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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】音波スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/26 20060101AFI20240725BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20240725BHJP
   B81B 3/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
H04R1/26 330
H04R17/00 330K
B81B3/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020203694
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022091026
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】大竹 伸幸
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-057414(JP,A)
【文献】特開2016-213550(JP,A)
【文献】特開2004-349815(JP,A)
【文献】米国特許第04751419(US,A)
【文献】米国特許第05031222(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0090752(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/26
H04R 17/00
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電膜(21)と、
第1面(30a)と、前記第1面とは反対の面である第2面(30b)と、前記第1面上に前記圧電膜が個別に配置され、前記圧電膜の伸縮にともなって振動する複数の振動領域(31)と、を有する振動部(30)と、
主面(40a)と、前記主面に開口して前記振動領域の前記第2面に隣接し、前記主面における開口面積が互いに異なることで、共振周波数が互いに異なるように前記振動領域を規定する複数の空洞部(41)と、を有し、前記振動部を前記主面上に支持する支持体(40)と、を備え、
前記複数の空洞部のうち、前記開口面積が最大の前記空洞部により規定される前記振動領域である第1振動領域の共振周波数を下限とし、前記開口面積が最小の前記空洞部により規定される前記振動領域である第2振動領域の共振周波数を上限とする、周波数範囲の音波を前記圧電膜側から放射し、
ベース部材(50)をさらに備え、
前記支持体は、前記主面とは反対の面である裏面(40b)を有し、
前記複数の空洞部は、前記裏面にそれぞれ開口し、
前記支持体は、前記裏面側の開口を通じて前記複数の空洞部の間で気体を流通可能に、前記ベース部材に固定されている、音波スピーカ。
【請求項2】
前記複数の空洞部は、平面形状を維持しつつ所定の厚みを有し、前記振動領域を規定する第1空洞領域(41a)をそれぞれ有する、請求項1に記載の音波スピーカ。
【請求項3】
前記第1空洞領域は、前記平面形状が真円の筒形状をなしており、
前記複数の振動領域は、互いに直径が異なる、請求項2に記載の音波スピーカ。
【請求項4】
音速を、前記上限を規定する前記第2振動領域の共振周波数で除算した値を波長λとすると、
前記第1空洞領域の厚みは、λ×1/4未満である、請求項2または請求項3に記載の音波スピーカ。
【請求項5】
前記第1空洞領域の厚みは、λ×1/8以下である、請求項4に記載の音波スピーカ。
【請求項6】
前記複数の空洞部は、前記第1空洞領域に連なるとともに前記裏面に開口し、前記厚みの方向からの平面視において前記第1空洞領域を内包する第2空洞領域(41b)をそれぞれ有する、請求項2~5いずれか1項に記載の音波スピーカ。
【請求項7】
前記複数の空洞部は、前記第1空洞領域と前記第2空洞領域とにより構成される段差構造をそれぞれ有する、請求項6に記載の音波スピーカ。
【請求項8】
前記複数の空洞部は、前記第2空洞領域に設けられ、前記裏面から前記主面側に向けて連続的に面積が減少するテーパ構造をそれぞれ有する、請求項6に記載の音波スピーカ。
【請求項9】
前記第2空洞領域の少なくともひとつは、複数の前記第1空洞領域に連なる共通領域である、請求項6に記載の音波スピーカ。
【請求項10】
前記複数の空洞部の前記開口面積は、前記音波が可聴周波数を超え、200kHzを上限とする周波数範囲を少なくとも含むように設定されている、請求項1~9いずれか1項に記載の音波スピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、音波スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、所定の周波数範囲、すなわち広帯域の音波を放射する音波スピーカを開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-223174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広帯域の音波を放射する音波スピーカの体格は、一般的に大きい。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、音波スピーカにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、広帯域の音波を放射する音波スピーカを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された音波スピーカは、
複数の圧電膜(21)と、
第1面(30a)と、第1面とは反対の面である第2面(30b)と、第1面上に圧電膜が個別に配置され、圧電膜の伸縮にともなって振動する複数の振動領域(31)と、を有する振動部(30)と、
主面(40a)と、主面に開口して振動領域の第2面に隣接し、主面における開口面積が互いに異なることで、共振周波数が互いに異なるように振動領域を規定する複数の空洞部(41)と、を有し、振動部を主面上に支持する支持体(40)と、を備え、
複数の空洞部のうち、開口面積が最大の空洞部により規定される振動領域である第1振動領域の共振周波数を下限とし、開口面積が最小の空洞部により規定される振動領域である第2振動領域の共振周波数を上限とする、周波数範囲の音波を圧電膜側から放射し、
ベース部材(50)をさらに備え、
支持体は、主面とは反対の面である裏面(40b)を有し、
複数の空洞部は、裏面にそれぞれ開口し、
支持体は、裏面側の開口を通じて複数の空洞部の間で気体を流通可能に、ベース部材に固定されている。
【0007】
開示された音波スピーカによれば、支持体に複数の空洞部を設け、支持体の主面上に振動部を設けている。振動部のうち、圧電膜の伸縮にともなって振動する振動領域は、隣接する空洞部によって規定される。複数の振動領域の共振周波数が互いに異なるように、支持体の主面に開口する空洞部の開口面積を互いに異ならせている。本構造は、MEMS技術により形成される。よって、所定の周波数範囲の音波、すなわち広帯域の音波を放射する音波スピーカを小型化することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る音波スピーカを示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】各素子について振動領域の半径と共振周波数との関係を示す図である。
図4】定在波を説明するための図である。
図5】振動領域の裏面での反射による定在波を示す図である。
図6】参考例の測定結果を示す図である。
図7】周波数と比音響インピーダンスとの関係を示す図である。
図8】第2実施形態に係る音波スピーカを示す断面図である。
図9】変形例を示す断面図である。
図10】変形例を示す断面図である。
図11】変形例を示す断面図である。
図12】第3実施形態に係る音波スピーカを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
(第1実施形態)
先ず、図1図3に基づき、音波スピーカについて説明する。以下においては、振動部と圧電膜(圧電振動子)との積層方向、すなわち支持体(空洞部)の厚み方向をZ方向と示す。Z方向に直交し、複数の振動領域の並び方向をX方向と示す。Z方向およびX方向の両方向に直交する方向を、Y方向と示す。特に断りのない限り、Z方向から平面視した形状、つまりX方向とY方向とにより規定されるXY平面に沿う形状を、単に平面形状と示す。また、Z方向からの平面視を、単に平面視と示すことがある。図1は、本実施形態の音波スピーカを、Z方向において圧電振動子側から見た平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図3は、音波スピーカに構成された11種類の素子について、振動領域の半径と共振周波数との関係を示す図である。
【0012】
図1および図2に示すように、音波スピーカ10は、複数の圧電振動子20と、振動部30と、支持体40と、ベース部材50を備えている。音波スピーカ10は、MEMS技術を用いて、複数の素子が形成されることで、所定周波数域の音波、すなわち広帯域の音波を放射可能に構成されている。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsの略称である。音波スピーカ10は、大気中で用いられる。
【0013】
複数の圧電振動子20は、振動部30が有する振動領域31を個別に振動可能に設けられている。圧電振動子20は、圧電膜21と、上部電極22と、下部電極をそれぞれ有している。本実施形態の音波スピーカ10は、11個の圧電振動子20を備えている。圧電振動子20は、圧電膜21および上部電極22を個別に有している。つまり、音波スピーカ10は、11個の圧電膜21と11個の上部電極22を有している。
【0014】
圧電膜21は、たとえば、ScAlNなどのAlN系材料、チタンジルコン酸鉛(PZT)、ZnOなどの圧電材料を用いて形成された薄膜である。本実施形態の圧電膜21は、ScAlNを材料として、スパッタリング法により形成されている。圧電膜21の厚みは、たとえば1μm程度である。圧電膜21は、平面略真円形状をなしている。11個の圧電振動子20において、圧電膜21の直径、すなわち面積は互いに異なっている。圧電膜21は、振動領域31に応じた面積を有している。複数の圧電膜21は、Y方向において3列配置となっている。真ん中の列では、3つの圧電膜21がX方向に並んで配置されている。Y方向両端の列では、4つの圧電膜21がX方向に並んで配置されている。各列において、圧電膜21は、面積順に並んでいる。
【0015】
上部電極22は、Z方向において圧電膜21の一面上に配置されている。上部電極22は、周知の電極材料を用いて、スパッタリング法、蒸着法などにより形成されている。上部電極22の層構造は、単層でもよいし、多層でもよい。本実施形態の上部電極22は、TiAl合金を材料として形成されている。上部電極22は、平面視において圧電膜21とほぼ一致する形状をなしている。本実施形態の上部電極22は、平面略真円形状をなしている。上部電極22のそれぞれは、駆動電圧を印加する際の上部電極パッドを兼ねている。
【0016】
下部電極は、Z方向において、圧電膜21の他の一面、すなわち上部電極22が配置された面の裏面に配置されている。下部電極は、上部電極22との間に圧電膜21を挟んでいる。本実施形態の下部電極は、後述するように導電性を付与した半導体膜300のうち、平面視において圧電膜21と重なる部分である。半導体膜300の他の部分の少なくとも一部は、たとえば配線として機能する。半導体膜300の上において、圧電膜21とは異なる位置には、下部電極パッド23が形成されている。下部電極パッド23は、振動領域31とは重ならない位置に形成されている。本実施形態の下部電極パッド23は、真ん中の列をなす3つの圧電膜21とともにX方向に並んで配置されている。下部電極パッド23は、上部電極22と同様の電極材料を用いて形成されている。上部電極22と下部電極パッド23との間に駆動電圧を印加すると、電圧が印加された圧電膜21が伸縮する。圧電膜21は、たとえばXY面内方向に伸縮する。
【0017】
もちろん、半導体膜300に導電性を付与せず、半導体膜300とは別に下部電極を設けてもよい。この場合、下部電極は、上部電極22と同様の電極材料を用いて形成される。
【0018】
振動部30は、第1面30aと、Z方向において第1面30aの裏面である第2面30bを有している。振動部30の第1面30a上に、圧電膜21および下部電極パッド23が配置されている。振動部30は、たとえば、支持体40上に形成された膜により構成されている。振動部30を構成する膜は、単層でもよいし、多層でもよい。このような振動部30は、振動膜、可動膜と称されることがある。本実施形態の振動部30は、半導体膜300と、絶縁膜301を有して構成されている。
【0019】
半導体膜300は、シリコン(Si)などの半導体材料を用いて形成された膜である。本実施形態の半導体膜300は、不純物がドープされることで、下部電極、配線として機能するのに十分な導電性が付与されている。具体的には、シリコン膜にp型の不純物がドープされることで導電性が付与されている。半導体膜300は、Z方向への振動が可能な厚みを有している。たとえば、20~25μm程度である。
【0020】
絶縁膜301は、酸化膜や窒化膜等の電気絶縁性を有する膜である。絶縁膜301は、半導体膜300と支持体40を構成する半導体基板400とを電気的に分離している。本実施形態の絶縁膜301は、酸化シリコン膜である。絶縁膜301は、半導体膜300との積層構造において、Z方向への振動が可能な厚みを有している。
【0021】
振動部30は、複数の振動領域31を有している。振動領域31は、振動部30のうち、圧電膜21の伸縮にともなってZ方向に振動する領域である。振動領域31は、支持体40が有する空洞部41により規定される。振動領域31において、第2面30bには空洞部41が隣接している。振動領域31を除く部分において、第2面30bには半導体基板400が隣接している。このように、振動領域31の直下には空洞部41が存在するため、振動領域31はZ方向に振動することができる。図2において、一点鎖線で囲まれる領域が、振動領域31である。本実施形態の振動領域31は、上記した半導体膜300と絶縁膜301との2層構造である。振動領域31は、圧電膜21と同数設けられている。
【0022】
振動部30は、互いに面積が異なる11個の振動領域31を有している。面積とは、平面視した面積である。振動領域31の第1面30a上には、圧電膜21が個別に配置されている。振動領域31は、平面略真円形状をなしている。平面視において、振動領域31の中心と、振動領域31上に配置された圧電膜21の中心とが、略一致している。複数の振動領域31は、円の半径、直径が互いに異なっている。図3に示すように、振動領域31の半径が大きいほど、つまり面積が大きいほど、共振周波数が低くなる。本実施形態では、振動領域31の半径を800μm~1530μmの範囲内で互いに異なる値とすることで、共振周波数を40kHz~130kHzの範囲で設定した。
【0023】
振動領域31は、圧電振動子20とともに、音波を放射する素子を構成している。振動領域31(素子)それぞれの共振周波数が異なるため、音波スピーカ10は、複数の圧電振動子20に対して駆動電圧を印加することにより、所定の周波数範囲の音波を放射することができる。たとえば、11種類の素子の圧電振動子20すべてに駆動電圧を印加することで、図3に示す周波数範囲(40~130kHz)を有する音波を放射することができる。音波スピーカ10は、圧電振動子20側から音波を放射(出射)する。
【0024】
支持体40は、圧電振動子20および振動部30を支持している。支持体40は、主面40aと、Z方向において主面40aと反対の面である裏面40bを有している。支持体40の主面40a上に、振動部30が配置されている。具体的には、支持体40の主面40aに絶縁膜301が配置され、絶縁膜301上に半導体膜300が積層されている。支持体40の平面形状は、特に限定されない。支持体40は、MEMS技術により加工が可能な材料、たとえば半導体、ガラスなどを用いて形成されている。
【0025】
本実施形態の支持体40は、半導体基板400を有して構成されている。半導体基板400の一面が主面40aをなし、一面と反対の面が裏面40bをなしている。このような支持体40は、支持基板と称されることがある。半導体基板400、つまり支持体40の厚みは、たとえば300μm程度である。本実施形態の半導体基板400は、シリコン基板である。半導体基板400は、上記した半導体膜300、絶縁膜301とともに、いわゆるSOI基板として提供される。SOIは、Silicon on Insulatorの略称である。支持体40は、平面略矩形状をなしている。
【0026】
支持体40は、複数の空洞部41を有している。支持体40は、平板に複数の空洞部41を設けた構成を有している。複数の空洞部41のそれぞれは、Z方向に所定の厚み(深さ)を有しており、少なくとも主面40aに開口している。空洞部41は、エッチングにより支持体40に形成されている。複数の空洞部41は、主面40aにおける開口面積が互いに異なっている。主面40aにおける開口面積を、以下では単に開口面積と示すことがある。空洞部41における主面40aの開口部分は、振動部30によって閉塞されている。空洞部41において、主面40aにおける開口部分が、振動領域31を規定している。空洞部41の主面40aにおける開口部分は、振動部30のうち、平面視において重なる部分(一致する部分)を振動領域31として規定する。空洞部41は、振動領域31と同数設けられている。
【0027】
本実施形態の支持体40(半導体基板400)は、開口面積が互いに異なる11個の空洞部41を有している。そして、空洞部41のそれぞれに、振動領域31が隣接している。空洞部41において、主面40aにおける開口部分は、平面略真円形状をなしている。空洞部41のそれぞれは、Z方向に延び、支持体40の裏面40bに開口している。空洞部41は、平面形状を維持しつつ所定の厚みを有する第1空洞領域41aをそれぞれ有している。第1空洞領域41aは、主面40aからZ方向に所定の厚み(深さ)を有しており、平面形状が厚み方向において一定の領域である。第1空洞領域41aは、主面40aにおける開口部分も含むため、振動領域31を規定する。第1空洞領域41aは、平面略真円の筒状をなしている。本実施形態の第1空洞領域41aは、裏面40bまで延びている。つまり、第1空洞領域41aが、空洞部41に一致する。複数の空洞部41において、第1空洞領域41aの厚みは、互いにほぼ等しい。空洞部41は、反応性イオンエッチング(RIE)などのドライエッチングにより形成されている。
【0028】
第1空洞領域41aは、図2に示すように厚みt1を有している。本実施形態において、厚みt1は、支持体40をなす半導体基板400の厚みに等しい。厚みt1は、所定の値に設定されている。厚みt1は、λ×1/4未満となるように設定されている。波長λは、音速cを、音波スピーカ10が放射する音波の周波数範囲の上限で除算した値である。上限とは、開口面積がもっとも小さい空洞部41により規定される振動領域31の共振周波数である。たとえば、上記したように40~130kHzの周波数範囲の音波を放射する場合、音速cを130kHzで除算した値が波長λである。
【0029】
ベース部材50は、圧電振動子20、振動部30、および支持体40の構造体が固定される部材である。ベース部材50は、たとえば、上記構造体を保護するパッケージ、ケースである。本実施形態のベース部材50は、セラミックパッケージである。ベース部材50の一面に、固定部材60を介して支持体40(上記構造体)が固定されている。固定部材60は、支持体40をベース部材50に固定できるものであればよい。固定部材60は、空洞部41を避けて設けられている。
【0030】
本実施形態の固定部材60は、接合材である。図1および図2に示すように、固定部材60は、たとえば支持体40の裏面40bの四隅に配置されている。固定状態で、支持体40の裏面40bは、ベース部材50に対して浮いている。支持体40は、複数の空洞部41の間で気体を流通可能に、ベース部材50に固定されている。空洞部41は、裏面40bとベース部材50との間の隙間を通じて互いに連通している。固定部材60が四隅配置のため、平面視において支持体40の周囲とも気体の流通が可能である。
【0031】
固定部材60の配置は、上記した四隅に限定されない。ベース部材50上に支持体40を安定的に固定できる配置であればよい。たとえば、平面略形状の支持体40に対して、互いに対向する2辺に沿って配置してもよい。
【0032】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態の音波スピーカ10によれば、振動領域31の第1面30a側に圧電膜21を設け、第1面30aとは反対の第2面30b側に空洞部41を設けている。よって、音波スピーカ10は、圧電膜21側から音波を放射する。
【0033】
また、支持体40に複数の空洞部41を設け、支持体40の主面40a上に振動部30を設けている。振動部30のうち、圧電膜21の伸縮にともなって振動する振動領域31は、隣接する空洞部41によって規定される。複数の空洞部41は、主面40aの開口面積が互いに異なっている。したがって、所定の周波数範囲の音波、すなわち広帯域の音波を放射することができる。音波スピーカ10は、たとえば、上記した40kHz~130kHzの周波数範囲を有する音波を、圧電膜21側から放射することができる。この場合、半径が1530μmの振動領域31が第1振動領域に相当し、半径が800μmの振動領域31が第2振動領域に相当する。半径1530μmの振動領域31の共振周波数40kHzが、周波数範囲の下限に相当する。半径800μmの振動領域31の共振周波数130kHzが、周波数範囲の上限に相当する。
【0034】
また、MEMS技術を用いて、音波スピーカ10が形成されている。たとえば、単一の支持体40(半導体基板400)に、開口面積の異なる複数の空洞部41が形成されている。以上より、広帯域の音波スピーカ10を小型化することができる。
【0035】
振動領域31および空洞部41の数は、上記した例に限定されない。振動領域31および空洞部41の数は複数であればよい。たとえば、2つの振動領域31と2つの空洞部41を有する構成としてもよい。2つの空洞部41は、主面40aにおける開口面積が互いに異なる。これにより、2つの振動領域31の共振周波数が互いに異なる。開口面積の大きい空洞部41により規定される振動領域31が第1振動領域に相当し、この振動領域31の共振周波数が周波数範囲の下限となる。開口面積の小さい空洞部41により規定される振動領域31が第2振動領域に相当し、この振動領域31の共振周波数が周波数範囲の上限となる。なお、圧電膜21を含む圧電振動子20の数についても同様である。
【0036】
本実施形態では、音波スピーカ10に構成された11個の素子の圧電振動子20すべてに同じタイミング(通電期間)で駆動電圧を印加し、40kHz~130kHzの周波数範囲を有する音波を放射する例を示した。このように、放射する音波が、可聴周波数を超え、200kHzを上限とする周波数範囲を少なくとも含むと、ハイパーソニック・エフェクトを得るための音波スピーカとして適用することができる。可聴周波数の上限は、一般に20kHzである。
【0037】
素子の駆動例は上記した例に限定されない。音波スピーカ10に設けられた素子の一部である複数の素子の圧電振動子20のみに駆動電圧を印加し、所定の周波数範囲の音波を放射してもよい。駆動電圧を印加する素子を切り替えることで、周波数範囲を、経時的に変化させてもよい。一時的にひとつの素子のみに駆動電圧を印加してもよい。
【0038】
また、すべての素子の共振周波数を、可聴周波数を超える周波数としたが、これに限定されない。複数の素子の一部について、共振周波数を可聴周波数域としてもよい。たとえば、可聴周波数を超え、200kHzを上限とする周波数範囲の音波と、可聴周波数域内の周波数範囲の音波とを出射するように、複数の空洞部41の開口面積を設定してもよい。この場合、ひとつの音波スピーカ10により、ハイパーソニック・エフェクトが期待できる。また、すべての素子の共振周波数を、可聴周波数の範囲内で設定してもよい。複数の空洞部41を共通の支持体40に構成することで、音波スピーカ10の体格を小型化することができる。
【0039】
印加する駆動電圧を高めると、音圧を高めることができる。本実施形態では、複数の空洞部41が支持体40の裏面40bにも開口している。そして、支持体40は、複数の空洞部41の間で気体を流通可能に、ベース部材50に固定されている。複数の空洞部41が相互に連通することで、音波を出射する側と反対側に大きな空間を構成する。したがって、空洞部41が互いに連通しない構成に較べて、振動に対する気体の抵抗が小さくなり、音圧を高めることができる。特に本実施形態では、空洞部41が支持体40の周囲の空間とも連通しているため、音圧をより高めやすい。
【0040】
本実施形態では、空洞部41が、第1空洞領域41aを有している。上記したように、第1空洞領域41aは、主面40aからZ方向に所定の厚み(深さ)を有しており、平面形状が厚み方向において一定の領域である。このように、平面形状を維持したまま所定の厚みを有し、主面40aに開口する領域を有すると、エッチングにより、振動領域31の形状、ひいては面積を規定しやすい。つまり、所望の共振周波数を設定しやすい。
【0041】
本実施形態では、第1空洞領域41aが、平面略真円の筒状をなしている。これにより、振動領域31も、平面略真円形状をなしている。真円形状のため、不要振動や周波数ばらつきを抑制し、特定の周波数の振幅を大きくすることができる。つまり、音圧を高めることができる。
【0042】
図4は、定在波を説明するための図である。一点鎖線が裏面反射による比音響インピーダンスを示し、実線および破線が振幅を示している。振動領域31の第2面30bから出射した音波は、第1空洞領域41aの端部(裏面40b)で反射し、振動領域31に戻る。振動領域31の第2面30bから第1空洞領域41aの端部までの距離がλ/4の奇数倍になると、振動領域31の第2面30bは、出射時と反射との位相がπずれて固定端となる。そして、振動領域31の第2面30bが節、第1空洞領域41aの端部が腹の定在波が生じ、音響インピーダンスが極大となる。これにより、振動領域31の振幅が抑制され、特定周波数の音圧が低下する。
【0043】
本実施形態のように、複数の空洞部41が空間的につながった構成では、音波が、振動する振動領域31とは別の振動領域31にも伝わる。音波を放射した振動領域31とは別の振動領域31の第2面30bが反射面となり、定在波が生じ得る。音波を反射した振動領域31の第2面30bから、該振動領域31を規定する空洞部41の第1空洞領域41aの開口端までの距離がλ/4の奇数倍になると、定在波が生じる。図5に示すように、反射した第2面30bと音波を発した第2面30bがともに節、第1空洞領域41aの端部が腹となる。空洞部41の空間が小さいと音響インピーダンスが大きくなり、定在波の影響が大きくなる。特に、開口面積がもっとも小さい空洞部41により規定される振動領域31での反射を考慮する必要がある。図5の一点鎖線は、放射した音波を示している。
【0044】
図6は、参考例について周波数と振幅の測定結果を示す図である。参考例では、上記した11種類の素子を個別に設けた。つまり、図6は、各素子に対応する空洞部が互いに連通していない構成の測定結果を示している。図6に示すように、40kHz~130kHzの周波数範囲に、11個のピークが確認できた。複数の空洞部が互いに連通しない構成では、上記した反射のうち、第1空洞領域41aの端部の反射を考慮すればよい。振動領域31の第2面30bから第1空洞領域41aの端部までの距離がλ/4の奇数倍とならないように個別に設計することで、定在波による音圧の低下を抑制することができる。
【0045】
図7は、反射による音響インピーダンスの増大を示す図である。図7は、シミュレーション結果である。厚みを考慮せずに複数の空洞部を空間的に繋げた場合、図7に示すように、100kHz付近で音響インピーダンスの増大が確認できた。これは、100kHz付近の音波を放射する際に、開口面積がもっとも小さい空洞部41において定在波発生の条件を満たすことを示している。便宜上図示を省略するが、本実施形態同様、単一の音波スピーカに11種類の素子を設けた構成について周波数と振幅の測定をしたところ、図6に示した100kHz付近の振幅が低下することを確認できた。
【0046】
本実施形態では、上記知見をもとに、厚みt1が、λ×1/4未満となるように設定されている。波長λは、上記したように、音速cを、音波スピーカ10が放射する音波の周波数範囲の上限、つまり開口面積がもっとも小さい振動領域31の共振周波数で除算した値である。本実施形態では、音速cを130kHzで除算した値である。音速は331m/sであるため、波長λ(最小波長)は、乾燥空気中において2.55mmである。λ×1/4は638μmとなる。上記したように、支持体40の厚みは300μmであり、厚みt1はλ×1/4未満となるように設定されている。
【0047】
上記したように、波長λは、所定周波数範囲の音波において最小の波長である。よって、t1<λ×1/4を満たすことで、いずれの波長、つまりいずれの周波数においても、定在波が生じるのを抑制することができる。
【0048】
厚みt1を、λ×1/8以下にするとよい。これによれば、定在波をより効果的に抑制することができる。40kHz~130kHzの周波数範囲を有する音波を放射する場合、λ×1/8は319μmとなる。本実施形態では、支持体40(半導体基板400)の厚みを300μmにしているため、厚みt1がλ×1/8以下となる。
【0049】
本実施形態では、振動部30が絶縁膜301を含む例を示したが、これに限定されない。支持体が絶縁膜および半導体基板を含む構成としてもよい。この場合、半導体膜を底として絶縁膜もエッチングされ、半導体基板および絶縁膜にわたって空洞部が形成される。振動部は半導体膜により構成され、半導体膜の裏面に空洞部が隣接する。
【0050】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、第1空洞領域41aが空洞部41に一致していた。これに代えて、空洞部41が、第1空洞領域41aに連なる第2空洞領域41bを有してもよい。
【0051】
図8は、本実施形態の音波スピーカ10を示す断面図である。空洞部41は、第1空洞領域41aと、第2空洞領域41bをそれぞれ有している。第1空洞領域41aは、裏面40bに開口していない。Z方向において、主面40aから空洞部41の途中までが、第1空洞領域41aである。第2空洞領域41bは、第1空洞領域41aに連なり、裏面40bに開口している。第2空洞領域41bは、平面視において第1空洞領域41aを内包している。
【0052】
本実施形態では、第1空洞領域41aおよび第2空洞領域41bが、ともに平面略真円の筒状をなしている。第2空洞領域41bも、平面形状を維持しつつZ方向に延びている。第2空洞領域41bの裏面40bの開口面積は、第1空洞領域41aの主面40aの開口面積よりも大きい。第1空洞領域41aは縮径領域であり、第2空洞領域41bは第1空洞領域41aよりも直径が長い拡径領域である。空洞部41は、径の異なる第1空洞領域41aと第2空洞領域41bによる段差構造をそれぞれ有している。
【0053】
また、本実施形態では、振動部30が半導体膜300を有している。半導体膜300の一面が第1面30aをなし、一面とは反対の面が第2面30bをなしている。支持体40は、半導体基板400と絶縁膜401を有している。半導体膜300を底として絶縁膜401もエッチングされ、半導体基板400および絶縁膜401にわたって空洞部41が形成されている。絶縁膜401の一面が主面40aをなしている。半導体膜300のうち、空洞部41(第1空洞領域41a)に隣接する部分が振動領域31をなしている。それ以外の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0054】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態では、空洞部41が、上記した第2空洞領域41bを有している。第2空洞領域41bは第1空洞領域41aよりも面積が大きいため、第1空洞領域41aと第2空洞領域41bの界面が音波の反射面となる。この界面が、先行実施形態に記載した第1空洞領域41aの裏面40b側の端部に相当する。図8では、界面を一点鎖線で示している。よって、すべての空洞部41において、第1空洞領域41aの厚みt1をλ×1/4未満とすることで、第1空洞領域41aの端部(界面)での反射による定在波、および、他の振動領域31の第2面30bでの反射による定在波が生じるのを抑制することができる。
【0055】
また、空洞部41が第2空洞領域41bを有することで、支持体40の厚みを、第1空洞領域41aのみ有する構成に較べて厚くすることができる。これにより、定在波を抑制すべく、厚みt1を薄くしても、支持体40の剛性を確保しやすくなる。特に、厚みt1を、λ×1/8以下に設定しやすくなる。
【0056】
また、第2空洞領域41bを有することで、空洞部41の空間が拡大するため、音圧を高めることができる。
【0057】
本実施形態では、支持体40が、第1空洞領域41aと第2空洞領域41bによる段差構造を有している。段差構造とすることで、特定の周波数での反射強度を低下させることができる。よって、裏面側の反射による音圧の低下を抑制することができる。
【0058】
<変形例>
支持体40が絶縁膜401を含み、空洞部41が半導体基板400から絶縁膜401にわたって形成される例を示したが、これに限定されない。先行実施形態(図2参照)同様、振動部30が半導体膜300と絶縁膜301を有し、支持体40が半導体基板400のみを有する構成において、上記した第2空洞領域41bを適用してもよい。
【0059】
第2空洞領域41bが、平面形状を維持しつつZ方向に延びる例を示したが、これに限定されない。図9に示すように、第2空洞領域41bを多段に構成してもよい。図9では、一例として2段となっている。第2空洞領域41bのうち、1段目は裏面40bに開口し、平面形状を維持しつつZ方向に延びている。2段目は、平面形状を維持しつつZ方向に延びている。2段目は、1段目と第1空洞領域41aとに連なっている。1段目は平面視において2段目を内包し、2段目は平面視において第1空洞領域41aを内包している。これによれば、段数が増えるため、特定周波数の反射強度をさらに低下させることができる。なお、第2空洞領域41bの段数は2段に限定されない。3段以上としてもよい。
【0060】
音圧低下を抑制する構造としては、上記した段差構造に限定されない。第2空洞領域41bの少なくとも一部を、裏面40bから主面40a側に向けて連続的に面積が減少するテーパ構造としてもよい。段差構造と同等の効果を期待することができる。
【0061】
たとえば、図10に示す例では、空洞部41のうち、絶縁膜401内の部分が第1空洞領域41aをなし、半導体基板400の部分が第2空洞領域41bをなしている。第2空洞領域41bは、その厚み方向の全長においてテーパ構造をなしている。図11に示す例では、裏面40bから半導体基板400の途中まで、第2空洞領域41bが設けられている。第2空洞領域41bは、その厚み方向の全長においてテーパ構造をなしている。また、第2空洞領域41bの途中までテーパ構造としてもよい。上記構造の空洞部41は、たとえば、ドライエッチングと異方性エッチングの組み合わせにより形成することができる。第2空洞領域41bの途中までテーパ構造としてもよい。
【0062】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、複数の空洞部41において、第2空洞領域41bが互いに独立して設けられていた。これに代えて、第2空洞領域41bの少なくともひとつを、複数の第1空洞領域41aに連なる共通の領域としてもよい。
【0063】
図12は、本実施形態の音波スピーカ10を示す断面図である。空洞部41は、第2実施形態同様、第1空洞領域41aと第2空洞領域41bを有している。図12に示す例では、第2空洞領域41bが、すべての第1空洞領域41aに連なっている。つまり、第2空洞領域41bは、すべての空洞部41において共通の領域となっている。支持体40は、複数の振動領域31を規定する複数の第1空洞領域41aと、ひとつの第2空洞領域41bを有している。第2空洞領域41bは、平面視においてすべての第1空洞領域41aを内包するように設けられている。上記以外の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0064】
<第3実施形態のまとめ>
上記したように、第2空洞領域41bの少なくともひとつを、複数の第1空洞領域41aに連なる共通の領域とすると、空洞部41の空間をさらに拡大することができる。これにより、音圧を高めることができる。
【0065】
図12では、第2空洞領域41bが、平面略真円の筒形状をなしている。これにより、第1空洞領域41aと第2空洞領域41bとにより、段差構造が形成されている。したがって、先行実施形態に記載の効果を奏することができる。共通領域を形成する第2空洞領域41bを、先行実施形態に記載のテーパ構造としてもよい。
【0066】
本実施形態では、すべての空洞部41について第2空洞領域41bを共通にする例を示したが、これに限定されない。すべての空洞部41の一部である複数について、第2空洞領域41bを共通にしてもよい。たとえば、X方向に並ぶ空洞部41について、第2空洞領域41bを共通にしてもよい。これによれば、各列で第2空洞領域41bが共通化され、支持体40は3つの第2空洞領域41bを有することとなる。
【0067】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0068】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0069】
空洞部41が第1空洞領域41aを有する例を示したが、これに限定されない。空洞部41がその厚み方向の全長においてテーパ構造を有してもよい。たとえば、絶縁膜301を底面として半導体基板400に異方性エッチングを施すことで、全長においてテーパ構造をなす空洞部41を形成することができる。この場合、空洞部41の主面40aに開口する形状および振動領域31の平面形状は、略矩形状(長方形)となる。開口面積を互いに異ならせることで、広帯域の音波スピーカ10を小型化することができる。
【0070】
空洞部41が支持体40の裏面40bに開口する例を示したが、これに限定されない。たとえば、振動部30の半導体膜300にエッチングホールを形成し、第1面30a側から絶縁膜401をエッチング(いわゆる犠牲層エッチング)することで、絶縁膜401の一部を除去し、空洞部41を形成してもよい。主面40aに開口する空洞部41の開口面積を互いに異ならせることで、広帯域の音波スピーカ10を小型化することができる。
【0071】
支持体40上の膜、具体的には半導体膜300、絶縁膜301を振動部30とする例を示したが、これに限定されない。たとえば、半導体基板をエッチングしてダイアフラム(薄肉部)を形成し、ダイアフラムを含む部分を所定厚みの部分を振動部とし、振動部に連なる厚肉部を支持体としてもよい。半導体基板に形成された空洞部は、支持体の主面に開口し、振動領域であるダイアフラムを規定する。
【0072】
複数の空洞部41が、支持体40の周囲、つまり外部雰囲気と連通する例を示したが、これに限定されない。たとえば、支持体40の裏面40bの縁部全周に固定部材60(接合材)を配置し、外部雰囲気と空洞部41とを遮断してもよい。遮断された状態でも、空洞部41を含む空間が広いほど、音圧を高めることができる。
【0073】
空洞部41内に空気が配置される例を示したが、これに限定されない。空洞部41の内部に、空気よりも高密度の気体が配置されてもよい。この場合、共振周波数が低周波側にシフトする。また、空洞部41の内部に、空気よりも低密度の気体が配置されてもよい。この場合、共振周波数が高周波側にシフトする。空気とは異なる気体を配置することで、定在波が生じないように周波数をシフトさせてもよい。これらの気体を、空洞部41内に封入(封止)してもよい。空洞部41の内部を減圧(真空)にしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…音波スピーカ、20…圧電振動子、21…圧電膜、22…上部電極、23…下部電極パッド、30…振動部、300…半導体膜、301…絶縁膜、30a…第1面、30b…第2面、31…振動領域、40…支持体、400…支持基板、401…絶縁膜、40a…主面、40b…裏面、41…空洞部、41a…第1空洞領域、41b…第2空洞領域、50…ベース部材、60…固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12