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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】パワー半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240725BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20240725BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240725BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240725BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020167143
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059408
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン ティ
(72)【発明者】
【氏名】徳山 健
(72)【発明者】
【氏名】難波 明博
(72)【発明者】
【氏名】荒木 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】澤畠 公則
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/128899(WO,A1)
【文献】特開2014-096957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01L 23/473
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子と、
前記パワー半導体素子の主電流を伝達する導体部と、
前記主電流又は前記パワー半導体素子を制御する制御電流を通電する回路部品と、
前記パワー半導体素子と前記導体部と前記回路部品と、を支持する基板と、
前記パワー半導体素子と前記導体部と前記回路部品と前記基板と、を封止する封止部材と、を備え、
前記パワー半導体素子と前記導体部は交流電流を出力するパワー回路体を構成し、
前記封止部材は、冷媒を流すための第1流路を形成し、
前記第1流路は、前記パワー回路体まで熱的に繋がる第1領域と、前記回路部品まで熱的に繋がる第2領域と、を有する
パワー半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワー半導体装置であって、
前記回路部品の表面は、前記封止部材から露出しており、前記第1流路の底面の一部を形成している
パワー半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のパワー半導体装置であって、
前記導体部は、前記封止部材から露出している露出面を有し、
前記露出面には、屈曲部を有するワイヤ部が接続されている
パワー半導体装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載のパワー半導体装置であって、
前記導体部は、前記封止部材から露出している露出面を有し、
前記露出面には、ピンフィンが設けられている
パワー半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載のパワー半導体装置であって、
前記封止部材は、前記基板の第1の面側に前記第1流路を形成し、さらに前記基板の第2の面側に第2流路を形成し、
前記第2流路は、前記パワー回路体まで熱的に繋がる第3領域を有する
パワー半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパワー半導体装置であって、
前記第1流路および前記第2流路は、前記封止部材と、前記封止部材に接続される流路ケースと、により構成され、
前記封止部材は、前記第1流路および前記第2流路の底面の少なくとも一部を形成し、
前記流路ケースは、前記第1流路および前記第2流路の底面にそれぞれ対向している上面と、前記上面と接続されている側面と、を有する
パワー半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパワー半導体装置であって、
前記基板は、第1貫通孔を有し、
前記封止部材は、前記第1流路と前記第2流路を導通し、かつ前記第1貫通孔を通る第2貫通孔を有する
パワー半導体装置。
【請求項8】
請求項6に記載のパワー半導体装置であって、
前記流路ケースは、前記冷媒を前記流路内に流入させる流入部と、前記冷媒を前記流路外に流出させる流出部と、を有し、
前記流入部と前記流出部は、前記第1流路に形成され、
3相の前記パワー回路体は、前記第1流路内に直線状に配置される
パワー半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載のパワー半導体装置であって、
前記流入部と前記流出部は、前記第1流路の側壁に形成される
パワー半導体装置。
【請求項10】
請求項6に記載のパワー半導体装置であって、
前記流路ケースは、前記冷媒を前記流路ケース内に流入させる流入部と、前記冷媒を前記流路ケース外に流出させる流出部と、を有し、
3相の前記パワー回路体は、直線状の第1列に沿って配置され、
前記回路部品は、前記第1列とは平行である第2列に沿って配置され、
前記第1流路は、前記第1列に沿わないように形成され、かつ前記3相のパワー回路体と前記回路部品とを冷却する
パワー半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載のパワー半導体装置であって、
前記封止部材は、前記3相のパワー回路体同士の間に設けられ、前記第1流路を蛇行状に形成する
パワー半導体装置。
【請求項12】
請求項11に記載のパワー半導体装置であって、
前記パワー回路体は、前記第1流路内に露出する露出面において、前記パワー回路体の上アーム下アームの間に仕切り部が配置される
パワー半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の分野において、バッテリー搭載スペースを最大化するために、モータ・インバータの小型化が要求されている。小型化に伴い、さらに高出力密度である小型インバータを実現するには、小型かつ高冷却性能の構造が必要となり、技術改良が成されている。
【0003】
本願発明の背景技術として、下記の特許文献1が知られている。特許文献1では、電子装置100の回路基板10において、モールド樹脂50が、開口部230を塞いで流路220の一部をなす流路形成部53と、流路形成部53を囲う位置にOリング400が配置されるシール部52と、を有しており、流路形成部53は、開口部230を塞ぎつつ、シール部52と被取付体200とで、Oリング400を挟み込んだ状態で被取付体200に取り付けられている構成が示されている。この構成によって部品点数を増やすことなく、放熱性を確保できる電子装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-119427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来の構造では、プリント基板表面に冷媒を密封するために必要な面積を大きくする必要がある。それによって、コンデンサおよびドライバ回路とパワーモジュールとの間の距離が長くなると、インダクタンスの増加に繋がる懸念がある。またこの場合、発熱する回路部品を冷却するためには流路を別途に追加する必要があり、これにより流路が複雑になり大型化する懸念もある。
【0006】
これを鑑みて本発明は、回路部品の実装密度の向上と冷却性能向上とを両立させることで、低インダクタンス化と小型化とを両立できるパワー半導体装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるパワー半導体装置は、パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子の主電流を伝達する導体部と、前記主電流又は前記パワー半導体素子を制御する制御電流を通電する回路部品と、前記パワー半導体素子と前記導体部と前記回路部品と、を支持する基板と、前記パワー半導体素子と前記導体部と前記回路部品と前記基板と、を封止する封止部材と、を備え、前記パワー半導体素子と前記導体部は交流電流を出力するパワー回路体を構成し、前記封止部材は、冷媒を流すための第1流路を形成し、前記第1流路は、前記パワー回路体まで熱的に繋がる第1領域と、前記回路部品まで熱的に繋がる第2領域と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
回路部品の実装密度の向上と冷却性能向上とを両立させることで、低インダクタンス化と小型化とを両立できるパワー半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る、パワー半導体装置の図。
図2】本発明の第2の実施形態に係る、パワー半導体装置の図。
図3】本発明の第3の実施形態に係る、パワー半導体装置の図。
図4】本発明の第4の実施形態に係る、パワー半導体装置の図。
図5図4の変形例。
図6】本発明の第5の実施形態に係る、パワー半導体装置の図。
図7】本発明の第6の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図。
図8】本発明の第7の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図。
図9】本発明の第8の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図。
図10】本発明の第9の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図。
図11図10の変形例。
図12】本発明の第10の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0011】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
(本発明の実施形態とその構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、パワー半導体装置の図である。
【0013】
パワー半導体素子1は、はんだ2を介して、導体部5a,5bと接続され、パワー回路体を構成している。パワー半導体素子1は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードを組み合わせたものや、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0014】
導体部5a,5bは、パワー半導体素子1の主電流であるコレクタ/エミッタ電流を伝達している。回路部品8は、電力を平滑化させるコンデンサ回路と、制御電流であるゲート電流を出力するドライバ回路の片方または両方と、で構成されている。
【0015】
封止部材7は、樹脂などの材質であり、パワー半導体素子1と導体部5a,5bと回路部品8をモールドして、基板3に固定して封止する。パワー半導体素子1と導体部5a,5bはパワー回路体を形成し、基板3に支持されて配置されている。
【0016】
また、封止部材7は、第1流路9および第2流路14を形成している。第1流路9および第2流路14は、内部に冷媒を流すことで、発熱する導体部5a,5bや回路部品8を冷却している。また、封止部材7は、モールド樹脂によって基板3の表面段差を埋め、冷媒を流路内に封じ込みしやすくしている。
【0017】
第1流路9は、封止部材7と導体部5aと回路部品8と流路ケース6と、によって形成されている。導体部5aは第1流路9内に流れる冷媒に接触するように、封止部材7に覆われていない露出面を持つ。導体部5aはこの露出面において、冷媒に直接接触するようにしてもよいし、保護のために熱伝導性部材のフィラシートなどで覆われて間接的に冷媒に接触するようにしてもよい。
【0018】
流路ケース6は、その表面が冷媒と直接接するように封止部材7によって固定され、封止部材7において、基板3側とは反対側の表面に設置される。
【0019】
シール部材4は、封止部材7または流路ケース6に設けられた溝に配置され、流路ケース6と封止部材7とを接続固定することで、第1流路内部に流れる冷媒を封止する部材である。シール部材4は、例えばOリングやガスケットなどで構成されている。
【0020】
基板3は、回路体を設置するための貫通孔を設けている。なお、基板3において、紙面上側の面を第1の面31、下側の面を第2の面32とする。
【0021】
第1流路9において、導体部5aおよび封止部材7および流路ケース6で囲まれている領域を第1領域10、回路部品8および封止部材7および流路ケース6で囲まれている領域を第2領域11、とする。第1領域10は、パワー半導体素子1又は導体部5aまで熱的に繋がっている領域である。また第2領域11は、封止部材7と回路部品8の表面(露出面)又は熱伝導性部材とが少なくとも一部を形成し、回路部品8まで熱的に繋がる領域である。
【0022】
回路部品8は、第2領域11において、その表面が冷媒と接するように封止部材7によって固定される。また、回路部品8の表面は、封止部材7から露出しており、第1流路9の底面の一部を形成している。回路部品8の冷媒との接触面は、部品保護のため直接冷媒と接触しないように介装部材で覆われる。介装部材は、例えば、熱伝導性部材のフィラシートなどである。これにより、回路部品8の冷却効果が向上する。また、回路部品8を流路部9内に設置することで,さらに冷却性能を強化させることができる。また、回路部品8がパワー半導体素子1近くに設置されることで、インダクタンスを低減できる。
【0023】
また、封止部材7は、基板3の第1の面31側に第1流路9を形成し、さらに基板3の第2の面32側に第2流路14を形成し、第2流路14は、かつパワー回路体まで熱的に繋がる第3領域15を有している。これにより、パワー回路体を両面から冷媒で冷却しつつ、回路部品8も第1流路9で同時に冷やすように構成されるため、実装密度が向上しつつ、冷却効果も向上させている。なお、第3領域15における導体部5bの流路部14に対する露出面は、直接冷媒にさらすことなく熱伝導性部材を用いてコーティングし、間接的に冷却されるような構成でもよい。
【0024】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る、パワー半導体装置の図である。
【0025】
導体部5a,5bは、封止部材7から露出している露出面を有し、その露出面には、屈曲部を有するワイヤ部(冷却ワイヤ)12が接続されている。冷却ワイヤ12は、導体部5a,5bの放熱面積を増やすため、導体部5a,5bの露出面に設置される。これにより、放熱面積が増加され、冷却効果が向上する。冷却ワイヤ12は、超音波接合,はんだ付け,抵抗溶接などの接合方法で導体部5a,5bに接合されている。また冷却ワイヤ12は、アルミ,銅,SUSなどの材質で構成されている。
【0026】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る、パワー半導体装置の図である。
【0027】
導体部5a,5bは、封止部材7から露出している露出面を有し、その露出面には、ピンフィン(冷却フィン)13が設けられている。冷却フィン13は、導体部5a,5bの放熱面積を増やすため設置されており、その形状は円柱,角柱,板状などである。この放熱面積の増加により、冷却効果が向上する。なお、円柱,角柱の場合、冷却フィン13の各ピンが冷媒の流れに向かって千鳥状または格子状で配置されることが好ましい。冷却フィン13は、導体部5a,5bの削り出しや金型を用いた鋳造によって、導体部5a,5bと一体になる部材とされてもよいし、別部材を導体部5a,5bに接合することで構成されてもよい。図3では、冷却フィン13は板状に構成され、冷媒の流れに向かって平行に形成される例として示している。
【0028】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る、パワー半導体装置の図である。
【0029】
第1流路9Aまたは第2流路14Aは、封止部材7Aと、封止部材7Aに接続される流路ケース6Aと、により流路が構成されている。具体的には、図4に示すように、封止部材7Aは、第1流路9Aまたは第2流路14Aの底面の少なくとも一部を形成しており、流路ケース6Aは凹状に形成され、第1流路9Aまたは第2流路14Aの底面とはそれぞれ対向している上面と、その上面と接続されている側面と、を有している。封止部材7Aと流路ケース6Aの両方を凹部形状にすることで、冷媒の流路面積を増加させやすくしている。これにより、導体部5a,5bの冷却効果が向上する。
【0030】
図5は、図4の変形例である。
【0031】
封止部材7Bは、第1流路9Bおよび流路ケース6Bと接する面がフラットに形成されている。流路ケース6Bは図4と同様に凹上に形成されている。これにより第1流路9Bは、第1流路9Bの上の面だけでなく、流路壁の部分も流路ケース6Bに設置されている。この構成により、半導体装置の製造を容易にさせることができる。
【0032】
図6は、本発明の第5の実施形態に係る、パワー半導体装置の図である。
【0033】
基板3Cは、パワー回路体を設置するために設けられている貫通孔とは別に、第1流路9Cと第2流路14Cとを導通させるため、第1貫通孔である基板貫通孔161を形成している。また封止部材7Cにも同様に、第1流路9と第2流路14とを導通させるため、第2貫通孔として、封止部材貫通孔162を設ける。
【0034】
基板貫通孔161と封止部材162で構成される貫通孔16は、第1流路9Cと第2流路14Cの内部を流れる冷媒を一通させる。このようにすることで、第1流路9Cまたは第2流路14Cにそれぞれ設けることが必要になる流路入口および出口を、1ヵ所ずつ形成するだけで、半導体装置への冷媒の流入および排出ができる。
【0035】
図7は、本発明の第6の実施形態に係る、パワー半導体装置の図である。なお、図7以降の図は、図3図6の説明でも用いた冷却フィン13を設けた導体部5aを用いているが、導体部5aに冷却フィン13を設けなくてもよいし、冷却フィン13の代わりに図2で説明した冷却ワイヤ12を設けてもよい。また、導体部5bについても同様である。
【0036】
第1流路9Dは、電力変換装置の出力三相、つまりパワー回路体の3相分の導体部5aを冷却している。それぞれの相は、交流電流を出力し、流路部9Dに対して直列に配置される。三相のパワー回路体が直線状に配置され、流路部9Dに対して直列に配置される。流路部9Dも直線型に成形されている。このようにすることで、流路壁に対する冷媒の圧損を低減できる。またこれにともない、冷媒の流量を増加させることが可能になるため、冷却効果が向上する。
【0037】
冷媒を流路ケース6D内に流入させる流入部と、冷媒を流路ケース6D外に流出させる流出部である冷媒入口・出口17が、流路ケース6Dに設置され、基板3の表面に対して垂直な方向に形成される。冷媒入口・出口17が基板3に対して垂直な方向に形成されることで、冷媒入口・出口17の寸法を最大化することができ、流路壁に対する圧損を低減できる。
【0038】
図8は、本発明の第7の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図である。
【0039】
冷媒入口・出口17Eが、基板3の表面に対して水平な方向に形成されており、冷媒の入口・出口17Eが第1流路9Eの側壁である流路ケース6Eに配置される。このようにすることで、パワー半導体装置の積層が薄くなり、小型化に貢献する。
【0040】
図9は、本発明の第8の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図である。
【0041】
3相のパワー回路体は、基板3の長手方向に直線状の第1列91に沿って配置され、回路部品8は、第1列と平行である第2列92に沿って配置されている。第1流路9Fは、第1列91に沿わないように形成され、かつ3相のパワー回路体と回路部品8とを冷却している。図9では、流路部9Fは、基板3の表面に対して水平方向にS字状に形成される。S字状の流路部9Fを形成することで、三相間パワー回路体の絶縁を確保でき、さらに同じ流路部9Dによって回路部品8を冷却することができるため、冷却効果を向上させることができる。
【0042】
なお、S字状の流路部9Fを形成するのにともない、流路ケース6Fに設けられている冷媒入口・出口17Fは、基板3の表面に対して垂直な方向に形成されているが、構成上の問題がなければ、基板3の表面に対して水平な方向に形成されていてもよい。
【0043】
図10は、本発明の第9の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図である。
【0044】
冷媒入口17Gは、基板3の表面に対して垂直な方向に形成されているが、冷媒出口17Gは同じ流路部9Gには設けられず、貫通孔16を通って、基板3の反対側の面に設けられている流路部に形成されている。このように、基板3の貫通孔16を通過することで、基板3の両面を冷却する際の流路を簡易化でき、パワー半導体装置の小型化と部品の削減、圧損の低減が可能となる。
【0045】
図11は、図10の変形例である。
【0046】
流路部9Hは、図9および図10に示したS字状に形成されている流路壁の角部が、曲線状である曲線流路壁20として成形されている。これにより、蛇行状に形成された曲線流路壁20は、冷媒による流路ケース6Hに対しての圧損が低減でき、同時に曲線状であることから、冷媒流速および流量を増加させることできるため、冷却効果が向上する。
【0047】
図12は、本発明の第10の実施形態に係る、パワー半導体装置の斜視図である。
【0048】
三相のパワー半導体の上下アームの導体部には、それぞれ冷却フィン13が設けられている。この流路ケース6Jの流路内に露出している冷却フィン13の間に仕切り板19が設置されている。仕切り板19は、封止部材7または、流路ケース6Jに形成されている。これにより、パワー半導体装置同士の絶縁距離を確保できる。また、この仕切り板19によって流路部9Jの冷媒の流れを制御することで、冷媒は整流し、導体部の表面の冷媒の流速が増加及び均一化され、冷却効果が向上する。
【0049】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0050】
(1)パワー半導体素子1と、パワー半導体素子1の主電流を伝達する導体部5a,5bと、主電流又はパワー半導体素子1を制御する制御電流を通電する回路部品8と、パワー半導体素子1と導体部5a,5bと回路部品8と、を支持する基板3と、パワー半導体素子1と導体部5a,5bと回路部品8と基板3と、を封止する封止部材7と、を備え、パワー半導体素子1と導体部5a,5bは交流電流を出力するパワー回路体を構成し、封止部材7は、冷媒を流すための第1流路9を形成し、第1流路9は、パワー回路体まで熱的に繋がる第1領域10と、前記回路部品まで熱的に繋がる第2領域と、を有する。このようにしたので、回路部品の実装密度の向上と冷却性能向上とを両立させることで、低インダクタンス化と小型化とを両立できるパワー半導体装置を提供できる。
【0051】
(2)回路部品8の表面は、封止部材7から露出しており、第1流路9の底面の一部を形成している。このようにしたので、パワー回路体の冷却性能を向上させることができる。
【0052】
(3)導体部5a,5bは、封止部材7から露出している露出面を有し、露出面には、屈曲部を有するワイヤ部12が接続されている。このようにしたので、パワー回路体の冷却性能を向上させることができる。
【0053】
(4)導体部5a,5bは、封止部材7から露出している露出面を有し、露出面には、ピンフィン13が設けられている。このようにしたので、パワー回路体の冷却性能を向上させることができる。
【0054】
(5)封止部材7は、基板3の第1の面31側に第1流路9を形成し、さらに基板3の第2の面32側に第2流路14を形成し、第2流路14は、パワー回路体まで熱的に繋がる第3領域15を有する。このようにしたので、パワー回路体を両面から冷却することができる。
【0055】
(6)第1流路9および第2流路14は、封止部材7と、封止部材7に接続される流路ケース6と、により構成され、封止部材7は、第1流路9および第2流路14の底面の少なくとも一部を形成し、流路ケース6は、第1流路9および第2流路14の底面にそれぞれ対向している上面と、上面と接続されている側面と、を有する。このようにしたので、第1流路9または第2流路14に流れる冷媒の流量を増加させることができる。
【0056】
(7)基板3は、第1貫通孔161を有し、封止部材7は、第1流路9と第2流路14を導通し、かつ第1貫通孔161を通る第2貫通孔162を有する。このようにしたので、第1流路9と第2流路14を一通りの流路として、流路入口および出口の数を減らすことが可能になる。また、第1貫通孔161と第2貫通孔162を通る冷媒によって、パワー回路体の冷却効果を上げることができる。
【0057】
(8)流路ケース6は、冷媒を流路9内に流入させる流入部17と、冷媒を流路9外に流出させる流出部17と、を有し、流入部17と流出部17は、第1流路9に形成され、3相のパワー回路体は、第1流路8内に直線状に配置される。このようにしたので、3相のパワー回路体を効率よく冷却させることができる。
【0058】
(9)流入部17と流出部17は、第1流路9の側壁に形成される。このようにしたので、パワー半導体装置の高さ方向の積層を減らし、小型化に貢献できる。
【0059】
(10)流路ケース6は、冷媒を流路ケース6内に流入させる流入部17と、冷媒を流路ケース6外に流出させる流出部17と、を有し、3相のパワー回路体は、直線状の第1列91に沿って配置され、回路部品8は、第1列91とは平行である第2列92に沿って配置され、第1流路9は、第1列91に沿わないように形成され、かつ3相のパワー回路体と回路部品8とを冷却する。このようにしたので、パワー回路体同士の絶縁に貢献するとともに、1つの流路でパワー回路体と回路部品8を冷却することができる。
【0060】
(11)封止部材7は、3相のパワー回路体同士の間に設けられ、第1流路9を蛇行状に形成する。このようにしたので、流路9の角部に対する圧損を減少させることができる。
【0061】
(12)パワー回路体は、第1流路9内に露出する露出面において、パワー回路体の上アーム下アームの間に仕切り部19が配置される。このようにしたので、冷媒が整流され、導体部の表面の冷媒の流速が増加及び均一化され、冷却効果が向上する。
【0062】
以上、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置・他の構成の追加をすることが可能であり、その態様も本発明の範囲内に含まれる。さらに、上述の実施形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 パワー半導体素子
2 はんだ
3,3C 基板
31 第1の面
32 第2の面
4 シール部材
5a,5b 導体部
6,6A,6B,6D,6E,6G,6H,6J 流路ケース
7,7A,7B,7C 封止部材
8 回路部品
9,9A~J 第1流路
91 第1列
92 第2列
10 第1領域
11 第2領域
12 冷却ワイヤ
13 冷却フィン
14,14A,14C 第2流路
15 第3領域
16 貫通孔
161 基板貫通孔
162 封止部材貫通孔
17,17E,17F,17G 冷媒入口/出口
19 仕切り版
20 曲線流路壁
図1
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