(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】半導体装置および電池パック
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240725BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240725BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240725BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/00 X
H02J7/10 B
H01M10/42 P
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2020560642
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 IB2019060740
(87)【国際公開番号】W WO2020128743
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2018238529
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019123810
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田島 亮太
(72)【発明者】
【氏名】三上 真弓
(72)【発明者】
【氏名】門馬 洋平
(72)【発明者】
【氏名】上妻 宗広
(72)【発明者】
【氏名】松嵜 隆徳
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-054413(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路と、第2の回路とを有する半導体装置であって、
前記第1の回路は、残量計と、異常電流検知回路とを有し
、
前記残量計は、分流回路と、積分回路と、を有し、
前記異常電流検知回路は、第1のメモリと、第2のメモリと、第1のコンパレータと、を有し、
前記積分回路は、前記分流回路で検出する検知電流を積分することで検出電圧に変換する機能を有し、
前記異常電流検知回路には、前記検出電圧と、第1の時刻に与えられる第1の信号と、第2の時刻に与えられる第2の信号と、が与えられ、
前記異常電流検知回路は、前記第1の信号によって前記第1の時刻の検出電圧を前記第1のメモリに記憶させる機能を有し、
前記異常電流検知回路は、前記第2の信号によって前記第2の時刻の検出電圧を前記第2のメモリに記憶させる機能を有し、
前記第1のコンパレータは、前記第1の時刻の検出電圧と、前記第2の時刻の検出電圧の変化を第1の出力信号として前記第2の回路に出力する半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のメモリに記憶された検出電圧が、前記第2のメモリに記憶された検出電圧より大きい場合、前記第1のコンパレータは、前記第1の出力信号を前記第2の回路に出力し、
前記第2のメモリに記憶された検出電圧が、前記第1のメモリに記憶された検出電圧より大きい場合、前記第1のコンパレータは、前記第1の出力信号を反転して前記第2の回路に出力する半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記残量計は、ヒステリシス特性を備える第2のコンパレータを有し、
前記第2のコンパレータは、第1の判定電圧と、第2の判定電圧と、を用いて検出電圧を判定する機能を有し、
前記検出電圧が前記第1の判定電圧よりも小さい場合、前記第2のコンパレータの出力信号が前記分流回路の出力極性を反転させ、
前記検出電圧が前記第2の判定電圧よりも大きい場合、前記第2のコンパレータの出力信号が前記分流回路の出力極性を反転させ、
前記第2のコンパレータの出力信号は、前記第2の回路に出力される半導体装置。
【請求項4】
請求
項3において、
前記第2の回路は、前記第2のコンパレータの出力信号から前記第1の信号と、前記第2の信号と、を生成する半導体装置。
【請求項5】
請求
項3又は請求項4において、
前記第2の回路は、設定時間を設定することができる機能を有し、
前記第2の回路は、前記第2のコンパレータの出力信号の変化点から前記設定時間後に前記第1の信号または前記第2の信号を出力する機能を有する半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第2の回路が、制御回路またはプロセッサである半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記半導体装置は、トランジスタを有し、
前記トランジスタは、半導体層に酸化物半導体を含む半導体装置。
【請求項8】
可撓性基板に設けられた請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の半導体装置と、
二次電池と、を含む電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、および半導体装置の動作方法に関する。また、本発明の一態様は、充電制御回路、異常検知回路、または二次電池制御システム、および電子機器に関する。
【0002】
なお本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、表示装置、発光装置、蓄電装置、撮像装置、記憶装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうるもの全般を指す。よって、トランジスタやダイオードなどの半導体素子や半導体回路は半導体装置である。また、表示装置、発光装置、照明装置、電気光学装置、および電子機器などは、半導体素子や半導体回路を含む場合がある。よって、表示装置、発光装置、照明装置、電気光学装置、撮像装置、および電子機器なども、半導体装置と呼ばれる場合がある。
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、ゲーム装置、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、または、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車、電動バイクなど、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0005】
特許文献1には、CCCV(Constant Current Constant Voltage)充電における定電流充電時の二次電池の劣化を低減することができる充電制御回路が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されている構成では、CCCV充電における充電時の二次電池の劣化を低減するための充電制御回路が示されている。しかし、二次電池は、充放電を繰り返すことで劣化することが知られている。また、二次電池は、充放電を繰り返すことで、マイクロショートなどの不良が発生することが知られている。
【0008】
本発明の一態様は、二次電池の充電特性を監視することで二次電池の不良を検出する半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、消費電力を低減する半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、充電特性の検出精度の良好な半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、動作の安定した半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、信頼性の良好な半導体装置などを提供することを課題の一つとする。または、新規な半導体装置などを提供することを課題の一つとする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
最初に、二次電池の充放電方法について簡単に説明する。二次電池の充放電は、例えば下記のように行うことができる。
【0011】
<CC充電>
まず、充電方法の1つとして定電流(CC:Constant Current)充電について説明する。CC充電は、充電期間の全てで一定の電流を二次電池に流し、所定の電圧になったときに充電を停止する充電方法である。二次電池を、
図1Aに示すように内部抵抗Rと二次電池容量Cの等価回路と仮定する。この場合、二次電池電圧V
Bは、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rと二次電池容量Cにかかる電圧V
Cの和である。
【0012】
CC充電を行っている間は、
図1Aに示すように、スイッチがオンになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、V
R=R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rも一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V
Cは、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧V
Bは、時間の経過とともに上昇する。
【0013】
そして二次電池電圧V
Bが所定の電圧、例えば4.3Vになったときに、充電を停止する。CC充電を停止すると、
図1Bに示すように、スイッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rが0Vとなる。そのため、二次電池電圧V
Bが下降する。よって、二次電池電圧V
Bは、二次電池容量Cにかかる電圧V
Cと等しくなる。
【0014】
CC充電を行っている間と、CC充電を停止した後の、二次電池電圧V
Bと充電電流の例を
図1Cに示す。CC充電を行っている間は上昇していた二次電池電圧V
Bが、CC充電を停止した後、若干低下する様子が示されている。
【0015】
<CCCV充電>
次に、上記と異なる充電方法である定電流定電圧(CCCV)充電について説明する。CCCV充電は、まずCC充電にて所定の電圧まで充電を行い、その後CV(定電圧)充電にて流れる電流が少なくなるまで、具体的には終止電流値になるまで充電を行う充電方法である。
【0016】
CC充電を行っている間は、
図2Aに示すように、定電流電源のスイッチがオン、定電圧電源のスイッチがオフになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、V
R=R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rも一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V
Cは、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧V
Bは、時間の経過とともに上昇する。
【0017】
そして二次電池電圧V
Bが所定の電圧、例えば4.3Vになったときに、CC充電からCV充電に切り替える。CV充電を行っている間は、
図2Bに示すように、定電圧電源のスイッチがオン、定電流電源のスイッチがオフになり、二次電池電圧V
Bが一定となる。一方、二次電池容量Cにかかる電圧V
Cは、時間の経過とともに上昇する。V
B=V
R+V
Cであるため、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rは、時間の経過とともに小さくなる。内部抵抗Rにかかる電圧V
Rが小さくなるに従い、V
R=R×Iのオームの法則により、二次電池に流れる電流Iも小さくなる。
【0018】
そして二次電池に流れる電流Iが所定の電流、例えば0.01C相当の電流となったとき、充電を停止する。CCCV充電を停止すると、
図2Cに示すように、全てのスイッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧V
Rが0Vとなる。しかし、CV充電により内部抵抗Rにかかる電圧V
Rが十分に小さくなっているため、内部抵抗Rでの電圧降下がなくなっても、二次電池電圧V
Bはほとんど降下しない。よって、二次電池電圧V
Bは、二次電池容量Cにかかる電圧V
Cと等しくなる。
【0019】
CCCV充電を行っている間と、CCCV充電を停止した後の、二次電池電圧V
Bと充電電流の例を
図2Dに示す。CCCV充電を停止した後、二次電池電圧V
Bがほとんど降下しない様子が示されている。
【0020】
<CC放電>
次に、放電方法の1つであるCC放電について説明する。CC放電は、放電期間の全てで一定の電流を二次電池から流し、二次電池電圧VBが所定の電圧、例えば2.5Vになったときに放電を停止する放電方法である。
【0021】
次に、放電レートおよび充電レートについて説明する。放電レートとは、電池容量に対する放電時の電流の相対的な比率であり、単位Cで表される。
【0022】
定格容量Xの電池において、1C相当の電流はXである。2Xの電流で放電させた場合は2Cで放電させたといい、0.2Xの電流で放電させた場合は0.2Cで放電させたという。また、充電レートも同様であり、2Xの電流で充電させた場合は2Cで充電させたといい、0.2Xの電流で充電させた場合は0.2Cで充電させたという。
【0023】
マイクロショートなどの異常発生時においては、二次電池の充電電圧の降下が急に発生する。一方、異常電流は電池内部で保護回路とは異なる経路(電池内部)で流れる。
図32に縦軸を電圧、横軸を時間として充電を行い20分付近でマイクロショートを生じさせているグラフを一例として示す。本発明の一態様は、異常挙動を検出し、その結果を制御回路またはプロセッサに通知することで、電源遮断スイッチをオフ状態とすることで二次電池への電力供給をストップすることができる。
【0024】
上記の充電方法で充電する場合、本発明の一態様は、二次電池の充電特性から二次電池の劣化を検出することができる。なお、二次電池の劣化には、マイクロショートなどの異常も含まれる。
【0025】
本発明の一態様は、第1の回路と、第2の回路とを有する半導体装置である。第1の回路は、残量計と、異常電流検知回路と、を有する。残量計は、分流回路と、積分回路と、を有する。異常電流検知回路は、第1のメモリと、第2のメモリと、第1のコンパレータと、を有する。積分回路は、分流回路で検出する検知電流を積分することで検出電圧に変換することができる。異常電流検知回路には、検出電圧と、第1の時刻に与えられる第1の信号と、第2の時刻に与えられる第2の信号と、が与えられる。異常電流検知回路は、第1の信号によって第1の時刻の検出電圧を第1のメモリに記憶させることができる。異常電流検知回路は、第2の信号によって第2の時刻の検出電圧を第2のメモリに記憶させることができる。第1のコンパレータは、第1の時刻の検出電圧と、第2の時刻の検出電圧の変化を第1の出力信号として第2の回路に出力する。
【0026】
上記構成において、第1のメモリに記憶された検出電圧が、第2のメモリに記憶された検出電圧より大きい場合、第1のコンパレータは、第1の出力信号を第2の回路に出力する。また、第2のメモリに記憶された検出電圧が、第1のメモリに記憶された検出電圧より大きい場合、第1のコンパレータは、第1の出力信号を反転して第2の回路に出力する。
【0027】
上記各構成において、残量計は、ヒステリシス特性を備える第2のコンパレータを有し、第2のコンパレータは、第1の判定電圧と、第2の判定電圧と、を用いて検出電圧を判定することができる。検出電圧が第1の判定電圧よりも小さい場合、第2のコンパレータの出力信号が分流回路の出力極性を反転させることができる。検出電圧が第2の判定電圧よりも大きい場合、第2のコンパレータの出力信号が分流回路の出力極性を反転させることができる。第2のコンパレータの出力信号は、第2の回路に出力される。
【0028】
上記各構成において、第2の回路は、第2のコンパレータの出力信号から第1の信号と、第2の信号と、を生成することができる。
【0029】
上記各構成において、第2の回路は、設定時間を設定することができる。第2の回路は、第2のコンパレータの出力信号の変化点から設定時間後に第1の信号または第2の信号を出力することができる。
【0030】
上記各構成において、第2の回路は、制御回路またはプロセッサであることが好ましい。
【0031】
上記各構成において、半導体装置は、トランジスタを有し、トランジスタは、半導体層に酸化物半導体を含むことが好ましい。
【0032】
また、本発明の別の一態様は、可撓性基板に設けられた半導体装置と、絶縁シートと、二次電池と、を含む電池パックである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様は、二次電池の充電特性を監視することで二次電池の不良を検出する半導体装置などを提供することができる。または、消費電力を低減する半導体装置などを提供することができる。または、充電特性の検出精度の良好な半導体装置などを提供することができる。または、動作の安定した半導体装置などを提供することができる。または、信頼性の良好な半導体装置などを提供することができる。または、新規な半導体装置などを提供することができる。
【0034】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A乃至
図1Cは、二次電池の充電方法を説明する図である。
図2A乃至
図2Dは、二次電池の充電方法を説明する図である。
図3は、半導体装置の構成例を説明する図である。
図4は、半導体装置の構成例を説明する図である。
図5は、半導体装置の回路例を説明する図である。
図6は、半導体装置の動作例を説明する図である。
図7は、半導体装置の動作例を説明する図である。
図8A乃至
図8Cは、コイン型二次電池を説明する図である。
図9A乃至
図9Dは、円筒型二次電池を説明する図である。
図10A、
図10Bは、二次電池の例を説明する図である。
図11A乃至
図11Dは、二次電池の例を説明する図である。
図12A、
図12Bは、二次電池の例を説明する図である。
図13は、二次電池の例を説明する図である。
図14A乃至
図14Cは、貼り合わせ型の二次電池を説明する図である。
図15A、
図15Bは、貼り合わせ型の二次電池を説明する図である。
図16は、二次電池の外観を示す図である。
図17は、二次電池の外観を示す図である。
図18A乃至
図18Cは、二次電池の作製方法を説明するための図である。
図19A乃至
図19Eは、曲げることのできる二次電池を説明する図である。
図20A、
図20Bは、曲げることのできる二次電池を説明する図である。
図21A乃至
図21Hは、電子機器の一例を説明する図である。
図22A、
図22Bは、電子機器の一例を説明する図である。
図22Cは、電子機器の充放電制御回路を説明するブロック図である。
図23は、電子機器の一例を説明する図である。
図24A乃至
図24Cは、車両の一例を説明する図である。
図25は、半導体装置の構成例を説明する図である。
図26は、半導体装置の構成例を説明する図である。
図27A乃至
図27Cは、トランジスタの構造例を説明する図である。
図28A、
図28Bは、トランジスタの構造例を説明する図である。
図29は、半導体装置の構成例を説明する図である。
図30A、
図30Bは、トランジスタの構造例を説明する図である。
図31は、半導体装置の構成例を説明する図である。
図32は、マイクロショートを説明する図である。
図33Aは、アンプ回路を説明する回路図である。
図33Bは、タイミングチャートを説明する図である。
図34Aは、チップ写真である。
図34Bは、半導体装置の電気特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0037】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理によりレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために図に反映しないことがある。
【0038】
また、上面図(「平面図」ともいう)や斜視図などにおいて、図面をわかりやすくするために、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。
【0039】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。さらに、回路を説明する場合、「配線」には、抵抗が一体となって形成されている場合なども含む。
【0040】
また、本明細書等において、電気回路における「端子」とは、電流の入力または出力、電圧の入力または出力、および/または、信号の受信または送信が行われる部位をいう。よって、配線または電極の一部が端子として機能する場合がある。
【0041】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上または直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0042】
また、ソースおよびドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合など、動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソースまたはドレインであるかを限定することが困難である。このため、本明細書においては、ソースおよびドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0043】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、直接接続している場合と、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。よって、「電気的に接続される」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。また、「直接接続」と表現される場合、異なる導電層にコンタクトを介して接続される場合が含まれる。なお、配線には、異なる導電層が一つ以上の同じ元素を含む場合と、異なる元素を含む場合と、がある。
【0044】
また、本明細書などにおいて、「平行」とは、例えば、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」および「直交」とは、例えば、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0045】
なお、本明細書などにおいて、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0046】
また、本明細書において、レジストマスクを形成した後にエッチング処理を行う場合は、特段の説明がないかぎり、レジストマスクは、エッチング処理終了後に除去するものとする。
【0047】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位は互いに言い換えることが可能な場合が多い。本明細書などでは、特段の明示がないかぎり、電圧と電位を言い換えることができるものとする。
【0048】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「絶縁体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「絶縁体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「絶縁体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0049】
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する。よって、「半導体」を「導電体」に置き換えて用いることも可能である。この場合、「半導体」と「導電体」の境界は曖昧であり、両者の厳密な区別は難しい。したがって、本明細書に記載の「半導体」と「導電体」は、互いに読み換えることができる場合がある。
【0050】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲において異なる序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0051】
なお、本明細書等において、トランジスタの「オン状態」とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に短絡しているとみなせる状態(「導通状態」ともいう。)をいう。また、トランジスタの「オフ状態」とは、トランジスタのソースとドレインが電気的に遮断しているとみなせる状態(「非導通状態」ともいう。)をいう。
【0052】
また、本明細書等において、「オン電流」とは、トランジスタがオン状態の時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。また、「オフ電流」とは、トランジスタがオフ状態である時にソースとドレイン間に流れる電流をいう場合がある。
【0053】
また、本明細書等において、高電源電位VDD(以下、単に「VDD」または「H電位」ともいう)とは、低電源電位VSSよりも高い電位の電源電位を示す。また、低電源電位VSS(以下、単に「VSS」または「L電位」ともいう)とは、高電源電位VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDが接地電位の場合には、VSSは接地電位より低い電位であり、VSSが接地電位の場合には、VDDは接地電位より高い電位である。
【0054】
また、本明細書等において、ゲートとは、ゲート電極およびゲート配線の一部または全部のことをいう。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0055】
また、本明細書等において、ソースとは、ソース領域、ソース電極、およびソース配線の一部または全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分の導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0056】
また、本明細書等において、ドレインとは、ドレイン領域、ドレイン電極、およびドレイン配線の一部または全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗率が一定値以下の領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分の導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0057】
(実施の形態1)
本発明の一態様の半導体装置について、
図3乃至
図7を用いて説明する。
【0058】
本発明の一態様は、二次電池の劣化を検知する半導体装置である。
図3は、半導体装置を説明する構成例である。半導体装置は、回路10、および回路40を有する。回路10は、残量計20と、異常電流検知回路30と、出力回路11、出力回路12、および端子10a乃至端子10hを有する。残量計20は、端子20a乃至端子20fを有する。異常電流検知回路30は、端子30a乃至端子30dを有する。回路40は、端子40a乃至端子40dを有する。
【0059】
二次電池42は、二次電池42の二次電池電流を検出するためのモニタ用の抵抗41を介して配線52と電気的に接続される。抵抗41の電極の一方は、端子10aを介して端子20aに電気的に接続される。抵抗41の電極の他方は、端子10dを介して端子20dに電気的に接続される。なお、端子10bは、容量素子15を介して端子10cと電気的に接続される。また端子10bは、端子20bと電気的に接続される。また端子10cは、端子20cと電気的に接続される。端子20eは、出力回路11を介して端子10eと電気的に接続される。端子20fは、端子30aと電気的に接続される。端子30bは、出力回路12を介して端子10gと電気的に接続される。
【0060】
端子10eは、端子40aと、抵抗43の電極の一方とに電気的に接続される。端子10gは、端子40cと、抵抗44の電極の一方と電気的に接続される。なお、抵抗43の電極の他方と、抵抗44の電極の他方は、配線53と電気的に接続される。
【0061】
端子40bは、端子10fを介して端子30cと電気的に接続される。端子40dは、端子10hを介して端子30dと電気的に接続される。
【0062】
残量計20は、二次電池42の電流を分流する分流回路、検知した電流を積分し電圧に変換する積分回路、および変換された電圧を比較する第1の比較回路を有する。当該分流回路は、二次電池42の電圧から電流変化を検出し、且つ基準電位を生成することができる。当該積分回路は、二次電池42の電流を積分し検出電圧を生成することができる。さらに、積分回路は、検出電圧を異常電流検知回路30に与えることができる。当該第1の比較回路は、検出電圧を基準電圧と比較した結果を出力することができる。なお、第1の比較回路は、検出電圧を比較する場合にヒステリシス特性を利用する。ヒステリシス特性は、ヒステリシス幅を有する。ヒステリシス幅は、第1の判定電圧および第2の判定電圧によって設定される。なお、第1の判定電圧および第2の判定電圧は、回路40によって設定されることが好ましい。検出電圧が、ヒステリシス幅から外れた場合、残量計20は、回路40に対し第1の出力信号を用いて通知する。さらに、検出電圧が、ヒステリシス幅から外れた場合、異常電流検知回路は、第1の出力信号によって二次電池42の出力極性を反転させることができる。
【0063】
出力回路11または出力回路12は、オープンドレインの出力方式を用いることができる。一例として出力回路11の詳細を説明する。出力回路11には、Nchのトランジスタを用いる。当該トランジスタのゲートには、第1の出力信号が、残量計20の端子20eを介して与えられる。当該トランジスタのソースは、配線54に電気的に接続される。当該トランジスタのドレインに接続される抵抗43は、プルアップ抵抗として機能する。配線53に与えられる電圧は、回路40の入出力インターフェースの電源電圧であることが好ましい。オープンドレインの出力形式は、回路10に与えられる電源電圧と異なる電源電圧で動作する回路40に対し信号を出力するのに好適である。
【0064】
なお、オープンドレインの出力方式に用いるトランジスタは、チャネルが形成される半導体層に金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いたトランジスタ(「OSトランジスタ」ともいう。)を用いることができる。
【0065】
OSトランジスタはオフ電流を極めて少なくすることができる。具体的には、チャネル幅1μm当たりのオフ電流を室温下において1×10-20A未満、好ましくは1×10-22A未満、さらに好ましくは1×10-24A未満とすることができる。
【0066】
また、OSトランジスタは、高温環境下でもオフ電流がほとんど増加しない。具体的には室温以上200℃以下の環境温度下でもオフ電流がほとんど増加しない。半導体装置を構成するトランジスタにOSトランジスタを用いることで、高温環境下においても動作が安定し、信頼性の良好な半導体装置を実現できる。
【0067】
特に、出力回路11または出力回路12にOSトランジスタを用いることで、プルアップ抵抗を介した電流が配線54に流れることを抑制し消費電力を低減することができる。また、OSトランジスタは、ソースとドレイン間の絶縁耐圧が高い。OSトランジスタを用いることによって、信頼性の良好な半導体装置などを提供できる。
【0068】
第1の出力信号の“H”から“L”への変化を検出した場合、回路40は、設定された時間を経過した後に第1の信号または第2の信号を出力することができる。なお、設定時間は、回路40によって設定することができる。第1の出力信号が“H”から“L”に変化し第1の信号を出力するまでの時間を第1の期間とすることができる。また、第1の出力信号が“H”から“L”に変化し第2の信号を出力するまでの時間を第2の期間とすることができる。
【0069】
異常電流検知回路30は、第1のメモリと、第2のメモリと、第2の比較回路と、を有する。異常電流検知回路30には、検出電圧と、第1の期間後に与えられる第1の信号と、第2の期間後に与えられる第2の信号と、が与えられる。第1の信号は、第1の期間後の検出電圧を第1のメモリに記憶させることができる。第2の信号は、第2の期間後の検出電圧を第2のメモリに記憶させることができる。なお、検出電圧を第1のメモリに記憶させる時刻を、第1の時刻と呼び、検出電圧を第2のメモリに記憶させる時刻を、第2の時刻と呼ぶことができる。第2の比較回路は、第1の時刻の検出電圧と、第2の時刻の検出電圧の大小関係を第2の出力信号として出力回路12を介して回路40に出力することができる。
【0070】
異常電流検知回路30は、第1のメモリに記憶された検出電圧が、第2のメモリに記憶された検出電圧より大きい場合、第2の出力信号を回路40に出力することができる。また、異常電流検知回路30は、第2のメモリに記憶された検出電圧が、第1のメモリに記憶された検出電圧より大きい場合、第2の出力信号を反転して回路40に出力することができる。
【0071】
なお、回路40は、プロセッサを用いることができる。もしくは、回路40は、FPGA(Field Programable Gate Array)やPLD(Programable Logic Device)等によって構成される制御回路を用いることができる。もしくは、回路10は、回路40を含んでもよい。回路10が回路40を含む場合、出力回路11、出力回路12、またはプルアップ抵抗を必要としない。したがって部品点数を削減することができる。
【0072】
図4は、
図3で説明した半導体装置の構成例を詳細に説明する図である。
図4では、
図3と異なる点について説明し、発明の構成(または実施例の構成)において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0073】
残量計20は、分流回路21、積分回路22、およびコンパレータ23を有する。分流回路21は、二次電池42の電流を検知することができる。積分回路22は、検知した電流を積分し電圧に変換することができる。コンパレータ23は、積分された電圧を比較することができる。なお、コンパレータ23は、第1の比較回路に相当する。
【0074】
分流回路21は、端子21a乃至端子21gを有する。積分回路22は、端子22a、および端子22bを有する。コンパレータ23は、端子23a乃至23cを有する。
【0075】
端子20aは、端子21aと電気的に接続される。端子20bは、端子21bと電気的に接続される。端子20cは、端子21cと電気的に接続される。端子20dは、端子21dと電気的に接続される。端子21gは、端子22aと電気的に接続される。端子22bは、端子23a、および端子20fと電気的に接続される。端子23bは、端子21eと電気的に接続される。端子23cは、端子21fと電気的に接続される。
【0076】
分流回路21は、二次電池42の電流変化を検知することができる。積分回路22は、二次電池42の電流を積分することで検出電圧を生成することができる。積分回路22は、検出電圧を積分回路22の端子22b、残量計20の端子20fを介して異常電流検知回路30に与えることができる。
【0077】
コンパレータ23には、判定電圧Bias1および判定電圧Bias2が与えられる。コンパレータ23は、ヒステリシス特性を有し、当該ヒステリシス幅は、判定電圧Bias1および判定電圧Bias2によって設定される。なお、判定電圧Bias1および判定電圧Bias2は、回路40によって設定されることが好ましい。コンパレータ23の出力信号は、端子23bを介して端子20eに与えられ、かつ、端子21eに与えられる。なお、端子20eに与えられるコンパレータ23の出力信号は、出力回路11を介して回路40に与えられる。検出電圧が、ヒステリシス幅から外れた場合、コンパレータ23は、回路40に対しコンパレータ23の出力信号を用いて通知する。さらに、検出電圧が、ヒステリシス幅から外れた場合、分流回路21の端子21eに与えられるコンパレータ23の出力信号は、分流回路21の出力極性を反転させることができる。
【0078】
図5は、本発明の一態様である半導体装置が有する回路10の回路例を説明する図である。
図5では、
図4で説明した回路10を詳細に説明し、発明の構成(または実施例の構成)において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0079】
分流回路21は、抵抗R1乃至抵抗R4、スイッチS1、およびスイッチS2を有する。なお、抵抗は、配線の長さによって抵抗値を決めることができる。または、抵抗は、配線で用いる導電層とは異なる導電率を有する導電層とコンタクトを介して接続して形成することができる。
【0080】
抵抗R1の一方の電極は、端子21aと電気的に接続される。抵抗R1の他方の電極は、抵抗R2の一方の電極、スイッチS1の一方の電極、および端子21bと電気的に接続される。抵抗R2の他方の電極は、抵抗R3の一方の電極、および端子21hと電気的に接続される。抵抗R3の他方の電極は、抵抗R4の一方の電極、スイッチS2の一方の電極、および端子21cと電気的に接続される。抵抗R4の他方の電極は、端子21dと電気的に接続される。スイッチS1の他方の電極は、スイッチS2の他方の電極、および端子21gと電気的に接続される。
【0081】
抵抗R1は、抵抗R4と同じ抵抗値であることが好ましい。また、抵抗R2は、抵抗R3と同じ抵抗値であることが好ましい。なお、抵抗値には、ばらつきが含まれる。例えば、抵抗値は-5%以上+5%以下のばらつきの範囲、好ましくは抵抗値が-3%以上+3%以下のばらつきの範囲、より好ましくは抵抗値が-1%以上+1%以下のばらつきの範囲である。
【0082】
端子21hに与えられる出力電圧は、積分回路22の基準電圧として端子22fに与えられる。端子21gに与えられる検知電流は、積分回路22の入力信号として端子22aに与えられる。なお、スイッチS1は、端子21eに与えられるコンパレータ23の出力信号によって制御される。また、スイッチS2は、端子21fに与えられるコンパレータ23の出力信号の反転信号によって制御される。したがって、充電時においてスイッチS1がオン状態かつスイッチS2がオフ状態の場合、端子21gに与えられる検知電流は、基準電圧に対して正の電流が与えられる。スイッチS2がオン状態かつスイッチS1がオフ状態の場合、端子21gに与えられる検知電流は、基準電圧に対して負の電流が与えられる。
【0083】
次に、積分回路22について説明する。積分回路は、アンプ回路22c、抵抗22d、および容量22eを有する。アンプ回路22cは、非反転入力端子、反転入力端子、および出力端子を有する。端子22aは、抵抗22dの一方の電極と電気的に接続される。抵抗22dの他方の電極は、アンプ回路22cの非反転入力端子と、容量22eの一方の電極と電気的に接続される。端子22fは、アンプ回路22cの反転入力端子と電気的に接続される。アンプ回路22cの出力端子は、容量22eの他方の電極と、端子22bと電気的に接続される。
【0084】
端子22aに与えられる電流は、積分回路22によって積分され、検出電圧を生成する。なお、スイッチS1がオン状態かつスイッチS2がオフ状態の場合、端子22bに与える検出電圧は、端子22fに与えられる基準電圧に対して正の電圧が与えられる。または、スイッチS2がオン状態かつスイッチS1がオフ状態の場合、端子22bに与える検出電圧は、端子22fに与えられる基準電圧に対して負の電圧が与えられる。
【0085】
一般に、容量は二つの電極が誘電体を介して向かい合う構成を有する。容量値は、向かい合う電極の重畳面積と誘電体の比誘電率に比例し、二つの電極間の距離に反比例する。容量22eを設ける場合、容量値が大きすぎると半導体装置の占有面積が大きくなりやすく好ましくない。また、容量22eの容量値が大きいと、積分回路の応答性が低下する。
【0086】
したがって、容量22eを設ける場合、容量22eの容量値は、好ましくは0.01fF以上100pF以下、より好ましくは0.05fF以上10pF以下、さらに好ましくは0.1fF以上1pF以下にすればよい。
【0087】
積分回路22が生成する検出電圧は、コンパレータ23の端子23a、および端子20fを介して異常電流検知回路30の端子30aに与えられる。
【0088】
コンパレータ23は、アンプ回路23e、アンプ回路23f、回路23g、および回路23hを有する。なお、回路23gおよび回路23hは、第1の入力端子、第2の入力端子、および出力端子を有し、否定論理積として動作する論理ゲートである。
【0089】
端子23aは、アンプ回路23eの非反転入力端子、およびアンプ回路23fの反転入力端子と電気的に接続される。アンプ回路23eの反転入力端子には、判定電圧Bias1が与えられる。アンプ回路23fの非反転入力端子には、判定電圧Bias2が与えられる。アンプ回路23eの出力端子は、回路23gの第1の入力端子と電気的に接続される。アンプ回路23fの出力端子は、回路23hの第2の入力端子と電気的に接続される。回路23gの出力端子は、回路23hの第1の入力端子、端子23cを介して分流回路の端子21fと電気的に接続される。回路23hの出力端子は、回路23gの第2の入力端子、端子23bを介して分流回路の端子21eと電気的に接続される。なお、端子23bは、残量計20の端子20eを介して出力回路11と電気的に接続される。
【0090】
異常電流検知回路30は、メモリ32aと、メモリ32bと、アンプ回路31aと、を有する。なお、アンプ回路31aは、第2の比較回路として機能する。メモリ32aは、スイッチ31bと、容量31dと、を有する。メモリ32bは、スイッチ31cと、容量31eと、を有する。
【0091】
端子30aは、メモリ32aの入力端子と、メモリ32bの入力端子と電気的に接続される。メモリ32aの出力端子は、アンプ回路31aの反転入力端子と電気的に接続される。メモリ32bの出力端子は、アンプ回路31aの非反転入力端子と電気的に接続される。アンプ回路31aの出力端子は、端子30bを介して出力回路12と電気的に接続される。なお、端子30aには、積分回路22が生成する検出信号が信号ioutとして与えられる。
【0092】
さらに詳しく、異常電流検知回路30について説明する。端子30aは、スイッチ31bの一方の電極と電気的に接続される。スイッチ31bの他方の電極は、容量31dの一方の電極、およびアンプ回路31aの反転入力端子と電気的に接続される。容量31dの他方の電極は、配線54と電気的に接続される。また、異常電流検知回路30の端子30aは、スイッチ31cの一方の電極と電気的に接続される。スイッチ31cの他方の電極は、容量31eの一方の電極、およびアンプ回路31aの非反転入力端子と電気的に接続される。容量31eの他方の電極は、配線54と電気的に接続される。
【0093】
スイッチ31bは、回路40から端子10hを介して与えられる信号SHNによって制御される。スイッチ31cは、回路40から端子10fを介して与えられる信号SHPによって制御される。
【0094】
なお、スイッチ31b、およびスイッチ31bは、OSトランジスタであることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流を極めて少なくすることができるため、メモリに与えられた電圧を保持するのに好適である。
【0095】
また、OSトランジスタは、高温環境下(例えば、50℃以上150℃以下の環境下。)においても、オフ電流か増加しにくい。よって、高温環境下においても、記憶素子(メモリ32a、またはメモリ32b)に供給された電圧(電荷)を長期間保持することができる。
【0096】
このように、OSトランジスタと容量によって記憶素子が構成される。記憶素子を構成するトランジスタにOSトランジスタを用いた記憶素子を「OSメモリ」と呼ぶ場合がある。
【0097】
回路40は、コンパレータ23の出力信号が与えられると、回路40が備える時間管理機能を用いて信号SHP、および信号SHNを生成する。
【0098】
信号SHPを用いて、メモリ32bに検出電圧を記憶させる方法について説明する。回路40は、コンパレータ23の出力信号の変化点(出力回路11が、オフ状態からオン状態に変化)から時間管理を行い、当該変化点から設定された第1の期間後に信号SHPを“H”状態にする。メモリ32bは、信号SHPが“H”の期間に端子30aに与えられる検出電圧を記憶する。
【0099】
次に、信号SHNを用いて、メモリ32aに検出電圧を記憶させる方法について説明する。回路40は、コンパレータ23の出力信号の変化点(出力回路11が、オフ状態からオン状態に変化)から時間管理を行い、当該変化点から設定された第2の期間後に信号SHNを“H”にする。メモリ32aは、信号SHNが“H”の期間に端子30aに与えられる検出電圧を記憶する。
【0100】
回路40は、信号SHPを、信号SHNと異なるタイミングで出力することが好ましい。よって、信号SHPおよび信号SHNは、信号SHPおよび信号SHNが与えられた時刻に対する検出電圧の変化を検出することができる。したがって、信号SHPと、信号SHNとの時間間隔は大きいことが好ましい。当該時間間隔には、信号CCNTの変化点を複数含むことができる。また、当該時間間隔は、充電サイクル数に応じて変化させてもよいし、二次電池42の充電開始時の検出電圧に応じて変化させてもよい。
【0101】
メモリ32bに記憶される検出電圧が、メモリ32aに記憶される検出電圧より大きい場合、アンプ回路31aは、“H”の信号を出力し、出力回路12では“L”の信号に変換され回路40に出力する。異なる例として、メモリ32aに記憶される検出電圧が、メモリ32bに記憶される検出電圧より大きい場合、アンプ回路31aは、“L”の信号を出力し、出力回路12で“H”の信号に変換され回路40に出力する。アンプ回路31aの出力信号(信号ABNC)は、端子10gを介して回路40に与えることができる。回路40は、信号ABNCを用いて二次電池42の出力の変化を判定する。
【0102】
回路40が判定した信号ABNCは、二次電池42の充電特性の傾きを表している。信号ABNCの出力が“H”の場合、二次電池42の充電特性は電圧が上昇する変化を示している。信号ABNCの出力が“L”の場合、二次電池42の充電特性は電圧が下降する変化を示している。
【0103】
次に、出力回路11について説明する。出力回路11の出力信号(信号CCNT)は、端子10eを介して回路40に与えることができる。よってコンパレータ23の出力信号は、出力回路11を介して回路40に検出電圧がヒステリシス幅から外れたことを通知することができる。信号CCNTは、二次電池42の充電特性の傾きに応じて信号CCNTの“H”の期間または“L”の期間の時間が変化する。例えば、二次電池42の充電特性の電圧が上昇する変化を示す場合、上昇する変化の大きさにより周期の時間は短くなる。また、二次電池42の充電特性の電圧が下降する変化を示す場合、下降する変化の大きさにより周期の時間は短くなる。
【0104】
図6は、二次電池42に対し正常に充電している場合の動作例を説明する。
図6は、一例として二次電池42に対し正常に充電している場合の充電特性を示している。
図6は、二次電池42をCCCV充電で充電した場合の充電特性である。CCCV充電は、CC充電期間と、CCV充電期間とを管理することが重要である。CC充電期間では、二次電池42に対し定電流源から一定の充電電流を与えることで充電する。充電電流が一定であるため、オームの法則により、二次電池42の内部抵抗にかかる電圧も一定である。一方、二次電池容量にかかる電圧は、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池42の充電電圧は、時間の経過とともに上昇する。
【0105】
二次電池42の充電電圧が、任意の電圧に達した場合、CC充電期間からCV充電期間に移行する。CV充電期間は、二次電池42に対し定電圧源から一定の充電電圧を与えることで充電する。二次電池容量Cにかかる電圧は、時間の経過とともに上昇するため、二次電池42の内部抵抗にかかる電圧は、時間の経過とともに小さくなる。当該内部抵抗にかかる電圧が小さくなるに従い、オームの法則により、二次電池42に流れる充電電流も小さくなる。
【0106】
図6では、さらに半導体装置の動作を、タイミングチャートを用いて説明する。タイミングチャートでは、CV充電時の任意の期間を用いて説明する。
【0107】
信号ioutは、積分回路22が生成する検出電圧である。信号ioutの電圧は、コンパレータ23のヒステリシス幅の内側から外れると分流回路21の出力が反転し、その結果、信号ioutの変化の向きが反転する。信号ioutは、積分回路22によって生成されるため、分流回路21で検出する二次電池42の充電電圧の変化量が大きくなることで信号ioutの傾きが大きくなる。また分流回路21で検出する二次電池42の充電電圧が小さくなることで信号ioutの傾きが小さくなる。つまりコンパレータ23の出力信号は、信号ioutの傾きにより周期T1乃至T7の時間が変化する。なお、コンパレータ23の出力信号の変化点は、信号ioutの変化点と一致する。したがって、コンパレータ23の出力信号は、信号CCNTに同期する。
【0108】
回路40(以下、制御部として説明する。)は、信号CCNTの変化点を検出すると、信号SHP、および信号SHNを生成する。信号CCNTの変化点から信号SHPを出力する期間を期間D1とする。信号CCNTの変化点から信号SHNを出力する期間を期間D2とする。一例として、信号SHP1は、信号CCNTの変化点から設定された期間D1後にスイッチ31cをオン状態にする。よって、信号SHP1は、“H”の信号に変化する。また、信号SHN1は、信号CCNTの変化点から設定された期間D2後にスイッチ31bをオン状態にする。よって、信号SHN1は、“H”の信号に変化する。なお、期間D1は、期間D2と同じ設定時間であることが好ましい。
【0109】
メモリ32bは、第1の時刻(信号SHPが“H”から“L”に変化)に検出電圧を記憶する。メモリ32aは、第2の時刻(信号SHNが“H”から“L”に変化)に検出電圧を記憶する。異常電流検知回路30が有するアンプ回路31aは、メモリ32aに記憶した検出電圧と、メモリ32bに記憶した検出電圧と、の大きさを比較する。期間D1が期間D2と同じ設定時間である場合、メモリ32a、メモリ32bに記憶される検出電圧は、検出電圧の変化量の傾きを表すことができる。
【0110】
二次電池42が正常な状態の場合、CV充電時は、充電電流が減少する特性を示す。したがって、信号CCNT、および信号ABNCの周期T1乃至T7の時間が順に大きくなる。なお、信号SHP1または信号SHP2は、メモリ32bに検知電圧を記憶するタイミングを示し、信号SHN1または信号SHN2は、メモリ32aに検知電圧を記憶するタイミングを示している。制御部は、信号ABNCが、“H”から“L”または“L”から“H”に変化する時刻を用いて周期TD1乃至周期TD3などの期間の長さを検出する。
【0111】
図6では、CV充電時に、充電電流が減少する傾向を示す例である。したがって、タイミングチャートでは、順に信号SHP1、信号SHN1、信号SHP2、信号SHN2によってメモリに記憶する信号ioutの電圧が小さくなることを示している。よって、制御部は、信号ABNCの出力する周期TD1乃至周期TD3などが長くなるため二次電池42の充電曲線が下降する傾向を示していることを判定することができる。
【0112】
図7は、一例として、二次電池42が劣化し
図6で示した正常な状態と異なる充電特性を示す場合について説明する図である。
図7は、CV充電時に充電電流が上昇する特性を示している。したがって、信号CCNT、および信号ABNCの周期T1乃至T7の時間が順に小さくなる。
【0113】
図7では、CV充電時に、順に信号SHP1、信号SHN1、信号SHP2、信号SHN2の充電電流が増加する傾向を示す例である。タイミングチャートでは、順に信号SHP1、信号SHN1、信号SHP2、信号SHN2によってメモリに記憶する信号ioutの電圧が大きくなることを示している。よって、制御部は、信号ABNCの出力する周期TD1乃至周期TD3などが短くなるため二次電池42の充電曲線が上昇する傾向を示していることを判定することができる。
【0114】
よって、本発明の一態様である半導体装置は、二次電池42に対し充電する場合の充電特性を監視および充電制御をすることができる。例えば、CV充電時に、充電電流の傾きを管理することで二次電池42の劣化状態を検出することができる。したがって当該半導体装置は、二次電池42の異常検知回路として機能する。
【0115】
本発明の一態様である半導体装置において、回路40は、実施の形態3、または実施の形態4で示すように様々な電子機器を動作させるために二次電池42を効率的に用いることができる。なお、電子機器が備えるプロセッサの機能を利用する場合は、半導体装置を二次電池制御システムと言い換えることができる。
【0116】
本発明の一態様である半導体装置は、二次電池42の充電特性が急峻な変化をする場合、または緩やかな場合においても対応することができる。二次電池42の充電特性が急峻な変化をする場合とは、
図32に示すようなマイクロショートなどの急峻な変化が含まれる。よって二次電池42の充電特性を監視することで、当該電子機器を安定して動作させることができる。またOSトランジスタを用いることで消費電力を低減することができる。
【0117】
OSトランジスタを用いた充電制御回路、異常検知回路、または二次電池制御システムなどを、BTOS(Battery operating system、またはBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。
【0118】
なお、本発明の一態様にかかる半導体装置は、本実施の形態に示した回路図に限定して解釈されるものではない。本発明の一態様にかかる半導体装置には、本実施の形態に示した回路構成と同等の回路構成を有する場合も含まれる。
【0119】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0120】
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態で用いる二次電池の形状の例について説明する。
【0121】
[コイン型二次電池]
まずコイン型の二次電池の一例について説明する。
図8Aはコイン型(単層偏平型)の二次電池の外観図であり、
図8Bは、その断面図である。
【0122】
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。
【0123】
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
【0124】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、またはこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
【0125】
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、
図8Bに示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
【0126】
ここで
図8Cを用いて二次電池の充電時の電流の流れを説明する。リチウムを用いた二次電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる。なお、リチウムを用いた二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電圧が高い電極を正極と呼び、反応電圧が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0127】
図8Cに示す2つの端子には充電器が接続され、二次電池300が充電される。二次電池300の充電が進めば、電極間の電圧差は大きくなる。
【0128】
[円筒型二次電池]
次に円筒型の二次電池の例について
図9を参照して説明する。円筒型の二次電池800の外観図を
図9Aに示す。
図9Bは、円筒型の二次電池800の断面を模式的に示した図である。
図9Bに示すように、円筒型の二次電池800は、上面に正極キャップ(電池蓋)801を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)802を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)802とは、ガスケット(絶縁パッキン)810によって絶縁されている。
【0129】
中空円柱状の電池缶802の内側には、帯状の正極804と負極806とがセパレータ805を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶802は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶802には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、またはこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を電池缶802に被覆することが好ましい。電池缶802の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板808、809により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶802の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
【0130】
円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極804には正極端子(正極集電リード)803が接続され、負極806には負極端子(負極集電リード)807が接続される。正極端子803および負極端子807は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子803は安全弁機構812に、負極端子807は電池缶802の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構812は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)811を介して正極キャップ801と電気的に接続されている。安全弁機構812は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ801と正極804との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子811は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0131】
また、
図9Cのように複数の二次電池800を、導電板813および導電板814の間に挟んでモジュール815を構成してもよい。複数の二次電池800は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池800を有するモジュール815を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
【0132】
図9Dはモジュール815の上面図である。図を明瞭にするために導電板813を点線で示した。
図9Dに示すようにモジュール815は、複数の二次電池800を電気的に接続する導線816を有していてもよい。導線816上に導電板を重畳して設けることができる。また複数の二次電池800の間に温度制御装置817を有していてもよい。二次電池800が過熱されたときは、温度制御装置817により冷却し、二次電池800が冷えすぎているときは温度制御装置817により加熱することができる。そのためモジュール815の性能が外気温に影響されにくくなる。温度制御装置817が有する熱媒体は絶縁性と不燃性を有することが好ましい。
【0133】
[二次電池の構造例]
二次電池の別の構造例について、
図10乃至
図13を用いて説明する。
【0134】
図10Aおよび
図10Bは、二次電池の外観図を示す図である。二次電池913は、回路基板900を介して、アンテナ914、およびアンテナ915に接続されている。また、二次電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、
図10Bに示すように、二次電池913は、端子951と、端子952と、に接続されている。
【0135】
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、および回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
【0136】
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914およびアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。または、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
【0137】
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
【0138】
二次電池は、アンテナ914およびアンテナ915と、二次電池913との間に層916を有する。層916は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0139】
【0140】
【0141】
図11Aに示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、
図11Bに示すように、二次電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。層917は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0142】
上記構造にすることにより、アンテナ914およびアンテナ918の両方のサイズを大きくすることができる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した二次電池と他の機器との通信方式としては、NFC(近距離無線通信)など、二次電池と他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
【0143】
または、
図11Cに示すように、
図10Aおよび
図10Bに示す二次電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、
図10Aおよび
図10Bに示す二次電池と同じ部分については、
図10Aおよび
図10Bに示す二次電池の説明を適宜援用できる。
【0144】
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
【0145】
または、
図11Dに示すように、
図10Aおよび
図10Bに示す二次電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、
図10Aおよび
図10Bに示す二次電池と同じ部分については、
図10Aおよび
図10Bに示す二次電池の説明を適宜援用できる。
【0146】
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、または赤外線を測定することができる機能を有すればよい。センサ921を設けることにより、例えば、二次電池が置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
【0147】
さらに、二次電池913の構造例について
図12および
図13を用いて説明する。
【0148】
図12Aに示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、
図12Aでは、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951および端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)または樹脂材料を用いることができる。
【0149】
なお、
図12Bに示すように、
図12Aに示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、
図12Bに示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930aおよび筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
【0150】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
【0151】
さらに、捲回体950の構造について
図13に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
【0152】
負極931は、端子951および端子952の一方を介して
図10に示す端子911に接続される。正極932は、端子951および端子952の他方を介して
図10に示す端子911に接続される。
【0153】
[貼り合わせ型二次電池]
次に、貼り合わせ型の二次電池の例について、
図14乃至
図20を参照して説明する。貼り合わせ型の二次電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて二次電池も曲げることもできる。
【0154】
図14を用いて、貼り合わせ型の二次電池980について説明する。貼り合わせ型の二次電池980は、
図14Aに示す捲回体993を有する。捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。捲回体993は、
図13で説明した捲回体950と同様に、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。
【0155】
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
【0156】
図14Bに示すように、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納することで、
図14Cに示すように二次電池980を作製することができる。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
【0157】
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
【0158】
また、
図14Bおよび
図14Cでは2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
【0159】
また
図14では外装体となるフィルムにより形成された空間に捲回体を有する二次電池980の例について説明したが、例えば
図15のように、外装体となるフィルムにより形成された空間に、短冊状の複数の正極、セパレータおよび負極を有する二次電池としてもよい。
【0160】
図15Aに示す、貼り合わせ型の二次電池700は、正極集電体701および正極活物質層702を有する正極703と、負極集電体704および負極活物質層705を有する負極706と、セパレータ707と、電解液708と、外装体709と、を有する。外装体709内に設けられた正極703と負極706との間にセパレータ707が設置されている。また、外装体709内は、電解液708で満たされている。電解液708には、実施の形態2で示した電解液を用いることができる。
【0161】
図15Aに示す、貼り合わせ型の二次電池700において、正極集電体701および負極集電体704は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体701および負極集電体704の一部は、外装体709から外側に露出するように配置してもよい。また、正極集電体701および負極集電体704を、外装体709から外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体701、或いは負極集電体704とを超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
【0162】
貼り合わせ型の二次電池700において、外装体709には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造を有する貼り合わせフィルムを用いることができる。
【0163】
また、貼り合わせ型の二次電池700の断面構造の一例を
図15Bに示す。
図15Aでは簡略のため、2つの集電体で構成する例を示しているが、実際は、
図15Bに示すように、複数の電極層で構成する。
【0164】
図15Bでは、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16としても二次電池700は、可撓性を有する。
図15Bでは負極集電体704が8層と、正極集電体701が8層の合計16層の構造を示している。なお、
図15Bは負極の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体704を超音波接合させている。勿論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する二次電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた二次電池とすることができる。
【0165】
ここで、貼り合わせ型の二次電池700の外観図の一例を
図16および
図17に示す。
図16および
図17は、正極703、負極706、セパレータ707、外装体709、正極リード電極710および負極リード電極711を有する。
【0166】
図18Aは正極703および負極706の外観図を示す。正極703は正極集電体701を有し、正極活物質層702は正極集電体701の表面に形成されている。また、正極703は正極集電体701が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極706は負極集電体704を有し、負極活物質層705は負極集電体704の表面に形成されている。また、負極706は負極集電体704が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極および負極が有するタブ領域の面積や形状は、
図18Aに示す例に限られない。
【0167】
[貼り合わせ型二次電池の作製方法]
ここで、
図16に外観図を示す、貼り合わせ型二次電池の作製方法の一例について、
図18Bおよび
図18Cを用いて説明する。
【0168】
まず、負極706、セパレータ707および正極703を積層する。
図18Bに積層された負極706、セパレータ707および正極703を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。次に、正極703のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極710の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極706のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極711の接合を行う。
【0169】
次に外装体709上に、負極706、セパレータ707および正極703を配置する。
【0170】
次に、
図18Cに示すように、外装体709を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体709の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液708を入れることができるように、外装体709の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0171】
次に、外装体709に設けられた導入口から、電解液708(図示しない。)を外装体709の内側へ導入する。電解液708の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、貼り合わせ型の二次電池700を作製することができる。
【0172】
[曲げることのできる二次電池]
次に、曲げることのできる二次電池の例について
図19および
図20を参照して説明する。
【0173】
図19Aに、曲げることのできる二次電池250の上面概略図を示す。
図19B、
図19Cおよび
図19Dはそれぞれ、
図19A中の切断線C1-C2、切断線C3-C4、切断線A1-A2における断面概略図である。二次電池250は、外装体251と、外装体251の内部に収容された正極211aおよび負極211bを有する。正極211aと電気的に接続されたリード212a、および負極211bと電気的に接続されたリード212bは、外装体251の外側に延在している。また外装体251で囲まれた領域には、正極211aおよび負極211bに加えて電解液(図示しない)が封入されている。
【0174】
二次電池250が有する正極211aおよび負極211bについて、
図20を用いて説明する。
図20Aは、正極211a、負極211bおよびセパレータ214の積層順を説明する斜視図である。
図20Bは正極211aおよび負極211bに加えて、リード212aおよびリード212bを示す斜視図である。
【0175】
図20Aに示すように、二次電池250は、複数の短冊状の正極211a、複数の短冊状の負極211bおよび複数のセパレータ214を有する。正極211aおよび負極211bはそれぞれ突出したタブ部分と、タブ以外の部分を有する。正極211aの一方の面のタブ以外の部分に正極活物質層が形成され、負極211bの一方の面のタブ以外の部分に負極活物質層が形成される。
【0176】
正極211aの正極活物質層の形成されていない面同士、および負極211bの負極活物質層の形成されていない面同士が接するように、正極211aおよび負極211bは積層される。
【0177】
また、正極211aの正極活物質層が形成された面と、負極211bの負極活物質層が形成された面の間にはセパレータ214が設けられる。
図20Aでは見やすくするためセパレータ214を点線で示す。
【0178】
また
図20Bに示すように、複数の正極211aとリード212aは、接合部215aにおいて電気的に接続される。また複数の負極211bとリード212bは、接合部215bにおいて電気的に接続される。
【0179】
【0180】
外装体251は、フィルム状の形状を有し、正極211aおよび負極211bを挟むように2つに折り曲げられている。外装体251は、折り曲げ部261と、一対のシール部262と、シール部263と、を有する。一対のシール部262は、正極211aおよび負極211bを挟んで設けられ、サイドシールとも呼ぶことができる。また、シール部263は、リード212aおよびリード212bと重なる部分を有し、トップシールとも呼ぶことができる。
【0181】
外装体251は、正極211aおよび負極211bと重なる部分に、稜線271と谷線272が交互に並んだ波形状を有することが好ましい。また、外装体251のシール部262およびシール部263は、平坦であることが好ましい。
【0182】
図19Bは、稜線271と重なる部分で切断した断面であり、
図19Cは、谷線272と重なる部分で切断した断面である。
図19Bおよび
図19Cは共に、二次電池250および正極211aおよび負極211bの幅方向の断面に対応する。
【0183】
ここで、正極211aおよび負極211bの幅方向の端部、すなわち正極211aおよび負極211bの端部と、シール部262との間の距離を距離Laとする。二次電池250に曲げるなどの変形を加えたとき、後述するように正極211aおよび負極211bが長さ方向に互いにずれるように変形する。その際、距離Laが短すぎると、外装体251と正極211aおよび負極211bとが強く擦れ、外装体251が破損してしまう場合がある。特に外装体251の金属フィルムが露出すると、当該金属フィルムが電解液により腐食されてしまう恐れがある。したがって、距離Laを出来るだけ長く設定することが好ましい。一方で、距離Laを大きくしすぎると、二次電池250の体積が増大してしまう。
【0184】
また、積層された正極211aおよび負極211bの合計の厚さが厚いほど、正極211aおよび負極211bと、シール部262との間の距離Laを大きくすることが好ましい。
【0185】
より具体的には、積層された正極211aおよび負極211bおよび図示しないがセパレータ214の合計の厚さをtとしたとき、距離Laは、厚さtの0.8倍以上3.0倍以下、好ましくは0.9倍以上2.5倍以下、より好ましくは1.0倍以上2.0倍以下であることが好ましい。距離Laをこの範囲とすることで、コンパクトで、且つ曲げに対する信頼性の高い電池を実現できる。
【0186】
また、一対のシール部262の間の距離を距離Lbとしたとき、距離Lbを正極211aおよび負極211bの幅(ここでは、負極211bの幅Wb)よりも十分大きくすることが好ましい。これにより、二次電池250に繰り返し曲げるなどの変形を加えたときに、正極211aおよび負極211bと外装体251とが接触しても、正極211aおよび負極211bの一部が幅方向にずれることができるため、正極211aおよび負極211bと外装体251とが擦れてしまうことを効果的に防ぐことができる。
【0187】
例えば、一対のシール部262の間の距離Lbと、負極211bの幅Wbとの差が、正極211aおよび負極211bの厚さtの1.6倍以上6.0倍以下、好ましくは1.8倍以上5.0倍以下、より好ましくは、2.0倍以上4.0倍以下を満たすことが好ましい。
【0188】
言い換えると、距離Lb、幅Wb、および厚さtが、下記数式1の関係を満たすことが好ましい。
【0189】
【0190】
ここで、aは、0.8以上3.0以下、好ましくは0.9以上2.5以下、より好ましくは1.0以上2.0以下を満たす。
【0191】
また、
図19Dはリード212aを含む断面であり、二次電池250、正極211aおよび負極211bの長さ方向の断面に対応する。
図19Dに示すように、折り曲げ部261において、正極211aおよび負極211bの長さ方向の端部と、外装体251との間に空間273を有することが好ましい。
【0192】
図19Eに、二次電池250を曲げたときの断面概略図を示している。
図19Eは、
図19A中の切断線B1-B2における断面に相当する。
【0193】
二次電池250を曲げると、曲げの外側に位置する外装体251の一部は伸び、内側に位置する他の一部は縮むように変形する。より具体的には、外装体251の外側に位置する部分は、波の振幅が小さく、且つ波の周期が大きくなるように変形する。一方、外装体251の内側に位置する部分は、波の振幅が大きく、且つ波の周期が小さくなるように変形する。このように、外装体251が変形することにより、曲げに伴って外装体251にかかる応力が緩和されるため、外装体251を構成する材料自体が伸縮する必要がない。その結果、外装体251は破損することなく、小さな力で二次電池250を曲げることができる。
【0194】
また、
図19Eに示すように、二次電池250を曲げると、正極211aおよび負極211bとがそれぞれ相対的にずれる。このとき、複数の積層された正極211aおよび負極211bは、シール部263側の一端が固定部材217で固定されているため、折り曲げ部261に近いほどずれ量が大きくなるように、それぞれずれる。これにより、正極211aおよび負極211bにかかる応力が緩和され、正極211aおよび負極211b自体が伸縮する必要がない。その結果、正極211aおよび負極211bが破損することなく二次電池250を曲げることができる。
【0195】
また、正極211aおよび負極211bと外装体251との間に空間273を有していることにより、曲げた時内側に位置する正極211aおよび負極211bが、外装体251に接触することなく、相対的にずれることができる。
【0196】
図19A乃至
図19Eおよび
図20A、
図20Bで例示した二次電池250は、繰り返し曲げ伸ばしを行っても、外装体の破損、正極211aおよび負極211bの破損などが生じにくく、電池特性も劣化しにくい電池である。
【0197】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。
【0198】
まず実施の形態2の一部で説明した、曲げることのできる二次電池を電子機器に実装する例を
図21A乃至
図21Hに示す。曲げることのできる二次電池を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0199】
また、フレキシブルな形状を備える二次電池を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0200】
図21Aは、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、二次電池7407を有している。上記の二次電池7407に本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯電話機を提供できる。
【0201】
図21Bは、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている二次電池7407も湾曲される。また、その時、曲げられた二次電池7407の状態を
図21Cに示す。二次電池7407は薄型の蓄電池である。二次電池7407は曲げられた状態で固定されている。なお、二次電池7407は集電体と電気的に接続されたリード電極を有している。例えば、集電体は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体と接する活物質層との密着性を向上し、二次電池7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
【0202】
図21Dは、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、および二次電池7104を備える。また、
図21Eに曲げられた二次電池7104の状態を示す。二次電池7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して二次電池7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径と呼び、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または二次電池7104の主表面の一部または全部が変化する。二次電池7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。上記の二次電池7104に本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯表示装置を提供できる。
【0203】
図21Fは、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
【0204】
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧および作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0205】
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0206】
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行および解除、省電力モードの実行および解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
【0207】
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0208】
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0209】
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の二次電池を有している。本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯情報端末を提供できる。例えば、
図21Eに示した二次電池7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
【0210】
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
【0211】
図21Gは、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の二次電池を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
【0212】
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
【0213】
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0214】
表示装置7300が有する二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な表示装置を提供できる。
【0215】
【0216】
日用電子機器に二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な製品を提供できる。例えば、日用電子機器として、電動歯ブラシ、電気シェーバー、電動美容機器などが挙げられ、それらの製品の二次電池としては、使用者の持ちやすさを考え、形状をスティック状とし、小型、軽量、且つ、大容量の二次電池が望まれている。
【0217】
図21Hはタバコ収容喫煙装置(電子タバコ)とも呼ばれる装置の斜視図である。
図21Hにおいて電子タバコ7500は、加熱素子を含むアトマイザ7501と、アトマイザに電力を供給する二次電池7504と、液体供給ボトルやセンサなどを含むカートリッジ7502で構成されている。安全性を高めるため、二次電池7504の過充電や過放電を防ぐ保護回路を二次電池7504に電気的に接続してもよい。
図21Hに示した二次電池7504は、充電機器と接続できるように外部端子を有している。二次電池7504は持った場合に先端部分となるため、トータルの長さが短く、且つ、重量が軽いことが望ましい。本発明の一態様の二次電池は高容量、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができる小型であり、且つ、軽量の電子タバコ7500を提供できる。
【0218】
次に、
図22Aおよび
図22Bに、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。
図22Aおよび
図22Bに示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、スイッチ9625乃至スイッチ9627、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。表示部9631には、可撓性を有するパネルを用いることで、より広い表示部を有するタブレット端末とすることができる。
図22Aは、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、
図22Bは、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
【0219】
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
【0220】
表示部9631は、全てまたは一部の領域をタッチパネルの領域とすることができ、また当該領域に表示されたアイコンを含む画像、文字、入力フォームなどに触れることでデータ入力をすることができる。例えば、筐体9630a側の表示部9631aの全面にキーボードボタンを表示させて、筐体9630b側の表示部9631bに文字、画像などの情報を表示させて用いてもよい。
【0221】
また、筐体9630b側の表示部9631bにキーボードを表示させて、筐体9630a側の表示部9631aに文字、画像などの情報を表示させて用いてもよい。また、表示部9631にタッチパネルのキーボード表示切り替えボタンを表示するようにして、当該ボタンに指やスタイラスなどで触れることで表示部9631にキーボードを表示するようにしてもよい。
【0222】
また、筐体9630a側の表示部9631aのタッチパネルの領域と筐体9630b側の表示部9631bのタッチパネルの領域に対して同時にタッチ入力することもできる。
【0223】
また、スイッチ9625乃至スイッチ9627は、タブレット型端末9600を操作するためのインターフェースだけでなく、様々な機能の切り替えを行うことができるインターフェースとしてもよい。例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、タブレット型端末9600の電源のオン・オフを切り替えるスイッチとして機能してもよい。また、例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替える機能、または白黒表示やカラー表示の切り替える機能を有してもよい。また、例えば、スイッチ9625乃至スイッチ9627の少なくとも一は、表示部9631の輝度を調整する機能を有してもよい。また、表示部9631の輝度は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて最適なものとすることができる。なお、タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0224】
また、
図22Aでは筐体9630a側の表示部9631aと筐体9630b側の表示部9631bの表示面積とがほぼ同じ例を示しているが、表示部9631aおよび表示部9631bのそれぞれの表示面積は特に限定されず、一方のサイズと他方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0225】
図22Bは、タブレット型端末9600を2つ折りに閉じた状態であり、タブレット型端末9600は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634を有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係る蓄電体を用いる。
【0226】
なお、上述の通り、タブレット型端末9600は2つ折りが可能であるため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631を保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の二次電池を用いた蓄電体9635は高容量、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができるタブレット型端末9600を提供できる。
【0227】
また、この他にも
図22Aおよび
図22Bに示したタブレット型端末9600は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0228】
タブレット型端末9600の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面または両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0229】
また、
図22Bに示す充放電制御回路9634の構成、および動作について
図22Cにブロック図を示し説明する。
図22Cには、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図22Bに示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0230】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
【0231】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0232】
図23に、他の電子機器の例を示す。
図23において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る二次電池8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、二次電池8004等を有する。本発明の一態様に係る二次電池8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
【0233】
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0234】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0235】
図23において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る二次電池8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、二次電池8103等を有する。
図23では、二次電池8103が、筐体8101および光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、二次電池8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
【0236】
なお、
図23では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る二次電池は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0237】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0238】
図23において、室内機8200および室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る二次電池8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、二次電池8203等を有する。
図23では、二次電池8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、二次電池8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、二次電池8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に二次電池8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0239】
なお、
図23では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る二次電池を用いることもできる。
【0240】
図23において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る二次電池8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、二次電池8304等を有する。
図23では、二次電池8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
【0241】
なお、上述した電子機器以外に、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る二次電池を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0242】
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、二次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、二次電池8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、二次電池8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0243】
本発明の一態様により、二次電池のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、高容量の二次電池とすることができ、よって、二次電池の特性を向上することができ、よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。そのため本発明の一態様である二次電池を、本実施の形態で説明した電子機器に搭載することで、より長寿命で、より軽量な電子機器とすることができる。本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0244】
(実施の形態4)
本実施の形態では、車両に本発明の一態様である二次電池を搭載する例を示す。
【0245】
二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、またはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
【0246】
図24において、本発明の一態様である二次電池を用いた車両を例示する。
図24Aに示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は二次電池を有する。二次電池は、車内の床部分に対して、
図9Cおよび
図9Dに示した二次電池のモジュールを並べて使用すればよい。また、
図12に示す二次電池を複数組み合わせた電池パックを車内の床部分に対して設置してもよい。二次電池は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
【0247】
また、二次電池は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、二次電池は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0248】
図24Bに示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。
図24Bに、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0249】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0250】
また、
図24Cは、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。
図24Cに示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
【0251】
また、
図24Cに示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。二次電池8602は、取り外し可能となっており、充電時には二次電池8602を屋内に持って運び、充電し、走行する前に収納すればよい。
【0252】
本発明の一態様によれば、二次電池のサイクル特性が良好となり、二次電池の容量を大きくすることができる。よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。二次電池自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した二次電池を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、例えば電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避できれば、省エネルギー、および二酸化炭素の排出の削減に寄与することができる。また、サイクル特性が良好であれば二次電池を長期に渡って使用できるため、コバルトをはじめとする希少金属の使用量を減らすことができる。
【0253】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0254】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に適用可能なトランジスタの構成について説明する。具体的には、異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設ける構成について説明する。当該構成とすることで、半導体装置の設計自由度を高めることができる。また、異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設けることで、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0255】
図25に示す半導体装置は、トランジスタ390と、トランジスタ500と、容量素子600と、を有している。
図27Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図27Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図27Cはトランジスタ390のチャネル幅方向の断面図である。
【0256】
トランジスタ500は、OSトランジスタである。トランジスタ500は、オフ電流が小さい。このため、例えば上記実施の形態で説明したOSトランジスタの構成をトランジスタ500と同様の構成とすることで長期間電圧を保持することができる。
【0257】
本実施の形態で説明する半導体装置は、
図25に示すようにトランジスタ390、トランジスタ500、および容量素子600を有する。トランジスタ500はトランジスタ390の上方に設けられ、容量素子600はトランジスタ390、およびトランジスタ500の上方に設けられている。例えば上記実施の形態で説明したトランジスタの構成をトランジスタ390と同様の構成とすることができ、容量素子の構成を容量素子600と同様の構成とすることができる。
【0258】
トランジスタ390は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。
【0259】
トランジスタ390は、
図27Cに示すように、半導体領域313の上面、およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ390をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大する。これにより、トランジスタ390のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ390のオフ特性を向上させることができる。
【0260】
なお、トランジスタ390は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0261】
半導体領域313のチャネルが形成される領域およびその近傍の領域、並びにソース領域またはドレイン領域となる低抵抗領域314aおよび低抵抗領域314b等において、シリコン系半導体等の半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)等を有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ390をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0262】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リン等のn型の導電性を付与する元素、またはホウ素等のp型の導電性を付与する元素を含む。
【0263】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リン等のn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素等のp型の導電性を付与する元素を含むシリコン等の半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料等の導電性材料を用いることができる。
【0264】
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタル等の材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウム等の金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0265】
なお、
図25に示すトランジスタ390は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。例えば、半導体装置をOSトランジスタのみの単極性回路とする場合、
図26に示すとおり、トランジスタ390の構成を、OSトランジスタであるトランジスタ500と同様の構成にすればよい。なお、トランジスタ500の詳細については後述する。
図26に示すトランジスタ390は、例えば
図26に示すようなnチャネル型のトランジスタを適用することができる。
【0266】
本明細書等において、単極性回路とは、例えば全てのトランジスタが同極性のトランジスタである回路を示す。例えば、全てのトランジスタがnチャネル型トランジスタである回路は、単極性回路であるということができる。
【0267】
トランジスタ390を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0268】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等を用いればよい。
【0269】
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書等において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0270】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ390等によって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0271】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ390等から、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0272】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ390との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0273】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)等を用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0274】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも比誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。比誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0275】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0276】
各プラグ、および配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料等の導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデン等の高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅等の低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0277】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図25において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ390と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、または導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0278】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350に設けられる開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ390とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ390からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0279】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ390からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0280】
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図25において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、または導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0281】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360に設けられる開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ390とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ390からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0282】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図25において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、または導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0283】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370に設けられる開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ390とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ390からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0284】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図25において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、または導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0285】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380に設けられる開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ390とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ390からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0286】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0287】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0288】
例えば、絶縁体510および絶縁体514には、基板311等から、またはトランジスタ390を設ける領域等からトランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることが好ましい。
【0289】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ390との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜である。
【0290】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル等の金属酸化物を用いることが好ましい。
【0291】
特に、酸化アルミニウムは、酸素と、トランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分等の不純物と、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分等の不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する金属酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0292】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0293】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518、およびトランジスタ500を構成する導電体(例えば、導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、またはトランジスタ390と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、または導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0294】
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ390とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で分離することができ、トランジスタ390からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0295】
絶縁体514の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0296】
図27A、
図27Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514および絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516および導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に互いに離れて配置された導電体542aおよび導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の底面および側面に配置された酸化物530cと、酸化物530cの形成面に配置された絶縁体550と、絶縁体550の形成面に配置された導電体560と、を有する。
【0297】
また、
図27A、
図27Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580との間に絶縁体544を配置することが好ましい。また、
図27A、
図27Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図27A、
図27Bに示すように、酸化物530c、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0298】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。
【0299】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、
図25、
図26、
図27A、
図27Bに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0300】
ここで、導電体560は、トランジスタ500のゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542a、および導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0301】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と、導電体542aおよび導電体542bと、の間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度が向上し、高い周波数特性を有することができる。
【0302】
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電圧を、導電体560に印加する電圧と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電圧を印加することにより、トランジスタ500のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電圧を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電圧が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0303】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と重なる領域を有するように配置する。これにより、導電体560、および導電体503に電圧を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によってチャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s-channel)構造という。
【0304】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。なお、トランジスタ500では、導電体503aおよび導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0305】
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子等の不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等の少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書等において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一、または全ての拡散を抑制する機能とする。
【0306】
例えば、導電体503aが酸素の拡散を抑制する機能を有することにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0307】
また、導電体503が配線の機能を兼ねる場合、導電体503bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503aは、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体503bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0308】
絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0309】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0310】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0311】
また、上記過剰酸素領域を有する絶縁体と、酸化物530と、を接して加熱処理、マイクロ波処理、またはRF処理のいずれか一又は複数の処理を行ってもよい。当該処理を行うことで、酸化物530中の水、または水素を除去することができる。例えば、酸化物530において、VoHの結合が切断される反応が起きる、別言すると「VoH→Vo+H」という反応が起きることにより、脱水素化することができる。このとき発生した水素の一部は、酸素と結合してH2Oとして、酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体から除去される場合がある。また、水素の一部は、導電体542(導電体542a、及び導電体542b)に拡散または捕獲(ゲッタリングともいう)される場合がある。
【0312】
また、上記マイクロ波処理は、例えば、高密度プラズマを発生させる電源を有する装置、または、基板側にRFを印加する電源を有する装置を用いると好適である。例えば、酸素を含むガスを用い、且つ高密度プラズマを用いることにより、高密度の酸素ラジカルを生成することができる。また、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを、効率よく酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体中に導入することができる。また、上記マイクロ波処理は、圧力を133Pa以上、好ましくは200Pa以上、さらに好ましくは400Pa以上とすればよい。また、マイクロ波処理を行う装置内に導入するガスとしては、例えば酸素およびアルゴンを用い、酸素流量比(O2/(O2+Ar))は50%以下、好ましくは10%以上30%以下とするとよい。
【0313】
また、トランジスタ500の作製工程中において、酸化物530の表面が露出した状態で加熱処理を行うと好適である。当該加熱処理は、例えば、100℃以上450℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物530に酸素を供給して、酸素欠損(VO)の低減を図ることができる。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で行ってもよい。または、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理した後に、連続して窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0314】
なお、酸化物530に加酸素化処理を行うことで、酸化物530中の酸素欠損を、供給された酸素により修復させる、別言すると「VO+O→null」という反応を促進させることができる。さらに、酸化物530中に残存した水素と、酸化物530に供給された酸素と、が反応することで、当該水素をH2Oとして除去する(脱水化する)ことができる。これにより、酸化物530中に残存していた水素が酸素欠損に再結合してVOHが形成されるのを抑制することができる。
【0315】
また、絶縁体524が過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0316】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素が絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0317】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、または(Ba,Sr)TiO3(BST)等のいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流等の問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電圧の低減が可能となる。
【0318】
特に、不純物、および酸素等の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム、ハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム、ハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、またはアルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)等を用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0319】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン、または窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0320】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
【0321】
なお、
図27A、
図27Bのトランジスタ500では、3層の積層構造からなる第2のゲート絶縁膜として、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が図示されているが、第2のゲート絶縁膜は、単層、2層、または4層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0322】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウム等から選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(C-Axls Aligned Crystal Oxide Semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。CAAC-OSおよびCAC-OSについては後述する。
【0323】
また、トランジスタ500には、キャリア濃度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア濃度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0324】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。また、酸化物530中の酸素欠損に水素が入った場合、酸素欠損と水素とが結合しVOHを形成する場合がある。VOHはドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。したがって、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、金属酸化物中の水素は、熱、電界等のストレスによって動きやすいため、金属酸化物に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。本発明の一態様においては、酸化物530中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された金属酸化物を得るには、金属酸化物中の水分、水素等の不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、金属酸化物に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VOH等の不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0325】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0326】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素等の不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0327】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0328】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、及び導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0329】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、及び導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造という、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造という場合がある。
【0330】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られない。例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。または、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0331】
また、酸化物530においてチャネル形成領域にとして機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0332】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへ不純物が拡散することを抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへ不純物が拡散することを抑制することができる。
【0333】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を用いることができる。
【0334】
具体的には、酸化物530aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、または1:1:1[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]との積層構造、Ga:Zn=2:1[原子数比]と、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]との積層構造、Ga:Zn=2:5[原子数比]と、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]との積層構造、酸化ガリウムと、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]との積層構造などが挙げられる。
【0335】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0336】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0337】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、および酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウム等を用いるとよい。
【0338】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、および酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0339】
なお、酸化物530に用いることができる半導体材料は、上述の金属酸化物に限られない。酸化物530として、バンドギャップを有する半導体材料(ゼロギャップ半導体ではない半導体材料)を用いてもよい。例えば、シリコンなどの単体元素の半導体、ヒ化ガリウムなどの化合物半導体、半導体として機能する層状物質(原子層物質、2次元材料などともいう。)などを半導体材料に用いることが好ましい。特に、半導体として機能する層状物質を半導体材料に用いると好適である。
【0340】
ここで、本明細書等において、層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合やイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス力のような、共有結合やイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0341】
層状物質として、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などがある。カルコゲン化物は、カルコゲンを含む化合物である。また、カルコゲンは、第16族に属する元素の総称であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、リバモリウムが含まれる。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。
【0342】
酸化物530として、例えば、半導体として機能する遷移金属カルコゲナイドを用いることが好ましい。酸化物530として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS2)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe2)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe2)、硫化タングステン(代表的にはWS2)、セレン化タングステン(代表的にはWSe2)、タングステンテルル(代表的にはWTe2)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS2)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe2)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS2)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe2)などが挙げられる。
【0343】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542a、および導電体542bが設けられる。導電体542a、および導電体542bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステンとチタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物等を用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため好ましい。更に、窒化タンタル等の金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があるため好ましい。
【0344】
また、
図27では、導電体542a、および導電体542bを単層構造として示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0345】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0346】
また、
図27Aに示すように、酸化物530の、導電体542a(導電体542b)との界面とその近傍には、低抵抗領域として領域543a、および領域543bが形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0347】
酸化物530と接するように上記導電体542a(導電体542b)を設けることで、領域543a(領域543b)の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543a(領域543b)に導電体542a(導電体542b)に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543a(領域543b)のキャリア濃度が増加し、領域543a(領域543b)は、低抵抗領域となる。
【0348】
絶縁体544は、導電体542a、および導電体542bを覆うように設けられ、導電体542a、および導電体542bの酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0349】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、ネオジム、ランタン、マグネシウム等から選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。また、絶縁体544として、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコン等も用いることができる。
【0350】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、またはアルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)等を用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542a、および導電体542bが耐酸化性を有する材料、または酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により適宜設計すればよい。
【0351】
絶縁体544を有することで、絶縁体580に含まれる水、および水素等の不純物が、酸化物530cおよび絶縁体550を介して酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化することを抑制することができる。
【0352】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面、及び側面)と接するように配置することが好ましい。絶縁体550は、上述した絶縁体524と同様に、過剰に酸素を含み、かつ加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。
【0353】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0354】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として酸化物530cの上面に接して設けることにより、酸化物530cを通じて、絶縁体550から酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とすることが好ましい。
【0355】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。酸素の拡散を抑制する機能を有する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0356】
なお、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流等の問題が生じる場合がある。このため、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電圧を低減することが可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0357】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図27A、
図27Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0358】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2等)、銅原子等の不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等の少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を有することで、絶縁体550に含まれる酸素により導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウム等を用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530に適用できる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体にすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極ということができる。
【0359】
また、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0360】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542a、および導電体542b上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂等を有することが好ましい。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、および空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0361】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接する領域を有するように設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530aおよび酸化物530bへと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0362】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。
【0363】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく導電体560を形成することができる。
【0364】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550、および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0365】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウム等から選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0366】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素等の不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0367】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524等と同様に、膜中の水または水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0368】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540a、および導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546、および導電体548と同様の構成である。
【0369】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル等の金属酸化物を用いることが好ましい。
【0370】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分等の不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分等の不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0371】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0372】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
【0373】
導電体546、および導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、またはトランジスタ390と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、または導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0374】
なお、トランジスタ500の形成後、トランジスタ500を囲むように開口を形成し、当該開口を覆うように、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体を形成してもよい。上述のバリア性の高い絶縁体でトランジスタ500を包み込むことで、外部から水分、および水素が侵入することを防止することができる。または、複数のトランジスタ500をまとめて、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体で包み込んでもよい。なお、トランジスタ500を囲むように開口を形成する場合、例えば、絶縁体514または絶縁体522に達する開口を形成し、絶縁体514または絶縁体522に接するように上述のバリア性の高い絶縁体を形成すると、トランジスタ500の作製工程の一部を兼ねられるため好適である。なお、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体としては、例えば、絶縁体522と同様の材料を用いればよい。
【0375】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610、導電体620、および絶縁体630を有する。
【0376】
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
【0377】
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物等の導電性材料を適用することもできる。
【0378】
図25では、導電体612、および導電体610は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0379】
絶縁体630を介して導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料等の導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデン等の高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体等の他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0380】
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体640が設けられている。絶縁体640は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体640は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0381】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0382】
図28A、
図28Bは、
図27A、
図27Bに示すトランジスタ500の変形例である。
図27Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図27Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図である。なお、
図28A、
図28Bに示す構成は、トランジスタ390等、本発明の一態様の半導体装置が有する他のトランジスタにも適用することができる。
【0383】
図28Aは、トランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図28Bは、トランジスタ500のチャネル幅方向の断面図である。
図28A、
図28Bに示すトランジスタ500は、絶縁体402および絶縁体404を有する点が、
図27A、
図27Bに示すトランジスタ500と異なる。また、導電体540aの側面に接して絶縁体552が設けられ、導電体540bの側面に接して絶縁体552が設けられる点が、
図27A、
図27Bに示すトランジスタ500と異なる。さらに、絶縁体520を有さない点が、
図27A、
図27Bに示すトランジスタ500と異なる。
【0384】
図28A、
図28Bに示すトランジスタ500は、絶縁体512上に絶縁体402が設けられる。また、絶縁体574上、および絶縁体402上に絶縁体404が設けられる。
【0385】
図28A、
図28Bに示すトランジスタ500では、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、および絶縁体574がパターニングされており、絶縁体404がこれらを覆う構造になっている。つまり、絶縁体404は、絶縁体574の上面、絶縁体574の側面、絶縁体580の側面、絶縁体544の側面、絶縁体524の側面、絶縁体522の側面、絶縁体516の側面、絶縁体514の側面、絶縁体402の上面とそれぞれ接する。これにより、酸化物530等は、絶縁体404と絶縁体402によって外部から隔離される。
【0386】
絶縁体402および絶縁体404は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)または水分子の拡散を抑制する機能が高いことが好ましい。例えば、絶縁体402および絶縁体404として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを用いることが好ましい。これにより、酸化物530に水素等が拡散することを抑制することができるので、トランジスタ500の特性が低下することを抑制することができる。よって、本発明の一態様の半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0387】
絶縁体552は、絶縁体581、絶縁体404、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に接して設けられる。絶縁体552は、水素または水分子の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。たとえば、絶縁体552として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン、酸化アルミニウム、または窒化酸化シリコン等の絶縁体を用いることが好ましい。特に、窒化シリコンは水素バリア性が高い材料であるので、絶縁体552として用いると好適である。絶縁体552として水素バリア性が高い材料を用いることにより、水または水素等の不純物が、絶縁体580等から導電体540aおよび導電体540bを通じて酸化物530に拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580に含まれる酸素が導電体540aおよび導電体540bに吸収されることを抑制することができる。以上により、本発明の一態様の半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0388】
図29は、トランジスタ500およびトランジスタ390を
図28A、
図28Bに示す構成とした場合における、半導体装置の構成例を示す断面図である。導電体546の側面に、絶縁体552が設けられている。
【0389】
【0390】
酸化物530c1は、絶縁体524の上面、酸化物530aの側面、酸化物530bの上面および側面、導電体542aおよび導電体542bの側面、絶縁体544の側面、および絶縁体580の側面と接する。酸化物530c2は、絶縁体550と接する。
【0391】
酸化物530c1として、例えばIn-Zn酸化物を用いることができる。また、酸化物530c2として、酸化物530cが1層構造である場合に酸化物530cに用いることができる材料と同様の材料を用いることができる。例えば、酸化物530c2として、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いることができる。
【0392】
酸化物530cを酸化物530c1および酸化物530c2の2層構造とすることにより、酸化物530cを1層構造とする場合より、トランジスタのオン電流を高めることができる。よって、トランジスタを、例えばパワーMOSトランジスタとすることができる。なお、
図27A、
図27Bに示すトランジスタが有する酸化物530cも、酸化物530c1と酸化物530c2の2層構造とすることができる。
【0393】
図30A、
図30Bに示すトランジスタは、例えばトランジスタ390に適用することができる。前述のように、トランジスタ390は、上記実施の形態の
図26に示すOSトランジスタを適用することができる。よって、出力トランジスタとしての機能を有する場合、OSトランジスタのオン電流を高めることができ、本発明の一態様の半導体装置から出力される電圧の精度を高めることができる。なお、
図30A、
図30Bに示す構成は、トランジスタ500等、本発明の一態様の半導体装置が有する、トランジスタ390以外のトランジスタにも適用することができる。
【0394】
図31は、トランジスタ500を
図27A、
図27Bに示す構成とし、トランジスタ390を
図30A、
図30Bに示す構成とした場合における、半導体装置の構成例を示す断面図である。なお、
図29と同様に、導電体546の側面に絶縁体552を設ける構成としている。
図31に示すように、本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ390とトランジスタ500を両方ともOSトランジスタとしつつ、トランジスタ390とトランジスタ500のそれぞれを異なる構成にすることができる。
【0395】
本実施の形態は、他の実施の形態等に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0396】
本実施例は、Si-Wafer上に積層した360nm、Top-gate-self-aligned CAAC-IGZO FETテクノロジーでトランジスタを形成した。Top-gate-self-aligned構造よりTop-gateとソース又はドレイン間のオーバーラップを少なくし、オーバーラップによる寄生容量を小さくした。この寄生容量が小さいことは、チャージインジェクションおよびフィードスルーを低減でき、サンプルホールド回路のサンプリング精度を向上できる。CAAC-IGZOのトランジスタのゲート制御方法は、Dual-gate型又はBack-gate型とし、これらの型を同一基板内に混載した。Dual-gate型は、トップのFront-gateとボトムのBack-gateを接続されている。Single-gate型よりも優れたゲート制御性を有し、すなわち、高いオン電流および低いオフ電流を示す。一方、Back-gate型はFront-gateとBack-gateをそれぞれ独立に電圧制御できる。Back-gate型のBack-gateに負電圧を印加することで、しきい値電圧をプラスシフトさせることができ、すなわち、低いオフ電流を示すことができる。そこで、Dual-gate型トランジスタは比較回路などのサンプルホールド回路以外の回路に適用し、高いオン電流による高いゲインを実現した。Back-gate型のトランジスタはサンプルホールド回路に適用し、長いホールド時間を実現した。
【0397】
図33Aは、作製した積分回路22に相当するアンプ回路22cを詳細に説明する回路図である。アンプ回路22cは、トランスコンダクタンスアンプ81、トランスコンダクタンスアンプ82、トランジスタ61乃至トランジスタ77、容量78、容量79を有する。チョッパ回路83は、トランジスタ61、トランジスタ62、トランジスタ64、およびトランジスタ65を有し、チョッパ回路84は、トランジスタ71乃至トランジスタ74を有する。
【0398】
アンプ回路22cはオフセットキャンセル機能を有する。初段のトランスコンダクタンスアンプ81の入力にVREF1が与えられている期間にオフセット補正電圧が容量78、容量79に与えられることでトランスコンダクタンスアンプ81の有するオフセット成分をキャンセルすることができる。さらにアンプ回路22cが有するオフセット成分をキャンセルする機能を付加するため、トランスコンダクタンスアンプ81の入力と、トランスコンダクタンスアンプ82の出力にチョッパ回路を設ける。
【0399】
ここで、アンプ回路22cの電気的接続について説明する。アンプ回路22cは、入力端子INP(
図5では入力端子22a)と、入力端子INM(
図5では入力端子22f)を有し、出力端子OUTP(
図5では入力端子22b)と、出力端子OUTMとを有する。入力端子INPは、トランジスタ61のソース又はドレインの一方、およびトランジスタ65のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。入力端子INMは、トランジスタ64のソース又はドレインの一方、およびトランジスタ62のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ61のソース又はドレインの他方は、トランジスタ63のソース又はドレインの一方、およびトランジスタ62のソース又はドレインの他方と電気的に接続される。トランジスタ64のソース又はドレインの他方は、トランジスタ66のソース又はドレインの一方、およびトランジスタ65のソース又はドレインの他方と電気的に接続される。配線FC1は、トランジスタ61のゲート、およびトランジスタ64のゲートと電気的に接続される。配線FC2は、トランジスタ62のゲート、およびトランジスタ65のゲートと電気的に接続される。配線SETBは、トランジスタ63のゲート、およびトランジスタ66のゲートと電気的に接続される。
【0400】
トランジスタ63のソース又はドレインの他方は、トランスコンダクタンスアンプ81の非反転入力端子、およびトランジスタ67のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ66のソース又はドレインの他方は、トランスコンダクタンスアンプ81の反転入力端子、およびトランジスタ69のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランスコンダクタンスアンプ81の反転出力端子は、容量78を介してトランスコンダクタンスアンプ82の非反転入力端子、およびトランジスタ68のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランスコンダクタンスアンプ81の非反転出力端子は、容量79を介してトランスコンダクタンスアンプ82の反転入力端子、およびトランジスタ70のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。配線SET2は、トランジスタ67乃至トランジスタ70のゲートと電気的に接続される。配線VREF1は、トランジスタ67のソース又はドレインの他方、トランジスタ69のソース又はドレインの他方と電気的に接続される。配線VREF2は、トランジスタ68のソース又はドレインの他方、トランジスタ70のソース又はドレインの他方と電気的に接続される。
【0401】
トランスコンダクタンスアンプ82の反転出力端子は、トランジスタ71のソース又はドレインの一方、トランジスタ74のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランスコンダクタンスアンプ82の非反転出力端子は、トランジスタ72のソース又はドレインの一方、トランジスタ73のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ71のソース又はドレインの他方は、トランジスタ72のソース又はドレインの他方、トランジスタ75のソース又はドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ73のソース又はドレインの他方は、トランジスタ74のソース又はドレインの他方、出力端子OUTMと電気的に接続される。配線FC1は、トランジスタ71のゲート、およびトランジスタ73のゲートと電気的に接続される。配線FC2は、トランジスタ72のゲート、およびトランジスタ74のゲートと電気的に接続される。配線SETBは、トランジスタ75のゲートと電気的に接続される。
【0402】
トランジスタ75のソース又はドレインの他方は、出力端子OUTP、トランジスタ77のソース又はドレインの一方、および容量22eの電極の一方と電気的に接続される。トランジスタ77のソース又はドレインの他方は、配線VREF3と電気的に接続される。容量22eの電極の他方は、トランジスタ76のソース又はドレインの一方、および入力端子INMと電気的に接続される。トランジスタ76のソース又はドレインの他方は、共通GNDと電気的に接続される。配線SET1は、トランジスタ76のゲート、およびトランジスタ77のゲートと電気的に接続される。
【0403】
図33Bは、
図33Aのアンプ回路22cの動作を説明するタイミングチャートである。配線SET1に与えられる信号は、容量22aを初期化する。さらに、配線SET1に与えられる信号は、トランスコンダクタンスアンプ81およびトランスコンダクタンスアンプ82が備えるサンプルホールド回路に任意の電圧を与える。したがって、トランスコンダクタンスアンプ81およびトランスコンダクタンスアンプ82がHighを出力する期間の電流値をサンプルホールド回路にプログラムする。端子INP(
図3では端子10a)に与えられる信号SENSEPとして、
図3で示した抵抗41の電極の一方に生成される電圧が端子10aを介して与えられる。また、端子INM(
図3では端子10d)に与えられる信号SENSEMとして、
図3で示した抵抗41の電極の他方に生成される電圧が端子10dを介して与えられる。
【0404】
配線SET2には、配線SET1に与えられる信号から遅れた信号が与えられる。配線SET2に与えられる信号によって、容量78または容量79には、トランスコンダクタンスアンプ81が有するオフセット成分がプログラムされる。したがって、容量78または容量79にトランスコンダクタンスアンプ81が有するオフセット成分をプログラムする期間、配線SETBに与えられる信号は、LOWであることが好ましい。
【0405】
配線FC1には、配線FC2(
図33Bのタイミングチャートでは非表示)に与えられる信号の反転信号が与えられる。配線FC1に与えられる信号がLOWの期間、アンプ回路22cは、容量22eに保持される電圧が順次小さくなる積分回路として動作する。配線FC1に与えられる信号がHIGHの期間、アンプ回路22cは、容量22eに保持される電圧が順次大きくなる積分回路として動作する。なお、積分回路22は、配線SET1、配線SET2、および配線SETBに与えられる信号によって初期化される。
【0406】
図34Aは、チップ写真である。実際に作製した二次電池の劣化を検知する半導体装置である。
図34Bは、入力電圧(Input voltage)に対する出力周波数(Frequency of FC1)を示す。入力電圧に対して出力周波数は単調増加することが確認できた。入力電圧が高くなると線形性が失われる場合があるが、予め補正データを取得することで、デジタル回路にて補正することができる。OSトランジスタのみを使った電流モニタ回路を作製した結果、リーク電流の少ないサンプルホールド回路を備えた増幅率の高いアンプを実現し、GNDレベルの信号の検知を実現した。
【符号の説明】
【0407】
Bias1:判定電圧、Bias2:判定電圧、R1:抵抗、R2:抵抗、R3:抵抗、R4:抵抗、S1:スイッチ、S2:スイッチ、SW1:スイッチ、SW3:スイッチ、10:回路、11:出力回路、12:出力回路、15:容量素子、20:残量計、21:分流回路、22:積分回路、22c:アンプ回路、22d:抵抗、22e:容量、23:コンパレータ、23e:アンプ回路、23f:アンプ回路、23g:回路、23h:回路、30:異常電流検知回路、31a:アンプ回路、31b:スイッチ、31c:スイッチ、31d:容量、31e:容量、32a:メモリ、32b:メモリ、40:回路、41:抵抗、42:二次電池、43:抵抗、44:抵抗、52:配線、53:配線、54:配線、100:正極活物質、211a:正極、211b:負極、212a:リード、212b:リード、214:セパレータ、215a:接合部、215b:接合部、217:固定部材、250:二次電池、251:外装体、262:シール部、263:シール部、300:二次電池、301:正極缶、302:負極缶、303:ガスケット、304:正極、305:正極集電体、306:正極活物質層、307:負極、308:負極集電体、309:負極活物質層、310:セパレータ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、390:トランジスタ、402:絶縁体、404:絶縁体、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、510:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、526:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、530c1:酸化物、530c2:酸化物、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、546:導電体、548:導電体、550:絶縁体、552:絶縁体、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、574:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、610:導電体、612:導電体、620:導電体、630:絶縁体、640:絶縁体、700:二次電池、701:正極集電体、702:正極活物質層、703:正極、704:負極集電体、705:負極活物質層、706:負極、707:セパレータ、708:電解液、709:外装体、710:正極リード電極、711:負極リード電極、800:二次電池、801:正極キャップ、802:電池缶、803:正極端子、804:正極、805:セパレータ、806:負極、807:負極端子、808:絶縁板、809:絶縁板、811:PTC素子、812:安全弁機構、813:導電板、814:導電板、815:モジュール、816:導線、817:温度制御装置、900:回路基板、910:ラベル、911:端子、912:回路、913:二次電池、914:アンテナ、915:アンテナ、918:アンテナ、920:表示装置、921:センサ、922:端子、930:筐体、930a:筐体、930b:筐体、931:負極、932:正極、933:セパレータ、950:捲回体、951:端子、952:端子、980:二次電池、981:フィルム、982:フィルム、993:捲回体、994:負極、995:正極、996:セパレータ、997:リード電極、998:リード電極、7100:携帯表示装置、7101:筐体、7102:表示部、7103:操作ボタン、7104:二次電池、7200:携帯情報端末、7201:筐体、7202:表示部、7203:バンド、7204:バックル、7205:操作ボタン、7206:入出力端子、7207:アイコン、7300:表示装置、7304:表示部、7400:携帯電話機、7401:筐体、7402:表示部、7403:操作ボタン、7404:外部接続ポート、7405:スピーカ、7406:マイク、7407:二次電池、7500:電子タバコ、7501:アトマイザ、7502:カートリッジ、7504:二次電池、8000:表示装置、8001:筐体、8002:表示部、8003:スピーカ部、8004:二次電池、8021:充電装置、8022:ケーブル、8024:二次電池、8100:照明装置、8101:筐体、8102:光源、8103:二次電池、8200:室内機、8201:筐体、8202:送風口、8203:二次電池、8204:室外機、8300:電気冷凍冷蔵庫、8301:筐体、8302:冷蔵室用扉、8303:冷凍室用扉、8304:二次電池、8400:自動車、8401:ヘッドライト、8406:電気モーター、8500:自動車、8600:スクータ、8601:サイドミラー、8602:二次電池、8603:方向指示灯、8604:座席下収納、9600:タブレット型端末、9625:スイッチ、9627:スイッチ、9628:操作スイッチ、9630:筐体、9630a:筐体、9630b:筐体、9631:表示部、9631a:表示部、9631b:表示部、9633:太陽電池、9634:充放電制御回路、9635:蓄電体、9636:DCDCコンバータ、9637:コンバータ、9640:可動部