンのナチュラル材である場合、ほぼ白色であり、外被部3はカーボンで着色されたポリプロピレンである場合、ほぼ黒色である。なお、外被部3は、耐光性を得るために、カーボン以外の添加剤を含んでいてもよい。例として、酸化チタンなどの無機顔料や、有機顔料、紫外線吸収剤や光安定剤、酸化防止剤といった添加剤を含むことも可能である。
【0028】
外被部3は、各種の成形方法で成形することが可能であり、例えば、射出成形法、回転成形法、圧縮成形法、トランスファ成形法、押出成形法、ブロー成形法、注型法、真空成形法及び積層成形法の群れから選ばれる少なくとも1つを採用することができる。これらの中でも、連続成形が可能で生産性の高い射出成形法を採用することが好ましい。外被部3を、例えば、射出成形法によって成形する場合、射出成形法に適したポリエチレンを用いることができる。このようなポリエチレンのMFR及び融点は、内管部2の作成に使用するポリエチレンのMFR及び融点と同様である。
【0029】
(管状体1の詳細)
本実施形態に係る管状体1は、上記の内管部2と外被部3とを備えて形成されている。外被部3は内管部2の外面21の少なくとも一部を覆っている。これにより、内管部2の外被部3で覆われている部分は、太陽光に直接曝されにくくなって、内管部2がナチュラル材であっても光による劣化が低減される。すなわち、外被部3は内管部2の光による劣化を低減する保護機能を有する。
【0030】
外被部3による内管部2の保護を考慮すると、内管部2の全面を外被部3で覆うことが好ましい。一方で、外被部3には着色剤が含まれているので、内部流路22に流れる液体は外被部3に接触しないことが好ましい。そこで、本実施形態に係る管状体1では、内管部2の内面(内部流路22を構成する面)は外被部3で覆われていない。また本実施形態に係る管状体1では、挿入部28の全面(内面及び外面)は外被部3で覆われていない。さらに本実施形態に係る管状体1では、内管部2の前端面23及び後端面24は外被部3で覆われていない。すなわち、外被部3は、内管部2の内面、挿入部28の全面、前端面23及び後端面24を覆っておらず、これら以外の部分の内管部2の外面21を覆っている。
【0031】
内管部2の内胴部27の外面は外被部3の外胴部37により全面にわたって覆われている。図2Dに示すように、内管部2の第1内フランジ部25の外面は、前端面23を除いて、外被部3の第1外フランジ部35で覆われている。図2Bに示すように、内管部2の第2内フランジ部26の外面は、後端面24を除いて、外被部3の第2外フランジ部36で覆われている。
【0032】
内管部2の前端面23と外被部3の前端面33とはほとんど段差がなく、いわゆる面一に形成されている。また内管部2の後端面24と外被部3の後端面34とはほとんど段差がなく、いわゆる面一に形成されている。
【0033】
そして、図2Bに示すように、後端面24と後端面34とにより、管状体1の溶着面4が形成されている。すなわち、溶着面4は、内管部2及び外被部3の各々の外面21,31の一部(後端面24と後端面34)を含んで形成されている。
【0034】
また本実施形態に係る管状体1では、図3に示すように、溶着面4は、挿入部28の外方に位置している。すなわち、内管部2の軸方向から見て、内管部2の後端面24の中央部には内部流路22の開口が略円形に形成されており、この開口縁部から挿入部28が後方に向かって突出している。また挿入部28は内部流路22の開口縁部を全周にわたって囲うように形成されている。そして、外被部3の後端面34は、内管部2の後端面24の外側(第2内フランジ部26の外周部分)に位置し、後端面24を全周にわたって囲っている。したがって、後端面24と後端面34とを有する溶着面4は挿入部28の外方(内部流路22と反対方向)に位置し、また管状体1の軸方向から見て、挿入部28は溶着面4により全周にわたって囲まれている。すなわち、後端面24と後端面34とは、管状体1の軸を中心として同心円状に配置されて隣接している。
【0035】
また溶着面4は、内管部2と外被部3との境界部6を有する。すなわち、溶着面4は、内管部2の後端面24と外被部3の後端面34とが隣接して配置されているため、後端面24と後端面34との境目が境界部6として溶着面4の表面に露出して形成されている。したがって、境界部6は挿入部28を全周にわたって囲うように形成されている。
【0036】
(管状体1の製造)
管状体1を成形するにあたっては、例えば、金型を使用した射出成形法を採用することができる。図6は、本実施形態に係る管状体1が金型を使用して成形される状態を示している。
【0037】
内管部2は中央金型70にセットされている。この場合、内管部2の内部流路22である空間に中央金型70の円柱状部71に挿入している。内管部2は、予め、他の金型等を使用して、例えば、ポリエチレンを射出成形等することにより成形したものである。
【0038】
次に、内管部2をセットした中央金型70に上金型72及び下金型73を組み合わせる。この場合、上金型72は中央金型70に向かって上方から下方に移動させる。下金型73は中央金型70に向かって下方から上方に移動させる。これにより、中央金型70の基部74に、上金型72の一方端部75及び下金型73の一方端部76を嵌め合わせる。
【0039】
次に、上金型72の他方端部77及び下金型73の他方端部78と接するように、蓋金型79を配置する。このようにして、中央金型70、上金型72、下金型73及び蓋金型79を組み合わせて型締めをする。そして、型締めされた金型内に形成されたキャビティ80内に、蓋金型79に形成されたゲートより、例えば、外被部3を形成するための樹脂、例えば、ポリエチレンを射出することにより、内管部2の外側に外被部3を形成する。
【0040】
図6に示すように、内管部2の前端面23と蓋金型79の間に隙間81が形成されており、この部分に、外被部3用の樹脂が侵入し、内管部2の前端面23を覆うので、射出成型後、前端面23が露出するまで、この部分を切削加工等により取り除く。また、固定孔351を切削加工等により外被部3の第1外フランジ部35に形成する。挿入部28及び挿入部28に連続する後端面24は、成形時に外被部3用の樹脂で覆われず、切削加工等をほとんどすることなく、外被部3から露出している。
【0041】
以上のようにして、内管部2の周りに、外被部3を形成し、管状体1を製造することができる。
【0042】
(タンク5)
本実施形態に係る管付きタンク7は、図1Aに示すように、タンク5を備えている。本実施形態において、タンク5は略円筒状に形成されている。すなわち、タンク5は、円筒状の周壁57と、周壁57の下端の開口を閉塞する底部53と、周壁57の上端の開口を閉塞する上面部54と、を有している。タンク5は、液体が内部に貯留可能であれば、どのような形状であってもよく、例えば、角筒状であってもよい。
【0043】
タンク5は樹脂成形品である。後述のように、タンク5には管状体1が熱溶着により接合されるため、タンク5(の少なくとも周壁57の外面51を構成する部分)は熱等により溶融することが好ましい。したがって、タンク5は熱により溶融可能な熱可塑性樹脂製の樹脂成形品であることが好ましい。またタンク5は比較的低温で溶融するほうが、設備の小型化及び省コスト化の観点から好ましい。したがって、タンク5はポリオレフィン製の樹脂成形品であることが好ましい。さらに、タンク5は、ポリオレフィンの中でも、入手が容易で、汎用性の高い樹脂で形成されることが好ましく、ポリエチレン又はポリプロピレンであることが好ましい。加えて、タンク5は耐薬品性及び耐溶剤性等の観点から、ポリエチレン製の樹脂成形品であることが好ましい。このようにタンク5は、管状体1の熱溶着の際の作業性を考慮して、内管部2及び外被部3と同じ種類の樹脂で形成されるのが好ましい。例えば、内管部2と外被部3とがいずれもポリエチレンで形成されている場合、タンク5もポリエチレンで形成されていることが好ましい。
【0044】
タンク5は多層成形品であることが好ましい。多層成形品とは、2つ以上の層が厚み方向で積層された構造を有する成形品である。すなわち、タンク5は、周壁57、底部53及び上面部54が、各々、2層以上の多層で形成されている成形品である。本実施形態において、タンク5は、内側層55と外側層56とを備えた多層成形品である。内側層55はタンク5の内面を全面にわたって構成している層である。外側層56はタンク5の外面を全面にわたって構成している層である。
【0045】
タンク5の内側の空間には、液体が貯留される。したがって、内側層55には液体が接触することになるが、内管部2の場合と同様に、着色剤や添加剤による液体の汚染を抑制する必要がある。したがって、内側層55を構成する樹脂はナチュラル材であることが好ましい。これにより、内側層55に着色剤が含まれなくなって、着色剤や添加剤による汚染を抑制することができる。また管状体1の溶着時の作業性を考慮して、内側層55はポリエチレンであることが好ましい。したがって、内側層55は内管部2を形成する樹脂と同等のものを使用することができる。
【0046】
またタンク5は屋外に配置される場合がある。したがって、外側層56は太陽光に曝されることになるが、外被部3の場合と同様に、耐光性が高いほうが好ましい。したがって、外側層56は非ナチュラル材であることが好ましい。これにより、外側層56の耐光性を向上させることができ、タンク5の光による劣化を低減することができる。また管状体1の溶着時の作業性を考慮して、外側層56はポリエチレンであることが好ましい。したがって、外側層56は外被部3を形成する樹脂と同等のものを使用することができる。すなわち、外側層56はカーボンを含有するポリエチレンであることが好ましい。
【0047】
タンク5は、各種の成形方法で成形することが可能であり、例えば、射出成形法、回転成形法、圧縮成形法、トランスファ成形法、押出成形法、ブロー成形法、注型法、真空成形法及び積層成形法の群れから選ばれる少なくとも1つを採用することができる。これらの中でも、大型のタンク5が形成しやすく、多層成形が容易な回転成形法を採用することが好ましい。すなわち、タンク5は回転成形法により成形された多層回転成形品であることが好ましい。
【0048】
多層回転成形品のタンク5を形成する場合に用いるポリエチレンとしては、エチレン単独重合体、プロピレンとエチレン及び/または炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体を用いることができる。α-オレフィンとして具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。中でも、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンが好ましく、特には、エチレン、1-ブテンが好ましい。
【0049】
エチレンと他の炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれでもよい。また、ポリエチレン系樹脂の耐衝撃性を改良する目的で、50%以下の添加量で他のポリマーをブレンドして使用することもできる。ブレンドに用いる樹脂としては、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの3元共重合体などが例示される。
【0050】
多層回転成形品のタンク5を形成するポリエチレンの製造に用いる触媒は、特に限定されるものではないが、立体規則性を有する公知のメタロセン触媒やチーグラー触媒などを使用することができる。また重合反応は、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの不活性炭化水素や液化α-オレフィン等の溶剤の存在下、あるいは不存在下に行うことができる。重合は、連続式またはバッチ式の反応で行ってもよく、その条件は通常用いられる条件を採用することができる。さらに重合反応は一段で行ってもよく、二段以上の多段で行ってもよい。
【0051】
また、多層回転成形品のタンク5を形成するポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は0.3~20g/10分の範囲であることが好ましく、特に好ましくは2~7g/10分の範囲である。メルトフローレートが0.3g/10分未満であると外観不良となる場合があり、20g/10分を超えると製品の厚みに偏りが生じるなどの問題が生じる。メルトフローレートは、日本工業規格(JIS)K7210(190℃、荷重2.16kg)に従い測定することができる。
【0052】
また、多層回転成形品において用いるポリエチレンの融点は、98~145℃の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、115~135℃の範囲内である。融点が110℃未満であると、タンク5の剛性不足となる場合があり、融点が130℃を超えると、タンク5の変形が大きくなる場合がある。
【0053】
そして、本実施形態におけるタンク5には、図4に示すように、管状体1を取り付けるための孔部52が形成されている。孔部52は、多層回転成形などによりタンク5を成形した後、タンク5の周壁57に切削加工等を施すことにより形成することができる。図5に示すように、管状体1の挿入部28をタンク5の周壁57の孔部52に挿入し、孔部52の外側開口の周辺の外側層56と、管状体1の溶着面4とを溶着することにより、管状体1をタンク5の周壁57に取り付けることができる。また管状体1の挿入部28も孔部52の周辺部分に溶着される。
【0054】
(管付きタンク7の製造)
本実施形態に係る管付きタンク7は、タンク5に管状体1を溶着することにより形成される。管状体1は、溶着面4がタンク5に溶着される。すなわち、管状体1は溶着面4がタンク5に溶着されてタンク5の外面51に突出して取り付けられる。ここで、溶着面4は、タンク5の周壁57の外面51に熱溶着されるように構成されている。すなわち、溶着面4は、熱溶融可能な熱可塑性樹脂で後端面24と後端面34とが構成されている。また管状体1の挿入部28もタンク5に溶着される。
【0055】
図4は、本実施形態に係る管状体1をタンク5に溶着する際に加熱する状態を示している。タンク5の孔部52の周辺部分と、管状体1の溶着面4とは、ヒータ60により加熱される。ヒータ60は、管状体1の溶着面4を加熱するための第1の加熱部61と、タンク5の孔部52の周辺部分を加熱するための第2の加熱部62を備えている。
【0056】
第1の加熱部61には、溶着面4と接触して加熱するための第1の加熱面611と、溶着面4から突出した挿入部28を外周面から加熱するための第2の加熱面612が形成されている。第2の加熱面612には、挿入部28を嵌め入れることができる凹部63が設けられている。
【0057】
第2の加熱部62には、タンク5の孔部52の周辺において周壁57の外面51と接し、外側層56を加熱するための第3の加熱面623が形成されている。また、第2の加熱部62には、孔部52に嵌められる凸部64が形成されている。凸部64には、孔部52の内周面を加熱するための第4の加熱面624が形成されている。
【0058】
そして、管状体1の溶着面4及びタンク5の孔部52の周辺をヒータ60によって加熱するにあたっては、タンク5と管状体1との間にヒータ60を配置した後、第1の加熱部61により、溶着面4及び挿入部28を加熱する。この場合、溶着面4は第1の加熱面611と接触して加熱され、挿入部28は凹部63に嵌め込まれた状態で第2の加熱面612と接触して加熱される。また溶着面4及び挿入部28は、各々を構成する樹脂の融点より高くなるように加熱される。例えば、溶着面4及び挿入部28がポリエチレンで構成されている場合は、溶着面4及び挿入部28は150~250℃の範囲内の温度となるように加熱される。
【0059】
また第1の加熱部61による溶着面4及び挿入部28の加熱と同時に、第2の加熱部62による孔部52の周辺部分の加熱も行われる。すなわち、ヒータ60は、第1の加熱部61が溶着面4及び挿入部28に接触し、かつ第2の加熱部62が孔部52の周辺部分に接触した状態で配置される。この場合、タンク5の孔部52の周辺における外側層56が第3の加熱面623と接触して加熱される。またタンク5の孔部52の内周面において、第4の加熱面624が内側層55及び外側層56に接触して加熱される。タンク5の孔部52の周辺部分は、周壁57(内側層55及び外側層56)を構成する樹脂の融点より高くなるように加熱される。例えば、内側層55及び外側層56がポリエチレンで構成されている場合は、内側層55及び外側層56が150~250℃の範囲内の温度となるように加熱される。
【0060】
以上のようにして、管状体1の溶着面4及び挿入部28と、タンク5の孔部52の周辺部分の周壁57とを同時に加熱した後、ヒータ60を取り除き、タンク5の孔部52に、管状体1の挿入部28が嵌まり、かつ溶着面4が周壁57の外面51に接触するようにして、管状体1をタンク5に押し付けて溶着させる。つまり、溶着面4は、境界部6を含む部分がタンク5の外面51に溶着されるように構成されている。したがって、管状体1は、境界部6がタンク5の外部に位置する状態で、溶着面4がタンク5に溶着されるように構成されている。すなわち、境界部6は溶着面4に位置しているため、タンク5の外面51における孔部52の周辺部分に溶着面4が溶着されると、境界部6がタンク5の外部に位置した状態で、管状体1がタンク5に溶着される。境界部6は、孔部52を全周にわたって囲むように位置している。
【0061】
図5は、本実施形態における管状体1を、タンク5の孔部52の周辺に溶着によって取り付けた状態を示す断面図である。管状体1の溶着面4は、タンク5の外側層56と同等の樹脂から形成されているので、溶着により第2内フランジ部26と第2外フランジ部36とがタンク5の周壁57の外側層56と一体化している。また、管状体1の後端に突出した挿入部28は、タンク5の孔部52の内周面において、内側層55及び外側層56と溶着により一体化している。
【0062】
本実施形態において、挿入部28は、内管部2の一部として構成されており、外被部3と内管部2との境界部分は挿入部28には存在していない。したがって、タンク5の外面における孔部52の開口(外側開口)よりもタンク5の内側に、外被部3と内管部2との境界部分は存在していない。このため、外被部3と内管部2との境界部分に液体が接触することがほとんどなく、外被部3と内管部2との境界部分から管状体1の内部に液体が浸透することもほとんどない。よって、液体浸透による管状体1の破損や劣化が生じにくくなる。
【0063】
また挿入部28の溶着面4からの突出長さは、挿入部28をタンク5の孔部52内に配置した際、内側層55と接する長さに形成される。すなわち、挿入部28の溶着面4からの突出長さは、周壁57の厚み(内側層55の厚みと外側層56の厚みとの合計)と同じかやや長く形成されている。したがって、挿入部28の先端は内側層55と溶着される。また挿入部28の外周面は、孔部52の全周にわたって、内側層55及び外側層56と溶着される。そして、タンク5の内側の空間と管状体1の内部流路22とが連通し、内部流路22を通じて液体をタンク5の内側の空間を出したりタンク5の内側の空間に入れたりすることができる。
【0064】
ここで、図5に示すように、タンク5の内側の空間及び内部流路22に外被部3及び外側層56が露出していない。したがって、タンク5の内側の空間及び内部流路22に存在する液体に外被部3及び外側層56が接触せず、液体はナチュラル材である内管部2及び内側層55のみに接触しやすくなる。よって、液体には外被部3及び外側層56からの着色剤や添加剤の溶出が抑制でき、液体の汚染をほとんど無いようにすることができる。
【0065】
本実施形態に係る管状体1を、タンク5の孔部52に溶着させ、図5に示すような状態で溶着させた後、管状体1を軸方向に引き上げ、引き抜き強度(接着強度)を評価した。強度測定の試験器としては、島津製作所社製「AG-100kNX」を用い、試験速度を20mm/分とし、試験温度23℃、測定対象の試料数を2として、接着強度を評価した。その結果、本実施形態に係る管付きタンク7では、引き抜き強度が16.4KN及び20.3KNであった。一方、特許文献1のものでは、同様の試験で、15.2KNとなり、本実施形態の方が引き抜き強度を向上させることができた。
【0066】
(3)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0067】
実施形態では、溶着面4が熱溶着によりタンク5の外面51に溶着される場合について説明したが、これに限らず、例えば、溶着面4は溶剤溶着によりタンク5の外面51に溶着されてもよい。また溶着面4は、超音波溶着又はレーザ溶着などの溶着方法で、タンク5の外面51に溶着されてもよい。
【0068】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る管状体(1)は、内管部(2)と、外被部(3)と、溶着面(4)と、を備える。内管部(2)は筒状に形成される。外被部(3)は内管部(2)の外面(21)の少なくとも一部を覆う。溶着面(4)はタンク(5)に溶着される。溶着面(4)は、内管部(2)と外被部(3)との境界部(6)を有する。境界部(6)がタンク(5)の外部に位置する状態で、溶着面(4)がタンク(5)に溶着されるように構成されている。
【0069】
第1の態様によれば、溶着面(4)は、内管部(2)と外被部(3)との境界部(6)がタンク(5)の外部に位置する状態で、タンク(5)に溶着されるように構成されているため、タンク(5)に貯められる液体が境界部(6)に浸透しにくくなり、内部に液体が浸透しにくい管状体(1)が得られる、という利点がある。
【0070】
第2の態様に係る管状体(1)は、第1の態様の管状体(1)である。溶着面(4)は、境界部(6)を含む部分がタンク(5)の外面(51)に溶着されるように構成されている。
【0071】
第2の態様によれば、境界部(6)が外面(51)で塞がれやすくなって、タンク(5)に貯められる液体が境界部(6)に更に浸透しにくくなる、という利点がある。
【0072】
第3の態様に係る管状体(1)は、第1又は2の態様の管状体(1)である。内管部(2)は、タンク(5)に形成された孔部(52)に差し込まれる筒状の挿入部(28)を有する。溶着面(4)は、挿入部(28)の外方に位置している。
【0073】
第3の態様によれば、境界部(6)がタンク(5)の外部に確実に位置させることができ、しかも挿入部(28)によりタンク(5)に貯められる液体が境界部(6)に接触しにくくなり、境界部(6)に液体が更に浸透しにくくなる、という利点がある。
【0074】
第4の態様に係る管状体(1)は、第1~3のいずれか1つの態様の管状体(1)である。内管部(2)及び外被部(3)は、各々、熱可塑性樹脂を含む。溶着面(4)は、内管部(2)及び外被部(3)の各々の外面(21),(31)の一部を含む。また溶着面(4)は、タンク(5)の外面(51)に熱溶着されるように構成されている。
【0075】
第4の態様によれば、熱溶着により管状体(1)をタンク(5)に簡単に取り付けることができる、という利点がある。
【0076】
第5の態様に係る管状体(1)は、第4の態様の管状体(1)である。熱可塑性樹脂はポリエチレンを含む。外被部(3)はカーボンを更に含む。
【0077】
第5の態様によれば、外被部(3)の耐光性を向上させることができ、管状体(1)の光による劣化を低減することができる、という利点がある。
【0078】
第6の態様に係る管付きタンク(7)は、第1~5のいずれか1つの管状体(1)と、タンク(5)と、を備える。境界部(6)がタンク(5)の外部に位置する状態で、溶着面(4)がタンク(5)に溶着されている。
【0079】
この態様によれば、タンク(5)に貯められる液体が境界部(6)に浸透しにくくなり、管状体(1)の内部に液体が浸透しにくい、という利点がある。
【符号の説明】
【0080】
1 管状体
2 内管部
21 外面
3 外被部
31 外面
4 溶着面
5 タンク
51 外面
52 孔部
6 境界部
図1
図2
図3
図4
図5
図6