(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】米由来甘味料、米由来甘味料を含む食品及び製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240725BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20240725BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20240725BHJP
【FI】
A23L27/00 E
A23L27/10 C
A23L27/00 101Z
A23L29/30
(21)【出願番号】P 2022538611
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2021020105
(87)【国際公開番号】W WO2022018963
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2020124536
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595068232
【氏名又は名称】マルコメ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北川 学
(72)【発明者】
【氏名】山田 南実
(72)【発明者】
【氏名】西竹 茉優
(72)【発明者】
【氏名】小林 輔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 広三
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-193175(JP,A)
【文献】特開2002-191316(JP,A)
【文献】特開2013-042708(JP,A)
【文献】特開平07-059534(JP,A)
【文献】特開昭56-051982(JP,A)
【文献】特開昭54-011954(JP,A)
【文献】中島奈津子,他,米麹甘味料の結晶化抑制に関する研究,福島県ハイテクプラザ試験研究報告(平成24年度),2012年,p.108-111
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00 - 29/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米由来甘味料であって、
米由来成分と、
グルコースと、
パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種と、
を含み、
前記パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種は、(A)パノース及びイソマルトトリオースの組合せ、又は(B)パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの組合せであり、
前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、47.2質量%未満であり、且つ
前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、1.96質量%を超えて、16.00質量%以下であることを特徴とする、米由来甘味料。
【請求項2】
前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、45.00質量%以下であり、且つ
前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、2.00質量%以上、15.50質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の米由来甘味料。
【請求項3】
イソマルトースをさらに含み、
前記米由来甘味料の総質量に対する前記イソマルトース、前記パノース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、0.4質量%以上、23.00質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の米由来甘味料。
【請求項4】
Brixが70%以上、80%以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の米由来甘味料。
【請求項5】
水分活性が0.60以上、0.85以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の米由来甘味料。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の米由来甘味料を含むことを特徴とする、食品。
【請求項7】
請求項1に記載の米由来甘味料の製造方法であって、
米、水及び酵素剤を含む糖化原料を糖化する糖化工程と、
前記糖化工程で得られた糖化物を固液分離して、糖化液を得る固液分離工程と、
前記糖化液を濃縮する濃縮工程と、を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
前記糖化原料は、米糀を、当該糖化原料の総質量100質量%に対して2質量%以上、14質量%未満含むことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記糖化工程は、
米、水及び酵素剤を含む第1糖化原料を糖化する第1糖化工程と、
前記第1糖化工程で得られた第1糖化物及び米糀を含む第2糖化原料を糖化する第2糖化工程と、を含むことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第2糖化原料は、前記米糀を、当該第2糖化原料の総質量100質量%に対して、2質量%以上、20質量%以下含むことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米由来甘味料、米由来甘味料を含む食品及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりとともに、砂糖や人工甘味料の代わりに使用できる安心且つ安全な天然甘味料として、米を原料とした甘味料が注目されている。例えば、非特許文献1及び2には、米麹糖化液(甘酒)を製造し、そのろ液を濃縮した米麹甘味料が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】中島奈津子等,平成24年度福島県ハイテクプラザ試験研究報告, p.108-111,2012
【文献】平成26年度新潟県農林水産業研究成果報告集,「米麹を使った新たな甘味料の簡易製造法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような米麹甘味料は、保存中に糖分が結晶化してしまうという問題がある。特に、濃縮によって米麹甘味料の糖度を高めると、糖分がより結晶化し易くなる。このため、米麹甘味料の製品としての保存安定性を向上させるため、糖分の結晶化を抑制することが求められている。
【0005】
本発明の一態様は、結晶化が抑制された米由来甘味料を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、米由来成分と、グルコースと、パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種と、を含み、前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、47.2質量%未満であり、且つ前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、1.96質量%を超えて、16.00質量%以下である構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、結晶化が抑制された米由来甘味料を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例及び比較例の米由来甘味料に含まれているグルコース及び三糖の含有量を示す図である。
【
図2】本発明の実施例及び比較例の米由来甘味料に含まれている各種糖類の含有量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔米由来甘味料〕
本発明の一態様に係る米由来甘味料は、米由来成分と、グルコースと、パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種と、を含み、前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、47.2質量%未満であり、且つ前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、1.96質量%を超えて、16.00質量%以下である。なお、本明細書において、説明の簡単のため、パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースをまとめて「三糖」という。
【0010】
本発明の一態様に係る米由来甘味料は米由来成分を含有していることから、米由来甘味料と称する。ここで「米由来成分」とは、後述する米由来甘味料の製造方法における、糖化工程後、固液分離工程後、及び濃縮工程後に甘味料中に残る成分である。また、本発明の一態様に係る米由来甘味料が、糖化工程において米糀を使用する製造方法によって得られたものである場合、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、米糀を原料の一つとしたものであってもよい。また、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、米糀を原料とすることによって、米糀由来成分をさらに含有していてもよい。前記「米糀由来成分」とは、後述する米由来甘味料の製造方法における、糖化工程後、固液分離工程後、及び濃縮工程後に甘味料中に残る成分の内、米糀に由来する成分(例えば、麹菌そのもの、麹菌の一部分解物等)である。米糀を原料の一つとする米由来甘味料は、「米糀由来甘味料」ともいう。
【0011】
本発明の一態様に係る米由来甘味料は、米由来甘味料の結晶化抑制の観点から、前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、45.00質量%以下であり、且つ前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、2.00質量%以上、15.50質量%以下であることがより好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る米由来甘味料は、前記米由来甘味料の総質量に対するグルコースの含有量、及び三糖の合計含有量が前述した範囲であることにより、結晶化が抑制された米由来甘味料となり得る。ここで、本明細書において、前記「結晶化が抑制された」とは、常温(25℃)で保存した場合に、45日以上、目視確認によって結晶の析出が認められない状態をいう。また、結晶の析出が認められない期間はより長いことが好ましく、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、12カ月以上結晶の析出が認められないものも含まれる。また、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、常温のみならず、-20℃、5℃、30℃等の温度で保存しても、45日以上、目視確認によって結晶の析出が認められないものも含まれる。
【0013】
本発明の一態様に係る米由来甘味料は、イソマルトースをさらに含んでいることが好ましい。イソマルトース、パノース及びイソマルトトリオースは、「イソマルトオリゴ糖」と称される。イソマルトオリゴ糖は、特定保健用食品の関与成分として知られている。本発明の一態様に係る米由来甘味料がイソマルトース、パノース及びイソマルトトリオースを含むことにより、「イソマルトオリゴ糖」を含む機能性食品として、おなかの調子を整える等の効果が期待できる。
【0014】
本発明の一態様に係る米由来甘味料がイソマルトースをさらに含んでいる場合は、前記米由来甘味料の総質量に対するイソマルトース、パノース及びイソマルトトリオースの合計含有量が、0.4質量%以上であることが好ましい。また、特定保健用食品でのイソマルトオリゴ糖の1日摂取量目安量は10gであり、米由来甘味料にイソマルトオリゴ糖が20重量%含まれていれば、米由来甘味料を50g摂取すればこの目安量に到達することから、前記米由来甘味料の総質量に対するイソマルトース、パノース及びイソマルトトリオースの合計含有量が、20.00質量%以上、23.00質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る米由来甘味料は、十分な甘味度を得る観点から、Brixが70%以上であることが好ましく、微生物制御の安全面の観点から72%以上であることが好ましい。また、米由来甘味料の使用性の観点から、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、Brixが80%以下であることが好ましい。Brixは糖度を表し、甘味の指標として用いられる。本発明の一態様に係る米由来甘味料のBrixは、当業者に公知の手法を用いて測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。例えば、みりんは、一般に、Brixが40%~60%である。このことからも、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、十分に高い糖度を有しているといえる。
【0016】
本発明の一態様に係る米由来甘味料は、米由来甘味料の使用性の観点から、水分活性(Aw)が0.60以上であることが好ましく、0.65以上であることがより好ましい。また、雑菌の増殖を制御して米由来甘味料の保存性を高める観点から、水分活性が0.85以下であることが好ましい。水分活性(Water Activity、「Aw」と略される)は、食品中の自由水の割合を表す数値であり、食品の保存性の指標として用いられる。本発明の一態様に係る米由来甘味料の水分活性は、当業者に公知の手法を用いて測定することができ、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る米由来甘味料は、後述する製造方法によって製造することができる。また、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、必要に応じて、前述した成分以外の成分を含んでもよい。このような成分としては、例えば保存料、酸化防止剤、香料、pH調整剤、増粘剤、酸味料等の食品添加物として通常使用される成分が挙げられる。
【0018】
本発明の一態様に係る米由来甘味料は、甘味料として十分な糖度を有しており、且つ結晶化が抑制されていることにより保存安定性及び取扱い性に優れる。さらに本発明の一態様によれば雑菌の増殖も抑えられていることからも保存安定性及び取扱い性に優れる。このように、本発明の一態様に係る米由来甘味料は、砂糖や人工甘味料の代わりに使用できるほどの十分な甘さを有し、結晶化が抑制され、且つ、雑菌の増殖が抑えられた、安全で安心な天然甘味料として好適に使用することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る米由来甘味料を含む食品もまた、本発明の範疇に含まれる。このような食品の形態は特に限定されない。例えば、粉末、シャーベット、キャンディ、サプリメント、医薬品組成物等を挙げることができる。食品には飲料も含まれる。例えば、米由来甘味料を水等で溶解した飲料も本発明の範疇である。食品中に含まれている米由来甘味料の含有量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。
【0020】
〔米由来甘味料の製造方法〕
本発明の一態様に係る米由来甘味料の製造方法は、前述した本発明の一態様に係る米由来甘味料の製造方法であって、米、水及び酵素剤を含む糖化原料を糖化する糖化工程と、前記糖化工程で得られた糖化物を固液分離して、糖化液を得る固液分離工程と、前記糖化液を濃縮する濃縮工程と、を含む。
【0021】
(糖化工程)
糖化工程では、米、水及び酵素剤を含む糖化原料を糖化する。糖化原料は、米糀を含んでいても、含んでいなくてもよいが、糖化原料の糖化を促進する観点から、米糀を含んでいることが好ましい。米糀を用いて得られる米由来甘味料は、米糀に由来する麹菌を含み得る。米由来甘味料中に含まれている前記「米糀に由来する麹菌」は、生菌であってもよく、死菌であってもよく、または麹菌の一部分解物であってもよい。
【0022】
糖化工程における糖化条件は、糖化原料の糖化が起こる条件であれば特に限定されない。例えば、50℃以上、60℃以下(好ましくは、53℃)で、3時間以上、30時間以下、好ましくは15時間以上、25時間以下にわたって糖化工程を行えばよい。
【0023】
米の種類は特に限定されない。例えば、うるち米、もち米、酒造米等の米を使用することができる。本発明の一態様において、米は、デンプンをα化したα化米を使用してもよい。また、本発明の一態様において、米は、乾燥したものを水に浸漬し、炊くことによってα化したものを糖化原料として用いてもよい。また、本発明の一態様において、米は、蒸米であってもよい。
【0024】
糖化原料における米の含有量は特に制限されず、米由来甘味料中のグルコース及び三糖の組成が前述の範囲になるように適宜調整すればよい。例えば、本発明の一態様において、糖化原料が米糀を含まない場合は、糖化原料における米の含有量は、当該糖化原料の総質量100質量%に対して、20質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の一態様において、後述のように糖化原料が米糀を含む場合は、糖化原料における米の含有量は、当該糖化原料の総質量100質量%に対して、20質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。
【0026】
酵素剤としては、デンプンの糖化反応を促進する酵素を含むものが使用される。デンプンの糖化反応を促進する酵素としては、例えば、デンプン液化酵素、デンプン糖化酵素、糖転移酵素、プルラナーゼ等を挙げることができる。また、デンプン液化酵素としては、例えば、αアミラーゼ等を挙げることができる。デンプン糖化酵素としては、例えば、マルトトリオヒドロダーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ等を挙げることができる。糖転移酵素としては、トランスグルコシダーゼ等を挙げることができる。これらは1種でもよく、複数種を組み合わせてもよい。
【0027】
酵素剤の含有量は、原料基質(米又は米糀)の量に応じて適宜設定すればよい。2種類以上の酵素剤を併用する場合は、糖化原料における各酵素剤の含有量が前述の範囲となるように調整すればよい。
【0028】
米糀は、通常の米糀の製麹方法に従って調製され得る。例えば、米を蒸して得られた蒸米に、麹菌を散布し、麹菌に最適な条件下(例えば、25℃以上、40℃以下)で繁殖させることにより得られる。米糀は市販品を用いてもよい。
【0029】
麹菌は、通常の製麹に用いられる麹菌であれば特に限定されない。麹菌としては、例えば、黄麹菌(Aspergillus oryzae)、白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)等が挙げられる。
【0030】
前記糖化原料が米糀を含んでいる場合、糖化原料における米糀の含有量は特に制限されず、米由来甘味料中のグルコース及び三糖の組成が前述の範囲になるように適宜調整すればよい。例えば、糖化原料の糖化を促進する観点から、当該糖化原料の総質量100質量%に対して、2質量%以上であることが好ましい。また、米由来甘味料の結晶化抑制の観点から、糖化原料における米糀の含有量は、当該糖化原料の総質量100質量%に対して、14質量%未満であることが好ましい。
【0031】
前記糖化原料中の米糀の含有量を2質量%以上、14質量%未満に調整することにより、結晶化が抑制された米由来甘味料を製造することができる。
【0032】
糖化原料は、米、酵素剤及び米糀以外の残部を水とすることができる。
【0033】
本発明の一態様において、糖化工程は、米、水及び酵素剤を含む第1糖化原料を糖化する第1糖化工程と、前記第1糖化工程で得られた第1糖化物及び米糀を含む第2糖化原料を糖化する第2糖化工程と、を含んでいてもよい。糖化原料における米糀の含有量は特に制限されず、米由来甘味料中のグルコース及び三糖の組成が前述の範囲になるように適宜調整すればよいが、このように第1糖化工程において米糀を含まない第1糖化原料を糖化し、第2糖化工程において米糀を含む第2糖化原料を糖化することにより、糖化工程を1段階で行う製造方法よりもより多くの米糀を添加して糖化工程を行なって、結晶化が抑制された米由来甘味料を製造することができる。
【0034】
例えば、糖化を促進する観点から、第2糖化原料における米糀の含有量は、当該第2糖化原料の総質量100質量%に対して、2質量%以上であることが好ましい。また、米由来甘味料の結晶化抑制の観点から、第2糖化原料における米糀の含有量は、当該第2糖化原料の総質量100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましい。
【0035】
糖化工程が、第1糖化工程と第2糖化工程とを含む場合の第1糖化原料における米の含有量及び酵素剤の含有量については、米糀を含まない糖化原料中の米の含有量及び酵素剤の含有量について説明した通りである。
【0036】
(固液分離工程)
固液分離工程では、前記糖化工程で得られた糖化物を固液分離して、糖化液を得る。ここで「固液分離」とは、糖化物中の固形分と液体とを分離することが意図される。固液分離の方法としては、特に限定されない。例えば、横型フィルタープレス、遠心分離機を用いた固液分離等を挙げることができる。糖化工程で得られた糖化物を固液分離することにより、固形分(例えば、搾りかす)を含まない清澄な糖化液を得ることができる。
【0037】
(濃縮工程)
濃縮工程では、前記固液分離工程で得られた前記糖化液を濃縮する。糖化液を濃縮することにより、糖化液のBrix値及び水分活性を、前記「米由来甘味料」の項で説明した所望の範囲に調整することができる。糖化液の濃縮方法としては、特に限定されない。例えば、加熱濃縮、減圧濃縮等を挙げることができる。濃縮工程を行なってBrix値を向上させることにより、砂糖、人工甘味料等を添加することなく、十分な甘さの米由来甘味料を製造することができる。また、濃縮工程を行なって水分活性を調整することにより、雑菌の増殖が抑制された米由来甘味料を提供することができる。さらには、前述の通り、本発明の米由来甘味料は、結晶化が抑制されている。よって、本発明の一態様によれば、結晶化が抑制され、十分な甘さを有し、且つ、雑菌の増殖が抑えられた、従来にない米由来甘味料を製造できる。
【0038】
(その他の工程)
本発明の一態様に係る製造方法は、前記固液分離工程の前に、前記糖化工程で得られた糖化物を加熱する加熱工程をさらに含んでいてもよい。加熱工程は、火入れ工程とも称される。前記糖化工程で得られた糖化物を加熱することにより、当該糖化物中に含まれている前記酵素剤及び麹菌を失活させることができる。その結果、米由来甘味料の品質安定性を向上させることができる。加熱工程における加熱条件は、糖化物中に含まれている前記酵素剤及び麹菌を失活させることができる条件であれば特に限定されない。例えば、糖化物を90℃で30分間加熱すればよい。
【0039】
また、前述の各工程の条件を、本発明の米由来甘味料のグルコース及び三糖の組成を満たすように、適宜設定すればよい。例えば、当業者は前述の工程を行なった後、グルコースの量と、三糖の量とを測定して調製することで各工程の条件を調整し得る。また、本発明の米由来甘味料の製造方法の一態様は、グルコース及び三糖の量を測定して当該組成を満たすか確認する工程を含んでもよい。また、Brix等必要な成分の測定を適宜行ってもよい。
【0040】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0041】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る米由来甘味料は、米由来甘味料であって、米由来成分と、グルコースと、パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオースの内の少なくとも1種と、を含み、前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、47.2質量%未満であり、且つ前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、1.96質量%を超えて、16.00質量%以下である構成である。
【0042】
本発明の態様2に係る米由来甘味料は、前記の態様1において、前記米由来甘味料の総質量に対する前記グルコースの含有量が、4.0質量%以上、45.00質量%以下であり、且つ前記米由来甘味料の総質量に対する前記パノース、前記マルトトリオース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、2.00質量%以上、15.50質量%以下である構成としてもよい。
【0043】
本発明の態様3に係る米由来甘味料は、前記の態様1又は2において、イソマルトースをさらに含み、前記米由来甘味料の総質量に対する前記イソマルトース、前記パノース及び前記イソマルトトリオースの合計含有量が、0.4質量%以上、23.00質量%以下である構成としてもよい。
【0044】
本発明の態様4に係る米由来甘味料は、前記の態様1から3のいずれかにおいて、Brixが70%以上、80%以下である構成としてもよい。
【0045】
本発明の態様5に係る米由来甘味料は、前記の態様1から4のいずれかにおいて、水分活性が0.60以上、0.85以下である構成としてもよい。
【0046】
本発明の態様6に係る食品は、前記の態様1から5のいずれかに記載の米由来甘味料を含む構成としてもよい。
【0047】
本発明の態様7に係る製造方法は、前記の態様1に記載の米由来甘味料の製造方法であって、米、水及び酵素剤を含む糖化原料を糖化する糖化工程と、前記糖化工程で得られた糖化物を固液分離して、糖化液を得る固液分離工程と、前記糖化液を濃縮する濃縮工程と、を含む方法としてもよい。
【0048】
本発明の態様8に係る製造方法は、前記の態様7において、前記糖化原料は、米糀を、当該糖化原料の総質量100質量%に対して2質量%以上、14質量%未満含む方法としてもよい。
【0049】
本発明の態様9に係る製造方法は、前記の態様7において、前記糖化工程は、米、水及び酵素剤を含む第1糖化原料を糖化する第1糖化工程と、前記第1糖化工程で得られた第1糖化物及び米糀を含む第2糖化原料を糖化する第2糖化工程と、を含む方法としてもよい。
【0050】
本発明の態様10に係る製造方法は、前記の態様9において、前記第2糖化原料は、前記米糀を、当該第2糖化原料の総質量100質量%に対して、2質量%以上、20質量%以下含む方法としてもよい。
【実施例】
【0051】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0052】
(米糀)
株式会社樋口松之助商店より購入した麹菌(菌株名:Aspergillus oryzae No.5100株(以下、A. oryzae No.5100株という。)、Aspergillus luchuensis mut. kawachii No.5034株(以下、A. kawachii No.5034株という。)、Aspergillus oryzae No.5030株(以下、A. oryzaeNo.5030株という。)を米に接種し、製麹した。
【0053】
(米)
α化米:原料米を加水加熱処理することで、デンプンをα化した後で乾燥させたもの。
国産米:α化させて乾燥させずに使用した。
外国産米:α化させて乾燥させずに使用した。
【0054】
(酵素剤)
αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼ、プルラナーゼを、単独で又は適宜組み合わせて使用した。
【0055】
<米由来甘味料の製造>
〔実施例1〕
α化米、酵素剤及び水を混合して第1糖化原料を調製し、当該第1糖化原料を53℃で15時間糖化させた(第1糖化工程)。得られた第1糖化物に乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)を添加して第2糖化原料を調製し、当該第2糖化原料を53℃で6時間さらに糖化させた(第2糖化工程)。得られた第2糖化物を鍋に入れ、90℃で30分間加熱することにより火入れを行った(加熱工程)。火入れ後の第2糖化物を、手動圧搾機(ADOUR製)で圧搾した後、14,000rpm(17,800×g)で3分間遠心分離し、No.2ろ紙(東洋濾紙株式会社製)を用いて濾過して、ろ液(糖化液)を得た(固液分離工程)。得られたろ液を、エバポレーターによって濃縮して(濃縮工程)、実施例1の米由来甘味料を得た。
【0056】
なお、実施例1では、表1に示すように、α化米23質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)18質量%、水59質量%を配合し、基質(米及び米糀の総量。以下同じ。)41g当たりのでんぷん糊精化力が164U以上、でんぷん糖化力が14U以上、トランスグルコシダーゼ力が12300U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼを添加した。
【0057】
〔実施例2〕
基質41g当たりのでんぷん糊精化力を328U以上、でんぷん糖化力を29U以上、トランスグルコシダーゼ力を24600U以上とした以外は実施例1と同じ方法により、実施例2の米由来甘味料を得た。
【0058】
〔実施例3〕
基質41g当たりのでんぷん糊精化力を492U以上、でんぷん糖化力を43U以上、トランスグルコシダーゼ力を36900U以上とした以外は実施例1と同じ方法により、実施例3の米由来甘味料を得た。
【0059】
〔参考例4〕
表1に示すように、国産米30質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)5質量%、水65質量%を配合し、基質35g当たりのでんぷん糊精化力が1345U以上となるように、αアミラーゼを添加した。当該糖化原料を53℃で15時間糖化させた(糖化工程)。得られた糖化物を、実施例1と同じ方法で火入れを行った(加熱工程)。火入れ後の糖化物を、実施例1と同じ方法で固液分離して、ろ液(糖化液)を得た(固液分離工程)。得られたろ液を、実施例1と同じ方法で濃縮して(濃縮工程)、参考例4の米由来甘味料を得た。
【0060】
〔参考例5〕
酵素剤として、プルラナーゼをプルラナーゼ力が210U以上となるように、さらに使用したこと以外は参考例4と同じ方法により、参考例5の米由来甘味料を得た。
【0061】
〔実施例6〕
酵素剤として、基質35g当たりのでんぷん糊精化力が1240U以上、でんぷん糖化力が12U以上、トランスグルコシダーゼ力が10500U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを添加したこと、以外は参考例4と同じ方法により、実施例6の米由来甘味料を得た。
【0062】
〔実施例7〕
酵素剤として、基質35g当たりのでんぷん糊精化力が1240U以上、でんぷん糖化力が12U以上、トランスグルコシダーゼ力が10500U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを添加したこと、加熱工程において、糖化物を鍋で加熱する代わりに、連続式加熱殺菌機を用いて火入れを行ったこと、並びに、固液分離工程において、手動圧搾機による圧搾・遠心分離・濾過の代わりに、横型フィルタープレスを用いて固液分離を行ったこと以外は参考例4と同じ方法により、実施例7の米由来甘味料を得た。
【0063】
〔実施例8〕
実施例8の米由来甘味料は、実施例6と同じ方法を行なって得たものであり、製造ロットが異なる。
【0064】
〔実施例9〕
酵素剤として、基質35g当たりのでんぷん糊精化力が1240U以上、でんぷん糖化力が12U以上、トランスグルコシダーゼ力が10500U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを添加したこと、及び国産米の代わりに、外国産米を30質量%含んでいること以外は参考例4と同じ方法により、実施例9の米由来甘味料を得た。
【0065】
〔比較例1〕
表2に示すように、国産米27質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)14質量%、水59質量%を配合し、基質41g当たりのでんぷん糊精化力が2000U以上となるように、αアミラーゼを添加した。当該糖化原料を53℃で15時間糖化させた(糖化工程)。得られた糖化物を、連続式加熱殺菌機を用いて火入れを行った(加熱工程)。火入れ後の糖化物を、横型フィルタープレスを用いて固液分離し、0.45μmフィルター(東洋濾紙株式会社製)を用いて濾過して、ろ液(糖化液)を得た(固液分離工程)。得られたろ液を、実施例1と同じ方法で濃縮して(濃縮工程)、比較例1の米由来甘味料を得た。
【0066】
〔比較例2〕
表2に示すように、α化米23質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)18質量%、水59質量%を配合し、基質41g当たりのでんぷん糊精化力が164U以上、でんぷん糖化力が14U以上、トランスグルコシダーゼ力が12300U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを添加した。当該糖化原料を53℃で15時間糖化させた(糖化工程)。得られた糖化物を、実施例1と同じ方法で火入れを行った(加熱工程)。火入れ後の糖化物を、手動圧搾機(ADOUR製)を用いて固液分離し、No.2ろ紙を用いて濾過して、ろ液(糖化液)を得た(固液分離工程)。得られたろ液を、実施例1と同じ方法で濃縮して(濃縮工程)、比較例2の米由来甘味料を得た。
【0067】
〔比較例3〕
糖化原料が、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)の代わりに、乾燥米糀(A. kawachii No.5034株)を18質量%含んでいること以外は比較例2と同じ方法により、比較例3の米由来甘味料を得た。
【0068】
〔比較例4〕
糖化原料が、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)の代わりに、乾燥米糀(A. oryzae No. 5030株)を18質量%含んでいること以外は比較例2と同じ方法により、比較例4の米由来甘味料を得た。
【0069】
〔比較例5〕
糖化原料が、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)の代わりに、乾燥米糀(A. oryzae No. 5030株)を18質量%含んでいること、固液分離工程において、手動圧搾機(ADOUR製)で圧搾した後、14,000rpm(17,800×g)で10分間遠心分離し、No.2ろ紙(東洋濾紙株式会社製)を用いて濾過して、ろ液(糖化液)を得たこと以外は比較例2と同じ方法により、比較例5の米由来甘味料を得た。
【0070】
〔比較例6〕
固液分離工程において、比較例5と同じ方法で固液分離して、ろ液(糖化液)を得たこと以外は比較例2と同じ方法により、比較例6の米由来甘味料を得た。
【0071】
〔比較例7〕
表2に示すように、国産米27質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)14質量%、水59質量%を配合し、基質41g当たりのでんぷん糊精化力が2000U以上となるように、αアミラーゼを添加した。当該糖化原料を53℃で15時間糖化させた(糖化工程)。得られた糖化物を、比較例1と同じ方法で火入れを行った(加熱工程)。火入れ後の糖化物を、横型フィルタープレスを用いて固液分離し、No.2ろ紙を用いて濾過して、ろ液(糖化液)を得た(固液分離工程)。
【0072】
比較例7では、糖化物100gから得られたろ液全量に対して、でんぷん糊精化力が164U以上、でんぷん糖化力が14U以上、トランスグルコシダーゼ力が12300U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを添加して、53℃で6時間さらに糖化させた。得られた糖化物を鍋に入れ、90℃で30分間加熱することにより火入れを行った。その後、実施例1と同じ方法で濃縮して(濃縮工程)、比較例7の米由来甘味料を得た。
【0073】
〔比較例8〕
固液分離後の濾過を、0.45μmフィルターの代わりにNo.2ろ紙を用いて濾過したこと以外は、比較例1と同じ方法で得た米由来甘味料(濃縮後)全量に対して、でんぷん糊精化力が164U以上、でんぷん糖化力が14U以上、トランスグルコシダーゼ力が12300U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを添加して、53℃で6時間さらに糖化させた。得られた糖化物を鍋に入れ、90℃で30分間加熱することにより火入れを行い、比較例8の米由来甘味料を得た。
【0074】
〔比較例9〕
固液分離後の濾過を、0.45μmフィルターの代わりにNo.2ろ紙を用いて濾過したこと以外は、比較例1と同じ方法で得た米由来甘味料(濃縮後)全量に対して、でんぷん糖化力が1600U以上となるように、グルコアミラーゼを添加して、53℃で6時間さらに糖化させたこと以外は、比較例8と同じ方法により、比較例9の米由来甘味料を得た。
【0075】
〔比較例10〕
表3に示すように、α化米35質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)6質量%、水59質量%を配合し、基質41g当たりのでんぷん糖化力が27U以上となるように、βアミラーゼを添加した。当該糖化原料を53℃で15時間糖化させた(糖化工程)。得られた糖化物を実施例1と同じ方法で火入れを行った(加熱工程)。火入れ後の糖化物を、実施例1と同じ方法で固液分離して、ろ液(糖化液)を得た(固液分離工程)。得られたろ液を、実施例1と同じ方法で濃縮して(濃縮工程)、比較例10の米由来甘味料を得た。
【0076】
〔比較例11〕
酵素剤として、でんぷん糊精化力が287U以上となるようにαアミラーゼを添加した以外は比較例10と同じ方法により、比較例11の米由来甘味料を得た。
【0077】
〔比較例12〕
比較例12として、A社製の糀由来甘味料を用いた。当該糀由来甘味料は、甘酒を低温濃縮したものである。
【0078】
〔比較例13〕
B社製の甘酒を、比較例2と同じ方法で固液分離して、ろ液(糖化液)を得た(固液分離工程)。甘酒100gから得られたろ液全量に対して、でんぷん糊精化力が160U以上、でんぷん糖化力が14U以上、トランスグルコシダーゼ力が12000U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ及びトランスグルコシダーゼを添加して、53℃で6時間さらに糖化させた。得られた糖化物を、実施例1と同じ方法で火入れを行った。火入れ後の糖化物を、実施例1と同じ方法で濃縮して(濃縮工程)、比較例13の米由来甘味料を得た。
【0079】
〔参考例10〕
表4に示すように、国産米31質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)2質量%、水67質量%を配合し、基質33g当たりのでんぷん糊精化力が1381U以上、プルラナーゼ力が198U以上となるように、αアミラーゼ、プルラナーゼを添加した。当該糖化原料を53℃で15時間糖化させた(糖化工程)。得られた糖化物を、実施例1と同じ方法で火入れを行った(加熱工程)。火入れ後の糖化物を、比較例5と同じ方法で固液分離して、ろ液(糖化液)を得た(固液分離工程)。得られたろ液を、実施例1と同じ方法で濃縮して(濃縮工程)、参考例10の米由来甘味料を得た。
【0080】
〔実施例11〕
国産米30質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)6質量%、水64質量%とし、基質36g当たりのでんぷん糊精化力が1352U以上、プルラナーゼ力が216U以上となるように、αアミラーゼ、プルラナーゼを添加した以外は参考例10と同じ方法により、実施例11の米由来甘味料を得た。
【0081】
〔比較例14〕
国産米28質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)12質量%、水60質量%とし、基質40g当たりのでんぷん糊精化力が1330U以上、プルラナーゼ力が240U以上となるように、αアミラーゼ、プルラナーゼを添加した以外は参考例10と同じ方法により、比較例14の米由来甘味料を得た。
【0082】
〔比較例15〕
国産米27質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)14質量%、水59質量%とし、基質41g当たりのでんぷん糊精化力が1287U以上、プルラナーゼ力が246U以上となるように、αアミラーゼ、プルラナーゼを添加した以外は参考例10と同じ方法により、比較例15の米由来甘味料を得た。
【0083】
〔実施例12〕
国産米31質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)2質量%、水67質量%とし、基質33g当たりのでんぷん糊精化力が1282U以上、でんぷん糖化力が12U以上、トランスグルコシダーゼ力が9900U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼを添加した以外は参考例10と同じ方法により、実施例12の米由来甘味料を得た。
【0084】
〔実施例13〕
国産米30質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)6質量%、水64質量%とし、基質36g当たりのでんぷん糊精化力が1244U以上、でんぷん糖化力が13U以上、トランスグルコシダーゼ力が10800U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼを添加した以外は参考例10と同じ方法により、実施例13の米由来甘味料を得た。
【0085】
〔実施例14〕
国産米28質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)12質量%、水60質量%とし、基質40g当たりのでんぷん糊精化力が1210U以上、でんぷん糖化力が14U以上、トランスグルコシダーゼ力が12000U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼを添加した以外は参考例10と同じ方法により、実施例14の米由来甘味料を得た。
【0086】
〔実施例15〕
国産米27質量%、乾燥米糀(A. oryzae No.5100株)14質量%、水59質量%とし、基質41g当たりのでんぷん糊精化力が1164U以上、でんぷん糖化力が14U以上、トランスグルコシダーゼ力が12300U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼを添加した以外は参考例10と同じ方法により、実施例15の米由来甘味料を得た。
【0087】
〔参考例16〕
表5に示すように、国産米32質量%、水68質量%を配合し、基質32g当たりのでんぷん糊精化力が1374U以上、プルラナーゼ力が192U以上となるように、αアミラーゼ、プルラナーゼを添加した。糖化工程以降は参考例10と同じ方法により、参考例16の米由来甘味料を得た。
【0088】
〔実施例17〕
国産米32質量%、水68質量%を配合し、基質32g当たりのでんぷん糊精化力が1278U、でんぷん糖化力が11U以上、トランスグルコシダーゼ力が9600U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼを添加した以外は参考例16と同じ方法により、実施例17の米由来甘味料を得た。
【0089】
〔参考例18〕
国産米20質量%、水80質量%を配合し、基質20g当たりのでんぷん糊精化力が890U以上、プルラナーゼ力が120U以上となるように、αアミラーゼ、プルラナーゼを添加した以外は参考例16と同じ方法により、参考例18の米由来甘味料を得た。
【0090】
〔実施例19〕
国産米20質量%、水80質量%を配合し、基質20g当たりのでんぷん糊精化力が830U以上、でんぷん糖化力が7U以上、トランスグルコシダーゼ力が6000U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼを添加した以外は参考例16と同じ方法により、実施例19の米由来甘味料を得た。
【0091】
〔参考例20〕
国産米40質量%、水60質量%を配合し、基質40g当たりのでんぷん糊精化力が1730U以上、プルラナーゼ力が240U以上となるように、αアミラーゼ、プルラナーゼを添加した以外は参考例16と同じ方法により、参考例20の米由来甘味料を得た。
【0092】
〔実施例21〕
国産米40質量%、水60質量%を配合し、基質40g当たりのでんぷん糊精化力が1610U以上、でんぷん糖化力が14U以上、トランスグルコシダーゼ力が12000U以上となるように、αアミラーゼ、βアミラーゼ、トランスグルコシダーゼを添加した以外は参考例16と同じ方法により、実施例21の米由来甘味料を得た。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
<結晶化の有無についての確認>
実施例及び比較例の各米由来甘味料を、常温(25℃)で保存し、結晶化の有無を確認した。結果を表6~9に示す。その結果、実施例1~3、6~9、11~15、17、19、及び21、並びに参考例4、5、10、16、18及び20の各米由来甘味料は、45日経過後も結晶化が見られなかった。一方、比較例1~15の各米由来甘味料は、早いもので保存後1週間以内に、また、遅いものでも保存後1か月半経過後には結晶化が見られた。
【0098】
<米由来甘味料の分析>
実施例及び比較例の各米由来甘味料について、以下の分析を行った。
【0099】
(Brixの測定)
Brixは屈折計を用いて測定した。
【0100】
(水分活性(Aw)の測定)
水分活性(Aw)は電気抵抗式を用いて測定した。
【0101】
(グルコース等の糖の量の測定)
米由来甘味料中に含まれているグルコース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、パノース、及びイソマルトトリオースの含有量を、高速液体クロマトグラフィー法によって測定した。
【0102】
結果を表6~9に示す。表6中には示していないが、実施例7と同様の製法で作製したBrixが70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%での米由来甘味料は、常温、5℃、及び30℃のそれぞれの温度条件で、12カ月間の保存後にも、結晶化が見られなかった。更にそのうち、Brixが71~76%の米由来甘味料は、-20℃の温度条件で、12カ月間の保存後にも、結晶化が見られなかった。
【0103】
さらに、米由来甘味料に含まれている各糖の量と結晶化抑制効果との関連性について解析を行った。
図1は、実施例及び比較例の米由来甘味料に含まれているグルコース及び三糖の含有量を示す図である。また、
図2は、実施例及び比較例の米由来甘味料に含まれている各種糖類の含有量を示す図である。
尚、図1及び図2中のA4、A5、A10、A16、A18及びA20は、それぞれ、参考例4、参考例5、参考例10、参考例16、参考例18及び参考例20を表す。
【0104】
図1に示すように、結晶化が抑制されていた実施例1~
3、6~9、11~15、17、19、及び21
、並びに参考例4、5、10、16、18及び20の米由来甘味料は、比較例の米由来甘味料よりもグルコースの含有量が少ない傾向が見られた。さらに、結晶化が抑制されていた実施例1~
3、6~9、11~15、17、19、及び21
、並びに参考例4、5、10、16、18及び20の米由来甘味料は、三糖(パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオース)の合計含有量が、比較例の米由来甘味料よりも多い傾向が示された。
図1中に示した横軸に平行な太い実線は三糖の合計含有量が米由来甘味料100gあたり1.96gの位置を示し、縦軸に平行な太い実線はグルコースの含有量が米由来甘味料100gあたり47.2gの位置を示している。
【0105】
この結果から、米由来甘味料100gあたりのグルコースの含有量が47.2g未満(すなわち、米由来甘味料の総質量に対するグルコースの含有量が47.2質量%未満)であり、且つ米由来甘味料100gあたりの三糖(パノース、マルトトリオース及びイソマルトトリオース)の合計含有量が1.96gを超えている(すなわち、米由来甘味料の総質量に対する三糖の含有量が1.96質量%を超えている)ことにより、結晶化抑制効果が得られると考えられた。
【0106】
尚、
図1中に破線で囲った領域は、米糀を糖化原料の総質量100質量%に対して6質量%以下含む、実施例
6~
9、12~13、
17、19、21、並びに
参考例4、5、10、16、18及び20の製造方法により製造した米由来甘味料の結果を表し、一点鎖線で囲った領域は、米糀を糖化原料の総質量100質量%に対して6質量%以上含む、実施例1~3、11、14~15の製造方法により製造した米由来甘味料の結果を表している。実施例1~3、11、14~15の製造方法では、実施例
6~
9、12~13、
17、19、21、並びに
参考例4、5、10、16、18及び20の製造方法よりも糖化原料中に配合する米糀の量が多いので、実施例1~3、11、14~15の米由来甘味料に含まれているグルコース量は、実施例
6~
9、12~13、
17、19、21、並びに
参考例4、5、10、16、18及び20の米由来甘味料よりも多くなる傾向が見られた。
【0107】
さらに、その他の糖の含有量と米由来甘味料の結晶化抑制効果との関連性についても解析を行った。
図2の1021は、各米由来甘味料に含まれているグルコース及びパノースの含有量を示している。比較例の米由来甘味料は、実施例の米由来甘味料と比較して、全体的に、パノースの含有量が少ない傾向が見られた。一方、実施例の米由来甘味料は、パノースの含有量に関して特に明確な傾向は見られず、中には、比較例の米由来甘味料よりもパノースの含有量が少ないものもあった。従って、前述の三糖の内のパノースのみの含有量と、結晶化抑制効果との間に明確な関連性は見られなかった。
【0108】
図2の1022は、各米由来甘味料に含まれているグルコース及びマルトースの含有量を示している。マルトースの含有量と、結晶化抑制効果との間に明確な関連性は見られなかった。
【0109】
図2の1023は、各米由来甘味料に含まれているグルコースの含有量及び分析したオリゴ糖(マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、パノース、
及びイソマルトトリオー
ス)の総含有量を示している。実施例の米由来甘味料は、比較例の米由来甘味料と比較して、全体的に、分析したオリゴ糖の総含有量が多い傾向がみられた。しかし、比較例の米由来甘味料の中にも分析したオリゴ糖の総含有量が多いものもあり、分析したオリゴ糖の総含有量と、結晶化抑制効果との間に明確な関連性は見られなかった。
【0110】
図2の1024は、各米由来甘味料に含まれているグルコースの含有量及び分析したイソマルトオリゴ糖(具体的には、イソマルトース、パノース、及びイソマルトトリオース)の総含有量を示している。実施例の米由来甘味料は、イソマルトオリゴ糖の総含有量に関して特に明確な傾向は見られず、中には、比較例の米由来甘味料よりもイソマルトオリゴ糖の総含有量が少ないものもあった。従って、イソマルトオリゴ糖の総含有量と、結晶化抑制効果との間に明確な関連性は見られなかった。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、甘味料として主に食品分野において利用することができる。