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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
F16C11/04 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020549821
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025520
(87)【国際公開番号】W WO2021006096
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019129404
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 圭
(72)【発明者】
【氏名】石井 善隆
(72)【発明者】
【氏名】幡野 裕一
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02781676(EP,A1)
【文献】特開2015-194242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/18
F16C 11/00
-11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2ヒンジ本体(10,20)と、上記第1、第2ヒンジ本体間に配置される第1、第2アーム(30,40)と、上記第1アームの一端部を上記第1ヒンジ本体に回動可能に連結する第1軸部材(51)と、上記第2アームの一端部を上記第2ヒンジ本体に回動可能に連結する第2軸部材(52)と、上記第1、第2アームの中間部同士を回動可能に連結する中間軸部材(50)と、を備え、
上記第1ヒンジ本体に、上記第1軸部材に対して接近・離間する方向に延びる主ガイド部(15x;15x’;101)を有する第1ガイド(15;15’;100)が形成され、上記第1ガイドに上記第2アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、
上記第2ヒンジ本体に、上記第2軸部材に対して接近・離間する方向に延びる第2ガイド(25)が形成され、上記第2ガイドに上記第1アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、
さらに、上記中間軸部材を中心とする上記第1、第2アームの相対回動に対する摩擦抵抗を提供し、ひいては上記第2ヒンジ本体の上記第1ヒンジ本体に対する相対回動に対抗する摩擦トルクを提供する摩擦抵抗発生機構(60、61)を備えたヒンジ装置において、
上記第1ヒンジ本体には、上記第1アームを付勢することにより、上記第2ヒンジ本体に回動限界位置に向かう回動トルクを付与する付勢部材(70;80)が設けられており、
上記第1ガイド(15;15’;100)はさらに、上記主ガイド部の一端に連なる副ガイド部(15y;15y’;102)を有し、
上記第2ヒンジ本体が上記第1ヒンジ本体に対して上記回動限界位置から特定角度範囲にわたり相対回動する過程では、上記第2アーム(20)の他端部が上記副ガイド部(15y;15y’;102)に沿って移動し、上記副ガイド部は、上記第2アームの他端部が上記第1軸部材(51)を中心とする円弧に沿って移動するのを許容するように形成され、
上記第1ヒンジ本体(10)は上記第1ガイドとして第1ガイド溝(15;15’;100)を有し、上記第1ガイド溝は、主ガイド部としての主溝部分(15x;15x’;101)と上記副ガイド部としての副溝部分(15y;15y’;102)とを有し、
上記第2ヒンジ本体(20)は上記第2ガイドとして第2ガイド溝(25)を有し、
上記第1アーム(30)の上記他端部には、上記第2ガイド溝に挿入された断面円形の第1突起が形成され、上記第2アームの上記他端部には、上記第1ガイド溝に挿入された断面円形の第2突起が形成され、
上記第1ガイド溝(100)の上記副溝部分(102)は、上記第1軸部材(51)に近い内側縁(102a)と上記第1軸部材(51)から離れた外側縁(102b)とを有し、
上記特定角度範囲において上記第2ヒンジ本体(20)が上記回動限界位置に向かう過程で、上記第2突起は、上記副溝部分の上記内側縁と上記外側縁のいずれにも接することなく上記副溝部分に沿って移動することを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
第1、第2ヒンジ本体(10,20)と、上記第1、第2ヒンジ本体間に配置される第1、第2アーム(30,40)と、上記第1アームの一端部を上記第1ヒンジ本体に回動可能に連結する第1軸部材(51)と、上記第2アームの一端部を上記第2ヒンジ本体に回動可能に連結する第2軸部材(52)と、上記第1、第2アームの中間部同士を回動可能に連結する中間軸部材(50)と、を備え、
上記第1ヒンジ本体に、上記第1軸部材に対して接近・離間する方向に延びる主ガイド部(15x;15x’;101)を有する第1ガイド(15;15’;100)が形成され、上記第1ガイドに上記第2アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、
上記第2ヒンジ本体に、上記第2軸部材に対して接近・離間する方向に延びる第2ガイド(25)が形成され、上記第2ガイドに上記第1アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、
さらに、上記中間軸部材を中心とする上記第1、第2アームの相対回動に対する摩擦抵抗を提供し、ひいては上記第2ヒンジ本体の上記第1ヒンジ本体に対する相対回動に対抗する摩擦トルクを提供する摩擦抵抗発生機構(60、61)を備えたヒンジ装置において、
上記第1ヒンジ本体には、上記第1アームを付勢することにより、上記第2ヒンジ本体に回動限界位置に向かう回動トルクを付与する付勢部材(70;80)が設けられており、
上記第1ガイド(15;15’;100)はさらに、上記主ガイド部の一端に連なる副ガイド部(15y;15y’;102)を有し、
上記第2ヒンジ本体が上記第1ヒンジ本体に対して上記回動限界位置から特定角度範囲にわたり相対回動する過程では、上記第2アーム(20)の他端部が上記副ガイド部(15y;15y’;102)に沿って移動し、上記副ガイド部は、上記第2アームの他端部が上記第1軸部材(51)を中心とする円弧に沿って移動するのを許容するように形成され、
上記付勢部材がトーションバネ(80)からなり、上記トーションバネ(80)は、上記第1ヒンジ本体(10)に係止される係止部(80b)と、押圧部(80c)とを有しており、
上記第1アーム(30)の一端部には受面(31c)が形成されており、上記第2ヒンジ本体(20)が所定のトルク付与角度範囲にある時に、上記トーションバネの上記押圧部が上記受面を押し、
上記第1ヒンジ本体(10)と上記第2ヒンジ本体(20)は、基壁(11,21)と、基壁と直交するとともに互いに平行をなす一対の側壁(12,22)とをそれぞれ有しており、上記第1ヒンジ本体の上記一対の側壁の各々に上記第1ガイドとして同一形状をなす第1ガイド溝(15;15’;100)が形成され、上記第2ヒンジ本体の上記一対の側壁の各々に上記第2ガイドとして同一形状をなす第2ガイド溝(25)が形成され、上記第1ガイド溝には、上記第2アーム(40)の他端部から突出する第2突起が挿入され、上記第2ガイド溝には、上記第1アーム(30)の他端部から突出する第1突起が挿入されており、
上記第1ヒンジ本体の上記一対の側壁には長穴(19)が形成され、上記長穴には押圧ピン(82)の両端部が上記長穴に沿ってスライド可能に挿入されており、上記第2ヒンジ本体が上記トルク付与角度範囲にある時に、上記トーションバネの上記押圧部が上記押圧ピンを介して上記第1アームの上記受面(31c)を押すことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項3】
第1、第2ヒンジ本体(10,20)と、上記第1、第2ヒンジ本体間に配置される第1、第2アーム(30,40)と、上記第1アームの一端部を上記第1ヒンジ本体に回動可能に連結する第1軸部材(51)と、上記第2アームの一端部を上記第2ヒンジ本体に回動可能に連結する第2軸部材(52)と、上記第1、第2アームの中間部同士を回動可能に連結する中間軸部材(50)と、を備え、
上記第1ヒンジ本体に、上記第1軸部材に対して接近・離間する方向に延びる主ガイド部(15x;15x’;101)を有する第1ガイド(15;15’;100)が形成され、上記第1ガイドに上記第2アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、
上記第2ヒンジ本体に、上記第2軸部材に対して接近・離間する方向に延びる第2ガイド(25)が形成され、上記第2ガイドに上記第1アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、
さらに、上記中間軸部材を中心とする上記第1、第2アームの相対回動に対する摩擦抵抗を提供し、ひいては上記第2ヒンジ本体の上記第1ヒンジ本体に対する相対回動に対抗する摩擦トルクを提供する摩擦抵抗発生機構(60、61)を備えたヒンジ装置において、
上記第1ヒンジ本体には、上記第1アームを付勢することにより、上記第2ヒンジ本体に回動限界位置に向かう回動トルクを付与する付勢部材(70;80)が設けられており、
上記第1ガイド(15;15’;100)はさらに、上記主ガイド部の一端に連なる副ガイド部(15y;15y’;102)を有し、
上記第2ヒンジ本体が上記第1ヒンジ本体に対して上記回動限界位置から特定角度範囲にわたり相対回動する過程では、上記第2アーム(20)の他端部が上記副ガイド部(15y;15y’;102)に沿って移動し、上記副ガイド部は、上記第2アームの他端部が上記第1軸部材(51)を中心とする円弧に沿って移動するのを許容するように形成され、
上記付勢部材が板バネ(70)からなり、その両端部が上記第1ヒンジ本体(10)に支持され、その中央部が上記第1アームの一端部に向けて突出する押圧部(70a)として提供され、
上記第1アームの一端部には受面(31y)が形成されており、上記第2ヒンジ本体(20)が所定のトルク付与範囲にある時に、上記板バネの押圧部が上記受面を押すことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項4】
第1、第2ヒンジ本体(10,20)と、上記第1、第2ヒンジ本体間に配置される第1、第2アーム(30,40)と、上記第1アームの一端部を上記第1ヒンジ本体に回動可能に連結する第1軸部材(51)と、上記第2アームの一端部を上記第2ヒンジ本体に回動可能に連結する第2軸部材(52)と、上記第1、第2アームの中間部同士を回動可能に連結する中間軸部材(50)と、を備え、
上記第1ヒンジ本体に、上記第1軸部材に対して接近・離間する方向に延びる主ガイド部(15x;15x’;101)を有する第1ガイド(15;15’;100)が形成され、上記第1ガイドに上記第2アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、
上記第2ヒンジ本体に、上記第2軸部材に対して接近・離間する方向に延びる第2ガイド(25)が形成され、上記第2ガイドに上記第1アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、
さらに、上記中間軸部材を中心とする上記第1、第2アームの相対回動に対する摩擦抵抗を提供し、ひいては上記第2ヒンジ本体の上記第1ヒンジ本体に対する相対回動に対抗する摩擦トルクを提供する摩擦抵抗発生機構(60、61)を備えたヒンジ装置において、
上記第1ヒンジ本体には、上記第1アームを付勢することにより、上記第2ヒンジ本体に回動限界位置に向かう回動トルクを付与する付勢部材(70;80)が設けられており、
上記第1ガイド(15;15’;100)はさらに、上記主ガイド部の一端に連なる副ガイド部(15y;15y’;102)を有し、
上記第2ヒンジ本体が上記第1ヒンジ本体に対して上記回動限界位置から特定角度範囲にわたり相対回動する過程では、上記第2アーム(20)の他端部が上記副ガイド部(15y;15y’;102)に沿って移動し、上記副ガイド部は、上記第2アームの他端部が上記第1軸部材(51)を中心とする円弧に沿って移動するのを許容するように形成され、
上記第1ガイド(15’)はさらに、上記主ガイド部(15x’)の他端に連なりかつ上記副ガイド部(15y’)と反対方向に延びる他の副ガイド部(15y”)を有し、上記第2ヒンジ本体(20)が上記回動限界位置と反対側の他の回動限界位置から他の特定角度範囲にわたり相対回動する過程では、上記第2アーム(40)の上記他端部が上記他の副ガイド部(15y”)に沿って移動するようになっており、上記他の副ガイド部は、上記第2アームの他端部が上記第1軸部材(51)を中心とする円弧に沿って移動するのを許容するように形成されており、
上記付勢部材(70)は、上記第2ヒンジ本体が上記第1ヒンジ本体に対して上記他の回動限界位置から所定のトルク付与角度範囲に位置する時には、上記第1アーム(30)を付勢することにより、上記第2ヒンジ本体に上記他の回動限界位置に向かう回動トルクを付与することを特徴とするヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1、第2のヒンジ本体を第1、第2のアームで連結してなるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許6092171公報)に示すように、第1、第2ヒンジ本体と、これら第1、第2ヒンジ本体を連結する屈曲形状の第1、第2アームを備えたヒンジ装置は公知である。
上記ヒンジ装置では、第1アームの一端部が第1軸部材を介して第1ヒンジ本体に回動可能に連結され、第2アームの一端部が第2軸部材を介して第2ヒンジ本体に回動可能に連結され、第1、第2アームの中間の屈曲部同士が中間軸部材を介して回動可能に連結されている。さらに、第2アームの他端部が、第1ヒンジ本体に形成された第1ガイドに沿ってスライド可能かつ回動可能に案内され、第1アームの他端部が、第2ヒンジ本体に形成された第2ガイドに沿ってスライド可能かつ回動可能に案内される。
上記構成により、第2ヒンジ本体は第1ヒンジ本体に対して所定の回動軌跡で相対的に回動するようになっている。
【0003】
特許文献1のヒンジ装置では、第1アームと第2アームの間に摩擦板が介在されており、この摩擦板により第1アームと第2アームの相対回動に対して摩擦抵抗が生じ、ひいては第1ヒンジ本体に対する第2ヒンジ本体の相対回動に対抗する摩擦トルクが生じるようになっている。この構成によれば、例えば第1ヒンジ本体をケース本体に固定し、第2ヒンジ本体を蓋に固定した場合、蓋を任意の角度位置で安定して維持することができる。
【0004】
他方、特許文献2(実用新案登録2561477号公報)には、特許文献1と同様の基本構造を有し、折り畳み扉装置に用いられるヒンジ装置が開示されている。特許文献2のヒンジ装置では、隣接する扉に固定された第1、第2ヒンジ本体にそれぞれコイルバネが設けられている。隣接する扉が面一をなす閉じ位置に近づくと、コイルバネが押圧部材を介して第1、第2アームの端部を押すことにより、第1、第2ヒンジ本体には、扉を開じる方向の回動トルクが付与される。これにより、隣接する扉を確実に面一に閉じるとともに、この面一状態を安定して維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された任意角度位置での保持機能と特許文献2に開示されたコイルバネによる回動トルク付与機能(換言すれば、回動対象を回動限界角度で保持するキャッチ機能)の両方を発揮するヒンジ装置は開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、第1、第2ヒンジ本体と、上記第1、第2ヒンジ本体間に配置される第1、第2アームと、上記第1アームの一端部を上記第1ヒンジ本体に回動可能に連結する第1軸部材と、上記第2アームの一端部を上記第2ヒンジ本体に回動可能に連結する第2軸部材と、上記第1、第2アームの中間部同士を回動可能に連結する中間軸部材と、を備え、
上記第1ヒンジ本体に、上記第1軸部材に対して接近・離間する方向に延びる主ガイド部を有する第1ガイドが形成され、上記第1ガイドに上記第2アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、上記第2ヒンジ本体に、上記第2軸部材に対して接近・離間する方向に延びる第2ガイドが形成され、上記第2ガイドに上記第1アームの他端部がスライド可能かつ回動可能に案内され、さらに、上記中間軸部材を中心とする上記第1、第2アームの相対回動に対する摩擦抵抗を提供し、ひいては上記第2ヒンジ本体の上記第1ヒンジ本体に対する相対回動に対抗する摩擦トルクを提供する摩擦抵抗発生機構を備えたヒンジ装置において、
上記第1ヒンジ本体には、上記第1アームを付勢することにより、上記第2ヒンジ本体に上記回動限界位置に向かう回動トルクを付与する付勢部材が設けられており、上記第1ガイドはさらに、上記主ガイド部の一端に連なる副ガイド部を有し、上記第2ヒンジ本体が上記第1ヒンジ本体に対して上記回動限界位置から特定角度範囲にわたり相対回動する過程では、上記第2アームの他端部が上記副ガイド部に沿って移動し、上記副ガイド部は、上記第2アームの他端部が上記第1軸部材を中心とする円弧に沿って移動するのを許容するように形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、摩擦抵抗発生機構により第2ヒンジ本体を第1ヒンジ本体に対して任意の角度位置で保持する機能と、付勢部材により第2ヒンジ本体に回動限界位置に向けて回動トルクを付与する機能の両方を備えることができる。
【0008】
好ましくは、上記第1ヒンジ本体は上記第1ガイドとして第1ガイド溝を有し、上記第1ガイド溝は、主ガイド部としての主溝部分と上記副ガイド部としての副溝部分とを有し、上記第2ヒンジ本体は上記第2ガイドとして第2ガイド溝を有し、上記第1アームの上記他端部には、上記第2ガイド溝に挿入された断面円形の第1突起が形成され、上記第2アームの上記他端部には、上記第1ガイド溝に挿入された断面円形の第2突起が形成されている。
【0009】
好ましくは、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体は、基壁と、上記基壁と直交するとともに互いに平行をなす一対の側壁とをそれぞれ有しており、上記第1ヒンジ本体の上記一対の側壁の各々に同一形状の上記第1ガイド溝が形成され、上記第2ヒンジ本体の上記一対の側壁の各々に同一形状をなす上記第2ガイド溝が形成され、上記第1アームの他端部に貫通支持された第1スライドピンの両端部の各々が、上記第1突起として提供され、上記第2アームの他端部に貫通支持された第2スライドピンの両端部の各々が、上記第2突起として提供される。
【0010】
好ましくは、上記第1ガイド溝の上記副溝部分は、上記第1軸部材に近い内側縁と上記第1軸部材から離れた外側縁とを有し、上記特定角度範囲において上記第2ヒンジ本体が上記回動限界位置に向かう過程で、上記第2突起は、上記副溝部分の上記内側縁と上記外側縁のいずれにも接することなく上記副溝部分に沿って移動する。
上記構成によれば、第2突起と副溝部分との接触による摩擦抵抗をゼロにすることができ、付勢部材の力が比較的弱くても、第2ヒンジ本体に回動限界位置に向かう回動トルクを確実に付与することができる。
【0011】
さらに好ましくは、上記副溝部分の上記内側縁は、上記主溝部分と上記副溝部分の交差部の内側の点から上記第1軸部材を中心に円弧を描く仮想線より上記第1軸部材に近づくように偏倚している。
上記構成によれば、第2突起と副溝部分との接触による摩擦抵抗を確実にゼロにすることができる。
【0012】
ある具体例では、好ましくは、上記付勢部材がトーションバネからなり、上記トーションバネは、上記第1ヒンジ本体に係止される係止部と、押圧部とを有しており、上記第1アームの一端部には受面が形成されており、上記第2ヒンジ本体が所定のトルク付与角度範囲にある時に、上記トーションバネの上記押圧部が上記受面を押す。
【0013】
さらに好ましくは、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体は、基壁と、基壁と直交するとともに互いに平行をなす一対の側壁とをそれぞれ有しており、上記第1ヒンジ本体の上記一対の側壁の各々に上記第1ガイドとして同一形状をなす第1ガイド溝が形成され、上記第2ヒンジ本体の上記一対の側壁の各々に上記第2ガイドとして同一形状をなす第2ガイド溝が形成され、上記第1ガイド溝には、上記第2アームの他端部から突出する第2突起が挿入され、上記第2ガイド溝には、上記第1アームの他端部から突出する第1突起が挿入されており、上記第1ヒンジ本体の上記一対の側壁には長穴が形成され、上記長穴には押圧ピンの両端部が上記長穴に沿ってスライド可能に挿入されており、上記第2ヒンジ本体が上記トルク付与角度範囲にある時に、上記トーションバネの上記押圧部が上記押圧ピンを介して上記第1アームの上記受面を押す。
上記構成によれば、第1アームが薄い場合及び/又は複数ある場合でも、トーションバネにより第1アームに回動トルクを付与することができる。
【0014】
別の具体例では、上記付勢部材が板バネからなり、その両端部が上記第1ヒンジ本体に支持され、その中央部が上記第1アームの一端部に向けて突出する押圧部として提供され、上記第1アームの一端部には受面が形成されており、上記第2ヒンジ本体が所定のトルク付与範囲にある時に、上記板バネの押圧部が上記受面を押す。
上記構成によれば、板バネにより、第1アームが薄い場合及び/又は複数ある場合でも、確実に第1アームに回動トルクを付与することができる。
【0015】
さらに好ましくは、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体は、基壁と、基壁と直交するとともに互いに平行をなす一対の側壁とをそれぞれ有しており、上記第1ヒンジ本体の上記一対の側壁の各々に上記第1ガイドとして同一形状をなす第1ガイド溝が形成され、上記第2ヒンジ本体の上記一対の側壁の各々に上記第2ガイドとして同一形状をなす第2ガイド溝が形成され、上記第1ガイド溝には、上記第2アームの他端部から突出する第2突起が挿入され、上記第2ガイド溝には、上記第1アームの他端部から突出する第1突起が挿入されており、上記板バネは円弧形状に湾曲した両端部を有し、上記板バネの両端部が、上記第1ヒンジ本体の上記一対の側壁に支持された2本の支持ピンに掛けられている。
上記構成によれば、板バネの取付構造を簡略化することができる。
【0016】
ある態様では、上記第1ガイドはさらに、上記主ガイド部の他端に連なりかつ上記副ガイド部と反対方向に延びる他の副ガイド部を有し、上記第2ヒンジ本体が上記回動限界位置と反対側の他の回動限界位置から他の特定角度範囲にわたり相対回動する過程では、上記第2アームの上記他端部が上記他の副ガイド部に沿って移動するようになっており、上記他の副ガイド部は、上記第2アームの他端部が上記第1軸部材を中心とする円弧に沿って移動するのを許容するように形成されており、
上記付勢部材は、上記第2ヒンジ本体が上記第1ヒンジ本体に対して上記他の回動限界位置から所定のトルク付与角度範囲に位置する時には、上記第1アームを付勢することにより、上記第2ヒンジ本体に上記他の回動限界位置に向かう回動トルクを付与する。
上記構成によれば、2つの回動限界位置近傍で第2ヒンジ本体を第1ヒンジ本体に対し回動限界位置に向けて自動的に相対回動させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第2ヒンジ本体を任意の角度位置で保持する機能と、第2ヒンジ本体を第1ヒンジ本体に対し回動限界位置に向けて自動的に相対回動させる機能の両方を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本発明の第1実施形態に係るヒンジ装置を備えたケースの側断面図であり、蓋が開き角度135°(全開位置)にある時の状態を示す。
図1B】蓋が開き角度0°(閉じ位置)にある時の状態を示す図1A相当図である。
図2】上記ヒンジ装置を斜め下方から見た斜視図である。
図3】上記ヒンジ装置の底面図である。
図4】上記ヒンジ装置の分解斜視図である。
図5】蓋の開き角度が135°の時の上記ヒンジ装置を、手前のワッシャや鍔部を省略して示す側面図である。
図6】蓋の開き角度が40°の時の図5相当図である。
図7A】蓋の開き角度が20°の時の図5相当図である。
図7B】蓋の開き角度が20°の時の第1、第2ガイド溝とスライドピンの拡大側面図である。
図7C】蓋の開き角度が20°の時の板バネと第1アームの端部の拡大側面図である。
図8A】蓋の開き角度が10°の時の図5相当図である。
図8B】蓋の開き角度が10°の時の第1、第2ガイド溝とスライドピンの拡大側面図である。
図8C】蓋の開き角度が10°の時の板バネと第1アームの端部の拡大側面図である。
図9A】蓋の開き角度が1°の時の図5相当図である。
図9B】蓋の開き角度が1°の時の第1、第2ガイド溝とスライドピンの拡大側面図である。
図9C】蓋の開き角度が1°の時の板バネと第1アームの端部の拡大側面図である。
図10A】蓋の開き角度が0°の時の図5相当図である。
図10B】蓋の開き角度が0°の時の第1、第2ガイド溝とスライドピンの拡大側面図である。
図10C】蓋の開き角度が0°の時の板バネと第1アームの端部の拡大側面図である。
図11A】本発明の第2実施形態において、蓋の開き角度が90°(全開位置)の時のヒンジ装置の側面図である。
図11B】同第2実施形態において、蓋の開き角度が90°(全開位置)の時の第1ガイド溝、スライドピン、板バネ、第1アームの端部を含む領域の拡大側面図である。
図12A】同第2実施形態において、蓋の開き角度が0°(閉じ位置)の時の図11A相当図である。
図12B】同第2実施形態において、蓋の開き角度が0°(閉じ位置)の時の図11B相当図である。
図13】本発明の第3実施形態において、蓋の開き角度が150°(全開位置)の時のヒンジ装置の側面図である。
図14】同第3実施形態において、蓋の開き角度が0°(閉じ位置)の時のヒンジ装置の側面図である。
図15】同第3実施形態で用いられるトーションバネ及びその付属品を示す斜視図である。
図16A】本発明の第4実施形態に係るヒンジ装置において、蓋の開き角度が150°の時の第1ガイド溝とスライドピンを示す拡大側面図である。
図16B】同第4実施形態において、蓋の開き角度が60°の時の図16A相当図である。
図17A】同第4実施形態において、蓋の開き角度が0.86°の時の第1ガイド溝とスライドピンをさらに拡大して示す側面図である。
図17B】同第4実施形態において、蓋の開き角度が0°の時の図17A相当図である。
図17C】同第4実施形態において、第2ヒンジ本体が回動限界位置(蓋の開き角度-4°に相当する位置)にある時の図17A相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1A図1Bに示すように、本実施形態のヒンジ装置5は、ケース1に装備されている。ケース1は、ケース本体2(第1取付対象;静止対象)と、ケース本体2の上端開口2aを開閉する蓋3(第2取付対象;回動対象)とを有している。
ケース本体2の上端には、開口2aに隣接し紙面と直交する方向に延びる支持壁2bが設けられている。蓋3は、支持壁2bに沿って間隔をおいて配置された複数例えば2つのヒンジ装置5を介して、支持壁2bに回動可能に連結されている。蓋3は、図1Aに示す開き角度135°の位置(全開位置)と図1Bに示す開き角度0°の位置(閉じ位置)との間を回動可能である。
【0020】
図4に示すように、各ヒンジ装置5は主たる構成要素として、ケース本体2に固定された第1ヒンジ本体10と、蓋3に固定された第2ヒンジ本体20と、これら第1、第2ヒンジ本体10,20を連結する2つ(複数)の第1アーム30および2つ(複数)の第2アーム40とを備えている。
【0021】
第1ヒンジ本体10は、ケース本体2の支持壁2bの下面に固定された基壁11と、この基壁11の両側縁から直角をなして下方に突出するとともに互いに平行をなす一対の側壁12とを有している。一対の側壁12は開口2aの縁またはその近くまで延びている。一対の側壁12において、開口2aから離れた部位には同形状の第1ガイド溝15(第1ガイド)が貫通形成されており、開口2aに近い先端部には軸受穴16が形成されている。
【0022】
第2ヒンジ本体20は、蓋3の裏面において支持壁2b側の端縁の近傍部に固定された基壁21と、この基壁21の両側縁から直角をなして突出するとともに互いに平行をなす一対の側壁22とを有している。一対の側壁22の先端部は蓋3の端縁まで延びている。一対の側壁22において、支持壁2bから離れた部位には同形状の第2ガイド溝25(第2ガイド)が貫通形成されており、蓋3の端縁に近い先端部には軸受穴26が形成されている。
【0023】
2枚の第1アーム30は同一の屈曲形状の板材からなり、短尺部31と、長尺部32と、短尺部31と長尺部32が交差する中間の屈曲部33とを有している。短尺部31と長尺部32の先端部には、それぞれ軸受穴31a,支持穴32aが形成されており、屈曲部33にはやや大径の軸受穴33aが形成されている。
【0024】
2枚の第2アーム40は、第1アーム30と同形状をなし、それぞれ先端部に軸受穴41a,支持穴42aが形成された短尺部41および長尺部42と、やや大径の軸受穴43aが形成された屈曲部43とを有している。
【0025】
図2図3に示すように、第1アーム30と第2アーム40は交互に配置され、屈曲部33,43の軸受穴33a,43aに挿通された中間軸部材50を介して、相対回動可能に連結されている。
【0026】
2つの第1アーム30の短尺部31の先端部(第1アーム30の一端部)は、第1ヒンジ本体10の一対の側壁12間に配置されている。これら短尺部31の先端部は、短尺部31の軸受穴31aと第1ヒンジ本体10の一対の側壁12の軸受穴16に挿通された第1軸部材51を介して、第1ヒンジ本体10の先端部に回動可能に連結されている。
【0027】
同様に、2つの第2アーム40の短尺部41の先端部(第2アーム40の一端部)は、第2ヒンジ本体20の一対の側壁22間に配置されている。これら短尺部41の先端部は、短尺部41の軸受穴41aと第2ヒンジ本体20の一対の側壁22の軸受穴26に挿通された第2軸部材52を介して、第2ヒンジ本体20の先端部に回動可能に連結されている。
【0028】
上記のようにして、第1ヒンジ本体10と第2ヒンジ本体20が第1、第2アーム30,40を介して相対回動可能に連結され、ひいては蓋3がケース本体2に対して相対回動可能に連結されている。
【0029】
2つの第1アーム30の長尺部32の先端部(第1アーム30の他端部)は、第2ヒンジ本体20の一対の側壁22間に配置されている。これら長尺部32の先端部の支持穴32aにはスライドピン55(第1スライドピン)が挿通されており、このスライドピン55の両端部(断面円形の第1突起)が第2ヒンジ本体20の一対の側壁22の第2ガイド溝25にスライド可能かつ回動可能に挿入されている。スライドピン55の一端には鍔部55aが形成されており、他端にはワッシャ55bが固定されている。鍔部55aとワッシャ55bは第2ヒンジ本体20の一対の側壁22の外面に接するか、わずかな隙間を介して対向している。
【0030】
同様に、2つの第2アーム40の長尺部42の先端部(第2アーム40の他端部)は、第1ヒンジ本体10の一対の側壁12間に配置されている。これら長尺部42の先端部の支持穴42aにはスライドピン56(第2スライドピン)が挿通されており、このスライドピン56の両端部(断面円形の第2突起)が第1ヒンジ本体10の一対の側壁12の第1ガイド溝15にスライド可能かつ回動可能に挿入されている。スライドピン56の一端には鍔部56aが形成されており、他端にはワッシャ56bが固定されている。鍔部56aとワッシャ56bは第1ヒンジ本体10の一対の側壁12の外面に接するか、わずかな隙間を介して対向している。
【0031】
図5図6に示すように、第1ヒンジ本体10の一対の側壁12に形成された第1ガイド溝15の各々は、第1軸部材51に対して接近・離間する方向に延びる主溝部分15x(主ガイド部)と、主溝部分15xの一端(第1軸部材51から離れた端)から上方に延びる副溝部分15y(副ガイド部)とを有している。主溝部分15xと副溝部分15yは、屈曲部15z(交差部)を介して交差している。主溝部分15xは、下に凸の湾曲形状をなしている。副溝部分15yは、第1軸部材51を中心とする円弧を描くように延びている。
第2ガイド溝25は、全長にわたって第2軸部材52に接近・離間する方向に延びている。本実施形態では、第2ガイド溝25は、蓋3が閉じ位置にある時に下に凸になるような湾曲形状をなしている。
【0032】
図4に示すように、ヒンジ装置5はさらに4枚のステンレス鋼等からなる摩擦板60(摩擦部材)と2枚の皿バネ61とを備えている。これら摩擦板60と皿バネ61により、摩擦抵抗発生機構が構成されている。これら摩擦板60と皿バネ61は、中間軸部材50に貫通されて支持されている。図2図3に示すように、皿バネ61は、中間軸部材50の一端側の鍔部50aと第2アーム40との間に介在され、3枚の摩擦板60は第1アーム30と第2アーム40との間に介在され、1枚の摩擦板60は中間軸部材50の他端と第1アーム30との間に介在されている。
【0033】
第1、第2アーム30,40と摩擦板60とが皿バネ61による押圧力をもって互いに接し、これにより、第1、第2アーム30,40間に摩擦が生じる。その結果、第1ヒンジ本体10に対する第2ヒンジ本体20の相対回動に対抗する摩擦トルクが生じるため、蓋3は任意の開き角度で安定して維持される。蓋3の開き角度を変える場合には、摩擦トルクに打ち勝つ回動トルクを付与する必要がある。
【0034】
図4図5に示すように、ヒンジ装置5はさらに第1ヒンジ本体10に設けられた板バネ70(バネ、付勢部材)を備えている。板バネ70は、その両端部が円弧形状をなし、第1ヒンジ本体10の一対の側壁12に支持された2本の支持ピン71、72に掛けられている。一方の支持ピン71の両端部は、一対の側壁12に形成された支持穴12aに挿入支持されており、他方の支持ピン72の両端部は側壁12の縁に形成された凹部12bに挿入支持されている。
【0035】
板バネ70は鈍角をなして屈曲した形状をなし、その中央部が押圧部70aとなっている。この押圧部70aは、第1アーム30の短尺部31の先端部に向かって突出している。短尺部31の先端部には、板バネ70の押圧部70aを受ける第1受面31xと第2受面31yが形成され、その中間の受面31zが湾曲している。
【0036】
上記構成をなすヒンジ装置5の作用を、蓋3が全開位置から閉じ位置まで回動する過程を例にとって説明する。
蓋3が図1に示す開き角度135°の全開位置にある時、図5に示すように、第1アーム30の長尺部32が第2軸部材52に当たり、第2アーム40の長尺部42が第1軸部材51に当たることにより、それ以上の蓋3の開き方向の回動が禁じられている。この状態で、第1アーム30のスライドピン55は第2ガイド溝25の端(第2軸部材52に近い方の端)の近傍に位置し、第2アーム40のスライドピン56は第1ガイド溝15の主溝部分15xの端(第1軸部材51に近い方の端)の近傍に位置している。板バネ70は第1アーム30の短尺部31から離れている。
【0037】
蓋3を開き角度135°の位置から開き角度40°の位置まで回動させる過程で、第1、第2アーム30,40が第1、第2ヒンジ本体10、20に対して相対回動するとともに、第1、第2アーム30,40同士が相対回動する。この際、スライドピン55が第2ガイド溝25に沿ってスライドし、スライドピン56が第1ガイド溝15の主溝部分15xに沿ってスライドするため、第1、第2アーム30,40および第2ヒンジ本体20の第1ヒンジ本体10に対する相対回動の軌跡が一義的に決定され、安定して蓋3を開くことができる。
【0038】
第1、第2アーム30,40同士が相対回動する際に、摩擦板60による摩擦により、第2ヒンジ本体20ひいては蓋3に対する摩擦トルクが生じるので、蓋3に摩擦トルクを超える回動トルクを外部から付与しない限り、蓋3は開き角度135°~40°の範囲の任意の角度位置で安定して保持される。
なお、第1ガイド溝15の主溝部分15xと第2ガイド溝25を円弧形状にしたことにより、摩擦トルクを上記角度範囲にわたって、ほぼ均等にすることができる。
【0039】
蓋3の開き角度が40°に達すると、図6に示すように、板バネ70の押圧部70aが第1アーム30の短尺部31の第1受面31xに接する。第2アーム40のスライドピン56は、第1ガイド溝15の主溝部分15xに位置している。
【0040】
さらに蓋3を開き角度40°から開き角度20°まで回動する過程で、板バネ70の押圧部70aが第1アーム30の短尺部31の端部の第1受面31xを押圧するため、第1アーム30に図中時計回り方向の回動トルクが働き、ひいては第2ヒンジ本体40および蓋3に、開き方向の回動トルクが働く。しかし、本実施形態ではこの開き方向の回動トルクは摩擦板60による摩擦トルクより小さいので、閉じ操作の大きな負担にはならない。蓋3は開き角度40°~20°の角度範囲でも任意の角度位置を安定して維持することができる。
【0041】
蓋3が開き角度20°に達すると、図7A図7Cに示すように、板バネ70の押圧部70aがちょうど第1アーム30の短尺部31の中間受面31zに接するため、第1アーム30に付与される回動トルクは一時的にゼロになる。図7Bに示すように、第2アーム40のスライドピン56はまだガイド溝15の主溝部分15xに位置しており、屈曲部15zに達していない。
【0042】
蓋3を開き角度20°から開き角度10°まで回動させる過程では、図8A図8Cに示すように、板バネ70の押圧部70aが第1アーム30の短尺部31の第2受面31yを押圧するため、第1アーム30には図中反時計回り方向の回動トルクが付与され、ひいては第2ヒンジ本体20および蓋3に閉じ方向の回動トルクが付与される。なお、上記のように蓋3が開き角度20°を越える時に、板バネ70による回動トルクの方向が変わるので、操作者はクリック感を感じることができる。
【0043】
本実施形態では、板バネ70による閉じ方向の回動トルクは摩擦板60による摩擦トルクより小さいので、蓋3は開き角度20°~10°の角度範囲でも任意の開き角度を安定して維持することができる。
蓋3が開き角度10°に達すると、図8Bに示すように、第2アーム40のスライドピン56は、第1ガイド溝15の屈曲部15zに接近するが、副溝部分15yには至らない。
【0044】
蓋3をさらに開き角度10°から開き角度1°まで回動させると、図9A図9Bに示すように、スライドピン55が第2ガイド溝25の端(第2軸部材52から遠い方の端)に達し、スライドピン56は副溝部分15yの端(主溝部分15x側の端)に達する。この途中で閉じ方向への力を解除すると、開き角度10°~135°の場合と同様に、蓋3はその角度位置を維持される。図9Cに示すように板バネ70による第1アーム30への回動トルク(蓋3への閉じ方向の回動トルク)が働いているが、この回動トルクは比較的弱く、スライドピン56と第1ガイド溝15との間の接触による摩擦抵抗が働くためである。
【0045】
上述したように蓋3の開き角度が1°になり、スライドピン56が第1ガイド溝15の副溝部分15yの端に達した時に、蓋3から手を放すと、スライドピン56が副溝部分15yに沿って自動的に移動し、蓋3が閉じ位置まで自動的に回動する。以下、その理由を説明する。
【0046】
副溝部分15yは第1軸部材51を中心とする円弧を描くように形成されているため、スライドピン56は、第1軸部材51を中心とする円弧を描く軌跡に沿って移動することができる。そのため、蓋3と第2ヒンジ本体20と第1、第2アーム30,40からなる組立体は、互いの相対回動を伴わずに、一体となって第1軸部材51を中心として回動する。この過程において、スライドピン56と第1ガイド溝15との間の摩擦抵抗は実質的にゼロとなる。
他方、蓋3の開き角度が1°を下回った状態でも、板バネ70の押圧部70aが第1アーム30の短尺部31の第2受面31yを押圧しているため、第1アーム30への反時計回り方向の回動トルク付与状態は維持されており、この回動トルクにより第2ヒンジ本体20および蓋3が閉じ位置まで自動的に回動する。
【0047】
図10に示すように、蓋3の開き角度が0°の時、スライドピン56は第1ガイド溝15の副溝部分15yの端には到達せず、スライドピン56と副溝部分15yの端との間には遊びがある。そのため蓋3の開き角度が0°であっても、板バネ70による回動トルクが蓋3に付与される状態を確実に維持でき、蓋3の閉じ状態を安定して維持できる。
【0048】
なお、ヒンジ装置5がケース1に装着されない状態では、スライドピン56がさらに副溝部分15yの端に達するまで、第2ヒンジ本体20は第1ヒンジ本体10に対して相対回動が可能である。スライドピン56が副溝部分15yの端に達した時の角度位置をヒンジ装置5の回動限界位置とする。本実施形態では、図9の位置(蓋3が閉じた時の位置)を0°とすると、-α°(例えば-2°)が回動限界位置となる。
【0049】
本実施形態では、第1ヒンジ本体10に対する第2ヒンジ本体20の相対回動の角度範囲において、摩擦抵抗が実質的にゼロとなる角度範囲(特定角度範囲)-α°~1°に比べて、板バネ70による回動トルクが働く角度範囲(トルク付与角度範囲)が-α°~20°と広いため、第2ヒンジ本体30は特定角度範囲の全範囲にわたり、確実に回動限界位置に向けて自動的に回動することができる。
【0050】
本実施形態では、回動トルクを付与するために、両端部が円弧形状をなし中央が突出した板バネ70により構成したので、簡単な構造とすることができる。また、第1アーム30が薄板からなり複数あっても、板バネ70により確実に複数の第1アーム30に回動トルクを付与することができる。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態について、図11図12を参照しながら説明する。本実施形態のヒンジ装置5’の基本構成は第1実施形態と同様であるので、各構成要素には同番号を付して重複する説明を省略することにする。また、図11図12に示されてない構成要素の説明には第1実施形態の符号を援用する。
本実施形態では、蓋3が開き角度0°の閉じ位置と、開き角度90°の全開位置の状態で、キャッチ機能が発揮される。以下、詳述する。
【0052】
第1ガイド溝15’は、主溝部分15x’(主ガイド部)と、主溝部分15x’の一端(第1軸部材51から遠い端)に連なる副溝部分15y’(副ガイド部)と、主溝部分15xの他端(第1軸部材51に近い端)に連なる他の副溝部分15y”(他の副ガイド部)とを有している。主溝部分15x’は、第1軸部材51に対して接近・離間する方向に延びている。副溝部分15y’、15y”は主溝部分15x’と交差する方向に延びている。具体的には、本実施形態では、副溝部分15y’、15y”は、主溝部分15x’との交差部から第1軸部分51を中心とする円弧を描くように延びている。副溝部分15y’,15”は反対方向に延びる。すなわち、副溝部分15y’は上方に延び、副溝部分15y”は下方に延びている。
【0053】
第1アーム30の短尺部31の先端部は、第1受面31x’と、第1受面31x’から周方向に離れた第2受面31y’とを有している。
【0054】
蓋3の開き角度が70°を越えている時、板バネ70の押圧部70aが第1受面31x’を押すことにより、第1アーム30に時計回り方向の回動トルクが付与され、ひいては蓋3に開き方向の回動トルクが付与される。蓋3の開き角度が80°を越えている時、スライドピン56が副溝部分15y”に入り込むため、摩擦抵抗が実質的にゼロとなる。その結果、蓋3は、開き方向に自動的に回動され、回動トルクが付与された状態で開き角度90°(全開位置)に保持される。
【0055】
蓋3の開き角度が20°を下回る時、板バネ70の押圧部70aが第2受面31y’を押すことにより、第1アーム30に反時計回り方向の回動トルクが付与され、ひいては蓋3に閉じ方向の回動トルクが付与される。蓋3の開き角度が10°を下回る時、スライドピン56が副溝部分15y’に入り込むため、摩擦抵抗が実質的にゼロとなる。その結果、蓋3は、閉じ方向に自動的に回動され、回動トルクが付与された状態で閉じ角度0°(閉じ位置)に保持される。
【0056】
次に、本発明の第3実施形態について、図13図15を参照しながら説明する。本実施形態のヒンジ装置5”の基本構成は第1実施形態と同様であるので、各構成要素には同番号を付して重複する説明を省略することにする。また、図13図15に示されてない構成要素の説明には第1実施形態の符号を援用する。
【0057】
本実施形態では、第1、第2実施形態の板バネの代わりに図15に示すトーションバネ80を用いている。トーションバネ80は、2つのコイル部80aと、これらコイル部80aに連なるU字形状の係止部80bと、2つのコイル部80aからそれぞれ係止部80bの反対側に延びる屈曲形状の押圧部80cと、を一体に有している。このトーションバネ80とともに、支持ピン81と段付きピンからなる押圧ピン82が用いられる。
【0058】
図13図14に示すように、トーションバネ80は、支持ピン81を介して第1ヒンジ本体10に支持されている。支持ピン81は、トーションバネ80のコイル部80aに挿通され、第1ヒンジ本体10の一対の側壁12に形成された支持穴18に両端部を支持されている。トーションバネ80の係止部80bは、第1ヒンジ本体10の基壁11に係止されている。
【0059】
第1アーム30の短尺部31の先端部の周面は、円弧面をなす第1の面領域とこの第1の面領域から図中時計回り方向に径が徐々に増大する第2の面領域と、さらに時計回り方向に径が急減する第3の面領域とを有しており、この第3の面領域が後述の作用をなす受面31sとして提供される。
【0060】
第1ヒンジ本体10の一対の側壁12には、第1アーム30の短尺部31の先端部近傍において長穴19が形成されており、この長穴19には押圧ピン82の両端部が長穴19に沿ってスライド可能に挿入されている。この押圧ピン82は上述したトーションバネ80の押圧部80cにより、第1アーム30の短尺部31の先端部に向けて常に付勢されている。
【0061】
第3実施形態の基本的な作用は第1実施形態と同様である、蓋3が開き角度150°の全開位置にある時、スライドピン56は第1ガイド溝15の主溝部分15xに位置し、押圧ピン82は第1アーム30の短尺部31の周面のうち円弧面をなす第1の領域に接している。そのため第1アーム30に回動トルクは付与されない。蓋3が開き角度150°~20°の開き角度にある時には、摩擦板60の摩擦トルクにより、蓋3は任意の開き角度で保持される。
【0062】
蓋3が開き角度20°~0°にある時には、押圧ピン82が第1アーム30の受面31sに接し、トーションバネ30の押圧力が押圧ピン82を介して受面31sに付与される。これにより、第1アーム30に反時計回り方向の回動トルクが付与され、ひいては蓋3に閉じ方向の回動トルクが付与される。
【0063】
図14に示すように、蓋3が開き角度1°~0°の時には、スライドピン56が第1ガイド溝15の副溝部分15yに入り、摩擦抵抗が実質的にゼロになるので、トーションバネ80の回動トルクにより、蓋3が第1、第2アーム30,40および第2ヒンジ本体20と一体となって閉じ方向に自動的に回動する。
【0064】
次に、本発明の第4実施形態について図16図17を参照しながら説明する。第4実施形態は、第3実施形態と第1ガイド溝100の形状だけが異なる。図示しない他の構成要素は第3実施形態と同様であり、これら構成要素の説明には、第3実施形態の符号を援用する。
先行する実施形態と同様に、第1ガイド溝100は、主溝部分101と副溝部分102と屈曲部103(交差部)を有している。スライドピン56は、主溝部分101に所定のクリアランス例えば50μm~100μmのクリアランスを有して挿入されている。この点は、先行する実施形態と同様である。
【0065】
図16Aに示すように、蓋3が開き角度150°の全開位置にある時には、スライドピン56は、主溝部分101の端(第1軸部材51に近い端)に位置している。図16Bは、蓋3を閉じ方向に回動させている途中、例えば蓋3の開き角度が60°の時のスライドピン56の位置を示す。図16Bに示すように蓋3が閉じ方向に回動している時には、スライドピン56は主溝部分101の上縁101aに接するようにして移動し、主溝部分101の下縁101bとスライドピン56との間に上記クリアランスCbが現れる。
【0066】
本実施形態では、第3実施形態と同様に蓋3が開き角度20°を下回った時に、トーションバネ80による回動トルクが蓋3に付与される。本実施形態では蓋3が開き角度2°未満例えば0.86°に達した時に、図17Aに示すように、スライドピン56が第1ガイド溝100の副溝部分102に達するようになっている。それ以上の開き角度においては、前述の実施形態と同様の原理により蓋3は任意の角度で維持される。
【0067】
図17Aにおいて、屈曲部103における内側(第1軸部材51に近い側)の点Paは主溝部分101の上縁101aと副溝部分102の内側縁102aの交差点である。屈曲部103における外側(第1軸部分51から遠い側)の点Pbは、主溝部分101の下縁101bと副溝部分102の外側の縁102bの交差点である。蓋3が閉じ方向に回動されている時には、スライドピン56は内側の点Paに接し、クリアランスCbは、点Pbとスライドピン56との間に現れる。
【0068】
図17Aに示すように、副溝部分102の外側縁102bは、屈曲部103の外側の点Pbから第1軸部材51を中心とする円弧上に形成される。副溝部分102の内側縁102aは、屈曲部103の内側の点Paから第1軸部材51を中心とする円弧を描く仮想線Lより第1軸部材51に近づくように偏倚している。この内側縁102aと仮想線Lとの離間距離は副溝部分102の奥端部に近づくにしたがって徐々に増大する。この内側縁102aは点Pa近傍では曲線を描くがそれより奥では直線を描く。
【0069】
蓋3がさらに閉じ方向に回動して開き角度が0°すなわち閉じ位置に達した時、スライドピン56は図17Bに示す位置まで移動する。この位置では、スライドピン56と副溝部分102の外側の縁102bとの間には、クリアランスCbが現れる。また、スライドピン56と副溝部分102の内側の縁102aとの間には、クリアランスCaが現れる。本実施形態ではこのクリアランスCaは約10μmである。
【0070】
上記のように蓋3が閉じ位置にある時、スライドピン56は副溝部分102のいずれの縁102a,102bにも接しないので、このような接触による摩擦抵抗を確実にゼロにすることができる。その結果、トーションバネ80の力が弱くても、蓋3の閉じ状態を確実に維持することができる。
【0071】
なお、ヒンジ装置がケースに装着されない状態では、図17Cに示すように、スライドピン56がさらに副溝部分15yの端に達するまで、第2ヒンジ本体20は第1ヒンジ本体10に対してさらに相対回動が可能である。この時の第2ヒンジ本体20の第1ヒンジ本体10に対する角度位置(回動限界位置)は、蓋3の開き角度で換算すると、-α°(例えば-4°)である。
【0072】
上記第4実施形態では、蓋3が開き角度2°未満でスライドピン56が副溝部分102に移行するようにしたが、より大きな角度で副溝部分102に移行してもよい。第4実施形態の第1ガイド溝100は、第1、第2の実施形態のヒンジ装置に適用してもよい。
【0073】
本発明は、上記実施に制約されず、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
第1、第2アームは、それぞれ1つずつでもよい。
第1ガイド溝の主溝部分と第2ガイド溝は、直線的に延びていてもよい。第1軸部材は第1ガイド溝の主溝部分の延長線上にあってもよいし、外れていてもよい。
第1アームを付勢する付勢部材は、板バネやトーションバネ以外の形態でもよい。
上記実施形態では、第1ヒンジ本体をケース本体に固定し、第2ヒンジ本体を蓋に固定したが、これとは逆に第2ヒンジ本体をケース本体に固定し、第1ヒンジ本体を蓋に固定してもよい。また、折り畳み扉やパソコン等の小型機器に本願発明のヒンジ装置を装着してもよい。
第1ガイド溝の副溝部分の形状は、第1軸部材を中心とする円弧形状に限らず、第2アームの他端部が第1軸部材を中心として円弧運動するのを許容するあらゆる形状を含む。
摩擦抵抗発生機構は、第1アームと第2アームとの間に摩擦抵抗を発生させるあらゆる構成を採用可能である。例えば、摩擦板と皿バネを用いる代わりに、中間軸部材の先端をかしめて第1、第2アームを互いに強く接触させるだけでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、第1、第2のヒンジ本体とこれらヒンジ本体を連結する第1、第2アームとを備えたヒンジ装置に適用することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C