(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】建築物、及び植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A01G9/24 R
A01G9/24 A
(21)【出願番号】P 2020109426
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0320594(US,A1)
【文献】特開平06-112383(JP,A)
【文献】特開2005-328733(JP,A)
【文献】特開2014-116404(JP,A)
【文献】特開2015-087100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
F28F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁及び天井によって内部空間が仕切られ、前記内部空間にて植物が栽培される建築物であって、
前記内部空間内に設置された空調装置と、
前記内部空間において、前記外壁及び天井の少なくとも一つに設けられたフィン設置部から前記内部空間に向かう第1向きに突出した複数の第1フィンを備えた第1フィン群と、
前記建築物の外側の空間において、前記フィン設置部から前記第1向きとは反対の第2向きに突出した複数の第2フィンを備えた第2フィン群と、を有し、
前記第1フィン群と前記第2フィン群とが接続されて
おり、
ファンにより、前記内部空間の上部にある空気を、前記第1フィン群に向かわせ、前記内部空間の下部にある空気を、前記空調装置に向かわせる、建築物。
【請求項2】
前記複数の第1フィンの各々は、前記複数の第2フィンの中の一つと対をなしており、
対をなす第1フィンと第2フィンとが接続されている、請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記フィン設置部は、前記外壁及び天井の少なくとも一つを貫通した状態で設けられ、
前記第1フィン群と前記第2フィン群とは、一体化しており、且つ、前記フィン設置部の中間位置を境にして互いに対称な形状である、請求項1又は2に記載の建築物。
【請求項4】
前記第1フィン群と前記第2フィン群とを備えるヒートシンクが前記フィン設置部に設置されている、請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
前記第1フィン群に向けて送風する第1送風機を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項6】
前記第1フィン群が、前記外壁に設けられた前記フィン設置部に設置されており、
前記第1送風機が鉛直方向において下側に向けて送風する、請求項5に記載の建築物。
【請求項7】
前記第2フィン群に向けて送風する第2送風機を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項8】
前記第2フィン群が、前記外壁に設けられた前記フィン設置部に設置されており、
前記第2送風機が鉛直方向において上側に向けて送風する、請求項7に記載の建築物。
【請求項9】
前記複数の第1フィンの各々の表面にて結露して発生した結露水を回収する回収器をさらに有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項10】
前記複数の第1フィンの各々が板状のフィンであり、
前記複数の第1フィンは、鉛直方向と交差する方向において、第1フィン間に隙間を開けながら並んでいる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項11】
前記複数の第1フィン及び前記複数の第2フィンの各々が柱状のフィンである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の建築物。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれかに記載の建築物の内部空間において植物を栽培する、植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部で植物が栽培される建築物に係り、特に、建築物の内側と外側との間で効果的に熱交換を行うことが可能な建築物に関する。
また、本発明は、上記の建築物内で植物を栽培する栽培方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場等、屋内で植物が栽培される建築物では、植物の光合成用の光として太陽光を採光したり人工光を照射するために屋内の温度が上昇したり、植物からの蒸散等により屋内の湿度が高くなったりする。高温高湿の環境下では、植物の生育速度が鈍化する等、植物の栽培に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、屋内で植物が栽培される従来の建築物では、屋内に一般的な空調装置又は除湿装置が設置し、これらの装置を稼働させて屋内の温度及び湿度を調整していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、室内空間に配置された多段式の栽培棚に人工光を照射して植物を栽培する植物工場において、屋内空間の温度調整及び調湿を空調機によって行う。具体的には、空調機からの冷却空気をダクトの通風孔から栽培棚内に放出し、ダクトに放出される冷却空気を圧縮機にて圧縮し、ダクトの一部に設けられた冷却管に冷却媒体を流すことでダクト内空気を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋内で植物が栽培される建築物において、特許文献1のように一般的な空調装置を利用して温度調整及び調湿を実施する場合には、空調負荷に応じて電力を消費することになる。また、植物工場内では、通常、一年を通じて植物を栽培することがあり、その場合には季節が変わっても屋内の温度及び湿度が上昇する傾向にある。そのため、上記の植物工場では、一年を通じて空調機器を稼働させることになり、結果として、植物栽培にかかるコストが嵩んでしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、内部で植物を栽培し、空調にかかるコストを削減することができる建築物を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の建築物の内部で植物を栽培することで、より低コストとなる植物の栽培方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の建築物は、外壁及び天井によって内部空間が仕切られ、内部空間にて植物が栽培される建築物であって、内部空間において、外壁及び天井の少なくとも一つに設けられたフィン設置部から内部空間に向かう第1向きに突出した複数の第1フィンを備えた第1フィン群と、建築物の外側の空間において、フィン設置部から第1向きとは反対の第2向きに突出した複数の第2フィンを備えた第2フィン群と、を有し、第1フィン群と第2フィン群とが接続されていることを特徴とする。
【0008】
上記のように構成された本発明の建築物によれば、互いに接続された第1フィン群及び第2フィン群を介して、建築物の内外で熱交換が行われる。これにより、冬期のような外気温度が建築物内の温度が低い時期に、外気(建築物の外側に存在する空気)を利用して、建築物内の温度を効率よく下げ、また、建築物内を効率よく除湿することができる。この結果、建築物内の温度及び湿度を調整する(厳密には、下げる)ための消費電力量を削減し、空調コストを抑えることができる。
【0009】
また、複数の第1フィンの各々は、複数の第2フィンの中の一つと対をなしており、対をなす第1フィンと第2フィンとが接続されていてもよい。かかる構成であれば、建築物の内外でより効率よく熱交換が行われるようになる。
【0010】
また、フィン設置部は、外壁及び天井の少なくとも一つを貫通した状態で設けられていてもよい。この場合、第1フィン群と第2フィン群とが、一体化しており、且つ、フィン設置部の中間位置を境にして互いに対称な形状であると、好適である。かかる構成であれば、第1フィン群と第2フィン群とが一体化しているので、これらのフィン群の設置等が容易となる。また、第1フィン群と第2フィン群とが対称形状であるので、これらのフィン群を設置する際には、第1フィン群の向きと第2フィン群の向きとを区別する必要がないので、一層容易に設置することができる。
【0011】
また、第1フィン群と第2フィン群とを備えるヒートシンクがフィン設置部に設置されていてもよい。かかる構成であれば、第1フィン群及び第2フィン群をより簡単且つ汎用的な構成で実現することができる。
【0012】
また、第1フィン群に向けて送風する第1送風機を有してもよい。かかる構成であれば、建築物内の空気を第1フィン群に向けて送ることができ、建築物内の空気の温度及び湿度をより効果的に下げることができる。
さらに、上記の効果をより有効に発揮させるために、第1フィン群が、外壁に設けられたフィン設置部に設置されており、第1送風機が鉛直方向において下側に向けて送風するのが、より好ましい。
【0013】
また、第2フィン群に向けて送風する第2送風機を有してもよい。かかる構成であれば、建築物の外の空気(外気)を第2フィン群に向けて送ることができ、建築物内外での熱交換をより効果的に行うことができる。
さらに、上記の効果をより有効に発揮させるために、第2フィン群が、外壁に設けられたフィン設置部に設置されており、第2送風機が鉛直方向において上側に向けて送風するのが、より好ましい。
【0014】
また、複数の第1フィンの各々の表面にて結露して発生した結露水を回収する回収器をさらに有してもよい。かかる構成であれば、回収した結露水を、例えば建築物内での植物の栽培に有効利用することができる。
【0015】
また、複数の第1フィンの各々が板状のフィンであってもよい。この場合に、複数の第1フィンは、鉛直方向と交差する方向において、第1フィン間に隙間を開けながら並んでいると、好適である。かかる構成であれば、板状の第1フィンの表面にて結露して発生した結露水が、第1フィンの表面を伝って下方に滴り落ちるようになるので、結露水の回収が容易になる。
【0016】
また、複数の第1フィン及び複数の第2フィンの各々が柱状のフィンであってもよい。かかる構成であれば、第1フィン及び第2フィンのそれぞれの表面積(すなわち、伝熱面積)がより大きくなるので、建築物の内外で熱交換をより効率よく行うことができる。
【0017】
また、以上までに挙げてきた本発明の建築物のうち、いずれかの建築物の内部空間において植物を栽培する植物の栽培方法が実現可能である。この方法によれば、外気を利用して建築物内部の温度及び湿度を調整した上で、建築物内部で植物を適切に栽培することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外気を利用して、内部で植物を栽培する建築物の温度及び湿度を調整することができ、この結果、空調にかかるコストを抑えることができる。また、本発明によれば、温度及び湿度が調整された建築物の内部で植物を栽培することで、より低コストの植物の栽培方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に建築物の内部構造を示す模式断面図である。
【
図2】建築物におけるフィン設置部の位置を示す図であり、図示の都合上、建築物内部を透過させた状態を示している。
【
図3】
図1中のフィン設置部付近を拡大して示す断面図である。
【
図5】第1フィン群及び第2フィン群を含むヒートシンク、第1送風機及び第2送風機を示す斜視図である。
【
図6】第1の変形例に係る第1フィン群及び第2フィン群を示す図である。
【
図7】建築物内に気流を発生させる様子を示した模式図である。
【
図8】第2の変形例に係る第1フィン群及び第2フィン群を示す図である。
【
図9】第3の変形例に係る第1フィン群及び第2フィン群を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら具体的に説明する。なお、
図2は、図示の都合上、一部の部品を簡略化しており、例えば、後述する第1送風機41及び第2送風機42等を省略している。
【0021】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0022】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0023】
<<建築物の概要>>
本実施形態に係る建築物(以下、建築物10)は、屋内空間16(内部空間に相当)にて植物Pを栽培するために用いられる。植物Pは、光合成及び蒸散を行って成長し、所定状態まで成長した時点で収穫された後に商材として出荷される。
【0024】
建築物10は、
図1に示すように外壁12及び屋根14を備え、屋内空間16が外壁12及び屋根14によって閉鎖空間となっている。建築物10の一例としては、植物工場のような建物、植物栽培用のコンテナボックス、及び、ビニールハウス又はガラスハウスのような温室用建物等が挙げられる。以下では、植物工場を建築物10の例として挙げて説明することとする。
【0025】
建築物10である植物工場内には、
図1に示すように、複数の栽培棚20が規則的に配置されている。複数の栽培棚20の各々は、植物工場の床面上に配置されており、本実施形態では多段型の栽培棚であり、
図1に示すように上下に並ぶ複数の段を備え、段上には栽培ケース22が載置されている。ただし、栽培棚20は、多段型に限られず、単段の栽培棚でもよい。
【0026】
栽培ケース22には栽培対象の植物Pが定植されている。栽培ケース22内には、例えば水又は植物栽培用の養液が溜められており、栽培ケース22に定植された植物Pが水耕栽培方式にて栽培されている。ただし、植物の栽培方式については、特に限定されるものではなく、土耕栽培方式であってもよい。
【0027】
また、栽培棚20には、各段にて栽培される植物Pに光(人工光)を照射する照明装置24が設けられてもよい。照明装置24は、LED(Light Emitting Diode)又は蛍光灯等の光源を点灯させることで、光源からの光を植物Pに照射する。なお、植物Pに照射する光については、人工光に限定されず、太陽光であってもよく、あるいは太陽光と人工光とを併用してもよい。
【0028】
また、建築物10には、エアコン等、建築物10内の温度及び湿度等を調整するための空調装置Hが設置されている。空調装置Hは、植物工場等において一般的に使用される空調装置と同仕様のものである。
【0029】
また、
図1及び3に示すように、建築物10の外壁12には、熱伝導体30が複数個所に設置されている。熱伝導体30は、ヒートシンクであり、
図3~5に示すように複数のフィン(伝熱フィン)を有する。熱伝導体30は、外壁12を貫通した状態で設置されており、
図3及び4に示すように、熱伝導体30の一部分は、屋内空間16に位置しており、熱伝導体30の他の部分は、建築物10の外側の空間、すなわち屋外空間18に位置している。
【0030】
また、本実施形態では、
図2に示すように、建築物10の外壁12の複数個所に熱伝導体30が設置されている。ここで、外壁12において熱伝導体30が設置されている箇所は、フィン設置部FSに相当する。具体的に説明すると、フィン設置部FSは、外壁12を貫通して設けられ、例えば、熱伝導体30を設置するために外壁12に形成された開口(貫通孔)である。
【0031】
なお、外壁12に設けられた複数のフィン設置部FSは、鉛直方向において同じ位置(高さ)に設けられてもよく、あるいは、異なる位置(高さ)に設けられてもよい。また、複数のフィン設置部FSの各々のサイズ(換言すると、熱伝導体30のサイズ)は、同一サイズでもよく、あるいは異なるサイズでもよい。また、フィン設置部FSをなす開口に熱伝導体30を設置した後には、当該開口と熱伝導体30との間の隙間をコーキング材等の充填材によって埋めるのが好ましい。
【0032】
熱伝導体30は、屋内空間16と屋外空間18との間で熱交換を行うために用いられる。熱伝導体30の構成については、次の項で詳細に説明する。
【0033】
また、ヒートシンクとしての熱伝導体30の周辺には、
図1及び3等に示すように、第1送風機41及び第2送風機42が配置されている。第1送風機41は、屋内空間16に設置されるファンであり、屋内空間16内の空気を熱伝導体30に向けて送る。つまり、第1送風機41は、熱伝導体30において屋内空間16に位置する部分(詳しくは、後述の第1フィン群31)に向けて送風する。
【0034】
第2送風機42は、屋外空間18に設置されるファンであり、屋外空間18の空気(外気)を熱伝導体30に向けて送る。つまり、第2送風機42は、熱伝導体30において屋外空間18に位置する部分(詳しくは、後述の第2フィン群32)に向けて送風する。
【0035】
なお、第1送風機41及び第2送風機42の各々を構成するファンの種類については、特に限定されず、例えば、軸流ファン、シロッコファン等の遠心ファン、斜流ファン又は横流ファン等が利用可能である。また、一個の熱熱伝導体30に対して設置される第1送風機41及び第2送風機42のそれぞれの台数については、特に限定されないが、
図4及び5に示すケースでは、第1送風機41及び第2送風機42がそれぞれ複数台(詳しくは2台ずつ)設置されている。
【0036】
<<熱伝導体の詳細構成>>
熱伝導体30は、前述したように、屋内空間16と屋外空間18との間で熱交換を行うために用いられるヒートシンクであり、屋内空間16から吸熱し、屋外空間18に対して放熱する。熱伝導体30は、熱伝導率の高い材質からなり、例えば金属又は合金、あるいは金属又は合金含有の材料が好ましい。
【0037】
熱伝導体30をなす金属としては、好ましくは、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ジュラルミン、ベリリウム、マグネシウム、モリブデン、ナトリウム、黄銅、亜鉛、カルシウム、カリウム、カドミウム、ニッケル、ケイ素、青銅、白金、コバルト、パラジウム、鉄、クロム、タングステン、すず、イリジウム、ニオブ、炭素鋼、マンガン、はんだ、鋳鉄、砲金、ケイ素鋼、クロム鋼、マンガン鋼、トリウム、鉛、白金イリジウム、アルメル、洋銀、ウラン、モネルメタル、炭素、インジウム、コンスタンタン、マンガニン、アンチモン、チタン、ニッケルクロム合金、ジルコニウム、クロメル、ビスマス、プルトニウム、ホウ素、ゲルマニウム、マンガン、及びセレン等が挙げられる。
また、上記の金属のうち、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ジュラルミン、マグネシウム、モリブデン、黄銅、亜鉛、ニッケル、ケイ素、青銅、白金、コバルト、パラジウム、鉄、クロム、タングステン、すず、イリジウム、ニオブ、炭素鋼、マンガン、はんだ、鋳鉄、砲金、ケイ素鋼、クロム鋼、マンガン鋼、アルメル、洋銀、モネルメタル、炭素、コンスタンタン、マンガニン、チタン、ニッケルクロム合金、ジルコニウム、クロメル、ゲルマニウム、及びマンガンがより好ましい。
さらに、上記の金属のうち、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ジュラルミン、マグネシウム、モリブデン、黄銅、青銅、白金、鉄、クロム、タングステン、すず、炭素鋼、はんだ、鋳鉄、砲金、ケイ素鋼、クロム鋼、マンガン鋼、チタン、ニッケルクロム合金、及びジルコニウムがさらに好ましい。
さらにまた、上記の金属のうち、銅、アルミニウム、ジュラルミン、黄銅、青銅、鉄、クロム、炭素鋼、はんだ、鋳鉄、砲金、ケイ素鋼、クロム鋼、マンガン鋼、及びチタンが最も好ましい。
【0038】
なお、熱伝導体30は、単一種類の金属によって構成されてもよく、あるいは、複数種類の金属を積層体等のように組織化させて構成されてもよい。
【0039】
熱伝導体30は、
図5に示す外観を呈しており、第1フィン群31と第2フィン群32とベース部分35とを有する。これらは、一体化しており、例えば不図示の金型にて鋳造することで、第1フィン群31、第2フィン群32及びベース部分35が一体化した金属成型品としての熱伝導体30が得られる。
【0040】
なお、金属成型品としての熱伝導体30を製造する方法については、鋳造に限定されず、例えば、複数の断片(ピース)を溶接等で接合することで熱伝導体30を製造してもよい。
【0041】
ベース部分35は、矩形板からなり、表面には第1フィン群31が、裏面には第2フィン群32がそれぞれ設けられている。ベース部分35は、フィン設置部FSをなす開口に嵌め込まれており、外壁12の厚み(外壁12を貫く方向の長さ)と同一又はそれ以上の厚みを有する。
【0042】
なお、ベース部分35は、一枚の板によって構成されてもよく、あるいは、複数(例えば2枚)の板を重ね合わせて構成されてもよい。後者の構成、例えば、ベース部分35を二枚の金属板を重ね合わせて構成する場合において、一方の板の表面に第1フィン群31を設け、他方の板の表面に第2フィン群32を設け、それぞれの板を、フィン群が設けられていない側の表面にて接合することで熱伝導体30を構成してもよい。
【0043】
第1フィン群31は、
図4に示すように複数の第1フィン33によって構成されている。複数の第1フィン33の各々は、板状のフィンであり、ベース部分35の表面から真っ直ぐ突出している。複数の第1フィン33は、櫛歯状に突出しており、突出方向と略直交する方向に沿って一定間隔毎に並んでいる。
【0044】
なお、第1フィン群31を構成する第1フィン33の個数は、特に限定されるものではなく、少なくとも2個以上であればよい。
【0045】
熱伝導体30がフィン設置部FSに設置された状態での第1フィン群31の構成について説明すると、複数の第1フィン33は、屋内空間16において、フィン設置部FSから屋内空間16に向かう第1向き(
図4において記号f1にて表す向き)に突出している。また、複数の第1フィン33は、鉛直方向と交差する方向、より詳しくは鉛直方向と直交する水平方向(換言すると、外壁12の延在方向)において第1フィン間に隙間を開けながら並んでいる。
【0046】
また、
図3に示すように、第1フィン群31の直上位置には、前述の第1送風機41が配置されている。第1送風機41は、鉛直方向において下側に向けて送風し、つまり第1フィン群31に向けて送風する。
【0047】
第2フィン群32は、
図4に示すように複数の第2フィン34によって構成されている。複数の第2フィン34の各々は、板状のフィンであり、ベース部分35の裏面から真っ直ぐ突出している。複数の第2フィン34は、櫛歯状に突出しており、突出方向と略直交する方向に沿って一定間隔毎に並んでいる。
【0048】
本実施形態において、第2フィン群32を構成する第2フィン34の個数は、第1フィン群31を構成する第1フィン33の個数と同数である。ただし、これに限定されるものではなく、第1フィン33の個数と第2フィン34の個数とが互いに異なる数であってもよい。
【0049】
本実施形態において、第2フィン群32は、
図4及び5から分かるように、ベース部分35を境にして第1フィン群31と対称な形状をなしている。つまり、第2フィン群32の形状は、ベース部分35を中心として第1フィン群31の形状を表裏反転させたものである。
【0050】
また、第2フィン群32は、第1フィン群31と接続されており、厳密には、
図4及び5に示すようにベース部分35を介して第1フィン群31と接続されている。より詳しく説明すると、本実施形態では、第1フィン群31をなす複数の第1フィン33の各々が、第2フィン群32をなす複数の第2フィン34の中の一つと対をなしており、対をなす第1フィン33及び第2フィン34がベース部分35を介して接続されている。ここで、「対をなす第1フィン33及び第2フィン34」とは、互いに同一直線上に並んだ位置関係にある第1フィン33及び第2フィン34を意味する。
【0051】
熱伝導体30がフィン設置部FSに設置された状態での第2フィン群32の構成について説明すると、複数の第2フィン34は、屋外空間18において、フィン設置部FSから第1向きf1とは反対の第2向き(
図4において記号f2にて表す向き)に突出している。また、複数の第2フィン34は、鉛直方向と交差する方向、より詳しくは鉛直方向と直交する水平方向(換言すると、外壁12の延在方向)において第2フィン間に隙間を開けながら並んでいる。
【0052】
また、熱伝導体30がフィン設置部FSに設置された状態において、第1フィン群31及び第2フィン群32は、
図3及び4に示すように、フィン設置部FSの中間位置(外壁12を貫く方向での中間位置)を境にして互いに対称な形状となっている。
【0053】
また、
図3に示すように、第2フィン群32の直下位置には、前述の第2送風機42が配置されている。第2送風機42は、鉛直方向において上側に向けて送風し、つまり第2フィン群32に向けて送風する。
【0054】
次に、第1フィン群31及び第2フィン群32の各々の構造について詳しく説明する。なお、以降では、特に断る場合を除き、熱伝導体30をフィン設置部FSに設置した状態を想定して説明することとする。
【0055】
第1フィン群31をなす複数の第1フィン33、及び、第2フィン群32をなす複数の第2フィン34の各々は、空気との接触面積を広くする形状であるのが好ましく、表面積をより大きくする形状とするのがよい。
【0056】
第1フィン群31及び第2フィン群32の各々におけるフィンのピッチ(フィン間の間隔)については、ピッチが狭すぎると、空気の流れが悪くなり、広すぎると、フィン表面積(伝熱面積)の増大効果が小さくなり、熱伝導体30の除湿能が低下する。かかる点を踏まえると、フィンのピッチは、0.01mm~1000mmであるのがよく、好ましくは0.05mm~100mmであるのがよく、より好ましくは0.1mm~50mmであるのがよく、特に好ましくは0.5mm~10mmであるのがよい。
【0057】
第1フィン33及び第2フィン34の各々の厚み(板厚)は、上述のピッチと同じ数値範囲にあるのが好ましい。
【0058】
第1フィン33及び第2フィン34の各々の突出量(外壁12を貫く方向における長さ)については、長くなりすぎると、熱伝導体30の除湿能が高くなるものの、フィンの強度(座屈に対する強度)が低下して耐久性が下がる。反対に、突出量が短くなりすぎると、フィンの表面積(空気との接触面積)が小さくなり、除湿能が低下する。かかる点を踏まえると、各フィンの突出量は、0.1mm~10000mmであるのがよく、好ましくは1mm~5000mmであるのがよく、より好ましくは10mm~2000mmであるのがよく、特に好ましくは50mm~1000mmであるのがよい。
【0059】
第1フィン33及び第2フィン34の各々の高さ(鉛直方向における長さ)については、短すぎると、熱伝導体30の除湿能が低下し、長すぎると、フィンの強度が低下して耐久性が下がる。かかる点を踏まえると、各フィンの高さは、0.1mm~20000mmであるのがよく、好ましくは1mm~10000mmであるのがよく、より好ましくは10mm~5000mmであるのがよく、特に好ましくは50mm~2000mmであるのがよい。
【0060】
第1フィン33及び第2フィン34の各々の平面は、平滑面であってもよく、粗面であってもよい。フィン表面が粗面である場合の表面粗さは、0.0001mm~10mmであるのがよく、好ましくは0.001mm~5mmであるのがよく、より好ましくは0.01mm~3mmであるのがよく、特に好ましくは0.1mm~1mmであるのがよい。
【0061】
<<建築物の利用方法>>
次に、以上までに説明してきた建築物10の利用方法、つまり、建築物10の屋内空間16で植物Pを栽培する栽培方法について説明する。
【0062】
建築物10によれば、外壁12に設けられたフィン設置部FSに熱伝導体30を設置することで、屋内空間16と屋外空間18との間で熱交換を行うことができる。特に、冬季のように屋外空間18の温度(すなわち、外気温)が屋内空間16の温度よりも低くなる場合に、熱伝導体30を通じた熱交換により、屋内空間16の温度を下げ、屋内空間16内の湿度を下げて除湿することができる。
【0063】
詳しく説明すると、外気温が屋内空間16の温度よりも低くなる状況において、熱伝導体30のうち、屋外空間18に位置する第2フィン群32は、外気に触れることで冷却される。このとき、第2フィン群32の直下に位置する第2送風機42が鉛直方向の上側に向けて送風する。冷たい空気ほど、比重が重く鉛直方向において下側に存在するので、第2送風機42が第2フィン群32の下側から第2フィン群32に向けて送風することで、第2フィン群32をなす複数の第2フィン34の各々を効果的に冷却することができる。
【0064】
また、第1フィン群31と第2フィン群32とがベース部分35を介して接続されているため、第2フィン群32が冷却されると、熱伝導により、第1フィン群31が冷却される。すなわち、第1フィン群31をなす複数の第1フィン33の各々の表面温度が低下する。
【0065】
そして、屋内空間16の空気が第1フィン群31に接触すると、冷却された第1フィン33によって冷やされるようになる。このとき、第1フィン群31の直上に位置する第1送風機41が鉛直方向の下側に向けて送風する。空気の温度が高くなるほど、比重が軽くなって上昇するので、第1送風機41が第1フィン群31の上側から第1フィン群31に向けて送風することで、より温度が高い屋内空間16の上部にある空気を効果的に冷却することができる。
【0066】
また、屋内空間16のうち、第1フィン33の表面付近の空気がその露点以下まで冷やされると、第1フィン33の表面にて結露する。これにより、屋内空間16が除湿され、同空間16の湿度が低下する。
【0067】
以上のように本実施形態では、外気を利用して屋内空間16を冷却し、また除湿することができる。これにより、空調装置Hの電力負荷が下がるので、電力消費量を削減し、コスト(分かり易くは電気代)を抑えることができる。このような効果は、大規模な植物工場において、より有意義なものとなる。つまり、屋内空間16内で栽培される植物の数が多くなるほど、光の照射量が増えるために屋内空間16の温度が上昇し、また、植物からの蒸散量も増えるために屋内空間16の湿度がより一層高くなる。このような状況下では、外気を利用して屋内空間16を冷却及び除湿するという効果が際立って発揮されることになる。
【0068】
なお、除湿量は、空気(湿潤空気)の温度と第1フィン33の表面温度との差に応じて変化し、温度差が大きくなるほど増える。また、第1フィン群31を通過する風量が増えるほど除湿量が増える。以上により、第1フィン33の温度は、屋内空間16の温度よりも1度以上低くなっているのがよく、好ましくは5度以上低くなっているのがよく、より好ましくは10度以上低くなっているのがよい。また、風量については、除湿効率を高める観点から、1時間あたりに第1フィン群31に触れる総空気量(体積基準)が屋内空間16の体積以上であるのがよく、好ましくは屋内空間16の体積の2倍以上であるのがよく、より好ましくは屋内空間16の5倍以上であるのが好ましい。なお、風量が多すぎると湿度が下がり過ぎ、また、電気代が嵩むため、この点を考慮すると、風量の上限については、屋内空間16の体積の5万倍以下であるのがよく、好ましくは5千倍以下であるのがよく、より好ましくは、500倍以下であるのがよい。
【0069】
また、本実施形態では、第1フィン群31をなす複数の第1フィン33が鉛直方向と交差する方向(例えば、水平方向)に並んでおり、換言すると、各第1フィン33の表面が鉛直方向に沿って延びている。このため、各第1フィン33の表面にて結露して発生した結露水がフィン表面を伝って滴り落ちるようになる。このような状況を考慮して、
図1及び3に示すように、第1フィン群31の直下位置に、結露水を回収する回収器50を配置しておくのがよい。回収器50は、上方が開放されたトレー又はバケツ等の容器によって構成するとよい。回収器50によって回収された結露水は、例えば植物Pの栽培等に用いたりすることで有効利用することができる。
【0070】
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明の建築物及び植物の栽培方法について、具体例を挙げて説明したが、上述した実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられ得る。
【0071】
上述した実施形態では、建築物10の外壁12にフィン設置部FSを設け、外壁12に熱伝導体30が設置されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、天井14にフィン設置部FSを設け、天井14に熱伝導体30が設置されてもよい。また、外壁12及び天井14の両方にフィン設置部FSを設け、外壁12及び天井14の各々に熱伝導体30を設置してもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、第1フィン群31をなす複数の第1フィン33、及び、第2フィン群32をなす複数の第2フィン34の各々が板状のフィンであることとした。ただし、各フィンの形状については、特に限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、第1フィン群131をなす複数の第1フィン133、及び、第2フィン群132をなす複数の第2フィン134が、それぞれ柱状(詳しくはピン状)のフィンであってもよい。
【0073】
なお、柱状のフィンを用いる場合には、フィンの表面積(伝熱面積)を増やすために、フィンの外周面から外側に鍔状に張り出したフィンプレート(不図示)が設けられていてもよい。
【0074】
また、第1フィン群31,131をなす複数の第1フィン33,133には、板状のフィンと柱状のフィンとが混在してもよく、同様に、第2フィン群32,132をなす複数の第2フィン34,134には、板状のフィンと柱状のフィンとが混在してもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、第1フィン群31と第2フィン群32とがベース部分35を介して接続されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、ベース部分35が設けられてなく、第1フィン群31と第2フィン群32とが直結している構成、すなわち、対をなす第1フィン33と第2フィン34とが連結して一枚の板状フィンをなす構成でもよい。
【0076】
また、上述の実施形態では、第1フィン群31の直上位置に第1送風機41が配置されていることとした。ここで、第1送風機41は、第1フィン群31に向けて送風する目的で設置された専用機器であってもよく、例えば、建築物10に元々設置されている換気用のファンにて代用されてもよい。あるいは、
図7に示すように、建築物10内に設けられた空調装置H(詳しくは、空調装置Hの室内機側のファン)により、屋内空間16の上部にある温かい空気を熱伝導体30に向かわせ、下部における冷たい空気を返送させるような気流(空気の循環)を発生させてもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、第1フィン群31をなす複数の第1フィン33が、鉛直方向と交差する方向(詳しくは水平方向)に間隔を空けて並べられていることとしたが、これに限定されるものではない。複数の第1フィン33が鉛直方向に並べて(つまり、上下に重ねられた状態で)配置されてもよい。同様に、第2フィン群32をなす複数の第2フィン34についても、鉛直方向に並べて配置されてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態では、第1フィン33及び第2フィン34が矩形状の板であり、正面から見たときに長方形状であることとしたが、
図8に示す熱伝導体230のように、下端部が斜めにカットされた(換言すると、下端が上下方向に対して傾斜してもよい)。特に、第1フィン233の下端は、屋外側に近付くにつれて下がるように傾斜してもよい。また、
図7に示すように、ベース部235の屋内側の表面において、第1フィン233の下端よりも若干下側に樋236を設けることで、第1フィン233の表面で発生した結露水を集めることができる。このようにすれば、結露水に作用する重力を利用して結露水を樋236に集めることができる。
なお、樋236は、樋236内の水が流れるように一方向に傾斜しているとよい。また、
図8では不図示であるが、上記の樋236をベース部235の屋外側の表面にも設けてもよい。この場合には、雨天時に、第2フィン234の表面を伝って流れ落ちる雨水を樋に導くことができ、耐久性等が向上する。
【0079】
また、上述の実施形態では、外壁12において、互いに離れた位置に複数のフィン設置部FSが設けられており、複数の熱伝導体30が互いに離間して設置されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、
図9に示すように複数の熱伝導体330が連結しており、外壁12の所定箇所に設けられたファン設置部FSに複数の熱伝導体330がまとめて設置されてもよい。
具体的に説明すると、
図9に示すケースでは、複数の熱伝導体330の各々のベース部が連結して一つの連結プレート335を構成し、連結プレート335の表面には、互いに反対方向に突出している一対の支持部336A,336Bが、連結プレート335の延出方向において一定間隔毎に複数設けられている。一方の支持部336Aは、連結プレート335の屋内側の表面から突出しており、両側面の各々に第1フィン群331が設けられている。第1フィン群331をなす複数の第1フィン333は、
図9に示すように支持部336Aの突出方向に沿って並んでいる。もう一方の支持部336Bは、連結プレート335の屋外側の表面から突出しており、両側面の各々に第2フィン群332が設けられている。第2フィン群332をなす複数の第2フィン334は、
図9に示すように支持部336Bの突出方向に沿って並んでいる。
【符号の説明】
【0080】
10 建築物
12 外壁
14 天井
16 屋内空間(内部空間)
18 屋外空間
20 栽培棚
22 栽培ケース
24 照明装置
30,130,230 熱伝導体(ヒートシンク)
31,131,231,331 第1フィン群
32,132,232,332 第2フィン群
33,133,233,333 第1フィン
34,134,234,334 第2フィン
35,235 ベース部分
41 第1送風機
42 第2送風機
50 回収器
236 樋
335 連結プレート
336A,336B 支持部
H 空調装置
FS フィン設置部