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特許7526499流体制御機器の動作情報収集システム、流体制御機器、流体制御機器の動作情報収集方法、及びコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】流体制御機器の動作情報収集システム、流体制御機器、流体制御機器の動作情報収集方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20240725BHJP
   G01M 3/00 20060101ALI20240725BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F16K37/00 F
G01M3/00 H
G01M3/26 N
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021561469
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043912
(87)【国際公開番号】W WO2021106966
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2019215303
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 航大
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-189851(JP,A)
【文献】特開平06-129941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体制御機器の動作情報を収集するシステムであって、
前記流体制御機器から、開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化の検出値を取得する検出値取得手段と、
前記検出値に基づき、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する算出処理手段と、
前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間で区切られた検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録する動作情報登録手段と、を有
前記動作情報登録手段は、前記流体制御機器の開閉動作時における前記流体制御機器の動作情報のみを登録する、
流体制御機器の動作情報収集システム。
【請求項2】
前記算出処理手段は、前記検出値に基づき、所定時間ごとの検出値の変化割合の平均値を算出し、
前記動作情報登録手段は、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間ごとの検出値の変化割合の平均値を動作情報記憶手段に登録する、
請求項1記載の流体制御機器の動作情報収集システム。
【請求項3】
前記算出処理手段は、前記検出値に基づき、所定時間ごとの検出値の変化割合の最大値を算出し、
前記動作情報登録手段は、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間ごとの検出値の変化割合の最大値を動作情報記憶手段に登録する、
請求項1記載の流体制御機器の動作情報収集システム。
【請求項4】
前記算出処理手段は、前記検出値に基づき、前記検出値の所定の閾値によって所定時間に区切られた連続する検出値の変化割合を算出し、
前記動作情報登録手段は、前記流体制御機器の動作情報として、前記検出値の所定の閾値によって所定時間に区切られた連続する検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録する、
請求項1記載の流体制御機器の動作情報収集システム。
【請求項5】
前記動作情報記憶手段を参照して、前記流体制御機器の動作情報として登録されている検出値の変化割合を判断基準として、前記所定時間ごとの検出値の変化割合が当該所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えるか否かを判断する判断処理手段をさらに有し、
前記動作情報登録手段は、前記所定時間ごとの検出値の変化割合が前記所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えると判断された場合に、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間ごとの検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録する、
請求項1記載の流体制御機器の動作情報収集システム。
【請求項6】
前記判断処理手段は、前記動作情報記憶手段に記憶されている動作情報のうち、最新の動作情報を判断基準とする、
請求項5記載の流体制御機器の動作情報収集システム。
【請求項7】
前記検出値に基づき、前記流体制御機器の開閉動作が実行されている時間を特定する特定処理手段、をさらに有し、
前記算出処理手段は、前記流体制御機器の開閉動作が実行されている時間を算出処理の対象時間とする、
請求項記載の流体制御機器の動作情報収集システム。
【請求項8】
動作情報収集モジュールとして、前記請求項1乃至いずれかの項に記載の流体制御機器の動作情報収集システムを内蔵する、
流体制御機器。
【請求項9】
流体制御機器の動作情報を収集する方法であって、
コンピュータが、
前記流体制御機器から、開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化の検出値を取得する検出値取得処理と、
前記検出値に基づき、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する算出処理と、
前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間で区切られた検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録する動作情報登録処理と、を実行
前記動作情報登録処理では、前記流体制御機器の開閉動作時における前記流体制御機器の動作情報のみを登録する、
流体制御機器の動作情報収集方法。
【請求項10】
流体制御機器の動作情報を収集するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに対し、
前記流体制御機器から、開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化の検出値を取得する検出値取得処理と、
前記検出値に基づき、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する算出処理と、
前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間で区切られた検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録する動作情報登録処理と、を実行させ、
前記動作情報登録処理では、前記流体制御機器の開閉動作時における前記流体制御機器の動作情報のみを登録させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御機器の動作情報を収集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理においては薄膜の微細化が求められ、近年では原子レベルや分子レベルの厚さで薄膜を形成するALD (Atomic Layer Deposition)という成膜方法が使われている。
しかし、そのような薄膜の微細化は流体制御機器に今まで以上の高頻度な開閉動作を要求しており、その負荷により流体の漏出等を惹き起こしやすくなる場合がある。そのため、流体制御機器における流体の漏出を容易に検知できる技術への要求が高まっている。
また、漏出を容易に検知できるだけでなく、従来は考慮していなかった流体制御機器の使用頻度、温度、湿度、及び振動等、上記漏出を始めとして流体制御機器の異常に影響を及ぼす様々な環境要因情報を収集し、異常との相関を分析し、異常発生の予期に役立てることが可能な流体制御機器、及び情報収集方法の要求が高まっている。
【0003】
この点、特許文献1では、流体制御機器に取り付けたセンサによって動作情報を取得し、当該動作情報に基づいて流体制御機器の動作を分析するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2018/168873
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、流体制御機器から動作情報を取得することはできるが、動作分析の精度を上げるべく頻回に動作情報を取得すると、データ量が膨大になり、動作情報を保持しておくのが容易でなくなる。
一方で、単純に動作情報を取得するタイミングを絞るなどしてデータ量を削減したのでは、動作情報に基づいた分析を行う際に、その精度を担保することができなくなるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、流体制御機器から収集した動作情報のデータ量を減らしながら、動作情報に基づいた分析の精度を担保することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る流体制御機器の動作情報収集システムは、流体制御機器の動作情報を収集するシステムであって、前記流体制御機器から、開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化の検出値を取得する検出値取得手段と、前記検出値に基づき、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する算出処理手段と、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間で区切られた検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録する動作情報登録手段と、を有する。
【0008】
また、前記算出処理手段は、前記検出値に基づき、所定時間ごとの検出値の変化割合の平均値を算出し、前記動作情報登録手段は、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間ごとの検出値の変化割合の平均値を動作情報記憶手段に登録する。
【0009】
また、前記算出処理手段は、前記検出値に基づき、所定時間ごとの検出値の変化割合の最大値を算出し、前記動作情報登録手段は、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間ごとの検出値の変化割合の最大値を動作情報記憶手段に登録するものとしてもよい。
【0010】
また、前記算出処理手段は、前記検出値に基づき、前記検出値の所定の閾値によって所定時間に区切られた連続する検出値の変化割合を算出し、前記動作情報登録手段は、前記流体制御機器の動作情報として、前記検出値の所定の閾値によって所定時間に区切られた連続する検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録するものとしてもよい。
【0011】
また、前記動作情報記憶手段を参照して、前記流体制御機器の動作情報として登録されている検出値の変化割合を判断基準として、前記所定時間ごとの検出値の変化割合が当該所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えるか否かを判断する判断処理手段をさらに有し、前記動作情報登録手段は、前記所定時間ごとの検出値の変化割合が前記所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えると判断された場合に、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間ごとの検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録するものとしてもよい。
【0012】
また、前記判断処理手段は、前記動作情報記憶手段に記憶されている動作情報のうち、最新の動作情報を判断基準とするものとしてもよい。
【0013】
また、前記動作情報登録手段は、前記流体制御機器の開閉動作時における前記流体制御機器の動作情報のみを登録するものとしてもよい。
【0014】
また、前記検出値に基づき、前記流体制御機器の開閉動作が実行されている時間を特定する特定処理手段、をさらに有し、前記算出処理手段は、前記流体制御機器の開閉動作が実行されている時間を算出処理の対象時間とするものとしてもよい。
【0015】
また、本発明の別の観点に係る流体制御機器は、動作情報収集モジュールとして、前記した流体制御機器の動作情報収集システムを内蔵する。
【0016】
また、本発明の別の観点に係る流体制御機器の動作情報収集方法は、流体制御機器の動作情報を収集する方法であって、コンピュータが、前記流体制御機器から、開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化の検出値を取得する検出値取得処理と、前記検出値に基づき、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する算出処理と、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間で区切られた検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録する動作情報登録処理と、を実行する。
【0017】
また、本発明の別の観点に係るコンピュータプログラムは、流体制御機器の動作情報を収集するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに対し、前記流体制御機器から、開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化の検出値を取得する検出値取得処理と、前記検出値に基づき、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する算出処理と、前記流体制御機器の動作情報として、前記所定時間で区切られた検出値の変化割合を動作情報記憶手段に登録する動作情報登録処理と、を実行させる。
【0018】
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、コンピュータ読み取り可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流体制御機器から収集した動作情報のデータ量を減らしながら、動作情報に基づいた分析の精度を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、動作情報の収集対象である流体制御機器を示した(a)外観斜視図、(b)平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、動作情報の収集対象である流体制御機器の内部構造を示したA-A断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
図3】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、動作情報の収集対象である流体制御機器の内部構造を示したB-B断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
図4】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、動作情報の収集対象である流体制御機器を示した分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、動作情報の収集対象である流体制御機器を示した分解斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、動作情報の収集対象である流体制御機器を示した分解斜視図である。
図7】本発明の第一の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの構成を示した機能ブロック図である。
図8】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、収集される動作情報と算出される変化割合の一例を説明するためのグラフである。
図9】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、収集される動作情報と算出される変化割合の一例を説明するためのグラフである。
図10】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、収集される動作情報と算出される変化割合の一例を説明するためのグラフである。
図11】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、収集される動作情報と算出される変化割合の一例を説明するためのグラフである。
図12】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れを示した処理フロー図であって、特定処理部による処理が介在しない場合の一例を示す。
図13】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れを示した処理フロー図であって、特定処理部による処理が介在しない場合の他の一例を示す。なお、(a)検出値を記憶する処理、(b)変化割合が算出される処理、である。
図14】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れを示した処理フロー図であって、特定処理部による処理が介在する場合を示す。
図15】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れを示した処理フロー図であって、特定処理部による処理が介在する場合の他の一例を示す。なお、(a)検出値を記憶する処理、(b)変化割合が算出される処理、である。
図16】本発明の第二の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの構成を示した機能ブロック図である。
図17】本発明の第二の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れを示した処理フロー図である。
図18】本発明の第三の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの構成を示した機能ブロック図である。
図19】本発明の第三の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムにおいて、判断基準とされる検出値と閾値の一例を説明するためのグラフである。
図20】本発明の第三の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れを示した処理フロー図である。
図21】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの別の構成例を示した機能ブロック図である。
図22】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの別の構成例を示した機能ブロック図である。
図23】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの別の構成例を示した機能ブロック図である。
図24】本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの別の構成例を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムについて、図を参照して説明する。
まず、動作情報の収集対象となる流体制御機器の一例について図を参照して説明する。
なお、流体制御機器に関する以下の説明では、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の実施あるいは使用の際の部材等の方向を限定するものではない。
【0022】
●流体制御機器V
図1に示される流体制御機器Vは、エア作動式のダイレクトダイヤフラムバルブであり、他の流体制御機器や流量制御装置等とガスユニットを構成して、プロセス流体を制御し、被処理体を処理する。この流体制御機器Vは、図1図3に示されるように、バルブボディ1、ボンネット部2、カバー部3、アクチュエータ部4を備える。
【0023】
バルブボディ1は図2及び図3に示されるように、流路が形成された基台部11と、基台部11上に設けられた略円筒形状の円筒部12とからなる。
基台部11は平面視矩形状からなり、複数の流体制御機器Vによってガスユニットを構成する場合には、基板あるいはマニホールドブロック上に設置される部分となる。
【0024】
円筒部12は図4に示されるように、ボンネット部2が配設される側の端面が開口した中空形状からなり、中空の内部はボンネット部2が収容される凹部12aを構成する。
この円筒部12には、軸心方向に長さを有し、ボンネット部2が配設される側であって基台部11とは反対側の一端が開口すると共に、外側から凹部12a側へ貫通したスリット12bが設けられている。このスリット12bを介して、ボンネットウォール25から延び出したフレキシブルケーブル26が内側から外側へ導出される。
【0025】
凹部12aの下方及び基台部11内には、流体が流入する流入路111と流体が流出する流出路113、及び当該流入路111と流出路113に連通する弁室112が形成されている。流入路111、流出路113、及び弁室112は、流体が流通する流路を一体的に構成している。
【0026】
環状のシート21は、弁室112における流入路111の開口部周縁に設けられている。シート21にダイヤフラム22を当接離反させることによって流入路111から流出路113へ流体を流通させたり、流通を遮断させたりすることができる。
【0027】
ダイヤフラム22は、ステンレス、Ni-Co系合金等の金属からなると共に、中心部が凸状に膨出した球殻状の部材であり、流路とアクチュエータ部4が動作する空間とを隔離している。このダイヤフラム22は、ダイヤフラム押え23により押圧されていない状態では、図2(b)及び図3(b)に示されるように、シート21から離反しており、流入路111と流出路113とが連通した状態となる。一方、ダイヤフラム押え23により押圧された状態では、図2(a)及び図3(a)に示されるように、ダイヤフラム22の中央部が変形してシート21に当接しており、流入路111と流出路113が遮断された状態となる。
【0028】
ダイヤフラム押え23は、ダイヤフラム22の上側に設けられ、ピストン43の上下動に連動してダイヤフラム22の中央部を押圧する。
このダイヤフラム押え23は、図5に示されるように、略円柱状の基体部231と、ダイヤフラム22に当接する側の一端側において拡径した拡径部232からなる。
【0029】
基体部231には、軸心方向に長さを有し、拡径部232とは反対側の一端が開口した有底の条溝231aが形成されている。この条溝231aには、ボンネットウォール25のネジ孔25cにねじ込まれたネジ25dの軸棒部分が摺動可能に嵌合する。条溝231aとネジ25dは、ダイヤフラム押え23の周方向の回動を規制する回動規制手段を構成し、これによりダイヤフラム押え23は、ピストン43に連動して上下動しつつも、周方向の回動を規制される。
【0030】
また、基体部231には、磁石M1が取り付けられている。この磁石M1は、本実施例では、基体部231の条溝231aの反対側に取り付けられているが、位置センサM2が磁石M1の磁力を検出するのに支障がなく、また、流体制御機器Vの動作に支障がない限り、基体部231上の他の位置に取り付けることもできる。
【0031】
ボンネット24は、略円筒状からなり、バルブボディ1の凹部12a内に収容される。
ダイヤフラム22の周縁はボンネット24の下端部とバルブボディ1との間に挟持されており、この部分でダイヤフラム22とバルブボディ1との間のシールが形成される。
ボンネット24の内部には、ダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔241aが中心部に形成された略円盤状の仕切部241が設けられている。
仕切部241の上方ないしは、アクチュエータ部4が配設される側に形成される凹部24aには、ボンネットウォール25が収容される。仕切部241とボンネットウォール25にはそれぞれ、互いに対応する位置にネジ穴241bと貫通孔25eが設けられており、ボンネット24にボンネットウォール25がボルト25fによって螺設される。
【0032】
ボンネット24の仕切部241は、一定の厚みを有しており、仕切部241に形成されている貫挿孔241aの内周面とダイヤフラム押え23の間にはOリングO1が介装されている。これにより、仕切部241、ダイヤフラム22、及びダイヤフラム押え23によって画定される閉空間S2の気密性が確保されている。
また、ボンネット24の仕切部241には、ボンネットウォール25に取り付けられている圧力センサPに連通する連通孔241dが設けられている。連通孔241dを介して圧力センサPが設けられていることにより、仕切部241、ダイヤフラム22、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2内の圧力を測定することができる。
【0033】
また、ボンネット24の側面には、内側に収容したボンネットウォール25から導出されたフレキシブルケーブル26を外側へ導出させるための貫通孔241cが設けられている。
【0034】
ボンネットウォール25は、ボンネット24内に配設される部材である。このボンネットウォール25は肉厚の略円盤状の部材を平面視略C字状に刳り貫いた形状からなる。このボンネットウォール25の中心には、ダイヤフラム押え23の基体部231を貫挿させる貫挿孔25aが設けられている。また、貫挿孔25aをボンネットウォール25の半径方向外側に向かって開口させる開口部25bが設けられている。
【0035】
ボンネットウォール25の厚み部分の所定の箇所には、貫挿孔25aから半径方向外側に向かってねじ切られたネジ孔25cが形成されている。このネジ孔25cには外側からネジ25dが螺合し、螺合したネジ25dの軸心部分は、貫挿孔25a側へ抜け出して、貫挿孔25aに貫挿されたダイヤフラム押え23の条溝231aに摺動可能に嵌合する。
【0036】
ボンネットウォール25には、ボンネット24のネジ穴241bに対応する位置に貫通孔25eが設けられている。ネジ穴241bと貫通孔25eには、ボンネット24の仕切部241上にボンネットウォール25が配設された状態でボルト25fが螺合し、これによりボンネット24にボンネットウォール25が固定される。
【0037】
ボンネットウォール25の外周面のうち、開口部25b近傍には、開口部25bを塞ぐように掛け渡して固定された平板状の位置センサM2が取り付けられている。この位置センサM2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1との間の距離変化をセンシングする磁気センサであり、センシングにより、流体制御機器Vの開閉状態のみならず、開度を計測することができる。なお、ボンネットウォール25に取り付けられた位置センサM2は、流体制御機器Vの開閉操作に伴うピストン43やダイヤフラム押え23の上下動にかかわらず、所定の位置に固定されている。
【0038】
カバー部3は図6に示されるように、アクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧して一体的に保持すると共に、回路基板27及び回路基板27に設けられたコネクタ28を流体制御機器Vに固定する固定手段を構成する。
このカバー部3は、カバー31と平板状のプレート32、33を備える。
【0039】
カバー31は、略U字状からなり、その内側にはアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部が嵌め込まれる。
カバー31の両側面には、アクチュエータボディ41が嵌め込まれる位置に対応してネジ孔31aが設けられている。これにより、バルブボディ1が内側にはめ込まれた状態でネジ孔31aにネジ31bを螺入させ、ネジ31bの先端をバルブボディ1に圧接させると、バルブボディ1をカバー31の内側に挟持することができる。
【0040】
また、カバー31の厚み部分には、ネジ穴31cが設けられている。このネジ穴31cに、ネジ31dがプレート32、33の貫通孔32b、33bを介して螺合することで、カバー31にプレート32、33が取り付けられる。
【0041】
プレート32、33は、カバー31の内側にアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部を嵌めた状態でカバー31とネジ止め固定され、固定された状態においては、カバー31との間にアクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧保持する。
このプレート32の下方には、舌片状に切り欠いた切欠部32aが形成されており、フレキシブルケーブル26はこの切欠部32aを介して、コネクタ28が設けられた回路基板27へ導出される。
【0042】
プレート33は、プレート32との間に回路基板27を介装させた状態でプレート32及びカバー31にネジ止め固定され、プレート32との間に回路基板27を挟圧保持する。
このプレート33には、中央部に略矩形状の貫通孔33aが設けられており、回路基板27に設けられたコネクタ28はこの貫通孔33aから外側へ抜け出る。
【0043】
ここで、基台部11が平面視矩形状からなるところ、カバー部3は図1(b)に示されるように、コネクタ28を矩形状の基台部11の対角線方向に向けて流体制御機器Vに固定している。このような向きにコネクタ28を固定するのは以下の理由による。即ち、複数の流体制御機器Vによってガスユニットを構成する場合には、集積化の要請から、隣り合う矩形状の基台部11の向きを揃えてできる限り隙間をなくし、基盤あるいはマニホールドブロック上に流体制御機器Vを配設するのが好適である。他方、このように配設して集積させた場合には、コネクタ28に端子等を接続しにくくなる。そのため、コネクタ28を基台部11の対角線方向に向けることで、真横に配設されている流体制御機器Vの方に向ける場合と比べ、接続するスペースを広く取ることができる。その結果、コネクタ28に端子等を接続するのが容易であるし、端子等の折れや撚れによる断線等の不具合を防いだり、端子等が流体制御機器Vに当たって流体制御機器Vの動作に異常をもたらすといった不具合を防ぐこともできる。
【0044】
アクチュエータ部4は、ボンネット部2上に配設される。
このアクチュエータ部4は図4に示されるように、アクチュエータボディ41、アクチュエータキャップ42、ピストン43、バネ44を備える。なお、図4においては、アクチュエータ部4の内部構造を省略しているが、内部構造は図2及び図3に示されるとおりである。
【0045】
アクチュエータボディ41は、ピストン43とボンネット24の間に介装される。
このアクチュエータボディ41は図4に示されるように略円柱形状からなり、中心部には、ピストン43とダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔41aが長さ方向に沿って設けられている。図2及び図3に示されるように、貫挿孔41a内ではピストン43とダイヤフラム押え23が当接しており、ダイヤフラム押え23はピストン43の上下動に連動して上下動する。
【0046】
ピストン43が配設される側の上端面には、環状の突条からなる周壁411が形成されており、周壁411の内側の平坦な水平面とピストン43の拡径部431の下端面との間には、駆動圧が導入される駆動圧導入室S1が形成される。
【0047】
また、アクチュエータボディ41のピストン43が配設される側の外周面上には、雄ネジが切られており、アクチュエータキャップ42の内周面に切られた雌ネジと螺合することにより、アクチュエータボディ41はアクチュエータキャップ42の一端に取り付けられる。
【0048】
アクチュエータボディ41の長さ方向の中心部は、断面視略六角形状に形成されており、当該断面視六角形状の部分とバルブボディ1の上端部分は、カバー31によって一体的に挟圧される。
【0049】
アクチュエータキャップ42は、下端部が開口したキャップ状の部材であり、内部にピストン43とバネ44を収容している。
アクチュエータキャップ42の上端面には、ピストン43の駆動圧導入路432に連通する開口部42aが設けられている。
アクチュエータキャップ42の下端部は、アクチュエータボディ41の上部が螺合して閉止されている。
【0050】
ピストン43は、駆動圧の供給と停止に応じて上下動し、ダイヤフラム押え23を介してダイヤフラム22をシート21に当接離反させる。
このピストン43の軸心方向略中央は円盤状に拡径しており、当該箇所は拡径部431を構成している。ピストン43は、拡径部431の上面側においてバネ44の付勢力を受ける。また、拡径部431の下端側には、駆動圧が供給される駆動圧導入室S1が形成される。
【0051】
また、ピストン43の内部には、上端面に形成された開口部43aと、拡径部431の下端側に形成される駆動圧導入室S1とを連通させるための駆動圧導入路432が設けられている。ピストン43の開口部43aはアクチュエータキャップ42の開口部42aまで連通しており、外部から駆動圧を導入するための導入管が開口部42aに接続され、これにより駆動圧導入室S1に駆動圧が供給される。
【0052】
ピストン43の拡径部431の外周面上には、OリングO21が取り付けられており、このOリングO21はピストン43の拡径部431の外周面とアクチュエータボディ41の周壁411の間をシールしている。また、ピストン43の下端側にもOリングO22が取り付けられており、このOリングO22はピストン43の外周面とアクチュエータボディ41の貫挿孔41aの内周面の間をシールしている。これらのOリングO21、O22により、ピストン43内の駆動圧導入路432に連通する駆動圧導入室S1が形成されると共に、この駆動圧導入室S1の気密性が確保されている。
【0053】
バネ44は、ピストン43の外周面上に巻回されており、ピストン43の拡径部431の上面に当接してピストン43を下方、即ちダイヤフラム22を押下する方向に付勢している。
【0054】
ここで、駆動圧の供給と停止に伴う弁の開閉動作について言及する。開口部42aに接続された導入管(図示省略)からエアが供給されると、エアはピストン43内の駆動圧導入路432を介して駆動圧導入室S1に導入される。これに応じて、ピストン43はバネ44の付勢力に抗して上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21から離反して開弁した状態となり、流体が流通する。
一方、駆動圧導入室S1にエアが導入されなくなると、ピストン43がバネ44の付勢力に従って下方に押し下げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21に当接して閉弁した状態となって、流体の流通が遮断される。
【0055】
流体制御機器Vは、機器内の動作情報を取得する動作情報取得機構として、圧力センサPと、位置センサM2を備えている。
圧力センサPは図3に示されるように、ボンネットウォール25の下面、ないしは流路側に取り付けられており、連通孔241dを介して、ダイヤフラム22、ボンネット24の仕切部241、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2に連通している。この圧力センサPは、圧力変化を検出する感圧素子や、感圧素子によって検出された圧力の検出値を電気信号に変換する変換素子等によって構成される。これにより圧力センサPは、ダイヤフラム22、ボンネット24の仕切部241、及びダイヤフラム押え23によって画定された閉空間S2内の圧力を検出することができる。
なお、圧力センサPが連通孔241dに通じる箇所にはパッキン29が介装されており、気密状態が担保されている。
なお、圧力センサPは、ゲージ圧あるいは大気圧のいずれを検出するものでもよい。
【0056】
位置センサM2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1との間の距離変化をセンシングすることにより、流体制御機器Vの開閉状態を把握するのみならず、リフト量を計測することができる。
この位置センサM2によって以下の通り、弁の開閉動作検知することができる。即ち、磁石M1がダイヤフラム押え23の上下動に応じて上下動するのに対し、位置センサM2はボンネットウォール25及びボンネット24と共にバルブボディ1内に固定されている。この結果、ダイヤフラム押え23の上下動に従って上下動する磁石M1と、位置が固定されている位置センサM2との間に発生する磁界の変化に基づき、ダイヤフラム押え23の動作、ひいては弁の開閉動作を検知したり、リフト量を計測したりすることができる。
【0057】
なお、位置センサM2には各種のものを用いることができるが、その一例に係る位置センサM2は平面コイル、発振回路、及び積算回路を有しており、対向する位置にある磁石M1との距離変化に応じて発振周波数が変化する。そして、この周波数を積算回路で変換して積算値を求めることにより、流体制御機器Vの開閉状態と共に、リフト量を計測することができる。
【0058】
なお、本実施形態では磁気センサからなる位置センサM2を用いたが、これに限らず、上述した位置センサM2と同様、ダイヤフラム押え23とボンネット24の位置関係、あるいはこれらの部材の所定の箇所同士の距離を測定することができる位置センサであれば、光学式の位置センサ等、他の種類のセンサを用いることもできる。
また、本実施形態に係る流体制御機器Vにおいても、位置センサM2を含む位置センサには、位置検出精度が±0.01mmから±0.001mmに収まるものを選定することが望ましい。当該半導体製造プロセス向けのバルブとしては微細な流体制御を実現するために±0.01mm程度の微細な開度制御が必要になる半面、±0.001mmを超える検出精度を用いるとバルブ近傍の真空ポンプ等が発生させる振動を検出しノイズを生じてしまうためである。
【0059】
本例では、圧力センサPと位置センサM2にそれぞれ、可撓性を有する通信用のフレキシブルケーブル26の一端が接続しており、フレキシブルケーブル26の他端は、流体制御機器Vの外側に設けられた回路基板27に接続している。回路基板27には、情報の送受信を実行する処理モジュールが構成されており、これにより、コネクタ28に接続された外部端末に対し、圧力センサPや位置センサM2から検出した情報を送信することができる。
【0060】
なお、流体制御機器Vにおいて、フレキシブルケーブル26と回路基板27にはフレキシブル基板(FPC)が用いられ、フレキシブルケーブル26、回路基板27、及びコネクタ28は一体的に構成されている。フレキシブルケーブル26と回路基板27にフレキシブル基板を用いることにより、配線経路として部材間の隙間を利用することが可能になり、その結果、被覆線を用いる場合に比べて流体制御機器V自体を小型化することができる。
また、処理モジュールは回路基板27とは別に、流体制御機器V内に格納されていてもよいし、圧力センサP又は位置センサM2の一部として構成されていてもよい。
また、コネクタ28の種類や形状は、各種の規格に応じて適宜に設計し得る。
【0061】
また、上述した圧力センサPや位置センサM2によって実現される動作情報取得機構としては他に、駆動圧を検出する駆動圧センサ、流路内の温度を測定する温度センサ、ピストン43あるいはダイヤフラム押え23の挙動を検知するリミットスイッチなどを設けることもできる。
【0062】
以上の流体制御機器Vでは、ピストン43とダイヤフラム押え23が別体で構成されているが、磁石M1はダイヤフラム押え23に取り付けられている。これにより、ダイヤフラム押え23の動作不良を判別することができる。即ち、通常であれば、弁開操作によってダイヤフラム押え23はピストン43に追随して上昇するが、弁閉時に弁室112が真空付近まで減圧されることでダイヤフラム22がシート21に吸着されることで、ピストン43が上昇したにもかかわらず、ダイヤフラム押え23がピストン43に追随せずにダイヤフラム22に当接したままとなる場合がある。この結果、ダイヤフラム22が流路を遮断したままになってしまう場合がある。しかし、このような場合でも、流体制御機器Vでは磁石M1がダイヤフラム押え23と連動しているため、位置センサM2による検出値から、ダイヤフラム押え23の動作を判別し、動作不良を判別することができる。
【0063】
なお、このようなダイヤフラム押え23の動作不良の判別は、位置センサM2が、流体制御機器Vの開閉動作に応じてピストン43やダイヤフラム押え23のように上下動しないボンネットウォール25に取り付けられていることで、ダイヤフラム押え23の相対的な動作を識別できるために可能となっている。したがって、ダイヤフラム押え23の動作を識別し、動作不良を判別可能とする点において、位置センサM2が取り付けられるべき部材は、流体制御機器Vの開閉動作にかかわらず所定の位置に固定されているものであればよい。
【0064】
なお、流体制御機器Vには、動作情報などを表示するための液晶パネル等の情報表示手段を設けてもよい。また、内蔵するソフトウェアによる処理結果等に応じて、報知音を出力したり、発光したりする報知手段を設けてもよい。
【0065】
以上の構成からなる流体制御機器Vは通常、複数、集積して、流量制御装置等と共に流体制御装置(ガスユニット)を構成する。
このように、複数の流体制御機器Vによって流体制御装置を構成する場合、流体制御機器Vは密集して配設される。そのため、各流体制御機器Vにおけるデータを表示するためのパネルを設ける場合には、容易に視認できるよう、アクチュエータ部4の上面、少なくとも上方に設けられるのが好適である。
【実施例1】
【0066】
●動作情報収集システム
図7は、実施例1に係る流体制御機器の動作情報収集システムを動作情報収集モジュール5aとして組み込んだ流体制御機器V1の機能構成を示している。なお、流体制御機器V1のハードウェア構成については、上述した流体制御機器Vと同様である。
流体制御機器V1は、開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化を検出する圧力センサPと位置センサM2を備えており、当該圧力センサPと位置センサM2によって検出された検出値を動作情報収集モジュール5aによって収集する。
【0067】
動作情報収集モジュール5aは、検出値取得部51、特定処理部52、算出処理部53、動作情報登録部54、動作情報記憶部55からなる機能ブロックを構成している。
【0068】
検出値取得部51は、流体制御機器V1の開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化の検出値を取得する。本実施形態では、流体制御機器V1が備える圧力センサPと位置センサM2から、当該圧力センサPが検出する閉空間S2の圧力と、位置センサM2が検出する磁石M1が取り付けられたダイヤフラム押え23の位置に係る検出値を取得する。
【0069】
図8図11は、検出値取得部51によって取得された検出値の時間変化を示したグラフの例である。
これらの図の例において、縦軸は検出値であって、位置センサM2によって検出されたダイヤフラム押え23のリフト量を示し、横軸は時間であって、時間の単位は1000分の1秒(millisecond)である。
位置に係る検出値は、ボンネットウォール25に対するダイヤフラム押え23の相対的な位置の検出結果であり、これにより流体制御機器V1の開度を計測することができる。
また、本実施形態にかかわらず、圧力センサPによって検出される閉空間S2内の圧力、流体制御機器V1を開閉駆動させる際の駆動電圧や駆動圧など、流体制御機器V1の開閉動作を検出可能な機器動作又は状態変化の検出値として他のものを用いることができる。
【0070】
特定処理部52は、検出値について、流体制御機器V1の開閉動作実行時の検出値を特定する。
流体制御機器V1の開閉動作は、検出値取得部51によって取得した検出値に基づいて特定される。即ち、特定処理部52は、開弁と閉弁それぞれを判別するための所定の閾値を保持しており、検出値が所定の閾値を超える前後のタイミングを特定する。
【0071】
算出処理部53は、検出値に基づき、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する。
ここで、検出値の変化割合を算出する4つの実行パターンの例を図8図11により説明する。なお、いずれの図も上述のとおり、縦軸は位置センサM2によって検出されたダイヤフラム押え23のリフト量を示し、横軸は時間を示す。
【0072】
図8の例では、検出値が20[msec]ごとに区切られ、各20[msec]における検出値の変化割合が算出されている。直線a1~a4はいずれも、所定時間で区切られた連続する検出値の変化割合を示している。なお、ここで示されている変化割合は、所定時間における平均変化率である。
【0073】
図9の例では、検出値に第一の閾値と第二の閾値の二段階の閾値が設定されている。直線a5~a7はそれぞれ、第一の閾値以下、第一の閾値以上第二の閾値未満、又は第二の閾値以上となる時間帯で区切られた連続する検出値の変化割合を示している。なお、ここで示されている変化割合は、所定時間における平均変化率である。
【0074】
図10の例では、特定処理部52によって流体制御機器V1の開閉動作のタイミングが特定されている。直線a8は、一の開閉動作が実行されている時間において連続する検出値の変化割合を示している。なお、ここで示されている変化割合は、所定時間における平均変化率である。
【0075】
図11の例も、図10の例と同様、特定処理部52によって流体制御機器V1の開閉動作のタイミングが特定されている。一方、直線a9は、一の開閉動作が実行されている時間における変化割合の最大絶対値を示している。なお、この例において示している変化割合は微小時間におけるものであって、所謂微分値である。
【0076】
図8図11において示した変化割合は、本実施形態に係る算出処理部53による算出例であり、変化割合の算出方法は、ひとまとまりの検出値を変換してデータ量を落とすことができるものである限り、他の方法によることもできる。そのため、図8図11の例を適宜に組み合わせることもできるし、図8に示した所定時間をさらに短い時間としたり、図9に示した第一の閾値や第二の閾値にさらに所定の閾値を加えたりすることもできる。
【0077】
なお、図8図11の例では、位置センサM2によって検出されたダイヤフラム押え23のリフト量を縦軸にとったが、これにかかわらず、圧力センサPによって検出された圧力の値や、別途設けられた温度センサによって測定された温度など、流体制御機器V2の動作や状態の変化を示す他の値を縦軸にとって変化割合を算出することもできる。
【0078】
動作情報登録部54は、流体制御機器V1の動作情報として、算出処理部53によって算出された、所定時間で区切られた検出値の変化割合を動作情報記憶部55に登録する。
動作情報登録部54による動作情報の登録は、算出処理部53によって検出値の変化割合が算出された後、当該変化割合を動作情報として登録するものであってもいし、一旦、検出値を全て登録しておき、所定のタイミングで算出された変化割合を登録すると共に、算出に使われた検出値を削除するものであってもよい。
【0079】
動作情報記憶部55は、流体制御機器V1の動作情報を記憶する記憶部である。この動作情報記憶部55には、流体制御機器V1の動作情報として、算出処理部53によって算出された、所定時間で区切られた検出値の変化割合に係る情報のほかに、圧力センサPで検出した圧力値や位置センサM2で検出したダイヤフラム押え23のリフト量、別途設けられた温度センサによって測定された温度といった流体制御機器V1の動作に関わる付随情報、検出値を取得した時間や動作情報を取得した時間といったログ情報などが合わせて記憶されてもよい。これらの付随情報やログ情報は、検出値の変化割合に関連付けて保持しておくのがよく、検出値の変化割合と共に参照することにより、流体制御機器V1の動作をより詳細に把握することができる。なお、付随情報としてはほかに、例えば、流体制御機器V1の使用期間、流体制御機器V1の外部環境の温度や湿度、ピストン43の推力、ピストン43の平均移動速度、振動、流体制御機器V1を構成する部材の内部応力や硬度などが挙げられる。
【0080】
●処理フロー
続いて、本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れについて、図12図15を参照して説明する。
なお、図12図13は、特定処理部52による処理が介在しない場合(図8図9の例のとおり変化割合を算出する場合)を示し、図14図15は特定処理部52による処理が介在する場合(図10図11の例のとおり変化割合を算出する場合)を示しているが、いずれも流体制御機器V1に組み込まれた動作情報収集モジュール5aによって実行可能な処理である。
【0081】
まず、図12の例について説明する。
流体制御機器V1において、圧力センサPや位置センサM2によって所定の圧力や位置に係る値が検出されると、検出値取得部51はそれらの検出値を取得する(S101)。検出値は一時記憶され(S102)、所定のタイミングで(S103)、算出処理部53が所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する(S104)。ここにいう所定のタイミングとは、算出処理部53によって検出値の変化割合を算出するのに必要な検出値に係る情報がそろったタイミングであり、この所定のタイミングでは、所定の時間帯分の検出値が得られ、当該所定の時間帯における検出値の変化割合を算出できる状態になっている。
【0082】
算出された変化割合に係る情報は、動作情報登録部54により、動作情報として動作情報記憶部55に登録される(S105)。これに応じて一時記憶されていた検出値に係る情報は削除される(S106)。
検出処理が実行されている間、以上の処理が継続的に実行される(S107)。
【0083】
次に、図13の例について説明する。この例では、検出値に係る情報を蓄積しておき、流体制御機器V1の動作終了時や、流体制御機器V1を所定期間駆動させたタイミング、あるいは保持しているデータ量が一定の程度に達した場合等、所定のタイミングで検出値の変化割合を算出してデータ量を削減させる。
流体制御機器V1において、圧力センサPや位置センサM2によって所定の圧力や位置に係る値が検出されると、検出値取得部51はそれらの検出値を取得する(S201)。検出値は所定の記憶部に記憶され(S202)、検出処理が実行されている間、検出値の取得と記憶に係る処理が継続的に実行される(S203)。
【0084】
任意のタイミングにおいて、算出処理部53は、検出値が記憶されている所定の記憶部を参照し、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する(S204)。算出された変化割合に係る情報は、動作情報登録部54により、動作情報として動作情報記憶部55に登録される(S205)。これに応じて、変化割合の算出対象となった検出値に係る情報は所定の記憶部から削除され、データ量が削減される(S206)。
【0085】
次に、図14図15について説明する。この例では、特定処理部52により、流体制御機器V1の開閉動作のタイミングにあたる検出値が特定され、当該開閉動作が実行されている時間を算出処理の対象時間として、変化割合が算出される。
なお、図14図12の例と同様、随時、検出値から変化割合を算出する例であり、図15図13の例と同様、任意のタイミングで検出値から変化割合を算出する例である。図14図15についてはそれぞれ、図12図13と共通する工程については同様の符号を付している。
【0086】
まず、図14の例に関し、検出値取得部51によって検出値が取得されると(S101)、検出値は一時記憶される(S102)。所定のタイミングに至ると(S103)、特定処理部52が検出値における流体制御機器Vの開閉動作のタイミングを特定し(S301)、算出処理部53は開閉動作が実行されている時間を算出処理の対象時間として、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する(S302)。
【0087】
以降、算出された変化割合に係る情報は、動作情報登録部54により、動作情報として動作情報記憶部55に登録され(S105)、一時記憶されていた検出値に係る情報は削除される(S106)。
検出処理が実行されている間、以上の処理が継続的に実行される(S107)。
【0088】
続いて、図15の例に関し、検出値取得部51によって検出値が取得されると(S201)、検出値は所定の記憶部に記憶される(S202)。検出値の取得と記憶に係る処理は、検出処理が実行されている間、継続的に実行される(S203)。
【0089】
任意のタイミングにおいて、特定処理部52が所定の記憶部を参照し、検出値における流体制御機器Vの開閉動作のタイミングを特定すると(S401)、算出処理部53は開閉動作が実行されている時間を算出処理の対象時間として、所定時間で区切られた検出値の変化割合を算出する(S204)。
以降、算出された変化割合に係る情報は、動作情報登録部54により、動作情報として動作情報記憶部55に登録される(S205)。これに応じて、変化割合の算出対象となった検出値に係る情報は所定の記憶部から削除され、データ量が削減される(S206)。
【0090】
以上の本実施形態に係る流体制御機器の動作収集システムによれば、流体制御機器V1から収集した動作情報のデータ量を減らしながら、動作情報に基づいた分析の精度を担保することができる。
特に、流体制御機器V1の動作を分析する場合において、開閉動作のタイミングにおける情報は有用であるところ、流体制御機器V1の開閉動作のタイミングを特定することで、当該開閉動作のタイミングにおける動作の特徴を失うことなく保持しておくことができる。
【0091】
なお、本実施形態にかかわらず、流体制御機器V1における所定の検出値に係る情報は、その一部又は全てが流体制御機器V1自体からのみならず、他の機器から動作情報収集装置6に供給されることがあってもよい。例えば、流体制御機器V1が設置されている場所の温度や湿度を計測する端末から供給されたり、流体制御機器V1の管理者の管理者端末によって入力された情報として供給されたりすることがあってもよい。
【実施例2】
【0092】
●動作情報収集システム
実施例2では、上述した実施例1とは異なり、算出した変化割合が、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超える場合にのみ、当該算出した変化割合を動作情報として登録する。以下、本例について詳述する。
【0093】
図16は、実施例2に係る流体制御機器の動作情報収集システムを動作情報収集モジュール5bとして組み込んだ流体制御機器V2の機能構成を示している。なお、流体制御機器V2のハードウェア構成については、上述した流体制御機器Vと同様である。また、特段の言及がない限り、上述した実施例1に係る流体制御機器の動作情報収集システムと同一の符号を付している機能部については、実施例1の対応する機能部と同様に構成される。
【0094】
動作情報収集モジュール5bは、上述した検出値取得部51、特定処理部52、算出処理部53、動作情報登録部54、動作情報記憶部55に加え、判断処理部56を備える。
【0095】
判断処理部56は、動作情報記憶部55を参照して、流体制御機器V2の動作情報として登録されている検出値の変化割合を判断基準として、所定時間ごとで区切られた検出値の変化割合が当該所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えるか否かを判断する。
【0096】
動作情報登録部54は、判断処理の結果に応じて動作情報の登録を実行する。即ち、算出処理部53によって算出された、所定時間ごとで区切られた検出値の変化割合について、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えると判断された場合には、流体制御機器V2の動作情報として動作情報記憶部55に登録する。一方、算出処理部53によって算出された、所定時間ごとで区切られた検出値の変化割合について、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えないと判断された場合には登録しない。
【0097】
●処理フロー
続いて、本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れについて、図17を参照して説明する。なお、本例では、上述した図12によって言及した、特定処理部52による処理が介在しない例の変形例として説明する。ただし、図13図15に基づいた説明した例、即ち特定処理部52による処理が介在する例の変形例として構成することもできる。なお、図12に示す処理フローにおいて、図12と同一の符号が付されている処理は、図12において対応する処理と同様の処理である。
【0098】
本例では、所定のタイミングで(S103)、算出処理部53が所定時間で区切られた検出値の変化割合が算出されると(S104)、判断処理部56により、当該算出された変化割合が、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えるか否かが判断される(S501)。ここで、所定の判断基準とは、流体制御機器V2の動作情報として動作情報記憶部55に登録されている検出値の変化割合である。
【0099】
判断処理部56により、算出された変化割合に係る情報が、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えると判断された場合には、動作情報登録部54により、当該算出された変化割合に係る情報が動作情報として動作情報記憶部55に登録される(S105)。以降、図12を参照して説明したのと同様に、S106、S107の処理が実行される。
【0100】
なお、判断処理部56による処理に応じて、新たな動作情報が動作情報記憶部55に登録されるが、判断処理部56によって所定の判断基準とされる動作情報は、予め基準データとして登録された動作情報や最初に取得した動作情報など、任意に定めされた動作情報とすることもできるし、最も直近に登録された動作情報又は最新の動作情報とすることもできる。
【実施例3】
【0101】
●動作情報収集システム
実施例3では、上述した実施例2とは異なり、検出値が、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超える場合にのみ、当該検出値を動作情報として登録する。以下、本例について詳述する。
【0102】
なお、本実施例に係る同情報収集システムを動作情報収集モジュール5cとして組み込んだ流体制御機器V3の最小の機能構成を図18に示しており、動作情報収集モジュール5cは、検出値取得部51、動作情報登録部54、動作情報記憶部55、及び判断処理部56を備える。なお、特段の言及がない限りは、上述した実施例1又は実施例2に係る流体制御機器の動作情報収集システムと同一の符号を付している機能部については、実施例1又は実施例2の対応する機能部と同様に構成される。
【0103】
判断処理部56は、動作情報記憶部55を参照して、流体制御機器V2の動作情報として登録されている検出値の変化割合を判断基準として、所定時間ごとで区切られた検出値の変化割合が当該所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えるか否かを判断する。
即ち、図19に示されるように、判断基準となる一群の検出値を保持しておき、当該検出値から一定の範囲にある値を閾値b1、b2として設定し、検出値が当該閾値b1、b2を超えないか否かを判断する。
【0104】
動作情報登録部54は、判断処理部56による判断処理の結果に応じて、検出値を動作情報として動作情報記憶部55に登録する。即ち、検出値取得部51によって取得された検出値について、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えると判断された場合には、流体制御機器V2の動作情報として動作情報記憶部55に登録する。一方、当該検出値について、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えないと判断された場合には登録しない。
ここで、所定の判断基準は、動作情報記憶部55に動作情報として登録されている検出値に係る情報であるが、この登録されている検出値に係る情報は、予め基準データとして登録された動作情報としての検出値や最初に取得した動作情報としての検出値など、任意に定めされた動作情報とすることもできるし、最も直近に登録された動作情報とすることもできる。
【0105】
●処理フロー
続いて、本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムによって実行される処理の流れについて、図20を参照して説明する。
検出値取得部51が検出値を取得すると(S601)、判断処理部56は、当該検出値が所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えるか否かを判断する(S602)。ここで、所定の判断基準とは、流体制御機器V2の動作情報として動作情報記憶部55に登録されている検出値に係る情報である。
【0106】
判断処理部56により、検出値が、所定の判断基準に基づいて設定された閾値を超えると判断された場合には、動作情報登録部54により、当該検出値に係る情報が動作情報として動作情報記憶部55に登録される(S603)。以降、検出値が取得される限り、処理が繰り返し実行される。
【0107】
なお、本実施例2の動作情報収集モジュール5cは、上述した特定処理部52を備えていないが、特定処理部52を設け、流体制御機器V3の開閉のタイミングを特定し、当該開閉のタイミングにおいてのみ、検出値と所定の判断基準に基づいた設定された閾値との対比判断を行うようにすることもできる。
【0108】
また、本実施例2の動作情報収集モジュール5cは、上述した算出処理部53を備えていないが、算出処理部53を設け、判断処理部56による判断処理の結果、検出値を動作情報記憶部55に登録する場合には、当該検出値に基づいた変化割合を算出し、検出値と変化割合を合わせて、あるいは変化割合のみを動作情報記憶部55に登録するようにすることもできる。
【0109】
なお、上述した実施例2や実施例3は、検出値や変化割合に基づき、所定の閾値との対比から、流体制御機器V2、V3の挙動傾向変化を判断し、当該判断に応じた内容を動作情報記憶部55に登録するものであり、このような判断処理と登録処理を実行する限り、各種の設計変更が可能である。
このような実施例2及び実施例3に係る動作情報収集システムによる挙動傾向変化の監視と判断結果の的確性は、流体制御機器V2、V3が限られた動作域、即ち上死点と下死点の中で動作し、動作間での差異が発生し難く、機械要素の中で再現性が比較的高いために可能となるものである。
【0110】
また、上述した実施例2や実施例3において、従前の検出値又は変化割合と最新の検出値又は変化割合を比較し、流体制御機器V3の挙動傾向変化を判断する場合、挙動傾向変化がないと判断する場合、必ずしも変化割合の算出を行う必要はない。流体制御機器V3の挙動傾向変化がなければ、当該検出値又は変化割合の詳細を登録する必要はなく、動作回数及び経過時間のみ登録すればよいため、動作情報のデータ量を減らすことが可能になる。
【0111】
●機能構成の変形例1
図21は本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの別の機能構成例を示している。
この例では、所定のネットワークNWを介して相互に通信可能に構成された流体制御機器V4と動作情報収集装置6とにより、本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムが構成されている。なお、流体制御機器V4のハードウェア構成については、上述した流体制御機器Vと同様である。
ネットワークNWは、データの送受信を可能とするためのものであれば特に限定されず、赤外線通信、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、LAN(Local Area Network)、インターネット網、所定の専用回線や通信ケーブルなどによって構成され、有線又は無線のいずれであるかを問われることもない。
【0112】
本例における流体制御機器V4は、ネットワークNWを介して動作情報収集装置6とデータの送受信を実行するための通信モジュールCを備えている。
また、動作情報収集装置6は、所謂サーバコンピュータ等によって実現され、CPU(Central Processing Unit)、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源により、上述した動作情報収集モジュール5aを備えるほか、ネットワークNWを介して流体制御機器V4とデータ通信可能とするための通信処理部61を備えている。なお、本例に限らず、動作情報収集モジュール5aに代えて、上述した動作情報収集モジュール5b、5cを備えさせることもでき、この点は後述する他の変形例についても同様である。
本例において、動作情報収集モジュール5aの検出値取得部51は、通信処理部61に対し、流体制御機器V4から圧力センサPや位置センサM2による検出値を受信させ、これにより検出値を取得している。
【0113】
このシステム構成例では、動作情報収集装置6が流体制御機器V4から検出値に係る情報をネットワークNW経由で取得し、所定の算出処理を実行して得られた動作情報を動作情報記憶部55に登録している。
【0114】
●機能構成の変形例2
図22は本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの別の機能構成例を示している。
この例では、所定のネットワークNWを介して相互に通信可能に構成された流体制御機器V4と、動作情報収集モジュール5aが組み込まれた異常判別装置7とにより、本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムが構成されている。なお、流体制御機器V4のハードウェア構成及びネットワークNWの構成については、上述したとおりである。
【0115】
異常判別装置7は、動作情報収集モジュール5aによって収集された流体制御機器V4の動作情報に基づき、流体制御機器V4の異常を判別する装置である。この異常判別装置7は、所謂サーバコンピュータ等によって実現され、CPU、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAMやROM、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源により、上述した動作情報収集モジュール5aを内蔵するほか、流体制御機器V4の異常を判別する処理を実行する判別処理部71、ネットワークNW2を介して流体制御機器V4と通信処理を実行する通信処理部72を備える。
【0116】
判別処理部71は、動作情報記憶部55に記憶された動作情報に基づき、流体制御機器V4の異常の有無を判別する処理を実行する機能部である。
この判別処理部71は、参照用テーブル等に保持された所定の閾値と、動作情報を構成する、所定時間における検出値の変化割合とを比較することにより、流体制御機器V4の異常を判別する処理を実行することができる。即ち、通常使用時において想定される検出値の変化割合の限界値を所定の閾値として保持し、実際の検出値の変化割合が当該所定の閾値を超えた場合に、流体制御機器V4に異常が生じたものと判別することができる。このような判別処理で判別される実際的な異常は主に、ダイヤフラム22の破損等に起因したものが多く、閉空間S2へ流体が漏出して閉空間S2内の圧力が上昇した結果として、あるいは流路内の減圧によって閉空間S2内の圧力が減少した結果として、検出値の変化割合が適正範囲を逸脱している。
【0117】
なお、実際の検出値の変化割合と比較する所定の閾値は、圧力センサPによって測定された圧力や別途設けられた温度センサによって測定された温度など、流体制御機器V4の動作に関わる付随情報に応じて補正されてもよい。所定の閾値が補正された際には、判別処理部71は補正後の所定の閾値と、実際の検出値の変化割合とを比較することにより、流体制御機器V4の異常を判別する処理を実行する。
【0118】
このような機能構成の例にかかわらず、異常判別装置7が備える判別処理部71や動作情報収集モジュール5aを流体制御機器V4にもたせ、流体制御機器V4自身が異常を判別するように構成することもできる。
【0119】
また、図23に示されるように、流体制御機器V4と異常判別装置7の間に中継装置8を介在させ、ネットワークNW1、NW2を介して流体制御機器V4と異常判別装置7とが相互に通信可能となるように構成してもよい。
この例では、中継装置8を介して、流体制御機器V4から各センサによる検出値に係る情報が異常判別装置7に提供される。
【0120】
具体的に、通信モジュールCによって送信されるデータは例えば、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信、あるいはZigbee(登録商標)といった無線通信によって実現されるネットワークNW1を経由して一旦、中継装置8に送信され、中継装置8から無線あるいは有線のLAN等によって実現されるネットワークNW2を介して異常判別装置7に送信される。
【0121】
このような例において、通信モジュールCは、各センサによる検出値に係る情報を1時間や1日等の任意に設定された所定の周期で送信することができる。このように所定の周期で情報の送信を行う場合には、消費電力を抑えることができる。
【0122】
また、流体制御機器V4を複数、集積させて流体制御装置を構成する場合、各流体制御機器V4の通信モジュールCは、異常判別装置7に対して自己を識別可能な自己識別情報と共に、各センサによる検出値に係る情報等を流体制御機器V4ごとに異なるタイミングで送信することができる。
【0123】
異常判別装置7に対して、流体制御機器V4を個々に識別可能な自己識別情報が送信されることで、流体制御装置を構成する複数の流体制御機器V4のうちのいずれの情報を取得しているのかを判別することができる。
また、異常判別装置7に対して、流体制御機器V4ごとに異なるタイミングで情報が送信されることで、パケット衝突の問題を回避することができるし、一斉に送信される場合と比べて一時的な処理の過負荷を防ぐこともできる。さらに、一斉に送信される場合と違い、データ送信に利用される無線のチャンネルを流体制御機器V4ごとに変える必要がないため、多くのチャンネルを用意する必要がない。特にネットワークNW1をBluetooth(登録商標)によって構成する場合には、同時接続台数が限られるため(通常7台)、送信のタイミングを変えることで同時接続台数を超える数の流体制御機器V4を用いることができる。
【0124】
なお、中継装置8を介在させるシステム構成は、図21で示した流体制御機器V4と動作情報収集装置6によって構成されたシステムにも適用できる。
【0125】
●機能構成の変形例3
図24は本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムの別の機能構成例を示している。
この例では、所定のネットワークNW1、NW2を介して相互に通信可能に構成された流体制御機器V4と、動作情報収集モジュール5aが組み込まれた動作分析装置9とにより、本実施形態に係る流体制御機器の動作情報収集システムが構成されている。なお、流体制御機器V4のハードウェア構成、ネットワークNW1、NW2、中継装置8の構成については、上述したとおりである。
【0126】
動作分析装置9は、流体制御機器V4から取得した情報に基づいてデータマイニングを実行する装置である。この動作分析装置9は、所謂サーバコンピュータ等によって実現され、CPU、CPUが実行するコンピュータプログラム、コンピュータプログラムや所定のデータを記憶するRAMやROM、及びハードディスクドライブなどの外部記憶装置等のハードウェア資源により、前述の判別処理部71に対応する判別処理部91と通信処理部72に対応する通信処理部92に加え、判別情報記憶部93、情報抽出部94、相関関係分析部95、及び異常予期部96を備える。
【0127】
判別情報記憶部93は、判別処理部91によって実行された流体制御機器V4の異常の判別結果を記憶する記憶部である。
【0128】
情報抽出部94は、判別情報記憶部93を参照して、分析対象として、所定の動作情報を同一とする他の動作情報と判別結果に係る情報を、流体制御機器V4ごとに選択的に抽出する。
例えば、複数の流体制御機器V4の動作情報について、同一の弁開閉回数(例:1000万回)における動作時間と当該動作時間における異常の判別結果に係る情報を抽出する。
特に、流体制御機器V4の動作情報のうち、位置センサM2や圧力センサPの変化から検出される、流体制御機器V4の開閉状態の切り替わる前、及び後の所定時間におけるデータを切り出して入力データとする。これは、バルブの動作時の動的なセンサ測定値の変化を測定することが異常予期に置いて有効であることを反映したものであり、入力データの次元数を削減して後述の学習の計算コストを減らすことができる。所定時間は、流体制御機器V4の開閉にかかる時間(駆動圧を導入し始めてから、流体制御機器V4が完全開になるまでの時間、と定義する。図10及び図11において開閉動作のタイミングとして示した時間がこの時間に相当する)の1倍~5倍の時間とすることで、必要な範囲のデータを無駄なく抽出することができる。また、流体制御機器V4から送信するデータを予めこの時間の範囲内に限定して送信することで、通信のデータ量を削減することができ、流体制御機器V4での消費電力を抑制できる。
【0129】
相関関係分析部95は、情報抽出部94によって抽出された情報を対比することにより、流体制御機器V4の所定の動作と異常発生の相関関係を分析する
第一の学習では、異常が発生した流体制御機器V4の過去の動作情報を元に、異常が発生する前の所定の期間(以下、「故障直前期間」とする)の入力データと、異常発生後の入力データと、それ以前の正常動作時の入力データとを分類する教師あり学習を行う。この学習は、例えばニューラルネットワークのモデルに対して誤差逆伝搬法(Backpropagation)を用いた確率的勾配降下法(SGD:Stochastic Gradient Descent)によって行われる。
【0130】
故障直前期間の長さの設定によって、学習済みモデルの判別性能が異なり、ニューラルネットワークの層数やノード数などのハイパーパラメータと同様に、所定の期間の長さも調整すべきハイパーパラメータとなる。これらのハイパーパラメータの調整は例えば最適化アルゴリズムによって選定され、判別能力の高くなる値を選定することができる。一方、バルブユーザーの用途によっては別の故障直前期間の値を知りたい場合に対応し、故障直前期間として2種類以上の期間を用意してクラスタリングを行っても良い。また、故障の種類ごとに異なる分類を作成してもよく、所定期間内にどの故障が発生するか予期することができる。
【0131】
分析により、例えば、複数の流体制御機器V4の動作情報について、弁を1000万回、開閉するのに要した動作時間と、当該動作時間における異常の判別結果により、同じ1000万回の弁開閉回数であっても、それが3カ月でカウントされた回数であるか、3年でカウントされた回数であるかによって、異常の発生確率が異なるのかどうかを分析することができる。
【0132】
第二の学習では、データ数が少ない特殊な異常を事前検知するために、オートエンコーダを用いた教師なし学習を行う。オートエンコーダは、ニューラルネットワークで構成したモデルに対し、バルブが正常動作していた時の入力データを入力し、同じデータが出力されるように学習を行う。このニューラルネットワークの隠れ層の次元数を入力データや出力データの次元数よりも小さく設定することで、通常動作時の入力データのパターンに対してのみ適切に元のデータを再現できるオートエンコーダを学習させることができる。
【0133】
異常予期部96は、相関関係分析部95による分析結果に基づき、動作情報記憶部55及び判別情報記憶部93に記憶されている流体制御機器V4の動作情報及び異常判別結果を参照して、流体制御機器V4の異常発生確率を算出することにより、流体制御機器V4の異常を予期する。
現在のセンサデータの測定値を入力として第一の学習により得られた学習済みモデルに分類を行わせることで、バルブが故障直前期間に入っている確率を算出できる(第一の異常予期手段961)。この確率は読み方を変えると、所定の期間内に壊れるという異常発生確率である。
【0134】
また、第二の学習により得られたオートエンコーダに、現在のセンサから得られた入力データを通し、出力を元の入力と比較してL2ノルム等で入出力間距離を算出し所定の閾値と比較する(第二の異常予期手段962)。オートエンコーダは正常動作時のデータであれば元のデータを復元できるように構成されているが、異常動作時には正しく元のデータを復元できないため入力と出力の間に差が大きくなるため、閾値を超えていた場合には流体制御機器V4の異常を検知できる。この手法を前記の教師あり学習と併用することで、教師データとして用意されない明らかな外れ値の異常状態(例えば、センサの故障、作動温度の極端な変化など)を予め検出することができ、前述の故障直前期間の判定の信頼性を高めることができる。つまり、第一の学習における教師あり学習が、教師データのない領域に対してどのような挙動を示すか保証されないという問題に対してある程度の対処を行うことができる。流体制御機器V4はしばしばそれが搭載される装置の改造により、以前と全く異なる動作環境に置かれることがしばしばあり、再学習を行うべきかどうかの指標データとして用いることもできる。
【0135】
異常を予期することができれば、その情報を流体制御機器V4の管理者が利用する管理者端末等に対して通知したり、流体制御機器V4に対してその情報を通知すると共に、流体制御機器V4に設けた報知手段に情報の報知を行わせたりしてもよい。
【0136】
なお、上述した例では、動作分析装置9が判別処理部91を備える場合について説明したが、流体制御機器V4が判別処理部91と同様の機能部を備える場合についても適用可能である。
【0137】
また、相関関係分析部95による分析においては例えば、以下の分析結果を得られることが予想される。
(1)流体制御機器V4の同一使用期間における開閉回数と異常発生の相関
例えば、3年で1000万回の弁開閉と、3カ月で1000万回の弁開閉では異常発生確率が異なることが予想される。
(2)環境温度と異常発生の相関
例えば、20℃の環境下での使用と、80℃での使用では異常発生確率が異なることが予想される。
(3)ピストン43の推力と異常発生の相関
例えば、ピストン43の推力(駆動圧の大小に依存)の大小で、ダイヤフラム22への負荷に影響が出ることが予想される。
(4)流体制御機器V4の開閉速度と異常発生の相関
例えば、ピストン43の平均移動速度の大小で異常発生確率が異なることが予想される。
(5)振動と異常発生の相関
例えば、環境(振動)の大小によって異常発生確率が異なることが予想される。
(6)流体制御機器V4を構成する部材の歪みと異常発生の相関
例えば、各部材の内部応力の大小で異常発生確率が異なることが予想される。
(7)湿度と異常発生の相関
例えば、湿度と各部材、特にOリングO1、O21、O22等の異常発生確率が異なる。
(8)初期硬度、及び硬度変化と異常発生の相関
例えば、流体制御機器V4の使用初期の各部材の初期硬度の大小で異常発生確率が異なることが予想される。また、硬度変化速度の大小で異常発生確率が異なることも予想される。
モデルの学習の結果によっては、各センサの測定値に対して、所定の周波数成分抽出・複数のセンサデータ間の相互相関計算・所定のパターンとのマッチング・積分・微分などと同等の処理を含むモデルとなる場合がある。
【0138】
また、判別情報記憶部93に記憶される流体制御機器V4の異常判別結果について、異常がどの部材の破損等であるか(例えば、ダイヤフラム22の破損、OリングO1、O21、O22の破損、ピストン43等のアクチュエータボディ41内の部材等)を把握可能な情報が含まれるようにすれば、バルブ開閉速度の変化や流量の変化、ピストン不動などがどの部材に影響を与えやすいかを把握することもできる。
【0139】
また、以上のデータマイニングによって異常発生を予期すると共に、さらにその予期情報と現実に発生した異常有無を比較分析し、相関分析の精度を高めてもよい。
【符号の説明】
【0140】
C 通信モジュール
M1 磁石
M2 位置センサ
NW、NW1、NW2 ネットワーク
P 圧力センサ
S1 駆動圧導入室
S2 閉空間
V、V1、V2、V3、V4 流体制御機器
1 バルブボディ
11 基台部
12 円筒部
2 ボンネット部
21 シート
22 ダイヤフラム
23 ダイヤフラム押え
24 ボンネット
25 ボンネットウォール
26 フレキシブルケーブル
27 回路基板
28 コネクタ
29 パッキン
3 カバー部
31 カバー
32 プレート
33 プレート
4 アクチュエータ部
41 アクチュエータボディ
42 アクチュエータキャップ
43 ピストン
44 バネ
5a、5b、5c 動作情報収集モジュール
51 検出値取得部(検出値取得手段)
52 特定処理部(特定処理手段)
53 算出処理部(算出処理手段)
54 動作情報登録部(動作情報登録手段)
55 動作情報記憶部(動作情報記憶手段)
56 判断処理部(判断処理手段)
6 動作情報収集装置
61 通信処理部
7 異常判別装置
71 判別処理部
72 通信処理部
8 中継装置
9 動作分析装置
91 判別処理部
92 通信処理部
93 判別情報記憶部
94 情報抽出部
95 相関関係分析部
96 異常予期部
961 第一の異常予期手段
962 第二の異常予期手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24