(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】介護用スリングシート
(51)【国際特許分類】
A61G 1/00 20060101AFI20240725BHJP
A61G 7/10 20060101ALI20240725BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61G1/00 702
A61G7/10
A41D13/12 163
(21)【出願番号】P 2022545728
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031494
(87)【国際公開番号】W WO2022045289
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/032512
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000150084
【氏名又は名称】株式会社竹虎
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】飯島 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】望月 彬也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 弘子
(72)【発明者】
【氏名】田畑 寛幸
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-099385(JP,A)
【文献】特開2001-087324(JP,A)
【文献】特開2016-017246(JP,A)
【文献】特開2005-279184(JP,A)
【文献】特開2008-036100(JP,A)
【文献】特開2015-202121(JP,A)
【文献】特開2010-252898(JP,A)
【文献】特開平11-151274(JP,A)
【文献】米国特許第09532914(US,B1)
【文献】実開昭63-020823(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0082544(US,A1)
【文献】国際公開第2019/197000(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00,7/10
A41D 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の移動を補助する介護用移動リフトに用いられ、上記要介護者の少なくとも上肢から大腿部にかけて包み込むように支持するシート本体と、上記シート本体を上記介護用移動リフトのハンガーに懸架するための懸架ベルトとを備えている介護用スリングシートにおいて、
上記シート本体は、上記要介護者の肩部から腰部にかけての部分を支持する背側支持部と、上記要介護者の臀部から大腿部にかけての部分を支持する脚側支持部とを含む矩形状のシートからなり、上記懸架ベルトは一対として、上記シート本体の長さ方向の左側縁部に沿って配置される第1懸架ベルトと、上記シート本体の長さ方向の右側縁部に沿って配置される第2懸架ベルトとを有し、
上記第1懸架ベルトの一端は上記背側支持部の肩側左コーナー部に係止され、その他端は上記肩側左コーナー部と対向する上記脚側支持部の大腿側左コーナー部に係止され、
上記第2懸架ベルトの一端は上記背側支持部の肩側右コーナー部に係止され、その他端は上記肩側左コーナー部と対向する上記脚側支持部の大腿側右コーナー部に係止され
、
上記各懸架ベルトには、上記要介護者を上記介護用移動リフトに懸架する際に、上記要介護者の懸架位置を調節可能なストッパが備えられていることを特徴とする介護用スリングシート。
【請求項2】
上記各懸架ベルトは、所定の係着手段を介して、上記シート本体の両側縁部に着脱可能に保持されることを特徴とする請求項1に記載の介護用スリングシート。
【請求項3】
上記シート本体には、上記要介護者の着用する介護用パジャマに対する着脱可能な係止手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の介護用スリングシート。
【請求項4】
上記シート本体には、防水加工が施されており、かつ、体に当たる部分には縫い目がないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の介護用スリングシート。
【請求項5】
上記第1懸架ベルトと第2懸架ベルト間には、上記要介護者の頭部を支持するヘッドサポートが着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の介護用スリングシート。
【請求項6】
上記第1懸架ベルトと第2懸架ベルトは、上記シート本体の裏面側における両側縁部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の介護用スリングシート。
【請求項7】
上記第1懸架ベルトと第2懸架ベルトは、上記シート本体の両側縁部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の介護用スリングシート。
【請求項8】
上記シート本体の裏面側において、上記背側支持部の肩側左右2箇所のコーナー部と上記脚側支持部の大腿側左右2箇所のコーナー部には、それぞれ、上記シート本体の内側と外側とに折返し可能なループ状の係止部が設けられており、上記第1懸架ベルトは、上記肩側左コーナー部の係止部と上記大腿側左コーナー部の係止部とに連結され、上記第2懸架ベルトは、上記肩側右コーナー部の係止部と上記大腿側右コーナー部の係止部とに連結されることを特徴とする請求項6または7に記載の介護用スリングシート。
【請求項9】
上記シート本体の上記背側支持部の肩側左右2箇所のコーナー部と上記脚側支持部の大腿側左右2箇所のコーナー部には、それぞれ、ループ状の係止部が設けられており、上記第1懸架ベルトは、上記肩側左コーナー部の係止部と上記大腿側左コーナー部の係止部とに連結され、上記第2懸架ベルトは、上記肩側右コーナー部の係止部と上記大腿側右コーナー部の係止部とに連結されることを特徴とする請求項6または7に記載の介護用スリングシート。
【請求項10】
上記各係止部は1本布テープよりなり、その両端が上記シート本体に縫着されてループ状に形成されることを特徴とする請求項8または9に記載の介護用スリングシート。
【請求項11】
上記第1懸架ベルトおよび第2懸架ベルトは、それらの両端に、上記係止部に連結するためのフック部を備えていることを特徴とする請求項8または9のいずれか1項に記載の介護用スリングシート。
【請求項12】
上記懸架ベルトを、介護用懸架リフトのハンガーに引っ掛けるにあたって、
上記第1懸架ベルトおよび第2懸架ベルトには、
上記介護用懸架リフトのハンガーに対する係止位置を示す係止目印部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の介護用スリングシート。
【請求項13】
上記係止目印部は上記懸架ベルトの長さ方向に沿って複数箇所に設けられており、その各々が色分けされていることを特徴とする請求項12に記載の介護用スリングシート。
【請求項14】
上記シート本体は、上記背側支持部の上方に連設された上記要介護者の後頭部を支持するヘッドサポート部をさらに備え、上記ヘッドサポート部の左右両側には、上記ハンガーに対して着脱自在に引っ掛けられる吊り紐が設けられていることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の介護用スリングシート。
【請求項15】
上記吊り紐として、長さの異なる複数の吊り紐を有していることを特徴とする請求項14に記載の介護用スリングシート。
【請求項16】
上記脚側支持部の大腿側左コーナー部と上記脚側支持部の大腿側右コーナー部には、上記脚側支持部を介護ベッドの敷物に止めるクリップが設けられていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の介護用スリングシート。
【請求項17】
要介護者が着用する介護用パジャマにおいて、上記介護用パジャマの後身頃側には、上記請求項1ないし16のいずれか1項に記載の介護用スリングシートと着脱可能な係止手段が備えられていることを特徴とする介護用パジャマ。
【請求項18】
前記大腿側左コーナー部の係止部は、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第1ループ部と、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第2ループ部と、前記第1ループ部と、前記第2ループ部とを支持する把手部と、を有し、
前記大腿側右コーナー部の係止部は、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第1ループ部と、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第2ループ部と、 前記第1ループ部と、前記第2ループ部とを支持する把手部と、を有し、
上記第1懸架ベルトは、上記肩側左コーナー部の係止部と上記大腿側左コーナー部の係止部とに移動可能に連結され、上記第2懸架ベルトは、上記肩側右コーナー部の係止部と上記大腿側右コーナー部の係止部とに移動可能に連結されることを特徴とする請求項7または8に記載の介護用スリングシート。
【請求項19】
前記第1懸架ベルトおよび上記第2懸架ベルトは、その両端にそれぞれ配置するループ状の上端部と、ループ状の下端部と、をそれぞれ有し、前記ループ状のそれぞれの上端部は、前記肩側左コーナー部の係止部と前記大腿側左コーナー部の係止部とに、移動可能に接続され、前記ループ状の下端部は、前記把手部と移動可能に接続されている請求項18に記載の介護用スリングシート。
【請求項20】
前記第1懸架ベルトおよび前記第2懸架ベルトは、懸架ベルト本体部と、を有し、前記懸架ベルト本体部は、介護用移動リフトのハンガーに懸架するために開口する第1開口部と、開口する第2開口部とをさらに有する請求項18または19に記載の介護用スリングシート。
【請求項21】
前記懸架ベルト本体部は、介護用移動リフトのハンガーに懸架するために開口する第3開口部と、をさらに有する請求項20に記載の介護用スリングシート。
【請求項22】
前記懸架ベルト本体部は、前記第1開口部および前記第2開口部に対応する位置にそれぞれ異なる色に着色したリボンと、を具備する請求項20または21に記載の介護用スリングシート。
【請求項23】
前記懸架ベルト本体部は、前記第1開口部、前記第2開口部および第3開口部に、それぞれ対応する位置に、それぞれ異なる色に着色したリボンと、をさらに具備する請求項21または22に記載の介護用スリングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自力で動くことが困難な要介護者を介護用移動リフトに懸架する際に、懸架ベルトを介して要介護者の体を包み込むように支持する介護用スリングシートに関し、さらに詳しく言えば、要介護者の体幹を安定した状態で介護用移動リフトに懸架することができる介護用スリングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
病気や高齢等のために身動きが困難で寝たきりとなっている要介護者を、トイレや風呂などに移動させる手段として、天井走行型リフトや床走行式移動リフトなどの介護用移動リフトが利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図17に示すように、介護用移動リフトR(吊り下げハンガーR1の部分のみを示す)を利用して要介護者を移動させるには、要介護者を乗せて介護用移動リフトRに懸架するための専用の介護用スリングシートSが必要となる。
【0004】
介護用スリングシートSは、例えば、要介護者の身体を保持するポリエステル布やナイロン製メッシュなどの薄手のシート体からなり、要介護者の背中全体を包み込むように支持する背側支持部S1と、要介護者の臀部から大腿部を包み込むように支持する脚側支持部S2とを一体として備えている。
【0005】
介護用スリングシートSは、懸架ベルトBを介して介護用移動リフトRに懸架されようになっており、懸架ベルトBには、例えば高強度の織り布などが用いられ、
図17(a)に示すように、介護用移動リフトRのハンガーR1に掛け渡されて用いられる。
図17(c)にハンガーR1の一例を示す。
【0006】
介護用スリングシートSには、懸架ベルトBが連結される連結手段が設けられており、この例では、
図17(b)に示すように、背側支持部S1の左右上端部にそれぞれ1つずつ、また、スリングシートSの脚側支持部S2の左右側部にそれぞれ2つずつストラップS3が連結手段として設けられている。
【0007】
介護用スリングシートSを介して要介護者を介護用移動リフトRへと懸架するには、例えば、ベッド上の要介護者の寝位置をずらし、要介護者の身体の下に介護用スリングシートSを敷く。
【0008】
この場合、介護用スリングシートSの背側支持部S1が要介護者の背中部位に、また、脚側支持部S2が要介護者の臀部と大腿部の部位に位置するように位置決めし、ずらした要介護者の体をスリングシートS上に寝かせる。
【0009】
次に、介護用移動リフトRを下降させ、懸架ベルトBを介護用スリングシートSのストラップS3の空間内に挿通させてハンガーR1に掛け渡すことにより、
図17(a)に示すように、介護用スリングシートSと懸架ベルトBとが連結される。
【0010】
そして、介護用移動リフトRをゆっくりと上昇させることにより、要介護者を介護用スリングシートS内で座位姿勢に保持して懸架することができるようにしている。
【0011】
このように、介護用スリングシートSを介して要介護者を介護用移動リフトRに懸架することにより、所望とする場所に安全に移動させることができるため、介護者の労力負担が軽減できる。
【0012】
また、介護用スリングシートSにたわみ部分ができないように、懸架ベルトBの長さを調整し、要介護者が介護用スリングシートS内で適正な重心位置を保って移動できるようにし、要介護者の重心ずれによる肉体的緊張を防止するようにしている。
【0013】
しかしながら、従来の介護用スリングシートSは、複数本の懸架ベルトBごとにその長さを調整してハンガーR1に懸架するようにしているが、懸架ベルトBを、介護用スリングシートSに支持される要介護者の体格や体重等にあわせて重心バランスを調整しなければならず、使用性が悪いといった問題がある。
【0014】
特に、要介護者の介護用スリングシートSへの位置合わせの不具合や、介護用移動リフトRの上昇あるいは移動の際に介護用スリングシートS内で要介護者の重心が前方、あるいは後方に偏ることがあり、これにより介護用スリングシートSにたわみが生じ、これが要介護者への身体的負担となること指摘されている。
【0015】
例えば、身体の体幹を支持するには骨盤の位置が重要となるが、介護用スリングシートがたわんでいると要介護者の重心バランスがずれて骨盤が前後あるいは左右に傾く。そしてこれにより、要介護者の不安感を煽るばかりでなく、脊柱が湾曲、屈曲あるいは伸展するためカウンターバランスがとれず、湾曲姿勢を保つため筋緊張を引き起こすというリスクが生じる。
【0016】
そこで、本出願人は、要介護者が着用する介護用パジャマと介護用スリングシートとを着脱可能な一体型として介護用スリングシートのたわみを低減し、要介護者の体幹を安定的に支持することができるスリングシート付き介護用パジャマを提案した(特許文献2参照)。
【0017】
しかしながら、特許文献2に記載の発明によれば、介護用スリングシートのたわみによる要介護者の身体的な負担は軽減されるものの、懸架時に要介護者が着用する介護用パジャマ自体に歪みや攣りが生ずる場合がある等、解決すべき点が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開2004-033533号公報
【文献】特開2016-017246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本発明は、介護用移動リフトに懸架する際に、要介護者の体幹を安定的に支持することができる介護用スリングシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明は、要介護者の移動を補助する介護用移動リフトに用いられ、上記要介護者の少なくとも上肢から大腿部にかけて包み込むように支持するシート本体と、上記シート本体を上記介護用移動リフトのハンガーに懸架するための懸架ベルトとを備えている介護用スリングシートにおいて、上記シート本体は、上記要介護者の肩部から腰部にかけての部分を支持する背側支持部と、上記要介護者の臀部から大腿部にかけての部分を支持する脚側支持部とを含む矩形状のシートからなり、上記懸架ベルトは一対として、上記シート本体の長さ方向の左側縁部に沿って配置される第1懸架ベルトと、上記シート本体の長さ方向の右側縁部に沿って配置される第2懸架ベルトとを有し、上記第1懸架ベルトの一端は上記背側支持部の肩側左コーナー部に係止され、その他端は上記肩側左コーナー部と対向する上記脚側支持部の大腿側左コーナー部に係止され、上記第2懸架ベルトの一端は上記背側支持部の肩側右コーナー部に係止され、その他端は上記肩側左コーナー部と対向する上記脚側支持部の大腿側右コーナー部に係止されていることを特徴としている。
【0021】
本発明において、上記各懸架ベルトは、所定の係着手段を介して、上記シート本体の両側縁部に着脱可能に保持されることが好ましい。
【0022】
また、好ましくは、上記各懸架ベルトには、上記要介護者を上記介護用移動リフトに懸架する際に、上記要介護者の懸架位置を調節可能なストッパが備えられる。
【0023】
上記シート本体には、上記要介護者の着用する介護用パジャマに対する着脱可能な係止手段が設けられることも本発明の特徴の一つである。
【0024】
上記シート本体には、防水加工が施されており、かつ、体に当たる部分には縫い目がないことが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい態様によると、上記第1懸架ベルトと第2懸架ベルト間には、上記要介護者の頭部を支持するヘッドサポートが着脱可能に取り付けられる。
【0026】
本発明には、上記第1懸架ベルトと第2懸架ベルトが、上記シート本体の裏面側における両側縁部に沿って配置される態様が含まれる。
【0027】
また、第1懸架ベルトと第2懸架ベルトは、上記シート本体の両側縁部に沿って配置される態様が含まれる。なお、上記第1懸架ベルトと第2懸架ベルトが、上記シート本体の表面側における両側縁部に沿って配置される態様が含まれる。
【0028】
その基本的な構成として、上記シート本体の裏面側において、上記背側支持部の肩側左右2箇所のコーナー部と上記脚側支持部の大腿側左右2箇所のコーナー部には、それぞれ、上記シート本体の内側と外側とに折返し可能なループ状の係止部が設けられており、上記第1懸架ベルトは、上記肩側左コーナー部の係止部と上記大腿側左コーナー部の係止部とに連結され、上記第2懸架ベルトは、上記肩側右コーナー部の係止部と上記大腿側右コーナー部の係止部とに連結されることを特徴としている。
【0029】
また、上記シート本体の上記背側支持部の肩側左右2箇所のコーナー部と上記脚側支持部の大腿側左右2箇所のコーナー部には、それぞれ、ループ状の係止部が設けられており、上記第1懸架ベルトは、上記肩側左コーナー部の係止部と上記大腿側左コーナー部の係止部とに連結され、上記第2懸架ベルトは、上記肩側右コーナー部の係止部と上記大腿側右コーナー部の係止部とに連結されることを特徴としている。
【0030】
また、上記各係止部は1本布テープよりなり、その両端が上記シート本体に縫着されてループ状に形成されることを特徴としている。
【0031】
これに関連して、上記第1懸架ベルトおよび第2懸架ベルトは、それらの両端に、上記係止部に連結するためのフック部を備えている。
【0032】
また、本発明の好ましい態様として、上記第1懸架ベルトおよび第2懸架ベルトには、上記介護用懸架リフトのハンガーに対する係止位置を示す係止目印部が設けられる。
【0033】
上記係止目印部は上記懸架ベルトの長さ方向に沿って複数箇所に設けられており、その各々が色分けされていることが好ましい。
【0034】
上記シート本体は、上記背側支持部の上方に連設された上記要介護者の後頭部を支持するヘッドサポート部をさらに備え、上記ヘッドサポート部の左右両側には、上記ハンガーに対して着脱自在に引っ掛けられる吊り紐が設けられている態様も本発明に含まれる。
【0035】
上記ヘッドサポート部用の吊り紐として、長さの異なる複数の吊り紐を有していることが好ましい。
【0036】
また、本発明には、上記脚側支持部の大腿側左コーナー部と上記脚側支持部の大腿側右コーナー部には、上記脚側支持部を介護ベッドの敷物に止めるクリップが設けられている態様も含まれる。
【0037】
さらに本発明には、要介護者が着用する介護用パジャマにおいて、上記介護用パジャマの後身頃側には、上記介護用スリングシートと着脱可能な係止手段が備えられていることを特徴とする介護用パジャマも含まれる。
【0038】
また、さらに、大腿側左コーナー部の係止部は、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第1ループ部と、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第2ループ部と、第1ループ部と、第2ループ部とを支持する把手部と、を有し、大腿側右コーナー部の係止部は、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第1ループ部と、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第2ループ部と、第1ループ部と、第2ループ部とを支持する把手部と、を有し、第1懸架ベルトは、肩側左コーナー部の係止部と上記大腿側左コーナー部の係止部とに移動可能に連結され、第2懸架ベルトは、肩側右コーナー部の係止部と大腿側右コーナー部の係止部とに移動可能に連結されるというものである。
【0039】
また、第1懸架ベルトおよび上記第2懸架ベルトは、その両端にそれそれ配置するループ状の上端部と、ループ状の下端部と、をそれぞれ有し、ループ状のそれぞれの上端部は、前記肩側左コーナー部の係止部と前記大腿側左コーナー部の係止部とに、移動可能に接続され、ループ状の下端部は、把手部と移動可能に接続されているというものである。
【0040】
また、第1懸架ベルトおよび前記第2懸架ベルトは、懸架ベルト本体部と、を有し、懸架ベルト本体部は、介護用移動リフトのハンガーに懸架するために開口する第1開口部と、開口する第2開口部とをさらに有するというものである。
【0041】
また、懸架ベルト本体部は、介護用移動リフトのハンガーに懸架するために開口する第3開口部と、をさらに有するというものである。
【0042】
また、懸架ベルト本体部は、第1開口部および前記第2開口部に対応する位置にそれぞれ異なる色に着色したリボンと、を具備するというものである。
【0043】
また、懸架ベルト本体部は、第1開口部、第2開口部および第3開口部に、それぞれ対応する位置に、それぞれ異なる色に着色したリボンと、をさらに具備するというものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、懸架ベルトを、矩形状のシート本体の背側支持部の肩側左右コーナー部と、それに対向する脚側支持部の大腿側左右コーナー部との間に掛け渡した一対の帯状ベルトとしたことにより、要介護者を介護用移動リフトのハンガーに懸架する際に、要介護者の重心バランス位置を簡単に調整することができる。
【0045】
この場合、懸架ベルトに例えばアジャスターを通し、これをストッパーとして要介護者の重心の安定した位置で介護用移動リフトのハンガーに当接させることにより、要介護者をシート本体内で安定して支持することができる。
【0046】
また、懸架ベルトは、シート本体の両側縁部に重ねた状態でコンパクトに収納することができるため、介護用スリングシートとして使用しない場合であっても、要介護者の下に敷いておくことにより(例えば、ベッドや車椅子の上に敷いておくことにより)、要介護者の移動が必要なときに、すばやく対応することができる。
【0047】
さらに、シート本体には防水加工が施されているため、例えば、要介護者が失禁したような場合でも、シート本体の下のシーツや布団の汚れを防止することができる。
【0048】
また、シート本体と要介護者が着用する介護用パジャマとは、例えば、紐などの係止手段により着脱可能とされているため、介護用移動リフトに懸架する際に、シート本体と介護用パジャマとのずれを防止し、要介護者を安定的に支持することができる。
【0049】
さらには、シート本体に要介護者の後頭部を支持するヘッドサポート部(頭部支持部)を一体に備え、しかもそのヘッドサポート部の使用、不使用が選択可能であるため、例えば枕状のヘッドサポート部をオプションとして別途用意しておく必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る介護用スリングシートを示す平面図。
【
図2】上記第1実施形態に係る介護用スリングシートの背面図(裏面図)。
【
図3】
図1の平面視でシート本体から懸架ベルトを広げた状態を示す平面図。
【
図4】
図3と同じくシート本体から懸架ベルトを広げた状態を示す斜視図。
【
図5】上記第1実施形態に係る介護用スリングシートの別の例を示す平面図。
【
図6】上記介護用スリングシートに好適な介護用パジャマの一例を示す平面図。
【
図7】上記介護用スリングシートに上記介護用パジャマを係着した状態を示す介護用スリングシートの背面図。
【
図8】上記懸架ベルトにヘッドサポートを取り付けた状態を示す平面図。
【
図9】上記第1実施形態の介護用スリングシートを介護用移動リフトに懸架した状態を示す模式的な側面図。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る介護用スリングシートを示す背面図(裏面図)。
【
図11】上記第2実施形態の懸架ベルト取付け部分を示す平面図。
【
図12】上記懸架ベルト取付け部分の要部を示す拡大図。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る介護用スリングシートを示す(a)正面図(表面図)、(b)背面図(裏面図)。
【
図14】上記第3実施形態において、(a)ヘッドサポート部の吊り紐の構成を示す拡大図、(b)脚側支持部の係止部を示す拡大図。
【
図15】上記第3実施形態の上記ヘッドサポート部の使用時における介護用スリングシートを介護用移動リフトに懸架した状態を示す模式的な(a)側面図、(b)背面図((a)の右側面図)。
【
図16】上記第3実施形態の上記ヘッドサポート部の不使用時における介護用スリングシートを介護用移動リフトに懸架した状態を示す模式的な(a)側面図、(b)背面図((a)の右側面図)。
【
図17】(a)従来例に係る介護用スリングシートを介護用移動リフトに懸架した状態を示す模式図、(b)(a)の介護用スリングシートを示す平面図、(c)上記介護用移動リフトのハンガーを示す正面図。
【
図18】第4実施形態に係る介護用スリングシートを示す平面図。
【
図19】上記第4実施形態に係る介護用スリングシートの背面図(裏面図)。
【
図20】上記第4実施形態に係る介護用スリングシートの部分拡大図。
【
図21】(a)第4懸架ベルトの側面図、(b)第4懸架ベルトの正面図。
【
図22】上記第4実施形態の上記ヘッドサポート部の使用時における介護用スリングシートを介護用移動リフトに懸架した状態を示す模式的な(a)側面図、(b)背面図((a)の右側面図)。
【
図23】上記第4実施形態の上記ヘッドサポート部の不使用時における介護用スリングシートを介護用移動リフトに懸架した状態を示す模式的な(a)側面図、(b)背面図((a)の右側面図)。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明のいくつかの実施形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されることはない。なお、以下の説明において、介護用移動リフトの構成は上記従来例と同じであってよく、同じ構成要素には同じ参照符号を付してある。
【0052】
まず、
図1ないし
図4に示すように、本発明の第1実施形態に係る介護用スリングシート1aは、要介護者を介護用移動リフトRのハンガーR1(
図17参照)に懸架する際に、要介護者の上肢から大腿部にかけてを包み込むように支持するシート本体10と、シート本体10を護用移動リフトRに懸架するための懸架ベルト20とを備えている。
【0053】
シート本体10は、要介護者の肩部から腰部にかけての部分を支持する背側支持部11と、臀部から大腿部にかけての部分を支持する脚側支持部12とを一体に含む矩形状のシートで、ポリエステルやナイロン等の通気性を有する薄手のシートからなることが好ましい。シート本体10は、矩形状に限らず楕円形であってもよい。
【0054】
図1には、要介護者が載置されるシート本体10の表面10a側が示されているが、シート本体10の表面10aには防水加工が施されている。なお、シート本体10に、例えばマイクロファイバーを使用した高密度織物を上下から高圧で圧縮し、撥水性と透湿性が担保された布材が用いられてもよい。また、皮膚への負担を少なくするうえで、体に当たる部分には縫い目がないことが好ましい。
【0055】
懸架ベルト20は、
図1および
図3に示すように、シート本体10の背側支持部11の肩側左コーナー部11aとこれと対向する脚側支持部12の大腿側左コーナー部12aとの間に架け渡された左側の懸架ベルト20aと、シート本体10の背側支持部11の肩側右コーナー部11bとこれと対向する脚側支持部12の大腿側右コーナー部12bとの間に架け渡された右側の懸架ベルト20bとを備えている。なお、コーナー部には角およびその周縁部分が含まれる。すなわち、懸架ベルト20a,20bは、シート本体10の角およびその周辺部分に取り付けられてよい。
【0056】
なお、上述の肩側左コーナー部11aおよび肩側右コーナー部11bは、両側面部10eのみならず、背側支持部11の上端部をも含む概念である。また、大腿側左コーナー部12aおよび、大腿側右コーナー部12bは、両側面部10eのみならず、脚側支持部12の下端部をも含む概念である。
【0057】
左側の懸架ベルト20aと右側の懸架ベルト20bは、ともに高強度(強靱)の例えばナイロン製の帯状ベルトで、左側と右側を区別する必要がない場合には、単に懸架ベルト20と言う。
【0058】
図1において、シート本体10の背側支持部11の肩側左コーナー部11aと脚側支持部12の大腿側左コーナー部12aとの間の距離(背側支持部11の肩側右コーナー部11bと脚側支持部12の大腿側右コーナー部12bとの間の距離でもある)をシート本体10の長さLとして、懸架ベルト20は、その長さLよりも長い長さを有し、この例では、その一端201が背側支持部11の肩側コーナー部11a,11b側に縫い付けられ、他端202が脚側支持部12の大腿側コーナー部12a,12b側に縫い付けられている。
【0059】
懸架ベルト20には、シート本体10を介護用懸架リフトRに懸架する際に、介護用移動リフトRのハンガーR1に当接して要介護者の懸架位置を調節するストッパ21が設けられている。この例において、ストッパ21には、懸架ベルト20に移動可能に挿通される日の字型のアジャスタ(例えば、YKK社製;商品名「コキ」)が用いられている。
【0060】
左側の懸架ベルト20aはシート本体10の左側側縁部10cに沿って配置され、右側の懸架ベルト20bはシート本体10の右側側縁部10dに沿って配置されるが、
図3に示すように、懸架ベルト20a,20bは、所定の係着手段によりシート本体10の側縁部10c,10dに着脱可能に係着されるようになっている。
【0061】
この例では、係着手段として面状ファスナーが用いられ、懸架ベルト20a,20b側にはフック面ファスナー22が、シート本体10の側縁部10c,10dにはループ面ファスナー14がそれぞれ2箇所に備えられている。フック面ファスナー22をシート本体10の側縁部10c,10d側に設け、ループ面ファスナー14を懸架ベルト20a,20b側に設けてもよい。
【0062】
これにより、この介護用スリングシート1aは、
図1に示すように、懸架ベルト20a,20bをシート本体10の側縁部10b,10cに重ねることで平面的でコンパクトな収納形態とすることができ、あらかじめ要介護者が載置されるベッドや車椅子に敷いておけば、要介護者の移動が必要なときにすばやく対応することができる。
【0063】
また、シート本体10の表面10aには防水加工が施されているため、例えば、要介護者が失禁する等、シート本体を汚すような行為があったとしても、ベッドや車椅子を汚すことがなく衛生的である。
【0064】
なお、本実施形態においては、
図1および
図2に示すように、懸架ベルト20a,20bをシート本体10の側縁部10c,10dに配置した際、懸架ベルト20がシート本体10の例えば大腿部支持部13側に突出する余剰分が生じる長さとされているが、これに限られることはなく、要介護者をバランス良く懸架することができる長さであればよい。
【0065】
例えば、
図5に示すように、懸架ベルト20a,20bの長さをシート本体10の長さLと同じ長さとし、懸架ベルト20a,20bをシート本体10の側縁部10c,10d上に収まる長さとしてもよく、シート本体10や懸架ベルト20の大きさは、要介護者の体型等に合わせて適宜設計変更可能である。
【0066】
また、
図4に示すように、懸架ベルト20a,20bをシート本体10の長さLの2倍以上の長さとしてその両端をつなぎ合わせてループ状とし、その一部分をシート本体10の側縁部10c,10dに沿って縫い付けてもよい。
【0067】
本実施形態において、シート本体10には、要介護者が着用する
図6に示す介護用パジャマPを着脱可能に取り付ける係止手段が設けられている。この例で、係止手段として、シート本体10には、肩側左右コーナー部11a,11bと大腿側左右コーナー部12a,12bの4箇所にそれぞれ2本ずつ係止紐13が縫合されている。
【0068】
また、要介護者の着用する介護用パジャマPには、その後見頃側に、係止手段の相手側として、シート本体10の肩側左右コーナー部11a,11bと大腿側左右コーナー部12a,12bの係止紐13と係止可能な位置に、リング状の4つのループPrが設けられている。
【0069】
具体的には、ループPrは、係止紐13と同様の素材からなる紐をリング形状として、介護用パジャマPの後見頃側の左右肩部P1,P2と左右大腿部P3,P4にそれぞれ1つずつ縫着されている。
【0070】
これにより、
図7に示すように、肩側左右コーナー部11a,11bと大腿側左右コーナー部12a,12bの係止紐13を、それぞれ介護用パジャマPの対応するループPrに挿通して結ぶことにより、介護用パジャマPがシート本体10に取り付けられる。
【0071】
このように、要介護者が着用する介護用パジャマPと介護用スリングシート1とが係止手段(係止紐13,ループPr)を介して連結されるため、介護用スリングシート1aを介護用移動リフトRへと吊り上げて要介護者を懸架する際に、要介護者が介護用スリングシート1aから脱落するような事故を防ぐことができる。
【0072】
また、本実施形態において、
図8および
図9に示すように、懸架ベルト20a,20bの間には、要介護者の頭部を支持するヘッドサポート30が着脱可能に取り付けられるようになっている。
【0073】
この例において、ヘッドサポート30は、要介護者の頭部に宛がわれる頭部支持部31と、頭部支持部31を懸架ベルト20a,20bに着脱可能に係止する係止具32とを備えている。
【0074】
頭部支持部31は、要介護者の頭部を支持する適度の弾力性を有する枕状のクッション体からなり、
図8において左右の側面31a,31bには、懸架ベルト20a,20bに挿通可能なスプリングフック(カラビナ状のフック)等の係止具32がそれぞれ2つずつ備えられている。
【0075】
これによれば、
図9に示すように、介護用スリングシート1aを介護用移動リフトRに懸架するにあたって、一対の懸架ベルト20a,20bの間にヘッドサポート30を取り付けることにより、シート本体10により要介護者の上肢から大腿部にかけて支持するのみならず、要介護者の頭部も支持することができ、要介護者を安定して移動することができる。
【0076】
次に、第1実施形態に係る介護用スリングシート1aを用いて要介護者を介護用移動リフトRに懸架する例を説明する。なお、この例では、要介護者には、あらかじめ介護用スリングシート1aが係止された介護用パジャマPを着用させて、要介護者を例えばベッド等の載置面に載置しているものとする。
【0077】
まず、介護用懸架リストRを下降させ要介護者上の所定位置で停止させる。次に、面状ファスナー14,22を解除して、一対の懸架ベルト20a,20bをシート本体10の側縁部10c,10dから取り外し、介護用懸架リストRのハンガーR1に掛け渡す。
【0078】
この時、
図9の矢印方向に示すように、ハンガーR1に掛け渡された懸架ベルト20はスライド可能となっており、懸架ベルト20をスライドさせて要介護者の重心バランスを調整する。
【0079】
そして、要介護者の重心バランスが安定した位置となったときに、ストッパ(アジャスタ)21を移動させてハンガーR1と当接させて、それ以上の懸架ベルト20の動きを規制する。
【0080】
次に、要介護者の頭部に宛がうように、ヘッドサポート30を懸架ベルト20に取り付ける。これにより、要介護者の上肢から大腿部までをシート本体10内で安定的に支持するとともに、要介護者の頭部をヘッドサポート30にて支持する。
【0081】
しかる後、介護用懸架リフトRにより懸架ベルト20(20a,20b)を介してシート本体10を上昇させ、要介護者を例えば浴室等、目的の場所へと移動させる。
【0082】
このように、本発明によれば、懸架ベルト20を介護用懸架リフトRのハンガーR1に掛け渡した状態でスライド可能とし、要介護者の重心バランス調整に自由度を持たせたことにより、要介護者の重心バランス調整を簡単にできるとともに、その結果、要介護者の身体的・精神的な負担を軽減することができる。
【0083】
また、本発明の介護用スリングシート1aと要介護者が着用する介護用パジャマPとは所定の係止手段(係止紐13,ループPr)を介して係止されているので、要介護者が誤ってシート本体10から脱落する等の事故を防止することができる。
【0084】
この場合、介護用パジャマPは、係止紐13によって完全にシート本体10上に固定されているわけではなくある程度の動きが可能なため(
図7参照)、介護用スリングシート1aの移動に伴って介護用パジャマPに歪みや攣りが生ずることがなく、要介護者が不快感を伴うこともない。
【0085】
なお、上記第1実施形態において、シート本体10と懸架ベルト20との係着手段を面ファスナ14,22とした例で説明したが、これに限られることはなく、懸架ベルト20をシート本体10の両側側縁部10eに係着できるものであればよく、例えば、凹凸嵌合するボタン等であってよい。
【0086】
また、上記第1実施形態では、介護用スリングシート1aと介護用パジャマPとの係止手段を係止紐13とループPrとで構成した例で説明したが、介護用パジャマPをシート本体10上である程度の遊びを持って係止できるものであればよい。例えば、係止紐に代えて先端に凸型ボタンを有するベルトとし、ループRrに代えて凸型ボタンに嵌合可能な凹型ボタンとしてもよく、適宜選択可能である。
【0087】
さらに、上記第1実施形態では、ヘッドサポート30を枕状のクッション体で形成した例で説明したが、要介護者の頭部を支持できるものであれば矩形状に限らず、また、クッション体ではなく単なるシート体であってもよい。
【0088】
次に、
図10ないし
図12により、本発明の第2実施形態に係る介護用スリングシート1bについて説明する。
【0089】
この第2実施形態において、懸架ベルト20(20a,20b)は、
図10に示すように、シート本体10の裏面10b側に取り付けられ、使用時に表面10a側に引き出される。これによれば、不使用時に懸架ベルト20がシート本体10の裏面10b側に配置されるため、ベッドの載置面に敷設しても懸架ベルト20が邪魔にならない。もっとも、懸架ベルト20(20a,20b)は、シート本体10の表面10a側に取り付けることもできる(図示しない)。この場合、シート本体10と懸架ベルト20との係着手段を面ファスナ14,22とした例で説明したが、これに限られることはなく、懸架ベルト20をシート本体10の表面10aにおける両側側縁部10eに係着できるものであればよく、例えば、凹凸嵌合するボタン等であってよい。
【0090】
懸架ベルト20をシート本体10の裏面10b側に取り付けるに伴って、シート本体10の裏面10b側における四隅(肩側左右コーナー部11a,11bと大腿側左右コーナー部12a,12bの4箇所)に懸架ベルト20のための係止部41(41a~41d)が設けられる。
【0091】
この例において、各係止部41は強靱な布テープを山型に折曲げ、その両端をシート本体10に縫い付けることにより三角のループ形状に形成されている。別の例として、布テープをコ字状とし、その両端をシート本体10に縫い付けてもよい。いずれにしても、シート本体10の内側から外側に、また、外側から内側に折り返されるループ(輪っか)ができればよい。
【0092】
他方、懸架ベルト20(20a,20b)の両端には、係止部41に引っ掛けられるフック部43(43a~43d)が設けられている。
【0093】
この例において、各フック部43は、強靱な布テープを係止部41に引っ掛けて、その両端を懸架ベルト20の端部に縫い付けることにより形成されているが、各フック部43にスプリングフック(カラビナ状のフック)等が用いられてもよい。
【0094】
また、上記第1実施形態と同じく、懸架ベルト20とシート本体10とには、この介護用スリングシート1bの不使用時に、懸架ベルト20をシート本体10の側縁部10c,10dの裏面側に沿って納めておくための面状ファスナー14,22が設けられている(
図3等参照)。
【0095】
この介護用スリングシート1bを使用する際には、
図12に示すように、懸架ベルト20をシート本体10の裏面10bから表面10a側に引き出す。これに伴って、係止部41がシート本体10の外側に折り返される。
【0096】
各係止部41(41a~41d)は、その根元部分(付け根部分)がシート本体10に対して2箇所で縫合されているため、シート本体10は懸架ベルト20a,20bにより合計8箇所で支持されることになり、要介護者をより安定した状態で吊り下げることができる。
【0097】
また、上記第1実施形態では、懸架ベルト20にストッパ(アジャスタ)21を設けて介護用懸架リフトRのハンガーR1に対する懸架ベルト20の位置決めを行うようにしているが、本第2実施形態では、懸架ベルト20に上記ハンガーR1に対する好ましい係止位置(引っ掛け位置)を示す係止目印部を設けている。
【0098】
特に
図11を参照して、この例では、懸架ベルト20には3つの係止目印部231,232,233が設けられている。これら係止目印部231,232,233は滑り難い布材が用いられており、かつ、色分けされている。
【0099】
一例として、
図11において、上側の係止目印部231の両端は赤色の糸231aで縁取りされており、中間の係止目印部232の両端は黄色の糸232aで縁取りされており、また、下側の係止目印部233の両端は白色の糸233aで縁取りされている。
【0100】
これによれば、懸架ベルト20を介護用懸架リフトRのハンガーR1に引っ掛けるにあたって、縁取りの糸の色を見ることにより、一方の懸架ベルト20aと他方の懸架ベルト20bのハンガーR1に対する係止位置を同じ箇所に容易に合わせることができ、シート本体10の保持姿勢がアンバランスになることを防止できる。この係止目印部は3つに限定されない。2つであってもよいし、4つ以上であってもよく、その数は任意に選択することができる。
【0101】
また、本第2実施形態を示す
図10~
図12には、介護用パジャマPを係止する係止紐13が図示されていないが、本第2実施形態においても、上記第1実施形態と同じく、シート本体10の肩側左右コーナー部11a,11bと大腿側左右コーナー部12a,12bの各々に係止紐13が設けられてよい。
【0102】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、不使用時には懸架ベルト20がシート本体10の裏面10b側に配置されるため、ベッドの載置面に敷設しても懸架ベルト20が邪魔にならない。
【0103】
また、シート本体10の裏面10b側における四隅に懸架ベルト20のためのループ状の係止部41を設け、シート本体10を多点(8点)で支持するようにしたことにより、より安定した状態で要介護者を移動させることができる。
【0104】
さらには、懸架ベルト20a,20bに介護用懸架リフトRのハンガーR1に対する係止位置指定箇所を色分けにより分かり易く設けたことにより、懸架ベルト20a,20bのアンバランスな懸架状態を防止することができる、等々の効果が奏される。
【0105】
次に、
図13ないし
図16を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。本第3実施形態に係る介護用スリングシート1cは、シート本体10に要介護者の後頭部を支持するヘッドサポート部(頭部支持部)110を一体に備えている。
【0106】
なお、本第3実施形態に係る介護用スリングシート1cを示す
図13は、
図10に示す第2実施形態に係る介護用スリングシート1bをベースとしているが、
図1に示す第1実施形態に係る介護用スリングシート1aをベースとしてもよい。すなわち、本第3実施形態は、上記第1実施形態の介護用スリングシート1a、上記第2実施形態の介護用スリングシート1bのいずれにも適用可能である。
【0107】
図13に示すように、本第3実施形態において、シート本体10は、上記第1実施形態と上記第2実施形態の構成に加えて、背側支持部11の上方に連設された要介護者の後頭部を支持するヘッドサポート部110をさらに備えている。
【0108】
背側支持部11の上方とは、背側支持部11の上端の左右両側に設けられる係止部41(41a,41b)の取付位置よりも
図13において上側(脚側支持部12とは反対側)の部分である。
【0109】
また、ヘッドサポート部110は、背側支持部11をそのまま延ばした部分であってもよいし、別部材のものを背側支持部11の上端に一体に縫合もしくは接合したものであってもよい。ヘッドサポート部110の高さ(
図13において上下方向の長さ)は、要介護者の後頭部を支持する大きさであれば適宜決められてよい。
【0110】
ヘッドサポート部110の上端の左右両側には、介護用懸架リフトRのハンガーR1に対して着脱自在に引っ掛けられる吊り紐(ストラップ)120が設けられている。
【0111】
図14(a)を併せて参照して、本第3実施形態では、吊り紐120として、長さが長い第1吊り紐121と、それよりも長さが短い第2吊り紐122の長さが異なる2つの吊り紐を備えている。
【0112】
この実施形態において、第1吊り紐121はリボン片の両端をヘッドサポート部110の端部に縫合してループ状とし、また、第2吊り紐122はリボン片の両端を第1吊り紐121の内側に縫合してループ状としているが、第1吊り紐121、第2吊り紐122ともに、例えば1本のリボン片の先端に上記ハンガー1に引っ掛け可能な丸環等を備えた構成であってもよい。さらに別の態様として、例えばバックルベルトのような長さ調節可能な吊り紐を1本備えてもよい。
【0113】
図15(a)および
図15(b)に、本第3実施形態が備えるヘッドサポート部110の使用時における介護用スリングシート1cを介護用移動リフトRのハンガーR1に懸架した状態を示す。
【0114】
このようにするには、上記第1実施形態、第2実施形態で説明したところにしたがって懸架ベルト20(20a,20b)を介護用懸架リフトRのハンガーR1に引っ掛けたのち、吊り紐120をハンガーR1に引っ掛ければよい。
【0115】
その場合、長さが長い方の第1吊り紐121を選択すれば、要介護者の頭部をより後傾した状態で支持することができる。これに対して、長さが短い方の第2吊り紐122を選択すれば、要介護者の頭部をより前傾した状態で支持することができる。
【0116】
上記実施形態では、吊り紐120を第1吊り紐121と第2吊り紐122の長短2種類(2本)としているが、必要に応じて、吊り紐120を長さが異なる3本以上とすることができる。なお、ヘッドサポート部110を使用しない場合には、
図16(a)および
図16(b)に示すように、吊り紐120をハンガーR1に引っ掛けなければよい。
【0117】
このように、本第3実施形態によれば、シート本体10に要介護者の後頭部を支持するヘッドサポート部110を一体に備え、しかもそのヘッドサポート部110の使用、不使用が選択可能であるため、例えば
図8、
図9に示す枕状の頭部支持部30をオプションとして別途用意する必要がない。
【0118】
ここで再び
図13を参照して、本第3実施形態によると、脚側支持部12の大腿側左コーナー部と大腿側右コーナー部には、脚側支持部12を介護ベッドの敷物等(図示しない)に止めるクリップ130が設けられている。
【0119】
これによれば、介護用スリングシート1cを介護ベッドにセットする際、脚側支持部12のずれを防止することができる。なお、背側支持部11の左右両端にもクリップ130が設けられてよい。
【0120】
また、本第3実施形態によると、
図14(b)に示すように、脚側支持部12の係止部41c,41dは、ともにより強靱に形成されている。
【0121】
すなわち、本第3実施形態において、脚側支持部12の係止部41c,41dは、所定の間隔をもって上下に配置された第1ループ部411および第2ループ部412と、第1ループ部411と第2ループ部412に掛け渡された把手部413とを備え、把手部413に懸架ベルト20の下部側のフック部43c,43dが取り付けられる。
【0122】
このように、脚側支持部12の係止部41c,41dは、2つのループ部411,412を持つため、大きな荷重にも耐えられるばかりでなく、大腿部側をより安定して支持することができる。また、把手部413を備えることにより、持ち運びやすい、等の便利さがある。
【0123】
以上のことから、本発明のスリングシートは、体位交換や体位保持をする際にも使用可能である。また、ベッド上での移動をする際にも使用することができる。さらには、緊急時の担架代わりにも使用することができる。このほか、大腿部の裏にメッシュ生地を縫い付けてクッション性を持たせてもよく、このような態様も本発明に含まれる。
【0124】
また、本発明のスリングシートは、子供から大人までいろいろな体格の人にワンサイズで適合しやすく、スリングの選定に手間がかからない。さらには、左右に配置された懸架ベルトをワンアクションでリフトのハンガーに架けることができ、これらの点も本発明の特徴である。また、これらの点は、後述する第4実施形態の介護用スリングシート1dも同様である。
【0125】
次に、
図18ないし
図23を参照して、第4実施形態について説明する。本第4実施形態の介護用スリングシート1dは、シート本体10に要介護者の後頭部を支持するヘッドサポート部(頭部支持部)110を一体に備えている。すなわち、このヘッドサポート部(頭部支持部)110は、背側支持部11の上方Uに備えており、その背側支持部11の下方Dは、脚側支持部12を備えており、それらは、一体に構成されている。
【0126】
なお、第4実施形態の介護用スリングシート1dをしめす
図18、19は、
図13にしめす、第3実施形態のスリングシート1cをベースにしており、同一の構成については、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。よって、第3実施形態のスリングシート1cと同様に本第4実施形態の脚側支持部12の係止部41c,41dも、より強靱に形成されている。
【0127】
また、本第4実施形態における脚側支持部12の係止部41c,41dは、所定の間隔をもって上下に配置された第1ループ部411および第2ループ部412と、第1ループ部411と第2ループ部412に掛け渡された把手部413とを備え、把手部413に懸架ベルト20の両端に配置された両端部760,760が移動可能に配置されている。この点についてはさらに後述する。また、両端部760,760に代えて図示しないフック部とすることができる。
【0128】
このように、脚側支持部12の係止部41c,41dは、それぞれ2つのループ部411,412を持つため、大きな荷重にも耐えられるばかりでなく、大腿部側をより安定して支持することができる。また、把手部413を備えることにより、持ち運びやすい、等の便利さがある。
【0129】
また、第4実施形態の介護用スリングシート1dは、ヘッドサポート部(頭部支持部)110を支持する吊り紐部520、520を有する。その吊り紐部520、520はそのヘッドサポート部(頭部支持部)110において左右両側に、すなわち一対に配置されている。したがって、
図18において、左側(
図19、20においては図面右側)に配置した吊り紐部520について説明し、右側(
図19においては図面左側)に配置した吊り紐部520については、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0130】
吊り紐部520は、ヘッドサポート部(頭部支持部)110の正面視左側において、上下方向に所定の間隔を有するように固定され、ループ状を呈する吊り紐ループ部530と、吊り紐ループ部530に着脱可能に取り付けることができる第1吊り紐部540とを有する。吊り紐ループ部530は、ヘッドサポート部(頭部支持部)110の正面視左側において上下に2か所で支持をしている。ヘッドサポート部(頭部支持部)110の正面視右側も同様である。
【0131】
第1吊り紐部540は、1本の帯状の部材をいわば一筆書きのように、ほぼθ字状に所定箇所を縫着して構成したものであり、その第1吊り紐部540は、環状を呈する内環部550と、その内環部550の外側に配置され、内環部550の一部である基部551を共有するように帯状であって、かつ環状を呈する外環部560とを有するものである。
【0132】
上述の通り、第1吊り紐部540は、吊り紐ループ部530に対し着脱可能に取り付けれている。すなわち、第1吊り紐部540における基部551を、吊り紐ループ部530に挿入し、その基部551に、内環部550および外環部560を挿通することで、その第1吊り紐部540を吊り紐ループ部530に着脱可能に取り付ける。このように取り付けることにより、第1吊り紐部540は、吊り紐ループ部530に対し移動可能に取り付けることができる。
【0133】
また、上述の外環部560は、内環部550と比較して大径であり、第1吊り紐部540における外環部560を、ハンガーR1に引っ掛けた状態では、第1吊り紐部540における内環部550をハンガーR1に引っ掛けた状態より、ハンガーR1への長さが長くなり、要介護者の頭部をより後傾した状態で支持することができる。なお、図示しないが適宜必要に応じて、第1吊り紐部540とハンガーR1との距離に応じて、外環部560よりも大径の部材をさらに取り付けることもできる。
【0134】
また、第4実施形態の介護用スリングシート1dは、懸架ベルト20(20a,20b)をシート本体10の裏面10b側に取り付けるのに伴って、シート本体10の両側側縁部10eにおける四隅(肩側左右コーナー部11a,11bと大腿側左右コーナー部12a,12bの4箇所)に、懸架ベルト20(20a,20b)を取り付けるための係止部41(41a~41d)が設けられる。なお、上記の通り、上述の肩側左コーナー部11aおよび肩側右コーナー部11bは、両側面部10eのみならず、背側支持部11の上端部をも含む概念である。また、大腿側左コーナー部12aおよび、大腿側右コーナー部12bは、両側面部10eのみならず、脚側支持部12の下端部をも含む概念である。したがって、図示しないが、上述の係止部41(41a~41d)が、両側縁部10eに対して傾斜した位置に配置する場合を排除するものではない。
【0135】
また、背側支持部11の上端(ヘッドサポート部(頭部支持部)110に下方U)の左右両側に設けられる係止部41(41a,41b)は、ループ状であって、上方U方向に配置した上端部610と、所定間隔を有するように下方D方向に下端部620を配置している。このようにその背側支持部11における上端部610と、下端部620との上下2か所において所定の間隔をあけて固定された第1紐部630を有する。このように、背側支持部11の正面視左右両側において、係止部41(41a,41b)は、上端部610と、下端部620との2か所に接続されている。したがって、係止部41(41a,41b)は、背側支持部11の肩側左右コーナー部11a,11bは、上下に間隔をあけて2か所で支持されている構成である。背側支持部11の正面視右側も同様である。
【0136】
また、第4実施形態の介護用スリングシート1dは、脚側支持部12の係止部41c,41dを有する。その脚側支持部12の係止部41c,41dは、脚側支持部12において左右両側に、すなわち一対に配置されている。したがって、
図20において、右側に配置した脚側支持部12の係止部41cについて説明し、左側に配置した脚側支持部12の係止部41dの説明を省略する場合がある。
【0137】
脚側支持部12の係止部41c,41dは、ループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第1ループ部411と、その第1ループ部411の下方D方向に配置するとともに、脚側支持部12を支持するとともにループ状であって、所定間隔を有するように上下2か所に固定された第2ループ部412とを有する。
【0138】
脚側支持部12の正面視左側において、第1ループ部411は2か所に接続され、また、第2ループ部412も2か所に接続されている。したがって、脚側支持部12の正面視左側は、計4か所で支持するという構成である。脚側支持部12の正面視右側も同様である。なお、図示しないが、第1ループ部411の2か所に接続された部分は、そのいずれかが、シート本体10の表面10aあるいは裏面10bにかけてループ状(輪っか)を呈するものであってもよい。第2ループ部412あるいは、係止部41(41a、41b)も同様である。
【0139】
また、脚側支持部12の係止部41c,41dは、第1ループ部411と、第2ループ部412とを支持する把手部413とを有する。把手部413は、その両端に両端部760,760を有し、その両端部760,760は、環状を呈するものである。
【0140】
また、その環状を呈する両端部760,760の内側に、第1ループ部411と、第2ループ部412が挿通され、その把手部413は、第1ループ部411および第2ループ部412に対してそれぞれ移動可能に配置されている。
【0141】
また、第4実施形態の介護用スリングシート1dは、要介護者を介護用移動リフトRのハンガーR1(
図22、23参照)に懸架する際に、上述のシート本体10を介護用移動リフトRに懸架するための懸架ベルト20(20a,20b)を有する。
【0142】
懸架ベルト20(20a,20b)は、第4実施形態の介護用スリングシート1dにおいて、シート本体10の左右両側に、すなわち左右一対に配置されている。したがって、例えば
図18において左側(
図19、20においては図面右側)に配置した懸架ベルト20(20a)について説明し、右側(
図19においては図面左側)に配置した懸架ベルト20(20b)は、その説明を省略する場合がある。
【0143】
懸架ベルト20(20a,20b)は、上述の介護用移動リフトRに懸架する際に、そのハンガーR1(特に
図21参照)に係止するための懸架ベルト本体部810と、その両端にそれそれ配置する、ループ状の上端部850と、ループ状の下端部860とを有する。懸架ベルト本体部810は、2枚の高強度(強靱)の例えば、ナイロン製の帯状ベルトであるベルト部811、812を縫合すなわち縫着して構成されており、本実施例においては10か所縫着されている。すなわち10か所とは、上方U方向と下方D方向に配置した端部縫着部815、815と、その間に配置するとともに、上方U方向と下方D方向に間隔を有するように配置した第1縫着部820a、810aと、上方U方向と下方D方向に間隔を有するように配置した第2縫着部820b、820bと、上方U方向と下方D方向に間隔を有するように配置した第3縫着部820c、820cと、その下方D方向に配置した第4縫着部820dと、その下方D方向に配置した第5縫着部820eと、を有する(
図21参照)。
【0144】
第1縫着部820a、820aと、の間については、縫着されておらず、ベルト部811、812は、離間可能である。したがって、第1縫着部820a、820aと、の間においては開口する第1開口部830aを構成し、その第1縫着部820a、820aの間のベルト部811の表面には赤色の帯状の第1リボン840aが縫着されている。すなわち、第1開口部830aに対応する位置に赤色の帯状の第1リボン840aが縫着されているので、赤色の帯状の第1リボン840aを見れば懸架ベルト20(20a,20b)における第1開口部830aの位置の特定が容易となる。もっともリボンの着色に関しては赤色に限られることなく、後述する他のリボンと識別することができれば好ましく、それぞれ異なる色彩に着色されていれば足りるものである。また、第1縫着部820a、820aも赤色の糸で縫付けることができる。
【0145】
また、第2縫着部820b、820bとの間については、縫着されておらず、ベルト部811、812は、離間可能である。したがって、第2縫着部820b、820bとの間においては開口する第2開口部830bを有し、その第2縫着部820b、820bとの間のベルト部811の表面には黄色の帯状の第2リボン840bが縫着されている。すなわち、第2開口部830bに対応する位置に黄色の帯状の第2リボン840bが縫着されているので、黄色の帯状の第2リボン840bを見れば懸架ベルト20(20a,20b)における第2開口部830bの位置の特定が容易となる。また、第2縫着部820b、820bも黄色の糸で縫付けることができる。
【0146】
また、第3縫着部820c、820cとの間については、縫着されておらず、ベルト部811、812は、離間可能である。したがって、第3縫着部820c、820cとの間においては開口する第3開口部830cを有し、その第3縫着部820c、820cとの間のベルト部811の表面には白色の帯状の第3リボン840cが縫着されている。また、第3縫着部820c、820cも白色の糸で縫付けることができる。
【0147】
すなわち、第3開口部830cに対応する位置に白色の帯状の第3リボン840cが縫着されているので、白色の帯状の第3リボン840cを見れば懸架ベルト20(20a,20b)における第3開口部830cの位置の特定が容易である。なお、第4縫着部820dと、第5縫着部820eとの間についてはその全体が縫着されている。したがって、その間は開口しないものとなる。
【0148】
また、第3縫着部820cと第4縫着部820dの間のベルト部812の裏面には、所定の係着手段によりシート本体10の両側側縁部10eに着脱可能に係着されるように構成されている。この第4実施形態の介護用スリングシート1dは、
図19に示すように、懸架ベルト20(20a,20b)をシート本体10の両側側縁部10eに重ねることで平面的でコンパクトな収納形態とすることができ、あらかじめ要介護者が載置されるベッドや車椅子に敷いておけば、要介護者の移動が必要なときにすばやく対応することができることは上記介護用スリングシート1aと同様である。
【0149】
第4実施形態の介護用スリングシート1dにおいては、係着手段として凹凸嵌合するボタン部813と被ボタン部814であってよい。このうちいずれか一方をベルト部812の裏面に配置し、いずれか他方を両側側縁部10eに配置することが好ましい。なお、図示しないが、ボタン部813と被ボタン部814にかえて、面状ファスナーにおけるフック面ファスナーあるいは、ループ面ファスナーを配置してもよい。
【0150】
なお、第4実施形態の介護用スリングシート1dにおいては、懸架ベルト20(20a,20b)は、その第4実施形態の介護用スリングシート1dにおいて、シート本体10のシート本体10の両側側縁部10eにおける裏面10b側に配置されているが、表面10a側に配置することもできる(図示しない)。この場合上述の係着手段として凹凸嵌合するボタン部813と被ボタン部814は適宜配置することができる(図示しない)。
【0151】
また、介護用懸架リフトRのハンガーR1に、上述の第1開口部830a、第2開口部830b、第3開口部830c、の三か所の開口部のいずれかに引っ掛けることで、介護者を適切な姿勢で吊り下げることができる。また、上記の通り各開口部に対応するために色分けした第1リボン840a、第2リボン840b、第3リボン840cを具備しているためにさらに、介護者の体格に応じて適切な姿勢で吊り下げることができる位置の視認が容易である。
【0152】
また、ループ状の上端部850は、強靱な布テープを上述の第1紐部630で構成された開口部631に挿通し、その両端を懸架ベルト20(20a,20b)の懸架ベルト本体部810の端部に縫い付けることにより環状を呈するように形成されている。なお、図示しないがループ状の上端部850は、スプリングフック(カラビナ状のフック)等が用いられてもよい。上記構成により、ループ状の上端部850は、係止部41(41a、41b)に対し、移動可能に配置されている。
【0153】
ループ状の下端部860は、把手部413に対し移動可能に接続されている。したがって懸架ベルト20(20a,20b)は、把手部413に対し移動可能に接続されている。なお、図示しないがループ状の下端部860は、スプリングフック(カラビナ状のフック)等が用いられてもよい。
【0154】
図22(a)および
図22(b)に、第4実施形態が備えるヘッドサポート部110の使用時における介護用スリングシート1dを介護用移動リフトRのハンガーR1に懸架した状態を示す。
【0155】
このようにするには、上記第1実施形態、第2実施形態で説明したところとほぼ同様に吊り紐部520、520を介護用懸架リフトRのハンガーR1に引っ掛けたのち、懸架ベルト20(20a,20b)をハンガーR1に引っ掛ければよい。
図22および
図23においては、懸架ベルト20(20a,20b)における第1開口部830aをハンガーR1に引っ掛けている状態を示している。もっとも、要介護者の好む体勢を得るために第2開口部830bあるいは第3開口部830cに引っ掛けることも好ましい。このとき、それぞれ第1開口部830aに対応する第1リボン840aあるいは、第2開口部830bに対応する第2リボン840b、または、第3開口部830cに対応する第3リボン840c を目印とすることで、それらの開口部の判別が容易となる。さらには、第1縫着部820a、810aと、第2縫着部820b、820bと、第3縫着部820c、820cも上記の各色に着色されているので、さらにそれらの開口部の判別が容易となる。
【0156】
その場合、長さが長い方の外環部560を選択すれば、要介護者の頭部をより後傾した状態で支持することができる。これに対して、長さが短い方の内環部550を選択すれば、要介護者の頭部をより前傾した状態で支持することができる。
【0157】
上記第4実施形態の介護用スリングシート1dは、内環部550と外環部560との長短2種類(2本)としているが、必要に応じて、それらを長さが異なる3本以上とすることができる。なお、ヘッドサポート部110を使用しない場合には、
図23(a)および
図23(b)に示すように、吊り紐部520、520をハンガーR1に引っ掛けなければよい。
【0158】
このように、第4実施形態の介護用スリングシート1dによれば、シート本体10に要介護者の後頭部を支持するヘッドサポート部110を一体に備え、しかもそのヘッドサポート部110の使用、不使用が選択可能であるため、例えば
図8、
図9に示す枕状の頭部支持部30をオプションとして別途用意する必要がない。
【0159】
また、上記の通り、ヘッドサポート部(頭部支持部)110の左右両側において、計4か所で支持され、また、背側支持部11の左右両側において、計4か所で支持され、さらに、脚側支持部12の左右両側において、計8か所で支持されているので、第4実施形態の介護用スリングシート1dは全体としては、合計で、16か所で支持するようにしたことにより、より安定した状態で要介護者を移動させることができる。また、シート本体10にかかる力を上記の16か所に分散させることで、シート本体10の耐久性を保つことができる。
【0160】
また、上記の通り、懸架ベルト20(20a,20b)の両端はそれぞれループ状の上端部850と、ループ状の下端部860とを有するので、それぞれ脚側支持部12の係止部41c,41dおよび把手部413に対し移動可能である。したがって、要介護者が動いた場合であっても、懸架ベルト20(20a,20b)が、脚側支持部12の係止部41c,41dおよび把手部413に対し移動することで、第4実施形態のスリングシート1dは、動いた要介護者に追従するように動くことができるので、その要介護者を確実に保持することができる。また、さらに把手部413は、第1ループ部411と第2ループ部412に対してそれぞれ移動可能に配置されているので、さらに動いた要介護者を追従し、確実に保持することができる。したがって、第4実施形態のスリングシート1dは、さらに要介護者の体勢の変化に追従することができるというものである。このように第4実施形態の介護用スリングシート1dは、要介護者の重心バランス位置を簡単に調整することができる。
【符号の説明】
【0161】
1a、1b、1c、1d スリングシート
10 シート本体
11 背側支持部
11a,11b 肩側左右コーナー部
12 脚側支持部
12a,12b 大腿側左右コーナー部
13 係止紐
14 ループ面ファスナ
20 (20a,20b)懸架ベルト
21 ストッパ
22 フック面ファスナ
23 1,232,233 係止位置指定箇所
30 ヘッドサポート
31 頭部支持部
32 係止具
41 (41a~41d)係止部
43 (43a~43d)フック部
110 ヘッドサポート部
120 吊り紐
121 第1吊り紐
122 第2吊り紐
411 第1ループ部
412 第2ループ部
413 把手部
420 吊り紐部
430 吊り紐ループ部
440 第1吊り紐部
450 内環部
460 外環部
630 第1紐部
760 両端部
810 懸架ベルト本体部
850 上端部
860 下端部
820a 第1縫着部
820b 第2縫着部
820c 第3縫着部
830a 第1開口部
830b 第2開口部
830c 第3開口部
840a 第1リボン
840b 第2リボン
840c 第3リボン