(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】投与計画支援装置および投与計画支援システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240725BHJP
【FI】
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2020170971
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高澤 純一
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-521165(JP,A)
【文献】特表2011-501845(JP,A)
【文献】特開2009-169673(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132736(WO,A1)
【文献】特開2018-191612(JP,A)
【文献】特開2018-116395(JP,A)
【文献】特開2019-004743(JP,A)
【文献】特開2010-166915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0070304(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0037757(US,A1)
【文献】特開2008-046839(JP,A)
【文献】特開2014-059675(JP,A)
【文献】特開2016-018321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬の投与対象である患者の前記治療薬による副作用の症状および該症状の発生時期を表す定量的な生体情報と、前記副作用の症状および該症状の発生時期に関する前記患者の主観的な申告情報との少なくとも何れか一方と、前記患者の属性情報とを取得する取得部と、
前記生体情報または前記申告情報と、前記患者の属性情報とに基づいて、前記治療薬の次回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期を予測する予測部と、
前回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期に関する分析をする分析部と、
前記生体情報または前記申告情報と前記分析部による分析結果と次回の投与期間において前記副作用に対処するための処置の内容および時期とを対応付けて学習した学習済みモデル、または、前記生体情報または前記申告情報と前記分析結果と次回の投与期間において前記副作用に対処するための処置の内容および時期とが対応付けられたデータベースを用いて、前記副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を生成する生成部と、
前回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状の時系列の推移、または、前記予測部による予測結果に基づく前記患者の前記副作用の症状の時系列の推移に、前記生成部により生成された前記提案における前記処置の時期を重畳して表示部に表示させる出力部と、
を備える投与計画支援装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記患者と属性情報が類似する類似患者における前記副作用の症状および該症状の発生時期に関する情報に基づいて、前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期を予測し、
前記出力部は、前記予測結果を、前記患者の前記生体情報または前記申告情報と比較可能に時系列に表示部に表示させる、
請求項1に記載の投与計画支援装置。
【請求項3】
前記治療薬は、複数回に亘って、規定の長さの投与期間ごとに定期的に前記患者に投与される薬剤であり、
前記予測部は、前記患者の前回の投与期間における前記生体情報または前記申告情報に基づいて、次回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期を予測
し、前回の投与期間における前記患者の実際の副作用の症状または該症状の発生時期が、前々回の投与期間における前記患者の実際の副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準以上異なっていた場合は、前記患者と属性情報が類似する類似患者の生体情報または申告情報である類似患者情報に基づいて、次回の投与期間における前記患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する、
請求項1または2に記載の投与計画支援装置。
【請求項4】
前記予測部は、
前回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状または該症状の発生時期が、前々回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準以上異なっていた場合、前記類似患者における前記副作用の経過に関する情報に基づいて、次回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期を予測し、
前回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期が、前々回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準よりも異なっていなかった場合、前回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期に基づいて、次回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期を予測する、
請求項2に記載の投与計画支援装置。
【請求項5】
前記治療薬は、抗がん剤であり、
前記提案に基づく治療計画を前記抗がん剤の投与に関する時系列的な治療計画を含むレジメン計画書に登録する登録部、をさらに備える、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の投与計画支援装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記提案における前記処置の内容または時期についてのユーザによる変更を取得し、
前記登録部は、前記ユーザによって変更された前記処置の内容または時期を、前記レジメン計画書に登録する、
請求項
5に記載の投与計画支援装置。
【請求項7】
前記生体情報または前記申告情報に
より示される患者の腹水の量が基準値以上である場合、次回の投与期間の開始前に腹水を抜くことを、実施すべき処置の内容として判定する判定部、をさらに備え、
前記出力部は、前記判定部による判定結果を出力する、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の投与計画支援装置。
【請求項8】
前記類似患者は、年齢、性別、体格、BMI(Body Mass Index)、癌の種類、癌のステージ、前記治療薬による治療開始時のバイタルデータ、または持病のうちの少なくとも1つが前記患者と共通する、
請求項2に記載の投与計画支援装置。
【請求項9】
入力端末と、投与計画支援装置とを備え、
入力端末は、
治療薬の投与対象である患者の前記治療薬による副作用の症状および該症状の発生時期に関する前記患者の主観的な申告情報の入力を受け付ける受付部と、
受け付けた申告情報を前記投与計画支援装置に送信する送信部と、を備え、
前記投与計画支援装置は、
前記患者の前記治療薬による副作用の症状および該症状の発生時期を表す定量的な生体情報と、前記申告情報との少なくとも何れか一方と、前記患者の属性情報とを取得する取得部と、
前記生体情報または前記申告情報と、前記患者の属性情報とに基づいて、前記治療薬の次回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期を予測する予測部と、
前回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状および該症状の発生時期に関する分析をする分析部と、
前記生体情報または前記申告情報と前記分析部による分析結果と次回の投与期間において前記副作用に対処するための処置の内容および時期とを対応付けて学習した学習済みモデル、または、前記生体情報または前記申告情報と前記分析結果と次回の投与期間において前記副作用に対処するための処置の内容および時期とが対応付けられたデータベースを用いて、前記副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を生成する生成部と、
前回の投与期間における前記患者の前記副作用の症状の時系列の推移、または、前記予測部による予測結果に基づく前記患者の前記副作用の症状の時系列の推移に、前記生成部により生成された前記提案における前記処置の時期を重畳して表示部に表示させる出力部と、を備える、
投与計画支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、投与計画支援装置および投与計画支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抗がん剤等の薬剤を用いた治療計画を立てる場合には、医師が、患者に生じる副作用を考慮して投与スケジュールを作成していた。一般に、副作用には患者ごとの個人差があるため、患者個人の副作用を考慮した適切な治療計画の作成は容易ではない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、患者個人の副作用を考慮した治療計画の作成を支援することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る投与計画支援装置は、取得部と、予測部と、分析部と、生成部と、出力部とを備える。取得部は、治療薬の投与対象である患者の、治療薬による副作用の症状および該症状の発生時期を表す定量的な生体情報と、副作用の症状および該症状の発生時期に関する患者の主観的な申告情報との少なくとも何れか一方と、患者の属性情報とを取得する。予測部は、生体情報または申告情報と、患者の属性情報とに基づいて、治療薬の次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。分析部は、前回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期に関する分析をする。生成部は、生体情報または申告情報と分析部による分析結果と次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期とを対応付けて学習した学習済みモデル、または、生体情報または申告情報と分析結果と次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期とが対応付けられたデータベースを用いて、副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を生成する。出力部は、前回の投与期間における患者の副作用の症状の時系列の推移、または、予測部による予測結果に基づく患者の副作用の症状の時系列の推移に、生成部により生成された提案における処置の時期を重畳して表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る投与計画支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る投与計画サポート画面の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る投与計画サポート画面の他の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る申告情報に基づく副作用を表示した投与計画サポート画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るレジメン計画書への治療計画の反映について説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る申告情報の入力画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る投与計画サポート処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、投与計画支援装置および投与計画支援システムの実施形態について詳細に説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る投与計画支援システムSの構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、投与計画支援システムSは、投与計画支援装置100と、入力端末200と、生体情報取得装置300とを備える。投与計画支援装置100と、入力端末200と、生体情報取得装置300とは、ネットワークNによって接続する。ネットワークNは、インターネット、または院内LAN(Local Area Network)等である。なお、生体情報取得装置300は、投与計画支援装置100と接続しなくとも良く、例えば入力端末200とのみ接続しても良い。また、投与計画支援システムSは、不図示の電子カルテシステム等の各種情報処理装置とネットワークNを介して接続しても良い。
【0009】
投与計画支援装置100は、例えばPC(Personal Computer)等のコンピュータであるものとする。投与計画支援装置100は、例えば、病院等の医療機関に設置される。
【0010】
投与計画支援装置100は、医師等が患者に対する治療薬の投与計画を作成することを支援する装置である。該治療薬は、複数回に亘って、規定の長さの期間ごとに定期的に患者に投与される薬剤である。本実施形態においては、投与計画支援装置100のユーザは、例えば医師である。
【0011】
本実施形態においては、該治療薬が抗がん剤である場合を例として説明する。例えば、本実施形態においては、抗がん剤の1回の投与期間が10日間であり、複数回の投与期間が1セットとなって計画されるものとする。1回の投与期間は「1クール」という単位で呼ばれる場合もある。なお、該投与期間の長さは一例であり、本実施形態の構成の適用対象はこれに限定されるものではない。
【0012】
なお、投与期間中継続して治療薬が投与されるものでもよいし、投与期間ごとに治療薬が1回ずつ投与されるものでも良い。
【0013】
また、本実施形態の抗がん剤は、化学療法薬に限定されるものではなく、分子標的治療薬も含む。また、治療薬は、その他の薬剤であっても良い。
【0014】
また、入力端末200は、治療薬の投与対象の患者によって使用される。入力端末200のユーザは、該患者である。以下、本実施形態においては、単に患者という場合には、治療薬の投与対象の患者を指す。
【0015】
入力端末200は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、またはPC等である。
【0016】
また、生体情報取得装置300は、患者の身体に装着され、患者の生体情報を計測する。生体情報取得装置300は例えば、体温計、血圧計、またはパルスオキシメータ等である。なお、生体情報取得装置300は、1台で複数の機能を備えても良いし、複数の生体情報取得装置300が患者に装着されても良い。なお、生体情報取得装置300は、患者の身体に常時装着されてなくとも良い。
【0017】
以下、投与計画支援装置100、入力端末200、および生体情報取得装置300について説明する。
【0018】
投与計画支援装置100は、NW(network)インタフェース110と、記憶回路120と、入力インタフェース130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを備える。
【0019】
NWインタフェース110は、処理回路150に接続されており、投与計画支援装置100と、入力端末200と、生体情報取得装置300との間で行われる各種データの伝送および通信を制御する。NWインタフェース110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0020】
記憶回路120は、処理回路150に接続されており、処理回路150で使用される各種の情報を記憶する。また、本実施形態においては、記憶回路120は、例えば、電子カルテシステム等から取得された患者の属性情報、生体情報取得装置300から取得された生体情報、および入力端末200から取得された副作用の申告情報等を記憶する。また、記憶回路120は、患者の治療に用いられるレジメン計画書を記憶する。患者属性情報、生体情報、申告情報、およびレジメン計画書の詳細については後述する。
【0021】
記憶回路120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。記憶回路120は、記憶部ともいう。
【0022】
入力インタフェース130は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インタフェース130は、処理回路150に接続されており、ユーザから受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路150へと出力する。
【0023】
なお、本明細書において入力インタフェース130はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路150へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース130の例に含まれる。
【0024】
ディスプレイ140は、液晶ディスプレイや有機EL(Organic Electro-Luminescence: OEL)ディスプレイ等である。なお、入力インタフェース130とディスプレイ140とは統合しても良い。例えば、入力インタフェース130とディスプレイ140とは、タッチパネルによって実現されても良い。ディスプレイ140は、表示部の一例である。
【0025】
処理回路150は、記憶回路120からプログラムを読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。本実施形態の処理回路150は、取得機能151、予測機能152、生成機能153、出力機能154、および登録機能155を備える。取得機能151は、取得部の一例である。予測機能152は、予測部の一例である。生成機能153は、生成部の一例である。出力機能154は、出力部の一例である。登録機能155は、登録部の一例である。
【0026】
ここで、例えば、処理回路150の構成要素である取得機能151、予測機能152、生成機能153、出力機能154、および登録機能155の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶されている。処理回路150は、プロセッサである。例えば、処理回路150は、プログラムを記憶回路120から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図1の処理回路150内に示された各機能を有することとなる。なお、
図1においては単一のプロセッサにて取得機能151、予測機能152、生成機能153、出力機能154、および登録機能155にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、
図1においては単一の記憶回路120が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路150は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0027】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。本実施形態において、「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device :CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、記憶回路120にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0028】
取得機能151は、治療薬の投与対象である患者の生体情報と、該患者の申告情報との少なくとも何れか一方と、該患者の属性情報とを取得する。本実施形態においては、取得機能151は、生体情報と申告情報の両方を取得するものとする。
【0029】
より詳細には、取得機能151は、NWインタフェース110を介して、生体情報取得装置300または電子カルテシステム等から、治療薬の投与対象である患者の生体情報を取得する。
【0030】
生体情報は、治療薬による副作用の症状および該症状の発生時期を表す定量的な情報である。
【0031】
該症状の発生時期は、例えば、1つの投与期間中の何日目に症状が発生したかという事である。一例として、副作用の症状が発熱である場合は、10日間投与期間中の2日目に患者の体温が閾値を超えた場合、2日目が該投与期間における該症状の発生時期である。
【0032】
定量的な情報は、例えば、患者の身体を検査して客観的に得られる数値情報とする。具体的には、生体情報は、体温、血圧、酸素飽和度、赤血球数、白血球数、および血小板数のうち少なくとも1つに関する検査結果と、検査日とを含む。なお、生体情報は、さらにこの他の情報、例えば各種のバイタルデータまたは血液検査の結果等を含んでも良い。
【0033】
また、取得機能151は、NWインタフェース110を介して、入力端末200から、患者によって入力された申告情報を取得する。
【0034】
申告情報は、治療薬の副作用の症状および該症状の発生時期に関する患者の主観的な情報である。本実施形態においては、申告情報は、患者自身が入力端末200から入力することによって自己申告される。一例として、申告情報は、副作用の症状の内容と、症状の強さの程度と、日付とを対応付けた情報である。
【0035】
申告情報は、一例として、患者の精神的または感覚的な情報を含む。本実施形態においては、申告情報は、「精神的に辛い」、「食欲がない」、「眠気がある」、および「身体がむくむ」という副作用のうち、少なくとも1つを含む。なお、申告情報の対象となる副作用はこれらに限定されるものではない。なお、申告情報は、患者の主訴を含んでも良い。
【0036】
また、取得機能151は、入力インタフェース130を介して、ユーザによって入力された患者の属性情報を取得する。あるいは、取得機能151は、NWインタフェース110を介して、不図示の電子カルテシステムから患者の属性情報を取得しても良い。
【0037】
患者の属性情報は、例えば、患者の年齢、性別、体格、BMI(Body Mass Index)、癌の種類、癌のステージ、抗がん剤による治療開始時のバイタルデータ、または持病のうちの少なくとも1つを含む。なお、患者の属性情報は、さらに他の情報を含んでも良い。
【0038】
なお、生体情報、申告情報、および属性情報は、それぞれ、患者を特定可能な識別情報と対応付けられた状態で取得される。識別情報は、例えば、患者IDまたは患者氏名等である。
【0039】
取得機能151は、取得した生体情報、申告情報、および属性情報を、患者の識別情報と対応付けて、記憶回路120に保存する。
【0040】
なお、本実施形態においては、取得機能151は、生体情報と申告情報の両方を取得するものとして説明するが、取得機能151は、生体情報と申告情報のいずれか一方のみを取得しても良い。すなわち、取得機能151は、生体情報と申告情報の少なくとも何れか一方と、前記患者の属性情報とを取得するものとする。
【0041】
また、取得機能151は、入力インタフェース130を介して、ユーザの操作によって入力された患者の副作用に関する分析結果を取得する。
【0042】
本実施形態において、分析結果は、前回の投与期間における患者の実際の副作用の症状および該症状の発生時期に関して、医師が分析した結果である。分析結果は、医師が自然文で入力したものでも良いし、予め用意された候補から医師が選択したものでも良い。なお、分析結果の具体例については後述する。
【0043】
取得機能151は、取得した分析結果を、生成機能153に送出する。
【0044】
また、取得機能151は、入力インタフェース130を介して、副作用に対処するための処置の内容および時期についてのユーザによる変更を取得する。該変更は、例えば、後述の出力機能154によってディスプレイ140に表示された、次回の投与期間における副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案に対する変更である。取得機能151は取得した変更の内容を、出力機能154および登録機能155に送出する。
【0045】
予測機能152は、生体情報または申告情報と、患者の属性情報とに基づいて、治療薬の次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。
【0046】
より詳細には、予測機能152は、患者の生体情報または申告情報と、該患者の属性情報とに基づいて特定された類似患者における副作用の経過に関する情報と、に基づいて、治療薬の次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。
【0047】
予測機能152によって予測された次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期は、本実施形態における予測結果の一例である。
【0048】
類似患者は、治療薬の投与対象の患者と同じ治療薬を過去に投与された他の患者のうち、今回の投与対象の患者と属性情報が類似する患者である。より詳細には、類似患者は、年齢、性別、体格、BMI、癌の種類、癌のステージ、治療薬による治療開始時のバイタルデータ、または持病のうちの少なくとも1つが、治療薬の投与対象の患者と共通する。なお、類似患者は、今回の投与対象の患者と完全に同一の治療薬を投与された患者に限定されるものではなく、今回の治療薬に副作用が類似する他の治療薬が投与された患者でも良い。
【0049】
類似患者における副作用の経過に関する情報は、類似患者の生体情報または申告情報である。以下、過去における類似患者の生体情報または申告情報を、類似患者情報という。
【0050】
類似患者情報は、例えば、過去における治療薬の投与対象の患者の生体情報または申告情報の実績が記憶回路120に記憶されたものでも良い。一例として、記憶回路120は、今回の治療の対象の患者と過去に治療された患者についての情報が蓄積されたデータベースを備える。該データベースは、今回の治療計画の対象の患者および過去に治療された他の患者の識別情報、生体情報、および申告情報を記憶する。また、類似患者情報は、今回の治療の対象の患者の生体情報および申告情報とは異なる手法で取得された情報であっても良い。例えば、類似患者情報は、電子カルテシステム等から取得された過去の治療実績でも良い。
【0051】
例えば、予測機能152は、記憶回路120から、複数の類似患者情報を抽出し、抽出した複数の類似患者の副作用の症状および該症状の発生時期を平均化した結果を、患者の副作用の症状および該症状の発生時期の予測結果としても良い。あるいは、予測機能152は、記憶回路120に生体情報または申告情報が登録された過去に投薬を受けた患者のうち、今回の患者と属性情報が最も類似する1人の類似患者の類似患者情報を、患者の副作用の症状および該症状の発生時期の予測結果としても良い。
【0052】
また、予測機能152は、今回の治療薬の投与対象の患者の次回の投与期間と同じ回の投与期間における類似患者情報を、予測に使用する。例えば、患者に対する治療薬の投与がこれから開始される場合、次回の投与期間は1回目の投与期間である。この場合、予測機能152は、該患者に類似する過去の患者の1回目の投与期間における生体情報または申告情報を、予測に使用する類似患者情報として記憶回路120から抽出する。
【0053】
なお、予測機能152による患者の副作用の症状および該症状の発生時期の予測の手法は、上述の手法に限定されるものではない。例えば、予測機能152は、過去に投薬を受けた患者の属性情報と、該患者の生体情報または申告情報と、が対応付けられた学習済みモデルによって患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測しても良い。学習済みモデルは、例えば、ニューラルネットワーク等のディープラーニング(深層学習)によって生成された学習済みモデルとする。ディープラーニングの手法としては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)などを適用することができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
抗がん剤の副作用の現れる時期、症状の重さ、および症状の持続時間等の特徴には個人差があるが、属性情報が類似する患者同士であれば、これらの特徴が類似する可能性が高い。このため、予測機能152は、類似患者情報から、次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。
【0055】
また、本実施形態においては、予測機能152は、2回目以降の投与期間については、基本的に、類似患者情報ではなく、患者本人の前回の投与期間における生体情報または申告情報を、次回の投与期間における予測結果として使用する。これは、抗がん剤の副作用の特性として、一般に、同一人物に複数回の投与期間にわたって抗がん剤が投与される場合、各投与期間における副作用の症状が現れる時期、症状の重さ、および症状の持続時間が類似するからである。
【0056】
ただし、当該特性は全ての患者に当てはまるわけではなく、同一人物であっても、異なる投与期間における副作用の現れる時期、症状の重さ、および症状の持続時間等が大きく異なる場合もある。
【0057】
このため、予測機能152は、前回の投与期間における患者の実際の副作用の症状または該症状の発生時期が、前々回の投与期間における患者の実際の副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準以上異なっていた場合は、類似患者情報に基づいて、次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。
【0058】
つまり、この場合、予測機能152は、類似患者における副作用の経過に関する情報に基づいて、次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。なお、予測機能152は、類似患者の条件として、投与期間間で副作用の症状または該症状の発生時期の変化が基準以上であったことを追加しても良い。例えば、前回の投与期間が2回目、前々回の投与期間が1回目である場合、予測機能152は、投与対象の患者と属性情報が類似する過去の患者のうち、1回目の投与期間と2回目の投与期間で副作用の症状または該症状の発生時期の変化が基準以上であった者を、類似患者としても良い。
【0059】
また、予測機能152は、前回の投与期間における患者の実際の副作用の症状および該症状の発生時期が、前々回の投与期間における前記患者の実際の前記副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準よりも異なっていなかった場合、患者自身の前回の生体情報または申告情報に基づいて、次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。つまり、この場合、予測機能152は、前回の投与期間における患者自身の実際の副作用の症状および該症状の発生時期に基づいて、次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。
【0060】
なお、予測機能152は、前回の投与期間における患者自身の実際の副作用の症状および該症状の発生時期をそのまま次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期の予測結果として採用しても良いし、投与期間の回数を重ねることによる副作用の症状の悪化を加味して予測結果を生成しても良い。例えば、抗がん剤の投与量が変わらなくとも、投与回数を重ねるごとに、患者の体力の低下、身体への負荷の蓄積等によって副作用の症状の度合が強くなる場合がある。このため、予測機能152は、前回の投与期間における症状よりも、次回の投与期間における症状の度合が強くなるように予測しても良い。また、予測機能152は、前回の投与期間における症状の持続期間よりも、次回の投与期間における症状の持続期間が長くなるように予測しても良い。
【0061】
類似患者情報と、患者自身の前回の生体情報または申告情報のいずれを予測に用いるかの基準は、特に限定されるものではない。また、類似患者情報と、患者自身の前回の生体情報または申告情報のいずれを予測に用いるかは、ユーザによって決定されても良い。
【0062】
また、予測機能152は、予測結果を、生成機能153および出力機能154に出力する。
【0063】
生成機能153は、生体情報または申告情報と、予測機能152による予測結果とに基づいて、次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を生成する。副作用に対処するとは、例えば、副作用の症状の悪化を未然に防ぐ、あるいは、副作用の症状の悪化を緩和することである。
【0064】
副作用に対処するための処置は、医療的な治療に限定されるものではない。例えば、治療以外の対処の一例として、「身体がむくむ」という副作用がある場合には、脚のむくみを軽減するための着圧ソックスを患者に履かせることがある。また、「精神的に辛い」という副作用がある場合には、面会を制限するという対処がある。また、医療的な対処の例としては投薬がある。例えば、副作用が発熱である場合には、解熱剤の投与が対処の一例となる。また、対処には、抗がん剤の投与量の変更、または投与される抗がん剤の種類の変更も含まれる。
【0065】
例えば、生成機能153は、前回の投与期間における患者の実際の副作用の症状および該症状の発生時期に関する分析結果と、前回の投与期間における患者の生体情報または申告情報とに基づいて、対処についての提案を生成する。
【0066】
なお、分析結果が医師によって自然文で入力される場合には、生成機能153は、該自然文を構造化データに変換する機能を含む。自然文を構造化データに変換する機能は、例えば、ディープラーニングによる学習済モデルが採用されても良いが、これに限定されるものではない。
【0067】
本実施形態においては、生成機能153は、取得機能151によって取得された医師による分析結果を、提案の生成に使用する。また、前回の投与期間における患者の生体情報または申告情報は、前回の投与期間における患者の実際の副作用の症状および該症状の発生時期を表す。
【0068】
例えば、生成機能153は、分析結果と、生体情報または申告情報と、次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期とが対応付けられた学習済みモデルに、分析結果と、生体情報または申告情報とを入力することにより、次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期とを出力しても良い。なお、提案の生成手法はこれに限定されるものではない。例えば、生成機能153は、分析結果と、生体情報または申告情報と、次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期とが対応付けられたデータベース等を使用しても良い。
【0069】
生成機能153は、生成した提案を、出力機能154および登録機能155に送出する。
【0070】
出力機能154は、次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を出力する。当該提案は、生成機能153によって生成された提案であり、生体情報または申告情報と、予測機能152による予測結果とに基づく。なお、本実施形態において、「出力」という場合、ディスプレイ140等の表示部に情報を表示させること、または他の情報処理装置等に情報を出力することを含む。本実施形態においては、出力の一例として、ディスプレイ140に情報を表示させることを説明するが、出力の方式はこれに限定されるものではない。
【0071】
また、出力機能154は、予測機能152による予測結果を、患者の生体情報または申告情報と比較可能に時系列にディスプレイ140に表示させる。患者の生体情報または申告情報は、患者の実際の副作用の症状および該症状の発生時期を示す。
【0072】
例えば、出力機能154は、予測機能152によって予測された副作用の症状および該症状の発生時期と、前回の投与期間における患者の実際の副作用の症状および該症状の発生時期とを比較可能にディスプレイ140に表示させる。
【0073】
具体的には、出力機能154は、ディスプレイ140に、医師が次回の投与期間における投与計画の生成をすることを支援する投与計画サポート画面を表示させる。
【0074】
図2は、本実施形態に係る投与計画サポート画面の一例を示す図である。
図2に示すように、投与計画サポート画面は、ディスプレイ140に表示される。投与計画サポート画面は、一例として、第1エリア61と、第2エリア62と、リストボックス71とを含む。また、
図2では、1回目の投与期間の終了後、2回目の投与期間における投与計画を立てる時点の投与計画サポート画面を示す。
【0075】
リストボックス71は、表示対象の生体情報または申告情報をユーザが選択可能な操作部である。
図2に示す例では、生体情報の1つである「体温」がユーザによって選択されている。
【0076】
なお、リストボックス71は、副作用の種類を選択可能な操作部であっても良い。この場合、例えば「発熱」等の副作用の種類が選択肢であっても良い。また、表示対象の生体情報または申告情報、あるいは副作用の種類をユーザが選択する手段は、リストボックス71に限定されるものではなく、例えばメニュー画面や検索画面であっても良い。
【0077】
図2では、各投与期間の開始から2日目の時点で抗がん剤が患者に投与されるものとする。
【0078】
第1エリア61は、過去の投与期間における副作用に関する情報が表示される画面領域である。また、第2エリア62は、次回の投与期間における副作用に関する情報が表示される画面領域である。
【0079】
より詳細には、出力機能154は、予測された副作用の症状および該症状の発生時期と、前回の投与期間における患者の実際の副作用の症状および該症状の発生時期とを時系列に比較可能に、第1エリア61に表示する。つまり、第1エリア61には、前回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期の予測と実績が表示される。
図2では前回の投与期間は1回目の投与期間であるため、1回目の投与期間における予測と実績が比較可能に時系列に表示される。
【0080】
図2の第1エリア61に表示される予測値は、予測機能152によって類似患者情報から予測されたものである。
【0081】
また、第2エリア62には、次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期の予測結果が表示される。また、上述のように、予測機能152は、2回目以降の投与期間については、基本的に、類似患者情報ではなく、患者本人の前回の投与期間における生体情報または申告情報を、次回の投与期間における予測結果として使用する。このため、
図2に示す第2エリア62には、患者本人の1回目の投与期間における副作用の症状および該症状の発生時期の実績が表示される。
【0082】
図2の第1エリア61および第2エリア62に示すグラフの縦軸は症状の程度、横軸は時間を示す。
図2ではリストボックス71で「体温」が選択されているため、第1エリア61および第2エリア62に示すグラフは、患者の生体情報のうち、体温の値の時系列の推移を示す。この場合、縦軸の「症状」は、発熱の度合を示す体温の値である。また、横軸の時間は、投与期間における日数を示す。
【0083】
具体的には、
図2の第1エリア61に示すグラフは、1回目の投与期間における患者の日別の体温の計測結果の実績値と、1回目の投与期間の開始前に予測された患者の日別の体温の計測結果の予測値とを示す。
【0084】
また、第2エリア62に示すグラフは、1回目の投与期間における患者の日別の体温の計測結果の実績値を示す。
【0085】
なお、1回目の投与期間の開始前の場合は、まだ実績が存在しないため、第1エリア61には類似患者情報から生成された予測値のみが表示される。また、この場合、第2エリア62にも、類似患者情報から生成された予測値が表示される。あるいは、1回目の投与期間の開始前の場合は、投与計画サポート画面には第2エリア62のみが表示されても良い。
【0086】
また、第1エリア61には、前回の投与期間における患者の実際の副作用の症状および該症状の発生時期に関する分析結果が表示される。
図2に示す例では、分析結果は「予測より高熱になる」および「予測より高熱の持続期間が長い」である。当該分析結果は、例えば、ユーザである医師が、第1エリア61に表示された予測値と実績値のグラフを参照して入力した結果である。
【0087】
分析結果は、医師が自然文で入力したものでも良いし、予め用意された候補から医師が選択したものでも良い。例えば、出力機能154は、分析結果の候補をプルダウンして表示し、医師が分析結果を選択可能な選択欄を投与計画サポート画面に設けても良い。
【0088】
また、第2エリア62には、次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案が表示される。当該提案は、例えば、第1エリア61の分析結果欄に入力された分析結果に基づいて、生成機能153が生成した提案である。
図2に示す例では、抗がん剤投与から2日後、7日後に解熱剤を処方することが提案されている。すなわち、
図2における処置の内容は「解熱剤の処方」であり、処置の時期は「抗がん剤投与から2日後および7日後」である。
【0089】
また、出力機能154は、前回の投与期間における患者の副作用の症状の時系列の推移、または、予測結果に基づく患者の副作用の症状の時系列の推移に、提案における処置の時期を重畳してディスプレイ140に表示させる。例えば、
図2に示すように、出力機能154は、第2エリア62のグラフ上に重畳して、処置の内容および時期を表示させても良い。当該表示は、本実施形態における次回の投与期間における治療計画の一例である。
【0090】
生成機能153は、上述のように、例えば学習済みモデルを使用して処方する薬および処方時期を決定しても良い。また、「予測より高熱になる」および「予測より高熱の持続期間が長い」という分析結果と、「解熱剤の処方」とが予め対応付けられて記憶回路120に記憶されていても良い。また、解熱剤の処方の時期は、例えば、第2エリア62に表示される予測値のグラフ上の熱がピークとなる時期を基準として決定される。
【0091】
なお、
図2では、熱がピークになる時期と解熱剤の処方の時期とが一致しているが、高熱がピークになると予測される時点から、解熱剤の効果が出るまでのタイムラグを引いた時期が解熱剤の処方の時期であっても良い。
【0092】
また、ユーザは、投与計画サポート画面に表示された提案を変更することができる。例えば、ユーザは、第2エリア62に文章で表示された提案の「解熱剤」、「2日後、7日後」という処置の内容または時期を変更しても良い。また、ユーザが第2エリア62に表示されたグラフ上の処置の表示を、ユーザがドラッグアンドドロップで移動させることにより、提案を変更してもよい。
【0093】
また、次に、3回目以降の投与期間を対象とする場合の投与計画サポート画面について説明する。
【0094】
図3は、本実施形態に係る投与計画サポート画面の他の一例を示す図である。
図3では、2回目の投与期間の終了後、3回目の投与期間における投与計画を立てる時点の投与計画サポート画面を示す。
【0095】
既に2回以上の投与期間が経過している場合、
図3に示すように、第1エリア61には、前々回と前回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期の実績が時系列に比較可能に表示される。
【0096】
ここで、
図3に示す例では、2回目の投与期間における患者の実際の副作用の症状または該症状の発生時期が、1回目の投与期間における患者の実際の副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準以上異なっているものとする。この場合、上述のように、予測機能152は、患者本人の前回の投与期間における実績ではなく、類似患者における副作用の経過に関する情報に基づいて、3回目の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。この場合、出力機能154は、
図3に示すように、類似患者情報に基づく、3回目の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期の予測結果を第2エリア62に表示させる。
【0097】
また、2回目の投与期間における患者の実際の副作用の症状または該症状の発生時期が、1回目の投与期間における患者の実際の副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準以上異なっていない場合は、出力機能154は、2回の投与期間における患者自身の実際の副作用の症状および該症状の発生時期の実測値に基づく予測結果を、第2エリア62に表示させる。
【0098】
また、出力機能154は、3回目以降の投与期間の計画についても、
図2で説明した2回目の投与期間の計画と同様に、分析結果に基づく提案を表示させる。
【0099】
図2、3では生体情報に基づく副作用の例について説明したが、申告情報に基づく副作用の例について、
図4を用いて説明する。
【0100】
図4は、本実施形態に係る申告情報に基づく副作用を表示した投与計画サポート画面の一例を示す図である。
図4は、1回目の投与期間の終了後、2回目の投与期間における投与計画を立てる時点の投与計画サポート画面を示す。
【0101】
図4に示す例では、「精神的に辛い」という副作用が、ユーザによって表示対象としてリストボックス71で選択されている。
【0102】
図4では、第1エリア61には、1回目の投与期間における「精神的に辛い」という副作用についての患者による申告情報の実績が時系列に表示されている。より詳細には、
図4の第1のエリアに示すグラフは、日別の精神的な辛さの程度を示す。分析結果に示すように、
図4の1回目の投与期間では、患者の精神的な辛さは、抗がん剤の投与から4日目にピークを迎え、一度低下した後に、6日目に再度ピークを迎えている。
【0103】
なお、
図4に示す例では、第1エリア61には、申告情報の実績値のみを表示しているが、予測値についても表示しても良い。あるいは、予測機能152は、申告情報については、予測を生成しないものとしても良い。
【0104】
また、第2エリア62には、次回の投与期間における患者の申告情報に基づく副作用の症状の発生時期の予測結果が表示される。
図4に示す例では、第2エリア62には、患者本人の1回目の投与期間における副作用の症状および該症状の発生時期の実績が、2回目の投与期間における予測値として表示される。なお、出力機能154は、投与期間の回数を重ねることによる副作用の症状の悪化が予測機能152によって加味された予測結果を、第2エリア62に表示させても良い。
【0105】
図4に示す例では、出力機能154は、生成機能153によって生成された、2回目の投与期間における処置として、患者の精神的な辛さがピークとなると予測された日の面会を制限する提案を表示している。当該提案についてもユーザによる変更が可能である。
【0106】
また、出力機能154は、後述のレジメン画面をディスプレイ140に表示させる。レジメン画面は、レジメン計画書の閲覧または編集画面である。
【0107】
図1に戻り、登録機能155は、提案に基づく治療計画を、抗がん剤の投与に関するレジメン計画書に登録する。ここで、治療計画とは、次回の投与期間における副作用に対処するための処置の内容および時期である。また、ユーザによって提案が変更された場合は、登録機能155は、ユーザによって変更された処置の内容または時期を、レジメン計画書に登録する。
【0108】
レジメン計画書は、治療に使用するすべての薬剤の投与を組み合わせた時系列的な治療計画書である。なお、レジメン計画書は、単にレジメンとも呼ばれる。一般に、患者に抗がん剤が投与される場合は、医師は、レジメン計画書を使用して治療計画を立てる。癌の種類やステージに応じて標準的な治療計画がガイドラインとして定められているが、患者個人ごとに、医師が治療計画を調整し、各患者向けのレジメン計画書を作成する。本実施形態の投与計画支援装置100は、医師によるレジメン計画書の作成を支援する。
【0109】
より詳細には、登録機能155は、ガイドラインに基づいて生成されたレジメン計画書を、生成機能153によって生成された提案、または該提案をユーザが変更した結果に基づいて更新する。
【0110】
図5は、実施形態に係るレジメン計画書への治療計画の反映について説明する図である。
図5では、出力機能154によってレジメン画面80がディスプレイ140に表示されている。
【0111】
図5に示すように、登録機能155は、投与計画サポート画面で提案または変更された、次回の投与期間において副作用に対処するための処置の内容および時期をレジメン計画書に反映する。具体的には、
図5では、登録機能155は、解熱剤を、抗がん剤の投与から2日後、および7日後に投与する計画がレジメン計画書に追加する。登録機能155によって提案が反映されたレジメン計画書は、記憶回路120に保存される。
【0112】
また、レジメン画面上で、ユーザが、治療計画を変更することも可能である。例えば、ユーザは、解熱剤の処方時期を、レジメン画面80上でドラッグアンドドロップ操作によって移動しても良い。また、ユーザは、処方される薬を、レジメン画面80上のリストボックス72から選択して変更または追加しても良い。
【0113】
【0114】
入力端末200は、NWインタフェース210と、記憶回路220と、入力インタフェース230と、ディスプレイ240と、処理回路250とを備える。
【0115】
処理回路250は、記憶回路220からプログラムを読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。本実施形態の処理回路250は、表示制御機能251、受付機能252、および送信機能253を備える。表示制御機能251は、表示制御部の一例である。受付機能252は、受付部の一例である。送信機能253は、送信部の一例である。
【0116】
ここで、例えば、処理回路250の構成要素である表示制御機能251、受付機能252、および送信機能253の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路220に記憶されている。処理回路250は、プロセッサである。例えば、処理回路250は、プログラムを記憶回路220から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路250は、
図1の処理回路250内に示された各機能を有することとなる。なお、
図1においては単一のプロセッサに表示制御機能251、受付機能252、および送信機能253にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路250を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、
図1においては単一の記憶回路220が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路250は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0117】
表示制御機能251は、患者が申告情報を入力可能な入力画面を、ディスプレイ240に表示させる。
【0118】
図6は、本実施形態に係る申告情報の入力画面の一例を示す図である。
図6に示す例では、表示制御機能251は、「精神的に辛い」、「食欲がない」、および「眠気がある」、副作用について、その日におけるそれぞれの症状の重さの程度を、5段階で入力可能な入力画面を表示する。なお、入力画面のレイアウトおよび症状の重さの程度の評価手法は、
図6に示す例に限定されるものではない。
【0119】
図1に戻り、受付機能252は、患者Pによる申告情報の入力を受け付ける。例えば、
図6に示した入力画面から入力された副作用の種類ごとの症状の重さの程度と、入力日とを、申告情報として受け付ける。
【0120】
受付機能252は、受け付けた申告情報を、送信機能253に送出する。
【0121】
送信機能253は、受付機能252によって受け付けられた申告情報を、投与計画支援装置100に送信する。
【0122】
なお、
図6に示すように、患者Pには生体情報取得装置300が装着される。上述のように、生体情報取得装置300は、例えば、体温計、血圧計、またはパルスオキシメータ等である。生体情報取得装置300は、患者Pを計測することによって得た生体情報を、例えばネットワークNを介して投与計画支援装置100に送信する。なお、生体情報取得装置300から投与計画支援装置100への生体情報の送信手法は、特に限定されるものではない。
【0123】
次に、以上のように構成された投与計画支援装置100で実行される処理の流れについて説明する。
【0124】
図7は、本実施形態に係る投与計画サポート処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0125】
まず、取得機能151は、患者Pの属性情報、生体情報、および申告情報を取得する(S1)。取得機能151は、取得した患者Pの属性情報、生体情報、および申告情報を、患者Pの識別情報と対応付けて、記憶回路120に保存する。
【0126】
次に、予測機能152は、取得された患者Pの属性情報に基づいて、記憶回路120から、類似患者情報を抽出する。予測機能152は、該類似患者情報に基づいて、次回の投与期間における副作用の推移を予測する(S2)。予測機能152は、予測結果を、生成機能153および出力機能154に出力する。
【0127】
次に、出力機能154は、次回の投与期間が1回目であるか否かを判定する(S3)。例えば、出力機能154は、記憶回路120に保存されたレジメン計画書またはその他の記録に基づいて、既に完了した投与期間の数を計数することにより、次回の投与期間の回数を算出する。
【0128】
出力機能154は、次回の投与期間が1回目であると判定した場合(S3“Yes”)、予測機能152による、次回の投与期間における副作用の推移の予測を出力する(S4)。例えば、出力機能154は、ディスプレイ140に、投与計画サポート画面を表示させる。この場合は、次回の投与期間が1回目である場合はまだ実績が存在しないため、投与計画サポート画面の第1エリア61には類似患者情報から生成された予測値のみが表示される。また、この場合、第2エリア62にも、類似患者情報から生成された予測値が表示される。あるいは、この場合、出力機能154は、投与計画サポート画面には第2エリア62のみを表示し、第1エリア61は表示しなくても良い。S4の処理の後は、S16の処理に進む。
【0129】
また、出力機能154は、次回の投与期間が1回目ではないと判定した場合(S3“No”)、次回の投与期間が2回目か否かを判定する(S5)。
【0130】
出力機能154は、次回の投与期間が2回目であると判定した場合(S5“Yes”)、前回の投与期間における副作用の推移の予測および実績と、次回の投与期間における副作用の推移の予測を出力する(S6)。例えば、出力機能154は、
図2で説明したように、投与計画サポート画面の第1エリア61に1回目の投与期間における副作用の推移の予測および実績を表示させ、第2エリア62に2回の投与期間における副作用の推移の予測を表示させる。
【0131】
次に、取得機能151は、ユーザによる分析結果を取得する(S7)。例えば、取得機能151は、投与計画サポート画面の第1エリア61に、ユーザによって入力された分析結果を取得する。
【0132】
そして、生成機能153は、次回の投与期間において副作用に対処するための処置についての提案を生成する(S8)。副作用に対処するための処置についての提案は、処置の内容および時期に関する提案である。例えば、生成機能153は、S7de取得された分析結果と、1回目の投与期間における患者Pの生体情報または申告情報とに基づいて、対処についての提案を生成する。
【0133】
次に、出力機能154は、生成機能153によって生成された提案を出力する(S9)。具体的には、出力機能154は、生成機能153によって生成された提案を投与計画サポート画面の第2エリア62に表示させる。
【0134】
次に、取得機能151は、ユーザによって提案が変更されたか否かを判定する(S10)。
【0135】
ユーザによって提案を変更する操作がされた場合には(S10“Yes”)、取得機能151は、該変更内容を取得する。生成機能153は、取得機能151によって取得された変更内容に基づいて、投与計画サポート画面の第2エリア62に、変更を反映する(S11)。S11の処理の後は、S16の処理に進む。
【0136】
また、ユーザによって提案が変更されなかった場合(S10“No”)、例えば、生成機能153によって生成された提案をユーザが承認する操作を実行した場合は、S16の処理に進む。
【0137】
また、出力機能154が次回の投与期間が2回目ではないと判定した場合(S5“No”)、予測機能152は、前々回と前回の投与期間における副作用の推移の差異が、基準以上か否かを判定する(S12)。
【0138】
予測機能152は、前々回と前回の投与期間における副作用の推移の差異が、基準より小さいと判定した場合(S12“No”)、前回の投与期間における患者P自身の実際の副作用の症状および該症状の発生時期に基づいて、次回の投与期間における患者Pの副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。
【0139】
この場合、出力機能154は、前々回および前回の投与期間における副作用の推移の実績と、次回の投与期間における副作用の推移の予測を出力する(S13)。この場合の次回の投与期間における副作用の推移の予測は、患者P自身の実際の副作用の症状および該症状の発生時期に基づく予測である。例えば、出力機能154は、投与計画サポート画面の第1エリア61に、前々回および前回の投与期間における副作用の推移の実績を表示させる。また、出力機能154は、投与計画サポート画面の第2エリア62に、次回の投与期間における副作用の推移の予測を表示させる。S13の処理の後は、上述のS7の処理に進む。
【0140】
また、予測機能152は、前々回と前回の投与期間における副作用の推移の差異が、基準以上であると判定した場合(S12“Yes”)、類似患者情報に基づいて、次回の投与期間における副作用の推移を予測する(S14)。
【0141】
そして、出力機能154は、前々回および前回の投与期間における副作用の推移の実績と、次回の投与期間における副作用の推移の予測を出力する(S15)。例えば、出力機能154は、
図3で説明したように、投与計画サポート画面の第1エリア61に、前々回および前回の投与期間における副作用の推移の実績を表示させる。また、出力機能154は、投与計画サポート画面の第2エリア62に、次回の投与期間における副作用の推移の予測を表示させる。S15の処理の後は、上述のS7の処理に進む。
【0142】
そして、登録機能155は、生成機能153によって生成された提案に含まれる処置の内容および時期をレジメン計画書に登録する(S16)。また、ユーザによって該提案が変更された場合は、登録機能155は、ユーザによって変更された処置の内容または時期を、レジメン計画書に登録する。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
【0143】
このように、本実施形態の投与計画支援装置100は、患者Pの生体情報、および申告情報のうちの少なくとも何れか一方と、患者Pの属性情報とを取得し、患者Pの生体情報または申告情報に基づく、副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を出力する。このため、本実施形態によれば、医師が、当該提案に基づく、副作用に対処するための処置を抗がん剤の投与の治療計画に組み込むことを支援することにより、患者P個人の副作用を考慮した治療計画の作成を支援することができる。
【0144】
例えば、医師等が次回の投与期間における治療計画を立てる場合、前回の投与期間における患者Pの検査結果や自己申告された副作用の症状に基づいて、レジメン計画書を更新する。過去の記録を参照しながら副作用に対処するための処置の内容および時期を適切に設定することは、専門的なトレーニングや経験が必要とされる作業であり、容易ではない。本実施形態の投与計画支援装置100によれば、患者Pに合わせて、副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を出力するため、医師による処置の内容および時期に関する検討作業の負荷を軽減することができる。
【0145】
また、本実施形態の投与計画支援装置100は、類似患者情報に基づく副作用の症状および該症状の発生時期の予測結果と、患者Pの生体情報または申告情報と該予測結果とに基づく、副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を出力する。一般に、抗がん剤の副作用の現れる時期、症状の重さ、および症状の持続時間等の特徴には個人差があるが、属性情報が類似する患者同士であれば、これらの特徴が類似する可能性が高い。このため、本実施形態によれば、類似患者情報を利用することにより、患者P個人の副作用を考慮した治療計画の作成を支援することができる。
【0146】
また、本実施形態において、治療薬は、複数回に亘って、規定の長さの投与期間ごとに定期的に患者Pに投与される薬剤である。本実施形態の投与計画支援装置100は、このような治療薬が投与される場合に、類似患者情報または患者Pの前回の投与期間における生体情報または申告情報に基づいて、次回の投与期間における患者Pの副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。このため、本実施形態の投与計画支援装置100によれば、医師が、各投与期間が開始する前に、都度、副作用を考慮した計画を立てることを支援することができる。
【0147】
また、本実施形態の投与計画支援装置100は、前回の投与期間における患者Pの副作用に関する分析結果と、前回の投与期間における患者Pの副作用の症状および該症状の発生時期とに基づいて副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を生成する。また、本実施形態の投与計画支援装置100は、該提案を、前回の投与期間における患者Pの実際の副作用の症状の時系列の推移、または、予測結果に基づく患者Pの副作用の症状の時系列の推移に、上記の提案における処置の時期を重畳した結果を、次回の投与期間における治療計画として表示する。このため、本実施形態の投与計画支援装置100によれば、医師が、次回の投与期間における患者Pの副作用に対処するための処置の内容および時期を、患者Pの副作用の予測値と合わせて検討することを容易にすることができる。
【0148】
また、本実施形態の分析結果は、前回の投与期間における患者Pの副作用の症状および該症状の発生時期に関する医師による分析に基づく。このため、本実施形態の投与計画支援装置100によれば、医師の判断を反映した提案を生成することができる。
【0149】
また、本実施形態の投与計画支援装置100は、前回の投与期間における患者Pの副作用の症状または該症状の発生時期が、前々回の投与期間における患者Pの副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準以上異なっていた場合、類似患者における副作用の経過に関する情報に基づいて、次回の投与期間における患者Pの副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。このため、本実施形態の投与計画支援装置100によれば、患者P自身の過去の情報から次回の投与期間における患者Pの副作用の症状についての予測が困難な場合でも、類似患者に基づいて次回の投与期間における患者Pの副作用を予測することにより、医師が次回の投与期間の治療計画を立てることを支援することができる。
【0150】
また、本実施形態の投与計画支援装置100は、前回の投与期間における患者Pの副作用の症状または該症状の発生時期が、前々回の投与期間における患者Pの副作用の症状または該症状の発生時期と規定の基準よりも異なっていなかった場合、前回の投与期間における患者Pの副作用の症状および該症状の発生時期に基づいて、次回の投与期間における患者の副作用の症状および該症状の発生時期を予測する。抗がん剤の副作用の特性として、一般に、同一人物に複数回の投与期間にわたって抗がん剤が投与される場合、各投与期間における副作用の症状が現れる時期、症状の重さ、および症状の持続時間が類似する。このため、本実施形態の投与計画支援装置100によれば、患者P自身の前回の投与期間における副作用に関する情報を有効に使用して、次回の投与期間における患者Pの副作用を高精度に予測することができる。
【0151】
また、本実施形態の投与計画支援装置100は、副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案に基づく治療計画を、抗がん剤の投与に関する時系列的な治療計画を含むレジメン計画書に登録する。このため、本実施形態の投与計画支援装置100によれば、医師等が手作業でレジメン計画書を変更する作業を軽減することができる。
【0152】
また、本実施形態では、投与計画支援装置100が提案した処置の内容または時期は医師によって変更可能である。また、本実施形態の投与計画支援装置100は、医師によって変更された処置の内容または時期を、レジメン計画書に登録する。このため、医師は、投与計画支援装置100が提案した副作用に対処するための処置の内容および時期を、自身の判断で適宜変更することができる。
【0153】
また、本実施形態の投与計画支援システムSでは、入力端末200が、治療薬の投与対象である患者Pの申告情報の入力を受け付け、受け付けた申告情報を投与計画支援装置100に送信する。このため、本実施形態の投与計画支援システムSによれば、定量的に計測することが困難な主観的な副作用を考慮した治療計画の生成を支援することができる。
【0154】
(変形例1)
上述の実施形態では、投与計画支援装置100が1台のPC等で構成される例を説明したが、投与計画支援装置100は、複数の情報処理装置によって構成されても良い。例えば、投与計画支援装置100は、サーバ装置と、該サーバ装置とネットワーク等を介して接続するPCまたはタブレット端末等の情報処理装置とによって構成されても良い。また、投与計画支援装置100の機能の一部が、クラウド環境に設けられても良い。
【0155】
また、上述の実施形態において、入力端末200の機能として説明した各機能を、投与計画支援装置100が備えても良い。
【0156】
(変形例2)
また、上述の実施形態では、投与計画支援装置100は、生体情報と申告情報の両方を取得していたが、いずれか一方のみを取得する構成を採用しても良い。
【0157】
(変形例3)
また、上述の実施形態においては、患者Pの主観的な副作用の症状を表す情報について、申告情報を例として説明したが、さらに他の情報が患者Pの主観的な副作用の症状を表す情報として利用されても良い。
【0158】
例えば、投与計画支援装置100の取得機能151は、患者Pを看護する看護師によって記載された看護記録、または医師によって入力された電子カルテから、患者Pが訴えた症状の内容および時期、または副作用に関連する患者Pの状態を表す情報を取得しても良い。
【0159】
また、投与計画支援装置100の処理回路150は、例えば、患者Pによって入力された申告情報に含まれる症状の重さの程度を、看護記録または電子カルテの情報に基づいて推定する推定機能をさらに備えても良い。推定機能は推定部の一例である。
【0160】
例えば、副作用のうち、「食欲がない」等の主観的な症状については、患者Pの自己申告による症状の重さの正確性を評価することが容易ではない。このため、例えば、推定機能は、患者Pが「食欲がない」と入力した日における患者Pの実際の食事量を看護記録から取得し、この日における「食欲がない」という副作用の症状の重さを推定しても良い。例えば、推定機能は、患者Pの実際の食事量が減少していない場合には、患者Pが入力した「食欲がない」という副作用の症状が軽度であると推定しても良い。
【0161】
また、看護記録または電子カルテ等に、看護師または医師による聞き取りに対して患者Pが回答した副作用の症状についての記録がある場合、推定機能は、当該記録から、患者Pの主観的な副作用の症状の程度および時期を推定しても良い。例えば、推定機能は、患者Pによって入力された申告情報に含まれる副作用の症状の程度と、看護記録または電子カルテ等に記載された患者Pが看護師または医師による聞き取りに対して患者Pが回答した副作用の症状の程度が異なる場合、看護記録または電子カルテ等に記載された方の副作用の症状の程度を採用しても良い。
【0162】
また、副作用に対処するための服薬または点滴等の治療が行われたことが電子カルテに記録されている場合には、推定機能は、患者Pの副作用の症状の重症度が高いものと推定しても良い。例えば、患者Pの食事量が減少したために点滴で栄養剤が投与されたことが電子カルテに記録されている場合には、推定機能は、当該治療に関連する副作用である「食欲がない」という症状の重症度を高いものと推定しても良い。
【0163】
例えば、出力機能154は、推定機能による推定結果に基づく患者Pの副作用の症状の程度を、副作用の実績値として表示しても良い。なお、本変形例では、推定機能は、患者Pによって入力された申告情報と、看護記録または電子カルテに含まれる情報との両方に基づいて副作用の症状の程度を推定しても良いし、看護記録または電子カルテに含まれる情報のみに基づいて副作用の症状の程度を推定しても良い。看護記録または電子カルテに含まれる情報のみに基づいて副作用の症状の程度を推定する場合には、患者Pによる申告情報の入力は無くとも良い。
【0164】
また、看護記録または電子カルテに含まれる情報が自然文等の非構造化データである場合は、例えば推定機能によって構造化データに変換されても良い。例えば、症状の重さの程度が自然文で記載されている場合、推定機能は、該自然文を、症状の重さの程度を表すスコアに変換しても良い。非構造化データの構造化データへの変換には、例えばディープラーニング等によって生成された学習済みモデルを採用可能であるが、他の手法を採用しても良い。
【0165】
(変形例4)
また、上述の実施形態では、1回目の投与期間の計画の際には、投与計画サポート画面には類似患者情報から生成された予測値のみが表示されても良いと説明したが、1回目の投与期間においては、医師等は、ガイドラインに基づいて患者Pの治療を行い、投与計画サポート画面を使用しなくとも良い。この場合、医師等は、2回目の投与期間の計画の作成から、投与計画サポート画面を使用する。
【0166】
(変形例5)
また、上述の実施形態では、生成機能153は、次回の投与期間における副作用に対処するための処置についての提案を生成していたが、提案の内容はこれに限定されるものではない。
【0167】
例えば、投与計画支援装置100の取得機能151は、患者Pの生体情報または申告情報に基づいて、次回の投与期間の開始の可否、または次回の投与期間の前に実施が推奨される処置の内容を判定する判定機能をさらに備えても良い。判定機能は、判定部の一例である。
【0168】
例えば、患者Pの腹水の量、意識障害の有無、心機能の低下の程度等に基づいて、判定機能は、次回の投与期間の中止または延期をすべきであると判定しても良い。腹水の量は、例えば腹部エコー等によって計測されても良いし、医師によって電子カルテに入力された所見から取得されても良い。腹水の量は、本変形例における生体情報に含まれるものとする。
【0169】
また、判定機能は、患者Pの生体情報または申告情報に基づいて、次回の投与期間の開始前に実施すべき処置の内容を判定しても良い。例えば、患者Pの腹水の量が基準値以上である場合、判定機能は、次回の投与期間の開始前に腹水を抜くことを、実施すべき処置の内容として判定しても良い。
【0170】
本変形例において、出力機能154は、判定機能による判定結果を出力する。例えば、出力機能154は、次回の投与期間の開始の可否、または次回の投与期間の前に実施が推奨される処置の内容を、ディスプレイ140に表示させても良い。
【0171】
なお、判定機能の処理は、生成機能153の機能として実現されても良い。例えば、生成機能153は、患者Pの生体情報または申告情報に基づいて、次回の投与期間の中止または延期の提案を生成しても良い。また、生成機能153は、患者Pの生体情報または申告情報に基づいて、次回の投与期間の開始前に実施すべき処置についての提案を生成しても良い。
【0172】
(変形例6)
また、上述の実施形態では、分析結果は医師によって分析された結果であるものとしたが、分析結果はこれに限定されない。
【0173】
例えば、投与計画支援装置100の処理回路150は、前回の投与期間における患者Pの副作用の症状および該症状の発生時期に関する分析をする分析機能をさらに備えても良い。分析機能は分析部の一例である。
【0174】
例えば、分析機能は、前回の投与期間における副作用の症状の程度または時期について、予測と実績の差異を、分析結果として生成しても良い。また、分析機能は、前々回の投与期間における副作用の症状の程度または時期と、前回の投与期間における副作用の症状の程度または時期の差異を、分析結果として生成しても良い。
【0175】
本変形例において、生成機能153は、分析機能による分析結果に基づいて、副作用に対処するための処置の内容および時期に関する提案を生成する。
【0176】
(変形例7)
なお、申告情報の入力手段は、画面入力に限定されるものではない。例えば、入力端末200がスマートフォンである場合、患者Pは、自分の顔を撮像することにより、顔写真を入力してもよい。この場合、例えば、入力端末200の処理回路250は、該顔写真から、患者Pの黄疸の有無を判定し、投与計画支援装置100に送信しても良い。
【0177】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、患者個人の副作用を考慮した治療計画の作成を支援することができる。
【0178】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0179】
61 第1エリア
62 第2エリア
71,72 リストボックス
80 レジメン画面
100 投与計画支援装置
110 NWインタフェース
120 記憶回路
130 入力インタフェース
140 ディスプレイ
150 処理回路
151 取得機能
152 予測機能
153 生成機能
154 出力機能
155 登録機能
200 入力端末
210 NWインタフェース
220 記憶回路
230 入力インタフェース
240 ディスプレイ
250 処理回路
251 表示制御機能
252 受付機能
253 送信機能
300 生体情報取得装置
P 患者
S 投与計画支援システム