(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】情報入力装置、情報入力方法、プログラム、及びグループ分割データ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0482 20130101AFI20240725BHJP
G06F 3/023 20060101ALI20240725BHJP
G09B 21/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
G06F3/0482
G06F3/023 460
G09B21/00 H
(21)【出願番号】P 2020173358
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】中沢 信明
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-286768(JP,A)
【文献】特開平01-243107(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169010(WO,A1)
【文献】特開2003-196010(JP,A)
【文献】特開2005-149252(JP,A)
【文献】米国特許第08533621(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0482
G06F 3/023
G09B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択肢を表示する表示部と、
利用者によるスイッチの操作を受け付ける受付部と、
選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量が大きくなるように、
文字盤の上位階層の文字グループが下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されているグループ分割情報を取得する取得部と、
前記グループ分割情報に基づいて上位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させて、利用者からの選択を受け付け、前記スイッチの押下により1つの文字グループが選択肢として選択されると、前記グループ分割情報に基づいて選択された文字グループの下位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させるように制御する制御部と、
を
備え、
前記グループ分割情報では、分割数毎の分割後の複数の文字又は文字グループの選択確率の目標値に基づいて、前記下位階層の文字又は文字グループの選択確率が前記目標値に近づくように、前記上位階層の文字グループが前記下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されており、前記選択確率の目標値として、選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量を最大化する目標値が設定されている、
情報入力装置。
【請求項2】
前記利用者の作業負担が、選択肢の選択に要する時間である、請求項1に記載の情報入力装置。
【請求項3】
前記利用者の作業負担が、選択肢の選択に要する時間及びスイッチの押下回数である、請求項1に記載の情報入力装置。
【請求項4】
前記グループ分割情報では、前記下位階層の文字グループに含まれる複数の文字が文字盤上で連続する区画となるように、前記上位階層の文字グループが前記下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の情報入力装置。
【請求項5】
前記グループ分割情報は、文字盤の全部の文字を含む文字グループを根ノード、各文字を葉ノードとし、前記根ノードと前記葉ノードとの間に複数の中間ノードを有するツリー構造で表される、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の情報入力装置。
【請求項6】
選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量が大きくなるように、
文字盤の上位階層の文字グループが下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されているグループ分割情報を取得し、
前記グループ分割情報に基づいて上位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として表示部に表示させて、利用者からの選択を受け付け、
スイッチの押下により1つの文字グループが選択肢として選択されると、前記グループ分割情報に基づいて選択された文字グループの下位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させて、
1文字が選択されるまで、選択肢の表示と選択の受け付けとを繰り返
し、
前記グループ分割情報では、分割数毎の分割後の複数の文字又は文字グループの選択確率の目標値に基づいて、前記下位階層の文字又は文字グループの選択確率が前記目標値に近づくように、前記上位階層の文字グループが前記下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されており、前記選択確率の目標値として、選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量を最大化する目標値が設定されている、
情報入力方法。
【請求項7】
コンピュータを、
選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量が大きくなるように、
文字盤の上位階層の文字グループが下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されているグループ分割情報を取得する取得部、
前記グループ分割情報に基づいて上位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として表示部に表示させて、利用者からの選択を受け付け、スイッチの押下により1つの文字グループが選択肢として選択されると、前記グループ分割情報に基づいて選択された文字グループの下位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させる制御部、
として機能させるためのプログラム
であって、
前記グループ分割情報では、分割数毎の分割後の複数の文字又は文字グループの選択確率の目標値に基づいて、前記下位階層の文字又は文字グループの選択確率が前記目標値に近づくように、前記上位階層の文字グループが前記下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されており、前記選択確率の目標値として、選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量を最大化する目標値が設定されている、
プログラム。
【請求項8】
選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量が大きくなるように、文字盤の上位階層の文字グループが下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されているグループ分割情報を生成するためのプログラムであって、
コンピュータを、
分割数毎の分割後の複数の文字又は文字グループの選択確率の目標値と、各文字の出現確率とを取得する取得部、
上位階層の文字グループを予め定めた初期分割数で下位階層の複数の文字又は文字グループに分割する第1グループ分割部、
分割後の下位階層の文字又は文字グループの選択確率と前記目標値との差が所定値以上の場合には、分割数を変更して、上位階層の文字グループを変更後の分割数で下位階層の複数の文字又は文字グループに分割する第2グループ分割部、
として機能させるためのプログラムであって、
前記選択確率の目標値として、選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量を最大化する目標値が設定されている、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報入力装置、情報入力方法、プログラム、及びグループ分割データに関する。
【背景技術】
【0002】
ALS患者など発話機能や身体の運動機能が阻害されている者が、例えば指の運動など残された運動機能を用いてスイッチを操作することで、文字などの情報を入力する装置が種々開発されている(特許文献1)。その代表的な例としては、日立ケーイーシステムズが発売している「伝の心(登録商標)」と、フリーソフトである「ハーティー・ラダー」がある。
【0003】
「伝の心(登録商標)」にはディスプレイと1つのスイッチが付いており、利用者が身体的に動かせる部位にスイッチを置く。ディスプレイには平仮名が記された文字盤が表示され、最初は文字盤の表の各列が順番に色が変わって行く。そしてある列の色が変化している状態の時にスイッチを押すと、その列が選択される。なお、色変化が最後の列まで行った場合は巡回的に最初の列に戻る。列が選択された次の状態では、選択された列の中の各文字の区画が順番に色が変わり、目的の文字の部分の色が変わっている状態でスイッチを押すとその文字が入力される。すなわち最初のスイッチの押下で文字盤の表の列を選択し、次の押下で選択された列のなかの1つの文字を選択することで1文字が入力される。これを繰り返すことで文章を入力する。
【0004】
「ハーティー・ラダー」にはいくつがの入力モードがあるが、利用者が2つのスイッチを押し分けることができる場合、文字を2つのグループ分け、その内の1つを選択することを繰り返すことで、文字を特定する方法がある。まず、最初の状態では文字盤の表の左半分と右半分とがグループ化されており、一方のスイッチを押すと左、他方のスイッチを押すと右のグループが選択される。左のグループを選択すると、左のグループの中でまた2つのグループに分割される。次は2つのスイッチのどちらを押すかで、今度は新たに分割されたグループを選択する。これを繰り返して最終的に1文字を特定することで入力を行う。
【0005】
スイッチ操作により文字群の選択を繰り返して1文字を入力する文字入力方法において、アルファベット順に並んだ文字列を、文字の出現確率を用いて2分割することで、文字入力のためのスイッチの操作回数を低減する手法が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】小山智史、「最適アルファベット順符号を用いたコミュニケーションエイドの文字選択法」、信学技報WIT2018-81,125-130,2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スイッチ操作により文字群の選択を繰り返して1文字を入力する文字入力装置及び方法では、一定時間内にできるだけ多くの文字を、利用者の負担ができるだけ少ない形で入力できることが望まれる。しかしながら、従来は、スイッチの操作回数の低減のみが重視され、利用者にかかるその他の負担、特に入力にかかる時間は考慮されてこなかった。
【0009】
本発明の目的は、スイッチ操作により文字群の選択を繰り返して情報を入力する装置において、入力に要する時間を含む利用者の負担をコストとした場合に、少ないコストで入力される情報量の平均(エントロピー)を最大化することができる、情報入力装置、情報入力方法、プログラム、及びデータ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の一態様の情報入力装置は、選択肢を表示する表示部と、利用者によるスイッチの操作を受け付ける受付部と、選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量が大きくなるように、上位階層の文字グループが下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されているグループ分割情報を取得する取得部と、前記グループ分割情報に基づいて上位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させて、利用者からの選択を受け付け、前記スイッチの押下により1つの文字グループが選択肢として選択されると、前記グループ分割情報に基づいて選択された文字グループの下位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させるように制御する制御部と、を備えている。
【0011】
本開示の他の一態様の情報入力方法は、選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量が大きくなるように、上位階層の文字グループが下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されているグループ分割情報を取得し、前記グループ分割情報に基づいて上位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として表示部に表示させて、利用者からの選択を受け付け、スイッチの押下により1つの文字グループが選択肢として選択されると、前記グループ分割情報に基づいて選択された文字グループの下位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させて、1文字が選択されるまで、選択肢の表示と選択の受け付けとを繰り返す。
【0012】
本開示の他の一態様のプログラムは、コンピュータを、選択肢を選択する利用者の作業負担あたりの入力情報量が大きくなるように、上位階層の文字グループが下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されているグループ分割情報を取得する取得部、前記グループ分割情報に基づいて上位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として表示部に表示させて、利用者からの選択を受け付け、スイッチの押下により1つの文字グループが選択肢として選択されると、前記グループ分割情報に基づいて選択された文字グループの下位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させる制御部、として機能させるためのプログラムである。
【0013】
本開示のさらに他の一態様のプログラムは、コンピュータを、分割数毎の分割後の複数の文字又は文字グループの選択確率の目標値と、各文字の出現確率とを取得する取得部、上位階層の文字グループを予め定めた初期分割数で下位階層の複数の文字又は文字グループに分割する第1グループ分割部、分割後の下位階層の文字又は文字グループの選択確率と前記目標値との差が所定値以上の場合には、分割数を変更して、上位階層の文字グループを変更後の分割数で下位階層の複数の文字又は文字グループに分割する第2グループ分割部、として機能させるためのプログラムである。
【0014】
本開示の他の一態様のグループ分割データは、上位階層の文字グループが下位階層の複数の文字又は文字グループに分割されて、文字盤の全部の文字を含む文字グループを根ノード、各文字を葉ノードとし、前記根ノードと前記葉ノードとの間に複数の中間ノードを有するツリー構造のグループ分割データであって、コンピュータの記憶部に記憶され、前記コンピュータが、前記根ノードから前記ツリー構造を辿ることにより、上位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として表示部に表示させて、利用者からの選択を受け付け、スイッチの押下により1つの文字グループが選択肢として選択されると、選択された文字グループの下位階層の複数の文字又は文字グループを選択肢として前記表示部に表示させ、前記葉ノードに到達するまで選択肢の表示と選択の受け付けとを繰り返す処理に用いられるグループ分割データである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スイッチ操作により文字群の選択を繰り返して情報を入力する装置において、入力に要する時間を含む利用者の負担をコストとした場合に、少ないコストで入力される情報量の平均を最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る情報入力装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】(A)~(D)はグループ選択方法の一例(単純選択)を説明するための模式図である。
【
図3】(A)~(D)はグループ選択方法の他の一例(時間巡回選択)を説明するための模式図である。
【
図4】(A)及び(B)は本発明の第1の実施の形態に係る情報入力装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】表3のグループ分割情報をツリー構造で表示する図である。
【
図6】(A)~(D)は文字が選択される様子を説明するための模式図である。
【
図7】文字入力プログラムの処理手順の一例を表すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係る情報入力装置の記憶部に記憶されたデータの一例を示すブロック図である。
【
図9】データ構造生成プログラムの処理手順の一例を表すフローチャートである。
【
図10】利用者に表示する設定画面の一例を示す模式図である。
【
図11】グループ分割処理の手順の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
<情報入力装置の概略構成>
まず、情報入力装置の概略構成について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る情報入力装置の構成の一例を示す概略図である。情報入力装置10は、情報処理装置12、文字盤を選択肢となる文字グループと共に表示するディスプレイ等の表示部14、及び少なくとも1つのスイッチ16Aを備えている。後述する通り、必要なスイッチ16Aの個数はグループ選択方法によって異なる。
【0019】
(単純選択)
一般に情報の入力とは、複数の選択肢の中から1つを指定することである。例として平仮名を入力する場合の考えると、「あ」から「ん」まで46種類ある文字の可能性の中から1種類を選ぶことが1文字の入力に相当する。スイッチが選択肢の数、すなわち文字の入力では文字の種類と同じ数だけ用意できれば、スイッチ1回の押下で1文字が入力できる。すなわち平仮名の場合、46個のスイッチを用意できればスイッチ1回の押下で一文字が入力できる。これは一般のキーボードで行われている方法である。
【0020】
スイッチの数が文字の種類より少ない場合、
図2(A)~(D)に示すように、以下の方法で入力が可能になる。図示した例では、従来の技術として紹介したハーティー・ラダーと同様、スイッチ数が2個の場合である。
【0021】
まず文字をスイッチ数と同じ個数のグループに分ける(
図2(A))。するとスイッチ1回の押下でそのグループの1つが選択できる。次に選択されたグループの中の文字を更にスイッチ数と同じ個数のグループに分け、次のスイッチの押下で新しいグループの1つを選択する(
図2(B)及び(C))。これを繰り返すことにより最終的にはスイッチ数以下の文字の種類の選択になり、1文字を特定できる(
図2(D))。
【0022】
スイッチ数が2個の場合は2つのグループ、スイッチ数が3個の場合は3つのグループ、スイッチ数が4個の場合には4つのグループに分割する。スイッチの数が多ければそれだけ少ないスイッチの押下数で1文字を入力できる。以上述べた、選択肢の数のスイッチが用意され、文字グループの選択を繰り返すことで1文字を選択する方法を、ここでは「単純選択」と呼ぶことにする。
【0023】
(時間巡回選択)
単純選択が適用可能なスイッチ数の最小数は2個である。使用できるスイッチ16Aが1つしかない場合は、文字グループの選択に時間軸も利用することになる。すなわち従来の技術の「伝の心(登録商標)」と同様、
図3(A)~(D)に示すように、選択される文字のグループを時間的に巡回させ、目的のグループが選択された時にスイッチを押すことによってその選択を確定させる。
【0024】
まず、「あいうえお」の列から「わをん」の列まで10個の文字グループのうちの1つを選択する(
図3(A)及び(B))。次に、同じ方法で選択した列に含まれる文字の1つを選択する(
図3(C)及び(D))。このように、スイッチが1つしかなく、時間的に文字グループの選択を巡回させ、スイッチの押下でその選択を確定させる方法を、ここでは「時間巡回選択」と呼ぶことにする。
【0025】
図示した例では、最初は10グループに分割され、次に5グループ(文字)に分割されることは、時間巡回選択の適用に本質的な意味はなく、この選択方法は任意のグループ数の組み合わせで実行できる。例えば、「ハーティー・ラダー」の2グループの選択の繰り返しにも時間巡回選択は適用できる。
【0026】
<入力効率向上の原理>
次に、入力効率向上の原理について説明する。
情報理論では、情報量は、ある事象が起きたときにその事象がどれほど起こりにくいかを表す尺度と定義される。事象Aが起こる確率をP(A)とすると、事象Aが起きたときに受け取る情報量I(A)は、
と定義される。底a=2の場合は、情報量I(A)の単位はビットである。例えば、2つのものから1つを選ぶ確率は1/2で情報量I(A)は1ビットである。4つのものから1つを選ぶ確率は1/4で情報量I(A)は2ビットである。この情報量は、どれだけ情報が入力されたかを表す指標になる。
【0027】
入力効率の向上とは、利用者の作業負担に対して最大情報量が入力されるように設計を行うことである。まず、下記式(1)で表すように、入力効率Eを、コストC当たりの入力される情報量の平均(エントロピー)Hと定義する。コストCによって、入力に要する時間を含む利用者の作業負担を表現することができる。本開示で示す設計指針は、コストCを最小にして入力効率Eを最大化するものである。
【0028】
【0029】
(単純選択の場合)
単純選択の場合、スイッチの数をntとし、i番目のスイッチによって選択される文字グループの選択確率をpiとすれば、これらスイッチ1回の押下で入力される情報量の平均Htは、下記式(2)で表される。
【0030】
【0031】
一方、i番目のスイッチを押すのにかかるコスト、すなわちi番目の文字グループを選択するのにかかるコストをciとすると、コストの平均Cは、下記式(3)で表される。
【0032】
【0033】
本開示は、スイッチを押すコストciが各スイッチに依存する場合でも最適な設計が行えるという特徴を有する。例えばn=2の場合でスイッチ2がスイッチ1に対して2倍押しにくいと言った場合には、c1=1、c2=2とすれば良い。
【0034】
上記式(2)で表される情報量の平均Htと、上記式(3)で表されるコストの平均Cとから、入力効率Eを最大化する選択確率piを求める。そして、得られた選択確率piでグループ選択を行うことができるように、グループ分割を設計する。
【0035】
スイッチ間で押しやすさが異なれば、スイッチ間で文字グループを選択するのに要する時間も異なる。コストCを選択時間に比例した値に設定すれば、単純選択の場合にも時間の概念を組み込むことができる。これに対し、各スイッチの押しやすさが同等で、それらのコストciが全て同一に設定できる場合は、コストC=1となり、実質的にコストは考慮されない。
【0036】
なお、コストciが全て等しい場合は、例えば、小山智史、「最適アルファベット順符号を用いたコミュニケーションエイドの文字選択法」 信学技報,WIT2018-81,pp.125{130, 2019 年3 月に示されている従来の手法に帰着し、基本的にはハフマン符号を基礎とした手法で入力方式を設計できる。
【0037】
(時間巡回選択の場合)
時間巡回選択による場合、選択可能なグループ数をnとし、各グループが選択される選択確率をpiとすれば、スイッチ1回の押下で入力される情報量の平均Hjは、下記式(4)で表される。
【0038】
【0039】
一方、コストciはスイッチの押下により選択する文字のグループに対して定義されることになる。例えば文字グループを3つ設定して選択する場合、c1、c2、c3がそれぞれ1、2、3番の文字グループを選択するコストになる。時間巡回選択の場合は、グループの選択を時間的に移動させてスイッチの押下で確定させるので、どのグループを選択したかによってそれに要する時間が異なる。したがって、この場合にはコストciを、i番目の文字グループを選択するのに要する時間とすれば、入力時間を最小にする設計指針を達成できる。
【0040】
グループ選択の移動はグループ番号i(=1、・・・・、n) の順とし、選択が1つのグループに留まる時間はどのグループも一定として、その時間を時間単位に取る。そして選択を確定させるためにスイッチが押される時間は、平均的にそのグループが選択されている時間の中央だと仮定すると、選択を開始してからスイッチが押されるまでの平均的な時間は、下記式(5)で与えられるので、これをコストciとする。
【0041】
【0042】
コストの平均Cは、下記式(6)で表される。
【0043】
【0044】
したがって、入力効率Eは、下記式(7)で表される。下記式(7)から入力効率Eを最大化する選択確率piを求める。そして、得られた選択確率piでグループ選択を行うことができるように、グループ分割を設計する。
【0045】
【0046】
なお、上記ではコストciとして、単純選択の場合は各スイッチの押しやすさを採用し、時間巡回選択の場合は文字グループを選択するのに要する時間を採用したが、本開示の適用範囲はこれに限るものではない。本実施の形態では、コストは入力に要する時間を含む利用者の作業負担を表すものであればよい。
【0047】
例えば、文字グループを選択するのに要する時間と、スイッチの押下数の他の要素とを組み合わせてコストとしてもよい。入力する際の苦痛の度合い等の主観的な要素も、定量可能であれば考慮してもよい。グループiを選択するのにかかる時間をT、スイッチの押下回数をN、その選択動作を行うのに感じる身体的苦痛をPとするとコストciを、
ci=aT+bN+cP
とするのが一例である。ここでa、b、cはコストに関係する各要素をどの程度重視するかを表す係数である。この例以外にも様々な基準によって最も効率化したい量を決定し、それをコストciとすれば、本開示によって採用した基準に関して最も効率的な入力方法が構成できる。
【0048】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態では、平仮名の文字盤(
図2、
図3参照)を複数の文字グループに分割し、時間的に文字グループの選択を巡回させ、スイッチの押下でその選択を確定させる「時間巡回選択」を行い、文字入力を行う情報入力装置について説明する。
【0049】
(情報入力装置の電気的構成)
まず、情報入力装置の電気的構成について説明する。
図4(A)及び(B)は本発明の第1の実施の形態に係る情報入力装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4(A)に示すように、情報入力装置10は、情報処理装置12、表示部14、入力部16、通信部18、及び記憶部20を備えている。
【0050】
情報処理装置12は、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。即ち、情報処理装置12は、CPU12A、ROM12B、RAM12C、不揮発性のメモリ12D、及び入出力インターフェイス(I/O)12Eを備えている。CPU12A、ROM12B、RAM12C、メモリ12D、及びI/O12Eの各々は、バス12Fを介して互いに接続されている。CPU12Aは、ROM12B等の記憶装置からプログラムを読み出し、RAM12Cをワークエリアとして使用してプログラムを実行する。
【0051】
表示部14、入力部16、通信部18、及び記憶部20の各部は、情報処理装置12のI/O12Eに接続されている。情報処理装置12は、各部と情報の授受を行って、表示部14、入力部16、通信部18、及び記憶部20の各部を制御する。
【0052】
表示部14は、ディスプレイ等の表示装置を備え、利用者に各種情報を表示する。入力部16は、スイッチ16A(
図1参照)、マウス、キーボード等の入力装置を備え、利用者からの操作を受け付ける。通信部18は、有線又は無線の通信回線を介して外部装置と通信を行うためのインターフェイスである。
【0053】
記憶部20は、HDD等の記憶装置を備え、各種情報を記憶する。
図4(B)に示すように、本実施の形態では、記憶部20には、グループ分割情報22、文字入力プログラム24、及び表示画像データ26が予め記憶されている。各情報については、次に詳細に説明する。グループ分割情報22については、後述する表3を参照されたい。
【0054】
(グループ分割情報)
次に、グループ分割情報について説明する。
グループ分割情報は、上層の文字グループが選択された場合に、選択された文字グループを次にどのように分割して表示するか、すなわち、いくつのグループに分割するか、どのような文字を含むグループに分割するか、を定める情報である。
【0055】
グループ分割情報は、以下に説明する文字盤のレイアウト、グループ選択確率、及び文字出現確率から生成される。
【0056】
本実施の形態で使用する文字盤は、平仮名、半濁点、句読点などの他、一文字削除(削) とプログラムの終了(終) の合計60文字(区画) を持つ、単純な平仮名の文字盤である(
図2、
図3参照)。濁(゛)、半(゜)、削、終はそれぞれ濁音、半濁音、削除、終了の区画を意味する。なお、濁音及び半濁音の文字を入力するときには、まず通常の文字を入力しておいてから次に濁音、半濁音の区画を選択する。
【0057】
-入力効率を最大にするグループ分割-
平仮名の文字盤は、入力効率Eを最大にするように複数の文字グループに分割される。ここで、時間巡回選択の場合に、分割数nが2から5までの範囲で、上記式(7)で表される入力効率Eを最大にするグループ選択確率piとその時のEの値を下記表1に示す。
【0058】
【0059】
例えば、分割数n=4では、グループ1~4の4つのグループが、昇順で、選択可能に表示される。最初に表示されるグループ1の選択確率p1は0.6240、2番目に表示されるグループ2の選択確率p2は0.2440、3番目に表示されるグループ3の選択確率p3は0.0950、4番目に表示されるグループ4の選択確率p4は0.0370である。上層の文字グループをこの選択確率の複数の文字グループに分割し、時間巡回選択を行う場合に、入力効率Eは1.3586と最大となる。
【0060】
上記表1に示す値は、コンピュータによる数値演算によって求めたものである。上記表1に示す値を見るとnが大きいほど入力効率Eが大きくなることが分かる。一方、nが大きいと、番号が大きいグループの選択確率piが非常に小さくなり、それが1文字の選択確率よりも小さくなり得る。後述する通り、実際の設計では、グループの選択確率piがグループの実際の選択確率piより極端に小さくならない範囲の分割数nとし、そのようなグループ分割を順次組み合わせることで1文字の選択を実現する。
【0061】
上記表1は、上記式(5)及び式(6)のコストを採用した場合の一例であり、入力効率Eを最大にするグループ選択確率piは、コストに応じて変更される。
【0062】
-グループ選択確率-
各グループの選択確率piは、グループに含まれる文字の出現確率の和で表される。
下記表2は、平仮名の文字盤にある各文字の出現確率の一例を表す。各文字の出現確率は、既存の統計値に基づいて計算されたものである。ここでは、全60文字の出現確率の和を1としている。
【0063】
【0064】
60文字の各々に対して、上記表2に示すように文字番号が割り振られ、出現確率と文字盤上での位置とが示されている。文字盤上での位置は、左上の文字「あ」の位置を0行、0列としたときの、行及び列で表される位置である。例えば、文字「か」は、文字番号6番であり、その出現確率は0.0469978、その位置は1行目の0列目である。
【0065】
なお、表2の文字の出現確率は一例であり、利用者の文字の使用状況から文字の出現確率を求めてもよく、会話や手紙など文字入力の用途に応じて、文字の出現確率を変更してもよい。
【0066】
-グループ分割-
基本的には、上層の文字グループを、分割後の文字又は文字グループの選択確率piが、上記表1の値にできるだけ近づくように分割する。分割数nは、適宜変更することができる。分割数nは、大きい方が入力効率Eの値は大きいが、4又は3を基本とし、場合によっては2及び5を使用する。下記表3は、このようにして得られたグループ分割情報の一例を示す。
【0067】
【0068】
表3の見方を以下に説明する。各行の最初の整数が文字グループに付けられた番号である。最初の行を例に取ると、この数字は100であるから、この行は100番の文字グループに関する記述であることを示している。次の少数点数はその文字グループが選択される確率である。すなわち文字グループ100が選択される確率は0.0208である。
【0069】
さらにコロンの左に整数31、32、33があるが、これらの数字は文字グループ100が含む文字の番号である。ここでは文字番号が3つあるので、文字グループ100は3 文字を含むことが分かり、表2から実際の文字は「ま」、「み」、「む」であることが分かる。文字番号の次の少数点数は、それらの文字が選択される確率である。すなわち「ま」が選択される確率が0.0111、「み」が0.0067、「む」が0.0030である。またカッコの中の少数点数、すなわち0.536、0.321、0.143は文字グループ100が選択されたという条件下で「ま」、「み」、及び「む」が選択される確率(文字グループ100が選択された下での条件付き確率)である。
【0070】
文字グループに含まれる番号が100以上の整数である場合には、文字グループはさらに他の文字グループを含む。例えば、表3の2行目、文字グループ101は、文字グループ100、文字番号34の文字(「め」)、及び文字番号35の文字(「も」)で構成されていることを示している。文字グループを含む場合も、その右側に示した少数点数の意味は文字の場合と同じである。この例では、文字グループ100が選択される確率は0.0208であり、文字グループ101が選択された条件下で文字グループ100が選択される条件付き確率は0.487(=0.0208/0.0426)である。
【0071】
実際の設計では、全60文字から始めて、大きな文字グループへの分割から、小さな文字グループへの分割へと分割を進めていく。最終的にこれ以上分割できなくなるまで、即ち、1文字になるまでグループを分割していく。
図5は、全60文字を含む文字グループ125を根ノード、各文字1~60を葉ノードとして、グループ分割情報をツリー構造で表している。
【0072】
表3、
図5、及び
図6(A)~(D)を参照しながら、グループ分割情報が決定されていく手順を説明する。なお、以下では一部の文字グループが分割される手順を説明するが、
図5に示すように、すべての文字グループはこれ以上分割できなくなるまで分割される。
【0073】
まず、全60文字を含む文字グループ125を、文字グループ124、123、122、121に4分割する。この分割の際に、文字盤上で連続する区画となり、なおかつ分割された文字グループの選択確率が表1の確率にできるだけ近くなるように分割する。すなわち文字グループ124、123、122、121の選択確率が0.6240、0.2440、0.0950、0.0370にできるだけ近くなるように分割する。
【0074】
なお、例えば平仮名は五十音順というように、文字盤上で文字は予め定めた規則に従って配列されている。文字グループが文字盤上で連続する区画となるように分割するとは、例えば、「あいうえおかきくけこ」を「あいうえおかき」と「くけこ」に分割する等、文字の配列順を維持したままで複数の文字又は文字グループに分割することである。
【0075】
例えば、
図6(A)に示すように、全60文字を含む文字グループ125を、「あ」から「ほ」までの30文字を含むグループ124、「ま」から「ろ」までの15文字を含むグループ123、「わ」から「削」までの10文字を含むグループ122、「ゃ」から「終」までの5文字を含むグループ121に分割すると、文字グループ124、123、122、121の条件付き選択確率は、表3に示すように、0.635、0.236、0.092、0.037となり、ほぼ目標に近い形に分割されていることが分かる。
【0076】
同様に、得られた文字グループを、文字盤上で連続する区画となり、なおかつ分割された文字グループの選択確率が表1の確率にできるだけ近くなるようにさらに分割して行く。
【0077】
例えば、
図6(B)に示すように、文字グループ124を、「あ」から「そ」までの15文字を含むグループ120、「た」から「の」までの10文字を含むグループ119、「は」と「ひ」の2文字を含むグループ118、「ふ」と「へ」と「ほ」の3文字を含むグループ117に分割すると、文字グループ120、119、118、117の条件付き選択確率は、表3に示すように、0.571、0.343、0.054、0.032となる。
【0078】
また、
図6(C)に示すように、文字グループ120を、「あ」から「く」までの8文字を含むグループ110、「け」から「し」までの4文字を含むグループ109、「す」と「せ」の2文字を含むグループ108、文字番号15の「そ」に分割すると、文字グループ110、109、108、文字15の条件付き選択確率は、表3に示すように、0.616、0.273、0.082、0.029となる。
【0079】
また、
図6(D)に示すように、文字グループ110を、「あ」から「お」までの5文字を含むグループ104、文字番号6の「か」、文字番号7の「き」、文字番号8の「く」に分割すると、文字グループ104、文字6、文字7、文字8の条件付き選択確率は、表3に示すように、0.578、0.210、0.108、0.103となる。
【0080】
上記の通り、小さな文字グループの分割になるにしたがって、目標の選択確率に近づけることが難しくなる。
【0081】
(文字入力プログラム)
次に、文字入力プログラムについて説明する。
図7は文字入力プログラムの処理手順の一例を表すフローチャートである。文字入力プログラムは、利用者により文字入力の開始が指示されると、CPU12Aにより記憶部20から読み出されて実行される(
図4参照)。
【0082】
まず、ステップS100で、CPU12Aは、記憶部20から表3に示すグループ分割情報を取得する。CPU12Aは、グループ分割情報からツリー構造(
図5参照)を作成する。
【0083】
次に、ステップS102で、CPU12Aは、ツリー構造を参照し、根ノードの下位階層にある文字又は文字グループを選択肢として表示するように表示部14を制御する。記憶部20には、選択肢を表示するための画像データが予め記憶されている。CPU12Aは、ツリー構造内の位置に応じた画像データを記憶部20から読み出し、読み出した画像データに基づく画像を表示部14に表示させる。
【0084】
例えば、
図5に示すように、根ノードである文字グループ125には、文字グループ124、123、122、及び121という子ノードがある。
図6(A)に示すように、子ノードの各文字グループを太線で囲んで表示すると共に、現在選択可能なグループを着色する等して強調表示し、時間的に文字グループの選択を巡回させて表示する。網掛けや太枠は、赤、黄色等の目立つ色で色付けされていてもよい。
【0085】
次に、ステップS104で、CPU12Aは、利用者から選択を受け付けたか否かを判断する。選択を受け付けるまでステップS104の判断を繰り返し行い、選択を受け付けた場合はステップS106に進む。
【0086】
次に、ステップS106で、CPU12Aは、ツリー構造を参照し、選択されたグループの下位階層にある文字又は文字グループを選択肢として表示するように表示部14を制御する。上述した通り、CPU12Aは、ツリー構造内の位置に応じた画像データを記憶部20から読み出し、読み出した画像データに基づく画像を表示部14に表示させる。
【0087】
例えば、
図6(A)で文字グループ124(網掛け部)が選択されたとする。
図5に示すように、文字グループ124には、文字グループ120、119、118、及び117という子ノードがある。
図6(B)に示すように、子ノードの各文字グループを太枠で囲んで表示すると共に、時間的に文字グループの選択を巡回させて表示する。
【0088】
次に、ステップS108で、CPU12Aは、利用者から選択を受け付けたか否かを判断する。選択を受け付けるまでステップS108の判断を繰り返し行い、選択を受け付けた場合はステップS110に進む。
【0089】
次に、ステップS110で、CPU12Aは、葉ノードに到達したか否かを判断する。葉ノードに到達していない場合は、ステップS106に戻る。そして、ステップS106で、ツリー構造を参照し、選択されたグループの下位階層にある文字又は文字グループを選択肢として表示するように表示部14を制御する。
【0090】
例えば、
図6(B)で文字グループ120(網掛け部)が選択されたとする。
図5に示すように、文字グループ120には、文字グループ110、109、108と、文字15という子ノードがある。
図6(C)に示すように、子ノードの各文字グループ(又は文字)を太枠で囲んで表示すると共に、時間的に文字グループの選択を巡回させて表示する。
【0091】
一方、ステップS110で葉ノードに到達した場合、即ち、1文字を選択できた場合は、ステップS112に進む。例えば、
図6(D)で文字番号6の「か」(網掛け部)が選択されたとする。
図5に示すように、文字番号6は葉ノードであり、この選択により葉ノードに到達する。
【0092】
次に、ステップS112で、CPU12Aは、文字入力の終了が指示されたか否かを判断する。文字入力の終了が指示されていない場合は、次の文字を入力するためにステップS102に戻る。例えば、
図6(A)の選択肢を利用者に再度表示する。一方、文字入力の終了が指示されている場合は、ルーチンを終了する。
【0093】
第1の実施の形態によれば、文字入力に要する時間をコストとして定義し、そのコストあたりに入力される情報量を最大化するように設計された「グループ分割情報」を用いて、分割されたグループを選択肢として表示するので、単位時間あたりの入力文字数を最大化することができる。
【0094】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係る情報入力装置は、グループ分割情報及び画像データを都度生成する以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同じ構成部分については説明を省略する。
【0095】
まず、ハードウェア構成に相違点について説明する。
図8に示すように、第2の実施の形態に係る情報入力装置の記憶部20には、文字入力プログラム24、グループ分割情報生成プログラム28、複数のグループ選択確率30、及び複数の文字出現確率32が予め記憶されている。
【0096】
グループ選択確率30は、上記表1に示すように、分割数n毎に入力効率Eを最大にするグループ選択確率piをテーブルで規定するものである。コストの種類が変わると、入力効率Eを求める式が変わるので、コストの種類に応じて複数種類のテーブルが用意されている。本実施の形態では、コストが「時間」である場合と、コストが「時間+選択回数」である場合とに応じて、2種類のグループ選択確率30が用意されている。
【0097】
文字出現確率32は、上記表2に示すように、文字盤の全60文字の出現確率をテーブルで規定するものである。文字出現確率は、作成する文章の種類に応じて変化するので、作成する文章の種類に応じて複数種類のテーブルが用意されている。本実施の形態では、用途が「会話」である場合と、用途が「手紙」である場合とに応じて、2種類の文字出現確率32が用意されている。
【0098】
第2の実施の形態では、情報入力装置により、文字盤のレイアウト、グループ選択確率30、及び文字出現確率32から、表3、
図5に示すようなグループ分割情報が生成される。また、生成したグループ分割情報を用いて、選択肢を表示するための画像データが生成される。
【0099】
(グループ分割情報生成プログラム)
次に、グループ分割情報生成プログラムについて説明する。
図9はグループ分割情報生成プログラムの処理手順の一例を表すフローチャートである。グループ分割情報生成プログラムは、利用者により文字入力の開始が指示されると、CPU12Aにより記憶部20から読み出されて実行される(
図4参照)。
【0100】
例えば、グループ分割情報生成プログラムの開始前には、表示部14に設定画面が表示されており、用途やコストの種類について利用者からの設定を受け付ける。
【0101】
図10は利用者に表示する設定画面の一例を示す模式図である。設定画面40は、文字入力の用途(例えば、会話、手紙)を選択する選択部42、コストの種類(例えば、時間、時間と選択回数)を選択する選択部44、開始を指示するボタン46、及びキャンセルを指示するボタン48などが含まれている。
【0102】
利用者は、用途及びコストの種類を選択し、開始ボタン46を押下して、文字入力の開始を指示する。なお、文字入力と同様に、時間的に選択肢を巡回させ、スイッチの押下でその選択を確定させてもよい。また、設定項目は一例であり、文字盤レイアウト等の他の項目を設定可能としてもよい。
【0103】
まず、ステップS200で、CPU12Aは、利用者が入力した設定を取得する。次に、ステップS202で、CPU12Aは、設定に応じたグループ選択確率及び文字出現確率を取得する。
【0104】
次に、ステップS204で、CPU12Aは、第1階層のグループ分割処理を実行する。例えば、
図5に示す例では、全60文字を含む文字グループ125を、複数の文字又は文字グループに分割する。
【0105】
次に、ステップS206で、CPU12Aは、次の階層のグループ分割処理を実行する。例えば、
図5に示す例では、文字グループ124、123、122、121を、各々複数の文字又は文字グループに分割する。
【0106】
ここで、ステップS204及びステップS206で実行される「グループ分割処理」について詳しく説明する。
図11はグループ分割処理の手順の一例を表すフローチャートである。
【0107】
グループ分割処理では、まずステップS300で、CPU12Aは、分割対象グループを選択する。例えば、第1階層のグループ分割では「文字グループ125」を選択し、第2階層のグループ分割では、まず「文字グループ124」を選択する(
図5参照)。
【0108】
次に、ステップS302で、CPU12Aは、分割数nを初期値kに設定する。本実施の形態の平仮名の文字盤の場合、初期値k=4とすることが好ましい。次に、ステップS304で、CPU12Aは、分割対象グループを下位階層の文字又は文字グループに分割する。
【0109】
次に、ステップS306で、CPU12Aは、すべて文字に分割されたか否かを判定する。すべて文字に分割された場合は、グループ分割をやり直す必要がないので、ステップS312に進む。文字グループに分割された場合は、ステップS308に進む。
【0110】
次に、ステップS308で、CPU12Aは、下位階層の文字又は文字グループ各々の選択確率を計算する。続いてステップS310で、CPU12Aは、予め定めた判定基準に基づいて、得られた選択確率が適切か否かを判定する。選択確率が適切である場合は、ステップS312に進み、選択確率が不適切である場合は、ステップS316に進む。ステップS316では、分割数nを変更してステップS304に戻り、グループ分割をやり直す。
【0111】
選択確率が適切か否かを判定するための判定基準は、任意に設定できる。例えば、グループ分割した場合の最小の選択確率が、1文字の出現確率よりも小さくなる場合に、選択確率が不適切と判定してもよい。この場合は、分割数nを1減らしてグループ分割をやり直す。また、得られた選択確率と目標値との誤差を計算し、選択確率の誤差が予め定めた閾値以上となる場合に、選択確率が不適切と判定してもよい。この場合は、分割数nを1減らすか、分割数nを1増やしてグループ分割をやり直す。
【0112】
次に、ステップS312で、CPU12Aは、グループ分割が確定したものとして、得られた下位階層の文字又は文字グループを、RAM12C等の記憶装置に記憶する。
【0113】
次に、ステップS314で、CPU12Aは、次の分割対象があるか否かを判断する。次の分割対象がある場合は、ステップS300に戻って、次の分割対象グループを選択し、選択したグループを下位階層の文字又は文字グループに分割する処理を繰り返し行う。一方、次の分割対象がない場合は、ルーチンを終了する。
【0114】
ここで、
図9の説明に戻る。
次に、ステップS208で、CPU12Aは、すべてのグループが葉ノードに到達したか否かを判断する。すなわち、すべてのグループが1文字のみ含み、これ以上分割できない状態になったか否かを判断する。すべてのグループが葉ノードに到達した場合は、ステップS210に進み、葉ノードに到達していないグループがある場合は、ステップS206に戻り、さらに次の階層のグループ分割処理を実行する。
【0115】
次に、ステップS210で、CPU12Aは、すべてのグループが葉ノードに到達して、グループ分割処理が終了したので、得られたグループ分割情報をRAM12C等の記憶装置に記憶する。
【0116】
次に、ステップS212で、CPU12Aは、得られたグループ分割情報に基づいて、選択肢を表示するための画像データを生成し、RAM12C等の記憶装置に記憶する。
【0117】
次に、ステップS214で、CPU12Aは、
図7に示す「文字入力プログラム」を起動して、ルーチンを終了する。なお、ここでは続けて「文字入力プログラム」を実行する例について説明するが、グループ分割情報の生成だけを行い、グループ分割情報を記憶部20等に記憶しておいてもよい。また、グループ分割情報は、使い勝手、総合的な入力効率Eの値等を考慮して適宜修正されてもよい。
【0118】
第2の実施の形態によれば、入力に要する時間を含む利用者の負担をコストとして定義することができ、そのコストあたりに入力される情報量を最大化する「グループ分割情報」を生成することができる。利用者の設定に応じてグループ分割情報を生成するので、利用者のニーズをグループ分割情報に反映させることが可能である。
【0119】
また、そのコストあたりに入力される情報量を最大化するように設計された「グループ分割情報」を用いて、分割されたグループを選択肢として表示するので、コストあたりの入力文字数を最大化することができる。
【0120】
<変形例>
なお、上記実施の形態で説明した情報入力装置、情報入力方法、プログラム、及びグループ分割情報の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0121】
上記実施の形態において、CPUがプログラムを実行することによってソフトウェアにより実現される機能を、例えば、半導体集積回路等のハードウェアにより実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実現してもよい。
【0122】
また、上記実施の形態では、各種プログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。各種プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、各種プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0123】
(その他のグループ選択方法)
上記の実施形態では、グループ選択方法として「単純選択」と「時間巡回選択」とを説明したが、グループ選択方法はこれらに限定される訳ではない。入力される情報量と選択にかかる時間やスイッチ押下の回数、あるいはそれ以外の要素を適切に組み合わせて入力コストを設定することによって、他のグループ選択方法を用いた場合にも、本開示は適用可能である。
【0124】
スイッチが1つの場合のグループ選択方法については、スイッチ押下の時間的規則をどのように設定するかで、時間巡回選択以外にも多くの方法を使用可能である。例えば、押下の時間によってグループを選択する方法がある。すなわち短く押した場合はグループ1が選択され、長押しするとグループ2、更に長押しするとグループ3、という具合である。また、短い押下でグループを順次移動し、長い押下でグループ選択を確定するなど方式もある。さらにスイッチを一定時間に何回押すかでグループを選択する方法もある。1回押すとグループ1、2回早押しするとグループ2、3回だとグループ3が選択される。これはマウスで利用されているシングルクリック、ダブルクリックと同じ考えである。
【0125】
また、以上ではスイッチが1つの場合について説明したが、複数のスイッチに上記の押下の時間的変化による機能を持たせて、機能を拡張することも可能である。ここで、上で述べた1つのスイッチの押下の時間変化によって複数の状態を入力する方法と、従来無線通信で使われていたモールス符号との類似性について述べる。モールス符号はスイッチの長い押下と短い押下で文字を構成し、長い空白で文字間を表す。
【0126】
このような押下の時間的変化を利用することにより、本開示が対象としている入力方法と同一な視点から見ることができる。モールス符号は経験的に入力時間(通信時間) が短くなるように設計されているが、情報理論に基づいて構成した符号ではない。モールス符号類似の入力方式に対しても本開示を適用することで、理論的に最適な符号を構成することができる。
【符号の説明】
【0127】
10 情報入力装置
12 情報処理装置
14 表示部
16 入力部
16A スイッチ
18 通信部
20 記憶部
22 グループ分割情報
24 文字入力プログラム
26 表示画像データ
28 グループ分割情報生成プログラム
30 グループ選択確率
40 設定画面
42 選択部
44 選択部
46 開始ボタン
48 キャンセルボタン