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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】安全制御装置および安全ルール調整方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 9/02 20060101AFI20240725BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
G05B9/02 Z
G05B19/418 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021006238
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110687
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金川 信康
(72)【発明者】
【氏名】高橋 絢也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 敏史
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘幸
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/132938(WO,A1)
【文献】特開2013-028423(JP,A)
【文献】特開2007-161225(JP,A)
【文献】特開2019-016104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 9/00 - 9/05
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御体系下にある異種システムにおける制御対象のそれぞれの行動を制御するための安全制御装置であって、
互いに異なる制御体系化の制御対象について、当該制御対象の行動が想定される制御結果から乖離した競合が発生した場合、行動を調整するための行動調整指示を前記制御対象に出力する行動調整部と、
前記行動の調整が所定の条件を満たす場合、予め記憶された前記制御対象における競合の回避および機能を発揮するための行動規則を示す行動計画を調整する行動計画調整部と、
前記行動計画の調整が所定の条件を満たす場合、予め記憶された前記制御対象における競合回避するため行動規則を示す安全ルールを調整する安全ルール調整部とを有する安全制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の安全制御装置において、
行動計画調整部は、
前記行動の調整の要因となった行動に対応する行動計画の優先度を低下するか、
当該行動の調整の要因となった行動に対応する行動計画が示す行動開始条件に排他条件を追加することで、前記行動計画の調整を実行する安全制御装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の安全制御装置において、
前記安全ルールは、前記制御対象の行動とその禁止条件が対応付けられており、
前記安全ルール調整部は、前記行動計画の調整の要因となった行動に対応する禁止条件に、OR条件である追加条件を追加することで、前記安全ルールの調整を実行する安全制御装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の安全制御装置において、
前記安全ルールは、前記制御対象の行動とその許可条件が対応付けられており、
前記安全ルール調整部は、前記行動計画の調整の要因となった行動に対応する許可条件に、AND条件である除外条件を追加することで、前記安全ルールの調整を実行する安全制御装置。
【請求項5】
複数の制御体系下にある異種システムにおける制御対象のそれぞれの行動を制御するための安全制御装置を用いた安全ルール調整方法であって、
行動調整部により、互いに異なる制御体系化の制御対象について、当該制御対象の行動が想定される制御結果から乖離した競合が発生した場合、行動を調整するための行動調整指示を前記制御対象に出力し、
行動計画調整部により、前記行動の調整が所定の条件を満たす場合、予め記憶された前記制御対象における競合の回避および機能を発揮するための行動規則を示す行動計画を調整し、
安全ルール調整部により、前記行動計画の調整が所定の条件を満たす場合、予め記憶された前記制御対象における競合回避するため行動規則を示す安全ルールを調整する安全ルール調整方法。
【請求項6】
請求項5に記載の安全ルール調整方法において、
行動計画調整部により、
前記行動の調整の要因となった行動に対応する行動計画の優先度を低下するか、
当該行動の調整の要因となった行動に対応する行動計画が示す行動開始条件に排他条件を追加することで、前記行動計画の調整を実行する安全ルール調整方法。
【請求項7】
請求項5または6のいずれかに記載の安全ルール調整方法において、
前記安全ルールは、前記制御対象の行動とその禁止条件が対応付けられており、
前記安全ルール調整部により、前記行動計画の調整の要因となった行動に対応する禁止条件に、OR条件である追加条件を追加することで、前記安全ルールの調整を実行する安全ルール調整方法。
【請求項8】
請求項5または6のいずれかに記載の安全ルール調整方法において、
前記安全ルールは、前記制御対象の行動とその許可条件が対応付けられており、
前記安全ルール調整部により、前記行動計画の調整の要因となった行動に対応する許可条件に、AND条件である除外条件を追加することで、前記安全ルールの調整を実行する安全ルール調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種システムで制御される複数の制御対象が混在する環境下における制御に関する。なお、制御対象には、車両などの移動体、工場、発電所といったプラントが含まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、AI(人工知能)などの技術の進歩に応じて、様々な分野で自動運転といった制御技術が展開されている。例えば、交通分野で自動車の自動運転技術や運転支援技術が開発されている。ここで、道路上には、異なる自動運転技術ないし運転支援技術が混在している。また、道路上では、これらの技術が適用された自動車と、手動運転の自動車も混在している。さらに、制御対象の1つであるロボットを利用した倉庫などの荷役を行う場合、作業員がロボットの作業の支援を行っていることがある。
【0003】
以上のような人と機械などの異種システムが混在する制御技術においては、制御対象の動作の安全性の確保が求められている。例えば、制御対象の衝突、制御対象の人身事故、物損事故を抑止することが求められている。
【0004】
このような安全性の確保を目的とする技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、作業者と機械が共存し、協調しながら作業する場合であっても、十分な安全性を確保することを課題としている。この課題を解決するために、特許文献1には、作業者の位置情報の履歴に基づいて作業者の予測動線を生成するとともに、機械の位置情報の履歴、および/または設定された稼働範囲に基づいて機械の予測動線を生成する生成部と、作業領域における、現在の作業者および機械の位置、ならびに、生成部が生成した作業者の予測動線および機械の予測動線から、作業者および機械の位置を予測し、予測した位置が、所定の位置関係になるか否かを、判定基準に基づいて判定する判定部と、判定部が、所定の位置関係になると判定した場合には、その旨を示す情報を通知する報知部と、を備える。そして、作業者と機械が共存し、協調しながら作業する場合であっても、十分な安全性を確保できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-96517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、作業者(人)と機械の位置関係に応じてアラートを出力するなどの事故回避を行うことは可能である。但し、事故リスクが発生するごとに場当たり的な対応となり、事故リスクを根本的に減らすことは困難である。このため、特許文献1では、安全性を優先しすぎる制御を行うと機械の停止が増加し、作業効率の低下を招く。これに対して、作業効率を優先しすぎると、安全性を欠くことになる。したがって、特許文献1では、異種システムが混在する環境において、作業効率と安全性の確保のバランスをとることが困難であるとの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明では、「行動調整」→「行動計画調整」→「安全ルール調整」との順序で各調整を実行する。より具体的な本発明の構成の一例は、複数の制御体系下にある異種システムにおける制御対象のそれぞれの行動を制御するための安全制御装置であって、互いに異なる制御体系化の制御対象について、当該制御対象の行動が想定される制御結果から乖離した競合が発生した場合、行動を調整するための行動調整指示を前記制御対象に出力する行動調整部と、前記行動の調整が所定の条件を満たす場合、予め記憶された前記制御対象における競合の回避および機能を発揮するための行動規則を示す行動計画を調整する行動計画調整部と、前記行動計画の調整が所定の条件を満たす場合、予め記憶された前記制御対象における競合回避するため行動規則を示す安全ルールを調整する安全ルール調整部とを有する安全制御装置である。
【0008】
また、本発明には、安全制御装置を用いた安全ルール調整方法や安全制御方法、安全ルール調整方法を実行するためのコンピュータプログラムやこれを格納した記憶媒体も含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異種システムが混在する環境において、制御対象の行動について作業効率および安全性の確保が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1を適用する環境を模式的に示す図である。
図2】実施例1におけるシステム構成図である。
図3】実施例1における各移動体のシステム構成図である。
図4】実施例1における機能ブロック図である。
図5A】実施例1における安全ルールをネガティブリストで構成した例を示す図である。
図5B】実施例1における安全ルールをポジティブリストで構成した例を示す図である。
図6A】実施例1における行動計画を示す図である。
図6B】グラフ表現で行動計画を模式的に表した図である。
図7】実施例1における処理手順を示すフローチャートである。
図8A】実施例1における行動計画の調整の具体例(優先度変更)を説明する図である。
図8B】実施例1における行動計画の調整の具体例(条件追加)を説明する図である。
図9A】実施例1におけるネガティブリストで構成される安全ルールの調整の具体例を説明する図である。
図9B】実施例1におけるポジティブリストで構成される安全ルールの調整の具体例を説明する図である。
図10】実施例2を適用した自動倉庫システムを示す俯瞰図である。
図11】実施例3を適用した工事現場1000を示す俯瞰図である。
図12】実施例3における移動経路を示す図である。
図13A】実施例4における機械対機械および機械対人間の衝突を防止する例を説明する図である。
図13B】実施例4における機械対人間の衝突を防止する例を説明する図である。
図13C】実施例4における機械対機械の衝突を防止する例を説明する図である。
図14】実施例5を適用した電力網を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施例を、図面を参照して説明する。以下の各実施例では、異種システム、つまり、異なる制御体系下で制御される複数の制御対象が混在する環境下における制御を行っている。なお、この環境とは、制御の地理的な範囲を示す制御エリアを含む。
【0012】
また、各実施例における安全とは、制御対象における競合を避けることを意味する。また、競合とは、制御対象の行動が想定される制御結果から乖離した状態を示す。このため、競合には、制御対象における事故、衝突、危険事象(TTC (Time to Collision)が規定以下になる事象)、障害、効果の未達、その他制御結果を損ねる事象が含まれる。
【0013】
さらに、行動とは、制御対象の有する機能を示す。このため、行動には、移動体の走行、荷物運搬、工事、建築、建設、発電、配電、受電等の電力制御、その他稼働、動作などが含まれる。
【0014】
さらに、制御体系下とは、自律的に制御する機器も含む。このため、自律的な制御を行う機器が複数ある場合も異種システムに該当する。このように各実施例におけるシステムは、必ずしもサーバなどを含むコンピュータシステムに限定されず、個々の機器も含まれる。
【実施例1】
【0015】
実施例1は、制御対象として、移動体を用いた場合の汎用的な一例を示す。また、本実施例では、行動として、移動体の走行を例に説明する。図1は、各実施例を適用する環境を模式的に示す図である。図1の環境においては、制御対象の各種移動体が存在している。このうち、移動体1-(a)および移動体1-(b)が、自律的に制御を行うなど後述する安全制御サーバ5の制御体系下ではないものとする。例えば、移動体1-(a)が運転者の操作もしくは自身が有する運転支援機能や自動運転機能に従って移動する車両であり、移動体1-(b)が人である。
【0016】
また、移動体2-(a)および移動体2-(b)は、いわゆるシステム(後述する安全制御サーバ5)の制御体系下で移動する機能を有する。なお、インフラセンサ装置3は、各移動体、特に、移動体1-(a)および移動体1-(b)の移動状況を検知し、安全制御サーバ5にその結果を通知する。なお、図1における各移動体、インフラセンサ装置3は、図示した数に限定されない。例えば、インフラセンサ装置3は、複数設置されていることが望ましい。
【0017】
次に、図2図4を用いて、実施例1を実現するシステム、特に、安全制御サーバ5や各移動体の構成を説明する。図2は、実施例1におけるシステム構成図である。なお、図2においては、移動体2-(a)および移動体2-(b)は、同様の構成であるため、をまとめて移動体2として記載する。また、移動体1-(b)は、人であるため記載を省略する。図2において、移動体1-(a)、移動体2、インフラセンサ装置3および安全制御サーバ5が、ネットワーク7を介して接続されている。また、安全ルール61を記憶する安全ルールDB6が、安全制御サーバ5と接続される。なお、安全ルール61は、安全制御サーバ5の補助記憶装置54に記憶してもよい。さらに、安全ルールDB6は、ネットワーク7を介して接続されてもよい。なお、上述したように、本実施例でのシステムには、サーバが必須でない。このため、本実施例の安全制御サーバ5の機能を、制御対象自身が有してもよい。
【0018】
図2のうち、安全制御サーバ5は、安全制御装置として機能するいわゆるコンピュータで実現される。そして、安全制御サーバ5は、外部装置との通信などの情報の送受信するためのI/F部51(インターフェース部)、各種演算を行う処理部52、メモリで実現可能な主記憶装置53およびストレージで実現可能な補助記憶装置54を有する。また、これらは、互いにバスなどの通信路を介して接続されている。なお、I/F部51は、入力、出力機能を分けて、入力I/Fと出力I/Fで構成してもよい。
【0019】
ここで、処理部52は、プロセッサ、CPU等で実現され、主記憶装置53に展開された各コンピュータプログラムに従って、演算を行う。また、主記憶装置53は、補助記憶装置54やその他記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムやその他演算に必要な情報が展開される。ここで、主記憶装置53に展開されるコンピュータプログラムには、安全ルール調整プログラム531、行動計画調整プログラム532、行動調整プログラム533および起動制御プログラム534が含まれる。また、これら各コンピュータプログラムは、それぞれ独立したコンピュータプログラムでなくともよい。つまり、これらはコンピュータプログラムのモジュールとして実現してもよい。
【0020】
さらに、補助記憶装置54は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのいわゆるストレージで実現できる。そして、補助記憶装置54は、情報として行動計画541を記憶する。また、補助記憶装置54は、インフラセンサ装置3や各移動体で検知された物体情報542を記憶してもよい。
【0021】
またさらに、インフラセンサ装置3は、道路などの制御エリアに設置されたセンサであり、各移動体、特に、安全制御サーバ5の制御体系下にない移動体1-(a)や移動体1-(b)の移動を検知する。このために、インフラセンサ装置3は、各種車両検知器で実現できる。車両検知器には、レーザ、ループコイル、画像認識(カメラ)、ビーコンなどが含まれ、その原理は問わない。
【0022】
次に、図3は、実施例1における各移動体のシステム構成図である。ここで、移動体1-(a)は、安全制御サーバ5以外の制御体系下で制御される。安全制御サーバ5以外の制御体系下には、例えば、自律的な制御や他の制御システムでの制御に応じて走行することが含まれる。
【0023】
図3(a)は、移動体1-(a)の構成を示す。移動体1-(a)は、移動体コントローラ11、移動体センサ12、移動体アクチュエータ13、運転装置14および通信部15を有する。そして、これらは、車内通信網16を介して互いに接続される。
【0024】
ここで、移動体コントローラ11は、移動体1-(a)の移動、動作を制御し、いわゆるECU(Engine Control Unit、Electronic Control Unit)で実現できる。このために、移動体コントローラ11は、CPU1111、メモリ1112を有するMCU111(Micro Controller Unit)、入力I/F112、出力I/F113および記憶媒体114を有する。なお、MCU111は、メモリ1112のプログラムに従ってCPU1111が各種演算を実行する。なお、MCU111は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)技術を用いて、各種演算を実行可能としてもよい。なお、移動体コントローラ11は、運転支援機能や自動運転機能を有していてもよい。
【0025】
また、移動体センサ12は、レーザやLidar、ミリ波レーダ、カメラなどを含み、自車の周囲の障害物や道路の状況を検出し、また他の移動体や障害物との車間距離、方位を測定する。さらに、移動体センサ12は、上述した複数種類の組合せで実現してもよい。
【0026】
また、移動体アクチュエータ13は、移動体1-(a)の移動を行うためのアクチュ―エータである。具体的には、動力源となるエンジン、モーターやバッテリーなどで実現される原動機131およびドライブシャフト、ブレーキなどで実現される駆動装置132を有する。つまり、原動機131からの動力を、駆動装置132を介して駆動することで、移動体1-(a)が移動を実行する。
【0027】
また、運転装置14は、運転手の操作により、移動体1-(a)を制御し、ステアリングのような操舵装置141やアクセルペダルやブレーキペダルのような制動装置142が含まれる。また、通信部15は、ネットワーク7を介して、外部装置と通信する。さらに、車内通信網16は、いわゆるCAN(Controller Area Network)で実現可能である。
【0028】
また、図3(b)は、移動体2の構成を示す。移動体2は、安全制御サーバ5の制御体系下にある移動体である。移動体2は、車載コントローラ21、移動体センサ22、移動体アクチュエータ23および通信部25を有する。そして、これらは、車内通信網26を介して互いに接続される。これら各構成は、移動体1-(a)と同様であるため、その説明を省略する。なお、本実施例では、移動体2を無人運転車として説明するが、移動体1-(a)と同様に有人であってもよい。つまり、移動体2に、図示しない運転装置を設けてもよい。
【0029】
次に、図4は、実施例1における機能ブロック図である。図4では、移動体1-(a)、移動体2、インフラセンサ装置3および安全制御サーバ5それぞれの機能ブロックを示す。
【0030】
まず、移動体1-(a)は、移動体コントローラ11および移動体センサ12を有する。これらは、図3で記載したものと同じものである。ここで、移動体コントローラ11は、移動体センサ12で検知された信号を、物体情報542に変換するセンサ処理部11-1を有する。そして、センサ処理部11-1は、この物体情報542を安全制御サーバ5へ出力する。
【0031】
なお、本図では、安全制御サーバ5からの指示に基づく移動体アクチュエータ13の動作を実行しないため、この記載を省略した。また、移動体アクチュエータ13は、センサ処理部11-1で出力される物体情報542に基づいて、その動作が制御される機能を有することが望ましい。
【0032】
次に、移動体2は、車載コントローラ21、移動体センサ12および安全制御サーバ5の指示に基づく動作を実行する移動体アクチュエータ23を有する。これらは、図3で記載したものと同じものである。
【0033】
車載コントローラ21は、センサ処理部21-1、行動計画制御部21-2および行動制御部21-3を有する。ここで、センサ処理部21-1は、センサ処理部11-1と同様の機能を有する、つまり、移動体センサ22で検知された信号を、物体情報542に変換するセンサ処理部21-1を有する。また、行動計画制御部21-2および行動制御部21-3は、センサ処理部21-1や安全制御サーバ5からの出力に基づいて、移動体2の走行を制御するための演算を実行する。この演算については、追って説明する。
【0034】
インフラセンサ装置3は、インフラセンサコントローラ31およびインフラセンサ32を有する。ここで、インフラセンサコントローラ31は、移動体コントローラ11と同様に、センサ処理部31-1を有する。インフラセンサ32は、移動体の移動を検知し、その信号をセンサ処理部31-1に出力する。そして、センサ処理部31-1は、検知された信号を物体情報542に変換し、安全制御サーバ5へ出力する。
【0035】
次に、安全制御サーバ5について説明する。安全制御サーバ5は、その制御体系化下にある移動体2の制御を実現するための演算を実行する。このために、安全制御サーバ5は、安全ルールDB6に格納される安全ルール61や移動体1-(a)、移動体2やインフラセンサ装置3からの物体情報542を用いる。
【0036】
ここで、安全制御サーバ5は、安全ルール調整部5310、行動計画調整部5320、行動調整部5330および起動制御部5340を有する。これらは、図2に示す処理部52に対応する。より具体的には、各コンピュータプログラムに従った演算を、各部で実行することになる。以下は、その対応関係を示す。なお、制御エリア観測部5350は、図2におけるI/F部51に該当する。
安全ルール調整プログラム531:安全ルール調整部5310
行動計画調整プログラム532:行動計画調整部5320
行動調整プログラム533:行動調整部5330
起動制御プログラム534:起動制御部5340
以下、各部の機能について簡単に説明する。なお、その詳細は、フローチャートを用いて、別途説明する。
【0037】
起動制御部5340は、安全ルール調整部5310、行動計画調整部5320および行動調整部5330の起動を制御する。また、制御エリア観測部5350は、各移動体やインフラセンサ装置3から物体情報542を取得する。また、安全ルール調整部5310は、安全ルールDB6にアクセスし、物体情報542を用いて、安全ルール61の調整(修正を含む)を行う。
【0038】
さらに、行動計画調整部5320は、安全ルール調整部5310からの安全ルール61や制御エリア観測部5350からの物体情報542を用いて、移動体2の行動計画541の調整(含む修正)を行う。そして、行動計画調整部5320は、移動体2に対する行動計画調整指示や安全ルール調整指示を出力する。なお、安全ルール調整指示の出力は、安全ルール調整部5310が行ってもよい。またさらに、行動調整部5330は、安全ルール調整部5310からの安全ルール61や行動計画調整部5320からの行動計画541を用いて、行動調整指示を出力する。行動調整指示には、行動の継続や停止を含む。ここで、行動の継続の場合、行動調整部5330は、行動調整指示の出力を抑止することで、実現してもよい。また、図4には、本実施例の移動体1-(b)を示さないが、人である移動体1-(b)に、移動体1-(a)と同様の構成を設けてもよい。例えば、ウェアラブルコンピュータやスマートフォンのような端末装置を、人に携帯させて実現することができる。
【0039】
次に、図5A図5B図6Aおよび図6Bを用いて、本実施例で用いられる情報について説明する。図5Aおよび図5Bに、本実施例で用いられる安全ルール61を示す。安全ルール61は、移動体2の走行を規定する規則である。本実施例では、安全ルール61は、安全ルール61を識別する安全ルールIDごとに、行動(走行)における条件および行動を対応付けている。
【0040】
ここで、図5Aは、本実施例における安全ルール61をネガティブリストで構成した例を示す図である。このため、行動における条件として、行動で禁止される禁止条件を用いている。この結果、このネガティブリストでは、禁止条件とこの条件を満たした場合の行動、つまり、走行における制御の内容を対応付けていることになる。
【0041】
ここで、図5Aにおいて、禁止条件には、開始時刻(経過時間)、環境条件および直前行動が含まれる。開始時刻は、移動体2がその行動が行われる経過時間を示す。また、環境条件は、他の物体(移動体や障害物を含む)との距離などの条件を示す。さらに、直前行動とは、移動体2の一定期間以内の行動を示す。これらは一例であり、移動体2の行動において、その行動が禁止、つまり、避けるべき行動である場合の条件であれば示されればよい。このため、開始時刻(経過時間)、環境条件および直前行動以外の項目を設けてもよいし、これらの一部を省略してもよい。そして、安全ルール61の行動は、これらを満たした場合、移動体2に対する制御の内容を示す。図5Aでは、行動の例として、停止を挙げたが、移動体2がフォークリフトである場合、以下のような詳細な内容であってもよい。「x°の方向に(速度)m/sで動くアームを(高さ)cm上げる/下げる。そして、(反)時計方向にy°旋回する。」
なお、安全ルール61はネガティブリストには限定されない。次にポジティブリストで安全ルール61を構成した例を説明する。図5Bは、本実施例における安全ルール61をポジティブリストで構成した例を示す図である。このポジティブリストは、図5Aのネガティブリストと比較して、形式上禁止条件が許可条件に変更されている。
【0042】
図5B上、許可条件とは、移動体2の行動において、ポジティブリストに含まれる行動、つまり、許容される行動を行う際の条件を示す。このため、ネガティブリストとポジティブリストでは、その環境情報が相反する条件となる。また、その行動も別内容となる。なお、安全ルール61において、行動は別情報として、リンクを張る構成としてもよい。さらに、安全ルール61を、ネガティブリストおよびポジティブリストの組み合わせで実現してもよい。
【0043】
次に、図6Aに、本実施例で用いられる行動計画541を示す。行動計画541は、安全ルール61に基づく情報であり、行動の計画を示す。このため、本実施例の行動計画541もポジティブリストの性質を有するが、これに限定されない。
【0044】
ここで、行動計画541は、行動計画を識別する行動計画IDごとに、行動開始条件、行動終了条件および行動を対応付けている。行動開始条件は、安全ルール61の許可条件と同様である。また、行動終了条件は、対応する行動を終了する際の条件を示す。また、行動も安全ルール61と同様の項目である。なお、行動計画541も、図6Aに示す内容に限定されない。
【0045】
ここで、図6Bは、グラフ表現で行動計画541を模式的に表した図である。図6Bにおいて、矢印が移動体2の各行動を示す。そして、丸部分が行動開始条件、バツ部分が行動終了条件を示す。このように、矢印の集合で、移動体2の時系列の行動全体を規定することになる。このため、図中行動Aの直前行動は、その矢印が示す「X°の方向に(速度)m/sで動く」と特定できる。
【0046】
なお、より好適には、安全ルール61は移動体2の衝突などの競合を避けるための安全性を考慮した情報であり、行動計画541は、安全性に加え移動体2での作業、業務の効率性も考慮した情報であることが望ましい。つまり、安全ルール61は、制御対象における競合を回避するための行動規則を規定し、行動計画541は、制御対象における競合の回避および機能を発揮するための行動規則を示す。
【0047】
以上で、本実施例で用いられる情報の説明を終わり、以下本実施例の処理の詳細を説明する。図7は、本実施例における処理手順を示すフローチャートである。ここで、図7を説明する前に、本フローチャートの前提について説明する。図1の環境において、各移動体が環境内で走行、つまり、行動している。この際、各移動体およびインフラセンサ装置3がその走行の状況(走行状況)を検知している。具体的には、移動体1-(a)は、自身の移動体センサ12により障害物等の他の物体や自身の走行状況を検知する。
【0048】
また、移動体2も、自身の移動体センサ22により障害物等の他の物体や自身の走行状況を検知する。さらに、インフラセンサ装置3も、インフラセンサ32により障害物等の物体や各移動体の走行状況を検知する。なお、走行状況には、停止している物体、移動体を検知することも含まれる。
【0049】
そして、各装置において、センサ処理部で、走行状況を示す信号を、情報処理可能な情報である物体情報542に変換する。具体的には、移動体1-(a)において、移動体コントローラ11のセンサ処理部11-1が、移動体センサ12で検知した信号を、物体情報542に変換する。そして、物体情報542を、センサ処理部11-1からネットワーク7を介して、安全制御サーバ5の制御エリア観測部5350へ出力する。
【0050】
また、移動体2において、車載コントローラ21のセンサ処理部21-1が、移動体センサ22で検知した信号を、物体情報542に変換する。そして、物体情報542を、センサ処理部21-1からネットワーク7を介して、安全制御サーバ5の制御エリア観測部5350へ出力する。
【0051】
さらに、インフラセンサ装置3において、インフラセンサコントローラ31のセンサ処理部31-1が、インフラセンサ32で検知した信号を、物体情報542に変換する。そして、物体情報542を、センサ処理部31-1からネットワーク7を介して、安全制御サーバ5の制御エリア観測部5350へ出力する。なお、インフラセンサ装置3については、省略してもよい。さらに、インフラセンサ装置3に限定して、各移動体の移動体センサの利用を省略してもよいし、移動体センサを備えない移動体に対して制御について考慮してもよい。
【0052】
またさらに、移動体2は、自身の行動計画541を記憶媒体に記憶している。そして、行動計画制御部21-2が、センサ処理部21-1からの物体情報542および自身の行動計画541に基づいて、行動指示を作成する。そして、行動計画制御部21-2が、当該行動指示を行動制御部21-3に出力する。これを受けて、行動制御部21-3が移動体アクチュエータ23に制御信号を出力する。このことで、移動体2は、行動計画541に基づく走行を実行することになる。
【0053】
以下、各ステップの主体を、図4の機能ブロック図の各部を用いて説明する。まず、ステップS01において、制御エリア観測部5350は、各センサ処理部からの物体情報542を取得する。
【0054】
次に、ステップS02において、起動制御部5340は、ステップS01における物体情報542の取得をトリガーに、行動調整部5330を起動させる。そして、行動調整部5330は、ステップS02で取得された物体情報542を用いて、各移動体2(移動体2-(a)、2-(b))において、競合を発生するかを判断する。ここで、競合の発生は、その可能性を示す数値が所定値以上かで判断してもよい。より具体的には、行動調整部5330は、物体情報542が示す各移動体2のいずれの行動が、安全ルール61もしくは行動計画541の禁止条件を満たすかを判断する。この結果、満たさない場合(No)は、ステップS03に遷移する。また、満たす場合(Yes)は、ステップS04に遷移する。なお、ここでは、禁止条件を満たすかを判断しているが、安全ルール61として、図5Bに示すようなポジティブリストを用いる場合、許可条件を満たさないかで判断してもよい。
【0055】
次に、ステップS03において、行動調整部5330は、移動体2の車載コントローラ21に対して、ネットワーク7を介して、行動調整指示としてその際の行動を維持する指示を送信する。この際、行動調整部5330は、制御エリア観測部5350のようなI/F部51のような通信機能を有する構成を用いることが望ましい。以下、安全制御サーバ5での通信では同様である。また、ステップS03において、行動調整部5330は、指示送信を行わず、静観する処理を実行してもよい。そして、ステップS01に戻る。
【0056】
また、ステップS04において、行動調整部5330は、移動体2の車載コントローラ21に対して、ネットワーク7を介して、行動調整指示としてその際の行動を停止する指示を送信する。この場合、この行動調整指示として、安全ルール61ないし行動計画541の行動に記述された行動調整指示を送信してもよい。このように、本ステップでは、移動体2の走行に変更をもたらすことになる。
【0057】
これら、ステップS03およびS04の結果、移動体2の行動制御部21-3は、行動調整部5330から出力された行動調整指示に従った制御信号を作成する。そして、行動制御部21-3は、移動体アクチュエータ23に対して、制御信号を出力する。このことで、移動体2は、行動調整指示に従った走行が可能となる。
【0058】
次に、ステップS05において、起動制御部5340は、行動計画541の調整が必要かを判断する。例えば、起動制御部5340は、ステップS04での行動調整が所定条件を満たすかを判断する。この結果、所定条件を満たさない場合(No)は、ステップS06に遷移する。また、所定条件を満たす場合(Yes)は、ステップS07に遷移する。この所定条件の一例としては、所定期間内の行動の調整回数、つまり、調整の頻度が含まれる。この場合、本ステップにおいて、起動制御部5340は、予め定めた閾値以上であるかを判断することになる。
【0059】
次に、ステップS06において、行動計画を維持、つまり、そのまま特段の処理を実行しないで、ステップS01に戻る。
【0060】
また、ステップS07において、起動制御部5340は、行動計画調整部5320を起動する。そして、行動計画調整部5320が、行動計画541を調整する。つまり、行動計画調整部5320が、補助記憶装置54に格納された行動計画541を修正する。また、行動計画調整部5320は、修正された行動計画541を、ネットワーク7を介して移動体2のそれぞれに出力する。
【0061】
なお、本ステップの実行タイミングは、ステップS05と同一期間内(リアルタイム反映)であってもよいし、別期間(バッチ反映)であってもよい。リアルタイム反映の場合、行動計画調整部5320は、例えば、ステップS05の実行時間内や実行日内にステップS07を実行してもよい。バッチ反映の場合、ステップS05の実行日の翌日や当日の制御終了後に、他の調整と併せて行わることになる。なお、リアルタイム反映とバッチ反映においては、ステップS05の判断基準を変更することが望ましい。例えば、閾値の場合、リアルタイム反映の閾値を変更することが望ましい。リアルタイム反映の閾値をより大きくすることで、制御中の行動計画の調整回数を抑止することができる。
【0062】
ここで、行動計画541の調整の具体例を、図8Aおよび図8Bを用いて、説明する。図8Aは、本実施例における行動計画の調整として、優先度を変更する具体例を説明する図である。本例では、行動計画541は、図6Aに示す行動計画541に比べ、各レコードに優先度を追加されている。これは、各移動体2の行動を制御する場合に、用いる行動計画の優先度合を示す。
【0063】
本ステップにおいて、行動計画調整部5320は、行動計画調整の要因となった行動を特定する。例えば、行動計画調整部5320は、ステップS05での所定条件を満たすことになった行動を特定する。そして、行動計画調整部5320は、これに該当する行動計画を特定する。つまり、行動計画調整部5320は、ステップS02における禁止条件における行動開始条件を特定する。例えば、図8Aの例では、行動計画ID=00011の行動開始条件が特定されている。
【0064】
次に、行動計画調整部5320は、特定された行動開始条件を含むレコードの優先度を下げる。図8Aの例では、行動計画調整部5320は、優先度2から3以降に優先度を変更することになる。
【0065】
次に、図8Bは、本実施例における行動計画の調整として、条件を追加する具体例を説明する図である。図8Aと同様に、本例でも行動計画調整部5320は、ステップS02における禁止条件における行動開始条件を特定する。本例でも、行動計画ID=00011の行動開始条件が特定されている。
【0066】
次に、行動計画調整部5320は、特定された行動開始条件のうち、開始条件に排他制御を追加する。この追加処理は、排他制御を有効化する処理であってもよい。なお、この排他制御には、いわゆるセマフォーが含まれる。
【0067】
以上で、行動計画の調整、つまり、ステップS07の説明を終了し、ステップS08の説明に移る。ステップS08において、起動制御部5340は、安全ルール61の調整が必要かを判断する。例えば、起動制御部5340は、ステップS07での行動計画調整が所定条件を満たすかを判断する。この結果、所定条件を満たさない場合(No)は、ステップS09に遷移する。また、所定条件を満たす場合(Yes)は、ステップS10に遷移する。この所定条件の一例としては、所定期間内の行動の調整回数、つまり、調整の頻度が含まれる。この場合、本ステップにおいて、起動制御部5340は、予め定めた閾値以上であるかを判断することになる。
【0068】
次に、ステップS09において、行動計画を維持、つまり、そのまま特段の処理を実行しないで、ステップS01に戻る。
【0069】
また、ステップS10において、起動制御部5340は、安全ルール調整部5310を起動する。そして、安全ルール調整部5310が、安全ルール61を調整する。つまり、安全ルール調整部5310が、安全ルールDB6に格納された安全ルール61を修正する。
【0070】
なお、本ステップの実行タイミングは、ステップS07と同様に、ステップS08と同一期間内(リアルタイム反映)であってもよいし、別期間(バッチ反映)であってもよい。この場合、ステップS07と同様に、リアルタイム反映とバッチ反映における判断基準を変更することが望ましい。
【0071】
ここで、安全ルール61の調整の具体例を、図9Aおよび図9Bを用いて、説明する。まず、図9Aは、本実施例におけるネガティブリストで構成される安全ルール61の調整の具体例を説明する図である。安全ルール調整部5310は、安全ルール調整の要因となった行動を特定する。例えば、安全ルール調整部5310は、ステップS08での所定条件を満たすことになった行動を特定する。そして、安全ルール調整部5310は、これに該当する安全ルール61を特定する。つまり、安全ルール調整部5310は、ステップS02における禁止条件を特定する。この結果、図9Aに示す安全ルールID=000001の禁止条件が特定されたものとする。
【0072】
そして、安全ルール調整部5310は、追加条件を、図9Aに示すように該当レコードに追加する。この追加条件は、安全ルール調整部5310が、安全ルール調整の要因となった行動における条件を特定してこれを記録することになる。なお、制御において、禁止条件と追加条件は、OR条件として扱われることが望ましい。
【0073】
次に、図9Bは、本実施例におけるポジティブリストで構成される安全ルール61の調整の具体例を説明する図である。安全ルール調整部5310は、安全ルール調整の要因となった行動を特定する。例えば、安全ルール調整部5310は、ステップS08での所定条件を満たすことになった行動を特定する。そして、安全ルール調整部5310は、これに該当する安全ルール61を特定する。つまり、安全ルール調整部5310は、ステップS02における禁止条件を特定する。この結果、図9Bに示す安全ルールID=000001の禁止条件が特定されたものとする。
【0074】
そして、安全ルール調整部5310は、除外条件を、図9Bに示すように該当レコードに追加する。この除外条件は、安全ルール調整部5310が、安全ルール調整の要因となった行動における条件を特定してこれを記録することになる。なお、制御において、禁止条件と除外条件は、AND条件として扱われることが望ましい。
【0075】
このようにして、本実施例においては、制御対象の行動において、競合が発生した場合に、行動調整、行動計画調整および安全ルール調整との順序で調整が行われる。但し、行動調整後に、行動計画調整を省略して、安全ルール調整を行ってもよい。
【0076】
さらに、本実施例では、起動制御部5340が、安全ルール調整部5310、行動計画調整部5320および行動調整部5330を起動する構成としたが、起動制御部5340は無くとも構わない。またさらに、起動制御部5340は、安全ルール調整部5310、行動計画調整部5320および行動調整部5330の少なくとも1つを起動する構成としてもよい。この場合、起動制御部5340が安全ルール調整部5310および行動計画調整部5320を起動し、行動調整部5330は、定常的に稼働する構成とすることが望ましい。なお、図8において、ステップS10の後は、終了となっているが、リアルタイム反映の場合、ステップS03、S06およびS09と同様に、ステップS01に戻ることが望ましい。
【実施例2】
【0077】
次に、本発明を実施例2について、説明する。図10は、本実施例を適用した自動倉庫システムを示す俯瞰図である。図10では、制御エリアである共有領域100において、トラックの積み荷を図中左側の仮置き場に運び、これらについて検品や図示しない倉庫への搬送が行われていることを示す。このため、共有領域100では、トラックから積み荷を無人で荷下ろしし、仮置き場に移動させるトラック積降システムと、倉庫へ搬送する倉庫管理システムとの異種システムが混在していることになる。
【0078】
ここで、トラック積降システムは、自動フォークリフトで代表される無人機械201-(a)を構成要素とする。また、倉庫管理システムは、フォークリフトで代表される有人機械101-(a)、作業員101-(b)を構成要素とする。そして、共有領域100には、インフラセンサ装置3-(a)および3-(b)が設置されている。また、これら各構成要素と、ネットワーク7を介して安全制御サーバ5が接続されている。
【0079】
そして、安全制御サーバ5が、本実施例の自動倉庫システムにおいて、実施例1で説明した処理を実行する。なお、有人機械101-(a)および作業員101-(b)が、実施例1の移動体1-(a)、1-(b)に相当する。さらに、無人機械201-(a)が、移動体2に相当する。
【実施例3】
【0080】
次に、本発明を実施例3について、説明する。本実施例は、自動車が走行する道路上の一部で、建設機械による施工がなされている場面に、本発明を適用したものである。本実施例の処理は、実施例1や実施例2と同様であり適用先が異なる。図11は、本実施例を適用した工事現場1000を示す俯瞰図である。図11において、制御エリアである道路上の工事現場1000で、建設機械を用いた工事を行っている。つまり、片側2車線の道路の片側をふさぐように建設機械や周囲作業員が施工を行っている。
【0081】
ここで、人が運転する自動車群(202-(a)、202-(b))が、道路を走行している。そして、これらを、1つの制御体系である自動車運転システムとする。自動車運転システムは、その場所(道路、駐車場など)に設定されている交通ルールをベースルールとして振る舞うように把握できる。また、自動車システム内の各自動車202-(a)、202-(b)は、図示しない安全制御サーバ5に接続されている。そして、安全制御サーバ5から、各自動車202-(a)、202-(b)の移動体コントローラ11に大域的移動経路が配信され、該当の自動車では自動運転又はオペレータによる手動運転がなされているとする。
【0082】
また、オペレータが運転する建設機械102-(a)を、自動車システムとは異なる制御体系である建設機械システムとする。建設機械102-(a)は、施工計画に則って順番に移動しながら掘削などの施工を行い、施工計画或いは現場の労働安全に関するルール等がベースルールとなる。このように、工事現場1000では異種システムが混在している。
【0083】
そして、これらの各システムのベースルールに基づく各移動体(自動車システムの自動車群、建設機械システムの場合は建設機械102-(a)や作業員)の単独システムでの移動経路は、それぞれ図12(a)(b)に示す通りとなる。なお、図12では、自動車システムでの車線変更の移動経路は省略している。
【0084】
ここで、自動車システムと建設機械システムが、共有領域である工事現場1000内で共存して行動する場合、各自動車(202-(a)、202-(b))は、片側2車線において建設機械システムにより走行不可能である。このため、建設機械システムにふさがれている車線を走行する各自動車(202-(a)、202-(b))は、反対車線を走行する自動車がいる場合は停止し続ける。そして、反対車線を走行する自動車がいなくなると反対車線を利用して建設機械102-(a)を追い越すこととなる。また、両車線の交通量が同程度である場合、片側に渋滞が発生し、自動車システムでのタスク完了時間が延びる可能性が高い。なお、タスク完了とは、自動車の行動、つまり、目的地までの走行を指す。
【0085】
このような環境において、安全制御サーバ5は、実施例1で詳述した処理を行うことで、安全ルール61として、図12(c)に示すような共通移動経路が作成する。なお、本実施例においては、各自動車(202-(a)、202-(b))は、自律制御又は車載装置にガイダンス表示されることで、工事現場1000内の安全性と効率が最適化される。
【実施例4】
【0086】
次に、本発明を実施例4について、図13A図13Bを用いて説明する。実施例4は、制御エリアとして、道路上の交差点に実施例1で詳述した処理を適用した例である。本実施例では、歩行者103-(a)、103-(b)や自動車203-(a)、203-(b)が、信号(203-(c)、203-(d))が設置された交差点に接近しているものとする。なお、歩行者103-(a)、103-(b)は、自転車や軽車両を含む。
【0087】
ここで、歩行者103-(a)、103-(b)が、実施例1の移動体1に相当する。また、自動車203-(a)、203-(b)や信号203-(c)、203-(d)が実施例1の移動体2相当する。つまり、自動車203-(a)、203-(b)や信号203-(c)、203-(d)が、安全制御サーバ5の制御体系下にあるものとする。そして、インフラセンサ装置3が、交差点を含むフィールドを監視し、この内容を示す物体情報を、安全制御サーバ5に通知する。また、信号203-(c)、203-(d)は、交通規制装置の一例であり、安全制御サーバ5と通信して、その表示を制御する。さらに、自動車203-(a)、203-(b)や信号203-(c)、203-(d)が、安全制御サーバ5と通信装置を介して通信することになる。
【0088】
まず、図13Aは、歩行者103-(a)、103-(b)や自動車203-(a)、203-(b)の事故を防止する例、つまり、機械対機械および機械対人間の衝突を防止する例である。ここで、インフラセンサ装置3が交差点内に歩行者103-(a)、103-(b)が侵入しようとすることを検知したものとする。この場合、安全制御サーバ5は、自動車203-(a)、203-(b)や信号203-(c)、203-(d)に、行動調整指示を出力する。つまり、安全制御サーバ5は、自動車203-(a)、203-(b)に対して、制動指示を出力する。また、安全制御サーバ5は、信号203-(c)、203-(d)のうち、自動車向けの信号に対して、赤信号を出力するための指示を出力する。ここで、機械対人間のみを考慮した場合、上記制御で問題ないが、このままでは異なる方向に移動する自動車をそれぞれ停止させてしまうこともある。
【0089】
そこで、本実施例では、安全制御サーバ5は、歩行者103-(a)、103-(b)の交差点への侵入方向を特定する。そして、安全制御サーバ5は、特定された侵入方向では事故が発生する可能性の高い自動車の信号機を赤信号に行動調整を行う。
【0090】
そして、安全制御サーバ5は、以上の行動調整を行い、所定条件を満たした場合、行動計画調整や安全ルール調整を実行する。なお、行動計画調整や安全ルール調整においては、歩行者優先との大原則は維持しながら、これらを実行することが望ましい。
【0091】
次に、図13Bは、本実施例における機械対人の衝突、つまり、自動車203-(a)と歩行者103-(a)、103-(b)の事故を防止するための例を示す図である。この例は、図13Aで説明した歩行者103-(a)、103-(b)を優先した行動調整およびこれ以降の行動計画調整や安全ルール調整を実行することになる。
【0092】
最後に、図13Cは、本実施例における機械対機械の衝突、つまり、自動車203-(a)と自動車203-(b)の事故を防止するための例を示す図である。赤信号側の自動車が速度超過であり、交差点前での停止が困難な場合、安全制御サーバ5が行動調整を行う。つまり、行動調整として、信号の青信号と赤信号を変更する。そして、安全制御サーバ5は、この行動調整が所定条件を満たす場合、信号の変更間隔を変更することを含む行動計画調整や安全ルール調整を実行する。
【0093】
さらに、本例では、本例の行動調整およびこれに続く計画調整や安全ルール調整においては、赤信号側の道路で渋滞が発生し、青信号側の交通量がより少ない場合、信号機の信号を変更する行動調整を行ってもよい。そして、安全制御サーバ5は、以降計画調整や安全ルール調整を実行する。この場合、行動計画調整や安全ルール調整においては、信号の変更間隔を変更することが含まれる。また、この変更間隔の変更においては、時間帯で変更間隔が異なることが含まれる。
【実施例5】
【0094】
次に、本発明を実施例5について、図14を用いて説明する。実施例5は、制御エリアとして、電力網10000に実施例1の処理を適用した例である。図14に、実施例5の電力網10000を示す。図14において、電力網10000には、一般家庭や事業者、工場などの需要家104-(a)、104-(b)が接続されている。また、電力網10000には、発電所204-(a)、204-(b)やいわゆる分散電源204-(c)も接続されている。そして、安全制御サーバ5と発電所204-(a)、204-(b)や分散電源204-(c)の制御装置が、ネットワーク7を介して、接続されている。なお、ネットワーク7には、需要家104-(a)、104-(b)のスマートメーターが接続されていてもよい。
【0095】
さらに、需要家104-(a)、104-(b)、発電所204-(a)、204-(b)や分散電源204-(c)のそれぞれに安全制御サーバ5に相当する装置を設けてもよい。また、本実施例において、需要家104-(a)、104-(b)が実施例1の移動体1に相当する。また、発電所204-(a)、204-(b)や分散電源204-(c)が実施例1の移動体2に相当する。このように、本実施例では、電力の供給側のシステム(制御体系)と需要側のシステム(制御体系)が混在している。この場合、後述する行動調整、行動計画調整や安全ルール調整を、供給側ないし需要側のシステムについて実行することになる。但し、各発電所や工場などを1つのシステムとして捉えてもよい。後述する行動調整、行動計画調整や安全ルール調整を、これらシステムを対象としてもよい。
【0096】
ここで、電力網10000においては、競合として、電力不足(停電を含む)や電力余剰が発生する。そこで、安全制御サーバ5は、このような競合が発生した場合、発電所204-(a)、204-(b)や分散電源204-(c)に、電力制御についての指令、つまり、行動調整指令を出力する。このことで発電所204-(a)、204-(b)や分散電源204-(c)における発電量が制御される。この制御が示す行動調整が所定条件を満たす場合、安全制御サーバ5は、行動計画調整や安全ルール調整を実行する。この行動計画調整や安全ルール調整には、発電スケジュールの作成や修正が含まれる。
【0097】
なお、本実施例では、行動調整として、発電所や電源の発電量を制御する構成としたが、変電所などでの動作を制御してもよい。さらに、安全制御サーバ5は、需要家側に設置されたスマートメーターを制御して、その需要量の制御を行動調整として実行してもよい。
【0098】
以上で、本発明の各実施例の説明を終了する。本発明は、上述した例に限定されず、競合が発生する他の適用先にも適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…移動体1、11…移動体コントローラ、11-1…センサ処理部、12…移動体センサ、2…移動体2、21…車載コントローラ、21-1…センサ処理部、21-2…行動計画制御部、21-3…行動制御部、22…移動体センサ、23…移動体アクチュエータ、3…インフラセンサ装置、31…インフラセンサコントローラ、31-1…センサ処理部、32…インフラセンサ、5…安全制御サーバ、5310…安全ルール調整部、5320…行動計画調整部、5330…行動調整部、5340…起動制御部、5350…制御エリア観測部、6…安全ルールDB
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14