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特許7526690圧力センサを備えた眼用インプラントおよび送達システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】圧力センサを備えた眼用インプラントおよび送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61F9/007 160
A61F9/007 130E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021018884
(22)【出願日】2021-02-09
(62)【分割の表示】P 2018507616の分割
【原出願日】2016-08-12
(65)【公開番号】P2021073003
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-02-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】62/205,588
(32)【優先日】2015-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】バン ミーター、デイビッド セオドア
(72)【発明者】
【氏名】ガルト、ケネス エム.
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】安井 寿儀
【審判官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0275923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0013572(US,A1)
【文献】特開昭62-66834(JP,A)
【文献】特表2011-513002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
基端部から先端部まで延在する通路を画定するカニューレであって、トラフを形成するために前記カニューレの側壁および前記先端部を通って延在する先端開口と、湾曲した先端部分と、湾曲した中間部分と、基端部分とを有し、前記トラフ内に配置された第1の圧力センサをさらに含む、前記カニューレと、
前記カニューレの前記通路内に配置された眼用インプラントと、
前記眼用インプラントの相補的な相互係止部分と係合する先端の相互係止部分を有する送達ツールとを備え、
前記送達ツールは、前記カニューレの前記先端部がシュレム管に挿入されたときに、前記眼用インプラントを前記カニューレの前記通路を通って前記第1の圧力センサを通過して前記シュレム管内に前進させるように構成され、
前記眼用インプラントが前記シュレム管内を前に進められているときに、前記トラフが前記眼用インプラントの外側断面全体を受け入れられるように、前記トラフは、前記眼用インプラントの幅よりも深い深さ寸法を有し、
前記眼用インプラントは、溝穴として形成される複数の開口を有し、前記眼用インプラントを横切って横方向に、及び/又は前記眼用インプラントを通って横方向に房水が流れることを可能にする、システム。
【請求項2】
前記第1の圧力センサは、前記側壁を通って延在する前記先端開口に対向して前記トラフ内に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の圧力センサが微小電気機械システム(MEMS)圧力センサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の圧力センサが、前記第1の圧力センサから遠隔位置にデータを伝送するためのアンテナを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記眼用インプラント上にまたはその中に配置された第2の圧力センサをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の圧力センサが微小電気機械システム(MEMS)圧力センサを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の圧力センサが、前記第2の圧力センサから遠隔位置にデータを伝送するためのアンテナを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記送達ツールの前記先端の相互係止部分および前記眼用インプラントの前記相補的な相互係止部分が、前記送達ツールの前記相互係止部分が前記カニューレの前記トラフに対して基端側にあるときに機械的相互係止接続を形成する、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、限定するものではないが、医療装置および医療装置を製造するための方法に関する。本発明は、概して、眼内に植え込まれる装置に関する。より詳細には、本発明は、眼の1つの領域内から眼の別の領域への流体の移動を容易にする装置に関する。さらに、本開示は、眼用インプラントを眼内へ送達するためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国国立衛生研究所(The United States National Institutes of Health)(NIH)の国立眼科研究所(The National Eye Institute)(NEI)による草案によれば、今や緑内障は世界で不可逆的失明の第1位の原因であり、世界中で白内障に続き失明の第2位の原因である。したがって、NEI草案は、「この病気の病態生理学および取扱いを決定するために相当の注目および資金を充て続けることが重要である」と結論付けている。緑内障研究者は、高い眼内圧と緑内障との間に強い相関を見出している。このため、眼科治療専門家は、眼圧計として知られている装置を用いて眼内圧を測定することにより、患者を緑内障に関して常時検査する。多くの現代の眼圧計は、眼の外側表面に突然空気を吹き込むことによってこの測定を行う。
【0003】
眼は流体で満たされた球体として概念化することができる。眼の内部には2種類の液体がある。水晶体の後ろにある房は、硝子体液として知られる粘性流体で満たされている。水晶体の前にある房は、房水として知られる液体で満たされている。ヒトが物体を見るときは常に、硝子体液と房水との両方を通してその物体を見ている。
【0004】
ヒトが物体を見るときは常に、同じく角膜と眼の水晶体とを通してその物体を見ている。透明であるために、角膜および水晶体は血管を含むことができない。したがって、角膜および水晶体に血液が流れて、これらの組織に栄養を与え、これらの組織から老廃物を除去することはない。代わりに、これらの機能は房水によって行われる。眼を通る房水の連続的な流れは、血管を有さない眼の部分(例えば、角膜および水晶体)に栄養を与える。この房水の流れはまた、これらの組織から老廃物を除去する。
【0005】
房水は、毛様体として知られる器官によって産生される。毛様体は、房水を連続的に分泌する上皮細胞を含む。健康な眼では、新しい房水が毛様体の上皮細胞によって分泌されると、房水の流れは前眼房から流出し、小柱網を通ってシュレム管に流れる。この余分な房水は、シュレム管から静脈血流に入り、静脈血と共に運ばれ、眼を離れる。
【0006】
眼の自然排液機構が適切に機能しなくなると、眼の内側の圧力が上昇し始める。研究者らは、高い眼内圧に長時間さらされると、眼から脳へ感覚情報を伝達する視神経の損傷を引き起こすことを理論化した。視神経に対するこの損傷は、周辺視野の喪失につながる。緑内障が進行するにつれて、ますます多くの視野が失われ、後に患者は完全に失明する。
【0007】
薬物治療に加えて、緑内障のための様々な外科的処置が行われている。例えば、房水を前眼房から眼外静脈へ導くためにシャントが植え込まれた(非特許文献1)。他の早期緑内障治療インプラントは、前眼房から結膜下小疱(sub-conjunctival bleb)までつながった(例えば、(特許文献1)および(特許文献2))。さらに他のものは、前眼房からシュレム管の内側の点までつながるシャントであった((非特許文献2);(特許文献3);(特許文献4))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4,968,296号明細書
【文献】米国特許第5,180,362号明細書
【文献】米国特許第6,450,984号明細書
【文献】米国特許第6,450,984号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】リーおよびシェッペンズ(Lee and Scheppens)著、「水性-静脈シャントおよび眼内圧(Aqueous-venous shunt and intraocular pressure)」、インベスチゲイティブ・オフサルモロジー(Investigative Opthalmology)、1966年2月
【文献】スピーゲル(Spiegel)ら著、「シュレム管インプラント:POAG患者の眼内圧を下げる新しい方法?(Schlemm’s canal implant:a new method to lower intraocular pressure in patients with POAG?)」、オプタルミック・サージェリ・アンド・レーザズ(Ophthalmic Surgery and Lasers)、1999年6月
【発明の概要】
【0010】
本開示は、医療装置のための設計、材料、および製造方法の代替形態を提供する。
第1の例では、眼のシュレム管の一部内に少なくとも部分的に存在するように適合された眼用インプラントは、内側表面および外側表面を有する管状本体であって、管状本体は湾曲した体積内に延在し、湾曲した体積の長手方向軸が円弧を形成している、管状本体と、管状本体内に形成された複数の開口領域および支柱領域であって、支柱領域が複数の開口領域を取り囲む、複数の開口領域および支柱領域と、管状本体の内側表面に配置された圧力センサとを含み、管状本体は0.127ミリメートル(0.005インチ)~1.016ミリメートル(0.04インチ)の直径を有する。
【0011】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS:micro-electro-mechanical system)圧力センサを含む。
【0012】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、圧力センサは、圧力センサから遠隔位置にデータを伝送するためのアンテナを含む。
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、データは、遠隔位置から第2の遠隔装置に自動的に伝送される。
【0013】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、支柱領域は、1つまたは複数の背骨領域によって接続される。
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、各支柱領域は、第1の背骨領域と第2の背骨領域との間で長手方向に延在する場合に円周方向に波状となっている。
【0014】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、インプラントは、湾曲した体積にほぼ等しい形状の形状記憶材料から形成される。
別の例示的なシステムは、基端部から先端部まで延在する通路を画定するカニューレであって、トラフを形成するためにカニューレの側壁および先端部を通って延在する先端開口と、湾曲した先端部分と、湾曲した中間部分と、基端部分とを有し、トラフ内に配置された第1の圧力センサをさらに含むカニューレと、カニューレの通路内に配置された眼用インプラントと、眼用インプラントの相補的な相互係止部分と係合する先端の相互係止部分を有する送達ツールとを含む。
【0015】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、第1の圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサを含む。
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、第1の圧力センサは、第1の圧力センサから遠隔位置にデータを伝送するためのアンテナを含む。
【0016】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、眼用インプラント上にまたはその中に配置された第2の圧力センサをさらに含む。
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、第2の圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサを含む。
【0017】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、第2の圧力センサは、第2の圧力センサから遠隔位置にデータを伝送するためのアンテナを含む。
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、送達ツールの先端の相互係止部分および眼用インプラントの相補的な相互係止部分は、送達ツールの相互係止部分がカニューレのトラフに対して基端側にあるときに機械的相互係止接続を形成する。
【0018】
別の例示的な眼用インプラントキットは、眼のシュレム管の一部内に少なくとも部分的に存在するように適合された眼用インプラントを含み、インプラントは、内側表面および外側表面を有する管状本体であって、管状本体は湾曲した体積内に延在し、湾曲した体積の長手方向軸が円弧を形成している、管状本体と、管状本体内に形成された複数の開口領域および支柱領域であって、支柱領域が複数の開口領域を取り囲む、複数の開口領域および支柱領域と、管状本体の内側表面に配置された第1の圧力センサとを含み、管状本体は0.127ミリメートル(0.005インチ)~1.016ミリメートル(0.04インチ)の直径を有する。キットは、基端部から先端部まで延在する通路を画定するカニューレであって、トラフを形成するためにカニューレの側壁および先端部を通って延在する先端開口と、湾曲した先端部分と、湾曲した中間部分と、基端部分とを有するカニューレと、眼用インプラントの相補的な相互係止部分と係合する先端の相互係止部分を有する送達ツールとをさらに含む。
【0019】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、第1の圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサを含む。
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、第1の圧力センサは、第1の圧力センサから遠隔位置にデータを伝送するためのアンテナを含む。
【0020】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、データは、遠隔位置から第2の遠隔装置に自動的に伝送される。
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、カニューレのトラフ内に配置された第2の圧力センサをさらに含む。
【0021】
上記の実施形態のいずれかの代わりにまたはそれに加えて、第2の圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサを含み、かつ第2の圧力センサから遠隔位置にデータを伝送するためのアンテナを含む。
【0022】
いくつかの例および実施形態の上記概要は、本開示の各開示された実施形態またはすべての実施形態を説明することを意図するものではない。以下の図面の簡単な説明および詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示するものであるが、同じく例示的なものであり限定するものでない。
【0023】
本開示は、添付の図面に関連する様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することにより、より詳細に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ヒトの眼の一部とシュレム管内に配置された眼用インプラントの一部とを示す概略斜視図である。
図2図1のインプラントの一部を示す拡大斜視図である。
図3図1および図2の眼用インプラントの本体によって画定された体積を示す斜視図である。
図4】眼用インプラントの本体と交差する第1の面を示す斜視図である。
図5】眼用インプラントに適用される曲げモーメントを示す斜視図である。
図6図5に示されるインプラントの平面図であるが、曲げモーメントの記載はない。
図7A-7B】図7Aは、図6の断面線A-Aに沿って取られた図6の眼用インプラントの横方向断面図であり、図7Bは、図6の断面線B-Bに沿って取られた図6の眼用インプラントの横方向断面図である。
図8図6の断面線B-Bに沿って取られた図6の眼用インプラントの拡大断面図である。
図9図6の断面線A-Aに沿って取られた図6の眼用インプラントの拡大断面図である。
図10A】圧力センサを含む眼用インプラントの一部の拡大斜視図である。
図10B】線B-Bに沿って取られた図10Aの例示的な圧力センサの断面図である。
図10C】圧力センサを含む眼用インプラントの別の部分の拡大斜視図である。
図11】植え込まれた眼用インプラントからのデータを受信する電子装置の概略図である。
図12】その長さに沿って変化する長手方向の曲率半径を有する本発明の別の実施形態による眼用インプラントを示す平面図である。
図13】実質的に曲率半径を有さない本発明のさらに別の実施形態による眼用インプラントを示す斜視図である。
図14】この詳細な説明に従う医療処置の概略図である。
図15図14に示される送達システムおよび眼をさらに示す拡大斜視図である。
図16A-16B】図16Aは、眼用インプラントと、眼用インプラントを摺動可能に受け入れるように寸法決めされた通路を画定するカニューレとを含む送達システムを示す斜視図であり、図16Bは、図6Aに示される眼用インプラントとカニューレ108とをさらに示す拡大詳細図である。
図17】詳細な説明に従うカニューレの斜視図である。
図18図17に示すカニューレと、カニューレによって画定された通路内に存在する眼用インプラントとを含むアセンブリの斜視図である。
図19図18に示すアセンブリを含む概略斜視図である。
図20図19のアセンブリ内に示すカニューレの一部を示す拡大斜視図である。
図21】前の図20に示す眼用インプラントおよびカニューレを示す追加的な斜視図である。
図22図21に示す眼用インプラントおよびカニューレを示す追加的な斜視図である。
図23図21および22に示す眼用インプラントおよびカニューレを示す追加的な斜視図である。
図24図23に示すカニューレが引き抜かれて眼用インプラントの入口部分が前眼房内に残り、眼用インプラントの残りの部分がシュレム管内に残った後のシュレム管の斜視図である。
図25A-25B】図25Aは、眼用インプラントと、眼用インプラントを摺動可能に受け入れるように寸法決めされた通路を画定するカニューレとを含む別の例示的な送達システムを示す斜視図であり、図25Bは、図25Aに示す眼用インプラントおよびカニューレをさらに示す拡大詳細図である。
図26図25に示す送達システムと眼とをさらに示す拡大詳細図である。
図27図25に示す送達システムをさらに示す斜視図である。
図28図25に示すカニューレをさらに示す側面図である。
図28A図25に示すカニューレを示す追加的な側面図である。
図29図25に示すカニューレをさらに示す拡大詳細図である。
図30図25に示すカニューレの先端部分をさらに示す拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、様々な修正形態および代替形態に修正可能である一方、その特定のものを例として図面に示し、これより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、記載した特定の実施形態に本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。反対に、本発明は、本開示の趣旨および範囲内にあるすべての修正形態、均等物および代替形態を網羅する。
【0026】
以下の記載は、図面を参照して理解されるべきであり、図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、図面中、いくつかの図を通して同様の参照番号は同様の要素を示す。当業者であれば、記載されおよび/または示される様々な要素は、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組合せおよび構成で構成され得ることを認識するであろう。詳細な説明および図面は、特許請求される本発明の例としての実施形態を示す。
【0027】
特定の用語の定義を以下に提示する。これらの定義は、異なる定義が特許請求の範囲または本明細書の他の箇所で与えられない限り適用される。
すべての数値は、本明細書中、明示的に示されているかどうかにかかわらず、「約」という用語で修飾されていると考えられる。「約」という用語は、一般に、当業者が、示されている値と均等である(すなわち、同じまたは実質的に同じ機能または結果を有する)とみなし得る数字の範囲に言及する。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含んでもよい。「約」という用語の他の(すなわち、数値以外に関連する)使用は、特に断りのない限り、本明細書に関連して理解されかつそれと矛盾しないようなそれらの一般的かつ慣習的な定義を有すると考えられ得る。
【0028】
終点による数値範囲の列挙は、その範囲内のすべての数値を含む(例えば、1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される際、単数形「1つの」、および「その」は、特に断りのない限り、単数形および複数形の対象を含むか、または指す。本明細書および特許請求の範囲で使用される際、「または」という用語は、特に断りのない限り、「および/または」を含むように一般的に用いられる。
【0029】
本明細書中の「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」等への言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、すべての実施形態がその特徴、構造または特性を必ずしも含まなくてもよいことを示すことに注意されたい。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態に言及しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性がある実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、それとは反対に明確に述べられていない限り、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造または特性に影響を及ぼすことは当業者の認識内にあるであろう。すなわち、以下に記載される様々な各要素は、特定の組合せで明示的に示されていないとしても、それにもかかわらず、当業者によって理解され得るように、他の追加的な実施形態を形成するかまたは記載された実施形態を実行および/もしくは強化するために組合せ可能であるか、または互いに構成され得ることが考えられる。
【0030】
以下の詳細な説明は図面を参照して理解されるべきであり、異なる図面中の同様の要素は同じ参照番号で識別される。各図面は、必ずしも一定の縮尺ではないが、例示的な実施形態を示し、本開示の範囲を限定することは意図されない。
【0031】
図1は、ヒトの眼20の一部を示す概略斜視図である。眼20は、2つの眼房を有する流体で満たされた球体として概念化されている。眼20の強膜22は、硝子体液として知られる粘性流体で満たされた後眼房24を取り囲む。眼20の角膜26は、房水として知られる流体で満たされた前眼房30を包み込む。角膜26は、眼20の縁28で強膜22と接する。眼20の水晶体32は、前眼房30と後眼房24との間に配置される。水晶体32は、多数の毛様小帯34によって適所に保持される。人間が物体を見るときは常に、角膜、房水、および眼の水晶体を通して物体を見ている。透明であるために、角膜および水晶体は血管を含まない。したがって、血液が角膜および水晶体を通って流れ、これらの組織に栄養を与え、およびこれらの組織から老廃物を除去することはない。代わりに、これらの機能は房水によって行われる。眼を通る房水の連続的な流れは、血管のない眼の部分(例えば、角膜および水晶体)に栄養を与える。この房水の流れはまた、これらの組織から老廃物を除去する。
【0032】
房水は、毛様体として知られる器官によって産生される。毛様体は、房水を連続的に分泌する上皮細胞を含む。健康な眼内では、房水の流れは、新しい房水が毛様体の上皮細胞によって分泌されるときに眼から流れ出る。この余分な房水は血流に入り、眼を離れる静脈血によって運び去られる。
【0033】
健康な眼内において、房水は、小柱網36を通って前眼房30から流れ出て、虹彩42の外縁に位置するシュレム管38に入る。房水は、多数の出口40を通って流れることによってシュレム管38を出る。シュレム管38を離れた後、房水は静脈血の流れに吸収される。
【0034】
図1では、眼用インプラント100は、眼20のシュレム管38内に配置されている。眼用インプラント100は、複数の組織支持フレーム104と、複数の背骨106とを含む本体102を有する。本体102はまた、第1の開口124を画定する第1の縁部120および第2の縁部122を含む。第1の開口124は溝穴として形成され、本体102の内側表面128によって画定された長尺状の流路126と流体連通している。図1を参照すると、第1の開口124は本体102の外側130に配置されていることが認識される。したがって、流路126は、第1の開口124を経由して半径方向に外向きの方向132に開口する。
【0035】
眼用インプラント100は、前眼房から流出する房水の流れを促進するために、ヒトの眼のシュレム管に挿入されてもよい。この流れは、シュレム管に沿った軸方向の流れを含み、前眼房からシュレム管に流れ込み、シュレム管と連通する出口を経由してシュレム管から流れ去る。眼内の所定位置にある場合、眼用インプラント100は、小柱網組織およびシュレム管組織を支持し、(小柱網を介した)前眼房とシュレム管との間の、およびシュレム管に沿ったポケットまたは区画間の改善された連通を提供する。図1に示されるように、インプラントは、好ましくは、第1の開口124がシュレム管内で半径方向外向きに配置されるように向けられる。
【0036】
図2は、前の図に示された眼用インプラント100の一部を示す拡大斜視図である。眼用インプラント100は、概ね湾曲した長手方向軸134に沿って延在する本体102を有する。本体102は、複数の組織支持フレーム104と、複数の背骨106とを有する。図2に示すように、これらの背骨106およびフレーム104は、各Aが組織支持フレームであり、各Bが背骨である反復ABパターンで配置される。図2の実施形態では、1本の背骨がフレーム104の各隣接する対間に延在する。
【0037】
本体102のフレーム104は、第1の背骨140と第2の背骨142との間に配置された眼用インプラント100の第1のフレーム136を含む。図2の実施形態では、第1のフレーム136は、第1の背骨140と第2の背骨142との間に延在する第1の支柱144として形成される。第1のフレーム136は、第1の背骨140と第2の背骨142との間に延在する第2の支柱146も含む。図2の例示的実施形態では、各支柱は、第1の背骨140と第2の背骨142との間を長手方向に延びる場合に円周方向に波状となっている。
【0038】
図2の実施形態では、本体102は、長手方向の半径150および横方向の半径148を有する。眼用インプラント100の本体102は、第1の開口124を画定する第1の縁部120および第2の縁部122を含む。第1の開口124は、本体102の内側表面128によって画定された長手方向流路126と流体連通する。第2の開口138は、第1の支柱144の第2の縁部122Aおよび第2の支柱146の第2の縁部122Bによって画定される。第1の開口124、第2の開口138および眼用インプラント100によって規定される追加の開口は、眼用インプラント100を横切って横方向におよび/または眼用インプラント100を通って横方向に房水が流れることを可能にする。本体102の外側表面は、容積152を画定する。
【0039】
図3は、前の図に示された眼用インプラントの本体によって画定された容積152を示す追加の斜視図である。図3を参照すると、容積152は、概ね湾曲した長手方向軸134に沿って延在することが理解されるであろう。容積152は、長手方向の半径150、横方向の半径148、およびほぼ円形の横方向の断面153を有する。
【0040】
図4は、眼用インプラント100と交差する第1の平面154および第2の平面155を示す斜視図である。図4では、第1の平面154は斜線を付けて描かれている。図4を参照すると、本体102の背骨106は、概ね互いに整列しており、第1の平面154は、図4に示すすべての背骨106と交差していることが理解されるであろう。図4の実施形態では、眼用インプラント100の本体102は、第1の平面154を中心に概して対称である。
【0041】
図4の実施形態では、本体102の可撓性は、本体102が第1の平面154に沿って曲がっているときに最大であり、本体102は、第1の平面154以外の平面(例えば、第1の平面154と交差する平面)に沿って曲がっているときに可撓性が低い。例えば、図4に示す実施形態では、本体102は、第2の平面155に沿って曲げられたとき、第1の平面154に沿って曲がるときに本体102が有する第1の可撓性より低い第2の可撓性を有する。
【0042】
換言すれば、図4の実施形態では、本体102の曲げ弾性率は、本体102が第1の平面154に沿って曲げられるときに最小である。本体102は、第1の平面154に沿って曲げられたときに第1の曲げ弾性率を有し、第1の平面154以外の平面(例えば、第1の平面154と交差する平面)に沿って曲げられたときにより高い曲げ弾性率を有する。例えば、図4に示す実施形態では、本体102は、第2の平面155に沿って曲げられたとき、第1の平面154に沿って曲げられたときに本体102が有する第1の曲げ弾性率より高い第2の曲げ弾性率を有する。
【0043】
図5は、前の図に示された眼用インプラント100の一部を示す拡大斜視図である。図5の例示的な実施形態では、曲げモーメントMが眼用インプラント100の本体102に加えられている。曲げモーメントMは、第1の平面154にほぼ直交する第1の軸156の周りに作用する。第2の軸158および第3の軸160が同じく図5に示されている。第2の軸158は、第1の軸156に対してほぼ垂直である。第3の軸160は、第1の軸156に対して傾いている。
【0044】
本体102の内側表面128は、流路126を画定する。眼用インプラント100の本体102は、第1の開口124を画定する第1の縁部120および第2の縁部123を含む。眼用インプラント100の流路126は、第1の開口124と流体連通する。第2の開口138は、第1の支柱144の第2の縁部122Aと第2の支柱146の第2の縁部122Bとによって画定される。第1の開口124、第2の開口138および眼用インプラント100によって画定される追加の開口は、眼用インプラント100を横切って横方向におよび/または眼用インプラント100を通って横方向に房水が流れることを可能にする。
【0045】
図5に示されるように、眼用インプラント100は、第1の背骨140および第2の背骨142を有する。第1の支柱144および第2の支柱146は、第1の背骨140と第2の背骨142との間に延在する眼用インプラント100の第1のフレーム136を形成する。図5の例示的な実施形態では、各支柱は、第1の背骨140と第2の背骨142との間で長手方向に延在する場合に円周方向に波状となっている。
【0046】
図5の実施形態では、本体102の可撓性は、本体102が第1の軸156の周りに作用するモーメントによって曲げられるときに最大であり、本体102は、第1の軸156以外の軸(例えば、第2の軸158および第3の軸160)の周りに作用するモーメントによって曲げられるときにより低い可撓性を有する。換言すれば、本体102の曲げ弾性率は、本体102が第1の軸156の周りに作用するモーメントによって曲げられるときに最小であり、本体102は、第1の軸156以外の軸(例えば、第2の軸158および第3の軸160)の周りに作用するモーメントによって曲げられているときにより高い曲げ弾性率を有する。
【0047】
図6は、前の図に示された眼用インプラント100を示す平面図である。図6の実施形態では、眼用インプラント100の本体102に外力は作用せず、本体102は、図6に示す概ね湾曲した休止形状を自由に取ることができる。本体102は、本体102の外側130に配置された第1の開口124を画定する。流路126は、本体102の内側表面によって画定され、第1の開口124を介して半径方向外向き方向132に開口する。眼用インプラント100の基端部101は、送達ツールの相補的な相互係止部分と嵌合および/または係合するように構成された相互係止部分を含んでもよい。断面線A-AおよびB-Bを図6に見ることができる。断面線A-Aは、眼用インプラント100の第1のフレーム136と交差している。断面線B-Bは、眼用インプラント100の第1の背骨140と交差している。
【0048】
図7Aは、前の図に示された切断線A-Aに沿った眼用インプラント100の横方向断面図である。断面線A-Aは、これらの支柱の円周方向の波状のうねりが最大になる点で第1のフレーム136の第1の支柱144および第2の支柱146と交差する。眼用インプラント100の本体102は、長手方向の半径150および横方向の半径148を有する。本体102の内側表面128は、流路126を画定する。第1の開口124は、流路126と流体連通する。
【0049】
図7Aにおいて、本体102の第1の開口124は、第1の支柱144の第1の縁部120Aと第2の支柱146の第1の縁部120Bとの間に延在することが分かる。図7Aを参照すると、第2の支柱146は、第1の支柱144の形状の鏡像である形状を有することが理解されるであろう。
【0050】
図7Bは、前の図に示された切断線B-Bに沿った眼用インプラント100の横方向断面図である。断面線B-Bは、眼用インプラント100の第1の背骨140と交差する。本体102は、長手方向の半径150および横方向の半径148を有する。図7Bの実施形態では、横方向の半径148の中心159および長手方向の半径150の中心163は、第1の背骨140の両側に配置される。横方向の半径148の中心159は、第1の背骨140の第1の側に配置される。長手方向の半径150の中心163は、第2の背骨142の第2の側に配置される。
【0051】
図8は、図6の切断線B-Bに沿った眼用インプラント100の拡大断面図である。第1の背骨140は、第1の主側面161、第2の主側面162、第1の副側面164、および第2の副側面166を含む。図8を参照すると、第1の主側面161は、凹面168を含むことが理解されるであろう。第2の主側面162は、第1の主側面161の反対側にある。図8の実施形態では、第2の主側面162は、凸面170を含む。
【0052】
背骨の幾何学的形状は、眼用インプラントをシュレム管内に進めるのを促進することができる可撓性特性を眼用インプラントに提供する。図8の実施形態では、第1の背骨140は、第1の主側面161と第2の主側面162との間に延在する厚さT1を有する。同じく図8の実施形態では、第1の背骨140は、第1の副側面164と第2の副側面166との間に延在する幅W1を有する。
【0053】
いくつかの有用な実施形態では、この詳細な説明による眼用インプラントの背骨は、約2を超える幅W1対厚さT1のアスペクト比を有する。いくつかの特に有用な実施形態では、この詳細な説明による眼用インプラントの背骨は、約4を超える幅W1対厚さT1のアスペクト比を有する。1つの有用な実施形態において、眼用インプラントは、約5.2の幅W1対厚さT1のアスペクト比を有する背骨を有する。
【0054】
第1の軸156、第2の軸158および第3の軸160が図8に示されている。第2の軸158は、第1の軸156に対してほぼ垂直である。第3の軸160は、第1の軸156に対して傾いている。
【0055】
図8の実施形態では、第1の背骨140の可撓性は、第1の背骨140が第1の軸156の周りに作用するモーメントによって曲げられるときに最大である。第1の背骨140は、第1の軸156の周りに作用するモーメントによって曲げられたときに第1の可撓性を有し、第1の軸156以外の軸(例えば、第2の軸158および第3の軸160)の周りに作用するモーメントによって曲げられたときにより低い可撓性を有する。例えば、第1の背骨140は、図8に示す第2の軸158の周りに作用するモーメントによって曲げられたときに第2の可撓性を有する。この第2の可撓性は、第1の軸156の周りに作用するモーメントによって曲げられたときに第1の背骨140が有する第1の可撓性よりも低い。
【0056】
図8の実施形態では、第1の背骨140の曲げ弾性率は、第1の背骨140が第1の軸156の周りに作用するモーメントによって曲げられるときに最小になる。第1の背骨140は、第1の軸156の周りに作用するモーメントによって曲げられるときに第1の曲げ弾性率を有し、第1の軸156以外の軸(例えば、第2の軸158および第3の軸160)の周りに作用するモーメントによって曲げられたときにより高い曲げ弾性率を有する。例えば、第1の背骨140は、図8に示す第2の軸158の周りに作用するモーメントによって曲げられたときに第2の曲げ弾性率を有する。この第2の曲げ弾性率は、第1の軸156の周りに作用するモーメントによって曲げられたときに第1の背骨140が有する第1の曲げ弾性率よりも高い。
【0057】
図9は、図6の切断線A-Aに沿った眼用インプラント100の拡大断面図である。切断線A-Aは、これらの支柱の円周方向の波状のうねりが最大である点で第1の支柱144および第2の支柱146と交差する。
【0058】
図9に示す各支柱は、第1の主側面161、第2の主側面162、第1の副側面164、および第2の副側面166を含む。図9を参照すると、各第1の主側面161は凹面168を含み、各第2の主側面162は凸面170を含むことが理解されるであろう。
【0059】
図9の実施形態では、各支柱は、第1の主側面161と第2の主側面162との間に延在する厚さT2を有する。同じく図9の実施形態では、各支柱は、第1の副側面164と第2の副側面166との間に延在する幅W2を有する。いくつかの有用な実施形態では、この詳細な説明による眼用インプラントは、眼用インプラントの支柱の幅W2を超える幅W1を有する背骨を含む。
【0060】
いくつかの有用な実施形態では、この詳細な説明による眼用インプラントの支柱は、約2を超える幅W2対厚さT2のアスペクト比を有する。いくつかの特に有用な実施形態では、この詳細な説明による眼用インプラントの支柱は、約4を超える幅W2対厚さT2のアスペクト比を有する。1つの例示的な眼用インプラントは、約4.4の幅W2対厚さT2のアスペクト比を有する支柱を有する。
【0061】
眼用インプラント100の本体102は、長手方向の半径150および横方向の半径148を有する。いくつかの有用な実施形態では、この詳細な説明による眼用インプラントは、眼用インプラントが眼内に前進されるとき、シュレム管の長手方向曲率に一致する形状を取るのに十分に可撓性である。同じくいくつかの有用な実施形態では、眼用インプラントがシュレム管内に配置されるとき、眼用インプラントが予め選択された角度スパンにわたって延在するように眼用インプラントの長さが選択される。いくつかの用途に適し得る予め選択された角度スパンの例は、60°、90°、150°および180°を含む。この詳細な説明による眼用インプラントの直径は、眼用インプラントがシュレム管内に横たわってシュレム管を支持するように寸法決めされるように選択され得る。いくつかの有用な実施形態では、眼用インプラントの直径は、約0.005インチ(0.127ミリメートル)~約0.04インチ(1.016ミリメートル)の範囲である。いくつかの特に有用な実施形態では、眼用インプラントの直径は、約0.005インチ(0.127ミリメートル)~約0.02インチ(0.508ミリメートル)の範囲である。
【0062】
この詳細な説明による眼用インプラントは、直線状であっても湾曲していてもよいことを理解されたい。眼用インプラントが湾曲している場合、その長さ全体にわたって実質的に均一な長手方向の半径を有してもよく、または眼用インプラントの長手方向の半径はその長さに沿って変化してもよい。図6は、実質的に均一な曲率半径を有する眼用インプラントの一例を示す。図10は、眼用インプラントの長さに沿って変化する長手方向の曲率半径を有する眼用インプラントの一例を示す。実質的に直線の眼用インプラントの例を図13に示す。
【0063】
図10Aは、図2および図4に示される眼用インプラント100の一部を示す拡大斜視図である。眼用インプラント100は、インプラント100の出口に隣接する眼用インプラント100の内側表面128に取り付けられた、詳細Aに示すような眼内圧センサ180をさらに含んでもよい。圧力センサ180は、眼用インプラント100の内側表面128に取り付けられるように図示されているが、必要に応じて、圧力センサ180は、開口124、138の1つ内にまたは眼用インプラント100の外側表面上に配置されてもよいことが想定される。圧力センサ180は、一度眼用インプラント100が植え込まれると、患者の眼内圧を連続的に測定することができる。
【0064】
圧力センサ180は、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであってもよい。圧力センサ180は、MEMS圧力センサとして記載される一方、MEMS圧力センサの代わりにまたはそれに加えて、他の圧力センサも使用し得ることが想定される。いくつかの例では、圧力センサ180は、およそ0.02ミリメートル(20マイクロメートル)~およそ1.0ミリメートルの範囲の幅を有することができる。しかしながら、圧力センサ180は、0.02ミリメートル(20マイクロメートル)よりも小さいか、または1.0ミリメートルよりも大きいことが想定される。いくつかの例では、圧力センサ180は、ナノメートル範囲の幅寸法を有することができる。さらに、1つの圧力センサ180のみが示されているが、眼用インプラント100は、必要に応じて2つ以上の圧力センサ180を含むことができる。例えば、第1の圧力センサが眼用インプラント100の第1の端部に配置され、第2の圧力センサが眼用インプラントの第2の端部に配置されてもよい。いくつかの例では、圧力センサ180は、図10Cに示すように、インプラント100の基端部101に隣接する流路128内に設けられてもよい。圧力センサ180は、眼用インプラント100の送達中に送達装置(明示的に示されていない)がセンサ180を損傷するのを防止する保護カバーを含み得ることが想定されるが、これは必須ではない。
【0065】
MEMS圧力センサは、多くの場合、シリコン基板のダイの裏側に向かって凹部を異方性エッチングし、薄い可撓性のダイヤフラム182を残すことによって形成される。使用中、ダイヤフラム182の少なくとも1つの表面は、入力圧力(例えば、眼圧)にさらされる。ダイヤフラム182は入力圧力の大きさに応じて撓み、これは、ダイヤフラム182上に配置されたまたはそれに埋め込まれた1つまたは複数の電気構成要素またはセンサ素子186(例えば、ピエゾ抵抗器)によって検出することができる。ピエゾ抵抗器186の抵抗の変化は、ピエゾ抵抗器によって少なくとも部分的に形成された抵抗ブリッジからの出力電圧信号の変化として反映される。いくつかの例では、ダイヤフラムは、サポートボスを追加することでより薄くすることができ、これはダイヤフラムの感度を平板ダイヤフラムよりも高めることを促進し得る。圧力センサ180のボンドパッド188に出力信号を提供する前に、センサ素子186があるレベルの信号処理を提供するように回路素子が接続されてもよい。この信号処理は、センサ素子(例えば、ピエゾ抵抗器186)によって生成される生のセンサ信号をフィルタリング、増幅、線形化、較正および/または他の方法で処理することができる。センサ素子186はピエゾ抵抗器として記載されているが、センサ素子は容量性圧力センサ180を提供するように選択されてもよいことが想定される。
【0066】
圧力センサ180は、図10Aの線B-Bで取られた例示的な圧力センサ180の断面である図10Bに示すように、第1の基板185および第2の基板183を含むことができる。いくつかの例では、第1の基板185は、必須ではないが、シリコンオンインシュレータ(SOI:silicon on insulator)技術を用いて形成された層状シリコン-インシュレータ-シリコン基板またはウェハであってもよい。必要に応じて他の基板を使用し得ることが考えられる。第1の基板185は、第1のシリコン層を含むことができる。絶縁層または酸化物層187が第1のシリコン層185上に配置されてもよい。いくつかの例では、絶縁層187は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、サファイア、および/または任意の他の適切な絶縁材料から形成することができる。明示的に示されていないが、圧力センサ180は、絶縁層上に配置された第2のシリコン層を含むことができる。いくつかの例では、第2の基板183から離れる方を向く側で酸化物層187が露出されるように、第2のシリコン層を薄くするかまたは除去することができる。あるいは、およびいくつかの例では、第2のシリコン層および酸化物層187は初めから設けられない。
【0067】
第2の基板183は、必要に応じて任意の半導体ウェハ(例えば、シリコンまたはゲルマニウム)または他の基板とすることができる。第1の基板185または第2の基板183のいずれかまたは両方に不純物をドープして、n型またはp型の外部半導体を提供し得ることが想定される。例えば、第1の基板185がn型基板であり、第2の基板183がp型基板であってもよい。逆の構成も考えられ、または両方の基板が同じ極性にドープされてもよい。いくつかの例では、第1の基板185および/または第2の基板183は、エピタキシャル層を含むことができる。
【0068】
第1のシリコン層の一部など、第1の基板185の一部は、キャビティまたは凹部181の上に薄い可撓性ダイヤフラム182を残して除去され得る。いくつかの例では、ピエゾ抵抗器186は、圧力センサを形成するために、ダイヤフラム182の撓み/応力を測定するようにダイヤフラム182内にまたはその上に配置されてもよい。使用中、ダイヤフラム182の少なくとも1つの表面は、入力圧力にさらされてもよい。次いで、ダイヤフラム182は、ダイヤフラム182にかかる圧力の大きさに応じて撓むことができる。次いで、ダイヤフラム182の撓みは、ピエゾ抵抗器186の抵抗の変化をもたらす。ピエゾ抵抗器186の抵抗の変化は、少なくとも部分的にピエゾ抵抗器186によって形成された抵抗性ブリッジの出力電圧信号の変化として反映されてもよい。出力電圧は、ダイヤフラム182に及ぼされる入力圧力の尺度を提供する。
【0069】
第2の基板183は、基板183が眼用インプラント100の内側表面128に面一に取り付けられることを可能にするように可撓性であり得ることが想定される。代替的にまたは追加的に、第2の基板183は、眼用インプラント100の湾曲内側表面128に概ね一致するように成形された湾曲外側表面(ダイヤフラム182から離れる方を向く)を有してもよい。圧力センサ180を形成する材料は、圧力センサ180が生体適合性であるように選択されてもよいことが想定される。
【0070】
上述したように、圧力センサ180はMEMS圧力センサとして記載されているが、圧力センサ180は他の適切な形態を取り得ることが想定される。1つの代替的な例では、圧力センサは、装置に組み込まれたセンサ素子なしに圧力の変化を検出するために電波を使用できるような方法で形成することができる。このような圧力センサは、可撓性ベース基板と、ベース基板上に配置された底部誘導コイルと、底部誘導コイル上に配置された感圧ゴムピラミッド層と、ゴムピラミッドの上部に配置された上部誘導コイルと、上部誘導コイルの上に配置された上部基板とを含んでもよい。センサに圧力が加えられると、誘導コイルは互いに近接する。誘導コイルによって反射された(印加された源からの)電波は、コイルがより接近して配置された場合、より低い共振周波数を有する。したがって、電波の周波数はコイル間の距離を示すことができ、これが次いで装置にかかる圧力に相関される。
【0071】
圧力センサ180は、圧力センサ180からのデータを読取装置に無線で通信することを可能にするためにアンテナまたはインダクタ184をさらに備え得る。いくつかの例では、圧力センサ180は、圧力センサ180から身体の外側に位置する別の装置にデータを伝送することが望まれる場合、限定しないが、セルラ通信、ジグビー(ZigBee)(登録商標)、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、ワイファイ(WiFi)(登録商標)、IrDA、専用短距離通信(DSRC:dedicated short range communication)、エンオーシャン(EnOcean)(登録商標)、または他のいずれかの適切な無線プロトコルなどの無線周波数通信プロトコルを使用してもよい。データは、携帯電話、タブレットまたはラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ポータブルハンドヘルドデバイス、そのようなパーソナルデジタルアシスタント(PDA:personal digital assistant)、または医療装置などであるがこれに限定されない特別に設計された装置を含むがこれらに限定されない任意の数のそのように適切にイネーブルにされた装置に伝送されてもよい。これは、医師、患者、または他の関係者が眼圧計を使用せずに眼圧を監視することを可能にし得る。いくつかの例では、圧力データは、遠隔装置から医師に自動的に伝送されてもよい。例えば、圧力センサ180を備えた眼用インプラント100が植え込まれると、図11に示すように、イネーブル状態の遠隔装置192を患者190の眼の通信範囲内に入れることができる。これは、イネーブル状態の装置192が、圧力センサ180に記録された眼内圧データを受信することを可能にし得る。イネーブル状態の装置192は、データを医者に、例えば第2の遠隔装置に自動的に伝送するように構成されてもよい。
【0072】
図12は、眼用インプラント200であって、その長さに沿って変化する曲率半径を有する眼用インプラント200を示す平面図である。眼用インプラント200の基端部201は、送達ツールの相補的な相互係止部分と嵌合および/または係合するように構成された相互係止部分を含むことができる。図12の実施形態では、眼用インプラント200は、概ね湾曲した休止状態を有する。この休止状態は、例えばヒートセットプロセスを使用して確立することができる。図12に示される眼用インプラントの形状は、先端半径RA、基端半径RC、および中間半径RBを含む。図12の実施形態では、先端半径RAは、中間半径RBおよび基端半径RCの両方よりも大きい。また、図12の実施形態では、中間半径RBは、基端半径RCよりも大きく、先端半径RAよりも小さい。1つの有用な実施形態では、先端半径RAは約0.320インチ(8.128ミリメートル)であり、中間半径RBは約0.225インチ(5.715ミリメートル)であり、基端半径RCは約0.205インチ(5.207ミリメートル)である。
【0073】
図12の実施形態では、眼用インプラントの先端部分は、角度AAにわたって延在する弧に従う。眼用インプラントの基端部分は、角度ACにわたって延在する弧に従う。眼用インプラントの中間部分は、先端部分と基端部分との間に配置される。中間部分は角度ABにわたって延在する。1つの有用な実施形態では、角度AAは約55度であり、角度ABは約79度であり、角度ACは約60度である。
【0074】
眼用インプラント200は、疾患および/または障害(例えば、緑内障)についてヒト患者の眼を治療する方法と組み合わせて使用されてよい。いくつかのそのような方法は、コア部材を眼用インプラント200によって画定された内腔に挿入するステップを含むことができる。コア部材は、例えば、ワイヤまたはチューブを含み得る。眼用インプラントの先端部は、シュレム管内に挿入することができる。次いで、眼用インプラントが所望の位置に達するまで、眼用インプラントおよびコア部材をシュレム管内に前進させることができる。いくつかの実施形態では、インプラントの入口部分は前眼房に配置されてもよい一方、インプラントの残りの部分は小柱網を通ってシュレム管内に延びる。次いで、コア部材を眼用インプラントから引き抜いて、インプラントを適所に残し、シュレム管を形成する組織を支持することができる。眼用インプラント送達システムのさらなる詳細は、2007年11月20日に出願された米国特許出願第11/943,289号明細書、現在は米国特許第8,512,404号明細書に見出すことができ、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本発明の眼用インプラントの可撓性および曲げ弾性率の特徴は、シュレム管内のインプラントの適切な向きを保証することを促進する。図1は、インプラント100がシュレム管内に配置されたときの開口124の所望の向きを示す。図示のように、開口124は半径方向外側に面している。したがって、インプラント100は、図1に示すように、インプラント100の長手方向軸によって画定された平面に沿って曲げられたときに最大限に可撓性であるように、および他の平面で曲げられたときにより低い可撓性であるように設計され、それにより、インプラントが最初にシュレム管内に異なる向きで配置される場合、シュレム管の湾曲形状がインプラントをこの向きに自動的に配置することを促進することを可能にする。
【0076】
図13は、本発明の詳細な説明による追加的な実施形態による眼用インプラント300を示す斜視図である。図13を参照すると、眼用インプラント300は、概ね直線状の休止(すなわち応力のない)形状を有することが理解されるであろう。眼用インプラント300は、概ね直線の長手方向軸334に沿って延在する。いくつかの有用な実施形態では、眼用インプラント300は、眼のシュレム管内に進められるときに湾曲形状を取るのに十分に可撓性である。
【0077】
眼用インプラント300は、本体302を含む。図13を参照すると、本体302は、複数の組織支持フレーム304および複数の背骨306を含むことが理解されるであろう。図13に示すように、これらの背骨306およびフレーム304は、1つの背骨がフレーム304の各隣接する対間に延在する交互パターンで配置される。本体302のフレーム304は、第1の背骨340と第2の背骨342との間に配置される眼用インプラント300の第1のフレーム336を含む。図13の実施形態では、第1のフレーム336は、第1の背骨340と第2の背骨342との間に延在する第1の支柱344を含む。第1のフレームの第2の支柱346が同じく第1の背骨340と第2の背骨342との間に延在する。各支柱は、第1の背骨340と第2の背骨342との間で長手方向に延在する場合に円周方向に波状となっている。
【0078】
本体302の内側表面328は、流路326を画定する。眼用インプラント300の本体302は、第1の開口324を画定する第1の縁部320および第2の縁部322を含む。眼用インプラント300の流路326は、第1の開口324と流体連通する。第1のフレーム336の第1の支柱344は、第1の縁部325Aを含む。第2の支柱346は、第1の縁部325Bを有する。図13において、本体302の第1の開口324は、第1の支柱344の第1の縁部325Aと第2の支柱346の第1の縁部325Bとの間に延在していることが分かる。
【0079】
第1の軸356、第2の軸358および第3の軸360が図13に示されている。第2の軸358は、第1の軸356に対して概ね垂直である。第3の軸360は、第1の軸356に対して概ね傾斜している。本体302の可撓性は、本体302が第1の軸356の周りに作用するモーメントによって曲げられるときに最大であり、本体302は、第1の軸356以外の軸(例えば、第2の軸358および第3の軸360)の周りに作用するモーメントによって曲げられたときにより低い可撓性を有する。換言すれば、図13の実施形態では、本体302の曲げ弾性率は、本体302が第1の軸356の周りに作用するモーメントによって曲げられるときに最小であり、本体302は、第1の軸356以外の軸(例えば、第2の軸358および第3の軸360)の周りに作用するモーメントによって曲げられたときにより高い曲げ弾性率を有する。
【0080】
眼用インプラント300は、眼用インプラント300の内側表面328に取り付けられた眼内圧センサ380をさらに含むことができる。圧力センサ380は、上述した圧力センサ180と形状および機能が類似していてもよい。圧力センサ380は、眼用インプラント300の内側表面328に取り付けられるように示されているが、圧力センサ380は、必要に応じて、開口324の1つ内にまたは眼用インプラント300の外側表面上に取り付けられてもよいことが想定される。圧力センサ380は、眼用インプラント300が植え込まれると、患者の眼内圧を連続的に測定することができる。
【0081】
圧力センサ380は、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであってもよい。圧力センサ380は、MEMS圧力センサとして記載される一方、MEMS圧力センサの代わりにまたはそれに加えて、他の圧力センサも使用し得ることが想定される。MEMS圧力センサは、多くの場合、シリコン基板のダイの裏側に凹部を異方性エッチングし、薄い可撓性のダイヤフラムを残すことによって形成される。使用中、ダイヤフラムの少なくとも1つの表面は、入力圧力(例えば、眼圧)にさらされる。ダイヤフラムは入力圧力の大きさに応じて撓み、これは、ダイヤフラム上に配置されるか、またはそれに埋め込まれた1つまたは複数の電気構成要素またはセンサ素子(例えば、ピエゾ抵抗器)によって検出することができる。ピエゾ抵抗器の抵抗の変化は、ピエゾ抵抗器によって少なくとも部分的に形成された抵抗ブリッジからの出力電圧信号の変化として反映される。いくつかの例では、ダイヤフラムは、サポートボスを追加することでより薄くすることができ、これはダイヤフラムの感度を平板ダイヤフラムよりも高めることを促進し得る。圧力センサのボンドパッドに出力信号を提供する前に、センサ素子があるレベルの信号処理を提供するように回路素子が接続されてもよい。この信号処理は、センサ素子(例えば、ピエゾ抵抗器)によって生成される生のセンサ信号をフィルタリング、増幅、線形化、較正および/または他の方法で処理することができる。センサ素子はピエゾ抵抗器として記載されているが、センサ素子は容量性圧力センサ380を提供するように選択されてもよいことが想定される。
【0082】
圧力センサ380は、圧力センサ380からのデータを読取装置に無線で通信することを可能にするためにアンテナまたはインダクタをさらに備え得る。いくつかの例では、圧力センサ380は、圧力センサ380から身体の外側に位置する別の装置にデータを伝送することが望まれる場合、限定しないが、セルラ通信、ジグビー(ZigBee)(登録商標)、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、ワイファイ(WiFi)(登録商標)、IrDA、専用短距離通信(DSRC)、エンオーシャン(EnOcean)(登録商標)、または他のいずれかの適切な無線プロトコルなどの無線周波数通信プロトコルを使用してもよい。データは、携帯電話、タブレットコンピュータ、コンピュータ、ポータブルハンドヘルドデバイス、そのようなパーソナルデジタルアシスタント(PDA)、または特別に設計された装置を含むがこれらに限定されない任意の数のそのように適切にイネーブルにされた装置に伝送されてもよい。これは、医師、患者、または他の関係者が眼圧計を使用せずに眼圧を監視することを可能にし得る。
【0083】
図14は、この詳細な説明による医療処置の概略表現である。図14の処置では、医師が患者Pの眼400を治療している。図14の処置では、医師は、自らの右手RHに送達システム450のハンドピースを保持している。医師の左手(図示せず)は、ゴニオレンズ402のハンドルHを保持するために使用されてもよい。あるいは、一部の医師は、左手に送達システムハンドピースを、右手RHにゴニオレンズハンドルHを保持することを好み得る。
【0084】
図14に示す処置中、医師は、ゴニオレンズ402および顕微鏡404を使用して前眼房の内部を見ることができる。図14の詳細Aは、医師が見た画像の定型化されたシミュレーションである。カニューレ452の先端部分を詳細Aで見ることができる。影のような線は、前眼房を取り囲む様々な組織(例えば、小柱網)の下に横たわるシュレム管SCの位置を示す。カニューレ452の先端開口454は、眼400のシュレム管SCの近くに配置される。
【0085】
この詳細な説明による方法は、カニューレ452の先端部分が前眼房内に配置されるようにカニューレ452の先端部を眼400の角膜を通して前進させるステップを含むことができる。次いで、カニューレ452は、例えばカニューレ452の先端部でシュレム管の壁を貫通することにより、眼のシュレム管に進入するために使用されてもよい。カニューレ452の先端開口454は、シュレム管によって画定された内腔と流体連通した状態に置かれてもよい。眼用インプラントは、先端開口454からシュレム管内に前進させることができる。シュレム管内への眼用インプラントの挿入は、前眼房からの房水の流れを促進し得る。
【0086】
図15は、前の図に示された送達システム450および眼400をさらに示す拡大斜視図である。図15では、送達システム450のカニューレ452は、眼400の角膜426を通って延在するように示されている。カニューレ452の先端部分は、眼400の角膜426によって画定される前眼房の内部に配置される。図15の実施形態では、カニューレ452は、カニューレ452の先端開口454をシュレム管と流体連通した状態に置くことができるように構成される。
【0087】
図15の実施形態では、眼用インプラントは、カニューレ452によって画定される通路内に配置される。送達システム450は、カニューレ452の長さに沿って眼用インプラントを前進および後退させることができる機構を含む。先端開口がシュレム管と流体連通している間に眼用インプラントをカニューレ452の先端開口を通して前進させることにより、眼用インプラントは眼400のシュレム管内に配置されてもよい。
【0088】
図16Aは、眼用インプラント550と、眼用インプラント550を摺動式に受け入れるように寸法決めされた通路を画定するカニューレ508とを含む送達システム500を示す斜視図である。送達システム500は、眼用インプラント550を患者の眼内の目標位置に向けて前進させるように使用されてもよい。いくつかの適用において適切であり得る目標位置の例は、眼のシュレム管、小柱網、脈絡膜上腔および前眼房内および周囲の領域を含む。図16Bは、眼用インプラント550と、送達システム500のカニューレ508とをさらに示す拡大詳細図である。
【0089】
図16Aの送達システム500は、カニューレ508内の眼用インプラント550の前進および後退を制御することができる。眼用インプラント550は、先端開口がシュレム管と流体連通している間、先端開口532を通して眼用インプラントを前進させることによって目標位置(例えば、シュレム管)内に配置することができる。図16Aの実施形態では、眼用インプラント550は、説明のために、カニューレ508の先端開口532を通して前進されている。
【0090】
図16Aの送達システム500は、ハウジング502、スリーブ504、およびエンドキャップ510を含む。トラッキングホイール506が、図16Aのハウジング502の壁を通って延在する。トラッキングホイール506は、送達システム500の送達ツール552を前進および後退させることができる機構の一部である。送達ツール552は、図16Bのカニューレ508の先端開口を通って延在する。トラッキングホイールを回転させると、送達ツール552は、カニューレ508によって画定された通路に沿って軸方向に移動する。軸方向は、先端方向Dまたは基端方向Pであり得る。送達ツール552および送達ツール552を移動するための機構は、共通の譲受人に譲渡された米国特許出願第62/024,295号明細書に記載され、それは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0091】
図16Aの実施形態では、ハウジング502は、トラッキングホイール506を介した眼用インプラントの軸方向の前進および後退の制御を提供しながら一方の手で握られるように構成される。送達システム500のハウジングは、手に対する指の有利な人間工学的関係をもたらす。この設計は、医師などの使用者が手の一部を使用して装置を安定させる一方、中指または人差し指を手の残りの部分から独立して自由に動かせるままにすることを可能にする構成を提供する。中指または人差し指は、眼用インプラントを前進および/または後退させるようにホイールを回転させるために独立して自由に動かすことができる。
【0092】
図16Bは、眼用インプラント550および送達システム500のカニューレ508をさらに示す拡大詳細図である。カニューレ508は、基端部分540と、先端部534と、先端部534および基端部分540間に延在する先端部分544とを有する概ね管状の部材598を含む。図6の実施形態では、先端部分544は湾曲している。いくつかの有用な実施形態では、先端部分544は、前眼房に受け入れられるように寸法決めされかつ構成されている。
【0093】
図16Bは、カニューレ508の先端開口532を通って延在する送達システム500の送達ツール552を示す。送達ツール552は、以下でより詳細に説明するように、眼用インプラント550の相補的な相互係止部分562との接続を形成するように構成される相互係止部分560を含む。図16の実施形態では、トラッキングホイールを回転させると、送達ツール552および眼用インプラント550が、カニューレ508によって画定される経路に沿って移動される。カニューレ508は、カニューレ508の先端部が眼の小柱網を通っておよびシュレム管内に進められることができるように寸法決めされかつ構成される。カニューレ508をこの方法で位置決めすることは、先端開口532をシュレム管と流体連通した状態に置く。眼用インプラント550は、先端開口がシュレム管と流体連通する間に眼用インプラントをカニューレ508の先端開口532を通して前進させることによってシュレム管内に配置することができる。カニューレの先端部分は、小柱網およびシュレム管の壁のような組織を切断するように適合された鋭利なエッジを先端部534に設けるなどして、小柱網およびシュレム管の壁を切断するように構成された切断部分を含むことができる。
【0094】
図17は、本発明の詳細な説明によるカニューレ508の斜視図である。図17のカニューレ508は、中心軸596を有する概ね管状の部材598を含む。図17の概ね管状の部材598は、基端部分540と、先端部534と、先端部534および基端部分540間に延在する先端部分544とを含む。先端開口表面542は、先端部534を通っておよびカニューレ508の側壁を通って延在する先端開口532を取り囲む。斜縁565は、先端開口表面542の先端部に配置され、先端部534から斜縁565の基端範囲567まで延在する。管状部材598は、先端開口532と、基端開口536と、基端開口536および先端開口532間に延在する通路538とを画定する。
【0095】
図17の実施形態では、カニューレ508の基端部分540は実質的に直線であり、カニューレ508の先端部分544は湾曲しており、中心軸596は湾曲面548を画定する。湾曲面548は、湾曲の面とよばれることもある。湾曲面548は、カニューレ508を第1の部分PAおよび第2の部分PBに分割する。図17の実施形態では、第2の部分PBは、実質的に第1の部分PAの鏡像である。図17において、先端部分544は、介在要素なしに先端部534と基端部分540との間に延在するように示されている。図17の実施形態では、先端部分544は、その全長に沿って湾曲している。
【0096】
この詳細な説明による方法は、ヒトの眼の角膜を通してカニューレ508の先端部534を前進させ、先端部534が前眼房内に配置されるようにするステップを含むことができる。次いで、カニューレ508は、例えばカニューレ508の先端部534を用いてシュレム管の壁を貫通することにより、眼のシュレム管に進入するために使用することができる。斜縁565は、以下でより詳細に考察するように、カニューレ508の先端開口532の少なくとも一部をシュレム管と連通した状態に置くためにシュレム管に挿入されてもよい。眼用インプラントは、カニューレの先端ポートからシュレム管内に前進させることができる。
【0097】
図17の実施形態では、カニューレ508の先端部分544は、トラフ554を画定する。いくつかの有用な実施形態において、トラフ554は、眼用インプラントがシュレム管内を前に進められているときに眼用インプラントの外側断面全体を受け入れるように構成されている。この場合、トラフ554は、眼用インプラントの幅よりも深い深さ寸法を有することができる。このカニューレ構成は、眼用インプラントがシュレム管内を前に進められているときに眼用インプラントが小柱網の層と交差するのを有利に防止する。トラフ554はまた、後述するように、眼用インプラントの基端部分が送達ツールから解放されることを可能にするように構成されてもよい。
【0098】
カニューレ508は、トラフ554内に配置された圧力センサ580をさらに含むことができる。圧力センサ580は、上述の圧力センサ180と形状および機能が同様であってもよい。圧力センサ580は、カニューレのトラフ554内に取り付けられるように示されているが、圧力センサ580は、カニューレ508内またはカニューレ508上の他の位置に取り付けられてもよいことが考えられる。圧力センサ580は、眼用インプラント550の植え込み中またはその直後に即時圧力読取り値を提供することができる。いくつかの例では、カニューレ508上の圧力センサ580から得られた圧力読取り値は、そのように設けられた場合、眼用インプラント550に取り付けられた圧力センサから得られた圧力読取り値と比較することができる。
【0099】
圧力センサ580は、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであってもよい。圧力センサ580は、MEMS圧力センサとして記載される一方、MEMS圧力センサの代わりにまたはそれに加えて、他の圧力センサも使用し得ることが考えられる。さらに、1つの圧力センサ580のみが示されているが、カニューレ508は、必要に応じて2つ以上の圧力センサ580を含むことができる。MEMS圧力センサは、多くの場合、シリコン基板のダイの裏側に凹部を異方性エッチングし、薄い可撓性のダイヤフラムを残すことによって形成される。使用中、ダイヤフラムの少なくとも1つの表面は、入力圧力(例えば、眼圧)にさらされる。ダイヤフラムは入力圧力の大きさに応じて撓み、これは、ダイヤフラム上に配置されるか、またはそれに埋め込まれた1つまたは複数の電気構成要素またはセンサ素子(例えば、ピエゾ抵抗器)によって検出することができる。ピエゾ抵抗器の抵抗の変化は、ピエゾ抵抗器によって少なくとも部分的に形成された抵抗ブリッジからの出力電圧信号の変化として反映される。いくつかの例では、ダイヤフラムは、サポートボスを追加することでより薄くすることができ、これはダイヤフラムの感度を平板ダイヤフラムよりも高めることを促進し得る。圧力センサのボンドパッドに出力信号を提供する前に、センサ素子があるレベルの信号処理を提供するように回路素子が接続されてもよい。この信号処理は、センサ素子(例えば、ピエゾ抵抗器)によって生成される生のセンサ信号をフィルタリング、増幅、線形化、較正および/または他の方法で処理することができる。センサ素子はピエゾ抵抗器として記載されているが、センサ素子は容量性圧力センサ580を提供するように選択されてもよいことが考えられる。
【0100】
圧力センサ580は、圧力センサ580からのデータを読取装置に無線で通信することを可能にするためにアンテナまたはインダクタをさらに備え得る。いくつかの例では、圧力センサ580は、圧力センサ580から身体の外側に位置する別の装置にデータを伝送することが望まれる場合、限定しないが、セルラ通信、ジグビー(ZigBee)(登録商標)、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、ワイファイ(WiFi)(登録商標)、IrDA、専用短距離通信(DSRC)、エンオーシャン(EnOcean)(登録商標)、または他のいずれかの適切な無線プロトコルなどの無線周波数通信プロトコルを使用してもよい。データは、携帯電話、タブレットコンピュータ、コンピュータ、ポータブルハンドヘルドデバイス、そのようなパーソナルデジタルアシスタント(PDA)、または特別に設計された装置を含むがこれらに限定されない任意の数のそのように適切にイネーブルにされた装置に伝送されてもよい。これは、医師、患者、または他の関係者が眼圧計を使用せずに眼圧を監視することを可能にし得る。
【0101】
図18は、前の図に示されたカニューレ508を含むアセンブリの斜視図である。説明のために、カニューレ508は、図23に断面で示されている。図18では、眼用インプラント550は、カニューレ508によって画定された通路538内に置かれているのが見られる。図18を参照すると、カニューレ508の中心軸596が湾曲面548を定めるようにカニューレ508の先端部分544が湾曲していることが理解されるであろう。図23を参照すると、湾曲面548は、カニューレ508を第1の部分および第2の部分PBに分割することが理解されるであろう。図18の例示的な実施形態では、カニューレ508の第2の部分PBのみが示されている。
【0102】
図19は、前の図に示されたアセンブリを含む概略斜視図である。図19の実施形態では、シュレム管SCの壁を貫いて延在するカニューレ508の先端部分が示されている。カニューレ508の先端は、カニューレによって画定された通路がシュレム管によって画定された内腔と流体連通した状態に置かれることができるように、小柱網およびシュレム管の壁を切断および/または貫通するように構成された鋭い部分を含むことができる。カニューレの通路はシュレム管の内腔と流体連通した状態に置かれるため、眼用インプラント550をカニューレの先端開口からシュレム管内に前進させることができる。図19において、眼用インプラント550の先端部分を、カニューレ508の先端開口532を通して見ることができる。
【0103】
説明のために、仮想窓Wが図19のカニューレ508の壁に切り込まれる。送達ツール552の相互係止部分560および眼用インプラント550の相補的な相互係止部分562を、窓Wを介して見ることができる。図19の実施形態では、送達ツール552の相互係止部分560および眼用インプラント550の相補的な相互係止部分562は、眼用インプラント550の基端部549が送達ツール552の先端部551に対して基端側にあるように互いに係合する。送達ツール552の表面561は、送達ツール552の相互係止部分560と眼用インプラント550の相補的な相互係止部分562とが互いに外れないように、カニューレ508の壁に載っている。それらがこのように接続されると、送達ツールが送達システム機構によってカニューレ508に対して前進および後退されるにつれて、送達ツール552および眼用インプラント550が一緒に移動する。
【0104】
図20は、前の図に示されたカニューレ508の一部を示す拡大斜視図である。いくつかの有用な実施形態では、カニューレ508は、シュレム管SCへの実質的に接線方向の進入を達成するように湾曲している。図20の実施形態では、カニューレ508は、接触点PTでシュレム管の外側主壁に接触している。また、図20の実施形態では、カニューレ508の湾曲した先端部分は、前眼房内に配置されるように寸法決めされている。
【0105】
図20に示すように、カニューレ508の先端534および斜縁は、斜縁565の基端範囲567までシュレム管に挿入されている。この位置で、トラフ554内に延在する眼用インプラント550を見ることができる。いくつかの有用な実施形態では、眼用インプラントは、カニューレの曲率半径よりも大きい曲率半径を有する。この構成により、眼用インプラントが送達システム500によって先端方向に押し込まれるとき、眼用インプラントは確実にトラフ554に沿って進む。
【0106】
図21は、前の図に示された眼用インプラント550およびカニューレ508を示す追加の斜視図である。図21を前の図と比較することにより、眼用インプラント550が先端方向Dに前進される一方、カニューレ508は静止したままであり、それにより眼用インプラント550の先端部分がシュレム管SC内に配置されていることが理解されるであろう。トラフ554は、カニューレ508の先端部分の縁部542によって画定された長尺状の開口532内に開口する。図21の実施形態では、カニューレによって画定された長尺状の開口は、眼用インプラントがシュレム管内で前進されるとき、眼用インプラントの直接的な可視化を実現する。眼用インプラントの直接的な可視化を可能にする構成は、多くの臨床的利点を有する。医療処置中、小柱網を介してインプラントを見ることによってインプラントの進行を監視することは多くの場合に困難である。例えば、血液還流が血液をシュレム管に押し込んで、シュレム管に入ったインプラントの部分を医師が見ることを妨げる可能性がある。図21を参照すると、眼用インプラント550は、カニューレ508に沿って先端方向に前進されるにつれて、トラフ554に沿って進む。トラフ開口は、医師が、インプラント構造体がシュレム管に入る前にトラフを通って進むとき、インプラント構造体を見ることによってインプラントの進行を監視することを可能にする。トラフ開口はまた、医師が、シュレム管に進入するためにカニューレによって作られた切開部に対する眼用インプラントの先端部の位置を特定することを可能にする。
【0107】
図22は、眼用インプラント550およびカニューレ508を示す追加的な概略斜視図である。図22の実施形態では、送達ツール552および眼用インプラント550のそれぞれの相互係止部分560および562が、カニューレ508によって画定された先端開口532に入っていることを見ることができる。示されるように、眼用インプラント550は、(先の図に示された実施形態に対して)眼用インプラント550のより多くの部分がシュレム管SCの内側に配置されるように先端方向Dに前進されている。送達ツール552の相互係止部分560の対応する表面561は、カニューレ508の内壁に対して依然として当たっており、送達ツールを眼用インプラント550と相互係止された状態に維持する。
【0108】
図23は、眼用インプラント550およびカニューレ508を示す追加的な概略斜視図である。図23に示すように、眼用インプラント550および送達ツール552は、送達ツール表面561および低減された直径部分563の一部が開口532に通されるようにさらに先端方向に前進され、それにより、送達ツールの湾曲部分553がその湾曲した休止位置に向かって移動することが許容され、それにより送達ツール係合表面560が眼用インプラント550上の相補的係合表面562から外れて離れる。
【0109】
いくつかの有用な実施形態において、送達ツールは、インプラントから視覚的に区別するために着色されてもよい。眼用インプラントから外れた後、カニューレ508および送達ツール552は、図23に示す完全に展開された位置に眼用インプラント550を残してシュレム管SCから引き抜くことができる。眼用インプラント550の送達が完了した後、送達ツールおよびカニューレは、少なくとも眼用インプラントの先端部分をシュレム管内に残して眼から取り除くことができる。
【0110】
図24は、カニューレ(前の図に見られる)が、眼用インプラント550の入口部分を前眼房内に、および眼用インプラント550の残部をシュレム管内に残して引き抜かれた後のシュレム管SCの斜視図である。シュレム管内の眼用インプラント550の存在は、前眼房からの房水の流れを促進し得る。この流れには、シュレム管に沿った軸流、前眼房からシュレム管への流れ、シュレム管と連通する出口を介したシュレム管を離れる流れが含まれ得る。眼内の所定の位置にあるとき、眼用インプラント550は小柱網およびシュレム管組織を支持し、(小柱網を介した)前眼房とシュレム管との間の、およびシュレム管に沿ったポケットまたは区画間の連通を改善する。
【0111】
いくつかの例では、限定しないが、白内障手術などの別の矯正手術と組み合わせて、眼用インプラントをシュレム管に送達することが望ましい場合がある。眼用インプラントが別の外科処置中に配置されるとき、他の処置用に使用される同じ切開を通して眼用インプラントを挿入することが望ましい場合がある。図25Aは、眼用インプラント650を、限定しないが、白内障手術などの別の処置のために作られた切開位置を介して患者の眼の目標位置に前進させるために使用されてもよい別の例示的な送達システム600を示す斜視図である。送達システム600は、眼用インプラント650と、眼用インプラント650を摺動可能に受け入れるように寸法決めされた通路を画定するカニューレ608とを含んでもよい。送達システム600の態様は、形状および機能が送達システム500と同様であってもよいことが想定される。いくつかの用途において適切であり得る目標位置の例は、シュレム管、小柱網、脈絡膜上腔および前眼房内および周囲の領域を含む。図25Bは、眼用インプラント650および送達システム600のカニューレ608をさらに示す拡大詳細図である。
【0112】
図25Aの送達システム600は、カニューレ608内の眼用インプラント650の前進および後退を制御することができる。眼用インプラント650は、先端開口がシュレム管と流体連通している間、カニューレ608の先端開口632を介して眼用インプラント650を前進させることによって目標位置(例えば、シュレム管)に配置されてもよい。図25Aの実施形態では、眼用インプラント650は、説明のために、カニューレ608の先端開口632を通して前進されている。
【0113】
図25Aの送達システム600は、ハウジング602、スリーブ604、およびエンドキャップ610を含む。トラッキングホイール606が、図25Aのハウジング602の壁を貫いて延在する。トラッキングホイール606は、送達システム600の送達ツール652を前進および後退させることができる機構の一部である。送達ツール652は、カニューレ608内に摺動可能に配置され、カニューレ608の先端開口を通って延在するように構成される。トラッキングホイールを回転させると、送達ツール652は、カニューレ608によって画定された通路に沿って軸方向に移動する。軸方向は、先端方向Dまたは基端方向Pであってよい。送達ツール652は、送達ツール152と形状および機能において類似していてもよい。
【0114】
図25Aの実施形態では、ハウジング602は、トラッキングホイール606を介した眼用インプラントの軸方向の前進および後退の制御を提供しながら一方の手で握られるように構成される。ハウジング602のこの特徴は、手に対する指の有利な人間工学的関係をもたらす。この設計は、医師などの使用者が手の一部を使用して装置を安定させる一方、中指または人差し指を手の残りの部分から独立して自由に動かせるままにすることを可能にする構成を提供する。中指または人差し指は、眼用インプラントを前進および/または後退させるようにホイールを回転させるために独立して自由に動かすことができる。
【0115】
図25Bは、眼用インプラント650および送達システム600のカニューレ608をさらに示す拡大詳細図である。カニューレ608は、基端部分640と、中間部分645と、先端部分644と、先端部634とを有する概ね管状の部材698を含む。中間部分645は、基端部641に対して先端側の第1の地点643から先端部634に対して基端側の第2の地点647まで先端方向に延在してもよい。先端部分644は、第2の地点647から(図28に示される)カニューレ608の先端部634まで先端方向に延在してもよい。図25の実施形態では、先端部分644および中間部分645の両方が湾曲していてもよい。いくつかの例では、先端部分644が中間部分645よりも小さい曲率半径を、従ってより高い曲率を有していてもよいが、これは必須ではない。いくつかの有用な実施形態では、先端部分644は、前眼房に受け入れられるように寸法決めされかつ構成されていてもよい。
【0116】
いくつかの例では、限定しないが、白内障手術などの別の眼科処置中、眼用インプラント650を配置することが望ましい場合がある。白内障手術のための切開の最適位置は、インプラント650などの眼用インプラントをシュレム管内に単に配置するための切開の最適位置と同じでない場合があることが想定される。従来の眼用インプラント送達システムの設計では、カニューレがシュレム管内に実質的に接線方向に進入することを可能にするために、インプラントが別の眼科処置と組み合わせて配置される場合、2つの別個の切開が必要とされ得る。先端部分644の両方の湾曲した構成は、カニューレ608がシュレム管内に実質的に接線方向に入ることを可能にするように構成されてもよい。さらに、中間部分645の湾曲した構成は、カニューレ608が、限定しないが、強角膜トンネル切開などの白内障手術に関連するおよび/またはそれに最適化された典型的な切開を介して前進されることを可能にし得る一方、カニューレ608がシュレム管内に実質的に接線方向に進入することをなおも可能にすることが想定される。これにより、1つの切開を使用して2種以上の眼の処置を行うことが可能になる。1つの切開を介して複数の処置を実施することは、患者の不快感および快復時間を減少させ得ることがさらに想定される。図25Bは、カニューレ608の先端開口632を通って延在する送達システム600の送達ツール652を示す。送達ツール652は、以下でより詳細に説明されるように、眼用インプラント650の相補的相互係止部分662との接続を形成するように構成された相互係止部分660を含む。図25の実施形態では、トラッキングホイールを回転させると、送達ツール652および眼用インプラント650は、カニューレ608によって画定された経路に沿って移動する。カニューレ608は、カニューレ608の先端部が眼の小柱網を介してシュレム管内に前進され得るように寸法決めされかつ構成される。このようにカニューレ608を位置決めすることにより、先端開口632はシュレム管と流体連通した状態に置かれる。眼用インプラント650は、先端開口がシュレム管と流体連通している間、眼用インプラントをカニューレ608の先端開口632を通して前進させることによってシュレム管内に配置することができる。カニューレ608の先端部分は、小柱網およびシュレム管の壁のような組織を切断するように適合された鋭いエッジを先端部634に設けることによってなど、小柱網およびシュレム管の壁を切断するように構成された切断部分を含むことができる。
【0117】
図26は、前の図に示された送達システム600および眼601をさらに示す拡大斜視図である。図26では、眼601の角膜603を通って延在する送達システム600のカニューレ608が示されている。カニューレ608の先端部分は、眼601の角膜603によって画定される前眼房の内側に配置される。図26の実施形態において、カニューレ608は、カニューレ608の先端開口632がシュレム管と流体連通した状態に置かれることができるように構成されている。例えば、カニューレ608の先端部分644および中間部分645は、カニューレ608が、別の視覚的外科処置のために作られた切開607を通って前進され得るような寸法および構成とすることができる。
【0118】
図26の実施形態では、眼用インプラントは、カニューレ608によって画定された通路内に配置される。送達システム600は、カニューレ608の長さに沿って眼用インプラントを前進および後退させることができる機構を含む。眼用インプラントは、先端開口がシュレム管と流体連通している間に眼用インプラントをカニューレ608の先端開口を通して前進させることによって眼601のシュレム管内に配置することができる。
【0119】
図27は、前の図に示された送達システム600をさらに示す斜視図である。図27において、ハウジング602の一部は、説明のために取り外されている。送達システム600は、送達ツールサブアセンブリ670およびカニューレサブアセンブリ680を含む。送達ツールサブアセンブリ670は、回転ラックギヤ620および送達ツール(図示せず)を含む。図27の実施形態では、送達ツールは、カニューレ608によって画定された通路内に延在する。図27ではスリーブ604を超えて延在するカニューレ608を見ることができる。カニューレサブアセンブリ680は、カニューレ608、ハブ672、および延長管(不図示)を含む。図27の実施形態では、カニューレサブアセンブリ680の延長管は、回転ラックギヤ620によって画定される内腔の内側に配置される。
【0120】
送達システム600は、送達ツールサブアセンブリ670の動きを制御する機構617を含む。機構617は、ハウジング602内に配置される多数の構成要素を含み、それにはトラッキングホイール606、アイドラギヤ622、および回転ラックギヤ620が含まれる。図27の実施形態では、トラッキングホイール606およびアイドラギヤ622は共にハウジング602によって回転可能に支持されている。トラッキングホイール606上の歯はアイドラギヤ622上の歯と係合し、アイドラギヤ622上の歯が回転ラックギヤ620上の歯と係合する。トラッキングホイール606を反時計回り方向CCWに回転させると、アイドラギヤ622が時計回り方向CWに回転し、これにより回転ラックギヤ620が先端方向Dに移動する。トラッキングホイール606を時計回り方向CWに回転させると、アイドラギヤ622は反時計回り方向CCWに回転し、これにより回転ラックギヤ620は基端方向Pに移動する。他の実施形態では、アイドラギヤ622は装置から排除されてもよく、これによりトラッキングホイールの反時計回りの動きがラックギヤを基端方向に移動させ得る。
【0121】
図27の実施形態では、スリーブ604はカニューレサブアセンブリ680に固定される。スリーブ604は、カニューレ608の向きをハウジング602に対して変えるために、ユーザによって回転されてもよい。スリーブ604は、(図示されるような)溝、ゴムコーティング、またはこの使用を容易にするための他の摩擦表面などの掴み特徴部を含むことができる。いくつかの用途では、カニューレと虹彩との間の正しい整列は、眼用インプラントが植え込まれる眼内のシュレム管または他の解剖学的構造に対して、コアチューブおよび/または眼用インプラントが正しい軌跡で前進されることを確実にするために有利である。装置は、回転中に眼用インプラントを装置内に整列された状態に維持するように構成されている。構成要素の選択されたグループは、眼用インプラントの軸方向移動を可能にすると同時に、それらが単一の本体として回転することを確実にするために一緒に合わせられる。図27の実施形態では、カニューレサブアセンブリ680および送達ツールサブアセンブリ670は、スリーブ604と調和してハウジング602に対して回転することができる。
【0122】
図27の実施形態では、回転ラックギヤ620は、回転前、回転中および回転後に先端および基端方向に軸方向に移動する能力を維持しながら、スリーブ604と共に回転するように構成される。回転ラックギヤ620が先端方向および/または基端方向に移動するとき、カニューレ608に対する送達ツールの対応する動きが生じる。送達ツール652が眼用インプラント650に結合される場合、この動きは眼用インプラント650に伝達される。送達ツールサブアセンブリ670およびカニューレサブアセンブリ680は、以下でより詳細に説明されるように、キー付き構成で互いに係合する。このキー付き構成により、送達ツールサブアセンブリ670およびカニューレサブアセンブリ680は、互いに対して一定の回転向きを維持し、同時に送達ツールサブアセンブリ670がカニューレサブアセンブリ680に対して先端方向Dおよび基端方向Pに並行移動することを可能にする。
【0123】
いくつかの実施形態では、送達ツール652は、形状記憶材料(例えば、ニチノールなど)から形成され、送達ツール652の少なくとも一部は、外力が作用していないとき、湾曲した休止形状を取る。送達ツール652は、例えば、送達ツール652をカニューレ608によって画定された通路の直線部分を通して挿入することにより、直線状の形状を取るように促すことができる。送達ツール652が、カニューレ608内などに閉じ込められたとき、相互係止部分は、相補的な相互係止部分と係合し、それにより送達ツールおよび眼用インプラントを一緒に接合し、および送達ツールおよび眼用インプラントがカニューレ608を通して一緒に移動することを可能にすることができるが、これについては以下でより詳細に記載する。
【0124】
図28図29、および図30は、カニューレ608のより詳細な図を示す。図28は、この詳細な説明によるカニューレ608の側面図であり、図29はカニューレ608の拡大詳細図であり、図30はカニューレ608の先端部分644の一部をさらに示す拡大斜視図である。カニューレ608は、中心軸696を有する概ね管状の部材698を含む。一般に、管状の部材698は、基端部641、基端部分640、中間部分645、先端部分644、および先端部634を含む。カニューレ608は、基端部641と先端部634との間の距離D1に延在してもよい。管状部材698は、基端部641と先端部634との間の距離D1よりも長い中心軸696に沿った長さを有してもよい。例のため、距離D1は、1.50~3.50インチ(3.81~8.89センチメートル)、2.0~3.0インチ(5.08~7.62センチメートル)の範囲内、またはおよそ2.50インチ(6.35センチメートル)であってもよいことが考えられる。カニューレ608は、任意の所望の距離D1に及んでもよいことが考えられる。基端部分640は、基端部641から基端部641に対して先端側の地点643まで距離D2にわたって延在してもよい。基端部分640は、距離D2が、中心軸696に沿って測定された基端部分640の長さにほぼ等しいかまたは等しいように概ね直線状であってもよい。距離D2は、1.50~2.50インチ(3.81~6.35センチメートル)、1.75~2.25インチ(4.652~5.72センチメートル)の範囲内、またはおよそ2.0インチ(5.08センチメートル)であってもよい。中間部分645は、第1の地点643と、カニューレ608の先端部634に対して基端側に位置する第2の地点647との間に延在してもよい。中間部分645は、地点643および地点647から延在する距離D3に及んでもよい。距離D3は、0.15~0.50インチ(0.38~1.27センチメートル)、0.25~0.40インチ(0.64~1.02センチメートル)の範囲内、またはおよそ0.33インチ(0.84センチメートル)であってもよい。中間部分645は、距離D3よりも長い管状部材698の中心軸696に沿った長さを有してもよい。中間部分645と距離D3との長さの差は、以下でより詳細に考察するように、中間部分645の湾曲の程度によって決定されてもよい。先端部分644は、第2の地点647と先端部634との間に延在してもよい。先端部分644は、地点647および先端部地点634から延在する距離D4に及んでもよい。距離D4は、0.05~0.30インチ(0.13~0.76センチメートル)、0.13~0.23インチ(0.33~0.58センチメートル)の範囲内、またはおよそ0.17インチ(0.43センチメートル)であってよい。先端部分644は、距離D4よりも長い管状部材698の中心軸696に沿った長さを有してもよい。先端部分644と距離D4の長さの差は、以下により詳細に考察されるように、先端部分644の湾曲の程度によって決定されてもよい。
【0125】
先端開口表面642は、先端部634を通っておよびカニューレ608の側壁を通って延在する先端開口632を取り囲む。斜縁665は、先端開口表面642の先端部に配置され、先端部634から斜縁665の基端範囲667まで延在する。管状部材698は、先端開口632と、基端開口636と、基端開口636と先端開口632との間に延在する通路638を画定する。
【0126】
カニューレ608の基端部分640は実質的に直線であり、カニューレ608の中間部分645および先端部分644は湾曲していてもよい。図28の実施形態では、先端部分644はその全長に沿って湾曲しており、中間部分645はその全長に沿って湾曲している。中間部分645は、中心軸696から測定され、第1の曲率半径を定める第1の半径R1を有する湾曲を画定することができる。中心軸696に沿った中間部分645の長さは、以下の式1を使用して円弧の測定値(度)および湾曲の半径によって決定することができる。
【0127】
【数1】
式中、Larcは円弧の長さであり、θは円弧の角度測定値(度)であり、rは円の半径である。いくつかの例では、中間部分645の角度測定値は、10°~25°の範囲内であってもよいが、他の角度が可能である。先端部分644は、第2の半径R2を有し第2の曲率半径を定める湾曲を画定することができる。中心軸696に沿った先端部分644の長さは、上の式1を使用して円弧の測定値(度)および湾曲の半径によって決定することができる。いくつかの例では、先端部分644の角度測定値は90°~110°の範囲内にあってもよいが、他の角度も可能である。第1の半径R1は、先端部分644が中間部分645よりも高い曲率を有するように、第2の半径R2より大きくてもよいことが考えられる。この構成は、シュレム管または眼用インプラントが植え込まれる眼の他の解剖学的構造に対して正確な軌道で眼用インプラントを前進させ得る。例えば、この構成は、カニューレ608を、可視の眼の主軸に概ね沿って切開を介して前進させること、およびカニューレ608がシュレム管内に実質的に接線方向に入ることを可能にし得る。インプラント650の他の解剖学的位置への送達を容易にするために、第1の半径R1および第2の半径R2が選択されてもよいことが考えられる。
【0128】
図28Aは、図25に示すカニューレの追加的な側面図であり、断面図を示す。例えば、カニューレ608は、中心軸696を有する概ね管状の部材698を含む。概ね管状の部材698は、基端部641と、基端部分640と、中間部分645と、先端部分644と、先端部634とを含む。さらに、例えば、基端部分640の中心軸696は、中間部分645の第1の地点643における接線に対して接線方向にある。さらに、中間部分645の第2の地点647における接線は、先端部分644の第2の地点647における接線に対して接線方向にある。先端部分644の先端部634における接線および基端部分の中心軸696は、例えば、概ね90°~165°の範囲の角度を有する第3の半径R3を有してもよい。
【0129】
この詳細な説明による方法は、ヒトの眼の角膜を通してカニューレ608の先端部634を前進させ、先端部634が前眼房内に配置されるようにするステップを含むことができる。次いで、カニューレ608は、例えばカニューレ608の先端部634を用いてシュレム管の壁を貫通することにより、眼のシュレム管に進入するために使用することができる。斜縁665は、カニューレ608の先端開口632の少なくとも一部をシュレム管と連通した状態に置くために、シュレム管に挿入されてもよい。例えば、カニューレ608は、カニューレ608の先端部634および斜縁665が斜縁665の基端範囲667までシュレム管に挿入されるまで前進されてもよい。カニューレ608の通路がシュレム管の内腔と流体連通した状態で、眼用インプラントは、カニューレ608の先端ポートからシュレム管内に前進させることができる。
【0130】
図29のおよび図30にさらに示される実施形態では、カニューレ608の先端部分644はトラフ654を画定する。いくつかの実施形態では、トラフ654は、眼用インプラントがシュレム管内で前進されるときに眼用インプラントの外側断面全体を受け入れるように構成される。この場合、トラフ654は、眼用インプラントの幅よりも深い深さ寸法を有することができる。このカニューレ構成は、眼用インプラントがシュレム管内に前進されるときに眼用インプラントが小柱網の層と交差するのを有利に防止する。トラフ654はまた、眼用インプラントの基端部分が、上述のトラフ554と同様の方法で送達ツールから解放されることを可能にするように構成されてもよい。
【0131】
図25Bを簡単に参照すると、明示的に示されていないが、眼用インプラント650の前進中、送達ツール652の相互係止部分660および眼用インプラント650の相補的な相互係止部分662は、眼用インプラント650の基端部が送達ツール652の先端部に対して基端側にあるように互いに係合してもよい。送達ツール652の表面661はカニューレ608の壁に当接し、送達ツール652の相互係止部分660と眼用インプラント650の相補的な相互係止部分662とが互いに外れるのを防止する。それらがこのように接続されると、送達ツールが送達システム機構によってカニューレ608に対して前進および後退されるにつれて、送達ツール652および眼用インプラント650が一緒に移動する。いくつかの実施形態では、眼用インプラント650は、カニューレ608の先端部分644の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する。この構成により、眼用インプラントが送達システム600によって先端方向に押されるとき、眼用インプラントはトラフ654に沿って確実に進む。
【0132】
カニューレ608が所望の位置に配置されると、眼用インプラント650は、カニューレ608が静止されている間、先端方向に前進されてもよい。眼用インプラントがシュレム管内で前進されるとき、長尺状の開口632が眼用インプラント650の直接的な可視化を実現し得る。眼用インプラントの直接的な可視化を可能にする構成は、多くの臨床的利点を有する。医療処置中、小柱網を介してインプラントを見ることによってインプラントの進行を監視することは多くの場合に困難である。例えば、血液還流が血液をシュレム管に押し込んで、シュレム管に入ったインプラントの部分を医師が見ることを妨げる可能性がある。眼用インプラント650は、カニューレ608に沿って先端方向に前進されるにつれて、トラフ654に沿って進む。トラフ開口は、医師が、インプラント構造体がシュレム管に入る前にトラフを通って進むとき、インプラント構造体を見ることによってインプラントの進行を監視することを可能にする。トラフ開口はまた、医師が、シュレム管に進入するためにカニューレによって作られた切開に対する眼用インプラントの先端部の位置を特定することを可能にする。
【0133】
送達ツール652は、送達ツール表面661および低減された直径部分663の一部が開口632に通されるまで眼用インプラント650を先端方向に前進させてもよく、それにより、送達ツールの湾曲部分がその湾曲した休止形状に向かって移動することが許容され、それにより送達ツール係合表面660が眼用インプラント650上の相補的係合表面662から外れて離れる。眼用インプラントから外れた後、カニューレ608および送達ツール652は、完全に展開された位置に眼用インプラント650を残してシュレム管から引き抜くことができる。眼用インプラント650の送達が完了した後、送達ツール652およびカニューレ608は、少なくとも眼用インプラント650の先端部分をシュレム管内に残して眼から取り除くことができる。眼用インプラント650の入口部分は前眼房内に、および眼用インプラント650の残りの部分はシュレム管内に配置されてもよい。シュレム管内の眼用インプラント650の存在は、前眼房からの房水の流れを促進し得る。この流れには、シュレム管に沿った軸流、前眼房からシュレム管に入る流れ、およびシュレム管と連通する出口を介したシュレム管を離れる流れが含まれ得る。眼内の所定の位置にあるとき、眼用インプラント650は小柱網およびシュレム管組織を支持し、(小柱網を介した)前眼房とシュレム管との間の、およびシュレム管に沿ったポケットまたは区画間の連通を改善する。
【0134】
カニューレ608は、トラフ654内に配置された圧力センサ690をさらに含んでもよい。圧力センサ690は、上に記載した圧力センサ180と形状および機能が類似していてもよい。圧力センサ690はカニューレのトラフ654内に取り付けられるように示されているが、圧力センサ690はカニューレ608内または上の他の位置に取り付けられてもよいことが考えられる。圧力センサ690は、眼用インプラント650の植え込み中またはその直後に即時圧力読取り値を提供することができる。いくつかの例では、カニューレ608上の圧力センサ690から得られた圧力読取り値は、そのように設けられた場合、眼用インプラント650に取り付けられた圧力センサから得られた圧力読取り値と比較することができる。
【0135】
圧力センサ690は、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであってもよい。圧力センサ690は、MEMS圧力センサとして記載される一方、MEMS圧力センサの代わりにまたはそれに加えて、他の圧力センサも使用し得ることが想定される。さらに、1つの圧力センサ690のみが示されているが、カニューレ608は、必要に応じて2つ以上の圧力センサ690を含むことができる。MEMS圧力センサは、多くの場合、シリコン基板のダイの裏側に凹部を異方性エッチングし、薄い可撓性のダイヤフラムを残すことによって形成される。使用中、ダイヤフラムの少なくとも1つの表面は、入力圧力(例えば、眼圧)にさらされる。ダイヤフラムは入力圧力の大きさに応じて撓み、これは、ダイヤフラム上に配置されたまたはそれに埋め込まれた1つまたは複数の電気構成要素またはセンサ素子(例えば、ピエゾ抵抗器)によって検出することができる。ピエゾ抵抗器の抵抗の変化は、ピエゾ抵抗器によって少なくとも部分的に形成された抵抗ブリッジからの出力電圧信号の変化として反映される。いくつかの例では、ダイヤフラムは、サポートボスを追加することでより薄くすることができ、これはダイヤフラムの感度を平板ダイヤフラムよりも高めることを促進し得る。圧力センサのボンドパッドに出力信号を提供する前に、センサ素子があるレベルの信号処理を提供するように回路素子が接続されてもよい。この信号処理は、センサ素子(例えば、ピエゾ抵抗器)によって生成される生のセンサ信号をフィルタリング、増幅、線形化、較正および/または他の方法で処理することができる。センサ素子はピエゾ抵抗器として記載されているが、センサ素子は容量性圧力センサ690を提供するように選択されてもよいことが考えられる。
【0136】
圧力センサ690は、圧力センサ690からのデータを読取装置に無線で通信することを可能にするためにアンテナまたはインダクタをさらに備え得る。いくつかの例では、圧力センサ690は、圧力センサ690から身体の外側に位置する別の装置にデータを伝送することが望まれる場合、限定しないが、セルラ通信、ジグビー(ZigBee)(登録商標)、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)、ワイファイ(WiFi)(登録商標)、IrDA、専用短距離通信(DSRC)、エンオーシャン(EnOcean)(登録商標)、または他のいずれかの適切な無線プロトコルなどの無線周波数通信プロトコルを使用してもよい。データは、携帯電話、タブレットコンピュータ、コンピュータ、ポータブルハンドヘルドデバイス、そのようなパーソナルデジタルアシスタント(PDA)、または特別に設計された装置を含むがこれらに限定されない任意の数のそのように適切にイネーブルにされた装置に伝送されてもよい。これは、医師、患者、または他の関係者が眼圧計を使用せずに眼圧を監視することを可能にし得る。
【0137】
眼用デバイスの構成要素は、金属、金属合金、ポリマー(そのいくつかの例が以下に開示される)、金属-ポリマー複合材、セラミック、それらの組み合わせおよび同類のもの、または他の適切な材料から作製されてもよい。適切なポリマーのいくつかの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばデュポン(DuPont)から入手可能なデルリン(DELRIN)(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル-エステル(例えば、DSMエンジニアリング・プラスチックス(DSM Engineering Plastics)から入手可能なアルニテル(ARNITEL)(登録商標))、エーテルまたはエステルベースのコポリマー(例えば、ユチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートおよび/またはデュポン(DuPont)から入手可能なハイトレル(HYTREL)(登録商標)などの他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えば、バイエル(Bayer)から入手可能なデュレタン(DURETHAN)(登録商標)またはエルフ・アトケム(Elf Atochem)から入手可能なクリスタミド(CRISTAMID)(登録商標))、エラストマー性ポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば商品名ペバックス(PEBAX)(登録商標)の下で入手可能)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、マーレックス(Marlex)高密度ポリエチレン、マーレックス(Marlex)低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(例えば、リクセル(REXELL)(登録商標))ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレン(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(エムス・アメリカン・グリロン(EMS American Grilon)から入手可能なグリラミド(GRILAMID)(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBSおよび/またはSIBS50A)、ポリカーボネート、アイオノマー、生体適合性ポリマー、他の適切な材料、またはそれらの混合物、組合せ、コポリマー、ポリマー/金属複合材および同類のものを含んでもよい。いくつかの実施形態では、シースは、液晶ポリマー(LCP:liquid crystal polymer)とブレンドすることができる。例えば、混合物は約6%までのLCPを含むことができる。
【0138】
適切な金属および金属合金のいくつかの例には、304V、304Lおよび316LVステンレス鋼などのステンレス鋼;軟鋼;線形弾性および/または超弾性ニチノールなどのニッケル-チタン合金;他のニッケル合金、例えばニッケル-クロム-モリブデン合金(例えば、インコネル(INCONEL)(登録商標)625などのUNS:N06625、ハステロイ(HASTELLOY)(登録商標)C-22(登録商標)などのUNS:N06022、ハステロイ(HASTELLOY)(登録商標)C276(登録商標)などのUSN:N10276、他のハステロイ(HASTELLOY)(登録商標)合金、および同類のもの)、ニッケル-銅合金(例えば、モネル(MONEL)(登録商標)400、ニッケルVAC(NICKEL VAC)(登録商標)400、ニコロス(NICORROS)(登録商標)400、および同類のものなどのUNS:N04400)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)および同類のものなどのUNS:R30035)、ニッケル-モリブデン合金(例えば、ハステロイ(HASTELLOY)(登録商標)アロイ(ALLOY)B2(登録商標)などのUNS:N10665)、他のニッケル-クロム合金、他のニッケル-モリブデン合金、他のニッケル-コバルト合金、他のニッケル-鉄合金、他のニッケル-銅合金、他のニッケル-タングステンまたはタングステン合金、および同類のものなど;コバルト-クロム合金;コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、エルジロイ(ELGILOY)(登録商標)、ファイノックス(PHYNOX)(登録商標)および同類のものなどのUNS:R30003);白金富化ステンレス鋼;チタン;それらの組み合わせ;および同類のもの;または他のいずれかの適切な材料が含まれる。
【0139】
本明細書内で示唆されるように、市販のニッケル-チタンまたはニチノール合金のファミリー内に、従来の形状記憶および超弾性種と化学的に類似し得るが明確で有用な機械的特性を示し得る「線形弾性」または「非超弾性」と分類されるカテゴリはある。線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、線形弾性および/または非超弾性ニチノールが、超弾性ニチノールが示すようにその応力/歪み曲線において相当の「超弾性プラトー」も「フラグ領域」も示さないという点で超弾性ニチノールと区別され得る。代わりに、線形弾性および/または非超弾性ニチノールでは、回復可能な歪みが増大すると、応力は、塑性変形が始まるまで実質的に線形の関係で、または幾分、しかし必ずしも完全でない線形の関係で、または少なくとも超弾性ニチノールの場合に見られ得る超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域よりも線形である関係で増大し続ける。したがって、本開示のために、線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、「実質的に」線形弾性および/または非超弾性のニチノールと呼ばれてもよい。
【0140】
いくつかの例では、線形弾性および/または非超弾性ニチノールはまた、線形弾性および/または非超弾性ニチノールが(例えば、塑性変形前に)実質的に弾性のままでありながら最大約2~5%の歪みを受け入れることができる一方、超弾性ニチノールは塑性変形前に最大約8%の歪みを受け入れることができるという点で超弾性ニチノールと区別することができる。これらの材料の両方は、塑性変形前に約0.2~0.44パーセントの歪みのみを受け入れることができるステンレス鋼(その組成に基づいて区別することもできる)などの他の線形弾性材料と区別することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、広い温度範囲にわたる示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)および動的金属熱分析(DMTA:dynamic metal thermal analysis)分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化を示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態では、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金において約-60℃~約120℃の範囲のDSCおよびDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化は存在しないことがあり得る。したがって、このような材料の機械的曲げ特性は、この非常に広い温度範囲にわたり温度の影響に対して概ね不活性であり得る。いくつかの実施形態では、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金の周囲温度または室温における機械的曲げ特性は、例えば、それらが超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域を表示しないという点で体温における機械的特性と実質的に同じである。換言すれば、広い温度範囲にわたり、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、その線形弾性および/または非超弾性特徴および/または特性を維持する。
【0142】
いくつかの実施形態では、線状弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、約50~約60重量%ニッケルの範囲内にあり、残りは本質的にチタンである。いくつかの実施形態では、その組成物は、約54~約57重量%ニッケルの範囲内にある。適切なニッケル-チタン合金の一例は、古河テクノマテリアル社(日本国神奈川県)から市販されているFHP-NT合金である。ニッケルチタン合金のいくつかの例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,238,004号明細書および同第6,508,803号明細書に開示されている。他の適切な材料は、ウルタニウム(ULTANIUM)(商標)(ネオ-メトリクス(Neo-Metrics)から入手可能)およびゴム・メタル(GUM METAL)(商標)(豊田(Toyota)から入手可能)を含み得る。いくつかの他の実施形態では、超弾性合金、例えば超弾性ニチノールを使用して所望の特性を達成することができる。
【0143】
様々な実施形態の多数の特徴が様々な実施形態の構造および機能の詳細と共に前述の説明に記載されているが、この詳細な説明は例示的なものに過ぎず、特に様々な実施形態によって示される部分の構造および配置に関して、添付の特許請求の範囲が表現されている用語の広範な一般的意味によって示される完全な範囲まで、細部における変更形態がなされ得ることを理解されたい。
図1
図2
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図7A-7B】
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図10A
図10B
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図16A-16B】
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