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特許7526587オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20240725BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020079594
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172776
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 元基
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-060041(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104628900(CN,A)
【文献】国際公開第2020/067081(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/107708(WO,A1)
【文献】特開2013-249445(JP,A)
【文献】特開2007-146065(JP,A)
【文献】特表2012-508278(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066535(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103626894(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00-4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レフィン類重合用固体触媒成分の製造方法であって、
比表面積が10~40m /gであるジアルコキシマグネシウムと、四価のチタンハロゲン化合物と、1,3-ジエーテル化合物とを相互に接触させることにより、
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび1,3-ジエーテル化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
該オレフィン類重合用固体触媒成分に含まれる前記1,3-ジエーテル化合物の割合が2.50~15.00質量%であり、
前記オレフィン類重合用固体触媒成分の比表面積が250m /g以上である
オレフィン類重合用固体触媒成分を製造する
ことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項2】
得られるオレフィン類重合用固体触媒成分の細孔容積が0.250~1.000cm /gである請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項3】
前記1,3-ジエーテル化合物が、下記一般式(I);
OCH CR CH OR (I)
(式中、R およびR は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基もしくはシクロアルケニル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基もしくはハロゲン置換芳香族炭化水素基、置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基、炭素数1~12のアルキルアミノ基または炭素数2~12のジアルキルアミノ基を示す。R およびR は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。R およびR は、互いに結合して環を形成してもよい。R およびR は、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基もしくはハロゲン置換芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基を示す。R およびR は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表される化合物から選ばれる一種以上である請求項1または請求項2のいずれかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分およびその製造方法、オレフィン類重合用触媒およびその製造方法、ならびにオレフィン類重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンは、自動車部品あるいは家電製品などの成型品の他、容器やフィルム等種々の用途に利用されている。
【0003】
従来より、オレフィン類の重合方法として、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を必須成分として含有する固体触媒成分、有機アルミニウム化合物並びに外部電子供与性化合物を含むオレフィン類重合用触媒を用いて、プロピレンを単独でまたは他のα-オレフィンと重合させるオレフィン類の重合方法が数多く提案されている(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-63310号公報
【文献】米国特許第4399054号公報
【文献】特表2016-532738号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、従来より、電子供与性化合物としてフタル酸エステルを用いたオレフィン類重合用触媒が広く使用されてきた。しかしながら、フタル酸エステルの一種であるフタル酸ジ-n-ブチルやフタル酸ベンジルブチルは、欧州のRegistration,Evaluation,Authorization and Restriction of Chemicals(REACH)規制におけるSubstance of Very High Concern(SVHC)として特定されている。そして、環境負荷低減の観点から、SVHC物質を使用しない触媒系への転換要求が高まっている。
【0006】
一方、SVHC規制対象とされていない電子供与性化合物を用いた触媒系として、コハク酸エステル、マレイン酸エステル、マロン酸エステル等を用いた触媒系や、引用文献2や引用文献3に記載の触媒系が知られている。しかしながら、これ等の触媒系においても、フタル酸エステルを用いた場合と同等の性能を発揮し難かった。特に、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で、固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と外部電子供与性化合物とを接触させるプロセスが存在する重合設備においては、SVHC規制対象物質とされていない電子供与性化合物を用いた場合に、著しく重合活性を低下させる傾向がある。そのような事情から、SVHC規制対象とされていない電子供与性化合物を適用したオレフィン類重合用触媒については、さらなる改良が求められるようになっていた。
【0007】
また、このような従来の重合用触媒を用いた場合、得られるオレフィン類重合体中に、揮発性有機化合物として、未反応モノマーないしオリゴマーや重合時に使用した有機溶媒が残留する場合がある。このため、重合反応後に上記揮発性有機化合物が反応機で脱ガスされた上で、そのオレフィン類重合体が後工程へ移送される。しかしながら、残留ガス量が少ないオレフィン類重合体であっても、脱ガスに時間がかかる場合は、上記後工程で系内の圧力が上昇したりリサイクル系への不純物の混入割合が増加する等して、工程トラブルや得られた重合体の品質低下を引き起こし易くなることが懸念される。このようなことから、重合体への揮発性有機化合物の残留量が少ないことのみならず、重合体に残留した揮発性有機化合物が短時間で脱離することが望まれていたが、従来、重合体中の揮発性有機化合物の含有割合を短時間で大幅に低減し得る重合用触媒は必ずしも提案されるに至っていなかった。
【0008】
このような状況下、本発明は、フタル酸エステルを用いなくても、オレフィン類の重合に供したときに、単位時間あたりの重合活性の低下が適度に抑制され、かつ乾燥効率が向上され残留する揮発性有機化合物の含有割合が短時間で大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に調製し得るオレフィン類重合用固体触媒成分およびその製造方法、オレフィン類重合用触媒およびその製造方法ならびにオレフィン類重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術課題を解決するために本発明者等が鋭意検討したところ、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを含有するとともに1,3-ジエーテル化合物を2.50~15.00質量%含有し、かつ比表面積が250m/g以上であるオレフィン類重合用固体触媒成分により、上記技術課題を解決しうることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび1,3-ジエーテル化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
該オレフィン類重合用固体触媒成分に含まれる前記1,3-ジエーテル化合物の割合が2.50~15.00質量%であり、
前記オレフィン類重合用固体触媒成分の比表面積が250m/g以上である
ことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分、
(2)細孔容積が0.250~1.000cm/gである上記(1)に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(3)前記1,3-ジエーテル化合物が、下記一般式(I);
OCHCRCHOR (I)
(式中、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基もしくはシクロアルケニル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基もしくはハロゲン置換芳香族炭化水素基、置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基、炭素数1~12のアルキルアミノ基または炭素数2~12のジアルキルアミノ基を示す。RおよびRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。RおよびRは、互いに結合して環を形成してもよい。RおよびRは、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基もしくはハロゲン置換芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基を示す。RおよびRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表される化合物から選ばれる一種以上である上記(1)または(2)のいずれかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(4)(1)~(3)の何れかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法であって、比表面積が5m/g以上であるマグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1,3-ジエーテル化合物とを相互に接触させることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法、
(5)上記(1)~(3)の何れかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分と、下記一般式(II)
AlQ3-p (II)
(式中、Rは、炭素数1~6のアルキル基であり、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、pは、0<p≦3の実数である。)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを含む
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒、
(6)上記(1)~(3)の何れかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分または請求項4に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分と、下記一般式(II)
AlQ3-p (II)
(式中、Rは、炭素数1~6のアルキル基であり、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、pは、0<p≦3の実数である。)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを、
相互に接触させる
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法、
(7)上記(5)に記載のオレフィン類重合用触媒または(6)に記載の方法で得られたオレフィン類重合用触媒を用いて、オレフィン類を重合することを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法、
(8)前記オレフィン類の重合が、プロピレン単独重合であるか、プロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合である上記(7)に記載のオレフィン類重合体の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フタル酸エステルに代えて1,3-ジエーテル化合物を所定量含み、かつ比表面積を所定範囲に制御してなるものであることにより、オレフィン類の重合に供したときに、単位時間あたりの重合活性の低下が適度に抑制され、かつ乾燥効率が向上され残留する揮発性有機化合物の含有割合が短時間で大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に調製し得るオレフィン類重合用固体触媒成分およびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記固体触媒成分を含むオレフィン類重合用触媒およびその製造方法ならびにオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、オレフィン類の重合反応に供したときに、単位時間あたりの重合活性の低下が適度に抑制されるとともに、反応後に短時間で脱ガスされ易い為に、後工程において、系内の圧力上昇のリスクやリサイクル系への不純物の混入割合を低減して工程トラブルや得られた重合体の品質低下を低減し得るのみならず、乾燥効率が向上され残留する揮発性有機化合物成分を短時間で大幅に低減し得るオレフィン類重合体を容易に調製可能なオレフィン類重合用固体触媒成分およびその製造方法を提供できる。また、本発明によれば、当該固体触媒成分を含むオレフィン類重合用触媒およびその製造方法ならびにオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<オレフィン類重合用固体触媒成分及びその製造方法>
先ず、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび1,3-ジエーテル化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分であって、
該オレフィン類重合用固体触媒成分に含まれる前記1,3-ジエーテル化合物の割合が2.50~15.00質量%であり、
前記オレフィン類重合用固体触媒成分の比表面積が250m/g以上である
ことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび特定の内部電子供与性化合物を特定量含有するものである。
【0014】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分としては、マグネシウム、チタンおよびハロゲンの供給源となる原料成分と特定の内部電子供与性化合物とを有機溶媒中で相互に接触させ、反応させてなる接触反応物を挙げることができ、具体的には、マグネシウム、チタンおよびハロゲンの供給源となる原料成分として、マグネシウム化合物および四価のチタンハロゲン化合物を用い、これ等の原料と一種以上の1,3-ジエーテル化合物を含む特定の内部電子供与性化合物とを相互に接触させてなる接触反応物を挙げることができる。
【0015】
上記マグネシウム化合物としては、ジアルコキシマグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムおよびアルコキシマグネシウムハライド等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記マグネシウム化合物の内、ジアルコキシマグネシウムまたはマグネシウムジハライドが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、マグネシウムジクロライド、マグネシウムジブロマイド、マグネシウムジイオダイド等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムおよびマグネシウムジクロライドが特に好ましい。
【0016】
上記マグネシウム化合物のうち、ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下に、アルコールと反応させて得たものでもよい。
【0017】
上記ジアルコキシマグネシウムは、顆粒状または粉末状であるものが好ましく、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。
【0018】
ジアルコキシマグネシウムとして球状のものを使用した場合、より良好な粒子形状を有し(より球状で)狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時に生成した重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成した重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の発生を抑制することができる。
【0019】
上記球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。
【0020】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒子径(平均粒子径D50)は、1.0~200.0μmであることが好ましく、5.0~150.0μmであることがより好ましい。ここで、平均粒子径D50は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径を意味するものである。
ジアルコキシマグネシウムが球状である場合、上記平均粒子径D50は1.0~100.0μmであることが好ましく、5.0~80.0μmであることがより好ましく、10.0~70.0μmであることがさらに好ましい。
【0021】
また、ジアルコキシマグネシウムの粒度分布については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものであることが好ましい。
具体的には、ジアルコキシマグネシウムは、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、粒子径5.0μm以下の粒子が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。一方、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、粒子径100.0μm以上の粒子が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
更にその粒度分布をln(D90/D10)で表すと3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。ここで、D90は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、体積積算粒度分布における積算粒度で90%の粒径を意味するものである。また、D10は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、体積積算粒度分布における積算粒度で10%の粒径を意味するものである。
【0022】
上記球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58-41832号公報、特開昭62-51633号公報、特開平3-74341号公報、特開平4-368391号公報、特開平8-73388号公報等に例示されている。
【0023】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、マグネシウムの供給源となる原料成分であるマグネシウム化合物としては、比表面積が、5m/g以上であるものが好ましく、5~50m/gであるものがより好ましく、10~40m/gであるものがさらに好ましい。
後述するように、1,3-ジエーテル化合物を所定量含有するとともに、マグネシム化合物として比表面積が上記範囲内にあるものを使用することにより、所望の比表面積を有する固体触媒成分の調製が容易となる。
【0024】
なお、本出願書類において、マグネシウム化合物の比表面積は、BET法により測定した値を意味する。例えば、マグネシウム化合物の比表面積は、予め測定試料を50℃で2時間真空乾燥した上で、Mountech社製Automatic Surface Area Analyzer HM model-1230を用い、窒素とヘリウムとの混合ガスの存在下において、BET法(自動測定)により測定することができる。
【0025】
上記マグネシウム化合物は、反応時に溶液状または懸濁液状であることが好ましく、溶液状または懸濁液状であることにより、反応を好適に進行させることができる。
【0026】
上記マグネシウム化合物が固体である場合には、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒に溶解することにより溶液状のマグネシウム化合物とすることができ、またはマグネシウム化合物の可溶化能を有さない溶媒に懸濁することによりマグネシウム化合物懸濁液とすることができる。
なお、マグネシウム化合物が液体である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよいし、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にさらに溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよい。
【0027】
固体のマグネシウム化合物を可溶化しうる化合物としては、アルコール、エーテルおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられ、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコールが好ましく、2-エチルヘキサノールが特に好ましい。
一方、固体状のマグネシウム化合物に対して可溶化能を有さない媒体としては、マグネシウム化合物を溶解することがない、飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0028】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分において、チタンおよびハロゲンの供給源となる原料成分である四価のチタンハロゲン化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(III)
Ti(OR4-r (III)
(式中、Rは、炭素数1~4のアルキル基を示し、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、rは、0≦r≦3の整数である。)で表されるチタンハライドまたはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の一種以上であることが好適である。
【0029】
上記一般式(III)で表されるチタンハライドとしては、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等から選ばれる一種以上のチタンテトラハライドが挙げられる。
また、上記一般式(III)で表されるアルコキシチタンハライドとしては、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n-ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ-n-ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ-n-ブトキシチタンクロライド等から選ばれる一種以上が挙げられる。
四価のチタンハロゲン化合物としては、チタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
これらのチタン化合物は単独で用いられてもよいし、2種以上併用することもできる。
【0030】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、1,3-ジエーテル化合物を含有する。1,3-ジエーテル化合物は、オレフィン類重合用固体触媒成分中において、電子供与性基を有する化合物(内部電子供与性化合物)として作用すると考えられる。
【0031】
本出願書類において、1,3-ジエーテル化合物とは、プロパンを基本骨格とし、その1,3位にエーテル基が結合した構造(1,3-ジアルコキシプロパン構造)を有し、さらに所望の置換基を含んでよい化合物群を意味する。
【0032】
1,3-ジエーテル化合物としては、下記一般式(I);
OCHCRCHOR (I)
(式中、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基もしくはシクロアルケニル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基もしくはハロゲン置換芳香族炭化水素基、置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基、炭素数1~12のアルキルアミノ基または炭素数2~12のジアルキルアミノ基を示す。RおよびRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。RおよびRは、互いに結合して環を形成してもよい。RおよびRは、炭素数1~12のアルキル基、ビニル基、炭素数3~12のアルケニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基もしくはハロゲン置換芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7~12の芳香族炭化水素基を示す。RおよびRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表される化合物から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0033】
具体的には、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)1,3-ジメトキシプロパンおよび9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン等から選ばれる一種以上が挙げられ、中でも、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンおよび9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上が好ましい。
【0034】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、1,3-ジエーテル化合物の含有割合が、2.50~15.00質量%であり、4.50~15.00質量%であることが好ましく、4.50~12.00質量%であることがより好ましい。
【0035】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中の1、3-ジエーテル化合物の含有割合が上記範囲内に制限されていることにより、固体触媒成分の比表面積を容易に所望範囲に制御することができる。
【0036】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、内部電子供与性化合物として、1,3-ジエーテル化合物とともに、フタル酸エステルを除く他の内部電子供与性化合物(以下、「他の内部電子供与性化合物」と称する)を用いてなるものであってもよい。
このように、本出願書類において、内部電子供与性化合物とは、1,3-ジエーテル化合物単独の場合と、1,3-ジエーテル化合物および他の内部電子供与性化合物を含む場合のいずれかを意味するものとする。
他の内部電子供与性化合物としては、特に制限されないが、1,3-ジエーテル化合物以外の有機化合物であって、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であることが好ましく、例えば、アルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒト類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si-O-C結合またはSi-N-C結合を含む有機ケイ素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0037】
他の内部電子供与性化合物としては、モノエーテル類、ジエーテル類、エーテルカーボネート類等のエーテル化合物や、モノカルボン酸エステル類、ポリカルボン酸エステル類などのエステル類から選ばれる一種以上がより好ましく、芳香族ジカルボン酸ジエステル等の芳香族ポリカルボン酸エステル類、脂肪族ポリカルボン酸エステル類、脂環式ポリカルボン酸エステル類、ジエーテル類およびエーテルカーボネート類から選ばれる一種以上がさらに好ましい。
【0038】
他の内部電子供与性化合物としては、特に、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル、ジイソブチルマレイン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、メチルコハク酸ジエチル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチル、マロン酸ジ-n-ブチル、マロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ベンジリデンマロン酸ジメチル、ベンジリデンマロン酸ジエチルおよびベンジリデンマロン酸ジブチル等の脂肪族ポリカルボン酸エステル;シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジ-n-プロピル、シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-プロピル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジブチル、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジ-n-プロピル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジブチル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル等の脂環式ポリカルボン酸エステル;(2-エトキシエチル)エチルカーボネート、(2-エトキシエチル)フェニルカーボネート等のエーテルカーボネート類から選ばれる一種以上が好ましい。
【0039】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分が、他の内部電子供与性化合物を含む場合、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中における他の内部電子供与性化合物の含有割合は、0.0~17.5質量%であってもよい。
【0040】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分が、他の内部電子供与性化合物を含む場合、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれる1,3-ジエーテル化合物と他の内部電子供与性化合物の合計含有割合が、2.50~20.00質量%であることが好ましく、4.50~20.00質量%であることがより好ましく、4.50~15.00質量%であることがさらに好ましい。
1,3-ジエーテル化合物と他の内部電子供与性化合物の合計含有割合が上記範囲内にあることによっても、比表面積が大きなオレフィン類重合用固体触媒性分を容易に調製することができる。
【0041】
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中の1,3-ジエーテル化合物と他の内部電子供与性化合物の各含有量は、ガスクロマトグラフィーにより標準溶液を用いて予め作成した検量線により各々測定される値を意味する。例えば、1,3-ジエーテル化合物と他の内部電子供与性化合物の各含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC-14B)を用いて下記の条件で測定したときに、測定する化合物の標準溶液に基づいて測定した検量線を用いて求めることができる。
<測定条件>
カラム:パックドカラム(φ2.6×2.1m, Silicone SE-30 10%,Chromosorb WAWDMCS 80/100、ジーエルサイエンス(株)社製)
検出器:FID(Flame IonizationDetector,水素炎イオン化型検出器)
キャリアガス:ヘリウム、流量40ml/分
測定温度:気化室280℃、カラム225℃、検出器280℃、または気化室265℃、カラム180℃、検出器265℃
【0042】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量は、10.0~70.0質量%が好ましく、10.0~50.0質量%がより好ましく、15.0~40.0質量%がさらに好ましく、15.0~25.0質量%が特に好ましい。
また、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子の含有量は、0.5~8.0質量%が好ましく、0.5~5.0質量%が好ましく、0.5~3.5質量%がさらに好ましい。
さらに、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量は、20.0~88.0質量%が好ましく、30.0~85.0質量%がより好ましく、40.0~80.0質量%がさらに好ましく、45.0~75.0質量%が一層好ましい。
【0043】
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量は、固体触媒成分を塩酸溶液で溶解し、EDTA溶液で滴定するEDTA滴定方法により測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子の含有量は、JIS 8311-1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法により測定した値を意味するものとする。
【0044】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の比表面積は、250m/g以上であり、250~600m/gであることが好ましく、250~500m/gであることがより好ましく、250~450m/gであることがさらに好ましい。
【0045】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、従来のオレフィン類重合用固体触媒成分に比して大きな比表面積を有しており、オレフィン類の重合に供したときに、単位時間あたりの重合活性の低下が適度に抑制されるとともに、揮発性有機化合物の含有割合が大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に調製することができる。
【0046】
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分の比表面積は、予め測定試料を50℃で2時間真空乾燥した上で、Mountech社製Automatic Surface Area Analyzer HM model-1230を用い、窒素とヘリウムとの混合ガスの存在下、BET法(自動測定)により測定した値を意味する。
【0047】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の平均粒子径(平均粒子径D50)は、特に限定されないが5.0~100.0μmであることが好ましく、10.0~80.0μmであることがより好ましく、15.0~70.0μmであることがさらに好ましい。ここで、平均粒子径D50は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径を意味するものである。
【0048】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、平均粒子径D50が上記範囲内にあるものであるにも拘わらず、従来の固体触媒成分に比して大きな比表面積を有するものである。
【0049】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、細孔容積が、0.250~1.000cm/gであるものが好ましく、0.300~0.900cm/gであるものがより好ましく、0.350~0.800cm/gであることがより好ましい。
【0050】
本出願書類において、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の細孔容積は、JIS Z 8831-2(ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法)に従い、マイクロトラックベル社製BELSORP-miniIIを用いて、以下の条件で測定(自動測定)した値を意味する。
<測定条件>
試料量 :0.15g
吸着平均時間 :300秒間
吸着温度 :77K
前処理条件 :真空排気
測定モード :高精度モード(死容積・飽和蒸気圧同時測定)
測定範囲 :細孔直径1.1~355.0nm(BJH法)
【0051】
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、細孔容積が上記範囲内にあることにより、比表面積の高いものを容易に提供することができる。
【0052】
本発明によれば、1,3-ジエーテル化合物を所定量含み、かつ比表面積を所定範囲に制御してなるものであることにより、オレフィン類の重合に供したときに、単位時間あたりの重合活性の低下が適度に抑制されるとともに、揮発性有機化合物の含有割合が大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に調製し得るオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、フタル酸エステルを用いなくても、オレフィン類の重合反応に供したときに、単位時間あたりの重合活性の低下が適度に抑制されるとともに、反応後に短時間で脱ガスされ易い為に、後工程において、系内の圧力上昇のリスクやリサイクル系への不純物の混入割合を低減して工程トラブルや得られた重合体の品質低下を低減し得るのみならず、乾燥効率が向上され残留する揮発性有機化合物成分を短時間で大幅に低減し得るオレフィン類重合体を容易に調製可能なオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができる。
【0053】
次に、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を製造する方法であって、比表面積が5m/g以上であるマグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、1,3-ジエーテル化合物とを相互に接触させることを特徴とするものである。
【0054】
上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および1,3-ジエーテル化合物の詳細は上述したとおりである。また、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および1,3-ジエーテル化合物の各使用量も、上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および1,3-ジエーテル化合物の各含有量を満たすように適宜配合することが好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法においては、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、1,3-ジエーテル化合物とともに、フタル酸エステルを除く上述した他の内部電子供与性化合物を用いてもよい。
上記1,3-ジエーテル化合物の詳細は、上述したとおりである。また、他の内部電子供与性化合物の使用量も、上記他の内部電子供与性化合物の含有量を満たすように適宜配合することが好ましい。
【0055】
上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および1、3-ジエーテル化合物を含む内部電子供与性化合物を相互に接触させる際は、第三成分であるポリシロキサンの存在下に行ってもよい。
【0056】
ポリシロキサンとは、主鎖にシロキサン結合(-Si-O-結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02~100.00cm/s(2~10000センチストークス)、より好ましくは0.03~5.00cm/s(3~500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンを意味する。
【0057】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジシロキサンとしてヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、3-ジブロモテトラメチルジシロキサン、クロロメチルペンタメチルジシロキサン、1,3-ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン等が例示され、ジシロキサン以外のポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が例示され、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10~80%のメチルハイドロジェンポリシロキサン等が例示され、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示され、変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサン等が例示される。これらの中では、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0058】
マグネシウム、チタンおよびハロゲンの供給源となる原料成分と、1,3-ジエーテル化合物を含む内部電子供与性化合物とを相互に接触させる処理(接触処理)は有機溶媒中で行われることが好ましい。また、当該有機溶媒としては、不活性有機溶媒が好ましい。
【0059】
上記不活性有機溶媒としては、常温(20℃)下において液体で、かつ沸点50~150℃であるものが好ましく、常温下において液体で、かつ沸点50~150℃である芳香族炭化水素化合物または飽和炭化水素化合物がより好ましい。
【0060】
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の直鎖脂肪族炭化水素化合物、メチルヘプタン等の分岐状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記不活性有機溶媒のうち、常温下において液体で、沸点が50~150℃である芳香族炭化水素化合物が、得られる固体触媒成分の活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性を向上させることができるため、好適である。
【0061】
マグネシウム、チタンおよびハロゲンの供給源となる原料成分と1,3-ジエーテル化合物を含む内部電子供与性化合物とは、適宜不活性有機溶媒を用いて混合することにより、相互に接触させることができる。
【0062】
上記反応時の温度は、0~130℃が好ましく、40~130℃がより好ましく、30~120℃がさらに好ましく、80~120℃が一層好ましい。また、反応時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0063】
上記反応に先だって低温熟成を施してもよい。ここで、低温熟成とは、上記反応時の温度よりも低温で各成分を相互に接触させる予備反応を意味する。
【0064】
低温熟成時の温度は、-20~70℃が好ましく、-10~60℃がより好ましく、-10~30℃がさらに好ましい。また、低温熟成時間は、1分間~6時間が好ましく、5分間~4時間がより好ましく、30分間~3時間がさらに好ましい。
【0065】
マグネシウム、チタンおよびハロゲンの供給源となる原料成分としてマグネシウム化合物および四価のチタンハロゲン化合物を用い、これ等を1,3-ジエーテル化合物を含む内部電子供与性化合物類と、不活性有機溶媒を用いて相互に接触させる場合、マグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.5~100.0モルであることが好ましく、1.0~50.0モルであることがより好ましく、1.0~10.0モルであることがさらに好ましい。
また、マグネシウム化合物1モルに対する1,3-ジエーテルを含む内部電子供与性化合物の使用量は、0.03~0.3モルであることが好ましく、0.06~0.3モルであることがより好ましく、0.03~0.2モルであることがさらに好ましい。
さらに、不活性有機溶媒の使用量は、マグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0066】
上記各成分の接触処理においては、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら反応を行うことが好ましい。
上記接触処理における反応終了後、得られた反応液は、静置し、適宜、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)とすることにより固体触媒成分を得ることができる。さらに、ウェット状の反応液を、熱風乾燥等により乾燥することにより固体触媒成分を得ることもできる。
【0067】
上記反応液は、洗浄処理を施してもよく、当該洗浄処理は、通常洗浄液を用いて行われる。
洗浄液としては、上記不活性有機溶媒と同様のものを挙げることができ、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の直鎖脂肪族炭化水素化合物や、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の環式脂肪族炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が好ましい。
上記洗浄液を使用することにより、反応液中から、副生成物や不純物を容易に溶解し、除去して洗浄後反応液を得ることができる。さらに、洗浄後反応液を、熱風乾燥等により乾燥することにより固体触媒成分を得ることもできる。
【0068】
上記洗浄処理は、0~120℃の温度下で行うことが好ましく、0~110℃の温度下で行うことがより好ましく、30~110℃の温度下で行うことがさらに好ましく、50~110℃の温度下で行うことが一層好ましく、50~100℃の温度下で行うことがより一層好ましい。
【0069】
洗浄処理は、反応液に対して所望量の洗浄液を加えて攪拌した後、フィルトレーション法(濾過法)もしくはデカンテーション法により、液相を除去することにより行うことが好ましい。
また、洗浄回数は複数回(2回以上)であってもよい。
【0070】
上記各成分を相互に接触させた後、洗浄処理することにより、洗浄後反応液中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン-カルボン酸錯体等)の不純物を除去することができる。
【0071】
上記接触処理後や洗浄処理後に適宜後処理を施してもよい。
上記後処理を施す場合、例えば、上記反応終了後に得られた反応液や、上記洗浄処理後に得られた洗浄後反応液に対し、四価のチタンハロゲン化合物をさらに接触させる態様や、四価のチタンハロゲン化合物をさらに接触させた後に洗浄する態様を挙げることができる。上記後処理後における洗浄は、上述した反応液の洗浄と同様に行うことができる。
【0072】
上記後処理後に得られた反応生成物や、該後処理後の洗浄により得られた反応生成物は、通常、懸濁液状であり、当該懸濁液状の各反応生成物は、静置し、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)にして固体触媒成分を得ることができる。さらに該ウェット状の固体触媒成分を、熱風乾燥等により乾燥することにより固体触媒成分を得ることができる。
【0073】
本発明によれば、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を簡便に製造する方法を提供することができる。
【0074】
<オレフィン類重合用触媒及びその製造方法>
次に、本発明に係るオレフィン類重合用触媒について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分と、下記一般式(II)
AlQ3-p (II)
(式中、Rは、炭素数1~6のアルキル基であり、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、pは、0<p≦3の実数である。)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを含むことを特徴とするものである。
【0075】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒に含まれるオレフィン類重合用固体触媒成分の詳細は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の説明で述べたとおりである。
【0076】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記特定のオレフィン類重合用固体触媒成分と一般式(II)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを含むものである。
【0077】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、有機アルミニウム化合物として、下記一般式(II)
AlQ3-p (II)
(式中、Rは、炭素数1~6のアルキル基であり、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、pは、0<p≦3の実数である。)で表される化合物から選ばれる一種以上を含む。
【0078】
一般式(II)で表わされる有機アルミニウム化合物において、Rは、炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等を挙げることができる。
【0079】
上記一般式(II)で表わされる有機アルミニウム化合物において、Qは、水素原子またはハロゲン原子を示し、Qがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0080】
上記一般式(II)で表わされる有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドから選ばれる一種以上を挙げることができ、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好適である。
【0081】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合用固体触媒成分を構成するチタン原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物を、1~2000モル含むことが好ましく、50~1000モル含むことがより好ましい。
【0082】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、後述する本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法により好適に製造することができる。
【0083】
本発明者等が検討したところ、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、フタル酸エステルに代えて1,3-ジエーテル化合物を採用することによって、オレフィン類に対し重合活性の低下を適度に抑制することができ、固体触媒成分を構成する1,3-ジエーテル化合物量を一定範囲に制限し、該固体触媒成分の比表面積および細孔容積を一定の範囲に保持することによって、上記重合活性の低下を適度に抑制することができるとともに、得られるオレフィン類重合体中に残留する揮発性有機化合物量を短時間で大幅に低減し得ることを見出して、本発明を完成するに至ったものである。
【0084】
すなわち、本発明によれば、オレフィン類の重合反応に供したときに、最終反応器中に存在するポリマー粒子を排出するために、未反応モノマー及び揮発物質をパージした後、さらにスチーム処理に付し、反応性モノマー及び揮発物質を除去し、次いで乾燥する一連の工程において、乾燥工程の終了までに要する時間が大幅に低減でき、乾燥効率を著しく改善し得るオレフィン類重合体を容易に調製可能なオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【0085】
次に、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分または本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法で得られたオレフィン類重合用固体触媒成分と、下記一般式(II)
AlQ3-p (II)
(式中、Rは、炭素数1~6のアルキル基であり、Qは、水素原子またはハロゲン原子であり、pは、0<p≦3の実数である。)で表される化合物から選ばれる一種以上の有機アルミニウム化合物とを、
相互に接触させる
ことを特徴とするものである。
【0086】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、オレフィン類重合用固体触媒成分の詳細は、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の説明で述べたとおりである。
また、本発明に係るオレフィン類重合触媒の製造方法において、一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物の詳細は、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の説明で述べたとおりである。
【0087】
上述したように、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、フタル酸エステルに代えて1,3-ジエーテル化合物を採用することによってオレフィン類に対し重合活性の低下を適度に抑制することができ、固体触媒成分を構成する1,3-ジエーテル化合物量を一定範囲に制限し、該固体触媒成分の比表面積および細孔容積を一定の範囲に保持することによって、上記重合活性の低下を適度に抑制することができるとともに、得られるオレフィン類重合体中に残留する揮発性有機化合物量を短時間で大幅に低減し得るオレフィン類重合用触媒を製造し得ることを見出して、本発明を完成するに至ったものである。
【0088】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、オレフィン類重合用固体触媒成分および有機アルミニウム化合物を、オレフィン類の不存在下で接触させてもよいし、オレフィン類の存在下で(重合系内で)接触させてもよい。
【0089】
上記オレフィン類重合用固体触媒成分および有機アルミニウム化合物の接触は、オレフィン類重合用固体触媒成分や得られるオレフィン類重合用触媒の劣化を防止するため、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下、或いはプロピレン等のモノマー雰囲気下で行うことが好ましい。
また、操作の容易性を考慮すると、不活性溶媒等、分散媒の存在下において行うことも好ましく、不活性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等が用いられ、脂肪族炭化水素がより好ましく、中でもヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンがより好ましい。
【0090】
上記オレフィン類重合用固体触媒成分および有機アルミニウム化合物を接触させる際の温度は、15℃未満が好ましく、-15℃~10℃がより好ましく、0℃~10℃がさらに好ましい。
【0091】
上記オレフィン類重合用固体触媒成分および有機アルミニウム化合物を接触させる際の接触時間は、30分間以下が好ましく、5秒間~20分間がより好ましく、30秒間~15分間がさらに好ましく、1分間~10分間が一層好ましい。
【0092】
通常、オレフィン類重合用固体触媒成分に助触媒である有機アルミニウム化合物を接触させると急減に反応が進行し、固体触媒成分を構成する1,3-ジエーテル化合物の脱離や、助触媒である有機アルミニウム化合物による固体触媒成分の活性化が生じ、特に不活性ガス雰囲気下においては、過剰な反応により触媒活性点(チタン活性点)の失活が生じ易くなる。
一方、上記接触温度および接触時間で接触処理することにより、有機アルミニウム化合物による固体触媒成分中のチタン活性点への過剰な反応を抑制して触媒活性点の失活を効果的に抑制することができる。
【0093】
本発明に係る製造方法において、得られるオレフィン類重合用触媒を構成する、固体触媒成分および有機アルミニウム化合物の含有割合は、本発明の効果が得られる範囲において任意に選定することができ、特に限定されない。
【0094】
本発明によれば、オレフィン類の重合に供したときに、単位時間あたりの重合活性に優れるとともに、揮発性有機化合物の含有割合が大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に調製し得るオレフィン類重合用触媒を提供できるとともに、係るオレフィン類重合用触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、オレフィン類の重合反応に供したときに、単位時間あたりの重合活性の低下を適度に抑制するとともに、反応後に短時間で脱ガスされ易い為に、後工程において、系内の圧力上昇のリスクやリサイクル系への不純物の混入割合を低減して工程トラブルや得られた重合体の品質低下を低減し得るのみならず、乾燥効率が向上され残留する揮発性有機化合物成分を短時間で大幅に低減し得るオレフィン類重合体を容易に調製可能なオレフィン類重合用触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。
【0095】
<オレフィン類重合体の製造方法>
次に、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、本発明に係るオレフィン類重合用触媒または本発明に係る製造方法で得られたオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類を重合することを特徴とするものである。
【0096】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、上記オレフィン類の重合がプロピレン単独重合であるかプロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合であることが好ましい。
【0097】
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、エチレンまたは1-ブテンが好適である。
【0098】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、プロピレンの単独重合を行ってもよいし、プロピレンおよび他のα-オレフィン類の共重合を行ってもよく、プロピレンと他のオレフィン類との共重合を行う場合、プロピレンと少量の(エチレン等の)プロピレン以外のα-オレフィン単量体をコモノマーとして、1段で重合するランダム共重合と、第一段階(第一重合槽)でプロピレンの単独重合を行い、第二段階(第二重合槽)あるいはそれ以上の多段階(多段重合槽)でプロピレンとエチレン等の他のα-オレフィンとの共重合を行うブロック共重合が代表的であり、プロピレンと他のα―オレフィンとのブロック共重合が好ましい。
【0099】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができる。
また、重合対象となるオレフィン類は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。
【0100】
オレフィン類の重合は、例えば、オートクレーブ等の反応炉内において、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の存在下、オレフィン類を導入し、加熱、加圧状態下に行うことができる。
【0101】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類を重合(以下、適宜、本重合と称する。)するにあたり、重合対象となるオレフィン類に対して本発明に係る製造方法で得られるオレフィン類重合用触媒の構成成分の一部または全部を接触させることにより、予備的な重合(以下、適宜、予備重合と称する。)を行ってもよい。
【0102】
予備重合を行うに際して、本発明に係る製造方法で得られるオレフィン類重合用触媒の構成成分およびオレフィン類の接触順序は任意であるが、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いでオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。
予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類、あるいはスチレン等のモノマーを用いることができ、予備重合条件も、上記重合条件と同様である。
【0103】
上記予備重合を行うことにより、触媒活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性および粒子性状等を一層改善し易くなる。
【0104】
本発明に係る製造方法において、得られるオレフィン類重合体の比表面積は、250~600m/gであることが好ましく、250~500m/gであることがより好ましく、250~450m/gであることがさらに好ましい。
【0105】
本発明に係る製造方法により得られるオレフィン類重合体は、本発明に係るオレフィン類重合用触媒または本発明に係る製造方法で得られたオレフィン類重合用触媒を用いてなるものであることから、従来のオレフィン類重合体に比して比表面積が大きく、揮発性有機化合物の含有割合を大幅に低減することができる。
【0106】
本出願書類において、オレフィン類重合体の比表面積は、予め測定試料を50℃で2時間真空乾燥した上で、Mountech社製Automatic Surface Area Analyzer HM model-1230を用い、窒素とヘリウムとの混合ガスの存在下、BET法(自動測定)により測定した値を意味する。
【0107】
本発明によれば、優れた重合活性下において、乾燥効率が向上され残留する揮発性有機化合物の含有割合が短時間で大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に調製し得るオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、オレフィン類の重合反応に供したときに、最終反応器中に存在するポリマー粒子を排出するために、未反応モノマー及び揮発物質をパージした後、さらにスチーム処理に付し、反応性モノマー及び揮発物質を除去し、次いで乾燥する一連の工程において、乾燥工程の終了までに要する時間が大幅に低減でき、乾燥効率を著しく改善し得るオレフィン類重合体を容易に調製可能なオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【実施例
【0108】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0109】
(実施例1)
<固体触媒成分の調製>
攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコ内部を窒素ガス(不活性ガス)で充分に置換し、ジエトキシマグネシウム(マグネシウム化合物)(平均粒子径D50が20.0μm、比表面積20.4m/g)20g及びトルエン(不活性有機溶媒)60mlを装入し、懸濁状のジエトキシマグネシウム含有液を得た。
次いで、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された容量500mlの丸底フラスコに予め装填された、トルエン50ml及び四塩化チタン(四価のチタンハロゲン化合物)40mlの混合溶液中に、上記ジエトキシマグネシウム含有液を添加し、懸濁液とした。
次いで、得られた懸濁液を-6℃で1時間反応させた後、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン(1,3-ジエーテル化合物)10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート(他の内部電子供与性化合物)14.0ミリモルを添加し、さらに100℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理を行った。
反応終了後、上澄みを抜き出し、90℃のトルエン150mlで4回洗浄した。得られた反応生成物に四塩化チタン20mlおよびトルエン100mlを加えて、100℃まで昇温し、15分反応させる処理を4回行った後、40℃のn-ヘプタン(不活性有機溶媒)150mlで6回洗浄して固体触媒成分を得た。
固液分離後、得られた固体触媒成分中のチタン原子の含有量を、上述した方法により測定したところ2.3質量%であった。また、得られた固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量を、上述した方法により測定したところ19.9質量%であった。また、得られた固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量を、固体触媒成分を、上述した方法により測定したところ65.0質量%であった。
また、得られた上記固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を上述した方法により測定した。結果を表1に示す。
【0110】
<重合用触媒の形成(予備接触)>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、n-ヘプタン(不活性溶媒)7ml、トリエチルアルミニウム(有機アルミニウム化合物)1.32ミリモルおよび、上記固体触媒成分0.00165ミリモル(チタン原子換算量)装入し、窒素雰囲気下で、該オートクレーブの内温を10℃に3分間維持して重合用触媒を形成した。
【0111】
<オレフィン重合>
次いで、上記のとおり形成された重合用触媒を有する上記オートクレーブ中に、水素ガス1.5リットルおよび液化プロピレン1.4リットルを装入し、該オートクレーブを20℃まで昇温し、該オートクレーブの内温20℃で5分間の予備重合を行なった後、該オートクレーブを70℃まで昇温し、該オートクレーブの内温70℃で1時間の重合反応を行った。
また、上記重合反応時における重合活性を以下の方法で求めるとともに、得られた重合体について、下記の方法により、揮発性有機化合物の回収量および揮発性有機化合物の放出割合を算出した。結果を表1に示す。
【0112】
<重合活性>
固体触媒成分1g当たり、重合時間1時間当たりの重合体生成量(F)kgを示す重合活性(kg-PP/g-cat)は、下式により算出した。
重合活性(kg-PP/g-cat)=生成重合体(F)kg/固体触媒成分g/1時間
【0113】
<揮発性有機化合物の回収量>
上記反応により得られた重合体を、200g分取し、室温で12時間風乾した後、内容積2リットルのオートクレーブに挿入して、真空ポンプ((株)アルバック製、型番G-100D、到達真空度10-3Torr)により70℃、2時間の減圧乾燥を行なった。次いで、オートクレーブ内をプロピレンガスで各々0.5MPaに加圧し、0.1MPaまで減圧する操作を合計3回繰り返し行なった後、オートクレーブ内をプロピレンガスで0.8MPaまで加圧し、70℃に昇温して1時間保持した。その後、オートクレーブ内のガス成分を系外に放出し、各々3分間で大気圧まで減圧した後、5分以内に重合体をフラスコに全量回収し、揮発性有機化合物成分が残留した状態にある重合体を有するフラスコの質量P(g)を測定した。
上記フラスコを70℃に加温しながら、ロータリーエバポレーターを用いて乾燥を行い、3時間毎にフラスコ質量S(g)を測定し、フラスコ質量が恒量に到達したことを確認した後(12時間経過後)、乾燥を停止した。
なお、上記恒量とは、揮発性有機化合物の回収が終了した(n時間の回収量R=0[質量ppm])となった状態を意味する。
このとき、下記式により各々揮発性有機化合物の回収量(重合体1gあたりの揮発性有機化合物含有量)を算出した。
揮発性有機化合物の回収量(質量ppm)=〔{P(g)-S(g)}/200(g)〕×1000000
【0114】
<揮発性有機化合物の放出割合>
上記ロータリーエバポレーターによる乾燥を3時間毎に恒量に到達するまで行ったときの、乾燥開始から3時間後の揮発性有機化合物の回収量R(質量ppm)、上記ロータリーエバポレーターによる乾燥を12時間行ったときの揮発性有機化合物の回収量R(質量ppm)および上記ロータリーエバポレーターによる乾燥を恒量に達するまで行った時の揮発性有機化合物の回収量R(質量ppm)を測定した。結果を表1に示す。
また、このときの恒量までの所要時間(時間)と、各々下記式により算出される、揮発性有機化合物回収量割合(質量%)と、乾燥開始から3時間経過後恒量までの揮発性有機化合物回収量とを表1に示す。
揮発性有機化合物の乾燥効率(質量%)=(乾燥開始から3時間後の揮発性有機化合物の回収量R/恒量に達するまで乾燥処理した時の揮発性有機化合物の回収量R)×100
乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量(質量ppm)=(恒量に達するまで乾燥処理した時の揮発性有機化合物の回収量R)-(乾燥開始から3時間後の揮発性有機化合物の回収量R
【0115】
(実施例2)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンを8.5ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート12.5ミリモル添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の回収量、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物の乾燥効率および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を求めた。結果を表1に示す。
【0116】
(実施例3)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン15.0ミリモルのみを添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の回収量、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物の乾燥効率および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を求めた。結果を表1に示す。
【0117】
(実施例4)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよびベンジリデンマロン酸ジエチル10.0ミリモル添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の乾燥効率、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物回収量割合および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を求めた。結果を表1に示す。
【0118】
(実施例5)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよびジイソブチルマロン酸ジメチル10.0ミリモル添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の回収量、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物の乾燥効率および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を求めた。結果を表1に示す。
【0119】
(実施例6)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチル10.0ミリモル添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の回収量、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物の乾燥効率および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を求めた。結果を表1に示す。
【0120】
(比較例1)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンのみを22.4ミリモル添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の回収量、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物の乾燥効率および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を求めた。結果を表1に示す。
【0121】
(比較例2)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)が20.0μm、比表面積が20.4m/gのジエトキシマグネシウム20gに替えて、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)が38.9μm、比表面積が18.8m/gのジエトキシマグネシウム20gを装入し、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンのみを24.0ミリモル添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の回収量、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物の乾燥効率および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を求めた。結果を表1に示す。
【0122】
(比較例3)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン7.2ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート12.5ミリモル添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の回収量、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物の乾燥効率および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を求めた。結果を表1に示す。
【0123】
(比較例4)
実施例1の<固体触媒成分の調製>において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン10.0ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート14.0ミリモル添加したことに代えて、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン3.6ミリモルおよび(2-エトキシエチル)エチルカーボネート15.0ミリモル添加した以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成(予備接触)およびオレフィン重合を行った。
得られた固体触媒成分の平均粒子径、比表面積および細孔容積を実施例1と同様の方法により測定した。
また、上記重合反応時における重合活性を実施例1と同様の方法で求めるとともに、得られた重合体について、実施例1と同様の方法により、揮発性有機化合物の回収量、恒量までの所要時間、揮発性有機化合物の乾燥効率および乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量を算出した。結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1より、実施例1~実施例6においては、フタル酸エステルに代えて、特定割合の1,3-ジエーテル化合物を含有する特定の固体触媒成分を用いていることから、単位時間あたりの重合活性に優れることが分かる。また、実施例1~実施例6においては、得られるオレフィン類重合体において、揮発性有機化合物の乾燥効率{(R/R)×100}が高く、乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量(R-R)が少ないことから、乾燥効率が向上され揮発性有機化合物を短時間で容易に放出してその含有割合が大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に提供し得ることが分かる。つまり、実施例1~実施例6においては、単位時間当たりの重合活性の低下を適度に抑制しつつ、短時間で揮発性有機化合物を大幅に放出し得るオレフィン類重合体を調製し得ることが分かる。
一方、表1より、比較例1~比較例4においては、上記特定の固体触媒成分を用いていない。このため、上記実施例に比較して重合活性に劣ることが分かる(比較例3および比較例4)。また、得られるオレフィン類重合体において、揮発性有機化合物の乾燥効率{(R/R)×100}が低く、乾燥開始から3時間経過後恒量に達するまでの揮発性有機化合物回収量(R-R)が多いことから、揮発性有機化合物が短時間に放出され難くその含有割合が低減され難いことが分かる(比較例1~比較例4)。つまり、比較例1~比較例4においては、単位時間当たりの重合活性の低下の抑制と、得られるオレフィン類重合体における短時間での揮発性有機化合物の放出を両立し得ないことが分かる。
一般に、オレフィン類重合体に残留する揮発性有機化合物量が多量である場合だけでなく、オレフィン類重合体に残留する揮発性有機化合物が脱ガスされ難くその放出に長時間を要する場合にも工程上の不具合を生じ易くなるが、例えば、表1に示す実施例4と比較例4との対比からも明らかなように、得られるオレフィン類重合体に含まれる揮発性有機化合物量(恒量までの揮発性有機化合物の回収量R)が同一であっても、実施例4においては本発明に係る特定の固体触媒成分を用いているために、乾燥効率が向上され揮発性有機化合物を短時間で容易に放出してその含有割合が大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に提供し得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によれば、フタル酸エステルを用いなくても、オレフィン類の重合に供したときに、単位時間あたりの重合活性の低下を適度に抑制し得るとともに、乾燥効率が向上され残留する揮発性有機化合物の含有割合が短時間で大幅に低減されたオレフィン類重合体を容易に調製し得るオレフィン類重合用固体触媒成分およびその製造方法、係る固体触媒成分を含むオレフィン類重合用触媒およびその製造方法ならびにオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。