(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】汎用エンジンの始動装置及び汎用エンジン
(51)【国際特許分類】
F02N 15/02 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
F02N15/02 K
F02N15/02 D
(21)【出願番号】P 2020213343
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】株式会社Willbe
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石山 明洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 拓弥
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-248653(JP,A)
【文献】特公昭46-029202(JP,B1)
【文献】特開平11-280625(JP,A)
【文献】特開2000-186657(JP,A)
【文献】特開2007-239544(JP,A)
【文献】実公昭46-035939(JP,Y1)
【文献】特開2018-131965(JP,A)
【文献】特開2007-100539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタータモータと、
前記スタータモータの出力軸に取り付けられたピニオンギアと、
カムシャフトに取り付けられたカムシャフトギアと、
クランクシャフトに取り付けられていて前記カムシャフトギアと噛合するクランクシャフトギアと、
前記ピニオンギアを介した前記スタータモータの駆動力を前記カムシャフトギアに伝達するとともに、前記カムシャフトギアの駆動力は前記ピニオンギアに伝達しないように構成されたギアアセンブリと、
を備え、
前記ピニオンギア、前記カムシャフトギア、前記クランクシャフトギア、及び、前記ギアアセンブリは、前記ピニオンギアと前記ギアアセンブリに含まれるギアとが噛合した状態で
前記クランクシャフトのクランクピン、クランクアーム及びカウンターウェイトを収容する空間内に配置されている
汎用エンジンの始動装置。
【請求項2】
前記ギアアセンブリは、前記ピニオンギアと噛合する第1ギアと、前記カムシャフトギアと噛合する第2ギアと、前記第1ギアからの駆動力を前記第2ギアに伝達可能なワンウェイクラッチとを含む
請求項1に記載の汎用エンジンの始動装置。
【請求項3】
前記第1ギアの歯数は、前記ピニオンギアの歯数より大きい
請求項2に記載の汎用エンジンの始動装置。
【請求項4】
前記第2ギアの歯数は、前記カムシャフトギアの歯数よりも小さい
請求項2又は3に記載の汎用エンジンの始動装置。
【請求項5】
前記ギアアセンブリは、前記ワンウェイクラッチが前記第1ギアの駆動力を前記第2ギアに伝達する場合には、前記第1ギアと前記第2ギアとが同じ回転速度で回転するように構成されている
請求項2乃至4の何れか一項に記載の汎用エンジンの始動装置。
【請求項6】
前記ギアアセンブリは、前記第1ギアと前記第2ギアとが同軸に配置されている
請求項2乃至5の何れか一項に記載の汎用エンジンの始動装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の始動装置
を備える汎用エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汎用エンジンの始動装置及び汎用エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば汎用のレシプロエンジンでは、エンジンの始動にあたり、人力で又はスタータモータからの駆動力でクランキングを行うようにしている。
例えば汎用のエンジンの始動装置として、スタータモータの出力軸に取り付けられたピニオンギアと、このピニオンギアによって駆動される被駆動歯車とが、エンジンの始動時には噛合い、エンジンの始動後は噛合いが解除されるよう構成された始動装置が知られている。
汎用のエンジンの上述したような始動装置では、一般的に上述したピニオンギアと被駆動歯車とがクランクケースの外部に配置されることが多い。そのため、ピニオンギアや被駆動歯車に付着した異物が噛み込まれることでピニオンギアや被駆動歯車が摩耗することや、始動時の騒音が比較的大きくなることが課題となっていた。
【0003】
また、上述したピニオンギアと被駆動歯車とがクランクケースの内部に配置された始動装置も知られている(例えば特許文献1参照)。
例えば、特許文献1に記載の始動装置のように、スタータモータの出力軸に取り付けられたピニオンギアと、このピニオンギアによって駆動される被駆動歯車とをクランクケースの内部に配置すれば、上述した摩耗や騒音を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般的に、スタータモータによってクランクシャフトを回転させるためには、ピニオンギアの回転を比較的大きな減速比で減速させる必要があるので、ピニオンギアの駆動力をクランクシャフトに伝達するためのギア等が比較的大きくなってしまう。そのため、例えば、特許文献1に記載の始動装置のように、スタータモータの出力軸に取り付けられたピニオンギアと、このピニオンギアによって駆動される被駆動歯車とをクランクケースの内部に配置した場合、クランクケースの大きさが大きくなる等して、エンジンの大きさが大きくなってしまうおそれがある。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、汎用エンジンの始動装置に関し、摩耗や騒音を抑制しつつ小型化を図れる始動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る汎用エンジンの始動装置は、
スタータモータと、
前記スタータモータの出力軸に取り付けられたピニオンギアと、
カムシャフトに取り付けられたカムシャフトギアと、
クランクシャフトに取り付けられていて前記カムシャフトギアと噛合するクランクシャフトギアと、
前記ピニオンギアを介した前記スタータモータの駆動力を前記カムシャフトギアに伝達するとともに、前記カムシャフトギアの駆動力は前記ピニオンギアに伝達しないように構成されたギアアセンブリと、
を備え、
前記ピニオンギア、前記カムシャフトギア、前記クランクシャフトギア、及び、前記ギアアセンブリは、前記ピニオンギアと前記ギアアセンブリに含まれるギアとが噛合した状態でクランクケース内に配置されている。
【0008】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る汎用エンジンは、上記(1)の構成の始動装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、摩耗や騒音を抑制しつつ小型化を図れる始動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るエンジン及び始動装置をクランクシャフトの軸線方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るエンジン及び始動装置をクランクシャフトの軸線方向から見た図である。なお、
図1では、説明の便宜上、シリンダヘッドや、後述するクランクケース等を取り外した状態を表している。
図2は、
図1のII-II矢視図である。
【0013】
図1及び
図2に示した一実施形態に係るエンジン1は、例えば発電機、ポンプや草刈り機等の作業機の動力源として用いられる汎用エンジンである。一実施形態に係るエンジン1は、例えば単気筒の4サイクルエンジンであり、1つのシリンダ3と、シリンダ3内に配置された1つの不図示のピストンと、該ピストンが不図示のコネクティングロッドを介して連結される1つのクランクシャフト5とを備えている。なお、
図1及び
図2に示した一実施形態に係るエンジン1では、エンジン1の上下方向は、
図1における図示上下方向と同方向であるものとする。
【0014】
一実施形態に係るエンジン1は、後で詳述する始動装置10を備えている。一実施形態に係る始動装置10は、クランクシャフト5の一端側(
図1における紙面手前側及び
図2における図示下側)に配置されていて、エンジン1と一体的に設けられている。
【0015】
一実施形態に係るエンジン1は、シリンダーブロック20と、クランクケース40とを備えている。一実施形態に係るエンジン1では、シリンダーブロック20は、クランクシャフト5のクランクピン51、クランクアーム53及びカウンターウェイト55を収容する空間23を画定する収容部22を含んでいる。
一実施形態に係るエンジン1では、収容部22の側方、より具体的にはクランクシャフト5の上記一端側の側方が開口している。すなわち、一実施形態に係るエンジン1では、収容部22は、この開口部分を形成する開口部24を含んでいる。
【0016】
一実施形態に係るエンジン1では、シリンダーブロック20の側方に取り付けられたクランクケース40は、開口部24が形成する開口を覆っている。
すなわち、一実施形態に係るエンジン1では、シリンダーブロック20の下部領域と、該下部領域の側方に開いた開口を閉じるクランクケース40とで囲まれる空間23内にクランクシャフト5のクランクピン51、クランクアーム53及びカウンターウェイト55が収容されている。
【0017】
なお、一実施形態に係るエンジン1では、クランクケース40は、シリンダーブロック20の開口部24からクランクシャフト5の中心軸AXcに沿って上記一端側の端部57aに向かって膨出するように形成されている。そのため、上記の空間23は、シリンダーブロック20の開口部24からクランクケース40が上述したように膨出する方向に広がっている。
【0018】
一実施形態に係るエンジン1では、クランクケース40からクランクシャフト5の上記一端側の軸部57が突出している。また、一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5の他端側の不図示の軸部が一端側の軸部57とは反対側に向かって収容部22から突出している。一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5の上記他端側の不図示の軸部には、不図示のフライホイールが取り付けられている。
【0019】
一実施形態に係るエンジン1では、クランクシャフト5の上記一端側の軸部57にクランクシャフトギア50が取り付けられている。
一実施形態に係るエンジン1は、不図示のロッドを介して不図示の吸気バルブ及び排気バルブを駆動するためのカムシャフト6と、カムシャフト6に対して同軸となるように取り付けられたカムシャフトギア60とを備えている。一実施形態に係るエンジン1では、カムシャフトギア60は、クランクシャフトギア50と噛合している。
【0020】
一実施形態に係るエンジン1は、スタータモータ7と、スタータモータ7の出力軸71に取り付けられたピニオンギア70と、ギアアセンブリ100とを備えている。一実施形態に係るエンジン1では、ギアアセンブリ100は、後で詳述するように、ピニオンギア70を介したスタータモータ7の駆動力をカムシャフトギア60に伝達するとともに、カムシャフトギア60の駆動力はピニオンギア70に伝達しないように構成されている。
【0021】
一実施形態に係る始動装置10は、上述したスタータモータ7と、ピニオンギア70と、カムシャフトギア60と、クランクシャフトギア50と、ギアアセンブリ100と、を備える。
一実施形態に係る始動装置10では、ピニオンギア70、カムシャフトギア60、クランクシャフトギア50、及び、ギアアセンブリ100は、ピニオンギア70とギアアセンブリ100に含まれるギアである第1ギア110とが噛合した状態でクランクケース40内、より具体的には上述した空間23内に配置されている。
【0022】
汎用エンジンの従来の始動装置として、スタータモータの出力軸に取り付けられたピニオンギアと、このピニオンギアによって駆動される被駆動歯車とが、エンジンの始動時には噛合い、エンジンの始動後は噛合いが解除されるよう構成された始動装置が知られている。
汎用エンジンの上述したような従来の始動装置では、一般的に上述したピニオンギアと被駆動歯車とがクランクケースの外部に配置されることが多い。そのため、ピニオンギアや被駆動歯車に付着した異物が噛み込まれることでピニオンギアや被駆動歯車が摩耗することや、始動時の騒音が比較的大きくなることが課題となっていた。
【0023】
一実施形態に係る始動装置10によれば、ピニオンギア70とギアアセンブリ100に含まれる第1ギア110とが噛合した状態でクランクケース40内に配置されているので、エンジン1の始動時における始動装置10からの騒音を低減できるとともに、これらのギアが異物によって摩耗することを抑制できる。また、一実施形態に係る始動装置10によれば、スタータモータ7からの駆動力がカムシャフトギア60を介してクランクシャフト5に伝達されるように構成されているので、予めエンジン1が備えているカムシャフトギア60を始動装置10の一部として利用している。これにより、始動装置10の小型化を図れる。
また、一実施形態に係るエンジン1によれば、一実施形態に係る始動装置10を備えるので、上述したように始動装置10の小型化を図れて、エンジン1の大きさが大きくなることを抑制できる。
【0024】
以下、一実施形態に係る始動装置10についてさらに説明する。
一実施形態に係る始動装置10では、ギアアセンブリ100は、ピニオンギア70と噛合する第1ギア110と、カムシャフトギア60と噛合する第2ギア120と、第1ギア110からの駆動力を第2ギア120に伝達可能なワンウェイクラッチ130とを含む。
【0025】
より具体的には、一実施形態に係るギアアセンブリ100では、第1ギア110と第2ギア120とは、同軸となるように中心軸AXaに沿って並べて配置されている。
一実施形態に係るギアアセンブリ100では、第1ギア110は、ピニオンギア70の歯と噛合する歯が外周に形成されている、円盤形状を有するギア部111と、中心軸AXaに沿ってギア部111から第2ギア120側に向かって突出し、円筒形状を有するボス部113とを含む。一実施形態に係る第1ギア110には、中心軸AXaに沿ってギア部111及びボス部113を貫通する貫通孔115が形成されている。
【0026】
一実施形態に係るギアアセンブリ100では、第2ギア120は、カムシャフトギア60の歯と噛合する歯が外周に形成されている、円盤形状を有するギア部121と、中心軸AXaに沿って中心軸AXaの一方側及び他方側に向かってギア部121から突出する軸部123とを含む。一実施形態に係る第2ギア120には、中心軸AXaに沿って第1ギア110側から第2ギア120側に向かって凹んでいる凹部125が形成されている。すなわち、一実施形態に係る第2ギア120には、有底円筒形状を有する円筒の外周部にカムシャフトギア60の歯と噛合する歯が形成されている。一実施形態に係る第2ギア120には、有底円筒の底に相当する円盤部分の両側面から軸部123が突出している。一実施形態に係る第2ギア120において、凹部125は、有底円筒形状を有する円筒の内周面と、有底円筒の底に相当する円盤部分の側面と、軸部123の外周面とによって形成されている。
【0027】
一実施形態に係るギアアセンブリ100では、ワンウェイクラッチ130は、同軸上の内輪131と外輪133の間で一方向のトルクを伝達する構造を有するものである。一実施形態に係るギアアセンブリ100では、ワンウェイクラッチ130は、第2ギア120の凹部125に配置される。
一実施形態に係るギアアセンブリ100では、ワンウェイクラッチ130の内輪131の内周面は、第1ギア110のボス部113の外周面に固定され、ワンウェイクラッチ130の外輪133の外周面は、第2ギア120の凹部125の内周面、すなわち、有底円筒形状を有する円筒の内周面に固定される。したがって、一実施形態に係るギアアセンブリ100では、第1ギア110のボス部113は、第2ギア120の凹部125に入り込んだ状態となっている。
【0028】
一実施形態に係るギアアセンブリ100では、例えば、第2ギア120の軸部123のうち、第1ギア110側から第2ギア120側に向かって突出する領域が不図示の軸受を介してシリンダーブロック20に回動可能に軸支され、第2ギア120側から第1ギア110側に向かって突出する領域が不図示の軸受を介してクランクケース40に回動可能に軸支されている。
なお、ギアアセンブリ100は、シリンダーブロック20及びクランクケース40に固定された軸部材に対して第1ギア110及び第2ギア120が回動可能に軸支されていてもよい。
【0029】
一実施形態に係る始動装置10では、ギアアセンブリ100が上述した構成を有するので、ピニオンギア70とクランクシャフトギア50の間の動力の伝達経路上にワンウェイクラッチ130が存在することとなる。なお、一実施形態に係る始動装置10では、スタータモータ7からの駆動力は、出力軸71、ピニオンギア70、第1ギア110、ワンウェイクラッチ130、第2ギア120、カムシャフトギア60、クランクシャフトギア50、及び、クランクシャフト5の順で伝達される。
一実施形態に係るギアアセンブリ100では、クランキング時のスタータモータ7からの駆動力を第1ギア110から第2ギア120に伝達できるように、ワンウェイクラッチ130によるトルクの伝達方向が設定されている。したがって、クランキング時にエンジン1が起動してクランクシャフト5の回転速度がスタータモータ7からの駆動力によってクランクシャフト5を回転させることができる速度を上回っても、第2ギア120に伝達されたクランクシャフト5からの駆動力は、ワンウェイクラッチ130で遮断されて、第1ギア110に伝達されない。よって、クランキング時にエンジン1が起動してクランクシャフト5の回転速度がスタータモータ7からの駆動力によってクランクシャフト5を回転させることができる速度を上回っても、クランクシャフト5からの駆動力がワンウェイクラッチ130で遮断されてスタータモータ7に伝達されない。さらに、ピニオンギア70と第1ギア110とが常時噛合していても、エンジン1の運転中のクランクシャフト5からの駆動力がワンウェイクラッチ130で遮断されてスタータモータ7に伝達されない。
【0030】
汎用エンジンでは、汎用エンジンを搭載する作業機の負荷を負担した状態で始動を行うことが多いため、キックバックが発生し易く、スタータモータの出力軸を破損するおそれがある。
【0031】
一実施形態に係る始動装置10では、第1ギアの歯数は、ピニオンギアの歯数より大きい。
これにより、ピニオンギア70の回転速度が第1ギア110で減速されるので、第1ギア110から出力される駆動トルクをピニオンギア70から出力される駆動トルクよりも大きくすることができる。したがって、一実施形態に係る始動装置10によれば、エンジン1の始動の確実性が増し、キックバック等の発生を抑制して、スタータモータ7の出力軸71の破損等のリスクを低減できる。
【0032】
一実施形態に係る始動装置10では、第2ギア120の歯数は、カムシャフトギア60の歯数よりも小さい。
これにより、第2ギア120の回転速度がカムシャフトギア60で減速されるので、カムシャフトギア60から出力される駆動トルクを第2ギア120から出力される駆動トルクよりも大きくすることができる。したがって、一実施形態に係る始動装置10によれば、エンジン1の始動の確実性が増し、キックバック等の発生を抑制して、スタータモータ7の出力軸71の破損等のリスクを低減できる。
【0033】
このように、一実施形態に係る始動装置10では、ギアアセンブリ100を上述したように配置することで、ピニオンギア70の回転速度が段階的に減速されるので、カムシャフトギア60から出力される駆動トルクをピニオンギア70から出力される駆動トルクよりも段階的に大きくすることができる。したがって、始動装置10におけるスタータモータ7からの駆動力の伝達経路を構成する各部のそれぞれの大きさが大きくなることを抑制できるので、始動装置10の大型化を抑制できる。
【0034】
なお、一実施形態に係る始動装置10では、ピニオンギア70の歯数は、第1ギア110の歯数より小さい。また、一実施形態に係る始動装置10では、第2ギア120の歯数は、カムシャフトギア60の歯数より小さい。したがって、一実施形態に係る始動装置10では、スタータモータ7の駆動トルクがカムシャフトギア60に伝達される過程で順次大きくなって伝達されることになる。
【0035】
一実施形態に係る始動装置10では、ギアアセンブリ100は、ワンウェイクラッチ130が第1ギア110の駆動力を第2ギア120に伝達する場合には、第1ギア110と第2ギア120とが同じ回転速度で回転するように構成されている。
具体的には、一実施形態に係る始動装置10では、上述したように、第1ギア110と第2ギア120とを同軸となるように中心軸AXaに沿って並べて配置されている。そして、一実施形態に係る始動装置10では、ワンウェイクラッチ130は、第2ギア120の凹部125に配置されていて、内輪131と第1ギア110のボス部113とが固定され、外輪133と第2ギア120の凹部125の内周面とが固定されている。
これにより、第1ギア110と第2ギア120とをワンウェイクラッチ130を介して接続する場合に、第1ギア110とワンウェイクラッチ130との間、及び、第2ギア120とワンウェイクラッチ130との間に増速機構や減速機構が不要となるので、ギアアセンブリ100の構成を簡素化できる。
【0036】
一実施形態に係る始動装置10では、上述したように、ギアアセンブリ100は、第1ギア110と第2ギア120とが同軸に配置されている。
これにより、第1ギア110と第2ギア120とが同軸に配置されない場合と比べて、ギアアセンブリ100の構成を簡素化できる。
【0037】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態に係る始動装置10では、第1ギア110とワンウェイクラッチ130とは直接接続されているが、第1ギア110とワンウェイクラッチ130との間にギアが1段以上介在してもよい。同様に、上述した一実施形態に係る始動装置10では、第2ギア120とワンウェイクラッチ130とは直接接続されているが、第2ギア120とワンウェイクラッチ130との間にギアが1段以上介在してもよい。
また、例えば、上述した一実施形態に係るエンジン1は、例えば単気筒の4サイクルエンジンであったが、2気筒以上の直列型エンジンやV型エンジンであってもよい。
【0038】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る汎用エンジン(エンジン1)の始動装置10は、スタータモータ7と、スタータモータ7の出力軸71に取り付けられたピニオンギア70と、カムシャフト6に取り付けられたカムシャフトギア60と、クランクシャフト5に取り付けられていてカムシャフトギア60と噛合するクランクシャフトギア50と、ピニオンギア70を介したスタータモータ7の駆動力をカムシャフトギア60に伝達するとともに、カムシャフトギア60の駆動力はピニオンギア70に伝達しないように構成されたギアアセンブリ100と、を備える。ピニオンギア70、カムシャフトギア60、クランクシャフトギア50、及び、ギアアセンブリ100は、ピニオンギア70とギアアセンブリ100に含まれるギアである第1ギア110とが噛合した状態でクランクケース40内に配置されている。
【0039】
上記(1)の構成によれば、ピニオンギア70とギアアセンブリ100に含まれる第1ギア110とが噛合した状態でクランクケース40内に配置されているので、エンジン1の始動時における始動装置10からの騒音を低減できるとともに、これらのギアが異物によって摩耗することを抑制できる。また、上記(1)の構成によれば、スタータモータ7からの駆動力がカムシャフトギア60を介してクランクシャフト5に伝達されるように構成されているので、予めエンジン1が備えているカムシャフトギア60を始動装置10の一部として利用している。これにより、始動装置10の小型化を図れる。
【0040】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、ギアアセンブリ100は、ピニオンギア70と噛合する第1ギア110と、カムシャフトギア60と噛合する第2ギア120と、第1ギア110からの駆動力を第2ギア120に伝達可能なワンウェイクラッチ130とを含む。
【0041】
上記(2)の構成によれば、ピニオンギア70とクランクシャフトギア50の間の動力の伝達経路上にワンウェイクラッチ130が存在するので、エンジン始動時のスタータモータ7からの駆動力をクランクシャフト5に伝達できる。また、クランクシャフト5の回転速度がスタータモータ7からの駆動力によってクランクシャフト5を回転させることができる速度を上回っても、クランクシャフト5からの駆動力がワンウェイクラッチ130で遮断されてスタータモータ7に伝達されないようにすることができる。ピニオンギア70と第1ギア110とが常時噛合していても、エンジン1の運転中のクランクシャフト5からの駆動力がワンウェイクラッチ130で遮断されてスタータモータ7に伝達されないようにすることができる。
【0042】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、第1ギア110の歯数は、ピニオンギア70の歯数より大きいとよい。
【0043】
上記(3)の構成によれば、ピニオンギア70の回転速度が第1ギア110で減速されるので、第1ギア110から出力される駆動トルクをピニオンギア70から出力される駆動トルクよりも大きくすることができる。
【0044】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、第2ギア120の歯数は、カムシャフトギア60の歯数よりも小さいとよい。
【0045】
上記(4)の構成によれば、第2ギア120の回転速度がカムシャフトギア60で減速されるので、カムシャフトギア60から出力される駆動トルクを第2ギア120から出力される駆動トルクよりも大きくすることができる。
【0046】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかの構成において、ギアアセンブリ100は、ワンウェイクラッチ130が第1ギア110の駆動力を第2ギア120に伝達する場合には、第1ギア110と第2ギア120とが同じ回転速度で回転するように構成されているとよい。
【0047】
上記(5)の構成によれば、第1ギア110と第2ギア120とをワンウェイクラッチ130を介して接続する場合に、第1ギア110とワンウェイクラッチ130との間、及び、第2ギア120とワンウェイクラッチ130との間に増速機構や減速機構が不要となるので、ギアアセンブリ100の構成を簡素化できる。
【0048】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(5)の何れかの構成において、ギアアセンブリ100は、第1ギア110と第2ギア120とが同軸に配置されているとよい。
【0049】
上記(6)の構成によれば、第1ギア110と第2ギア120とが同軸に配置されない場合と比べて、ギアアセンブリ100の構成を簡素化できる。
【0050】
(7)本開示の少なくとも一実施形態に係るエンジン1は、上記(1)乃至(6)の何れかの構成の始動装置10を備える。
【0051】
上記(7)の構成によれば、始動装置10の小型化を図れるので、この始動装置10を備えるエンジン1の大きさが大きくなることを抑制できる。
【符号の説明】
【0052】
1 エンジン
5 クランクシャフト
6 カムシャフト
10 始動装置
20 シリンダーブロック
40 クランクケース
50 クランクシャフトギア
60 カムシャフトギア
70 ピニオンギア
100 ギアアセンブリ
110 第1ギア
120 第2ギア
130 ワンウェイクラッチ