IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清ファルマ株式会社の特許一覧

特許7526596N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末を含有する組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240725BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240725BHJP
   A61K 36/70 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 31/7008 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/10
A61K36/70
A61K31/7008
A61P19/02
A61K9/16
A61K47/38
A61K38/17
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020105714
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000001
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】301049744
【氏名又は名称】日清ファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】大西 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】浅田 憲一
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-091717(JP,A)
【文献】特開2016-160181(JP,A)
【文献】特開2018-188425(JP,A)
【文献】健康食品 ハイパワーNEXT,日興薬品株式会社[オンライン],[2024年1月29日検索],2017年04月26日,http://www.nikkoyakuhin.co.jp/health/highpower/index.html
【文献】ステラ漢方のグルコサミン,ステラ漢方[オンライン],[2024年1月9日検索日],2020年02月23日,https://web.archive.org/web/20200223110226/http://stella-s.com:80/grukosamin/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
Google
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン、オオイタドリエキス末を含み、さらにセルロース又はセルロース誘導体を含む組成物であって、
N-アセチルグルコサミンを5~70質量%、プロテオグリカンを0.2~3.6質量%、オオイタドリエキス末を5~30質量%含み、
セルロース又はセルロース誘導体を12~26質量%含む、前記組成物
【請求項2】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セルロースの平均粒子径が90μm以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
温度40℃、相対湿度75%で3日間の保存による色差(ΔE)が10以下である、請
求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
温度40℃、相対湿度75%で3日間の保存による水分量が2.6%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色及び吸湿の少ない、N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
膝や肘等の人の関節部には軟骨があって、骨と骨との間でのクッション材の役割を果たしているが、軟骨が減少すると変形性関節炎の原因になる。厚生労働省の国民生活基礎調査等によると、高齢者の要支援・要介護の要因には、変形性膝関節症などの関節の健康に関わるものが挙げられており、変形性膝関節症の有病率は加齢とともに増加するため、関節の健康を維持・増進することは、高齢者のQOL向上の点からも有用である。
【0003】
こうした背景のもと、関節の健康を維持・増進するための食品成分が各種上市されており、N-アセチルグルコサミン(NAG)、プロテオグリカン、オオイタドリエキス末のほか、グルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸、コラーゲン、メチルスルホニルメタン(MSM)、エラスチン、オリーブ葉エキス、キャッツクローエキスなどが利用されている(特許文献1~特許文献4)。
【0004】
N-アセチルグルコサミンは、軟骨成分のヒアルロン酸を構成する主成分であり、関節軟骨においてグリコサミノグリカン(ヒアルロン酸等)などを増加させ、関節中のII型コラーゲンの分解を抑制することにより、関節軟骨の代謝を正常化する。N-アセチルグルコサミンは、エビやカニ等の甲殻類の外殻などを起源原料として製造される。
【0005】
プロテオグリカンは、軟骨組織の主成分のひとつであり、タンパク質をコアとしてコンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカンが共有結合した化合物であって、II型コラーゲンとの架橋により軟骨組織を維持する。プロテオグリカンは、動物の軟骨や皮膚に存在し、サケ鼻軟骨などを起源原料として製造される
【0006】
オオイタドリエキス末は、TNF-αを介した抗炎症作用、COXを介した鎮痛作用により、関節の炎症や痛みの軽減に効果がある。オオイタドリエキス末は、タデ科の多年生植物オオイタドリを起源原料として製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-123686号
【文献】特開2017-163999号
【文献】特開2019-198300号
【文献】特開2016-160181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上に述べたように、N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン、オオイタドリエキス末は、それぞれ、関節の健康を維持・増進するための食品成分として使用されているが、関節保護作用におけるメカニズムが互いに異なっているので、これらを複数組み合わせることでより高い効果が期待できる。
しかし、従来、これら3成分を同時に含有する組成物については報告がない。そこで、本発明者らが、N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末
の3成分を組み合わせて配合したところ、これらの3成分を同時に配合した組成物は、経時的に着色及び吸湿が生じて安定性が低下し、食品として提供するために十分な品質が得られないという問題があることが判明した。
【0009】
本発明の課題は、N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末の3成分を含有し、かつ経時的な着色及び吸湿の少ない、組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末を含有する、以下の組成物によって解決することができる。
(1)N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン、オオイタドリエキス末を含み、さらにセルロース又はセルロース誘導体を含む組成物。
(2)N-アセチルグルコサミンを5~70質量%、プロテオグリカンを0.2~3.6質量%、オオイタドリエキス末を5~30質量%含む、(1)に記載の組成物。
(3)前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースである(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)セルロース又はセルロース誘導体を2~67質量%含む、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)前記セルロースの平均粒子径が90μm以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)温度40℃、相対湿度75%で3日間の保存による色差(ΔE)が10以下である、(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)温度40℃、相対湿度75%で3日間の保存による水分量が2.6%以下である、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のN-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末含有組成物は、さらにセルロース又はセルロース誘導体を含むことによって、経時的な着色や吸湿による品質の低下が低減されて安定性が高く、保存性に優れているため、継続して摂取することができ、特に経口摂取する飲食品用の組成物として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明する。
【0013】
本発明の組成物は、N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン、オオイタドリエキス末、及びセルロース又はセルロース誘導体を少なくとも含むものであり、これらの3成分が含まれている限り、各成分の相対的な配合量については、特段の制限はないが、通常、N-アセチルグルコサミンは、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%の範囲で配合され、プロテオグリカンは、好ましくは0.2~3.6質量%、より好ましくは1~2質量%の範囲で配合され、オオイタドリエキス末は、好ましくは5~30質量%、より好ましくは10~27質量%の範囲で配合される。
【0014】
また、本発明の組成物において、セルロース又はセルロース誘導体は、好ましくは2~67質量%、より好ましくは12~26質量%の範囲で配合される。本発明の組成物においては、N-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末が有効成分であって、セルロース又はセルロース誘導体は、その安定剤として使用されるものであるので、セルロース又はセルロース誘導体は、安定剤としての役割を果たす範囲であれば、その使用量をむやみに増やす必要はない。
【0015】
セルロース誘導体としては、公知のセルロース誘導体を特に限定なく使用することができるが、なかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEM)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はカルボキシメチルセルロース(CMC)が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)が特に好ましい。
【0016】
使用するセルロース又はセルロース誘導体としては、粉末状の市販品を特に制限なく使用することができるが、特に平均粒子径が90μm以下であるものが好ましい。
【0017】
本発明の組成物の態様としては、経口摂取に適した形態であれば特に制限はないが、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠剤状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、チュアブル状、スティック状等の各形態が挙げられる。
【0018】
本発明の組成物には、さらに効果を損なわない範囲において、通常飲食品に配合される任意の成分を加えることができる。例えば、賦形剤、結合剤、光沢剤、滑沢剤、安定剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、香料、添加剤、甘味料、酸味料、その他の有効成分(生理活性成分)などを挙げることができる。
【0019】
本発明の組成物において、温度40℃、相対湿度75%で3日間の保存による色差(ΔE)が10以下であることが好ましい。10を超えると、経時的な着色
が目視で認識可能となり、商品価値が低下するなどの点で好ましくない。
【0020】
本発明の組成物において、温度40℃、相対湿度75%で3日間の保存による水分量が2.6%以下であることが好ましい。2.6%を超えると、保存中における経時的な着色が加速し、保存中における有効成分の安定性低下が加速する点で好ましくない。また、混合粉末の流動性が低下するために作業性が悪くなるなどの点で好ましくない。
【実施例
【0021】
実施例1~3及び比較例1~5
方法:下記表1に示した量の各成分の粉末を合計10gとなるように混合して、実施例及び比較例用の試料を調製した。
【0022】
実施例及び比較例の試料の調製に使用した製品は、以下のとおりである。
・オオイタドリエキス末(ユニアル製、商品名「オオイタドリエキス末」)
・N-アセチルグルコサミン(焼津水産化学工業製、商品名「ビューティーシュガー」)
・プロテオグリカン(一丸ファルコス製、商品名「プロテオグリカンF」)
・セルロース(旭化成製、商品名「セオラス」)
・HPMC(信越化学工業製、商品名「メトローズ」)
・HPC(日本曹達製、商品名「HPC-L」)
・還元麦芽糖水飴(三菱商事ライフサイエンス製、商品名「アマルティ MR50」)
・エリスリトール(三菱ケミカルフーズ製、商品名「エリスリトール」)
・乳糖(DFE Pharma製、商品名「Pharmatose 200M」)
・デキストリン(松谷化学工業製、商品名「TK-16」)
【0023】
これらの試料を、温度40℃、相対湿度75%の保存条件で3日間保管し、以下の方法で色差と水分量を測定した。
色差は分光色彩計(日本電色工業製、SE-6000)を使用し、試料の色彩をL***表色系で測定した。この分光色彩計では、開始時と保存後の色差ΔEが、下記数式1により算出して表示される。

数式1:ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2

水分量は、赤外線乾燥水分計(Mettler Toledo製、HR83-P)を使用し、105℃20分間の重量変化により測定した。結果を表1に示した。
【0024】
上記条件で保存した試料の試験開始前と比較した3日後の色差ΔEが10以下で、水分量が2.6%以下であれば、市販品として十分な安定性があるといえる。
【0025】
【表1】
【0026】
表1の結果から、上記条件下でN-アセチルグルコサミン、プロテオグリカン及びオオイタドリエキス末を含有する組成物は着色及び吸湿を示す(比較例1)が、還元麦芽糖水飴(比較例2)、エリスリトール(比較例3)、乳糖(比較例4)及びデキストリン(比較例5)のような添加物を添加しても、これを改善することができないのに対して、セルロース及びセルロース誘導体を添加した場合には、着色及び吸湿が大きく改善され、安定性の高い組成物を提供できることがわかる。
【0027】
次に、実施例1で使用したセルロースの平均粒子径を変えて、同じ条件で、色差と水分量を測定した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
使用するセルロースの平均粒子径が小さいものや大きいものに変えても、着色及び吸湿が少ない安定な組成物を得ることができる。
【0030】
次に、使用するオオイタドリエキス末の配合量を変え、同じ条件で、色差と水分量を測定した。結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
本発明の組成物は、組成物におけるオオイタドリエキス末の配合量を変化させても、着色及び吸湿が少ない安定な組成物を得ることができる。
【0033】
また、オオイタドリエキス末の配合量を実施例1の量に固定した上で、N-アセチルグルコサミンとプロテオグリカンの配合量を変化させた試料を調製し、同じ条件で、色差と水分量を測定した。結果を表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
N-アセチルグルコサミンとプロテオグリカンの配合量を変化させても、着色及び吸湿が少ない安定な組成物を得ることができる。