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特許7526543表面修飾導電性金属粒子、表面修飾導電性金属粒子分散液および表面修飾導電性金属粒子分散樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】表面修飾導電性金属粒子、表面修飾導電性金属粒子分散液および表面修飾導電性金属粒子分散樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/102 20220101AFI20240725BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240725BHJP
   B22F 1/0545 20220101ALI20240725BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20240725BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240725BHJP
【FI】
B22F1/102
B22F1/00 K
B22F1/0545
B82Y20/00
B82Y40/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024531207
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2022026586
(87)【国際公開番号】W WO2024009349
(87)【国際公開日】2024-01-11
【審査請求日】2024-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 澄志
(72)【発明者】
【氏名】松原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】野澤 良甫
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/118612(WO,A1)
【文献】特開2018-059137(JP,A)
【文献】特開2020-046506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属粒子と、前記導電性金属粒子の表面に結合した硫黄含有有機物とを含み、
前記硫黄含有有機物はオリゴチオフェンとアルカンチオールとを含む、表面修飾導電性金属粒子。
【請求項2】
前記導電性金属粒子の平均粒子径は、1.5nm以上50nm以下である、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子。
【請求項3】
前記導電性金属粒子が、金粒子、銀粒子および銅粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子。
【請求項4】
前記導電性金属粒子の表面積1nm当たりの前記硫黄含有有機物の接合量が、0.2分子以上10分子以下の範囲内にある、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子。
【請求項5】
前記オリゴチオフェンの1分子中のチオフェン環の数が3個以上15個以下の範囲内にある、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子。
【請求項6】
前記オリゴチオフェンが下記の式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子。
X-L-D (1)
式(1)において、Xは、前記導電性金属粒子と接続する接合基を表し、Lは連結基を表し、Dはデンドロンを表す。
【請求項7】
前記アルカンチオールの炭素原子数が3個以上20個以下の範囲内にある、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子。
【請求項8】
前記オリゴチオフェン1モルに対する前記アルカンチオールの含有量が0.1モル以上9.0モル以下の範囲内にある、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子。
【請求項9】
前記表面修飾導電性金属粒子をクロロホルムに分散させた、前記表面修飾導電性金属粒子の濃度が0.29mg/mLの分散液は、光路長1cmのセルを用いて測定された波長650nmの光の吸光度が0.50以下である、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子。
【請求項10】
溶媒に、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子が分散されている、表面修飾導電性金属粒子分散液。
【請求項11】
樹脂に、請求項1に記載の表面修飾導電性金属粒子が分散されている、表面修飾導電性金属粒子分散樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾導電性金属粒子、表面修飾導電性金属粒子分散液および表面修飾導電性金属粒子分散樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折材料として、樹脂に導電性金属粒子を分散させた樹脂組成物が知られている。例えば、特許文献1には、ポリマー中に、粒子径が0.001~0.1μmの金属超微粒子を分散させた高屈折率金属超微粒子分散ポリマーが記載されている。また、特許文献2には、バインダーと扁平状金属粒子とを含む高屈折率層を有する高屈折率膜が記載されている。特許文献2には、扁平状金属粒子は、局在表面プラズモン共鳴を示すことにより、可視光(波長400nm以上780nm未満の光)の吸収が生じ、可視光の透過率を低くすることも可能となることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-327836号公報
【文献】国際公開第2018/180211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性金属粒子の表面プラズモン共鳴は、導電性金属粒子の表面に入射した光によって、導電性金属粒子の表面の自由電子がその影響を受けて集団的な振動運動(プラズマ振動)を起こす現象である。この表面プラズモン共鳴は、特許文献2に記載されているように、可視光の透過率を低くする効果がある。しかしながら、可視光を屈折させて発散または集束させる光学素子として利用する導電性金属粒子では、表面プラズモン共鳴が起こることは、可視光の透過性を低下させるため好ましくない。
【0005】
本発明は、溶媒や樹脂に分散させたときに高い可視光の透過性を示す導電性金属粒子と、そのような導電性金属粒子が分散された分散液および樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0007】
[1]導電性金属粒子と、前記導電性金属粒子の表面に結合した硫黄含有有機物とを含み、前記硫黄含有有機物はオリゴチオフェンとアルカンチオールとを含む、表面修飾導電性金属粒子。
[2]前記導電性金属粒子の平均粒子径が、1.5nm以上50nm以下である、[1]に記載の表面修飾導電性金属粒子。
[3]前記導電性金属粒子が、金粒子、銀粒子および銅粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の表面修飾導電性金属粒子。
[4]前記導電性金属粒子の表面積1nm当たりの前記硫黄含有有機物の接合量が、0.2分子以上10分子以下の範囲内にある、[1]から[3]のいずれかに記載の表面修飾導電性金属粒子。
[5]前記オリゴチオフェンの1分子中のチオフェン環の数が3個以上15個以下の範囲内にある、[1]から[4]のいずれかに記載の表面修飾導電性金属粒子。
[6]前記オリゴチオフェンが下記の式(1)で表される化合物である、[1]から[5]のいずれかに記載の表面修飾導電性金属粒子。
X-L-D (1)
式(1)において、Xは、前記導電性金属粒子と接続する接合基を表し、Lは連結基を表し、Dはデンドロンを表す。
[7]前記アルカンチオールの炭素原子数が3個以上20個以下の範囲内にある、[1]から[6]のいずれかに記載の表面修飾導電性金属粒子。
[8]前記オリゴチオフェン1モルに対する前記アルカンチオールの含有量が0.1モル以上9.0モル以下の範囲内にある、[1]から[7]のいずれかに記載の表面修飾導電性金属粒子。
[9]前記表面修飾導電性金属粒子をクロロホルムに分散させた、前記表面修飾導電性金属粒子の濃度が0.29mg/mLの分散液は、光路長1cmのセルを用いて測定された波長650nmの光の吸光度が0.50以下である、[1]から[8]のいずれかに記載の表面修飾導電性金属粒子。
【0008】
[10]溶媒に、[1]から[9]のいずれかに記載の表面修飾導電性金属粒子が分散されている、表面修飾導電性金属粒子分散液。
【0009】
[11]樹脂に、[1]から[9]のいずれかに記載の表面修飾導電性金属粒子が分散されている、表面修飾導電性金属粒子分散樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶媒や樹脂に分散させたときに高い可視光の透過性を示す導電性金属粒子と、そのような導電性金属粒子が分散された分散液および樹脂組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る表面修飾導電性金属粒子を模式的に表した模式図である。
図2図2は、実施例1で得られた表面修飾金粒子のTEM写真である。
図3図3は、比較例1で得られた表面修飾金粒子のTEM写真である。
図4図4は、比較例2で得られた表面修飾金粒子のTEM写真である。
図5図5は、実施例1および比較例1~2で得られた表面修飾金粒子の分散液の吸光度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。このため、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっている場合がある。
【0013】
[表面修飾導電性金属粒子]
図1は、本発明の一実施形態に係る表面修飾導電性金属粒子を模式的に表した模式図である。
図1に示すように、表面修飾導電性金属粒子1は、導電性金属粒子2と、導電性金属粒子2の表面に結合した硫黄含有有機物3とを含む。硫黄含有有機物3は、オリゴチオフェン3aとアルカンチオール3bとを含む。
【0014】
導電性金属粒子2の形状は、特に限定はなく、例えば、球形状、楕円球形状、多角柱形状、多角錐形状、扁平形状、不定形状であってもよい。導電性金属粒子2の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、1.0nm以上100nm以下の範囲内にある。導電性金属粒子2の平均粒子径は、1.5nm以上50nm以下の範囲内にあってもよく、3.0nm以上10nm以下の範囲内にあってもよい。なお、導電性金属粒子2の平均粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて測定した50個の導電性金属粒子2の粒子径の平均値である。
【0015】
導電性金属粒子2は、特に限定されないが、例えば、金粒子、銀粒子および銅粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの金属粒子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
導電性金属粒子2の表面に接合されている硫黄含有有機物3(オリゴチオフェン3aとアルカンチオール3bの合計)の接合量は、特に限定されないが、例えば、導電性金属粒子2の表面積1nm当たりの量として0.2分子以上10分子以下の範囲内にある。硫黄含有有機物3の接合量は、2分子以上11分子以下の範囲内にあってもよく、3分子以上10分子以下の範囲内にあってもよい。
【0017】
オリゴチオフェン3aは、チオフェン環を有する化合物である。オリゴチオフェン3aの1分子中のチオフェン環の数は、特に制限されないが、例えば、3個以上15個以下の範囲内にある。チオフェン環の数は、5個以上10個以下の範囲内にあってもよい。
【0018】
オリゴチオフェン3aは、例えば、下記の式(1)で表される化合物であってもよい。
X-L-D (1)
式(1)において、Xは、導電性金属粒子2と接続する接合基を表し、Lは連結基を表し、Dはデンドロンを表す。
【0019】
Xで表される接合基は、導電性金属粒子2に対して親和性を有する基である。接合基の例としては、-SR基(Rは、水素原子、複素環基)由来のSを挙げることができる。
【0020】
Lで表される連結基は、1以上の原子を有する二価の基である。連結基の例としては、二価の炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、イミノ基およびこれらを組み合わせた基を挙げることができる。二価の炭化水素基は、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基を含む。鎖状炭化水素基は分岐を有してもよい。鎖状炭化水素基の炭素原子数は、例えば、1個以上12個以下の範囲内にあってもよい。環状炭化水素基の炭素原子数は、例えば、6個以上12個以下の範囲内にあってもよい。二価の炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。連結基は、例えば、*-アルキレン基-酸素原子-フェニレン基-(*は、X(接合基)との結合手を表す)であってもよい。
【0021】
Dで表されるデンドロンは、下記の式(2)で表されるものであってもよい。
【0022】
【化1】
【0023】
式(2)において、*は、L(連結基)との結合手を表し、R21、R22、R231、R24は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数が1個以上12個以下の範囲内にあるアルキル基およびチオフェン環を表す。チオフェン環は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素原子数が1個以上12個以下の範囲内にあるアルキル基、およびチオフェン環を挙げることができる。さらに、置換されたチオフェン環は置換基として、炭素原子数が1個以上12個以下の範囲内にあるアルキル基またはチオフェン環を有していてもよい。
【0024】
アルカンチオール3bの炭素原子数は、特に制限されないが、例えば、3個以上20個以下の範囲内にある。アルカンチオール3bの炭素原子数は、5個以上20個以下の範囲内にあってもよいし、7個以上15個以下の範囲内にあってもよい。アルカンチオール3bの炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分岐を有していてもよい。アルカンチオール3bの例としては、1-ドデカンチオールを挙げることができる。
【0025】
硫黄含有有機物3中のオリゴチオフェン3aとアルカンチオール3bの含有量に特に制限はなく、例えば、1モルのオリゴチオフェン3aに対するアルカンチオール3bの含有量は0.1モル以上9.0モル以下の範囲内にあってもよい。1モルのオリゴチオフェン3aに対するアルカンチオール3bの含有量は0.2モル以上7.0モル以下の範囲内にあってもよいし、0.3モル以上4.0モル以下の範囲内にあってもよい。
【0026】
本実施形態の表面修飾導電性金属粒子1は、例えば、極性有機溶媒中で、導電性金属イオンとオリゴチオフェンとアルカンチオールとを混合し、得られた混合物に還元剤を加えて、導電性金属粒子を析出させる方法によって製造することができる。極性有機溶媒としては、クロロホルムやテトラヒドロフランを用いることができる。還元剤としては、ボラン-tert-ブチルアミン錯体を用いることができる。混合物に還元剤を加えた後は、40℃以上極性有機溶媒の沸点以下の温度で加熱しながら撹拌してもよい。
【0027】
極性有機溶媒中に生成した表面修飾導電性金属粒子1は、遠心分離、ろ過、デカンテーションなどによって回収することができる。回収された表面修飾導電性金属粒子1は、洗浄、乾燥してもよい。
【0028】
以上のような構成とされた本実施形態の表面修飾導電性金属粒子1は、導電性金属粒子2と、導電性金属粒子2の表面に結合したオリゴチオフェン3aとアルカンチオール3bとを含むので、表面プラズモン共鳴が起こりにくくなる。これは、金属ナノ粒子と硫黄含有有機物の相互作用によるものである。
【0029】
本実施形態の表面修飾導電性金属粒子1は表面プラズモン共鳴が起こりにくいので、これを分散させた分散液および樹脂組成物は可視光の透過性が向上する。
これに限定されるものではないが、例えば、表面修飾導電性金属粒子1をクロロホルムに分散させた、表面修飾導電性金属粒子1の濃度が0.29mg/mLの分散液は、光路長1cmのセルを用いて測定された波長650nmの光の吸光度が0.50以下であってもよく、0.40以下であってもよく、0.38以下であってもよい。
【0030】
金属粒子は、樹脂に分散させることによって、樹脂の屈折率を向上させる作用があることが知られている。このため、表面修飾導電性金属粒子1は高屈折材料の原料として利用することができる。表面修飾導電性金属粒子1は、眼鏡レンズ、カメラレンズ、可視光反射膜、可視光フィルターなどの可視光を屈折させて発散または集束させる光学素子で用いられる高屈折材料の原料として有利に用いることができる。
【0031】
[表面修飾導電性金属粒子分散液]
本発明の一実施形態に係る表面修飾導電性金属粒子分散液は、溶媒に、前記本実施形態の表面修飾導電性金属粒子が分散されているものである。
【0032】
溶媒としては、特に制限されず、極性有機溶媒及び非極性有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒としては、例えば、アルコール、ケトン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミドを用いることができる。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノールを挙げることができる。ケトンの例としては、アセトン、メチルエチルケトンを挙げることができる。ハロゲン化脂肪族炭化水素の例としては、クロロホルム、ジクロロメタンを挙げることができる。芳香族炭化水素の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンを挙げることができる。ハロゲン化芳香族炭化水素の例としては、クロロベンゼンを挙げることができる。エーテル系溶媒の例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランを挙げることができる。エステル系溶媒の例としては、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルを挙げることができる。アミドの例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドを挙げることができる。
【0033】
分散液中の表面修飾導電性金属粒子の濃度は、特に制限されないが、例えば、0.1mg/mL以上1.0mg/mL以下の範囲内である。
【0034】
以上のような構成とされた本実施形態の表面修飾導電性金属粒子分散液は、前記本実施形態の表面修飾導電性金属粒子が分散されているので、可視光の透過性が高い。
【0035】
[表面修飾導電性金属粒子分散樹脂組成物]
本発明の一実施形態に係る表面修飾導電性金属粒子分散樹脂組成物は、樹脂に、前記本実施形態の表面修飾導電性金属粒子が分散されているものである。
【0036】
樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂を挙げることができる。
【0037】
樹脂組成物中の表面修飾導電性金属粒子の濃度は、特に制限されないが、例えば、0.1質量%以上60質量%以下の範囲内である。
【0038】
以上のような構成とされた本実施形態の表面修飾導電性金属粒子分散樹脂組成物は、前記本実施形態の表面修飾導電性金属粒子が分散されているので、可視光の透過性が高い。
【実施例
【0039】
[実施例1]
THF(テトラヒドロフラン)8mLに、下記の式で表されるチオフェンデンドロン(7T)化合物0.0625mmolおよびテトラクロロ金(III)酸四水和物0.0625mmolをそれぞれ投入して、5分間撹拌して溶解させた。
【0040】
【化2】
【0041】
チオフェンデンドロン(7T)化合物およびテトラクロロ金(III)酸四水和物を溶解させたTHFに、1-ドデカンチオール0.0625mmolを投入して、室温で3時間撹拌した。撹拌終了後、液温を55℃に加熱した。次いで、2mLのTHFにボラン-tert-ブチルアミン0.125mmolを溶解した溶液を投入し、液温を55℃に保持しながら、5分間撹拌した。撹拌終了後、室温まで放冷し、クロロホルムとメタノールの混合溶液を加えて、遠心分離を行なって固形分を分離除去して上澄み液を回収し、回収した上澄み液を乾燥させた。乾燥によって得られた固体を再度、THFとメタノールにより遠心洗浄した後、沈殿物を乾燥させて、チオフェンデンドロン(7T)化合物と1-ドデカンチオールとで表面修飾された表面修飾金粒子を得た。
【0042】
[比較例1]
チオフェンデンドロン(7T)化合物の投入量を0.1250mmolとしたこと、1-ドデカンチオールを投入しなかったこと以外は実施例1と同様にして、チオフェンデンドロン(7T)化合物で表面修飾された表面修飾金粒子を得た。
【0043】
[比較例2]
エタノールとクロロホルムを体積比で1:3の割合で含む混合溶媒を用意した。この混合溶媒8mLに、テトラクロロ金(III)酸四水和物を0.0625mmol投入して、5分間撹拌して、テトラクロロ金(III)酸溶液を調製した。次いで、テトラクロロ金(III)酸溶液に、1-ドデカンチオール0.1250mmolを投入して、室温で3時間撹拌した。撹拌終了後、液温を55℃に加熱した。次いで、エタノールとクロロホルムを体積比で1:3の割合で含む混合溶媒2mLにボラン-tert-ブチルアミン0.125mmolを溶解した溶液を投入し、液温を55℃に保持しながら、5分間撹拌した。撹拌終了後、室温まで放冷した後、遠心分離法を用いて固形分を回収し、クロロホルムとメタノールを用いて洗浄した後、乾燥して、1-ドデカンチオールで表面修飾された表面修飾金粒子を得た。
【0044】
[評価]
(1)硫黄含有有機物の接合量
表面修飾金粒子に対する硫黄含有有機物の表面積1nm当たりの接合量は、熱重量示差熱分析及び核磁気共鳴分析によって評価した。その結果を下記の表1に示す。
【0045】
(2)平均粒子径
表面修飾金粒子を、TEMを用いて観察して、50個の表面修飾金粒子の粒子径を測定し、その平均粒子径を算出した。図2に実施例1で作製した表面修飾金粒子
のTEM写真を、図3に比較例1で作製した表面修飾金粒子のTEM写真を、図42に比較例2で作製した表面修飾金粒子のTEM写真をそれぞれ示し、表1に、平均粒子径を示す。
【0046】
(3)可視光の吸光度
1.0mLのクロロホルムに表面修飾金粒子を0.29mg投入し、撹拌混合して、表面修飾金粒子分散液を調製した。
得られた表面修飾金粒子分散液をセル(光路長:1cm)に入れ、分光光度計を用いて波長250nmから900nmの光の吸光度を測定した。図5に吸光度曲線を示し、表1に波長650nmの光の吸光度を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1および図5の結果から、オリゴチオフェンとアルカンチオールとによって表面が修飾された実施例1の表面修飾金粒子は、オリゴチオフェン単独によって表面が修飾された比較例1の表面修飾金粒子およびアルカンチオール単独によって表面が修飾された比較例2の表面修飾金粒子と比較して、分散液としたときの可視光の吸光度が低く、可視光の透過性が高いことが確認された。したがって、実施例1の表面修飾金粒子は、可視光を屈折させて発散または集束させる光学素子の高屈折材料の原料として有利に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の表面修飾導電性金属粒子を含む分散液は、高屈折材料膜の製造用として有利に用いることができる。また、本発明の表面修飾導電性金属粒子を含む樹脂組成物は、高屈折材料として有利に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 表面修飾導電性金属粒子
2 導電性金属粒子
3 硫黄含有有機物
3a オリゴチオフェン
3b アルカンチオール
図1
図2
図3
図4
図5