(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】搬送装置および錠剤印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/84 20060101AFI20240725BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20240725BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B65G47/84 C
A61J3/06 Q
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2020128252
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】正司 和大
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】松田 邦利
(72)【発明者】
【氏名】梶野 一樹
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052664(JP,A)
【文献】特表2014-534903(JP,A)
【文献】特開2020-066521(JP,A)
【文献】特開平03-014421(JP,A)
【文献】実開昭56-017225(JP,U)
【文献】実開昭63-044683(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0047797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/84
A61J 3/06
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物を搬送する搬送装置であって、
複数の粒状物を、水平な供給路に沿って搬送方向に供給する供給機構と、
外周面に複数のポケットを有し、前記搬送方向に対して直交しかつ水平な方向である幅方向と平行な軸を中心として回転しつつ、その上端部付近において、前記供給機構から水平方向に供給される粒状物を受け取るドラムと、
前記供給機構から前記ドラムへの受け渡し位置の付近に配置され、前記ポケットへ粒状物を収容するための第1押圧部材と、
前記第1押圧部材を前記ドラムへ向けて押圧する第1弾性部材と、
前記供給路に対する前記第1押圧部材の高さを調整する第1高さ調整機構と、
前記供給路に対して固定されたベース部材と、
前記第1押圧部材を、幅方向に延びる第1回動軸を中心として回動可能に支持する第1支持部材と、
を備え
、
前記第1高さ調整機構は、前記ベース部材に対する前記第1支持部材の高さを調整する、搬送装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の搬送装置であって、
前記第1高さ調整機構は、幅方向の2箇所において、前記ベース部材に対する前記第1支持部材の高さを調整する、搬送装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の搬送装置であって、
前記第1弾性部材により押圧される前記第1押圧部材に接触して、前記第1押圧部材を初期状態に位置決めする第1接触部材と、
前記第1接触部材の位置を調整する第1初期状態調整機構と、
をさらに備える、搬送装置。
【請求項4】
請求項
1から請求項
3までのいずれか1項に記載の搬送装置であって、
前記第1押圧部材よりも搬送経路の下流側に位置する第2押圧部材と、
前記第2押圧部材を前記ドラムへ向けて押圧する第2弾性部材と、
前記ドラムに対する前記第2押圧部材の高さを調整する第2高さ調整機構と、
をさらに備える、搬送装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の搬送装置であって、
前記第2押圧部材を、幅方向に延びる第2回動軸を中心として回動可能に支持する第2支持部材
をさらに備え、
前記第2高さ調整機構は、前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の高さを調整する、搬送装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の搬送装置であって、
前記第2高さ調整機構は、幅方向の2箇所において、前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の高さを調整する、搬送装置。
【請求項7】
請求項
5または請求項
6に記載の搬送装置であって、
前記第1支持部材に対する第2支持部材の搬送方向の位置を調整する位置調整機構
をさらに備える、搬送装置。
【請求項8】
請求項
5から請求項
7までのいずれか1項に記載の搬送装置であって、
前記第2押圧部材は、
前記第2回動軸よりも搬送方向の上流側に位置する押圧突起と、
前記第2回動軸よりも搬送方向の下流側に位置する下流端部と、
を有し、
前記第2支持部材に対する前記第2回動軸の位置を調整する軸調整機構
をさらに備える、搬送装置。
【請求項9】
請求項
4から請求項
8までのいずれか1項に記載の搬送装置であって、
前記第2弾性部材により押圧される前記第2押圧部材に接触して、前記第2押圧部材を初期状態に位置決めする第2接触部材と、
前記第2接触部材の位置を調整する第2初期状態調整機構と、
をさらに備える、搬送装置。
【請求項10】
請求項1から請求項
9までのいずれか1項に記載の搬送装置であって、
前記粒状物は錠剤である、搬送装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の搬送装置と、
錠剤の表面にインクジェット方式で画像を印刷する印刷部と、
を備える錠剤印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物を搬送する搬送装置および当該搬送装置を備えた錠剤印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品である錠剤には、製品を識別するための文字やコードが印刷される。また、ラムネ等の錠菓にも、マークやイラストが印刷される場合がある。従来、このような錠剤・錠菓等の粒状物に、インクジェット方式で画像を印刷する印刷装置が知られている。特に、近年では、後発医薬品の普及により、錠剤の種類が多様化している。このため、錠剤を識別しやすくするために、錠剤にインクジェット方式で鮮明に画像を印刷する技術が注目されている。
【0003】
この種の印刷装置では、多数の錠剤が搬入用のホッパに流し込まれる。印刷装置は、流し込まれた複数の錠剤を、1つ1つ搬送方向に所定の間隔をあけて整列させる。そして、整列した状態で搬送される複数の錠剤に対して、印刷が行われる。また、印刷装置に限らず、錠剤の検査を行う検査装置や、錠剤の包装を行う包装装置においても、複数の錠剤を搬送方向に所定の間隔をあけて整列させつつ搬送することが必要である。
【0004】
複数の錠剤を搬送方向に所定の間隔をあけて整列させつつ搬送する機構については、例えば、特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-59036号公報
【文献】特開平5-85519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構造では、シュート(22)に沿って供給される複数の錠剤(t)が、供給ローラ(3)の複数の切出片(31)により個々の錠剤(t)に切り出され、投入ドラム(1)の外周面へ供給されている(段落0036,
図4等参照)。
【0007】
特許文献2の構造では、シュート(50)内の最下部の錠剤(9a)が、ストッパ(70)により保持されている。そして、ドラム(1)の回転に合わせてストッパ(70)が後退することにより、錠剤(9a)が落下して、ドラム(1)のリセス(2)へ供給されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1,2の構造では、シュートと、切り出し片またはストッパとの間に錠剤が挟まることによって、錠剤の詰まりや、錠剤の割れが発生するおそれがある。
【0009】
これに対し、例えば、ドラムの外周面に設けられたポケットに対して、錠剤を水平方向に供給すれば、錠剤の詰まりや錠剤の割れが、比較的生じにくいと考えられる。ただし、その場合、水平方向に供給される錠剤を、ドラムの外周面に向けて押圧する押圧部材が必要となる。また、錠剤の形状や大きさは様々であるため、錠剤の種類に応じて、押圧部材を調整する必要がある。また、装置の組み立て誤差や機差に応じて、押圧部材を調整する必要がある。
【0010】
本発明は、ドラムの外周面に向けて粒状物を押圧する押圧部材を備えた搬送装置において、押圧部材自体を交換することなく、押圧部材の位置を容易に調整できる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、粒状物を搬送する搬送装置であって、複数の粒状物を、水平な供給路に沿って搬送方向に供給する供給機構と、外周面に複数のポケットを有し、前記搬送方向に対して直交しかつ水平な方向である幅方向と平行な軸を中心として回転しつつ、その上端部付近において、前記供給機構から水平方向に供給される粒状物を受け取るドラムと、前記供給機構から前記ドラムへの受け渡し位置の付近に配置され、前記ポケットへ粒状物を収容するための第1押圧部材と、前記第1押圧部材を前記ドラムへ向けて押圧する第1弾性部材と、前記供給路に対する前記第1押圧部材の高さを調整する第1高さ調整機構と、前記供給路に対して固定されたベース部材と、前記第1押圧部材を、幅方向に延びる第1回動軸を中心として回動可能に支持する第1支持部材と、
を備え、前記第1高さ調整機構は、前記ベース部材に対する前記第1支持部材の高さを調整する。
【0013】
本願の第2発明は、第1発明の搬送装置であって、前記第1高さ調整機構は、幅方向の2箇所において、前記ベース部材に対する前記第1支持部材の高さを調整する。
【0014】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の搬送装置であって、前記第1弾性部材により押圧される前記第1押圧部材に接触して、前記第1押圧部材を初期状態に位置決めする第1接触部材と、前記第1接触部材の位置を調整する第1初期状態調整機構と、をさらに備える。
【0015】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の搬送装置であって、前記第1押圧部材よりも搬送経路の下流側に位置する第2押圧部材と、前記第2押圧部材を前記ドラムへ向けて押圧する第2弾性部材と、前記ドラムに対する前記第2押圧部材の高さを調整する第2高さ調整機構と、をさらに備える。
【0016】
本願の第5発明は、第4発明の搬送装置であって、前記第2押圧部材を、幅方向に延びる第2回動軸を中心として回動可能に支持する第2支持部材をさらに備え、前記第2高さ調整機構は、前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の高さを調整する。
【0017】
本願の第6発明は、第5発明の搬送装置であって、前記第2高さ調整機構は、幅方向の2箇所において、前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の高さを調整する。
【0018】
本願の第7発明は、第5発明または第6発明の搬送装置であって、前記第1支持部材に対する第2支持部材の搬送方向の位置を調整する位置調整機構をさらに備える。
【0019】
本願の第8発明は、第5発明から第7発明までのいずれか1発明の搬送装置であって、前記第2押圧部材は、前記第2回動軸よりも搬送方向の上流側に位置する押圧突起と、前記第2回動軸よりも搬送方向の下流側に位置する下流端部と、を有し、前記第2支持部材に対する前記第2回動軸の位置を調整する軸調整機構をさらに備える。
【0020】
本願の第9発明は、第4発明から第8発明までのいずれか1発明の搬送装置であって、前記第2弾性部材により押圧される前記第2押圧部材に接触して、前記第2押圧部材を初期状態に位置決めする第2接触部材と、前記第2接触部材の位置を調整する第2初期状態調整機構と、をさらに備える。
【0021】
本願の第10発明は、第1発明から第9発明までのいずれか1発明の搬送装置であって、前記粒状物は錠剤である。
【0022】
本願の第11発明は、第10発明の搬送装置と、錠剤の表面にインクジェット方式で画像を印刷する印刷部と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本願の第1発明~第11発明によれば、供給路に対する第1押圧部材の高さを調整できる。したがって、第1押圧部材を他の形状または他の大きさのものに変更することなく、第1押圧部材の位置を容易に調整できる。
【0024】
特に、本願の第2発明によれば、ベース部材に対する第1支持部材の幅方向に対する傾斜角度を調整できる。
【0025】
特に、本願の第3発明によれば、第1押圧部材の初期状態を調整できる。
【0026】
特に、本願の第4発明によれば、ドラムに対する第2押圧部材の高さを調整できる。したがって、第2押圧部材を他の形状または他の大きさのものに変更することなく、第2押圧部材の位置を容易に調整できる。
【0027】
特に、本願の第6発明によれば、第1支持部材に対する第2支持部材の幅方向に対する傾斜角度を調整できる。
【0028】
特に、本願の第7発明によれば、第1押圧部材に対する第2押圧部材の搬送方向の位置関係を調整できる。
【0029】
特に、本願の第8発明によれば、第2高さ調整機構および軸調整機構を併用することで、押圧突起および下流端部の両方を、適切な位置に調整できる。
【0030】
特に、本願の第9発明によれば、第2押圧部材の初期状態を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図4】制御部と、錠剤印刷装置内の各部との接続を示したブロック図である。
【
図7】ある時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
【
図8】他の時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
【
図9】他の時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
【
図10】他の時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
【
図11】他の時点における第1受渡位置の様子を示した図である。
【
図14】
図12のA-A位置における押圧機構の部分縦断面図である。
【
図16】
図15のB-B位置における押圧機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
<1.錠剤印刷装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置を含む錠剤印刷装置1の構成を示した図である。この錠剤印刷装置1は、粒状物である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。錠剤9は、素錠(裸錠)であってもよく、あるいは、糖衣錠、フィルムコーティング錠(FC錠)等のコーティング錠であってもよい。また、錠剤9は、硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤であってもよい。また、本発明における「粒状物」は、医薬品としての錠剤に限らず、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓であってもよい。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、供給機構10、第1ドラム20、第2ドラム30、搬送コンベア40、第1カメラ50、印刷部60、第2カメラ70、乾燥機構80、排出機構90、および制御部100を備えている。
【0035】
供給機構10は、錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9を、第1ドラム20へ供給する機構である。本実施形態の供給機構10は、ボウルフィーダ11、第1シュート12、供給コンベア13、および第2シュート14を有する。
【0036】
ボウルフィーダ11は、複数の錠剤9を受ける円盤状のトラフ110を有する。ボウルフィーダ11は、トラフ110を振動させることにより、複数の錠剤9を移動させて、第1シュート12へ供給する。第1シュート12は、トラフ110の排出口と供給コンベア13との間で、円弧状に延びている。第1シュート12は、複数の供給路を有する。ボウルフィーダ11は、第1シュート12の各供給路へ錠剤9を供給する。これにより、多数の錠剤9が複数の列に整列される。すなわち、搬送方向に並ぶ錠剤9の列が、幅方向(搬送方向に対して直交しかつ水平な方向)に複数形成される。そして、整列後の錠剤9が、第1シュート12から供給コンベア13へ供給される。なお、
図1では、1つの列の錠剤9のみが示されている。
【0037】
供給コンベア13は、第1シュート12から第2シュート14へ、錠剤9を水平かつ直線状に搬送する機構である。供給コンベア13は、2つのプーリ131と、2つのプーリ131に架け渡された環状の供給ベルト132とを有する。2つのプーリ131の一方は、モータ(図示省略)から得られる動力により回転する。これにより、供給ベルト132が、
図1中の矢印の方向に回動する。他方のプーリ131は、供給ベルト132の回動に伴い従動回転する。また、供給ベルト132の上部には、錠剤9の列の境界に沿って延びる仕切プレートが設けられている。第1シュート12から供給される錠剤9は、仕切プレートによって複数の列に整列された状態を維持しつつ、供給ベルト132の回動により、搬送方向の下流側へ搬送される。
【0038】
第2シュート14は、供給コンベア13と第1ドラム20との間で、直線状に延びている。第2シュート14は、複数の水平な供給路を有する。供給コンベア13から供給される複数の錠剤9は、第2シュート14の各供給路へ供給される。そして、第2シュート14内の錠剤9は、供給コンベア13により搬送される後続の錠剤9に押されることによって、搬送方向の下流側へ進行する。そして、第2シュート14の搬送方向下流側の端部から第1ドラム20へ、錠剤9が供給される。
【0039】
第1ドラム20は、第2シュート14から供給される複数の錠剤9を、搬送方向に一定の間隔をあけて保持しつつ搬送する機構である。第1ドラム20は、幅方向と平行な第1軸O1を中心とする略円筒状の外周面を有する。また、第1ドラム20には、図示を省略したモータが接続されている。モータを駆動させると、第1ドラム20は、第1軸O1を中心として、
図1中の矢印の方向へ回転する。第1ドラム20は、その上端部付近の第1受渡位置P1から、第2ドラム30に近接する第2受渡位置P2まで、錠剤9を搬送する。
【0040】
図1に示すように、第1ドラム20は、ドラム本体21と、保持リング22とを有する。ドラム本体21は、第1軸O1を中心とする円筒状の外周面を有する。ドラム本体21は、例えば、ステンレス等の金属により形成される。保持リング22は、ドラム本体21の外周面に装着される。具体的には、複数の保持リング22が、錠剤9の列のそれぞれに対応する幅方向の位置に配置される。保持リング22は、例えば、ポリアセタール等の樹脂により形成される。
【0041】
各保持リング22の外周面は、複数の凹状のポケット23を有する。複数のポケット23は、第1軸O1を中心とする周方向に、一定の間隔で設けられている。また、保持リング22は、各ポケット23の底部に、錠剤9を吸着するための吸着孔24を有する。吸着孔24は、保持リング22を貫通する貫通孔である。
【0042】
第1ドラム20は、図示を省略した吸引機構と接続されている。吸引機構を動作させると、第1受渡位置P1と第2受渡位置P2との間の角度範囲に位置する第1ドラム20の内部空間から、気体が吸い出される。これにより、当該内部空間が、大気圧よりも低い負圧となる。また、当該内部空間と連通する吸着孔24にも、負圧が生じる。第2シュート14から供給される複数の錠剤9は、この負圧によって、保持リング22の吸着孔24に、吸着保持される。
【0043】
第2シュート14から供給される錠剤9は、1つずつポケット23に収容されて、吸着孔24に吸着保持される。その結果、複数の錠剤9の搬送方向の間隔が、ポケット23の間隔に応じた所定の間隔となる。各錠剤9は、ポケット23内の吸着孔24に吸着保持されつつ、第1ドラム20の回転によって、第1受渡位置P1から第2受渡位置P2まで搬送される。そして、錠剤9が第2受渡位置P2を通過すると、上記の負圧に保たれた内部空間の角度範囲から外れることによって、錠剤9の吸着が解除される。これにより、第1ドラム20から第2ドラム30へ、錠剤9が受け渡される。
【0044】
なお、第1受渡位置P1では、錠剤9は、押圧機構25に押圧されることにより、保持リング22のポケット23へ誘い込まれる。これにより、錠剤9の詰まりや割れを抑制しつつ、各ポケット23に錠剤9を1つずつ収容することができる。この押圧機構25の詳細については、後述する。
【0045】
第2ドラム30は、第1ドラム20から受け渡される錠剤9を、搬送コンベア40まで搬送する機構である。第2ドラム30は、幅方向と平行な第2軸O2を中心とする略円筒状の外周面を有する。本実施形態では、第1ドラム20の外径と、第2ドラム30の外径とが、略同一である。ただし、第1ドラム20の外径と、第2ドラム30の外径とは、相違していてもよい。第2ドラム30には、図示を省略したモータが接続されている。モータを駆動させると、第2ドラム30は、第2軸O2を中心として、第1ドラム20とは反対の向きに回転する。第2ドラム30は、第1ドラム20に近接する第2受渡位置P2から、搬送コンベア40に近接する第3受渡位置P3まで、錠剤9を搬送する。第3受渡位置P3の高さは、第1受渡位置P1および第2受渡位置P2の高さよりも高い。
【0046】
図1に示すように、第2ドラム30は、ドラム本体31と、保持リング32とを有する。ドラム本体31は、第2軸O2を中心とする円筒状の外周面を有する。ドラム本体31は、例えば、ステンレス等の金属により形成される。保持リング32は、ドラム本体31の外周面に装着される。具体的には、複数の保持リング32が、錠剤9の列のそれぞれに対応する幅方向の位置に配置される。保持リング32は、例えば、シリコーン等の樹脂により形成される。
【0047】
各保持リング32は、複数の吸着孔34を有する。吸着孔34は、保持リング22を貫通する貫通孔である。また、第2ドラム30は、図示を省略した吸引機構と接続されている。吸引機構を動作させると、第2受渡位置P2と第3受渡位置P3との間の角度範囲に位置する第2ドラム30の内部空間から、気体が吸い出される。これにより、当該内部空間が、大気圧よりも低い負圧となる。また、当該内部空間と連通する吸着孔34にも、負圧が生じる。第1ドラム20から受け渡される複数の錠剤9は、この負圧によって、保持リング32の吸着孔34に吸着保持される。
【0048】
吸着孔34に吸着保持された錠剤9は、第2ドラム30の回転によって、第2受渡位置P2から第3受渡位置P3まで搬送される。そして、錠剤9が第3受渡位置P3を通過すると、上記の負圧に保たれた内部空間の角度範囲から外れることによって、錠剤9の吸着が解除される。これにより、第2ドラム30から搬送コンベア40へ、錠剤9が受け渡される。
【0049】
このように、本実施形態では、供給機構10から供給される複数の錠剤9を、第1ドラム20および第2ドラム30の2つのドラムを介して、搬送コンベア40へ搬送する。第1ドラム20は、複数の錠剤9を、搬送方向に間隔をあけた状態で保持する。第2ドラム30は、その搬送方向の間隔を保ちながら、搬送コンベア40へ錠剤9を搬送する。その際、第1ドラム20と第2ドラム30とで、錠剤9の搬送の向き(回転の向き)が反転する。これにより、搬送コンベア40の動作の向きに合わせて、第2ドラム30から搬送コンベア40へ、錠剤9を送ることができる。
【0050】
また、第2ドラム30の保持リング32は、第1ドラム20の保持リング22よりも、弾性変形しやすい材料からなる。すなわち、第2ドラム30の外周面は、第1ドラム20の外周面よりも、弾性変形しやすい材料からなる。また、第2ドラム30の保持リング32は、搬送コンベア40の後述する搬送ベルト42よりも、弾性変形しやすい材料からなる。具体的には、第2ドラム30の保持リング32は、例えば、シリコーンからなる。このようにすれば、第1ドラム20から第2ドラム30への錠剤9の受け渡し、および第2ドラム30から搬送コンベア40への錠剤9の受け渡しの際に、保持リング32の弾性力がはたらくため、錠剤9の脱落や割れを抑制して、受け渡しの成功率を高めることができる。
【0051】
搬送コンベア40は、第2ドラム30から受け渡される複数の錠剤9を、吸着保持しつつ搬送する機構である。搬送コンベア40は、一対のプーリ41と、一対のプーリ41の間に架け渡された環状の搬送ベルト42とを有する。一対のプーリ41の一方は、図示を省略したモータから得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト42が、
図1中の矢印の方向に回動する。一対のプーリ41の他方は、搬送ベルト42の回動に伴い従動回転する。
【0052】
図2は、搬送コンベア40の部分斜視図である。
図2に示すように、搬送ベルト42の外周面には、複数の吸着孔421が設けられている。複数の吸着孔421は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、搬送コンベア40は、搬送ベルト42の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構(図示省略)を有する。吸引機構を動作させると、搬送ベルト42の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔421に1つずつ吸着保持される。
【0053】
このように、複数の錠剤9は、搬送ベルト42の表面に、搬送方向よび幅方向に整列した状態で保持される。そして、搬送コンベア40は、搬送ベルト42を回動させることによって、複数の錠剤9を搬送する。後述する4つのヘッド61の下方では、複数の錠剤9は、水平方向に搬送される。
【0054】
また、
図1中に示すように、搬送コンベア40は、ブロー機構44を有する。ブロー機構44は、搬送ベルト42の内側、かつ、後述する排出シュート91と搬送ベルト42を介して対向する位置に、設けられている。ブロー機構44は、搬送ベルト42の複数の吸着孔421のうち、排出シュート91と対向する吸着孔421のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔421が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔421における錠剤9の吸着が解除され、搬送ベルト42から排出シュート91を通って排出コンベアへ、錠剤9が受け渡される。
【0055】
このように、本実施形態では、供給機構10、押圧機構25、第1ドラム20、第2ドラム30、および搬送コンベア40により、錠剤9を搬送する搬送装置が構成されている。
【0056】
第1カメラ50は、印刷前の錠剤9を撮影するための処理部である。第1カメラ50は、上述した第3受渡位置P3よりも搬送経路の下流側かつ印刷部60よりも搬送経路の上流側に位置する。第1カメラ50には、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第1カメラ50は、搬送ベルト42により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、第1カメラ50から後述する制御部100へ送信される。制御部100は、第1カメラ50から得られた画像に基づいて、各吸着孔421における錠剤9の有無、錠剤9の位置、および錠剤9の姿勢を検出する。また、制御部100は、第1カメラ50から得られた画像に基づいて、各錠剤9に欠け等の欠陥が無いかどうかの検査も行う。
【0057】
印刷部60は、搬送ベルト42により搬送される錠剤9の表面に、インクジェット方式で画像を印刷する処理部である。
図1に示すように、本実施形態の印刷部60は、4つのヘッド61を有する。4つのヘッド61は、搬送ベルト42の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。4つのヘッド61は、錠剤9に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド61から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0058】
図3は、1つのヘッド61の下面図である。
図3には、搬送ベルト42と、搬送ベルト42に保持された複数の錠剤9とが、二点鎖線で示されている。
図3中に拡大して示したように、ヘッド61の下面には、インク滴を吐出可能な複数のノズル611が設けられている。本実施形態では、ヘッド61の下面に、複数のノズル611が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル611は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル611を二次元的に配置すれば、各ノズル611の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル611は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0059】
ノズル611からのインク滴の吐出方式には、例えば、ピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル611内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル611内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0060】
第2カメラ70は、印刷後の錠剤9を撮影するための処理部である。第2カメラ70は、印刷部60よりも搬送経路の下流側かつ乾燥機構80よりも搬送経路の上流側に位置する。第2カメラ70には、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。第2カメラ70は、搬送ベルト42により搬送される複数の錠剤9を撮影する。撮影により取得された画像は、第2カメラ70から後述する制御部100へ送信される。制御部100は、第2カメラ70から得られた画像に基づいて、錠剤9に印刷された画像の良否を検査する。
【0061】
乾燥機構80は、錠剤9に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構80は、第2カメラ70よりも搬送経路の下流側かつ後述する排出シュート91よりも搬送経路の上流側に位置する。乾燥機構80には、例えば、搬送ベルト42により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を吹き付ける、熱風供給機構が用いられる。錠剤9に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面または裏面に定着する。
【0062】
排出機構90は、搬送コンベア40から錠剤印刷装置1の外部へ、複数の錠剤9を排出するための機構である。排出機構90は、
図1に示す排出シュート91と、図示を省略した排出コンベアとを有する。排出シュート91は、乾燥機構80よりも搬送経路の下流側に位置する。吸着孔421に吸着された錠剤9が、排出シュート91に対向する位置に到達すると、ブロー機構44により錠剤9の吸着が解除される。これにより、搬送ベルト42の吸着孔421から、排出シュート91を通って排出コンベアの上面へ、錠剤9が落下する。そして、落下した錠剤9が、排出コンベアによって、錠剤印刷装置1の外部へ排出される。
【0063】
制御部100は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。
図4は、制御部100と、錠剤印刷装置1内の各部との接続を示したブロック図である。
図4中に概念的に示したように、制御部100は、CPU等のプロセッサ101、RAM等のメモリ102、およびハードディスクドライブ等の記憶部103を有するコンピュータにより構成される。記憶部103内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムCPが、インストールされている。
【0064】
また、
図4に示すように、制御部100は、上述したボウルフィーダ11、供給コンベア13、第1ドラム20、第2ドラム30、搬送コンベア40、第1カメラ50、印刷部60、第2カメラ70、乾燥機構80、および排出機構90と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。制御部100は、記憶部103に記憶されたコンピュータプログラムCPやデータをメモリ102に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ101が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9の搬送と、各錠剤9に対する印刷処理とが進行する。
【0065】
<2.第1ドラムの外周面形状について>
続いて、第1ドラム20の外周面の詳細な形状について、説明する。
図5は、第1ドラム20の部分側面図である。
図5に示すように、第1ドラム20の保持リング22は、複数のポケット23と、複数の凸状部230とを有する。複数のポケット23は、保持リング22の外周面において、周方向に一定の間隔で設けられている。凸状部230は、隣り合うポケット23の間に位置する。ポケット23の周方向の長さは、搬送対象となる錠剤9の1つ分より大きく、かつ、2つ分より小さい。したがって、1つのポケット23に正常に収容できる錠剤9の数は、1つである。
【0066】
図5に示すように、本実施形態のポケット23は、底面231と、前端面232と、後部傾斜面233とを有する。底面231は、ポケット23の底部を構成する面である。底面231は、第1ドラム20の回転方向に沿って、略平面状に広がる。前端面232は、ポケット23の前端部(搬送方向下流側の端部)に位置する。前端面232は、第1軸O1を中心とする周方向に対して、略垂直に広がる。後部傾斜面233は、ポケット23の後端部(搬送方向上流側の端部)に位置する。後部傾斜面233は、底面231と、後方の凸状部230の外表面とを接続する傾斜面である。後部傾斜面233の高さは、後方へ向かうにつれて次第に高くなる。
【0067】
第1ドラム20の各吸着孔24は、ポケット23の底面231の、第1ドラム20の回転方向における前端部付近に位置する。このようにすれば、ポケット23の前端面232に錠剤9の前端部を接触させて、錠剤9を位置決めしつつ、錠剤9を吸着保持できる。したがって、錠剤9を、搬送方向に、精度良く一定の間隔で整列させることができる。
【0068】
<3.押圧機構について>
この錠剤印刷装置1は、第2シュート14と第1ドラム20との間に、押圧機構25を有する。押圧機構25は、第1受渡位置P1において、第2シュート14から供給される錠剤9を、第1ドラム20へ向けて押圧する。これにより、第1ドラム20の複数のポケット23に、錠剤9が1つずつ収容される。
【0069】
図6は、押圧機構25の側面図である。
図6に示すように、押圧機構25は、第1押圧部材26、第1弾性部材27、第2押圧部材28、および第2弾性部材29を有する。第1押圧部材26、第1弾性部材27、第2押圧部材28、および第2弾性部材29は、錠剤9の列ごとに、設けられている。例えば、第2シュート14から供給される錠剤9の列が3列の場合、押圧機構25は、第1押圧部材26、第1弾性部材27、第2押圧部材28、および第2弾性部材29を、幅方向に3組有する。
【0070】
第1押圧部材26は、幅方向に延びる第1回動軸A1を中心として回動可能に支持されている。第1押圧部材26の先端部は、第2シュート14の搬送方向下流側の端部と、第1ドラム20の外周面との間に位置する。第1押圧部材26は、例えば、ポリアセタール等の樹脂により形成される。
【0071】
第1弾性部材27は、第1押圧部材26を第1ドラム20へ向けて押圧するための部材である。第1弾性部材27には、例えば、コイルばねが用いられる。第1弾性部材27の下端部は、第1押圧部材26に接続されている。第1弾性部材27の上端部は、位置が固定された第1支持部材16に接続されている。したがって、第1押圧部材26の先端部が上方へ変位すると、第1弾性部材27の収縮によって、第1押圧部材26の先端部に、下向きの押圧力が発生する。なお、第1弾性部材27は、コイルばね以外の弾性部材(例えば、トーションばねや板ばねなど)であってもよい。
【0072】
図6に示すように、第1押圧部材26の先端部は、保持面261と当接面262とを有する。保持面261は、第1押圧部材26の先端部の下面である。保持面261と、第1ドラム20の外周面とは、上下方向に対向する。第1押圧部材26の先端部が上方へ変位していない状態(初期状態)において、保持面261と凸状部230との間の上下方向の間隔は、搬送対象となる錠剤9の厚みよりも小さい。
【0073】
当接面262は、保持面261よりも搬送経路の上流側(第2シュート14側)に位置する。当接面262は、保持面261の上流側の端部から、斜め上方へ向けて広がる。具体的には、当接面262は、第2シュート14へ近づくにつれて、第1ドラム20の外周面から徐々に離れるように傾斜する。当接面262の上流側の端部は、第2シュート14の下流側の端部に近接する。保持面261と当接面262とは、滑らかな曲面を介して接続されている。このため、錠剤9に割線等の溝がある場合であっても、保持面261と当接面262との境界部に錠剤9が引っかかることを抑制できる。
【0074】
第2押圧部材28は、第1押圧部材26よりも搬送経路の下流側に位置する。第2押圧部材28は、幅方向に延びる第2回動軸A2を中心として回動可能に支持されている。第2押圧部材28の先端部は、第1押圧部材26の先端部の下流側に隣接した位置に配置される。第2押圧部材28は、例えば、ポリアセタール等の樹脂により形成される。
【0075】
第2弾性部材29は、第2押圧部材28を第1ドラム20へ向けて押圧するための部材である。第2弾性部材29には、例えば、コイルばねが用いられる。第2弾性部材29の下端部は、第2押圧部材28に接続されている。第2弾性部材29の上端部は、位置が固定された第2支持部材17に接続されている。したがって、第2押圧部材28の先端部が上方へ変位すると、第2弾性部材29の収縮によって、第2押圧部材28の先端部に、下向きの押圧力が発生する。なお、第2弾性部材29は、コイルばね以外の弾性部材(例えば、トーションばねや板ばねなど)であってもよい。
【0076】
図6に示すように、第2押圧部材28の先端部は、下方へ向けて突出する押圧突起281を有する。押圧突起281は、第2回動軸A2よりも、搬送方向における上流側に位置する。押圧突起281は、下端部に押圧面282を有する。押圧面282は、第1押圧部材26の保持面261の下流側に近接した位置に配置される。第2押圧部材28の先端部が上方へ変位していない状態(初期状態)において、押圧面282と凸状部230との間の上下方向の間隔は、搬送対象となる錠剤9の厚みよりも小さい。
【0077】
また、
図6に示すように、第2押圧部材28は、ガイド面283と下流端部284とを有する。ガイド面283は、押圧突起281よりも、搬送経路の下流側に位置する。また、ガイド面283は、搬送経路の下流側へ向かうにつれて、徐々に第1ドラム20の外周面に近づくように傾斜する。下流端部284は、第2押圧部材28の下流側の端部である。下流端部284は、第2回動軸A2よりも、搬送方向における下流側に位置する。
【0078】
<4.第1受渡位置における錠剤の搬送状態について>
図7は、複数の錠剤9を連続的に搬送しているときの、ある時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。
図7に示すように、第2シュート14から供給される複数の錠剤9のうち、一部の錠剤9は、直接ポケット23に収容されず、凸状部230の上に供給される場合がある。このとき、当該錠剤9は、第1押圧部材26の当接面262に当接する。これにより、第1ドラム20の次のポケット23が第1受渡位置P1へ到達するまで、錠剤9が堰き止められる。そして、第1ドラム20の回転により、次のポケット23が第1受渡位置P1へ到達すると、堰き止められていた錠剤9が、ポケット23へ落下する。これにより、錠剤9をポケット23に正常に収容することができる。
【0079】
図8は、他の時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。第1弾性部材27による第1押圧部材26の押圧力は、錠剤9を破損させない程度の力に設定されている。このため、
図8のように、錠剤9に押されて、第1押圧部材26が上方へ変位する場合がある。この場合、錠剤9は、第1押圧部材26の保持面261と、第1ドラム20の凸状部230との間に挟まれる。すなわち、第1弾性部材27による第1押圧部材26の押圧力によって、第1押圧部材26の保持面261と凸状部230との間に、錠剤9が保持される。これにより、錠剤9は、搬送経路の当該位置において、下流側へ移動することなく停止する。そして、第1ドラム20の回転により、次のポケット23が第1受渡位置P1へ到達すると、停止していた錠剤9が、ポケット23へ落下する。これにより、錠剤9をポケット23に正常に収容することができる。
【0080】
図9は、他の時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。
図9に示すように、ポケット23に1つの錠剤9が収容された後、同じポケット23に、後続の錠剤9の前端部(下流側の端部)が入る場合がある。この場合、錠剤9は、ポケット23の後部傾斜面233に沿って、斜めに配置される。また、錠剤9の後端部(上流側の端部)は、ポケット23からはみ出した状態となる。
【0081】
このように、ポケット23の後端部に乗り上げた錠剤9は、ポケット23の後部傾斜面233と、第1押圧部材26の当接面262との間に挟まれて保持される。これにより、錠剤9の搬送方向下流側への移動が止まる。そして、第1ドラム20の回転が進むことにより、錠剤9の位置は、後部傾斜面233から、凸状部230の上面に移動する。その結果、錠剤9は、上述した
図8と同様に、第1押圧部材26の保持面261と、凸状部230との間に保持される。
【0082】
その後、さらに第1ドラム20が回転することにより、次のポケット23が第1受渡位置P1へ到達すると、停止していた錠剤9が、ポケット23へ落下する。これにより、錠剤9が、ポケット23の後端部に乗り上げた状態のまま、搬送方向の下流側へ移動することを防止し、各ポケット23に、錠剤9を1つずつ正常に収容することができる。
【0083】
吸着孔24は、ポケット23の底面231のうち、第1ドラム20の回転方向における中央よりも前端側に位置する。このため、1つのポケット23に最初に供給される錠剤9が、ポケット23の後端部に乗り上げた状態で、吸着孔24に吸着されることはない。すなわち、1つのポケット23に最初に供給される錠剤9は、ポケット23の前端部まで、円滑に移動する。これにより、ポケット23の後端部に錠剤9が乗り上げた状態のまま搬送されることを、より抑制できる。
【0084】
特に、本実施形態では、吸着孔24は、ポケット23の底面231のうち、第1ドラム20の回転方向における前端部に位置する。このようにすれば、ポケット23の前端面232に錠剤9の前端面を接触させて、錠剤9を位置決めしつつ、錠剤9を吸着保持できる。したがって、錠剤9を、搬送方向に、精度良く一定の間隔で整列させることができる。また、ポケット23の前端面232に錠剤9の前端面を接触させることにより、錠剤9の前端面が、ポケット23の前端面232に沿う姿勢となる。これにより、錠剤9が起立した姿勢で吸着孔24に吸着保持されることを防止できる。
【0085】
なお、
図9に示すように、本実施形態では、第1軸O1を中心とする周方向に対する後部傾斜面233の傾斜角度αは、第1軸O1を中心とする周方向に対する当接面262の傾斜角度βよりも、やや大きい。すなわち、これらの傾斜角度α,βの関係が、α>βとなっている。このようにすれば、α≦βの場合と比べて、後部傾斜面233と当接面262との隙間が小さくなる。このため、ポケット23の後端部に錠剤9が乗り上げた状態となることを、より抑制できる。
【0086】
また、上述の通り、保持リング22は、ドラム本体21の外周面に対して着脱可能である。このため、錠剤9の形状や大きさに応じて、保持リング22を交換できる。これにより、ドラム本体21の形状を変更することなく、ポケット23の後部傾斜面233の形状を、処理対象となる錠剤9に適した形状に変更できる。例えば、傾斜角度αが異なる複数の保持リング22を用意しておき、錠剤9の種類に応じて、最適な傾斜角度αの保持リング22を選択して使用すればよい。
【0087】
図10は、他の時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。錠剤9が凸状部230の上面に供給され、第1押圧部材26による堰き止めに失敗した場合、当該錠剤9は、凸状部230の上面に乗った状態のまま、第2押圧部材28の下方まで搬送される場合がある。この場合、第2押圧部材28の押圧突起281は、錠剤9に押されることにより、一旦上方へ変位する。そして、錠剤9の後端が押圧突起281に差し掛かると、第2弾性部材29の弾性力により、押圧突起281が再び降下する。そうすると、錠剤9は、押圧突起281の押圧面282に押圧されて、
図10中の破線矢印のように、前方(搬送方向下流側)のポケット23へ押し込まれる。その際、錠剤9は、ポケット23の後部傾斜面233に沿って、ポケット23内へ円滑に移動する。これにより、錠剤9をポケット23に正常に収容することができる。
【0088】
図11は、他の時点における第1受渡位置P1の様子を示した図である。一部の錠剤9は、ポケット23内において、正常ではない姿勢で保持される場合がある。例えば、一部の錠剤9は、
図11のように、起立した姿勢で吸着孔24に吸着保持されている場合がある。このような錠剤9は、第1ドラム20の回転により下流側へ搬送されるにつれて、徐々に接近するガイド面283によって、正常な姿勢に矯正される。その結果、錠剤9をポケット23に正常な姿勢で収容することができる。
【0089】
以上のように、この錠剤印刷装置1では、第2シュート14から第1ドラム20のポケット23へ、錠剤9が直接的に入らなかった場合であっても、押圧機構25により、第1ドラム20の外周面における錠剤9の周方向の位置を調整して、ポケット23に錠剤9を誘い込むことができる。これにより、錠剤9の詰まりや錠剤9の割れを抑制しつつ、第1ドラム20の各ポケット23に、錠剤9を正常に収容することができる。
【0090】
<5.押圧機構の調整について>
この錠剤印刷装置1では、装置の組み立て誤差や機差に応じて、押圧機構25の各部を微調整できる。以下では、押圧機構25の各部を調整するための構造について、説明する。なお、以下では、押圧機構25が、第1押圧部材26、第1弾性部材27、第2押圧部材28、および第2弾性部材29を、幅方向に3組有する場合について、説明する。
【0091】
<5-1.第1押圧部材の調整>
まず、第1押圧部材26の位置および姿勢を調整するための構造について、説明する。
図12は、押圧機構25の部分上面図である。
図13は、押圧機構25の部分側面図である。
図14は、
図12のA-A位置における押圧機構25の部分縦断面図である。
【0092】
図12~
図14に示すように、押圧機構25は、ベース部材15および第1支持部材16を有する。ベース部材15は、第2シュート14に対して固定されている。ベース部材15は、単一の部品であってもよく、複数の部品を組み合わせることにより構成されていてもよい。第1支持部材16は、ベース部材15に対して固定されている。第1支持部材16は、単一の部品であってもよく、複数の部品を組み合わせることにより構成されていてもよい。
【0093】
第1支持部材16には、第1回動軸A1に沿って延びる第1シャフト161が固定されている。3つの第1押圧部材26は、第1シャフト161に対して、回動可能に取り付けられる。これにより、第1押圧部材26は、第1回動軸A1を中心として、回動可能に支持される。すなわち、第1支持部材16は、第1シャフト161を介して、3つの第1押圧部材26を回動可能に支持する。また、
図13および
図14のように、第1弾性部材27は、第1押圧部材26の上面と、第1支持部材16の下面との間に介挿される。
【0094】
第1支持部材16は、ベース部材15の上面に、3本の第1ボルトB1により固定される。3本の第1ボルトB1のうちの1本は、第1支持部材16の搬送方向上流側の端部かつ幅方向の中央に位置する。3本の第1ボルトB1のうちの他の2本は、上記の1本よりも搬送方向の下流側に位置し、かつ、幅方向に間隔をあけて設けられている。3本の第1ボルトB1は、それぞれ、第1支持部材16を上下方向に貫通し、ベース部材15に締結される。
【0095】
また、押圧機構25は、3つの第1シムS1を有する。第1シムS1は、中央に円孔を有する板状の部材である。3つの第1シムS1は、各第1ボルトB1の締結位置において、ベース部材15の上面と、第1支持部材16の下面との間に介在する。第1ボルトB1は、第1シムS1の円孔を貫通する。このように、ベース部材15と第1支持部材16との間に第1シムS1を配置すれば、第1シムS1の厚みまたは積層枚数を変更することにより、ベース部材15に対する第1支持部材16の高さを調整できる。その結果、第2シュート14に対する第1押圧部材26の高さを調整できる。すなわち、本実施形態では、3つの第1シムS1により、第2シュート14の供給路に対する第1押圧部材26の高さを調整する「第1高さ調整機構」が構成されている。
【0096】
このように、本実施形態の押圧機構25は、装置の組み立て誤差や機差に応じて、第2シュート14の供給路に対する第1押圧部材26の高さを調整できる。したがって、第1押圧部材26自体を他の形状または他の大きさのものに変更することなく、簡易な調整で、第1押圧部材26の位置を調整することができる。
【0097】
また、本実施形態の構造では、3つの第1シムS1のうち、搬送方向の下流側に位置する2つの第1シムS1が、幅方向に間隔をあけて位置する。これらの2つの第1シムS1の厚みは、個別に調整できる。すなわち、幅方向の2箇所において、ベース部材15に対する第1支持部材16の高さを、個別に調整できる。このようにすれば、ベース部材15に対する第1支持部材16の傾斜角度(幅方向に対する傾斜角度)を調整できる。したがって、幅方向に配列された3つの第1押圧部材26の高さに差がある場合に、それらを均等に調整できる。
【0098】
また、
図12~
図14に示すように、押圧機構25は、3本の第2ボルトB2を有する。3本の第2ボルトB2は、第1支持部材16に対して締結される。また、各第2ボルトB2は、第1支持部材16の上方から、第1支持部材16を上下方向に貫通する。そして、各第2ボルトB2の下端部は、第1押圧部材26の上面に接触する。また、第1弾性部材27は、第1回動軸A1よりも搬送方向の下流側に位置するのに対し、第2ボルトB2は、第1回動軸A1よりも搬送方向の上流側に位置する。
【0099】
第1弾性部材27は、第1押圧部材26の一端を、第1回動軸A1を中心として、
図13~
図14における時計回りに押圧するが、第1押圧部材26の他端が第2ボルトB2の下端部に接触することにより、第1押圧部材26の時計回りの回転が止まる。これにより、第1押圧部材26が初期状態に位置決めされる。すなわち、本実施形態では、第2ボルトB2が、第1押圧部材26を初期状態に位置決めする「第1接触部材」となっている。
【0100】
また、押圧機構25は、3つの第2シムS2を有する。第2シムS2は、中央に円孔を有する板状の部材である。3つの第2シムS2は、各第2ボルトB2の締結位置において、第1支持部材16の上面と、第2ボルトB2の頭部との間に介在する。第2ボルトB2は、第2シムS2の円孔を貫通する。このように、第1支持部材16と第2ボルトB2の頭部との間に第2シムS2を配置すれば、第2シムS2の厚みまたは積層枚数を変更することにより、第1支持部材16に対する第2ボルトB2の高さを調整できる。その結果、上述した第1押圧部材26の初期状態における回転角度を調整できる。すなわち、本実施形態では、3つの第2シムS2により、第2ボルトB2の位置を調整する「第1初期状態調整機構」が構成されている。
【0101】
3つの第2シムS2は、個別にその厚みを調整できる。したがって、3つの第1押圧部材26の初期状態を、個別に調整できる。これにより、装置の組み立て誤差や機差に応じて、3つの第1押圧部材26の初期状態を、それぞれ、適切に調整できる。
【0102】
なお、第2ボルトB2の下端部は、凸状の滑らかな曲面とすることが好ましい。具体的には、第2ボルトB2の下端部を、球面の一部に相当する形状とすることが好ましい。これにより、第1押圧部材26の初期状態における回転角度の誤差を、抑制することができる。
【0103】
<5-2.第2押圧部材の調整>
続いて、第2押圧部材28の位置および姿勢を調整するための構造について、説明する。
図15は、押圧機構25の上面図である。
図16は、
図15のB-B位置における押圧機構25の縦断面図である。
【0104】
図15および
図16に示すように、押圧機構25は、第2支持部材17をさらに有する。第2支持部材17は、第1支持部材16に対して固定されている。第2支持部材17は、単一の部品であってもよく、複数の部品を組み合わせることにより構成されていてもよい。
【0105】
第2支持部材17には、第2回動軸A2に沿って延びる第2シャフト171が固定されている。3つの第2押圧部材28は、第2シャフト171に対して、回動可能に取り付けられる。これにより、第2押圧部材28は、第2回動軸A2を中心として、回動可能に支持される。すなわち、第2支持部材17は、第2シャフト171を介して、3つの第2押圧部材28を回動可能に支持する。また、
図16のように、第2弾性部材29は、第2押圧部材28の上面と、第2支持部材17の下面との間に介挿される。
【0106】
第2支持部材17は、第1支持部材16の上面に、3本の第3ボルトB3により固定される。3本の第3ボルトB3のうちの1本は、第2支持部材17の搬送方向上流側の端部かつ幅方向の中央に位置する。3本の第3ボルトB3のうちの他の2本は、上記の1本よりも搬送方向の下流側に位置し、かつ、幅方向に間隔をあけて設けられている。3本の第3ボルトB3は、それぞれ、第2支持部材17を上下方向に貫通し、第1支持部材16に締結される。
【0107】
また、押圧機構25は、3つの第3シムS3を有する。第3シムS3は、中央に円孔を有する板状の部材である。3つの第3シムS3は、各第3ボルトB3の締結位置において、第1支持部材16の上面と、第2支持部材17の下面との間に介在する。第3ボルトB3は、第3シムS3の円孔を貫通する。このように、第1支持部材16と第2支持部材17との間に第3シムS3を配置すれば、第3シムS3の厚みまたは積層枚数を変更することにより、第1支持部材16に対する第2支持部材17の高さを調整できる。その結果、第1ドラム20に対する第2押圧部材28の高さを調整できる。すなわち、本実施形態では、3つの第3シムS3により、第1ドラム20に対する第2押圧部材28の高さを調整する「第2高さ調整機構」が構成されている。
【0108】
このように、本実施形態の押圧機構25は、装置の組み立て誤差や機差に応じて、第1ドラム20に対する第2押圧部材28の高さを調整できる。したがって、第2押圧部材28自体を他の形状または他の大きさのものに変更することなく、簡易な調整で、第2押圧部材28の位置を調整することができる。
【0109】
また、本実施形態の構造では、3つの第3シムS3のうち、搬送方向の下流側に位置する2つの第3シムS3が、幅方向に間隔をあけて位置する。これらの2つの第3シムS3の厚みは、個別に調整できる。すなわち、幅方向の2箇所において、第1支持部材16に対する第2支持部材17の高さを、個別に調整できる。このようにすれば、第1支持部材16に対する第2支持部材17の傾斜角度(幅方向に対する傾斜角度)を調整できる。したがって、幅方向に配列された3つの第2押圧部材28の高さに差がある場合に、それらを均等に調整できる。
【0110】
第2支持部材17は、第3ボルトB3を通す3つの貫通孔172を有する。各貫通孔172は、搬送方向に延びる長孔となっている。すなわち、各貫通孔172の搬送方向の長さは、第3ボルトB3の軸部の外径よりも長い。このため、3本の第3ボルトB3の締結を緩めれば、第1支持部材16および3本の第3ボルトB3に対して、第2支持部材17を、搬送方向に僅かに移動させることができる。そして、第2支持部材17を適切に位置決めした後、3本の第3ボルトB3を再び締結することにより、第1支持部材16に対して第2支持部材17を固定できる。
【0111】
このように、本実施形態では、第2支持部材17に設けられた3つの貫通孔172と、3本の第3ボルトB3とで、第1支持部材16に対する第2支持部材17の搬送方向の位置を調整する「位置調整機構」が構成されている。これにより、第1押圧部材26に対する第2押圧部材28の搬送方向の位置関係を、容易に調整できる。したがって、第1押圧部材26または第2押圧部材28の形状を変更することなく、第1押圧部材26と第2押圧部材28とが接触することを防止できる。
【0112】
また、
図15~
図16に示すように、押圧機構25は、3本の第4ボルトB4を有する。3本の第4ボルトB4は、第2支持部材17に対して締結される。また、第2押圧部材28は、第4ボルトB4の下端部に係合する係合部285を有する。係合部285は、第2回動軸A2よりも搬送方向の上流側に位置し、搬送方向の上流側へ向けて突出する。また、係合部285は、幅方向の中央に切り欠き286を有する二股の形状となっている。
【0113】
第4ボルトB4の下端部は、係合部285の切り欠き286に挿入される。そして、第4ボルトB4の拡径された下端部と、係合部285の下面との間に、第1ワッシャ287およびeリング288が介挿されている。これにより、第4ボルトB4から係合部285が下方へ抜けることが防止されている。
【0114】
第2弾性部材29は、第2支持部材17の下面と、係合部285の上面との間に配置される。第4ボルトB4は、第2弾性部材29を上下方向に貫通する。また、第2弾性部材29の下端部と、係合部285の上面との間には、第2ワッシャ289が介挿されている。
【0115】
第2弾性部材29は、第2押圧部材28の係合部285を、第2回動軸A2を中心として、
図16における反時計回りに押圧するが、第4ボルトB4の下端部に固定された第1ワッシャ287に係合部285の下面が接触することにより、第2押圧部材28の反時計回りの回転が止まる。これにより、第2押圧部材28が初期状態に位置決めされる。すなわち、本実施形態では、第4ボルトB4および第1ワッシャ287が、第2押圧部材28を初期状態に位置決めする「第2接触部材」となっている。
【0116】
また、押圧機構25は、3つの第4シムS4を有する。第4シムS4は、中央に円孔を有する板状の部材である。3つの第4シムS4は、各第4ボルトB4の締結位置において、第2支持部材17の上面と、第4ボルトB4の頭部との間に介在する。第4ボルトB4は、第4シムS4の円孔を貫通する。このように、第2支持部材17と第4ボルトB4の頭部との間に第4シムS4を配置すれば、第4シムS4の厚みまたは積層枚数を変更することにより、第2支持部材17に対する第4ボルトB4の高さを調整できる。その結果、上述した第2押圧部材28の初期状態における回転角度を調整できる。すなわち、本実施形態では、3つの第4シムS4により、第4ボルトB4の位置を調整する「第2初期状態調整機構」が構成されている。
【0117】
3つの第4シムS4は、個別にその厚みを調整できる。したがって、3つの第2押圧部材28の初期状態を、個別に調整できる。これにより、装置の組み立て誤差や機差に応じて、3つの第2押圧部材28の初期状態を、それぞれ、適切に調整できる。
【0118】
また、
図15に示すように、本実施形態の押圧機構25は、4つの円筒状のスリーブ173を有する。4つのスリーブ173は、第2支持部材17に設けられた孔に嵌め込まれている。各スリーブ173は、幅方向に延びる挿入孔174を有する。第2シャフト171は、4つのスリーブ173の挿入孔174に挿入される。すなわち、第2支持部材17は、4つのスリーブ173を介して、第2シャフト171を支持する。
【0119】
4つのスリーブ173は、第2支持部材17に対して着脱可能である。このため、4つのスリーブ173を、挿入孔174の位置を偏心させた他の4つのスリーブ173に交換すれば、第2支持部材17に対する第2シャフト171の位置を調整できる。すなわち、本実施形態では、4つのスリーブ173により、第2支持部材17に対する第2回動軸A2の位置を調整する「軸調整機構」が構成されている。
【0120】
このように、第2回動軸A2の位置を調整すれば、第2押圧部材28の下流端部284を、適切な位置に配置できる。このため、第2押圧部材28によって、錠剤9の姿勢を適切に矯正し、かつ、錠剤9を過度に押圧することを抑制できる。また、3つの第3シムS3による調整と、4つのスリーブ173による調整とを併用することで、押圧突起281の高さと、下流端部284の高さとを、それぞれ適切な位置に調整できる。
【0121】
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0122】
上記の実施形態では、ベース部材15に対する第1支持部材16の高さを調整する第1高さ調整機構として、3つの第1シムS1を利用していた。しかしながら、第1高さ調整機構は、他の構成であってもよい。例えば、ベース部材15に高さ方向に延びる長孔を設け、その長孔に対して、第1支持部材16を固定するボルトの位置を変更することで、ベース部材15に対する第1支持部材16の高さを調整してもよい。
【0123】
同様に、第1初期状態調整機構、第2高さ調整機構、および第2初期状態調整機構も、シムを利用しない構成であってもよい。
【0124】
また、上記の実施形態では、押圧機構25が、第1押圧部材26、第1弾性部材27、第2押圧部材28、および第2弾性部材29を、幅方向に3組有する場合について、説明した。しかしながら、押圧機構25は、第1押圧部材26、第1弾性部材27、第2押圧部材28、および第2弾性部材29を、幅方向に1~2組有するものであってもよく、4組以上有するものであってもよい。
【0125】
また、第1押圧部材26、第2押圧部材28、第1支持部材16、第2支持部材17等の各部材の形状は、本願の各図に示した形状に限定されるものではない。これらの各部材の形状は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更してもよい。
【0126】
また、本発明の搬送装置は、第2押圧部材28、第2弾性部材29、および第2支持部材17を備えていないものであってもよい。
【0127】
また、上記の実施形態では、印刷部60に、4つのヘッド61が設けられていた。しかしながら、印刷部60に含まれるヘッド61の数は、1~3つであってもよく、5つ以上であってもよい。
【0128】
また、上記の実施形態では、錠剤9に対して画像を印刷する錠剤印刷装置1について説明した。しかしながら、本発明の搬送装置は、錠剤9に対して検査を行う検査装置や、錠剤9の包装を行う包装装置に用いられるものであってもよい。
【0129】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1 錠剤印刷装置
9 錠剤
10 供給機構
14 第2シュート
15 ベース部材
16 第1支持部材
17 第2支持部材
20 第1ドラム
21 ドラム本体
22 保持リング
23 ポケット
24 吸着孔
25 押圧機構
26 第1押圧部材
27 第1弾性部材
28 第2押圧部材
29 第2弾性部材
30 第2ドラム
40 搬送コンベア
50 第1カメラ
60 印刷部
70 第2カメラ
80 乾燥機構
90 排出機構
100 制御部
161 第1シャフト
171 第2シャフト
172 貫通孔
173 スリーブ
174 挿入孔
261 保持面
262 当接面
281 押圧突起
282 押圧面
283 ガイド面
284 下流端部
285 係合部
286 切り欠き
287 第1ワッシャ
288 eリング
289 第2ワッシャ
A1 第1回動軸
A2 第2回動軸
B1 第1ボルト
B2 第2ボルト
B3 第3ボルト
B4 第4ボルト
S1 第1シム
S2 第2シム
S3 第3シム
S4 第4シム