(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】3次元形状計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
G01B11/25 H
(21)【出願番号】P 2024066447
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2024023862
(32)【優先日】2024-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300074101
【氏名又は名称】株式会社レイマック
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】永谷 弘之
(72)【発明者】
【氏名】畑辺 真也
(72)【発明者】
【氏名】光藤 淳
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-212159(JP,A)
【文献】特開2008-281491(JP,A)
【文献】特開2011-242178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンを物品に投影する投影部と、
所定個の画素を有し前記物品を撮影して撮影画像を得る撮影部と、
前記投影部と前記撮影部が固定される支持体と、
を備える3次元計測装置を用いて、
校正時には、
任意の箇所のx軸、y軸座標値が特定可能な2次元パターンが表示される表面と無地の表面を切り換えることができる校正用物品を前記物品として用い、
前記支持体又は前記校正用物品が所定のz軸方向の複数個の位置に移動した各位置において、前記縞パターンの各々が前記校正用物品の前記無地の表面に投影された1組の前記撮影画像から位相シフト法を用いて前記画素ごとの位相値を導出しその位相値とz軸座標値を1対1で対応付けた位相-座標テーブルを作成し、
複数個の位置において、前記校正用物品の前記2次元パターンが表示される表面の撮影画像上で複数個の座標値抽出点のX軸、Y軸座標値を抽出し、
前記複数個の座標値抽出点のX軸、Y軸座標値とピンホールカメラモデルで算出したX軸、Y軸座標値の誤差を小さくするように、該ピンホールカメラモデルのカメラパラメータを変数とする反復法を行うことによって該カメラパラメータを校正し、
3次元形状計測時には、
計測物品を前記物品として用い、
前記支持体の前記z軸方向の位置を固定して、前記縞パターンの各々が投影された前記計測物品の1組の前記撮影画像から位相シフト法を用いて前記画素ごとの位相値を導出し、その位相値に対応するz軸座標値を前記位相-座標テーブルを参照して導出し、かつ、校正した前記カメラパラメータの前記ピンホールカメラモデルにより前記画素ごとにz軸座標値に対応するx軸、y軸座標値を算出することにより、該計測物品の3次元形状の計測を行う3次元形状計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元形状計測方法において、
前記投影部は、各々の点灯及び光の放射強度が制御され一列に並んだ複数個の光源及びそれらからの光を縞パターンにして通過させる縞パターン形成光学素子を有し、前記複数個の光源の各々が順次点灯することにより順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンを物品に投影し、
前記校正時と前記3次元形状計測時には、z軸方向を略鉛直方向とする3次元形状計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の3次元形状計測方法において、
前記校正用物品は、前記2次元パターンが表示される表面と前記無地の表面をスライドさせて切り換えることができる平板、又は任意の箇所のx軸、y軸座標値が特定可能な2次元パターンが表示される表面の平板と無地の表面の平板を切り換えることができるもの、又は任意の箇所のx軸、y軸座標値が特定可能な2次元パターンが表示される表面と無地の表面を表裏に有する平板、である3次元形状計測方法。
【請求項4】
請求項2に記載の3次元形状計測方法において、
前記校正用物品は、物品検査ラインに配置されており、前記計測物品は、該物品検査ラインに配置されている3次元形状計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト法を用いた3次元形状計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の3次元形状を非接触で計測するものとして、位相シフト法を用いた3次元形状計測方法が知られている。この3次元形状計測方法では、正弦波状に変化する縞パターンを物品の表面に投影部で投影しそれを撮影部で撮影するプロセスを、順次縞パターンの位相を所定角度(例えば、π/2或いは2π/3など)ずつシフトさせて1組(例えば、4枚或いは3枚など)の撮影画像を得る。そして、1組の撮影画像の画像処理を行って画素ごとに位相値を導出しその位相値に対応する3次元座標値を導出することにより、物品の3次元形状の計測が行われる。
【0003】
このような3次元形状計測方法の中には、特許文献1や特許文献2などに開示されているように、校正(キャリブレーション)時に撮影画像の画素ごとに位相値に対応する3次元座標値を示す位相-座標テーブルを作成しておいて、3次元形状計測時に位相シフト法などにより画素ごとに位相値を求め位相-座標テーブルを参照して3次元座標値を求めることで、3次元形状計測時に高精度で高速な計測を可能にするものが知られている。この位相-座標テーブルは、2次元格子など任意の箇所のx軸、y軸座標値が特定可能な2次元パターンが表示される基準平板をz軸方向(基準平板の法線方向)に少しずつ移動させ、z軸方向の各位置において撮影画像の画素ごとのx軸、y軸座標値を求め、更に位相シフト法などにより位相値を求めることで、画素ごとに位相値と3次元座標値(x軸、y軸、z軸座標値)を1対1で対応付けたものとすることができる。
【0004】
なお、上記投影部については、特許文献1に記載されているようなプロジェクタを用いるものや、特許文献2に記載されているような一列に並んだ複数個の光源及びそれらからの光を格子模様(縞パターン)にして通過させる格子模様プレート(縞パターン形成光学素子)を用いるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-281491号公報
【文献】特開2011-242178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画素ごとに位相値と3次元座標値(x軸、y軸、z軸座標値)を1対1で対応付けた位相-座標テーブルは、計測する物品の大きさや必要とされる精度などによっては画素の数が多くなることが有るために、データ量が膨大になることが起こる。一方、位相-座標テーブルのデータ量が膨大になると、物品検査ラインに配置された商品(計測物品)の3次元座標値を求めて3次元形状を計測するとき(3次元形状計測時に)、位相-座標テーブルを参照する時間が長くなり、検査において高速性が損なわれることがある。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮影画像の画素の数が多くなっても、画素ごとに位相-座標テーブルを参照して位相シフト法を用いた高速な3次元形状計測が可能な3次元形状計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の3次元形状計測方法は、順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンを物品に投影する投影部と、所定個の画素を有し前記物品を撮影して撮影画像を得る撮影部と、前記投影部と前記撮影部が固定される支持体と、を備える3次元計測装置を用いて、校正時には、任意の箇所のx軸、y軸座標値が特定可能な2次元パターンが表示される表面と無地の表面を切り換えることができる校正用物品を前記物品として用い、前記支持体又は前記校正用物品が所定のz軸方向の複数個の位置に移動した各位置において、前記縞パターンの各々が前記校正用物品の前記無地の表面に投影された1組の前記撮影画像から位相シフト法を用いて前記画素ごとの位相値を導出しその位相値とz軸座標値を1対1で対応付けた位相-座標テーブルを作成し、複数個の位置において、前記校正用物品の前記2次元パターンが表示される表面の撮影画像上で複数個の座標値抽出点のX軸、Y軸座標値を抽出し、前記複数個の座標値抽出点のX軸、Y軸座標値とピンホールカメラモデルで算出したX軸、Y軸座標値の誤差を小さくするように、該ピンホールカメラモデルのカメラパラメータを変数とする反復法を行うことによって該カメラパラメータを校正し、3次元形状計測時には、計測物品を前記物品として用い、前記支持体の前記z軸方向の位置を固定して、前記縞パターンの各々が投影された前記計測物品の1組の前記撮影画像から位相シフト法を用いて前記画素ごとの位相値を導出し、その位相値に対応するz軸座標値を前記位相-座標テーブルを参照して導出し、かつ、校正した前記カメラパラメータの前記ピンホールカメラモデルにより前記画素ごとにz軸座標値に対応するx軸、y軸座標値を算出することにより、該計測物品の3次元形状の計測を行う。
【0009】
請求項2に記載の3次元形状計測方法は、請求項1に記載の3次元形状計測方法において、前記投影部は、各々の点灯及び光の放射強度が制御され一列に並んだ複数個の光源及びそれらからの光を縞パターンにして通過させる縞パターン形成光学素子を有し、前記複数個の光源の各々が順次点灯することにより順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンを物品に投影し、前記校正時と前記3次元形状計測時には、z軸方向を略鉛直方向とする。
【0010】
請求項3に記載の3次元形状計測方法は、請求項1又は2に記載の3次元形状計測方法において、前記校正用物品は、前記2次元パターンが表示される表面と前記無地の表面をスライドさせて切り換えることができる平板、又は任意の箇所のx軸、y軸座標値が特定可能な2次元パターンが表示される表面の平板と無地の表面の平板を切り換えることができるもの、又は任意の箇所のx軸、y軸座標値が特定可能な2次元パターンが表示される表面と無地の表面を表裏に有する平板、である。
【0011】
請求項4に記載の3次元形状計測方法は、請求項2に記載の3次元形状計測方法において、前記校正用物品は、物品検査ラインに配置されており、前記計測物品は、該物品検査ラインに配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の3次元形状計測方法によれば、撮影画像の画素の数が多くなっても、3次元形状計測時に画素ごとに位相-座標テーブルを参照して位相シフト法を用いた高速な3次元形状計測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る3次元形状計測方法に用いる3次元形状計測装置の3次元形状計測時の概略を縮小して示す正面図である。
【
図2】同上の3次元形状計測装置の投影部と撮影部と支持体を示す正面図である。
【
図3】同上の3次元形状計測装置における投影部を構成する各部を示すものであって、(a)が複数個の光源の底面図、(b)が複数個の光源及び縞パターン形成光学素子を収容した投影部ケースの底面図である。
【
図4】同上の3次元形状計測装置における投影部の複数個の光源の回路図である。
【
図5】同上の3次元形状計測装置における縞パターン形成光学素子の縦方向中央近傍を横方向に切断した正面視断面図であって、(a)が縞状に規則正しく複数個の通過部分が形成された例のもの、(b)が規則正しく複数個のシリンドリカルレンズが形成された例のものである。
【
図6】同上の3次元形状計測装置の投影及び撮影のタイミングを簡略化して示す波形図である。
【
図7】同上の3次元形状計測装置の3次元形状計測処理部をコンピュータによって実現したときのブロック図である。
【
図8】同上の3次元形状計測方法に用いる3次元形状計測装置の校正時の概略を縮小して示す正面図である。
【
図9】同上の3次元形状計測装置における校正用物品の2次元パターンが表示される表面の撮影画像の写真である。
【
図10】同上の3次元形状計測装置における校正用物品の無地の表面の1組の撮影画像の写真である。
【
図11】同上の3次元形状計測装置における計測物品の1組の撮影画像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る3次元形状計測方法に用いる3次元形状計測装置1は、
図1及び
図2に示すように、投影部2と撮影部3と支持体4を備えている。また、3次元形状計測装置1は、
図1に示すように、投影制御部5と3次元形状計測処理部6を備えている。
【0015】
投影部2は、順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンP1、P2、P3、P4を物品Mに投影する。投影部2から放射される縞パターンP1、P2、P3、P4は、光の放射強度が正弦波状に変化するものとなる。シフトする位相の所定角度は、本実施形態ではπ/2であるが2π/3などとすることも可能である。
【0016】
投影部2は、プロジェクタを用いることも可能であるが、本実施形態では、複数個(具体的には4個)の光源21A、21B、21C、21Dと縞パターン形成光学素子22を有するようにしている。特に言及をしなければ、投影部2は、複数個の光源21A、21B、21C、21Dと縞パターン形成光学素子22を有するものとする。複数個の光源21A、21B、21C、21Dと縞パターン形成光学素子22は、投影部ケース23に収容することができる。なお、光源の個数は、上記のシフトする位相の所定角度に応じたものであって、本実施形態ではシフトする位相の所定角度がπ/2なので4個である。シフトする位相の所定角度が2π/3ならば3個となる。
【0017】
複数個の光源21A、21B、21C、21Dは、一列(横方向に一列)に並んでいる。複数個の光源21A、21B、21C、21Dの各々は、
図3(a)に示すように、縦方向に一列に並んだ複数個(本実施形態では6個)の発光素子210で構成することができる。複数個の発光素子210は、回路的には、並列又は直列或いはそれらが組み合わせられて接続されており、例えば、
図4に示すように、光源21A、21B、21C、21Dの各々について全てが直列に接続されるようにすることができる。
【0018】
なお、
図4において、符号211で示すものは電流制限用の抵抗である。また、符号21Aa、21Ba、21Ca、21Daで示すものは電流流入端子であり、符号21Ab、21Bb、21Cb、21Dbで示すものは電流流出端子である。電流流入端子21Aa、21Ba、21Ca、21Daと電流流出端子21Ab、21Bb、21Cb、21Dbのどちらか一方は、複数個をまとめて共通に(1個に)することも可能である。
【0019】
縞パターン形成光学素子22は、複数個の光源21A、21B、21C、21Dからの光を縞パターンにして通過させる。縞パターン形成光学素子22は、
図3(b)及び
図5(a)に示すように、縞状(格子状)に規則正しく複数個の通過部分22aが形成されている。複数個の通過部分22aにおいて、複数個の光源21A、21B、21C、21Dからの光を通過させる。複数個の通過部分22a以外は、光を通過させない遮蔽部分22bである。本実施形態では、縞パターン形成光学素子22は、投影部ケース23の前面の後方に接近して配置されており、また、投影部ケース23の前面には、開口部23aが形成されている。縞パターン形成光学素子22の複数個の通過部分22aを通過した光は、開口部23aを通って投影部2の外部に放射される。なお、
図3(b)及び
図5(a)においては、縞パターン形成光学素子22の遮蔽部分22bは、理解を容易にするために黒で塗りつぶしている。
【0020】
縞パターン形成光学素子22は、縞状に規則正しく複数個の通過部分22aが形成されているものの他に、
図5(b)に示すように、規則正しく複数個のシリンドリカルレンズ22cが形成されているものを用いることも可能である。複数個のシリンドリカルレンズ22cの各々は、凸レンズになっており、光を屈折させ集光して外部に放射する。それにより、この縞パターン形成光学素子22を通過した光は、縞パターンになる。このようなシリンドリカルレンズ22cが形成されている縞パターン形成光学素子22では、光が全て通過するので放射される光の量を多くすることができる。
【0021】
投影部2は、複数個の光源21A、21B、21C、21Dが順次点灯することにより、順次所定角度ずつ位相がシフトした縞パターンP1、P2、P3、P4を物品Mに投影する。この投影部2は、動作としては複数個の光源21A、21B、21C、21Dが順次点灯するだけなので、位相をシフトさせた縞パターンの高速な投影が可能であり、小型化及び軽量化が可能である。
【0022】
撮影部3は、所定個の画素を有し、物品Mを撮影する。
【0023】
支持体4は、投影部2と撮影部3が固定され、それらを支持する部材である。支持体4は、形状が特に限定されるものではないが、例えば、投影部2と撮影部3を支持するのに足る大きさの板材などを用いることができる。支持体4は、後述する校正時には、物品M(つまり、物品Mが配置される物品配置部材4C)に対してz軸方向に自在に移動できる。例えば、支持体4は、スライダー部材4Aに固定されることができ、スライダー部材4Aは、z軸方向に延びるリニアガイド部材4Bのz軸方向に自在に電動又は手動で移動でき、任意の位置で固定されることができる。
【0024】
ここで、投影部2は、上記のように、複数個の光源21A、21B、21C、21Dと縞パターン形成光学素子22を用いたものとすると、小型化及び軽量化が可能であり、この小型化及び軽量化により、略鉛直方向(高さ方向)をz軸方向として、撮影部3とともに支持体4に支持させて容易に物品Mに対して支持体4をz軸方向に移動することができる。そうすると、後述するように、校正時に物品Mとして校正用物品M1が配置される物品配置部材4Cを3次元形状計測時に物品Mとして計測物品M2が配置される物品検査ラインLと同じにすることが可能になる。この場合、当然ではあるが、校正時には、物品配置部材4Cとしての物品検査ラインLは静止している。
【0025】
なお、投影部2がプロジェクタを用いたものの場合、或いは、複数個の光源21A、21B、21C、21Dと縞パターン形成光学素子22を用いたものでも、校正時に略鉛直方向をz軸方向として物品M(校正用物品M1)に対して移動するには小型化又は軽量化が十分でないなどの場合には、以下のようにすることが可能である。すなわち、略鉛直方向以外の方向(例えば、略水平方向)をz軸方向として、投影部2と撮影部3を支持体4に支持させて物品Mに対して支持体4をz軸方向に移動するようにすることが可能である。或いは、支持体4の移動の代わりに物品M(校正用物品M1)(より詳細には、例えば、校正用物品M1が配置された物品配置部材4C)を、略鉛直方向又は略鉛直方向以外の方向(例えば、略水平方向)をz軸方向として、z軸方向に移動して、移動した位置から支持体4までの位置を支持体4が移動した位置と同様に扱うことも可能である。
【0026】
投影制御部5は、投影部2の投影及び光の放射強度を制御するものである。投影制御部5は、複数個の光源21A、21B、21C、21Dを用いる場合、それらの各々の点灯及び光の放射強度を制御する。
【0027】
詳細には、
図6に示すように、トリガー信号TRに同期した投影期間Taに、複数個の光源21A、21B、21C、21Dの1個ずつに順次電流I
A、I
B、I
C、I
D(
図4参照)を供給して光を放射させる。投影期間Taは、予め設定された長さである。電流の供給は、PWMのパルス電流又は定電流又は定電圧の電流を用いることができる。例えば、PWMのパルス電流の場合、PWMの周期Tbは、予め設定された長さである。PWMのパルス幅Tc
A、Tc
B、Tc
C、Tc
Dは、光源21A、21B、21C、21Dの各々について制御され得、その幅を広くすると光の放射強度が高くなり、狭くすると光の放射強度が低くなることで複数個の光源21A、21B、21C、21Dの光の放射強度の調整が可能である。なお、投影期間Taは、撮影部3における露光期間Td(
図6において信号EXは露光のタイミングを示すものである)と同期している。また、
図6においては、上記の周期Tb及びパルス幅Tc
A、Tc
B、Tc
C、Tc
Dは、理解し易いように、拡大して示している。
【0028】
3次元形状計測処理部6は、撮影部3が得た撮影画像の画像処理を行う。
【0029】
3次元形状計測処理部6は、具体的には、例えば、
図7に示すように、CPU6a、ハードディスクや不揮発性メモリなどの補助記憶装置6b、メインメモリ(ワークメモリ)6c、入出力インターフェイス6d(
図7では入出力端子を省略)などから構成されるコンピュータによって実現することができる。補助記憶装置6bの中に、校正時の画像処理を行う校正画像処理プログラム6baや3次元形状計測時の画像処理を行う3次元形状計測画像処理プログラム6bbが記憶されているようにしそれぞれの実行時にメインメモリ6cに移して実行することができる。また、補助記憶装置6bの中に、後述する位相-座標テーブルの記憶領域6bcとカメラパラメータの記憶領域6bdを設けることができる。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係る3次元形状計測方法における3次元形状計測装置1の校正(キャリブレーション)について説明する。ここでは、3次元形状計測装置1の校正とは、後述する3次元形状計測時に位相シフト法を用いて撮影画像の画素ごとに得られる位相値θから、その画素に対応するz軸座標値(物品M(計測物品M2)の3次元座標値(x軸、y軸、z軸座標値)のうちのz軸座標値)を導出するときに参照する位相-座標テーブルを作成すること、及び、導出したz軸座標値からx軸、y軸座標値を導出するときに用いるカメラパラメータを校正すること、を言う。
【0031】
校正時には、
図8に示すように、校正用物品M1を物品Mとして用いる。校正用物品M1は、撮影部3に対して、任意の箇所のx軸、y軸座標値が特定可能な2次元パターンが表示される表面M1aと無地(どのようなパターンも表示されていない)の表面M1bを切り換えることができる平板である。2次元パターンは、例えば、チェッカーパターン(2色の一定の大きさの四角形が交互に2次元状に配されたもの)、ドットパターン(ドットが一定のピッチで2次元状に配されたもの)、2次元格子パターン(x軸方向とy軸方向に一定の間隔で複数本の平行線が並んだもの)など規則的なパターンとすることができる。
【0032】
校正用物品M1は、2次元パターンが描かれた表面M1aと無地の表面M1bを表裏に有する平板を用いて、手動で表裏を変えられるようにするのが好ましい。そうすると、2次元パターンが描かれた表面M1aと無地の表面M1bの間で平板の厚みは必然的に一定であり、2次元パターンが描かれた表面M1aと無地の表面M1bを容易に精密に平坦にできる。また、2次元パターンは、容易にくっきり描くことができる。このように、高精度の校正が可能となる。
【0033】
また、校正用物品M1は、2次元パターンが描かれた表面M1aの平板と無地の表面M1bの平板の2個の部材で構成されそれらが手動で切り換えられるようにすることができる。また、同一平面上に2次元パターンが描かれた表面M1aの部分と無地の表面M1bの部分を有しそれらの部分が電動又は手動でスライドして切り換え可能な平板を用いることができる。これらのようにすると、2次元パターンが描かれた表面M1aと無地の表面M1bの間で平板の厚みを容易に精密に一定にでき、2次元パターンが描かれた表面M1aと無地の表面M1bを容易に精密に平坦にできる。また、2次元パターンは、容易にくっきり描くことができる。このように、高精度の校正が可能となる。
【0034】
また、表面M1aとして2次元パターンが表示可能であり、かつ、表面M1bとしてどのようなパターンも表示されないようにすることが可能な液晶表示装置を用いることも可能である。
【0035】
支持体4(又は、校正用物品M1)は、初期位置(z=0)から順に所定のz軸方向の複数個の位置に移動させられる。例えば、初期位置を支持体4が最も校正用物品M1から離れた位置とし、それから支持体4が校正用物品M1に近づくにつれてz軸方向の値が増加するようにすることができる。
【0036】
位相-座標テーブルの作成は、以下のようにして行う。
【0037】
初期位置を含めたz軸方向の複数個の位置(例えば、1mmごとの位置)で、校正用物品M1の無地の表面M1bに正弦波状に変化する縞パターンP1、P2、P3、P4を投影部2で順次投影しそれを撮影部3で撮影して、1組の撮影画像を得る。1組の撮影画像は、本実施形態では4枚である。なお、光源の個数を3個とした場合は、3枚となる。このときの1組の撮影画像は、
図10(a)~(d)に示すように、縞パターンP1、P2、P3、P4の各々が歪みなく規則正しいものとなっている。
【0038】
そして、3次元形状計測処理部6は、1組の撮影画像から位相シフト法を適用して画素ごとの位相値θを導出する。位相シフト法は、公知の方法なので詳細な説明は省略するが、例えば、光源の個数が4個の場合は、I1、I2、I3、I4をそれぞれ縞パターンP1、P2、P3、P4の輝度値とすると、画素ごとの位相値θは次式で導出することができる。
tanθ=(I4-I2)/(I1-I3)
【0039】
このようにして、所定の複数個のz軸座標値について画素ごとに位相値θとz軸座標値を1対1で対応付けた位相-座標テーブルを作成することができる。位相-座標テーブルは、3次元形状計測処理部6の補助記憶装置6bの中に記憶しておくことができる。
【0040】
次に、カメラパラメータの校正について説明する。カメラパラメータは、物品Mの位置(実際の位置)(3次元座標値)と撮影画像上での位置(2次元座標値)の数学的関係を表した変数である。数学的関係は、採用するカメラモデルに応じたものとなる。この中で、ピンホールカメラモデルは、典型的なカメラモデルとして知られている。
【0041】
カメラパラメータの校正は、具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0042】
複数個の位置で、校正用物品M1の2次元パターンが表示される表面M1aを撮影部3で撮影することで、カメラパラメータの校正のために、複数個の点(座標値抽出点)で校正用物品M1の実際のx軸、y軸座標値に対応する撮影画像上でのX軸、Y軸座標値のデータを抽出する。このとき、投影部2は動作させない。なお、座標値抽出点で校正用物品M1の実際のx軸、y軸座標値は、既知である。また、本実施形態では、この複数個の位置(撮影部3が撮影する複数個の位置)は、z軸方向を変えた複数個の位置である。z軸方向の複数個の位置は、初期位置を含めることができ、また、位相-座標テーブルを作成するときのz軸方向の複数個の位置と一致させる必要はなく、例えば、5mmごとの位置とすることも可能である。
【0043】
座標値抽出点は、例えば、撮影部3が撮影した校正用物品M1の2次元パターンが
図9(a)に示すようなチェッカーパターンの場合は四角形の角の点、
図9(b)に示すようなドットパターンの場合はドットの中心点、
図9(c)に示すような2次元格子パターンの場合は平行線の交点、とすることができる。なお、座標値抽出点の撮影画像上でのX軸、Y軸座標値は、その詳細な求め方は本願の要旨ではないので説明は省略するが、画素値の勾配処理により、サブピクセル精度とすることができる。複数個の座標値抽出点の撮影画像上でのX軸、Y軸座標値は、z軸方向を変えた複数個の位置(つまりは、z軸座標値)ごとに番号付けをして補助記憶装置6b又はメインメモリ6cの中に一旦保存しておくことができる。
【0044】
ピンホールカメラモデルでは、撮影画像上でのX軸、Y軸座標値と校正用物品M1の実際のx軸、y軸、z軸座標値の関係は、射影行列Pを用いた以下の(1)式、関数g
X、g
Yを用いた以下の(2(1))式及び(2(2))式で表すことができる。
(1)式において、Pは3×4の行列であり、sは左辺の第3成分が1になるように定めた係数である。(2(1))式及び(2(2))式における関数g
X、g
Yは、レンズの歪曲収差を表した関数である。
【0045】
(1)式は、P=ABとすると、以下の(3)式で表すことができる。
(3)式において、Aは、撮影部3のおける光学的中心及び焦点距離を表す内部カメラパラメータの行列であり、Bは、物品Mと撮影部3の間の平行移動と回転を含む位置関係を表す外部カメラパラメータの行列である。Aは3×4の行列、Bは4×4の行列である。
【0046】
Bは、例えば、以下のような(4)式で表されるものとすることができる。
(4)式において、a
11、a
12、a
13、a
21、a
22、a
23、a
31、a
32、a
33は、回転の位置関係を表す外部カメラパラメータであり、a
14、a
24、a
34は、平行移動の位置関係を表す外部カメラパラメータの行列である。
【0047】
(2(1))式及び(2(2))式における関数g
X、g
Yは、非線形な関数である。関数g
X、g
Yは、特に限定されるものではないが、例えば、レンズの放射状歪みのみを考慮すると、簡単な関数として以下の(5(1))式及び(5(2))式で与えられるようにすることができる。
ここで、κは歪み係数のカメラパラメータである。
【0048】
ピンホールカメラモデルでのカメラパラメータの校正は、複数個の座標値抽出点において、撮影画像上でのX軸、Y軸座標値(具体的には、z軸座標値ごとに番号付けをして一旦保存しておいたもの)とピンホールカメラモデル(具体的には、(1)式、(2(1))式及び(2(2))式)で算出した撮影画像上でのX軸、Y軸座標値との誤差(二乗平均平方根(RMS)の値)を小さくするように、カメラパラメータを変数とする反復法を行うことによって行うことができる。この場合、反復するとき全てのカメラパラメータの変化の大きさが規定精度の値を下回ったら収束したものとして反復を終了することができる。
【0049】
こうして校正したカメラパラメータは、補助記憶装置6bの中に記憶しておくことができる。
【0050】
なお、カメラパラメータの校正は、上記の他、様々な方法が可能であり、例えば、回転と平行移動を含めた複数個の位置で撮影してカメラパラメータを求める方法(Zhangの方法として知られている方法)が可能である。この場合も、上記と同様に、複数個の位置において、校正用物品M1の2次元パターンが表示される表面の撮影画像上で複数個の座標値抽出点のX軸、Y軸座標値を抽出し、複数個の座標値抽出点のX軸、Y軸座標値とピンホールカメラモデルで算出したX軸、Y軸座標値の誤差を小さくするように、ピンホールカメラモデルのカメラパラメータを変数とする反復法を行うことによってカメラパラメータを校正することが可能である。
【0051】
次に、本発明の実施形態に係る3次元形状計測方法における3次元形状計測について説明する。
【0052】
3次元形状計測時には、計測物品M2を物品Mとして用いる(
図1参照)。3次元形状計測時には、校正された3次元形状計測装置1は、物品検査ラインLに配置されており、物品検査ラインLに次々に流れて来る計測物品M2を検査する。支持体4は、z軸方向の位置が固定(例えば、z=0の位置に固定)される。典型的には、物品検査ラインLをベルトコンベアとし、略鉛直方向(高さ方向)をz軸方向として、物品検査ラインLに載せられて次々に流れて来る計測物品M2を検査することができる。なお、通常、位相-座標テーブルとカメラパラメータは、3次元形状計測の開始時に補助記憶装置6bからメインメモリ6cに移しておく。
【0053】
そして、校正時の校正用物品M1の無地の表面M1bのときと同様に、計測物品M2に正弦波状に変化する縞パターンP1、P2、P3、P4を投影部2で順次投影しそれを撮影部3で撮影して、1組の撮影画像を得る。このときの1組の撮影画像は、
図11(a)~(d)に示すように、計測物品M2の立体形状(
図11(a)~(d)では切妻形状)に応じて縞パターンP1、P2、P3、P4の各々に歪みが生じたものとなっている。
【0054】
そして、3次元形状計測処理部6は、校正時の校正用物品M1の無地の表面M1bのときと同様にして、1組の撮影画像から位相シフト法を適用して画素ごとの位相値θを導出する。それから、その位相値θに対応するz軸座標値を前記位相-座標テーブルを参照して導出する。このとき、位相値θに対応するz軸座標値は、位相-座標テーブルで位相値θに近い大小の位相値に対応するz軸座標値間を補間した値としてもよいし、単に、位相-座標テーブルで位相値θに最も近い位相値に対応するz軸座標値としてもよい。
【0055】
それから、校正したカメラパラメータのピンホールカメラモデルにより、画素ごとにz軸座標値に対応するx軸、y軸座標値を算出する。それにより、計測物品M2の3次元形状の計測を行うことができる。
【0056】
このx軸、y軸座標値の算出は、以下のようにして行うことができる。
【0057】
例えば、上記の(5(1))式及び(5(2))式は、逆関数を用いて以下の(5(1)´)式及び(5(2)´)式に変形することができる。
このように、(2(1))式及び(2(2))式は、関数g
X
-1、g
Y
-1を用いて以下の(2(1)´)式及び(2(2)´)式に変形することができる。
【0058】
上記の(3)式は、特定のz軸座標値z
0については、以下の(3´)で表すことができる。
(3´)式において、B´は4×3の行列である。B´は、上記の(4)式を変形して、以下の(4´)で表すことができる。
【0059】
従って、P´=AB´とすると、上記の(1)式は、特定のz軸座標値z
0については、以下の(1´)式で表すことができる。
(1´)式において、P´は3×3の正方行列である。P´は、逆行列P´
-1が存在し得るので、(1´)式は以下の(1´´)式に変形することができる。
【0060】
よって、(2(1)´)式及び(2(2)´)式(例えば(5(1))式及び(5(2))式)と(1´´)式を用いると、高速に画素ごとにx軸、y軸座標値を算出することができる。
【0061】
このように、本発明の実施形態に係る3次元形状計測方法によれば、3次元形状計測時に、位相シフト法を用いて撮影画像の画素ごとに得られる位相値θからその画素に対応するz軸座標値を導出する。そして、更に、校正したカメラパラメータのピンホールカメラモデルにより画素ごとにz軸座標値に対応するx軸、y軸座標値を算出する。このとき、画素ごとにz軸座標値に対応するx軸、y軸座標値を記憶しそれを参照してx軸、y軸座標値を導出する方式に比べ、メインメモリ6cにアクセスするトータルの時間を短縮することができ、トータルでx軸、y軸座標値を求める時間を短縮することができる。よって、撮影画像の画素の数が多くなっても、高速な3次元形状計測が可能となる。
【0062】
また、補助記憶装置6b及びメインメモリ6cの中で、3次元形状計測のために用いる領域を少なくすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態に係る3次元形状計測方法について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、互いに他の方向から縞パターンP1、P2、P3、P4を物品Mに投影するように投影部2を2個備え、2個の投影部2が支持体4に固定されるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 3次元形状計測装置
2 投影部
21A、21B、21C、21D 光源
21Aa、21Ba、21Ca、21Da 電流流入端子
21Ab、21Bb、21Cb、21Db 電流流出端子
210 発光素子
211 抵抗
22 縞パターン形成光学素子
22a 通過部分
22b 遮蔽部分
22c シリンドリカルレンズ
23 投影部ケース
23a 投影部ケースの開口部
3 撮影部
4 支持体
4A スライダー部材
4B リニアガイド部材
4C 物品配置部材
5 投影制御部
6 3次元形状計測処理部
6a CPU
6b 補助記憶装置
6ba 校正画像処理プログラム
6bb 3次元形状計測画像処理プログラム
6bc 位相-座標テーブルの記憶領域
6bd カメラパラメータの記憶領域
6c メインメモリ
6d 入出力インターフェイス
EX 露光のタイミングを示す信号
IA、IB、IC、ID 光源に流れる電流
L 物品検査ライン
M 物品
M1 校正用物品
M1a 2次元パターンが表示される表面
M1b 無地の表面
M2 計測物品
P1、P2、P3、P4 縞パターン
Ta 投影期間
Tb PWMの周期
TcA、TcB、TcC、TcD PWMのパルス幅
Td 露光期間
TR トリガー信号
【要約】
【課題】画素ごとに位相-座標テーブルを参照して位相シフト法を用いた高速な3次元形状計測が可能な3次元形状計測方法を提供する。
【解決手段】この3次元形状計測方法は、投影部2と所定個の画素を有し物品Mを撮影して撮影画像を得る撮影部3と支持体4とを備える3次元計測装置1を用いて、校正時には、z軸方向の各位置において、位相シフト法を用いて画素ごとの位相値を導出しその位相値とz軸座標値を1対1で対応付けた位相-座標テーブルを作成し、かつ、ピンホールカメラモデルのカメラパラメータを校正し、3次元形状計測時には、撮影画像から位相シフト法を用いて画素ごとの位相値を導出し、その位相値に対応するz軸座標値を位相-座標テーブルを参照して導出し、かつ、校正したカメラパラメータのピンホールカメラモデルにより画素ごとにz軸座標値に対応するx軸、y軸座標値を算出することにより、該計測物品の3次元形状の計測を行う。
【選択図】
図8