IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウニベルシダッド アウトノマ デ マドリッドの特許一覧

特許7526676多孔質結晶性材料の合成のためのナノリアクター
<>
  • 特許-多孔質結晶性材料の合成のためのナノリアクター 図1
  • 特許-多孔質結晶性材料の合成のためのナノリアクター 図2
  • 特許-多孔質結晶性材料の合成のためのナノリアクター 図3
  • 特許-多孔質結晶性材料の合成のためのナノリアクター 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】多孔質結晶性材料の合成のためのナノリアクター
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20240725BHJP
   C09D 11/023 20140101ALI20240725BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20240725BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240725BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240725BHJP
   C09K 23/02 20220101ALI20240725BHJP
   C09K 23/18 20220101ALI20240725BHJP
【FI】
B01J13/00 A
C09D11/023
C02F1/28 A
B01J20/26 B
B01J20/30
C09K23/02
C09K23/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020571441
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019066526
(87)【国際公開番号】W WO2019243602
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】18179325.8
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506255603
【氏名又は名称】ウニベルシダッド アウトノマ デ マドリッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼップ、プイグマルティ-ルイス
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス、フアン、サモラ、アバナデス
(72)【発明者】
【氏名】カルロス、フランコ、プハンテ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、ロドリゲス、サン、ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ、ソルレンティー
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118929(JP,A)
【文献】特表2003-531269(JP,A)
【文献】特表2008-508516(JP,A)
【文献】特表2017-512637(JP,A)
【文献】特開2007-284303(JP,A)
【文献】LESTARI,Gabriella et al.,Hydrothermal Synthesis of Zeolitic Imidazolate Frameworks-8(ZIF-8) Crystals with Controllable Size and Morphology,King Abdullah University of Science and Technology,2012年,pages1-64
【文献】PAN,Yichang et al.,Tuning the Crystal Morphology and Size of Zeolitic Imidazolate Framework-8 in Aqueous Solution by Surfactants,The Royal Society of Chemistry,Vol.13,2011年,pages6937-6940,S1-4
【文献】DEY,Biswajit et al.,Fluorometric sensing of Triton X-100 based organized media in water by a MOF,Journal of Luminescence,Vol.172,2016年,pages1-6
【文献】CAO,Xin et al.,A surfactant template-assisted strategy for synthesis of ZIF-8 hollow nanospheres,Materials Letters,Vol.161,2015年,pages682-685
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
C09D 11/00-13/00
C02F 1/28
B01J 20/00-20/34
B01J 21/00-38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相と、
その中に分散しているミセルと
を含んでなるコロイド分散液であって、
前記連続相は、水および任意選択で1種以上の添加剤を含んでなり、
前記ミセルは、複数種の界面活性剤と、共有結合性有機フレームワーク(COF)から選択される多孔質結晶性材料(PCM)とを含んでなり、
動的光散乱(DLS)測定による前記ミセルのサイズは、10~1000nmであり、
前記ミセルのサイズは、単分散であり、ここで、単分散とは、動的光散乱(DLS)測定に従って決定される多分散度指数(PDI)が0超0.7以下である狭いサイズ分布を有するミセルに関するものであり、
前記コロイド分散液中の前記複数種の界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度(CMC)を上回っており、ここで、前記PCM:前記複数種の界面活性剤の比は、1:100~2:1(w/w)の範囲であり、
前記1種以上の添加剤は、存在する場合には、イオン強度調整剤、粘度調整剤および触媒からなる群から選択され
記共有結合性有機フレームワーク(COF)は、COF-1、COF-2、Tp-Azo COF、TpBDH COF、COF-LZU-8、ACOF-1およびCOF-JLU2からなる群から選択され
前記複数種の界面活性剤は、(A)ある界面活性剤と、(B)界面活性剤(A)以外の1種以上の共界面活性剤とを含み、
前記複数種の界面活性剤は、カチオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤からなる群から選択され、
前記複数種の界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の組み合わせであることを特徴とする、前記コロイド分散液。
【請求項2】
前記コロイド分散液のミセルのサイズが、15~200nmであり、かつ/あるいは
記ミセルのサイズが単分散であり、ここで、単分散とは、動的光散乱(DLS)測定に従って決定される多分散度指数(PDI)が0.05~0.5である狭いサイズ分布を有するミセルに関するものであり、かつ/あるいは
記コロイド分散液が、
0.01~4重量%のPCM、
80~99重量%の水、
0.01~4重量%の界面活性剤(A)、
0.01~4重量%の共界面活性剤(B)、および、
0.001~10重量%の添加剤
を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のコロイド分散液。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコロイド分散液を含んでなるインクであって、
前記連続相は、1種以上の非溶媒をさらに含んでなり、
前記非溶媒は、誘電率が2~50の範囲である水混和性有機溶媒の群から選択されることを特徴とする、前記インク。
【請求項4】
前記非溶媒が、C~Cアルコール、C~Cアルデヒド、C~Cケトン、C~Cカルボン酸、C~Cカルボン酸C~Cエステル、C~Cニトリルおよびテトラヒドロフラン(THF)からなる群から選択される、請求項に記載のインク。
【請求項5】
請求項1または2に記載のコロイド分散液を製造する方法であって、
以下の工程:
(i)ミセル溶液(a)およびミセル溶液(b)を準備する工程であって、ミセル溶液(a)が、前記多孔質結晶性材料の第1のビルディングブロック、水、1種以上の界面活性剤および任意選択で添加剤を含んでなり、ミセル溶液(b)が、前記多孔質結晶性材料の第2のビルディングブロック、水、1種以上の界面活性剤および任意選択で添加剤を含んでなる工程;
(ii)前記ミセル溶液(a)および(b)を混合し、それによって前記コロイド分散液を得る工程を含んでなる、前記方法。
【請求項6】
前記工程(ii)が、10~100℃の温度で実施され、
前記工程(ii)が、0.1~20時間実施され、
前記工程(ii)が、最初にミセル溶液(a)を準備し、次いで、ミセル溶液(b)を添加することによって達成されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
請求項3または4に記載のインクを製造する方法であって、
前記方法は、以下の工程:
請求項1または2に記載のコロイド分散液と、非溶媒とを準備する工程;
前記コロイド分散液を前記非溶媒と混合し、それによって前記インクを得る工程を含んでなり、
前記非溶媒は、誘電率が2~50の範囲である水混和性有機溶媒の群から選択される、前記方法。
【請求項8】
前記非溶媒が、C~Cアルコール、C~Cアルデヒド、C~Cケトン、C~Cカルボン酸、C~Cカルボン酸C~Cエステル、C~Cニトリルおよびテトラヒドロフラン(THF)からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のコロイド分散液の使用であって、
インクの製造のための、
バルク材料の形態でPCMを製造するための、または、
PCMの薄いフィルムを製造するための前記使用。
【請求項10】
3D印刷に適合しているインクの製造のための、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質結晶性材料(PCM)の分野、より具体的には、金属有機フレームワーク(MOF)および共有結合性有機フレームワーク(COF)に関する。本発明によれば、ミセルは、水性分散液中での多孔質結晶性材料の合成および安定化のためのナノリアクターとして使用される。そのような多孔質結晶性材料を含んでなる分散液、ならびに、そのような分散液の合成および使用が開示される。新規の多孔質結晶性材料、ならびに、そのような結晶性材料の合成および使用がさらに開示される。さらに開示されるのは、分散液および非溶媒を含んでなる新規インク、ならびに、直接印刷、2D印刷および3D印刷のためのそのようなインクの合成および使用である。
【背景技術】
【0002】
MOFおよびCOFはよく知られたクラスの材料であり、例えば、Stock et al(Chem. Rev. 2012, 112, 933- 969 and Acc. Chem. Res. 2015, 48, 3053-3063)において記載されている。
【0003】
James et al(Chem. Eur. J. 2007, 13, 3020-3025)には、多孔質液体の概念が記載されている。しかしながら、この文献には具体的な教示が欠けている。James et al(Nature 2015, 527, 216-221)には、この概念がさらに詳述されている。この文献によると、ケージ分子(cage molecule)は、明確に規定された細孔空間を提供し、溶媒分子が細孔に入るには大きすぎる溶媒に非常によく溶けやすいように設計されている。このサイズ制限のため、水は適切な溶媒ではない。
【0004】
Ranocchiari et al(EP3006103)は、マイクロ波照射を使用して連続フロー反応器でMOFおよびCOFを生成する方法を記載している。過酷な反応条件は、入手可能なMOFおよびCOFの選択を制限し、使用される特定のセットアップはその汎用性を制限する。すべての実験は有機溶媒中で行われ、IMO/EtOHの使用は不利であると考えられており、これは、観察可能な生成物がなかったためである([0038])。
【0005】
G. Lestari(Hydrothermal Syntesis of ZIF-8 crystals with controllable size and morphology;博士論文)およびYichang Pan, Lestari et al(Cryst. Eng. Comm. 2011, 13, 6937)には、少量の界面活性剤を含む水溶液からのZIF-8結晶の合成が記載されている。具体的に述べられているように、著者らは「合成溶液に添加されるCTABの量はすべての状況でCMCを下回る」ことを選択した。さらに、著者らは、彼らの製造方法を、「有機溶媒から大きな粒子を調製するためのルート」の可能性と見なしている。
【0006】
Y. Peng et al(Nature Communications 2018, 9, 187)には、重金属イオンの捕捉および分散のための多用途のMOFベースのトラップが記載されている。開示された実験では、MOFがバルク材料として使用されており、特定のMOFを使用するアプローチは、活性炭吸着剤の概念と密接に関連している。著者らは、開示された材料を、分離および触媒作用のための用途の広い重金属イオントラップと見なしている。この文献は、MOFを含んでなるコロイド分散液を開示することができていない。
【0007】
A. Mel lah et al(Chem. Eur . J. 2018, 24, 10601)には、特定のCOFを使用した水からの医薬品汚染物質の捕捉が記載されている。この文献によると、COFを調製し、水に分散させる。SEM測定によって証明されたように(図SI5およびSI12)、COFは約5ミクロンであり、したがって、コロイド分散液を形成するには大きすぎる。
【0008】
V. Vyas et al(Nature Communications 2015, 6, 8508)には、水素生成用の調整可能なアジンCOFプラットフォームが記載されている。この場合も、COFを調製し、水に分散される(p.8)。SEM測定によって証明されるように(図SI60)、COFは約10ミクロンであり、したがって、コロイド分散液を形成するには大きすぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結論として、MOFおよびCOFを取得するための方法の改善が必要である。特に、以下の要件:より速く;危険のない条件;製造工程数の削減;ユーザーフレンドリー;単分散性ナノサイズ材料の製造;および測定可能性(scalable)の1以上を満たす製造方法が必要である。また、新規で有用な材料、例えば、新規なMOFおよびCOFを提供する必要性は常に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、請求項1に規定された分散液および請求項3に規定されたその製造方法を提供することによって達成される。本発明のさらなる態様は、明細書および独立請求項に開示されており、好ましい実施形態は、明細書および従属請求項に開示されている。大まかに述べると、本発明は、多孔質結晶性材料(PCM、例えば、既知のMOFおよびCOF、ならびにビルディングブロック(building block)の新しい組み合わせを有する新規のMOFおよびCOFまたは直接的に新しいビルディングブロックを有する新規のMOFおよびCOF)を合成するための新しいプラットフォームを提供する。このプラットフォームは、安定した分散液の形態で、水中でPCMを合成することを可能にする。このプラットフォームは、新しいナノ粒子を入手することを可能にし、これまで入手できなかった形態を示す。したがって、本発明は、
・第1の態様において、多孔質結晶性材料の水性分散液およびインクに関し(請求項1および3を参照)、
・第2の態様において、そのような分散液およびインクを製造する方法に関し(請求項5を参照)、
・第3の態様において、そのような分散液の使用および使用方法に関し(請求項8を参照)、
・第4の態様において、PCM、具体的には、MOFおよびCOFを製造する方法に関し(請求項9を参照)、
・第5の態様において、新しいPCM、具体的には、MOFおよびCOFの形態に関する(請求項11を参照)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本明細書に記載の本発明の概要を示す図である。
図2図2は、本明細書に記載の本発明の概要を示す図である。
図3図3は、具体例に基づく本発明の第2の態様に従った製造の概要と、分析結果とを示す図である。(A)本明細書に記載の水中でのCOFコロイド溶液の合成の概略図。(B)RT-COF-1水コロイド溶液の写真。(C)透明なRT-COF-1コロイド溶液の写真(左)。レーザー照射時のチンダル効果を示す(右)。
図4図4は、本発明のコロイド溶液からのRT-COF-1の加工性を概説する図である。(A)RT-COF-1フィルムの作製に使用されるセットアップの概略図。(BおよびC)Aのセットアップで得られたフィルムのSEM画像。挿入図:得られたフィルムのナノ粒子テクスチャーを示す高倍率のSEM。(D)RT-COF-1ナノ粒子の直接印刷を実現するために使用されるマイクロ流体チップの写真。(EおよびF)RT-COF-1ナノ粒子を使用した「COF」および「ETH」の文字のガラス表面への書き込みを示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてより詳細に説明する。本明細書に開示されるような様々な実施形態、選好および範囲は、自由に組み合わせることができることが理解される。さらに、特定の実施形態に応じて、選択された規定、実施形態または範囲は適用されない場合がある。
【0013】
特に明記されていない限り、この明細書には以下の定義が適用される。
【0014】
本明細書で使用される場合、本発明の文脈で(特に特許請求の範囲の文脈で)使用される用語「a」、「an」、「the」および同様の用語は、本明細書に別段の定めがない限り、あるいは、文脈に明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0015】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含む(containing)」および「含む(comprising)」という用語は、本明細書では、それらの開いた非限定的な意味で使用される。
【0016】
多孔質結晶性材料(PCM)
「多孔質結晶性材料」という用語は、本明細書で定義されている金属有機フレームワーク(MOF)および共有結合性有機フレームワーク(COF)の両方をカバーするように選択されている。そのような材料は、第1のビルディングブロックと、第1のビルディングブロックとは異なる第2のビルディングブロックとを含んでなる。それらは長距離秩序を示すという点で(例えば、X線回折によって示されるように)、結晶性である。さらに、それらは、0.1~7nmのサイズの空洞を備えるという点で(例えば、小分子の吸収作用によって示されるように)、多孔性である。
【0017】
金属有機フレームワーク(MOF)
「MOF」という用語は、この分野で既知であり、金属イオンのコア(クラスターを含む)と、配位子(「ストラット」とも呼ばれる)とを含んでなる化学物質を示す。配位子は少なくとも2つの配位部位を有する。本発明の文脈において、MOFは、開いた細孔を有する2Dまたは3Dネットワークを形成する。
【0018】
共有結合性有機フレームワーク(COF)
「COF」という用語は、この分野で既知であり、金属イオンが有機類似体リンカーに置き換えられたMOFの類似体を示す。本明細書で説明されるように、COFは、開いた細孔を有する2Dまたは3Dネットワークを形成する。
【0019】
水性分散液
「水性分散液」という用語は、この分野で既知であり、連続水相、特に水全体に均一に分布する10~1000nmの粒子からなる2相系を意味する。
【0020】
ミセル溶液
「ミセル溶液」という用語は、この分野で既知であり、特に熱力学的に安定で、透明で均一な液体組成物を意味する。ミセル溶液において、溶解している物質(イオンまたは分子)は界面活性剤によって調整される。したがって、溶解している物質が溶媒分子によって調整される真の溶液とは区別される。さらに、熱力学的に不安定かつ一般的に不透明なエマルジョンとは区別される。また、均一ではない分散液とも区別される。
【0021】
本発明は、図を参照することによってよりよく理解される。
【0022】
図1および2は、本明細書に記載の本発明の概要を示している。以下の略語:
・p.c.m.:本明細書で定義される多孔質結晶性材料;
・分散液:本明細書、第1の態様に記載のコロイド分散液;
・インク:本明細書、第1の態様に記載のインク;
・(a)および(b):本明細書に記載のミセル溶液;
・(c):本明細書に記載の非溶媒;
・(I)~(IV):本明細書に記載のビルディングブロック;
・(i)~(ix)本明細書に記載のプロセス工程;
・第1~第5:本発明の態様への割り当て
が使用されている。
【0023】
共有結合性有機フレームワーク(COF)および金属有機フレームワーク(MOF)は、まとめて多孔質結晶性材料(PCM)であり、有望な用途を有する多用途な材料である。それにも関わらず、過酷で危険な合成条件の使用、ならびにそれらの不溶性および粒子サイズの不十分な制御は、それらの使用を制限している。本発明は、それらの成長を制御するためのバイオインスパイアードアプローチに依存して、安定な水性コロイド分散液(サイズが単分散)、特に20nm未満の結晶性COFを調製するための新しいワンポット製造方法を提供する。この手順により、これらのPCMを以前に報告されている制限を超えて小型化することを可能にする。本発明はさらに、PCM、特に上記20nm未満の結晶性COFを、マイクロおよびミリメートルサイズの構造、例えば、自立性フィルムおよび3D形状に加工することを可能にする。これは、コロイドの粒子凝集を制御することによって達成される。
【0024】
図3は、具体例に基づく本発明の第2の態様に従った製造の概要をさらに示し、分析結果も提供する。
(A)本明細書に記載の水中でのCOFコロイド溶液の合成の概略図。
(B)RT-COF-1水コロイド溶液の写真。写真は、その透明性を強調している。
(C)透明なRT-COF-1コロイド溶液の写真(左)。レーザー照射時のチンダル効果を示す(右)。
【0025】
図4は、本発明のコロイド溶液からのRT-COF-1の加工性を概説している。
(A)RT-COF-1フィルムの作製に使用されるセットアップの概略図。
(BおよびC)Aのセットアップで得られたフィルムのSEM画像。それぞれ、自立性フィルムの断面と、ミリメートルサイズのフィルムの均一な表面とを示す。挿入図:得られたフィルムのナノ粒子テクスチャーを示す高倍率のSEM。
(D)RT-COF-1ナノ粒子の直接印刷を実現するために使用されるマイクロ流体チップの写真。左の入口は、本明細書に記載のミセル分散液用(例えば、
RT-COF-1)、上の入口は非溶媒用(例えば、EtOH)、右の出口は、発明に係るインク。
(EおよびF)RT-COF-1ナノ粒子を使用した「COF」および「ETH」の文字のガラス表面への書き込みを示す写真。
【0026】
より一般的に述べると、第1の態様において、本発明は、多孔質結晶性材料(PCM)の水性分散液およびPCMを含んでなるインクに関する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明される。
【0027】
したがって、本発明は、連続相と、その中に分散しているミセルとを含んでなる分散液であって、前記連続相は、水および任意選択で1種以上の添加剤を含んでなり、前記ミセルは、金属有機フレームワーク(MOF)および共有結合性有機フレームワーク(COF)からなる群から選択される多孔質結晶性材料(PCM)と、複数種の界面活性剤とを含んでなる。
【0028】
分散液
ミセル分散液は、PCM、水性媒体、および界面活性剤、任意選択で1種以上の共界面活性剤および任意選択で1種以上の添加剤を含有する(すなわち、それらを含んでなるか、あるいは、それらからなる)。さらに、出発材料(「ビルディングブロック」)も分散液内に残留してもよい。
【0029】
有利な実施形態において、前記分散液はコロイド分散液であり、好ましくはミセルのサイズが10~1000nm、例えば15~200nm、特に好ましくは15~60nmである。
【0030】
有利な実施形態において、前記ミセルのサイズは単分散である。本発明の文脈における単分散は、0~0.7、好ましくは0.05~0.5の多分散度指数(PDI)を有する狭いサイズ分布を有するミセルに関するものであり、動的光散乱(DLS)測定に従って決定可能である。
【0031】
分散相(ミセル):連続相の比は、広範囲に変化し得、典型的には1:99~12:88(w/w)の範囲、好ましくは5:95(w/w)である。したがって、ミセル分散液は、約90パーセント以上の水性媒体を含む。
【0032】
例示的な実施形態において、本発明の分散液は、約0.01~4重量%のPCM、約80~99重量%の水、約0.01~4重量%の界面活性剤、約0.01~4重量%の共界面活性剤および約0.001~10重量%の添加剤を含み得る。
【0033】
連続相
有利な実施形態において、上記分散液の連続相は、90重量%以上の水、例えば、95重量%の水を含んでなる。有利な実施形態において、コロイド分散液の連続相は、有機溶媒(以下に定義される非溶媒)を含まない。この実施形態において、連続相は、水からなるか、あるいは、水と添加剤(以下に定義される)とからなるかのいずれかである。
【0034】
ミセル
ミセルは、複数種の界面活性剤で囲まれた1以上のPCMを含有する。PCM:複数種の界面活性剤相の比は、広範囲にわたって変化し得、典型的には1:100~2:1(w/w)の範囲、好ましくは4:63(w/w)である。
【0035】
界面活性剤
適切な複数種の界面活性剤は既知であり、選択した反応開始材料に依存する。有利な実施形態において、上記複数種の界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群から選択される。
【0036】
有利には、界面活性剤の量は、その臨界ミセル濃度を超えるように選択される。CMCは、各界面活性剤に固有の既知のパラメーターである。
【0037】
添加剤
適切な添加剤は既知であり、COFおよびMOFを得るための反応条件に依存する。このような添加剤は、pHを調整するため(酸、塩基、緩衝液系)、イオン強度を調整するため(例えば、電解質)、粘度を調整するため、あるいは、反応速度を改善するため(例えば、触媒)に選択可能である。
【0038】
非溶媒
分散液は、非溶媒をさらに含んでなり得る。適切な非溶媒は、水と混和性であり、連続相に存在する。このような分散液は、上記分散液のコロイド構造を保持しているが、上記分散液と比較して粘度が高いため、「インク」と呼ばれる。適切な非溶媒は、誘電率が2~50の範囲、好ましくは10~35の範囲である水混和性有機溶媒の群から選択される。例示的な非溶媒には、C~Cアルコール、C~Cアルデヒド、C~Cケトン、C~Cカルボン酸、C~Cカルボン酸C~Cエステル、C~CニトリルおよびTHFが挙げられる。
【0039】
インク
この用語が示すように、インクは、印刷、例えば、インクジェット印刷または3D印刷に適合しているコロイド分散液である。一実施形態において、本発明は、連続相と、その中に分散しているミセルとを含んでなるインクであって、(i)前記連続相は、水、1種以上の非溶媒および任意選択で1種以上のさらなる添加剤(それぞれ、本明細書で定義されている)を含んでなり、(ii)前記ミセルは、本明細書に記載の複数種の界面活性剤および(PCM)を含んでなり、(iii)前記ミセルは、本明細書に記載のサイズであり、かつ、(iv)前記分散液中の前記複数種の界面活性剤の濃度は、CMCを上回っていることを特徴とする、前記インクを提供する。
【0040】
有利な実施形態において、インクは、C~Cアルコール、C~Cアルデヒド、C~Cケトン、C~Cカルボン酸、C~Cカルボン酸C~Cエステル、C~CニトリルおよびTHFからなる群から選択される非溶媒を含んでなる。
【0041】
有利な実施形態において、インクは、1~10cPの範囲、好ましくは10~10cPの範囲の粘度を有する。
【0042】
有利な実施形態において、インクは、直接印刷、2D印刷または3D印刷、特に3D印刷に適合している。
【0043】
多孔質結晶性材料
PCMという用語は、上記で定義されている。製造の観点から、それらは第1および第2のビルディングブロックを含んでなる。有利なPCMを以下に示す。
【0044】
有利な実施形態において、本発明は、イミン類を原料とするCOFに関する。このようなCOFは、ポリアミンとポリアルデヒドとの縮合反応によって得られ、ビルディングブロックに応じて、2D-COFおよび3D-COFが利用可能である。
【0045】
有利な実施形態において、本発明は、カテコール類を原料とするMOFに関する。このようなMOFは、ポリフェノールの銅(II)との配位によって得られ、典型的には、2D-MOFが得られる。
【0046】
有利な実施形態において、本発明は、TCPP-Cu MOFに関する。特に有利には、本発明は、ポルフィリンコアに金属を含まないTCPP-Cu MOFに関する。このようなTCCP-Cu MOFは、テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリンと銅(II)種との反応によって得られ、2D-MOFが得られる。
【0047】
有利な実施形態において、本発明は、ZIF-8からのMOFに関する。このようなMOFは、2-メチルイミダゾールと亜鉛(II)の塩との反応によって得られ、3D-MOFが形成される。
【0048】
有利な実施形態において、本発明は、MIL 100類、例えば、MIL 100(Fe)からのMOFに関する。このようなMOFは、トリメシン酸を鉄(III)種と反応させることによって得られ、その結果、3D-MOFが形成される。
【0049】
第2の態様において、本発明は、本明細書に記載のPCMの水性コロイド分散液(第1の態様)を製造する方法に関する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明される。
【0050】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載の分散液(本発明の第1の態様)を製造する方法を提供する。前記方法は、ミセル溶液(a)およびミセル溶液(b)を準備する工程であって、ミセル溶液(a)が、前記多孔質結晶性材料の第1のビルディングブロック、水、第1の界面活性剤および任意選択で添加剤を含んでなり、ミセル溶液(b)が、前記多孔質結晶性材料の第2のビルディングブロック、水、第2の界面活性剤および任意選択で添加剤を含んでなる工程(「工程i」)、前記ミセル溶液(a)および(b)を混合し、それによって前記コロイド分散液を得る工程(「工程ii」)を含んでなる。
【0051】
さらなる一実施形態において、本発明は、室温で20nm未満のCOF粒子の安定した水性コロイド分散液を合成するための新しいアプローチを提供する。PCMを製造する既知の方法と比較して、本発明の方法は非常に単純である。本明細書で説明され、実施例によって裏付けられるように、ミセルは、水性分散液中でのPCMの合成および安定化のためのナノリアクターとして使用される。
【0052】
溶液(a)
この溶液は、水、1種以上の界面活性剤、PCMの第1のビルディングブロックおよび任意選択で添加剤を含有する(すなわち、それらを含んでなるか、あるいは、それらからなる)。成分である水、界面活性剤、添加剤は、本発明の第1の態様の文脈で既に説明されている。
【0053】
第1のビルディングブロックは、典型的には、水溶性が低いため、溶液(a)は、ミセル溶液と考えられる。界面活性剤の存在は、水相に存在する第1のビルディングブロックのミセルを形成するのに役立つ。
【0054】
個々の成分の量を広範囲にわたって変化させてもよい。典型的には、水の量は90~95重量%の範囲である。典型的には、界面活性剤の量は、0.04~4重量%の範囲である。典型的には、第1のビルディングブロックの量は、0.01~1重量%の範囲である。典型的には、添加剤の量は0~10重量%の範囲である。
【0055】
溶液(b)
この溶液は、水、1種以上の界面活性剤、PCMの第2のビルディングブロックおよび任意選択で添加剤を含有する(すなわち、それらを含んでなるか、あるいは、それらからなる)。成分である水、界面活性剤、添加剤は、本発明の第1の態様の文脈で既に説明されている。
【0056】
第2のビルディングブロックは、典型的には、水溶性が低いため、溶液()は、ミセル溶液と考えられる。界面活性剤の存在は、水相に存在する第2のビルディングブロックのミセルを形成するのに役立つ。
【0057】
個々の成分の量を広範囲にわたって変化させてもよい。典型的には、水の量は90~95重量%の範囲である。典型的には、界面活性剤の量は、0.04~4重量%の範囲である。典型的には、第2のビルディングブロックの量は、0.01~1重量%の範囲である。典型的には、添加剤の量は0~10重量%の範囲である。
【0058】
界面活性剤
広範囲の界面活性剤を使用することができ、この用語は、既に本発明の第1の態様で説明されている。界面活性剤は、機能性結晶材料および金属ナノ粒子の合成において重要であると考えられている。これは、界面活性剤が、成長する結晶面への選択的付着を介してサイズおよび形状を調整することにより、ナノ結晶の成長を制御するためである。さらに、界面活性剤は、水中で超分子集合体(例えば、ミセル)を生成することができ、その形状およびサイズは、温度と界面活性剤濃度との両方で細かく制御可能である。しかしながら、これまでのところ、ミセルは水中でのPCMの合成および安定化のためのナノリアクターとして使用されていない。ミセルの親水性表面および疎水性コアの間に存在する強い極性勾配により、極性試薬と非極性試薬との両方を水に可溶化することができる。したがって、ミセル媒体では、複数のプリカーサーミセル溶液(precursor micellar solutions)を混合することにより、穏やかな条件下で反応する多数のビルディングブロックを可溶化することができる。本明細書では、このアプローチを効率的に使用して、水中でPCMの分散液を得る方法を説明する。結果として、この方法は、多孔質結晶性材料分野における大きな障害および課題を回避する。
【0059】
MOFの第1/第2のビルディングブロック
MOFは、典型的には、第1のビルディングブロック(無機ユニットとも呼ばれ、例えば、式(I)に記載の無機ユニット)を、第2のビルディングブロック(有機リンカーとも呼ばれ、例えば、式(II)に記載の有機リンカー)と反応させることによって生成される。
【0060】
適切な第1のビルディングブロック(無機ユニット)は、式(I):
(I)
[式中、
Mは、金属または半金属、好ましくは、酸化状態II、IIIまたはIVの遷移金属、例えば、Cu(II)、Fe(III)、Al(III)、Cr(III)、Co(II)またはZn(II)を表し、
Lは、ハロゲン、O、OH、CO、N、NO、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、アミンの残基を表し、
wは、≧1であり、および、
zは、≧0である。]
のものである。
【0061】
MOF合成に適した第2のビルディングブロック(リンカー)は既知である。原則として、特定の金属に適した任意の既知の配位子または配位子の任意の組み合わせをこの工程に使用することができる。適切なリンカーは式(II):
(II)
[式中、
Rは、式CA (II-l)の有機基を表し、
Aは、H、またはアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アルデヒド、尿素、チオ尿素、エステル、炭酸塩、アルコール、エーテル、ハロゲン、ホスフィン誘導体、ホスフィンオキシド誘導体、イミダゾリウム、ピリジノ、トリアゾール、イミダゾール、リン酸塩、リン酸の官能基を表し、
Dは、無機ユニットに結合する供与基、例えば、カルボン酸、スルホン酸、カルボキシレート、スルホネート、カルボニル、ヒドロキシル、ヒドロキシレート、アミノ、アンモニウム、ホスフィン、ホスホニウム、ピリジンおよびその誘導体、イミダゾールおよびその誘導体、ホスホネートおよびその誘導体、ニトリルを表し、
xは、≧1であり、
yは、≧1、有利には2または1であり、
mは、≧1であり、
oは2m、または2m-2を表す]
のものである。
【0062】
有利には、式(II)の配位子は、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、プリン、5-アザベンズ-イミダゾール、4-アザベンズイミダゾール、5-クロロベンズ-イミダゾール、イミダゾレート-2-カルボキシアルデヒド、4-メチル-5-イミダゾール-カルボキサルデヒド、テレフタル酸、1,3,5-ベンゼン-トリカルボン酸、ムコン酸、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0063】
金属および配位子の適切な組み合わせを以下に示す。
【表1】
【0064】
したがって、有利な実施形態において、MOFは、ZIF-7、ZIF-8、ZIF-20、ZIF-21、ZIF-22、ZIF-23、ZIF-67、ZIF-69、ZIF-90、SIM-1、MIL-47、MIL-53、MOF-5、MIL-96、MIL-89、MIL-101およびHKUST-1からなる群から選択され、好ましくはZIF-8である。
【0065】
COFの第1/第2のビルディングブロック
COFは、試薬1とも呼ばれる第1のビルディングブロック(式(III)の共有結合を与えるのに適している)を、試薬2とも呼ばれる第2ビルディングブロック(共有結合、例えば、式(IV)に記載の共有結合を与えるのに適している)と反応させることによって、生成される。
【0066】
適切な第1のビルディングブロックは、式(III):
(III)
[式中、
nは、≧2であり、
xは、≧2であり、
Aは、アミン、ヒドラジン、ニトリルを表し、
Rは、置換および非置換アルキル基、置換および置換および非置換アリール非置換アルキルアリールならびに大環状基から選択される基を表す。]
のものである。
【0067】
適切な第2のビルディングブロックは、式(IV):
(IV)
[式中、
nは、≧2であり、
xは、≧2であり、
Bは、アルデヒド、カテコール、ケトンを表し、
Rは、上記式(III)で定義された基を表す。]
のものである。
【0068】
ビルディングブロック1(式(III)に記載)およびビルディングブロック2(式(IV)に記載)の適切な組み合わせを以下に示す。
【表2】
【0069】
プロセス工程(i)および(ii)
これらのプロセス工程は完全に従来型であるが、PCMを製造する状況ではまだ適用されていない。製造の特定の実施に応じて、工程(i)および(ii)は、バッチ式プロセス工程、半連続的なプロセス工程または連続的なプロセス工程として実施され得る。
【0070】
一実施形態において、工程(ii)は、10~100℃の温度、好ましくは室温(例えば、約20~30℃の範囲)で実施され得る。
【0071】
一実施形態において、工程(ii)は、0.1~20時間実施され得る。
【0072】
一実施形態において、工程(ii)は、大気圧(例えば、0.9~1.1bar)で実施され得る。
【0073】
一実施形態において、工程(ii)は、最初にミセル溶液(a)を準備し、次いで、ミセル溶液(b)を添加することによって達成される
【0074】
合成アプローチおよび得られた結果は、図3にさらに要約されている。限定された空間(ミセル)を使用して、典型的なイミンCOFであるRT-COF-1のナノ粒子を水中かつ室温で合成する。RT-COF-1は、1,3,5-トリス(4-アミノフェニル)ベンゼン(TAPB)と1,3,5-トリホルミルベンゼン(BTCA)とのイミン縮合から得られる。従来技術によれば、RT-COF-1は、触媒としての酢酸の存在下において、メタクレゾールまたはDMSO中でビルディングブロックを反応させて不溶性の結晶性粉末を生成することによって得られる(A.de la Pena Ruigdmez et al. Chemistry, 2015, 21, 10666)。しかしながら、本発明は、カチオン性界面活性剤混合物である臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム/ドデシル硫酸ナトリウム(CTAB/SDS)によって形成された混合ミセル系を使用することにより、水中で結晶性RT-COF-1ナノ粒子の安定なコロイド懸濁液を得ることが可能であることを実証する。
【0075】
第3の態様において、本発明は、本明細書に記載の水性PCM分散液(第1の態様)の使用、およびこのような分散液を使用する方法に関する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明される。
【0076】
MOFおよびCOFは、調整可能で明確に定義された細孔サイズおよび細孔表面化学を有するPCMである。したがって、これらの材料は、様々な分野、例えば、センシング、光学アプリケーション、触媒作用、吸収、オプトエレクトロニクス、分子エレクトロニクス、生物医学または薬物送達における適用可能性を有する。しかしながら、生物医学的用途(例えば、薬物送達および水の処理)の場合には、それらの実現の成功は限定されており、これは、既知のPCMを水溶液に懸濁することができず、それらのサイズがサブミクロンメートルの範囲であるためである。水中でのこれらの材料のコロイド分散液は、ナノメートルの範囲で定義されたサイズを有し、MOFおよびCOFの研究、したがって、これらの材料の複数の用途において、新しいパラダイムシフトに乗り出す。要約すると、COFおよびMOFの化学的堅牢性ならびにCOFおよびMOFの構造における分子官能基および/または活性金属中心の存在を考慮すると、多くの用途、例えば、汚染された廃水から汚染物質を除去するための吸着剤および薬物送達に関する吸着剤において、これらの材料の適用は、最も重要で興味深いものである。
【0077】
一実施形態において、本明細書に記載の分散液は、PCMを製造するために使用される。分散液は、PCMが生成されるナノリアクターと見なすことができる。このようにして製造されたPCMは、様々な形態、例えば、PCMのバルク材料またはPCMの薄いフィルムで得ることができる。したがって、本発明は、PCMの薄いフィルムの製造およびPCMからなるバルク材料の製造を提供する。
【0078】
一実施形態において、本明細書に記載の分散液は、水の処理、特に溶解している汚染物質の除去に使用される。
【0079】
人口増加および環境汚染の加速により、水不足は世界的な問題として徐々に浮上している。多くの地域の特徴として、水資源が空間的および時間的に不規則で限定されていることが増加している。現在、20億人が過剰な水ストレスのある地域に居住している。変化がなければ、水の需要は供給を40%上回るであろう。例えば、水資源管理一般および廃水の再利用、特に廃水の価値化(valorisation)は、現在、世界的に重要な課題と見なされている。これに関連して、2030年の持続可能な開発目標に関する国連アジェンダは、汚染を減らし、投棄をなくし、有害な化学物質および材料の放出を最小限に抑え、未処理の廃水の割合を半減させ、リサイクルおよび安全な再利用を世界的に大幅に増やすことにより、水質を改善することを目標としている。本発明は、水処理の分野、特に水中に存在する汚染物質および微小汚染物質の除去に明白に貢献する。
【0080】
したがって、本発明は、水を処理する方法であって、前記方法は、以下の工程:本明細書に記載の分散液を準備する工程;前記分散液を未処理の水と接触させる工程(「工程iv」);および溶解している汚染物質を除去し、それによって処理水を得る工程(「工程v」)を含んでなる、前記工程を提供する。このような汚染物質は、重金属、有機染料、有効成分(「薬物」、例えば、ヒトへの使用または獣医学的な使用および植物保護用、VOC)から選択され得る。
【0081】
一実施形態において、本明細書に記載の分散液は、ビヒクル/ナノ担体として、特に薬物送達のために使用される。
【0082】
本発明は、研究開発の生産性を高める方法を特定しようとしながら、多くの企業がコスト削減モードで運営されており、現在前例のない課題に直面しているヘルスケアバイオテクノロジー産業に切望されている後押しを提供する。本明細書で提示される技術は、特定の機能を備えた材料および新しい生成物を合理化するための新しい合成方法を提供するため、ヘルスケアバイオテクノロジーに大きな影響を与えると考えられている。
【0083】
したがって、本発明は、医薬品を製造する方法であって、前記方法は、以下の工程:本明細書に記載の分散液を準備し;前記分散液を有効成分と接触させる工程(「工程vi」)を含んでなる前記方法を提供する。原則として、任意の有効成分を使用することができ、生体分子(例えば、タンパク質および糖)および小分子(API、例えば、イブプロフェン)が好ましい。
【0084】
一実施形態において、本明細書に記載の分散液は、均一系触媒における触媒材料として使用される。これまで、MOFおよびCOFは不均一系触媒で使用されていたが、均一系触媒で使用すると、触媒活性の効率が向上する。したがって、本発明は、均一系触媒プロセスであって、以下の工程:本明細書に記載の分散液を準備する工程;必要に応じて、前記分散液を触媒活性成分と接触させ、それにより修飾された分散液を得る工程(「工程vii」);
前記修飾された分散液を前記均一系触媒プロセスの出発材料と接触させる工程(「工程viii」)
を含んでなる、前記均一系触媒プロセスを提供する。
【0085】
均一系触媒におけるPCMの使用は未だ検討されておらず、幅広い化学反応に対する代替の触媒アプローチを提供する。原則として、均一に触媒される反応は、本明細書に記載されるような本発明の方法の対象となる可能性がある。結果として、「出発物質」という用語は、触媒反応を受ける可能性のある任意の化学物質を含む。
【0086】
PCM自体が触媒特性を有していてもよく、したがって、工程(vii)は任意である。問題となる反応がさらなる触媒中心を必要とする場合には、追加の触媒活性成分を添加することができる(工程vii)。そのような実施形態において、触媒は、PCMの構造において保護されている。これにより、従来とは異なる媒体での触媒の使用が可能になる。
【0087】
一実施形態において、本明細書に記載の分散液は、インクを製造するために使用される。ナノサイズのPCMの安定した水性コロイド分散液を得ることの適用可能性に加えて、本発明はまた、それらの加工性に対しても新しい場(venue)を開く。実際、実験室環境外でのPCMのさらなる実現および最適なパフォーマンスに対する主要な制限の1つは、従来、様々な形状およびサイズにPCMを加工することの難しさから生じてきた。本発明によれば、非溶媒、例えば、エタノールの添加によってコロイドの凝集を制御する可能性は、インクの直接印刷に加えて、二次元(2D)自立性フィルムから3次元(3D)形状にわたる様々なマイクロおよびミリメートルサイズの構造の生成を可能にする。重要なことに、以下に説明するように加工された場合のPCM構造は、出発材料のPCMと同一であり、加工がPCMの特性にほとんど影響を与えないことを証明している。これは、PXRD測定によって示された。
【0088】
2D構造
2D構造の製造の最初の工程として、RT-COF-1コロイドの水を非溶媒、例えば、エタノールと溶媒交換し、多孔質材料の高濃度で粘性のある分散液の非溶媒(「インク」)を生成した。次いで、薄いスペーサーで隔てられた2枚のスライドガラスの間にこの分散液を押し付け、溶媒を蒸発させることにより、RT-COF-1を厚み500±10nmの非常に均一な自立性のミリメートルサイズの薄いフィルムとして加工した(図4A~C)。さらに、これらの2D構造の生成を、平らなスライドガラスの代わりに四角形パターンのスタンプを使用することでマイクロメートルの範囲にスケールダウンすることもできる。これにより、横方向のサイズが500μmのきれいにパターン化された四角形が得られ、様々な2D構造へのRT-COF-1ナノ粒子の加工性を提供する。加工されたRT-COF-1フィルムおよび2D構造の高倍率SEM画像は、それらが未加工のCOFと同様のサイズおよび形状の凝集ナノ粒子で構成されていることを示し、加工がナノ粒子の構造に影響を与えないことを示す。
【0089】
3D構造
さらに、本方法の可能性は2D領域に限定されず、前述で使用されたものと同一のインクが八面体形状の3Dモールドに供給されると、RT-COF-1の3D構造が生成される。この場合には、非溶媒(例えば、エタノール)の蒸発により体積が減少し、次いで、パターン化された3D構造が崩壊するため、エタノールの液体COへの制御された交換とそれに続く臨界点乾燥とを適用して、3Dパターン化RT-COF-1八面体の調製を成功させた。
【0090】
直接印刷
直接印刷も本発明の範囲内であり、本明細書に記載のインクの直接印刷が含まれる。この実施形態では、インク(例えば、RT-COF-1コロイド水溶液)を使用して、PCM(例えば、RT-COF-1ナノ粒子)を表面に印刷する。これを達成するために、2つの入口を有し同心状に3D的に集束させるマイクロ流体デバイス(a concentric two inlet 3D focusing microfluidic device)を使用した(図4D)。したがって、本明細書に記載のコロイド分散液(例えば、RT-COF-1水性コロイド)を中央の入口から注入し、非溶媒(例えば、エタノール)を外側の入口からポンプで送って、コロイドCOFの流れの周りに同心状のシースフローを生成した。非溶媒のコロイド分散液への拡散が制御されているため、ミセルは徐々に不安定になり、RT-COF-1ナノ粒子が凝集する。この方法論は、層流によるコロイドの不安定化の制御を可能にするだけでなく、ペンとして出口管を使用して表面にCOF構造を直接印刷することを可能にする。したがって、この方法は、コロイドをインクに効果的に変換可能であることを示す(図4Eおよび4F)。
【0091】
第4の態様において、本発明は、本明細書に記載のPCM(第1の態様)を製造する方法に関する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明される。
【0092】
本発明の方法は、PCMを固体バルク材料として、または典型的には支持材料上に配置される薄いフィルムの形態で、提供する。さらに、本発明の方法は、1000μm未満、好ましくは500μm未満の厚みを有する自立性の薄いフィルムの製造を可能にする。本発明の方法は、本明細書に記載の分散液(第1の態様)を準備する工程および前記多孔質結晶性材料を単離する工程(「工程iii」)を含んでなる。
【0093】
プロセス工程(iii)
分散液をその成分、すなわち、分散されている固体材料と、連続相とに分離することは完全に標準的であるが、本明細書に記載の分散液には未だ適用されていない。使用目的およびプロセス全体に応じて、様々な単離工程を単独で、または組み合わせて適用することができる。これらの工程には、溶媒沈殿(iii-a)、pH調整(iii-b)、遠心分離(iii-c)、浸透(iii-d)、コーティングおよび印刷(iii-e)、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。工程(iii-a)~(iii-d)はバルク材料を得るのに特に適しており、工程(iii-e)は薄いフィルムを得るのに特に適している。
【0094】
第5の態様において、本発明は、新しい多孔質結晶性材料、特にMOFおよびCOFの形態の多孔質結晶性材料に関する。本発明のこの態様は、以下でさらに詳細に説明される。
【0095】
説明されているように、本発明の製造方法で、既知のPCMを製造するための既存の方法を置き換えることを可能にする。さらに、ここから未知の特性を有するPCMが入手可能である。したがって、本発明は、本明細書に記載の方法である第4の態様によって得ることができる、または、得られた、単離された多孔質結晶性材料(バルク材料および薄いフィルムを含む、場合により支持体上に薄いフィルムを含む)を提供する。特に、本発明は、このような方法が室温および大気圧で実行されるプロセス工程のみを含んでなる場合に、単離されたPCMを提供する。
【0096】
一実施形態において、本発明は、イミン類を原料とするCOFであって、16nm未満の粒子サイズを有するCOFを提供する。このようなCOFは、単離されたバルク材料として、支持体上の薄いフィルムとして、または懸濁液の形態で存在し得る。
【0097】
一実施形態において、本発明は、カテコール類を原料とするMOFであって、20nm未満の粒子サイズを有するMOFを提供する。このようなMOFは、単離されたバルク材料として、支持体上の薄いフィルムとして、または懸濁液の形態で存在し得る。
【0098】
一実施形態において、本発明は、ポルフィリンコアに金属を含まないTCPP-Cu MOFを提供する。このようなMOFは、単離されたバルク材料として、支持体上の薄いフィルムとして、または懸濁液の形態で存在し得る。
【0099】
一実施形態において、本発明は、ナノ分散液として30nmの四角形ナノ粒子のZIF-8を提供する。
【0100】
一実施形態において、本発明は、16nm未満の粒子サイズを有するMIL 100(Fe)を提供する。このようなMOFは、単離されたバルク材料として、支持体上の薄いフィルムとして、または懸濁液の形態で存在し得る。
【0101】
本発明の新しいPCMは、多数の商業的用途、例えば、既に説明されたように、本発明の第3の態様を有する。
【実施例
【0102】
本発明をさらに説明するために、以下の実施例が提供される。これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0103】
全般的な合成
共通する実験では、反応して多孔質結晶性材料を生成することができる2種以上のビルディングブロックを水-ミセル媒体に別々に溶解した。次いで、室温でビルディングブロックのコロイド溶液を混合し、ミセル内でそれらの反応を誘発し、最終的に多孔質結晶性材料の安定したコロイド懸濁液を得た。次いで、界面活性剤を除去するためにコロイド懸濁液をエタノールと混合し、材料の固体ナノ粒子懸濁液を得た。これは、遠心分離または濾過によって単離することができる。
【0104】
材料および方法
すべての化学物質および溶媒を、商業的供給源から入手し、さらなる精製をすることなく使用した。1,3,5-トリス(4’-アミノフェニル)ベンゼンを、以前に公開された手順を使用して調製した(Chem. Eur. J., 2015, 21, 10666)。
【0105】
4000~650cm-1のスペクトル範囲を有するPIKE Technologies MIRacle Single Reflection Horizontal ATR accessoryを備えたPerkinElmer Spectrum100で、全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR-FT-IR)の測定を記録した。
【0106】
サンプルを窒素雰囲気下で白金パンに保持した状態で、サンプルの熱重量分析をThermobalance TGA Q-500熱重量分析計で実行した。10K/分のランプ速度レートを使用した。
【0107】
高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像を、Csコレクター(ETA-JEOL)を備えたJEOL-JEM GRAND ARM300cF顕微鏡で取得した。収差の正確な測定と、最適化された補正とを、補正制御ソフトウェアJEOL COSMOを使用して実施した。サンプルの損傷を最小限に抑えるために、加速電圧を60kVに設定した。スロースキャンCCDカメラ(4096 x 4096ピクセル、Gatan OneViewカメラ)によって、HRTEM画像を取得した。TEMグリッド(200メッシュ、銅製の穴あきカーボンフィルム、Electron Microscopy Sciences)上に溶液を1滴滴下し、72時間反応させた後、グリッドを50μLの水および100μLのエタノールでリンスして過剰な界面活性剤を除去することによって、サンプルを調製した。
【0108】
Zeiss ULTRA55顕微鏡で、電界放出型走査型電子顕微鏡(FESEM)試験を実施した。スパッターQuorum 150T-Sで、サンプルを事前にクロムでコーティングした。
【0109】
Lynxeye検出器を備えたBruker D8 Advance X線回折計(Cu-Ka放射線;λ=1.5418A)で、粉末X線回折パターンを収集した。サンプルを平らなサンプルプレートにマウントした。0.016°のステップサイズかつ0.8秒/ステップの露光時間で3.5°<2θ<35°の範囲でパターンを収集した。
【0110】
吸着条件下でMicromeritics Tristar II体積測定装置を使用して連続、標準的なN吸着等温線を測定した。Brunauer-Emmet-Teller(BET)分析を実行して、77KでのN等温線の総比表面積を測定した。測定前に、粉末サンプルを353Kで12時間加熱し、10-6Torrまで脱ガス処理した。
【0111】
Cordouan Technologies Vasco 1粒子サイズアナライザーを使用して、アンモニアを添加する前の溶液を直接測定することによって、動的光散乱(DLS)試験を実施した。
【0112】
概要
以下の多孔質結晶性材料を本発明に従って合成した。
例1:COF-1
例2:COF-2
例3:Cat-MOF
例4:ポルフィリン-MOF
例5:ZIF-8
例6:Mil 100(Fe)
【0113】
結論
本明細書で提供される実施例は、本発明の製造方法を使用して、広範囲のMOFおよびCOFを入手可能であることを明確に示している。本明細書で提供される実施例は、広範囲の界面活性剤/界面活性剤の量が本発明の製造方法に適用可能であることを明確に示している。
【0114】
本明細書で示されているMOF/COFは、標準的な方法で得られたMOF/COFと同等の特性を示す。したがって、得られた材料は、そのようなMOF/COFのすべての用途に有用である。
【0115】
例1:COF-1
8.1mg(50μmol)の1,3,5-ベンゼントリカルボキサルデヒドを70μLのDMSOに溶解し、超音波処理下で20mLの0.1M 臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液に添加して、無色透明の溶液を得た。これとは別に、17.6mg(50μmol)の1,3,5-トリス(4’-アミノフェニル)ベンゼンを60μLのDMSOに溶解し、超音波処理下で20mLの0.1M 臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液に添加して、無色透明の溶液を得た。次いで、0.6mLの0.1M ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を各水溶液に添加した。最後に、これらの溶液を混合し、2mLの酢酸を添加した。得られた溶液はゆっくりとオレンジ色に変化した。28℃で72時間後、1mLの28%w/wアンモニア水溶液を添加すると、黄色の濁りが現れた。次いで、20mLのエタノールを添加し、分散液を2000rcfで5分間遠心分離した。黄色の固体が沈降した。20mLのエタノールで4回、20mLのアセトンで4回溶媒交換し、この際、遠心分離によって毎回固体を回収した。最後に、超臨界CO交換によって活性化した。16.7mgを得る(72%の収率)。
PXRD(2θ):5.8°,10.4°,11.3°,15.8°,26.0°;
SEM:直径16nmのナノ粒子。
BET表面積(N,77K):684m/g。
【0116】
COF-1の合成には、様々な比率の臭化セチルトリメチルアンモニウムおよびドデシル硫酸ナトリウムを使用した(表1)。異なる比率は、ナノスケールからマイクロスケールにわたる粒子のサイズ(動的光散乱で測定されたサイズ)に影響を与える。
【0117】
【表3】
【0118】
臭化セチルトリメチルアンモニウムの濃度は、ナノ粒子のサイズにわずかな影響を与え、COF-1を合成するために、0.1Mから0.001Mまで変更可能である(表2)。
【0119】
【表4】
【0120】
COF-1の合成には、その他の界面活性剤を使用した(表3)。すべての場合において、粒子サイズはマイクロスケールであった。塩化ベンザルコニウムを使用した場合にのみ、ナノメートルの範囲の粒子サイズが得られた。
【0121】
【表5】
【0122】
例2:COF-2
8.1mg(50μmol)の1,3,5-ベンゼントリカルボキサルデヒドをDMSO70μLに溶解し、超音波処理下で20mLの0.1M 臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液に添加して、無色透明の溶液を得た。これとは別に、17.7mg(50μmol)の2,4,6-トリス(4-アミノフェニル)-1,3,5-トリアジンを60μLのDMSOに溶解し、超音波処理下で、約0.1mLの酢酸とともに20mLの0.1M 臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液に添加して、無色透明な溶液を得た。次いで、0.6mLの0.1M ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を各水溶液に添加した。最後に、これらの溶液を混合し、2mLの酢酸を添加した。得られた溶液はゆっくりとオレンジ色に変化した。28℃で72時間後、1mLの28%w/wアンモニア水溶液を添加すると、黄色の濁りが現れた。次いで、25mLのエタノールを添加し、分散液を2000rcfで5分間遠心分離した。黄色の固体が沈降した。20mLのエタノールで4回溶媒交換し、この際、遠心分離によって毎回固体を回収した。最後に、超臨界CO交換によって活性化した。
PXRD(2θ):6°,10.5°,11.5°,15.6°,26.0°。
SEM:直径16nmのナノ粒子。
【0123】
例3:Cat-MOF
25mg(77.1μmol)の2,3,6,7,10,11-トリフェニレンヘキソールを50mLの0.1M CTAB水溶液に懸濁し、茶色の分散液を得た。これとは別に、31mg(88.1μmol)の酢酸銅(II)を0.1mLの0.1M CTAB水溶液に溶解した。最後に、両方の溶液を混合した。得られた溶液はすぐに透明な黒に変化した。28℃で48時間後、25mLのエタノールを添加し、得られた黒色の分散液を2000rcfで5分間遠心分離した。黒色の固体が沈降した。20mLのエタノールで4回溶媒交換し、この際、遠心分離によって毎回固体を回収した。最後に、超臨界CO2交換によって活性化した。
PXRD(2θ):4.5°,9.6°,12.7°,27.9°;
SEM:直径16nmのナノ粒子。
BET表面積(N,77K):235m/g。
【0124】
例4:ポルフィリン-MOF
25mg(30μmol)のテトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリンを70μLのDMSOに溶解し、超音波処理下で50mLの0.1M 臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液に添加して、濃いオレンジ色の懸濁液を得た。これとは別に、16mg(170.7μmol)の酢酸銅(II)を0.1mLの0.1M CTAB水溶液に溶解した。最後に、両方の溶液を混合した。得られた溶液はすぐに透明で暗赤色に変化した。28℃で48時間後、25mLのエタノールを添加し、得られた赤色の分散液を2000rcfで5分間遠心分離した。赤色の固体が沈降した。20mLのエタノールで4回溶媒交換し、この際、遠心分離によって毎回固体を回収した。最後に、70℃、300mbarで48時間加熱することで活性化した。
PXRD(2θ):5.5°,7.7°,10.9°,12.1°,16.2°,19.7°,21.6°,23.0°,27.0°,30.7°,34.9°;
SEM:ナノメートルフレーク。
【0125】
例5:ZIF-8
100mg(1.21mmol)の2-メチルイミダゾールを100mLの0.1M臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液に溶解し、無色透明の溶液を得た。次いで、3.75mLの0.1M ドデシル硫酸ナトリウム水溶液を得られた水溶液に添加した。これとは別に、133.7mg(0.61mmol)の酢酸亜鉛(II)二水和物を2mLの0.1M CTAB水溶液に溶解した。最後に、溶液を混合し、2mLの28%w/wアンモニア水溶液を添加した。得られた溶液はゆっくりと白く変化した。28℃で48時間後、溶液を凍結乾燥した。次いで、2mLのエタノールを添加し、分散液を濾過し、2mLのエタノールで3回洗浄して、白色の固体を得た。最後に、固体を70℃、300mbarで2日間加熱して活性化した。
PXRD(2θ):7.7°,10.8°,13.1°,15.0°,16.8°,18.3°,19.9°,21.7°,22.4°,24.8°,25.9°,27.1°,29.1°,30.0°,30.9°,31.8°,32.7°,34.5°,35.3°,36.9°,37.7°,39.2°;
SEM:幅30nmのナノ四角形。
【0126】
例6:MIL 100(Fe)
50mg(0.24mmol)のベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸を70μLのDMSOに溶解し、超音波処理下で100mLの0.1M 臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液に添加し、無色透明の溶液を得た。次いで、3.75mLの0.1M ドデシル硫酸ナトリウムの水溶液および70.7mg(0.72mmol)の酢酸カリウムを得られた水溶液に添加した。これとは別に、62.1mg(0.36mmol)の酢酸鉄(II)を2mLの0.1M CTAB水溶液に溶解した。最後に、これらの溶液を混合した。得られた溶液はゆっくりとオレンジ色に変化した。28℃で7日後、50mLのエタノールを添加し、得られたものを濾過した。沈殿物を2mLのエタノールで3回洗浄して、淡いオレンジ色の粉末を得た。最後に、固体を70°C、300mbarで2日間加熱して活性化した。
PXRD(2θ):3.5°,4.0°,4.8°,6.2°,10.2°,11.0°,12.5°。
SEM:多分散性の高いナノフレーク。
【0127】
例7:比較
Yichang Pan et al(上記で引用)に記載されている実験を繰り返す。
【0128】
80nmの粒子(DLSで決定)を含むわずかに濁った白い懸濁液が形成される。サイズが変わらずに安定なのは1週間だけである。
【0129】
これは、Yichang Pan et alのプロトコルに従った場合には、コロイド分散液が得られないことを示している。
図1
図2
図3
図4