IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山下ゴム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-トルクロッド 図1
  • 特許-トルクロッド 図2
  • 特許-トルクロッド 図3
  • 特許-トルクロッド 図4
  • 特許-トルクロッド 図5
  • 特許-トルクロッド 図6
  • 特許-トルクロッド 図7
  • 特許-トルクロッド 図8
  • 特許-トルクロッド 図9
  • 特許-トルクロッド 図10
  • 特許-トルクロッド 図11
  • 特許-トルクロッド 図12
  • 特許-トルクロッド 図13
  • 特許-トルクロッド 図14
  • 特許-トルクロッド 図15
  • 特許-トルクロッド 図16
  • 特許-トルクロッド 図17
  • 特許-トルクロッド 図18
  • 特許-トルクロッド 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】トルクロッド
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20240725BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20240725BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F16F15/08 T
F16F15/08 K
F16F1/387 A
F16F1/387 C
B60K5/12 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020158267
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052088
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】門脇 宏和
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016764(JP,A)
【文献】特開昭58-141907(JP,A)
【文献】特開2003-240036(JP,A)
【文献】特開2010-096277(JP,A)
【文献】実開昭61-118836(JP,U)
【文献】実開平03-069732(JP,U)
【文献】特開平08-109948(JP,A)
【文献】実開昭56-102211(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00-6/00
F16F 15/00-36/00
B60K 1/00-6/00
B60K 6/08-8/00
B60K 16/00
B60G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手部材であるロッド本体と、
前記ロッド本体の長手方向であるX軸方向の一端部に設けられ、X軸方向に直交するY軸方向に沿う第1中心軸を有する第1連結部と、
前記ロッド本体のX軸方向の他端部に設けられ、前記第1連結部よりも大きい第2連結部と、を備え、
前記第1連結部は、
前記ロッド本体に連設された筒状の部材であり、X軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向の内径が、X軸方向の内径よりも大きく形成された外側部材と、
前記外側部材の中央部に配置された内側部材と、
前記外側部材と前記内側部材を弾性的に結合する弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、Z軸方向のバネ定数がX軸方向のバネ定数よりも小さく設定され、
前記第1中心軸を含みZ軸方向に平行な平面で切断した断面における前記外側部材と前記内側部材との間に位置する前記弾性部材のY軸方向の最小長さをL1とし、前記第1中心軸を含みX軸方向に平行な平面で切断した断面における前記外側部材と前記内側部材との間に位置する前記弾性部材のY軸方向の最小長さをL2としたとき、L1<L2であるとともに、
前記第1中心軸を含みZ軸方向に平行な平面で切断した断面における前記外側部材と前記内側部材との間に位置する前記弾性部材のZ軸方向の厚さをT1とし、前記第1中心軸を含みX軸方向に平行な平面で切断した断面における前記外側部材と前記内側部材との間に位置する前記弾性部材のX軸方向の厚さをT2としたとき、T1>T2であることを特徴とするトルクロッド。
【請求項2】
記弾性部材は、Z軸方向における前記内側部材の径方向外側に、Y軸方向に凹陥または貫通して形成されたすぐり部を有することを特徴とする請求項1に記載のトルクロッド。
【請求項3】
記内側部材は、Z軸方向における該内側部材の径方向外側の外周面に、表面が前記外周面から径方向内側に入り込んで形成された凹状部を有することを特徴とする請求項1に記載のトルクロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクロッドに関し、特に、自動車のエンジンやモータ等の原動機と車体とを防振連結するトルクロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジン等の原動機と車体とを防振連結する防振装置の一例として、トルクロッドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
トルクロッドは、長手部材であるロッド本体と、その長手方向の一端部に設けられた小玉部と、他端部に設けられ小玉部よりも大きい大玉部とを備えている。小玉部および大玉部は、ロッド本体に連設された外側部材と、外側部材の中央部に配置された内側部材と、外側部材と内側部材を弾性的に結合する弾性部材とをそれぞれ備えている。そして、小玉部の内側部材がエンジン等の原動機に連結され、大玉部の内側部材が車体に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-105765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造のトルクロッドは、エンジン等の原動機の振動により、例えば、長手方向やこれと直交する上下方向の各振動に応じて剛体共振する。このうち特に、上下方向の振動は、室内音レベルや乗り心地等に影響するので、上下方向の振動を車体側へ伝達し難くすることが要請される。
【0005】
従来のトルクロッドの振動伝達特性曲線は、車体等の共振周波数に近い比較的高い周波数においてピークがあるため、車体側における感度の高い周波数域において高い振動伝達特性となる。このような高い振動伝達特性では振動の遮断が不十分であり、より低い振動伝達特性が求められる。なお、車体側における感度の高い周波数域とは、車体等の共振周波数に近いために振動が伝わりやすく音になりやすい周波数域をいい、防振したい周波数域にあたる。
【0006】
ここで、トルクロッドの剛体共振のピーク周波数(以下、剛体共振周波数という)を、車体側における感度の高い周波数域からずらすように低くすれば、感度の高い周波数域での振動伝達特性を下げることができる。トルクロッドの剛体共振周波数を低くする手法として、例えば、トルクロッドの先端にマス(質量)を付加する方法があるが、車両の軽量化という基本的な要請に支障をきたすこととなる。また、車体に連結される大玉部の上下方向のバネ定数を低減する方法が特許文献1等に提案されているが、既に技術的に成熟領域にあって大きな進展は望めない状況となっている。
【0007】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたものであり、重量を増やすことなく従来とは異なる観点で振動伝達特性を低くできるトルクロッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るトルクロッドは、ロッド本体と、第1連結部と、第2連結部と、を備えている。前記ロッド本体は長手部材である。前記第1連結部は、前記ロッド本体の長手方向であるX軸方向の一端部に設けられており、X軸方向に直交するY軸方向に沿う第1中心軸を有している。前記第2連結部は、前記ロッド本体のX軸方向の他端部に設けられており、前記第1連結部よりも大きい。前記第1連結部は、前記ロッド本体に連設された筒状の部材であり、X軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向の内径が、X軸方向の内径よりも大きく形成された外側部材と、前記外側部材の中央部に配置された内側部材と、前記外側部材と前記内側部材を弾性的に結合する弾性部材と、を備えている。前記弾性部材は、Z軸方向のバネ定数がX軸方向のバネ定数よりも小さい。
【0009】
本発明に係るトルクロッドは、車両搭載時にはZ軸方向が上下方向となるように設置される。そして、第1連結部の内側部材にZ軸方向に相当する上下方向の振動が入力した場合、弾性部材のZ軸方向のバネ定数が小さくなっているため、上下方向の振動を第1連結部で効率よく吸収できる。これにより、振動伝達特性のピーク値が低減される。また、剛体共振周波数が低い方へずれるため、車体側における感度の高い周波数域での振動伝達特性が下がる。さらに、上下方向の振動が第1連結部から第2連結部へ伝達される際、第1連結部の弾性部材が第1中心軸のまわりで捩じられる。この際、結果的に弾性部材の捩じりバネ定数も小さくなっているため、振動伝達特性が低減される。これにより、室内音レベルが低減されるとともに、乗り心地が向上する。
このように本発明では、主に第2連結部の構造に着目する従来の方法とは異なり、第1連結部の構造に着目することで、振動伝達特性の低減を図ることができる。
すなわち、本発明によれば、重量を増やすことなく従来とは異なる観点で振動伝達特性を低くできるトルクロッドを提供することができる。
なお、振動伝達特性のピーク値が低減されるとは、フラットな振動伝達特性(ピーク値なし)とされる場合も含む。
【0010】
前記したトルクロッドにおいて、前記第1中心軸を含みZ軸方向に平行な平面で切断した断面における前記外側部材と前記内側部材との間に位置する前記弾性部材のY軸方向の最小長さをL1とする。また、前記第1中心軸を含みX軸方向に平行な平面で切断した断面における前記外側部材と前記内側部材との間に位置する前記弾性部材のY軸方向の最小長さをL2とする。このとき、L1<L2である。
この構成では、弾性部材のうちの、外側部材と内側部材とをZ軸方向に結合する部分の断面積が、外側部材と内側部材とをX軸方向に結合する部分の断面積よりも小さくなる。したがって、弾性部材においてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【0011】
前記したトルクロッドにおいて、前記弾性部材は、Z軸方向における前記内側部材の径方向外側に、Y軸方向に凹陥または貫通して形成されたすぐり部を有することが好ましい。
この構成では、すぐり部によって、弾性部材のうちの、外側部材と内側部材とをZ軸方向に結合する部分の断面積が、外側部材と内側部材とをX軸方向に結合する部分の断面積よりも小さくなる。したがって、容易な手段により、弾性部材においてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【0012】
前記したトルクロッドにおいて、前記第1中心軸を含みZ軸方向に平行な平面で切断した断面における前記外側部材と前記内側部材との間に位置する前記弾性部材のZ軸方向の厚さをT1とする。また、前記第1中心軸を含みX軸方向に平行な平面で切断した断面における前記外側部材と前記内側部材との間に位置する前記弾性部材のX軸方向の厚さをT2とする。このとき、T1>T2である。
この構成では、弾性部材のうちの、外側部材と内側部材とをZ軸方向に結合する部分の結合方向の長さが、外側部材と内側部材とをX軸方向に結合する部分の結合方向の長さよりも大きくなる。したがって、弾性部材においてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【0013】
前記したトルクロッドにおいて、前記内側部材は、Z軸方向における該内側部材の径方向外側の外周面に、表面が前記外周面から径方向内側に入り込んで形成された凹状部を有することが好ましい。
この構成では、弾性部材が内側部材の凹状部の底面と外側部材の内面との間に介在することになる。このため、弾性部材のうちの、外側部材と内側部材とをZ軸方向に結合する部分の結合方向の長さが、外側部材と内側部材とをX軸方向に結合する部分の結合方向の長さよりも大きくなる。したがって、容易な手段により、弾性部材においてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重量を増やすことなく従来とは異なる観点で振動伝達特性を低くできるトルクロッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るトルクロッドの斜視図である。
図2】第1実施形態に係るトルクロッドの側面図である。
図3】第1実施形態に係るトルクロッドの平面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5図2のV-V線断面図である。
図6図4のVI-VI線断面図である。
図7】第1実施形態に係るトルクロッドの振動伝達特性曲線を、従来のトルクロッドの振動伝達特性曲線とともに示すグラフである。
図8参考例に係るトルクロッドの要部側面図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
図10図8のX-X線断面図である。
図11図9のXI-XI線断面図である。
図12】第3実施形態に係るトルクロッドの要部側面図である。
図13図12のXIII-XIII線断面図である。
図14図12のXIV-XIV線断面図である。
図15図13のXV-XV線断面図である。
図16】第4実施形態に係るトルクロッドの要部側面図である。
図17図16のXVII-XVII線断面図である。
図18図16のXVIII-XVIII線断面図である。
図19図17のXIX-XIX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。なお、以下の説明において、上下方向、前後方向および左右方向とは、車両搭載状態における車両の各方向をいうものとする。以下、自動車のエンジンと車体とを防振連結するトルクロッドについて説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1図7を参照して、本発明の第1実施形態に係るトルクロッド1について説明する。図1は、第1実施形態に係るトルクロッド1の斜視図である。図2は、第1実施形態に係るトルクロッド1の側面図である。図3は、第1実施形態に係るトルクロッド1の平面図である。図4は、図2のIV-IV線断面図である。図5は、図2のV-V線断面図である。図6は、図4のVI-VI線断面図である。
【0018】
図1図3に示すように、トルクロッド1は、ロッド本体10と、第1連結部としての小玉部30と、第2連結部としての大玉部50とを備えている。
ロッド本体10は、長手部材である。ロッド本体10の長手方向をX軸とする。X軸方向は、前後方向に相当している。
【0019】
小玉部30は、ロッド本体10の長手方向であるX軸方向の一端部(前端部に相当)に設けられている。小玉部30は、X軸方向に直交するY軸方向に沿う第1中心軸31を有している。Y軸方向は、左右方向に相当している。
【0020】
大玉部50は、ロッド本体10のX軸方向の他端部(後端部に相当)に設けられている。大玉部50は、X軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向に沿う第2中心軸51を有している。Z軸方向は、上下方向に相当している。大玉部50は、小玉部30よりも大きい。具体的には、Z軸方向(上下方向)から見た大玉部50は、Y軸方向(左右方向)から見た小玉部30よりも大径である。
【0021】
小玉部30は、外側部材32と、内側部材33と、弾性部材34とを備えている。外側部材32は、筒状を呈しており、ロッド本体10に連設されている。外側部材32は、第1中心軸31方向に沿う貫通孔を有する中空部材である。内側部材33は、筒状の外側部材32の中央部、つまり径方向内側に配置されている。内側部材33は、ここでは円筒状を呈している。弾性部材34は、外側部材32と内側部材33を弾性的に結合している。小玉部30の内側部材33は、図示しないエンジンに連結されるようになっている。
【0022】
大玉部50は、外側部材52と、内側部材53と、弾性部材54とを備えている。外側部材52は、筒状を呈しており、ロッド本体10に連設されている。外側部材52は、第2中心軸51方向に沿う貫通孔を有する中空部材である。内側部材53は、筒状の外側部材52の中央部、つまり径方向内側に配置されている。内側部材53は、ここでは円筒状を呈している。弾性部材54は、外側部材52と内側部材53を弾性的に結合している。大玉部50の内側部材53は、図示しない車体に連結されるようになっている。
【0023】
弾性部材34,54は、ゴム等から形成されている。内側部材33は、金属等から形成されている。外側部材32,52およびロッド本体10は、ここでは樹脂で一体に形成されている。この場合、例えば、内側部材33と弾性部材34、および内側部材53と弾性部材54が、予め加硫成形等でそれぞれ一体に形成される。そして、一体に形成された内側部材33と弾性部材34、および内側部材53と弾性部材54を金型内へ配置し、その周囲へ樹脂を射出成型することで、外側部材32,52およびロッド本体10が一体化される。外側部材32,52およびロッド本体10には、複数のリブが設けられている。これにより、必要な剛性を確保しつつ軽量化が図られている。
【0024】
トルクロッド1を介してエンジンが車体に支持されると、エンジンからの振動が、小玉部30の内側部材33から弾性部材34を介して外側部材32に入力される。小玉部30の外側部材32に入力された振動は、ロッド本体10を経て、大玉部50の外側部材52に入力され、さらに弾性部材54を介して内側部材53から車体へ伝達される。
【0025】
図3に示すように、大玉部50の弾性部材54は、ゴム足部55と、ストッパ56,57とを有している。ゴム足部55の後側において、Z軸方向(上下方向)に貫通するすぐり部58が形成されており、ゴム足部55の前側において、Z軸方向(上下方向)に貫通するすぐり部59が形成されている。すぐり部58,59は、ここでは貫通空間を意味している。ゴム足部55は、内側部材53を挟んで略V字状を呈している。ゴム足部55は、大玉部50のX軸方向(前後方向)の振動を吸収する。この場合の変形には、最初にすぐり部58,59を潰して変形する柔らかいバネ状態の段階と、その後にストッパ56,57が対向面と接触して変形する硬いバネ状態の段階とがある。また、ゴム足部55は、大玉部50のZ軸方向(上下方向)の振動を吸収する。なお、大玉部50の構造は、前記した構造に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0026】
図2に示すように、小玉部30の弾性部材34は、Z軸方向(上下方向)のバネ定数がX軸方向(前後方向)のバネ定数よりも小さくなるように設計されている。
【0027】
ここで、図4に示すように、第1中心軸31を含みZ軸方向に平行な平面で切断した断面における外側部材32と内側部材33との間に位置する弾性部材34のY軸方向の最小長さをL1とする。つまり、L1は、弾性部材34のうちのZ軸方向(上下方向)に外側部材32と内側部材33を結合する部分の第1中心軸31方向の長さである。また、図5に示すように、第1中心軸31を含みX軸方向に平行な平面で切断した断面における外側部材32と内側部材33との間に位置する弾性部材34のY軸方向の最小長さをL2とする。つまり、L2は、弾性部材34のうちのX軸方向(前後方向)に外側部材32と内側部材33を結合する部分の第1中心軸31方向の長さである。このとき、L1<L2とされている。
【0028】
具体的には、図2図4に示すように、弾性部材34は、Z軸方向(上下方向)における内側部材33の径方向外側に、Y軸方向(左右方向)に凹陥して形成されたすぐり部35を有している。すぐり部35は、ここでは凹状部を意味している。すぐり部35は、弾性部材34の上下左右の端部にそれぞれ形成されていることが望ましい。
【0029】
また、図4図6に示すように、第1中心軸31を含みZ軸方向に平行な平面で切断した断面における外側部材32と内側部材33との間に位置する弾性部材34のZ軸方向の厚さをT1とする。つまり、T1は、弾性部材34のうちのZ軸方向(上下方向)に外側部材32と内側部材33を結合する部分の径方向の厚さである。また、図5図6に示すように、第1中心軸31を含みX軸方向に平行な平面で切断した断面における外側部材32と内側部材33との間に位置する弾性部材34のX軸方向の厚さをT2とする。つまり、T2は、弾性部材34のうちのX軸方向(前後方向)に外側部材32と内側部材33を結合する部分の径方向の厚さである。このとき、T1>T2とされている。
【0030】
図7は、第1実施形態に係るトルクロッド1の振動伝達特性曲線を、従来のトルクロッドの振動伝達特性曲線とともに示すグラフである。なお、従来のトルクロッドは、第1実施形態に係るトルクロッド1と、小玉部の弾性部材のバネ定数がZ軸方向とX軸方向とで同じである点で相違しており、他の点では同様の構成である。
図7に示すように、第1実施形態に係るトルクロッド1の振動伝達特性のピーク値(極大値)P1は、従来のトルクロッドの振動伝達特性のピーク値P0と比較して1/3程度に低減していることがわかる。また、第1実施形態に係るトルクロッド1の剛体共振周波数H1は、従来のトルクロッドの剛体共振周波数H0よりも低い方へ僅かにずれていることがわかる。
【0031】
前記したように、本実施形態に係るトルクロッド1は、ロッド本体10と、小玉部30と、大玉部50とを備えている。小玉部30は、ロッド本体10の長手方向であるX軸方向の一端部に設けられ、X軸方向に直交するY軸方向に沿う第1中心軸31を有する。大玉部50は、ロッド本体10のX軸方向の他端部に設けられ、小玉部30よりも大きい。小玉部30は、ロッド本体10に連設された筒状の外側部材32と、外側部材32の中央部に配置された内側部材33と、外側部材32と内側部材33を弾性的に結合する弾性部材34とを備えている。そして、小玉部30の弾性部材34は、X軸方向およびY軸方向に直交するZ軸方向のバネ定数がX軸方向のバネ定数よりも小さい。
【0032】
トルクロッド1は、車両搭載時にはZ軸方向が上下方向となるように設置される。そして、小玉部30の内側部材33にZ軸方向に相当する上下方向の振動が入力した場合、弾性部材34のZ軸方向のバネ定数が小さくなっているため、上下方向の振動を小玉部30で効率よく吸収できる。これにより、振動伝達特性のピーク値が低減される(図7参照)。また、剛体共振周波数が低い方へずれるため、車体側における感度の高い周波数域での振動伝達特性が下がる(図7参照)。さらに、上下方向の振動が小玉部30から大玉部50へ伝達される際、小玉部30の弾性部材34が第1中心軸31のまわりで捩じられる。この際、結果的に弾性部材34の捩じりバネ定数も小さくなっているため、振動伝達特性が低減される。これにより、室内音レベルが低減されるとともに、乗り心地が向上する。
【0033】
このように本実施形態では、主に大玉部50の構造に着目する従来の方法とは異なり、小玉部30の構造に着目することで、振動伝達特性の低減を図ることができる。
すなわち、本実施形態によれば、重量を増やすことなく従来とは異なる観点で振動伝達特性を低くできるトルクロッド1を提供することができる。
【0034】
また、本実施形態では、弾性部材34のうちの、外側部材32と内側部材33とをZ軸方向に結合する部分の第1中心軸31方向の長さL1は、外側部材32と内側部材33とをX軸方向に結合する部分の第1中心軸31方向の長さL2よりも小さい。
この構成では、弾性部材34のうちの、外側部材32と内側部材33とをZ軸方向に結合する部分の断面積が、外側部材32と内側部材33とをX軸方向に結合する部分の断面積よりも小さくなる。したがって、弾性部材34においてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【0035】
また、本実施形態では、弾性部材34は、Z軸方向における内側部材33の径方向外側に、Y軸方向に凹陥して形成されたすぐり部35を有している。
この構成では、すぐり部35によって、弾性部材34のうちの、外側部材32と内側部材33とをZ軸方向に結合する部分の断面積が、外側部材32と内側部材33とをX軸方向に結合する部分の断面積よりも小さくなる。したがって、容易な手段により、弾性部材34においてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【0036】
また、本実施形態では、弾性部材34のうちの、Z軸方向に外側部材32と内側部材33を結合する部分の径方向の厚さT1は、X軸方向に外側部材32と内側部材33を結合する部分の径方向の厚さT2よりも大きい。
この構成では、弾性部材34のうちの、外側部材32と内側部材33とをZ軸方向に結合する部分の結合方向の長さが、外側部材32と内側部材33とをX軸方向に結合する部分の結合方向の長さよりも大きくなる。したがって、弾性部材34においてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【0037】
参考例
次に、図8図11を参照して、本発明の参考例に係るトルクロッド1aについて説明する。以下、本発明の参考例について、第1実施形態と相違する点を主に説明し、共通する構成要素や同様な構成要素については説明を適宜省略する。
図8は、参考例に係るトルクロッド1aの要部側面図である。図9は、図8のIX-IX線断面図である。図10は、図8のX-X線断面図である。図11は、図9のXI-XI線断面図である。
【0038】
図8図11に示すように、トルクロッド1aは、ロッド本体10の前端部に設けられた第1連結部としての小玉部30aを備えている。小玉部30aは、外側部材32aと、内側部材33と、弾性部材34aとを備えている。
【0039】
参考例では、弾性部材34aは、Z軸方向(上下方向)における内側部材33の径方向外側に、Y軸方向(左右方向)に貫通して形成されたすぐり部35aを有している。すぐり部35aは、ここでは貫通空間を意味している。すぐり部35aは、弾性部材34の上下の端部にそれぞれ形成されていることが望ましい。
【0040】
このような参考例によれば、Y軸方向(左右方向)に貫通するすぐり部35aによって、弾性部材34aのうちの、Z軸方向に外側部材32aと内側部材33を結合する部分の断面積が0(ゼロ)となる。つまり、弾性部材34aのうちの、Z軸方向に外側部材32aと内側部材33を結合する部分の断面積が、X軸方向に外側部材32aと内側部材33を結合する部分の断面積よりも小さくなる。したがって、容易な手段により、弾性部材34aにおいてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性がより低減される。
【0041】
(第3実施形態)
次に、図12図15を参照して、本発明の第3実施形態に係るトルクロッド1bについて説明する。以下、本発明の第3実施形態について、第1実施形態と相違する点を主に説明し、共通する構成要素や同様な構成要素については説明を適宜省略する。
図12は、第3実施形態に係るトルクロッド1bの要部側面図である。図13は、図12のXIII-XIII線断面図である。図14は、図12のXIV-XIV線断面図である。図15は、図13のXV-XV線断面図である。
【0042】
図12図15に示すように、トルクロッド1bは、ロッド本体10の前端部に設けられた第1連結部としての小玉部30bを備えている。小玉部30bは、外側部材32bと、内側部材33と、弾性部材34bとを備えている。
【0043】
第3実施形態では、弾性部材34bは、第1実施形態のすぐり部35を有していない。一方、弾性部材34bのうちの、Z軸方向に外側部材32と内側部材33を結合する部分の径方向の厚さT1は、X軸方向に外側部材32と内側部材33を結合する部分の径方向の厚さT2よりも大きい。この点は、第1実施形態と同様である。具体的には、図15の断面図において、外側部材32bの内周面は、上下方向の径が前後方向の径よりも大きい長円形または楕円形を呈している。
【0044】
このような第3実施形態によれば、第1実施形態のすぐり部35による効果は得られないものの、弾性部材34bにおいてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【0045】
(第4実施形態)
次に、図16図19を参照して、本発明の第4実施形態に係るトルクロッド1cについて説明する。以下、本発明の第4実施形態について、第3実施形態と相違する点を主に説明し、共通する構成要素や同様な構成要素については説明を適宜省略する。
図16は、第4実施形態に係るトルクロッド1cの要部側面図である。図17は、図16のXVII-XVII線断面図である。図18は、図16のXVIII-XVIII線断面図である。図19は、図17のXIX-XIX線断面図である。
【0046】
図16図19に示すように、トルクロッド1cは、ロッド本体10の前端部に設けられた第1連結部としての小玉部30cを備えている。小玉部30cは、外側部材32cと、内側部材33cと、弾性部材34cとを備えている。
【0047】
第4実施形態では、内側部材33cは、Z軸方向(上下方向)における該内側部材33cの径方向外側の外周面36に、表面が外周面36から径方向内側に入り込んで形成された凹状部37を有している。凹状部37は、内側部材33cの上下の端部にそれぞれ形成されていることが望ましい(図17図19参照)。
【0048】
この構成では、弾性部材34cが内側部材33cの凹状部37の底面と外側部材32cの内面との間に介在することになる。結果的に、弾性部材34bのうちの、外側部材32と内側部材33とをZ軸方向に結合する部分の径方向の厚さT1は、外側部材32と内側部材33とをX軸方向に結合する部分の径方向の厚さT2よりも大きくなる。つまり、弾性部材34cのうちの、外側部材32cと内側部材33cとをZ軸方向に結合する部分の結合方向の長さが、外側部材32cと内側部材33cとをX軸方向に結合する部分の結合方向の長さよりも大きくなる。
【0049】
このような第4実施形態によれば、容易な手段により、弾性部材34bにおいてZ軸方向のバネ定数をX軸方向のバネ定数よりも小さくできる。これにより、振動伝達特性が低減される。
【0050】
なお、図19の断面図において、外側部材32cの内周面が円形を呈していてもよく、この場合でも、凹状部37の形成によって、T1>T2となる。ただし、外側部材32cの内周面は、第3実施形態と同様に上下方向の径が前後方向の径よりも大きい長円形または楕円形を呈している方が、凹状部37の形成と相俟って、T1をT2よりもさらに大きくできる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。また、前記した各実施形態の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0052】
例えば、外側部材32,52およびロッド本体10は、前記実施形態では樹脂から形成されているが、これに限定されるものではなく、例えばアルミニウム合金等の軽金属材料から形成されていてもよい。
【0053】
また、内側部材33は、前記実施形態では円筒状を呈しているが、これに限定されるものではない。内側部材33は、図示しないエンジン等の原動機に連結できる構造であればよく、例えば、楕円筒状、角筒状等の異形筒状であってもよく、さらには、中実棒状であってもよい。
【0054】
また、大玉部50の第2中心軸51は、前記実施形態ではロッド本体10の長手方向から見て小玉部30,30a~30cの第1中心軸31に対して垂直に設定されているが、これに限定されるものではない。大玉部50の第2中心軸51と、小玉部30,30a~30cの第1中心軸31とが同じ方向であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,1a~1c トルクロッド
10 ロッド本体
30,30a~30c 小玉部(第1連結部)
31 第1中心軸
32,32a~32c 外側部材
33,33c 内側部材
34,34a~34c 弾性部材
35,35a すぐり部
36 外周面
37 凹状部
50 大玉部(第2連結部)
51 第2中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19