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  • 特許-金型寿命センサ 図1
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  • 特許-金型寿命センサ 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】金型寿命センサ
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/02 20060101AFI20240725BHJP
   B21D 37/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B21J13/02 Z
B21D37/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020164119
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045856
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】392017222
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 信彦
(72)【発明者】
【氏名】森 和男
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134682(JP,A)
【文献】実公昭56-014913(JP,Y2)
【文献】特開昭62-072450(JP,A)
【文献】実開平04-080699(JP,U)
【文献】特開昭62-072459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236529(US,A1)
【文献】特開2020-140605(JP,A)
【文献】実開昭57-065721(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 13/02
B21D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属プレス成形に使用する金型の空洞部周囲に形成され、不導体部により保護された導体バンド部と、前記導体バンド部の両端部から引き出された導線と、この導線に接続された電気特性計測手段とからなることを特徴とする金型寿命センサ。
【請求項2】
前記導体バンド部が、前記導線の引き出し部を互いにずらして複数配置されていることを特徴とする請求項1記載の金型寿命センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造・絞り・打抜き等のプレス成形に使用する金型の寿命を検知できるセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料等を鍛造・絞り・打抜き等の加工により成形するための装置としてプレス機がある。これらのプレス機では、金属等を成形するために金型を使用する。例えば鍛造装置において金型の精度チェックや再研磨等の金型工具メンテナンスサイクルは、加工現場に蓄積された経験から決定されており、一般的には加工ショット数でメンテナンス時期を管理することが多い。加工負荷の高い鍛造加工では、割れやチッピングなどの工具破損が発生することがある。破損のタイミングは数ショットから数十万ショットまで様々である。1つのダイセットに複数のプレス工程が含まれる順送金型において工具破損が発生し、そのまま加工が継続されてしまった場合、他の工程への影響が大きいため、工具破損を検知したら瞬時に加工を停止する必要がある。実際に工具がどれだけの耐久性を有するのか、破損までの寿命を予測することが困難であり、簡便な手法で寿命を予測或いは検知できる方法の開発が望まれている。
【0003】
例えば特許文献1においては、金型に対する攻撃的要素である機械的負荷を算出する機械的負荷演算手段と、金型に対する強度劣化要素である繰り返し加えられる高温による熱的劣化強度を算出する熱的劣化強度演算手段と、前記算出された機械的負荷と前記算出された熱的劣化強度の関数である摩耗量算出式を演算して予測摩耗量を算出する摩耗量演算手段を有することを特徴とする金型摩耗量予測装置が示されている。この装置では複雑な演算を行なうためコンピュータが必要となり、高価となるという問題点がある。
【0004】
また特許文献2には、寿命管理本体と、該本体に着脱可能に取り付けられ圧造成形機における圧造金型、ダイセット、圧造治工具等の圧造用部品の圧造数を表示する圧造数表示器とからなり、寿命管理本体は上記圧造用部品の名称とその予測命数とを明記した表示板と、圧造用部品の予測命数に対応して設けられる圧造数表示器の装着部と、圧造成形機の圧造動作時、その圧造動作検出信号を受信する受信回路とを備える一方、圧造数表示器は圧造数を表示する圧造数表示部と、寿命管理本体の装着部への取付手段と、圧造数表示器の寿命管理本体への装着により上記受信回路に接続され、受信回路への圧造動作検出信号の入力により上記表示部に自動的に圧造数を加算入力するカウント回路と、圧造数表示器を寿命管理本体から取り外し圧造金型、ダイセット、圧造治工具等の圧造用部品に着脱可能に取り付ける取付手段とを備えていることを特徴とする圧造用部品の寿命管理装置が開示されている。この装置では構造が複雑であるばかりか、基本的に圧造数のカウントにより金型寿命を管理するので、鍛造装置のように金型寿命が必ずしもショット数により予測できない場合は、使用が困難であるという問題点がある。
【文献】
【0005】
【文献】特開2002-321032号公報
【文献】実用新案登録3137672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の問題点に鑑みて、簡単なセンサを金型に装着することにより、金型が破損した場合に単純な電気的情報で確実に検知できる金型寿命センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明による金型寿命センサは、金属プレス成形に使用する金型の空洞部周囲に形成され、不導体部により保護された導体バンド部と、前記導体バンド部の両端部から引き出された導線と、この導線に接続された電気特性計測手段とからなることを特徴とする。
【0008】
前記導体バンド部、前記導線の引き出し部を互いにずらして複数配置されていること好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による金型寿命センサでは、金型の空洞部周囲に金型本体とは絶縁された導体バンド部を形成し、この導体バンド部の抵抗値など電気特性値を測定することにより、金型が破損した場合に導体バンドが切断され、あるいは損傷を受けて特性値が変化することによって、金型の破損を検知することができる。導体バンド部は導線引き出しのため両端部は若干の距離が必要となる。従って導体バンド部が単体の場合は、万が一この部分で金型が破損すると検知できない恐れがある。そこで、空洞部周囲全体をカバーするように一筆書き状に一部を重複して導体バンドを形成することも可能であり、導体バンド部の引き出し部を少しずらして複数配置することも可能である。これにより、金型空洞部周囲のどの部位で破損が起こっても検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例
【0010】
以下、実施例に基づいて本発明の好適な実施態様について説明する。図1に本発明による鍛造加工用金型の実施例の模式断面図を示した。(a)は加工前、(b)は加工時の模式図である。(a)においては、バッキングプレート30の上にダイプレート11が配置され、ダイプレート11の中央部には鍛造加工の形状にくり抜かれた空洞部12を有するダイ10がはめ込まれている。このダイ10の側面周囲にほぼ1周にわたりセンサ部20を形成してある。空洞部12内の底部には、カウンタ31が配置され、被加工部材40はカウンタ31の上に置かれる。空洞部12上方にはパンチ1が配置される。(b)は、パンチ1が下降した際の状況を示している。パンチ1がダイ10の空洞部12内に下降することにより、パンチ1とダイ10との間に形成されたクリアランスに沿って被加工部材40が成形される。パンチ1は下死点まで下降した後、再び上昇する。その際、カウンタ31も遅れて上昇し、成形した被加工部材40を空洞部12から排出する。
【0011】
センサ部20を備えたダイ10の側面断面図を図2に示した。不導体保護層22により周囲を囲まれた導体バンド21からなるセンサ部20がダイ10の側面に埋め込まれている。図1及び図2には示してないが、導体バンド21はダイ10の側面ほぼ1周にわたって形成されており、導体バンド21の両端部から導線を引き出して電気抵抗計測手段に接続されている。ダイ10は一般的に超硬合金やハイス鋼で製作されることが多く、これらは導体であるため、導体バンド21は工具本体と絶縁するために不導体保護層22を設けてある。
【0012】
鍛造加工中にダイ10が破損した場合、導体バンド12が切断されるため、電気特性値が変化してダイの破損を検知することができる。
【0013】
図3は、絞り加工用の金型に本発明による金型寿命センサを適用した実施例を示す。(a)は加工前、(b)は加工時の模式図である。基本的な部品の構成は図1の鍛造加工の場合と同じであるが、絞り加工の場合カウンタ31が加工前にダイ10表面と同一面に配置される。被加工部材40はダイ10の表面上に置かれる。この加工では、パンチ1が下降し被加工部材40の表面に接触した後は、成形される被加工部材40を支える形でカウンタ31も下降する。パンチ1とダイ10との間に形成されたクリアランスに沿って被加工部材40が成形される点は、鍛造加工と同様である。
【0014】
図4は、打抜き加工用の金型に本発明による金型寿命センサを適用した実施例を示す。(a)は加工前、(b)は加工時の模式図である。基本的な部品の構成は図3に示した絞り加工の場合と同じであり、被加工部材40はダイ10の表面上に置かれる。異なる点は、ダイ10から連続するバッキングプレート30にも空洞部32が設けられており、カウンタ31が存在しないことである。パンチ1が下降しダイ10の空洞部12に侵入する際に、被加工部材40を切り取りそのまま空洞部12内に押し込む。パンチ1が上昇した後、被加工部材40は搬送され新たな表面がダイ10の上に置かれる。この動作の繰り返しにより、連続的な打抜きが行なわれる。
【0015】
上記実施例に用いたダイプレート11とダイ10の斜視図を図5に示した。ここに示したセンサ部20の形成方法について説明する。図6にその過程を示した。▲1▼ダイ10の側面周囲に、研削などにより溝を形成する。溝の幅は2mm程度とし、溝の壁面は45度程度の斜面とする。▲2▼溶射により溝内に、まず不導体層を形成し、続いて導体層を形成する。それぞれの層の厚さは50~100μmとする。▲3▼研削により、溝の表面より少し下がった部分まで導体層と不導体層を除去する。▲4▼再び溶射により、溝内に不導体層を形成する。▲5▼最後に、研削などにより溝の表面を工具本体の表面と同一となるよう不導体層の一部を除去する。不導体層としては、セラミクスなどが使用できる。
【0016】
上記実施例においては、センサ部は単一として説明したが、導体バンドから導線を引き出すため、センサ部の両端が少し離れている。従って、工具の破損がこの部分で起こった場合には検出できない可能性がある。これを解決するためには、空洞部周囲全体をカバーするように一筆書き状に一部を重複して導体バンドを形成することが可能であり、導線引き出し部を少しずらせた上でセンサ部を2列配置することもできる。これらの工夫により、工具の周囲どの部分で破損が生じても検出できるようになる。また、上記実施例ではセンサ部を金型側面に配置したが、空洞部の周囲であればその位置は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上述べたように、本発明による金型寿命センサでは、金型側面周囲にほぼ1周にわたり金型本体とは絶縁された導体バンド部を形成し、この導体バンド部の電気特性値を測定することにより、金型が破損した場合に導体バンドが切断され、あるいは損傷を受けて特性値が変化することによって、金型の破損を検知することができる。導体バンド部は導線引き出しのため両端部は若干の距離が必要となる。従って導体バンド部が単体の場合は、万が一この部分で金型が破損すると検知できない恐れがある。そこで、導体バンド部を少しずらして複数配置することにより、金型のどの部位で破損が起こっても検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による鍛造金型の実施例を示す模式断面図である。
図2図1に示した鍛造金型のダイに設けたセンサの細部を示す断面図である。
図3】本発明による絞り金型の実施例を示す模式断面図である。
図4】本発明による打抜き金型の実施例を示す模式断面図である。
図5】本発明によるセンサを設けた金型を示す斜視図である。
図6】本発明による金型のセンサ製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 パンチ
10 ダイ
11 ダイプレート
12 空洞部
20 センサ部
21 導体バンド
22 不導体保護層
30 バッキングプレート
31 カウンタ
40 被加工部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6