(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】地図情報出力装置、自動運転制御システム、地図情報出力システムおよび地図情報出力方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20240725BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20240725BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240725BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G08G1/0969
G09B29/10 Z
G09B29/00 C
(21)【出願番号】P 2021063601
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 拡基
(72)【発明者】
【氏名】賀集 隆郎
(72)【発明者】
【氏名】津森 千花
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-087764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
G08G 1/0969
G09B 29/10
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(C)の自動運転制御に用いる制御用地図情報を自動運転制御部(140)へ出力する地図情報出力部(139)を備える地図情報出力装置であって、
前記制御用地図情報を構築するための元地図を記憶する地図記憶部(131、133)と、
前記車両の現在位置を取得する位置取得部(136)と、
前記位置取得部が取得した現在位置を基準として定まる第1範囲(R1)の前記元地図に基づいて前記制御用地図情報を逐次構築する地図情報構築部(138)と、
前記現在位置に基づいて定まる範囲であって、前記第1範囲を包含している第2範囲(R2)の前記元地図を前記車両の外部にある地図配信装置(10)から無線通信により、逐次、ダウンロードして前記地図記憶部に記憶するダウンロード処理部(137)を備え
、
前記ダウンロード処理部は、前回、前記元地図をダウンロードした時点の前記車両の位置から、前記第1範囲の境界と前記第2範囲の境界との差分距離(Δd)よりも短い地図更新距離(Dm)だけ前記車両が移動したことを条件に、前記第2範囲の前記元地図のダウンロードを開始する、地図情報出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図情報出力装置であって、
前記地図更新距離は、前記差分距離の2分の1以下であり、
前記ダウンロード処理部は、前
記元地図のダウンロードに失敗した場合に、ダウンロードに失敗したときの前記車両の位置から前記地図更新距離だけ移動した後、再び、前記元地図のダウンロードを開始する、地図情報出力装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の地図情報出力装置であって、
前記地図
記憶部には、ダウンロードした前記元地図である配信地図(134)と、前記配信地図よりも広い地域が含まれているローカル地図(132)とが記憶されており、
前記ダウンロード処理部は、事前に設定された回数、前記元地図のダウンロードに失敗した場合に、ダウンロード失敗確定と判定し、
前記地図情報構築部は、前記ダウンロード処理部が前記元地図をダウンロードできた場合、最新の前記配信地図に基づいて前記制御用地図情報を構築し、前記ダウンロード処理部がダウンロード失敗確定と判定した場合、前記ローカル地図に基づいて前記制御用地図情報を構築し、
前記地図情報出力部は、前記地図情報構築部が、前記制御用地図情報を構築する前記元地図を前記配信地図から前記ローカル地図に切り替えた場合には、そのことを前記自動運転制御部へ通知する、地図情報出力装置。
【請求項4】
車両(C)の自動運転制御に用いる制御用地図情報を自動運転制御部(140)へ出力する地図情報出力部(139)を備える地図情報出力装置であって、
前記制御用地図情報を構築するための元地図を記憶する地図記憶部(131、133)と、
前記車両の現在位置を取得する位置取得部(136)と、
前記位置取得部が取得した現在位置を基準として定まる第1範囲(R1)の前記元地図に基づいて前記制御用地図情報を逐次構築する地図情報構築部(138)と、
前記現在位置に基づいて定まる範囲であって、前記第1範囲を包含している第2範囲(R2)の前記元地図を前記車両の外部にある地図配信装置(10)から無線通信により、逐次、ダウンロードして前記地図記憶部に記憶するダウンロード処理部(137)を備え、
前記地図記憶部には、ダウンロードした前記元地図である配信地図(134)と、前記配信地図よりも広い地域が含まれているローカル地図(132)とが記憶されており、
前記ダウンロード処理部は、事前に設定された回数、前記元地図のダウンロードに失敗した場合に、ダウンロード失敗確定と判定し、
前記地図情報構築部は、前記ダウンロード処理部が前記元地図をダウンロードできた場合、最新の前記配信地図に基づいて前記制御用地図情報を構築し、前記ダウンロード処理部がダウンロード失敗確定と判定した場合、前記ローカル地図に基づいて前記制御用地図情報を構築し、
前記地図情報出力部は、前記地図情報構築部が、前記制御用地図情報を構築する前記元地図を前記配信地図から前記ローカル地図に切り替えた場合には、そのことを前記自動運転制御部へ通知する、地図情報出力装置。
【請求項5】
請求項
3または4に記載の地図情報出力装置と、前記自動運転制御部とを備えた自動運転制御システムであって、
前記自動運転制御部は、前記地図情報出力部から、前記制御用地図情報を構築した前記元地図が前記ローカル地図に切り替えられたことが通知されたことに基づいて前記自動運転制御を中断する場合、前記自動運転制御を中断する前に、前記自動運転制御を中断することを前記車両の運転者に報知する、自動運転制御システム。
【請求項6】
前記元地図とは異なるルート案内用地図に基づいてルート案内をするルート案内装置(120)と、請求項1~4のいずれか1項に記載の前記地図情報出力装置とを備えた地図情報出力システムであって、
前記ルート案内装置は、前記ルート案内用地図の少なくとも一部を前記地図配信装置からダウンロードするダウンロード処理部(128)を備え、
前記ルート案内装置または前記地図情報出力装置のうちの一方を第1装置とし、他方を第2装置とし、
前記第1装置は、ダウンロードする地図のバージョンを前記地図配信装置から取得し、取得した前記バージョンを前記第2装置に通知する地図バージョン確認部(127)を備え、
前記第2装置が備える前記ダウンロード処理部は、前記第1装置から通知された前記バージョンをもとに、ダウンロードする地図のバージョンを決定する、地図情報出力システム。
【請求項7】
車両(C)の自動運転制御に用いる制御用地図情報を自動運転制御部(140)へ出力する地図情報出力部(139)を備える地図情報出力装置であって、
前記制御用地図情報を構築するための元地図を記憶する地図記憶部(131、133)と、
前記車両の現在位置を取得する位置取得部(136)と、
前記位置取得部が取得した現在位置を基準として定まる第1範囲(R1)の前記元地図に基づいて前記制御用地図情報を逐次構築する地図情報構築部(138)と、
前記現在位置に基づいて定まる範囲であって、前記第1範囲を包含している第2範囲(R2)の前記元地図を前記車両の外部にある地図配信装置(10)から無線通信により、逐次、ダウンロードして前記地図記憶部に記憶するダウンロード処理部(137)と、
を備える地図情報出力装置と、
前記元地図とは異なるルート案内用地図に基づいてルート案内をするルート案内装置(120)と、を備えた地図情報出力システムであって、
前記ルート案内装置は、前記ルート案内用地図の少なくとも一部を前記地図配信装置からダウンロードするダウンロード処理部(128)を備え、
前記ルート案内装置または前記地図情報出力装置のうちの一方を第1装置とし、他方を第2装置とし、
前記第1装置は、ダウンロードする地図のバージョンを前記地図配信装置から取得し、取得した前記バージョンを前記第2装置に通知する地図バージョン確認部(127)を備え、
前記第2装置が備える前記ダウンロード処理部は、前記第1装置から通知された前記バージョンをもとに、ダウンロードする地図のバージョンを決定する、地図情報出力
システム。
【請求項8】
車両の現在位置を取得し、
前記車両の自動運転制御に用いる制御用地図情報を構築するための元地図を記憶した地図記憶部(131、133)から、前記現在位置を基準として定まる第1範囲(R1)の前記元地図を取得して前記制御用地図情報を逐次構築し、
構築した前記制御用地図情報を自動運転制御部(140)へ出力し、
前記現在位置に基づいて定まる範囲であって、前記第1範囲を包含している第2範囲(R2)の前記元地図を前記車両の外部にある地図配信装置(10)から無線通信により、逐次、ダウンロードして前記地図記憶部に記憶し、
前回、前記元地図をダウンロードした時点の前記車両の位置から、前記第1範囲の境界と前記第2範囲の境界との差分距離(Δd)よりも短い地図更新距離(Dm)だけ前記車両が移動したことを条件に、前記第2範囲の前記元地図のダウンロードを開始する、地図情報出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
地図情報出力装置、自動運転制御システム、地図情報出力システムおよび地図情報出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された車両は、自動運転制御に用いる高精度地図を備える。車両は、高精度地図をサーバから取得し、取得した高精度地図により、地図記憶部に記憶されている高精度地図を更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地図情報出力装置は、自動運転制御に用いる地図情報(以下、制御用地図情報)を、車両に備えられている記憶部に記憶されている地図(以下、元地図)をもとに構築する。制御用地図情報は、車両の現在位置を基準として定まる範囲の元地図を含んだ情報である。元地図が古いと自動運転制御に不都合が生じる恐れがある。そこで、地図情報出力装置は、車両の走行中に、逐次、車両外部にある地図配信装置から、最新の元地図をダウンロードすることが考えられる。
【0005】
車両の走行中にするダウンロードは、無線通信を用いることになる。車両の走行中、無線通信は、一時的に不能になることがある。ダウンロードが一時的に不能になることにより、制御用地図情報を構築する処理に不都合が生じる恐れがある。
【0006】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、自動運転制御に用いる制御用地図情報を構築する処理に不都合が生じにくい地図情報出力装置、自動運転制御システム、地図情報出力システムおよび地図情報出力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的態様との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
上記目的を達成するための地図情報出力装置に係る1つの開示は、
車両(C)の自動運転制御に用いる制御用地図情報を自動運転制御部(140)へ出力する地図情報出力部(139)を備える地図情報出力装置であって、
制御用地図情報を構築するための元地図を記憶する地図記憶部(131、133)と、
車両の現在位置を取得する位置取得部(136)と、
位置取得部が取得した現在位置を基準として定まる第1範囲(R1)の元地図に基づいて制御用地図情報を逐次構築する地図情報構築部(138)と、
現在位置に基づいて定まる範囲であって、第1範囲を包含している第2範囲(R2)の元地図を車両の外部にある地図配信装置(10)から無線通信により、逐次、ダウンロードして地図記憶部に記憶するダウンロード処理部(137)を備え、
ダウンロード処理部は、前回、元地図をダウンロードした時点の車両の位置から、第1範囲の境界と第2範囲の境界との差分距離(Δd)よりも短い地図更新距離(Dm)だけ車両が移動したことを条件に、第2範囲の元地図のダウンロードを開始する、地図情報出力装置である。
【0009】
この地図情報出力装置は、元地図に基づいて制御用地図情報を構築する。制御用地図情報を構築するための元地図は、現在位置を基準として定まる第1範囲の元地図である。
【0010】
地図情報出力装置は、元地図を地図配信装置からダウンロードする。地図配信装置からダウンロードする元地図の範囲は、第1範囲ではなく、第1範囲を包含している第2範囲である。したがって、地図情報出力装置は、地図配信装置との通信が不能になっても、即座には制御用地図情報の作成が不能にはならない。地図情報出力装置は、地図配信装置との通信が不能になっても、しばらくは、現在位置に対応した制御用地図情報の構築を継続できる可能性がある。したがって、地図情報出力装置は、地図配信装置との無線通信が一時的に不能になっても、制御用地図情報を構築する処理に不都合が生じてしまうことを抑制できる。
【0011】
上記目的を達成するための地図情報出力装置に係る1つの開示は、
車両(C)の自動運転制御に用いる制御用地図情報を自動運転制御部(140)へ出力する地図情報出力部(139)を備える地図情報出力装置であって、
制御用地図情報を構築するための元地図を記憶する地図記憶部(131、133)と、
車両の現在位置を取得する位置取得部(136)と、
位置取得部が取得した現在位置を基準として定まる第1範囲(R1)の元地図に基づいて制御用地図情報を逐次構築する地図情報構築部(138)と、
現在位置に基づいて定まる範囲であって、第1範囲を包含している第2範囲(R2)の元地図を車両の外部にある地図配信装置(10)から無線通信により、逐次、ダウンロードして地図記憶部に記憶するダウンロード処理部(137)を備え、
地図記憶部には、ダウンロードした元地図である配信地図(134)と、配信地図よりも広い地域が含まれているローカル地図(132)とが記憶されており、
ダウンロード処理部は、事前に設定された回数、元地図のダウンロードに失敗した場合に、ダウンロード失敗確定と判定し、
地図情報構築部は、ダウンロード処理部が元地図をダウンロードできた場合、最新の配信地図に基づいて制御用地図情報を構築し、ダウンロード処理部がダウンロード失敗確定と判定した場合、ローカル地図に基づいて制御用地図情報を構築し、
地図情報出力部は、地図情報構築部が、制御用地図情報を構築する元地図を配信地図からローカル地図に切り替えた場合には、そのことを自動運転制御部へ通知する。
上記目的を達成するための自動運転制御システムに係る1つの開示は、
地図情報出力装置と、自動運転制御部とを備えた自動運転制御システムであって、
地図記憶部には、ダウンロードした元地図である配信地図(134)と、配信地図よりも広い地域が含まれているローカル地図(132)とが記憶されており、
ダウンロード処理部は、事前に設定された回数、元地図のダウンロードに失敗した場合に、ダウンロード失敗確定と判定し、
地図情報構築部は、ダウンロード処理部が元地図をダウンロードできた場合、最新の配信地図に基づいて制御用地図情報を構築し、ダウンロード処理部がダウンロード失敗確定と判定した場合、ローカル地図に基づいて制御用地図情報を構築し、
地図情報出力部は、地図情報構築部が、制御用地図情報を構築する元地図を配信地図からローカル地図に切り替えた場合には、そのことを自動運転制御部へ通知し、
自動運転制御部は、地図情報出力部から、制御用地図情報を構築した元地図がローカル地図に切り替えられたことが通知されたことに基づいて自動運転制御を中断する場合、自動運転制御を中断する前に、自動運転制御を中断することを車両の運転者に報知する。
【0012】
上記目的を達成するための地図情報出力システムに係る1つの開示は、
元地図とは異なるルート案内用地図に基づいてルート案内をするルート案内装置(120)と、地図情報出力装置とを備えた地図情報出力システムであって、
ルート案内装置は、ルート案内用地図の少なくとも一部を地図配信装置からダウンロードするダウンロード処理部(128)を備え、
ルート案内装置または地図情報出力装置のうちの一方を第1装置とし、他方を第2装置とし、
第1装置は、ダウンロードする地図のバージョンを地図配信装置から取得し、取得したバージョンを第2装置に通知する地図バージョン確認部(127)を備え、
第2装置が備えるダウンロード処理部は、第1装置から通知されたバージョンをもとに、ダウンロードする地図のバージョンを決定する、地図情報出力システムである。
【0013】
上記目的を達成するための地図情報出力方法に係る1つの開示は、
車両の現在位置を取得し、
車両の自動運転制御に用いる制御用地図情報を構築するための元地図を記憶した地図記憶部(131、133)から、現在位置を基準として定まる第1範囲(R1)の元地図を取得して制御用地図情報を逐次構築し、
構築した制御用地図情報を自動運転制御部(140)へ出力し、
現在位置に基づいて定まる範囲であって、第1範囲を包含している第2範囲(R2)の元地図を車両の外部にある地図配信装置(10)から無線通信により、逐次、ダウンロードして地図記憶部に記憶し、
前回、元地図をダウンロードした時点の車両の位置から、第1範囲の境界と第2範囲の境界との差分距離(Δd)よりも短い地図更新距離(Dm)だけ車両が移動したことを条件に、第2範囲の元地図のダウンロードを開始する、地図情報出力方法である。
【0014】
上記自動運転制御システムおよび地図情報出力システムは、上記地図情報出力装置を備える。また、上記地図情報出力方法は、上記地図情報出力装置が実行する方法である。したがって、これら自動運転制御システム、地図情報出力システム、および地図情報出力方法も、自動運転制御に用いる制御用地図情報を構築する処理に不都合が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】車両Cに搭載されている自動運転制御システム100の構成図。
【
図5】地図情報出力装置130が高精度地図をダウンロードするまでの流れを示す図。
【
図7】ダウンロード失敗時の第1範囲R1と第2範囲R2の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔全体構成〕
図1は、車両Cに搭載されている自動運転制御システム100の構成図である。複数の車両Cに、自動運転制御システム100が搭載される。自動運転制御システム100は、車両Cを自動運転させる制御を行うシステムである。ここでの自動運転は、完全自動運転に限られない。ここでの自動運転には、運転支援とも呼ばれるレベルの自動運転も含まれる。運転支援は、車線維持制御、前車追従制御などの1つ以上の制御を実行する。
【0017】
自動運転制御システム100はセンタ装置10と無線通信する。センタ装置10は地図配信装置に相当しており、自動運転制御システム100からの要求に応じて、地図データを自動運転制御システム100に送信する。
【0018】
〔センタ装置10の構成〕
図2はセンタ装置10の構成を示す図である。センタ装置10は、第1センタ記憶部11、第2センタ記憶部13、無線機15、センタ制御部16を備えている。第1センタ記憶部11は書き込み可能な不揮発性の記憶部である。第1センタ記憶部11には、ルート案内用地図データベース12が記憶されている。ルート案内用地図データベース12は、ルート案内用地図のデータベースである。ルート案内用地図は、道路ネットワークを記述した地図である。道路ネットワーク地図は、実際の道路を、ノードおよび道路リンクなどにより表現した地図である。ノードは、交差点など、1つ1つの道路を線で表現したときの結節点である。道路リンクは、ノードとノードの間の道路区間を表す。道路リンクは、レーンではなく道路を単位として道路区間を表す。
【0019】
ルート案内用地図データベース12は、広い地域を対象としたルート案内用地図を含んでいる。センタ装置10が、複数の車両Cに搭載された自動運転制御システム100からの要求に対応したルート案内用地図を提供できるようにするためである。たとえば、ルート案内用地図データベース12は、1つの国全体のルート案内用地図を含んでいる。また、ルート案内用地図データベース12は、最新のバージョンのルート案内用地図だけでなく、最新のバージョンよりも古いバージョンのルート案内用地図を1つまたは複数含んでいる。ルート案内用地図のバージョンは、バージョン定義範囲ごとに示されている。バージョン定義範囲は、たとえば、1メッシュである。メッシュとは、地図を格子状に分けた1つを意味する。
【0020】
第2センタ記憶部13も書き込み可能な不揮発性の記憶部である。第2センタ記憶部13には、高精度地図データベース14が記憶されている。高精度地図データベース14は、高精度地図のデータベースである。ルート案内用地図が、道路を単位としたリンクである道路リンクにより道路地図を表現しているのに対して、高精度地図は、レーンすなわち車線を対象としたリンクであるレーンリンクにより道路地図を表現した地図である。高精度地図は、自動運転制御に用いる地図である。
【0021】
高精度地図データベース14は、複数の車両Cに搭載された自動運転制御システム100からの要求に対応した高精度地図を提供できるように、広い地域を対象とした高精度地図を含んでいる。たとえば、高精度地図データベース14は、1つの国全体の高精度地図を含んでいる。また、高精度地図データベース14は、最新のバージョンの高精度地図だけでなく、最新のバージョンよりも古いバージョンの高精度地図を1つまたは複数含んでいる。高精度地図のバージョンも、バージョン定義範囲ごとに示されている。
【0022】
ルート案内用地図のバージョンと、高精度地図のバージョンは、互いに整合するバージョンが対応付けてセンタ制御部16に管理される。互いに整合するとは、一方の地図にある道路を、他方の地図にある道路に対応づけられることを意味する。対応付は、リンクIDなどにより行うことができる。ルート案内用地図と高精度地図が同時に更新される場合、バージョンが同じであるルート案内用地図と高精度地図が互いに整合するバージョンになる。
【0023】
無線機15は、車両Cに搭載された自動運転制御システム100と通信する。無線通信方式に特に制限はない。無線機15は、たとえば公衆通信回線網を介し、電波により、自動運転制御システム100と無線通信する。
【0024】
センタ制御部16は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。センタ制御部16は、第1センタ記憶部11に記憶されているルート案内用地図データベース12、および、第2センタ記憶部13に記憶されている高精度地図データベース14を、最新の内容に更新する。センタ制御部16は、自動運転制御システム100からの要求に応じ、その自動運転制御システム100に、ルート案内用地図および高精度地図の一方または両方を、無線機15から送信する処理を行う。センタ制御部16は、自動運転制御システム100からの要求に応じ、その自動運転制御システム100に、ルート案内用地図データベース12に含まれるルート案内用地図のバージョンと高精度地図データベース14に含まれる高精度地図のバージョンを通知する。
【0025】
〔自動運転制御システム100の構成〕
自動運転制御システム100は、地図情報出力システム110、自動運転制御装置140、無線機150を備えている。地図情報出力システム110は、自動運転制御に用いる地図情報である制御用地図情報を自動運転制御装置140に出力するシステムである。
【0026】
地図情報出力システム110は、ナビゲーション装置120、地図情報出力装置130、自動運転制御装置140、無線機150を備えている。これらは、車内LAN160により相互に通信可能に接続されている。車両Cには、他に、車両Cの外部の環境を検出する外部検出センサ、車両Cの走行状態を検出する車両状態検出センサなども備えられている。
【0027】
ナビゲーション装置120は、ルート案内装置であり、案内ルートに従い車両Cをルート案内する。ルート案内には、手動運転時のルート案内のみではなく、自動運転時の表示出力と音出力も含まれる。ナビゲーション装置120の詳細構成は後述する。
【0028】
地図情報出力装置130は、制御用地図情報を逐次構築し、構築した制御用地図情報を自動運転制御装置140へ逐次出力する。地図情報出力装置130の詳細構成は後述する。
【0029】
自動運転制御部である自動運転制御装置140は、制御用地図情報をもとに、車両Cの今後の軌道を決定する。そして、自動運転制御装置140は、その軌道を走行できるように車両Cの挙動を制御する。無線機150は、車両Cの外部にあるセンタ装置10との間で無線通信する。
【0030】
〔ナビゲーション装置120の構成〕
図3はナビゲーション装置120の構成を示す図である。ナビゲーション装置120は、第1ナビ記憶部121、第2ナビ記憶部123、ナビ制御部125を備える。第1ナビ記憶部121および第2ナビ記憶部123は別体である。ただし、1つの記憶部が、第1ナビ記憶部121および第2ナビ記憶部123として機能してもよい。
【0031】
第1ナビ記憶部121は、書き込み可能な不揮発性の記憶部である。第1ナビ記憶部121にはフラッシュメモリを用いることができる。第1ナビ記憶部121には、ルート案内用ローカル地
図122が記憶されている。
【0032】
ルート案内用ローカル地
図122は、ルート案内用地図である。ルート案内用ローカル地
図122が表している地域は、国全部など広い地域である。ルート案内用ローカル地
図122が表している地域は、次に説明するルート案内用配信地
図124が表している地域よりも広い。
【0033】
ルート案内用ローカル地
図122を表すデータには、地図のバージョンを示すデータも含まれている。地図のバージョンは、少なくとも地図更新単位ごとに示される。たとえば、ルート案内用ローカル地
図122がメッシュ単位で更新される場合、メッシュごとにバージョンが示される。
【0034】
ルート案内用ローカル地
図122は、第1ナビ記憶部121に出荷時から記憶されている。ルート案内用ローカル地
図122は、一部の地域または全部が更新できるようになっていてもよい。ただし、ルート案内用ローカル地
図122は、車両Cが走行可能状態なっているときには更新できない。走行可能状態は、車両Cの電源がオンであり、ブレーキオフおよびアクセルオンにより車両Cが移動できる状態を含む。
【0035】
第2ナビ記憶部123も、書き込み可能な記憶部である。第2ナビ記憶部123は、不揮発性の記憶部とすることができ、第2ナビ記憶部123にもフラッシュメモリを用いることができる。ただし、第2ナビ記憶部123は、揮発性の記憶部であってもよい。第2ナビ記憶部123には、ルート案内用配信地
図124が記憶される。
【0036】
ルート案内用配信地
図124は、ルート案内用ローカル地
図122の一部を更新する地図である。ルート案内用配信地
図124は、ルート案内用ローカル地
図122と同様、ルート案内用地図である。ルート案内用配信地
図124は、車両Cが走行可能状態になっているときに更新できる。ルート案内用配信地
図124を表すデータには、地図のバージョンを示すデータも含まれている。
【0037】
ナビ制御部125は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、ナビ制御部125は、プロセッサ、不揮発性メモリ、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。不揮発性メモリには、汎用的なコンピュータをナビ制御部125として作動させるためのプログラムが格納されている。プロセッサが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することで、ナビ制御部125は、
図3に示す各部として作動する。すなわち、ナビ制御部125は、案内ルート設定部126、地図バージョン確認部127、ダウンロード処理部128として作動する。これらの作動が実行されることは、プログラムに対応する方法が実行されることを意味する。
【0038】
案内ルート設定部126は、車両Cをルート案内する案内ルートを設定する。本実施形態では、案内ルート設定部126は、車両Cの乗員の操作により目的地が設定されると、無線機150を介して、その目的地と車両Cの現在位置をセンタ装置10へ送信する。センタ装置10は、車両Cの現在位置から目的地へ向かうルートを探索し、探索したルートを車両Cに送信する。案内ルート設定部126は、センタ装置10から送信されてきたルートを案内ルートに設定する。ただし、案内ルート設定部126は、センタ装置10を利用することなく、ルート案内用ローカル地
図122およびルート案内用配信地
図124を用いて案内ルートを探索してもよい。ルート案内用ローカル地
図122およびルート案内用配信地
図124を用いて探索した案内ルートを、以下、ローカル案内ルートとする。センタ装置10から送信されてきたルートを、以下、センタ案内ルートとする。案内ルート設定部126は、当初、ローカル案内ルートを設定し、センタ装置10からセンタ案内ルートが取得できた場合に、案内ルートをセンタ案内ルートに変更してもよい。
【0039】
地図バージョン確認部127は、無線機150を介してセンタ装置10と通信し、センタ装置10に記憶されている最新のルート案内用地図のバージョン(以下、センタ地図バージョン)を取得する。地図バージョン確認部127がセンタ地図バージョンを取得する地図は、ルート案内用地図データベース12に含まれているルート案内用地図の全地域(たとえば全国)の地図とすることができる。あるいは、地図バージョン確認部127がセンタ地図バージョンを取得する地図は、ルート案内において必要な地域の地図とすることもできる。地図バージョン確認部127がセンタ地図バージョンを取得する地域は、車両Cの現在位置を基準として定まる地域とすることもできる。地図バージョン確認部127は、取得したセンタ地図バージョンを、地図情報出力装置130に通知する。地図バージョン確認部127を備えているナビゲーション装置120は第1装置であり、センタ地図バージョンが通知される地図情報出力装置130は第2装置である。
【0040】
ダウンロード処理部128は、無線機150を介してセンタ装置10と通信し、センタ装置10に記憶されているルート案内用地図をダウンロードする。ダウンロード処理部128は、ダウンロードしたルート案内用地図を、ルート案内用配信地
図124として第2ナビ記憶部123に記憶する。
【0041】
ダウンロード処理部128がダウンロードする地図の地域は、案内ルートに基づいて決定することができる。すなわち、ダウンロード処理部128は、案内ルートを含む地域のルート案内用地図を、センタ装置10からダウンロードすることができる。それ以外にも、ダウンロード処理部128は、車両Cの現在位置を基準としてダウンロードするルート案内用地図の地域を決定してもよい。
【0042】
ダウンロード処理部128は、ルート案内用地図データベース12と、ルート案内用ローカル地
図122とを地図更新単位ごとに比較し、ルート案内用地図データベース12のほうがバージョンが新しい部分のルート案内用地図をダウンロードする。ダウンロード処理部128は、地域の条件を満たし、かつ、ルート案内用ローカル地
図122よりもルート案内用地図データベース12のほうがバージョンが新しいというバージョンの条件を満たす部分のルート案内用地図をダウンロードする。
【0043】
ダウンロード処理部128は、ダウンロードするルート案内用地図を特定した後、そのルート案内用地図のダウンロードを開始する。ダウンロード処理部128は、案内ルートが設定された後、あるいは、ナビゲーション装置120の起動時に、ルート案内用地図をダウンロードする。
【0044】
〔地図情報出力装置130の構成〕
図4は地図情報出力装置130の構成を示す図である。地図情報出力装置130は、第1地図記憶部131、第2地図記憶部133、地図情報制御部135を備える。第1地図記憶部131および第2地図記憶部133は別体である。ただし、1つの記憶部が、第1地図記憶部131および第2地図記憶部133として機能してもよい。これら第1地図記憶部131および高精度ローカル地
図132は地図記憶部である。
【0045】
第1地図記憶部131は、書き込み可能な不揮発性の記憶部である。第1地図記憶部131には、高精度ローカル地
図132が記憶されている。高精度ローカル地
図132は、高精度地図である。高精度地図は、制御用地図情報を構築するために用いる元地図である。第2センタ記憶部13に記憶されている高精度地図データベース14に含まれている高精度地図も元地図である。
【0046】
高精度ローカル地
図132は、車両Cが走行し、車両Cの位置が逐次変化しても、車両Cの位置を地図内に含ませられる広い地域の地図である。したがって、高精度ローカル地
図132は、車両Cが走行している間に、無線通信により、車両Cの現在位置を含む地域の地図を、逐次、ダウンロードする必要がない。高精度ローカル地
図132が表している地域は、たとえば国全部である。もちろん、高精度ローカル地
図132が表している地域は、次に説明する高精度配信地
図134が表している地域よりも広い。
【0047】
高精度ローカル地
図132を表すデータには、地図のバージョンを示すデータも含まれている。地図のバージョンは、少なくとも地図更新単位ごとに示される。地図更新単位は、ルート案内用ローカル地
図122と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
高精度ローカル地
図132は、第1地図記憶部131に出荷時から記憶されている。高精度ローカル地
図132は、一部の地域または全部が更新できるようになっていてもよい。ただし、高精度ローカル地
図132は、車両Cが走行可能状態なっているときには更新できない。
【0049】
高精度ローカル地
図132は、一部分のみが更新されてもよい。ただし、高精度ローカル地
図132は、全体として地図の整合性が保たれている地図である。整合は、あるバージョンの地図にある道路を、他のバージョンの地図にある道路に対応づけられることを意味する。対応付は、リンクIDなどにより行うことができる。
【0050】
地図記憶部である第2地図記憶部133も、書き込み可能な記憶部である。第2地図記憶部133は、不揮発性の記憶部とすることができる。ただし、第2地図記憶部133には、揮発性の記憶部が用いられてもよい。第2地図記憶部133には、高精度配信地
図134が記憶される。高精度配信地
図134は、高精度ローカル地
図132の一部を更新する地図である。高精度配信地
図134は、高精度ローカル地
図132と同様、元地図である。高精度配信地
図134は、車両Cが走行可能状態になっているときに更新できる。高精度配信地
図134を表すデータには、地図のバージョンを示すデータも含まれている。
【0051】
地図情報制御部135は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、地図情報制御部135は、プロセッサ、不揮発性メモリ、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。不揮発性メモリには、汎用的なコンピュータを地図情報制御部135として作動させるための地図情報出力プログラムが格納されている。プロセッサが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、不揮発性メモリに記憶された地図情報出力プログラムを実行することで、地図情報制御部135は、
図4に示す各部として作動する。すなわち、地図情報制御部135は、位置取得部136、ダウンロード処理部137、地図情報構築部138、地図情報出力部139として作動する。これらの作動が実行されることは、地図情報出力プログラムに対応する地図情報出力方法が実行されることを意味する。
【0052】
位置取得部136は、車両Cの現在位置を周期的に取得する。車両Cの現在位置は、車両Cに備えられているGNSS受信機から取得することができる。車両Cには、車速センサおよび舵角センサからの検出値を用いた自律航法とGNSS受信機が検出した位置とをもとに現在位置を逐次検出する位置検出部が備えられることがある。位置取得部136は、この位置検出部から現在位置を取得してもよい。現在位置を取得する周期は、制御用地図情報を出力する周期よりも短い。現在位置を取得する周期は、たとえば100msである。
【0053】
ダウンロード処理部137は、無線機150を介してセンタ装置10と通信し、センタ装置10に記憶されている高精度地図をダウンロードする。ダウンロード処理部137は、ダウンロードした高精度地図を、高精度配信地
図134として第2地図記憶部133に記憶する。
【0054】
センタ装置10の高精度地図データベース14には、複数のバージョンの高精度地図が含まれている。ダウンロード処理部137は、ナビゲーション装置120から通知されたセンタ地図バージョンに基づいて、センタ装置10からダウンロードする高精度地図のバージョンを決定する。
【0055】
ダウンロード処理部137は、高精度地図データベース14と、高精度配信地
図134とを地図更新単位ごとに比較し、高精度地図データベース14のほうがバージョンが新しい部分の高精度地図をダウンロードする。したがって、ダウンロード処理部137は、車両Cの現在位置を中心とする高精度地図取得地域の高精度地図であって、高精度配信地
図134よりも高精度地図データベース14のほうがバージョンが新しい部分の高精度地図をダウンロードする。
【0056】
〔高精度地図をダウンロードするまでの流れ〕
図5に、地図情報出力装置130が、起動時に高精度地図をダウンロードするまでの流れを示す。SN1にて、ナビゲーション装置120が起動している。ナビゲーション装置120と同時期に地図情報出力装置130も起動する。ナビゲーション装置120が起動後、SN2において、地図バージョン確認部127がセンタ装置10へ、センタ地図バージョンの送信を要求する。
【0057】
センタ装置10のセンタ制御部16は、この要求を受信した場合、SC1にて、センタ地図バージョンをナビゲーション装置120へ送信する。ナビゲーション装置120は、センタ地図バージョンを受信すると、SN3において、センタ地図バージョンを地図情報出力装置130へ送信する。
【0058】
その後、目的地が設定されると、SN4において、ナビゲーション装置120の案内ルート設定部126が、センタ装置10へ案内ルートを要求する。案内ルートの要求には、車両Cの現在位置および目的地についての情報が含まれる。
【0059】
センタ装置10のセンタ制御部16は、案内ルートの要求を取得すると、SC2を実行する。SC2において、センタ制御部16は、案内ルートを探索する。そして、センタ制御部16は、探索した案内ルートと、その案内ルートに必要となる地域のルート案内用地図をナビゲーション装置120へ送信する。ナビゲーション装置120へ送信するルート案内用地図のバージョンは、センタ地図バージョンである。
【0060】
ナビゲーション装置120の案内ルート設定部126は、SN5において、センタ装置10から取得した案内ルートを地図情報出力装置130に送信する。
【0061】
地図情報出力装置130のダウンロード処理部137は、SM1において、高精度地図をセンタ装置10に要求する。ダウンロード処理部137が要求する地図は、ナビゲーション装置120から取得した案内ルートに基づいて定まる地域の地図であって、高精度配信地
図134がセンタ地図バージョンになっていない部分の高精度地図である。
【0062】
センタ制御部16は、地図情報出力装置130から要求された高精度地図を高精度地図データベース14から抽出し、抽出した高精度地図を地図情報出力装置130に送信する。地図情報出力装置130は、センタ装置10から送信された高精度地図を受信する。
【0063】
地図情報出力装置130が起動後、最初に高精度地図をセンタ装置10からダウンロードする流れの一例は上述の通りである。ダウンロード処理部137は、車両Cの走行中にも高精度地図をセンタ装置10から逐次ダウンロードすることがある。案内ルートが変更になった場合、ルート案内がされていない場合が、ダウンロード処理部137が車両Cの走行中に高精度地図をセンタ装置10から逐次ダウンロードする例である。車両Cの走行中にダウンロード処理部137がダウンロードする地図の範囲は、車両Cの現在位置を基準として定まる範囲である。この範囲を第2範囲R2とする。
【0064】
第2範囲R2は、次に説明する地図情報構築部138が制御用地図情報を構築する第1範囲R1を包含する範囲である。
図6は、本実施形態における第1範囲R1と第2範囲R2を示す図である。
図6に示す第1範囲R1および第2範囲R2は、ともに車両Cの位置を中心とする正方形の範囲である。これとは異なり、第1範囲R1および第2範囲R2の一方または両方を、正方形以外の形状(たとえば、長方形、楕円)とすることもできる。第1範囲R1の大きさは、制御用地図情報を構築できる大きさとする必要があるという観点から定まる。第1範囲R1の大きさは、たとえば、1辺が10kmである。
【0065】
第2範囲R2は、前述したように第1範囲R1を包含するように設定される。高精度地図のダウンロードが一時的にできなくなっても、制御用地図情報の構築を継続できるようにするためである。第2範囲R2が大きいほど、ダウンロードするデータ量が多くなる点で好ましくない。第2範囲R2が小さいほど、制御用地図情報の構築に不都合が生じ可能性が高くなる。これらを考慮して、第2範囲R2の大きさは、実験等に基づいて設定する。第2範囲R2の大きさは、たとえば、1辺が100kmである。
【0066】
ダウンロード処理部137が、第2範囲R2の高精度地図をダウンロードする条件は、前回、高精度地図をダウンロードした時点における車両Cの位置から、地図更新距離Dmだけ車両Cが移動したという条件である。もちろん、この条件を満たしても、起動時などに、車両Cの現在位置を基準として定まる第2範囲R2の高精度地図をダウンロード済みであれば、再度、高精度地図をダウンロードする必要はない。
【0067】
高精度地図をダウンロードした時点における車両Cの位置は、高精度地図のダウンロードを開始したときの車両Cの位置から、高精度地図のダウンロードが終了したときの車両Cの位置まで車両軌跡のいずれかの位置である。地図更新距離Dmは、第1範囲R1の境界とその境界から最も近い第2範囲R2の境界との差分距離Δdよりも短い距離である。
【0068】
ダウンロード処理部137は、高精度地図のダウンロードができなかった場合、ダウンロード処理を連続して実行してもよい。ただし、本実施形態では、ダウンロード処理部137は、ダウンロードに失敗したときの車両Cの位置を基準位置とし、基準位置から地図更新距離Dmだけ車両Cが移動した後に、高精度地図のダウンロードを再実行する。つまり、ダウンロード処理部137は、ダウンロードに失敗しても、次にダウンロード処理を実行するときの車両Cの位置はダウンロードに成功したときとする。
【0069】
本実施形態では、地図更新距離Dmは、差分距離Δdの2分の1以下である。したがって、高精度地図のダウンロードに失敗しても、最新の車両Cの位置から定まる第1範囲R1が、第2地図記憶部133に記憶されている高精度配信地
図134に含まれている状態で、少なくとも1度は、高精度地図のダウンロードを再実行できる。
【0070】
図7には、高精度地図のダウンロード失敗時における第1範囲R1と第2範囲R2の相対位置の変化が示されている。時刻t1において、ダウンロード処理部137は、高精度地図のダウンロードに成功している。したがって、時刻t1において、第2範囲R2の高精度地図が高精度配信地
図134として第2地図記憶部133に記憶される。
【0071】
時刻t2になると、時刻t1における車両Cの位置から車両Cが地図更新距離Dmだけ移動している。したがって、ダウンロード処理部137は、時刻t2における車両位置を基準として定まる第2範囲R2の高精度地図のダウンロードを行う。しかし、時刻t2では、ダウンロード処理部137は、高精度地図のダウンロードに失敗したとする。時刻t2において、第1範囲R1は、時刻t1で取得した第2範囲R2に含まれている。したがって、時刻t2において高精度地図のダウンロードに失敗しても、地図情報出力装置130は、新たに自動運転制御装置140へ提供する制御用地図情報を構築できる。
【0072】
時刻t3では、時刻t2における車両Cの位置から、さらに地図更新距離Dmだけ、車両Cがそれまでと同じ方向に移動している。ダウンロード処理部137は、時刻t3における車両位置を基準として定まる第2範囲R2の高精度地図のダウンロードを行う。しかし、ダウンロード処理部137は、時刻t3でも、高精度地図のダウンロードに失敗したとする。
【0073】
本実施形態において、ダウンロード処理部137は、2回、高精度地図のダウンロードに失敗した場合に、ダウンロード失敗確定と判定する。ダウンロード失敗確定と判定するまでのダウンロード失敗回数は、2回に限られない。ダウンロード処理部137は、1回、ダウンロードに失敗したのみでダウンロード失敗確定としてもよい。また、ダウンロード処理部137は、3回以上の所定回数、ダウンロードに失敗した場合にダウンロード失敗確定と判定してもよい。ただし、ダウンロード失敗確定と判定する回数はΔd/Dm以下である。車両Cの位置が、ダウンロード済みの高精度地図から出ないうちにダウンロード失敗確定とし、次の処置を実行するためである。
【0074】
地図情報構築部138は、第1範囲R1の高精度地図に基づいて、制御用地図情報を逐次構築する。制御用地図情報は、車両Cが走行する予定の道路に関する情報を主に含む情報とすることができる。制御用地図情報は、レーンのネットワークを示すレーンネットワーク情報を含んでいる。制御用地図情報は、レーンネットワーク情報の他に、高精度地図に含まれる種々のトポロジ情報およびジオメトリ情報が含まれる。トポロジ情報は、道路の種別や接続形態を論理モデル化した情報である。トポロジ情報には、レーンリンクを表す情報も含まれている。ジオメトリ情報は、実際の道路および道路周辺を表現するための種々の情報である。ジオメトリ情報には、道路形状、区画線の位置、道路標示の種類および位置、道路標識の種類および位置、信号機の位置などが含まれる。
【0075】
ダウンロード処理部137が高精度地図のダウンロードに成功している場合には、地図情報構築部138は高精度配信地
図134を使って制御用地図情報を構築する。地図情報構築部138は、ダウンロード処理部137からダウンロード失敗確定が通知された場合には、高精度ローカル地
図132を使って制御用地図情報を構築する。
【0076】
地図情報構築部138は、制御用地図情報を周期的に構築する。周期は事前に設定されている。たとえば、周期は2秒である。
【0077】
地図情報出力部139は、地図情報構築部138が構築した制御用地図情報を、自動運転制御装置140へ出力する。地図情報出力部139は、地図情報構築部138が、制御用地図情報を構築する高精度地図を高精度配信地
図134から高精度ローカル地
図132に切り替えた場合には、そのことを自動運転制御装置140へ通知する。高精度ローカル地
図132は最新の高精度地図ではない。自動運転制御装置140は、最新の高精度地図ではない場合、自動運転制御を中断する可能性があるからである。
【0078】
自動運転制御装置140は、制御用地図情報をもとに、車両Cを自動運転制御する。自動運転制御装置140は、地図情報出力部139から、制御用地図情報を構築する高精度地図が高精度ローカル地
図132に切り替えられたことが通知された場合に、自動運転制御を中断することがある。
【0079】
自動運転制御装置140は、制御用地図情報が最新の高精度地図をもとに構築されていない場合には、自動運転制御の種類によらず、自動運転制御を中断してもよい。また、自動運転制御装置140は、自動運転制御の種類により、自動運転制御を中断するか継続するかを決定してもよい。
【0080】
自動運転制御装置140は、自動運転制御を中断すると決定した場合、車両Cの運転者に向けて、自動運転制御を中断することを、車両Cに搭載された報知部から報知する。報知部は、表示器およびスピーカの一方または両方である。
【0081】
自動運転制御装置140は、上記報知の後、運転者が、手動運転可能な状態になったと判断するなど、自動運転中断条件が成立した場合に、自動運転制御を中断する。
【0082】
〔実施形態のまとめ〕
以上、説明した本実施形態の地図情報出力装置130は、高精度地図に基づいて制御用地図情報を構築する。制御用地図情報を構築するための高精度地図は、現在位置を基準として定まる第1範囲R1の高精度地図である。
【0083】
地図情報出力装置130は高精度地図をセンタ装置10からダウンロードする。センタ装置10からダウンロードする高精度地図の範囲は、第1範囲R1ではなく、第1範囲R1を包含している第2範囲R2である。したがって、地図情報出力装置130は、センタ装置10との通信が不能になっても、即座には制御用地図情報の作成が不能にはならない。地図情報出力装置130は、センタ装置10との通信が不能になっても、しばらくは、現在位置に対応した制御用地図情報の構築を継続できる。したがって、地図情報出力装置130は、センタ装置10との無線通信が一時的に不能になっても、制御用地図情報を構築する処理に不都合が生じてしまうことを抑制できる。
【0084】
ダウンロード処理部137が第2範囲R2の高精度地図をダウンロードする条件は、前回、高精度地図をダウンロードした時点における車両Cの位置から、地図更新距離Dmだけ車両Cが移動したという条件である。この条件があることにより、高精度地図をダウンロードする時点における車両Cの現在位置に基づいて定まる第1範囲R1は、前回ダウンロードした第2範囲R2に含まれる。したがって、仮に、ダウンロードに失敗したとしても、ダウンロード済みの高精度地図を用いて制御用地図情報を構築できる場合がある。
【0085】
本実施形態では、地図更新距離Dmが差分距離Δdの2分の1以下である。したがって、高精度地図のダウンロードに失敗しても、最新の車両Cの位置から定まる第1範囲R1が、第2地図記憶部133に記憶されている高精度配信地
図134に含まれている状態で、高精度地図のダウンロードを再実行できる。最新の車両Cの位置から定まる第1範囲R1が、第2地図記憶部133に記憶されている高精度配信地
図134に含まれている状態であるので、制御用地図情報を構築できる状態である。ダウンロード処理部137は、この状態で高精度地図のダウンロードを再実行できる。
【0086】
本実施形態の地図情報出力装置130には、高精度地図として、高精度配信地
図134だけでなく、高精度ローカル地
図132も記憶されている。高精度ローカル地
図132は、高精度配信地
図134よりも広い地域が表されており、かつ、全体の整合性が保たれている地図である。地図情報出力装置130は、この高精度ローカル地
図132を備えているので、高精度地図のダウンロードに失敗しても、高精度ローカル地
図132を用いて制御用地図情報を構築できる。
【0087】
ただし、高精度ローカル地
図132から構築した制御用地図情報は、高精度配信地
図134から構築する制御用地図情報とは完全には一致しない可能性もある。そこで、地図情報出力部139は、地図情報構築部138が制御用地図情報を高精度ローカル地
図132から構築した場合には、そのことを自動運転制御装置140に通知する。これにより、自動運転制御装置140は、制御用地図情報が高精度ローカル地
図132から構築されたことを知ることができる。自動運転制御装置140は、実施中の自動運転制御が、高精度ローカル地
図132から構築された制御用地図情報を用いても継続できるか否かを判断して、実施中の自動運転制御を継続するか否かを判断できる。
【0088】
自動運転制御装置140は、地図情報出力部139から、制御用地図情報を構築した高精度地図が高精度ローカル地
図132に切り替えられたことが通知されたことに基づいて自動運転制御を中断することがある。自動運転制御装置140は、自動運転制御を中断する場合、自動運転制御を中断する前に、自動運転制御を中断することを車両Cの運転者に報知する。これにより、車両Cの運転者は、自ら運転できるように準備するなど、自動運転制御が中断になった場合に対する準備をすることができる。
【0089】
ナビゲーション装置120はダウンロード処理部128を備え、地図情報出力装置130はダウンロード処理部137を備える。2つのダウンロード処理部128、137は、いずれも、センタ装置10から地図をダウンロードする。
【0090】
センタ装置10は、随時、ルート案内用地図データベース12および高精度地図データベース14を更新する。ダウンロード処理部128がルート案内用地図をダウンロードするタイミングと、ダウンロード処理部137が高精度地図をダウンロードするタイミングは、種々の事情により、完全に同一にならない場合も生じうる。したがって、ダウンロード処理部128とダウンロード処理部137がそれぞれ、最新の地図をダウンロードすると、 相互に対応しないバージョンの地図をダウンロードしてしまい、ルート案内用地図と高精度地図が相互に不整合となる恐れが生じる。
【0091】
しかし、ナビゲーション装置120は、地図バージョン確認部127を備えており、センタ装置10からダウンロードする地図のバージョンを取得する。そして、ナビゲーション装置120は、取得したバージョンを地図情報出力装置130に通知する。地図情報出力装置130のダウンロード処理部137は、ナビゲーション装置120から通知されたバージョンに対応する高精度地図をセンタ装置10からダウンロードする。したがって、ダウンロード処理部128とダウンロード処理部137が、互いに対応しない地図をダウンロードしてしまうことを抑制できる。
【0092】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。なお、以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0093】
〔変形例1〕
実施形態では、ナビゲーション装置120が第1装置であり、地図情報出力装置130が第2装置であった。しかし、地図情報出力装置130が第1装置であり、ナビゲーション装置120が第2装置であってもよい。この場合地図情報出力装置130が、地図バージョン確認部を備える。
【0094】
〔変形例2〕
実施形態では、地図情報出力装置130は、起動時に、案内ルートを地図情報出力装置130から取得した後、高精度地図をセンタ装置10からダウンロードしていた。しかし、地図情報出力装置130は、案内ルートを取得するかどうかによらず、高精度地図をセンタ装置10からダウンロードしてもよい。この場合、ダウンロードする高精度地図の地域は走行中と同じとすることができる。また、地図情報出力装置130は、起動時には、走行中よりも広い地域の高精度地図をダウンロードしてもよい。
【0095】
〔変形例3〕
本開示に記載の制御部125、135およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部125、135およびその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部125、135およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。ハードウエア論理回路は、たとえば、ASIC、FPGAである。
【0096】
また、コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体はROMに限られず、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていればよい。たとえば、フラッシュメモリに上記プログラムが記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
10:センタ装置 11:第1センタ記憶部 12:ルート案内用地図データベース 13:第2センタ記憶部 14:高精度地図データベース 15:無線機 16:センタ制御部 100:自動運転制御システム 110:地図情報出力システム 120:ナビゲーション装置 121:第1ナビ記憶部 122:ルート案内用ローカル地図 123:第2ナビ記憶部 124:ルート案内用配信地図 125:ナビ制御部 126:案内ルート設定部 127:地図バージョン確認部 128:ダウンロード処理部 130:地図情報出力装置 131:第1地図記憶部 132:高精度ローカル地図 133:第2地図記憶部 134:高精度配信地図 135:地図情報制御部 136:位置取得部 137:ダウンロード処理部 138:地図情報構築部 139:地図情報出力部 140:自動運転制御装置(自動運転制御部) 150:無線機 160:車内LAN C:車両 Dm地図更新距離 R1:第1範囲 R2:第2範囲 Δd:差分距離