IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イルミナ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7526678第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ
<>
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図1
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図2
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図3
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図4A
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図4B
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図5
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図6A
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図6B
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図7
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図8
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図9A
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図9B
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図10
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図11
  • 特許-第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】第1接着層及び第2接着層を有するインターポーザ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20240725BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240725BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240725BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240725BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240725BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20240725BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240725BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240725BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240725BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20240725BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240725BHJP
【FI】
G01N35/08 E
G01N21/05
G01N37/00 102
B32B7/12
B32B27/30 A
B32B3/24 Z
C09J201/00
C09J133/00
H01L25/08 H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020572873
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 IB2019055512
(87)【国際公開番号】W WO2020008316
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】62/693,762
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2021377
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】マクスウェル・ジマーリー
(72)【発明者】
【氏名】リャンリャン・チアン
(72)【発明者】
【氏名】シェイン・エム・ボーウェン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・エイチ・モディアノ
(72)【発明者】
【氏名】ダージュン・ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ランドール・スミス
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・ジェイ・ピテラ
(72)【発明者】
【氏名】ハイ・クアン・トラン
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド・クラインドル
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115863(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196912(US,A1)
【文献】特表2016-533283(JP,A)
【文献】特表2009-500278(JP,A)
【文献】国際公開第2018/032112(WO,A1)
【文献】特表2015-523577(JP,A)
【文献】特開2007-163410(JP,A)
【文献】国際公開第2006/106608(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093303(US,A1)
【文献】特開2015-203044(JP,A)
【文献】登録実用新案第3157523(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0180529(US,A1)
【文献】国際公開第2001/098781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00- 21/01
21/17- 21/61
35/00- 37/00
B32B 1/00- 43/00
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
9/00-201/10
H01L25/00- 25/07
25/10- 25/11
25/16- 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターポーザであって、
第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面を有する基層;
基層の第1表面に配置された第1接着剤層;
第1接着剤層に配置された第1剥離ライナー;
基層の第2表面に配置された第2接着剤層;
第2接着剤層に配置された第2剥離ライナー;並びに
基層、第1接着剤層、第2接着剤層、及び第2剥離ライナーの各々を通る一方、第1剥離ライナーを通らないように延在する複数のマイクロ流体チャネル
を有して成り、
基層は黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んで成り、
第1接着剤層はアクリル系接着剤及び接着促進剤を含んで成り、
第2接着剤層はアクリル系接着剤及び接着促進剤を含んで成る、インターポーザ。
【請求項2】
基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層の全厚が、1~200ミクロンの範囲にある、請求項1に記載のインターポーザ。
【請求項3】
基層が10~100ミクロンの範囲の厚さを有し、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々が5~50ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1又は2に記載のインターポーザ。
【請求項4】
第1接着剤層及び第2接着剤層の各々が、532nmの蛍光標準と比較して0.25a.u.未満の、532nmの励起波長に応答する自家蛍光を有する、請求項1~3のいずれかに記載のインターポーザ。
【請求項5】
第1接着剤層及び第2接着剤層の各々が、635nmの蛍光標準と比較して0.15a.u.未満の、635nmの励起波長に応答する自家蛍光を有する、請求項1~4のいずれかに記載のインターポーザ。
【請求項6】
基層が少なくとも50w/w%の黒色PETを含んで成る、請求項1~5のいずれかに記載のインターポーザ。
【請求項7】
基層が少なくとも80w/w%の黒色PETを含んで成る、請求項1~6のいずれかに記載のインターポーザ。
【請求項8】
第1接着剤層及び第2接着剤層の各々が、少なくとも5w/w%のアクリル系接着剤を含んで成る、請求項1~7のいずれかに記載のインターポーザ。
【請求項9】
第1接着剤層及び第2接着剤層の各々が、少なくとも80w/w%のアクリル系接着剤を含んで成る、請求項1~8のいずれかに記載のインターポーザ。
【請求項10】
第1剥離ライナーが、50~300ミクロンの範囲の厚さを有し;及び
第2剥離ライナーが、25~50ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項に記載のインターポーザ。
【請求項11】
第1剥離ライナーが少なくとも実質的に光学的に不透明であり、第2剥離ライナーが少なくとも実質的に光学的に透明である、請求項又は10に記載のインターポーザ。
【請求項12】
インターポーザを形成することであって、インターポーザが、
第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面を有する基層、
基層の第1表面に配置される第1接着剤層、
第1接着剤層に配置された第1剥離ライナー、
基層の第2表面に配置される第2接着剤層、および
第2接着剤層に配置された第2剥離ライナー
を有して成り、
基層は黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んで成り、
第1接着剤層はアクリル系接着剤及び接着促進剤を含んで成り、
第2接着剤層はアクリル系接着剤及び接着促進剤を含んで成る、
インターポーザを形成すること;並びに
少なくとも基層、第1接着剤層、第2接着剤層、及び第2剥離ライナーを通る一方、第1剥離ライナーを通らないマイクロ流体チャネルを形成すること
を含
マイクロ流体チャネルを形成するステップにおいて、CO レーザーを用いて、第2剥離ライナーを通るようにマイクロ流体チャネルをさらに形成する一方、第1剥離ライナーを通るように形成しない、方法。
【請求項13】
マイクロ流体チャネルを形成することが、COレーザーを用いることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
COレーザーが、5000nm~15000nmの範囲の波長、及び50~150μmの範囲のビーム・サイズを有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
フロー・セルであって、
第1基板;
第2基板;及び
第1基板と第2基板との間に配置された、請求項1~11のいずれかに記載のインターポーザ
を有して成り、
第1接着剤層は基層の第1表面を第1基板の表面に結合し、第2接着剤層は基層の第2表面を第2基板の表面に結合する、フロー・セル。
【請求項16】
第1基板及び第2基板の各々がガラスを含んで成り、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々と、第1基板及び第2基板のそれぞれの表面との間の結合が、50N/cmより大きい剪断応力、及び1N/cmより大きい剥離力に耐えるように適合される、請求項15に記載のフロー・セル。
【請求項17】
第1基板及び第2基板の各々が、1ミクロン未満の厚さであって、第1接着剤層及び第2接着剤層のそれぞれに結合される表面を含む樹脂層を有して成り、樹脂層の各々と第1接着剤層及び第2接着剤層のそれぞれとの間の結合は、50N/cmより大きい剪断応力、及び1N/cmより大きい剥離力に耐えるように適合される、請求項15又は16に記載のフロー・セル。
【請求項18】
複数のウェルが、第1基板又は第2基板の少なくとも一方の樹脂層にインプリントされ、生体プローブが複数のウェルの各々に配置され、
インターポーザのマイクロ流体チャネルが、複数のウェルに流体を移送するようになっている、請求項1517のいずれかに記載のフロー・セル。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年7月3日に出願された米国仮出願第62/693,762号の利益を主張し、2018年7月23日に出願されたオランダ特許出願第NL2021377号の優先権を主張し、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的又は化学的研究における様々なプロトコルには、局所的な支持表面又は事前定義された反応チャンバー内で多くの制御された反応を実施することが含まれる。次いで、所望の反応は観察又は検出され、その後の分析は、反応に含まれる化学物質の特性を特定又は明らかにすることを助力し得る。例えば、いくつかのマルチプレックス・アッセイにおいて、識別可能な標識(例えば、蛍光標識)を有する未知の分析物は、制御された条件下で数千の既知のプローブに曝露され得る。既知の各プローブは、マイクロプレートの対応するウェルに堆積され得る。ウェル内の既知のプローブと未知の分析物との間で発生するいずれの化学反応を観察することは、分析物の特性を特定又は明らかにすることを助力し得る。このようなプロトコルの他の例には、合成による配列決定又はサイクリック・アレイ・シーケンシングなどのDNA配列決定プロセスが含まれる。サイクリック・アレイ・シーケシングにおいて、DNAの特徴の高密度アレイ(例えば、テンプレート核酸)は、酵素的操作の反復サイクルを介して配列決定され得る。各サイクル後、画像が捕捉され、続いて、DNAの特徴の配列を決定するために他の画像で分析され得る。
【0003】
マイクロ流体技術の進歩により、急速な遺伝子配列決定、若しくはナノリットル又はさらに少量の体積のサンプルを用いる化学分析を実行できるフロー・セルの開発が可能となった。このようなマイクロ流体デバイスは、望ましくは、多数の高圧及び低圧のサイクル、腐食性化学物質への曝露、温度及び湿度の変動に耐え、高い信号対ノイズ比(SNR)を供し得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示で供されるいくつかの実施形態は、一般的にマイクロ流体デバイスに関する。マイクロ流体デバイスの例は、フロー・セルである。本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、一般的にインターポーザを含むマイクロ流体デバイスに関し、特に、黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)及び両面アクリル系接着剤から形成され、それらを通るように規定されるマイクロ流体チャネルを有するインターポーザを含むフロー・セルに関する。インターポーザは、低い自家蛍光、高い剥離強度及び剪断強度を有するように構成されてよく、腐食性化学物質、圧力サイクル及び温度サイクルに耐えることができる。
【0005】
実施形態の第1セットにおいて、インターポーザは、第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面を有する基層を有して成る。基層は、黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んで成る。第1接着剤層は、基層の第1表面に配置される。第1接着剤層は、アクリル系接着剤を含んで成る。第2接着剤層は、基層の第2表面に配置される。第2接着剤層は、アクリル系接着剤を含んで成る。複数のマイクロ流体チャネルは、基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層の各々を通るように延在する。
【0006】
インターポーザのいくつかの実施形態において、基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層の合計の厚さは、約50~約200ミクロンの範囲である。
【0007】
インターポーザのいくつかの実施形態において、基層は約30~約100ミクロンの範囲の厚さを有し、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、約10~約50ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0008】
インターポーザのいくつかの実施形態において、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、532nmの蛍光標準と比較して、約0.25a.u.未満の532nmの励起波長に応答する自家蛍光を有する。
【0009】
インターポーザのいくつかの実施形態において、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、635nmの蛍光標準と比較して、約0.15a.u.未満の635nmの励起波長に応答する自家蛍光を有する。
【0010】
インターポーザのいくつかの実施形態において、基層は少なくとも約50%の黒色PETを含んで成る。いくつかの実施形態において、基層は本質的に黒色PETから成る。
【0011】
インターポーザのいくつかの実施形態において、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、少なくとも約10%のアクリル系接着剤で作られる。
【0012】
インターポーザのいくつかの実施形態において、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、本質的にアクリル系接着剤から成る。
【0013】
いくつかの実施形態において、フロー・セルは、第1基板、第2基板、及び上述のインターポーザのいずれか1つを有して成る。
【0014】
フロー・セルのいくつかの実施形態において、第1基板及び第2基板の各々はガラスを含んで成る。それによって、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々と、第1基板及び第2基板のそれぞれの表面との間の結合は、約50N/cmより大きい剪断応力及び約1N/cmより大きい180度剥離力に耐えるように適合される。
【0015】
フロー・セルのいくつかの実施形態において、第1基板及び第2基板の各々は樹脂層を有して成り、該樹脂層は、1ミクロン未満の厚さで、第1接着剤層及び第2接着剤層のそれぞれに結合される表面を含む。それによって、樹脂層の各々と第1接着剤層及び第2接着剤層のそれぞれとの間の結合は、約50N/cmより大きい剪断応力及び約1N/cmより大きい剥離力に耐えるように適合される。
【0016】
フロー・セルのいくつかの実施形態において、複数のウェル(又は縦穴、well)は、第1基板又は第2基板の少なくとも一方の樹脂層にインプリントされる(imprint)。生体プローブは複数のウェルの各々に配置され、インターポーザのマイクロ流体チャネルは、複数のウェルに流体を送達するように構成される。
【0017】
実施形態の別のセットにおいて、インターポーザは、第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面を有する基層を有して成る。第1接着剤層は、基層の第1表面に配置される。第1剥離ライナー(release liner)は、第1接着剤層に配置される。第2接着剤層は、基層の第2表面に配置される。第2剥離ライナーは、第2接着剤層に配置される。複数のマイクロ流体チャネルは、基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層、並びに第2剥離ライナーの各々を通るように延在する一方、第1剥離ライナーは通らない。
【0018】
インターポーザのいくつかの実施形態において、第1剥離ライナーは約50~約300ミクロンの範囲の厚さを有し、第2剥離ライナーは約25~約50ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0019】
インターポーザのいくつかの実施形態において、基層は黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んで成り;第1接着剤層及び第2接着剤層の各々はアクリル系接着剤を含んで成る。
【0020】
インターポーザのいくつかの実施形態において、第1剥離ライナーは、少なくとも実質的に光学的に不透明であり、第2剥離ライナーは、少なくとも実質的に光学的に透明である。
【0021】
上述及び本明細書で説明されるインターポーザ及びフロー・セルは、本開示において後述されるような利点を達成するため、いずれの組合せでも実施されてよい。
【0022】
実施形態のさらに別のセットにおいて、マイクロ流体チャネルをパターン化する方法は、第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面を有する基層を有して成るインターポーザを形成することを含む。基層は、黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んで成る。第1接着剤層は基層の第1表面に配置され、第1接着剤層はアクリル系接着剤を含んで成り、第2接着剤層は基層の第2表面に配置され、第2接着剤層はアクリル系接着剤を含んで成る。マイクロ流体チャネルは、基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層を少なくとも通るように形成される。
【0023】
方法のいくつかの実施形態において、マイクロ流体チャネルを形成することは、COレーザーを用いることを伴う。
【0024】
いくつかの実施形態において、インターポーザは、第1接着剤層に配置される第1剥離ライナー、及び第2接着剤層に配置される第2剥離ライナーをさらに有して成る。いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルを形成するステップにおいて、マイクロ流体チャネルは、COレーザーを用いて第2剥離ライナーを通るようにさらに形成される一方、第1剥離ライナーを通るように形成されない。
【0025】
方法のいくつかの実施形態において、COレーザーは約5000nm~約15000nmの範囲の波長、及び約50~約150μmの範囲のビーム・サイズを有する。
【0026】
上述及び本明細書で説明される方法は、本開示で後述されるような利益を達成するために、いずれの組合せでも実施されてよい。
【0027】
インターポーザ、フロー・セル、及び方法を含む上述の実施形態の全ては、本開示で後述されるような利益を達成するため、いずれの構成でも組み合され得る。さらに、前述の実施形態、及び以下により詳細に説明される追加の実施形態は(そのような概念が相互に矛盾しない条件で)、本明細書で開示される主題の一部であると考えられ、いずれの構成でも組み合され得る。
【0028】
本明細書は、多くの特定の実施形態の詳細を含むものの、これらは、いずれの発明又は特許請求され得るものの範囲の制限ではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に固有である特徴の説明と解釈されるべきである。また、別個の実施形態の文脈において本明細書で説明されるある特徴も、単一の実施形態で組み合わせて実施され得る。反対に、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴も、別個に、又はいずれの適当なサブコンビネーションにおいて、複数の実施形態で実施され得る。さらに、特徴は、ある組合せで動作すると上述される可能性があり、当初そのように特許請求すらされ得るものの、特許請求される組合せからの1つ又はそれより多くの特徴は、場合によっては組合せから削除される可能性があり、特許請求される組合せは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変更に向けられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本開示の前述及び他の特徴は、添付の図面と併せて、後述の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。これらの図面は、本開示に従ういくつかの実装のみを示し、したがって、その範囲を制限すると見なされるべきではないことを理解し、添付の図面を用いることにより、本開示はさらに具体的及び詳細に説明される。
【0030】
図1図1は、実施形態に従う例示的なフロー・セルの概略図である。
図2図2は、実施形態に従う、フロー・セルにおける使用のための例示的なインターポーザの概略図である。
図3図3は、別の実施形態に従う例示的なフロー・セルの概略図である。
図4A図4Aは、実施形態に従う、複数のフロー・セルを含む例示的なウェハ・アッセンブリの上面斜視図である。
図4B図4Bは、図4に示したラインA-Aに沿った図4Aのウェハ・アッセンブリの側面断面図である。
図5図5は、実施形態に従う、フロー・セルのインターポーザを形成する例示的な方法のフロー図である。
図6A図6Aは、例示的な結合及びパターン化されたフロー・セルの断面の概略図である。
図6B図6Bは、様々な基層及び接着剤の性能を試験するために用いられる、結合され、パターン化されていない例示的なフロー・セルの断面の概略図である。
図7図7は、様々な接着剤及びフロー・セル材料の赤色チャネルにおける蛍光強度の棒グラフである。
図8図8は、図7の様々な接着剤及びフロー・セル材料の緑色チャネルにおける蛍光強度の棒グラフである。
図9A図9Aは、ガラス基層に配置された様々な接着剤のラップ剪断強度を決定するための、例示的なラップ剪断試験の構成の概略図を示す。
図9B図9Bは、ガラス基層に配置された様々な接着剤の剥離強度を決定するための、例示的な剥離試験の構成の概略図を示す。
図10図10は、アクリル系接着剤及びスコッチ・テープの例示的なフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルである。
図11図11は、アクリル系接着剤及びブラック・カプトンの例示的なガス・クロマトグラフィー(GC)スペクトルである。
図12図12は、アクリル系接着剤から放出されたアウトガス化合物及び可能な化学構造のアウトガス化合物の例示的な質量分析(MS)スペクトルである。
【0031】
以下の詳細な説明の全体を通して、添付の図面を参照する。図面において、文脈に別段指示がない限り、一般的に同様の記号は同様の構成要素を識別する。詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲で説明される例示的な実施形態は、限定することを意味しない。ここで開示される主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてよく、他の変更がなされてよい。本明細書で一般的に説明され、図に示される本開示の態様は、幅広く様々な異なる構成で配置、置換、組み合わせ、及び設計され得るものであり、その全ては明示的に企図され、本開示の一部にされるということが容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で供されるのは、マイクロ流体デバイスの例示である。一般的に、本明細書で説明される実施形態は、インターポーザを含むマイクロ流体デバイス、特に、黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)及び両面アクリル系接着剤から形成され、それらを通るように規定されるマイクロ流体チャネルを有するインターポーザを含むフロー・セルに関する。インターポーザは、比較的低い自家蛍光、比較的高い剥離及び比較的高い剪断強度を有するように構成され、腐食性化学物質、圧力及び温度サイクルに耐え得る。
【0033】
マイクロ流体技術の進歩により、ナノリットル又はより小さいサンプル体積を用いて迅速な遺伝子配列決定又は化学分析を実行できるフロー・セルの開発が可能となった。このようなマイクロ流体デバイスは、多数の高圧及び低圧サイクル、腐食性化学物質への曝露、温度及び湿度の変動に耐えることが可能であり、高い信号対ノイズ比(SNR)を供するべきである。例えば、フロー・セルは接着剤を介して共に結合(又は接合、bond)される様々な層を有して成ってよい。高スループット作製プロセス(high throughput fabrication process)においてフロー・セルを形成するため、様々な層が共に作製又は結合されるように様々な層を構造化することが望ましい。さらに、様々な層は温度及び圧力のサイクル、腐食性化学物質に耐えることが可能であり、ノイズに大きく寄与しないべきである。
【0034】
両面接着剤を有するインターポーザを含み、それを通るようにマイクロ流体チャネルを規定する、本明細書で説明されるフロー・セルの実施形態により、以下を含む利点が供される。例えば、(1)複数のフロー・セルのウエハ・スケール・アッセンブリ(wafer scale assembly)が可能となり、したがって高スループット作製が可能となる;(2)低い自家蛍光、高いラップ剪断強度(又は重ね剪断強度、lap shear strength)、剥離強度及び耐食性を供し、高いSNRを有する試験データを供しながら高いpHで300回以上の熱サイクルを通して保ち得る;(3)マイクロ流体デバイスに規定されるマイクロ流体チャネルを有する平坦なインターポーザを用いることにより、平坦で光学的に調査可能なマイクロ流体デバイスの作製が可能となる;(4)両面接着剤インターポーザを介する2つの樹脂コーティングされた基板の結合が可能となる;(5)1つ又はそれより多くの不透明な表面を含むマイクロ流体デバイスの結合が可能となる。
【0035】
図1は、実施形態に従うフロー・セル[100]の概略図である。フロー・セル[100]は、いずれの適当な生物学的、生化学的、又は化学的分析にも用いられてよい。例えば、フロー・セル[100]は遺伝子配列決定(例えば、DNA又はRNA)又はエピジェネティック・マイクロアレイ(epigenetic microarray)を含んでよく、若しくは高スループット薬物スクリーニング、DNA又はタンパク質のフィンガープリンティング、プロテオミクス分析、化学検出、いずれの他の適当な用途又はそれらの組合せのために構成されてよい。
【0036】
フロー・セル[100]には、第1基板[110]、第2基板[120]及び第1基板[110]と第2基板[120]との間に配置されたインターポーザ[130]が含まれる。第1基板[110]及び第2基板[120]は、いずれの適当な材料、例えば、二酸化ケイ素、ガラス、石英、パイレックス、溶融シリカ、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、ポリマー、TEFLON(登録商標)、カプトン(Kapton)(すなわち、ポリイミド)、紙ベース材料(例えば、セルロース、段ボールなど)、セラミック(例えば、炭化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウムなど)、相補的金属酸化物半導体(CMOS)材料(例えば、シリコン、ゲルマニウムなど)、又はいずれの他の適当な材料も含んで成ってよい。いくつかの実施形態において、第1基板[110]及び/又は第2基板[120]は、光学的に透明であってよい。他の実施形態において、第1基板[110]及び/又は第2基板[120]は、光学的に不透明であってよい。図示されていないものの、第1基板[110]及び/又は第2基板[120]は、インターポーザ[130]において規定されるマイクロ流体チャネル[138]に、及び/又はそこから流体をポンプ輸送するための流体入口又は流体出口を規定してよい。本明細書で説明されるように、「マイクロ流体チャネル」という用語は、流体チャネルの少なくとも1つの寸法(例えば、長さ、幅、高さ、半径又は断面)が1000ミクロン未満であることを意味する。
【0037】
様々な実施形態において、複数の生体プローブは、インターポーザ[130]に近接して位置付けられる第1基板[110]の表面[111]及び/又は第2基板[120]の表面[121]に配置されてよい。生体プローブは、表面[111]及び/又は[121]にいずれの適当なアレイでも配置されてよく、例えば、DNAプローブ、RNAプローブ、抗体、抗原、酵素又は細胞を含んでよい。いくつかの実施形態において、化学的又は生物学的分析物は、表面[111]及び/又は[121]に配置されてよい。生体プローブは、第1基板[110]及び第2基板[120]の表面[111]及び/又は[121]に、それぞれゲル(例えば、ヒドロゲル)に共有結合、又はゲルに固定化されてよい。生物学的プローブは、蛍光分子(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、エオシン・イエロー、ルミノール、フルオレセイン、蛍光赤色及びオレンジ標識、ローダミン誘導体、金属複合体、又は他の蛍光分子)でタグ付与されてよく、若しくは蛍光タグ付与された標的生物製剤と結合してよい。それによって、例えばDNA配列決定のために生物製剤を検出(例えば、存在又は非存在を決定)又は感知(例えば、量を測定)するために光学蛍光が用いられ得る。
【0038】
インターポーザ[130]には、第1基板[110]に面する第1表面[133]と、第1表面[133]の反対側で第2基板[120]に面する第2表面[135]とを有する基層[132]が含まれる。基層[132]には、黒色PETが含まれる。いくつかの実施形態において、基層[132]には少なくとも約50%の黒色PET、又は少なくとも約80%の黒色PETが含まれてよく、残部は透明PET又は他のプラスチック若しくはポリマーである。他の実施形態において、基層[132]は本質的に黒色PETから成ってよい。さらに他の実施形態では、基層[132]は黒色PETから成ってよい。黒色PETは、ノイズを低減して高いコントラストを供するため、低い自家蛍光を有し得るため、高いSNRを有するフロー・セルの蛍光イメージング(又は画像化、imaging)が可能となる。
【0039】
第1接着剤層[134]は、基層[132]の第1表面[133]に配置される。第1接着剤層[134]には、アクリル系接着剤(例えば、メタクリル又はメタクリレート接着剤)が含まれる。さらに、第2接着剤層[136]は、基層[132]の第2表面[135]に配置される。また、第2接着剤層[136]にもアクリル系接着剤(例えば、メタクリル又はメタクリレート接着剤)が含まれる。例えば、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]の各々には、少なくとも約10%のアクリル系接着剤、又は少なくとも約50%のアクリル系接着剤、若しくは少なくとも約80%のアクリル系接着剤が含まれてよい。いくつかの実施形態において、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]は、本質的にアクリル系接着剤から成ってよい。いくつかの実施形態において、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]は、アクリル系接着剤から成ってよい。特定の実施形態では、アクリル系接着剤には、ADHESIVES RESEARCH(登録商標)から入手可能である商品名MA-61A(商標)で入手可能な接着剤が含まれてよい。第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]に含まれるアクリル系接着剤は、適当な圧力の適用を介してインターポーザ[130]の基層[132]を基板[110]及び[120]に結合可能とするために、感圧性であってよい。他の実施形態において、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]は、熱、紫外(UV)光又は他のいずれの活性化刺激を介して活性化されるように編成(又は配合若しくは考案、formulate)されてよい。さらに他の実施形態では、第1接着剤層[134]及び/又は第2接着剤層[136]には、ブチルゴムが含まれてよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]の各々は、532nmの蛍光標準と比較して約0.25任意単位(a.u.)未満の532nmの励起波長(例えば、赤色励起レーザー)に応答する自家蛍光を有する。さらに、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]の各々は、635nmの蛍光標準と比較して約0.15a.u.未満の635nmの励起波長(例えば、緑色励起レーザー)に応答する自家蛍光を有してよい。したがって、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]も低い自家蛍光を有し、それによって、黒色PET基層[132]とアクリル系接着剤を含む第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]との組合せは、生体プローブの相互作用部位で生じた蛍光シグナルにほとんど寄与しないため、高いSNRが供される。
【0041】
複数のマイクロ流体チャネルは[138]は、第1接着剤層[134]、基層[132]及び第2接着剤層[136]の各々を通るように延在する。マイクロ流体チャネル[138]は、いずれの適当なプロセス、例えば、レーザー切断(例えば、UVナノ秒パルス・レーザー、UVピコ秒パルス・レーザー、UVフェムト秒パルス・レーザー、COレーザー又はいずれの他の適当なレーザーを用いる)、スタンピング、ダイカット、ウォーター・ジェット・カット、物理的又は化学的エッチング、若しくはいずれの他の適当なプロセスを用いて形成されてよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、マイクロ流体チャネル[138]は、適当な表面仕上げを供しながら、第1接着剤層[134]と第2接着剤層[136]、及び基層[132]の自家蛍光を大幅に増加させないプロセスを用いて規定されてよい。例えば、UVナノ、フェムト、又はピコ秒パルス・レーザーは、迅速な切断、滑らかなエッジ及び角を供することが可能であり得るため、所望の優れた表面仕上げが供されるものの、層において自家蛍光を引き起こし得るアクリル系接着剤層[134]と[136]及び/又は黒色PET基層[132]の表面化学物質を修飾し得る。
【0043】
対照的に、COレーザーは、表面仕上げを供し得る。これは、いくつかの場合ではUVレーザーより劣ると考えられ得るものの、設計パラメータ内を維持する。一方で、接着剤層[134]と[136]及び/又は基層[132]の表面化学を変化させず、そのため、これらの層の自家蛍光の大幅な増加はない。特定の実施形態において、約5000nm~約15000nmの範囲の波長(例えば、約5000、約6000、約7000、約8000、約9000、約10000、約11000、約12000、約13000、約14000、又は約15000nmで、その間の全ての範囲及び値を含む)、及び約50μm~約150μmの範囲のビーム・サイズ(例えば、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140又は約150μmで、その間の全ての範囲及び値を含む)を有するCOレーザーは、第1接着剤層[134]、基層[132]、及び第2接着剤層[136]を通るようにマイクロ流体チャネル[138]を規定するために用いられてよい。
【0044】
図1に示すように、第1接着剤層[134]は、基層[132]の第1表面[133]を第1基板[110]の表面[111]に結合する。さらに、第2接着剤層[136]は基層[132]の第2表面[135]を第2基板[120]の表面[121]に結合する。様々な実施形態において、第1基板[110]及び第2基板[120]はガラスを含んで成ってよい。第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]の各々と、第1基板[110]及び第2基板[120]のそれぞれの表面[111]及び[121]との間の結合は、約50N/cmより大きな剪断応力、及び約1N/cmより大きな180°剥離力に耐えるように適合されてよい。様々な実施形態では、結合は、マイクロ流体チャネル[138]において最大約15psi(約103500パスカル)の圧力に耐えることが可能であり得る。
【0045】
例えば、接着剤層[134]及び[136]の剪断強度及び剥離強度は、それらの化学的配合及び基層[132]に対するそれらの厚さの関数であってよい。第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]に含まれるアクリル系接着剤により、それぞれ、基層[132]の第1表面[133]及び第2表面[135]と、第1基板[110]及び第2基板[120]の表面[111]及び[120]との強い接着が供される。さらに、基板[110]及び[120]と基層[132]との間の強い結合を得るため、基層[132]に対する接着剤層[134]及び[136]の厚さは、基板[110]及び[120]に加えられた剥離及び/又は剪断応力の大部分を基層[132]に伝達するように選択されてよい。
【0046】
接着剤層[134]及び[136]が薄すぎる場合、マイクロ流体チャネル[138]を介する加圧流体の流れによってフロー・セル[100]が受け得る多くの圧力サイクルに耐えるために十分な剥離及び剪断強度が供されない可能性がある。一方で、厚すぎる接着剤層[134]及び[136]は、接着剤層[134]及び[136]にボイド(又は空隙、void)又は気泡の形成をもたらす可能性があり、これによってそれらの剪断強度が弱められる。さらに、ストレス(又は負荷、stress)及び剪断応力の大部分は、接着剤層[134]及び[136]に作用し得るものであって、基層[132]に伝達されない。これによって、接着剤層[134]及び/又は[136]の破断(又は割れ、rupture)によるフロー・セルの故障がもたらされ得る。
【0047】
様々な配置において、基層[132]は約25~約100ミクロンの範囲の厚さを有してよく、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]の各々は、約5~約50ミクロンの範囲の厚さ(例えば、約5、約10、約20、約30、約40又は約50ミクロン、その間の全ての範囲及び値を含む)を有してよい。このような配置により、十分な剥離強度及び剪断強度が供されてよく、例えば、多くの圧力サイクル、例えば、100の圧力サイクル、200の圧力サイクル、300の圧力サイクル又はそれより多くに耐えるのに十分な、約50N/cmより大きな剪断応力及び約1N/cmより大きな剥離力に耐える能力が供され得る。特定の配置において、基層[132]、第1接着剤層[134]、及び第2接着剤層[136]の全厚は、約50~約200ミクロンの範囲(例えば、約50、約100、約150、又は約200ミクロン、これらの間の全ての範囲及び値を含む)であってよい。
【0048】
また、様々な実施形態において、例えば、接着剤層[134]及び[136]と対応する表面[111]及び[121]との間の接着を促進するため、接着促進剤が第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]に含まれてよく、及び/又は基板[110]及び[120]の表面[111]及び[121]にコーティングされてよい。適当な接着促進剤には、例えば、シラン、チタン酸塩、イソシアネート、いずれの他の適当な接着促進剤又はそれらの組合せが含まれてよい。
【0049】
本明細書で前述されたように、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]は、多くの圧力サイクルに耐え、低い自家蛍光を有するように編成されてよい。また、作動中に、フロー・セルは、熱サイクル(例えば、約-80℃~約100℃)、高いpH(例えば、最大約11のpH)、真空及び腐食性試薬(例えば、ホルムアミド、バッファー剤及び塩)に曝露され得る。様々な実施形態において、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]は、約-80℃~約100℃の範囲の熱サイクルに耐え、真空においてもボイド形成を阻害し、最大約11のpH又はホルムアミドなどの腐食性試薬に曝露された際の腐食を阻害するように編成されてよい。
【0050】
図2は、実施形態に従う、インターポーザ[230]の概略図である。インターポーザ[230]は、フロー・セル[100]又は本明細書で説明されるいずれの他のフロー・セルにおいても用いられてよい。インターポーザ[230]には、フロー・セル[100]に含まれるインターポーザ[130]に関して詳細に説明された、基層[132]、第1接着剤層[134]、及び第2接着剤層[136]が含まれる。第1接着剤層[134]は基層[132]の第1表面[133]に配置され、第2接着剤層[136]は第1表面[133]とは反対側の基層[132]の第2表面[135]に配置される。本明細書で前述したように、基層[132]には黒色PETが含まれてよく、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]の各々にはアクリル系接着剤が含まれてよい。さらに、基層[132]は、約30~約100ミクロンの範囲(約30、約50、約70、約90又は約100ミクロン、その間の全ての範囲及び値を含む)の厚さBを有してよく、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]の各々は、約5~約50ミクロンの範囲(例えば、約5、約10、約20、約30、約40、又は約50ミクロンで、その間の全ての範囲及び値を含む)の厚さAを有してよい。
【0051】
第1剥離ライナー(release liner)[237]は、第1接着剤層[134]に配置されてよい。さらに、第2剥離ライナー[239]は第2接着剤層[136]に配置されてよい。第1剥離ライナー[237]及び第2剥離ライナー[239]は、それぞれ第1剥離ライナー[237]及び第2剥離ライナー[239]の保護層として役立ってよく、例えば、基層[132]を第1基板[110]及び第2基板[120]にそれぞれ結合するため、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]が曝露するように、選択的に剥離される、又は機械的に除去されるように構成されてよい。
【0052】
第1剥離ライナー[237]及び第2剥離ライナー[239]は、紙(例えば、スーパー・カレンダー・クラフト(SCK、super calendared Kraft)紙、ポリビニルアルコール・コーティングを有するSCK紙、クレイ・コート・クラフト紙、機械仕上げクラフト紙、片艶紙(machine glazed paper)、ポリオレフィン・コート・クラフト紙など)、プラスチック(例えば、二軸配向PETフィルム、二軸配向ポリプロピレン・フィルム、ポリオレフィン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン・プラスチック樹脂など)、布(例えば、ポリエステル)、ナイロン、テフロン(登録商標)又はいずれの他の適当な材料から形成されてよい。いくつかの実施形態において、剥離ライナー[237]及び[239]は、それぞれの接着剤層[134]及び[136]からの剥離ライナー[237]及び[239]の剥離を容易にするため、低表面エネルギー材料(例えば、本明細書で説明されるいずれかの材料)から形成されてよい。他の実施形態において、低表面エネルギー材料(例えば、シリコン、ワックス、ポリオレフィンなど)は、それぞれの接着剤層[134]及び[136]からの剥離ライナー[237]及び[239]の剥離を容易にするため、少なくとも接着剤層[134]及び[136]それぞれに配置される剥離ライナー[237]及び[239]の表面にコーティングされてよい。
【0053】
複数のマイクロ流体チャネル[238]は、基層[132]、第1接着剤層[134]、第2接着剤層[136]、及び第2剥離ライナー[239]の各々を通るように延在する一方、第1剥離ライナー[237]は通らない。例えば、第2剥離ライナー[239]はインターポーザ[230]の上部の剥離ライナーであってよく、第1剥離ライナー[237]ではなく第2剥離ライナー[239]を通るようにマイクロ流体チャネル[238]を規定してよい。これは、ユーザーにインターポーザの方向を示し得るものであり、それによって、フロー・セル(例えば、フロー・セル[100])の作製中にユーザーを助ける(又は容易にする、facilitate)。さらに、フロー・セル(例えば、フロー・セル[100])の作製プロセスは、基板(例えば、第2基板[220])への結合のため、最初に第2剥離ライナー[239]が第2接着剤層[136]から剥離されるように適合されてよい。続いて、第1剥離ライナー[237]が除去されてよく、第1接着剤層[134]が別の基板(例えば、基板[110])に結合される。
【0054】
第1剥離ライナー[237]及び第2剥離ライナー[239]は、同じ又は異なる厚さを有してよい。いくつかの実施形態において、例えば、インターポーザ[230]に構造的剛性を供するため、第1剥離ライナー[237]は第2剥離ライナー[239]より大幅に厚くてよく(例えば、約2倍、約4倍、約6倍、約8倍、又は約10倍、より厚いものを含む)、ユーザーによるインターポーザ[230]の扱いを容易にするために取り扱い層として役立ち得る。特定の実施形態において、第1剥離ライナー[237]は、約50~約300ミクロンの範囲(例えば、約50、約100、約150、約200、約250又は約300ミクロンで、その間の全ての範囲及び値を含む)の第1厚さL1を有してよく、第2剥離ライナー[239]は、約25~約50ミクロンの範囲(例えば、約25、約30、約35、約40、約45、又は約50ミクロンで、その間の全ての範囲及び値を含む)の第2厚さL2を有してよい。
【0055】
第1剥離ライナー[237]及び第2剥離ライナー[239]は、光学的に不透明、透明又は半透明であってよく、いずれの適当な色を有してよい。いくつかの実施形態において、第1剥離ライナー[237]は少なくとも実質的に光学的に不透明(完全に不透明を含む)であってよく、第2剥離ライナー[239]は少なくとも実質的に光学的に透明(完全に透明を含む)であってよい。本明細書で前述されたように、第2剥離ライナー[239]は、対応する基板(例えば、第2基板[120])への結合のため、最初に第2接着剤層[136]から除去されてよい。第2剥離ライナー[239]に光学的透明性を供することにより、不透明な第1剥離ライナー[237]から第2剥離ライナー[239]を容易に識別することが可能となる。さらに、インターポーザ[230]に規定されるマイクロ流体チャネル[238]を有する基板(例えば、第2基板[120])の光学的な整列(又は配置若しくは位置合わせ、alignment)を容易にするため、実質的に光学的に不透明な第2剥離ライナー[239]によって適当なコントラストが供され得る。さらに、第1剥離ライナー[237]より薄い第2剥離ライナー[239]を有することにより、第1剥離ライナー[237]に対して第2剥離ライナー[239]を優先的に剥離することが可能となり、したがって、第2接着剤層[136]から第2剥離ライナー[239]を剥離しながら、第1剥離ライナー[237]の意図的でない剥離が防がれる。
【0056】
いくつかの実施形態において、フロー・セルの1つ又はそれより多くの基板には、そこに規定された複数のウェルが含まれてよく、各ウェルは、そこに配置される生体プローブ(例えば、同じ生体プローブのアレイ又は別個の生体プローブ)を有する。いくつかの実施形態において、複数のウェルは1つ又はそれより多くの基板にエッチングされてよい。例えば、基板(例えば、基板[110]又は[120])にはガラスが含まれてよく、ウェルのアレイは、ウェット・エッチング(例えば、緩衝フッ化水素酸エッチング)又はドライ・エッチング(例えば、反応性イオン・エッチング(RIE)又はディープRIEを使用する)を用いて基板にエッチングされる。
【0057】
他の実施形態において、複数のウェルは、基板の表面に配置される樹脂層に形成されてよい。例えば、図3は、実施形態に従うフロー・セル[300]の概略図である。本明細書で詳細に前述されたように、フロー・セル[300]には、基層[132]、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]を含み、そこを通るように規定される複数のマイクロ流体チャネル[138]を有するインターポーザ[130]が含まれる。
【0058】
また、フロー・セル[300]には、第1基板[310]及び第2基板[320]が含まれ、その間に配置されるインターポーザ[132]を有する。第1基板[310]及び第2基板[320]は、いずれの適当な材料、例えば、二酸化ケイ素、ガラス、石英、パイレックス、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリマー、TEFLON(登録商標)、カプトン又はいずれの他の適当な材料から形成されてよい。いくつかの実施形態において、第1基板[310]及び/又は第2基板[320]は透明であってよい。他の実施形態において、第1基板[310]及び/又は第2基板[320]は不透明であってよい。図3に示すように、第2基板[320](例えば、上部の基板)は、マイクロ流体チャネル[138]に連通するための流体入口[323]、及びマイクロ流体チャネル[138]から流体を排出可能とするための流体出口[325]を規定する。単一の流体入口[323]及び単一の流体出口[325]を含むように示されているものの、様々な実施形態において、複数の流体入口及び/又は出口は第2基板[320]に規定されてよい。さらに、流体入口及び/又は出口は第1基板[310](例えば、底部の基板)にも供されてよい。特定の実施形態において、第1基板[310]は実質的に第2基板[320]より厚くてよい。例えば、第1基板[310]は約350~約500ミクロンの範囲(例えば、約350、約400、約450又は約500ミクロンで、その間の全ての範囲及び値を含む)の厚さを有してよく、第2基板[320]は、約50~約200ミクロンの範囲(例えば、約50、約100、約150又は約200ミクロンで、その間の全ての範囲及び値を含む)の厚さを有してよい。
【0059】
第1基板[310]には、インターポーザ[130]に面するその表面[311]に配置される第1樹脂層[312]が含まれる。さらに、第2樹脂層[322]は、インターポーザ[130]に面する第2基板[320]の表面[321]に配置される。第1樹脂層[312]及び第2樹脂層[322]には、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、グリセロール1,3-ジグリセロレートジアクリレート(GDD)、インガキュア907、ローダミン6Gテトラフルオロボレート、UV硬化性樹脂(例えば、ノボラック・エポキシ樹脂、PAK-01など)、いずれの他の適当な樹脂又はそれらの組合せが含まれてよい。特定の実施形態において、樹脂層[312]及び[322]には、ナノインプリント・リソグラフィ(NIL)樹脂(例えば、PMMA)が含まれてよい。
【0060】
様々な実施形態において、樹脂層[312]及び[322]は約1ミクロン未満の厚さであってよく、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]のそれぞれに結合される。第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]は、樹脂層[312]及び[322]の各々と、第1接着剤層[134]及び第2接着剤層[136]のそれぞれとの間の結合が、約50N/cmより大きな剪断応力及び約1N/cmより大きな剥離力に耐えるために適合されるように編成される。したがって、接着剤層[134]及び[136]は、それぞれの基板[310]及び[320]、若しくはそこに配置される対応する樹脂層[312]及び[322]との直接的な十分に強い結合を形成する。
【0061】
複数のウェル[314]は、NILによって第1樹脂層[312]に形成される。また、複数のウェル[324]は、NILによって第2樹脂層[322]にも形成されてよい。他の実施形態において、複数のウェル[314]は、第1樹脂層[312]、第2樹脂層[322]、又は両方に形成されてよい。複数のウェルは、約50ミクロン又はそれより小さい直径又は断面を有してよい。生体プローブ(図示せず)は、複数のウェル[314]及び[324]の各々に配置されてよい。生体プローブには、例えば、DNAプローブ、RNAプローブ、抗体、抗原、酵素又は細胞が含まれてよい。いくつかの実施形態において、化学的又は生物学的分析物が、追加的又は代替的に複数のウェル[314]及び[324]に配置されてよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]には、第1領域及び第2領域が含まれてよい。第1領域には、官能化分子(例えば、オリゴヌクレオチドなどの生体プローブ)の共有結合のための反応性部位を供する第1の複数の官能基を有する第1ポリマー層が含まれてよい。また、第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]は、第1ポリマー層及び第2ポリマー層を含む第2領域を有してよく、第2ポリマー層は、第1ポリマー層の上部にあるか、直接隣接するか、又は隣接する。第2ポリマー層は、下にある第1ポリマー層を完全に覆ってよく、必要に応じて第2の複数の官能基を供してよい。また、いくつかの実施形態において、第2ポリマー層が第1ポリマー層の一部のみを覆い得ることも認識されるべきである。いくつかの実施形態において、第2ポリマー層は、第1ポリマー層の実質的な部分を覆い、該実質的な部分には、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%より大きい第1ポリマー層の被覆率、又はいずれかの前述の2つの値によって規定される範囲が含まれる。いくつかの実施形態において、第1ポリマー層及び第2ポリマー層には、ケイ素又は酸化ケイ素は含まれない。
【0063】
いくつかの実施形態において、第1領域はパターン化される。いくつかの実施形態において、第1領域には、マイクロスケール又はナノスケールのパターンが含まれてよい。いくつかのそのような実施形態において、第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]に、チャネル、トレンチ(又は溝、trench)、ポスト、ウェル、又はそれらの組合せをマクロスケール又はナノスケールでパターン化する。例えば、パターンには複数のウェル又はアレイを形成する他の特徴が含まれてよい。高密度アレイは、約15μm未満で分離された特徴を有することを特徴とする。中密度アレイは、約15~約30μm分離された特徴を有し、一方で低密度アレイは約30μmより大きく分離されたサイトを有する。本明細書で有用なアレイは、例えば、約100μm、約50μm、約10μm、約5μm、約1μm、又は約0.5μm、若しくはいずれかの前述の2つの値によって規定される範囲で分離された特徴を有し得る。
【0064】
特定の実施形態において、第1樹脂層[312]及び第2樹脂層[322]で規定される特徴は、約100nm、約250nm、約500nm、約1μm、約2.5μm、約5μm、約10μm、約100μm、又は約500μmより大きい、若しくは前述の2つの値のいずれかによって規定される範囲の面積を各々有し得る。代替的に又は追加的に、特徴は、約1mm、約500μm、約100μm、約25μm、約10μm、約5μm、約1μm、約500nm、又は約100nmより小さい、若しくはいずれかの前述の2つの値によって規定される範囲の面積を各々有し得る。
【0065】
図3に示すように、第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]には、複数のウェル[314]及び[324]が含まれるものの、少なくとも約10、約100、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、又はそれより多くの特徴、若しくはいずれかの前述の2つの値によって規定される範囲の特徴を含む、他の特徴又はパターンも含まれ得る。代替的又は追加的に、第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]には、多くとも約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約100、約10又はそれより少ない特徴、若しくはいずれかの前述の2つの値によって規定される範囲の特徴が含まれ得る。いくつかの実施形態において、第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]において規定されるパターンの平均ピッチは、例えば、少なくとも約10nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、約100μm以上、若しくはいずれかの前述の2つの値によって規定される範囲であり得る。代替的又は追加的に、平均ピッチは、例えば、大きくとも約100μm、約10μm、約5μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μm以下、若しくはいずれかの前述の2つの値によって規定される範囲であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、第1領域は親水性である。いくつかの他の実施形態において、第1領域は疎水性である。第2領域は、同様に親水性又は疎水性であり得る。特定の場合において、第1領域及び第2領域は、疎水性及び親水性に関して反対の特徴を有する。いくつかの実施形態において、第1ポリマー層の第1の複数の官能基は、C8~14シクロアルケン、8~14員のヘテロシクロアルケン、C8~14シクロアルキン、8~14員のヘテロシクロアルキン、アルキニル、ビニル、ハロ、アジド、アミノ、アミド、エポキシ、グリシジル、カルボキシル、ヒドラゾニル、ヒドラジニル、ヒドロキシ、テトラゾリル、テトラジニル、ニトリルオキシド、ニトレン、ニトロン、又はチオール、若しくは必要に応じて置換された変異体及びそれらの組合せから選択される。いくつかのそのような実施形態において、第1の複数の官能基は、ハロ、アジド、アルキニル、カルボキシル、エポキシ、グリシジル、ノルボルネン、又はアミノ、若しくは必要に応じて置換された変異体及びそれらの組合せから選択される。
【0067】
いくつかの実施形態において、第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]には、シルセキオキサン・ケージ(「POSS」としても知られる)を含む光硬化性ポリマー組成物が含まれてよい。POSSの例は、Kehagiasら、Microelectronic Engineering 86(2009),776~778頁に記載されているものであり得、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。場合によっては、基板[310]及び[320]とそれらのそれぞれの樹脂層[312]及び[322]との間の接着を促進するためにシランが用いられてよい。最終のポリマー内のモノマーの比(p:q:n:m)は、最初のポリマー配合混合物におけるモノマーの化学量論に依存し得る。シラン分子には、基板[310]又は[320]と接触する第1及び下部ポリマー層に共有結合的に組み込まれ得るエポキシ単位が含まれる。第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]に含まれる第2及び上部ポリマー層は、シランを使用することなく十分な接着を供し得る半硬化第1ポリマー層に堆積されてよい。第1ポリマー層は、それと共に共有結合する第2ポリマー層のモノマー単位に重合を自然に伝播させることになる。
【0068】
ウェル[314]及び[324]の壁におけるアルキレンブロミド基は、さらなる空間的に選択的な機能化のためのアンカー・ポイント(anchor point)として機能してよい。例えば、アルキレンブロミド基は、アジドで被覆されたウェル[314]及び[324]表面を作るため、アジ化ナトリウムと反応させてよい。次いで、このアジド表面は、例えば、銅触媒クリック・ケミストリーを用いてアルキン末端オリゴを捕捉する、又はひずみ促進無触媒クリック・ケミストリー(strain promoted catalyst-free click chemistry)を用いてビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン(BCN)末端オリゴを捕捉するために直接用いられ得る。代替的に、アジ化ナトリウムは、ポリマーにひずみ環部分を供するために、ノルボルネン官能化アミン、若しくはジベンゾシクロオクチン(DIBCO)官能化アミンなどの類似の環ひずみアルケン又はアルキンで置き換えられ得る。その後、表面にプライマーをグラフト化する(graft)ためにテトラジン官能化オリゴと無触媒環ひずみ促進クリック反応を行うことができる。
【0069】
第2光硬化性ポリマー組成物へのグリシドールの付加により、多くのヒドロキシル基を有するポリマー表面が生成され得る。他の実施形態において、アルキレンブロミド基は、第一級臭化物官能化表面を生成するために用いられてよく、これは、ノルボルネンで被覆されたウェル表面を作るため、続いて5-ノルボルネン-2-メタンアミンと反応させることができる。次いで、アジド含有ポリマー、例えば、ポリ(N-(5-アジドアセタミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド)(PAZAM)を、ウェル[314]及び[324]に局在するこのノルボルネン表面に選択的に結合させてよく、さらにアルキン末端オリゴをグラフト化させてよい。また、BCN又はDIBCO末端オリゴなどの環ひずみアルキンも、無触媒ひずみ促進環化付加反応を介して、アルキン末端オリゴの代わりに用いられてよい。基板の隙間領域(interstitial region)を被覆する不活性な第2ポリマー層を用いて、PAZAMカップリング及びグラフト化はウェル[314]及び[324]に局在する。代替的には、テトラジン末端オリゴは、ノルボルネン部分と反応することによって直接ポリマーにグラフト化されてよく、それにより、PAZAMカップリングのステップが排除される。
【0070】
いくつかの実施形態において、第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]に含まれる第1光硬化性ポリマーには、添加剤が含まれてよい。第1樹脂層[312]及び/又は第2樹脂層[322]に含まれる光硬化性ポリマー組成物に用いられてよい添加剤の様々な比限定的な例には、エピブロモヒドリン、グリシドール、グリシジルプロパルギルエーテル、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、3-アジド-1-プロパノール、tert-ブチルN-(2-オキシラニルメチル)カルバメート、プロピオール酸、11-アジド-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-アミン、cis-エポキシサッカ酸、5-ノルボルネン-2-メチルアミン、4-(2-オキシラニルメチル)モルホリン、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、ホスホマイシン二ナトリウム塩、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ[ジメチルシロキサン-コ-(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル)メチルシロキサン]、ポリ[(プロピルメタクリル-ヘプタイソブチル-PSS)-コ-ヒドロキシエチルメタクリレート]、ポリ[(プロピルメタクリル-ヘプタイソブチル-PSS)-コ-(t-ブチルメタクリレート)]、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)エチル]トリメトキシシラン、trans-シクロヘキサンジオリソブチルPOSS、アミノプロピルイソブチルPOSS、オクタテトラメチルアンモニウムPOSS、ポリエチレングリコールPOSS、オクタジメチルシランPOSS、オクタアンモニウムPOSS、オクタマレアミド酸POSS、トリスノルボルネニルイソブチルPOSS、フュームド・シリカ(fumed silica)、界面活性剤、又はそれらの組合せ及び誘導体が含まれる。
【0071】
図3のインターポーザ[130]を参照すると、インターポーザ[130]のマイクロ流体チャネル[138]は、複数のウェル[314]及び[324]に流体を送達するように構成される。例えば、インターポーザ[130]は、マイクロ流体チャネル[138]が対応するウェル[314]及び[324]と整列するように、基板[310]及び[320]に結合されてよい。いくつかの実施形態において、マイクロ流体チャネル[138]は、流体(例えば、血液、プラズマ、植物抽出物、細胞溶解物、唾液、尿など)、反応性化学物質、バッファー、溶媒、蛍光標識、又はいずれの他の溶液を、順次、又は平行して、複数のウェル[314]及び[324]の各々に送達するように構成されてよい。
【0072】
本明細書で説明されるフロー・セルは、バッチ製造に特に適し得る。例えば、図4Aは、複数のフロー・セル[400]を含むウェハ・アッセンブリ[40]の上面斜視図である。図4Bは、図4AにおけるラインA-Aに沿ったウェハ・アッセンブリ[40]の側面断面図を示す。ウェハ・アッセンブリ[40]には、第1基板ウェハ[41]、第2基板ウェハ[42]、及び第1基板ウェハ[41]と第2基板ウェハ[42]との間に挿入されるインターポーザ・ウェハ[43]が含まれる。図4Bに示されるように、ウェハ・アッセンブリ[40]には複数のフロー・セル[400]が含まれる。インターポーザ・ウェハ[43]には、基層[432](例えば、基層[132])、基層[432]を第1基板ウェハ[41]の表面に結合する第1接着剤層[434](例えば、第1接着剤層[134])、基層[432]を第2基板ウェハ[42]の表面に結合する第2接着剤層[436](例えば、第2接着剤層[136])が含まれる。
【0073】
複数のマイクロ流体チャネル[438]は、基層[432]並びに第1接着剤層[434]及び第2接着剤層[436]の各々を通るように規定される。複数のウェル[414]及び[424]は、第1基板ウェハ[41]及び第2基板ウェハ[42]の各々に規定されてよく(例えば、基板ウェハ[41]及び[42]にエッチングされる)、若しくは、インターポーザ・ウェハ[43]に面する基板ウェハ[41]及び[42]の表面に配置される樹脂層に規定されてよい。生体プローブは、複数のウェル[414]及び[424]の各々に配置されてよい。複数のウェル[414]及び[424]は、インターポーザ・ウェハ[43]の対応するマイクロ流体チャネル[438]と流体的に結合される。次いで、ウェハ・アッセンブリ[40]をダイスカット(又は角切り、dice)し、複数のフロー・セル[400]からウェハ・アッセンブリ[40]を分離してよい。様々な実施形態において、ウェハ・アッセンブリ[40]によって約90%より大きいフロー・セル収率が供され得る。
【0074】
図5は、実施形態に従う、フロー・セル(例えば、フロー・セル[100]、[300]、[400])のインターポーザ(例えば、インターポーザ[130]、[230])においてマイクロ流体チャネルを製造する方法[500]のフロー図である。方法[500]には、[502]でインターポーザを形成することが含まれる。インターポーザ(例えば、インターポーザ[130]、[230])には、第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面を有する基層(例えば、基層[132])が含まれる。基層には、黒色PETが含まれる(例えば、少なくとも約50%の黒色PET、本質的に黒色PETから成る、又は黒色PETから成る)。第1接着剤層(例えば、第1接着剤層[134])は基層の第1表面に配置され、第2接着剤層(例えば、第2接着剤層[136])は基層の第2表面に配置される。第1接着剤層及び第2接着剤層には、アクリル系接着剤が含まれる(例えば、少なくとも約10%のアクリル系接着剤、少なくとも約50%のアクリル系接着剤、本質的にアクリル系接着剤から成る、又はアクリル系接着剤から成る)。いくつかの実施形態において、接着剤にはブチルゴムが含まれてよい。インターポーザ(例えば、インターポーザ[130])が約50ミクロン~約200ミクロンの範囲の厚さを有し得るように、基層は約30~約100ミクロンの厚さを有してよく、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は約10~約50ミクロンの厚さを有してよい。
【0075】
第1剥離ライナー(例えば、第1剥離ライナー[237])は第1接着剤層に配置されてよく、第2剥離ライナー(例えば、第2剥離ライナー[239])は第2接着剤層に配置されてよい。第1剥離ライナー及び第2剥離ライナーは、紙(例えば、スーパー・カレンダー・クラフト(SCK)紙、ポリビニルアルコール・コーティングを有するSCK紙、クレイ・コート・クラフト紙、機械仕上げクラフト紙、片艶紙、ポリオレフィン・コート・クラフト紙など)、プラスチック(例えば、二軸配向PETフィルム、二軸配向ポリプロピレン・フィルム、ポリオレフィン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン・プラスチック樹脂など)、布(例えば、ポリエステル)、ナイロン、テフロン(登録商標)又はいずれの他の適当な材料から形成されてよい。いくつかの実施形態において、剥離ライナーは、それぞれの接着剤層からの剥離ライナーの剥離を容易にするため、低表面エネルギー材料(例えば、本明細書で説明されるいずれかの材料)から形成されてよい。他の実施形態において、低表面エネルギー材料(例えば、シリコン、ワックス、ポリオレフィンなど)は、対応するそれぞれの接着剤層[134]及び[136]からの剥離ライナー[237]の剥離を容易にするため、少なくとも対応するそれぞれの接着剤層[134]及び[136]に配置される剥離ライナーの表面にコーティングされてよい。第1剥離ライナーは、約50~約300ミクロンの範囲(例えば、約50、約100、約150、約200、約250、又は約300ミクロンを含む)の厚さを有してよく、いくつかの実施形態において、実質的に光学的に不透明であってよい。さらに、第2剥離ライナーは、約25~約50ミクロンの範囲(例えば、約25、約30、約35、約40、約45、又は約50ミクロンを含む)の厚さを有してよく、実質的に透明であってよい。
【0076】
[504]において、少なくとも基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層を通るようにマイクロ流体チャネルを形成する。マイクロ流体チャネルを形成するステップにおけるいくつかの実施形態では、COレーザーを用いてマイクロ流体チャネルを形成する。いくつかの実施形態において、COレーザーを用いて第2剥離ライナーを通るようにマイクロ流体チャネルをさらに形成するものの、第1剥離ライナーを通るように形成しない(ただし、他の実施形態では、マイクロ流体チャネルは第1剥離ライナーに部分的に延在し得る)。COレーザーは、約5000nm~約15000nmの範囲の波長、及び約50~約150μmの範囲のビーム・サイズを有してよい。例えば、COレーザーは、約3000~約6000nm、約4000~約10000nm、約5000~約12000nm、約6000~約14000nm、約8000~約16000nm又は約10000~約18000nmの範囲の波長を有してよい。特定の実施形態において、COレーザーは、約5000、約6000、約7000、約8000、約9000、約10000、約11000、約12000、約13000、約14000、又は約15000nmのこれらの間の全ての範囲及び値を含めた波長を有してよい。いくつかの実施形態において、COレーザーは、約40~約60μm、約60~約80μm、約80~約100μm、約100~約120μm、約120~約140μm又は約140~約160μm(両端値を含む)のビーム・サイズを有してよい。特定の実施形態では、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140又は約150μmのこれらの間の全ての範囲及び値を含めたビーム・サイズを有してよい。
【0077】
本明細書で前述されるように、インターポーザにマイクロ流体チャネルを形成するため、様々なレーザーを使用してよい。重要なパラメータには、全体の製造時間を規定する切断測度、レーザーのビーム・サイズ及び波長に応じるエッジの滑らかさ、並びに、レーザーの種類に応じる、インターポーザに含まれる様々な層に対してレーザーによって引き起こされる化学変化が含まれる。UVパルス・レーザーは、より小さいビーム・サイズを供し、それによってより滑らかなエッジが供され得る。しかしながら、UVレーザーは、接着剤層、基層又は第2剥離ライナーからの破片のエッジの化学的性質に変化を引き起こし、自家蛍光を引き起こし得る。自家蛍光は、本明細書で説明されるインターポーザを含むフロー・セルの蛍光イメージング中の蛍光バックグラウンド信号に大きく寄与する可能性があり、それによってSNRが著しく低下し得る。対照的に、COレーザーは、化学的に不活性でありながら、適当なエッジの滑らかさを供し得るため、接着剤層、基層又は第2剥離ライナーからのいずれの破片にも、いずれの化学変化も引き起こさない。したがって、COレーザーを用いてインターポーザにマイクロ流体チャネルを形成することは、自家蛍光に大きく寄与せず、より高いSNRをもたらす。
【0078】
比限定的な実験例
このセクションでは、アクリル系接着剤の低い自家蛍光及び優れた接着性を実証する様々な実験を説明する。本明細書で説明される実験例は、単なる例示であって、いずれの方法においても本開示を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0079】
材料特性:フロー・セルを結合し、低コストで高品質の配列決定データを供するための様々な材料の特性を検討した。以下の特性は特に重要である:(1)自家蛍光がない、又は低い:遺伝子配列決定は、ヌクレオチドに付加された蛍光タグに基づいており、これらのタグからの信号は、通常より比較的弱い。結合している材料のエッジから放出又は散乱された光は、蛍光体を有するDNAクラスターからの信号対ノイズ比を改善するために望ましくない;(2)結合強度:フロー・セルは、高圧(例えば、13psi以上)に曝露される場合がよくある。フロー・セルの結合には、剥離及び剪断応力を含む高い結合強度が望ましい;(3)結合品質:高品質のフロー・セル結合には、ボイド及び漏れのない高品質の結合が望ましい;(4)ストレス後の結合強度:遺伝子配列決定には、多くのバッファー(高pH溶液、高い塩、高温)が含まれ、有機溶媒も含まれてよい。このようなストレス下において、フロー・セル基板(例えば、上部基板及び底部基板)を共に保持することは、配列決定をうまく実行するために望ましい;(5)化学的安定性:接着剤層及び基層は化学的に安定であって、遺伝子配列決定に用いられる酵素及び高純度のヌクレオチドはバッファーのいずれの不純物にも非常に敏感であるため、いずれの化学物質も溶液中に放出(例えば、気体を出す(又はガス抜き、out gas)しないことが望ましい。
【0080】
フロー・セル構成図6A及び図6Bに示されるように、感圧接着剤(PSA)を2つの異なるフロー・セル構成に適用した。図6Aは、結合され、パターン化されたフロー・セル、すなわち、基板の間に結合されたインターポーザを有するガラス基板の表面に配置されたNIL樹脂にパターン化されたウェルを含むフロー・セルの断面の概略図である。図6Bは、ガラス基板上に直接結合されたインターポーザを有する(すなわち、基板に樹脂を有さない)、結合された、パターン化されていないフロー・セルの断面の概略図である。図6Aは、約50ミクロンの厚さの黒色PET基層に、約25ミクロンの厚さの感圧接着剤(PSA)から形成された100ミクロンの厚さの接着テープを有するパターン化されたフロー・セルの構成を示す。パターン化された表面は、一部のPSAの低い結合強度を示す低い表面エネルギー材料を含む。
【0081】
材料スクリーニング・プロセス:完全な材料スクリーニング・プロセスのため、48の異なるスクリーニング実験を行った。高スループット(又は高処理、high throughput)において接着剤及び担体材料をスクリーニングするため、スクリーニング・プロセスを表Iにまとめられたように5つの異なる優先度に分けた。多くの接着剤は、ステージ1の試験後に破損した(又は機能しなくなった、failed)。初期の破損により、数週間で多くの数の材料(>20)のスクリーニングが可能となった。
【0082】
【表1-1】



【0083】
自家蛍光特性:自家蛍光特性は、励起光源として緑色(532nm)及び赤色(635nm)のレーザーを用いた共焦点蛍光スキャナー(Typhoon)によって測定した。緑色レーザーには570nmバンドパス・フィルターを使用し、赤色レーザーには665ロング・パス・フィルターを使用した。励起及び発光の設定は、例示的な遺伝子配列決定実験において用いられるものと同様であった。図7は、様々な接着剤及びフロー・セル材料の赤色チャネルにおける蛍光強度の棒グラフである。図8は、図7の様々な接着剤及びフロー・セル材料の緑色チャネルにおける蛍光強度の棒グラフである。表IIに、材料の各々からの自家蛍光をまとめた。
【0084】
【表2】
【0085】
テープ・サンプル1~4及び7~8は、熱硬化性エポキシを含む接着剤であり、テープ・サンプル-5の接着剤には、ブチルゴム接着剤が含まれ、テープ・サンプル-6にはアクリル/シリコン・ベースのフィルムが含まれる。図7、8及び表IIから観察されるように、ブラック・カプトン(ポリイミド)及びガラスをネガティブ・コントロール(又は負の制御、negative control)として使用した。この実験における低蛍光要件を満たすため、いずれの適格な材料も、ブラック・カプトンより少ない光を放出するべきである。メチルアクリル接着剤、PET-1、PET-2、PET-3、テープ・サンプル7及びテープ・サンプル8を含むわずかな接着剤又は担体のみが、このスクリーニング・プロセスを通過する。カプトン1、PEEK及びカプトン2などのほとんどの担体材料は、高い蛍光バックグラウンドのために不可であった。アクリル系接着剤は、532nmの蛍光標準と比較して、約0.25a.u.未満の532励起波長に応答する自家蛍光を有し(図7)、635nmの蛍光標準と比較して、約0.15a.u.未満の635nm励起波長に応答する自家蛍光を有する(図8)。これは、フロー・セルにおいて用いるのに十分低い。
【0086】
ストレスを伴う接着及びストレスを伴わない接着:結合品質、特に接着強度は、フロー・セルの結合において評価されるべきである。接着強度を定量化するため、ラップ剪断応力及び180度剥離試験を用いた。図9A及び図9Bは、様々な接着剤のラップ剪断及び剥離応力を試験するために用いた、ラップ剪断及び剥離試験のセットアップを示す。図9A及び図9Bに示すように、接着剤のスタック(又は積み重ね、stack)をサンドイッチ構造で組み立てた。底部表面は、フロー・セルの表面と同様のガラス又はNIL表面である。接着剤の上部には、剪断又は剥離試験中に、機器から接着剤に力を伝達する薄いカプトン・フィルムがある。表IIIに剪断及び剥離試験の結果をまとめた。
【0087】
【表3】
【0088】
接着剤試験の初期接着を表IIIに示す。剥離試験で不可であり、また結合後にボイドを有するPET-1、PET-2、及びPET-3を除いて、ほとんどの接着剤は、ガラス表面における最小要件を満たす(すなわち、>50N/cmの剪断応力及び>1N/cmの剥離力を実証する)。テープ・サンプル1の接着剤は、NIL表面での剥離強度が比較的弱く、試験では不可であった。また、ストレス試験として、接着剤を高塩及び高pHバッファー(1M NaCl、pH10.6の炭酸塩バッファー及び0.05%tween20)に3日間約60℃で曝露した。テープ・サンプル5及びテープ・サンプル1では、ラップ剪断応力及び剥離強度の約50%より多くが失われた。自家蛍光及び結合強度のスクリーニング後、アクリル系接着剤が全ての所望の特性を示す主要な接着剤であった。ND-Cは次善の材料であり、アクリル系接着剤と比較して、赤色蛍光チャネルにおいて約30%高いバックグラウンドを示した。
【0089】
ホルムアミド、高温及び低温のストレス:フロー・セルの結合の適用における接着剤の性能をさらに評価するため、アクリル、テープ・サンプル5及びテープ・サンプル1の接着剤に関してさらなる実験を行った。実験には、約60℃での約24時間のホルムアミドへの浸漬、約-20℃及び約4℃での約24時間の冷蔵、並びに約60℃での約24時間の真空ベーキングが含まれる。結果の全てを表IVにまとめた。
【0090】
【表4】
【0091】
両方の接着剤は、ほとんどの試験を通過する。しかしながら、テープ・サンプル5の接着剤は、真空ベーキング後に多くのボイドが発生し、剪断応力の40%より多くが失われ、最小要件を満たさなかった。また、アクリル系接着剤も、ホルムアミドのストレス後に剥離強度の大部分を失ったにも関わらず、最小要件は満たしている。
【0092】
溶媒のアウトガス及びオーバーフロー:遺伝子配列決定に用いられる多くの試薬は、配列決定マトリックスに影響を及ぼし得るバッファー又は溶液中の不純物に対して非常に敏感である。接着剤から放出されるいずれの潜在的な危険物質も特定するため、熱重量分析(TGA)、フーリエ変換赤外(FTIR)及びガス・クロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)を用いて、接着剤及び接着剤からのアウトガス(out gas)の基本的な化学構造を特徴付けた。TGA測定によると、乾燥アクリル、ND-C及びテープ・サンプル5の接着剤は、非常に小さな重量損失(0.5%)を示す。テープ・サンプル1は、1%より多くの重量損失を示し、これは配列決定の実行中に有害物質を放出する、より高いリスクを示し得る。
【0093】
また、接着剤の重量損失は、ホルムアミド及びバッファーのストレス後に特徴付けられた。アクリル系接着剤は、約1.29%の重量損失を示し、これは、この接着剤がホルムアミドであることがより疑われ、ホルムアミドにおける以前のストレス試験と一致することを示す。テープ・サンプル5は、バッファーのストレス後により大きな重量損失を示し(約2.6%)、これは、バッファーのストレス後のラップ剪断応力が低いことも説明する。アクリル系接着剤及びND-Cのベース・ポリマーは、FTIRによってアクリルと分類された。アクリル・ポリマーの生体適合性はよく知られており、配列決定の実行中に有害物質が放出される可能性は減じられる。図10は、アクリル系接着剤及びスコッチ・テープ(scotch tape)のFTIRスペクトルである。表VにTGA及びFTIR測定の結果をまとめる。
【0094】
【表5】
【0095】
アクリル系接着剤からのアウトガスをさらに調査するため、アクリル系接着剤及びブラック・カプトンをGC-MSによって分析した。両方のサンプルを約60℃で1時間インキュベートし、これらの材料からのアウトガスをコールド・トラップ(cold trap)で収集し、GC-MSで分析した。図11に示されるように、ブラック・カプトンからの検出可能なアウトガスはなく、60℃で1時間ベーキングした後に、アクリル系接着剤から約137ng/mgの総揮発性物質が検出された。アウトガス化合物の量は非常に限られており、アクリル系接着剤の総重量の約0.014%のみである。アウトガス化合物の全てをGC-MSで分析したところ、これらは全て互いに非常に類似しており、アクリレート/メタクリレート・モノマー及び脂肪族側鎖などを含むアクリル系接着剤に由来していた。図12は、アウトガス化された(又は脱ガスされた、out gassed)化合物の可能な化学構造を示す挿入図を伴い、これらのアウトガス化合物の典型的なMSスペクトルを示す。アクリル及びメタクリル接着剤は、一般的に生体適合性があることが知られているため、少量のアクリレート/メタクリレートのアウトガスは、遺伝子配列決定試薬に悪影響を与えることはないと予想される。
【0096】
以下の実施形態が本開示に包含される。
【0097】
1.インターポーザであって、第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面を有する基層;基層の第1表面に配置される第1接着剤層;基層の第2表面に配置される第2接着剤層;並びに、基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層の各々を通るように延在する複数のマクロ流体チャネルを有して成る、インターポーザ。
【0098】
2.基層は黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んで成り;第1接着剤層はアクリル系接着剤を含んで成り;及び、第2接着剤層はアクリル系接着剤を含んで成る、条項1に記載のインターポーザ。
【0099】
3.基層、第1接着剤層、第2接着剤層の全体厚さが約1~約200ミクロンの範囲である、条項2に記載のインターポーザ。
【0100】
4.基層は約10~約100ミクロンの範囲の厚さを有し、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、約5~約50ミクロンの範囲の厚さを有する、条項2又は3に記載のインターポーザ。
【0101】
5.第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、532nmの蛍光標準と比較して、約0.25a.u.未満の532nm励起波長に応答する自家蛍光を有する、条項1~4のいずれかに記載のインターポーザ。
【0102】
6.第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、635nmの蛍光標準と比較して、約0.15a.u.未満の635nm励起波長に応答する自家蛍光を有する、前述の条項のいずれかに記載のインターポーザ。
【0103】
7.基層は、少なくとも約50%の黒色PETを含んで成る、条項2~6のいずれかに記載のインターポーザ。
【0104】
8.基層は、本質的に黒色PETから成る、条項7に記載のインターポーザ。
【0105】
9.第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、少なくとも約5%のアクリル系接着剤を含んで成る、条項2~8のいずれかに記載のインターポーザ。
【0106】
10.第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、本質的にアクリル系接着剤から成る、条項9に記載のインターポーザ。
【0107】
11.第1接着剤層に配置された第1剥離ライナー;第2接着剤層に配置された第2剥離ライナーをさらに有して成り;複数のマイクロ流体チャネルは、基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層、並びに第2剥離ライナーを通るように延在する一方、第1剥離ライナーを通らない、前述の条項のいずれかに記載のインターポーザ。
【0108】
12.第1剥離ライナーは、約50~約300ミクロンの範囲の厚さを有し;及び、第2剥離ライナーは約25~50ミクロンの範囲の厚さを有する、条項11に記載のインターポーザ。
【0109】
13.基層は、黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んで成り;並びに、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々は、アクリル系接着剤を含んで成る、条項11又は12に記載のインターポーザ。
【0110】
14.第1剥離ライナーは少なくとも実質的に不透明であり、第2剥離ライナーは少なくとも実質的に透明である、条項11~13のいずれかに記載のインターポーザ。15.フロー・セルであって、第1基板;第2基板;及び第1基板と第2基板との間に配置された条項2~10のいずれかに記載のインターポーザを有して成り、第1接着剤層は、基層の第1表面を第1基板の表面に結合させ、第2接着剤層は、基層の第2表面を第2基板の表面に結合させる、フロー・セル。
【0111】
16.第1基板及び第2基板の各々はガラスを含んで成り、第1接着剤層及び第2接着剤層の各々と、第1基板及び第2基板のそれぞれの表面との間の結合は、約50N/cmより大きい剪断応力、及び約1N/cmより大きい剥離力に耐えるように適用される、条項15に記載のフロー・セル。
【0112】
17.第1基板及び第2基板の各々は、約1ミクロン未満の厚さであり、第1接着剤層及び第2接着剤層のそれぞれと結合される表面を含む樹脂層を有して成り、樹脂層の各々と、第1接着剤層及び第2接着剤層のそれぞれとの間の結合は、約50N/cmより大きい剪断応力、及び約1N/cmより大きい剥離力に耐えるように適用される、条項15に記載のフロー・セル。
【0113】
18.複数のウェルは、第1基板又は第2基板の少なくとも一方の樹脂層にインプリントされ、生体プローブはウェルの各々に配置され、インターポーザのマイクロ流体チャネルは、流体を複数のウェルに送達するように構成される、条項17に記載のフロー・セル。
【0114】
19.マイクロ流体チャネルをパターン化する方法であって、インターポーザを形成すること;並びに、少なくとも基層、第1接着剤層、及び第2接着剤層を通るようにマイクロ流体チャネルを形成することを含み、インターポーザは、第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面を有する基層、基層の第1表面に配置された第1接着剤層、基層の第2表面に配置された第2接着剤層を有して成り、基層は黒色ポリエチレンテレフタレート(PET)を含んで成り、第1接着剤層はアクリル系接着剤を含んで成り、第2接着剤層はアクリル系接着剤を含んで成る、方法。
【0115】
20.マクロ流体チャネルを形成することには、COレーザーを用いることが含まれる、条項19に記載の方法。
【0116】
21.インターポーザが、第1接着剤層に配置された第1剥離ライナー、及び第2接着剤層に配置された第2剥離ライナーをさらに有して成り;マイクロ流体チャネルを形成するステップにおいて、COレーザーを用いて第2剥離ライナーを通るようにマクロ流体チャネルをさらに形成する一方、第1剥離ライナーを通るように形成しない、条項20に記載の方法。
【0117】
22.COレーザーは、約5000nm~15000nmの範囲の波長、及び約50~150μmの範囲のビーム・サイズを有する、条項21に記載の方法。
【0118】
前述の概念及び以下でより詳細に説明されるさらなる概念の全ての組合せは、(そのような概念が相互に矛盾しないという条件で)本明細書で開示される本発明の主題の一部であると考えられることを認識されるべきである。特に、本開示の最後に現れる特許請求された範囲の全ての組合せは、本明細書で開示される本発明の主題の一部であると考えられる。
【0119】
本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈によって明らかに他のものを指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「部材(a member)」なる用語は、単一の部材又は複数の部材の組合せを意味することを意図しており、「材料(a material)」は、1つ又はそれより多くの材料、若しくはそれらの組合せを意味することを意図している。
【0120】
本明細書で用いられる場合、「約」及び「およそ」なる用語は、一般的に記載された値のプラス又はマイナス10%を意味する。例えば、約0.5には0.45~0.55が含まれ、訳10には9~11が含まれ、約1000には900~1100が含まれ得る。
【0121】
本明細書で利用される場合、「実質的に」なる用語及び同様の用語は、本開示の主題が関係する当業者によって一般的に受け入れられる使用法と調和した広い意味を有することを意図する。これらの用語は、これらの特徴の範囲を供される正確な配置及び/又は数値範囲に限定することなく、説明及び特許請求される特定の特徴の説明を可能にすることを意図するということを、本開示を検討する当業者は理解するべきである。したがって、これらの用語は、説明又は特許請求された主題の実質的でない又は重要でない修正又は変更は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内であると見なされることを示すと解釈されるべきである。
【0122】
様々な実施形態を説明するために本明細書で用いられた「例」なる用語は、このような実施形態が、可能な実施形態の可能な例示、表現、及び/又は例示であることを示すことを意図することに留意されるべきである(このような用語は、このような実施形態が必ずしも並外れた、又は最上級の例であるということを含意することを意図していない)。
【0123】
様々な例示的実施形態の構成及び配置は例示に過ぎないことに留意することが重要である。本開示においていくつかの実施形態のみを詳細に説明したものの、本開示を検討する当業者は、本明細書で説明される主題の新たな教示及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう(例えば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状及び割合、パラメータの亜チア、取り付け配置、材料の使用、色、向きなどの変更)。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な例示的な実施形態の設計、作動条件及び配置において、他の置換、修正、変更及び省略もなされてよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12