IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グッド ティー セルズ、 インコーポレイテッドの特許一覧

特許7526493Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途
<>
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図1
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図2
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図3
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図4
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図5
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図6
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図7
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図8
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図9
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図10
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図11
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図12
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図13
  • 特許-Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】Lrig-1タンパク質に特異的な結合分子及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240725BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240725BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 T
A61P35/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021521303
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 KR2019013670
(87)【国際公開番号】W WO2020080854
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0123858
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518426066
【氏名又は名称】グッド ティー セルズ、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ソク
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7276859(JP,B2)
【文献】特表2022-512749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239964(US,A1)
【文献】国際公開第2015/187359(WO,A1)
【文献】特表2021-514002(JP,A)
【文献】LAEDERICH, M. B. et al.,The Journal of Biological Chemistry,2004年,Vol. 279, No. 45,P. 47050-47056
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains 1)タンパク質に特異的に結合する結合分子であって、
(i)配列番号11で表される重鎖可変領域、及び配列番号12で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;
(ii)配列番号19で表される重鎖可変領域、及び配列番号20で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;
(iii)配列番号27で表される重鎖可変領域、及び配列番号28で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;並びに
(iv)配列番号35で表される重鎖可変領域、及び配列番号36で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;からなる群より選択される、結合分子。
【請求項2】
前記Lrig-1タンパク質は、配列番号1又は3で表されるアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
前記Lrig-1タンパク質は、配列番号2又は4で表されるポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1に記載の結合分子。
【請求項4】
前記結合分子は、Fc領域又は不変領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項5】
前記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体のFc領域、又はハイブリッドFc領域である、請求項4に記載の結合分子。
【請求項6】
前記結合分子は、配列番号37、39、41、42、43、44及び55で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項7】
前記結合分子は、配列番号38又は40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項8】
前記結合分子は、
配列番号37で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域;及び
配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項9】
前記結合分子は、
配列番号39、41、42、43及び55で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域;並びに
配列番号40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項10】
前記結合分子は、配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項11】
前記結合分子は、
配列番号45で表される重鎖、及び配列番号46で表される軽鎖を含む結合分子;
配列番号47で表される重鎖、及び配列番号48で表される軽鎖を含む結合分子;
配列番号49で表される重鎖、及び配列番号50で表される軽鎖を含む結合分子;
配列番号51で表される重鎖、及び配列番号52で表される軽鎖を含む結合分子;並びに
配列番号53で表される重鎖、及び配列番号54で表される軽鎖を含む結合分子;からなる群より選択される、請求項1に記載の結合分子。
【請求項12】
前記結合分子は、抗体又はその抗原結合断片である、請求項1に記載の結合分子。
【請求項13】
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、二価、ミニボディ、二重特異性抗体、抗体模倣体、ユニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ又はその抗原結合断片である、請求項12に記載の結合分子。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の結合分子をコードする核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子が挿入された発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の発現ベクターでトランスフェクションした宿主細胞株。
【請求項17】
(i)配列番号11で表される重鎖可変領域、及び配列番号12で表される軽鎖可変領域を含む結合分子、
(ii)配列番号19で表される重鎖可変領域、及び配列番号20で表される軽鎖可変領域を含む結合分子、
(iii)配列番号27で表される重鎖可変領域、及び配列番号28で表される軽鎖可変領域を含む結合分子、並びに
(iv)配列番号35で表される重鎖可変領域、及び配列番号36で表される軽鎖可変領域を含む結合分子、からなる群より選択される、抗体;並びに、
薬物;を含む抗体薬物結合体。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に記載の結合分子を有効成分として含む、癌の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項19】
前記癌は、固形癌である、請求項18に記載の薬学組成物。
【請求項20】
前記癌は、胃癌、肝臓癌、膠細胞腫、卵巣癌、大膓癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫又は肺癌である、請求項19に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御性T細胞(T regulatory cell;Treg cell)の表面に存在するタンパク質であるLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合できる結合分子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
癌細胞は腫瘍形成に対して効果的な免疫反応を誘導できる免疫原性抗原を発現することが広く考えられている。さらに、腫瘍の微細環境は抗腫瘍反応を活性化するために、TLRシグナルの伝達を誘発できる成分が豊富である(文献参照:Standiford TJ,Keshamouni VG(2012)Breaking the tolerance for tumor:Targeting negative regulators of TLR signaling.Oncoimmunology1:340-345)。これは、疾患の初期段階で、癌細胞が、腫瘍を発病することに対する宿主保護及び腫瘍モデリング作用の両方を発揮する免疫系によって認知され拒絶される機会を有し得ることを意味する。それにもかかわらず、癌細胞はまた、MHC分子の下方調節又は抗原プロセシング及び提供機構のような、抑制性サイトカインの分泌を増加させ、抑制性分子を発現して、癌細胞に対する免疫耐性を誘導する免疫監視を回避するための多くの陰性調節機序を有する。したがって、癌患者は大体不良な免疫力を有することが考えられる。したがって、依然として癌関連免疫抑制の逆転のための製剤又は治療療法を開発する必要がある。
【0003】
一方、抗体ベース癌治療法は、通常の薬物に比べて潜在的に特異性が高く副作用が低いという特性を有する。その理由は、抗体による正常細胞と新生細胞との間の精密な区別が可能であることと、これらの作用方式が細胞毒性免疫細胞の流入及び相補的な活性化といった、毒性が比較的弱い免疫学的抗腫瘍メカニズムに依存するからである。
【0004】
抗体ベース療法のための標的は、正常細胞と新生細胞を適切に区別できる基礎となる特定の性質を持たなければならない。効果的かつ安全な抗体療法を開発するにあたり、腫瘍細胞にのみ独占的に限られるか、正常組織上では全く検出されない標的が理想的であることはいうまでもない。他の面で、高度の過発現は、治療ウィンドウの基礎となり得、遺伝子増幅の結果としてヒト上皮成長因子受容体タイプ2(HER-2)によって例示される低い副作用は、抗体トラスツズマブ(ハーセプチン)の優れた標的である。
【0005】
腫瘍治療法においてすでに承認されたか臨床開発中にある抗体の他の標的は、腫瘍細胞上の標的分子の数値上の過発現に基づかない、固有の特性を有する。プロテオグリカンMUC-1に対する抗体の場合、標的の骨格中に存在するペプチド反復エピトープが腫瘍細胞でアンダーグリコシル化されてその正常な対応物に変更される。CD20(リツキシマブ)、CD52(キャンパス-1H)及びCD22(エプラツズマブ)に対する抗体の場合、抗体標的は腫瘍細胞と正常なリンパ球上で匹敵すべき発現レベルを示す。これに関連し、標的-陰性的な幹細胞が正常なリンパ球のレパートリーを復旧させるため、抗体による正常細胞の除去は寛容される。抗体標的の互いに異なるアプローチの他の例は、癌胎児性抗原(CEA)とカルボアンヒドラーゼIX(CA9)である。これら2つの抗原はすべて、それぞれ結腸と腎臓の正常な上皮から発現する。しかし、放射能標識された造影抗体は腫瘍組織と正常組織をよく区別するため、細胞毒性抗体はよく寛容される。これは、おそらくIgG抗体が接近できない正常な上皮組織の管腔側にのみCA9とCEAの発現が限られるからであるとされる。抗原上皮細胞付着分子(Ep-CAM)もこのカテゴリーに属する。上皮細胞に対する相同器官細胞付着分子であって、これは細胞間空間に位置する。興味深いことは、高親和性抗Ep CAM抗体は非常に毒性が高いのに対し、中間程度の親和性抗体はよく寛容されるという点である。これは、正常細胞に対するEp-CAM標的のアプローチだけでなく、抗体結合の動力学(kinetics)が新たな治療ウィンドウを切り開けることを示唆するものである。
【0006】
新生組織に関連する疾病を治療するうえで8種の抗体が承認されたが、これらの大部分はリンパ腫と白血病に関するものである(Adams,G.P.&Weiner,L.M.(2005)Nat.Biotechnol.23,1147-1157)。ただし、3つのモノクローナル抗体、すなわち、ハーセプチン、アバスチン及びアービタックスだけが癌死亡率の90%以上を占める固形癌種類に効く。実質的に残存する医学的要請、著しい臨床的メリットが認められたmAbがすでに提供されており、これらの大きな商業的成功も様々なグループの患者に対する抗体ベース療法の開発とこれらの効能アップのバランスがよく取れた新規の革新的なアプローチを開発する動機を提供した(Brekke,O.H.&Sandlie,I.(2003)Nat.Rev.Drug Discov.2,52-62;Carter,P.(2001)Nat.Rev.Cancer1,118-129)。
【0007】
アップグレードされた次世代抗体ベース癌治療法の出現に関連してマスターすべき課題の一つは、有利な毒性/効能プロファイルの核心因子である適切な標的分子を選択することである。
【0008】
固形癌の治療に利用可能な現行の抗体は、正常組織に対するこれらの標的発現によって、抗体分子に内在した作用モードの蓄積された力を十分に発揮できない。例えば、ハーセプチンの標的であるHer2/neuは、心臓筋肉をはじめとする多くの正常な人体組織で発現する(Crone,S.A.,Zhao,Y.Y.,Fan,L.,Gu,Y.,Minamisawa,S.,Liu,Y.,Peterson,K.L.,Chen,J.,Kahn,R.,Condorelli,G.et al.(2002)Nat.Med.8,459-465)。その結果、ハーセプチンは、免疫力が減少するように設計されて最大有効量で投薬できないが、これは、そうでない場合、許容不能な毒性が現れるからである。このような「潜在的に鋭い刃を鈍くする措置」はハーセプチンの治療効能に制限を加える。
【0009】
毒性に関連する正常組織では発現させないことに加えて、腫瘍細胞の表面上では強くて高い発現率を示すようにしつつ腫瘍促進機能を示すことが、理想的な抗体標的の好ましい特徴である(Houshmand,P.&Zlotnik,A.(2003)Curr.Opin.CellBiol.15,640-644)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一つの目的は、制御性T細胞(Regulatory T cell;Treg)の表面に存在するLrig-1タンパク質に特異的な結合分子を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、本発明による前記結合分子をコードする核酸分子を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、本発明による前記核酸分子が挿入された発現ベクターを提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、本発明による前記発現ベクターがトランスフェクションした宿主細胞株を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、本発明による抗体薬物結合体を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、本発明による結合分子を含む癌の予防又は治療用薬学組成物を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、個体に本発明で提供する結合分子;又は抗体薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を投与するステップを含む癌の予防又は治療方法を提供することである。
【0017】
しかし、本発明がなそうとする技術的課題は以上に述べた課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、制御性T細胞の表面に特異的に存在するLrig-1タンパク質を見出し、前記タンパク質の抗原決定部位(エピトープ)を選別して前記Lrig-1タンパク質に特異的に結合できるモノクローナル抗体を作製することにより、本発明を完成した。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する結合分子を提供する。
【0020】
本発明で使用される「結合分子」は、キメラ、ヒト化又はヒトモノクローナル抗体のようなモノクローナル抗体を含むインタクトな免疫グロブリン、又は抗原に結合する免疫グロブリン、例えば、インフルエンザAウイルスの単量体HA又は三量体HAとの結合のためにインタクトな(intact)免疫グロブリンと競争する免疫グロブリン断片を含む可変性ドメインを意味する。構造とは関係なく、抗原結合断片は、インタクトな免疫グロブリンによって認識された同一の抗原と結合する。抗原結合断片は、結合分子のアミノ酸配列の2個以上の連続基、20個以上の連続アミノ酸残基、25個以上の連続アミノ酸残基、30個以上の連続アミノ酸残基、35個以上の連続アミノ酸残基、40個以上の連続アミノ酸残基、50個以上の連続アミノ酸残基、60個以上の連続アミノ酸残基、70個以上の連続アミノ酸残基、80個以上の連続アミノ酸残基、90個以上の連続アミノ酸残基、100個以上の連続アミノ酸残基、125個以上の連続アミノ酸残基、150個以上の連続アミノ酸残基、175個以上の連続アミノ酸残基、200個以上の連続アミノ酸残基、又は250個以上の連続アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチド又はポリペプチドを含むことができる。「抗原結合断片」は特に、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)断片、単一鎖抗体(scFv)、二価(bivalent)単一鎖抗体、単一鎖ファージ抗体、ユニボディ(unibody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ、テトラボディ、ポリペプチドへの特定抗原に結合するのに十分な免疫グロブリンの1つ以上の断片を含有するポリペプチドなどを含む。前記断片は、合成で又はインタクトな免疫グロブリンの酵素的又は化学的分解によって生成されるか、組換えDNA技術によって遺伝工学的に生成されてもよい。生成方法は当業界にてよく知られている。
【0021】
本発明において、前記Lrig-1タンパク質は、制御性T細胞の表面に存在する1091個のアミノ酸からなる膜貫通タンパク質であって、細胞外あるいはルーメン側のロイシン反復配列(leucine-rich repeat;LRR)と3つの免疫グロブリン様ドメイン(immunoglobulin-like domains)、細胞膜貫通配列及び細胞質尾部から構成されている。LRIG遺伝子ファミリーはLRIG1、LRIG2とLRIG3が存在し、これらの間のアミノ酸は非常に保全的に構成されている。前記LRIG1遺伝子は正常皮膚で高く発現しており、基底と毛包細胞に発現して上皮幹細胞の増殖を調節することができる。したがって、表皮の恒常性の維持に重要な役割をし、不存在の場合、乾癬や皮膚癌に発展しうる。LRIG1が位置した染色体3p14.3部分が切断される場合には癌細胞に発展する可能性があると報告されており、実際に腎臓癌(renal cell carcinoma)と扁平上皮癌(cutaneous squamous cell carcinoma)ではLRIG1の発現が非常に減少していることが確認された。ところが、最近は、前記Lrig-1を発現する癌は20~30%程度に過ぎないことが究明されたりした。一方、本発明の目的上、前記Lrig-1タンパク質は、ヒト又はマウスに存在するタンパク質であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明において、前記Lrig-1タンパク質は、ヒト由来の配列番号1で表されるポリペプチドであるか、マウス由来の配列番号3で表されるポリペプチドであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
また、本発明において、前記配列番号1で表されるLrig-1タンパク質は、配列番号2で表されるポリヌクレオチドによってコードされるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0024】
さらに、本発明において、前記配列番号3で表されるLrig-1タンパク質は、配列番号4で表されるポリヌクレオチドによってコードされるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明において、前記結合分子は、
配列番号5、13、21及び29で表される群より選択されるアミノ酸配列で表される重鎖CDR1;配列番号6、14、22及び30で表される群より選択されたアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;配列番号7、15、23及び31で表される群より選択されたアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域;並びに
配列番号8、16、24及び32で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;配列番号9、17、25及び33で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2;配列番号10、18、26及び34で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域を含む、結合分子であってもよい。
【0026】
本発明において、前記結合分子は、
(a)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、及び配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、及び配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;
(c)配列番号21で表される重鎖CDR1、配列番号22で表される重鎖CDR2、及び配列番号23で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;並びに
(d)配列番号29で表される重鎖CDR1、配列番号30で表される重鎖CDR2、及び配列番号31で表される重鎖CDR3を含む重鎖領域;からなる群より選択される重鎖可変領域;並びに
(e)配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、及び配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(f)配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、及び配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(g)配列番号24で表される軽鎖CDR1、配列番号25で表される軽鎖CDR2、及び配列番号26で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(h)配列番号32で表される軽鎖CDR1、配列番号33で表される軽鎖CDR2、及び配列番号34で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;からなる群より選択される軽鎖可変領域;を含む結合分子であってもよい。
【0027】
本発明において、前記結合分子は、
(1)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、及び配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、及び配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む結合分子;
(2)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、及び配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、及び配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む結合分子;
(3)配列番号21で表される重鎖CDR1、配列番号22で表される重鎖CDR2、及び配列番号23で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号24で表される軽鎖CDR1、配列番号25で表される軽鎖CDR2、及び配列番号26で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む結合分子;
(4)配列番号29で表される重鎖CDR1、配列番号30で表される重鎖CDR2、及び配列番号31で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号32で表される軽鎖CDR1、配列番号33で表される軽鎖CDR2、及び配列番号34で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含む結合分子;からなる群より選択される結合分子であってもよい。
【0028】
本発明において、前記結合分子は、
配列番号11、19、27及び35で表される群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;及び
配列番号12、20、28及び36で表される群より選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;を含む結合分子であってもよい。
【0029】
本発明において、前記結合分子は、
(i)配列番号11で表される重鎖可変領域、及び配列番号12で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;
(ii)配列番号19で表される重鎖可変領域、及び配列番号20で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;
(iii)配列番号27で表される重鎖可変領域、及び配列番号28で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;及び
(iv)配列番号35で表される重鎖可変領域、及び配列番号36で表される軽鎖可変領域を含む結合分子;からなる群より選択される結合分子であってもよい。
【0030】
本発明において、前記結合分子は、Fc領域(Fragment crystallization region)又は不変領域(constant region)をさらに含むことができる。この時、前記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体のFc領域であるか、それに由来するものであってもよく、あるいはハイブリッドFc(hybrid Fc)領域であってもよい。
【0031】
本発明において、前記Fc領域は、哺乳動物由来IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体のFc領域であってもよく、好ましくは、ヒト由来IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体のFc領域であってもよい。
【0032】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号37で表されるマウス由来IgG2a不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号38で表されるマウス由来免疫グロブリンカッパ(kappa)不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号39又は55で表されるヒト由来IgG1不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号40で表されるヒト由来免疫グロブリンカッパ(kappa)不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号41で表されるヒト由来IgG2不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号42で表されるヒト由来IgG3不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
本発明の一例として、前記不変領域は、配列番号43で表されるヒト由来IgG4不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0039】
本発明の一例として、前記Fc領域は、ヒト由来免疫グロブリンラムダ(lambda)不変領域であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明において、前記「ハイブリッドFc」は、ヒトIgGサブクラスの組み合わせ又はヒトIgD及びIgGの組み合わせから誘導される。前記ハイブリッドFcは、生物学的活性分子、ポリペプチドなどに結合する場合、生物学的活性分子の血清半減期を増加させるだけでなく、Fcポリペプチド融合タンパク質をコードするヌクレオチドが発現する時、ポリペプチドの発現レベルを高める効果がある。
【0041】
本発明の一例として、前記ハイブリッドFc領域は、配列番号44で表されるハイブリッドFcであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
本発明の前記結合分子において、前記Fc又は不変領域は、前記可変領域にリンカーで連結できる。この時、前記Fc又は不変領域のC末端にリンカーが連結され、前記リンカーに本発明の結合分子のN-末端が連結されるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明において、前記「リンカー」は、目的とする疾患の組織又は細胞内で過発現する酵素によって切断可能な配列を含むことができる。前記のように過発現する酵素によって切断可能な場合には、Fc又は不変領域によってポリペプチドの活性が低下するのを効果的に防止することができる。本発明では、リンカーの好ましい例として、血液中に最も多く存在するヒトアルブミンの282番~314番目の部分に位置した33個のアミノ酸からなるペプチドリンカー、より好ましくは、292番~304番目の部分に位置した13個のアミノ酸からなるペプチドリンカーであってもよいし、このような部分は、3次元的な構造上、大部分外部に露出した部分であって、体内で免疫反応を誘導する可能性が最小化された部分である。ただし、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明の結合分子は、配列番号37、39、41、42、43、44及び55で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0045】
本発明の結合分子は、配列番号38又は40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0046】
本発明の結合分子は、
配列番号37で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域;及び
配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0047】
本発明の結合分子は、
配列番号39、41、42、43及び55で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域;並びに
配列番号40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0048】
本発明の結合分子は、
配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる重鎖不変領域をさらに含むことができる。
【0049】
本発明の結合分子は、
配列番号45で表される重鎖、及び配列番号46で表される軽鎖を含む結合分子;
配列番号47で表される重鎖、及び配列番号48で表される軽鎖を含む結合分子;
配列番号49で表される重鎖、及び配列番号50で表される軽鎖を含む結合分子;並びに
配列番号51で表される重鎖、及び配列番号52で表される軽鎖を含む結合分子;からなる群より選択される結合分子であってもよい。
【0050】
本発明の結合分子は、
配列番号53で表される重鎖、及び配列番号54で表される軽鎖を含む結合分子であってもよい。
【0051】
本発明の結合分子は、抗体であることを特徴とするが、これに限定されるものではない。前記抗体は、モノクローナル抗体、全長抗体、又は抗体の一部分であって、Lrig-1タンパク質に結合する能力を有し、本発明の結合分子と競合的にLrig-1抗原決定部位に結合する抗体断片のすべてを含む。
【0052】
本発明において、前記「抗体」は、免疫学的に特定抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体の役割を果たすタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、前記抗原は、制御性T細胞(regulatory T cell)の表面に存在するLrig-1タンパク質であってもよい。好ましくは、前記Lrig-1タンパク質のロイシンリッチ領域又は免疫グロブリン様ドメインを特異的に認識するものであってもよいが、これに限定されない。
【0053】
本発明において、前記「免疫グロブリン」は、重鎖及び軽鎖を有し、それぞれの重鎖及び軽鎖は、不変領域及び可変領域を含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は、相補性決定領域(complementarity determining region、以下、「CDR」という)と呼ばれる3つの多変可能な領域及び4つの構造領域(フレームワーク領域)を含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(エピトープ)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN末端からはじまって、順次に、CDR1、CDR2及びCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別される。
【0054】
また、本発明において、前記「モノクローナル抗体」は、実質的に同一の抗体集団から得た単一分子組成の抗体分子を称する用語で、特定の抗原決定基(エピトープ)に対して単一結合特異性及び親和度を示す。
【0055】
本発明において、前記「全長抗体」は、2個の全長の軽鎖及び2個の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されており、IgA、IgD、IgE、IgM、及びIgGを含む。前記IgGはその亜型(サブタイプ)として、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。
【0056】
また、本発明において、前記「抗体の断片」は、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、Fab’、F(ab’)及びFvなどを含む。前記Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の1番目の不変領域(CH1ドメイン)を有する構造で1つの抗原結合部位を有する。さらに、Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabとは差がある。F(ab’)抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなして生成される。Fv(Variable fragment)は、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体片を意味する。二重鎖Fv(dsFv)は、ジスルフィド結合で重鎖領域と軽鎖領域とが連結されており、単鎖Fv(scFv)は、一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合で連結されている。前記抗体断片は、タンパク質加水分解酵素、例えば、パパイン又はペプシンを用いる場合、Fab又はF(ab’)の断片を得ることができ、遺伝子組換え技術により作製することができる。
【0057】
また、本発明において、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体(humanized antibody)、二価(bivalent)、二重特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異性抗体(bispecific antibody)、抗体模倣体、ユニボディ(unibody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)又はその断片であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
本発明において、前記「キメラ抗体」は、マウス抗体の可変領域及びヒト抗体の不変領域を組換えた抗体であって、マウス抗体に比べて免疫反応が大きく改善された抗体である。
【0059】
また、本発明において、前記「ヒト化抗体」は、ヒトでない種に由来する抗体のタンパク質配列をヒトから自然的に生産された抗体変異体と類似するように変形させた抗体を意味する。その例として、前記ヒト化抗体は、マウス由来のCDRをヒト抗体由来のFRと組換えてヒト化可変領域を製造し、これを好ましいヒト抗体の不変領域と組換えてヒト化抗体を製造することができる。
【0060】
本発明において、前記結合分子は、Lrig-1タンパク質に結合でき、それ以外の他のタンパク質にも結合できる二重特異性抗体又は二重特異性抗原結合断片としても提供可能である。
【0061】
本発明において、前記二重特異性抗体及び二重特異性抗原結合断片は、本発明による結合分子を含むことができる。本発明において、一例として、前記二重特異性抗体及び二重特異性抗原結合断片は、Lrig-1タンパク質に結合できる抗原結合ドメインを含み、ここで、Lrig-1に結合できる抗原結合ドメインは、本発明による結合分子を含むか、これから構成されてもよい。
【0062】
本発明で提供する二重特異性抗体及び二重特異性抗原結合断片は、本発明によるLrig-1タンパク質に結合できる結合分子である抗原結合ドメイン、及び他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインを含む。ここで、他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインは、Lrig-1タンパク質以外の他のタンパク質で、例えば、PD-1又は細胞表面受容体であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明による二重特異性抗体及び二重特異性抗原結合断片は、任意の好適なフォーマット、例えば、全文が本願に参照として引用された文献(参照:Kontermann MAbs2012,4(2):182-197)に記載のフォーマットとして提供可能である。例えば、二重特異性抗体又は二重特異性抗原結合断片は、二重特異性抗体接合体(例:IgG2、F(ab’)2又はCovX-ボディ)、二重特異性IgG又はIgG-型分子(例:IgG、scFv4-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、又は2イン(in)1-IgG、mAb2、又はTandemab common LC)、非対称性二重特異性IgG又はIgG型分子(例:kih IgG、kih IgG common LC、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、電荷対又はSEEDボディ)、小型二重特異性抗体分子(例:ダイアボディ(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAbs、タンデムscFv(taFv)、タンデムdAb/VHH、トリプルボディ、トリプルヘッド、Fab-scFv、又はF(ab’)2-scFv2)、二重特異性Fc及びCH3融合タンパク質(例:taFv-Fc、ジ-ダイアボディ、scDb-CH3、scFv-Fc-scFv、HCAb-VHH、scFv-kih-Fc、又はscFv-kih-CH3)、又は二重特異性融合タンパク質(例:scFv2-アルブミン、scDb-アルブミン、taFv-毒素、DNL-Fab3、DNL-Fab4-IgG、DNL-Fab4-IgG-サイトカイン2)であってもよい。特に、文献(参照:Kontermann MAbs2012,4(2):182-19)の図2を参照する。当業者は本発明による二重特異性抗体及び二重特異性抗原結合断片を設計し製造することができる。
【0064】
本発明において、前記二重特異性抗体を生産する方法は、例えば、全文が本願に参照として引用された文献(参照:Segal and Bast,2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1-2.13.16)に記載のように、還元性ジスルフィド又は非還元性チオエーテル結合と抗体又は抗体断片の化学的架橋結合を含む。例えば、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)は、ジスルフィド連結された二重特異性F(ab)2ヘテロダイマーを生成するために、例えば、ヒンジ領域SH-グループを介してFab断片を化学的に架橋結合させるのに使用できる。
【0065】
また、本発明において、前記二重特異性抗体を生産するための他の方法は、例えば、文献(参照:D.M.and Bast,B.J.2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1-2.13.16)に記載のように、二重特異性抗体を分泌可能なクアドローマ細胞を生成するために、抗体産生ハイブリードマを、例えば、ポリエチレングリコールと融合させることを含む。
【0066】
本発明による二重特異性抗体及び二重特異性抗原結合断片はさらに、例えば、両方とも全文が本願に参照として引用された文献(参照:Antibody Engineering:Methods and Protocols,Second Edition(Humana Press,2012),at Chapter40:Production of Bispecific Antibodies:Diabodies and Tandem scFv(Hornig and Farber-Schwarz)、又はFrench,How to make bispecific antibodies,Methods Mol.Med.2000;40:333-339)に記載のように、例えば、抗原結合分子のためのポリペプチドをコードする核酸作製物から発現によって組換え生産できる。
【0067】
例えば、2個の抗原結合ドメイン(すなわち、PD-1に結合できる抗原結合ドメインのための軽鎖及び重鎖可変ドメイン、及び他の標的タンパク質に結合できる抗原結合ドメインのための軽鎖及び重鎖可変ドメイン)のための軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードし、抗原結合ドメイン間の好適なリンカー又は二量体化ドメインをコードする配列を含むDNA作製物は、分子クローニング技術によって製造できる。組換え二重特異性抗体は、後に好適な宿主細胞(例:哺乳類宿主細胞)中での作製物の発現(例:試験管内)によって生産可能であり、次いで発現した組換え二重特異性抗体は任意に精製可能である。
【0068】
抗体は、非変形の親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和度が改善された変形抗体が生成される親和度成熟工程によって生成できる。親和度成熟抗体は、当該技術分野、例えば、文献(参照:Marks et al.,Rio/Technology10:779-783(1992);Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA91:3809-3813(1994);Schier et al.Gene169:147-155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-159(1995);及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992))に公知の手順で生産できる。
【0069】
同時に、本発明で提供する結合分子は、Lrig-1タンパク質に特異的に結合できる限り、前記アミノ酸配列の変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和度及び/又はその他の生物学的特性を改善させるために抗体のアミノ酸配列に変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/又は置換を含む。
【0070】
このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいて行われる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形状及び種類に対する分析によって、アルギニン、リシンとヒスチジンはすべて正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンとセリンは類似の大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは類似の形状を有することが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リシン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは生物学的に機能均等物といえる。
【0071】
変異を導入するにあたり、アミノ酸の疎水性インデックス(hydropathic index)が考えられる。それぞれのアミノ酸は、疎水性と電荷によって疎水性インデックスが付与されている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。タンパク質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を付与するにあたり、疎水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似の疎水性インデックスを有するアミノ酸で置換してこそ類似の生物学的活性を保有できることは公知の事実である。疎水性インデックスを参照して変異を導入させる場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらにより好ましくは±0.5以内の疎水性インデックス差を示すアミノ酸の間に置換をする。
【0072】
一方、類似の親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸間の置換が均等な生物学的活性を有するタンパク質をもたらすこともよく知られている。米国特許第4,554,101号に開示されているように、次の親水性値がそれぞれのアミノ酸残基に付与されている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。親水性値を参照して変異を導入させる場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらにより好ましくは±0.5以内の親水性値の差を示すアミノ酸の間で置換を行うことができる。
【0073】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質におけるアミノ酸交換は、当該分野にて公知である(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York(1979))。最も通常起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Gln/Gluの間の交換である。
【0074】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、本発明の結合分子は、配列リストに記載の配列と実質的な同一性を示す配列も含むと解釈される。
【0075】
本発明において、用語「実質的な同一性」とは、本発明の配列と任意の他の配列を最大限に対応するように並列し、当業界で通常利用されるアルゴリズムを用いて並列された配列を分析した場合に、最小61%の相同性、より好ましくは70%の相同性、さらにより好ましくは80%の相同性、最も好ましくは90%の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界にて公知である。アラインメントに対する多様な方法及びアルゴリズムは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981);Needleman and Wunsch,J.Mol.Bio.48:443(1970);Pearson and Lipman,Methods in Mol.Biol.24:307-31(1988);Higgins and Sharp,Gene73:237-44(1988);Higgins and Sharp,CABIOS5:151-3(1989);Corpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881-90(1988);Huang et al.,Comp.Appl.BioSci.8:155-65(1992)及びPearson et al.,Meth.Mol.Biol.24:307-31(1994)に開示されている。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10(1990))は、NBCI(National Center for Biological Information)などでアクセス可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn and tblastxのような配列分析プログラムと連動して用いることができる。BLSATはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性の比較方法は、オンライン(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.html)を通して確認可能である。
【0076】
本発明において、前記結合分子、好ましくは、前記抗体は、抗体を生産する通常の方法によって生成されてもよいが、親和度成熟(Affinity maturation)によって生成可能である。
【0077】
本発明において、前記「親和度成熟(Affinity maturation)」は、活性化されたB細胞が免疫反応過程で抗原に対する親和度が増加した抗体を生産する過程を意味する。本発明の目的上、前記親和度成熟は、自然で起こる過程と同様に、突然変異と選択の原理に基づいて親和度成熟によって生成された抗体又は抗体断片を生成することができる。
【0078】
本発明で提供する結合分子、好ましくは、抗体は、免疫細胞の中で特に制御性T免疫細胞(Treg cell)の機能を抑制して癌を効果的に予防、改善又は治療することができる。
【0079】
本発明において、前記「癌」は、哺乳類において典型的に調節されない細胞成長で特徴づけられた生理的状態を示すか、指す。本発明において、予防、改善又は治療の対象になる癌は、固形組織(solid organ)で異常に細胞が成長して発生した塊からなる固形癌(solid tumor)であってもよく、固形組織の部位によって、胃癌、肝臓癌、膠細胞腫、卵巣癌、大膓癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫又は肺癌などであってもよいし、好ましくは、黒色腫であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0080】
本発明の他の実施形態によれば、本発明で提供する前記結合分子をコードする核酸分子を提供する。
【0081】
本発明の核酸分子は、本発明で提供する結合分子のアミノ酸配列を、当業者に知られているように、ポリヌクレオチド配列に翻訳された核酸分子のすべてを含む。そのため、ORF(open reading frame)による多様なポリヌクレオチド配列が製造可能であり、これもすべて本発明の核酸分子に含まれる。
【0082】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記単離された核酸分子が挿入された発現ベクターを提供する。
【0083】
本発明において、前記「ベクター」は、ある核酸分子が連結された他の核酸を輸送できる前記核酸分子である。ベクターの一類型は、追加的なDNAセグメントがライゲーションできる円形二重鎖DNAを指す「プラスミド」である。他の類型のベクターは、ファージベクターである。さらに他の類型のベクターはウイルス性ベクターで、追加的なDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションできる。あるベクターは、それらが流入した宿主細胞で自律的な複製が可能である(例えば、バクテリア性ベクターはバクテリア性複製起源を有するエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に流入しながら宿主細胞のゲノムに統合され、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。それだけでなく、あるベクターは、これらが作動レベルで連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本願において、「組換え発現ベクター」又は単に「発現ベクター」と名付けられる。一般的に、組換えDNA手法で有用な発現ベクターは、たびたびプラスミドの形態で存在する。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドがベクターのうち最も通常使用される形態であるため、相互交換して使用可能である。
【0084】
本発明において、前記発現ベクターの具体例としては、商業的に広く使用されるpCDNAベクター、F、R1、RP1、Col、pBR322、ToL、Tiベクター;コスミド;ラムダ、ラムダ状(lambdoid)、M13、Mu、p1 P22、Qμμ、T-even、T2、T3、T7などのファージ;植物ウイルスからなる群より選択できるが、これに限定されるものではなく、当業者に発現ベクターとして知られたすべての発現ベクターは本発明に使用可能であり、発現ベクターを選択する時には、目的とする宿主細胞の性質による。宿主細胞へのベクターの導入時、リン酸カルシウムトランスフェクション、ウイルス感染、DEAE-デキストラン調節トランスフェクション、リポフェクタミントランスフェクション又は電気穿孔法によって行われるが、これに限定されるものではなく、当業者は使用する発現ベクター及び宿主細胞に適した導入方法を選択して用いることができる。好ましくは、ベクターは、1つ以上の選別マーカーを含むが、これに限定されず、選別マーカーを含まないベクターを用いて生産物の生産の有無によって選別可能である。選別マーカーの選択は、目的とする宿主細胞によって選別され、これはすでに当業者に知られた方法を利用するので、本発明はこれに限定を設けない。
【0085】
本発明において、前記核酸分子を、精製を容易にするために、タグ配列を発現ベクター上に挿入して融合させることができる。前記タグとしては、ヘキサ-ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、mycタグ又はflagタグを含むが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた精製を容易にするタグはすべて本発明で利用可能である。
【0086】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する前記発現ベクターでトランスフェクションした宿主細胞株を提供する。
【0087】
本発明において、前記「宿主細胞」には、ポリペプチド挿入物の組込みのためのベクターのレシピエント(recipient)であり得るか、又はレシピエントであった個別的な細胞又は細胞培養物が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれ、前記子孫は自然的な、偶発的な又は故意の突然変異のため、必ずしも元の親細胞と完全に同一(形態学上又はゲノムDNA補完体において)でなくてもよい。宿主細胞には本願のポリペプチドで体内でトランスフェクションした細胞が含まれる。
【0088】
本発明において、前記宿主細胞としては、哺乳動物、植物、昆虫、菌類又は細胞性起源の細胞を含むことができ、例えば、大膓菌、ストレプトミセス、サルモネラ・ティフィムリウムなどのバクテリア細胞;酵母細胞、ピキア・パストリスなどの菌類細胞;ドロソフィラ、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞、Chinese hamster ovary cells)、SP2/0(マウス骨髄腫)、ヒトリンパ芽球(Human lymphoblastoid)、COS、NSO(マウス骨髄腫)、293T、ボウズメラノーマ細胞、HT-1080、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞、Baby Hamster Kidney cells)、HEK(ヒト胚腎臓細胞、Human Embryonic Kidney cells)又はPERC.6(ヒト網膜細胞)の動物細胞;又は植物細胞であってもよいが、これに限定されるものではなく、当業者に知られた宿主細胞株として使用可能な細胞はすべて利用可能である。
【0089】
本発明において、前記トランスフェクション方法は、前記宿主細胞に目的とするベクターを注入させる任意の方法であって、宿主細胞にベクターを注入させることができる公知の方法であればすべて含まれ、例えば、CaClを用いた方法、電気穿孔法、微細注入法、カルシウムホスフェート沈殿法、電気穿孔法、リポソーム媒介トランスフェクション法、DEAE-デキストラン処理法、遺伝子ボンバードメント及びウイルスを用いたトランスフェクション法などを利用することができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する抗体及び薬物を含む抗体薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を提供する。
【0091】
本発明において、前記「抗体薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)」とは、抗体と薬物の生物学的活性を低下させることなく薬物と抗体を化学的に連結した形態を指す。本発明において、前記抗体薬物結合体は、抗体の重鎖及び/又は軽鎖のN末端のアミノ酸残基に薬物が結合した形態、具体的には、抗体の重鎖及び/又は軽鎖のN末端、α-アミノ基に薬物が結合した形態をいう。
【0092】
本発明において、前記「薬物」は、細胞に特定の生物学的活性を有する任意の物質を意味することができ、これはDNA、RNA又はペプチド(Peptide)を含む概念である。前記薬物は、α-アミノ基と反応して架橋できる反応基を含む形態であってもよいし、α-アミノ基と反応して架橋できる反応基を含むリンカーが連結されている形態も含む。
【0093】
本発明において、前記α-アミノ基と反応して架橋できる反応基の例としては、抗体の重鎖又は軽鎖のN-末端のα-アミノ基と反応して架橋できれば、その種類は特に限定されず、当業界で公知のアミノ基と反応する種類をすべて含む。その例として、イソチオシアネート(Isothiocyanate)、イソシアネート(Isocyanates)、アシルアジド(Acyl azide)、NHSエステル(NHS ester)、スルホニルクロライド(Sulfonyl chloride)、アルデヒド(Aldehyde)、グリオキサール(Glyoxal)、エポキシド(Epoxide)、オキシラン(Oxirane)、カーボネート(Carbonate)、アリールハライド(Aryl halide)、イミドエステル(Imidoester)、カルボイミド(Carbodiimide)、アンハイドライド(Anhydride)及びフルオロフェニルエステル(Fluorophenyl ester)のいずれか1つであってもよいが、これに限定されるものではない。本発明において、前記薬物は、Lrig-1抗体が標的とする疾患である、癌を治療できる薬物で、抗癌剤であってもよい。
【0094】
本発明において、前記抗癌剤は、これに限定されるものではないが、ナイトロジェンマスタード、イマチニブ、オキサリプラチン、リツキシマブ、エルロチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、ニロチニブ、セマサニブ、ボスチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、レスタウルチニブ、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、スニチニブ、カルボプラチン、ソラフェニブ、ベバシズマブ、シスプラチン、セツキシマブ、ヴィスクム・アルブム、アスパラギナーゼ、トレチノイン、ヒドロキシカルバミド、ダサチニブ、エストラムスチン、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、イブリツモマブ・チウキセタン、ヘプタプラチン、メチルアミノレブリン酸、アムサクリン、アレムツズマブ、プロカルバジン、アルプロスタジル、硝酸ホルミウムキトサン、ゲムシタビン、ドキシフルリジン、ペメトレキセド、テガフール、カペシタビン、ギメラシン、オテラシル、アザシチジン、メトトレキサート、ウラシル、シタラビン、フルオロウラシル、フルダラビン、エノシタビン、フルタミド、カペシタビン、デシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、カルモフール、ラルチトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ベロテカン、トポテカン、ビノレルビン、エトポシド、ビンブラスチン、イダルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ピラルビシン、アクラルビシン、ペプロマイシン、テムシロリムス、テモゾロミド、ブスルファン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、アルトレタミン、ダカルバジン、チオテパ、ニムスチン、クロラムブシル、ミトラクトール、レウコボリン、トレトニン、エキセメスタン、アミノグルテチミド、アナグレリド、オラパリブ、ナベルビン、ファドロゾール、タモキシフェン、トレミフェン、テストラクトン、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール、ビカルタミド、ロムスチン、5FU、ボリノスタット、エンチノスタット及びカルムスチンからなる群より選択可能である。
【0095】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する結合分子、又は抗体薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を有効成分として含む癌の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0096】
本発明で提供する結合分子、好ましくは、抗体は、免疫細胞の中で特に制御性T免疫細胞(Treg cell)の機能を抑制させて癌を効果的に予防、改善又は治療することができる。
【0097】
本発明において、前記「癌」は、哺乳類において典型的に調節されない細胞成長で特徴づけられた生理的状態を示すか、指す。本発明において、予防、改善又は治療の対象になる癌は、固形組織(solid organ)で異常に細胞が成長して発生した塊からなる固形癌(solid tumor)であってもよく、固形組織の部位によって、胃癌、肝臓癌、膠細胞腫、卵巣癌、大膓癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫又は肺癌などであってもよいし、好ましくは、黒色腫であってもよいが、これに限定されるものではない。一方、本発明において、「予防」は、本発明の薬学組成物を用いて疾患の症状を遮断するか、その症状を抑制又は遅延させるすべての行為であれば制限なく含むことができる。
【0098】
また、本発明において、「治療」は、本発明の薬学組成物を用いて疾患の症状が好転するか、有利になるすべての行為であれば制限なく含むことができる。
【0099】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末又は飲料形態であることを特徴とし、前記薬学組成物は、ヒトを対象にすることを特徴とすることができる。
【0100】
本発明において、前記薬学組成物はこれらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用できる。本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプル又は複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0101】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート又は鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含んでもよい。
【0102】
本発明において、前記薬学組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下又は直腸が含まれる。経口又は非経口投下が好ましい。
【0103】
本発明において、前記「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内及び頭蓋骨内注射又は注入技術を含む。本発明の薬学組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与可能である。
【0104】
本発明の前記薬学組成物は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、定式、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合及び予防又は治療される特定疾患の重症を含んだ様々な要因によって多様に変化可能であり、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適宜選択可能であり、1日0.0001~50mg/kg又は0.001~50mg/kg投与することができる。投与は、1日に1回投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる場合でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明による医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化可能である。
【0105】
本発明のさらに他の実施形態によれば、個体に、本発明で提供する結合分子;又は抗体薬物結合体(Antibody-Drug Conjugate、ADC)を薬学的有効量で投与するステップを含む癌の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0106】
本発明で提供する結合分子、好ましくは、抗体は、免疫細胞の中で特に制御性T免疫細胞(Treg cell)の機能を抑制させて癌を効果的に予防、改善又は治療することができる。
【0107】
本発明において、前記「個体」は、免疫関連疾患の発病が疑われる個体であって、前記癌又は免疫関連疾患発病の疑われる固体は、当該疾患が発病したか発病しうるヒトを含むマウス、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明で提供する結合分子;又は抗体薬物結合体で治療可能な個体は制限なく含まれる。
【0108】
本発明の前記方法は、本発明で提供する結合分子;又は抗体薬物結合体を薬学的有効量で投与することを含むことができる。好適な1日の総使用量は正しい医学的判断範囲内で処置医師によって決定可能であり、1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては、他の製剤が使用されるか否かをはじめとする具体的な前記有効成分を含む組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び前記有効成分を含む組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物とともに使用されるか同時使用される薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野にてよく知られた類似因子によって異なって適用することが好ましい。
【0109】
一方、これに限定されないが、前記免疫関連疾患の予防又は治療方法は、1つ以上の疾患に対する治療的活性を有する化合物又は物質を投与することをさらに含む併用療法であってもよい。
【0110】
本発明において、前記「併用」は、同時、個別又は順次投与を示すことが理解されなければならない。前記投与が順次又は個別的な場合、2次成分の投与の間隔は、前記併用の有利な効果を失わないようにするものでなければならない。
【0111】
本発明において、前記結合分子;又は抗体薬物結合体の投与用量は、患者の体重1kgあたり約0.0001μg~500mgであってもよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0112】
本発明によるLrig-1タンパク質に特異的な結合分子、好ましくは、抗体は、制御性T細胞の機能を抑制して、癌の中でも特に固形癌を効果的に予防、改善又は治療することができる。
【0113】
また、本発明によるLrig-1タンパク質に特異的な結合分子、好ましくは、抗体は、従来商業的に販売されていたLrig-1に対する抗体と比較する時、Lrig-1タンパク質により効果的に標的化することができ、結合力にも非常に優れるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の構造を示す図である。
図2】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の構造を示す図である。
図3】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の抗原決定基(エピトープ)を予測した結果を示す図である。
図4】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質の抗原決定基(エピトープ)を予測した結果を示す図である。
図5】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
図6】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
図7】本発明の一実施例によるLrig-1 mRNAの発現程度を示す図である。
図8】本発明の一実施例によるLrig-1、Lrig-2及びLrig-3 mRNAの発現程度を示す図である。
図9】本発明の一実施例による制御性T細胞と非制御性T細胞内のLrig-1タンパク質の発現量の比較結果を示す図である。
図10】本発明の一実施例による制御性T細胞の表面にLrig-1タンパク質の発現を示す図である。
図11】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9及びH6)のLrig-1タンパク質に対する結合力を分析した結果を示す図である。
図12】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9及びH6)の制御性T細胞内におけるLrig-1タンパク質誘導Stat3リン酸化調節機序を分析した結果を示す図である。
図13】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9及びH6)を用いた癌治療効果の実験設計図を簡略に示す図である。
図14】本発明の一実施例によるLrig-1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9及びH6)を用いた癌治療効果を分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
本発明の一実施形態によれば、Lrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains1)タンパク質に特異的に結合する結合分子であって、
前記結合分子は、配列番号5、13、21及び29で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;配列番号6、14、22及び30で表される群より選択されたアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;配列番号7、15、23及び31で表される群より選択されたアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域;並びに
配列番号8、16、24及び32で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;配列番号9、17、25及び33で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2;配列番号10、18、26及び34で表される群より選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域を含むものである、結合分子を提供する。
【0116】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例
【0117】
[準備例1]T細胞の亜型細胞の培養
制御性T細胞(Treg)でのみLrig-1タンパク質が発現するかを確認するために、T細胞の亜型(subset)であるTh0、Th1、Th2、Th17及びiTregを用意した。前記iTregは、自然的に分離したnTregとは異なり、下記の組成を含む培地で分化を人工的に誘導した細胞を意味する。
【0118】
T細胞の亜型はまず、マウスの脾臓から得たナイーブ(naive)T細胞を分離した後、ウシ胎児血清(FBS;hyclone、logan、UT)10%を含むRPMI1640(Invitrogen Gibco、Grand Island、NY)栄養培地に下記表1の成分をそれぞれさらに含ませて、37℃、5%CO培養器内で72時間培養によりそれぞれの細胞に分化誘導した。
【0119】
【表1】
【0120】
[実施例1]Lrig-1構造の分析
制御性T細胞の表面タンパク質であるLrig-1タンパク質に特異的な抗体を作製するために、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインの3次元立体構造を予測した。
まず、抗原決定基(Epitope)の塩基配列予測のためにLrig-1タンパク質の細胞外ドメイン(Extracellular domain;ECD)の構造を確認するために、Uniprot(http://www.uniprot.org)とRCSB Protein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb)ツールを用いて3次元立体構造を予測した後、その結果を図1及び2に示した。
【0121】
図1に示すように、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインのうち、Lrig-LRRドメイン(アミノ酸配列41~494番)内にはLRR1~LRR15の計15個のロイシンリッチ領域(Leucine rich region)が存在した。前記LRRドメインそれぞれは23~27個のアミノ酸から構成され、ロイシンは3~5個が存在した。
【0122】
また、図2に示すように、Lrig-1タンパク質の細胞外ドメインのうち、Lrig-1タンパク質のアミノ酸配列494~781番には免疫グロブリン様ドメイン(Immunoglobulin-like domain)が3個存在した。
【0123】
[実施例2]Lrig-1抗原決定基(エピトープ)のアミノ酸配列の予測
前記塩基配列の予測は、Lrig-1タンパク質の構造をベースとする抗原決定基予測ソフトウェアであるElliproサーバ(http://tools.iedb.org/ellipro/)を用いた。前記Ellipro検索エンジンは、現存する抗原決定基を予測するアルゴリズムの中で最も信頼度が高いと知られた検索エンジンに相当してこれを用いた。
【0124】
抗原決定基予測ソフトウェアに前記実施例1で分析された細胞外ドメインを入力した後、予測された抗原決定基の予測された連続又は不連続アミノ酸配列を図3及び4に示した。
【0125】
図3及び4に示すように、連続した抗原決定基のアミノ酸配列は計22個が予測され、不連続した抗原決定基のアミノ酸配列は計8個が予測された。
【0126】
[製造例1~8]Lrig-1タンパク質に特異的なモノクローナル抗体の作製
本発明によるLrig-1タンパク質に特異的な抗体を作製した。本抗体は、特定の抗原決定基を定めて生産せず、Lrig-1タンパク質にどの部位でも結合できる抗体を生産した。
【0127】
前記抗体を作製するために、Lrig-1タンパク質が発現する細胞を作製した。より詳しくは、配列番号2に相当するDNA断片及びpcDNA(hygro)を切断酵素で切断した後、37℃で培養してライゲーションして、Lrig-1タンパク質のDNA配列が挿入されたpcDNAを作製した。前記作製された配列番号2が挿入されたpcDNAはL細胞にトランスフェクションにより導入されて、L細胞の表面にLrig-1タンパク質が発現できるようにした。
【0128】
前記細胞表面に発現するLrig-1に結合できる軽鎖及び重鎖アミノ酸の配列をHuman scFv libraryから選別して、計8個の重鎖及び軽鎖を選別した。
【0129】
前記選別された重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をmlgG2a Fc領域又はヒトIgG1 Fc領域と融合してモノクローナル抗体を作製した。このように作製されたモノクローナル抗体の配列は下記表2の通りである。
【0130】
【表2】
【0131】
[実施例3]Lrig-1 mRNAの制御性T細胞での特異的発現の確認
Lrig-1タンパク質が制御性T細胞に特異的なバイオマーカーとして作用できるかを検証した。
【0132】
前記検証のために、マウスの脾臓からCD4ビーズを通して磁気活性化セルソーター(magnet-activated cell sorting;MACS)を用いてCD4 T細胞を分離した。以後、CD25抗体を用いて、蛍光活性化セルソーター(FACS)を用いて制御性T(CD4CD25 T)細胞及び非制御性T(CD4CD25 T)細胞を分離した。それぞれの細胞及び前記準備例1で分化された細胞はトリゾール(Trizol)を用いてmRNAを抽出した後、ゲノミックRNAは、gDNA抽出キット(Qiagen)を用いて、会社で提供したプロトコルによって、gDNAを除去した。gDNAの除去されたmRNAは、BDsprint cDNA合成キット(Clonetech)によりcDNAに合成した。
【0133】
前記cDNAでLrig-1 mRNAの発現量を定量的に確認するためにリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real time PCR)を行った。
【0134】
前記リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、SYBR Green(Molecular Probes)を用いて、会社で提供したプロトコルによって、95℃で3分、61℃で15秒、72℃で30秒ずつ、40サイクルの条件で、下記表3のプライマーを用いて行い、相対的な遺伝子発現量はΔΔCT方法を用いて計算し、HPRTを用いて標準化(normalization)して、その結果を図5~8に示した。
【0135】
【表3】
【0136】
図5に示すように、非制御性T(CD4CD25 T)細胞に比べて、制御性T(CD4CD25 T)細胞でLrig-1の発現が18.1倍高いことが分かる。これは、従来知られている制御性T細胞のマーカーであるLag3及びIkzf4と比較した時、約10倍程度発現量が高い水準であった。
【0137】
また、図6及び7に示すように、他の種類の免疫細胞に比べて、制御性T細胞、特に誘導された制御性T細胞(iTreg)に比べて、自然的に分離した制御性T細胞(nTreg)でLrig-1 mRNAの発現が著しく高かった。
【0138】
さらに、図8に示すように、Lrigファミリーに相当するLrig-1、Lrig-2及びLrig-3のうち、Lrig-1の発現が最も高かった。
【0139】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞、特に自然的に存在する制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0140】
[実施例4]Lrig-1タンパク質の制御性T細胞での特異的発現の確認
Lrig-1 mRNAから発現したLrig-1タンパク質が制御性T細胞でのみ特異的に発現するかを確認した。
【0141】
制御性T細胞特異的な転写因子であるFOXP3プロモーターにRFP(Red fluorescence protein)が結合したFOXP3-RFP注入(ノックイン)マウスを用いて、前記マウスの脾臓から、CD4ビーズで磁気活性化セルソーター(magnet-activated cell sorting;MACS)を用いてCD4 T細胞を分離した。以後、RFPタンパク質を用いて、蛍光活性化セルソーター(FACS)により制御性T(CD4RFP T)細胞及び-制御性T(CD4RFP T)を分離して得た。それぞれの前記細胞は、購入したLrig-1抗体及び陰性対照群はアイソタイプ(isotype)により染色して蛍光活性細胞分類機でLrig-1の発現量を測定して、その結果を図9に示した。
【0142】
図9に示すように、点線で表される非制御性T細胞の場合、陰性対照群とほぼ同じLrig-1の発現レベルを見せたが、制御性T細胞の場合、Lrig-1の発現レベルの高い細胞が多数存在した。
【0143】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0144】
[実施例5]制御性T細胞の表面でのLrig-1タンパク質特異的発現の確認
Lrig-1タンパク質が細胞治療のターゲットになるためには、制御性T細胞の表面に発現してこそより効果的にターゲット治療が可能なため、Lrig-1タンパク質が表面で発現するか否かを確認した。
【0145】
前記準備例1のそれぞれの分化されたT細胞の亜型を抗CD4-APC及び抗Lrig-1-PE抗体で染色し、蛍光活性細胞分類機(Fluorescence-Activated Cell Sorter;FACS)を用いてそれぞれの細胞表面でLrig-1の発現量を測定して、その結果を図10に示した。
【0146】
図10に示すように、活性化されたT細胞(activated T cell)、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞及びナイーブ(Naive)T細胞ではLrig-1の発現が0.77~15.3の量で発現するのに対し、分化が誘導されたT細胞(iTreg)では83.9と高く発現した。
【0147】
前記結果を通して、本発明によるLrig-1タンパク質は、制御性T細胞(Treg細胞)で特異的に発現するだけでなく、特にTreg細胞の表面でより高く発現することが分かる。
【0148】
[実施例6]本発明による抗体のLrig-1タンパク質に対する結合能評価
前記製造例1~8で作製された本発明によるモノクローナル抗体がLrig-1をよく認識するかを確認するために、Lrig-1を安定して発現するL細胞に前記製造例1~8の抗体それぞれを結合させた後、マウス抗体を認識できかつ、eFlour670がコンジュゲーション(conjugation)された二次抗体(secondary antibody)を入れた後、FACSを用いて前記モノクローナル抗体のLrig-1タンパク質に対する結合力を分析して、その結果を図11に示した。
【0149】
図11に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9及びH6)ともL細胞の表面に存在するLrig-1タンパク質を効果的に認識して結合したことを確認することができた。
【0150】
[実施例7]本発明による抗体のTreg細胞内の信号伝達経路の調節
前記製造例1~8で作製された本発明によるモノクローナル抗体がLrig-1タンパク質を通してTreg細胞内の信号伝達経路にどのような影響を与えるかを分析するために、前記製造例1~4の抗体をTreg細胞に処理して前記Treg細胞の表面に存在するLrig-1を刺激した後、ホスホチロシン免疫ブロット(phosphotyrosine immunoblot)により刺激されたTreg細胞内に存在するStat3タンパク質のチロシンリン酸化の程度を分析し、その結果を図12に示した。
【0151】
図12に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9及びH6)は、Stat3のリン酸化をiTreg細胞と同じ水準に引き続き維持及び減少させることを確認することができた。
【0152】
[実施例8]本発明による抗体の癌治療効果
前記製造例5~8で作製された本発明によるモノクローナル抗体(A8、B8、D9及びH6)の固形癌に対する治療効果を確認するために、図13に示すように、B16F10黒色腫細胞(メラノーマ細胞)をマウスなどに3×10細胞の量で皮下注射した後、4日、8日、12日目に、前記製造例5~8の抗体を200μgの量で腹腔内注射した。前記メラノーマ細胞の移植後、時間の経過による腫瘍の体積変化を測定してその結果を図14に示した。
【0153】
図14に示すように、本発明によるLrig-1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9及びH6)を処理した場合、抗体を処理しない陰性対照群に比べて腫瘍の大きさが著しく減少したことを確認することができた。
【0154】
これを通して、本発明によるLrig-1タンパク質特異的なモノクローナル抗体は、多様な固形癌細胞の成長を抑制して、これを効果的に予防、改善又は治療することができることが分かる。
【0155】
以上、本発明について詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲に記載の本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、制御性T細胞(T regulatory cell;Treg cell)の表面に存在するタンパク質であるLrig-1(leucine-rich and immunoglobulin-like domains 1)タンパク質に特異的に結合できる結合分子及びその用途で、癌の予防又は治療の用途に関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
0007526493000001.app