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特許7526561第1の硬化済み部品及び第2の硬化済み部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】第1の硬化済み部品及び第2の硬化済み部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20240725BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20240725BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240725BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20240725BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20240725BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240725BHJP
   B29L 31/30 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
B29C43/18
B29C43/12
B29C43/34
B29C70/06
B29C70/44
B29K105:08
B29L31:30
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019200391
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2020097227
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】16/183,485
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン, マックス マーリー
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ, デーヴィッド ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ, ポール デーヴィッド
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513049(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0004357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/18
B29C 43/12
B29C 43/34
B29C 70/06
B29C 70/44
B29K 105/08
B29L 31/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品と第2の部品を製造する方法であって、
ツール(36)のツール表面(34)上に繊維性物質(32)を配置することであって、前記繊維性物質(32)が単一の構造物(38)の構成を有し、前記単一の構造物(38)が第1の部品(42)及び第2の部品(44)を備える、繊維性物質(32)を配置すること、
単一の硬化済み構造物(92)を作成するために前記繊維性物質(32)を硬化することであって、前記単一の硬化済み構造物(92)が第1の硬化済み部品(94)及び第2の硬化済み部品(96)を備える、前記繊維性物質(32)を硬化すること、及び
前記単一の硬化済み構造物(92)を前記第1の硬化済み部品(94)と前記第2の硬化済み部品(96)に分割すること、ここで前記第1の硬化済み部品(94)と前記第2の硬化済み部品(96)が、前記分割後には別々の部品であり、当該分割は、分割面(48)の両側に、前記第1の硬化済み部品(94)内の第1の空洞(102)と、前記第2の硬化済み部品(96)内の第2の空洞(104)とを作成するために、前記単一の硬化済み構造物(92)を、前記単一の硬化済み構造物(92)の中空部分を通る前記分割面(48)に沿って、前記第1の硬化済み部品(94)と前記第2の硬化済み部品(96)とに分割することを含むものである、
を含む方法。
【請求項2】
前記ツール表面(34)上の前記繊維性物質(32)内に樹脂(88)を注入することと、
前記単一の硬化済み構造物(92)を作成するために、前記繊維性物質(32)、及び前記繊維性物質(32)内に注入された前記樹脂(88)を硬化することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ツール(36)の前記ツール表面(34)上に配置される前記繊維性物質(32)として、プリプレグ材料を使用すること
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ツール(36)の前記ツール表面(34)上に前記繊維性物質(32)を配置することであって、前記繊維性物質(32)が前記単一の構造物(38)の構成を有し、前記第1の部品(42)と前記第2の部品(44)とが、前記ツール表面(34)を通る前記分割面(48)の両側で対称をなす、前記繊維性物質(32)を配置すること
をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
記第1の硬化済み部品(94)と前記第2の硬化済み部品(96)とが、前記分割面(48)の両側で対称をなす、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記単一の硬化済み構造物(92)を前記分割面(48)に沿って切断することによって、前記単一の硬化済み構造物(92)を、前記第1の硬化済み部品(94)と前記第2の硬化済み部品(96)に分割すること
をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の硬化済み部品(94)が、航空機の左側に組み付けられる、航空機の左側の構成要素部品であることと、前記第2の硬化済み部品(96)が、航空機の右側に組み付けられる航空機の右側の構成要素部品であることと
をさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1の接続具(106)を前記第1の硬化済み部品(94)に取り付けるための、中に前記第1の接続具(106)を受容する構成を有する前記第1の空洞(102)を作成することと、
第2の接続具(108)を前記第2の硬化済み部品(96)に取り付けるための、中に前記第2の接続具(108)を受容する構成を有する前記第2の空洞(104)を作成することと、
をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の部品と第2の部品を構築する方法であって、前記第1の部品と前記第2の部品とが別々の部品であり、
ツール(36)のツール表面(34)上に繊維性物質の複数のシート(32)を配置することであって、繊維性物質の前記複数のシート(32)が、第1の複合材部品(42)が第2の複合材部品(44)に接合された構成を有する、繊維性物質の複数のシート(32)を配置すること、
第2の硬化済み複合材部品(96)に接合された第1の硬化済み複合材部品(94)を作成するために、繊維性物質の前記複数のシート(32)を硬化すること、及び
別々の部品である前記第1の硬化済み複合材部品(94)と前記第2の硬化済み複合材部品(96)を作成するために、前記第2の硬化済み複合材部品(96)に接合された前記第1の硬化済み複合材部品(94)を硬化後に分割すること、ここで当該分割は、前記第1の硬化済み複合材部品(94)上の第1の接続具取り付け面(102)と、前記第2の硬化済み複合材部品(96)上の第2の接続具取り付け面(104)とを作成するために、前記第2の硬化済み複合材部品(96)に接合された前記第1の硬化済み複合材部品(94)を、前記第2の硬化済み複合材部品(96)に接合された前記第1の硬化済み複合材部品(94)の中空部分を通る分割面(48)に沿って、分割することを含むものである、
を含む方法。
【請求項10】
前記ツール表面(34)上に配置された繊維性物質の前記複数のシート(32)内に樹脂(88)を注入することと、
前記第2の硬化済み複合材部品(96)に接合された前記第1の硬化済み複合材部品(94)を作成するために、繊維性物質の前記複数のシート(32)、及び繊維性物質の前記複数のシート(32)内に注入された前記樹脂(88)を硬化することと、
繊維性物質の前記複数のシート(32)と樹脂(88)を、硬化後に、前記第1の硬化済み複合材部品(94)と前記第2の硬化済み複合材部品(96)とに分割することと、
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ツール表面(34)上に配置される繊維性物質の前記複数のシート(32)として、プリプレグの繊維性物質のシートを使用することと、
プリプレグの繊維性物質の前記シートを硬化することと
をさらに含む、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の硬化済み複合材部品(94)と前記第2の硬化済み複合材部品(96)とを、対称をなす部品として作成すること
をさらに含む、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
繊維性物質の前記複数のシート(32)が単一の構造物(38)の構成で形成されており、前記単一の構造物(38)が前記第1の部品(42)と前記第2の部品(44)とを備え、繊維性物質の前記シート(32)が、前記ツール表面(34)を通り且つ繊維性物質の前記シート(32)の断面構成を通る前記分割面(48)の両側で対称をなす断面構成を有する、請求項から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材部品の製造方法を対象としている。具体的には、本開示は、単一の製造プロセスにおいて、単一のツールのツール表面上に、複数の炭素繊維強化複合材部品を製造する方法を対象としている。
【背景技術】
【0002】
例えば航空機用の炭素繊維強化複合材部品の構築においては、航空機の左側部分にある第1の複合材部品は、しばしば対称をなす、航空機の右側部分にある第2の複合材部品を有する。航空機の左側部分用と航空機の右側部分用の互いに対称な部品は、しばしば、別々の加工プロセスにおける別々のセットの工作機械設備で、製造される。
【0003】
工作機械設備は高価であり、航空機の、対称をなす左側の複合材部品と右側の複合材部品との製造に、別々の工作機械設備が必要となり得る。それは、工作機械設備のコストを倍増させ得る。別々の工作機械設備はまた、加工時間も倍増させ得るし、工場の作業場にさらなるスペースを必要とし得る。
【0004】
さらに、航空機の、対称をなす左側の複合材部品と右側の複合材部品によっては、これらの部品がレイアップされ硬化された後に、これらの部品をより大きなアセンブリに連結するため、接続具を取り付けるように構成された末端面を設けるべく、端縁に沿って、トリミングまたは切断を必要とし得る。複合材料を硬化済み複合材部品からこうしてトリミング及び/または切断することは、さらなる作業を必要とさせ、複合材料の無駄を生み出す。
【発明の概要】
【0005】
本開示による、第1の硬化済み複合材部品と第2の硬化済み複合材部品の製造方法は、航空機の左側部分用と航空機の右側部分用の炭素繊維強化複合材部品の構築に関連付けられた、上記の欠点を克服するものである。
【0006】
本開示の方法は、ツールのツール表面上に、繊維性物質を、複数の炭素繊維強化複合材シートといった繊維性物質の複数のシートの形態で、配置することを含む。複数のシートは、第1の複合材部品及び、対称をなす第2の複合材部品からなる、単一の構造物の構成で形成されている。複数のシートは、複数のシートの断面構成を通る分割面の両側が対称である断面構成を有する。複数のシートは、乾燥した繊維性物質のシートか、またはプリプレグの繊維性物質のシートであり得る。
【0007】
複数のシートが乾燥した繊維性物質のシートである場合、ツール表面上において、この複数のシートにマトリクス(母材)または樹脂が注入される。樹脂は、複数のシートに浸透する。
【0008】
複数のシートと、この複数のシートに注入された樹脂とは、次に、ツール表面上で硬化される。複数のシートに注入された樹脂と、当該樹脂を硬化することとによって、対称をなす第2の硬化済み部品に接合された第1の硬化済み部品の構成に、単一の硬化済み構造物が形成される。
【0009】
第2の硬化済み複合材部品に接合された第1の硬化済み部品を形成する単一の硬化済み構造物は、次に、分割面に沿って分割される。これによって、第1の硬化済み部品と、それとは分離された第2の硬化済み部品が作成される。第1の硬化済み部品と第2の硬化済み部品は、対称をなす。
【0010】
単一の硬化済み構造物の構成に応じて、単一の硬化済み構造物は、単一の硬化済み構造物の中空部分を通る分割面に沿って分割され得る。これによって、第1の硬化済み部品と、これと対称をなす第2の硬化済み部品とが作り出される。第1の硬化済み部品内には第1の空洞があり、第2の硬化済み部品内には第2の空洞がある。第1の空洞は、第1の空洞に第1の接続具を取り付けるための構成を有し、第2の空洞は、第2の空洞に第2の接続具を取り付けるための構成を有する。第1の接続具と第2の接続具は、それぞれ第1の硬化済み部品と第2の硬化済み部品を、航空機の両側にあるより大きい構造物に取り付けるように構成されている。
【0011】
上記の特徴、機能、及び利点は、様々な実施形態において単独で実現可能であるか、または、さらに別の実施形態において組み合わされてよい。これらの実施形態のさらなる詳細は、下記の説明及び図面を参照することによって理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の方法の、最初のステップを示す。
図2】ツールのツール表面上に配置された、複数の繊維性シートの断面図であり、繊維性シートは、対称をなす第2の部品に接合された第1の部品からなる、単一の構造物の構成で形成されている。単一の構造物の構成は、ツール表面を通り且つ単一の構造物を通る分割面の両側が対称である断面を有している。
図3図2の単一の構造物から形成された第1の複合材部品、及び図2の単一の構造物から形成された第2の複合材部品の、正面図である。第2の複合材部品は第1の複合材部品の鏡像であり、第1の複合材部品と対称をなす。
図4図3の第1の複合材部品及び第2の複合材部品の斜視図である。
図5】本開示の方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
航空機の建造は、その大部分に関して、航空機胴体の中心を通る分割面の両側で対称である。例えば、航空機は、分割面の両側に、左側の翼と、これと対称をなす右側の翼とを有する。航空機は、分割面の両側に、左側の安定板と、これと対称をなす右側の安定板とを有する。これらは、航空機の建造における多数の対称な外装構成要素のうちの、ごくわずかのものである。航空機の建造における内装構成要素のうちの多くも、また、分割面の両側で対称である。
【0014】
単一のツール表面上で、且つ単一の加工プロセスにおいて、航空機の左側の建造物と航空機の右側の建造物とに単一の構造物として使用される、対称な炭素繊維強化複合材部品を製造することによって、工作機械設備のコストと、加工時間と、工作機械設備が必要とする工場の作業場のスペースとが、著しく削減され得る。
【0015】
図1から図4は、単一の炭素繊維強化複合材構造物から、第1の炭素繊維強化複合材部品と、第2の炭素繊維強化複合材部品を製造する方法を示しており、この第1の複合材部品と第2の複合材部品は、対称をなす。
【0016】
本開示の方法は、最初に、ツール36のツール表面34上に繊維性物質32を配置することを伴う。繊維性物質32は、あるタイプのバルク状繊維性物質32か、または特定の構成をとっている繊維性物質32であり得る。図1を参照すると、本開示の方法は、ツール36のツール表面34上に、複数の炭素繊維強化複合材シート32、または繊維性物質の複数のシート32を配置することを含む。シート32は、乾燥した繊維性シートであり得る。シート32は、プリプレグ材料またはプリプレグの繊維性シートから構築され得る。以下の説明では、繊維性物質の複数のシート32、またはシート32は、乾燥した繊維シートである。シート32は、炭素繊維テープ、炭素繊維織物、またはこの両者の組み合わせからなっていることができる。シート32は、プリフォームであり得る。シート32は、対称をなす第2の複合材部品44または第2の部品44に接合された、第1の複合材部品42または第1の部品42からなる、単一の構造物38の構成で形成されている。図1から図4に示す本開示の方法の説明においては、第1の複合材部品42は、補助翼の第1の部分であるか、または補助翼の左側の部分であり、第2の複合材部品44は、補助翼の第2の部分であるか、または補助翼の右側の部分である。本開示の方法が、航空機の建造における、他の対称をなす炭素繊維強化複合材部品の製造にも用いられ得ることは、理解すべきである。本開示の方法は、航空機の、対称をなす炭素繊維強化複合材補助翼の製造のみに限定されない。
【0017】
図2を参照すると、シート32は、単一の構造物38の構成において、ツール表面34上にレイアップされるか、またはツール表面34上で形成される。単一の構造物38は、ツール表面34を通り且つシートの断面構成を通る分割面48の両側が対称である断面構成を有する。複数のシート32で形成されている単一の構造物38は、ベースパネル52を含む。ベースパネル52は、ツール36のツール表面34にわたって係合する、底面54を有する。ベースパネル52は、反対側にある頂面56もまた有する。ベースパネル52は、単一の構造物38として構成された複数のシート32の長さに沿って延びる、長さの寸法を有する。ベースパネル52は、図2に示すベースパネル52の第1の端縁62または左側の縁62と、反対側にある、図2に示すベースパネル52の第2の端縁64または右側の縁62との間を延びる、幅の寸法もまた有する。
【0018】
単一の構造物38の構成における複数のシート32は、複数のシート内に形成された複数の補剛材もまた、含む。図2に示す補剛材は、ベースパネルの第1の端縁62からベースパネルの第2の端縁64まで、ベースパネルの頂表面56をわたって空間的に配列された、シルクハット(top hat)型補剛材72、74、76、78、82として形成されている。シルクハット型補剛材72、74、76、78、82は、複数のシート32の長さ方向の寸法に対応する、長さ方向の寸法を有する。シルクハット型補剛材72、74、76、78、82は、ベースパネルの第1の端縁62及びベースパネルの第2の端縁64から、複数のシート32の中央にあるシルクハット型補剛材76に向けて延びるのにつれて、サイズが増大していく断面寸法及び中空内部を有しており、中央のシルクハット型補剛材76は、最大の中空内部を有する。
【0019】
複数のシート32がツール表面34上の単一の構造物38として形成されている状態で、次にこのツール表面34上に、流体不浸透性シート84または真空バッグ84が配置される。真空バッグ84は、単一の構造物38として構成された複数のシート32を完全に覆う。真空バッグ84の周縁は、複数のシート32を覆って、且つ複数のシートを囲んで、ツール表面34に対して密封されている。これによって、真空バッグ84と、複数のシート32によって占められたツール表面34との間に、密封された空間が形成される。
【0020】
真空バッグ84とツール表面34との間の密封された空間に、圧力差または真空圧86が印加される。真空圧86は、図1に概略的に表されている。真空バッグ92とツール表面34との間の密封された空間に印加される真空圧86によって、真空バッグ84は、複数のシート32上へと引き下げられる。
【0021】
次に、真空バッグ84とツール表面34との間の内部空間に、液体マトリクス材料または樹脂88の流動が供給される。液体樹脂88の流動は、図1に概略的に表されている。真空バッグ84とツール表面34との間の内部空間に供給された真空圧86によって、単一の構造物38の構成の中の複数のシート32内に、液体樹脂88が注入される。
【0022】
液体樹脂88が注入された複数のシート32は、次に、ツール表面34上で硬化される。複数のシート32及びこれらのシート内に注入された樹脂88を硬化することによって、対称をなす第2の硬化済み複合材部品または第2の硬化済み部品96に接合された、第1の硬化済み複合材部品または第1の硬化済み部品94からなる、単一の硬化済み複合材構造物92または単一の硬化済み構造物92が形成される。
【0023】
第1の硬化済み部品94及び第2の硬化済み部品96からなる単一の硬化済み構造物92は、次に、ツール表面34から取り外される。対称をなす第2の硬化済み部品96に接合された第1の硬化済み部品94からなる単一の硬化済み構造物92は、次に、分割面48に沿って分割される。単一の硬化済み構造物92は、分割面に沿って単一の硬化済み構造物を切断するか、または他の同等の手段によって、分割面48に沿って分割される。これによって、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96が別々の部品として作成される。第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96は互いに対称であり、互いの鏡像である。
【0024】
中央頂部にあるシルクハット型補剛材76が分割面48によって分割されるため、分割面48に沿って、中央のシルクハット型補剛材76を通して単一の硬化済み構造物92を切断することによって、第1の硬化済み部品の端縁に第1の接続具取り付け面102を有する第1の硬化済み部品94と、第2の硬化済み部品の端縁に第2の接続具取り付け面104を有する第2の硬化済み部品96とが、作成される。第1の接続具取り付け面102は、図3及び図4に、中に第1の接続具106を取り付けるための構成を有する第1の空洞102として示されており、第2の接続具取り付け面104は、図3及び図4に、中に第2の接続具108を取り付けるための構成を有する第2の空洞104として示されている。第1の接続具106は、第1の硬化済み部品94をより大きい構造物に取り付ける際に使用することができ、第2の接続具108は、第2の硬化済み部品96をより大きい構造物に取り付ける際に使用することができる。第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96は、より大きい構造物の両側に取り付けられる。例えば、第1の硬化済み部品94は、航空機の左側に組み付けられる、航空機の左側の構成要素部品であることができ、第2の硬化済み部品96は、航空機の右側に組み付けられる航空機の右側の構成要素部品であることができる。第1の硬化済み複合材部品94を、第2の硬化済み複合材部品96から、中央頂部のシルクハット型補剛材76を通る分割面48に沿って分離することによって、複合材料の浪費を生じさせ得る第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96の別々の機械加工を行うことなく、接続具106、108の取り付け用の空洞が、それぞれ複合材部品94、96内に設けられる。
【0025】
さらに、本開示は下記の条項による実施形態を含む。
【0026】
条項1.第1の部品と第2の部品を製造する方法であって、
ツール36のツール表面34上に繊維性物質32を配置することであって、繊維性物質32が単一の構造物38の構成を有し、単一の構造物38が第1の部品42及び第2の部品44を備える、繊維性物質32を配置することと、
単一の硬化済み構造物92を作成するために繊維性物質32を硬化することであって、単一の硬化済み構造物92が第1の硬化済み部品94及び第2の硬化済み部品96を備える、繊維性物質32を硬化することと、
単一の硬化済み構造物92を第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96に分割することであって、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96が、分割後には別々の部品である、単一の硬化済み構造物92を分割することと、を含む方法。
【0027】
条項2.ツール表面34上の繊維性物質32内に樹脂88を注入することと、
単一の硬化済み構造物92を作成するために、繊維性物質32、及び繊維性物質32内に注入された樹脂88を硬化することと、
をさらに含む、条項1に記載の方法。
【0028】
条項3.ツール36のツール表面34上に配置される繊維性物質32として、プリプレグ材料を使用すること
をさらに含む、条項1または2に記載の方法。
【0029】
条項4.ツール36のツール表面34上に繊維性物質32を配置することであって、繊維性物質32が単一の構造物38の構成を有し、第1の部品42と第2の部品44とが、ツール表面34を通る分割面48の両側で対称をなす、繊維性物質32を配置すること
をさらに含む、条項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0030】
条項5.単一の硬化済み構造物92を、単一の硬化済み構造物92を通る分割面48に沿って、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96とに分割することであって、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96とが、分割面48の両側で対称をなす、単一の硬化済み構造物92を分割すること
をさらに含む、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
条項6.単一の硬化済み構造物92を分割面48に沿って切断することによって、単一の硬化済み構造物92を、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96に分割すること
をさらに含む、条項5に記載の方法。
【0032】
条項7.第1の硬化済み部品94が、航空機の左側に組み付けられる、航空機の左側の構成要素部品であることと、第2の硬化済み部品96が、航空機の右側に組み付けられる航空機の右側の構成要素部品であることと
をさらに含む、条項5または6に記載の方法。
【0033】
条項8.分割面48の両側に、第1の硬化済み部品94内の第1の空洞102と、第2の硬化済み部品96内の第2の空洞104とを作成するために、単一の硬化済み構造物92を、単一の硬化済み構造物92の中空部分を通る分割面48に沿って、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96とに分割すること
をさらに含む、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
条項9.第1の接続具106を第1の硬化済み部品94に取り付けるための、中に第1の接続具106を受容する構成を有する第1の空洞102を作成することと、
第2の接続具108を第2の硬化済み部品96に取り付けるための、中に第2の接続具108を受容する構成を有する第2の空洞104を作成することと、
をさらに含む、条項8に記載の方法。
【0035】
条項10.第1の部品と第2の部品を構築するための方法であって、第1の部品と第2の部品とが別々の部品であり、
ツール36のツール表面34上に繊維性物質のシート32を配置することであって、繊維性物質のシート32が単一の構造物38の構成によって形成されており、単一の構造物38が第1の部品42と第2の部品44を備え、繊維性物質のシート32が、ツール表面34を通り且つ繊維性物質のシート32の断面構成を通る分割面48の両面において対称をなす断面構成を有している、繊維性物質32のシートを配置することと、
第1の硬化済み部品94及び第2の硬化済み部品96を備える単一の硬化済み構造物92を形成するために、ツール表面34上で繊維性物質32のシートを硬化することと、
単一の硬化済み構造物92を、分割面48に沿って、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96とに分割することと、
を含む方法。
【0036】
条項11.ツール表面34上に配置された繊維性物質のシート32内に樹脂88を注入することと、
第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96を備える、単一の硬化済み構造物92を作成するために、ツール表面34上の繊維性物質32、及び繊維性物質32のシート内に注入された樹脂88を硬化することと、
をさらに含む、条項10に記載の方法。
【0037】
条項12.ツール表面34上に配置される繊維性物質のシート32として、プリプレグの繊維性物質のシートを使用することと、
第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96を備える、単一の硬化済み構造物92を形成するために、ツール表面34上のプリプレグの繊維性物質シートを硬化することと、
をさらに含む、条項10または11に記載の方法。
【0038】
条項13.第1の部品42と第2の部品44とが、ツール表面34を通り且つ繊維性物質のシート32の断面構成を通る分割面48の両側で対称をなす構成において、繊維性物質のシート32を形成すること
をさらに含む、条項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
条項14.単一の硬化済み構造物92を、ツール表面34を通る分割面48に沿って、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96とに分割することであって、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96とが、分割面48の両側で対称をなす、単一の硬化済み構造物92を分割すること
をさらに含む、条項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
条項15.第1の硬化済み部品94上に、第1の接続具106を取り付けるように構成された第1の接続具取り付け面102を作成するため、及び第2の硬化済み部品96上に、第2の接続具108を取り付けるように構成された第2の接続具取り付け面104を作成するために、単一の硬化済み構造物92を、ツール表面34を通り且つ単一の硬化済み構造部92の中空部を通る分割面48に沿って、第1の硬化済み部品94と第2の硬化済み部品96とに分割すること
をさらに含む、条項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
条項16.第1の部品と第2の部品を構築する方法であって、第1の部品と第2の部品とは別々の部品であり、
ツール36のツール表面34上に繊維性物質の複数のシート32を配置することであって、繊維性物質の複数のシート32が、第1の複合材部品42が第2の複合材部品44に接合された構成を有する、繊維性物質の複数のシート32を配置することと、
第2の硬化済み複合材部品96に接合された第1の硬化済み複合材部品94を作成するために、繊維性物質の複数のシート32を硬化することと、
別々の部品である第1の硬化済み複合材部品94と第2の硬化済み複合材部品96を作成するために、第2の硬化済み複合材部品96に接合された第1の硬化済み複合材部品94を硬化後に分割することと、を含む方法。
【0042】
条項17.ツール表面34上に配置された繊維性物質の複数のシート32内に樹脂88を注入することと、
第2の硬化済み複合材部品96に接合された第1の硬化済み複合材部品94を作成するために、繊維性物質の複数のシート32、及び繊維性物質の複数のシート32内に注入された樹脂88を硬化することと、
繊維性物質の複数のシート32と樹脂88を、硬化後に、第1の硬化済み複合材部品94と第2の硬化済み複合材部品96とに分割することと、
をさらに含む、条項16に記載の方法。
【0043】
条項18.ツール表面34上に配置される繊維性物質の複数のシート32として、プリプレグの繊維性物質のシートを使用することと、
プリプレグの繊維性物質のシートを硬化することと
をさらに含む、条項16または17に記載の方法。
【0044】
条項19.第1の硬化済み複合材部品94上の第1の接続具取り付け面102と、第2の硬化済み複合材部品96上の第2の接続具取り付け面104を作成するために、第2の硬化済み複合材部品96に接合された第1の硬化済み複合材部品94を、第2の硬化済み複合材部品96に接合された第1の硬化済み複合材部品94の中空部分を通る分割面48に沿って、分割すること
をさらに含む、条項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
条項20.第1の硬化済み複合材部品94と第2の硬化済み複合材部品96とを、対称をなす部品として作成すること
をさらに含む、条項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
本明細書中に記載され図示された第1の部品及び第2の部品を製造する方法に対しては、本方法の範囲から逸脱することなく様々な変更を加え得ることから、上記の記載に含まれるかまたは添付の図面に示された全ての事項は、限定するものというより、むしろ例示として解釈されることが意図されている。したがって、本開示の幅広さ及び範囲は、上記の例示的実施形態のうちの任意のものによって限定されるべきではなく、本明細書に添付される以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によってのみ、定義されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5