(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】レンギョウ葉の加工方法および加工レンギョウ葉
(51)【国際特許分類】
A61K 36/634 20060101AFI20240725BHJP
A61K 31/341 20060101ALI20240725BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K36/634
A61K31/341
A61K31/7048
A61P35/00
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2019210898
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-10-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【氏名又は名称】相原 礼路
(74)【代理人】
【識別番号】100174849
【氏名又は名称】森脇 理生
(72)【発明者】
【氏名】金谷 太作
(72)【発明者】
【氏名】稲益 悟志
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晋平
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105998202(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101632405(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109043056(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110432354(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109287807(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109258860(CN,A)
【文献】特開昭58-216649(JP,A)
【文献】特開2014-036650(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146734(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138586(WO,A1)
【文献】畑直樹 等,アルクチン・アルクチゲニンの多機能性と高含有植物の利用,農業および園芸,2011年,86巻, 1号,p.10-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L33/
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
Pubmed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンギョウ葉をスチーム処理する工程と、
スチームで処理したレンギョウ葉を60℃~120℃の温度で加熱して乾燥させる工程と、
を含
み、
前記レンギョウ葉がシナレンギョウ(Forsythia viridissima)由来である、加工前と比較してレンギョウ葉のアルクチゲニン換算重量が増加した加工レンギョウ葉の製造方法。
【請求項2】
レンギョウ葉をスチームで処理した後に60℃~120℃の温度で加熱して乾燥させた加工レンギョウ葉であって、
前記レンギョウ葉がシナレンギョウ(Forsythia viridissima)由来であり、
前記加工レンギョウ葉から酵素法でアルクチゲニンまたはアルクチインを抽出した抽出液中にアルクチゲニンおよび/またはアルクチインを3%以上含有する、加工レンギョウ葉。
【請求項3】
レンギョウ葉をスチーム処理する工程と、
スチームで処理したレンギョウ葉を60℃~120℃の温度で加熱して乾燥させる工程と、
を含
み、
前記レンギョウ葉がシナレンギョウ(Forsythia viridissima)由来である、レンギョウ葉のアルクチゲニン換算重量を増加する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工レンギョウ葉の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、アルクチゲニンを高含量で含有する加工レンギョウ葉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンギョウは、中国原産の植物であり、日本でも繁殖している落葉樹であり、3月頃に葉が芽生え12月頃に葉を落とす。このレンギョウの葉には、アルクチゲニンおよびアルクチインが含有されていることが知られている。
【0003】
一方、アルクチゲニンおよびアルクチインは、抗膵臓癌活性や抗炎症活性を有することが知られている。膵臓癌などの治療に使用するにあたり、有効成分であるアルクチゲニンおよびアルクチインを効率的に抽出する方法が望まれている。たとえば、特許文献1には、ゴボウシから高含量でアルクチゲニンおよびアルクチインを含有する抽出物の製造方法が記載されている。
【0004】
レンギョウ葉についても、高含量でアルクチゲニンを含有する葉やその抽出物が望まれている。しかし、レンギョウ葉におけるアルクチゲニンおよびアルクチインの含有量を高める方法などは開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルクチゲニンおよびアルクチインを高含量で含有する加工レンギョウ葉およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、原料とするレンギョウ葉にスチームで処理すること、および加熱温度を高温にすることによってレンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンおよびアルクチインの量を増大させる技術を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、レンギョウ葉を60℃以上の温度で加熱する工程を含む、加工レンギョウ葉の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、加熱工程の前に、レンギョウ葉をスチームで処理する工程をさらに含む加工レンギョウ葉の製造方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、60℃以上の温度で加熱された乾燥レンギョウ葉を提供する。
【0011】
また、本発明は、レンギョウ葉をスチームで処理した後に加熱された加工レンギョウ葉を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、加工レンギョウ葉であって、レンギョウ葉から酵素法でアルクチゲニンを抽出した抽出液中に3%以上含有する、加工レンギョウ葉を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、レンギョウ葉を60℃以上の温度で加熱する工程を含む、レンギョウ葉のアルクチゲニンの含有量を増加する方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、加熱工程の前に、レンギョウ葉をスチームで処理する工程をさらに含む、レンギョウ葉のアルクチゲニンの含有量を増加する方法を提供する
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンおよびアルクチインを増加することができる。また、本発明によれば、風味や見た目を損なわずにレンギョウ葉を乾燥させた加工レンギョウ葉を製造することができる。また、本発明によれば、従来よりもレンギョウ葉を迅速に乾燥させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、レンギョウ葉を60℃以上の温度で加熱する工程を含む、加工レンギョウ葉の製造方法を提供する。
【0017】
本発明に使用されるレンギョウは、レンギョウ属の植物を含む。たとえば、本発明に使用されるレンギョウは、シナレンギョウ(Forsythia viridissima)、チョウセンレンギョウ(F.koreana)、ヤマトレンギョウ(F.japonica)、およびレンギョウ(F.suspensa)などが知られているが、中でもシナレンギョウがアルクチゲニン含有量が高いので好ましい。
【0018】
本発明に使用されるレンギョウ葉は、レンギョウの葉のみであってよいし、レンギョウの葉と共にレンギョウの他の部位を含んでいてもよい。たとえば、レンギョウ葉は、レンギョウの葉と、花、果実、根または茎などの他の部位との混合物であってもよい。特に、レンギョウの葉と茎を分けることは困難であるため、葉と茎の混合物を使用することができる。
【0019】
本発明に使用されるレンギョウ葉は、採取した生葉、室温、冷凍および冷蔵条件において保管された葉および半乾燥された葉などの任意の葉であることができる。
【0020】
本明細書において、加工レンギョウ葉とは、加熱またはスチーム処理によってアルクチゲニンまたはアルクチインの含有量が増加されたレンギョウ葉をいう。
【0021】
本発明において、加熱工程は、60℃以上の温度で加熱する工程である。加熱温度は、従来の一般的な乾燥温度である40℃よりも高い温度であるが、焦げ付かない温度であることが好ましい。加熱温度は、60℃~100℃、たとえば60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃または100℃であってもよい。加熱工程において、レンギョウ葉は、乾燥装置およびオーブンなどの任意の手段で加熱することができる。また、加熱温度は、乾燥装置内にあるレンギョウ葉の実態温度であり、レンギョウ葉に直接温度計を接触させることによって測定することができる。また、加熱工程は、水を噴霧するなど、レンギョウ葉が水分を含ませながら加熱することもできる。たとえば、レンギョウ葉を水に浸漬した後に加熱して、乾燥するまで加熱してもよい。また、加熱工程は、レンギョウ葉を60℃以上の温度の温水に浸漬することによって加熱することもできる。たとえば、レンギョウ葉を80℃~100℃の温水に浸漬することによって加熱することもできる。また、加熱工程は、レンギョウ葉をスチーム処理することによって加熱することもできる。たとえば、レンギョウ葉に120℃以上、90℃~120℃および95℃~110℃の水蒸気をあてることによって加熱することもでき、たとえば約80℃の雰囲気温度となるように水蒸気を噴霧してレンギョウ葉と共に保持することによって加熱することもできる。
【0022】
加熱時間は、レンギョウ葉におけるアルクチゲニンまたはアルクチインを増加させることができる任意の時間であることができる。たとえば、レンギョウ葉を乾燥させることができる任意の時間であることができる。加熱時間は、加熱温度、レンギョウ葉の重量および含水率、および気温などの条件に応じて適切な時間であることができる。加熱工程により、所望の含水率までレンギョウ葉を乾燥させることができる。たとえば、レンギョウ葉は、その重量が5~90%、10~80%、15~70%、15~60%、15~50%、15~40%、20~40%、20~30%または30%~40%の重量に減少するまで加熱させることができる。たとえば、レンギョウ葉を60℃~100℃で加熱する場合、10分以上、20分以上、30分以上、1時間以上、2時間以上、10時間以上、1日以上および2日以上であることができる。
【0023】
上記のようにレンギョウ葉を加熱することにより、レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンまたはアルクチインの量を増加させることができる。また、従来の40℃程度における乾燥と比較して迅速にレンギョウ葉を乾燥させることができる。
【0024】
本発明は、加熱工程の前に、レンギョウ葉をスチームで処理する工程をさらに含んでいてもよい。すなわち、本発明は、レンギョウ葉をスチームで処理する工程およびレンギョウ葉を60℃以上の温度で加熱する工程を含む、加工レンギョウ葉の製造方法を提供する。
【0025】
本発明において、スチームで処理する工程は、レンギョウ葉に水蒸気をあてて所定の温度以上で維持する工程である。スチームで処理する工程は、たとえばレンギョウ葉をスチーム装置内に置き、次いで装置内に水蒸気を噴霧してレンギョウ葉と共に保持する。スチームで処理する工程では、たとえば120℃以上、90℃~120℃および95℃~110℃の水蒸気をあてることができる。スチームで処理する工程は、たとえば約80℃の雰囲気温度となるように水蒸気を噴霧してレンギョウ葉と共に保持する。
【0026】
レンギョウ葉に水蒸気をあてる時間は、レンギョウ葉におけるアルクチゲニンまたはアルクチインを増加させることができる任意の時間であることができる。たとえば、全てのレンギョウ葉をスチーム処理することができる時間であることができ、たとえば10秒以上、20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、1分以上、2分以上、5分以上および10分以上であることができる。スチームで処理する時間は、雰囲気温度、レンギョウ葉の重量および含水率などの条件に応じて適切な時間であることができる。
【0027】
上記のスチームで処理する工程の後、加熱工程を行うことができる。
【0028】
上記のようにレンギョウ葉をスチームで処理することにより、レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンまたはアルクチインの量を増加させることができる。また、レンギョウ葉をスチームで処理することにより、迅速にレンギョウ葉を乾燥させることができ、乾燥時間を短縮することができる。また、レンギョウ葉をスチームで処理することにより、レンギョウ葉を乾燥させたときの風味および見た目をよくすることができる。
【0029】
本発明は、60℃以上の温度で加熱された加工レンギョウ葉を提供する。本発明の加工レンギョウ葉は、上記の加工レンギョウ葉の製造方法における加熱工程と同じ工程によって製造することができる。
【0030】
60℃以上の温度で加熱された加工レンギョウ葉は、レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンまたはアルクチインの量が増加される。
【0031】
また、本発明は、レンギョウ葉をスチームで処理した後に60℃以上の温度で加熱された加工レンギョウ葉を提供する。本発明の加工レンギョウ葉は、上記の加工レンギョウ葉の製造方法と同じ工程によって製造することができる。
【0032】
レンギョウ葉をスチームで処理した後に60℃以上の温度で加熱された加工レンギョウ葉は、レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンまたはアルクチインの量が増加される。また、本発明の加工レンギョウ葉は、レンギョウ葉がスチームで処理されていることによって、レンギョウ葉を乾燥させたときの風味および見た目がよい。
【0033】
また、本発明は、加工レンギョウ葉であって、加工レンギョウ葉から酵素法または還流法でアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出した抽出液中に3%以上含有する、加工レンギョウ葉を提供する。本発明の加工レンギョウ葉は、加工レンギョウ葉から酵素法または還流法でアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出した抽出液中に両者の合計で3~15%以上、たとえば3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上または15%以上含有する。本発明の加工レンギョウ葉は、たとえば実施例のAG換算重量%=AG換算重量/乾燥葉重量として計算したときに、酵素法または還流法で抽出した抽出液中に3~15%以上、たとえば3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上または15%以上アルクチゲニンを含有する。内在酵素反応は、レンギョウに内在する酵素によるアルクチインからアルクチゲニンへの酵素反応である。
【0034】
本明細書において、酵素法とは、以下の手順によってレンギョウ葉の内在酵素によってアルクチインをアルクチゲニンに変換して、アルクチゲニンおよびアルクチインの量を測定する方法である。酵素法の手順は、以下のとおりである。
1.レンギョウ葉200mgを正確に計り、50mlの容器内に入れる。
2.純水を19.6ml添加する。
3.37℃にて90分間振盪しながら内在酵素によるアルクチインからアルクチゲニンへの酵素反応を進行させる。
4.エタノール(99.5%)を8.4ml添加する。
5.超音波で60分間処理する。
6.溶液を10倍希釈して、0.45μmメンブレンフィルターで濾過する。
7.濾液をHPCL用サンプルとして、アルクチゲニンおよびアルクチインの含有量を測定する。
【0035】
本明細書において、還流法とは、レンギョウ葉のメタノール溶液を還流することによってアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出して、アルクチゲニンおよびアルクチインの量を測定する方法である。還流法の手順は、以下のとおりである。
1.レンギョウ葉500mgを正確に計り、100mlのナスフラスコ容器内に入れる。
2.60mlの50%メタノールを添加する。
3.80℃の水浴にナスフラスコを入れ30分間還流抽出(装置:NRK社冷却機グラハム型・冷却部300mm)
4.還流終了後、自然滴化ろ過(装置:ADVANTEC社 No.2ろ紙)
5.100mlメスフラスコにメスアップをする。
6.この溶液をHPCL用サンプルとして、アルクチゲニンおよびアルクチインの含有量を測定する。
【0036】
本発明の加工レンギョウ葉は、上記の加工レンギョウ葉の製造方法によって製造することができる。すなわち、本発明のレンギョウ葉は、レンギョウ葉を60℃以上の温度で加熱することによって製造することができる。また、本発明のレンギョウ葉は、レンギョウ葉をスチーム処理した後、60℃以上の温度で加熱することによって製造することができる。
【0037】
また、本発明は、レンギョウ葉を60℃以上の温度で加熱する工程を含む、レンギョウ葉のアルクチゲニンおよび/またはアルクチインの含有量を増加する方法を提供する。本発明の方法において、加熱する工程は、上記の加工レンギョウ葉の製造方法と同じ工程である。
【0038】
本発明の方法によれば、レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンまたはアルクチインの量を増加させることができる。
【0039】
また、本発明は、レンギョウ葉を60℃以上の温度で加熱する工程およびレンギョウ葉をスチームで処理する工程を含む、レンギョウ葉におけるアルクチゲニンおよび/またはアルクチインの含有量を増加する方法を提供する。本発明の方法において、加熱する工程およびレンギョウ葉をスチームで処理する工程は、上記の加工レンギョウ葉の製造方法と同じ工程である。
【0040】
本発明の方法によれば、レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンまたはアルクチインの量を増加させることができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない
(レンギョウ葉における加熱によるアルクチゲニンおよびアルクチインの増加の検討)
レンギョウ葉を加熱することにより、含有されるアルクチゲニンおよびアルクチインが増加するか否かを検討した。
【0042】
(レンギョウ葉の加熱)
レンギョウ葉は、熱風恒温乾燥装置によって示した温度にてレンギョウ葉が乾燥するまで加熱した。レンギョウ葉は、目視および感触によって乾燥されたことを確認した。このときレンギョウの生葉の重量に対して約35%以下の乾燥重量であることを確認した。40℃における加熱では、おおよそ7~10日間乾燥させた。60℃における加熱では、おおよそ1~3日間乾燥させた。80℃以上における加熱では、50分乾燥させた。
【0043】
(レンギョウ葉のスチーム処理)
レンギョウ葉は、蒸煮機によって示した時間、スチームで処理した。簡潔には、装置内にレンギョウ葉を置き、次いで装置内に約100~110℃の水蒸気を噴霧してレンギョウ葉と共に保持した。このとき装置内が約80℃の雰囲気温度となるように水蒸気を噴霧した。
【0044】
(レンギョウ葉におけるアルクチインおよびアルクチゲニンの測定)
以下の実施例において、AG重量%は、実測値のアルクチゲニンだけでなく、測定されたアルクチイン重量をアルクチゲニン重量に変換した合計とした。アルクチゲニンの分子量は、372.42である。また、アルクチインの分子量は、534.56である。これらの分子量に基づいて、アルクチイン重量×372.42/534.56=アルクチゲニン重量として算出した。アルクチインおよびアルクチゲニンの測定は、比較例および実施例のそれぞれの資料について2回の測定の平均を記載した。
【0045】
レンギョウ葉におけるアルクチインおよびアルクチゲニンは、酵素法または還流法によって測定した。
酵素法の手順は、以下のとおりである。
1.レンギョウ葉200mgを正確に計り、50mlの容器内に入れる。
2.純水を19.6ml添加する。
3.37℃にて90分間振盪しながら内在酵素によるアルクチインからアルクチゲニンへの酵素反応を進行させる。
4.エタノール(99.5%)を8.4ml添加する。
5.超音波で60分間処理する。
6.溶液を10倍希釈して、0.45μmメンブレンフィルターで濾過する。
7.濾液をHPCL用サンプルとして、アルクチゲニンおよびアルクチインの含有量を測定する。
還流法の手順は、以下のとおりである。
1.レンギョウ葉500mgを正確に計り、100mlのナスフラスコ容器内に入れる。
2.60mlの50%メタノールを添加する。
3.80℃の水浴にナスフラスコを入れ30分間還流抽出(装置:NRK社冷却機グラハム型・冷却部300mm)
4.還流終了後、自然滴化ろ過(装置:ADVANTEC社 No.2ろ紙)
5.100mlメスフラスコにメスアップをする。
6.この溶液をHPCL用サンプルとして、アルクチゲニンおよびアルクチインの含有量を測定する。
【0046】
HPLCは、Chromaster(日立ハイテクサイエンス社製)を使用した。HPLCの測定結果は、標準品としてアルクチゲニン(自社精製品)およびアルクチン(富士フイルム和光純薬社製)を用いて得られた検量線よりアルクチゲニンおよびアルクチインの量を導いた。アルクチゲニン換算量(AG換算重量%)は、上記のようにアルクチイン重量×372.42/534.56=アルクチゲニン重量の式によって導かれる量である。
【0047】
(比較例1および実施例1~2の比較)
レンギョウ葉は、採取後、常温保管したものを使用した。アルクチゲニンおよびアルクチインの含有量は、酵素法によって測定して算出した。
比較例1 レンギョウ葉を40℃で加熱した乾燥レンギョウ葉を比較例1の試料とした。
実施例1 レンギョウ葉を60℃で加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例1の試料とした。
実施例2 レンギョウ葉を80℃で加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例1の試料とした。
【0048】
レンギョウ葉を加熱する温度によるアルクチゲニンおよびアルクチインの含有量の差を比較した。結果を表1に示す。比較例1の40℃で加熱して乾燥させたレンギョウ葉のアルクチゲニン含有量を100とすると、実施例1の60℃で加熱した場合は108.1%であり、実施例2の80℃で加熱した場合は128.2%であった。加熱の温度を高くすると、乾燥レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンおよびアルクチインの含有量が増加することが明らかとなった。表1において、AG重量%比/比較例1は、比較例1の40℃で加熱して乾燥させたレンギョウ葉のアルクチゲニン含有量を100としたときの量を示す。
【0049】
【0050】
(実施例3~6の比較)
レンギョウ葉は、採取後、常温保管したものを使用した。アルクチゲニンおよびアルクチインの含有量は、酵素法によって測定して算出した。
実施例3 レンギョウ葉を60℃で加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例3の試料とした。
実施例4 レンギョウ葉をスチームで45秒処理した後、60℃で加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例4の試料とした。
実施例5 レンギョウ葉を80℃で加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例5の試料とした。
実施例6 レンギョウ葉をスチームで45秒処理した後、80℃で加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例6の試料とした。
【0051】
レンギョウ葉に対するスチーム処理の有無によるアルクチゲニンおよびアルクチインの含有量の差を比較した。結果を表2に示す。実施例3の60℃で加熱して乾燥させたレンギョウ葉のアルクチゲニン含有量を100とすると、実施例4のスチーム処理をして60℃で加熱した場合は142.0%であり、実施例5の80℃で加熱した場合は116.0%であり、実施例6のスチーム処理をして80℃で加熱した場合は143.8であった。加熱の温度を高くすると、乾燥レンギョウ葉に含有されるアルクチゲニンおよびアルクチインの含有量が増加することが明らかとなった。また、実施例3と4の比較および実施例5と6の比較から、スチーム処理によってレンギョウ葉に含有されるアルクチインおよびアルクチゲニンが増加することが明らかとなった。
【0052】
【0053】
(実施例7~9の比較)
レンギョウ葉は、採取後、常温保管したものを使用した。アルクチゲニンおよびアルクチインの含有量は、還流法によって測定して算出した。
実施例7 レンギョウ葉をスチームで45秒処理した後、83℃で75分間加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例7の試料とした。
実施例8 レンギョウ葉をスチームで45秒処理した後、95℃で50分間加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例8の試料とした。
実施例9 レンギョウ葉をスチームで2分間処理した後、95℃で50分間加熱した乾燥レンギョウ葉を実施例9の試料とした。
【0054】
レンギョウ葉に対するスチーム処理の時間および加熱時間の相違によるアルクチゲニンおよびアルクチインの含有量の差を比較した。結果を表3に示す。実施例7~9はいずれも13.0%~15.6%のアルクチインを含有し、アルクチゲニンは含有しなかった。実施例7と8の比較から、加熱温度を83℃と95℃では、アルクチイン含量は変動しないことが明らかとなった。実施例8と9の比較から、スチーム処理の時間を45秒から2分に変更するとアルクチイン含量が増加した。したがって、スチーム処理の時間を長くすることによって、レンギョウ葉におけるアルクチインの含有量を増大させることができることが明らかとなった。この含有量の増加は、内在の変換酵素(マタイレシノールオルトメチル転移酵素)の関与が推察されるが、80℃以上もの高い温度で作用することは予想もしなかった発見である。
【0055】
【0056】
(比較例1および実施例1~6の比較)
比較例1および実施例1~6の結果からアルクチゲニン換算量(AG換算重量%)に基づいて、これらを比較した。比較例1のアルクチゲニン換算量を100とすると、実施例1は、108.1である。実施例1と実施例4は、いずれもレンギョウ葉を60℃で加熱した乾燥レンギョウ葉同であるため、同じアルクチゲニン換算量(AG換算重量%)として計算した。その結果、比較例1を100とすると、実施例3は108.1となり、実施例4は153.5となり、実施例5は125.4となり、実施例6は155.6となる。計算表を表4に示す。
【0057】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、アルクチゲニンおよびアルクチインの製造において利用することができる。たとえば、本発明は、アルクチゲニンおよびアルクチインを含有するサプリメント、食品および医薬品などの製造において利用することができる。