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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/12 20060101AFI20240725BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20240725BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240725BHJP
   A61B 6/51 20240101ALI20240725BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61B6/12
G01N23/046
G01N23/04
A61B6/51 511
A61B6/03 560D
A61B6/03 560J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022172459
(22)【出願日】2022-10-27
(65)【公開番号】P2024064108
(43)【公開日】2024-05-14
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000117054
【氏名又は名称】朝日レントゲン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正岡 聖
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-153454(JP,A)
【文献】特開2011-172926(JP,A)
【文献】特開2016-77813(JP,A)
【文献】特開2021-173716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0002855(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105118030(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111223156(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
G01N 23/00-23/2276
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮影画像において着目ピクセルを囲む所定の領域を設定する設定部と、
前記所定の領域を構成する複数の単位領域それぞれの平均輝度値に基づき、暫定的に第1の物質が写っている第1領域とした単位領域全体の代表的輝度値を算出する算出部と、
前記代表的輝度値に対する前記着目ピクセルの輝度値の比と閾値との大小関係に基づき、前記着目ピクセルに前記第1の物質が写っているか前記第1の物質以外の物質が写っているかを判定する判定部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記代表的輝度値に応じて可変する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記X線撮影画像が撮影されるときの被写体に対するX線の照射角度に応じて可変する、請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
X線撮影画像において着目ピクセルを囲む所定の領域を設定する設定ステップと、
前記所定の領域を構成する複数の単位領域それぞれの平均輝度値に基づき、暫定的に第1の物質が写っている第1領域とした単位領域全体の代表的輝度値を算出する算出ステップと、
前記代表的輝度値に対する前記着目ピクセルの輝度値の比と閾値との大小関係に基づき、前記着目ピクセルに前記第1の物質が写っているか前記第1の物質以外の物質が写っているかを判定する判定ステップと、
を備える、画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影画像に写っている特定の物質を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮影画像を処理する画像処理装置では、金属アーチファクトの低減などのために、X線撮影画像に写っている金属を正確に抽出することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-240584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されている画像処理装置は、投影データを基礎として、所定のX線吸収係数を持つ仮想金属体がX線CT撮影領域に擬似的に配置されたときの擬似投影データを演算により取得し、その擬似投影データを利用してX線撮影画像に写っている金属を抽出している。
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されている画像処理装置は、擬似投影データを再構成するという処理を行っているため計算時間がかかる。
【0006】
また、X線撮影画像に写っている金属以外の物質を抽出することが求められる場合もある。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑み、X線撮影画像に写っている特定の物質を抽出するときに、抽出精度の向上及び処理時間の短縮を見込むことができる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る画像処理装置は、X線撮影画像において着目ピクセルを囲む所定の領域を設定する設定部と、前記所定の領域を構成する複数の単位領域それぞれの平均輝度値に基づき、暫定的に第1の物質が写っている第1領域とした単位領域全体の代表的輝度値を算出する算出部と、前記代表的輝度値に対する前記着目ピクセルの輝度値の比と閾値との大小関係に基づき、前記着目ピクセルに前記第1の物質が写っているか前記第1の物質以外の物質が写っているかを判定する判定部と、を備える構成(第1の構成)である。
【0009】
上記第1の構成の画像処理装置において、前記閾値は、前記代表的輝度値に応じて可変する構成(第2の構成)であってもよい。
【0010】
上記第1又は第2の構成の画像処理装置において、前記閾値は、前記X線撮影画像が撮影されるときの被写体に対するX線の照射角度に応じて可変する構成(第3の構成)であってもよい。
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係る画像処理方法は、X線撮影画像において着目ピクセルを囲む所定の領域を設定する設定ステップと、前記所定の領域を構成する複数の単位領域それぞれの平均輝度値に基づき、暫定的に第1の物質が写っている第1領域とした単位領域全体の代表的輝度値を算出する算出ステップと、前記代表的輝度値に対する前記着目ピクセルの輝度値の比と閾値との大小関係に基づき、前記着目ピクセルに前記第1の物質が写っているか前記第1の物質以外の物質が写っているかを判定する判定ステップと、を備える構成(第4の構成)である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、X線撮影画像に写っている特定の物質を抽出するときに、抽出精度の向上及び処理時間の短縮を見込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成を示す図
図2図1に示す情報処理装置の機能の一例を示す機能ブロック図
図3】着目ピクセル及び所定の領域の一例を示す図
図4】着目ピクセル及び所定の領域の他の例を示す図
図5】所定の領域における単位領域の平均輝度値分布を示す図
図6】暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の平均輝度値と着目ピクセルの輝度値との関係の一例を示す図
図7】金属が写っているピクセルと非金属が写っているピクセルとが異なる輝度値である二値化画像を示す図
図8】アキシャル画像を示す図
図9】二値化アキシャル画像を示す図
図10】順投影画像を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成を示す図である。本発明の一実施形態に係る情報処理装置1(以下、情報処理装置1という)は、制御部2、記憶部3、通信部4、表示部5、及び操作部6を備える。
【0016】
制御部2は、例えばマイクロコンピュータである。制御部2は、情報処理装置1の全体を統括的に制御する。制御部2は、不図示のCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。
【0017】
記憶部3は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等である。記憶部3は、再構成画像を生成するための画像再構成処理プログラム、X線撮影画像に写っている特定の物質を抽出する画像処理プログラム等の各種プログラム、各種プログラムを実行する際に用いられる各種パラメータの設定値や画像データ等の各種データを記憶する。
【0018】
通信部4は、外部装置との通信を行うための通信インターフェースである。通信部4と外部装置との通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよく、有線と無線とを組み合わせた通信であってもよい。外部装置としては、例えばX線撮影画像を撮影するX線撮影装置、X線撮影画像を記憶している記憶装置等を挙げることができる。
【0019】
表示部5は、例えば液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置等である。表示部5は、制御部2の制御に基づいて各種の画像を表示する。
【0020】
操作部6は、例えばキーボード、ポインティングデバイス等である。操作部6は、ユーザの操作内容に応じた信号を制御部2に出力する。
【0021】
図2は、情報処理装置1の機能の一例を示す機能ブロック図である。情報処理装置1は、画像処理プログラムを実行することによって画像処理装置10として機能する。画像処理装置10は、設定部11と、算出部12と、判定部13と、を備える。
【0022】
設定部11は、X線撮影画像において着目ピクセルを囲む所定の領域を設定する。例えば、設定部11は、図3に示すようにX線撮影画像の一例である透過X線画像20において着目ピクセル21を囲む水平方向mピクセル×垂直方向nピクセルである所定の領域22を設定する。m、nはそれぞれ複数の自然数である。mとnとは、同じ値であってもよく、互いに異なる値であってもよい。ここでは、所定の領域22は着目ピクセル21を含む領域であるが、所定の領域22は着目ピクセル21を含まない(m×n-1)ピクセルの領域であってもよい。また、設定部11は、X線撮影画像を分割する単位領域も設定する。単位領域は、水平方向aピクセルであり、垂直方向bピクセルである。a、bはそれぞれ自然数である。aとbとは、同じ値であってもよく、互いに異なる値であってもよい。そして、aはmより小さく、bはnより小さい。また、mはaの倍数であり、nはbの倍数である。m、n、a、bは、例えばm=240、n=420、a=12、b=12に設定することができる。なお、a=1、b=1である場合、単位領域は、着目ピクセル21そのものとなる。
【0023】
図3に示すように、着目ピクセル21が所定の領域22の水平方向の略中心及び所定の領域22の垂直方向の中央部分に位置するように、設定部11は所定の領域22を設定することが望ましい。ただし、着目ピクセル21が透過X線画像20の外縁に近い場所に位置する場合には、例えば図4に示すように、着目ピクセル21の位置が所定の領域22の水平方向の中央部分からの偏り及び所定の領域22の垂直方向の中央部分からの偏りができるだけ小さくなるように、設定部11は所定の領域22を設定してもよい。
【0024】
算出部12は、X線撮影画像を分割した複数の単位領域それぞれの平均輝度を算出する。算出部12は、所定の領域22の水平方向mピクセル×垂直方向nピクセルの平均輝度値L1(図5参照)を求める。具体的には、算出部12は、着目ピクセル21が属している単位領域を中心として、着目ピクセル21が属している単位領域を含む所定の領域22の水平方向mピクセル×垂直方向nピクセルの平均輝度値L1(図5参照)を求める。平均輝度値L1を求める計算及び以下の計算では、ピクセルの輝度値の代わりに単位領域の平均輝度値を使用する。
【0025】
次に、算出部12は、平均輝度値L1より高い平均輝度値である単位領域を暫定的に非金属が写っている第1領域とする。
【0026】
そして、算出部12は、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の平均輝度値L2(図5参照)を求める。
【0027】
判定部13は、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の代表的輝度値に対する着目ピクセル21の輝度値の比と閾値との大小関係に基づき、着目ピクセル21に非金属が写っているか非金属以外の物質が写っているかを判定する。
【0028】
図6は、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の平均輝度値L2と着目ピクセル21の輝度値との関係の一例を示す図である。図6のように、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の平均輝度値L2を横軸にとり、着目ピクセル21の輝度値を縦軸にとると、特性線T1によって金属が写っているピクセル(図6中の丸印で示されるピクセル)と非金属が写っているピクセル(図6中の菱形印で示されるピクセル)とは、特性線T1によって分離することができる。
【0029】
したがって、例えば、判定部13は、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の平均輝度値L2に対する着目ピクセル21の輝度値の比が閾値よりも小さい場合に着目ピクセル21に金属が写っていると判定する。閾値は、特性線T1に対応する値に設定される。特性線T1が略直線である場合、閾値を固定値にすることができる。一方、特性線T1が曲線である場合、判定部13が、閾値を平均輝度値L2に応じて可変することが望ましい。閾値を平均輝度値L2に応じて可変することによって、判定精度が向上する。
【0030】
画像処理装置10は、X線撮影画像内の全てのピクセルを1つずつ順次「着目ピクセル」として、上述した処理を繰り返す。画像処理装置10は、判定結果を反映した画像、例えば、金属が写っているピクセルと非金属が写っているピクセルとが異なる輝度値である図7に示す二値化画像を生成する。図7に示す二値化画像では、金属が写っているピクセル(図7中の黒色部分)の輝度値は、非金属が写っているピクセル(図7中の白色部分)の輝度値より小さい。
【0031】
例えば歯科用X線撮影装置のCT撮影では、被写体に対するX線の照射角度を変えながら、複数のX線撮影画像が撮影される。被写体に対するX線の照射角度が変わった場合、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の平均輝度値L2と着目ピクセル21の輝度値との関係も変わる。したがって、判定部13が、閾値をX線撮影画像が撮影されるときの被写体に対するX線の照射角度に応じて可変することが望ましい。閾値をX線撮影画像が撮影されるときの被写体に対するX線の照射角度に応じて可変することによって、判定精度が向上する。
【0032】
画像処理装置10は、被写体に対するX線の照射角度が異なる複数の上記二値化画像に対して再構成処理を行うことで3D画像を生成し、当該3D画像から図8に示すアキシャル画像を生成する。次に、画像処理装置10は、図8に示すアキシャル画像に対して閾値処理を行い、図9に示す二値化アキシャル画像を生成する。その後、画像処理装置10は、図9に示す二値化アキシャル画像に対して順投影処理を行い、図10に示す順投影画像を生成する。図10に示す順投影画像では、金属が写っているピクセルが白色になっており、金属が抽出されている。
【0033】
画像処理装置10は、特許文献1で提案されている画像処理装置と比較して、X線撮影画像に写っている特定の物質(例えば金属)を抽出するときに、抽出精度の向上及び処理時間の短縮を見込むことができる。
【0034】
発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、図10に示す順投影画像において金属が抽出されているが、図7に示す二値化画像金属が抽出されてもよい。
【0036】
例えば、上述した実施形態では、X線減弱が大きい物質が抽出されているが、逆にX線減弱が小さい物質が抽出されてもよい。なお、上述した実施形態では、X線減弱が大きい物質の一例として、金属が抽出されているが、X線減弱が大きい物質は、金属以外の物質であってもよい。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、透過X線画像(測定画像)が処理されているが、透過X線画像(測定画像)に対して白黒反転している投影画像が処理されてもよい。被写体を設置して撮影したときの透過X線画像(測定画像)におけるピクセルの輝度値をBv、被写体を設置しないで撮影したときの透過X線画像におけるピクセルの輝度値をWとしたとき、下記式(1)の対数変換で得られる値xが投影画像におけるピクセルの輝度値である。この対数変換をここでは白黒反転と定義することにする。
【数1】
【0038】
例えば、上述した実施形態では、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の代表的輝度値として、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の平均輝度値L2が用いられているが、これはあくまで一例である。例えば、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の代表的輝度値として、暫定的に非金属が写っている第1領域とした単位領域全体の平均輝度値L2に所定の定数を乗じて得られる値が用いられてもよい。
【0039】
閾値が複数設けられ、複数の閾値それぞれを用いた画像処理が並行して実行されてもよい。例えば、AuAgPa合金が写っているか、AuAgPa合金以外の物質が写っているかを判定するための第1閾値と、AuAgPa合金又はTiが写っているか、AuAgPa合金及びTi以外の物質が写っているかを判定するための第2閾値とが設けられてもよい。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、歯科用X線撮影装置で撮影されたX線撮影画像が用いられているが、これはあくまで一例である。例えば、非破壊検査装置で撮影されたX線撮影画像に対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 本発明の一実施形態に係る情報処理装置
2 制御部
3 記憶部
4 通信部
5 表示部
6 操作部
10 画像処理装置
11 設定部
12 算出部
13 判定部
20 透過X線画像
21 着目ピクセル
22 所定の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10