IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許-搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造 図1
  • 特許-搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造 図2
  • 特許-搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造 図3
  • 特許-搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造 図4
  • 特許-搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造 図5
  • 特許-搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造 図6
  • 特許-搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20240725BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20240725BHJP
   B65D 81/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E04G21/14
E06B3/46
B65D81/02 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020114548
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012603
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 創
(72)【発明者】
【氏名】沢幡 将
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-143287(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211958(JP,U)
【文献】特開2016-180228(JP,A)
【文献】特開2005-053566(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213324(JP,U)
【文献】特開2015-105107(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155502(WO,A1)
【文献】特開平07-112726(JP,A)
【文献】特開2000-264570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D57/00-59/08
67/00-81/30
81/38
85/88
E04G21/14、21/18
E04B2/56-2/70
2/88-2/96
E06B3/04-3/46
3/50-3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールを有する下枠を含む窓枠と、
前記窓枠に納められる障子と、
搬送用緩衝材と、
結束部材と、
戸車保護部品と、を備え、
前記搬送用緩衝材は、前記障子の高さの1/2以上の長さと、前記窓枠内に納められた前記障子の縦框に装着された状態で自立可能な剛性と、を有し、
前記戸車保護部品は、前記レールに沿うように延びるカバー部と、前記カバー部の長さ方向の一端から直立するエンド部と、を有し、
前記戸車保護部品の前記カバー部が、前記障子の下框と前記下枠との間に挟まれ、前記エンド部が前記障子の前記縦框の見込み面の下部に当接し、前記搬送用緩衝材が前記障子の前記縦框に装着されることによって、前記縦框の前記見込み面と前記搬送用緩衝材との間で前記戸車保護部品の前記エンド部が挟着された状態で、前記窓枠、前記障子、及び前記搬送用緩衝材に亘って前記結束部材が掛け渡されることによって、一体に束ねられている、引違い窓の搬送構造。
【請求項2】
前記搬送用緩衝材は、前記結束部材を収容して、前記結束部材の垂れ落ちを防止する溝部を有する、請求項1に記載の引違い窓の搬送構造
【請求項3】
前記搬送用緩衝材は、前記障子の前記縦框に設けられるクレセント錠を格納するクレセント格納部を有する、請求項1又は2に記載の引違い窓の搬送構造
【請求項4】
前記搬送用緩衝材は、前記障子の前記縦框を収容可能な収容凹部を有し、
前記収容凹部は、寸法違いの前記縦框を収容可能な幅を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の引違い窓の搬送構造
【請求項5】
前記搬送用緩衝材は、発泡樹脂製である、請求項1~4のいずれか1項に記載の引違い窓の搬送構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の引違い窓の施工方法として、窓枠内に複数の障子を納めたパネルを予め工場で製造した後、施工現場において建築躯体に組み付ける方法が知られている。パネルは、トラック等の荷台に搭載されて工場から施工現場まで搬送される。搬送中の引違い窓の損傷を防止するため、複数の障子は窓枠内で互いに重ね合わされ、窓枠内で移動しないように、結束部材によって一体に束ねられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、パネル化された引違い窓において、複数の障子の縦框に、布あるいは段ボールからなる緩衝材を挟んで結束バンドを架け渡し、複数の障子を束ねることが開示されている。緩衝材は、障子の縦框における結束バンドが掛け渡される部位のみに部分的に配置され、縦框が結束バンドによって傷付くことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-180228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の緩衝材は、結束バンドと縦框との間に部分的に挟まれているだけである。そのため、緩衝材は、結束バンドが障子に掛け渡される前に、縦框から脱落し易い。したがって、作業者は、緩衝材を縦框に対して手で保持しながら結束バンドを掛け渡さなくてはならず、作業効率が極めて悪かった。
【0006】
しかも、結束バンドは、障子を安定して束ねるために、障子の高さ方向の少なくとも上下2箇所に架け渡される。障子の高さが高い場合、上側の結束バンドを掛け渡す際に、作業者は脚立に昇って作業を行う必要がある。そのため、緩衝材を縦框に対して手で保持しながら結束バンドを掛け渡す作業はより煩雑化し、作業効率はさらに悪化する。
【0007】
よって、発明者は、障子を結束部材によって束ねる際に緩衝材を縦框に手で保持する必要がなく、作業効率を向上できるようにするという課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、引違い窓を構成する障子の高さの1/2以上の長さと、窓枠内に納められた前記障子の縦框に装着された状態で自立可能な剛性と、を有する、引違い窓の搬送用緩衝材である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】搬送用緩衝材を使用した引違い窓の搬送構造を示す正面図である。
図2図1におけるA-A線に沿う断面図である。
図3】搬送用緩衝材を示す斜視図である。
図4】搬送用緩衝材を示す側面図である。
図5】搬送用緩衝材を示す底面図である。
図6】戸車保護部品が障子に取り付けられる様子を説明する図である。
図7】搬送用緩衝材を使用した引違い窓の搬送構造の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造の一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、引違い窓1は、工場等において、建物の窓構造体100に予め取り付けられる。図1に示す建物の窓構造体100は、窓開口を形成するスチール製のフレーム材である。窓構造体100は、上フレーム材101、下フレーム材102、及び左右の縦フレーム材103,104を矩形に枠組することによって構成される。
【0011】
引違い窓1は、窓構造体100の内周に取り付けられる窓枠2と、窓枠2内に納められる2枚の障子3A,3Bと、を有する。窓枠2は、上フレーム材101に取り付けられる上枠21、下フレーム材102に取り付けられる下枠22、及び縦フレーム材103,104にそれぞれ取り付けられる左右の縦枠23,24を矩形に枠組することによって構成される。
【0012】
2枚の障子3A,3Bは、図2に示すように、窓枠2内において室外側と室内側とに配置され、左右方向に移動可能に納められる。図2における引違い窓1において、矢印によって示されるX1方向が室外側を示し、X2方向が室内側を示す。X1及びX2に沿う方向は、引違い窓1の見込み方向を示す。図1は、室内側から見た引違い窓1を示している。図2では、窓構造体100のフレーム材は省略されている。
【0013】
障子3A,3Bは、それぞれ上框31、下框32、戸先側の縦框33、及び戸尻側の縦框34を矩形に框組し、その内側にガラス板35を納めることによって構成される。障子3A,3Bは、それぞれ窓枠2の内側の開口面積の略半分の面積を有する。引違い窓1は、障子3A,3Bを左右の縦枠23,24に向けてそれぞれ相反する方向に移動させることによって閉鎖され、障子3A,3Bを互いに重ねるように移動させることによって開放される。
【0014】
図1及び図2において、障子3A,3Bは、窓枠2内で互いに重ねられている。図2に示すように、室外側の障子3Aの戸先側の縦框33と、室内側の障子3Bの戸尻側の縦框34とが重ねられ、室外側の障子3Aの戸尻側の縦框34と、室内側の障子3Bの戸先側の縦框33とが重ねられる。室内側の障子3Bの戸尻側の縦框34には、クレセント錠36が取り付けられている。窓枠2内で互いに重ねられた障子3A,3Bは、一対の縦枠23,24のうちの一方の縦枠に近接して配置されている。
【0015】
互いに重ねられた障子3A,3Bの縦框33,34に、それぞれ搬送用の緩衝材4,4が装着される。緩衝材4,4が装着された障子3A,3Bは、帯状体からなる複数本の結束部材5によって束ねられている。結束部材5は、窓構造体100の縦フレーム材103から遠い側の緩衝材4と縦フレーム材103とに亘って掛け渡されている。これによって、障子3A,3B及び緩衝材4,4は一体に束ねられ、窓構造体100に固定される。
【0016】
次に、緩衝材4についてさらに詳細に説明する。2つの緩衝材4,4は同一構造を有するため、以下では、1つの緩衝材4の構造について説明する。以下の説明において、2つの障子3A,3Bを区別する必要がない場合には、単に「障子3」と称する。
【0017】
緩衝材4は、長尺な略直方体形状を有する。具体的には、緩衝材4は、それが装着される障子3の高さの1/2以上の長さを有する。本実施形態の緩衝材4は、障子3の高さの1/2よりも僅かに長くなるように形成されている。
【0018】
緩衝材4は、自立可能な剛性を有する。自立可能な剛性とは、図1に示すように、緩衝材4が、窓枠2内で互いに重ねられた障子3A,3Bの縦框33,34に対して平行に装着された際に、手で保持しなくても撓むことがなく、縦框33,34に沿って下枠22上で自立し得る程度の硬さを有することをいう。
【0019】
緩衝材4の材質は、緩衝材としての緩衝機能を有するとともに自立可能な剛性を発現し得るものであれば特に制限はない。緩衝材4は、例えば、発泡樹脂材料によって形成され得る。具体的な発泡樹脂材料としては、発泡ポリスチレンが挙げられる。このような発泡樹脂材料からなる緩衝材4は、軽量且つ安価であり、取り扱い性に優れ、繰り返しの使用にも耐えることができる。
【0020】
図3及び図4に示すように、緩衝材4は、長さ方向に沿って延在する4つの側面4a,4b,4c,4dと、長さ方向の両端部に配置される2つの端面4e,4fと、を有する。緩衝材4は、このうちの一つの側面4aに、窓枠2内に互いに重ねられた障子3A,3Bの縦框33,34をまとめて収容可能な収容凹部41を有する。収容凹部41は、側面4aの表面から真っすぐに掘り下げられ、緩衝材4の長さ方向の全長に亘って均一の幅及び深さで延びている。収容凹部41の内部は、端面4e,4fにおいて外部に向けて開放されている。
【0021】
図4に示す収容凹部41の幅Wは、寸法違いの縦框34を収容可能な幅を有する。すなわち、室内側に配置される障子3Bの戸尻側の縦框34は、障子3Bの開閉操作のために室内側から操作者によって把持される。この縦框34は、障子3Bの種類によって様々に異なる見込み方向の寸法を有し得る。収容凹部41の幅Wは、緩衝材4の装着対象である障子のうち、見込み方向の寸法が最も大きい縦框を有する障子が室内側に納められた場合でも、互いに重ね合わされた複数の障子の縦框をまとめて収容することができる程度に設定されている。
【0022】
本実施形態において、室内側の障子3Bは、緩衝材4の装着対象である障子のうちでは比較的小さい縦框34を有している。そのため、図2に示すように、障子3A,3Bの縦框33,34に装着された緩衝材4,4のうち、室内側の障子3Bの戸尻側の縦框34に装着される緩衝材4の収容凹部41には、縦框34と収容凹部41の室内側の内壁面41aとの間に、クリアランス調整用のスペースSが形成される。このスペースSは、室内側の障子3Bの縦框34が、見込み方向にさらに大きな寸法を有していても、その縦框34を収容凹部41内に収容可能であることを示している。したがって、緩衝材4は、寸法違いの縦框を収容凹部41に収容可能であり、汎用性に優れる。
【0023】
収容凹部41は、幅方向の中央部に、収容凹部41の幅よりも幅狭のクレセント格納部42を有する。クレセント格納部42は、クレセント錠が障子の上下方向の任意の位置で取り付くことに対応するため、収容凹部41の底部41bから真っすぐに掘り下げられ、緩衝材4の長さ方向の全長に亘って、収容凹部41の幅Wよりも狭い均一の幅及び深さで延びている。クレセント格納部42の内部は、端面4e,4fにおいて外部に向けて開放されている。
【0024】
クレセント格納部42は、図2に示すように、緩衝材4が室内側の障子3Bの戸尻側の縦框34を収容凹部41に収容する際に、縦框34に取り付けられているクレセント錠36を格納する。これによって、緩衝材4は、クレセント錠36と干渉することなく、障子3A,3Bの縦框33,34に対して可及的に密接するように装着することが可能である。クレセント格納部42は、収容凹部41の幅方向の中央部に配置されるため、緩衝材4は、左右反転して使用することによって、障子3A,3Bの左右のいずれのサイドにも共通して装着可能である。
【0025】
引違い窓1の搬送構造において、窓枠2内で互いに重ねられた障子3A,3Bには、図1及び図2に示すように、それぞれ同一構造の一対の緩衝材4,4が装着される。緩衝材4,4は、端面4e,4fのうちのいずれかが下枠22に接するように縦框33,34、34,33に装着される。緩衝材4,4の収容凹部41,41は、縦框33,34、34,33を収容する。一方の緩衝材4のクレセント格納部42は、室内側の障子3Bの縦框34のクレセント錠36を収容する。
【0026】
緩衝材4,4は、自立可能な剛性を有するため、作業者が、縦框33,34、34,33に装着された緩衝材4,4から手を放しても、緩衝材4,4は下枠22上で自立し、縦框33,34、34,33に対する装着状態が維持される。したがって、緩衝材4,4が障子3A,3Bに装着された後に、障子3A,3Bを一体に束ねるために緩衝材4,4に結束部材5を掛け渡す作業が楽に行える。
【0027】
緩衝材4には、結束部材5を収容するための複数の溝部43を有する。溝部43は、緩衝材4の収容凹部41と反対側に配置される側面4bと、この側面4bに隣接する2つの側面4c,4dとの角部にそれぞれ配置される。溝部43は、側面4bと側面4c,4dとの角部を、結束部材5の幅以上の幅で斜めに切り欠くことによって形成される。角部を斜めに切り欠くだけで凹部を形成することができるため、溝部43の加工が容易である。さらに、角部を斜めに切り欠くことによって形成された溝部43は、2つの側面4c,4dを滑らかに接続するため、結束部材5の滑りが良好になる。そのため、結束作業がスムーズに行える。
【0028】
本実施形態の緩衝材4は、側面4bと側面4c,4dとの角部における幅方向の同一位置に一対の溝部43,43を有する。一対の溝部43,43は、緩衝材4の長さ方向に沿って、所定の間隔をおいて3組設けられている。詳しくは、3組の溝部43,43は、緩衝材4の長さ方向の両端部の近傍と、長さ方向の中央部と、にそれぞれ配置される。
【0029】
本実施形態では、3本の結束部材5が、緩衝材4,4と共に障子3A,3Bを一体に束ねて窓構造体100に固定するために掛け渡される。しかし、結束部材5は、少なくとも2本あればよい。掛け渡された結束部材5は、図1に示すように、緩衝材4,4の高さ方向に間隔をおいて3組配置される一対ずつの溝部43,43内にそれぞれ収容される。これによって、結束部材5が緩衝材4からずれて垂れ落ちることが防止される。しかも、結束部材5を掛け渡す位置が溝部43によって決まるため、作業者は、溝部43を目安にして結束部材5を掛け渡すことができる。そのため、結束部材5の掛け渡し作業を楽に行うことができる。
【0030】
緩衝材4は障子3A,3Bの高さの1/2以上の長さを有するため、結束部材5は、必ずしも障子3A,3Bの最上部に架け渡されなくても、障子3A,3Bを安定して束ねることができる。そのため、高さの高い引違い窓1を搬送する場合であっても、作業者は脚立に昇って結束部材5の掛け渡し作業を行う必要がない。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の引違い窓1の搬送構造は、窓構造体100において結束部材5が掛け渡される縦フレーム材103の部位に、ゴム、樹脂材料、段ボール、布等からなる保護部材51がそれぞれ挟み込まれている。これによって、縦フレーム材103の結束部材5による損傷及び結束部材5の搬送中の切断を防止することができる。しかし、縦フレーム材103は、建物の壁内に隠れて外部に露出しない部位である。そのため、保護部材51は、引違い窓1の搬送構造において必須の構成要件ではない。
【0032】
引違い窓1の搬送構造において、図1及び図6に示すように、障子3A,3Bの下框32,32に取り付けられる戸車Rを保護するための戸車保護部品6が、戸車R毎に設けられている。戸車保護部品6は、図6に示すように、下枠22のレール221に沿ってレール221上を覆うように延びるカバー部61と、カバー部61の長さ方向の一端から直立し、障子3A,3Bの縦框33,34の見込み面33a,34aの下部に当接する平板状のエンド部62と、を有する。
【0033】
戸車保護部品6のカバー部61は、縦框33,34の下部にレール221を跨ぐように形成される切り欠き部33b,34bから、エンド部62が見込み面33a,34aに当接するように挿入される。これによって、カバー部61は、障子3A,3Bの下框32,32と下枠22との間に挟まれ、障子3A,3Bを上方に僅かに移動させる。その結果、戸車Rとレール221との間には隙間が生じ、搬送時に戸車Rがレール221に衝突することが防止される。
【0034】
戸車保護部品6は、縦框33,34の下部にレール221に沿って挿入されているだけであるため、搬送時の振動等によって簡単に外れるおそれがある。そのため、従来では、作業者は、戸車保護部品6のエンド部62を、粘着テープ等によって縦框33,34の見込み面33a,34aに固定する必要があった。しかし、緩衝材4,4は、縦框33,34に密接するように装着されるため、図2に示すように、各戸車保護部品6のエンド部62は、縦框33,34の見込み面33a,34aと緩衝材4の収容凹部41の底部41bとの間で挟着される。したがって、作業者は、引違い窓1の搬送時に戸車保護部品6のエンド部62を粘着テープ等によって固定する必要がなくなり、作業効率がさらに改善される。
【0035】
緩衝材4を使用した引違い窓1の搬送構造における窓構造体は、図7に示すように、窓開口を形成する木質のパネル材からなる窓構造体200であってもよい。この窓構造体200は、木材からなる複数の縦フレーム材201及び横フレーム材202を組合せ、木質の面材203を貼り合わせることによって構成される。引違い窓1の窓枠2内で互いに重ねられた障子3A,3Bは、上記と同様にして、一対の緩衝材4,4と共に、窓構造体200のいずれかの縦フレーム材201に架け渡されて束ねられ、窓構造体200に固定される。この窓構造体200に設けられる引違い窓1の搬送構造も、上記と同様の効果を奏する。
【0036】
以上のように、本実施形態の引違い窓1の緩衝材4は、引違い窓1を構成する障子3A,3Bの高さの1/2以上の長さと、窓枠2内に納められた障子3A,3Bの縦框33,34に装着された状態で自立可能な剛性と、を有する。これによって、作業者が、縦框33,34、34,33に装着された緩衝材4,4から手を放しても、緩衝材4,4は下枠22上で自立し、縦框33,34、34,33に対する装着状態が維持される。そのため、緩衝材4,4に結束部材5を掛け渡す作業が良好に行える。結束部材5は、必ずしも障子3A,3Bの最上部に架け渡されなくても、障子3A,3Bを安定して束ねることができるため、高さの高い引違い窓1を搬送する場合であっても、作業者は脚立に昇って結束部材5の掛け渡し作業を行う必要がない。したがって、複数の障子3A,3Bを結束部材5によって束ねる際に緩衝材4,4を縦框33,34に手で保持する必要がなく、作業効率を向上できる。
【0037】
本実施形態の緩衝材4は、窓枠2内に納められた障子3A,3Bに掛け渡される結束部材5を収容して、結束部材5の垂れ落ちを防止する溝部43を有する。これによって、結束部材5が緩衝材4からずれて垂れ落ちることが防止される。結束部材5を掛け渡す位置が溝部43によって決まるため、作業者は、溝部43を目安にして結束部材5を掛け渡すことができる。そのため、結束部材5の掛け渡し作業を楽に行うことができる。
【0038】
本実施形態の緩衝材4は、障子3A,3Bの縦框33,34に設けられるクレセント錠36を格納するクレセント格納部42を有する。これによって、緩衝材4は、クレセント錠36と干渉することなく、障子3A,3Bの縦框33,34に対して可及的に密接するように装着することが可能である。
【0039】
本実施形態の緩衝材4は、窓枠2内に納められた障子3A,3Bの縦框33,34を収容可能な収容凹部41を有し、収容凹部41は、寸法違いの縦框34を収容可能な幅Wを有する。これによって、緩衝材4は、寸法違いの縦框34を収容凹部41に収容可能であり、汎用性に優れる。
【0040】
本実施形態の緩衝材4は、発泡樹脂製である。これによって、緩衝材4は、軽量且つ安価であり、取り扱い性に優れ、繰り返しの使用にも耐えることができる。
【0041】
本実施形態の引違い窓1の搬送構造は、引違い窓1を構成する窓枠2と、窓枠2に納められる障子3A,3Bと、搬送用の緩衝材4と、結束部材5と、を備え、緩衝材4は、障子3A,3Bの高さの1/2以上の長さと、窓枠2内に納められた障子3A,3Bの縦框33,34に装着された状態で自立可能な剛性と、を有し、緩衝材4が障子3A,3Bの縦框33,34に装着された状態で、窓枠2、障子3A,3B、及び緩衝材4,4に亘って結束部材5が掛け渡されることによって、一体に束ねられている。これによって、障子3A,3Bを結束部材5によって束ねる際に緩衝材4,4を縦框33,34に手で保持する必要がなく、作業効率を向上できる。
【0042】
本開示の搬送用緩衝材及び引違い窓の搬送構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、緩衝材4に設けられる一対の溝部43,43の組数は3組に限定されない。一対の溝部43,43の組数は、緩衝材4の長さに応じて適宜増減することができる。溝部43の位置は、緩衝材4の角部のみに限定されない。溝部43は、緩衝材4の側面4b、4c、4dに設けられてもよい。窓枠2に納められる障子の数は、1枚以上であればよく、2枚に限定されない。
【符号の説明】
【0043】
1 引違い窓、 2 窓枠、 3A,3B 障子、 33,34 縦框、 36 クレセント錠、 4 緩衝材、 41 収容凹部、 42 クレセント格納部、 43 溝部、 5 結束部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7