(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】操作装置及びX線診断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240725BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
(21)【出願番号】P 2020188985
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 元
(72)【発明者】
【氏名】菅原 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 洋
(72)【発明者】
【氏名】奈良部 優介
(72)【発明者】
【氏名】手塚 章夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真吾
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-206083(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121536(WO,A1)
【文献】特開2007-296177(JP,A)
【文献】特開2016-052429(JP,A)
【文献】特開2018-032130(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線診断装置におけるX線照射の操作のために使用される操作装置であって、
操作者に対して相対的に定まる位置に設定された仮想的なスイッチに対する前記操作者の操作を検出する検出部と、
前記操作の検出結果を操作対象のX線診断装置に出力する出力部と、
を備え
、
前記操作者に対して相対的に定まる位置に設定された前記仮想的なスイッチは、前記操作者による踏み操作の対象となる仮想的なフットスイッチであり、
前記検出部は、操作者の足に装着されるウェアラブルデバイスに設けられた加速度センサと圧力センサとを備えており、
前記加速度センサが、操作者の足が上方へ移動する加速度を検出した後に、下方へ移動する加速度を検出し、その後、前記圧力センサが、前記仮想的なフットスイッチにおけるペダルの位置で、閾値以上の圧力を検出した場合に、前記踏み操作がなされたと判断する、操作装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記仮想的なフットスイッチに対する前記操作者の踏み操作を検出し、
前記出力部は、前記踏み操作の検出結果を、前記X線診断装置に出力する、請求項
1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記操作装置は、操作者に装着されて、前記X線診断装置におけるX線照射の操作が行われる、請求項1
又は請求項
2に記載の操作装置。
【請求項4】
前記操作装置の位置を検出する位置検出部を、さらに備える請求項
3に記載の操作装置。
【請求項5】
前記操作者が前記仮想的なスイッチに対して操作を行う部位である対象部位の位置に基づいて、振動する振動デバイスを、さらに備える請求項1乃至請求項
4のいずれかに記載の操作装置。
【請求項6】
前記振動デバイスは、前記仮想的なスイッチの操作可能な位置に前記操作者の前記対象部位が位置する場合に振動する、請求項
5に記載の操作装置。
【請求項7】
前記仮想的なスイッチの前記操作可能な位置は、前記仮想的なスイッチのペダルの操作が可能なペダル位置及び/又は前記ペダルの上方の位置である、請求項
6に記載の操作装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記X線診断装置に設けられた操作装置制御部に、前記操作の検出結果を出力する、請求項1乃至請求項
7のいずれかに記載の操作装置。
【請求項9】
前記出力部は、前記操作装置制御部に、無線通信により、前記操作の検出結果を出力する、請求項
8に記載の操作装置。
【請求項10】
被検体にX線を照射して前記被検体の診断画像を取得するためのX線診断装置と、
前記X線診断装置におけるX線照射の操作のために使用される操作装置と、
を備えるX線診断システムであって、
前記操作装置は、
X線診断装置におけるX線照射の操作のために使用される操作装置であって、
操作者に対して相対的に定まる位置に設定された仮想的なスイッチに対する前記操作者の操作を検出する検出部と、
前記操作の検出結果を前記X線診断装置に出力する出力部と、
を備え
、
前記操作者に対して相対的に定まる位置に設定された前記仮想的なスイッチは、前記操作者による踏み操作の対象となる仮想的なフットスイッチであり、
前記検出部は、操作者の足に装着されるウェアラブルデバイスに設けられた加速度センサと圧力センサとを備えており、
前記加速度センサが、操作者の足が上方へ移動する加速度を検出した後に、下方へ移動する加速度を検出し、その後、前記圧力センサが、前記仮想的なフットスイッチにおけるペダルの位置で、閾値以上の圧力を検出した場合に、前記踏み操作がなされたと判断する、X線診断システム。
【請求項11】
前記操作装置は、操作者に装着されて、前記X線診断装置におけるX線照射の操作が行われる、請求項
10に記載のX線診断システム。
【請求項12】
前記操作装置の位置を検出する位置検出部を、さらに備える請求項
11に記載のX線診断システム。
【請求項13】
前記操作者が前記仮想的なスイッチに対して操作を行う部位である対象部位の位置に基づいて、振動する振動デバイスを、さらに備える請求項
10乃至請求項
12のいずれかに記載のX線診断システム。
【請求項14】
前記振動デバイスは、前記仮想的なスイッチの操作可能な位置に前記操作者の前記対象部位が位置する場合に振動する、請求項
13に記載のX線診断システム。
【請求項15】
前記操作者が前記仮想的なスイッチに対して操作を行う部位である対象部位と、前記仮想的なスイッチとの位置関係が、視覚的に表示される表示モニタをさらに備える、請求項
10乃至請求項
14のいずれかに記載のX線診断システム。
【請求項16】
前記仮想的なスイッチの位置が、他の周辺装置と位置的に干渉している場合には、操作者に警告がなされる、請求項
10乃至請求項
15のいずれかに記載のX線診断システム。
【請求項17】
操作者に対して相対的に定まる位置に、前記仮想的なスイッチを設定する、操作装置制御部をさらに備える、請求項
10乃至請求項
16のいずれかに記載のX線診断システム。
【請求項18】
前記操作装置制御部は、操作者毎に、前記仮想的なスイッチに関する操作設定に関する情報を保持する、請求項
17に記載のX線診断システム。
【請求項19】
X線診断装置におけるX線照射の操作のために使用される操作装置であって、
操作者に対して相対的に定まる位置に設定された仮想的なスイッチに対する前記操作者の操作を検出する検出部と、
前記操作の検出結果を操作対象のX線診断装置に出力する出力部と、
を備え
、
前記仮想的なスイッチの位置が、他の周辺装置と位置的に干渉している場合には、前記X線診断装置において操作者に警告がなされる、操作装置。
【請求項20】
被検体にX線を照射して前記被検体の診断画像を取得するためのX線診断装置と、
前記X線診断装置におけるX線照射の操作のために使用される操作装置と、
を備えるX線診断システムであって、
前記操作装置は、
X線診断装置におけるX線照射の操作のために使用される操作装置であって、
操作者に対して相対的に定まる位置に設定された仮想的なスイッチに対する前記操作者の操作を検出する検出部と、
前記操作の検出結果を前記X線診断装置に出力する出力部と、
を備え
、
前記仮想的なスイッチの位置が、他の周辺装置と位置的に干渉している場合には、操作者に警告がなされる、X線診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、操作装置及びX線診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、X線を患者である被検体に照射し、この被検体を透過したX線量をX線検出器が検出することにより、被検体の内部を観察することを可能にするモダリティである。被検体を透過するX線量は、被検体の組織によって異なることから、様々な組織をX線を用いて撮影することが可能である。このようなX線診断装置においては、操作者からX線照射を指示する入力操作を受け付けるための入力装置として、フットスイッチが利用されることがある。
【0003】
また、造影剤などを用いたX線撮影により、血流、消化管、泌尿器系など、様々な組織や器官の態様をリアルタイムに観察することが可能であり、病気の診断や手術などに幅広く利用されている。例えば、X線診断装置を用いて、操作者が被検体の血管造影検査や血管内治療の手技を実施する場合は、表示モニタに表示された透視画像を観察しながら、ガイドワイヤ、カテーテルその他の血管内治療用デバイスを血管内に誘導し、所定の位置まで挿入した上で、表示モニタを観察しながらCアームを動かして、診断部位が最適位置になるように再調整する。
【0004】
このようなX線診断装置を用いた被検体の診断や治療の手技においては、手技の適切・迅速な進行のため、操作者が表示モニタからなるべく目を離さずに手技を進行できることが好ましい。
【0005】
しかし、フットスイッチは床に配置されるため、操作者は、その位置を確認するために表示モニタから目を離して足元を見る必要がある。また、フットスイッチに設けられたペダルがドレープなどの陰に隠れてしまい、操作者から見えないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線診断装置に対する操作のたびに、操作者が表示モニタから目を離さなければならない煩雑さを解消することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態による解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る操作装置は、X線診断装置におけるX線照射の操作のために使用される操作装置であって、操作者に対して相対的に定まる位置に設定された仮想的なスイッチに対する前記操作者の操作を検出する検出部と、前記操作の検出結果を操作対象のX線診断装置に出力する出力部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るX線診断装置の全体的な構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るX線診断システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係るウェアラブルデバイスの構成の一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るX線診断システムにおいて、X線診断装置を操作する操作者の立ち位置の一例を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係るX線診断システムが設定する仮想的なフットスイッチのレイアウトの一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るX線診断システムにおけるウェアラブルデバイス制御部の処理構成を機能的に示すブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係るX線診断システムにおけるウェアラブルデバイス制御部が実行する踏み操作検出処理の処理内容の一例を説明するフローチャートを示す図である。
【
図8】
図7の踏み操作検出処理における各種信号の波形の一例を示す図であり、
図8(A)は、加速度センサの検出信号の波形を示す図であり、
図8(B)は、圧力センサの検出信号の波形を示す図であり、
図8(C)は、ウェアラブルデバイス制御部からシステム制御部へのX線出力信号の波形を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係るX線診断システムにおけるウェアラブルデバイス制御部が実行する操作可能位置検出処理の処理内容の一例を説明するフローチャートを示す図である。
【
図10】第1実施形態に係るX線診断システムにおける表示モニタに表示される、視覚的に認識可能である仮想的なフットスイッチの操作画像の一例を示す図である。
【
図11】第1実施形態に係るX線診断システムにおける表示モニタに表示される、操作者に対する警告の一例を示す図である。
【
図12】第1実施形態に係るX線診断システムにおけるウェアラブルデバイス制御部が保持するユーザ情報テーブルの構成の一例を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係るX線診断システムにおけるウェアラブルデバイス制御部が実行するペダル位置調整処理の処理内容の一例を説明するフローチャートを示す図である。
【
図14】
図13のペダル位置調整処理において、操作者が仮想的なフットスイッチの位置を調整する動作の一例を説明する図である。
【
図15】第2実施形態に係るウェアラブルデバイスの構成の一例を示す図である。
【
図16】第2実施形態に係るX線診断システムにおいて、操作者が仮想的なフットスイッチを操作する動作の一例を説明する図である。
【
図17】第3形態に係るX線診断システムにおける仮想的なフットスイッチのレイアウトの一例を示す図である。
【
図18】第3実施形態に係るX線診断システムにおけるウェアラブルデバイス制御部の構成を説明するブロック図である。
【
図19】第3実施形態に係るウェアラブルデバイス制御部において、機能切替機能を実現するための機能切替処理の処理内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、操作装置及びX線診断システムの実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合のみ行うこととする。
【0011】
〔第1実施形態〕
まず、第1実施形態に係る操作装置及びX線診断システムについて説明する。なお、以下においては、操作装置により操作される対象であるX線診断装置が循環器系の診断を行うための装置である場合を例として、全体の構成や動作を説明するが、操作装置により操作される対象が、他の部位の診断に用いられるX診断装置であってもよい。
【0012】
図1は、本実施形態に係るX線診断装置1の構成を説明する外観斜視図である。
図2は、
図1のX線診断装置1と、ウェアラブルデバイス40とを備えて構成されるX線診断システム2の構成を説明するブロック図である。
【0013】
図1に示すように、X線管装置10は、高電圧発生器12(
図2参照)により電圧を印加されて、X線を発生する。X線可動絞り14は、X線管装置10により発生されたX線の照射範囲を調整する機能を有する。具体的には、X線可動絞り14は、例えば2対の可動羽根を有しており、各対の可動羽根が開閉することで、X線の照射範囲を調整する。
【0014】
X線検出器16は、例えば、平面検出器(FPD:Flat Panel Detector)により構成されており、このX線検出器16に照射されたX線を検出する。そして、この検出したX線に基づいて、X線透視画像やX線撮影画像の画像データを生成する。この生成された画像データは、システム制御部18(
図2参照)に出力される。
【0015】
保持装置20は、把持部24を備えており、この把持部24がCアーム22を把持している。このCアーム22の一方の端部にX線管装置10が設けられており、その他方の端部にX線検出器16が設けられている。Cアーム22が湾曲した形状をなしていることから、X線検出器16はX線管装置10と対向するように取り付けられる。この結果、X線管装置10から照射されたX線を、X線検出器16は検出することが可能となる。保持装置20の把持部24は、Cアーム22を把持した状態で、矢印A方向に回転可能であり、この把持部24の回転により、この把持部24に把持されるCアーム22も矢印A方向に回転する。また、把持部24は、Cアーム22を円弧に沿った矢印B方向にスライド可能に把持している。さらに、保持装置20は、基部26を中心とする矢印C方向に回転可能である。また、X線検出器16とX線可動絞り14は、基部26における保持装置20全体の回転とは独立して、矢印C方向に回転可能である。
【0016】
寝台28は、被検体を載せた状態で、矢印D方向にスライドする天板30を備えている。また、この天板30は、矢印E方向に上下に昇降可能である。天井懸垂部32は、天井走行機構34を備えており、表示モニタ36を矢印F方向に移動可能に懸垂している。本実施形態においては、天井懸垂部32に、例えば4台の表示モニタ36が設けられている。
【0017】
また、
図2に示すように、本実施形態に係るX線診断装置1は、さらに、ウェアラブルデバイス40を追加することにより、X線診断システム2を構成する。ウェアラブルデバイス40は、操作者が身につける装置であり、本実施形態においては、例えば、操作者の右足と左足に装着される。このウェアラブルデバイス40が操作者に装着されることにより、X線診断システム2は、このX線診断装置1の操作者の動きを検出することができる。特に本実施形態においては、操作者の右足の動きと、左足の動きを検出し、操作者がX線診断装置1に対して行おうとしている操作を特定することができる。
【0018】
その一方で、本実施形態に係るX線診断装置1は、さらに、ウェアラブルデバイス制御部42を備える。ウェアラブルデバイス制御部42は、ウェアラブルデバイス40とシステム制御部18との間の通信を制御する処理回路である。操作者が装着したウェアラブルデバイス40と、X線診断装置1に設けられたウェアラブルデバイス制御部42との間は、例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの無線通信により接続されている。具体的には、ウェアラブルデバイス制御部42が備える信号送受信部43と、ウェアラブルデバイス40が備える信号送受信部56との間が、無線通信により接続される。無線通信により、ウェアラブルデバイス40とウェアラブルデバイス制御部42との間を接続することにより、このウェアラブルデバイス40を装着した操作者の動作の妨げにならずに両者を接続することができる。但し、ウェアラブルデバイス40とウェアラブルデバイス制御部42の間を、有線による通信で接続することも可能である。
【0019】
ウェアラブルデバイス制御部42は、例えば、寝台28の下部に内蔵されていてもよいし、或いは、システム制御部18と同じX線診断装置1の本体内部に格納されていてもよい。ウェアラブルデバイス制御部42は、X線診断装置1からウェアラブルデバイス40に向けて種々の信号を送信するとともに、ウェアラブルデバイス40から種々の信号を受信する。ウェアラブルデバイス制御部42における、これら信号の送受は、システム制御部18の制御の下に行われる。
【0020】
また、ウェアラブルデバイス制御部42は、ウェアラブルデバイス40を制御する機能を備える。詳しくは後述するが、例えば、ウェアラブルデバイス制御部42は、操作者に対して相対的に定まる位置に仮想定なスイッチを設定したり、複数の操作者について操作者毎に、この仮想的なスイッチに関する操作設定に関する情報を保持したりする。このようなウェアラブルデバイス40を制御するウェアラブルデバイス制御部42の機能は、このX線診断装置1に設けてもよいし、或いは、ウェアラブルデバイス40に設けてもよい。さらには、ウェアラブルデバイス40を制御するウェアラブルデバイス制御部42の機能は、X線診断装置1とウェアラブルデバイス40とに分散して設けてもよい。このウェアラブルデバイス制御部42が、本実施形態における操作装置制御部を構成する。
【0021】
システム制御部18は、プログラムを記憶回路18aから読み出し、処理回路18bが実行することにより、各プログラムに対応する機能を実現する。処理回路18bはプロセッサを備えて構成されている。言い換えると、各プログラムを読み出して実行している状態のプロセッサを備える処理回路18bは、ウェアラブルデバイス制御部42から受信した制御信号に基づいて、X線診断装置1を制御するのに必要な種々の機能を有することとなる。なお、システム制御部18の処理回路18bは、単一のプロセッサにて実現されてもよいが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて実現されてもよい。
【0022】
図3は、本実施形態に係るウェアラブルデバイス40の構成の一例を示す図である。この
図3に示すように、本実施形態においては、ウェアラブルデバイス40は、操作者の右足に装着される右デバイス40Rと、操作者の左足に装着される左デバイス40Lとを備えて構成されている。右デバイス40Rと左デバイス40Lは、それぞれ、操作者が履く靴やサンダルとして構成されており、
図3においては、その足裏における各種センサの配置が図示されている。このウェアラブルデバイス40が、本実施形態における、X線診断装置1におけるX線照射の操作のために使用される操作装置を構成する。
【0023】
右デバイス40Rと左デバイス40Lのつま先部分には、それぞれ、位置検出素子50R、50Lが設けられている。この位置検出素子50R、50Lは、それぞれ、例えばGPSにより構成されており、右デバイス40Rと左デバイス40Lの位置を検出することが可能である。また、位置検出の手段は、例えば、ウェアラブルデバイス制御部42からレーダーを発信し、ウェアラブルデバイス制御部42から右デバイス40Rと左デバイス40Lまでの距離や方向を特定できるようにしてもよい。
【0024】
また、右デバイス40Rと左デバイス40Lにおける、母指球の位置近傍には、それぞれ、圧力センサ52R、52Lが設けられている。圧力センサ52Rは、操作者が右足を踏み込んだ際の圧力を検出し、圧力センサ52Lは、操作者が左足を踏み込んだ際の圧力を検出する。この圧力センサ52R、52Lは、それぞれ、例えばピエゾ素子のようなアナログ出力回路部品により構成することもできるし、マイクロスイッチのように機械的に設定された加重とストロークによりに検出する方式を採用することもできる。
【0025】
また、右デバイス40Rと左デバイス40Lのかかと部分には、それぞれ、加速度センサ54R、54Lが設けられている。加速度センサ54Rは、操作者の右足の動きの加速度を検出し、加速度センサ54Lは、操作者の左足の動きの加速度を検出する。この加速度センサ54R、54Lは、それぞれ、例えば、ピエゾ素子の抵抗変化や静電容量の変化を検出する回路素子により構成することができる。
【0026】
また、右デバイス40Rと左デバイス40Lの土踏まず(足底弓蓋)部分には、それぞれ、信号送受信部56R、56Lが設けられている。信号送受信部56R、56Lは、ウェアラブルデバイス制御部42と通信を行う。例えば、信号送受信部56Rは、右デバイス40Rに設けられている、位置検出素子50Rや、圧力センサ52R、加速度センサ54Rの検出結果を、検出信号として、ウェアラブルデバイス制御部42に送信する。また、信号送受信部56Lは、左デバイス40Lに設けられている、位置検出素子50Lや、圧力センサ52L、加速度センサ54Lの検出結果を、検出信号として、ウェアラブルデバイス制御部42に送信する。
【0027】
また、右デバイス40Rと左デバイス40Lのかかと部分近傍には、それぞれ、振動デバイス58R、58Lが設けられている。この振動デバイス58R、58Lは、それぞれ、信号送受信部56R、56Lがウェアラブルデバイス制御部42から受信した制御信号に基づいて、制御される。すなわち、ウェアラブルデバイス制御部42は、振動デバイス58R、58Lを制御信号に基づいて、適宜、振動させることができる。
【0028】
本実施形態においては、位置検出素子50R、50L、圧力センサ52R、52L、及び、加速度センサ54R、54Lが、仮想的なスイッチに対する操作者の操作を検出する検出部を構成している。また、本実施形態においては、信号送受信部56R、56Lにおける送信機能が、操作の検出結果をX線診断装置1に出力する出力部を構成しており、信号送受信部56R、56Lにおける受信機能が、X線診断装置1から制御信号を受信する受信部を構成している。
【0029】
図4は、本実施形態に係るX線診断システム2において、X線診断装置1を操作する操作者OPの立ち位置の一例を示す斜視図である。この
図4に示すように、このX線診断装置1の操作者OPは、寝台28の近傍に立ち、X線診断装置1の操作を行う。被検体は寝台28の天板30の上に載せられることから、被検体のケアを行いつつ、保持装置20や寝台28の操作を行う。このために、従来のX線診断装置においては、X線診断装置1に対してこれらの操作を行うための機械的な構成のフットスイッチが設けられていたが、本実施形態に係るX線診断装置1においては、この機械的なフットスイッチの代わりに、ウェアラブルデバイス制御部42により、仮想的なフットスイッチが設定される。このように、仮想的にフットスイッチを設定することにより、操作者は、表示モニタ36から目を離してフットスイッチを目視する必要がなくなり、また、フットスイッチとX線診断装置1との位置的な干渉に注意を払う必要もなくなる。
【0030】
図5は、本実施形態に係るX線診断システム2が仮想的に設定するフットスイッチ60のレイアウトの一例を示す図である。このフットスイッチ60は、仮想的なスイッチであり、物理的に存在するものではない。すなわち、操作者は、そこにフットスイッチ60が存在するとの想像の下に、フットスイッチ60のペダルの踏み操作をする。また、本実施形態においては、フットスイッチ60は、例えば、X線診断装置1におけるX線照射の操作のために使用される。
【0031】
この
図5の例においては、操作者の左足が軸足である。このため、この軸足である左足の斜め前方に、フットスイッチ60を仮想的に配置する。フットスイッチ60を配置する位置は、軸足からの距離と方向を予め設定しておくことにより定まる。具体的には、軸足の左デバイス40Lに取り付けられた位置検出素子50Lが基準位置となり、いわゆる原点を構成する。フットスイッチ60を配置する方向は、例えば角度θとして定義しておくことができる。また、基準位置からフットスイッチ60までの距離は、例えば距離Dとして定義しておくことができる。ここでは、基準位置からフットスイッチ60の下端部中央C1までを、距離Dとする。このように、操作者に対して相対的に定まる位置に、仮想的なフットスイッチ60が設定される。
【0032】
なお、軸足は人によって異なることから、本実施形態に係るX線診断システム2においては、任意に軸足を切り替え可能に構成されている。すなわち、このX線診断システム2においては、右足を軸足として設定することも可能である。但し、以下においては、説明の便宜上、操作者の左足が軸足であり、右足がフットスイッチ60の操作を行う部位である対象部位となる場合を例として説明を行う。
【0033】
本実施形態においては、この仮想的に設定されたフットスイッチ60には、3つのペダルPD1、PD2、PD3が仮想的に設けられている。例えば、ペダルPD1は、X線画像を得るためにX線撮影を実行する際に踏み込まれ、ペダルPD2は、リアルタイムのX線透視画像を得るためにX線透視を実行する際に踏み込まれ、ペダルPD3は、寝台28の操作をする際に踏み込まれる。なお、仮想的なフットスイッチ60に仮想的に設けられるペダルの数やその機能は任意であり、X線診断装置1に応じて変更することも可能であり、また、操作者の希望に応じて変更することも可能である。さらに、ペダルの大きさも同一である必要はなく、機能に応じて、また、操作者の好みに応じて、異なるようにすることも可能である。
【0034】
また、本実施形態に係るX線診断システム2においては、操作者が自重を載せる軸足と、ペダルの操作をする利き足は、任意に変更することが可能である。例えば、操作者は、予め、ウェアラブルデバイス制御部42に自らの軸足と操作をする利き足を設定できる。この設定に際しては、X線診断システム2のウェアラブルデバイス制御部42に、軸足を設定するようにしてもよいし、操作をする利き足を設定するようにしてもよいし、軸足と利き足の双方を設定するようにしてもよい。
【0035】
図6は、ウェアラブルデバイス制御部42の構成を説明するブロック図である。この
図6に示すように、本実施形態に係るウェアラブルデバイス制御部42は、処理回路PC1と記憶回路MC1とを備えて構成されている。そして、処理回路PC1は、その処理機能として、位置検出機能421と、送受信機能422と、操作検出機能423と、操作可能位置検出機能424と、設定機能425とを、実現する。位置検出機能421は、送受信機能422を介して、ウェアラブルデバイス40から受信した位置検出素子50R、50Lからの検出信号に基づいて、位置情報を特定し、操作者の右足と左足の位置を検出する。送受信機能422は、ウェアラブルデバイス40に制御信号を送信し、また、ウェアラブルデバイス40から操作の検出結果に関する検出信号を受信する。
【0036】
操作検出機能423は、送受信機能422を介して、ウェアラブルデバイス40から受信した検出信号に基づいて、操作者の操作を特定し検出する。操作可能位置検出機能424は、仮想的なスイッチの操作可能な位置にウェアラブルデバイス40が位置するか否かを判断し、仮想的なスイッチの操作可能な位置にウェアラブルデバイス40が位置する場合に、送受信機能422を介して、制御信号をウェアラブルデバイス40に送信することにより、振動デバイス58R、58Lを振動させる。設定機能425は、操作者に対して相対的に定まる位置に仮想的なフットスイッチ60を設定するとともに、この仮想的なフットスイッチ60に関する各種設定を可能にする。
【0037】
図6における実施形態においては、位置検出機能421と、送受信機能422と、操作検出機能423と、操作可能位置検出機能424と、設定機能425にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路MC1に格納されている。処理回路PC1は、プログラムを記憶回路MC1から読み出し、実行することにより、各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサを備えて構成されている。言い換えると、各プログラムを読み出した状態のウェアラブルデバイス制御部42の処理回路PC1は、
図6の処理回路PC1内に示された各機能を有することとなる。なお、
図6においては単一のプロセッサにて、位置検出機能421と、送受信機能422と、操作検出機能423と、操作可能位置検出機能424と、設定機能425とが実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせてウェアラブルデバイス制御部42の処理回路PC1を構成して、各プロセッサがプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものとしてもよい。
【0038】
図7は、本実施形態に係るウェアラブルデバイス制御部42において、操作検出機能423を実現するための踏み操作検出処理の処理内容の一例を示す図である。
図8は、この踏み操作検出処理における各種信号の波形の一例を示す図である。より具体的には、
図8(A)は、加速度センサ54Rの検出信号の波形を示しており、
図8(B)は、圧力センサ52Rの検出信号の波形を示しており、
図8(C)は、ウェアラブルデバイス制御部42からシステム制御部18へのX線出力信号の波形を示している。特に、
図8(C)では、操作者が右足で仮想的なフットスイッチ60のペダルPD2を踏み込んで、この踏み込んでいる間、X線の照射がなされるX線透視がなされる場合のX線出力信号を表している。
【0039】
図7に示すように、まず、ウェアラブルデバイス制御部42は、ウェアラブルデバイス40の加速度センサ54Rの検出信号を解析し、上下方向の動きが検出されるか否かを判断する(ステップS10)。
図8(A)に示すように、操作者の利き足である右足で仮想的なフットスイッチ60のペダルを踏む操作を行う場合、まず、右足が上方に移動しながらペダルに位置合わせをし、このペダルの位置で下方に移動する。このため、加速度センサ54Rは、上方へ移動する加速度の後、下方へ移動する加速度を検知する。したがって、ウェアラブルデバイス制御部42は、この加速度センサ54Rの検出信号を解析し、この右足の上下方向の動きの有無を検出する。そして、この上下方向の動きがない場合(ステップS10:No)には、ウェアラブルデバイス制御部42は、このステップS10の処理を繰り返して待機する。
【0040】
なお、この右足の上下の動きがあったか否かの判断においては、加速度センサ54Rの検出信号による加速度の検出値が、第1閾値を超えている時間sを考慮するようにしてもよい。すなわち、操作者が仮想的なフットスイッチ60のペダルを踏み込む場合、右足を上げてから下げるまでの滞空時間が他の目的の際の動作と比べて長くなると考えられる。このため、この滞空時間を、第1閾値を超えている時間sとして定義して、この時間sが所定時間以上である場合に、右足の上下の動作がなされたと判断するようにしてもよい。
【0041】
次に、
図7に示すように、ウェアラブルデバイス制御部42は、ウェアラブルデバイス40の圧力センサ52Rの検出信号を解析し、踏む込み動作が検出されるか否かを判断する(ステップS12)。
図8(B)に示すように、操作者の利き足である右足で仮想的なフットスイッチ60のペダルを踏む操作を行う場合、ペダルの位置において、圧力センサ52Rの検出する圧力が上昇し、ペダルを踏み込んだ状態となり、やがてその圧力は下降する。したがって、ウェアラブルデバイス制御部42は、この圧力センサ52Rの検出信号を解析し、第2閾値以上の圧力が利き足である右足により印加されて、踏み込み状態となっているかどうかを判断する。
【0042】
踏み込み動作が検出されない場合(ステップS12:No)には、ウェアラブルデバイス制御部42は、加速度センサ54Rの検出信号による加速度が第1閾値を超えてから、所定の時間Tを経過しているか否かを判断する(ステップS14)。すなわち、操作者がペダルを踏み込む動作を行う場合、右足を上げてから実際に踏み込みまでが、一連の動作であると考えられる。このため、右足を上げてから長い時間が経過している場合、それは、ペダルの踏み込み動作ではないと考えられる。このため、本実施形態においては、加速度が第1閾値を超えてから所定の時間Tを経過した場合(ステップS14:Yes)には、その動作は、ペダルの踏み込み動作ではないと判断して、上述したステップS10に戻る。
【0043】
一方、加速度が第1閾値を超えてから所定の時間Tを経過していない場合(ステップS14:No)には、上述したステップS12に戻り、ウェアラブルデバイス40の圧力センサ52Rの検出信号を解析し、踏む込み動作が検出されるか否かを判断し続ける。そして、ウェアラブルデバイス制御部42は、所定の時間Tが経過するまでに、踏み込み動作が検出された場合(ステップS12:Yes)には、システム制御部18に、X線出力信号を出力する(ステップS16)。このX線出力信号に基づいて、システム制御部18は、X線の照射を行う。例えば、操作者の右足の位置が、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD2の位置にある場合には、システム制御部18は、リアルタイムのX線透視像を得るためにX線透視用のX線を照射する。本実施形態においては、操作者が右足でペダルPD2を踏み込んでいる間は、X線透視を行うためのX線が照射される。
【0044】
そして、ウェアラブルデバイス制御部42は、踏み込み状態が継続しているか否かを判断し(ステップS18)、この踏み込み状態が継続している場合(ステップS18:Yes)には、ステップS16に戻り、X線出力信号の出力を継続する。一方、ウェアラブルデバイス制御部42は、踏み込み状態が継続していないと判断した場合(ステップS18:No)には、X線出力信号の出力を停止する(ステップS20)。これにより、システム制御部18は、X線の照射を停止する。そして、ウェアラブルデバイス制御部42は、上述したステップS10の処理に戻る。
【0045】
図8(C)に示すように、X線出力信号は、圧力センサ52Rの検出信号による圧力が第2閾値を超えている間、ハイの状態となり、システム制御部18に出力される。つまり、操作者にとっては、仮想的なフットスイッチ60のペダルの位置で、右足を踏み込んでいる間、X線の照射がなされることを意味する。このため、物理的なフットスイッチが無くとも、あたかも仮想的にフットスイッチ60があるような感覚で、ペダルPD2の操作をすることができる。
【0046】
なお、操作者の右足の位置が、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD1の位置にあり、右足でペダルPD1を踏み込んだ場合には、X線撮影がなされる。すなわち、ペダルPD1が踏み込まれた場合、X線検出信号に基づいて、システム制御部18は、X線画像を得るためにX線撮影用のX線を照射するが、このX線照射は、ペダルPD1を踏み込んでいる時間にかかわらず、1回である。
【0047】
さらに、被検体への不要な被ばくを回避するために、或いは、誤動作を回避するために、圧力センサ52Rにより検出された圧力が第2閾値を超えている間でも、加速度センサ54Rの検出信号により右足の上下方向の動きを検出した場合には、ウェアラブルデバイス制御部42は、X線出力信号の出力を停止するようにしてもよい。
【0048】
また、操作者が意図せずに仮想的なフットスイッチ60の操作をしてしまわないように、仮想的なフットスイッチ60の有効/無効を切り替える機能を付加的に設けてもよい。この場合、例えば、右足又は左足で特定の動作をした場合に、仮想的なフットスイッチ60の有効/無効を交互に切り替えられるようにしてもよい。具体的には、例えば、軸足である左足の加速度センサ54Lと圧力センサ52Lにより、
図8に示した踏み込み動作を検出した場合には、仮想的なフットスイッチ60の有効/無効を交互に切り替えられるようにしてもよい。また、例えば、左足の加速度センサ54Lと圧力センサ52Lでタップを複数回踏むような動作を検出した場合に、仮想的なフットスイッチ60の有効/無効を交互に切り替えられるようにしてもよい。この切り替え動作を行う足は、右足でも、左足でも、さらには両方の足でもよい。
【0049】
さらには、ウェアラブルデバイス40を装着した操作者が寝台28から所定距離以上離れた場合、仮想的なフットスイッチ60の機能を無効にするようにしてもよい。このようにすることにより、操作者の歩行動作等により、誤って仮想的なフットスイッチ60を操作してしまうことを防止することができる。これにより、例えば、操作者が検査室から一時的に退出するような状況における、誤操作を防止することができる。
【0050】
図9は、本実施形態に係るウェアラブルデバイス制御部42において、操作可能位置検出機能424を実現するための操作可能位置検出処理の処理内容の一例を示す図である。この操作可能位置検出処理において、まず、ウェアラブルデバイス制御部42は、ウェアラブルデバイス40の位置情報を取得する(ステップS30)。具体的には、ウェアラブルデバイス制御部42は、右デバイス40Rの位置検出素子50Rと、左デバイス40Lの位置検出素子50Lとから、それぞれの位置情報を取得する。
【0051】
次に、ウェアラブルデバイス制御部42は、軸足である左足を基準として、操作をする右足の相対的な位置を特定し、その相対的な位置が、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD1、PD2、PD3のいずれかの位置であるか否かを判断する(ステップS32)。すなわち、相対的な右足の位置が、ペダルPD1にあるか、ペダルPD2にあるか、それとも、ペダルPD3にあるかを判断する。相対的な右足の位置が、これらペダルPD1、PD2、PD3のいずれにも位置しない場合(ステップS32:No)には、上述したステップS30に戻る。
【0052】
一方、軸足である左足を基準として、相対的な右足の位置が、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD1、PD2、PD3のいずれかの操作が可能なペダル位置及び/又はペダルPD1、PD2、PD3のいずれかの上方の位置にある場合(ステップS32:Yes)には、ウェアラブルデバイス制御部42は、右足の振動デバイス58Rを振動させる(ステップS34)。具体的には、ウェアラブルデバイス制御部42は、振動デバイス58Rを振動させるための制御信号を、送受信機能422を介して信号送受信部56Rに送信し、右デバイス40Rに設けられた振動デバイス58Rを振動させる。これにより、操作者は、右足が、ペダルPD1、PD2、PD3のいずれかの上にあることを確認することができる。そして、上述したステップS30に戻る。
【0053】
ステップS34において、振動デバイス58Rを振動させる時間は任意である。例えば、3秒、5秒といった所定の時間だけ、振動デバイス58Rを振動させる。また、右足だけでなく、左足の振動デバイス58Lも振動させるようにしてもよい。軸足である左デバイス40Lの振動デバイス58Lも振動することにより、操作者はより確実に、ペダルを操作する足である右足が、ペダルPD1、PD2、PD3のいずれかの上にあることを確認することができる。
【0054】
さらに、操作する足である右足が、ペダルPD1、PD2、PD3のいずれの位置にあるのかを、操作者が識別できるように、振動デバイス58Rの振動をペダルごとに異なるようにしてもよい。つまり、ペダルに応じて振動の種類が変化することにより、この振動に基づいて、操作者がペダルを特定することができる。例えば、ペダルPD1の上に右足が位置している場合には、振動デバイス58Rが1秒間振動し、ペダルPD2の上に右足が位置している場合には、振動デバイス58Rが3秒間振動し、ペダルPD3の上に右足が位置している場合には、振動デバイス58Rが5秒間振動するようにしてもよい。或いは、ペダルPD1の上に右足が位置している場合には、振動デバイス58Rが連続的に振動し、ペダルPD2の上に右足が位置している場合には、振動デバイス58Rが短い時間間隔で間欠的に振動し、ペダルPD3の上に右足が位置している場合には、振動デバイス58Rが長い時間間隔で間欠的に振動するようにしてもよい。
【0055】
なお、これら振動デバイス58R、58Lを振動させる代わりに、音で、操作者に通知するようにしてもよい。例えば、ペダルPD1、PD2、PD3のいずれかの上に右足が位置している場合には、ビープ音をウェアラブルデバイス制御部42やウェアラブルデバイス40が発するようにしてもよい。この場合、ペダルごとに、ビープ音の種類が異なるようにして、右足が位置しているペダルの種類を、操作者が識別できるようにしてもよい。
【0056】
さらには、これら振動デバイス58R、58Lを振動させる代わりに、或いは、振動デバイス58R、58Lを振動させるのに加えて、表示モニタ36に、右足がペダルを踏める位置にあることを表示させるようにしてもよい。例えば、ペダルPD1、PD2、PD3のいずれかの上に右足が位置している場合には、表示モニタ36に「ペダル上」という文字を表示するようにしてもよい。この場合、ペダルごとに、表示モニタ36に表示が異なるようにして、右足が位置しているペダルの種類を、操作者が識別できるようにしてもよい。例えば、ペダルPD1の上に右足が位置している場合には、表示モニタ36に「第1ペダル」と表示し、ペダルPD2の上に右足が位置している場合には、表示モニタ36に「第2ペダル」と表示し、ペダルPD3の上に右足が位置している場合には、表示モニタ36に「第3ペダル」と表示するようにしてもよい。
【0057】
また、上述した振動デバイス58R、58Lを振動させる代わりに、或いは、振動デバイス58R、58Lを振動させるのに加えて、
図10に示すような、仮想的なフットスイッチ60における右足の位置を、表示モニタ36に視覚的に補助画像として表示するようにしてもよい。すなわち、
図10に示す表示モニタ36の例では、画面の左下に、補助画像として、仮想的なフットスイッチ60が簡略化されたフットスイッチマーク70が表示される。そして、このフットスイッチマーク70は、ペダルPD1に対応するペダルマークPM1と、ペダルPD2に対応するペダルマークPM2と、ペダルPD3に対応するペダルマークPM3とを、備えている。そして、これらのマークに重なるように、表示モニタ36には、操作者の操作をする足である右足に対応する足マークFMが表示されている。
【0058】
そして、例えば、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD1の上に右足が位置している場合には、ペダルマークPM1に重なるように、足マークFMが表示される。また、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD2の上に右足が位置している場合には、ペダルマークPM2に重なるように、足マークFMが表示される。そして、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD3の上に右足が位置している場合には、ペダルマークPM3に重なるように、足マークFMが表示される。
【0059】
このようなフットスイッチマーク70を補助画像として表示モニタ36に表示することにより、操作者は、ペダル操作を行う右足が、ペダルPD1を踏み込める位置にあるのか、ペダルPD2を踏み込める位置にあるのか、それとも、ペダルPD3を踏み込める位置にあるのかを、認識することができる。
【0060】
このように表示モニタ36を用いる場合には、
図11に示すように、仮想的なフットスイッチ60と、他の周辺装置とが、位置的に干渉している場合には、表示モニタ36に警告情報WRNを表示するようにしてもよい。すなわち、仮想的に設定されたフットスイッチ60の位置と、寝台28や、保持装置20、或いは、超音波装置や麻酔機などの周辺機器の位置とが重なって、干渉状態となることもあり得る。このような場合、操作者は仮想的なフットスイッチ60に対して適正な操作はできないことから、警告情報WRNを表示モニタ36に表示する。この警告は、表示モニタ36に表示する態様に限らず、例えば、警告音により操作者に通知するようにしてもよい。
【0061】
このような場合、操作者に警告をした後に、ウェアラブルデバイス制御部42の設定機能425は、予め設定されている干渉しないデフォルトの位置に、仮想的なフットスイッチ60を再配置して設定するようにしてもよい。或いは、ウェアラブルデバイス制御部42は、仮想的なフットスイッチ60の機能を一時的に無効化し、干渉状態が無くなった時に、改めて有効化するようにしてもよい。さらには、一時的に無効化した仮想的なフットスイッチ60の機能を有効化する場合には、安全のために、操作者が何らかの指示をウェアラブルデバイス制御部42に入力しなければならないようにしてもよい。
【0062】
また、仮想的なフットスイッチ60のペダルの数、ペダルの大きさ、ペダルのレイアウトは、X線診断装置1に応じて、任意に設計可能である。さらには、これらのフットスイッチ60の要素は、操作者毎にカスタマイズして設定できるようにすることも可能である。
図12は、操作者毎にフットスイッチ60の設定を変更できるようにするために、ウェアラブルデバイス制御部42の設定機能425が保持するユーザ情報テーブルTB1の構成の一例を示す図である。
【0063】
この
図12に示すように、ウェアラブルデバイス制御部42は、操作者毎に、このユーザ情報テーブルTB1を保持する。このユーザ情報テーブルTB1は、まず、操作者を識別するための情報として、ユーザIDを保持する。さらに、このユーザIDに対応付けられた情報として、ペダル数、ペダルの大きさ、ペダルのレイアウトに関する情報を保持する。
【0064】
ペダル数は、例えば、3、4などといった数値である。ペダルの大きさは、例えば、大、中、小、といったペダルの大きさを特定する情報である。ペダルのレイアウトは、ペダルの間隔が狭いパターンA、ペダルの間隔がやや広いパターンB、ペダルの間隔がさらに広いパターンCといったレイアウト情報である。これらの設定情報は、例えば、ウェアラブルデバイス制御部42を操作者が操作することにより、予め入力して設定しておくことができる。
【0065】
或いは、ウェアラブルデバイス制御部42の設定機能425とウェアラブルデバイス40の動きとが連係して、操作者がウェアラブルデバイス40を用いて、これらの設定をできるようにしてもよい。例えば、ウェアラブルデバイス制御部42が表示モニタ36に「第1ペダルの位置で右足を踏み込んで下さい」と表示し、この表示に基づいて、操作者が右足を踏み込んだ位置が、第1ペダルの位置となる。このような動作を第2ペダル、第3ペダルと繰り返すことにより、ペダルの位置を設定することが可能となる。
【0066】
X線診断装置1を操作する際には、操作者は、自らのユーザIDをウェアラブルデバイス制御部42に入力することにより、予め設定されているフットスイッチ60を呼び出す。または、X線診断装置1を用いて行う検査情報に含まれている操作者の氏名を、X線診断システム2が取得して、この氏名に基づいて、フットスイッチ60の設定を自動的に呼び出すようにしてもよい。
【0067】
さらには、本実施形態に係るX線診断システム2においては、軸足から仮想的なフットスイッチ60までの距離や方向を、操作者毎に任意に調整できるようにしてもよい。これは、例えば、ウェアラブルデバイス制御部42が、
図13に示すペダル位置調整処理を実行することにより、設定機能425として実現される。また、
図14は、このペダル位置調整処理の操作者における操作の一例を図示している。
【0068】
図13に示すように、このペダル位置調整処理においては、まず、ウェアラブルデバイス制御部42は、操作者が右足で仮想的なフットスイッチ60のペダル以外の部分を踏んだか否かを判断する(ステップS40)。例えば、
図14に示すように、操作者が仮想的なフットスイッチ60のペダルPD2の下方位置におけるフットスイッチ60の端部を、右足で踏んだような場合には、ウェアラブルデバイス制御部42は、操作者がペダル以外の部分を踏んだと判断する。
【0069】
操作者が仮想的なフットスイッチ60のペダル以外の部分を右足で踏んだと判断した場合(ステップS40:Yes)には、ウェアラブルデバイス制御部42は、操作者の右足の位置情報を取得する(ステップS42)。すなわち、操作者は、仮想的なフットスイッチ60を右足で目的の位置までドラッグするような動作をするので、このドラッグ動作における右足の位置情報を取得する。
【0070】
この右足の位置情報の取得は、ドラッグ動作が終了するまで継続する(ステップS44:No)。例えば、ドラッグ動作は、操作者の右足の圧力センサ52Rの検出結果が、所定の閾値以上の圧力を示しており、位置検出素子50Rの検出結果が、右足の移動が継続していることを示している場合に、ドラッグ動作が継続していると判断できる。逆に、操作者の右足の圧力センサ52Rの検出結果が、所定の閾値以下になったことを示している場合や、位置検出素子50Rの検出結果が、右足の移動の停止を示している場合には、ドラッグ動作が終了したと判断できる。
【0071】
操作者の右足によるドラッグ動作が終了した場合(ステップS44:Yes)には、ウェアラブルデバイス制御部42は、操作者のドラッグ動作を終えた右足の位置に、仮想的なフットスイッチ60の位置を設定する(ステップS46)。
図14の例では、操作者が右足で仮想的なフットスイッチ60をドラッグして、位置P1から位置P2へ移動した例を示している。この
図14の状態で、軸足である左足は動いておらず、固定の位置である。このため、軸足である左足を基準として、フットスイッチ60の相対的な位置を移動させる。この設定された位置は、例えば、ウェアラブルデバイス制御部42の設定機能425に保持される。そして、このペダル位置調整処理は、上述したステップS40に戻る。
【0072】
以上のように、本実施形態に係るX線診断システム2によれば、X線診断装置1を操作する操作者に対して相対的に定める位置に仮想的なスイッチを設定したので、操作者は、X線を照射するために物理的な機構であるフットスイッチを探す必要がなくなる。このため、物理的なフットスイッチを操作者が目視する必要性もなくなり、X線診断装置1に対する操作のたびに、操作者が表示モニタ36から目を離さなければならない煩雑さを解消することができる。このため、操作者の手技中のストレスを軽減し、手技の効率化を図ることができる。この結果、操作者の手技に要する時間を、短縮することができる。
【0073】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態に係るX線診断システム2においては、仮想的なフットスイッチ60のペダルを操作者が踏み込む際には、踏み込む対象となるペダルまで右足全体を横方向に移動させる必要があったが、第2実施形態に係るX線診断システム2においては、仮想的なフットスイッチ60のペダルを扇形に配置することにより、操作者は右足を、踵が中心となるピボット状に移動させることにより、踏み込む対象となるペダルに右足が到達できるようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0074】
図15は、本実施形態に係るX線診断システム2における、ウェアラブルデバイス40の構成を示す図である。この
図15に示すように、本実施形態においても、ウェアラブルデバイス40は、右足に装着される右デバイス40Rと、左足に装着される左デバイス40Lとを備えて、構成されている。
【0075】
但し、本実施形態においては、右デバイス40Rと左デバイス40Lの母指球の位置近傍には、それぞれ、第1加速度センサ80R、80Lが設けられており、また、第1圧力センサ82R、82Lが設けられている。また、本実施形態においては、右デバイス40Rと左デバイス40Lのかかと部分近傍には、それぞれ、第2加速度センサ84R、84Lが設けられており、また、第2圧力センサ86R、86Lが設けられている。第1加速度センサ80R、80L及び第2加速度センサ84R、84Lの機能は、第1実施形態における加速度センサ54R、54Lと同様である。また、第1圧力センサ82R、82L及び第2圧力センサ86R、86Lの機能は、第1実施形態における圧力センサ52R、52Lと同様である。
【0076】
本実施形態においては、第1加速度センサ80R、80L、第1圧力センサ82R、82L、第2加速度センサ84R、84L、及び、第2圧力センサ86R、86Lが、仮想的なスイッチに対する操作者の操作を検出する検出部を構成している。
【0077】
なお、
図15においては、第1実施形態における、信号送受信部56R、56Lや、振動デバイス58R、58Lの図示は省略しているが、本実施形態におけるウェアラブルデバイス40も、これら信号送受信部56R、56Lや、振動デバイス58R、58Lを備えている。
【0078】
図16は、本実施形態におけるX線診断システム2において、操作者に対して相対的に定まる位置に設定される仮想的なフットスイッチ60の一例を示す図である。つまり、本実施形態においても、この仮想的なフットスイッチ60は、ウェアラブルデバイス制御部42により、軸足である左足を基準として、所定の方向で、所定の距離の位置に設定される。但し、本実施形態に係る仮想的なフットスイッチ60においては、ペダルPD1、PD2、PD3が扇形に配置されている。このため、操作者は、操作する足である右足の踵部分を中心として、つま先部分を左右に揺動さることにより、ペダルPD1、PD2、PD3の踏み分けを行う。
【0079】
例えば、ペダルPD1を踏み込むためには、操作者は、右足の踵部分を中心として、つま先部分を左側に傾けることにより、ペダルPD1の位置に、右足のつま先部分を位置させることができる。この状態で、右足のつま先を踏み込むことにより、操作者は、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD1を踏み込むことができる。右足のつま先部分で踏み込みが行われたか否かは、第1圧力センサ82Rが検出する圧力の値により、判別することができる。
【0080】
また、右足の動きについては、例えば、第1加速度センサ80Rの検出結果が所定の加速度を検出したことを示しており、且つ、第2加速度センサ84Rの検出結果が加速度を検出しないことを示しており、さらに、第2圧力センサ86Rの検出結果が所定の圧力を検出していることを示している場合に、右足でピボット状の動きがなされていると判断することができる。
【0081】
以上のように、本実施形態に係るX線診断システム2によれば、仮想的なフットスイッチ60におけるペダルの配置を扇形にすることができる。このため、X線診断装置1の操作者は、ペダルを操作する足である右足を、踵部分を中心とするピボット状に動かすことにより、仮想的なフットスイッチ60のペダルを踏み分けて、X線診断装置1の操作をすることができる。このため、X線診断装置1の種類や、操作者の好みに合わせて、仮想的なフットスイッチ60におけるペダルのレイアウトを適宜選択することができる。
【0082】
〔第3実施形態〕
上述した第1実施形態及び第2実施形態に係るX線診断システム2においては、仮想的なフットスイッチ60には、複数のペダルPD1、PD2、PD3を配置し、これら複数のペダルPD1、PD2、PD3のそれぞれに固有の操作機能を割り付けていたが、仮想的なフットスイッチ60におけるペダルの操作機能は固定的である必要はない。そこで、第3実施形態に係るX線診断システム2においては、ある1つのペダルに複数の操作機能を割り付け、切替操作により、そのペダルを操作したときの操作機能が変更されるようにしている。
【0083】
図17は、本実施形態に係るX線診断システム2における仮想的なフットスイッチ60のレイアウトの一例を示す図であり、上述した第1実施形態における
図5に対応する図である。この
図17に示すように、本実施形態に係る仮想的なフットスイッチ60では、ペダルPD1が1つ設定される。そして、操作者は、この1つのペダルPD1の操作機能を切り替えて使用する。
【0084】
ペダルPD1の機能を切り替えるための機能切替操作は、種々のものが考えられる。例えば、操作者が右足でタップを踏む動作をした場合、操作者が右足でフットスイッチ60をドラッグする操作をした場合、操作者がフットスイッチ60をフリックする操作をした場合などに、ウェアラブルデバイス制御部42は、フットスイッチ60の機能について機能切替操作がなされたと認識することができる。
【0085】
本実施形態においては、例えば、この仮想的なフットスイッチ60は、X線画像を得るためにX線撮影を実行する際に踏み込まれるペダルと、リアルタイムのX線透視画像を得るためにX線透視を実行する際に踏み込まれるペダルの両方の機能を有している。そして、操作者により機能切替操作がなされた場合には、この2つの機能を交互に切り替える。すなわち、ペダルPD1がX線画像を得るためにX線撮影を実行する際に踏み込まれるペダルとしての機能を有していた場合には、操作者が機能切替操作を行うことにより、ペダルPD1は、リアルタイムのX線透視画像を得るためにX線透視を実行する際に踏み込まれるペダルとしての機能を有するようになる。また、ペダルPD1がリアルタイムのX線透視画像を得るためにX線透視を実行する際に踏み込まれるペダルとしての機能を有していた場合には、操作者が機能切替操作を行うことにより、ペダルPD1は、X線画像を得るためにX線撮影を実行する際に踏み込まれるペダルとしての機能を有するようになる。
【0086】
図18は、ウェアラブルデバイス制御部42の構成を説明するブロック図であり、上述した第1実施形態における
図6に対応する図である。この
図18に示すように、本実施形態に係るウェアラブルデバイス制御部42の処理回路PC1は、上述した第1実施形態における処理回路PC1の機能に、機能切替機能426を追加で備えている。この機能切替機能426は、上述した操作者による機能切替操作を実現する。すなわち、処理回路PC1における機能切替機能426が、操作者の機能切替操作を検出して、フットスイッチ60のペダルPD1の機能の切替を行う。
【0087】
上述した第1実施形態と同様に、この機能切替機能426も、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路MC1に格納されている。そして、このプログラムを読み出した状態のウェアラブルデバイス制御部42の処理回路PC1が、
図18の処理回路PC1に示す機能切替機能426を実現する。なお、この処理回路PC1は、単一のプロセッサで機能切替機能426を実現してもよいし、或いは、複数の独立したプロセッサを組み合わせてウェアラブルデバイス制御部42の処理回路PC1を構成して、各プロセッサがプログラムを実行することにより、この機能切替機能426を実現してもよい。
【0088】
図19は、本実施形態に係るウェアラブルデバイス制御部42において、機能切替機能426を実現するための機能切替処理の処理内容の一例を示す図である。この
図19に示すように、まず、ウェアラブルデバイス制御部42は、操作者が上述したような機能切替操作を行ったことを検出したか否かを判断する(ステップS50)。操作者が機能切替操作を行っていない場合(ステップS50:No)には、このステップS50を繰り返して待機する。
【0089】
一方、操作者が機能切替操作を行ったことを検出した場合(ステップS50:Yes)には、ウェアラブルデバイス制御部42は、仮想的なフットスイッチ60のペダルPD1における機能を切り替える(ステップS52)。本実施形態においては、ウェアラブルデバイス制御部42は、ペダルPD1を、X線画像を得るためにX線撮影を実行する際に踏み込まれるペダルとしての機能と、リアルタイムのX線透視画像を得るためにX線透視を実行する際に踏み込まれるペダルとしての機能を、交互に切り替える。そして、また上述したステップS50に戻る。
【0090】
なお、本実施形態においては、1つのペダルPD1に2つの操作機能を割り付ける例を説明したが、1つのペダルPD1に割り付ける操作機能の数は、2つに限られるものではなく、複数であればよい。例えば、1つのペダルPD1に3つの操作機能を割り付けた場合には、操作者が機能切替操作を行う都度、順番に、これら3つの操作機能を遷移するようにすればよい。
【0091】
また、仮想的なフットスイッチ60におけるペダルの数も1つである必要はなく、複数のペダルを配置して、これら複数のペダルのそれぞれに複数の操作機能を割り付けるようにしてもよい。例えば、ペダルPD1に操作機能1と操作機能2を割り付け、ペダルPD2に操作機能3と操作機能4とを割り付けることができる。
【0092】
以上のように、本実施形態に係るX線診断システム2によれば、1つのペダルPD1に複数の操作機能を割り付け、操作者が機能切替操作により切り替えてペダル操作を行うようにしたので、仮想的なフットスイッチ60におけるペダル数を可及的に少なくすることができる。これにより、仮想的なフットスイッチ60の大きさも小さくすることができ、フットスイッチ60がX線診断装置1と位置的に干渉してしまうのを抑制することができる。
【0093】
なお、上述した各実施形態においては、操作者に対して相対的に定まる位置に設定される仮想的なスイッチとして、操作者が足で操作するフットスイッチ60の例を説明したが、実施形態は、これに限定されず、X線診断装置1の操作者により操作されるあらゆる種類のスイッチに適用可能である。例えば、仮想的なスイッチとして、X線診断装置1の操作者が手で操作をするスイッチを仮想的に設定することもできる。この場合、例えば、操作者の頭の位置を基準として、相対的に定まる位置に仮想的なスイッチを設定し、ウェアラブルデバイス40としてハンドグローブを操作者の手に装着すればよい。
【0094】
また、上述した各実施形態においては、操作者が装着するウェアラブルデバイス40が操作装置である例を説明したが、操作装置は必ずしもウェアラブルな装置に限るものではない。例えば、操作者の動きを撮影カメラで撮影して、この撮影された映像を解析することにより、操作者の右足及び左足の動きを特定して、仮想的なフットスイッチ60に対する操作が検出できるようにしてもよい。この場合、撮影カメラ及びその映像の解析装置が、上述したウェアラブルデバイス40の代わりの操作装置となる。
【0095】
かかる場合、操作者への操作状態の通知は、音や光によりなされてもよく、また、これら両方が併用されてもよい。すなわち、上述した操作装置がウェアラブルデバイス40である例では、操作状態に関する通知、例えば、操作者の対象部位がフットスイッチ60のペダルの操作が可能なペダル位置及び/又はそのペダルの上方の位置にあることなどの通知は、振動デバイス58Lや振動デバイス58Rが振動することにより行ったが、操作装置が撮影カメラ及びその映像の解析装置である場合には、操作装置が発する音や光により、操作者に対してこれらの通知を行うようにしてもよい。
【0096】
さらに、上述した各実施形態においては、操作者の操作状態を検出する手段を全てウェアラブルデバイス40に集約する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。たとえば、踏み込み操作モーションと操作状態はカメラ、ペダル位置の把握はウェアラブルデバイス40に持たせるなど、ウェアラブルデバイス40の機能を複数デバイスに分割しても良い。
【0097】
上記説明では、ウェアラブルデバイス制御部42における「プロセッサ」が各処理機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU (Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで各処理機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該処理機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その処理機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその処理機能を実現するようにしてもよい。上記は、システム制御部18についても同様である。
また、ウェアラブルデバイス制御部42及びシステム制御部18を一体とみて、これを「処理回路」と捉えることもできる。
【0098】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
1…X線診断装置、2…X線診断システム、10…X線管装置、12…高電圧発生器、16…X線検出器、18…システム制御部、20…保持装置、22…Cアーム、24…把持部、26…基部、28…寝台、30…天板、32…天井懸垂部、34…天井走行機構、36…表示モニタ、40…ウェアラブルデバイス、40L…左デバイス、40R…右デバイス、42…ウェアラブルデバイス制御部、50L…位置検出素子、50R…位置検出素子、52L…圧力センサ、52R…圧力センサ、54L…加速度センサ、54R…加速度センサ、56L…信号送受信部、56R…信号送受信部、58L…振動デバイス、58R…振動デバイス、60…フットスイッチ、70…フットスイッチマーク、80L…第1加速度センサ、80R…第1加速度センサ、82L…第1圧力センサ、82R…第1圧力センサ、84L…第2加速度センサ、84R…第2加速度センサ、86L…第2圧力センサ、86R…第2圧力センサ、421…位置検出機能、422…送受信機能、423…操作検出機能、424…操作可能位置検出機能、425…設定機能