(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】成形用組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 87/00 20060101AFI20240725BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20240725BHJP
C08L 81/02 20060101ALI20240725BHJP
C08L 77/10 20060101ALI20240725BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240725BHJP
C08K 5/3432 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08L87/00
C08L101/02
C08L81/02
C08L77/10
C08K5/13
C08K5/3432
(21)【出願番号】P 2020525764
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2019024266
(87)【国際公開番号】W WO2019244922
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018117384
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226507
【氏名又は名称】株式会社ニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【氏名又は名称】田中 克郎
(72)【発明者】
【氏名】坪 俊介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 徹
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/012373(WO,A1)
【文献】特開2015-066512(JP,A)
【文献】特表2009-519116(JP,A)
【文献】特開2017-074590(JP,A)
【文献】特表2016-516116(JP,A)
【文献】特開2016-196559(JP,A)
【文献】特開平10-287807(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161452(WO,A1)
【文献】E.M. Mahdi et al.,Dynamic molecular interactions between polyurethane and ZIF-8 in a polymer-MOF nanocomposite: Microstructural, thermo-mechanical and viscoelastic effects,Polymer,2016年08月05日,Volume 97,Pages 31-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン及び有機配位子を含有する多孔性配位高分子と、プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上であり、少なくともプラスチック樹脂を含むベース材料と、を含み、
前記多孔性配位高分子及び前記ベース材料が、それぞれ下記条件(A’)又は(B’)を満たし、
前記ベース材料の含有量が、前記ベース材料と前記多孔性配位高分子との合計100質量%に対して、70質量%以上である、
成形用組成物(ただし、少なくとも20質量%のポリアミドを含有し、かつ、銅(II)イオン、及び少なくとも2つのカルボキシレート基で置換された、C
6~C
24芳香族炭化水素を含む銅系金属有機骨格であって、少なくとも2つのカルボキシレート基が銅(II)イオンに対して配位結合を形成している銅系金属有機骨格を含有する組成物を除く。)。
(A’) 前記ベース材料が、ポリフェニレンスルフィド又は芳香族ポリアミド樹脂を含み、前記金属イオンが硬いルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.15以上である。
(B’) 前記ベース材料が、ポリフェニレンスルフィド又は芳香族ポリアミド樹脂を含み、前記金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.28以上である。
【請求項2】
下記式(4)で表される酸化防止剤及び下記式(5)で表される酸化防止剤からなる群より選択される1種以上の酸化防止剤を含む、請求項
1に記載の成形用組成物。
【化1】
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立にヒンダードフェノール基を示す。)
【請求項3】
前記Rは、それぞれ独立に、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル基又は4-tert-ブチル-3-ヒロドキシ-2,6-ジメチルフェニル基である、請求項
2に記載の成形用組成物。
【請求項4】
前記金属イオンが、Ag(I)、Al(III)、Be(II)、Ca(II)、Cd(II)、Ce(III)、Co(III)、Co(II)、Cr(III)、Cu(II)、Cu(I)、Dy(III)、Er(III)、Eu(III)、Fe(III)、Fe(II)、Ga(III)、Gd(III)、Ho(III)、In(III)、Li(I)、Mg(II)、Mn(III)、Mo(III)、Nd(III)、Ni(II)、Sc(III)、Sm(III)、Sn(II)、Tb(III)、Tm(III)、V(III)、W(IV)、Y(III)、Yb(III)、Zn(II)、Pd(II)、Au(I)、Tl(I)、Hg(I)、Pt(I)及びZr(IV)からなる群より選択される1種以上である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の成形用組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の成形用組成物の成形体。
【請求項6】
プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上であり、少なくともプラスチック樹脂を含むベース材料に、金属イオン及び有機配位子を含有する多孔性配位高分子を配合することにより、前記ベース材料を加熱成形する過程におけるガスの発生を抑制する方法であって、
前記多孔性配位高分子及び前記ベース材料が、それぞれ下記条件(A’)又は(B’)を満たし、
前記ベース材料の配合量が、前記ベース材料と前記多孔性配位高分子との合計100質量%に対して、70質量%以上である、方法。
(A’) 前記ベース材料が、ポリフェニレンスルフィド又は芳香族ポリアミド樹脂を含み、前記金属イオンが硬いルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.15以上である。
(B’) 前記ベース材料が、ポリフェニレンスルフィド又は芳香族ポリアミド樹脂を含み、前記金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.28以上である。
【請求項7】
下記式(4)で表される酸化防止剤及び下記式(5)で表される酸化防止剤からなる群より選択される1種以上の酸化防止剤を更に配合することにより、前記ベース材料を加熱成形する過程におけるガスの発生を更に抑制する、請求項
6に記載の方法。
【化3】
【化4】
(式中、Rはそれぞれ独立にヒンダードフェノール基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック樹脂を用いた成形体を軸受等の用途に用いる場合には、高精度化が求められている。一方、プラスチック樹脂を用いた成形体を給湯器用継手等の用途に用いる場合には、ボイド削減による高強度化及びシール部の高精度化が求められている。また、プラスチック樹脂由来のガスの発生に起因する成形体表面の外観不良(例えば、ヤケ及びウェルド)、成形加工時における金型の上記ガス成分の蓄積、上記ガスによる腐食等の問題点を改善することが求められている。また、成形体を使用する際に、微量ではあるが成形体から、プラスチック樹脂由来のガスの発生に起因する環境悪化等(特に作業環境に敏感な半導体関連生産現場では、部品等の上記ガスの発生に起因する環境悪化等)の問題を改善することが求められている。このようなプラスチック樹脂由来のガスの発生に起因する問題を改善するために様々な検討がなされているが、未だ改善の余地がある。
【0003】
上記ガスの発生を抑制する方法としては、まず、金型に相当数のガスベントを追加し、成形機にガス吸引装置を取り付けることによりガスの発生を抑制する方法がある。また、プラスチック樹脂がポリフェニルサルファイド(PPS)である場合には、酸化物質を存在させた条件下でポリフェニルサルファイドを加熱する熱酸化処理を行い、酸化架橋処理させることにより、揮発ガス成分の発生量を大きく減少させる方法がある(例えば、特許文献1及び特許文献2)。しかし、いずれの方法においてもガスの発生を十分に抑制できるといえない。特に、前述の酸化架橋処理方法では、熱酸化処理の度合いが大きいため、熱酸化処理後のペレット状のPPSを溶融させると、ゲル化物が生じ、成形体が安定しないなどの別の問題が生じる。
【0004】
ガスの発生を抑制する別の方法としては、上記ガスをプラスチック樹脂中で吸着させる方法がある。この方法には、例えば、モリブデン、タングステン等の金属化合物をプラスチック樹脂中に添加する方法(特許文献3)、酸化亜鉛をプラスチック樹脂中に添加する方法(特許文献4)、ハイドロタルサイト物質をプラスチック樹脂中に添加する方法(特許文献5)、PAN系炭素繊維をプラスチック樹脂中に添加する方法(特許文献6)、ゼオライト多孔質体をプラスチック樹脂中に添加する方法(特許文献7)がある。上記ガスをプラスチック樹脂中で吸着させる方法では、一定の効果があるものの、さらなる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-207827号公報
【文献】特開昭62-197422号公報
【文献】特許3245253号
【文献】再表2005-037924号公報
【文献】特許3235035号
【文献】特開2017-190426号公報
【文献】特開2016-132710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、プラスチック樹脂等のベース材料由来のガスの発生を抑制する方法は、いずれにおいても一定の効果があるが、更なる改善の余地がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上のベース材料由来のガスの外部への発生を抑制可能な成形用組成物及び成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のルイス酸価を有する金属イオン及び有機配位子を含有する多孔性配位高分子と、ベース材料とを組み合わせると、得られる成形用組成物は、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
金属イオン及び有機配位子を含有する多孔性配位高分子と、プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上のベース材料とを含み、
前記多孔性配位高分子及び前記ベース材料が、それぞれ下記条件(A)又は(B)を満たす成形用組成物。
(A) 前記ベース材料に由来するガスが、硬いルイス塩基を含み、前記金属イオンが硬いルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.15以上である。
(B) 前記ベース材料に由来するガスが、中間的な又は軟らかいルイス塩基を含み、前記金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.28以上である。
[2]
下記式(4)で表される酸化防止剤及び下記式(5)で表される酸化防止剤からなる群より選択される1種以上の酸化防止剤を含む、上記成形用組成物。
【化1】
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立にヒンダードフェノール基を示す。)
[3]
前記Rは、それぞれ独立に、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル基又は4-tert-ブチル-3-ヒロドキシ-2,6-ジメチルフェニル基である、上記成形用組成物。
[4]
前記金属イオンが、Ag(I)、Al(III)、Be(II)、Ca(II)、Cd(II)、Ce(III)、Co(III)、Co(II)、Cr(III)、Cu(II)、Cu(I)、Dy(III)、Er(III)、Eu(III)、Fe(III)、Fe(II)、Ga(III)、Gd(III)、Ho(III)、In(III)、Li(I)、Mg(II)、Mn(III)、Mo(III)、Nd(III)、Ni(II)、Sc(III)、Sm(III)、Sn(II)、Tb(III)、Tm(III)、V(III)、W(IV)、Y(III)、Yb(III)、Zn(II)、Pd(II)、Au(I)、Tl(I)、Hg(I)、Pt(I)及びZr(IV)からなる群より選択される1種以上である上記成形用組成物。
[5]
上記成形用組成物の成形体。
[6]
プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上のベース材料に、金属イオン及び有機配位子を含有する多孔性配位高分子を配合することにより、前記ベース材料に由来するガスの発生を抑制する方法であって、
前記多孔性配位高分子及び前記ベース材料が、それぞれ下記条件(A)又は(B)を満たす方法。
(A) 前記ベース材料に由来するガスが、硬いルイス塩基を含み、前記金属イオンが硬いルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.15以上である。
(B) 前記ベース材料に由来するガスが、中間的な又は軟らかいルイス塩基を含み、前記金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.28以上である。
[7]
下記式(4)で表される酸化防止剤及び下記式(5)で表される酸化防止剤からなる群より選択される1種以上の酸化防止剤を更に配合することにより、前記ベース材料に由来するガスの発生を更に抑制する、上記方法。
【化3】
【化4】
(式中、Rはそれぞれ独立にヒンダードフェノール基を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上のベース材料由来のガスの外部への発生を抑制可能な成形用組成物及び成形体を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)を説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。
【0012】
本実施形態の成形用組成物は、金属イオン及び有機配位子を含有する多孔性配位高分子と、プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上のベース材料とを含む。多孔性配位高分子及びベース材料は、下記条件(A)又は(B)を満たす。
(A) 前記ベース材料に由来するガスが、硬いルイス塩基を含み、前記金属イオンが硬いルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.15以上である。
(B) 前記ベース材料に由来するガスが、中間的な又は軟らかいルイス塩基を含み、前記金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.28以上である。
【0013】
本実施形態の成形用組成物は、上記多孔性配位高分子及びベース材料を組み合わせることにより、ベース材料に由来するガスの外部への発生を抑制可能である。ベース材料に由来するガスは、より詳細には、ベース材料から発生するガスだけでなく、ベース材料に不純物として含まれ得る成分(例えば、樹脂合成時の重合剤、触媒残渣)、並びにベース材料と成形用組成物に含まれ得る他の材料(例えば、硬化剤、無機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤)との相互作用に由来するガスであってもよい。ここでいうガスは、例えば、ベース材料を含む成形用組成物を加熱成形する過程で上記成分が分解して発生するガスであってもよく、成形体の形態において、経時的に空気接触等により上記成分が分解して発生するガスであってもよい。このため、本実施形態の成形用組成物を用いて成形すると、発生ガスによる精度の低下を抑制できること、ボイド等による強度の低下を抑制できること、クリーン度等の環境劣化を抑制できること、成形加工時における金型腐食を抑制できること等の利点が得られる。その結果、成形用組成物は、成形体の品質を向上したり、金型メンテナンス等の頻度低減によるコスト低減を図れたりできる。なお、成形用組成物から発生するガスは、そのガスを分析してその種類を特定すると共に、そのガスの発生原因となるベース材料やその他の成形用組成物に含まれ得る成分の種類、及びそのガスが発生する条件などを総合的に考慮して、ベース材料に由来するガスか否かを判別することができる。
【0014】
なお、本実施形態において「硬いルイス酸又は硬いルイス塩基」、「中間的なルイス酸又は中間的なルイス塩基」、「軟らかいルイス酸又は軟らかいルイス塩基」は、それぞれ、Hard and Soft Acids and Bases(HSAB)の原理に基づいて分類される硬いルイス酸(ルイス塩基)、中間的なルイス酸(ルイス塩基)、軟らかいルイス酸(ルイス塩基)3種類に分類されるルイス酸(ルイス塩基)に対応する概念をいう。より詳細には、各ルイス酸又はルイス塩基は、「化学と教育 2008,56,400-401 酸・塩基の硬さ・軟らかさ」などに記載された内容に準拠して分類される。
【0015】
(多孔性配位高分子)
多孔性配位高分子は、金属イオン及び有機配位子を含有する。多孔性配位高分子は、例えば、金属イオンが有機配位子に吸着した形態を有している。有機配位子は、例えば、金属イオンと結合可能な有機配位子である。多孔性配位高分子は、MOF(Metal-Organic Framework)又はPCP(Porous Coordination Polymer)ともいう。
【0016】
多孔性配位高分子は、例えば、マクロ孔又はメソ孔領域の細孔を多数有し、細孔径(細孔の直径)が結晶構造に由来して決定されるために均一な細孔径を有する。多孔性配位高分子は、有機配位子の長さ、化学構造による親和性を制御することにより、ベース材料からの発生ガスの保持力を高くするとともに、細密充填化することができる。同様の観点から、多孔性配位高分子の平均細孔径は、発生ガスの分子径以上であることが好ましく、多孔性配位高分子のBET法による比表面積は、400m2/g以上であることが好ましい。なお、多孔性配位高分子の平均細孔径は、BET法によるガス吸着等温線から求められる。
【0017】
(金属イオン)
ベース材料由来の硬いルイス塩基を含むガスの外部への発生を抑制できる観点から、金属イオンが硬いルイス酸であり、多孔性配位高分子のルイス酸価が0.15以上である。ベース材料由来の中間的な又は軟らかいルイス塩基を含むガスの外部への発生を抑制できる観点から、金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、多孔性配位高分子のルイス酸価が0.28以上である。金属イオンは、ベース材料由来のガスの外部への発生を一層抑制できる観点から、Ag(I)(軟らかいルイス酸)、Al(III)(硬いルイス酸)、Be(II)(硬いルイス酸)、Ca(II)(硬いルイス酸)、Cd(II)(軟らかいルイス酸)、Ce(III)(硬いルイス酸)、Co(III)(硬いルイス酸)、Co(II)(中間的なルイス酸)、Cr(III)(硬いルイス酸)、Cu(II)(中間的なルイス酸)、Cu(I)(軟らかいルイス酸)、Dy(III)(硬いルイス酸)、Er(III)(硬いルイス酸)、Eu(III)(硬いルイス酸)、Fe(III)(硬いルイス酸)、Fe(II)(中間的なルイス酸)、Ga(III)(硬いルイス酸)、Gd(III)(硬いルイス酸)、Ho(III)(硬いルイス酸)、In(III)(硬いルイス酸)、Li(I)(硬いルイス酸)、Mg(II)(硬いルイス酸)、Mn(III)(硬いルイス酸)、Mo(III)(硬いルイス酸)、Nd(III)(硬いルイス酸)、Ni(II)(中間的なルイス酸)、Sc(III)(硬いルイス酸)、Sm(III)(硬いルイス酸)、Sn(II)(中間的なルイス酸)、Tb(III)(硬いルイス酸)、Tm(III)(硬いルイス酸)、V(III)(硬いルイス酸)、W(IV)(硬いルイス酸)、Y(III)(硬いルイス酸)、Yb(III)(硬いルイス酸)、Zn(II)(中間的なルイス酸)、Zr(IV)(硬いルイス酸)Pd(II)(軟らかいルイス酸)、Au(I)(軟らかいルイス酸)、Tl(I)(軟らかいルイス酸)、Hg(I)(軟らかいルイス酸)、及びPt(I)(軟らかいルイス酸)からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらの金属イオンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。多孔性配位高分子の原料として、上記金属イオンを含む塩等の化合物を使用してもよい。
【0018】
ルイス酸価は、下記式により求められる。
ルイス酸価
=(ルイス酸として働く金属原子の原子量)/(多孔性配位高分子の構成単位の分子量)
【0019】
これらの中でも、金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸である場合、ベース材料由来の中間的又は軟らかいルイス塩基を含むガスの外部への発生を抑制できる観点から、ルイス酸価が0.30以上(好ましくは0.32以上、より好ましくは0.35以上)であることが好ましい。これらの中でも、金属イオンが硬いルイス酸である場合、ベース材料由来の硬いルイス塩基を含むガスの外部への発生を抑制できる観点から、ルイス酸価が0.18以上(好ましくは0.20以上、より好ましくは0.23以上)であることが好ましい。
【0020】
(有機配位子)
有機配位子は、金属イオンに架橋可能な架橋配位子であることが好ましい。架橋配位子としては、例えば、2-メチルイミダゾール、テレフタル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、4,4''-p-テルフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、1,3,5-ベンゼントリカルボキシル酸、1,3,5-トリ-4-カルボキシルフェニルベンゼン、メチルイミダゾール、4,4'-ビフェニルジカルボキシ酸、フマル酸、ナフタレンジカルボン酸、ヘキサアザトリフェニレン、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、、トリメシン酸、5-シアノ-ベンゼンジカルボン酸、5-エチル-1,3ベンゾジカルボン酸、テレフェニル-3,3',5,5'-テトラカルボン酸、9,10-アントラセンジカルボン酸、イミダゾール、2,2'-ジアミノ-4,4'-スチルベンジカルボン酸、2,2'-ジニトロ-スチルベンジカルボン酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、3,3',5,5'-テトラカルボキシジフェニルメタン、1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、4,4',4''-s-トリアジン-2,4,6トレイル-三安息香酸、2-ヒドロキシテレフタル酸、ビフェニル-3,3',5,5'-テトラカルボン酸、ビフェニル-3,4,5-トリカルボン酸、5-ブロモイソフタル酸、マロン酸、5-シアノ-ベンゼンジカルボン酸、5-エチル-1,3ベンゾジカルボン酸、テレフェニル-3,3",5,5"テトラカルボン酸、9,10-アントラセンジカルボン酸、イミダゾール、2,2'-ジアミノ-4,4-スチルベンジカルボン酸、2,2'-ジニトロ-スチルベンジカルボン酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、3,3',5,5'テトラカルボキシジフェニルメタン、1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、4,4',4"-s-トリアジン-2,4,6トレイル-三安息香酸、2-ヒドロキシテレフタル酸、ビフェニル-3,3',5,5'-テトラカルボン酸、ビフェニル-3,4',5'-トリカルボン酸、5-ブロモイソフタル酸、マロン酸等が挙げられる。
【0021】
成形体用組成物を製造する方法において、多孔性配位高分子の表面、細孔内に付着したり、存在したりしている残渣物質を除去してから、多孔性配位高分子をベース材料に複合させることが望ましい。残渣物質が存在すると、残渣物質によって細孔が狭められたり完全に塞がれたりして、発生ガスを多孔性配位高分子の細孔に注入しにくくなる虞がある。残渣物質を除去する方法としては、例えば溶媒で多孔性配位高分子を洗浄する方法等が挙げられる。洗浄に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、THF、及びDMFが挙げられ、溶媒は、水、及び/又はメタノールであることが好ましい。溶媒が水及び/又はメタノールであると、溶媒の分子径が小さいため、溶媒が多孔性配位高分子の細孔内に容易に入り込み、細孔内の残渣物質を容易に除去できる。また、残渣物質を洗浄する工程において、溶剤に多孔性配位高分子を長時間浸漬してもよい。浸漬時間は、12時間以上であることが好ましく、24時間以上であることがより好ましい。未反応物質又は不純物を除去する方法としては、加熱処理によって残渣物質を脱離させる方法が挙げられる。未反応物質又は不純物が有機物であり、有機物を除去したい場合は、空気中又は酸素雰囲気中で加熱処理を行うことが好ましい。未反応物質又は不純物が揮発性物質であり、揮発性物質を除去したい場合は、真空加熱処理を行うことが好ましい。加熱温度は100~300℃であることが好ましい。溶剤による洗浄を行った後、加熱処理を行って溶剤を完全に除去する方法が好ましい。
【0022】
(ベース材料)
ベース材料は、プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上である。ベース材料に由来するガスは、硬いルイス塩基を含む場合、金属イオンが硬いルイス酸であり、多孔性配位高分子のルイス酸価が0.15以上であり、ベース材料に由来するガスは、中間的な又は軟らかいルイス塩基を含む場合、金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、多孔性配位高分子のルイス酸価が0.28以上である。
【0023】
硬いルイス塩基としては、H2O、HO-、F-、MeCO2
-、CO3
2-、NO3
-、ROH、RO-、Cl-、NH3、RNH2(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表す)などが挙げられる。中間的な又は軟らかいルイス塩基としては、R2S、RSH、RS-、I-、SCN-、R3P、CN-、CO、C2H4、C6H6、H-、R-、Br-、NO2
-、C5H5N、C6H5NH2(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基を表す)などが挙げられる。
【0024】
(プラスチック樹脂)
プラスチック樹脂は、1種類又は2種類以上の樹脂を含む。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、EVA樹脂、芳香族ポリアミド樹脂及びポリアミド66のようなポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、及び熱可塑性ポリウレタン樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、カゼイン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリウレア樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、キシレン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びエピスルフィド樹脂が挙げられる。これらの中でも、ベース材料由来のガスを更に低減させる観点から、芳香族ポリアミド樹脂及びポリアミド66のようなポリアミド樹脂及びポリフェニレンスルファイド樹脂が好ましく、芳香族ポリアミド樹脂及びポリフェニレンスルファイド樹脂がより好ましい。
【0025】
ゴム類としては、人工ゴム、天然ゴム等が挙げられる。人工ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンのランダム共重合体及びブロック共重合体、ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ブタジエン-イソプレン共重合体等のジエン系ゴム、エチレン-プロピレンのランダム共重合体及びブロック共重合体、エチレン-ブテンのランダム共重合体及びブロック共重合体、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレン-アクリル酸、エチレン-メタクリル酸等のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル、エチレン-メタクリル酸エステル等のエチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体、不飽和カルボン酸の一部が金属塩である、エチレン-アクリル酸-アクリル酸金属塩、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸金属塩等のエチレン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸金属塩共重合体、アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体ブチルアクリレート-ブタジエン共重合体等のアクリル系弾性重合体、エチレン-酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-ヘキサジエン共重合体等のエチレン-プロピレン非共役ジエン3元共重合体、ブチレン-イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン及びそれらの変性物等が挙げられる。これらのゴム類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0026】
シーリング材としては、例えば、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材(例えば、アクリルウレンタン系シーリング材)、シリル化アクリレート系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、ポリイソブチレン系シーリング材等が挙げられる。これらのシーリング材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0027】
本実施形態の成形用組成物は、上述の通り、ベース材料由来のガスの外部への発生を抑制できる。ガスとしては、例えば、水、酢酸、塩素、塩化物、二酸化窒素、硝酸ガス、亜硝酸ガス、アンモニア、CH3(CH2)nCOOHで表される飽和脂肪酸、CH3(CH2)nCONH2で表される飽和脂肪酸アミド(いずれも式中、nは整数を表し、好ましくは4~20の整数を表す。)、CpHqCOOHで表される、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪酸、CpHqCONH2で表される、モノ不飽和脂肪酸アミド、ジ不飽和脂肪酸アミド、トリ不飽和脂肪酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド(式中、p及びqは整数を表し、p及びqの関係は不飽和の炭素間結合の数に依存し、例えば、pは5~21の整数を表す。)等の硬いルイス塩基成分を含有するガス、臭素、臭化物、窒素酸化物、二酸化硫黄、環状アミド等の中間的なルイス塩基成分を含有するガス、硫化物(例えば、硫化水素)、ヨウ素、シアン、二酸化炭素、一酸化炭素、エチレン、ベンゼン、芳香族化合物等の軟らかいルイス塩基成分を含有するガスが挙げられる。
【0028】
ベース材料から発生するガスについて、ベース材料がPPS(ポリフェニレンスルフィド)である場合を一例として説明する。PPSは、工業的にはパラジクロルベンゼン(p-DCB)と硫化ソーダ(Na2S)又は水硫化ソーダ(NaSH)とを極性溶媒中、高温加圧下で重縮合反応させることにより得られる。PPSの生成反応において、脱水反応、脱食塩反応、発熱反応、高温加圧反応等の様々な反応が行われており、その概略は下記反応式で示される。そのため、PPSには反応残渣として塩素が残留する。
【化5】
そして、生成したPPSを成形すると、成形時の加熱によりPPSの構造に含まれている硫黄が熱により分離し、更に酸化して亜硫酸イオン、硫酸イオン、硫化水素となり、一部がガス化して例えば、亜硫酸ガス、硫化水素ガスとなる。また、PPSに残留する塩素の一部は成形時の加熱により塩素ガスになる。
【0029】
PPSより発生するガスは、中間的または軟らかいルイス塩基に分類される硫黄化合物と硬いルイス塩基に分類される塩素ガスであると考えられる。中間的又は軟らかいルイス塩基である硫黄化合物の吸着には、金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、ルイス酸価が0.28以上のである多孔性配位高分子が有効であると考えられる。一方で硬いルイス塩基である塩素ガスの吸着には、金属イオンが硬いルイス酸であり、ルイス酸価が0.15以上である多孔性配位高分子が有効であると考えられる。以上より、PPSより発生するガスを吸着させるためには、硬いルイス塩基を含むガスを吸着させる多孔性配位高分子と、中間的又は軟らかいルイス塩基を含むガスを吸着させる多孔性配位高分子とを併用することが有効であると考えられる。
【0030】
さらに、ベース材料から発生するガスについて、ベース材料が芳香族ポリアミド樹脂(以下、「芳香族PA樹脂」ともいう。)である場合を一例として説明する。芳香族PA樹脂は、成形時の加熱により、アミド基の切断、変性鎖との分離、ポリアミド鎖の分離、ケトンの遊離、変性鎖の分離等を生じる。そして、更なる分解を経て、CH3(CH2)nCOOHで表される飽和脂肪酸、CH3(CH2)nCONH2で表される飽和脂肪酸アミド、CH3(CH2)nCNで表される飽和脂肪酸ニトリル(いずれも式中、nは整数を表し、好ましくは4~20の整数を表す。)、CpHqCOOHで表される、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪酸、CpHqCONH2で表される、モノ不飽和脂肪酸アミド、ジ不飽和脂肪酸アミド、トリ不飽和脂肪酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド、CpHqCNで表される、モノ不飽和脂肪酸ニトリル、ジ不飽和脂肪酸ニトリル、トリ不飽和脂肪酸ニトリルのような不飽和脂肪酸ニトリル(いずれも式中、p及びqは整数を表し、p及びqの関係は不飽和の炭素間結合の数に依存し、不飽和の炭素間二重結合が1つの場合、qは2p-1であり、不飽和の炭素間二重結合が2つの場合、qは2p-3であり、不飽和の炭素間二重結合が3つの場合、qは2p-5であり、pは例えば5~21の整数を表す。)、芳香族アミン類、環状アミド、芳香族アミド重合体等のガスが発生する。
【0031】
芳香族PA樹脂より発生するガスは、中間的または軟らかいルイス塩基に分類されるCH3(CH2)nCNで表される飽和脂肪酸ニトリル(式中、nは整数を表し、好ましくは4~20の整数を表す。)、CpHqCNで表される、モノ不飽和脂肪酸ニトリル、ジ不飽和脂肪酸ニトリル、トリ不飽和脂肪酸ニトリルのような不飽和脂肪酸ニトリル(式中、p及びqは整数を表し、p及びqの関係は不飽和の炭素間結合の数に依存し、不飽和の炭素間二重結合が1つの場合、qは2p-1であり、不飽和の炭素間二重結合が2つの場合、qは2p-3であり、不飽和の炭素間二重結合が3つの場合、qは2p-5であり、pは例えば5~21の整数を表す。)、芳香族アミン類、環状アミド、及び芳香族アミド重合体と、硬いルイス塩基に分類されるCH3(CH2)nCOOHで表される飽和脂肪酸、CH3(CH2)nCONH2で表される飽和脂肪酸アミド(いずれも式中、nは整数を表し、好ましくは4~20の整数を表す。)、CpHqCOOHで表される、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪酸、及びCpHqCONH2で表される、モノ不飽和脂肪酸アミド、ジ不飽和脂肪酸アミド、トリ不飽和脂肪酸アミドのような不飽和脂肪酸(いずれも式中、p及びqは整数を表し、p及びqの関係は不飽和の炭素間結合の数に依存し、不飽和の炭素間二重結合が1つの場合、qは2p-1であり、不飽和の炭素間二重結合が2つの場合、qは2p-3であり、不飽和の炭素間二重結合が3つの場合、qは2p-5であり、pは例えば5~21の整数を表す。)であると考えられる。上記の中間的又は軟らかいルイス塩基の吸着には、金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、ルイス酸価が0.28以上のである多孔性配位高分子が有効であると考えられる。一方で、上記の硬いルイス塩基の吸着には、金属イオンが硬いルイス酸であり、ルイス酸価が0.15以上である多孔性配位高分子が有効であると考えられる。以上より、芳香族PA樹脂より発生するガスを吸着させるためには、硬いルイス塩基を含むガスを吸着させる多孔性配位高分子と、中間的又は軟らかいルイス塩基を含むガスを吸着させる多孔性配位高分子とを併用することが有効であると考えられる。
【0032】
(無機充填材)
成形用組成物は、機械的物性が向上する観点から、無機充填材を含有してもよい。無機充填材としては、公知の無機充填材が用いられ、例えば、粒子状無機充填材、繊維状無機充填材、及び鱗片状又は板状無機充填材が挙げられる。粒子状無機充填材としては、例えば、ミクロンサイズを有する粒子状無機充填材であっても、ナノサイズを有する粒子状無機充填材であってもよい。ミクロンサイズを有する粒子状無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、ガラスビーズ、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、チタン酸カリウム粒子、チタニア粒子、単斜晶系チタニア粒子、リン酸カルシウム粒子、ワラストナイト、バーミキュライト、シラスバルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。ナノサイズを有する粒子状無機充填材としては、例えば、ナノ酸化チタン、ナノシリカ、カーボンブラック、カーボンフィラー等が挙げられる。無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、粒子状無機充填材は、機能徐放性液体(特に小動物防除剤)の徐放性に一層優れる観点から、チタン酸カリウム粒子であることが好ましい。繊維状無機充填材は、成形体の外観に悪影響を与えない観点から、0.05~10μmの平均繊維径、及び3~150μmの平均繊維長を有する繊維状無機充填材であることが好ましく、0.1~7μmの平均繊維径、及び5~50μmの平均繊維長を有する繊維状無機充填材であることがより好ましい。繊維状無機充填材としては、例えば、ミクロンサイズを有する繊維状無機充填材であってもよく、ナノサイズを有する繊維状無機充填材であってもよい。ミクロンサイズを有する繊維状無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、石墨繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、木綿、麻繊維、ケナフ繊維、竹繊維、レーヨン、スチール繊維、アルミニウム繊維、石膏繊維、4チタン酸カリウム繊維、6チタン酸カリウム繊維、8チタン酸カリウム繊維、チタニア繊維、単斜晶系チタニア繊維、シリカ繊維、ワラストナイト、ゾノトライト等が挙げられる。ナノサイズを有する繊維状無機充填材としては、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、コットンフィブリル、窒化珪素ウイスカー、アルミナウイスカー、炭化珪素ウイスカー、ニッケルウイスカー等が挙げられる。これらの繊維状無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。鱗片状又は板状無機充填材としては、例えば、ミクロンサイズを有する鱗片上又は板状無機充填材であっても、ナノサイズを有する鱗片状又は板状無機充填材であってもよい。ミクロンサイズを有する鱗片状又は板状無機充填材としては、例えば、タルク、カオリンクレイ、マイカ(合成マイカ又は天然マイカ)、ガラスフレーク、アラゴナイト、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸カリウムリチウム、チタン酸カリウムマグネシウム、セリサイト、板状アルミナ、窒化ホウ素等が挙げられる。ナノサイズを有する鱗片状又は板状無機充填材としては、例えば、有機化モンモリロナイト、膨潤性合成マイカ、黒鉛、グラファイト等が挙げられる。鱗片状無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。無機充填材は、そのまま用いてもよく、樹脂との界面接着性を向上させたり、機械的物性を一層向上させたりする観点から、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のシランカップリング剤又はチタネートカップリング剤等の表面処理剤で表面処理した形態で用いてもよい。
【0033】
(可塑剤)
成形用組成物は、成形体の加工性及び柔軟性を一層向上させる観点から、可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、例えば、カルボン酸エステル誘導体、リン酸エステル誘導体、ホスファゼン誘導体、カルボン酸アミド誘導体、スルホン酸エステル誘導体、及びスルホンアミド誘導体が挙げられる。可塑剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
カルボン酸エステル誘導体としては、例えば、水酸基、ニトロ基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲン等で置換されてもよい各種カルボン酸のアルキルエステル、及び芳香族エステルが挙げられる。カルボン酸エステル誘導体の具体例としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ベンジルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、4,5-エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(7,8-エポキシ-2-オクテニル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(9,10-エポキシオクタデシル)、4,5-エポキシシクロヘキサヒドロフタル酸ジ(10,11-エポキシウンデシル)、フタル酸ジ(テトラヒドロフルフリロキシエチル)、各種フタル酸混合エステル及びフタル酸混合エステルのエチレンオキシド付加物等のフタル酸エステル誘導体、イソフタル酸エステル誘導体、テトラヒドロフタル酸エステル誘導体、パラヒドロキシ安息香酸ブトキシエチル、パラヒドロキシ安息香酸シクロヘキシロキシエトキシエトキシエチル、パラヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシル、ω-アルキルオリゴエチレンオキシドのヒドロキシ安息香酸エステル、ウンデシルグリシジルエーテルのパラヒドロキシ安息香酸付加物等の安息香酸エステル誘導体、チオジプロピオン酸ジ(テトラヒドロフルフリロキシエチル)等のプロピオン酸エステル誘導体、アジピン酸エステル誘導体、アゼライン酸エステル誘導体、セバシン酸エステル誘導体、ドデカン-2-酸エステル誘導体、マレイン酸エステル誘導体、フマル酸エステル誘導体、トリメット酸エステル誘導体、クエン酸トリ(ブトキシエトキシエチル)、クエン酸ジ-n-オクチル-モノ(ノニルフェノキシエチル)、クエン酸トリ-n-オクチル、クエン酸ジオクチル(テトラヒドロフルフリロキシエチル)、クエン酸トリミリスチル、トリエチルシトレート等のクエン酸エステル誘導体、イタコン酸エステル誘導体、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等のオレイン酸エステル誘導体、リシノール酸エステル誘導体、乳酸(n-ブチル)、乳酸(2-エチルヘキシル)、乳酸(n-ブトキシエトキシエチル)、乳酸(n-オクトキシエトキシエチル)、乳酸(n-デシルオキシエトキシエチル)等の乳酸エステル誘導体、酒石酸ジ(オクトキシエトキシエチル)、酒石酸(n-オクチル)(ノニルフェノキシエチル)、酒石酸ジ(オクトキシエトキシエチル)等の酒石酸エステル誘導体、リンゴ酸ジブトキシエチル、リンゴ酸ジ(n-ブトキシエトキシエチル)、リンゴ酸ジステアリル、リンゴ酸オクタデセニルイソノニル等のリンゴ酸エステル誘導体、ベンジルグリシジルエーテルのサリチル酸付加物等のサリチル酸エステル誘導体が挙げられる。
【0035】
リン酸エステル誘導体としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシル・ジフェニル・ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、イソデシル・ジフェニル・ホスフェート、トリクレジル・ホスフェート、トリキシレニル・ホスフェート、トリ(クロロエチル)ホスフェート、キシレニル・ジフェニルホスフェート、及びテトラキス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレンジホスフォネートが挙げられる。
【0036】
ホスファゼン誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物が挙げられる。
【0037】
【0038】
式中、mは3~25の整数を示し、R1、及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~8のアルキル基、あるいは炭素数1~8のアルキル基及び/又はアリル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。ホスファゼン誘導体は、式(1)で表される直鎖状ホスファゼン化合物の1種類で構成されてもよく、2種類以上の混合物の形態で構成されていてもよい。
【0039】
ホスファゼン誘導体としては、例えば、下記一般式(2)で表される直鎖状ホスファゼン化合物も挙げられる。
【0040】
【0041】
式中、nは3~1000の整数を示し、R3、及びR4は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~8のアルキル基、あるいは、炭素数1~8のアルキル基及び/又はアリル基で置換されていてもよいフェニル基を示し、Xは、基-N=P(OR3)3、基-N=P(OR4)3、基-N=P(O)(OR3)又は基-N=P(O)(OR4)を示し、Yは、基-P(OR3)4、基-P(OR4)4、基-P(O)(OR3)2又は基-P(O)(OR4)2を示す。ホスファゼン誘導体は、式(2)で表される直鎖状ホスファゼン化合物の1種類で構成されてもよく、2種類以上の混合物の形態で構成されていてもよい。
【0042】
ホスファゼン誘導体としては、下記式(3)で表される架橋基により、式(1)又は式(2)中のR1、R2、R3、R4からアルキル基等が脱離し、2つの酸素原子間が架橋されたホスファゼン化合物であってもよい。
【0043】
【0044】
式中、rは、0又は1を示し、Aは2価の基である-SO2-、-S-、-O-又は-C(CH3)2-を示す。
【0045】
式(1)で表わされる環状ホスファゼン化合物の具体例としては、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン、ヘキサプロポキシシクロトリホスファゼン、オクタプロポキシキシシクロテトラホスファゼン、及びデカプロポキシシクロペンタホスファゼンが挙げられる。また、式(2)で表わされる直鎖状ホスファゼン化合物の具体例としては、鎖状ジクロルホスファゼンにプロポキシ基及び/又はフェノキシ基を置換した鎖状ホスファゼン化合物が挙げられる。式(3)で表される架橋構造の具体例としては、4,4'-スルホニルジフェニレン(ビスフェノール-S残基)、4,4'-オキシジフェニレン基、4,4'-チオジフェニレン基、及び4,4'-ジフェニレン基が挙げられる。これらのホスファゼン誘導体は、任意の位置にアミノ基及び/又はフェニルアミノ基が置換したものであってもよい。これらのホスファゼン誘導体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0046】
カルボン酸アミド誘導体としては、例えば、N-シクロヘキシル安息香酸アミド等を例示できる。また、スルホンアミド誘導体としては、N-メチル-ベンゼンスルホンアミド、N-エチル-ベンゼンスルホンアミド、N-ブチル-ベンゼンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-ベンゼンスルホンアミド、N-エチル-P-トルエンスルホンアミド、N-ブチル-トルエンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-トルエンスルホンアミドが挙げられる。
【0047】
スルホン酸エステル誘導体としては、例えば、ベンゼンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸2-メトキシエチル、メタンスルホン酸2,2,2-トリフルオロエチル、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸n-プロピル等が挙げられる。
【0048】
スルホン酸アミド誘導体としては、例えば、N-メチルメタンスルホン酸アミド、p-トルエンスルホン酸アミド、p-アミノベンゼンスルホンアミド、o-アミノベンゼンスルホンアミド、m-アミノベンゼンスルホンアミド、アニリン-4-スルホン酸アミド、1-アミノベンゼン-4-スルホン酸アミド、1-アミノベンゼン-4-スルホンアミド、4-アミノベンゼンスルホン酸アミド、p-スルファニル酸アミド等が挙げられる。
【0049】
(耐候性付与添加剤)
成形用組成物は、屋外放置における耐候性を一層向上させる観点から、耐候性付与添加剤を含有してもよい。耐候性付与添加剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤のような酸化防止剤、紫外線吸収性光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及びカーボンからなる群より選択される1種が挙げられる。
【0050】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、ビス-[3,3-ビス-(4'-ハイドロキシ-3'-tert-ブチルフェニル)-ブタノイックアシッド]-グリコールエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、及びメチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。
【0051】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4'-ジイルビスホスフォナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-フェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリストールジフォスファイトが挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、プロパンジオックアシッド,及び[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステルが挙げられる。
【0053】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、N,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(Nメチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ))、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザ-ジスピロ-[5.1.11.2]-ヘンエイコサン-21-オン、プロパン二酸,[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-,ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)、及び2-エチル,2'-エトキシ-オキサラニリドが挙げられる。
【0054】
耐候性付与添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐候性付与添加剤は、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4'-ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-エチル,2'-エトキシ-オキサラニリド、N,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(Nメチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ))、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、及びN,N'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)からなる群より選択される1種以上が挙げられる。
【0055】
本実施形態の成形用組成物は、ベース材料由来のガスの外部への発生を更に抑制する観点から、下記式(4)で表される酸化防止剤及び下記式(5)で表される酸化防止剤からなる群より選択される1種以上の酸化防止剤を含むことが好ましい。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤を成形用組成物に添加すると、成形用組成物の成形時の加熱によるベース材料又は多孔性配位高分子の酸化及びそれに続く分解が一層抑制され、ベース材料由来のガスの外部への発生をより低減させることができる。なお、本明細書中、式(4)、(6)、(7)及び(9)において、結合末端に特に記号がない基は、メチル基を示す。例えば、下記式(4)においては、結合末端に記号がない3つの基がベンゼン環に結合しているが、それらはいずれもメチル基である。
【化9】
【化10】
ここで、式(4)及び(5)中、Rはそれぞれ独立にヒンダードフェノール基を示す。
【0056】
本実施形態の成形用組成物において、ベース材料由来のガスの外部への発生を更に抑制する観点から、Rは3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル基又は4-tert-ブチル-3-ヒロドキシ-2,6-ジメチルフェニル基であることが好ましい。同様の観点から、酸化防止剤は、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒロドキシ-2,6-ジメチルフェニル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、及び4-[[3,5-ビス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)メチル]-2,4,6-トリメチル-フェニル]メチル]-2,6-ジ-tert-ブチル-フェノールからなる群より選択されることがより好ましい。さらに同様の観点から、酸化防止剤は、下記式(6)で表される酸化防止剤及び下記式(7)で表される酸化防止剤のうちの少なくとも一方であることが特に好ましい。また、同様の観点から、酸化防止剤として、上記の好ましい酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することも好ましい。
【化11】
【化12】
【0057】
本実施形態の成形用組成物において、成形用組成物の成形時の加熱による酸化防止剤自身の分解を抑制し、ベース材料由来のガスの外部への発生を更に抑制する観点から、酸化防止剤の融点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、220℃以上が更に好ましい。
【0058】
本実施形態の成形用組成物が上記の酸化防止剤を含まない場合、成形用組成物中のベース材料と多孔性配位高分子との合計の含有量は、成形用組成物100質量%に対して、60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。上記の合計の含有量が上述の範囲内にあることにより、ベース材料由来のガスの外部への発生をより抑制し、製品に要求される物性を成形用組成物に更に効果的に付与することができる。
【0059】
製品に要求される物性を成形用組成物に更に付与する観点から、成形用組成物中のベース材料の含有量は、ベース材料と多孔性配位高分子との合計100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0060】
ベース材料由来のガスの外部への発生を更に抑制する観点から、多孔性配位高分子の含有量は、ベース材料と多孔性配位高分子との合計100質量%に対して、0.01~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることが更に好ましい。
【0061】
成形用組成物が酸化防止剤以外の耐候性付与添加剤を含む場合、その耐候性付与添加剤の含有量は、成形用組成物100質量%に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。上記の含有量が上述の範囲内にあることにより、ベース材料由来のガスの外部への発生をより抑制し、製品に要求される物性を成形用組成物に更に効果的に付与することができる。
【0062】
成形用組成物は、無機充填剤、可塑剤、難燃剤のような他の任意の成分を、本発明の課題の解決を阻害しない量含んでいてもよい。例えば、成形用組成物中の他の任意の成分の含有量は、ベース材料と多孔性配位高分子と酸化防止剤以外の耐候性付与添加剤との合計100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0063】
本実施形態の成形用組成物が上記の酸化防止剤を含む場合、成形用組成物中のベース材料と多孔性配位高分子と酸化防止剤との合計の含有量は、成形用組成物100質量%に対して、60質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。上記の合計の含有量が上述の範囲内にあることにより、ベース材料由来のガスの外部への発生をより抑制し、製品に要求される物性を成形用組成物に更に効果的に付与することができる。
【0064】
製品に要求される物性を成形用組成物に更に付与する観点から、成形用組成物中のベース材料の含有量は、ベース材料と多孔性配位高分子と酸化防止剤との合計100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0065】
ベース材料由来のガスの外部への発生を更に抑制する観点から、多孔性配位高分子の含有量は、ベース材料と多孔性配位高分子と酸化防止剤との合計100質量%に対して、0.01~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることが更に好ましい。
【0066】
同様の観点から、酸化防止剤の含有量は、ベース材料と多孔性配位高分子と酸化防止剤との合計100質量%に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることが更に好ましい。
【0067】
成形用組成物が酸化防止剤以外の耐候性付与添加剤を含む場合、その耐候性付与添加剤の含有量は、成形用組成物100質量%に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。上記の含有量が上述の範囲内にあることにより、ベース材料由来のガスの外部への発生をより抑制し、製品に要求される物性を成形用組成物に更に効果的に付与することができる。
【0068】
成形用組成物は、無機充填剤、可塑剤、難燃剤のような他の任意の成分を、本発明の課題の解決を阻害しない量含んでいてもよい。例えば、成形用組成物中の他の任意の成分の含有量は、ベース材料と多孔性配位高分子と酸化防止剤と酸化防止剤以外の耐候性付与添加剤との合計100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0069】
(用途)
成形用組成物は、所定形状を有する成形体に加工して利用するだけでなく、そのままの状態で、例えば塗料、シーリング剤、クッション材又は詰め物として利用することもできる。成形用組成物は、例えば、適宜のプラスチック樹脂を選択し、かつ多孔性配位高分子の添加量及び充填剤、可塑剤等の添加量を適宜調整することにより、流動性、半流動性又はゴム状弾性を有する成形体を製造できる。このため、本発明には、本実施形態の成形用組成物から成形された成形体も含む。流動性を有するものは、例えば塗料として利用でき、半流動性を有するものは、例えばシーリング剤として利用できる。また、ゴム状弾性を有するものは、例えばクッション材や詰め物として利用できる。なお、成形用組成物を塗料、シーリング剤、クッション材又は詰め物として利用する場合には、必要に応じてマトリックス樹脂中に着色剤や顔料等の色材を添加することができる。成形用組成物の成形加工に際しては、例えば射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー成形、FRP成形、積層成形、注型成形、溶液流延法、真空・圧空成形、押出複合成形、発泡成形、熱成形、インサート成形、溶融含浸法等の公知に属する適宜の成形法を適用することができる。また、製品である成形体の形状に関しては特に制限があるものではなく、平板状、棒状、円筒状、櫛形、球状等、あらゆる形状とすることができる。また、成形用組成物を単体で成形するほか、金属等と組み合わせた二色乃至多色の成形を行うこともできる。
【0070】
本発明の別の実施形態は、プラスチック樹脂、ゴム類、及びシーリング材からなる群より選択される1種以上のベース材料に、金属イオン及び有機配位子を含有する多孔性配位高分子を配合することにより、前記ベース材料に由来するガスの発生を抑制する方法であって、前記多孔性配位高分子及び前記ベース材料が、それぞれ下記条件(A)又は(B)を満たす方法である。
(A) 前記ベース材料に由来するガスが、硬いルイス塩基を含み、前記金属イオンが硬いルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.15以上である。
(B) 前記ベース材料に由来するガスが、中間的な又は軟らかいルイス塩基を含み、前記金属イオンが中間的な又は軟らかいルイス酸であり、前記多孔性配位高分子のルイス酸価が0.28以上である。
【0071】
上述の別の実施形態において、下記式(4)で表される酸化防止剤及び下記式(5)で表される酸化防止剤からなる群より選択される1種以上の酸化防止剤を更に配合することにより、前記ベース材料に由来するガスの発生を更に抑制することが好ましい。
【化13】
【化14】
ここで、式(4)及び(5)中、Rはそれぞれ独立にヒンダードフェノール基を示す。
【実施例】
【0072】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されない。
【0073】
[実施例1-1及び2-1]
金属イオンとしてCu2+(ルイス酸の種類:中間的なルイス酸)、有機配位子として1,3,5-ベンゼントリカルボン酸から構成される多孔性配位高分子(「Cu-PCP」、比表面積:1509m2/g、ルイス酸価:0.28)を用いた。0.5gの多孔性配位高分子と50gのポリフェニレンスルフィド樹脂(ポリプラスチック(株)製品の「1140A6」)とを、又は0.5gの多孔性配位高分子と5gの芳香族ポリアミド樹脂(三井化学(株)製品の「RA230NK」)とを、ラボプラストミル装置にて250℃にて10分間混錬することにより、成形用組成物を作製した。作製した成形用組成物を加熱プレス機にて250℃及び10MPaの加熱加圧条件にて成形し、厚さ1.0mmのプレート状の成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-1、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-1とする。
【0074】
[実施例1-2及び2-2]
Cu-PCPに代えて、金属イオンとしてNi2+(ルイス酸の種類:中間的なルイス酸)、有機配位子として1,3,5-ベンゼントリカルボン酸から構成される多孔性配位高分子(「Ni-PCP」、比表面積:1080m2/g、ルイス酸価:0.39)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-2、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-2とする。
【0075】
[実施例1-3及び2-3]
Cu-PCPに代えて、金属イオンとしてCu2+(ルイス酸の種類:中間的なルイス酸)、有機配位子として1,3,5-ベンゼントリカルボン酸から構成される多孔性配位高分子(BASF製品の「C300」、比表面積:1500m2/g、ルイス酸価:0.31)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-3、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-3とする。
【0076】
[実施例1-4及び2-4]
Cu-PCPに代えて、金属イオンとしてZn2+(ルイス酸の種類:中間的なルイス酸)、有機配位子として2-メチルイミダゾールから構成される多孔性配位高分子(BASF製品の「Z1200」、比表面積:1300m2/g、ルイス酸価:0.28)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-4、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-4とする。
【0077】
[実施例1-5及び2-5]
Cu-PCPに代えて、金属イオンとしてCr3+(ルイス酸の種類:硬いルイス酸)、有機配位子として1,3,5-ベンゼントリカルボン酸から構成される多孔性配位高分子(「Cr-PCP」、比表面積:1350m2/g、ルイス酸価:0.22)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-5、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-5とする。
【0078】
[実施例1-6及び2-6]
Cu-PCPに代えて、金属イオンとしてFe3+(ルイス酸の種類:硬いルイス酸)、有機配位子として1,3,5-ベンゼントリカルボン酸から構成される多孔性配位高分子(BASF製品の「F300」、比表面積:1300m2/g、ルイス酸価:0.21)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-6、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-6とする。
【0079】
[実施例1-7及び2-7]
Cu-PCPに代えて、金属イオンとしてMg2+(ルイス酸の種類:硬いルイス酸)、有機配位子としてギ酸から構成される多孔性配位高分子(BASF製品の「M050」、比表面積:400m2/g、ルイス酸価:0.21)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-7、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-7とする。
【0080】
[実施例1-8及び2-8]
Cu-PCPに代えて、金属イオンとしてAl3+(ルイス酸の種類:硬いルイス酸)、有機配位子として1,3,5-ベンゼントリカルボン酸から構成される多孔性配位高分子(BASF製品の「MIL110」、比表面積:1400m2/g、ルイス酸価:0.18)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-8、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-8とする。
【0081】
[実施例1-9及び2-9]
金属イオンとしてCu2+(ルイス酸の種類:中間的なルイス酸)、有機配位子として1,3,5-ベンゼントリカルボン酸から構成される多孔性配位高分子(「Cu-PCP」、比表面積:1509m2/g、ルイス酸価:0.28)を用いた。酸化防止剤として、上記式(6)で表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤(融点下限:159℃、融点上限:162℃、solvay製品の「CY-1790」)を用いた。0.5gの多孔性配位高分子と0.25gの酸化防止剤と50gのポリフェニレンスルフィド樹脂(ポリプラスチック(株)製品の「1140A6」)とを、又は0.5gの多孔性配位高分子と0.25gの酸化防止剤と50gの芳香族ポリアミド樹脂(三井化学(株)製品の「RA230NK)とを、ラボプラストミル装置にて250℃にて10分間混錬することにより、成形用組成物を作製した。作製した成形用組成物を加熱プレス機にて250℃及び10MPaの加熱加圧条件にて成形し、厚さ1.0mmのプレート状の成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-9、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-9とする。
【0082】
[実施例1-10及び2-10]
CY-1790に代えて、上記式(6)で表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤とフォスファイト系酸化防止剤との混合物(融点下限:166℃、融点上限:171℃、solvay製品の「CY-2777」)を用いた以外は実施例1-9及び2-9と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-10、C芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-10とする。
【0083】
[実施例1-11及び2-11]
CY-1790に代えて、上記式(7)で表されるヒンダードフェノール系の酸化防止剤(融点下限:218℃、融点上限:223℃、BASF製品の「IRGANOX3114」)を用いた以外は実施例1-9及び2-9と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-11、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-11とする。
【0084】
[実施例1-12及び2-12]
CY-1790に代えて、下記式(9)で表されるヒンダードフェノール系の酸化防止剤(融点下限:240℃、融点上限:245℃、BASF製品の「IRGANOX1330」)を用いた以外は実施例1-9及び2-9と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-12、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-12とする。
【化15】
【0085】
[実施例1-13及び2-13]
CY-1790に代えて、上記式(7)で表されるヒンダードフェノール系の酸化防止剤(融点下限:220℃、融点上限:223℃、ADEKA製品の「AO-20」)を用いた以外は実施例1-9及び2-9と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-13、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-13とする。
【0086】
[実施例1-14及び2-14]
CY-1790に代えて、上記式(9)で表されるヒンダードフェノール系の酸化防止剤(融点下限:243℃、融点上限:245℃、ADEKA製品の「AO-330」)を用いた以外は実施例1-9及び2-9と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を実施例1-14、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を実施例2-14とする。
【0087】
[比較例1-1及び2-1]
多孔性配位高分子に代えてメソポーラスシリカH53(AGCエスアイテック株式会社製品)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を比較例1-1、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を比較例2-1とする。
【0088】
[比較例1-2及び2-2]
多孔性配位高分子に代えてゼオライトF-9(東ソー株式会社製品)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を比較例1-2、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を比較例2-2とする。
【0089】
[比較例1-3及び2-3]
多孔性配位高分子に代えてモレキュラーシーブHUA(ユニオン昭和株式会社製品)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を比較例1-3、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を比較例2-3とする。
【0090】
[比較例1-4及び2-4]
Cu-PCPに代えてCo(Im)4(BASF製品)(ルイス酸の種類:中間的なルイス酸、ルイス酸価:0.18、比表面積:305m2/g)から構成される多孔性配位高分子を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を比較例1-4、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を比較例2-4とする。
【0091】
[比較例1-5及び2-5]
Cu-PCPに代えてAg4(HBTC)2(BASF製品)(ルイス酸の種類:軟らかいルイス酸、ルイス酸価:0.18、比表面積:600m2/g)から構成される多孔性配位高分子を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を比較例1-5、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を比較例2-5とする。
【0092】
[比較例1-6及び2-6]
Cu-PCPに代えて、金属イオンとしてAl3+(ルイス酸の種類:硬いルイス酸、比表面積:1100m2/g)、有機配位子としてテレフタル酸から構成される多孔性配位高分子(BASF製品の「A100」、ルイス酸価:0.12)を用いた以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を比較例1-6、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を比較例2-6とする。
【0093】
[比較例1-7及び2-7]
多孔性配位高分子を用いなかった以外は実施例1-1及び2-1と同様にして成形体を作製した。ポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた例を比較例1-7、芳香族ポリアミド樹脂を用いた例を比較例2-7とする。
【0094】
(PPS樹脂における発生ガスの吸着量の定量分析)
加熱炉内で、多孔性配位高分子0.05gとPPS樹脂5gを300℃で加熱、放置し、その多孔性配位高分子を試料として、酸素燃焼型イオンクロマトグラフィ装置を用いて、多孔性配位高分子に吸着した樹脂発生ガス由来のS元素及びCl元素を定量分析した。S元素及び/又はCl元素の含有量が大きければ大きいほど、プラスチック樹脂からの発生ガスが多孔性配位高分子に有効に吸着されており、発生ガスの外部への発生量を有効に低減できることを示唆している。結果を表1に示す。なお、比較例7では、多孔性配位高分子やその他の吸着剤を用いなかったため、表1においてはS元素及びCl元素の吸着はないものとして「-」と表示した。
【0095】
(金属腐食性評価)
試験管中に各実施例及び比較例の成形体と、腐食の有無を確認するためのテストピース(工具鋼、SKD-11)を入れて封止し、300℃環境下に3時間放置した。この後のテストピースの外観変化(腐食状態)を目視にて以下の評価基準により評価した。結果を表1に示す。
◎:著しい効果あり
○:効果あり
×:効果がほとんど認められない
××:効果なし
【0096】
【0097】
(芳香族PA樹脂における発生ガスの定量分析)
多孔性配位高分子0.5gと芳香族PA樹脂50gを練り込んだものを試料とした。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(アジレントテクノロジー社製の製品名「7890A/5975C」)を用いて、320℃で加熱し、発生したガス成分を分離し質量分析した。質量分析の結果をライブラリと照合し、発生ガス成分の同定を行い、樹脂分解物由来の成分に着目した。総発生ガス量は各ピークを積算することで算出した。発生ガス量が少なければ少ないほど、樹脂からの発生ガスが多孔性配位高分子に有効に吸着されており、発生ガスの外部への発生量を有効に低減できることを示唆している。なお、CH3(CH2)nCNで表される脂肪酸ニトリル(式中、nは4~20の整数を表す)、芳香族アミン類、環状アミド、芳香族アミド重合体を中間的または軟らかいルイス塩基に、CH3(CH2)nCOOHで表される脂肪酸、CH3(CH2)nCONH2で表される脂肪酸アミド(いずれも式中、nは4~20の整数を表す)を硬いルイス塩基に分類し、各成分を積算した。結果を表2に示す。
【0098】
(金属腐食性評価)
試験管中に各実施例及び比較例の成形体と、腐食の有無を確認するためのテストピース(工具鋼、SKD-11)を入れて封止し、300℃環境下に3時間放置した。この後のテストピースの外観変化(腐食状態)を目視にて以下の評価基準により評価した。結果を表2に示す。
◎:著しい効果あり
○:効果あり
×:効果がほとんど認められない
××:効果なし
【0099】
【0100】
(PPS樹脂における発生ガスの定量分析)
加熱炉内で、多孔性配位高分子0.5gとPPS樹脂50gと酸化防止剤0.25gとを300℃で加熱、放置し、発生したガスを吸収液に吸収させた。上記吸収液を、イオンクロマトグラフィ装置を用いて、吸収液に溶けだしたPPS樹脂発生ガス由来のS元素ガス及びCl元素ガスを定量分析した。S元素ガス及び/又はCl元素ガスの発生量が小さければ小さいほど、プラスチック樹脂からの発生ガスが多孔性配位高分子に有効に吸着されており、発生ガスの外部への発生量を有効に低減できることを示唆している。結果を表3に示す。
【0101】
(金属腐食性評価)
試験管中に各実施例及び比較例の成形体と、腐食の有無を確認するためのテストピース(工具鋼、SKD-11)を入れて封止し、300℃環境下に3時間放置した。この後のテストピースの外観変化(腐食状態)を目視にて以下の評価基準により評価した。結果を表3に示す。
◎:著しい効果あり
○:効果あり
×:効果がほとんど認められない
××:効果なし
【0102】
【0103】
(芳香族PA樹脂における発生ガスの定量分析)
多孔性配位高分子0.5gと芳香族PA樹脂50gと酸化防止剤0.25gとを練り込んだものを試料とした。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(アジレントテクノロジー社製の製品名「7890A/5975C」)を用いて、320℃で加熱し、発生したガス成分を分離し質量分析した。質量分析の結果をライブラリと照合し、発生ガス成分の同定を行い、樹脂分解物由来の成分に着目した。総発生ガス量は各ピークを積算することで算出した。発生ガス量が少なければ少ないほど、樹脂からの発生ガスが多孔性配位高分子に有効に吸着されており、発生ガスの外部への発生量を有効に低減できることを示唆している。なお、CH3(CH2)nCNで表される飽和脂肪酸ニトリル(式中、nは4~20の整数を表す)、CpHqCNで表される、モノ不飽和脂肪酸ニトリル、ジ不飽和脂肪酸ニトリル、トリ不飽和脂肪酸ニトリルのような不飽和脂肪酸ニトリル(式中、p及びqの関係は不飽和の炭素間結合の数に依存し、不飽和の炭素間二重結合が1つの場合、qは2p-1であり、不飽和の炭素間二重結合が2つの場合、qは2p-3であり、不飽和の炭素間二重結合が3つの場合、qは2p-5であり、pは5~21の整数を表す。)、芳香族アミン類、環状アミド、芳香族アミド重合体を中間的または軟らかいルイス塩基に、CH3(CH2)nCOOHで表される飽和脂肪酸、CH3(CH2)nCONH2で表される飽和脂肪酸アミド(いずれも式中、nは4~20の整数を表す)、CpHqCOOHで表される、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸のような不飽和脂肪酸、及びCpHqCONH2で表される、モノ不飽和脂肪酸アミド、ジ不飽和脂肪酸アミド、トリ不飽和脂肪酸アミドのような不飽和脂肪酸(いずれも式中、p及びqの関係は不飽和の炭素間結合の数に依存し、不飽和の炭素間二重結合が1つの場合、qは2p-1であり、不飽和の炭素間二重結合が2つの場合、qは2p-3であり、不飽和の炭素間二重結合が3つの場合、qは2p-5であり、pは5~21の整数を表す。)を硬いルイス塩基に分類し、各成分を積算した。結果を表4に示す。
【0104】
(金属腐食性評価)
試験管中に各実施例及び比較例の成形体と、腐食の有無を確認するためのテストピース(工具鋼、SKD-11)を入れて封止し、300℃環境下に3時間放置した。この後のテストピースの外観変化(腐食状態)を目視にて以下の評価基準により評価した。結果を表4に示す。
◎:著しい効果あり
○:効果あり
×:効果がほとんど認められない
××:効果なし
【0105】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本実施形態の成形用組成物は、OA機器、ハードディスク等の記憶媒体装置、半導体関連装置、モーター機器、水廻り部材等のインフラ装置等に適用される精密成形体用材料に好適に用いられる。