(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】モータアンプ及びモータアンプ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20240725BHJP
【FI】
H02P29/00
(21)【出願番号】P 2020113002
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】望月 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】今井 誠也
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205881(JP,A)
【文献】特開2011-118640(JP,A)
【文献】特開2010-283901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転位置を検出するエンコーダと接続され、前記モータの回転を制御するモータアンプであって、
初期状態において、第一速度設定で前記エンコーダとの通信を試み、通信エラーになった場合には、第二速度設定で前記エンコーダと通信を試みる通信処理部と、
前記通信処理部により前記エンコーダとの通信が確立した場合、前記エンコーダの機種情報を取得し、該機種情報に対応した前記エンコーダの回転位置のビット数を設定するビット数設定部とを備え
、
初回時、前記第一速度設定又は前記第二速度設定での通信を試みたネゴシエーションの結果を記録媒体に格納しておき、次回以降は該結果に基づいて通信を試みる
ことを特徴とするモータアンプ。
【請求項2】
前記第一速度設定は、前記エンコーダとの通信可能な最大速度で通信する設定であり、
前記第二速度設定は、前記最大速度よりも遅い速度で通信する設定である
ことを特徴とする請求項1に記載のモータアンプ。
【請求項3】
ビット数設定部は、
前記第二速度設定で前記エンコーダとの通信が確立した場合、前記機種情報を取得しなくても、前記ビット数を設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータアンプ。
【請求項4】
モータの回転位置を検出するエンコーダと接続され、前記モータの回転を制御するモータアンプにより実行されるモータアンプ制御方法であって、
初期状態において、第一速度設定で前記エンコーダとの通信を試み、
通信エラーになった場合には、第二速度設定で前記エンコーダと通信を試み、
前記エンコーダとの通信が確立した場合、前記エンコーダの機種情報を取得し、該機種情報に対応した前記エンコーダの回転位置のビット数を設定
し、
初回時、前記第一速度設定又は前記第二速度設定での通信を試みたネゴシエーションの結果を記録媒体に格納しておき、次回以降は該結果に基づいて通信を試みる
ことを特徴とするモータアンプ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にモータの回転位置を検出するエンコーダと接続され、モータの回転を制御するモータアンプ及び当該モータアンプの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置指令を送信するPLC(Programmable Logic Controller)等の上位装置と、モータの回転位置を取得するエンコーダと、このエンコーダに接続されたモータアンプが存在する。
たとえば、特許文献1には、エンコーダから出力される位置データを取得して、当該位置データに基づいて、モータの回転を制御するモータアンプにあたる制御装置が記載されている(例えば、特許文献の段落[0022]等参照)。この制御装置は、位置データに基づいて、モータに印加する電流又は電圧等を制御することにより、モータの回転を制御する。更に、制御装置は、上位装置から上位制御信号を取得して、当該上位制御信号に表された位置等を実現可能な回転力がモータのシャフトから出力されるように、モータを制御することも可能である旨、記載されている。
【0003】
ここで、モータアンプは、複数種類のエンコーダが接続されることがあった。これらの複数種類のエンコーダでは、通信速度が異なったり、回転角度を示すビット数が異なったりすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来のモータアンプは、元々接続されていたものと通信速度やビット数の異なるエンコーダを接続した場合、正しい回転位置を取得できないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、通信速度やビット数の異なるエンコーダを接続しても、自動で正しい回転位置を取得可能とするモータアンプを提供し、上述の課題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモータアンプは、モータの回転位置を検出するエンコーダと接続され、前記モータの回転を制御するモータアンプであって、初期状態において、第一速度設定で前記エンコーダとの通信を試み、通信エラーになった場合には、第二速度設定で前記エンコーダと通信を試みる通信処理部と、前記通信処理部により前記エンコーダとの通信が確立した場合、前記エンコーダの機種情報を取得し、該機種情報に対応した前記エンコーダの回転位置のビット数を設定するビット数設定部とを備え、初回時、前記第一速度設定又は前記第二速度設定での通信を試みたネゴシエーションの結果を記録媒体に格納しておき、次回以降は該結果に基づいて通信を試みることを特徴とする。
このように構成することで、通信速度やビット数の異なるエンコーダを接続しても、正しい回転位置を取得することができる。
【0008】
本発明のモータアンプは、前記第一速度設定は、前記エンコーダとの通信可能な最大速度で通信する設定であり、前記第二速度設定は、前記最大速度よりも遅い速度で通信する設定であることを特徴とする。
このように構成することで、最大速度での通信を優先してエンコーダとの通信を確立できる。
【0009】
本発明のモータアンプは、ビット数設定部は、前記第二速度設定で前記エンコーダとの通信が確立した場合、前記機種情報を取得しなくても、前記ビット数を設定することを特徴とする。
このように構成することで、待ち時間を減らして接続することができる。
【0010】
本発明のモータアンプ制御方法は、モータの回転位置を検出するエンコーダと接続され、前記モータの回転を制御するモータアンプにより実行されるモータアンプ制御方法であって、初期状態において、第一速度設定で前記エンコーダとの通信を試み、通信エラーになった場合には、第二速度設定で前記エンコーダと通信を試み、前記エンコーダとの通信が確立した場合、前記エンコーダの機種情報を取得し、該機種情報に対応した前記エンコーダの回転位置のビット数を設定し、初回時、前記第一速度設定又は前記第二速度設定での通信を試みたネゴシエーションの結果を記録媒体に格納しておき、次回以降は該結果に基づいて通信を試みることを特徴とする。
このように構成することで、通信速度やビット数の異なるエンコーダを接続しても、正しい回転位置を取得することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、初期状態において、第一速度設定でエンコーダとの通信を試み、通信エラーになった場合には、第二速度設定でエンコーダと通信を試み、通信が確立した場合、機種情報を取得し、当該機種情報に対応した回転位置のビット数を設定することで、通信速度やビット数の異なるエンコーダを接続しても、自動で正しい回転位置を取得可能とするモータアンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る制御システムのシステム構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るオートネゴシエーション処理のフローチャートである。
【
図3】
図2に示すオートネゴシエーション処理のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態>
〔制御システムXの構成〕
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御システムXの構成について説明する。
制御システムXは、モータアンプ1、上位装置2、エンコーダ3、及びモータ4を含んで構成される。
【0014】
モータアンプ1は、上位装置2とエンコーダ3とに接続された、制御用デバイスである。本実施形態においては、モータアンプ1は、例えば、上位装置2から送信される位置指令を取得し、更に、エンコーダ3から角度情報を取得して、これらを基に、モータ4を駆動制御する。本実施形態においては、この位置指令及び角度情報は、例えば、17ビット、20ビット、又は23ビット等、エンコーダ3の精度に応じたモータ4のシャフトSの回転位置を示す絶対値の値である例について説明する。
モータアンプ1の機能的な詳細構成については後述する。
【0015】
モータアンプ1と上位装置2との間は、例えば、EtherCAT等のフィールドネットワーク、RS-232C等のシリアル通信線、パラレル通信線等で接続されている。一方、モータアンプ1とエンコーダ3との間は、例えば、専用線及びシリアル通信線等で接続され、モータ4をサーボ駆動する電力も供給される。この電力は、エンコーダ3を介して、又は、直接、モータ4に供給される。加えて、モータアンプ1は、上位装置2からのデータリクエストに応答することも可能であってもよい。または、モータアンプ1は、エンコーダ3から温度等の状態情報を取得することも可能である。
【0016】
上位装置2は、位置指令を送信するクライアント(顧客)用の機器である。上位装置2は、例えば、マイクロコントローラを備えた各種機器のPLCやロジックボード等である。
上位装置2は、モータ4を制御するための制御信号を、位置指令としてモータアンプ1に送信する。
また、上位装置2は、検出されたモータ4の位置データ、その他のデータをモータアンプ1から取得することも可能である。
【0017】
エンコーダ3は、モータの回転位置を取得するデバイスである。本実施形態では、エンコーダ3は、モータ4の回転位置の位置データを検出し、角度情報としてモータアンプ1に送信する。このため、エンコーダ3は、例えば、磁気式や光学式の角度検出機構と、MPU(Micro Processing Unit、マイクロコントローラ)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の制御演算手段と、角度情報や一時データを保持するRAM(Random Access Memory)、制御プログラムを記録したROM(Read Only Memory)等の一時的でない記録媒体を含んでいる。
【0018】
本実施形態においては、この記録媒体には、機種情報を含んでいる。この機種情報は、エンコーダ3及びモータ4の機種のID(Identification)、シリアル番号、回転角度の角度情報のフォーマット(形式)を示すビット数の情報(以下、単に「ビット数」という。)、通信速度の情報等を含んでいる。本実施形態においては、このビット数は、例えば、シャフトSの一回転に当たる角度位置を示す角度情報のデータ量(bit)であり、例えば、17ビット、20ビット、又は23ビットの形式である例を示す。さらに、機種情報は、エンコーダが取得したモータ4のIDやシリアル番号等の情報を含んでいてもよい。
【0019】
また、エンコーダ3は、モータ4やエンコーダ3自身の温度を測定する温度センサ等も備えている。また、エンコーダ3は、データのバックアップ用バッテリー(図示せず)を内蔵し、外力等によりシャフトが駆動された場合、位置データを内蔵の記憶媒体に記憶し続けることが可能であってもよい。
また、エンコーダ3は、この温度センサ、バッテリーの電圧センサ等の信号について、角度情報とは別の別種類のデータとして送信可能であってもよい。
【0020】
モータ4は、モータアンプ1からの制御信号により、回転出力軸であるシャフトSを、回転軸Aを中心軸として回転させる。
モータ4は、ロータ(rotor)、ベアリング(bearing)、ステータ(stator)、ブラケット(bracket)等を備える一般的なサーボモータ等である。
【0021】
〔モータアンプ1の構成〕
より詳しく説明すると、本実施形態においては、モータアンプ1は、通信制御部10及びアンプ制御部20を備えている。
【0022】
通信制御部10は、通信を受信し、上位装置2からモータアンプ1宛の位置指令等を取得して、アンプ制御部20に送信する。
通信制御部10は、例えば、MPU、DSP、ASIC等の制御演算手段と、RAMやROM等の一時的でない記録媒体と、通信用の回路(物理層)とを含んでいる。
【0023】
アンプ制御部20は、通信制御部10から取得した位置指令に基づく角度情報を算出してモータ4をサーボ駆動させシャフトSの位置を制御する。この際、アンプ制御部20は、エンコーダ3で取得した角度情報も参照してモータ4の制御を行うことが可能である。さらに、アンプ制御部20は、その他の各種センサの情報等も取得して、角度情報と併せて通信制御部10へ送信することも可能である。
アンプ制御部20は、MPU、DSP、ASIC等の制御演算手段と、RAMやROM等の一時的でない記録媒体とを含んでいる。
【0024】
次に、モータアンプ1の機能的な構成について説明する。
アンプ制御部20は、通信処理部100及びビット設定部110を備えている。
【0025】
通信処理部100は、初期状態において、第一速度設定でエンコーダ3との通信を試み、通信エラーになった場合には、第二速度設定でエンコーダ3と通信を試みる。ここで、第一速度設定は、エンコーダ3との通信可能な最大速度で通信する設定である。本実施形態においては、第一速度設定は、4Mbps(bit per second)である例について説明する。一方、第二速度設定は、最大速度よりも遅い速度で通信する設定である。本実施形態においては、第二速度設定は、2.5Mbpsである例について説明する。
【0026】
ビット数設定部は、通信処理部100によりエンコーダ3との通信が確立した場合、エンコーダ3の機種情報を取得し、当該機種情報に対応したエンコーダ3の回転位置を示すビット数の形式を設定する。本実施形態においては、23ビット及び20ビットのエンコーダ3については、この機種情報に対応してビット数を設定する。加えて、ビット数設定部は、第二速度設定でエンコーダ3との通信が確立した場合、機種情報を取得しなくても、ビット数を設定することも可能である。本実施形態においては、2.5Mbpsの通信速度なのは17ビットのエンコーダ3だけであるとして設定する例について説明する。
【0027】
ここで、アンプ制御部20は、アンプ制御部20の記録媒体に格納された制御プログラムを実行することで、通信処理部100及びビット設定部110として機能する。なお、これらの構成の一部又は全部をロジック回路又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等で回路的に構成することも可能である。
【0028】
〔オートネゴシエーション処理〕
次に、
図2及び
図3を参照して、本発明の実施の形態に係るオートネゴシエーション処理について説明する。
本実施形態のオートネゴシエーション処理では、初期状態において、第一速度設定でエンコーダ3との通信を試みる。この上で、通信エラーになった場合には、第二速度設定でエンコーダ3と通信を試みる。そして、エンコーダ3との通信が確立した場合、エンコーダ3から機種情報を取得し、当該機種情報に対応したエンコーダ3の回転位置のビット数を設定する。
【0029】
本実施形態のオートネゴシエーション処理は、主にアンプ制御部20が、記憶媒体に記憶された制御プログラム(図示せず)を、各部と協働し、ハードウェア資源を用いて実行する。
以下で、
図2のフローチャートを用いて、
図3のタイミングを適宜参照しつつ、本実施形態のオートネゴシエーション処理の詳細をステップ毎に説明する。
【0030】
(ステップS101)
まず、通信処理部100が、第一速度設定処理を行う。
通信処理部100は、初期状態として、エンコーダ3との通信可能な最大速度で通信する第一速度設定にボーレートを設定する。本実施形態においては、ボーレートを4MBpsに設定とする初期設定を用いる。また、通信処理部100は、その他の初期化処理も行い、エンコーダ3が起動する時間、例えば、数m秒~数秒程度待機する。
【0031】
(ステップS102)
次に、通信処理部100が、初期通信処理を行う。
通信処理部100は、初回の通信として、第一速度設定でエンコーダ3との通信を試みる。本実施形態においては、通信処理部100は、4Mbpsでの初期通信を行う(タイミングT101)
【0032】
(ステップS103)
次に、通信処理部100が、通信確立したか否かを判定する(タイミングT102)。通信処理部100は、想定された返信をエンコーダ3から受信し、通信を確立できた場合には、Yesと判定する。通信処理部100は、通信において想定された返信をエンコーダ3から受信不可能であった場合、すなわち通信異常(通信エラー)であった場合に、Noと判定する。
Yesの場合、通信処理部100は、処理をステップS108に進める。
Noの場合、通信処理部100は、処理をステップS104に進める。
【0033】
(ステップS104)
通信エラーの場合、通信処理部100が、第二速度設定再通信処理を行う。
通信処理部100は、第二速度設定でエンコーダ3と通信を試みる。本実施形態においては、通信処理部100は、ボーレートを2.5MBpsに設定して、再通信を試みる(タイミングT103)。
【0034】
(ステップS105)
次に、ビット設定部110が、通信確立したか否かを判定する(タイミングT104)。ビット設定部110は、通信を確立した場合には、Yesと判定する。ビット設定部110は、当該第二速度でも、通信エラーになった場合に、Noと判定する。本実施形態においては、2.5Mbpsでも通信エラーであった場合に、Noと判定する。
Yesの場合、ビット設定部110は、処理をステップS106に進める。
Noの場合、ビット設定部110は、処理をステップS107に進める。
【0035】
(ステップS106)
第二速度設定で通信を確立した場合、ビット設定部110が、第二速度ビット数設定処理を行う。
ビット数設定部は、機種情報を取得せずに、ビット数を設定する。本実施形態においては、ビット数設定部は、エンコーダ3のビット数が17ビットの形式であると確定する。
その後、ビット設定部110は、本実施形態のオートネゴシエーション処理を終了し、すぐ、エンコーダ3から回転位置の角度情報の取得等の通信を開始する。
【0036】
(ステップS107)
第二速度設定でも通信エラーの場合、ビット設定部110が、エラー処理を行う。
ビット設定部110は、通信異常でエンコーダ3との通信を確立できなかったとして、モータアンプ1の状態を表示するLED(Light Emitting Diode)等の色や点滅等でエラーとなったことを示す。さらに、ビット設定部110は、上位装置2へ、エンコーダ3との通信を確立できない旨のエラーを通知する。
その後、ビット設定部110は、本実施形態のオートネゴシエーション処理を終了する。
【0037】
(ステップS108)
第一速度設定で通信を確立した場合、ビット設定部110が、機種情報取得処理を行う。
ビット設定部110は、機種情報を送信するように指示するコマンド(指令)をエンコーダ3へ送信する。すると、このコマンドを受信したエンコーダ3は、記録媒体に格納された機種情報をモータアンプ1へ送信する(タイミングT105)。
ビット設定部110は、このエンコーダ3の機種情報を取得して、記録媒体に一時的に格納する。上述したように、この機種情報にはモータ4の機種情報が含まれていてもよい。
【0038】
(ステップS109)
次に、ビット設定部110が、機種情報ビット数設定処理を行う。
ビット設定部110は、機種情報を解析して、回転位置の角度情報に係るビット数の形式を設定する。本実施形態においては、具体的には、20ビット又は23ビットのエンコーダ3であることを設定する。たとえば、ビット設定部110は、記録媒体に格納された機種のIDとビット数とを示すテーブルを参照して、エンコーダ3が20ビットのエンコーダであるか、23ビットのエンコーダであるかを確定する。
以上により、本発明の実施の形態に係るオートネゴシエーション処理を終了する。
【0039】
このようにビット数が設定された後、モータアンプ1は、設定されたビット数について、上位装置2に送信する。
そして、モータアンプ1は、当該ビット数にて、エンコーダ3から回転位置の角度情報を取得し、上位装置2に送信する。さらに、モータアンプ1は、上位装置2からの位置指令を受信して、これに対応して、モータ4のシャフトSの回転位置を制御する。
【0040】
〔本実施形態の主な効果〕
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
近年、用途によって、異なるエンコーダを使い分けたいというユーザのニーズが存在する。
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来のモータアンプは、通信速度やビット数の異なる他のエンコーダを接続することは想定されていなかった。このため、このような他のエンコーダを接続した場合、ユーザが直接設定等しない限り、正しい回転位置を取得できなかった。すなわち、従来、17ビット(通信ボーレート:2.5Mbps)のエンコーダを接続した状態のモータアンプでは、23ビット(ボーレート:4Mbps)のエンコーダを接続しても、通信や回転位置の取得ができなかった。
【0041】
これに対して、本発明の実施の形態に係るモータアンプ1は、モータ4の回転位置を検出するエンコーダ3と接続され、モータ4の回転を制御するモータアンプであって、初期状態において、第一速度設定でエンコーダ3との通信を試み、通信エラーになった場合には、第二速度設定でエンコーダ3と通信を試みる通信処理部100と、通信処理部100によりエンコーダ3との通信が確立した場合、エンコーダ3の機種情報を取得し、該機種情報に対応したエンコーダ3の回転位置のビット数を設定するビット数設定部とを備えることを特徴とする。
【0042】
このように構成することで、通信速度やビット数の異なるエンコーダ3を接続しても、特に設定等しなくても、正しい回転位置を取得することができる。すなわち、エンコーダ3との間で、オートネゴシエーションを行って、回転位置の角度情報を取得できる。これにより、23ビット(ボーレート:4Mbps)のエンコーダ3の自動接続に対応することが可能となる。また、17ビット及び23ビット等の形式についても、パラメータや設定の変更等をせずに、自動で接続する事が可能となる。
【0043】
本発明の実施の形態に係るモータアンプ1は、第一速度設定は、エンコーダ3との通信可能な最大速度で通信する設定であり、第二速度設定は、最大速度よりも遅い速度で通信する設定であることを特徴とする。
【0044】
このように構成することで、最大速度での通信を優先してエンコーダ3との通信を確立できる。すなわち、例えば、デフォルト(規定)の通信速度ボーレートとして4Mbpsを設定し、4Mbpsで接続可能なエンコーダ3が接続された場合に、すぐ通信可能となる。この際に、例えば、遅い2.5Mbps等の速度からネゴシエーションして、通信を試みる必要がなくなる。
つまり、高速な通信が可能なエンコーダ3を接続した場合に、初期通信に時間をかけることなく、接続可能となる。このため、高速な通信が可能なエンコーダ等をスリープ等の省電力状態等にしても、すぐ復帰して最大速度で通信可能となる。一方、高速通信のエンコーダ3程の通信速度が必要でない安価又は旧式のエンコーダ3の場合であっても対応可能となる。
【0045】
本発明の実施の形態に係るモータアンプ1は、ビット数設定部は、第二速度設定でエンコーダ3との通信が確立した場合、機種情報を取得しなくても、ビット数を設定することを特徴とする。
【0046】
このように構成することで、第二速度設定で通信するエンコーダ3について、先に最大速度での通信で通信エラーとなっていても、待ち時間を減らして接続することができる。すなわち、例えば、4Mbpsで通信を試みて、応答がなければ17ビットの接続とみなすことで、安価又は旧式のエンコーダ3の場合であっても、少ないウェイトで接続可能となる。
【0047】
〔他の実施の形態〕
なお、上述の実施形態においては、第一速度設定として4Mbps、第二速度設定として、2.5Mbpsである例について説明した。さらに、17ビット、20ビット、23ビットのエンコーダ3を用いる例について説明した。
しかしながら、これ以外の通信速度の設定、ビット数の設定等を用いることも、当然、可能である。この場合でも、通信を試みて通信エラーになったら通信速度設定を変更し、その後に機種情報を取得してもよいことは同様である。さらに、第二速度設定でも通信エラーになった場合、第二速度設定よりも遅い速度で通信する設定である第三速度設定にて通信してもよい。または、第一速度設定は、第二速度設定より遅い速度とするような構成であってもよい。
このように構成することで、様々な通信速度やビット数のエンコーダ3に対応可能となる。
【0048】
上述の実施形態においては、モータアンプ1の起動時に、毎回、オートネゴシエーション処理を実行するような記載をした。
しかしながら、初回時に一度、オートネゴシエーションを実行した後、その結果をアンプ制御部20の記録媒体に格納しておき、これを「優先モード」として、毎回、実行してもよい。この場合でも、ビット設定部110は、第一速度設定で接続が可能であったら、念のために機種情報を取得して、ビット数の形式等が記録媒体に格納されたものと同じであることを確認してもよい。
このように構成することで、初回以降は、より高速に通信を確立して、回転位置の角度情報を取得することが可能となる。
【0049】
上述の実施形態においては、エンコーダ3が単一の速度設定及びビット数の組み合わせに対応する例について説明した。
しかしながら、複数の速度で通信が可能であったり、異なるビット数の形式で角度情報を通信可能であったりするエンコーダ3を用いるような構成も可能である。
この場合、アンプ制御部20は、例えば、第一速度設定で通信エラーが多発する場合には、第二速度設定で通信してもよい。または、アンプ制御部20は、モータ4の制御の電流フィードバック値を用いてトルク換算をして、振動等が多い場合は、ビット数を少なくして精度を落としたりしてもよい。これらの際には、アンプ制御部20は、そのような処理を行うことを、上位装置2及びエンコーダ3にコマンドを送信して指示してもよい。
このように構成することで、柔軟な構成に対応可能となる。
【0050】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 モータアンプ
2 上位装置
3 エンコーダ
4 モータ
10 通信制御部
20 アンプ制御部
100 通信処理部
110 ビット設定部
A 回転軸
S シャフト
X 制御システム