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特許7526510ボンディング装置、ボンディング方法およびボンディングプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ボンディング装置、ボンディング方法およびボンディングプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H01L21/60 301G
H01L21/60 301L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022575024
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001397
(87)【国際公開番号】W WO2022153519
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-158255(JP,A)
【文献】特開2000-260806(JP,A)
【文献】特開2016-25304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージに載置された基板に対し、駆動可能に設けられたヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられ、前記基板のボンディングポイントへボンディングワイヤを供給するボンディングツールと、
前記ヘッド部に設けられ、前記ステージのステージ面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、前記ボンディングツールから延出された前記ボンディングワイヤの先端部を合焦させることができる第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、
前記第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ、前記ボンディングポイントのうち次に前記ボンディングワイヤを供給する目標ポイントの像である第1像と、前記第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ前記目標ポイントの像である第2像に基づいて前記目標ポイントの三次元座標を算出する算出部と、
前記算出部に算出された前記目標ポイントの三次元座標に基づいて前記ボンディングツールを前記目標ポイントに接近させる駆動制御部と
を備えるボンディング装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記第1画像に写り込んだ、前記ボンディングポイントのうち次以降に前記ボンディングワイヤを供給する後続ポイントの像である第3像と、前記第2画像に写り込んだ前記後続ポイントの像である第4像に基づいて前記後続ポイントの三次元座標を算出し、
前記駆動制御部は、前記目標ポイントへの前記ボンディングワイヤの供給後に、前記算出部に算出された前記後続ポイントの三次元座標に基づいて前記ボンディングツールを移動させる請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットの少なくともいずれかが出力する画像に基づいてボンディング工程の適否を評価する評価部を備え、
前記駆動制御部は、前記評価部の評価結果に基づいて前記ボンディングツールの駆動制御を変更する請求項1または2に記載のボンディング装置。
【請求項6】
ステージに載置された基板に対し、駆動可能に設けられたヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、前記基板のボンディングポイントへボンディングワイヤを供給するボンディングツールと、前記ヘッド部に設けられ、前記ステージのステージ面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、前記ボンディングツールから延出された前記ボンディングワイヤの先端部を合焦させることができる第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットとを備えるボンディング装置を用いたボンディング方法であって、
前記ステージに固定された前記基板の前記ボンディングポイントのうち次に前記ボンディングワイヤを供給する目標ポイントを、前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させる撮像ステップと、
前記第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ、前記目標ポイントの像である第1像と、前記第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ前記目標ポイントの像である第2像に基づいて前記目標ポイントの三次元座標を算出する算出ステップと、
前記目標ポイントの三次元座標に基づいて、前記ボンディングワイヤを供給するボンディングツールを前記目標ポイントに接近させる駆動ステップと
を有するボンディング方法。
【請求項7】
ステージに載置された基板に対し、駆動可能に設けられたヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、前記基板のボンディングポイントへボンディングワイヤを供給するボンディングツールと、前記ヘッド部に設けられ、前記ステージのステージ面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置された、前記ボンディングツールから延出された前記ボンディングワイヤの先端部を合焦させることができる第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットとを備えるボンディング装置を制御するボンディングプログラムであって、
前記ステージに固定された前記基板の前記ボンディングポイントのうち次に前記ボンディングワイヤを供給する目標ポイントを、前記第1撮像ユニットおよび前記第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させる撮像ステップと、
前記第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ、前記目標ポイントの像である第1像と、前記第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ前記目標ポイントの像である第2像に基づいて前記目標ポイントの三次元座標を算出する算出ステップと、
前記目標ポイントの三次元座標に基づいて、前記ボンディングワイヤを供給するボンディングツールを前記目標ポイントに接近させる駆動ステップと
をコンピュータに実行させるボンディングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置、ボンディング方法およびボンディングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでのワイヤボンダにおいては、作業領域を真上からカメラで撮像してその位置を確認し、カメラを退避させ、当該作業領域の真上にボンディングツールを移動させてからボンディング処理を行っていた。このようにカメラとボンディングツールの配置にオフセットが存在することから、その相対位置を正しく測定する技術が利用されることもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/158588号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位置確認とボンディング処理をシーケンシャルに実行する場合には、時間を要するばかりか、位置確認とボンディング処理の間に熱の影響等によって計測した位置にずれが生じる場合がある。また、ヘッド部とは別の構造体に撮像ユニットを装着すると、計測誤差を生じる要因が増大する。一方で、従来の撮像ユニットをヘッド部のツール脇に配設すると、その視野の狭さから、作業領域を観察することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ヘッド部に対する作業領域の精確な三次元座標計測を実現すると共に、作業領域の三次元座標計測からボンディング処理の実行までのリードタイムを短縮できるボンディング装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様におけるボンディング装置は、ステージに載置された基板のボンディングポイントへボンディングワイヤを供給するボンディングツールと、ステージのステージ面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置されている第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットと、第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ、ボンディングポイントのうち次にボンディングワイヤを供給する目標ポイントの像である第1像と、第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ目標ポイントの像である第2像に基づいて目標ポイントの三次元座標を算出する算出部と、算出部に算出された目標ポイントの三次元座標に基づいてボンディングツールを目標ポイントに接近させる駆動制御部とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様におけるボンディング方法は、ステージに載置された基板のボンディングポイントのうち次にボンディングワイヤを供給する目標ポイントを、ステージのステージ面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置されている第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させる撮像ステップと、第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ、目標ポイントの像である第1像と、第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ目標ポイントの像である第2像に基づいて目標ポイントの三次元座標を算出する算出ステップと、目標ポイントの三次元座標に基づいて、ボンディングワイヤを供給するボンディングツールを目標ポイントに接近させる駆動ステップとを有する。
【0008】
本発明の第3の態様におけるボンディングプログラムは、ステージに載置された基板のボンディングポイントのうち次にボンディングワイヤを供給する目標ポイントを、ステージのステージ面に平行な平面が焦点面となるようにそれぞれの光学系と撮像素子がシャインプルーフ条件を満たして配置されている第1撮像ユニットおよび第2撮像ユニットのそれぞれに撮像させる撮像ステップと、第1撮像ユニットが出力する第1画像に写り込んだ、目標ポイントの像である第1像と、第2撮像ユニットが出力する第2画像に写り込んだ目標ポイントの像である第2像に基づいて目標ポイントの三次元座標を算出する算出ステップと、目標ポイントの三次元座標に基づいて、ボンディングワイヤを供給するボンディングツールを目標ポイントに接近させる駆動ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ヘッド部に対する作業領域の精確な三次元座標計測を実現すると共に、作業領域の三次元座標計測からボンディング処理の実行までのリードタイムを短縮できるボンディング装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るワイヤボンダの要部を模式的に示す斜視図である。
図2】ワイヤボンダのシステム構成図である。
図3】シャインプルーフ光学系を説明するための説明図である。
図4】三次元座標の算出原理を説明するための説明図である。
図5】ボンディングポイントの三次元座標計測を説明するための説明図である。
図6】ボンディング工程の適否評価を説明するための説明図である。
図7】演算処理部の処理手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るワイヤボンダ100の要部を模式的に示す斜視図である。ワイヤボンダ100は、半導体チップ320のパッド電極321と基板330のリード電極322をボンディングワイヤであるワイヤ310により結線するボンディング装置である。パッド電極321とリード電極322は、三次元座標を計測してワイヤ310を供給する対象であり、以降の説明においてはボンディングポイントなどと呼ぶ場合がある。
【0013】
ワイヤボンダ100は、主に、ヘッド部110、ボンディングツール120、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140を備える。ヘッド部110は、ボンディングツール120、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140を支持し、ヘッド駆動モータ150によって平面方向へ移動可能である。平面方向は、図示するように、X軸方向とY軸方向で定められる水平方向であり、架台210に載置されたステージ220の移動方向でもある。ステージ220上には基板330が載置され固定される。
【0014】
ボンディングツール120は、例えば金線であるワイヤ310を供給する機能を担い、ワイヤクランパ、トランスデューサ、キャピラリを包含する。なお、以下の本実施形態ではキャピラリを用いたボールボンディングを前提として説明するが、ウェッジツールを用いたウェッジボンディングを採用しても構わない。パッド電極321へのファーストボンド時には図示するように先端部からワイヤ310が延出され、ボールボンディングを採用する本実施形態の場合は、不図示のトーチ電極によりワイヤ310の先端部にFAB(Free Air Ball)が形成される。ボンディングツール120は、ツール駆動モータ160によって、ヘッド部110に対して高さ方向へ移動可能である。高さ方向は、図示するように、平面方向に直交するZ軸方向である。
【0015】
第1撮像ユニット130は、ボンディングツール120の下方に位置するボンディングポイントを撮像するための撮像ユニットであり、第1光学系131と第1撮像素子132を備える。具体的には後述するが、第1撮像ユニット130は、光軸をボンディングツール120の下方に向けてヘッド部110に斜設されている。第1光学系131と第1撮像素子132は、ステージ220のステージ面に平行な平面が焦点面となるようにシャインプルーフ条件を満たして配置されている。
【0016】
第2撮像ユニット140は、ボンディングツール120の下方に位置するボンディングポイントを撮像するための撮像ユニットであり、第2光学系141と第2撮像素子142を備える。具体的には後述するが、第2撮像ユニット140は、ボンディングツール120に対して第1撮像ユニット130とは反対側に、光軸をボンディングツール120の下方に向けてヘッド部110に斜設されている。第2光学系141と第2撮像素子142は、ステージ220のステージ面に平行な平面が焦点面となるようにシャインプルーフ条件を満たして配置されている。
【0017】
XYZ座標系は、ヘッド部110の基準位置を原点とする空間座標系である。ワイヤボンダ100は、ボンディングポイントを第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140によって撮像し、それらの像からボンディングポイントの三次元座標を算出する。具体的には、ファーストボンディングポイントであるパッド電極321の三次元座標(XRTA,YRTA,ZRTA)と、セカンドボンディングポイントであるリード電極322の三次元座標(XRTB,YRTB,ZRTB)を算出する。ワイヤボンダ100は、パッド電極321の三次元座標(XRTA,YRTA,ZRTA)、リード電極322の三次元座標(XRTB,YRTB,ZRTB)を接近目標としてヘッド部110およびボンディングツール120を駆動する。なお、平面方向の位置調整については、ステージ220を駆動してもよく、また、ヘッド部110とステージ220を協調して共に駆動してもよい。
【0018】
図2は、ワイヤボンダ100のシステム構成図である。ワイヤボンダ100の制御システムは、主に、演算処理部170、記憶部180、入出力デバイス190、第1撮像ユニット130、第2撮像ユニット140、ヘッド駆動モータ150、ツール駆動モータ160によって構成される。演算処理部170は、ワイヤボンダ100の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。演算処理部170は、記憶部180に記憶されたボンディングプログラムを読み出して、ボンディングに関する様々な処理を実行する。
【0019】
記憶部180は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)によって構成されている。記憶部180は、ワイヤボンダ100の制御や処理を実行するプログラムの他にも、制御や演算に用いられる様々なパラメータ値、関数、ルックアップテーブル等を記憶し得る。記憶部180は、特に、変換テーブル181を記憶している。変換テーブル181は、具体的には後述するが、第1像と第2像の座標値を入力すると、ボンディングポイントの三次元座標へ変換するルックアップテーブルである。ここで、第1像は、第1撮像ユニット130が出力する第1画像に写り込んだボンディングポイントの像であり、第2指標像は、第2撮像ユニット140が出力する第2画像に写り込んだボンディングポイントの像である。
【0020】
入出力デバイス190は、例えばキーボード、マウス、表示モニタを含み、ユーザによるメニュー操作を受け付けたり、ユーザへ情報を提示したりするデバイスである。例えば、演算処理部170は、入出力デバイス190の一つである表示モニタへ、第1画像と第2画像を並べて表示してもよい。
【0021】
第1撮像ユニット130は、演算処理部170から撮像要求信号を受けて撮像を実行し、第1撮像素子132が出力した第1画像を画像信号として演算処理部170へ送信する。同様に、第2撮像ユニット140は、演算処理部170から撮像要求信号を受けて撮像を実行し、第2撮像素子142が出力した第2画像を画像信号として演算処理部170へ送信する。
【0022】
ヘッド駆動モータ150は、演算処理部170から駆動信号を受けてヘッド部110をXY方向へ移動させる。ツール駆動モータ160は、演算処理部170から駆動信号を受けてボンディングツール120をZ方向へ移動させる。
【0023】
演算処理部170は、位置制御プログラムが指示する処理に応じて様々な演算を実行する機能演算部としての役割も担う。演算処理部170は、画像取得部171、算出部172、駆動制御部173、評価部174として機能し得る。画像取得部171は、第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140へ撮像要求信号を送信し、第1画像の画像信号および第2画像の画像信号を取得する。
【0024】
算出部172は、第1画像に写り込んだボンディングポイントの像である第1像と第2画像に写り込んだボンディングポイントの像である第2像に基づいてボンディングポイントの三次元座標を算出する。具体的には、変換テーブル181を用いて三次元座標を得る。駆動制御部173は、ヘッド駆動モータ150を駆動する駆動信号、およびツール駆動モータ160を駆動する駆動信号を生成し、それぞれのモータへ送信する。例えば、算出部172がパッド電極321の三次元座標(XRTA,YRTA,ZRTA)を算出すると、ボンディングツール120を(XRTA,YRTA,ZRTA)へ接近させる駆動信号を生成し、ツール駆動モータ160へ送信する。なお、ステージ220を水平方向へ移動させる場合には、ステージ220を移動させるステージ駆動モータへ駆動信号を送信する。評価部174は、第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140の少なくともいずれかが出力する画像に基づいてボンディング工程の適否を評価する。
【0025】
図3は、第1撮像ユニット130に採用されているシャインプルーフ光学系を説明するための説明図である。第2撮像ユニット140にも同様のシャインプルーフ光学系が採用されているが、ここでは代表して第1撮像ユニット130のシャインプルーフ光学系について説明する。
【0026】
図3において、平面S1は、ステージ220のステージ面に対して平行な、半導体チップ320のパッド電極321が設けられた表面を含む予定焦点面である。仮想面S2は、物側レンズ群131aと像側レンズ群131bを構成群とする第1光学系131の主平面を含む平面である。平面S3は、第1撮像素子132の受光面を含む平面である。本実施形態においてシャインプルーフ光学系は、シャインプルーフ条件を満たして配置されている第1光学系131と第1撮像素子132を含む。シャインプルーフ条件を満たす配置とは、平面S1、仮想面S2、平面S3が共通の直線P上で互いに交差する配置である。
【0027】
なお、図3は、シャインプルーフ条件をわかりやすく説明するために、物側レンズ群131aと半導体チップ320を接近させて示しているが、実際には図1に示すように互いに離間している。ボンディングツール120は、半導体チップ320の上部空間において、第1撮像ユニット130と干渉することなくZ軸方向へ移動することができる。
【0028】
絞り133は、物側レンズ群131aと像側レンズ群131bの間に配置され、通過する光束を制限する。絞り133の径により、被写界深度DPを調整することができる。したがって、第1撮像ユニット130は、半導体チップ320上のパッド電極321と共に、基板330上のリード電極322も、第1撮像ユニット130の視野に収まっている限り、合焦状態で一画像に撮像することができる。また、電極に限らず、例えばボンディングツール120から延出するワイヤ310の先端部が被写界深度DP内まで接近すると、第1撮像ユニット130は、ワイヤ310の先端部とパッド電極321を共に合焦状態で撮像することができる。
【0029】
第2撮像ユニット140は、第1撮像ユニット130と同様の構成を備え、ボンディングツール120の中心軸を含むYZ平面に対して対称にヘッド部110に配設されている。したがって、第2撮像ユニット140も第1撮像ユニット130と同様に、パッド電極321とリード電極322を、第2撮像ユニット140の視野に収まっている限り、合焦状態で一画像に撮像することができる。
【0030】
本実施形態においては、物側レンズ群131aおよび像側レンズ群131bにより両側テレセントリックを実現している。これにより観察対象を撮像素子上に一定の倍率で結像させることができるので、三次元座標の算出には都合が良い。特にシャインプルーフ光学系においては、直線P側に存在する観察対象も直線Pから遠い側に存在する観察対象も結像面では同倍率となる物側テレセントリックであることが望ましい。
【0031】
図4は、ボンディングポイントの三次元座標の算出原理を説明するための説明図である。特に、変換テーブル181を生成する手順を説明する図である。変換テーブル181は、基板330に半導体チップ320を重ねた厚さを有するチャート400をボンディングツール120直下のステージ220上に載置し、これを撮像した第1撮像ユニット130の第1画像と第2撮像ユニット140の第2画像を用いて生成される。
【0032】
チャート400の表面には、複数のドット410が設定された間隔でマトリックス状に印刷されている。このようなチャート400を、ヘッド部110の高さをZ=h1、h2、h3…に調整し、それぞれの高さで撮像を実行して第1画像と第2画像のペアを得る。
【0033】
第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140はシャインプルーフ光学系を採用するので、得られるチャート像400’は、全面が合焦状態でありながら、それぞれが互いに逆向きの台形に歪んでいる。画像座標系として横軸をx軸、縦軸をy軸とすると、第1画像と第2画像で互いに対応するドット像410’の座標は、(x1k,y1k)、(x2k,y2k)のように算出される。
【0034】
チャート400のそれぞれのドット410についてステージ220上での座標(Xk,Yk)は既知であり、高さhk=ZKは撮像時に調整されるので、各ドット410の三次元座標(Xk,Yk,ZK)は、撮影時には確定される。そして、高さhkで撮像された第1画像と第2画像の各ドット像410’の座標(x1k,y1k)、(x2k,y2k)が算出されるので、それぞれのドット410とその像であるドット像410’の間で座標の対応関係を取得することができる。すなわち、撮像を実行した高さごとに、離散的に、三次元座標(Xk,Yk,ZK)と二次元座標(x1k,y1k)、(x2k,y2k)の対応関係を取得することができる。このような対応関係を変換テーブル181に記述する。
【0035】
このように記述され、生成された変換テーブル181は、三次元座標(Xk,Yk,ZK)と二次元座標(x1k,y1k)、(x2k,y2k)の対応関係を示すデータの集合体であり、ルックアップテーブルとして利用し得る。つまり、変換テーブル181を参照すれば、第1像の座標値(x1R,y1R)と第2像の座標値(x2R,y2R)をボンディングポイントの三次元座標(XR,YR,ZR)へ変換することができる。なお、算出された(x1R,y1R)と(x2R,y2R)の組み合わせが変換テーブル181に存在しない場合には、変換テーブル181に存在する周辺座標で補間処理を行えばよい。
【0036】
また、ルックアップテーブル形式の変換テーブル181に限らず、他の手法を用いて第1像の座標値(x1R,y1R)と第2像の座標値(x2R,y2R)をボンディングポイントの三次元座標(XR,YR,ZR)へ変換してもよい。例えば、チャート400を用いて事前に得られた三次元座標(Xk,Yk,ZK)と二次元座標(x1k,y1k)、(x2k,y2k)の対応関係から多項式近時関数を求めておき、これにより(x1R,y1R)と(x2R,y2R)から(XR,YR,ZR)へ変換してもよい。このように、実測データに基づいて生成されるルックアップテーブルや多項式近時関数等を用いる場合には、実測データにレンズの収差や撮像ユニットの取付け誤差などの構成要素に起因する誤差要因が吸収されるので、より精度の高い三次元座標の算出を期待できる。
【0037】
一方で、実測データによらず、シャインプルーフの幾何条件や、2つの撮像素子間で規定される基線長等を用いて、算術的に変換式を求めてもよい。例えば、光学系や撮像素子の傾き角等の物理量をパラメータとする、台形像を矩形像へ変換する変換行列を定めておき、第1画像と第2画像に対してこの変換行列により台形補正を行う。そして、台形補正を行った2つの画像をステレオ画像として、互いの像の位置ずれ量から観察対象の三次元座標を算出する。このような手法によれば、チャート等を用いた事前の実測データの取得が省ける点において都合が良い。
【0038】
次に、ボンディング工程中におけるボンディングポイントの三次元座標の計測について説明する。図5は、ボンディングポイントの三次元座標計測を説明するための説明図である。具体的には、これから特定のパッド電極321にファーストボンディングを行う状況において、第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140から取得した第1画像と第2画像の例を模式的に示す図である。
【0039】
第1画像および第2画像には、パッド電極321の像であるパッド電極像321’とリード電極322の像であるリード電極像322’がそれぞれ複数写り込んでいる。これからファーストボンディングを行うパッド電極321は、ワイヤ310を供給すべくボンディングツール120を接近させる目標ポイントであり、その像であるパッド電極像321’を×印で示している。算出部172は、例えば当該パッド電極像321’の2つの対角線の交点を算出すべき座標値として、第1画像から(x1TA,y1TA)を、第2画像から(x2TA,y2TA)を算出する。算出部172は、これらの座標値のペアを変換テーブル181へ入力して、目標ポイントの三次元座標(XRTA,YRTA,ZRTA)を算出する。
【0040】
ファーストボンディングに続いてセカンドボンディングを行うリード電極322は、ボンディングツール120が目標ポイントからループを描いてワイヤ310を供給する後続ポイントであり、その像であるリード電極像322’を+印で示している。算出部172は、例えば当該リード電極像322’の2つの対角線の交点を算出すべき座標値として、第1画像から(x1TB,y1TB)を、第2画像から(x2TB,y2TB)を算出する。算出部172は、これらの座標値のペアを変換テーブル181へ入力して、後続ポイントの三次元座標(XRTB,YRTB,ZRTB)を算出する。
【0041】
ボンディング処理工程において、これから一つのループで結線するパッド電極321とリード電極322のそれぞれの三次元座標を、一組の第1画像と第2画像から纏めて算出すれば、精確な三次元座標の算出に加えて処理時間の短縮にも寄与する。また、ファーストボンディングとセカンドボンディングの間にボンディングツール120を撮像のために一旦停止する必要もないので、ボンディングツール120の円滑な移動も実現することができる。なお、本実施形態においては、これから一つのループで結線する一組のパッド電極321とリード電極322のそれぞれの三次元座標を纏めて算出する手法を採用するが、それぞれに撮像工程を実行して別個に算出してもよい。また、一度の撮像工程で得られた第1画像と第2画像に写り込むパッド電極像321’とリード電極像322’のすべてを対象として、それぞれのパッド電極321とリード電極322の三次元座標を予め纏めて算出してもよい。
【0042】
第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140から取得される第1画像と第2画像は、三次元座標の算出に利用する場合に限らず、例えば、ボンディング工程の適否を評価する場合にも利用し得る。図6は、ボンディング工程の適否評価を説明するための説明図である。具体的には、ファーストボンディングの対象であるパッド電極321へ向けてボンディングツール120を高速に降下させ、FABがパッド電極321に接触する直前に低速降下に切り替えられたタイミングで撮像された第1画像と第2画像の例を模式的に示す図である。
【0043】
上述のように、第1撮像ユニット130の第1光学系131と第2撮像ユニット140の第2光学系141のそれぞれは一定の被写界深度を有する。したがって、パッド電極321に接近するFABの像であるFAB像311’や、すでに結線を終えたワイヤ310の接合端の像であるパッド接合端像312’、リード接合端像313’を合焦状態で一画像に撮像することができる。
【0044】
そこで、評価部174は、このような画像を用いてボンディング工程の適否を評価する。具体的には、一つ目の適否評価として、ファーストボンディングポイントであるパッド電極321へ接触する前の、ワイヤ310の先端部に生成されたFABの像であるFAB像311’を評価する。例えば、FAB像311’の輪郭を抽出することにより、ワイヤ310幅に対するFAB径が規定の割合に収まっているかについて評価する。また、FAB像311’を二値化することにより、表面に不純物が付着していないかについて評価する。
【0045】
評価部174は、評価項目に応じて第1画像と第2画像のいずれかを用いるか、両方を用いるかを決定する。例えば、表面に不純物が付着していないかについて評価する場合には、第1画像のFAB像311’と第2画像のFAB像311’は、互いに反対方向から観察される表面の像であるので両画像を用いてそれぞれで評価を行う。評価部174が観察されたFABを良好と評価した場合には、駆動制御部173は、ファーストボンディングをそのまま実行する。一方、評価部174が観察されたFABを不良と評価した場合には、駆動制御部173は、ファーストボンディングをキャンセルし、ボンディングツール120を退避させて一連のボンディング工程を一時停止する。
【0046】
二つ目の適否評価として、ワイヤ310を固着させた後のボンディングポイントの像である固着像を評価する。具体的には、パッド接合端像312’とリード接合端像313’を評価する。例えば、パッド接合端像312’とパッド電極像321’のそれぞれの輪郭を抽出することにより、パッド接合端がパッド電極321からはみ出ていないか、さらには中心位置から偏位していないかについて評価する。同様に、リード接合端像313’とリード電極像322’のそれぞれの輪郭を抽出することにより、リード接合端がリード電極322からはみ出ていないか、さらには中心位置から偏位していないかについて評価する。評価部174がそれぞれの接合端を良好と評価した場合には、駆動制御部173は、ボンディング工程をそのまま実行する。一方、評価部174が少なくともいずれかの接合端を不良と評価した場合には、駆動制御部173は、ボンディングツール120を退避させて一連のボンディング工程を一時停止する。
【0047】
ここでは、2つの適否評価について説明したが、評価部174は、これらの画像を用いて他の適否評価を行ってもよい。画像取得部171は、評価部174が行う適否評価の項目に応じたタイミングで第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140へ撮像信号を送信し、第1画像と第2画像を取得する。
【0048】
次に、ワイヤボンダ100による一連のボンディング処理について説明する。図7は、演算処理部170の処理手順を説明するフロー図である。ここでは、一組のパッド電極321とリード電極322を結線する処理手順に限って説明し、また、図6を用いて説明した適否評価については省略する。
【0049】
駆動制御部173は、ステップS101で、ヘッド部110を基準位置へ移動させる駆動信号をヘッド駆動モータ150へ送信する。ヘッド駆動モータ150は、駆動信号を受けて、ヘッド部110を基準位置へ移動させる。ここで、基準位置は、ファーストボンディングポイントである電極321の直上近傍にボンディングツール120が位置すると想定される位置である。ヘッド部110が基準位置に位置すれば、第1撮像ユニット130および第2撮像ユニット140は、当該電極321と共にセカンドボンディングポイントであるリード電極322を合焦状態で一画像に撮像することができる。
【0050】
ヘッド部110が基準位置に到達したら、画像取得部171は、ステップS102で、第1撮像ユニット130と第2撮像ユニット140へ撮像要求信号を送信し、第1画像データと第2画像データを取得する。画像取得部171は、取得した画像データを算出部へ引き渡す。
【0051】
算出部172は、ステップS103で、画像取得部171から受け取った第1画像データの第1画像から対象となるパッド電極像321’を見つけ出し、ファーストボンディングポイントの座標(x1TA,y1TA)を抽出する。同様に、画像取得部171から受け取った第2画像データの第2画像から対象となるパッド電極像321’を見つけ出し、ファーストボンディングポイントの座標(x2TA,y2TA)を抽出する。続くステップS104で、算出部172は、当該第1画像から対象となるリード電極像322’を見つけ出し、セカンドボンディングポイントの座標(x1TB,y1TB)を抽出する。同様に、当該第2画像から対象となるリード電極像322’を見つけ出し、セカンドボンディングポイントの座標(x2TB,y2TB)を抽出する。
【0052】
算出部172は、ステップS105へ進み、変換テーブル181を参照して(x1TA,y1TA)と(x2TA,y2TA)のペアに対応する三次元座標(XRTA,YRTA,ZRTA)を目標ポイント(ファーストボンディングポイント)の三次元座標として得る。続くステップS106で、算出部172は、同様に変換テーブル181を参照して(x1TB,y1TB)と(x2TB,y2TB)のペアに対応する三次元座標(XRTB,YRTB,ZRTB)を後続ポイントの三次元座標として得る。なお、ステップS103の処理に続いてステップS105の処理を行い、ステップS104の処理に続いてステップS106の処理を行ってもよい。
【0053】
駆動制御部173は、ステップS107で、目標ポイントの三次元座標(XRTA,YRTA,ZRTA)を接近目標として定め、水平位置の誤差を調整すべく、ヘッド駆動モータ150へ駆動信号を送信する。これにより、ボンディングツール120の中心は、水平面において(XRTA,YRTA)へ配置される。次に、駆動制御部173は、ステップS108で、算出されたZ=ZRTAに基づきボンディングツール120をFABがパッド電極321と接触するまでボンディングツール120を目標ポイントへ接近させる。ここで、算出されたZRTAから、ボンディングツール120の降下量は精確に把握されているので、駆動制御部173は、FABがパッド電極321と接触する直前まで高速でボンディングツール120を降下させてもよい。
【0054】
FABがパッド電極321と接触する位置までボンディングツール120が降下されたら、ステップS109へ進み、演算処理部170は、ボンディング処理を実行する。具体的には、クランパを緩めてキャピラリの先端部をFABに押し付けて加熱、加振する。
【0055】
ファーストボンディングの処理が完了したらステップS110へ進み、駆動制御部173は、キャピラリから吐出されるワイヤ310がループを描くようにボンディングツール120を変位させ、キャピラリの先端のワイヤ310がリード電極322と接触するまでボンディングツール120を後続ポイント(セカンドボンディングポイント)へ接近させる。このとき、駆動制御部173は、高さ方向の位置調整のためにボンディングツール120を上下させると共に、水平方向の位置調整のためにヘッド部110またはステージ220の少なくともいずれかを水平移動させる。
【0056】
キャピラリの先端のワイヤ310がリード電極322と接触したら、ステップS111へ進み、演算処理部170は、ボンディング処理を実行する。具体的には、キャピラリの先端部をワイヤ310に押し付けて加熱、加振する。ボンディング処理が完了したら、ステップS112へ進み、演算処理部170はクランパをクランプ状態にし、駆動制御部173はボンディングツール120を上昇へ退避させる。これにより、ワイヤ310はリード接合端で切断され、一本の結線処理が終了する。
【0057】
以上、ボンディング装置の一例としてワイヤボンダ100を説明したが、本実施形態に係る三次元座標の算出手法や構成を適用し得るボンディング装置は、2つのボンディングポイントをワイヤで接続するワイヤボンダ100の例に限らない。例えば、基板上の複数の電極上のそれぞれにバンプを形成するバンプボンダにも適用し得る。バンプボンダの場合は、それぞれの電極をボンディングポイントとして三次元座標を算出し、当該三次元座標に基づいてバンプを形成するためのボンディングツールを駆動制御すればよい。また、一度の撮像工程で得られた両画像に写り込む複数の電極に対し、これからバンプを形成する電極を目標ポイント、次にバンプを形成する電極を後続ポイントとして、纏めて三次元座標の算出を行ってもよい。
【符号の説明】
【0058】
100…ワイヤボンダ、110…ヘッド部、120…ボンディングツール、130…第1撮像ユニット、131…第1光学系、131a…物側レンズ群、131b…像側レンズ群、132…第1撮像素子、133…絞り、140…第2撮像ユニット、141…第2光学系、142…第2撮像素子、150…ヘッド駆動モータ、160…ツール駆動モータ、170…演算処理部、171…画像取得部、172…算出部、173…駆動制御部、180…記憶部、181…変換テーブル、190…入出力デバイス、210…架台、220…ステージ、310…ワイヤ、311’…FAB像、312’…パッド接合端像、313’…リード接合端像、320…半導体チップ、321…パッド電極、321’…パッド電極像、322…リード電極、322’…リード電極像、330…基板、400…チャート、400’…チャート像、410…ドット、410’…ドット像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7