(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】蓋体
(51)【国際特許分類】
B65D 43/06 20060101AFI20240725BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B65D43/06 200
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2021042172
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 克彦
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1712060(JP,S)
【文献】意匠登録第1699411(JP,S)
【文献】特開2014-136587(JP,A)
【文献】特開2010-195410(JP,A)
【文献】特開2014-091540(JP,A)
【文献】特開平08-113259(JP,A)
【文献】特開平08-119345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0232026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/00
B65D 43/02
B65D 43/04
B65D 43/06
B65D 43/08
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した容器の開口縁に装着可能な蓋体であって、
前記容器の底面と所定の間隙を有して対向可能な天面部と、
前記天面部の周縁から垂下する周状壁と、を含み、
前記周状壁には、前記開口縁に沿って当該開口縁を嵌合可能な嵌合部と、前記嵌合部の外周面から径方向外側に突出するように設けられて前記容器への装着時に前記開口縁の変形に倣って弾性変形可能な突出部と、が形成されてなる、蓋体。
【請求項2】
前記突出部は、前記容器における開口縁を含む仮想平面を規定したときに当該開口縁を囲む仮想的な外接四角形の対角線上に位置するように、前記嵌合部に複数配置される、請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記開口縁は、互いに対向する一対の長辺、一対の短辺および一対の斜辺を有する平面視が八角形であり、
前記突出部は、前記容器のコーナーに対応する前記斜辺のそれぞれに対応して合計4つ設けられてなる、請求項2に記載の蓋体。
【請求項4】
前記突出部は、径方向の外側へ向けて広がりながら前記径方向の内側に向けて凸となる一対の第1湾曲部と、前記一対の第1湾曲部の間に配置されて前記径方向の外側に向かって凸となる第2湾曲部と、を含んで構成されてなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項5】
前記第1湾曲部の曲率半径は、前記第2湾曲部の曲率半径よりも大きい、請求項4に記載の蓋体。
【請求項6】
前記嵌合部は、径方向外側に延在する中継面と、前記中継面の周縁から垂下するスカート壁と、を含んでなり、
前記スカート壁の外周面から径方向外側に突出するように、少なくとも1つの前記突出部が設けられてなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項7】
前記
スカート壁には、内側に向けて突出して前記開口縁と嵌合する複数の嵌合アンダー部が、周方向に関して少なくとも前記突出部の両端に設けられてなる、請求項6に記載の蓋体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の蓋体を用いた容器のキャッピング方法であって、
内容物が充填された容器に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を施す調理工程と、
前記加熱及び冷却の少なくとも一方を経て反り又は変形が生じた前記容器の開口縁に対し、前記反り又は変形に追従させるように前記突出部を弾性変形させて前記開口縁に前記嵌合部を嵌合させる蓋体被覆工程と、
を含むことを特徴とする容器のキャッピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の開口縁に装着可能な蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記の特許文献にも例示されるように、開口縁を有する紙製や樹脂製の容器に内容物を入れた商品を店頭などで販売することが行われている。かような商品の流通形態に対応するため、容器内の内容物がこぼれないように容器の開口縁に蓋体を装着することが行われている。かような蓋体としては、一例として「LID(リッド)」とも呼ばれる合成樹脂製の蓋体が好適に用いられている。
【0003】
上記した容器に保存される内容物としては、例えばハンバーグ、ロールキャベツ、グラタンやドリアなど種々の調理済み食品が例示できる。このように昨今においては容器に封入される食品は多岐に渡っており、その食品に最適な調理方法がそれぞれのタイミングで行われることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-172351号公報
【文献】特開2019-81612号公報
【文献】特開2018-167907号公報
【文献】実用新案登録第3213110号公報
【文献】実用新案登録第3220460号公報
【文献】実開平6-88号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献を含む従来構造の蓋体においては未だに改善すべき点が次のとおり存在する。すなわち上記したとおり、容器に充填(盛り付け)した食品に対してそれぞれ適した調理方法が行われるため、盛り付け後において容器の開口縁を蓋体でキャッピングするタイミングは必然的に食品種ごとに異なってくる。
【0006】
例えば内容物としてある食品Aが充填される場合には容器に充填した後で直ちにキャッピングが行われる一方で、これとは異なる種類の食品Bが内容物の場合には容器に充填した後に焼成や冷凍などの追加処理を施した上で蓋体によるキャッピングがなされる。したがって、蓋体を用いて上記キャッピングを行うときの容器の状態は画一的ではなく、多種ある調理工程のどの時点でキャッピングを行うかによって容器の口径変化を含む変形や反りなどの発生状態は変化し得る。
【0007】
このような条件下では、例えば食品の種類に対応した蓋体をそれぞれ用意すれば、その食品の調理工程に応じた反りや変形などが発生した容器の開口縁に対して最適な形状の蓋体を提供することはできる。しかしながら、かような対応を行うと食品毎あるいは調理工程毎のキャップタイミングに応じた多種類・多規格の蓋体が必要となってしまい、省資源やコスト低減の観点からは望ましいとは言えない。
【0008】
本発明は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、例えば食品の種類あるいは調理工程に依らず、流通過程や内容物充填後の調理工程(加温や冷凍など)などで容器に発生する様々な口径変化や変形又は反りにも対応してフレキシブルに嵌合可能な蓋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における蓋体は、(1)上面が開口した容器の開口縁に装着可能な蓋体であって、前記容器の底面と所定の間隙を有して対向可能な天面部と、前記天面部の周縁から垂下する周状壁と、を含み、前記周状壁には、前記開口縁に沿って当該開口縁を嵌合可能な嵌合部と、前記嵌合部の外周面から径方向外側に突出するように設けられて前記容器への装着時に前記開口縁の変形に倣って弾性変形可能な突出部と、が形成されてなる。
【0010】
また、上記(1)に記載の蓋体においては、(2)前記突出部は、前記容器における開口縁を含む仮想平面を規定したときに当該開口縁を囲む仮想的な外接四角形の対角線上に位置するように、前記嵌合部に複数配置されることが好ましい。
【0011】
また、上記(2)に記載の蓋体においては、(3)前記開口縁は、互いに対向する一対の長辺、一対の短辺および一対の斜辺を有する平面視が八角形であり、前記突出部は、前記容器のコーナーに対応する前記斜辺のそれぞれに対応して合計4つ設けられてなることが好ましい。
【0012】
また、上記(1)~(3)のいずれかに記載の蓋体においては、(4)前記突出部は、径方向の外側へ向けて広がりながら前記径方向の内側に向けて凸となる一対の第1湾曲部と、前記一対の第1湾曲部の間に配置されて前記径方向の外側に向かって凸となる第2湾曲部と、を含んで構成されてなることが好ましい。
【0013】
また、上記(4)に記載の蓋体においては、(5)前記第1湾曲部の曲率半径は、前記第2湾曲部の曲率半径よりも大きいことが好ましい。
【0014】
また、上記(1)~(5)のいずれかに記載の蓋体においては、(6)前記嵌合部は、径方向外側に延在する中継面と、前記中継面の周縁から垂下するスカート壁と、を含んでなり、前記スカート壁の外周面から径方向外側に突出するように、少なくとも1つの前記突出部が設けられてなることが好ましい。
【0015】
また、上記(6)に記載の蓋体においては、(7)前記スカート壁には、内側に向けて突出して前記開口縁と嵌合する複数の嵌合アンダー部が、周方向に関して少なくとも前記突出部の両端に設けられてなることが好ましい。
【0016】
さらに本発明の一実施形態における容器のキャッピング方法は、上記した(1)~(7)のいずれかに記載の蓋体を用いた容器のキャッピング方法であって、内容物が充填された容器に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を施す調理工程と、前記加熱及び冷却の少なくとも一方を経て反り又は変形が生じた前記容器の開口縁に対し、前記反り又は変形に追従させるように前記突出部を弾性変形させて前記開口縁に前記嵌合部を嵌合させる蓋体被覆工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蓋体によれば、容器の開口縁における口径変化や変形又は反りに対してフレキシブルに追従して嵌合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る蓋体を斜め上方から見た外観斜視図
【
図5】本実施形態の蓋体における突出部の位置関係を説明するための模式図
【
図6】本実施形態の蓋体におけるA-A断面およびB-B断面をそれぞれ示す模式図
【
図7】内容物が充填された容器の開口縁に本実施形態の蓋体がキャッピングされた状態を示す模式図
【
図8】上方から見た場合における、容器の開口縁と本実施形態の蓋体との位置関係を示す模式図
【
図9】側方から見た場合における、容器の開口縁と本実施形態の蓋体との位置関係を示す模式図
【
図11】
図10で例示した容器の開口縁に本実施形態の蓋体をキャッピングした状態の一部を撮像した画像
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しつつ、本実施形態に係る蓋体について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を適用した一実施例を説明するものであり、本発明を意図せず限定するものではなく、さらには上記特許文献を含む他の公知の構成を適宜補完して実施してもよい。また説明の便宜上、以下では蓋体100の中心を通って軸方向に延びる方向をZ方向、このZ方向とそれぞれ交差する蓋体100の主面に平行な方向をそれぞれX方向およびY方向として設定する。
【0020】
[容器200]
まず
図7~9などを参照しつつ、本実施形態における容器200について説明する。これらの図に示されるとおり、本実施形態の容器200としては、上面が開口した開口縁210、この開口縁210の内側に配置されて取っ手としても機能し得るフランジ部211、周状側壁212および底部220を備えた有底凹形状(一例としてカップ状あるいはトレイ状など)である公知の容器が例示できる。また、この容器200の材質としては、特に制限はないが、例えば公知の紙材や樹脂材などを適用できる。
【0021】
例えば
図7に示すように、容器200には内容物Cが充填される。かような内容物Cとしては、例えばハンバーグやロールキャベツあるいはカレーライスや麺類など種々の公知の料理済又は半調理済食品が適用できる。なお、容器200に充填される内容物Cに応じて焼成処理や冷凍処理が施されることから、容器200の内面又は外面には公知のコーティング処理が施されていてもよい。
【0022】
また、本実施形態の容器200は、平面視(Z方向上方から俯瞰した場合)の外形が、例えば互いの長さが異なる長辺LE、短辺SEおよび斜辺DE並びにこれら各辺の端部にコーナーを有する八角形状であることが好ましい(
図8や
図10など参照)。しかしながら上記した容器200の外形は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて公知の種々の容器形状を適用することができる。
【0023】
すなわち本実施形態における容器200の外形としては、上記した八角形状の他、例えば長辺LE、短辺SEおよび斜辺DEの長さがほぼ等しい正八角形状であってもよいし、四つのコーナーを有する四角形状であるなど他の多角形状であってもよい。また、上記したフランジ部211の大きさ(径方向外側への張り出し度合い)は、取っ手機能の有無などによって適宜調整してもよく、さらには必要に応じて適宜省略してもよい。
【0024】
[蓋体100]
次に
図1~6も合わせて参照しつつ、本実施形態における蓋体100の詳細構造について説明する。
例えば
図1~4などから理解されるとおり、本実施形態の蓋体100は、上面が開口した容器200の開口縁210に装着可能であって、天面部10と、周状壁20と、を少なくとも含んで構成されている。
【0025】
かような蓋体100の材質は、特に制限はないが、例えば透明なポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレンなど公知の合成樹脂や、上記した合成樹脂以外には例えば公知の紙材を適用してもよい。
【0026】
本実施形態では、特に合成樹脂製の蓋体100の材質としては、例えば耐熱性OPS(二軸延伸ポリスチレン)、非晶質のポリエチレンテレフタレート樹脂やポリスチレン、ポリプロピレンが好適に使用できる。一方で紙製の蓋体100の材質としては、例えば防水処理や断熱処理を目的とした公知のコーティングが施された紙材などが好適に使用できる。
【0027】
また、例えば合成樹脂製の蓋体100の製造方法としては、本実施形態で示した形状と機能を発揮する限りにおいて特に制限はなく、例えばロール状のシート材に対して刃具および空圧力(真空又は圧空など)を用いて蓋体へ成形する公知のシート成形手法や溶融樹脂を成形型に射出して蓋体を成形する射出成形法など公知の種々の製造技術を適用してもよい。
【0028】
天面部10は、上記した容器200の開口縁210を被覆したときに容器200の底面と所定の間隙を有して対向可能に設けられている。より具体的に本実施形態の天面部10は、天面板11、この天面板11の周縁で径方向外側に向かって盛り上がる段部12およびこの段部12の外側に配置された周縁面13を含んで構成されている。
【0029】
なお本実施形態の天面板11は、段部12の下端から中心へ向かって平坦又は上に凸となるようドーム状に形成されていてもよい。また、この天面板11の中央には、内容物Cの加熱時に発生する蒸気を放出可能な公知の蒸気孔(不図示)が形成されていてもよい。
【0030】
周状壁20は、前記した天面部10の周縁から垂下するように設けられている。
図1~3などに示すように、本実施形態の周状壁20は、周縁面13から下方へ垂れ下がる第1スカート壁21と、この第1スカート壁21の下端で径方向外側へ広がる中継面22と、この中継面22の外縁から垂下して容器200の開口縁210を嵌合可能な第2スカート壁23と、を少なくとも含んで構成されている。
【0031】
第1スカート壁21は、上記した天面部(周縁面13)の周縁から鉛直方向に垂下するように形成されている。
図1および
図4などに示すように、第1スカート壁21は、周縁面13の外形に倣うように周方向に沿って垂下するように構成されている。なお本実施形態の第1スカート壁21は、図示したとおり鉛直(Z)方向に垂下しているが、この形態に限られず鉛直方向に交差するように斜めに垂下する形態であってもよい。
【0032】
なお
図1~
図3から理解されるとおり、第1スカート壁21の下部には、径方向外側に突出する突起21aが周方向に沿って複数形成されていてもよい。この突起21aは、例えば個々の蓋体100毎に周方向での形成位置がずれるように第1スカート壁21に形成されていることが好ましい。これにより、例えば多数の蓋体100を重ねて搬送した場合でも、使用時において容易に個々の蓋体100を分離することが可能となる。
【0033】
中継面22は、上記した第1スカート壁21の下端に接続されて径方向外側に延在する。
図1及び
図4から理解されるとおり、中継面22は、上記した第2スカート壁23の上端と接続する周縁上段面22aと、この周縁上段面22aに対して相対的に低位置となって第1スカート壁21と接続する内側窪み部22bと、を有して構成されている。なお、
図7や
図9から理解されるとおり、中継面22は、蓋体100が容器200に装着された際にフランジ部211と対向する部位となっている。
【0034】
第2スカート壁23は、上記した中継面(周縁上段面22a)の周縁から垂下するように形成されている。
図1~
図3などに示すように、第2スカート壁23は、周縁上段面22aの外形に倣うように周方向に沿って垂下するように構成されている。
【0035】
また
図2および
図3から明らかなとおり、本実施形態の第2スカート壁23には、内面側に向かって突出した(凹んだ)嵌合アンダー部23aが周方向に沿って断続的に設けられている。すなわち、上記した中継面22(周縁上段面22a)と第2スカート壁23は、蓋体100で容器200の開口縁210をカバーする際に、嵌合アンダー部23aが開口縁210を乗り越えることで開口縁210と嵌合することが可能となっている。
【0036】
<蓋体100における嵌合部の詳細構造>
このように上記した中継面22(周縁上段面22a)と第2スカート壁23は、本実施形態における容器200の開口縁210と嵌合可能な「嵌合部」を構成している。
また、上記した嵌合部の一部を構成する第2スカート壁23には、外周面から径方向外側(
図4ではXY平面と並行で天面部10の中心から離間する方向)に突出するように突出部24が設けられている。
【0037】
この突出部24は、後述するように、容器200への装着時に開口縁210の変形に倣って弾性変形する機能を有している。
図5などからも理解されるとおり、本実施形態の突出部24は、容器200における開口縁210を含む仮想平面(XY平面と平行な面)を規定したときに当該開口縁210を囲む仮想的な外接四角形ISの対角線Lt上と対角線Ls上にそれぞれ位置するように嵌合部(第2スカート壁23)に複数配置されることが好ましい。
【0038】
なお
図8などを用いて説明したように、本実施形態の容器200における開口縁210は互いに対向する一対の長辺LE、一対の短辺SEおよび一対の斜辺DEを有する平面視が八角形状となっている。従って、本実施形態の突出部は、この容器200の開口縁210に対応するように、容器200のコーナーに対応する斜辺DEのそれぞれに応じて合計4つ設けられていることが好ましい。
【0039】
本実施形態では、第2スカート壁23の外周面には4つの突出部24が設けられているが、この形態には限られず、例えば第2スカート壁23の外周面から径方向外側に突出するように少なくとも1つの突出部24が設けられていてもよい。すなわち本実施形態における突出部24の個数は、後述する嵌合維持機能を発揮する限りにおいて容器200の開口縁210の形状に応じて適宜設定してもよい。
【0040】
かような突出部24は、容器200の開口縁210に蓋体100が嵌合したときに、容器200の開口縁210から離間するように反った第1湾曲部R1と、この開口縁210から離間して径方向外側に向かって凸となる第2湾曲部R2と、を含んで構成されていることが好ましい。より具体的には
図5に示すように、本実施形態の突出部24は、径方向外側へ向けて広がりながら径方向内側に向けて凸となる一対の第1湾曲部R1と、この一対の第1湾曲部R1の間に配置されて径方向外側に向かって凸となる(すなわち開口縁210から第1湾曲部R1を裾野部として外側へ突出するように広がった頂上部となる)第2湾曲部R2と、を含んで構成することができる。このように本実施形態の突出部24は、後述する弾性変形を促すため(換言すれば剛性抵抗が強くならないため)に緩やかな湾曲形状(角が尖った鋭角とならないR状)となっていることが好ましい。
【0041】
このとき更に、前記した第1湾曲部R1の曲率半径は、前記した第2湾曲部R2の曲率半径よりも大きくなるように設定されていることが望ましい。これにより、後述する反りや変形を有する開口縁210に対して蓋体100を嵌合させる際に突出部24が容易に上記反りなどに追従することが可能となっている。
換言すれば、この斜辺DEにおいては周縁上段面22aと第2スカート壁23とで開口縁210を嵌合してはおらず、後述する開口縁210の反りや変形に追従可能なように径方向外側に向かって第2スカート壁23の一部が突出部24として張り出した形態となっていると言える。
【0042】
このように本実施形態では、反りや変形がない状態の開口縁210を有する容器200に蓋体100が嵌合する際には、突出部24が設けられる領域では開口縁210と上記した嵌合部とが嵌合しないで互いに離間した状態となっている(
図7など参照)。
従って
図1~
図4から理解されるとおり、本実施形態の嵌合アンダー部23aは、周方向に関して少なくとも突出部24の両端又は出来るだけ両端に近い箇所に位置するように設けられていることが望ましい。これにより、容器200と蓋体100との嵌合維持に寄与する部位と容器200の変形や反りに追従する部位とを両立させることができ、例えば突出部24周辺において容器200と蓋体100との嵌合が意図せず解除されてしまうことを抑制できる。
【0043】
<蓋体100による容器200へのキャッピング方法>
以上説明した本実施形態の蓋体100を用いた容器200へのキャッピング方法は、上記した内容物Cが充填された容器200に対して加熱及び冷却の少なくとも一方を施す調理工程と、この加熱及び冷却の少なくとも一方を経て反り又は変形が生じた容器200の開口縁210に対して上記反り又は変形に追従させるように突出部24を弾性変形させて開口縁210に嵌合部を嵌合させる蓋体被覆工程と、を含むことを特徴とする。
【0044】
かような本実施形態のキャッピング方法によれば、容器200の開口縁210に様々な口径変化や形状変化が発生したとしてもフレキシブルに蓋体100を当該開口縁210に嵌合することが可能となる。
【0045】
<容器の反りや変形などの形状変化、口径変化に対する突出部24による緩衝作用>
次に
図10および
図11も参照しつつ、上記した反りや変形などを有する開口縁210を備えた容器200への突出部24による緩衝作用について説明する。
【0046】
上述したとおり、容器200に充填される内容物C(食品)はそれぞれ最適な調理方法が存在することから、蓋体を用いて容器の開口を閉塞するキャッピング前後では焼成や冷蔵あるいは冷凍処理などが行われることもある。
【0047】
一例として、例えば容器への内容物Cの充填後における焼成では、単純な加熱に代えてスチーム(蒸気)を用いた加熱が行われる場合もある。特にこのスチーム加熱では、容器200が水分を吸収し得るため、容器200の開口縁210に上記した口径変化や変形あるいは反りが発生しやすい。
【0048】
このように内容物Cが充填された容器200は、
図10に例示するように、様々な調理工程を経ることで開口縁210に反りや変形などが発生し得る。なお、かような開口縁210に発生する反りや変形は、上記した調理工程の経過のみならず、例えば保存環境や食品搬送環境によっても発生し得ることから、当該反りや変形の程度を予測することは困難であって千差万別となる。
【0049】
このような予測し難い開口縁210の反りや変形などに対し、従来構造の蓋体を用いた場合には容器に発生する様々な変形・反りの挙動を捉えきれず、上記したキャッピング時において蓋体で容器の開口縁を嵌合できない問題が発生してしまう。
【0050】
一方で本実施形態における蓋体100によれば、
図11に例示するように、変形した開口縁210に対して突出部24が緩衝部として機能することで、蓋体100の周状壁20が容器200の開口縁210やフランジ部211の変形に追従して外側に広がることを許容し、これにより蓋体100によって容器200の開口縁210への嵌合を維持すること(嵌合維持機能)が可能となっている。
【0051】
また
図11に例示するようにフランジ部211(取っ手としても機能)が特に長い容器200のごとき場合には、上記した種々の調理工程を経ることで口径変化や変形あるいは反りがより顕著に生じるため、上記した弾性変形可能な突出部24を備える本実施形態の蓋体100の有効性が特に高いと言える。
【0052】
なお本実施形態では、突出部24を容器200のコーナーに対応して配置している。従ってこのような場合には、周状壁20の突出部24が容器200全体やその開口縁210の寸法変化や変形・反りに対してより弾性変形しやすい効果を奏することも可能となっている。
【0053】
すなわち、突出部24の配置位置を容器のコーナーに設定した場合には、このコーナーに接続する各辺が比較的自在に可動でき、例えば容器200の不規則で予想困難な変形にも対応することが可能となっている。また、かような容器200のコーナーへの突出部24の配置によれば、容器200の全体的な膨張のみならず短辺側のみや長辺側のみなど一辺側のみの変形にも対応することが可能となる。
【0054】
さらに本実施形態では、周状壁20に設けられる嵌合アンダー部23aは、周方向に関して少なくとも突出部24の両端又は出来るだけ両端に近い箇所に位置するように設けられている。従ってこのような場合には、容器200の開口縁210に反りや変形が発生した場合でも容器200と蓋体100との安定した嵌合を実現することが可能となっている。
【0055】
ここで本実施形態における「容器と合成樹脂製蓋体との嵌合」とは、容器200の開口縁210に対して蓋体100を嵌めた後に当該蓋体100を持ち上げても本体(内容物Cが充填された容器200)が自重で落下しない程度の容器に対する蓋の嵌め合い状態を言うこととする。
【0056】
このように本実施形態の蓋体100では、未使用状態の(反りや変形が生じていない)容器200に対して嵌合可能なことを基準としつつ、上記反りや変形が発生した容器200に対しても落下しない程度の容器に対する嵌め合い状態を維持することが可能となっている。
【0057】
以上説明した本実施形態における蓋体100によれば、保管や流通あるいは充填後の各種の調理などによって発生する容器200やその開口縁210の口径変化や変形あるいは反りなどに対し、食品種に応じて個々の仕様を必要とせず限定的な製品規格によりフレキシブルに容器200へ嵌合することが可能となっている。
【0058】
また、本実施形態における蓋体100によれば、相対的に少ない数の規格・仕様に基づいて蓋体を準備すればよいため、省スペース化を図りつつ在庫リスクを低減しながら、さらに結果として誤出荷のリスクをも低減することが可能となる。
【0059】
以上説明した実施形態は本発明の趣旨を具現化した一例であり、本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えてもよい。さらには本発明の上記趣旨を逸脱しない範囲で公知の構造や手法を適宜追加して変形してもよい。
【0060】
例えば上記した実施形態の容器200では、コーナーを有する平面視が多角形状の容器を例示したが、この形態に限られない。例えば容器の形状がオーバル形状などコーナーを有さない形状の場合には、
図5で示したように、短径と長径寸法で形成された開口縁を囲む仮想的な外接四角形ISの対角線上に位置するように突出部24を設置してもよい。
【0061】
また、本実施形態の突出部24における突出幅や突出量は、容器200の外形や材質に応じて適宜設定してもよい。このように突出部24の第2スカート壁23からの突出量や突出幅を変えることで、嵌合可能な容器200の対象範囲を拡大又は変化させることが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、突出部24の両端至近に嵌合アンダー部23aを配置してもよい旨を説明したが、内容物Cや容器200の形状などに応じて、この突出部24の両端以外にも第2スカート壁23内において任意のサイズや個数を設けてもよい。これにより、これらの嵌合アンダー部23aが補強用リブとしても機能して周状壁20の剛性向上や変形抑制に寄与することが可能となる。
【0063】
また、上記した実施形態における周状壁20は、第1スカート壁21と第2スカート壁23の双方を有する形態として説明したが、この形態に限られず第1スカート壁21は適宜省略してもよい。この場合、中継面22が天面板11と連続するように蓋体100が構成されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば充填される内容物の調理条件に依らずに容器の変形や反りなどに対して追従して安定したキャッピング(嵌合)を維持可能な蓋体を製造することなどに利用できる。
【符号の説明】
【0065】
100 蓋体
10 天面部
20 周状壁
C 内容物