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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】蓋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/08 20060101AFI20240725BHJP
   B65D 51/16 20060101ALI20240725BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B65D43/08 200
B65D51/16 100
B65D81/34 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021042170
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142142
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 克彦
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-114246(JP,A)
【文献】特開2003-063573(JP,A)
【文献】特開2018-115002(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128322(JP,U)
【文献】特開2019-089562(JP,A)
【文献】特開2021-091448(JP,A)
【文献】米国特許第04660716(US,A)
【文献】登録実用新案第3219980(JP,U)
【文献】独国実用新案第202011051231(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/08
B65D 51/16
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した容器の開口縁に装着可能な蓋体であって、
前記容器の底面と所定の間隙を有して対向可能な天面部と、
前記天面部の周縁から垂下する周状壁と、を含み、
前記周状壁には、前記開口縁に沿って当該開口縁を嵌合可能な嵌合段部と、前記嵌合段部の下方で径方向に並ぶ二重壁となるよう前記周状壁の端部が上方へ向けて折り返された折返し部と、が形成されてなり、
前記折返し部は、
前記嵌合段部から下方への深さが第1深さとなって前記上方へ折り返された第1折返し部と、前記第1折返し部よりも浅い第2深さを有して前記上方へ折り返された第2折返し部と、を含んでなる、蓋体。
【請求項2】
上面が開口した容器の開口縁に装着可能な蓋体であって、
前記容器の底面と所定の間隙を有して対向可能な天面部と、
前記天面部の周縁から垂下する周状壁と、を含み、
前記周状壁には、前記開口縁に沿って当該開口縁を嵌合可能な嵌合段部と、前記嵌合段部の下方で径方向に並ぶ二重壁となるよう前記周状壁の端部が上方へ向けて折り返された折返し部と、が形成されてなり、
前記折返し部は、前記容器の開口縁に装着された状態において、前記容器の底部外縁と前記蓋体の最外縁とを最短直線で結んだ際に、前記二重壁を構成する外側壁の少なくとも一部が前記最短直線よりも径方向外側に突出されている、蓋体。
【請求項3】
前記折返し部は、前記嵌合段部から下方に向けて延びる内側壁と、前記内側壁の下端と接続して径方向外側に向けて延在する底部と、前記底部から上方に向けて延びる外側壁と、を含んでなる、請求項1又は2に記載の蓋体。
【請求項4】
前記内側壁と前記外側壁の少なくとも一方は、前記径方向外側に拡径するように延びてなる、請求項に記載の蓋体。
【請求項5】
前記第1折返し部のうち外側壁の外面には周方向に沿って延在する把持用リブが設けられてなる、請求項に記載の蓋体。
【請求項6】
前記第1折返し部が前記周状壁の周方向に沿って断続的に複数設けられてなる、請求項に記載の蓋体。
【請求項7】
前記第1折返し部の周方向長さは、前記第2折返し部の周方向長さよりも長い、請求項5又は6のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項8】
前記第1折返し部の径方向幅は、前記第2折返し部の径方向幅よりも長い、請求項~7のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項9】
前記天面部には少なくとも1つの蒸気孔が形成されてなる、請求項1~のいずれかに記載の蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の開口縁に装着可能な蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば開口縁を有する紙製や樹脂製の容器に内容物が充填された状態で移送や流通させる際には、この容器内の内容物がこぼれないよう開口縁に蓋体を装着することが行われている。かような蓋体としては、一例として「LID(リッド)」とも呼ばれる合成樹脂製の蓋体などが好適に用いられている。
【0003】
上記した容器に保存される内容物としては、例えばグラタンやドリアなど各種の調理済み食品が例示できる。このような内容物は、例えば上記した容器に入れられ蓋体で封止された後に公知のシュリンクフィルムで包装された状態で販売され、場合によりシュリンクされたままの状態でマイクロ波(電子レンジ)で加熱されることもある。
【0004】
従って、かような用途に用いられる容器においては、例えばマイクロ波(電子レンジ)で加熱した際に発生する水蒸気で容器が過度に膨張したり破損しないように水蒸気を容器外に放出させることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-172351号公報
【文献】特開2019-81612号公報
【文献】特開2018-167907号公報
【文献】実用新案登録第3213110号公報
【文献】実用新案登録第3220460号公報
【文献】実開平6-88号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献を含む従来構造の蓋体においては未だに改善すべき点が次のとおり存在する。すなわち上記した容器においては、マイクロ波などによる加熱時に高温の蒸気が容器外へ放出されることが多い。この容器外へ放出された蒸気は、容器とシュリンクフィルムとの間に滞留することがある。
【0007】
従って、例えば店頭の販売員や購入者が電子レンジから加熱後の容器を取り出そうと容器の周縁(例えば容器のフランジ部)を把持する際に、特に上記したシュリンクフィルム内で滞留する蒸気が出来るだけ影響しないことが望ましい。
【0008】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、例えば容器にシュリンクパックされた内容物を加熱した場合に、当該加熱によって容器とシュリンクフィルム内に滞留する蒸気が容器の把持に影響してしまうことを抑制可能な蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における蓋体は、(1)上面が開口した容器の開口縁に装着可能な蓋体であって、前記容器の底面と所定の間隙を有して対向可能な天面部と、前記天面部の周縁から垂下する周状壁と、を含み、前記周状壁には、前記開口縁に沿って当該開口縁を嵌合可能な嵌合段部と、前記嵌合段部の下方で径方向に並ぶ二重壁となるよう前記周状壁の端部が上方へ向けて折り返された折返し部と、が形成されてなり、前記折返し部は、前記嵌合段部から下方への深さが第1深さとなって前記上方へ折り返された第1折返し部と、前記第1折返し部よりも浅い第2深さを有して前記上方へ折り返された第2折返し部と、を含んでなる。
また本発明の一実施形態における蓋体は、(2)上面が開口した容器の開口縁に装着可能な蓋体であって、前記容器の底面と所定の間隙を有して対向可能な天面部と、前記天面部の周縁から垂下する周状壁と、を含み、前記周状壁には、前記開口縁に沿って当該開口縁を嵌合可能な嵌合段部と、前記嵌合段部の下方で径方向に並ぶ二重壁となるよう前記周状壁の端部が上方へ向けて折り返された折返し部と、が形成されてなり、前記折返し部は、前記容器の開口縁に装着された状態において、前記容器の底部外縁と前記蓋体の最外縁とを最短直線で結んだ際に、前記二重壁を構成する外側壁の少なくとも一部が前記最短直線よりも径方向外側に突出されている。
【0010】
また、上記(1)又は(2)に記載の蓋体においては、()前記折返し部は、前記嵌合段部から下方に向けて延びる内側壁と、前記内側壁の下端と接続して径方向外側に向けて延在する底部と、前記底部から上方に向けて延びる外側壁と、を含んでなることが好ましい。
【0011】
また、上記()に記載の蓋体においては、()前記内側壁と前記外側壁の少なくとも一方は、前記径方向外側に拡径するように延びてなることが好ましい。
【0013】
また、上記()に記載の蓋体においては、(5)前記第1折返し部のうち外側壁の外面には周方向に沿って延在する把持用リブが設けられてなることが好ましい。
【0014】
また、上記(5)に記載の蓋体においては、(6)前記第1折返し部が前記周状壁の周方向に沿って断続的に複数設けられてなることが好ましい。
【0015】
また、上記(5)又は(6)のいずれかに記載の蓋体においては、(7)前記第1折返し部の周方向長さは、前記第2折返し部の周方向長さよりも長いことが好ましい。
【0016】
また、上記()~()のいずれかに記載の蓋体においては、(8)前記第1折返し部の径方向幅は、前記第2折返し部の径方向幅よりも長いことが好ましい。
【0018】
また、上記(1)~()のいずれかに記載の蓋体においては、()前記天面部には少なくとも1つの蒸気孔が形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加熱によって容器とシュリンクフィルム内に滞留する蒸気が容器の把持に影響してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る蓋体を斜め上方から見た外観斜視図
図2】実施形態に係る蓋体が斜め下方から見た外観斜視図
図3】実施形態に係る蓋体を側方から見た外観側面図
図4図1における蓋体のA-A断面を示す模式図
図5】実施形態に係る蓋体の他の例に関する上面図
図6】内容物が封入されてシュリンクパックされた容器及び蓋体の模式図
図7図6のうち容器の開口縁周囲を拡大して滞留する蒸気の状態を例示した模式図
図8】レンジアップ後の容器を把持した際の状態を例示した模式図
図9図6のうち蓋体の折返し部と容器との位置関係を説明する模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照しつつ、本実施形態に係る蓋体について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を説明するものであり、本発明を意図せず限定するものではなく、さらには上記特許文献を含む他の公知の構成を適宜補完して実施してもよい。また、以下では蓋体100の中心を通って軸方向に延びる方向をZ方向、このZ方向とそれぞれ交差する蓋体100の主面に平行な方向をそれぞれX方向およびY方向として便宜的に設定する。
【0022】
[容器200]
まず図6を参照しつつ、本実施形態における容器200について説明する。同図に示されるとおり、本実施形態の容器200としては、上面が開口した開口縁210を備えた有底の凹形状(一例としてカップ状あるいはトレイ状など)である公知の容器が例示できる。また、この容器200の材質としては、特に制限はないが、例えば公知の紙材や樹脂材などを適用できる。
【0023】
同図に示すように、容器200には内容物Cが充填される。かような内容物Cとしては、例えばグラタンやドリアあるいはカレーライスや麺類など種々の公知の料理済又は半調理済食品が適用できる。なお、容器200に充填される内容物Cに応じてマイクロ波(電子レンジ)による加熱処理が施されることがあることから、容器200の内面又は外面には公知のコーティング処理が施されていてもよい。
【0024】
また、図6に示すように、上記した内容物Cを充填した容器200および蓋体100を覆うように公知のシュリンクフィルムSFでパッキング処理が施されていてもよい。かようなシュリンクフィルムとしては、例えば塩化ビニルなど種々の公知の材質が適用できる。
【0025】
[蓋体100]
次に図1~5も参照しつつ、本実施形態における蓋体100の詳細構造について説明する。
図1~3などから理解されるとおり、本実施形態の蓋体100は、上面が開口した容器200の開口縁210に装着可能であって、天面部10と、周状壁20と、を少なくとも含んで構成されている。
【0026】
かような蓋体100の材質は、特に制限はないが、例えば透明なポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレンなど公知の合成樹脂や、上記した合成樹脂以外には例えば紙材を適用してもよい。本実施形態では、特に合成樹脂製の蓋体100として、例えば耐熱性OPS(二軸延伸ポリスチレン)、結晶質のポリエチレンテレフタレート樹脂やポリスチレン、ポリプロピレンなどが好適に使用できる。
【0027】
また、合成樹脂製の蓋体100に好適な製造方法としては、本実施形態で示した形状と機能を発揮する限りにおいて特に制限はなく、例えばシート状部材に対して刃具および空圧力(真空又は圧空など)を用いて蓋体へ成形する公知のシート成形手法や溶融樹脂を成形型に射出して蓋体を成形する公知の射出成形法など種々の製造技術を適用してもよい。
【0028】
天面部10は、上記した容器200の開口縁210を被覆したときに容器200の底面と所定の間隙を有して対向可能に設けられている。より具体的に本実施形態の天面部10は、天面板11、この天面板11の周縁で径方向外側に向かって盛り上がる段部12およびこの段部12の外側に配置された周縁面13を含んで構成されている。
【0029】
また、図3に示すように、本実施形態の天面板11は、容器200に取り付けれた際に開口縁210から見て上に凸となるようドーム状に形成されていることが好ましい。また、この天面板11の中央には、内容物Cの加熱時に発生する蒸気を放出可能な公知の蒸気孔11aが形成されていてもよい。かような蒸気孔11aは、天面部10に少なくとも1つ形成されていることが好ましい。
【0030】
このように本実施形態における天面部10は、周縁面13から段部12を介して下方へいったん傾斜するとともに、この段部12の下端からは中央へ向かって上に凸となるドーム状の天面板11が配置されていることが好ましい。また、この天面板11の中心には容器200内部の気体を外部へ放出可能な蒸気孔11aが形成されていることから、内容物Cの加熱時にも容器200が意図せず膨張し過ぎてしまうことが抑制されている。
【0031】
なお、本実施形態では蒸気孔11aが天面板11に形成される例を説明したが、この形態に限られない。すなわち、上記した蒸気孔は、蓋体100の上部に形成される形態が最も好ましい効果を奏するのではあるが、例えば周状壁20の一部(蓋体100の側面側)に1又は複数の蒸気孔が形成される形態であってもよい。
【0032】
周状壁20は、前記した天面部10の周縁から垂下するように設けられている。
図1~3などに示すように、本実施形態の周状壁20は、周縁面13から下方へ垂れ下がる第1スカート壁21と、この第1スカート壁21の下端で周方向外側へ広がって容器200の開口縁210を嵌合可能な嵌合段部22と、この嵌合段部22の下方で径方向に並ぶ二重壁となるよう周状壁20の端部が上方へ向けて折り返された折返し部23と、を含んで構成されている。
【0033】
なお図2および図3から明らかなとおり、本実施形態の嵌合段部22には、内面側に向かって凹んだ嵌合用アンダー22aが周方向に沿って断続的に設けられている。これにより、蓋体100で容器200の開口縁210をカバーする際に、この嵌合用アンダー22aを開口縁210が乗り越えることで嵌合段部22内に容器200の開口縁210を安定して嵌合させることが可能となっている。
【0034】
<折返し部23の詳細構造>
次に図2~5なども参照しつつ、本実施形態の周状壁20における折返し部23の構造について詳述する。
【0035】
まず図4などから理解されるとおり、本実施形態の折返し部23は、前記した嵌合段部22から下方に向けて延びる内側壁25と、前記内側壁25の下端と接続して径方向外側に向けて延在する底部26と、この底部26から上方に向けて延びる外側壁27と、を含んで構成されている。
【0036】
なお、図4に示すように、本実施形態の内側壁25及び外側壁27は、双方ともに径方向外側に拡径するよう(断面がほぼV字状となるよう)に延びていることが好ましい。しかしながらこの形態に限られず、例えば内側壁25は鉛直方向に垂下する一方で外側壁27が径方向外側に拡径する形態など、上記した内側壁25と外側壁27の少なくとも一方が前記径方向外側に拡径するように延びていてもよい。
【0037】
また図3及び図4から理解されるとおり、本実施形態の折返し部23は、前記した嵌合段部22から下方への深さが第1深さd1となって外側が上方へ折り返された第1折返し部23Aと、この第1折返し部23Aよりも浅い第2深さd2を有して外側が上方へ折り返された第2折返し部23Bと、を含んで構成されている。
【0038】
なおこのとき、図4に示すように、第1折返し部23Aの径方向幅w1は、第2折返し部23Bの径方向幅w2よりも大きいことが好ましい。しかしながら本実施形態は、この形態に限られず、第1折返し部23Aの径方向幅w1と第2折返し部23Bの径方向幅w2がほぼ等しい大きさとなっていてもよい。
【0039】
また、上記した第1折返し部23Aは、使用者が手で把持する把持部GPとしても機能するため、後述する外面壁26a(図4参照)の外面には滑り止めなどを目的とした把持用リブ24が形成されていてもよい。かような把持用リブ24は、例えば第1折返し部23Aの外面側で径方向外側に突出した凸部が例示できる。
【0040】
また図2などから理解されるとおり、この把持用リブ24は、シュリンクフィルムSFと周方向で連続して密着可能なように周方向に沿って延在する(すなわち軸方向よりも周方向に長く延在する)ように設けられることが好ましい。これにより、内容物Cの加熱時に加熱された蒸気が把持用リブ24の間を通り抜けることを抑制できる。
【0041】
また、図2及び図3などを参照すると理解されるとおり、本実施形態における第1折返し部23Aと第2折返し部23Bは、周方向(θz方向)に沿って交互に配置されていることが好ましい。本実施形態では、複数(本例では合計して4つ)の第1折返し部23Aが、それぞれの間を第2折返し部23Bが介在するように周方向に沿って断続して設けられている。
【0042】
図3に示すように、本実施形態では、周方向における第1折返し部23Aの長さL1は、周方向における第2折返し部23Bの長さL2よりも長くなるように設定されていることが好ましい。図2を用いて換言すれば、中心Oを基準として第1折返し部23Aの両端が成す角度θzは、中心Oを基準として第2折返し部23Bの両端が成す角度θzよりも大きく設定されていることが好ましい。
【0043】
しかしながら本実施形態は、この形態に限られず、周方向における第1折返し部23Aの長さL1が、周方向における第2折返し部23Bの長さL2よりも長くなるように設定されていてもよい。さらには、第1折返し部23Aの長さL1が、例えば蓋体100の他の例として図5に示されるように、周方向における第2折返し部23Bの長さL2とほぼ等しくなるように設定されていてもよい。
【0044】
<把持部GPに対する蒸気の遮蔽作用>
次に図7も参照しつつ、内容物Cの加熱時に発生する蒸気が把持部GPに到達することが抑制される(すなわち把持部GP近傍が過度に加熱されない)メカニズムについて説明する。
上述したとおり、内容物Cが充填されて蓋体100で封止された容器200は、シュリンクフィルムSFでシュリンクされたままマイクロ波(電子レンジ)で加熱された直後に把持部GPを介して持ち運びされることがある。
【0045】
このとき、加熱された内容物Cが発熱することで容器200内部で蒸気が発生する。そして、この発生した蒸気は、例えば蓋体100の蒸気孔11aや嵌合段部22における嵌合用アンダー22a間の隙間(嵌合間)などを介して容器200の外部へ放出される。このとき容器200はシュリンクフィルムSFでパッキングされているため、上記外部へ放出された蒸気は、シュリンクフィルムSFと蓋体100との間に形成された空間やシュリンクフィルムSFと容器200との間に形成された空間に滞留することになる。
【0046】
そして上記した特許文献を含む従来の構造では、例えば店頭の販売員や購入者が加熱後における容器の周縁(例えばフランジ部)を把持するとき、加熱された蒸気が滞留する空間の近くを把持するため、短時間しか把持を継続できないことが想定される。
【0047】
一方で本実施形態の蓋体100によれば、図7及び図8に示すように、嵌合段部22の下方に折返し部23を具備しているため、容器200の側面とシュリンクフィルムSFとの間の空間に滞留する蒸気HSが把持部GPへ向かうことをこの折返し部23(特に内側壁25)で遮蔽することが可能となっている。
【0048】
また、本実施形態の蓋体100によれば、折返し部23を構成する外側壁27を使用者が把持する形態となるため、この外側壁27と内側壁25の間には実質的に空気の断熱層が形成されることとなって容器200から排出される高温の蒸気を当該断熱層で遮蔽することも可能となっている。
【0049】
なお本実施形態の蓋体100では、図9に示すように、折返し部23は、容器200の開口縁210に装着された状態において、容器200の底部外縁ECPと蓋体100の最外縁OMPとを最短直線TLで結んだ際に、上記した二重壁を構成する外側壁27の少なくとも一部(図9における矢視された部位)が最短直線TLよりも径方向外側に突出されるように構成することが好ましい。これによりシュリンクフィルムSFがより確実に把持部GPに密着することが可能となり、本実施形態の効果をより確実に奏することができる。
【0050】
また本実施形態の蓋体100では、内側壁25と外側壁27が径方向外側に拡径するように延びているため、シュリンクフィルムSFが把持部GPとより密着しやすくなることで、蒸気HSが把持部GPの内側へ侵入し得る隙間(空間)を少ない状態とすることができる。なお、本実施例では内側壁25と外側壁27が径方向外側に拡径しているが、これらの少なくとも一方を径方向外側へ拡径してもよいし、内側壁25と外側壁27に代えて底部26を大きめに(すなわち径方向外側に向けた長さを長めに)形成しても同様の効果を得ることができる。
【0051】
これにより、例えばドリアやグラタンなど比較的高温の加熱を要する内容物Cを電子レンジなどで加熱した際、従来の容器では把持部周囲の温度が加熱直後に80℃を超えるのに比して、同条件で本実施形態の蓋体100では把持部GP周囲の温度が50℃を下回る結果も得ることができた。このように本実施形態の蓋体100によれば、加熱によって容器とシュリンクフィルム内に滞留する蒸気が容器の把持に影響してしまうことを大幅に抑制できる。
【0052】
また本実施形態の蓋体100によれば、折返し部23を構成する内側壁25と外側壁27の間にはバッファとなる空間を有するため、例えば上記したシュリンクフィルムSFで容器200などをパッキングする際や上記した内容物Cの加熱時などで発生するフィルム収縮の負荷を外側壁27の弾性変形によって緩和できる。これにより、パッキング時におけるシュリンクフィルムSFのフィルム切れを抑制することが可能となっている。
【0053】
以上説明した実施形態は本発明の趣旨を具現化した一例であり、本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えてもよい。さらには本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で公知の構造や手法を適宜追加して変形してもよい。
【0054】
例えば上記した実施形態の蓋体100では、折返し部23は周方向に沿って第1折返し部23Aと第2折返し部23Bが交互に断続して設けられていたが、周方向に沿って第1折返し部23Aが一様に設けられる形態であってもよい。
【0055】
また、上記した実施形態の蓋体100では、折返し部23は周方向に沿って第1折返し部23Aが合計4つ設けられていたが、例えば2つなど4つ以外の任意の数だけ設けてもよい。
【0056】
また、上記した実施形態の蓋体100では、折返し部23のうち把持部GPを構成する第1折返し部23Aの周方向における長L1は、使用者が指などで把持できる大きさであれば特に制限はないが、一例として例えば指の第一関節が接する程度(概ね20mm)であってもよい。
【0057】
また、上記した実施形態の蓋体100では、折返し部23のうち把持部GPを構成する第1折返し部23Aの第1深さd1は、使用者が指などで把持できる大きさであれば特に制限はないが、一例として例えば指の接地幅(概ね10mm)以上であってもよい。
【0058】
また、上記した実施形態における折返し部23は嵌合段部22より鉛直下方に向けて内側壁25が傾斜することで蒸気を遮断する壁を形成していた。これにより、容器200と蓋体100との嵌合間より排出された高温の蒸気を下方へ促す作用を発揮することができていた。しかしながら本発明は、この形態に必ずしも限定されず、例えば蓋体100の材料として相対的に耐熱性の高い材料を用いつつ、内側壁25が嵌合段部22から下方へ傾斜せずに当該嵌合段部22から上方へ傾斜するように形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えばマイクロ波(電子レンジ)によって内容物が加熱された後でも良好な把持性を維持可能な蓋体を製造することなどに利用できる。
【符号の説明】
【0060】
100 蓋体
10 天面部
20 周状壁
C 内容物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9