(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】エンジンの始動制御装置
(51)【国際特許分類】
F02N 11/08 20060101AFI20240725BHJP
F02M 1/10 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F02N11/08 L
F02N11/08 Y
F02M1/10 C
(21)【出願番号】P 2020216505
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】株式会社Willbe
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石山 明洋
(72)【発明者】
【氏名】成田 紘之
(72)【発明者】
【氏名】牧田 健太朗
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-195899(JP,A)
【文献】特開2008-128075(JP,A)
【文献】特開2015-132197(JP,A)
【文献】特開平06-101583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/08
F02M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に搭載される排気量が80cc~800ccのガソリンエンジン、に搭載されるエンジンの始動制御装置であって、
セルモータにエンジンをクランキングさせる制御ECUと、
前記制御ECUに設けられ、前記制御ECUの外部に設けられる
チョークバルブを含む外部機器に電気を供給する外部機器出力端子と、
前記制御ECUに接続され、前記セルモータを始動するためのエンジン始動操作スイッチと、
前記チョークバルブの操作をオートチョークとマニュアルチョークとに切り替え可能なチョーク切換スイッチと、
を備え、
前記制御ECUは、
前記外部機器出力端子から前記外部機器への給電量が、予め定めた閾値以上になった場合に、
前記チョークバルブが
開閉動作中であると判定する動作判定部と、
前記動作判定部が
前記チョークバルブが開閉動作中
であると判定している場合に、前記エンジン始動操作スイッチが始動操作されても、前記セルモータの始動を制限する始動制限部と、
を含む、
エンジンの始動制御装置。
【請求項2】
前記外部機器が
前記チョークバルブを開閉制御するためのバルブコントロールユニット
をさらに含み、
前記動作判定部は、前記バルブコントロールユニットが前記チョークバルブの開閉動作に要する供給電流値とバルブ位置の保持に要する供給電流値との間に予め設けられた電流閾値に基づいて、前記チョークバルブが開閉動作中であるか否かを判定する、
請求項1に記載のエンジンの始動制御装置。
【請求項3】
前記制御ECUを含むバッテリーユニットと前記セルモータとの間に接点が設けられ、前記制御ECUによって前記接点が開閉されるセルモータリレーをさらに備える、
請求項1又は2に記載のエンジンの始動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの吸気通路に設けられたチョークバルブと、エンジン始動時に該チョークバルブの開度を制御するためのステッピングモータとを有するオートチョーク装置が開示されている。かかるオートチョーク装置は、エンジン始動用電源の投入時に、ステッピングモータの初期化のためチョークバルブを全閉となるように駆動させるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が示す従来の構成では、チョークバルブ等の外部機器の動作中にエンジン始動操作が行われ、始動不良等のエンジンの動作不良を引き起こす虞がある。
【0005】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、外部機器が動作中であるか否かを判定できるエンジンの始動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るエンジンの始動制御装置は、
セルモータにエンジンをクランキングさせる制御ECUと、
前記制御ECUに設けられ、前記制御ECUの外部に設けられる外部機器に電気を供給する外部機器出力端子と、
前記制御ECUに接続され、前記セルモータを始動するためのエンジン始動操作スイッチと、
を備え、
前記制御ECUは、
前記外部出力端子から前記外部機器への給電量が、予め定めた閾値以上になった場合に、前記外部機器が動作中であると判定する動作判定部と、
前記動作判定部が動作中と判定している場合に、前記エンジン始動操作スイッチが始動操作されても、前記セルモータの始動を制限する始動制限部と、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエンジンの始動制御装置によれば、外部機器が動作中であるか否かを判定できる。そして、始動制限部は、外部機器が動作中と判定している場合に、エンジン始動操作スイッチが始動操作されても、セルモータの始動を制限するので、外部機器の動作中にセルモータの始動が制限される。これにより、外部機器の動作中にセルモータが始動されることがなくなり、エンジンの始動不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置が採用されたエンジンを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したエンジンの制御構成を概略的に示す回路図である。
【
図3】
図1に示したエンジンに搭載されるバッテリーユニットの正面図である。
【
図4】
図3に示したバッテリーユニットの左側面図である。
【
図5】
図3に示したバッテリーユニットの右側面図である。
【
図6】
図3に示したバッテリーユニットの制御構成を概略的に示す回路図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るバッテリーユニットの搭載構造を概略的に示す斜視図であって、カバーを取り外した状態を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置の制御構成を概略的に示すブロック図である。
【
図9】チョークバルブの動作と外部機器出力端子からバルブコントロールユニットに供給する電流の電流値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0010】
図1は、本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7が採用されたエンジン1を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示したエンジン1の制御構成を概略的に示す回路図である。
【0011】
本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7は、エンジン1又はエンジン1が搭載された作業機械(図示せず)に搭載される。本開示の実施形態では、エンジン1に搭載されたエンジンの始動制御装置7を例に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、本発明の範囲にはエンジン1が搭載された作業機械に搭載されたエンジンの始動制御装置7も含まれる。
【0012】
本開示の実施形態に係るエンジン1は、単気筒又は2気筒で排気量が80ccから800ccクラスの空冷のガソリンエンジンであって、例えば、田植機、管理機、耕耘機、ポンプ、発電機等の作業機械に搭載される。
【0013】
図1に示すように、本開示の実施形態に係るエンジン1はリコイルスタータ12のほかにセルモータ3(
図2参照)を備える。リコイルスタータ12は、エンジン1を始動しようとする者がスターターグリップ121を握りプーリに巻き掛けられたロープを引くことでエンジン1のクランクシャフトに回転を与えエンジン1を始動する装置である。セルモータ3は、リコイルスタータ12に代わりエンジン1のクランクシャフトに回転を与えるモータであり、本開示の実施形態に係るエンジン1ではバッテリーユニット6(
図2参照)がセルモータ3を含む補機類の電気供給源である。
【0014】
また、本開示の実施形態に係るエンジン1は、エンジンスイッチ21及びエンジン始動操作スイッチ22を備える。エンジンスイッチ21は電源をオン/オフするためのスイッチであり、本開示の実施形態に係るエンジン1ではエンジン1の側面に配置されている。エンジンスイッチ21は、例えば、ロッカースイッチ(シーソースイッチともいう)で構成され、エンジン1を始動する際にオンされ、エンジン1の運転を停止する際にオフされる。エンジン始動操作スイッチ22はエンジン1を始動するためのスイッチであり、本開示の実施形態に係るエンジン1ではエンジン1の側面にエンジンスイッチ21と並んで設置されている。エンジン始動操作スイッチ22は、例えば、モメンタリプッシュスイッチで構成され、セルモータ3によりエンジン1を始動する際に押下操作される。
【0015】
また、本開示の実施形態に係るエンジン1は、さらに外部機器用のスイッチ23を備える。外部機器用のスイッチ23は、例えば、チョーク切換スイッチ231であり、本開示の実施形態に係るエンジン1ではエンジン1の側面に配置されている。チョーク切換スイッチ231は、例えば、ロッカースイッチで構成され、オートチョーク/マニュアルチョークの切り換えが可能である。
【0016】
図2に示すように、本開示の実施形態に係るエンジン1は、さらにセルモータリレー4のほかチャージコイル13及び点火コイル15を備える。セルモータリレー4は、バッテリーユニット6とセルモータ3との間に設けられた接点41を開閉するリレー(マグネチックリレースイッチ)であり、接点41が閉じられた場合にバッテリーユニット6からセルモータ3に電気が供給される。チャージコイル13は、フライホイールの内側に設けられ、フライホイールの回転によって発電する発電用のコイルであり、チャージコイル13で発電された電気はレギュレータ14を介してバッテリーユニット6に供給されて充電される。チャージコイル13は、エンジン1が回転しているときに必ず発電するため、例えばバッテリーユニット6において発電の有無を監視することで、エンジン1の運転状態を把握する機能を持たせてもよい。この機能により、エンジン1の始動を安全に行う等が可能となる。点火コイル15は、フライホイールの外側に設けられ、フライホイールの回転によって点火コイル15の内部で発生する電気を高電圧の電気に変換する発電機・変圧器一体装置であり、点火コイル15で変換された高電圧の電気は点火プラグ16で放電される。
【0017】
本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6は、上述したようにセルモータ3を含む補機類の電気供給源であって、エンジン1の始動時にセルモータ3に電気を供給する一方、エンジン1(チャージコイル13)で発電された電気を充電する。
【0018】
図3は、
図1に示したエンジン1に搭載されるバッテリーユニット6の正面図である。
図4は、
図3に示したバッテリーユニット6の左側面図であり、
図5は、
図3に示したバッテリーユニット6の右側側面図である。また、
図6は、
図3に示したバッテリーユニット6の制御構成を示す回路図である。
【0019】
図3に示すように、本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6は、横長の略直方体形状であって、上方に突出する突起部6aを有する。バッテリーユニット6は、例えば、突起部6aを除くと、長さ220mm、高さ75mm、幅45mmの略直方体形状であって、その重量は800g以下に抑えられ、携帯性に優れている。
【0020】
本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6は、バッテリーパック61及びエンジンの始動制御装置7(
図6参照)を備え、これらは、横長の略直方体形状であって、上方に突出する突起部62aを有する筐体62に収容されている。
【0021】
バッテリーパック61は、例えば、リチウムイオンバッテリーで構成される。本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、バッテリーパック61は、一又は二以上のバッテリーセル611で構成される。バッテリーセル611の単体電圧は3.0から4.2Vであり、総容量はバッテリーユニット6として携帯性が確保される6000から20000mAHであり、
図6に示すように、本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、例えば、四つのバッテリーセル611で構成される。
【0022】
エンジンの始動制御装置7は、バッテリーパック61の充放電を制御する制御ECU71(Electronic Control Unit)で構成される。制御ECU71は、例えば、制御装置及び演算装置を含むプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Acsess Memory)等のメモリが搭載された制御基板で構成される。本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7では、制御ECU71において、バッテリーパック61の温度(バッテリー温度)、バッテリーパック61の電圧(全体電圧)及びバッテリーセルごとの電圧(セル電圧)が管理される。また、制御ECU71には、バッテリーセル611ごとに保護回路711によって、バッテリーセル611の過放電からバッテリーセル611を保護している。保護回路711は、例えば、保護IC(集積回路)によって構成される。
【0023】
また、本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、バッテリーユニット6に配線カプラ63が接続される。配線カプラ63には、対となる配線カプラ24(
図2参照)が着脱可能であり、対となる配線カプラ24を装着することでバッテリーユニット6とバッテリーユニット6の外部に設けられた入出力機器とが接続される。バッテリーユニット6の外部に設けられた入出力機器は、例えば、上述したエンジンスイッチ21やエンジン始動操作スイッチ22、セルモータリレー4等であり、コントロールハーネス25に含まれる二以上のワイヤーハーネスを介して上述した対となる配線カプラ24に接続される。そして、上述した配線カプラ63に該配線カプラ63と対となる配線カプラ24を装着することで、エンジンスイッチ21やエンジン始動操作スイッチ22、セルモータリレー4等の複数の入出力機器がバッテリーユニット6に一度に接続される。
【0024】
本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、エンジン充電入力端子712、電源検知端子713、エンジン始動操作検知端子714、セルモータリレー制御端子715、外部機器出力端子716及び常時電圧出力端子717がバッテリーユニット6に設けられる。エンジン充電入力端子712、電源検知端子713、エンジン始動操作検知端子714、セルモータリレー制御端子715及び外部機器出力端子716は制御ECU71に接続され、これら端子からの充放電電流は制御ECU71において管理される。常時電圧出力端子717はバッテリーパック61に直接接続され、常時電圧出力端子717にはバッテリーパック61のバッテリー電圧(全体電圧)が印加される。そして、これら端子がそれぞれ接続された配線カプラ63が筐体62の防水/防塵構造が採用された突起部62a(
図3参照)に設置される。
【0025】
図2に示すように、バッテリーユニット6に接続される入出力機器は、チャージコイル13に接続されたレギュレータ14、エンジンスイッチ21、エンジン始動操作スイッチ22、セルモータリレー4、バルブコントロールユニット51及びチョークバルブ52等の外部機器5、及び、エンジンスイッチ21(バッテリー電圧常時印加)であり、これらはエンジン充電入力線251、エンジンスイッチ操作検知線252、エンジン始動操作検知線253、セルモータリレー制御線254、バルブ機器出力線255及びバッテリー電圧常時印加線256を介してそれぞれ対となる配線カプラ24に接続される。
【0026】
そして、本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、チャージコイル13に接続されたレギュレータ14からエンジン充電入力線251を通り制御ECU71に電気が供給され、制御ECU71は、バッテリーパック61の温度及び電圧、並びに、バッテリーセル611ごとの電圧を管理しながらバッテリーセル611に均等に電気が充電される。
【0027】
本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、バッテリーユニット6の筐体62にセルモータ給電端子64が設けられている。セルモータ給電端子64は、バッテリーパック61からセルモータ3(セルモータリレー4)に電気を供給するための電力線(第1の電力線)641の着脱が可能な端子であり、例えば、バッテリーユニット6の筐体62の左側面に設置され(
図5参照)、ゴム製のカバーによって防水/防塵対策が施されている。
【0028】
セルモータ給電端子64とセルモータリレー4とを繋ぐ電力線641にはヒューズ642が設けられている。ヒューズ642は、バッテリーパック61の過放電により電力線641に定格以上の過電流が流れた場合に、溶断することによりセルモータリレー4及びセルモータ3を保護する。これにより、ヒューズ642が過電流により溶断しても電力線641を交換することにより、セルモータリレー4及びセルモータ3が簡単に復旧できる。
【0029】
図6に示すように、セルモータ給電端子64とバッテリーパック61との間にはバッテリー保護リレー65が設けられている。バッテリー保護リレー65は、バッテリーパック61とセルモータ給電端子64との間に接点が設けられ、制御ECU71からの指令により、バッテリーパック61とセルモータ給電端子64との間に設けられた接点が閉作動される。
【0030】
本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、バッテリーユニット6の筐体62に外部充電入力端子66が設けられる。外部充電入力端子66は、外部電源からバッテリーユニット6に充電用の電気を供給するための電力線(第2の電力線)(図示せず)の着脱が可能な端子であり、例えば、バッテリーユニット6の筐体62の右側面に設置され(
図4参照)、ゴム製のカバーによって防水/防塵対策が施されている。
【0031】
外部電源は、例えば、家庭用電源や自動車のバッテリーである。例えば、外部電源が家庭用電源の場合には専用の充電器の電力線が外部充電入力端子66に装着されることで、家庭用電源から外部充電入力端子66に充電用の電気が供給される。これにより、制御ECU71が待機状態から起動し、バッテリーパック61の温度及び電圧、並びにバッテリーセル611ごとの電圧を管理しながらバッテリーセル611に均等に電気が充電される。また、例えば、外部電源が自動車のバッテリーの場合には自動車のシガーソケットに接続された電力線が外部充電入力端子66に装着されることで、自動車のバッテリーから外部充電入力端子66に充電用の電気が供給される。これにより、制御ECU71が待機状態から起動し、バッテリーパック61の温度及び電圧、並びにバッテリーセル611ごとの電圧を管理しながらバッテリーセル611に均等に電気が充電される。
【0032】
本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、外部充電入力端子66は制御ECU71に接続され、外部充電入力端子66に供給された充電用の電気は制御ECU71で充電制御され、バッテリーパック61を構成する一又は二以上のバッテリーセル611が均等に充電される。
【0033】
本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、制御ECU71に充電出力端子67が接続される。充電出力端子67は、携帯機器に設けられた充電入力端子の着脱が可能な端子であり、携帯機器に設けられた充電入力端子を装着することで、バッテリーユニット6の内部に設けられた制御ECU71と筐体外部に設けられた携帯機器とが接続され、制御ECU71を介してバッテリーパック61から携帯機器に電気が供給される。携帯機器は、例えば、スマートフォン等の携帯電話であり、充電出力端子67は、例えば、USB出力端子671であり、TypeA,B又はCのいずれかのメス端子であって、最大2Aの出力が得られるものが用いられる。
【0034】
本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、充電出力端子67は、バッテリーユニット6の筐体62に設けられた突起部62aからバッテリーユニット6の外部に延びるように設けられ、防水/防塵対策が施されている。
【0035】
図3に示すように、本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6では、バッテリーユニット6の筐体前面に、一又は二以上のインジケータ68と、充電残量確認ボタン69とを備えている。一又は二以上のインジケータ68と充電残量確認ボタン69は制御ECU71に接続されている。一又は二以上のインジケータ68は、例えば、残充電量表示灯及び制御ECU71の状態表示灯を構成する。
【0036】
残充電量表示灯は、例えば、3個から5個のLEDランプで構成される。例えば、3個から5個のLEDランプは、2個から4個の同色系のLEDランプと1個の異なる色のLEDランプで構成され、バッテリーパック61の残充電量が減るに従い同色系のLEDランプの点灯数が減り、最後に異なる色のLEDランプが点灯するように制御され、制御ECU71が停止状態にある場合において充電残量確認ボタン69が押下された場合に、制御ECU71が待機状態から起動され、一又は二以上のインジケータ68にその時のバッテリーパック61の充電残量を表示するように制御される。
【0037】
また、制御ECU71の状態表示灯は、1個から3個の異なる色のLEDランプで構成され、制御ECU71の状態に基づいて任意のLEDランプを点灯するように制御される。例えば、エンジンスイッチ21がオンされ、エンジン1の始動操作が可能な状態の場合には始動操作可能を通知するLEDランプが点灯し、エンジン1の始動後はエンジン1が運転中であることを通知するLEDランプが点灯する。
【0038】
図7は、本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6の搭載構造を概略的に示す斜視図であって、カバー9を取り外した状態を示す図である。
【0039】
図7に示すように、本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6の搭載構造では、バッテリーユニット6は、エンジン1の側面に搭載されるが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、エンジン1が搭載された作業機械の任意の位置に搭載されるもの含まれる。
【0040】
本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7が採用されるエンジン1に搭載されるバッテリーユニット6の搭載構造は、上述したバッテリーユニット6のほかに、ケース8及びカバー9を備えている。
【0041】
ケース8は、エンジン1又はエンジン1が搭載された作業機械に取り付けられる。ケース8は、例えば、エンジン1の前面に取り付けられる。ケース8は、前面が開口した箱状であって、バッテリーユニット6が収容される。ケース8は、例えば、前面が開口した横長の略直方体形状の箱状であって、その下方域にバッテリーユニット6が収容される収容領域が設けられ、その上方域に配線カプラ24,63の接続空間が設けられている。収容領域はバッテリーユニット6の体積よりも僅かに大きな容積を有し、バッテリーユニット6は収容領域に嵌め込まれるように収容される。接続空間は、配線カプラ63と該配線カプラ63と対になる配線カプラ24とを接続するのに十分な容積を有し、接続空間の右側には上述したエンジンスイッチ21及びエンジン始動操作スイッチ22が設置され、接続空間の左側には上述した外部機器用のスイッチ23、例えば、チョーク切換スイッチ231が設置されている。
【0042】
カバー9は、ケース8に取り付けられてバッテリーユニット6が収容されたケース8の開口を塞ぐ。カバー9は、例えば、後面が開口した箱状であって、バッテリーユニット6が収容されたケース8と組み合わされてケース8の前面開口を塞ぐ。カバー9は、例えば、ケース8よりもケース8の長手方向にひとまわり大きく、ケース8の右側領域にバッテリーユニット6(セルモータ給電端子64)とセルモータリレー4を接続する電力線641(
図2参照)の配線空間が確保されている。
【0043】
また、カバー9は、例えば、上述したエンジンスイッチ21及びエンジン始動操作スイッチ22に対応する領域が切り欠かれており、カバー9をケース8に取り付けた状態でエンジンスイッチ21及びエンジン始動操作スイッチ22がカバー9の外に露出する。また、カバー9は、例えば、外部機器用のスイッチ23に対応する領域に矩形の窓9aが設けられており、カバー9をケース8に取り付けた状態で外部機器用のスイッチ23がカバー9の外に露出する。
【0044】
また、カバー9は、例えば、一又は二以上のインジケータ68と充電残量確認ボタン69とに対応する領域に矩形の窓9bが設けられており、カバー9をケース8に取り付けた状態で一又は二以上のインジケータ68と充電残量確認ボタン69がカバー9の外に露出する。
【0045】
また、カバー9は、長手方向一端部と他端部とにそれぞれ貫通穴が設けられており、該貫通穴を挿通したボルト91がケース8に設けられたネジ穴に嵌め込まれることで、ケース8にカバー9が取り付けられる。貫通穴を挿通したボルト91は、例えば、コインが嵌まるスリ割り溝が設けられたボルト又は蝶ボルトが採用されている。
【0046】
尚、本開示の実施形態に係るバッテリーユニット6の搭載構造では、上述したバッテリーユニット6は、カバー9に対向する前面に緩衝材6bが貼り付けられている。これにより、エンジン1や作業機械からバッテリーユニット6に伝達される振動を抑制し、バッテリーユニット6を保護できる。
【0047】
図8は、本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7の制御構成を概略的に示すブロック図である。
【0048】
本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7では、制御ECU71は、セルモータ3にエンジン1のクランクシャフトを回転させる(以下、エンジン1のクランクシャフトを回転させることを「エンジン1のクランキング」という)一方、外部機器出力端子716は、制御ECU71に設けられ、制御ECU71の外部に設けられる外部機器5に電気を供給する。
【0049】
図8に示すように、本開示
の実施形態に係る制御ECU71は、動作判定部761を含んでいる。動作判定部761は、外部機器5が動作中であるか否かを判定する部分であり、外部機器出力端子716から外部機器5への給電量が、予め定めた閾値以上になった場合に、外部機器5が動作中であると判定する。
【0050】
外部機器5は、例えば、バルブコントロールユニット51及びチョークバルブ52である。バルブコントロールユニット51は、チョークバルブ52を開閉制御するコントロールユニットである。チョークバルブ52は、エンジン1が冷えているときの始動時に燃焼させる混合気の空燃比を一時的に高める装置であり、キャブレターのメインボアに蓋をして吸気の流速を上げ、吸入負圧を高めて燃料の供給量を増大させる。
【0051】
上述した本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7によれば、動作判定部761は、外部機器出力端子716から外部機器5への給電量が、予め定めた閾値以上となった場合に外部機器5が動作中であると判定するので、エンジンの始動制御装置7は、外部機器5が動作中であるか否かを判定できる。
【0052】
本開示の実施形態に係る制御ECU71は、更に、始動制限部762を含んでいる。始動制限部762は、動作判定部761が動作中と判定している場合に、エンジン始動操作スイッチ22が始動操作されても、セルモータ3の始動を制限する。例えば、外部機器5がバルブコントロールユニット51及びチョークバルブ52である場合に、チョークバルブ52が開閉動作中であると動作判定部761が判定している場合に、エンジン始動操作スイッチ22が始動操作されても、セルモータ3の始動を制限する。これにより、チョークバルブ52が開閉動作中であると動作判定部761が判定している場合に、エンジン始動操作スイッチ22が押下されても制御ECU71がセルモータ3にエンジン1のクランキングを行わせることがない。
【0053】
本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7によれば、始動制限部762は、動作判定部761が動作中と判定している場合に、エンジン始動操作スイッチ22が始動操作されても、セルモータ3の始動を制限するので、外部機器5の動作中にセルモータ3の始動が制限される。これにより、外部機器5の動作中にセルモータ3にエンジン1のクランキングを行わせることがなくなり、エンジン1の始動不良を制限できる。
【0054】
図9は、チョークバルブ52の動作と外部機器出力端子716からバルブコントロールユニット51に供給する電流の電流値との関係を示す図である。
【0055】
図9に示すように、外部機器出力端子716からバルブコントロールユニット51に電気の供給を開始すると、バルブコントロールユニット51において電気の供給が開始されたことが検知され、バルブコントロールユニット51において一定期間(例えば、3秒間)始動制御され、外部機器出力端子716からバルブコントロールユニット51に供給される電流の電流値は所定の閾値(始動制御閾値)を超える。そして、バルブコントロールユニット51において始動制御が終了すると、チョークバルブ52が動作中となり、チョークバルブ52をエンジン1の始動に適した開度に調整する。チョークバルブ52の動作中に外部機器出力端子716からバルブコントロールユニット51に供給される電流の電流値(チョークバルブ52の開閉動作に要する供給電流値)は始動制御閾値よりも大きな所定の電流値となる。そして、チョークバルブ52がエンジン1の始動に適した開度に調整されると、その開度を維持するようにバルブが静止する。チョークバルブ52の静止中に外部機器出力端子716からバルブコントロールユニット51に供給される電流の電流値(チョークバルブ52のバルブ位置の保持に要する供給電流値)は始動制御閾値よりも小さな所定の電流値となる。
【0056】
これにより、本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7では、バルブコントロールユニット51がチョークバルブ52の開閉動作に要する供給電流値とバルブ位置の保持に要する供給電流値との間に閾値を設け、この閾値に基づいてチョークバルブ52が開閉動作中であるか否かを判定する。チョークバルブ52の開閉動作に要する供給電流値とバルブ位置の保持に要する供給電流値との間に設けられる閾値は、例えば、始動制御閾値である。
【0057】
本開示の実施形態に係るエンジンの始動制御装置7によれば、バルブコントロールユニット51が電流閾値に基づいて、チョークバルブ52が開閉動作中であるか否かを判定するので、チョークバルブ52の開閉動作中のセルモータ3の始動を制限することができ、チョークバルブ52の開閉動作中のセルモータ3の始動を制限することにより、エンジン1の始動不良を抑制できる。
【0058】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0059】
上述した実施形態では、外部機器5としてバルブコントロールユニット51を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば、盗難防止装置であってもよいし、ガスエンジンの低温始動時において燃料のガス化を促進するヒーターやインジェクションエンジン等に搭載されるO2センサのヒーターであってもよい。
【0060】
例えば、ガスエンジンの低温始動時において燃料のガス化を促進するヒーターは、冬期等低温下におけるガス燃料の揮発性を改善するものであり、配管や気化器を温める電気式ヒーターである。電気式ヒーターを所定の温度になると電気供給を遮断するバイメタル等とともに外部機器5とすることで、動作判定部761は、外部機器出力端子716から電気式ヒーターへの給電量が予め定めた閾値以上となった場合に、電気式ヒーター(ガス化を促進するヒーター)が動作中であると判定する。
【0061】
例えば、インジェクションエンジン等に搭載されるO2センサのヒーターは、低温下におけるO2センサの動作を可能にするものであり、エンジンの始動前にO2センサを温める電気式ヒーターである。電気式ヒーターを所定の温度になると電気供給を遮断するバイメタル等とともに外部機器5とすることで、動作判定部761は、外部機器出力端子716から電気式ヒーターへの給電量が予め定めた閾値以上となった場合に、電気式ヒーター(O2センサのヒーター)が動作中であると判定する。
【0062】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば、以下のように把握される。
【0063】
[1]の態様に係るエンジンの始動制御装置(7)は、
セルモータ(3)にエンジン(1)をクランキングさせる制御ECU(71)と、
前記制御ECU(71)に設けられ、前記制御ECU(71)の外部に設けられる外部機器(5)に電気を供給する外部機器出力端子(716)と、
前記制御ECU(71)に接続され、前記セルモータ(3)を始動するためのエンジン始動操作スイッチ(22)と、
を備え、
前記制御ECU(71)は、
前記外部機器出力端子(716)から前記外部機器(5)への給電量が、予め定めた閾値以上になった場合に、前記外部機器5が動作中であると判定する動作判定部(761)と、
前記動作判定部(761)が動作中と判定している場合に、前記エンジン始動操作スイッチ(22)が始動操作されても、前記セルモータ(3)の始動を制限する始動制限部(762)と、
を含む。
【0064】
本開示に係るエンジンの始動制御装置(7)によれば、動作判定部(761)は、外部機器出力端子(716)から外部機器(5)への給電量が、予め定めた閾値以上となった場合に外部機器(5)が動作中であると判定するので、エンジンの始動制御装置(7)は、外部機器(5)が動作中であるか否かを判定できる。そして、始動制限部(762)は、動作判定部(761)が動作中と判定している場合に、エンジン始動操作スイッチ(22)が始動操作されても、セルモータ(3)の始動を制限するので、外部機器(5)の動作中にセルモータ(3)の始動が制限される。これにより、外部機器(5)の動作中にセルモータ(3)が始動されることがなくなり、エンジン(1)の始動不良を抑制できる。
【0065】
[2]さらに別の態様に係るエンジンの始動制御装置(7)は、[1]に記載のエンジンの始動制御装置(7)であって、
前記外部機器(5)がバルブコントロールユニット(51)及びチョークバルブ(52)であって、
前記動作判定部(761)は、前記バルブコントロールユニット(51)がチョークバルブ(52)の開閉動作に要する供給電流値とバルブ位置の保持に要する供給電流値との間に予め設けられた電流閾値に基づいて、前記チョークバルブ(52)が開閉動作中であるか否かを判定する。
【0066】
このような構成によれば、動作判定部(761)は電流閾値に基づいて、バルブコントロールユニット(51)が電流閾値に基づいて、チョークバルブ(52)が開閉動作中であるか否かを判定するので、チョークバルブ(52)の開閉動作中のセルモータ(3)の始動を制限することができ、チョークバルブ(52)の開閉動作中のセルモータ(3)の始動を制限することにより、エンジン(1)の始動不良を抑制できる。
【符号の説明】
【0067】
1 エンジン
12 リコイルスタータ
121 スターターグリップ
13 チャージコイル
14 レギュレータ
15 点火コイル
16 点火プラグ
21 エンジンスイッチ
22 エンジン始動操作スイッチ
23 外部機器用のスイッチ
231 チョーク切換スイッチ
24 配線カプラ
25 コントロールハーネス
251 エンジン充電入力線
252 エンジンスイッチ操作検知線
253 エンジン始動操作検知線
254 セルモータリレー制御線
255 バルブ機器出力線
256 バッテリー電圧常時印加線
3 セルモータ
4 セルモータリレー
41 接点
5 外部機器
51 バルブコントロールユニット
52 チョークバルブ
6 バッテリーユニット
6a 突起部
6b 緩衝材
61 バッテリーパック
611 バッテリーセル
62 筐体
62a 突起部
63 配線カプラ
64 セルモータ給電端子
641 電力線(第1の電力線)
642 ヒューズ
65 バッテリー保護リレー
66 外部充電入力端子
67 充電出力端子
671 USB出力端子
68 インジケータ
69 充電残量確認ボタン
7 始動制御装置
71 制御ECU
711 保護回路
712 エンジン充電入力端子
713 電源検知端子
714 エンジン始動操作検知端子
715 セルモータリレー制御端子
716 外部機器出力端子
717 常時電圧出力端子
761 動作判定部
762 始動制限部
8 ケース
9 カバー
9a,9b 窓
91 ボルト