(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】車いす及び歩行補助機器
(51)【国際特許分類】
A61G 5/08 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61G5/08 702
(21)【出願番号】P 2020100217
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】598026851
【氏名又は名称】株式会社カワムラサイクル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 治人
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-079703(JP,A)
【文献】実公昭48-027418(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/08
A61H 3/04
B62B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの間隔を拡げた使用姿勢と前記間隔を狭めた折り畳み姿勢とに姿勢変化可能に前記一対のサイドフレームを連結する連結フレームと、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームの前記間隔を維持させる姿勢維持装置とを備え、
前記姿勢維持装置が、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記一対のサイドフレームの前記間隔を拡げる向きに付勢する弾性体を備え
、
前記弾性体が、前記折り畳み姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記間隔を狭める向きに付勢する、車いす。
【請求項2】
前記姿勢維持装置が、前記一対のサイドフレームを連結するリンク機構と、ストッパとを備え、
前記ストッパが、前記折り畳み姿勢における前記リンク機構が前記弾性体の付勢によって倒れることを規制する、
請求項1に記載の車いす。
【請求項3】
一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの間隔を拡げた使用姿勢と前記間隔を狭めた折り畳み姿勢とに姿勢変化可能に前記一対のサイドフレームを連結する連結フレームと、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームの前記間隔を維持させる姿勢維持装置とを備え、
前記姿勢維持装置が、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記一対のサイドフレームの前記間隔を拡げる向きに付勢する弾性体を備え、
それぞれのサイドフレームが前記姿勢維持装置が取り付けられるサポートを備え、
前記姿勢維持装置が、前記使用姿勢と前記折り畳み姿勢と姿勢変化に伴って前記サポートに対して回動する第一リンクを備え、
前記弾性体が、一端が前記第一リンクに回動可能に取り付けられ他端が前記サポートに回動可能に取り付けられ、
前記使用姿勢において、前記弾性体と前記第一リンクとの回動中心P4と前記弾性体と前記サポートとの回動中心P5との直線距離D45が、前記第一リンクと前記サポートとの回動中心P2と前記回動中心P4との直線距離D24と前記回動中心P2と前記回動中心P5との直線距離D25との和より小さく、前記弾性体が前記直線距離D45を縮める向きに付勢している、車いす。
【請求項4】
前記姿勢維持装置が、前記一対のサイドフレームを連結するリンク機構を備え、
前記弾性体が前記リンク機構を付勢することによって、前記リンク機構が前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームの前記間隔を維持させる、請求項1
から3のいずれかに記載の車いす。
【請求項5】
前記姿勢維持装置が把持可能なグリップを備え、
前記グリップが、前記一対のサイドフレームの前記間隔を狭めるほどに上方に移動する前記リンク機構のジョイントに、配置されている、
請求項4に記載の車いす。
【請求項6】
一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの間隔を拡げた使用姿勢と前記間隔を狭めた折り畳み姿勢とに姿勢変化可能に前記一対のサイドフレームを連結する連結フレームと、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームの前記間隔を維持させる姿勢維持装置とを備え、
前記姿勢維持装置が、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記一対のサイドフレームの前記間隔を拡げる向きに付勢する弾性体を備え、
前記弾性体が、前記折り畳み姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記間隔を狭める向きに付勢する、歩行補助機器。
【請求項7】
前記姿勢維持装置が、前記一対のサイドフレームを連結するリンク機構と、ストッパとを備え、
前記ストッパが、前記折り畳み姿勢における前記リンク機構が前記弾性体の付勢によって倒れることを規制する、請求項6に記載の歩行補助機器。
【請求項8】
一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの間隔を拡げた使用姿勢と前記間隔を狭めた折り畳み姿勢とに姿勢変化可能に前記一対のサイドフレームを連結する連結フレームと、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームの前記間隔を維持させる姿勢維持装置とを備え、
前記姿勢維持装置が、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記一対のサイドフレームの前記間隔を拡げる向きに付勢する弾性体を備え、
それぞれのサイドフレームが前記姿勢維持装置が取り付けられるサポートを備え、
前記姿勢維持装置が、前記使用姿勢と前記折り畳み姿勢と姿勢変化に伴って前記サポートに対して回動する第一リンクを備え、
前記弾性体が、一端が前記第一リンクに回動可能に取り付けられ他端が前記サポートに回動可能に取り付けられ、
前記使用姿勢において、前記弾性体と前記第一リンクとの回動中心P4と前記弾性体と前記サポートとの回動中心P5との直線距離D45より、前記第一リンクと前記サポートとの回動中心P2と前記回動中心P4との直線距離D24と前記回動中心P2と前記回動中心P5との直線距離D25との和より小さく、前記弾性体が前記直線距離D45を縮める向きに付勢している、歩行補助機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いす及び歩行補助機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、収納や持ち運びに便利な折り畳み式の車いすが開示されている。この車いすは、左右の一対のサイドフレームを含む車体フレームと、この一対のサイドフレームを連結するクロスメンバーとを備える。このクロスメンバーを回動させることで、車いすは、一対のサイドフレームの間隔を狭めた折り畳み姿勢と、その間隔を拡げた使用姿勢とに、姿勢変化可能にされている。
【0003】
この車いすの使用姿勢では、クロスメンバーの上端部が着脱可能にサイドフレームに支持される。このクロスメンバーの下端部がサイドフレームに軸着され、その上端部がサイドフレームに支持されることで、クロスメンバーの回動が規制される。このクロスメンバーの回動が規制されることで、一対のサイドフレームの間隔が所定の一定幅に保持される。
【0004】
この様にして着脱可能に支持されたクロスメンバーの上端部は、外力の作用によって、サイドフレームに対して、動き易く、がたつき易い。クロスメンバーの上端部のがたつきは、車いすの剛性を損なう。剛性の低い車いすは、例えば凹凸の多い路面の走行で、揺れを生じ易い。この様な車いすは乗り心地に劣り易い。
【0005】
この車いすでは、使用姿勢にされた車いす本体に、別体に設けられたフレーム付き座面が取付けられる。剛性を有する、このフレーム付き座面を、取付けることで、この車いすの剛性が向上している。これにより、使用姿勢における車いすの乗り心地が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この車いすでは、折り畳み姿勢から使用姿勢にする際に、車いす本体を使用姿勢にする動作と、使用姿勢にされた車いす本体にフレーム付き座面を取付ける動作とが、必要である。この車いすは、折り畳み姿勢から使用姿勢にする際に、フレーム付き座面を取付ける手間が掛かる。
【0008】
本発明の目的は、使用姿勢に容易に変更できる、車いす及び歩行補助機器の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車いすは、一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの間隔を拡げた使用姿勢と前記間隔を狭めた折り畳み姿勢とに姿勢変化可能に前記一対のサイドフレームを連結する連結フレームと、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームの前記間隔を維持させる姿勢維持装置とを備える。前記姿勢維持装置は、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記一対のサイドフレームの前記間隔を拡げる向きに付勢する弾性体を備える。
【0010】
好ましくは、前記姿勢維持装置は、前記一対のサイドフレームを連結するリンク機構を備える。前記弾性体が前記リンク機構を付勢することによって、前記リンク機構は前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームの前記間隔を維持させる。
【0011】
好ましくは、前記姿勢維持装置は、把持可能なグリップを備える。前記グリップは、前記一対のサイドフレームの前記間隔を狭めるほどに上方に移動する、前記リンク機構のジョイントに配置されている。
【0012】
好ましくは、前記弾性体は、前記折り畳み姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記間隔を狭める向きに付勢する。
【0013】
好ましくは、前記姿勢維持装置は、前記一対のサイドフレームを連結するリンク機構と、ストッパとを備える。前記ストッパは、前記折り畳み姿勢における前記リンク機構が前記弾性体の付勢によって倒れることを規制する。
【0014】
本発明に係る歩行補助機器は、一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの間隔を拡げた使用姿勢と前記間隔を狭めた折り畳み姿勢とに姿勢変化可能に前記一対のサイドフレームを連結する連結フレームと、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームの前記間隔を維持させる姿勢維持装置とを備える。前記姿勢維持装置は、前記使用姿勢における前記一対のサイドフレームを、前記一対のサイドフレームの前記間隔を拡げる向きに付勢する弾性体を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車いすでは、姿勢維持装置の弾性体が、使用姿勢における一対のサイドフレームを、一対のサイドフレームの間隔を拡げる向きに付勢する。この車いすは、使用姿勢に容易に変更できる。本発明に係る歩行補助機器は、前述の車いすと同様の効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る車いすが示された概念図である。
【
図3】
図3は、
図1の車いすの姿勢維持装置の分解説明図である。
【
図4】
図4は、
図1の車いすの姿勢維持装置の使用状態が示された説明図である。
【
図5】
図5(A)は
図1の車いすの姿勢維持装置の他の使用状態が示された説明図であり、
図5(B)はこの姿勢維持装置の更に他の使用状態が示された説明図である。
【
図6】
図6(A)は
図1の車いすの姿勢維持装置の一部部分の使用状態が示された説明図であり、
図6(B)はこの一部分の他の使用状態が示された説明図であり、
図6(C)は
図6(B)の矢印VICの向きに見た説明図である。
【
図7】
図7は、
図1の車いすが備える姿勢維持装置の更に他の使用状態が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、本発明に係る車いす2が示されている。
図1の矢印Xは、車いす2の前後方向前向きを表している。矢印Yは、車いす2の左右方向左向きを表している。矢印Zは、車いす2の上下方向上向きを表している。
【0019】
この車いす2は、一対のサイドフレーム4と、連結フレームとしてのクロスフレーム6と、一対の前輪8と、一対の後輪10と、姿勢維持装置14とを備える。図示されないが、車いす2は、更に、一対のサイドフレーム4の間に架け渡される座シート及び背シートと、座シート及び背シートを覆うクッションとを備える。
【0020】
それぞれのサイドフレーム4は、前後方向に座面に沿って延びるシートサイドパイプ16と、シートサイドパイプ16の下方で前後方向に延びるベースパイプ18と、シートサイドパイプ16の後方で上下方向に背面に沿って延びる背パイプ20とを備える。このシートサイドパイプ16、ベースパイプ18及び背パイプ20は、一体に固定されている。この車いす2では、シートサイドパイプ16とベースパイプ18とは他のパイプを介して溶接で固定されている。シートサイドパイプ16と背パイプ20とはパイプ材料が折り曲げられて形成されている。
【0021】
クロスフレーム6は、一対のシートパイプ22と、クロスメンバー対24とを備える。それぞれのシートパイプ22は、シートサイドパイプ16に沿って前後方向に延びている。クロスメンバー対24は、クロスメンバー24A及びクロスメンバー24Bを備える。クロスメンバー24Aの中央部とクロスメンバー24Bの中央部が軸着されている。クロスメンバー24Aの上端に左のシートパイプ22が固定され、クロスメンバー24Bの上端に右のシートパイプ22が固定されている。
【0022】
クロスメンバー24Aの下端部は右のベースパイプ18に回動可能に取付けられている。クロスメンバー24Bの下端部は左のベースパイプ18に回動可能に取付けられている。右のシートパイプ22は、右のシートサイドパイプ16に着脱可能に支持されている。ここでは、シートサイドパイプ16の本体に固定された受け具16Aの凹部及び16Bの凹部に、シートパイプ22が載置され支持されている。左のシートパイプ22は、右のシートパイプ22と同様にして、左のシートサイドパイプ16に着脱可能に支持されている。
【0023】
それぞれの前輪8は、サイドフレーム4の前方に取付けられている。それぞれの後輪10は、サイドフレーム4の後方に取付けられている。この前輪8及び後輪10によって、車いす2は走行可能である。
【0024】
図示されないが、座シートは、左右のシートパイプ22に架け渡される。それぞれのシートパイプ22に座シートが固定される。座シートは、シートパイプ22に、例えば、ねじ止めされる。
図2では、車いす2は、一対のサイドフレーム4が互いに離れた使用姿勢にある。この使用姿勢では、座シートは、左右に張られる。
【0025】
姿勢維持装置14は、リンク機構25を形成する第一リンク26及び第二リンク28と、グリップ30と、ストッパ32と、カバー34とを備える。姿勢維持装置14は、それぞれのサイドフレーム4が備えるサポート36の間に取付けられている。このサイドフレーム4では、サポート36は、背パイプ20に固定されているが、これに限られない。サポート36は、一対のサイドフレーム4の間で姿勢維持装置14が取付けられればよく、シートサイドパイプ16又はベースパイプ18に固定されてもよい。
【0026】
図2には、
図1に示されるカバー34が取り外された姿勢維持装置14が示されている。
図2に示される様に、姿勢維持装置14は、更に、弾性体としてのスプリング38を備える。姿勢維持装置14では、スプリング38は
図1に示されたカバー34に収納されている。
【0027】
図3には、
図2の矢印IIIの向きに見た、姿勢維持装置14の分解図が、一対のサイドフレーム4の一部と共に示されている。姿勢維持装置14は、前述の様に、第一リンク26、第二リンク28、グリップ30、ストッパ32、カバー34及びスプリング38を備える。姿勢維持装置14は、更に、軸着具40、軸着具42、軸着具44、取付具46及び取付具48を備える。
【0028】
ストッパ32は、本体として当接部32Aと、当接部32Aを回転可能に支持する軸32Bと、軸32Bの一端に締結されるボルト32Cと、軸32Bの他端に締結されるボルト32Dと、軸32Bが挿入される複数のワッシャ32Eとを備える。
【0029】
軸32Bが第一リンク26を貫通する孔に通される。当接部32Aが軸32Bに回転可能に支持される。複数のワッシャ32Eは、ボルト32Cの頭部と第一リンク26との間と、ボルト32Dの頭部と当接部32Aとの間とに配置される。ボルト32Cが軸32Bの一端からねじ込まれる。ボルト32Dが軸32Bの他端からねじ込まれる。このストッパ32は、第一リンク26に、当接部32Aを回転可能にして、取り付けられる。
【0030】
このストッパ32では、軸32Bの両端に、ボルト32C及びボルト32Dがねじ込まれる。従って、軸32Bの軸方向に雄ねじが突出しない。このストッパ32は、車いす2の使用者や介助者の手や衣服が突出した雄ねじに引っかかることがない。また、複数のワッシャ32Eは、当接部32Aの回転の滑り性を向上させる。なお、当接部32Aは提示された回転するローラ形状に限られない。当接部32Aは当接可能であればよく回転しなくてもよく、ローラ形状にも限られない。
【0031】
軸着具40は、回動軸40Aと、回動軸40Aの一端に締結されるボルト40Bと、回動軸40Aの他端に締結されるボルト40Cと、回動軸40Aが挿入される複数のワッシャ40Dとを備える。
【0032】
回動軸40Aが第一リンク26の先端部と第二リンク28の先端部とグリップ30とを貫通する孔に通される。複数のワッシャ40Dは、グリップ30とボルト40Bとの間と、第一リンク26と第二リンク28との間と、グリップ30とボルト40Cとの間とに配置される。ボルト40Bが回動軸40Aの一端からねじ込まれる。ボルト40Cが回動軸40Aの他端からねじ込まれる。この軸着具40によって、第一リンク26の先端部と第二リンク28の先端部とが軸着される。この軸着具40によって、第一リンク26は第二リンク28に回動可能に軸着される。この軸着具40は、本発明の、リンク機構25のジョイントとして機能する。
【0033】
軸着具42は、回動軸42Aと、回動軸42Aの一端に締結されるボルト42Bと、回動軸42Aの他端に締結されるボルト42Cと、回動軸42Aが挿入される複数のワッシャ42Dとを備える。
【0034】
回動軸42Aが第一リンク26の基端部と右のサポート36とを貫通する孔に通される。回動軸42Aが通された複数のワッシャ42Dは、ボルト42Bの頭部と第一リンク26との間と、第一リンク26とサポート36との間と、ボルト42Cの頭部とサポート36との間とに配置される。ボルト42Bが回動軸42Aの一端からねじ込まれる。ボルト42Cが回動軸42Aの他端からねじ込まれる。この軸着具42によって、第一リンク26の基端部と右のサポート36とが軸着される。
【0035】
軸着具44は、回動軸44Aと、回動軸44Aの一端に締結されるボルト44Bと、回動軸44Aの他端に締結されるボルト44Cと、回動軸44Aが挿入される複数のワッシャ44Dとを備える。
【0036】
回動軸44Aが第二リンク28の基端部と左のサポート36とを貫通する孔に通される。回動軸44Aが通された複数のワッシャ44Dは、ボルト44Bの頭部と第二リンク28との間と、第二リンク28とサポート36との間と、ボルト44Cの頭部とサポート36との間に配置される。ボルト44Bが回動軸44Aの一端からねじ込まれる。ボルト44Cが回動軸44Aの他端からねじ込まれる。この軸着具44によって、第二リンク28と左のサポート36とが軸着される。
【0037】
この軸着具40、軸着具42及び軸着具44も、ストッパ32と同様に、車いす2の使用者や介助者の手や衣服が突出した雄ねじに引っかかることがない。また、第一リンク26及び第二リンク28は、グリップ30と一対のサポート36とに対して、ストッパ32と同様に、回動による滑り性が向上している。
【0038】
取付具46は、ボルト46A、第一カラー46B、中間ナット46C、第二カラー46D、袋ナット46E及び複数のワッシャ46Fを備える。ボルト46Aが第一リンク26を貫通する孔に通され、第一カラー46Bに通される。第一カラー46Bと第二カラー46Dとの間で、中間ナット46Cにボルト46Aがねじ込まれる。第二カラー46Dにスプリング38の一端が取付けられる。このボルト46Aがカバー34を貫通する孔に通され、袋ナット46Eにねじ込まれる。
【0039】
取付具48は、ボルト48A、第一カラー48B、中間ナット48C、第二カラー48D、袋ナット48E及び複数のワッシャ48Fを備える。ボルト48Aがサポート36を貫通する孔に通され、第一カラー48Bに通される。第一カラー48Bと第二カラー48Dとの間で、中間ナット48Cにボルト48Aがねじ込まれる。第二カラー48Dにスプリング38の他端が取付けられる。このボルト48Aがカバー34を貫通する孔に通され、袋ナット48Eにねじ込まれる。
【0040】
この取付具46と取付具48とによって、スプリング38が、第一リンク26とサポート36との間に取り付けられる。スプリング38は、右のサポート36に対して回動する第一リンク26を付勢する。なお、このスプリング38は、左のサポート36に対して回動する第二リンク28を付勢してもよい。
【0041】
この取付具46及び取付具48は、ストッパ32と同様に、車いす2の使用者や介助者の手や衣服が突出した雄ねじに引っかかることがない。ボルト46A及びボルト48Aの軸方向において、第一カラー46B、第二カラー46D、第一カラー48B、第二カラー48Dによって、スプリング38の取付け位置が容易に調整できる。更に、複数のワッシャ46F及び複数のワッシャ48Fによって、この軸方向おけるスプリング38の取付け位置が容易に微調整できる。
【0042】
図4には、使用姿勢にある車いす2の姿勢維持装置14が示されている。符号P1は、第一リンク26と第二リンク28との回動中心を表す。符号P2は、右のサポート36と第一リンク26との回動中心を表す。符号P3は、左のサポート36と第二リンク28との回動中心を表す。二点鎖線L1は、回動中心P2と回動中心P3と通る直線を表す。この使用姿勢では、回動中心P1は、直線L1より下方に位置している。第一リンク26及び第二リンク28は、グリップ30に直線L1より上方で当接している。
【0043】
第一リンク26の先端部である当接部26A及び第二リンク28の先端部である当接部28Aとは、スプリング38の付勢力によって、グリップ30の当接部30Aに当接している。第一リンク26と第二リンク28とは、グリップ30を挟んでいる。このグリップ30は、第一リンク26と第二リンク28との回動ストッパとして機能している。
【0044】
符号P4は、取付具46の第二カラー46Dが回動する中心を表す。言い換えると、符号P4は、スプリング38の一端の回動中心を表す。符号P5は、取付具48の第二カラー48Dの回動中心を表す。言い換えると、符号P5は、スプリング38の他端の回動中心を表す。一点鎖線L2は、回動中心P2と回動中心P5と通る直線を表す。
【0045】
回動中心P4と回動中心P5との間の直線距離D45は、回動中心P2と回動中心P4との間の直線距離D24と回動中心P2と回動中心P5との間の直線距離D25との和より小さい。このスプリング38は、第一リンク26を回動中心P4が直線L2から離れる回動向きに付勢している。このスプリング38は、第一リンク26を、その先端部を時計回りの回動向きに付勢している。スプリング38は、第一リンク26を介して、第二リンク28を、その先端部を反時計回りの回動向きに付勢している。
【0046】
図5(A)には、使用姿勢と折り畳み姿勢との中間にある車いす2の姿勢維持装置14が示されている。この姿勢維持装置14における一対のサイドフレーム4の間隔は、
図4の使用姿勢におけるそれより狭い。第一リンク26は、使用姿勢に対して反時計回りに回動した位置にある。第二リンク28は、使用姿勢に対して時計回りに回動した位置にある。グリップ30は、使用姿勢に対して上方に位置している。第一リンク26の当接部26A及び第二リンク28の当接部28Aとグリップ30の当接部30Aとの当接は解除されている。
【0047】
図5(A)では、回動中心P4は、
図5の使用姿勢に比べて直線L2に近い。直線距離D45は、直線距離D24と直線距離D25との和より小さい。スプリング38は、第一リンク26を、回動中心P4が直線L2から離れる回動向きに付勢している。スプリング38は、第一リンク26をその先端部を時計回りの回動向きに付勢している。スプリング38は、第一リンク26を介して、第二リンク28をその先端部を反時計回りの回動向きに付勢している。
【0048】
図5(B)には、折り畳み姿勢にある車いす2の姿勢維持装置14が示されている。この姿勢維持装置14における一対のサイドフレーム4の間隔は、
図5(A)のそれに比べて狭い。第一リンク26は、
図5(A)の位置に対して反時計回りに回動した位置にある。第二リンク28は、
図5(A)の位置に対して時計回りに回動した位置にある。グリップ30は、
図5(A)に対して上方に位置している。第一リンク26の当接部26A及び第二リンク28の当接部28Aとグリップ30の当接部30Aとの当接は解除されている。
【0049】
図5(B)では、直線距離D45は、直線距離D24と直線距離D25との和より小さい。スプリング38は、第一リンク26を回動中心P4が直線L2から離れる回動向きに付勢している。スプリング38は、第一リンク26をその先端部を反時計回りの回動向きに付勢している。第一リンク26に取付けられたストッパ32が、具体的には当接部32Aが、一方のサポート36に当接している。このストッパ32の当接によって、第一リンク26は反時計回りの向きの回動が規制されている。このストッパ32の当接によって、第一リンク26及び第二リンク28は、
図6(B)の位置に位置決めされ、第一リンク26が更に回動しない様に保持されている。
【0050】
図6(A)には、
図4の使用状態における、第一リンク26、第二リンク28及びグリップ30の一部が示されている。
図6(A)に示される様に、車いす2の使用姿勢において、第一リンク26の当接部26Aがグリップ30の当接部30Aに当接している。第二リンク28の当接部28Aがグリップ30の当接部30Aに当接している。この当接部26A、当接部28A及び当接部30Aは、直線L1より上方で当接している。
【0051】
図6(B)には、
図5(B)の使用状態における、第一リンク26、第二リンク28及びグリップ30の一部が示されている。
図6(C)は、
図6(B)の矢印VICの向きに見た使用状態が示されている。
図6(B)に示される様に、車いす2の折り畳み姿勢において、第一リンク26の傾倒規制部26Bがグリップ30に対向している。第二リンク28の傾倒規制部28Bがグリップ30に対向している。このグリップ30では、当接部30Aが、傾倒規制部26Bと傾倒規制部28Bとに対向している。
【0052】
図6(B)において、傾倒規制部26Bは、グリップ30が時計回りの向きに傾倒することを規制する。傾倒規制部28Bは、グリップ30が反時計回りの向きに傾倒することを規制する。
図6(B)では、傾倒規制部26Bとグリップ30との間に僅か隙間を設けて対向させたが、傾倒規制部26Bとグリップ30とは当接させてもよい。同様に、傾倒規制部28Bとグリップ30との間に僅か隙間を設けて対向させたが、傾倒規制部28Bとグリップ30とは当接させてもよい。
【0053】
ここで、この車いす2の使用方法が説明される。
【0054】
この車いす2の折り畳み姿勢では、姿勢維持装置14は、
図5(B)に示される使用状態にある。この使用状態では、スプリング38は、第一リンク26を反時計回りの回動向きに付勢している。ストッパ32がサイドフレーム4のサポート36に当接して、第一リンク26の更なる回動による倒れを規制している。グリップ30は、第一リンク26の傾倒規制部26B及び第二リンク28の傾倒規制部28Bによって、傾倒することを規制されている。
【0055】
この折り畳み姿勢にある車いす2において、クロスフレーム6のクロスメンバー24Aとクロスメンバー24Bとが回動させられ、一対のサイドフレーム4の間隔が拡げられる。第一リンク26は、スプリング38の付勢力に抗して、時計回りの回動向きに回動する。第二リンク28は、反時計回りの回動向きに回動する。この様にして、姿勢維持装置14は
図5(B)の使用状態から
図5(A)の使用状態にされる。
【0056】
図5(A)の使用状態では、スプリング38は、第一リンク26を時計回りの回動向きに付勢している。
図5(A)の使用状態では、グリップ30を押し込まなくても、第一リンク26は更に時計回りの回動向きに回動する。第二リンク28は更に反時計回りの回動向きに回動する。一対のサイドフレーム4の間隔が更に拡げられる。第一リンク26の当接部26Aと第二リンク28の当接部28Aとがグリップ30の当接部30Aに当接する。この様にして、姿勢維持装置14は
図5(B)の使用状態から
図4の使用状態にされる。この様にして、車いす2は、
図2に示される様に使用姿勢にされる。
【0057】
車いす2の使用姿勢では、スプリング38によって、第一リンク26が時計回りの回動向きに付勢されている。第一リンク26を介して、第二リンク28が半時計回りの回動向きに付勢されている。第一リンク26の当接部26Aと第二リンク28の当接部28Aとがグリップ30の当接部30Aに押し当てられている。このスプリング38によって、姿勢維持装置14は、一対のサイドフレーム4を所定の間隔で確りと固定する。
【0058】
次に、使用姿勢の車いす2を折り畳み姿勢に姿勢変化させる方法が説明される。
図2の使用姿勢の車いす2のグリップ30が上方に引き上げられる。第一リンク26はスプリング38の付勢力に抗して、反時計回りの回動向きに回動する。第二リンク28は時計回りの回動向きに回動する。この様にして、姿勢維持装置14は、
図5(A)の使用状態にされる。更に、グリップ30が上方に引き上げられて、
図5(B)の使用状態にされる。これにより、車いす2は、折り畳み姿勢にされる。
【0059】
図7には、使用姿勢にある車いす2を折り畳み姿勢に姿勢変化させる途中の車いす2の使用状態が示されている。この
図7では、一方の手でグリップ30を上方に引き上げ、他方の手又は腕で図示されない座シートを上方に引き上げられた、車いす2の使用状態が示されている。この様に、グリップ30と座シートとを引き上げることで、この車いす2は容易に折り畳み姿勢にされ得る。
【0060】
車いす2は、一対のサイドフレーム4と、クロスフレーム6と、姿勢維持装置14とを備える。クロスフレーム6は、一対のサイドフレーム4の間隔を拡げた使用姿勢と間隔を狭めた折り畳み姿勢とに姿勢変化可能に一対のサイドフレーム4を連結する。姿勢維持装置14は、使用姿勢における一対のサイドフレーム4の間隔を維持させる。姿勢維持装置14は、使用姿勢における一対のサイドフレーム4を、一対のサイドフレーム4の間隔を拡げる向きに付勢する、スプリング38を備える。
【0061】
このスプリング38が、一対のサイドフレーム4の間隔を拡げる向きに付勢することで、使用姿勢に一対のサイドフレーム4が維持される。この車いす2は、この姿勢の維持により、乗り心地が損なわれることが抑制される。この車いす2は、スプリング38の付勢力を利用することで、使用姿勢に容易に変更できる。
【0062】
ここでは、スプリング38が用いられたが、本発明に係る弾性体は、第一リンク26を付勢すればよく、これに限られない。例えば、流体シリンダが用いられてもよい。
【0063】
この車いす2では、姿勢維持装置14は、一対のサイドフレーム4を連結するリンク機構25を備える。スプリング38がリンク機構25を付勢することによって、リンク機構25が使用姿勢における一対のサイドフレーム4の間隔を維持させる。この車いす2では、リンク機構25とスプリング38とを組み合わせることで、使用姿勢における一対のサイドフレーム4の間隔が維持される。このリンク機構25は、スプリング38等の弾性体との組み合わせで、一対のサイドフレーム4の間隔が維持できればよく、特に限定されない。
【0064】
この車いす2では、リンク機構25として、第一リンク26及び第二リンク28が用いられている。このリンク機構25は、簡素な構成で、一対のサイドフレーム4の間隔が維持されうる。この観点から、このリンク機構25では、第一リンク26及び第二リンク28を備えることが好ましい。また、第一リンク26と第二リンク28との回動中心P1は、回動中心P2と回動中心P3と通る直線L1を超えて位置している。つまり、回転中心P1は直線L1より下方に位置している。回動中心P1が直線L1を越えて位置するので、第一リンク26と第二リンク28とは、安定的に使用状態の回動位置を保持し得る。
【0065】
姿勢維持装置14は、好ましくは把持可能なグリップ30を備える。グリップ30は、一対のサイドフレーム4の間隔を狭めるほどに上方に移動するリンク機構25のジョイントとしての軸着具40に配置されている。この車いす2では、このグリップ30を引き上げることで、一対のサイドフレーム4の間隔が狭められ得る。この車いす2では、第一リンク26と第二リンク28との軸着具40に、グリップ30を配置することで、一対のサイドフレーム4の間隔が容易に狭められ得る。
【0066】
この車いす2の使用姿勢では、第一リンク26と第二リンク28の間にグリップ30が位置する。このグリップ30を間に挟むことで、回動中心P1が直線L1より下方に位置させた状態から、第一リンク26が反時計回りに、第二リンク28が時計回りに、回動し易い。この観点から、姿勢維持装置14は、グリップ30を備えることが好ましい。更に、このグリップ30の材料を樹脂にすることで、このグリップ30は、第一リンク26と第二リンク28の間で衝撃を吸収し得る。また、グリップ30を当接させることで、他の当接部品を省くことができ、部品点数の削減及び省スペース化を図ることができる。
【0067】
グリップ30の当接部30Aと第一リンク26の当接部26A及び第二リンク28の当接部28Aとは、直線L1より上方で当接している。当接部30Aと当接部26A及び当接部28Aとは、回動中心P1に対して直線L1を間にして位置するので、第一リンク26と第二リンク28が回動する際に、当接部30Aの当接面と当接部26Aの当接面及び当接部28Aの当接面と干渉が抑制される。これにより、当接部30Aと当接部26A及び当接部28Aとの当接の解除が容易にできる。
【0068】
このリンク機構25では、回動中心P1が回動中心P2と回動中心P5と通る直線L2上にある位置を境界として、スプリング38によって付勢される第一リンク26の回動向きが逆になっている。この直線L2は、使用姿勢における回動中心P1の位置と折り畳み姿勢における回動中心P1の位置との間に設定されている。これにより、スプリング38は、使用姿勢では第一リンク26を、使用姿勢を維持する向きに付勢し、折り畳み姿勢では第一リンク26を、折り畳み姿勢を維持する向きに付勢する。
【0069】
この様に、スプリング38は、好ましくは、車いす2の折り畳み姿勢における、一対のサイドフレーム4を、その間隔を狭める向きに付勢する。これにより、この車いす2は、折り畳みを容易にされている。
【0070】
姿勢維持装置14では、スプリング38が一対のサイドフレーム4の間隔を狭める向きに付勢することで、リンク機構25はサイドフレーム4に近づく回動向きに付勢される。姿勢維持装置14は、一対のサイドフレーム4を連結するリンク機構25と、ストッパ32とを備える。好ましくは、ストッパ32は、車いす2の折り畳み姿勢におけるリンク機構25がスプリング38の付勢によって倒れることを規制する様にされる。
【0071】
更に、折り畳み姿勢における車いす2では、
図6(B)に示される様に、グリップ30は、傾倒規制部26B及び傾倒規制部28Bによって、傾倒が規制されている。この様に、グリップ30の傾倒を規制する観点から、この車いす2は、傾倒規制部26B及び傾倒規制部28Bを備えることが好ましい。
【0072】
本発明に係る車いす2には、ベビーカーが含まれる。ここでは、車いす2を例に説明がされたが、本発明は、車輪付きの歩行車、車輪を備えない歩行器等の歩行補助機器でも同様の効果を発揮し得る。
【符号の説明】
【0073】
2・・・車いす
4・・・サイドフレーム
6・・・クロスフレーム(連結フレーム)
14・・・姿勢維持装置
25・・・リンク機構
30・・・グリップ
32・・・ストッパ
38・・・スプリング(弾性体)
40・・・軸着具(ジョイント)