(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】コップ状容器
(51)【国際特許分類】
B65D 3/22 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B65D3/22 B
(21)【出願番号】P 2020002120
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
(72)【発明者】
【氏名】長岡 孝司
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-098537(JP,A)
【文献】特開昭59-015042(JP,A)
【文献】特開昭59-021462(JP,A)
【文献】特開昭63-272653(JP,A)
【文献】特開昭59-093631(JP,A)
【文献】特開昭57-133046(JP,A)
【文献】特開2004-106843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形されている胴体と、底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように成形してなる断面略逆U形の底体とよりなり、胴体の下端部の内面に底体の垂下部の外面が接合されることにより胴体および底体が一体化されているコップ状容器であって、
胴体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面に積層された熱融着性樹脂層とよりな
り、紙層を有しない積層体から形成されたものであって、胴体用ブランクの両端縁部がこれらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
底体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりな
り、紙層を有しない積層体から形成されたものであって、胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面がこれらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
胴体用ブランクの両端縁部のうち胴体の内側となる内端縁部において、胴体用ブランクの少なくとも一方の熱融着性樹脂層が、金属箔層の端面よりも周方向外方に延びている延出部を有しており、同金属箔層の端面が延出部によって被覆されて
おり、
延出部が、胴体用ブランクの内端縁部の片面または両面に形成された熱プレス加工部の一部分によって構成されている、コップ状容器。
【請求項2】
熱融着性樹脂層の熱プレス加工部の厚さが、熱融着性樹脂層のその他の部分の厚さの1/5~1/2倍となされている、請求項1のコップ状容器。
【請求項3】
胴体用ブランクおよび底体用ブランクにおいて、金属箔層と熱融着性樹脂層との間に接着剤層が介在させられている、請求項1または2のコップ状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばアイスクリームやヨーグルトのような食品や飲料等を内容物とするコップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアイスクリームやヨーグルト等の半固形状乳製品を充填包装するための容器として、紙製のコップ状容器、すなわち紙コップが一般に用いられている。
紙コップは、通常、それぞれ所定形状にカットされた紙製ブランクよりなる胴体と底体とを接合一体化することにより形成されている。より詳細には、胴体は、略扇形の胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形するとともに、下端開口縁部に内方に折り返された折り返し部を形成し、上端開口縁部に外方にカールされたフランジ部を形成してなる。底体は、略円形の底体用ブランクをその外周部に垂下部が形成されるようにスカート成形してなる断面略逆U形のものである。そして、底体の垂下部が胴体の折り返し部に包み込まれて接合されることにより、胴体および底体が一体化されている。
胴体用および底体用の各ブランクは、例えば、一般原紙、耐酸紙、コート紙等よりなる紙層と、紙層の片面または両面に積層されたポリエチレン(PE)層とを有する積層体よりなる(例えば下記の特許文献1参照)。
【0003】
また、上記各ブランクの材料として、紙層およびポリエチレン(PE)層に加えてアルミニウム箔等よりなるバリア層を積層してなる積層体を使用した紙コップも知られている(例えば下記の特許文献2参照)。
【0004】
その他、アイスクリーム、ヨーグルト等の容器として、ポリプロピレン(PP)等のプラスチック成形体よりなるものも知られている(例えば下記の特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-30955号公報
【文献】特開2007-210639号公報
【文献】特開2007-176505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙コップは、生産性に優れ、安価に製造することが可能である反面、バリア性が低く、内容物の長期保存には適していなかった。
アルミニウム箔等のバリア層が付加された紙コップの場合、内容物の長期保存性は向上するが、紙層の端面から水が侵入しやすく、レトルト殺菌を行うことができなかった。
また、プラスチック製の容器の場合、製造設備のコストが高くつく上、内容物の長期保存には適していなかった。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明者は、胴体用ブランクおよび底体用ブランクそれぞれの材料として、金属箔層とその両面のうち少なくとも一方の面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体を使用したコップ状容器を先に提案した(特願2019-106125号)。
上記のコップ状容器によれば、紙コップの製造設備を利用して安価に製造可能であって、内容物の長期保存性に優れており、アセプティック殺菌やレトルト殺菌を行うこともできる。
【0008】
ここで、上記のコップ状容器の場合、胴体のオーバーラップ部において、容器の内側に位置する胴体用ブランクの内側端面が内容物に晒されることになるため、内容物の種類等によっては、同内側端面にデラミネーション(層間剥離)や腐食による劣化が生じるおそれがあり、また、衛生上必ずしも好ましいとは言えない場合がある。
この発明の目的は、紙コップの製造設備を利用して安価に製造可能であって、内容物の長期保存性に優れており、アセプティック殺菌やレトルト殺菌も可能なコップ状容器として、内容物との接触による劣化等を抑制しうるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0010】
1)胴体用ブランクの両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより筒状に成形されている胴体と、底体用ブランクを底部と底部の外周縁部から下方にのびる垂下部とが形成されるように成形してなる断面略逆U形の底体とよりなり、胴体の下端部の内面に底体の垂下部の外面が接合されることにより胴体および底体が一体化されているコップ状容器であって、
胴体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体用ブランクの両端縁部がこれらの互いに重なり合う面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
底体用ブランクが、金属箔層と金属箔層の両面のうち少なくとも底体の上側となる面に積層された熱融着性樹脂層とよりなる積層体から形成されたものであって、胴体の下端部の内面および底体の垂下部の外面がこれらの面を構成している熱融着性樹脂層どうしを熱融着することにより接合されており、
胴体用ブランクの両端縁部のうち胴体の内側となる内端縁部において、胴体用ブランクの少なくとも一方の熱融着性樹脂層が、金属箔層の端面よりも周方向外方に延びている延出部を有しており、同金属箔層の端面が延出部によって被覆されている、コップ状容器。
【0011】
2)延出部が、胴体用ブランクの内端縁部の片面または両面に形成された熱プレス加工部の一部分によって構成されている、上記1)のコップ状容器。
【発明の効果】
【0012】
上記1)のコップ状容器によれば、胴体用ブランクの両端縁部のうち胴体の内側となる内端縁部において、胴体用ブランクの少なくとも一方の熱融着性樹脂層が、金属箔層の端面よりも周方向外方に延びている延出部を有しており、金属箔層の端面が、延出部によって被覆されているので、金属箔層の端面および金属箔層と熱融着性樹脂層との界面が内容物に晒されるおそれがなく、したがって、デラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制され、また、衛生面でも好ましい。
ここで、熱融着性樹脂層の延出部による金属箔層の端面の被覆は、胴体を成形する前の胴体用ブランクの内端縁部において既に被覆されている態様と、胴体用ブランクの両端縁部を熱融着する際に延出部が変形および/または溶融固化することで被覆される態様の両方を含むものとする。
【0013】
上記2)のコップ状容器によれば、延出部が、胴体用ブランクの内端縁部の片面または両面に形成された熱プレス加工部の一部分によって構成されているので、その形成を容易にかつ確実に行うことができ、また、延出部による金属箔層の端面の被覆も同時に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施形態に係るコップ状容器の斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う垂直断面図であって、同図中、一点鎖線Aで囲まれた部分は一点鎖線aで囲まれた部分を拡大して示したものであり、一点鎖線Bで囲まれた部分は一点鎖線bで囲まれた部分を拡大して示したものである。
【
図3】(a)は胴体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図であり、(b)は底体用ブランクの材料とされる積層体の層構造を示す拡大断面図である。
【
図4】上記コップ状容器における胴体のオーバーラップ部の一態様を拡大して示す水平断面図である。
【
図5】上記コップ状容器における胴体のオーバーラップ部の別の態様を拡大して示す水平断面図である。
【
図6】(a)は胴体用ブランクの平面図であり、(b)および(c)は胴体用ブランクの内端縁部に熱プレス加工部を形成する工程を順次示す部分拡大断面図であり、(d)は胴体用ブランクから成形された胴体の斜視図である。
【
図7】(a)は底体用ブランクの平面図であり、(b)は底体用ブランクから成形された底体の斜視図である。
【
図8】上記コップ状容器の製造工程の一部を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を、
図1~
図8を参照して説明する。
なお、以下の説明において、「上下」は、コップ状容器、胴体、底体における上下(例えば
図2,8それぞれの上下)をいうものとし、また、「内」は、コップ状容器、胴体、底体における中心に近い側(例えば
図4,5の各下、
図8の右)をいい、「外」は、コップ状容器、胴体、底体における中心から遠い側(例えば
図4,5の各上、
図8の左)をいうものとする。
【0016】
図1および
図2は、この発明の実施形態のコップ状容器(1)の全体構成を示すものであって、同容器(1)は、胴体用ブランク(20A)から成形された胴体(2)と、底体用ブランク(30A)から成形された底体(3)とを接合一体化してなる。
胴体(2)は、テーパ筒状のものであって、
図6に示すように、扇形をした胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしをオーバーラップさせて接合することにより成形されている。したがって、胴部(2)には、その高さ方向に沿ってのびるオーバーラップ部(21)が存在する。
胴体(2)の下端開口縁部には、内方に折り返された折り返し部(22)が形成されている。
また、胴体(2)の上端開口縁部には、外方に折り曲げられたフランジ部(23)が設けられている。フランジ部(23)は、下方に折り返されてほぼ水平な偏平状に成形されている。なお、フランジ部は、図示以外の形態、例えば、下方にカールさせられて横断面略円弧状に成形されていてもよい。
底体(3)は、円形をした水平な底部(31)と、底部(31)の外周縁部から下方にのびた垂下部(32)とを有する断面略逆U形のものであって、
図7に示すように、円形の底体用ブランク(30A)を絞り成形してなる。
そして、底体(3)の垂下部(32)の外面が胴体(2)の下端部(2a)の内面に接合されるとともに、胴体(2)の折り返し部(22)が垂下部(32)の内面に接合されることにより、胴体(2)および底体(3)が一体化されている(
図2および
図8参照)。
なお、図示は省略したが、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面が接合されるのみの連結構造によって、胴体(2)と底体(3)とを一体化した構成とすることもできる。この構成によれば、底体(3)の成形時に垂下部(32)に若干のシワが発生していた場合でも、空気等を混入することなく、胴体(2)の下端部(2a)と底体(3)の垂下部(32)とを確実にシールすることができる。
【0017】
胴体用ブランク(20A)は、
図3(a)に示すように、金属箔層(201)と、金属箔層(201)の両面のうち胴体(2)の内側となる面に積層された内側熱融着性樹脂層(202)と、金属箔層(201)の両面のうち胴体(2)の外側となる面に積層された外側熱融着性樹脂層(203)とよりなる積層体(20)から形成されており、紙層を有していない。
また、底体用ブランク(30A)も、
図3(b)に示すように、金属箔層(301)と、金属箔層(301)の両面のうち底体(3)の上側となる面に積層された上側熱融着性樹脂層(302)と、金属箔層(301)の両面のうち底体(3)の下側となる面に積層された下側熱融着性樹脂層(303)とよりなる積層体(30)から形成されており、紙層を有していない。なお、胴体(2)の下端開口縁部に折り返し部(22)を形成せず、胴体(2)の下端部(2a)内面に底体(3)の垂下部(32)外面が接合されるのみの連結構造とする場合には、底体用ブランク(30A)の下側熱融着性樹脂層(303)を省略することも可能である。
各積層体(20)(30)の厚さは、250μm未満とするのが好ましく、200μm未満とするのがより好ましい。各積層体(20)(30)の厚さを上記範囲とすることによって、ブランクの材料として厚さ250~400μm程度の積層体を使用する紙コップのように、胴体(2)のフランジ部(23)のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差が大きくなりすぎたり、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(31)との接合が安定しない、といった問題が確実に回避される。
【0018】
金属箔層(201)(301)は、内容物をガス、水蒸気、光等から保護するためのバリア層として機能するものである。
金属箔層(201)(301)を構成する金属箔としては、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔などを使用することができるが、好適にはアルミニウム箔が用いられる。アルミニウム箔の場合、純アルミニウム箔、アルミニウム合金箔のいずれでもよく、また、軟質、硬質のいずれでもよいが、例えば、JIS H4160で分類されるA8000系(特に、A8079HやA8021H)の焼鈍処理済の軟質材(O材)であれば、成形性に優れているので、好適に用いることができる。
金属箔層(201)(301)の両面には、必要に応じて、化成処理などの下地処理を行う。具体的には、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施して、皮膜を形成する。
上記化成処理により金属箔層(201)(301)表面に形成される皮膜は、クロム付着量(片面当たり)を0.1mg/m2~50mg/m2とするのが好ましく、特に、2mg/m2~20mg/m2とするのが好ましい。
なお、金属箔層(201)(301)として金属箔の軟質材(O材)を使用する場合、その表面に脱脂処理を行うことなく、直ちに化成処理を行っても構わない。
金属箔層(201)(301)の厚さは、40~200μmとするのが好ましく、70~160μmとするのがより好ましい。金属箔層(201)(301)の厚さを上記範囲とすることによって、充分なバリア性と成形加工性を得ることができる。
【0019】
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)は、容器(1)の内外面を構成するものであって、金属箔層(201)(202)を保護するとともに、積層体(20)(30)に成形性を付与する役割を担うものであり、また、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの接合や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合の際に熱融着層として機能するものである。
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)としては、例えば、熱融着性を有するポリプロピレン(PP)フィルムやポリエチレン(PE)フィルム等の汎用性フィルム(好適には無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP))、これらを貼り合わせた複合フィルムが用いられる。また、上記フィルムに代えて、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル、エポキシ樹脂やシェラック樹脂等のコート層により、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を構成することも可能である。
熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)の厚さは、5~80μmとするのが好ましく、10~60μmがより好ましい。熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)の厚さを上記範囲とすることによって、胴体用ブランク(20A)の両端縁部どうしの接合部や、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との接合部において十分な接着強度を得ることができると共に、胴体(2)のフランジ部(23)上面のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差を緩やかにすることができて、蓋材で封緘した際の密封性が良好となる。
【0020】
金属箔層(201)(301)を構成する金属箔と、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を構成するフィルムとの積層は、例えば、接着剤層(図示略)を介してドライラミネート法により行われる。接着剤層には、例えば、二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤やポリエーテル-ポリウレタン系接着剤が用いられる。
上記の接着剤層の存在により、例えば胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)が熱融着により減肉した場合でも、金属箔層(201)どうしが接触するのが回避されるので、シール性が保持される。また、上記の接着剤層があれば、熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)を透過する内容物が充填される場合であっても、金属箔層(201)(301)が腐食して内容物が漏れ出すのを回避することができる。
【0021】
なお、胴体用ブランク(20A)を構成する積層体(20)と、底体用ブランク(30A)を構成する積層体(30)とは、通常、同一のものが用いられるが、材質および/または厚さの異なるものとしてもよい。
【0022】
次に、上記積層体(20)(30)を使用して、コップ状容器(1)を形成する方法の一例を説明する。
まず、積層体(20)を所定サイズの扇形に打ち抜いて、胴体用ブランク(20A)を形成する(
図6(a)参照)。
また、積層体(30)を所定サイズの円形に打ち抜いて、底体用ブランク(30A)を形成し(
図7(a)参照)、このブランク(30A)を、金型(図示略)を用いて絞り成形加工することにより、底部(31)および垂下部(32)よりなる横断面略逆U形の底体(3)を成形する(
図7(b)参照)。得られた底体(3)には、シワが生じていない。また、底体(3)の外面における底部(31)と垂下部(32)との間のコーナー部分は、角が出ている。
そして、略円錐台形の金型(図示略)の頂面に、底体(3)をその底部(31)上面が重なるようにセットしておいてから、上記金型の外周面に胴体用ブランク(20A)を巻き付けて、その両端縁部どうしをオーバーラップさせた後、オーバーラップ部(21)の互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)を熱融着させることにより、テーパ筒状の胴体(2)を成形する(
図6(d)参照)。オーバーラップ部(21)の熱融着の手段は、シールバー(熱板)を用いたヒートシールの他、高周波シールや超音波シール等であってもよい。
次に、
図8に示すように、胴体(2)の下端開口縁部を内側に折り返して、その折り返し部(22)を円盤状の回転金型(図示略)によって底体(3)の垂下部(32)に押し付けた後、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)との互いに重なり合う面を構成している内側熱融着性樹脂層(202)と上側熱融着性樹脂層(302)および下側熱融着性樹脂層(303)とを熱融着させることにより、胴体(2)と底体(3)とを接合一体化させる。
また、胴体(2)の上端開口縁部を、所定のカール成形金型(図示略)を用いて外方にカールさせるとともに上下方向に加圧して偏平状に成形することにより、フランジ部(23)を形成する(
図8参照)。
こうして、
図1および
図2に示すコップ状容器(1)が得られる。
【0023】
この実施形態のコップ状容器(1)では、胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、以下のような構成上の特徴を有している。
すなわち、
図4および
図5に示すように、胴体用ブランク(20A)の両端縁部のうち胴体(2)の内側となる内端縁部(204)において、胴体用ブランク(20A)の少なくとも一方の熱融着性樹脂層(202)(203)(
図4の態様では両熱融着性樹脂層(202)(203)、
図5の態様では内側熱融着性樹脂層(202))が、金属箔層(201)の端面よりも周方向外方に延びている延出部(2021a)(2031a)を有している。そして、金属箔層(201)の端面が、延出部(2021a)(2031a)によって被覆されている。
これにより、胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204)において、金属箔層(201)の端面および金属箔層(201)と熱融着性樹脂層(202)(203)との界面が、容器(1)に収容された内容物と接触するのが回避される。
【0024】
延出部(2021a)(2031a)は、好ましくは、胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204)の片面または両面に形成された熱プレス加工部(2021)(2031)の一部分によって構成されている。
より詳細に説明すると、
図6(a)に示す胴体用ブランク(20A)の両端縁部のうち胴体(2)の内側となる内端縁部(204)を、例えば、
図6(b)に示すように、その両面側に配置したシールバー(B1)(B2)を用いて、熱プレス加工する。
すると、シールバー(B1)(B2)によって加熱加圧された熱融着性樹脂層(202)(203)部分が圧縮されてその厚さが小さくなるとともに、金属箔層(201)の端面よりも周方向外方に延びていく。こうして、胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204)において、内外両側の熱融着性樹脂層(202)(203)に、薄く延ばされた熱プレス加工部(2021)(2031)が形成されるとともに、熱プレス加工部(2021)(2031)のうち金属箔層(201)の端面よりも周方向外方に延びた部分によって、延出部(2021a)(2031a)が形成される。また、2つの延出部(2021a)(2031a)は、シールバー(B1)(B2)により加熱されて軟化状態または流動状態にあるので、互いに近づく方向にも変形・流動可能であり、それによって金属箔層(201)の端面を被覆しうる(
図6(c)参照)。
熱プレス加工は、例えば加熱温度180~220℃、加圧力0.05~0.4MPa、加熱加圧時間1~5秒の条件下で行われる。また、シールバー(B1)(B2)は、平面より見て、これらの幅方向の一部が胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204)からはみ出すように配置するのが好ましい。
なお、胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204)における熱融着性樹脂層(202)(203)の延出部(2021a)(2031a)による金属箔層(201)の端面の被覆は、必ずしも熱プレス加工部(2021)(2031)の形成と同時に行われることを要しない。すなわち、例えば、
図5に示す態様では、胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204)において、内側熱融着性樹脂層(202)の延出部(2021a)が、胴体用ブランク(20A)のオーバーラップされた両端縁部(204)(205)を熱融着する際に加熱されて軟化状態または流動状態となり、金属箔層(201)側に向かって変形・流動することにより、金属箔層(201)の端面を被覆するようになされている。
熱融着性樹脂層(202)(203)の熱プレス加工部(2021)(2031)の厚さ(T2)は、熱融着性樹脂層(202)(203)のその他の部分の厚さ(T1)の1/5~1/2倍となされているのが好ましく、より好ましくは1/3~1/2倍となされる。具体的には、例えば、熱融着性樹脂層(202)(203)の通常部分の厚さ(T1)が5~80μmである場合、熱プレス加工部(2021)(2031)の厚さ(T2)は1~40μm程度となされる。また、熱プレス加工部(2021)(2031)のうち金属箔層(201)と積層されている部分の周方向幅(W1)は、好ましくは2~10mm(より好ましくは4~8mm)となされており、延出部(2021a)(2031a)の延出幅(W2)は、好ましくは1~4mm(より好ましくは1~3mm)となされている。
【0025】
コップ状容器(1)の胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部(204)(205)の互いに熱融着された内側熱融着性樹脂層(202)および外側熱融着性樹脂層(203)の合計厚さ(T3)が8~150μmであるのが好ましく、より好ましくは16~80μmとなされる(
図4および
図5参照)。上記合計厚さ(T3)が8μm未満であると、オーバーラップ部(21)のシール性が不十分となるおそれがある。一方、上記合計厚さ(T3)が150μmを超えると、オーバーラップ部(21)のバリア性が損なわれるおそれがある。
また、胴体(2)のオーバーラップ部(21)において、胴体用ブランク(20A)の両端縁部(204)(205)の金属箔層(201)(201)どうしの厚さ方向から見た重なり幅(W3)が5~15mmであるのが好ましく、より好ましくは7~12mmとなされる(
図4および
図5参照)。上記重なり幅(W3)が2mm未満であると、オーバーラップ部(21)のバリア性が損なわれるおそれがあり、また、シール幅が小さくなりすぎてシール性が不十分となるおそれがある。一方、上記重なり幅(W3)が10mmを超えると、必要以上にオーバーラップ部(21)の幅が大きくなってコストアップにつながり、さらに、オーバーラップ部(21)の内側部分(胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204))と外側部分(胴体用ブランク(20A)の外端縁部(205))とにかかる応力の相違に起因して、オーバーラップ部(21)の内側部分にシワが入るなどの外観不良が発生するおそれがある。
【0026】
この実施形態のコップ状容器(1)によれば、以下のような効果が奏される。
a)胴体用ブランク(20A)および底体用ブランク(30A)のそれぞれが、金属箔層(201)(301)およびその両面に積層された熱融着性樹脂層(202)(203)(302)(303)よりなる積層体(20)(30)から形成されているので、紙コップの製造設備を利用して安価に製造することができる。
b)各ブランク(20A)(30A)の材料とされる積層体(20)(30)が金属箔層(201)(301)を有しているので、内容物の長期保存性に優れている。
c)紙コップと比べて胴体用ブランク(20A)の厚さが小さくなるため、胴体(2)のフランジ部(23)上面のうちオーバーラップ部(21)によって構成されている部分の段差を小さくすることができ、したがって、容器(1)のフランジ部(23)上面に蓋をシールする際にシール不良が起こりにくい。また、アセプティック(無菌)充填を行う場合に、フランジ部(23)上面の上記段差に殺菌液が残りにくくなる。
d)底体(3)が底体用ブランク(30A)を絞り成形してなるので、底体(3)にシワが発生せず、したがって、従来の紙コップのように底体(3)の垂下部(32)と胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)との接合不良が生じたり、バリア性の低下を招いたりするおそれがない。
e)紙コップと比べて胴体用ブランク(20A)および底体用ブランク(30A)の厚さが小さくなるため、胴体(2)の下端部(2a)および折り返し部(22)と底体(3)の垂下部(32)とを安定的に接合することができる。
f)紙コップと比べて底体(3)の外面における底部(31)と垂下部(32)との間のコーナー部分の曲率半径(アール)を小さくすることができるので、アセプティック(無菌)充填を行う場合に、コップ状容器(1)の底体(3)上面と胴体(2)内周面との境界部分に殺菌液が残りにくくなる。
g)各ブランク(20A)(30A)の材料とされる積層体(20)(30)が紙層を有しないものであるので、レトルト殺菌を支障なく行うことができる。
h)胴体用ブランク(20A)の両端縁部のうち胴体(2)の内側となる内端縁部(204)において、胴体用ブランク(20A)の熱融着性樹脂層(202)(203)が、金属箔層(201)の端面よりも周方向外方に延びている延出部(2021a)(2031a)を有しており、金属箔層(201)の端面が、延出部(2021a)(2031a)によって被覆されているので、金属箔層(201)の端面および金属箔層(201)と熱融着性樹脂層(202)(203)との界面が内容物に晒されるおそれがない。したがって、胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204)におけるデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制されることとなり、また、衛生面でも好ましい。
また、延出部(2021a)(2031a)が、胴体用ブランク(20A)の内端縁部(204)の片面または両面に形成された熱プレス加工部(2021)(2031)の一部分によって構成されている場合には、その形成を容易にかつ確実に行うことができる上、延出部(2021a)(2031a)による金属箔層(201)の端面等の被覆も同時に行うことが可能である。
【0027】
なお、図示は省略したが、この実施形態のコップ状容器(1)の場合、上記構成に加えて、胴体用ブランク(20A)の両端縁部のうち胴体(2)の外側となる外端縁部(205)において、胴体用ブランク(20A)の熱融着性樹脂層(202)(203)が、金属箔層(201)の端面よりも周方向外方に延びている延出部(2021a)(2031a)を有しており、金属箔層(201)の端面が、延出部(2021a)(2031a)によって被覆されていてもよい。これにより、胴体用ブランク(20A)の外端縁部(205)においても、デラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制される。
さらに、この発明のコップ状容器において、胴体は、胴体用ブランクの両端縁部どうしを合掌状に重ね合わせて接合した態様であってもよい。この態様においても、上記実施形態と同様に、胴体用ブランクの一方または両方の端縁部において、胴体用ブランクの熱融着性樹脂層が、金属箔層の端面よりも周方向外方に延びている延出部を有しており、金属箔層の端面が、延出部によって被覆されているのが好ましく、それによって、同端縁部におけるデラミネーションや腐食による劣化が効果的に抑制される。
【実施例】
【0028】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
<実施例1>
厚さ120μmのアルミニウム箔(A8021H-O)の化成処理が施された両面に、それぞれ2液硬化型ウレタン系接着剤を約3g/m
2塗布して、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をドライラミネートした。そして、接着剤を硬化させるために所定のエージング処理を行うことにより、積層体を得た。
次に、得られた積層体を所定形状に打ち抜いて、胴体用ブランクおよび底体用ブランクを成形した(
図6(a)および
図7(a)参照)。
そして、胴体用ブランクの両端縁部のうち胴体の内側となる内端縁部を、その両面側に配置したシールバーを用いて、熱プレス加工した(
図6(b)参照)。熱プレス加工は、幅5mmのシールバーを平面より見て胴体用ブランクの内端縁部から1mmはみ出すように配置して、加熱温度200℃、加圧力0.3MPa、加熱加圧時間4秒の条件下で行った。これにより、胴体用ブランクの内端縁部において、その両面のCPP部分に、厚さ40μm、幅5.2mmの熱プレス加工部を形成した。熱プレス加工部は、アルミニウム箔の端面よりも周方向外方に延びている幅1.2mmの延出部を有するものとなっており、また、アルミニウム箔の端面が延出部によって被覆されていた(
図6(c)参照)。
次に、胴体用ブランクおよび底体用ブランクを用いて、前述した実施形態と同一の工程により、
図1および
図2に示すコップ状容器を作製し、これを実施例1とした。
ここで、胴体用ブランクの両端縁部どうしの熱融着は、幅5mmのシールバーを平面より見て胴体用ブランクの内端縁部に位置するアルミニウム箔の端面からはみ出さないように配置して、加熱温度180℃、加圧力0.1MPa、加熱加圧時間2秒の条件下でのヒートシールにより行った。
得られたコップ状容器は、厚さ120μmのアルミニウム箔を使用しているので、酸素や水蒸気の透過がほとんど無い、バリア性の良好な容器である。
尚、コップ状容器の寸法は下記の通りとした。
・コップ状容器上部の開口部の内径:65mm
・コップ状容器下部の内径:50mm
・フランジ部の幅:4mm
・コップ状容器の高さ:95mm
・コップ状容器の脚部(折り返し部)の高さ:6mm
【0030】
<比較例1>
胴体用ブランクの内端縁部に熱プレス加工部を形成せず、その他は実施例1と同じ要領でコップ状容器を作製し、これを比較例1とした。
【0031】
<耐腐食性の検証>
神奈川県伊勢原市の水道水4リットルを鍋で98℃まで加温し、その水道水に実施例1および比較例1のコップ状容器を浸漬させ、水道水の温度を98℃に保持した状態で15分間放置した後、水道水から取り出した。
そして、取り出したコップ状容器の外観を目視で観察したところ、比較例1では胴体のオーバーラップ部の端面において若干褐色に変色した部分が見られた。一方、実施例1の場合、オーバーラップ部の端面には変色が全く見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、例えば流動状食品や飲料等を内容物とするコップ状容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
(1):コップ状容器
(2):胴体
(2a):胴体の下端部
(21):オーバーラップ部
(23):フランジ部
(20A):胴体用ブランク
(20):積層体
(201):金属箔層
(202):内側熱融着性樹脂層
(2021):熱プレス加工部
(2021a):延出部
(203):外側熱融着性樹脂層
(2031):熱プレス加工部
(2031a):延出部
(204):内端縁部
(3):底体
(31):底部
(32):垂下部
(30A):底体用ブランク
(30):積層体
(301):金属箔層
(302):上側熱融着性樹脂層
(303):下側熱融着性樹脂層