(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】浮き彫りを作製する方法及び機械、並びにその浮き彫りを備えたパネル
(51)【国際特許分類】
B41M 3/06 20060101AFI20240725BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240725BHJP
B41M 1/40 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B41M3/06 C
B05D1/26 Z
B41M1/40 Z
(21)【出願番号】P 2022549068
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(86)【国際出願番号】 ES2021070074
(87)【国際公開番号】W WO2021160907
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-12-07
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516277439
【氏名又は名称】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-512642(JP,A)
【文献】特開2011-046023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0016627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B41M 1/00-3/18
7/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製する方法であって、前記浮き彫り(20)は、凹部領域(21)と非凹部領域(22)とを含み、前記凹部領域(21)は前記非凹部領域(22)に隣接して、前記非凹部領域(22)に対して凹部を形成し、前記方法は、
-前記基材(3)表面に浮き彫り基層(2)を延在させることと、
-延在する液体の前記浮き彫り基層(2)の外面に、液滴の形態である液体の凹部印刷用生産物を
、延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第1の体積(41)でデジタル印刷して前記凹部領域(21)を得ることと
を含み、前記凹部領域(21)は、延在する前記浮き彫り基層(2)の前記外面に対して前記凹部を形成し、前記方法は、
-少なくとも前記凹部領域(21)に隣接して、延在する液体の前記浮き彫り基層(2)の前記外面に、液滴の形態である液体の凹部印刷用生産物を
、延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第2の体積(42)でデジタル印刷して、前記非凹部領域(22)を得、
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第2の体積(42)のための液滴体積が、
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第1の体積(41)のための最大の液滴体積の70%以下であることを特徴とする、基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
【請求項2】
印刷用生産物と浮き彫り基層(2)の混合物(40)を除去することを含み、それにより前記凹部が、前記浮き彫り基層(2)において除去された前記混合物(40)によって占められた体積に対応することを特徴とする、請求項1に記載の基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
【請求項3】
前記凹部がデジタル浮き出しによって得られることを特徴とする、請求項1に記載の基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
【請求項4】
前記浮き彫り基層(2)が、
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第1の体積(41)の液体の凹部印刷用生産物と、
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第2の体積(42)の液体の凹部印刷用生産物と共に硬化されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の基材表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
【請求項5】
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第2の体積(42)でのデジタル印刷は、
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第1の体積(41)でのデジタル印刷と同時に又はその前に行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
【請求項6】
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第2の体積(42)でのデジタル印刷は、
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第1の体積(41)でのデジタル印刷が行われた延在する前記浮き彫り基層(2)の表面にも行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
【請求項7】
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第2の体積(42)が、以下の(i)及び/又は(ii)であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の基材(3)に浮き彫り(20)を作製するための方法。
(i)前記凹部領域(21)についての
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり最大の第1の体積(41)の5%以上
、
(ii)
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり最大の第1の体積(41)の70%
以下
【請求項8】
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第2の体積(42)のための液滴体積が、
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第1の体積(41)のための最大の液滴体積の50%以下
であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の基材(3)に浮き彫り(20)を作製する方法。
【請求項9】
延在する前記浮き彫り基層(2)の外面の面積当たり第2の体積(42)
が、前記浮き彫り基層(2)において均一であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
【請求項10】
得られた前記非凹部領域(22)が、測定により、以下の(i)及び/又は(ii)を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
(i)20μm以下
の表面粗さ
(ii)60°での10GU以上
の光沢
【請求項11】
前記浮き彫り(20)は、前記浮き彫り基層(2)を通して見える、前記基材(3)表面に印刷された画像と合わせて作られることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための方法。
【請求項12】
前記浮き彫り基層(2)が、以下の(i)及び/又は(ii)を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の基材(3)に浮き彫り(20)を作製するための方法。
(i)20μm以上
の厚さ
(ii)300μm以下
の厚さ
【請求項13】
基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製するための機械(10)であって、該機械は、コンピュータプログラム(17)がコンピュータシステム(16)によって実行された時に請求項1から12のいずれかに記載の方法を実施するように構成された前記コンピュータプログラム(17)を格納する前記コンピュータシステム(16)を含むことを特徴とする、機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面での凹部、穴又は窪みによって形成される浮き彫りを、例えば浮き出し又は質感の形態で、作製する方法に関する。また、本発明は、その浮き彫りを作製するための機械、及びその浮き彫りを備えたパネルに関する。
【0002】
本発明は、パネル製造及び装飾産業、より具体的には、床、壁、家具用などのパネルに関連する。
【背景技術】
【0003】
基材表面での凹部によって形成される浮き彫りを作製するために、デジタル技術又はインクジェット技術を使用することは、現在広く知られている。浮き彫りは、基材表面に延在する浮き彫り基層表面に堆積又は射出される液滴の形態の液体印刷用生産物で、浮き彫りのデジタル化された表現をデジタル印刷することによって得られる。有利なことに、デジタル印刷は、浮き出しや成形などの、基材表面での凹部によって形成される浮き彫りの従来の製造方法と比べて、はるかに高い明確さ、精密さ又は鮮明さを有する浮き彫りを得ることが可能である。
【0004】
基材表面での凹部によって形成される浮き彫りをデジタル印刷するための様々な既知の印刷技術がある。本発明は、液滴の形態の液体の凹部印刷用生産物を浮き彫り基層表面に堆積又は射出することに基づくあらゆるデジタル印刷技術に適用される。その凹部印刷用生産物は、浮き彫り基層表面に堆積又は射出された時に、浮き彫り基層に凹部を生成することを可能にする。凹部印刷用生産物の面積当たりの体積を増加させることにより、浮き彫り基層の外面に形成される凹部の深さが大きくなる。
【0005】
本発明が関連するタイプの第1の既知のデジタル印刷技術では、凹部印刷用生産物が浮き彫り基層と混合される。凹部は、印刷用生産物と浮き彫り基層との混合物を除去した後に得られ、それにより凹部は、除去された混合物の体積に対応する。その混合物は、ブラッシングのような機械的手段によって除去されることができる。
【0006】
この印刷技術の既知の変形は、紫外線硬化樹脂の浮き彫り基層の使用に基づく。浮き彫り基層が基材表面で延ばされたら、液体印刷用生産物は、硬化されていない又は部分的に硬化された液状の浮き彫り基層表面にデジタル印刷される。浮き彫り基層は、混合された印刷用生産物と一緒に硬化される。この印刷用生産物は、浮き彫り基層を印刷用生産物と一緒に硬化させた後に、硬化した基層に対して硬化した混合物を除去することが、例えばブラッシングなどの機械的手段によって容易となるようにして構成されることができる。例えば、イタリアの製造業者ZEETREE, SRLによって製造された「trueTexture」ジェットインクを、この目的を達成するために使用することができる。
【0007】
この印刷技術の別の既知の変形は、浮き彫り基層表面に又は浮き彫り基層と化学的に反応する溶剤印刷用生産物を使用することに基づく。この技術は、例えば特許文献1に記載されているように、電子部品製造の分野で広く知られており、マイクロエレクトロニクス用途により適したより小さな凹部を生成することが可能である。
【0008】
本発明が関連するタイプの第2の広く知られたデジタル印刷技術は、液状の浮き彫り基層への凹部印刷用生産物の単純な堆積又は射出に基づき、それにより浮き彫り基層表面での印刷用生産物の液滴の衝撃の結果として浮き彫り基層の材料が動く時に、浮き彫りが作製される。このデジタル凹部印刷技術は、デジタル浮き出しとして知られている。凹部は、例えば硬化によって、浮き彫り基層が固化すると得られる。選択肢として、印刷された生産物は、例えば蒸発によって除去されることができる。液滴の体積と浮き彫り基層表面での射出速度に応じて、異なる深さの凹部によって形成される浮き彫りを得ることが可能である。この技術は、例えば、特許文献2に記載されている。
【0009】
射出された液滴の一定の体積と一定の速度に対して、より高い明確さ又はより大きな深さを有する凹部を得ることを可能にする特性を有する、凹部印刷用生産物及び浮き彫り基層についての異なる物質の使用は、このデジタル印刷技術においてよく知られている。例えば、適切な表面エネルギー又は表面張力を有する物質の使用、及び浮き彫り基層における印刷用生産物の濡れ性を低減又は無効にすることを可能にする、印刷用生産物と浮き彫り基層の間の撥水剤又は非混和剤の使用が知られている。デジタル印刷における撥水剤又は非混和剤の使用は、例えば特許文献3のように、よく知られている。
【0010】
デジタル浮き出し技術と呼ばれるこの凹部のための第2のデジタル印刷技術とは異なり、上述の凹部のための第1のデジタル印刷技術では、得られる凹部は、印刷用生産物と浮き彫り基層との間の混合物から除去された材料に実質的に対応し、凹部は、印刷用液滴の浮き彫り基層への単なる堆積又は射出及びその後の固化によっては生成されず、凹部を生成するには、印刷用生産物と浮き彫り基層との間の混合物を除去することが必要である。
【0011】
この第2のデジタル浮き出し技術の欠点は、凹部の幅に制限がない第1の印刷技術と比べて、狭く、浅く、はるかに鮮明でない凹部領域しか浮き彫り基層に生成されないことである。
【0012】
形成される凹部の周囲での材料の追加に基づく凹部の形態の浮き彫りについての他のデジタル印刷技術があり、そこでは凹部に対応する材料が除去又は変位される本発明が関連する印刷技術とは異なる。この技術は3D印刷と呼ばれ、例えば特許文献4に記載されている。3D印刷技術の欠点は、その比較的高い生産コストに加えて、限られた機械的耐性、例えば摩耗に対する機械的耐性を浮き彫り基層に提供することである。
【0013】
凹部のための他のデジタル印刷技術も知られており、そこでは上述の印刷技術とは異なり、凹部は、浮き彫り基層からの材料の除去若しくは変位によって又は基材表面への材料の追加によって生成されるのではなく、凹部は、例えば特許文献5に記載されているように、浮き彫り基層表面での印刷用生産物のデジタル印刷によって定められて得られる。これらの印刷技術の一例は、浮き彫り基層の紫外線硬化に対するマスクのデジタル印刷に基づいており、それによりそこではマスクの完全な硬化が生じないため、凹部がマスクの直下の領域で得られる。これらの印刷技術の別の例は、凹部が生成される領域での浮き彫り基層の熱膨張を調整する作用物質のデジタル印刷に基づく。凹部のためのこれらのデジタル印刷技術は、得られる凹部が、本発明が関連するタイプの凹部のためのデジタル印刷技術で作製されるものよりも明確でないという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許第1327259号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3109056号明細書
【文献】特開平10-264346号公報
【文献】欧州特許第2507063号明細書
【文献】欧州特許第2373494号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、改善された明確さ、精密さ又は鮮明さを有する凹部、及びあらゆるサイズの凹部の幅によって形成される浮き彫りを作製する方法を提供すること、並びに表面仕上げについて改善された品質を提供して、尖った又は粗い手触りのエッジを避けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成し、これまでに述べられた技術的課題を解決するために、本発明は基材表面で凹部によって形成される浮き彫りを作製するための方法を提供し、加えて以下で説明する追加の利点を提供する。浮き彫りは、凹部領域と非凹部領域とを含む。凹部領域は、非凹部領域に隣接しており、非凹部領域に対して凹部を形成する。浮き彫りは、複数の凹部領域及び非凹部領域を含んでもよい。
【0017】
本発明の方法は、以下のステップを含む。
-基材表面に浮き彫り基層を延在させるステップと、
-延在する浮き彫り基層の外面に、液滴の形態である液体の凹部印刷用生産物を面積当たり第1の体積でデジタル印刷して、凹部領域を得るステップと、ここで凹部領域は、延在する浮き彫り基層の外面に対して凹部を形成し、
-少なくとも凹部領域に隣接して、延在する浮き彫り基層の外面に、液滴の形態である液体の凹部印刷用生産物を面積当たり第2の体積でデジタル印刷して、非凹部領域を得るステップ。
【0018】
本発明の関係において、浮き彫りは、例えば、浮き出し又は質感として理解されることができる。凹部は、例えば、窪み又は穴として理解されることができる。凹部は、延在する浮き彫り基層の外面に対して多様な凹部深さを有することができる。
【0019】
また、凹部領域は、延在する浮き彫り基層の外面での凹部印刷用生産物の面積当たり第1の体積でのデジタル印刷から得られる浮き彫り基層の凹部によって形成された表面と理解されるべきである。非凹部領域は、対応する凹部領域に隣接しての、浮き彫り基層の外面での凹部印刷用生産物の面積当たり第2の体積でのデジタル印刷から得られた表面として理解されるべきである。非凹部領域は、複数の凹部領域及び/又は浮き彫り基層の端部の間に少なくとも部分的に、特に、少なくとも10%で、好ましくは少なくとも50%で、より好ましくは全体的に延在している。
【0020】
非凹部領域に対する凹部印刷用生産物の面積当たり第2の体積に応じて、得られる非凹部領域の表面は、隣接する凹部領域の凹部に対して実質的に滑らかであり得る。非凹部の実質的に滑らかな表面はまた、艶消し表面として及び/又は凹部領域での最大凹部深さに対して実質的に低減された表面粗さ、すなわち、特に、最大凹部深さの10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは1%以下の表面粗さの表面として理解される。
【0021】
驚くべきことに、凹部に隣接する非凹部領域に印刷用生産物の液滴を用いて印刷した場合、凹部の明確さ又は鮮明さを高めることが可能であることが分かった。印刷された液滴は、隣接する印刷された液滴によって閉じ込められる。このように、凹部領域だけでなく、凹部領域と非凹部領域の両方に印刷用生産物を堆積又は射出することにより、凹部領域の印刷用生産物を閉じ込め、隣接して浮き彫り基層に堆積又は射出された面積当たり第1の体積の印刷用生産物の液滴及び面積当たり第2の体積の印刷用生産物の液滴間の合体を、できるだけ防止又は低減する。
【0022】
本発明による実施形態は、凹部印刷用生産物が浮き彫り基層と混合されて凹部を形成することを想定している。この場合には、その方法は、印刷用生産物と浮き彫り基層の混合物を除去することを含み、それにより凹部領域の凹部は、浮き彫り基層で除去された混合物によって占められていた体積に対応する。混合物は、例えば、ブラシ、吸引、ブロー、加圧材料(水、砂又は他のいずれかの研磨成分)によるブラストなどの機械的手段、例えば熱風又は赤外線放射による蒸発手段、又は化学的手段によって除去されることができる。
【0023】
本発明による別の実施形態は、凹部印刷用生産物が、デジタル浮き出し印刷技術を用いて液状の浮き彫り基層表面に堆積又は射出されることを想定している。この実施形態によれば、印刷用生産物の面積当たりの体積、特に液滴体積、及び/又は液滴射出速度を変更して、異なる凹部深さを得ることができる。
【0024】
好ましくは、本発明によるデジタル印刷は、液状の浮き彫り基層表面に行われる。これはまた、液体印刷用生産物と浮き彫り基層との混合を容易にする。これに関連して、本発明は、デジタル印刷の間及び/又は後に、浮き彫り基層が固化、固定及び/又は硬化されることを想定する(印刷用生産物の面積当たり第1の体積及び/又は面積当たり第2の体積で)。浮き彫り基層は、例えば、熱、電磁放射及び/又は光、特に、紫外線若しくは赤外線によって、固化、固定及び/又は硬化されることができる。
【0025】
好ましくは、浮き彫り基層は硬化され、特に紫外線硬化によって硬化される。液状の浮き彫り基層は、デジタル印刷の間に、特に、やはり印刷用生産物の面積当たり第1の体積及び/又は面積当たり第2の体積で、硬化されないこと又は部分的に硬化されることができる。これに関連して、硬化という用語は、重合の概念を含む。
【0026】
液状の浮き彫り基層の硬化において、ラジカル、アクリル又はポリウレタン樹脂、及びそれらの混合物などの硬化樹脂を使用することができる。液状基層に混合される凹部印刷用生産物としては、硬化性モノマー又はオリゴマー、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0027】
面積当たり第1の体積の印刷用生産物は、面積当たり第2の体積の印刷用生産物と、同じ又は異なる材料からなることができる。印刷の際に、浮き彫り基層表面の異なる箇所に異なる印刷用生産物の材料を使用することもまた想定される。
【0028】
上記の印刷用生産物は、浮き彫り基層を印刷用生産物と共に硬化させた後に、浮き彫り、特に凹部領域を形成するために、硬化後の基層について硬化した混合物を除去することが、より容易となるように構成されることができる。特に、印刷用生産物は、印刷用生産物と基層との混合物の不完全な硬化又は硬化阻害を提供するように構成されてもよい。
【0029】
あるいは、浮き彫り基層は、印刷用生産物と浮き彫り基層との混合を容易にするために、固体、特に、多孔質にされることができる。この場合には、印刷用生産物として、例えば、浮き彫り基層の溶媒を用いることができる。
【0030】
印刷用生産物の面積当たり第2の体積でのデジタル印刷は、面積当たり第1の体積でのデジタル印刷と同時に、その前に、又はその後に行うことができる。好ましくは同時に、より好ましくは前に行われ、それにより印刷用生産物の第2の体積の液滴が、印刷用生産物の第1の体積の液滴の閉じ込めに有利に働くことができる。デジタル印刷の射出時間及び供給時間は、浮き彫り基層での印刷用生産物の液滴の分散時間又は浸透時間よりも桁違いにかなり短く、特に第1の体積と第2の体積での印刷が短時間で行われるにもかかわらず同様に有効な結果を提供するシングルパスデジタル印刷についてはそうである。しかしながら、これに関連して、より好ましくは、上記のデジタル印刷は、直ちにかつ連続して行われることができる。
【0031】
面積当たり第2の体積でのデジタル印刷はまた、面積当たり第1の体積でデジタル印刷が行われた延在する浮き彫り基層表面に行われること、すなわち、その延在する浮き彫り基層の外面の非凹部領域だけでないことも想定される。有利には、凹部領域及び非凹部領域について均一に浮き彫り基層全体に亘って印刷用生産物を射出することができるので、凹部輪郭の深さの勾配を滑らかにして、凹部領域の明確さ及び質感を向上させることができる。
【0032】
射出する印刷用生産物の面積当たり第2の体積の量は、印刷用生産物の面積当たり第1の体積を閉じ込めた凹部領域の明確さを向上させる効果をもたらす程度に大きく、かつ過剰な凹部や摩耗を生じたり、浮き彫り基層に穴が開いたりしたりしない程度に小さい。この観点から、面積当たり第2の体積は、好ましくは凹部領域における面積当たり最大の第1の体積の5%以上であり、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上である。また、面積当たり第2の体積は、好ましくは面積当たり最大の第1の体積以下であり、より好ましくは面積当たり最大の第1の体積の70%以下、更に好ましくは50%以下である。
【0033】
液滴体積(特に、液滴量又は液滴の大きさ)に関して、好ましくは、面積当たり第2の体積のための液滴体積は、面積当たり第1の体積の最大の液滴体積の70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下であることが想定される。有利には、これにより、凹部領域における印刷用生産物の第1の体積の液滴の閉じ込め効果に影響を与えることなく、隣接する非凹部領域における印刷用生産物の体積を減少させることができる。
【0034】
更に、面積当たり第2の体積、及び任意で面積当たりのその第2の体積のための液滴体積も、浮き彫り基層において、すなわち、非凹部領域及び/又は凹部領域について均一であることが想定される。これは、非凹部領域での均一な仕上がりをもたらす。面積当たり第1の体積も、凹部の一定の深さに対して、浮き彫り基層において均一であることが想定される。
【0035】
印刷用生産物の面積当たり第2の体積によってもたらされる非凹部領域の艶消し又は表面仕上げに関して、好ましくは、面積当たり第2の体積、及び任意でその面積当たり第2の体積のための液滴体積は、非凹部領域の浮き彫り基層の表面粗さを20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下にする体積であり、更に/又は、好ましくは60°での光沢を10GU以上、より好ましくは20GU以上、更に好ましくは50GU以上にする体積である。表面粗さ及び60°における光沢のこれらの値は、特に、混合物が除去された直後に測定されたものとされる。
【0036】
浮き彫りは、浮き彫り基層を通して見える、基材表面での印刷画像と一致して作られることも想定される。これを実現するために、浮き彫り基層は透明又は半透明であることができる。
【0037】
基材表面で浮き彫り基層を延ばすことは、例えばローラー、特に逆回転ローラーによって、又は従来の方法で行うことができる。ローラーによって浮き彫り基層を延ばすことにより、大きな重量に相当する浮き彫り基層の大きな厚みを得ることが可能となる。したがって、それに対応する深さの凹部を設けることが可能となる。
【0038】
好ましくは、基材表面に延在する浮き彫り基層は、20μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上の厚みを有し、更に/又は、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下の厚みを有する。
【0039】
これにより、例えば、本発明によれば、凹部領域について、100~300μmまでの深さの浮き彫りを得ることが可能である。更に、得られる凹部の深さが大きいほど、非凹部の表面粗さが例えば1~5μmから10~20μmであり、対応する凹部領域のより良い明確さを実現する効果を提供することが可能となる。
【0040】
本発明によれば、この方法は、凹部領域と非凹部領域とを定める浮き彫り表現をデジタル化することを含み、凹部領域は、例えば、浮き彫り表現の点ごとに、凹部領域の深さに関連する凹部深さ(すなわち、凹部領域を形成するためにデジタル印刷が行われる、延在した浮き彫り基層の外面に対する)を有することもまた想定される。特に、例えば、凹部領域において異なる深さを有する凹部を得るために、浮き彫り表現の点ごとに印刷用生産物の面積当たりでの異なる体積を割り当てることが可能である。本発明との関連において、浮き彫り表現の点という用語は、画素の概念を含む。
【0041】
浮き彫り表現に関して、これは、特に、浮き彫り画像であってもよいことが想定される。浮き彫り画像は、例えば、白黒画像又はグレースケール画像であることができ、それにより非凹部領域が白として定められ、最大の凹部深さを有する凹部領域が黒として定められ、その最大の凹部深さよりも小さい凹部深さを有する凹部領域は、凹部深さが大きくなることにより白から黒まで変わる配色でのグレーである。
【0042】
別の態様によれば、本発明は、上記の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムを格納したコンピュータシステムを備え、そのコンピュータプログラムがそのコンピュータシステムによって実行された時に、基材表面に浮き彫りを作製する機械に関する。
【0043】
別の追加の態様によれば、本発明はまた、基材表面に浮き彫りを備えた基材を含むパネルであって、その浮き彫りが上記の方法又は機械に従って作製される、パネルに関する。その浮き彫りは、パネルの前面全体に延在することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の利点、特徴及び更なる用途の可能性は、図面に示される例示の実施形態に関する以下の説明から得られる。
本発明は、例示により、添付の図面を参照して、以下でより詳細に説明される。図面は以下のものを示す。
【
図1】基材表面に浮き彫りを作製するための方法及びその方法を実施するための製造装置の一実施形態の概略図を示す。
【
図2】
図1の実施形態に従って得られる、基材表面での浮き彫りを備えたパネルの一実施形態を示す概略図を示す。
【
図3】
図3a及び
図3bは、本発明の作用の解説を概略的に示す。
【
図4】本発明の例示の実施形態で使用される浮き彫り表現を示す。
【
図5】例示の実施形態について
図4での浮き彫り表現から処理された浮き彫り表現を示す。
【
図6】例示の実施形態により得られた浮き彫りのサンプルの写真を示す。
【
図7-10】例示の実施形態により得られた浮き彫りの詳細な写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明による、基材(3)表面に浮き彫り(20)を作製してパネル(1)を形成する方法及びその方法を実施するための機械(10)の実施形態を概略的に示す。
【0046】
図1に示されるように、本発明の方法は、浮き彫り表現(30)をデジタル化することを含み、これはコンピュータシステム(16)を介して実施される。コンピュータシステム(16)はコンピュータプログラム(17)を記憶し、コンピュータプログラム(17)を実行することによって上記方法を実施するように構成されている。浮き彫り表現(30)のデジタル化は、特に、コンピュータシステム(16)において処理される1つの浮き彫り表現(30)及び/又は複数の浮き彫り表現を受信、記録、処理、生成などすることによって実施される。
【0047】
浮き彫り表現(30)は、作製される浮き彫り(20)の凹部領域(21)及び非凹部領域(22)を定める。すなわち、それらの領域を区切り、非凹部領域(22)に対する凹部領域(21)の凹部深さを割り当てることによって定める。浮き彫り表現(30)の一例は、
図4に示す画像であり、そこでは凹部領域(21)を黒、非凹部領域(22)を白で定めている。この場合には、凹部領域(21)の深さは一定である。
【0048】
本発明の方法は、浮き彫り基層(2)の液状材料をローラー塗布装置(11)によって浮き彫り基層(2)に延在させることを含む。次に、デジタルプリンタ(12)を用いて、浮き彫り表現(30)の点ごとに液滴の形態で、面積当たり第1の体積(41)の液体印刷用生産物で、浮き彫り基層(2)表面にデジタル印刷がされる。また、この場合には、同じデジタルプリンタ(12)を用いて、浮き彫り表現(30)の点ごとに液滴の形態で、面積当たり第2の体積(42)の液体印刷用生産物でデジタル印刷が行われる。デジタル印刷は、浮き彫り基層(2)表面に液体印刷用生産物を堆積又は射出することを含む。
【0049】
上述した実施形態の変形例によれば、面積当たり第2の体積(42)の印刷用生産物でのデジタル印刷は、浮き彫り基層(2)の外面全体に対して、すなわち凹部領域(21)と非凹部領域(22)の両方に対して行われる。しかしながら、第2の体積の印刷用生産物でのデジタル印刷は、凹部領域(21)に隣接した又は繋がった非凹部領域(22)においてのみ、例えば凹部領域(21)の周囲、境界、周辺又は輪郭、特に凹部領域(21)の輪郭の少なくとも1つの部分的な領域に配置されて、行われ得ることも想定される。対照的に、面積当たり第1の体積(41)の印刷用生産物でのデジタル印刷は、凹部領域(21)について行われ、その体積は、得ようとする凹部の深さに応じて変わり得る。
【0050】
浮き彫り基層(2)表面に堆積又は射出された印刷用生産物は、浮き彫り基層(2)の材料と混合して、浮き彫り基層(2)を貫通する。上述した本発明の実施形態では、浮き彫り基層(2)は紫外線硬化樹脂材料からなり、一方で浮き彫り基層(2)と混合される射出可能な印刷用生産物は、印刷用生産物と共に浮き彫り基層(2)を硬化させた後に、浮き彫り、特に凹部領域(21)を形成するために、硬化した浮き彫り基層(2)について硬化混合物(40)を除去することを容易にするように構成される。浮き彫り基層(2)と共に印刷用生産物を硬化させた時に、未混合の浮き彫り基層(2)の材料に対して容易に除去可能な混合物(40)が生じる。
【0051】
図1に示される実施形態の説明に従い、デジタル印刷の後に、浮き彫り基層(2)は、浮き彫り基層(2)表面での紫外線放射の照射で、そこに混合された印刷用生産物と共に硬化される。この紫外線の照射は、紫外線硬化装置(13)によって行われる。
【0052】
図1に示されるように、印刷用生産物と浮き彫り基層(2)の混合物(40)は硬化後に除去され、それにより得られた凹部領域(21)は、浮き彫り基層(2)で除去された混合物(40)が占める体積、すなわち凹部領域(21)での体積に対応する。混合物(40)の除去は、例えば、浮き彫り基層(2)の外面でのブラッシング装置(14)で行うことができる。
【0053】
上述した実施形態では、表面に浮き彫り(20)が延在した基材(3)又はパネル(1)は、上述した方法の連続する設備を通って前進するように、搬送装置(18)、例えばコンベヤベルトによって移動される。
【0054】
コンピュータシステム(16)は、コンピュータシステム(16)と様々な装置(11、12、13、14)との間のデータ通信(15)を介して、作製機械(10)の様々な装置を作動させることによって、本発明の方法を実施する。
【0055】
本発明による方法が適用される基材(3)の形態は、好ましくはパネル(1)として提供されるが、本発明の製造方法は、限定されることなく任意の形態の基材(3)、例えばパネルプロファイル材(1)に適用される。また、好ましくは、延在する浮き彫り基層(2)の外面は、非凹部領域(22)が実質的に平坦であるようにして、実質的に平坦であることが想定されるが、表面に関しては限定されず、本発明による凹部で形成される浮き彫り(20)がある表面は湾曲することも、例えば、起伏することも、突起、隆起若しくは陥凹、凹み又は窪みなどの他の任意の形状を備えることもでき、そこに本発明による凹部が得られる。
【0056】
基材(3)の材料としては、任意の材料を使用することができる。例えば、無垢材、凝集材、HDF、MDF、合板などの木材材料又はその派生物からなるパネル(1)への適用が想定される。また、例えば合成材料、特に合成床であるMMLF(「多層モジュラー床」)の使用も想定される。合成材料の適用例としては、LVT(「高級ビニルタイル」)、SPC(「ストーンプラスチック複合材」)、WPC(「木材プラスチック複合材」)、あるいはPE若しくはPVCパネル(1)又はプロファイル材などが挙げられる。他の想定される材料の適用としては、繊維セメント、アルミニウム若しくはスチールのパネル(1)又はプロファイル材などである。
【0057】
製造方法の説明に戻り、基材(3)がパネル(1)である好ましい実施形態についても、以下に説明するように、対応する作製機械(10)の他のステップ又は設備を含むことがまた想定される。
【0058】
基材(3)から始めて、その外面が準備されて洗浄されると、硬化されてもよい第1のプライマー層が基材(3)表面に塗布されることができる。このプライマー層は、プライマー層表面に塗布され、やはり硬化されてもよい画像基層の塗布を容易にする。画像基層表面に、やはり硬化されることができる可視インクでデジタル印刷画像が施される。続いて、やはり硬化されることができる印刷画像の保護層を塗布することができる。硬化は、紫外線硬化によって行われることができる。
【0059】
浮き彫り基層(2)及び上述した本発明による方法の後続のステップは、この層の組み合わせの表面に塗布されることができる。印刷用生産物及び浮き彫り基層(2)の混合物(40)が除去されると、表面仕上げ層をその組み合わせの表面に塗布することができ、これもまた、例えば紫外線硬化により硬化されることができる。
【0060】
印刷画像を備えた画像基層上の層、特に浮き彫り基層(2)は、画像が浮き彫り(20)の上から基材(3)表面において見えるように、透明又は半透明であることができる。浮き彫り(20)と印刷画像は、合わせて、すなわち互いに一致して行われることができ、それにより浮き彫り(20)と画像とが、例えば、基材(3)の上から見た時に重なることによって、互いに関連する又は結合するデザイン効果が提供されることができる。特に、それにより木の質感などの現実のデザインを模倣することが可能となる。画像は、模様、色、形などを含むことができる。代わりに又は加えて、浮き彫り(20)表面に印刷画像を、特に、画像と浮き彫り(20)との間で合わせて、すなわち一致させて、施すことができることもまた想定される。
【0061】
印刷用生産物の面積当たり第1の体積(41)及び印刷用生産物の面積当たり第2の体積(42)に関して、それは、例えば、射出液滴の量、体積若しくは大きさ、面積当たりの射出点の数、又はプリンタ解像度(例えば、1インチ当たりのドットを意味するdpiで評価される)に依存して変わり得る。各印刷点で射出される印刷用生産物の量が多いほど、液滴が射出される浮き彫り基層(2)内部でのその浸透の深さが大きくなり、したがって凹部の深さが大きくなる。
【0062】
この方法では、浮き彫り(20)を得るためのデジタル印刷方法及び/又はデジタルプリンタ(12)に追加して、浮き彫り基層(2)表面に射出されることができる印刷用生産物の面積当たりの体積に関するパラメータが定められることができる。100%の値は、特定の方法及び/又はデジタルプリンタ(12)によって得ることができる印刷用生産物の面積当たりの最大体積に割り当てられる。0%の投入割合は、印刷用生産物が塗布されないことを示す。投入割合又は印刷用生産物の面積当たりの体積が大きいほど、得られる凹部の深さが大きくなる。
【0063】
好ましくは、印刷用生産物の面積当たり第2の体積(42)に対応する投入割合は、印刷用生産物の面積当たり第1の体積(41)に対応する投入割合と比べて、相対的に低くされる。これにより、非凹部領域(22)は、実質的に凹んだり、穴が開いたり、摩耗したりせずに、一方で改善された明確さを有する凹部領域(21)、したがって、非常に高品質な浮き彫り(20)を提供することができる。
【0064】
図2は、パネル(1)の形態の基材(3)を示す。浮き彫り基層(2)に凹部によって形成される浮き彫り(20)が、基材(3)表面に適用される。浮き彫り(20)は、凹部領域(21)及び非凹部領域(22)によって形成されている。分かり易さのために、図は、浮き彫り基層(2)の材料と浮き彫り基層(2)の印刷用生産物との混合物(40)を除去して混合物(40)が占める体積に対応する凹部を得る前の、混合物(40)を備えた基材(3)を示す。印刷用生産物の面積当たり第1の体積(41)の液滴(凹部領域(21)用)と印刷用生産物の面積当たり第2の体積(42)の液滴(非凹部領域(22)用)の両方が、浮き彫り基層(2)表面に堆積されている。
【0065】
図3a及び
図3bは、従来技術(
図3a)と比較した本発明の作用原理(
図3b)の解説を示すためのものである。凹部のみでなく浮き彫り(20)全体に印刷用生産物を射出することによって、浮き彫り基層(2)に形成された混合物(40)を留める、保持する又は固定して、浮き彫り基層(2)表面に堆積又は射出される印刷用生産物の面積当たり第1の体積(41)及び面積当たり第2の体積(42)の液滴間の合体をできる限り防止又は低減することが可能である。印刷用生産物の液滴が凹部領域(21)に隣接する領域表面に射出されない場合(
図3a)、印刷用生産物は、閉じ込めに有利に働くように印刷用生産物がその隣接又は周囲に射出された場合よりも、より大きくより制御されない基礎でその周囲に広がり得る。
【0066】
例示の実施形態
印刷用生産物のデジタル印刷は、2つの印刷ヘッドを備えたシングルパスのデジタルプリンタ(12)で、360dpiの解像度及び3つの液滴量(射出液滴体積)14pl、28pl、43plで行われた。
【0067】
印刷用生産物として、イタリアの製造会社ZEETREE,SRL社製の「trueTexture」ジェットインクを使用した。
【0068】
印刷用生産物の面積当たりの体積は、例えば、面積当たりのデジタルプリンタ(12)のノズル数、ノズル当たりの液滴量、及び浮き彫り基層(2)表面に印刷用生産物を堆積させるためのパス数又はシングルパスのデジタルプリンタ(12)当たりの印刷ヘッド数の選択によって変わり得る。
【0069】
この例示の実施形態では、上記のデジタルプリンタ(12)で1パスが実施された。印刷は、1000×200×4mmのSPC(「ストーンプラスチック複合材」)基材(3)(床板用の一般的な寸法)表面に25m/分の速度で実施された。
【0070】
例示の実施形態についての印刷用生産物の面積当たりの最大体積は、2つの印刷ヘッドによるシングルパスでの最大解像度360dpi×360dpi及び最大液滴量43plでの射出、すなわち印刷用生産物の面積当たりの体積が17.276ml/m2に相当する。この印刷用生産物の面積当たりの最大体積は、投入割合100%に相当する。
【0071】
デジタル印刷のための印刷用生産物の投入割合は、0%と100%の間で変わり、それにより投入割合が高いほど、印刷用生産物が射出される浮き彫り基層(2)内部でのその浸透の深さ、したがって得られる凹部の深さが大きくなる。
【0072】
浮き彫り基層(2)の材料として、製造会社KLUMPPから入手できる管理番号161-000-00430の紫外線硬化樹脂(「紫外線シーラー」)を使用した。樹脂は、ローラーによって基材(3)表面に延ばされ、浮き彫り基層(2)の厚さは約100μmであり、約100g/m2の重量に相当する。
【0073】
凹部領域(21)を黒色、非凹部領域(22)を白色とした
図4に示す画像を、浮き彫り表現(30)の例として使用した。この浮き彫り表現(30)では、凹部領域(21)の凹部深さは一定である。
【0074】
この浮き彫り表現(30)に従って、凹部領域(21)については、投入割合100%に対応する印刷用生産物の面積当たり一定の第1の体積(41)で、浮き彫り基層(2)に均一に印刷した。また、非凹部領域(22)については、印刷用生産物の面積当たり第1の体積(41)よりも小さい印刷用生産物の面積当たり一定の第2の体積(42)で、浮き彫り基層(2)に均一に印刷した。この例示の実施形態では、印刷用生産物の面積当たり第2の体積(42)を、非凹部領域(22)について浮き彫り基層(2)全体に亘って延在させた。
【0075】
この浮き彫り表現(30)について、次の通り印刷用生産物の面積当たり第2の体積(42)をそれぞれ変えることにより、異なる投入割合について異なるサンプルを得た。5%(0.864ml/m2)、15%(2.591ml/m2)、30%(5.183ml/m2)、50%(8.638ml/m2)。
【0076】
更に、細線の質感(I)に対応する
図4の浮き彫り表現(30)を、質感の線幅を徐々に太くすることによって変更し、中線の質感(II)及び太線の質感(III)に対応する浮き彫り表現(30)を得た。
【0077】
更に、細線(I)の浮き彫り表現(30)、中線(II)の浮き彫り表現(30)、太線(III)の浮き彫り表現について、印刷用生産物の面積当たり第2の体積(42)を、5%(0.864ml/m2)、15%(2.591ml/m2)、30%(5.183ml/m2)及び50%(8.638ml/m2)の異なる投入割合にそれぞれ変えることによって、異なるサンプルもまた得た。
【0078】
図5の処理された浮き彫り表現は、凹部領域(21)及び非凹部領域(22)のデジタル印刷に関して、それぞれの細線(I)、中線(II)及び太線(III)の浮き彫り表現(30)について、対応する投入割合で生成されたものである。これらの処理された浮き彫り表現は、印刷用生産物の投入割合を定めた、0%の投入に対応する白と100%の投入に対応する黒の間を範囲とするグレースケールを用いた画像である。
【0079】
処理された浮き彫り表現は、
図5に配列で示されており、行は、0%(非凹部(22)(凹部に隣接する)には何も印刷されない)、5%、15%、30%及び50%についての、印刷用生産物の面積当たり第2の体積(42)に対応する投入割合に対応する。配列の列は、浮き彫り(20)を形成する線の例、すなわち、細(I)、中(II)及び太(III)幅での、凹部領域の幅に対応する。
【0080】
処理された浮き彫り表現は、噴射、印刷用生産物の面積当たりの体積、面積当たりの液滴数、液滴量などを決めるために、デジタルプリンタ(12)用のコンピュータシステム(16)のコンピュータプログラム(17)によって処理される。
【0081】
浮き彫り基層(2)表面に印刷用生産物を堆積又は射出したサンプルを、硬化反応を開始させるために、波長230~410nmの間及びピーク電力600mW/cm2で総エネルギー200mJ/cm2を加える紫外線ランプによって硬化した。
【0082】
サンプルを硬化させた後に、印刷用生産物と浮き彫り基層(2)の混合物(40)をブラッシングで除去し、それにより凹部領域に対応する凹部によって形成された浮き彫り(20)又は質感を得た。
【0083】
以下、サンプルから得られた結果について説明する。
【0084】
図6は、もたらされたサンプルの写真を示し、
図5での処理された浮き彫り表現に対応する。浮き彫り(20)を得た後に、写真で凹部を認識するために凹部表面に黒色粉末充填顔料を塗布し、浮き彫り基層(2)は透明で、白い表面の基材(3)に塗布された。
【0085】
図6の写真に示されるように、凹部領域(21)のみを印刷した場合、つまり非凹部領域(22)において0%の投入の場合、細かい質感(I)、すなわち細線については浮き彫り(20)はほとんど目立たず、はっきりしない。一方で、太線での幅の広い質感(III)の場合、浮き彫り(20)はでこぼこであり、手触りが粗く、エッジが鋭い。
【0086】
驚くべきことに、背景又は非凹部領域(22)は、最大50%まで投入割合を増加させて射出すると、浮き彫り(20)のより良い明確さ、及び凹部領域(21)と非凹部領域(22)の間での滑らか又は漸進的な移行を得ることが可能であり、浮き彫り(20)又は質感のためのより高い品質をもたらす。したがって、例えば、50%の投入かつ細線(I)の浮き彫り(20)は、浮き彫り(20)がほとんど認識できない0%の投入かつ細線(I)の浮き彫り(20)に比べて、はっきりとしてよく見える。一方で、50%の投入かつ太線(III)の浮き彫り(20)は、0%の投入かつ太線(III)の浮き彫り(20)と違い、よりはっきりとしていて手触りも粗くない。
【0087】
図7~
図10は、
図6の黒色顔料なしで、コントラストを付けて浮き彫り(20)を詳細に示した写真である。
図7は、0%の投入かつ細線(I)である浮き彫り(20)を示す。
図8は、0%の投入かつ太線(III)である浮き彫り(20)を示す。
図9は、50%の投入かつ細線(I)である浮き彫り(20)を示す図である。
図10は、50%の投入かつ太線(III)である浮き彫り(20)を示す。
【0088】
つまり、凹部が生成される凹部領域だけでなく、凹部領域に隣接する領域に印刷されれば、凹部における細線、すなわち狭い線について質感がよりはっきりしてより認識できることが分かった。例えば、浮き彫り(20)の明確さを更に向上させるために、たとえ厚みを増加させたとしても、従ってより滑らかな浮き彫り(20)が得られる。
【0089】
また、生成された混合物(40)を硬化して除去した後に、浮き彫り基層(2)に印刷用生産物を最大の投入割合、例えば50%まで射出すると、一定の艶消しが見られたとしても、手触りでほとんど分からない又はよく見えない凹部を生じることが分かった。
【0090】
上記で説明したように、本発明によって高品質のより精密で明確な浮き彫り(20)、質感又は浮き出しを実現することが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 パネル
2 浮き彫り基層
3 基材
10 浮き彫り作製機械
11 ローラー塗布装置
12 デジタルプリンタ
13 硬化装置
14 ブラッシング装置
15 データ通信
16 コンピュータシステム
17 コンピュータプログラム
18 搬送装置
20 浮き彫り
21 凹部領域
22 非凹部領域
30 浮き彫り表現
40 混合物
41 印刷用生産物の第1の体積
42 印刷用生産物の第2の体積
I 細かい質感
II 中程度の質感
III 太い質感