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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】バリアントRNAi
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240725BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N7/01
A61P25/14
A61K31/713
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021078464
(22)【出願日】2021-05-06
(62)【分割の表示】P 2017560478の分割
【原出願日】2016-02-09
(65)【公開番号】P2021118740
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/114,578
(32)【優先日】2015-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】エム・リサ・スタネック
(72)【発明者】
【氏名】アダム・パレーモ
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダ・リチャーズ
(72)【発明者】
【氏名】パブロ・セルジオ・サルディ
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・オリオーダン
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス・ソング
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/034811(WO,A1)
【文献】Cell,2012年,Vol.151,p.900-911
【文献】Molecular Cell,2002年,Vol.10,p.549-561
【文献】Molecular Therapy,2010年,Vol.18, No.4,p.785-795
【文献】The Journal of Gene Medicine,2004年,Vol.6,p.715-723
【文献】BioEssays,1989年,Vol.11 No.4,p.100-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンチントン(Htt)をコードするRNAを標的化し、Httタンパク質の発現を低減するRNAi分子であって:
(a)配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)に対して90%より高い同一性を有し、かつ残基1および2にUCを有する核酸配列を含むガイド領域を含む第1の鎖、および、配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)に対して90%より高い同一性を有し、かつ残基17~19にGAAを有する核酸配列を含む非ガイド領域を含む第2の鎖を含み、該第1の鎖および
該第2の鎖は、二重鎖を形成し、該第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、該非ガイド領域においてバルジを形成し、該第1の鎖の残基2におけるC残基および該第2の鎖の残基17におけるG残基は、CpGモチーフを形成する;または
(b)配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)に対して90%より高い同一性を有し、かつ残基1にUおよび残基6にGを有する核酸配列を含むガイド領域を含む第1の鎖、および配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)に対して90%より高い同一性を有し、かつ残基13にCならびに残基18および19にAAを有する核酸配列を含む非ガイド領域を含む第2の鎖を含み、該第1の鎖および該第2の鎖は、二重鎖を形成し、該第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、該非ガイド領域においてバルジを形成し、該第1の鎖の残基6におけるG残基および該第2の鎖の残基13におけるC残基は、CpGモチーフを形成し
ここで、該第1の鎖が残基X -X を含み、該第2の鎖が残基X -X -X を含み、X がX に相補的であり、X がX に相補的であり、X が1~3つの残基を表す場合、X によってバルジが形成される、と定義される、
前記RNAi分子。
【請求項2】
第1の鎖が、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)に対して90%より高い同一性を有する配列を含み、第2の鎖が、配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)に対して90%より高い同一性を有する核酸配列を含む非ガイド領域を含む、請求項1に記載のRNAi分子。
【請求項3】
第1の鎖が、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)に対して90%より高い同一性を有する核酸配列を含むガイド領域を含み、第2の鎖が、配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)に対して90%より高い同一性を有する核酸配列を含む非ガイド領域を含む、請求項1に記載のRNAi分子。
【請求項4】
請求項1に記載のRNAi分子であって:
(a)
(i)該ガイド領域は、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含む;
(ii)該非ガイド領域は、配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む;および/または
(iii)ガイド領域の残基11および12におけるU残基は、ガイド領域中でバルジを形成する;または
(b)
(i)該ガイド領域は、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含む;
(ii)該非ガイド領域は、配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む;および/または
(iii)ガイド領域の残基11および12におけるU残基は、ガイド領域中でバルジを形成する;
前記RNAi分子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のRNAi分子であって、ここで:
(a)二重鎖は、19~25または19~23塩基対の長さである;
(b)第1および/または第2の鎖は、3’オーバーハング領域、5’オーバーハング領域、または3’および5’オーバーハング領域の両方をさらに含む;および/または
(c)第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカー
によって連結されている;
前記RNAi分子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のRNAi分子であって、ここで:
(a)配列は、オフターゲットの遺伝子サイレンシングを低減するように改善されている;
(b)配列は、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む;および/または
(c)配列は、シード領域中に1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む;
前記RNAi分子。
【請求項7】
請求項1に記載のRNAi分子であって、ここで:
該RNAi分子は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む、前記RNAi分子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のRNAi分子であって、ここで:
該RNAi分子は、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または小ヘアピンRNA(shRNA)である、前記RNAi分子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のRNAi分子であって、ここで:
該RNAi分子は、障害に関連するポリペプチドをコードするRNAを標的化し、ここで:
(a)該障害は、CNS障害である;
(b)該障害は、リソソーム蓄積症(LSD)、ハンチントン病、てんかん、パーキンソン病、アルツハイマー病、卒中、大脳皮質基底核変性症(CBD)、大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、前頭側頭認知症(FTD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上麻痺(PSP)、または脳のがんである;および/または
(c)該障害は、ハンチントン病である;
前記RNAi分子。
【請求項10】
請求項9に記載のRNAi分子であって、ここで:
前記ポリペプチドは、ハンチンチンであり、ここで:
(a)該ハンチンチンは、ハンチントン病に関連する突然変異を含む;および/または
(b)ガイド領域は、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含み、非ガイド領域は、配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む;または
(c)ガイド領域は、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含み、非ガイド領域は、配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む;
前記RNAi分子。
【請求項11】
RNAi分子の毒性を低減する方法であって、該RNAi分子の非ガイド領域にバルジを導入して、請求項1~10のいずれか1項に記載のRNAi分子を生成することを含む、前記方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載のRNAi分子をコードする核酸を含む発現コンストラクト。
【請求項13】
請求項12に記載の発現コンストラクトであって、前記RNAi分子をコードする核酸が、miR-155足場を含む、前記発現コンストラクト。
【請求項14】
請求項12または13に記載の発現コンストラクトであって、RNAi分子をコードす
る核酸は、プロモーターに機能するように連結されており、ここで:
(a)該プロモーターは、哺乳動物の脳でRNAi分子を発現させることが可能であり;および/または
(b)該プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される、
前記発現コンストラクト。
【請求項15】
請求項1214のいずれか1項に記載の発現コンストラクトであって、ポリアデニル化シグナルをさらに含み、ここで、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル、SV40のポリアデニル化シグナル、またはHSV TK pAである、前記発現コンストラクト。
【請求項16】
請求項1215のいずれか1項に記載の発現コンストラクトを含むベクターであって、ここで:
(a)該ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターである;
(b)該ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである;
(c)該ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである;または
(d)該ベクターは、rHSVベクターである;
前記ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターであって、該ベクターは、rAAVベクターであり、そして、発現コンストラクトに、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列が隣接する、前記ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターであって:
(a)該発現コンストラクトに、2つのAAVのITRが隣接する;および/または
(b)該AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである;
前記ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターであって、rAAVベクターは、5’から3’へ、AAV2のITR、プロモーター、RNAi分子をコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む、前記ベクター。
【請求項20】
請求項19に記載のベクターであって:
(a)該プロモーターは、CBAプロモーターである;
(b)該ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルである;および/または
(c)該rAAVベクターは、5’から3’へ、AAV2のITR、CBAプロモーター、RNAi分子をコードする核酸、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む;
前記ベクター。
【請求項21】
請求項1620のいずれか1項に記載のベクターであって、該ベクターは、スタッファー核酸をさらに含み、ここで:
(a)該スタッファー核酸は、プロモーターとRNAi分子をコードする核酸との間に配置されている;
(b)該スタッファー核酸は、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸、ヒトアルファ-1-アンチトリプシン(AAT)スタッファー配列、またはC16P1第16染色体P1クローン(ヒトC16)のスタッファー配列を含む;および/または
(c)該スタッファー核酸は、配列番号13のヌクレオチド1692からヌクレオチド2720の核酸配列を含む;
前記ベクター。
【請求項22】
請求項1721のいずれか1項に記載のベクターであって、該ベクターは、自己相補的なrAAVベクターである、前記ベクター。
【請求項23】
請求項1622のいずれか1項に記載のベクターを含む細胞であって、場合により該細胞が中枢神経系(CNS)細胞である、前記細胞。
【請求項24】
哺乳動物においてRNA干渉を誘導するため、疾患を有する哺乳動物においてポリペプチドの発現を阻害もしくは低減するため、哺乳動物の細胞においてポリペプチドの蓄積を阻害するため、哺乳動物においてハンチントン病を処置するためもしくは哺乳動物においてhttの発現を阻害するため、または哺乳動物の細胞においてhttの蓄積を阻害するためのキットであって、請求項1~10のいずれか1項に記載のRNAi分子を含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年2月10日付けで出願された米国仮出願第62/114,578号の優先権を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列リストの提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物の内容は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる:配列リストのコンピューター読み取り可能な形態(CRF)(ファイル名:159792010140SEQLIST.txt、記録された日付:2016年2月4日、サイズ:11KB)。
【0003】
本発明は、バリアントRNAi分子に関する。一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を処置するためのバリアントRNAiに関する。
【背景技術】
【0004】
RNA干渉(RNAi)は、遺伝子の機能の基礎的な調査における遺伝子サイレンシングのための有用なツールであることが示されており、数々の疾患の発症と関連する遺伝子を抑制するための治療剤として大きな将来性を示す。本来、RNAiによる遺伝子の制御は、マイクロRNA(miRNA)として公知の小型RNAを介して起こる(非特許文献1;非特許文献2)。マイクロRNAは、多様な細胞プロセスの強力な制御因子として出現したものであり、ウイルスベクターによって送達されると、人工miRNAが継続的に発現され、結果として標的遺伝子のロバストで持続的な抑制が起こる。miRNAプロセシングに関与するメカニズムの解明により、科学者は、内因性細胞RNAiの機構を取り入れて、人工miRNAの使用により標的遺伝子産物の分解を方向付けることが可能になった(例えば、特許文献1および非特許文献3を参照)。
【0005】
RNAiの臨床開発の障害は、オフターゲットのサイレンシングの可能性であり、その場合、RNAiのシード領域(典型的にはヌクレオチド1~7または1~8)が、非標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)中の配列と対合して、転写の不安定化を引き起こす。オフターゲットのサイレンシングを低減する試みとしては、起こり得るオフターゲットが最小である標的mRNAに高い特異性を有する候補シード配列を同定するためのアルゴリズムの使用(非特許文献4)、およびRNAiのガイド領域中に内部のバルジを設置すること(非特許文献5)が挙げられる。
【0006】
RNAiは、ハンチントン病(HD)を処置するための治療物質として調査されてきた。HDは、ハンチンチン遺伝子(HTT)のエクソン1におけるCAGリピートの拡大によって引き起こされる遺伝性神経変性疾患である。結果生じたN末端領域中のポリグルタミン鎖の伸長は、突然変異ハンチンチンタンパク質(mHtt)に毒性の機能獲得をもたらす。HDの治療戦略としてmHtt発現をサイレンシングする可能性は、最初に、条件付きのマウス疾患モデルで実証された(非特許文献6)。これらのマウスにおいてmHttの発現が誘導されたら、病理学的および行動に関する異常が出現した。それに続くテトラサイクリン媒介によるmHtt導入遺伝子の抑制が、これらの異常を元に戻したことから、mHttレベルを低減することで、ニューロン内のタンパク質のクリアランスメカニズムがmHttによって誘発された変化を正常化することを可能にしたことが示される。したがって、mHttレベルを低減する治療戦略は、疾患の進行を止めて、HDの症状を軽減する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国付与前公報第2014/0163214号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Ambros、(2004)Nature 431:350~355
【文献】Krolら、(2010)Nat.Rev.Genet.11:597~610
【文献】Davidsonら、(2012)Cell 150:873~875
【文献】Boudreau RLら、(2012)Nucl.Acids Res.41(1):e9
【文献】Terasawaら、(2011)Journal of nucleic acids 2011:131579
【文献】Yamamotoら、(2000)Cell 101:57~66
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一部の態様において、本発明は、第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiであって、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し;b)第1の鎖は、少なくとも19塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基1~Nを含むシード領域を含み、N=7またはN=8であり;c)第2の鎖は、少なくとも11塩基(例えば、少なくとも19塩基)の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~(N+2)のいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含む、RNAiを提供する。一部の実施形態において、N=7であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7、8、または9の反対側にある。他の実施形態において、N=8であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の反対側にある。一部の実施形態において、バルジは、ガイド領域の塩基1または塩基N+2の反対側にある。
【0010】
一部の態様において、本発明は、第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiであって、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し;b)第1の鎖は、少なくとも11塩基(例えば、少なくとも19塩基)のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基1~Nを含むシード領域を含み、N=7またはN=8であり;c)第2の鎖は、少なくとも11塩基(例えば、少なくとも19塩基)の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~(N+1)のいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含む、RNAiを提供する。一部の実施形態において、N=7であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7、または8の反対側にある。他の実施形態において、N=8であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7、8、または9の反対側にある。一部の実施形態において、バルジは、ガイド領域の塩基1または塩基N+1の反対側にある。
【0011】
一部の態様において、本発明は、第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiであって、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し;b)第1の鎖は、少なくとも11塩基(例えば、少なくとも19塩基)のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基1~Nを含むシード領域を含み、N=7またはN=8であり;c)第2の鎖は、少なくとも11塩基(例えば、少なくとも19塩基)の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~Nのいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含
む、RNAiを提供する。一部の実施形態において、N=7であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6または7の反対側にある。他の実施形態において、N=8であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7または8の反対側にある。一部の実施形態において、バルジは、ガイド領域の塩基1または塩基Nの反対側にある。一部の実施形態において、バルジは、ガイド領域の塩基1の反対側にある。
【0012】
上記の態様および実施形態の一部の実施形態において、バルジは、ガイド領域における相補的な塩基が欠失した、二重鎖中の非ガイド鎖の1つまたはそれ以上の塩基によって形成され、バルジに、ガイド鎖と対合する塩基が隣接する。一部の実施形態において、バルジは、1~10ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、バルジは、1~3ヌクレオチドを含む。さらなる実施形態において、RNAiは、第2のバルジを含み、第2のバルジは、シード領域の3’に配置された第1の鎖のガイド領域に配置されている。
【0013】
上記の態様および実施形態の一部の実施形態において、二重鎖は、19~25または19~23塩基対の長さである。一部の実施形態において、第1および/または第2の鎖は、3’オーバーハング領域、5’オーバーハング領域、または3’および5’オーバーハング領域の両方をさらに含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている。一部の実施形態において、RNAリンカーは、4~50ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループ構造は、4~20ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、RNAiは、5’から3’へ、第2の鎖、RNAリンカー、および第1の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、5’から3’へ、第1の鎖、RNAリンカー、および第2の鎖を含む。一部の実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または小ヘアピンRNA(shRNA)である。
【0014】
上記の態様の一部の実施形態において、RNAiのヌクレオチド配列は、オフターゲットの遺伝子サイレンシングを低減するように改善されている(例えば、遺伝子のサイレンシングを低減するように改善され、その場合、シード領域は、意図されないmRNAの3’-UTR中の配列と対合して、それらの転写物の翻訳の抑制および不安定化を指示する)。一部の実施形態において、核酸配列は、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。一部の実施形態において、核酸配列は、シード領域中に1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。
【0015】
上記の態様および実施形態の一部の実施形態において、RNAiは、障害に関連するポリペプチドをコードするRNAを標的化する。一部の実施形態において、障害は、CNS障害である。一部の実施形態において、障害は、リソソーム蓄積症(LSD)、ハンチントン病、てんかん、パーキンソン病、アルツハイマー病、卒中、大脳皮質基底核変性症(CBD)、大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、前頭側頭認知症(FTD)、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上麻痺(PSP)または脳のがんである。一部の実施形態において、障害は、ハンチントン病である。さらなる実施形態において、ポリペプチドは、ハンチンチンである。よりさらなる実施形態において、ハンチンチンは、ハンチントン病に関連する突然変異を含む。一部の実施形態において、ガイド領域は、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含み、非ガイド領域は、配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む。一部の実施形態において、ガイド領域は、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含み、非ガイド領域は、配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む。一部の実施形態において、ガイド領域は、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含み、非ガイド領域は、配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む。
【0016】
一部の実施形態において、本発明は、RNAiの毒性を低減する方法であって、RNAiの非ガイド領域にバルジを導入して、本明細書に記載のRNAiを生成することを含む、方法を提供する。
【0017】
一部の態様において、本発明は、本明細書に記載のRNAiをコードする核酸を含む発現コンストラクトを提供する。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、プロモーターに機能するように連結されている。一部の実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される。一部の実施形態において、発現コンストラクトは、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル、SV40のポリアデニル化シグナル、またはHSV TK pAである。
【0018】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の発現コンストラクトを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純疱疹ウイルス(HSV)ベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、またはブタAd3型から誘導される。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5のバリアントから誘導される。他の実施形態において、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、組換えレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114またはそれらのバリアントで偽型化したレンチウイルスから誘導される。他の実施形態において、ベクターは、rHSVベクターである。一部の実施形態において、rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2から誘導される。
【0019】
上記の態様および実施形態の一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のRNAiをコードする発現コンストラクトを含むrAAVベクターを提供する。一部の実施形態において、発現コンストラクトに、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列が隣接する。一部の実施形態において、発現コンストラクトに、2つのAA
VのITRが隣接する。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV2のITRである。一部の実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸(stuffer nucleic acid)をさらに含む。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、プロモーターとRNAiをコードする核酸との間に配置されている。一部の実施形態において、ベクターは、自己相補的なrAAVベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、RNAiをコードする第1の核酸配列およびRNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる。一部の実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列(terminal resolution sequence)の突然変異を含む。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のベクター(例えば、rAAVベクター)を含む細胞を提供する。
【0020】
上記の態様および実施形態の一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のRNAiをコードするベクターを含むウイルス粒子であって、ウイルス粒子は、rAAVベクターをキャプシド化するAAV粒子、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド化するアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド化するレンチウイルス粒子、または組換えHSVベクターをキャプシド化するHSV粒子である、ウイルス粒子を提供する。一部の実施形態において、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド化するアデノウイルス粒子である。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、またはブタAd3型由来のキャプシドを含む。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2のキャプシドまたはアデノウイルス血清型5のキャプシドのバリアントを含む。他の実施形態において、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド化するレンチウイルス粒子である。一部の実施形態において、レンチウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはそれらのバリアントで偽型化したキャプシドを含む。他の実施形態において、ウイルス粒子は、HSV粒子である。一部の実施形態において、HSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2粒子である。
【0021】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のRNAiをコードするrAAVベクターを含む組換えAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド
rAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。一部の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される。他の実施
形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される。一部の実施形態において、ITRは、AAV2から誘導され、rAAV粒子のキャプシドは、AAV1から誘導される。
【0022】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のRNAiをコードするベクターを含むウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0023】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物の疾患におけるポリペプチドの発現を阻害または低減するための方法であって、本明細書に記載のRNAi、発現コンストラクト、ベクター、rAAVベクター、ウイルス粒子、rAAV粒子、または組成物を哺乳動物に投与することを含み、RNAiは、ポリペプチドをコードするRNAを標的化する、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物の細胞におけるポリペプチドの蓄積を阻害するための方法であって、本明細書に記載のRNAi、発現コンストラクト、ベクター、rAAVベクター、ウイルス粒子、rAAV粒子、または組成物を哺乳動物に投与することを含み、RNAiは、ポリペプチドをコードするRNAを標的化する、方法を提供する。一部の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0024】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の方法のいずれかで使用するための医薬品の製造における、本明細書に記載のRNAi、発現コンストラクト、ベクター、rAAVベクター、ウイルス粒子、rAAV粒子、または組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の方法のいずれかで使用するための、本明細書に記載のRNAi、発現コンストラクト、ベクター、rAAVベクター、ウイルス粒子、rAAV粒子、または組成物を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のRNAi、発現コンストラクト、ベクター、rAAVベクター、ウイルス粒子、rAAV粒子、または組成物を含む、哺乳動物においてRNA干渉を誘導するためのキットを提供する。一部の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかで使用するためである。
【0025】
一部の態様において、本発明は、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含むガイド領域を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む非ガイド領域を含む第2の鎖を含むRNAiであって、第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、非ガイド領域においてバルジを形成する、RNAiを提供する。一部の実施形態において、ガイド領域は、配列番号1に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、非ガイド領域は、配列番号2に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、ガイド領域の残基11および12におけるU残基は、ガイド領域中でバルジを形成する。一部の実施形態において、二重鎖は、19~25または19~23塩基対の長さである。一部の実施形態において、第1および/または第2の鎖は、3’オーバーハング領域、5’オーバーハング領域、または3’および5’オーバーハング領域の両方をさらに含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている。一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーは、4~50ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーは、4~20ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーは、13ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、RNAiは、配列番号3のヌクレオチド配列と約90%同一なヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または小ヘアピンRNA(shRNA
)である。
【0026】
上記の態様の一部の実施形態において、RNAiの核酸配列は、オフターゲットの遺伝子サイレンシングを低減するように改善されている。一部の実施形態において、配列は、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。一部の実施形態において、配列は、シード領域中に1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含むガイド領域を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む非ガイド領域を含み、第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、非ガイド領域においてバルジを形成する。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含むガイド領域を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む非ガイド領域を含み、第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、非ガイド領域においてバルジを形成する。一部の実施形態において、ガイド領域は、配列番号15に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含み、非ガイド領域は、配列番号16に対して約90%の同一性を有する核酸配列または配列番号17に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含み、非ガイド領域は、配列番号18に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0027】
一部の実施形態において、本発明は、上述したRNAiをコードする核酸を含む発現コンストラクトを提供する。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、miR-155足場を含む。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、プロモーターに機能するように連結されている。一部の実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の脳でRNAiを発現させることが可能である。一部の実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV
LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される。一部の実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチンプロモーターである。一部の実施形態において、発現コンストラクトは、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルである。
【0028】
一部の実施形態において、本発明は、上述したような発現コンストラクトを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純疱疹ウイルス(HSV)ベクターである。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクター。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、
AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、またはブタAd3型から誘導される。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5のバリアントから誘導される。一部の実施形態において、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、組換えレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはそれらのバリアントで偽型化したレンチウイルスから誘導される。一部の実施形態において、ベクターは、rHSVベクターである。一部の実施形態において、rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2から誘導される。
【0029】
一部の実施形態において、本発明は、上述したRNAiをコードする発現コンストラクトを含む組換えAAV(rAAV)ベクターを提供する。一部の実施形態において、発現コンストラクトに、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列が隣接する。一部の実施形態において、発現コンストラクトに、2つのAAVのITRが隣接する。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV2のITRである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、5’から3’へ、AAV2のITR、プロモーター、RNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む。一部の実施形態において、プロモーターは、CBAプロモーターである。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、5’から3’へ、AAV2のITR、CBAプロモーター、RNAiをコードする核酸、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む。一部の実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸をさらに含む。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、プロモーターとRNAiをコードする核酸との間に配置されている。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、RNAiは、配列番号3のヌクレオチド配列と約90%同一なヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、ベクターは、自己相補的なベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、RNAiをコードする第1の核酸配列およびRNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる。一部の実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む。
【0030】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のベクターまたはrAAVベクターを含む細胞を提供する。一部の実施形態において、細胞は、中枢神経系(CNS)細胞である。
【0031】
一部の実施形態において、本発明は、上述したようなRNAiをコードするベクターを含むウイルス粒子であって、ウイルス粒子は、rAAVベクターをキャプシド化するAAV粒子、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド化するアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド化するレンチウイルス粒子、または組換えHSVベクターをキャプシド化するHSV粒子である、ウイルス粒子を提供する。一部の実施形態
において、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド化するアデノウイルス粒子である。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、またはブタAd3型由来のキャプシドを含む。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2のキャプシドまたはアデノウイルス血清型5のキャプシドのバリアントを含む。他の実施形態において、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド化するレンチウイルス粒子である。一部の実施形態において、レンチウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはそれらのバリアントで偽型化したキャプシドを含む。他の実施形態において、ウイルス粒子は、HSV粒子である。一部の実施形態において、HSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2粒子である。
【0032】
一部の実施形態において、本発明は、上述したようなRNAiをコードするrAAVベクターを含む組換えAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド rAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。一部の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される。他の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV2キャプシドを含む。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV1キャプシドを含み、ベクターは、AAV2のITRを含む。
【0033】
一部の実施形態において、本発明は、上述したようなウイルス粒子またはrAAV粒子を含む組成物を提供する。さらなる実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体を含む。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するための方法であって、組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法であって、組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法であって、組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0034】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するための方法であって、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法であって、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核
酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法であって、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。
【0035】
上記の方法の一部の実施形態において、ガイド領域は、配列番号1に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、非ガイド領域は、配列番号2に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態において、ガイド領域の残基11および12におけるU残基は、ガイド領域中でバルジを形成する。一部の実施形態において、二重鎖は、19~25または19~23塩基対の長さである。一部の実施形態において、第1および/または第2の鎖は、3’オーバーハング領域、5’オーバーハング領域、または3’および5’オーバーハング領域の両方をさらに含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーによって連結されている。一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーは、4~50ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーは、4~20ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAリンカーは、13ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、RNAiは、配列番号3のヌクレオチド配列と約90%同一なヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または小ヘアピンRNA(shRNA)である。
【0036】
上記の方法の一部の実施形態において、核酸は、オフターゲットの遺伝子サイレンシングを低減するように改善されている。一部の実施形態において、核酸は、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。一部の実施形態において、核酸は、シード領域中に1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。
【0037】
一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するための方法であって、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法であって、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法であって、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に
投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、第1の鎖は、配列番号15に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。一部の実施形態において、第2の鎖は、配列番号16に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。
【0038】
一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するための方法であって、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法であって、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法であって、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、第1の鎖は、配列番号17に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。一部の実施形態において、第2の鎖は、配列番号18に対して約90%の同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。
【0039】
上記の方法の一部の実施形態において、上述したRNAiをコードする核酸を含む発現コンストラクト。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、miR-155足場を含む。一部の実施形態において、RNAiをコードする核酸は、プロモーターに機能するように連結されている。一部の実施形態において、プロモーターは、哺乳動物の脳でRNAiを発現させることが可能である。一部の実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、CK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAG)プロモーター、延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、および13-アクチンプロモーターから選択される。一部の実施形態において、プロモーターは、ハイブリッドニワトリβ-アクチンプロモーターである。一部の実施形態において、発現コンストラクトは、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルである。一部の実施形態において。
【0040】
上記の方法の一部の実施形態において、上述したような発現コンストラクトを含むベクター。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純疱疹ウイルス(HSV)ベクターである。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクター。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、またはブタAd3型から誘導される。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2またはアデノウイルス血清型5のバリアントから誘導される。一部の実施形態において、ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、組換えレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはそれらのバリアントで偽型化したレンチウイルスから誘導される。一部の実施形態において、ベクターは、rHSVベクターである。一部の実施形態において、rHSVベクターは、rHSV-1またはrHSV-2から誘導される。
【0041】
上記の方法の一部の実施形態において、上述したRNAiをコードする発現コンストラクトを含む組換えAAV(rAAV)ベクター。一部の実施形態において、発現コンストラクトに、1つまたはそれ以上のAAVの逆方向末端反復(ITR)配列が隣接する。一部の実施形態において、発現コンストラクトに、2つのAAVのITRが隣接する。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型のITRである。一部の実施形態において、AAVのITRは、AAV2のITRである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、5’から3’へ、AAV2のITR、プロモーター、RNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む。一部の実施形態において、プロモーターは、CBAプロモーターである。一部の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、5’から3’へ、AAV2のITR、CBAプロモーター、RNAiをコードする核酸、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナル、およびAAV2のITRを含む。一部の実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸をさらに含む。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、プロモーターとRNAiをコードする核酸との間に配置されている。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、RNAiは、配列番号3のヌクレオチド配列と約90%同一なヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、ベクターは、自己相補的なベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、RNAiをコードする第1の核酸配列およびRNAiの相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる。一部の実施形態において、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAVのITRによって連結されており、突然変異したAAVのITRは、D領域の欠失を含み、末端分解配列の突然変異を含む。
【0042】
上記の方法の一部の実施形態において、上述したようなRNAiをコードするベクターを含むウイルス粒子であって、ウイルス粒子は、rAAVベクターをキャプシド化するA
AV粒子、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド化するアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド化するレンチウイルス粒子、または組換えHSVベクターをキャプシド化するHSV粒子である、ウイルス粒子。一部の実施形態において、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド化するアデノウイルス粒子である。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、またはブタAd3型由来のキャプシドを含む。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2のキャプシドまたはアデノウイルス血清型5のキャプシドのバリアントを含む。他の実施形態において、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド化するレンチウイルス粒子である。一部の実施形態において、レンチウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス、狂犬病ウイルス、RD114またはそれらのバリアントで偽型化したキャプシドを含む。他の実施形態において、ウイルス粒子は、HSV粒子である。一部の実施形態において、HSV粒子は、rHSV-1粒子またはrHSV-2粒子である。
【0043】
上記の方法の一部の実施形態において、上述したようなRNAiをコードするrAAVベクターを含む組換えAAV粒子。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド rAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。一部の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、同じAAV血清型から誘導される。他の実施形態において、ITRおよびrAAVウイルス粒子のキャプシドは、異なるAAV血清型から誘導される。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV2キャプシドを含む。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子は、AAV1キャプシドを含み、ベクターは、AAV2のITRを含む。
【0044】
上記の方法の一部の実施形態において、ウイルス粒子またはrAAV粒子は、組成物の形態である。一部の実施形態において、組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0045】
一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のハンチントン病を処置するための方法のいずれかで使用するための医薬品の製造における、本明細書に記載のRNAi、発現コンストラクト、ベクター、rAAVベクター、ウイルス粒子、rAAV粒子、または組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のハンチントン病を処置するための方法のいずれかで使用するための、本明細書に記載のRNAi、発現コンストラクト、ベクター、rAAVベクター、ウイルス粒子、rAAV粒子、または組成物を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物においてハンチントン病を処置するためのRNA干渉を誘導するためのキットであって、本明細書に記載のRNAi、発現コンストラクト、ベクター、rAAVベクター、ウイルス粒子、rAAV粒子、または組成物を含む、キットを提供する。一部の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかで使用するためである。
【0046】
本明細書において引用された特許出願および公報を包含する全ての参考文献は、参照によってそれら全体が開示に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1AおよびBは、インビトロにおけるAAV2/1-miRNA-Httが媒介するHttレベルの低減を示す図である。(図1A)AAV2/1-miRNA-Httを生成するのに使用されたプレウイルスコンストラクトの略図。ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターの転写コントロール下でHttに対してGFPおよびmiRNA配列を発現するようにプラスミドを設計した。ITR、逆方向末端反復。eGFP、強化緑色蛍光タンパク質。ポリA、ウシ成長ホルモンのポリA。(図1B)AAV-2/1-miRNA-Htt処置の48時間後のHEK293細胞におけるHttのmRNAレベルを評価する定量PCR分析。PPIAは、正規化の対照遺伝子として役立てた。値は平均±SEMとして示される。p<0.05。
図2図2A~Dは、AAV2/1-eGFP-miRNA-HttベクターでHEK293細胞を感染させた後の蛍光活性化セルソーティング(FACS)を実証する図である。(図2A)eGFPを含むHEK293細胞のフローサイトメトリーの散乱プロファイル。前方光散乱A(FSC-A)は、相対的な細胞サイズ、領域を表し、SSC-Aは、相対的な細胞の複雑さ、領域を表し、各ドットは1つの細胞を表す。(図2B)細胞のeGFP蛍光強度の蛍光プロットであり、各色は、それぞれGFP-、GFP+、GFP++、またはGFP+++としてソートされた細胞の境界を定める。(図2C)eGFPを発現するHEK293細胞のFACSヒストグラム。(図2D)FACSソーティング後の細胞数の表。
図3図3A~Eは、YAC128マウスにおけるAAV2/1-miRNA-Htt注射の線条体内注射後の拡大した線条体の形質導入およびHttの低減を示す図である。(図3A)eGFPを含む線条体細胞のフローサイトメトリーの散乱プロファイル。前方光散乱A(FSC-A)は、相対的な細胞サイズ、領域を表し、SSC-Aは、相対的な細胞の複雑さ、領域を表し、各ドットは1つの細胞を表す。(図3B)FSC-A対FITC-A分析を使用したドットプロット。死細胞をソートして、eGFP+およびeGFP-細胞を選択した。これらの細胞によるGFP発現を評価し、定量し、図3Cに示した。(図3C)530/30BPフィルター505LPを用いて収集されたeGFP蛍光強度の蛍光プロット。(図3D)AAV2/1-eGFP-miRNA-Httの頭蓋内投与後の線条体全体にわたるeGFP発現の拡大を示す蛍光顕微鏡検査法。(図3E)AAV2/1-miRNA-HttまたはAAV2/1-ヌル対照ベクターの注射の1および5カ月後の線条体におけるHttのmRNAレベルを評価する定量PCR分析。PPIAは、正規化の対照遺伝子として役立てた。値は平均±SEMとして示される。p<0.05。AAV2/1-miRNA-Httで処置したYAC128マウス(N=8)は、処置後1および5カ月でAAV2/1-ヌルが注射されたマウスと比較した場合(N=8/タイムポイント)、線条体中のHttのmRNAレベルのおよそ50%の低減を示した。
図4】YAC128マウスにおけるAAV2/1-miRNA-Htt注射の線条体内注射後のマウスHttのmRNAの低減を示す図である。AAV2/1-miRNA-HttまたはAAV2/1-ヌル対照ベクターの注射の1および5カ月後の線条体における内因性マウスHttのmRNAレベルを評価する定量PCR分析。PPIAは、正規化の対照遺伝子として役立てた。値は平均±SEMとして示される。p<0.05。
図5-1】図5A~Iは、AAV2/1-miRNA-HttによるYAC128マウスにおけるHttレベルの持続的な低下は、明白な神経炎症を引き起こさなかったことを実証する図である。(図5A~C)AAV2/1-ヌルベクターを使用して処置されたYAC128マウス(図5A)と比較した、AAV-miRNA-Htt注射後1カ月(図5B)または5カ月(図5C)におけるAAV2/1-miRNA-Httを使用して処置されたYAC128マウスからの線条体の組織断片のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色。(図5D~F)AAV2/1-ヌルベクターを使用して処置されたYAC128マウス(図5D)と比較した、AAV-miRNA-Htt注射後1カ月(図5E)または5カ月(図5F)におけるAAV2/1-miRNA-Httを使用して処置されたYAC128マウスからの線条体の組織断片のGFAP免疫組織化学的染色。(図5G~I)AAV2/1-ヌルベクターを使用して処置されたYAC128マウス(図5G)と比較した、AAV-miRNA-Htt注射後1カ月(図5H)または5カ月(図5I)におけるAAV2/1-miRNA-Httを使用して処置されたYAC128マウスからの線条体の組織断片のIba-1免疫組織化学的染色。正確な比較のために全ての写真の露光量を一致させた。スケールバー:0.25mm。
図5-2】図5JおよびKは、AAV2/1-miRNA-HttによるYAC128マウスにおけるHttレベルの持続的な低下は、明白な神経炎症を引き起こさなかったことを実証する図である。(図5J)AAV2/1-miRNA-Httの注射後の1または5カ月におけるQPCRによるGFAPのmRNAレベルの線条体のレベル。(図5K)AAV2/1-miRNA-Httの注射後の1または5カ月におけるQPCRによるIba1のmRNAレベル。値は平均±SEMとして示される。AAV2/1-ヌルマウスと有意に異なる、p<0.05;ANOVA。
図6-1】図6A~Dは、YAC128マウスにおけるAAV2/1-miRNA-Httの線条体投与の行動の欠陥に対する作用を試験するための実験の設計を示す図である。(図6A)実験のタイムラインの図解。2月齢のYAC128および野生型マウスに、AAV2/1-miRNA-Htt(N=8匹のYACおよびN=8匹のWT)またはAAV2/1-ヌル対照(N=8匹のYACおよびN=8匹のWT)のいずれかを両側線条体に注射し、それぞれ4および5月齢でロータロッド試験およびポーソルト水泳試験に供した。5月齢で全てのマウスを殺し、次いで生化学および組織学的な分析のために組織を収集した。(図6B)処置後3カ月の線条体におけるeGFP発現を示す蛍光顕微鏡法。AAV2/1-miRNA-Htt処置後3カ月のウェスタンブロットによるマウス(図6C)およびヒト(図6D)Httタンパク質レベル。
図6-2】図6EおよびFは、AAV2/1-miRNA-Httの線条体投与が、YAC128マウスにおいて行動の欠陥を低減したことを実証する図である。(図6E)AAV2/1-miRNA-Httの注射後の2カ月における促進ロータロッド試験。(図6F)AAV2/1-miRNA-Httの注射後の3カ月のポーソルト水泳試験における静止したままの時間。値は平均±SEMとして示される。AAV2/1-ヌルマウスと有意に異なる、p<0.05;ANOVA、続いてテューキーの事後検定。
図7図7AおよびBは、AAV2/1-miRNA-Httを使用した処置が、YAC128マウスにおいてDARPP-32およびD1受容体の転写調節異常を部分的に修正したことを示す図である。AAV2/1-miRNA-Htt(N=8匹のYACおよびN=8匹のWT)またはAAV2/1-ヌル対照(N=8匹のYACおよびN=8匹のWT)のいずれかの注射後の3カ月に、YAC128および野生型マウスの線条体におけるDARPP-32およびD1受容体のmRNAレベルを、QPCRによって査定した。(図7A)AAV2/1-ヌルまたはAAV2/1-miRNA-Htt処置後のYAC128およびFVB野生型同腹子マウスにおける線条体のDARPP-32のmRNAレベル。(図7B)AAV2/1-ヌルまたはAAV2/1-miRNA-Htt処置後のYAC128およびFVB野生型同腹子マウスにおける線条体のD1受容体のmRNAレベル。値は平均±SEMとして示される。AAV2/1-ヌルサンプルと有意に異なる、p<0.05;ANOVA、続いてテューキーの事後検定。
図8図8A~Dは、AAV2/1-miRNA-Httの頭蓋内投与が、運動障害を緩和し、老化したYAC128マウスの線条体における突然変異Httの凝集を低減することを示す図である。(図8A)線条体における突然変異Httの凝集を示すYAC128マウス脳断片の免疫組織化学的染色。凝集は、6、9、12(示されていない)および24月齢のYAC128マウスで観察された。野生型マウスは、試験された全ての年齢において凝集を示さなかった。(図8B)老化したYAC128および野生型マウスにおけるAAV2/1-miRNA-HTTを試験するための実験のタイムラインの図解。7月齢のマウスに、AAV2/1-miRNA-Htt(N=6匹のYACおよびN=4匹のWT)またはAAV2/1-GFP対照(N=6匹のYACおよびN=4匹のWT)を両側線条体内に注射し、次いで、10月齢で行動試験に供した。注射後5カ月で(マウスが12月齢になったとき)脳を回収した。(図8C)AAV-miRNA-Htt注射後の3カ月のロータロッド試験における老化したYAC128マウスの性能。(図8D)処置後5カ月におけるAAV2/1-miRNA-HttまたはAAV2/1-eGFOで処置したYAC128マウスの脳断片のEM-48免疫組織化学的分析。
図9図9AおよびBは、本明細書に記載の実験に使用されたshRNAのステム配列における内部バルジを例示する図である。図9Aに示される完全一致した配列(配列番号23)と比較して、上記の実験で使用された配列は、シード配列の3’末端に追加のアデニンヌクレオチド(A)を含有し(矢印で強調)、ガイド鎖に対応するチミンヌクレオチド(T)を有していなかった(配列番号24)(図9B)。標的配列に相補的な配列を強調表示する。
図10】元のPS170XAのmiRNA配列(配列番号19)ならびに2つの改変された低オフターゲット型のPS170XAL1(配列番号25)およびPS170XAL2(配列番号26)を示す図である。
図11】AAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1および170XAL2のAAVのインビトロでHttにおいて低減を媒介する能力を示す図である。値は平均±SEMとして示される。
図12図12A~Dは、AAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1および170XAL2のAAVの、YAC128マウスの線条体におけるHtt発現をサイレンシングする能力を示す図である。図12Aおよび12Cに、ヒトHttを示す。図12Bおよび12Dに、マウスHttを示す。ベータ-チューブリンは、全てのウェスタンブロットのための正規化の対照遺伝子として役立てた。未処置の対照マウスと有意に異なる、p<0.05;ANOVA、続いてテューキーの事後検定。
図13図13Aは、線条体におけるGFAPのmRNAレベルを示す図であり、図13Bは、Iba1のmRNAレベルを示す図である。ヒトPPIAは、正規化の対照遺伝子として役立てた。値は平均±SEMとして示される。未処置の対照マウスと有意に異なる、p<0.05;ANOVA、続いてテューキーの事後検定。
図14】AAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1またはAAV2/1-miRNA-Htt 170XAL2で処置されたYAC128マウスからの線条体の組織断片のGFAPおよびIba1の免疫組織化学的染色を示す図である。スケールバー=50μM。
【発明を実施するための形態】
【0048】
一部の態様において、本発明は、改善されたRNAi;例えば、治療用途のための改善されたRNAiを提供する。一部の実施形態において、RNAiは、第1の鎖および第2の鎖を含み、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し;b)第1の鎖は、少なくとも11塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基1~Nを含むシード領域を含み、N=7またはN=8であり;c)第2の鎖は、少なくとも11塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~(N+2)のいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、第1の鎖および第2の鎖を含み、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し;b)第1の鎖は、少なくとも10塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基1~Nを含むシード領域を含み、N=7またはN=8であり;c)第2の鎖は、少なくとも10塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~(N+1)のいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、第1の鎖および第2の鎖を含み、a)第1の鎖および第2の鎖は
、二重鎖を形成し、b)第1の鎖は、少なくとも9塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基2~7または2~8を含むシード領域を含み、c)第2の鎖は、少なくとも9塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1または塩基9の反対側に、バルジ配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、第1の鎖および第2の鎖を含み、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し、b)第1の鎖は、少なくとも9塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基2~7または2~8を含むシード領域を含み、c)第2の鎖は、少なくとも9塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1の反対側に、バルジ配列を含む。一部の実施形態において、RNAiは、人工RNAiである。
【0049】
一部の態様において、本発明は、発現カセット、ベクター(例えば、組換えAAV、アデノウイルス、レンチウイルス、またはHSVベクター)、細胞、ウイルス粒子(例えば、AAV、アデノウイルス、レンチウイルス、またはHSVウイルス粒子)、および本発明の開示のRNAiを含む医薬組成物を提供する。さらなる態様において、本発明は、哺乳動物における疾患または障害を処置するための方法であって、本発明の開示のRNAiを含む医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。さらなる追加の態様において、本発明は、本発明の開示のRNAiを含むキットを提供する。
【0050】
一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を処置するためのRNAiを提供する。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含み、第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し、第2の鎖の配列番号2の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない。一部の態様において、本発明は、本発明の開示のRNAiを含む、発現カセット、ベクター(例えば、組換えAAV、アデノウイルス、レンチウイルス、またはHSVベクター)、細胞、ウイルス粒子(例えば、AAV、アデノウイルス、レンチウイルス、またはHSVウイルス粒子)、および医薬組成物を提供する。さらなる態様において、本発明は、哺乳動物において、ハンチントン病を処置するため、細胞におけるhttの発現を阻害するため、およびhttの蓄積を阻害するための方法であって、本発明の開示のRNAiを含む医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。よりさらなる態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物において、ハンチントン病を処置するため(例えば、ハンチントン病の症状を緩和するため)、httの発現を阻害するため、または細胞におけるhttの蓄積を阻害するための、本発明の開示のRNAiを含む医薬組成物の使用を提供する。さらなる追加の態様において、本発明は、本発明の開示のRNAiを含む、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するためのキットを提供する。
【0051】
I.一般的な技術
本明細書で記載または言及される技術および手順は、一般的によく認識され、当業者により従来の手法を使用して一般的に採用されており、このような手法は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2012);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、2003);Methods in Enzymologyのシリーズ(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.HamesおよびG.R.Taylor編、1995);Antibodies,A Laboratory Manual(HarlowおよびLane編、1988);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique an
d Specialized Applications(R.I.Freshney、第6版、J.Wiley and Sons、2010);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press、1998);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、Plenum Press、1998);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、J.Wiley and Sons、1993~8);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1996);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.Wiley and Sons、2002);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood
Academic Publishers、1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、2011)に記載の広く利用されている手法である。
【0052】
II.定義
「ベクター」は、本明細書で使用される場合、インビトロまたはインビボのいずれかで宿主細胞に送達しようとする核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0053】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で使用される場合、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかのあらゆる長さのヌクレオチドの多量体型を指す。したがって、この用語は、これらに限定されないが、一本鎖、二本鎖もしくは多重鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基を含むポリマー、または他の天然の、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を包含する。ポリヌクレオチドの骨格は、糖およびリン酸基を含んでいてもよいし(典型的にRNAまたはDNAで見出されるように)、または修飾または置換された糖またはリン酸基を含んでいてもよい。代替として、ポリヌクレオチドの骨格は、ホスホロアミデートなどの合成サブユニットのポリマーを含んでいてもよく、したがってオリゴデオキシヌクレオシドホスホロアミデート(P-NH)または混成のホスホロアミデート-リン酸ジエステルオリゴマーであってもよい。加えて、二本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成して適切な条件下で鎖をアニーリングすること、または適切なプライマーでのDNAポリメラーゼを使用して相補鎖をデノボ合成することのいずれかによる、化学合成の一本鎖ポリヌ
クレオチド産物から得ることができる。
【0054】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、同義的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さに限定されない。このようなアミノ酸残基のポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含有していてもよく、そのようなものとしては、これらに限定されないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体、および多量体が挙げられる。全長タンパク質およびそれらのフラグメントはどちらも、この定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化なども包含する。さらに、本発明の目的に関して、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持しさえすれば、ネイティブの配列に対する修飾、例えば欠失、付加、および置換(一般的に保存的な性質を有するもの)を包含するタンパク質も指す。これらの修飾は、例えば部位特異的変異誘発を介して計画的であってもよいし、または例えばPCR増幅によりタンパク質またはエラーを生じる宿主の突然変異を介して偶発的であってもよい。
【0055】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス由来ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターのケースにおいて、組換え核酸に、少なくとも1つの、実施形態においては2つの逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する。
【0056】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つの、実施形態においては2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。このようなrAAVベクターは、好適なヘルパーウイルスに感染した(または好適なヘルパー機能を発現している)宿主細胞、ならびにAAVのrepおよびcap遺伝子産物(すなわちAAVのRepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合、複製して感染性のウイルス粒子にパッケージ化することができる。rAAVベクターが、より大きいポリヌクレオチドに(例えば、染色体中、またはクローニングまたはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター中に)取り込まれる場合、rAAVベクターは、AAVパッケージ化機能および好適なヘルパー機能の存在下で複製およびキャプシド化により「レスキュー」することができる「プロベクター」と称される場合もある。rAAVベクターは、これらに限定されないが、脂質と複合体化した、リポソーム内にカプセル封入された、およびウイルス粒子、特にAAV粒子中にキャプシド化された、プラスミド、直鎖状人工染色体などの多数の形態のいずれかの形態であってもよい。rAAVベクターは、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生成するために、AAVウイルスのキャプシドにパッケージ化することができる。
【0057】
「組換えアデノウイルスベクター」は、少なくとも1つのアデノウイルス逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、アデノウイルス由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態において、組換え核酸に、2つの逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する。このような組換えウイルスベクターは、組換えウイルスゲノムから欠失した必須のアデノウイルス遺伝子(例えば、E1遺伝子、E2遺伝子、E4遺伝子など)を発現している宿主細胞中に存在する場合、複製して感染性のウイルス粒子にパッケージ化することができる。組換えウイルスベクターが、より大きいポリヌクレオチドに(例えば、染色体中、またはクローニングまたはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター中に)取り込まれる場合、組換えウイルスベクターは、アデノウイルスパッケージ化機能の存在下で複製およびキャプシド化により「レスキュー」することができる「プロベクター」と称される場合もある。組換えウイルスベクターは、これらに限定されないが、脂質と複合体化した、リポソーム内にカプセル封入された、およびウイルス粒子、例えばアデノウイルス粒子
中にキャプシド化された、プラスミド、直鎖状人工染色体などの多数の形態のいずれかの形態であってもよい。組換えウイルスベクターは、「組換えアデノウイルス粒子」を生成するために、アデノウイルスウイルスのキャプシドにパッケージ化することができる。
【0058】
「組換えレンチウイルスベクター」は、少なくとも1つのレンチウイルス末端反復配列(LTR)が隣接する1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、レンチウイルス由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態において、組換え核酸に、2つのレンチウイルスの末端反復配列(LTR)が隣接する。このような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパー機能の影響を受けた宿主細胞中に存在する場合、複製して感染性のウイルス粒子にパッケージ化することができる。組換えレンチウイルスベクターは、「組換えレンチウイルス粒子」を生成するために、レンチウイルスのキャプシドにパッケージ化することができる。
【0059】
「組換え単純ヘルペスベクター(組換えHSVベクター)」は、HSV末端反復配列が隣接する1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、HSV由来ではない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。このような組換えウイルスベクターは、好適なヘルパー機能の影響を受けた宿主細胞中に存在する場合、複製して感染性のウイルス粒子にパッケージ化することができる。組換えウイルスベクターが、より大きいポリヌクレオチドに(例えば、染色体中、またはクローニングまたはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター中に)取り込まれる場合、組換えウイルスベクターは、HSVパッケージ化機能の存在下で複製およびキャプシド化により「レスキュー」することができる「プロベクター」と称される場合もある。組換えウイルスベクターは、これらに限定されないが、脂質と複合体化した、リポソーム内にカプセル封入された、およびウイルス粒子、例えばHSV粒子中にキャプシド化されたプラスミド、直鎖状人工染色体などの多数の形態のいずれかの形態であってもよい。組換えウイルスベクターは、「組換え単純ヘルペスウイルス粒子」を生成するために、HSVキャプシドにパッケージ化することができる。
【0060】
「異種」は、比較されるかまたは導入されるかまたは取り込まれる物体の残部の遺伝子型と別個の遺伝子型を有する物体から誘導されたことを意味する。例えば、遺伝子工学技術によって異なる細胞型に導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである(発現される場合、異種ポリペプチドをコードすることができる)。同様に、ウイルスベクターに取り入れられる細胞性の配列(例えば、遺伝子またはそれらの一部)は、そのベクターに関して異種ヌクレオチド配列である。
【0061】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入されて、RNAに転写させることができ、場合により適切な条件下で翻訳および/または発現させることができるポリヌクレオチドを指す。態様において、導入遺伝子は、それが導入される細胞に所望の特性を付与するか、またはそれ以外の方法で所望の治療または診断結果をもたらす。別の態様において、導入遺伝子は、miRNA、siRNA、またはshRNAなどのRNA干渉を媒介する分子に転写することができる。
【0062】
「ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター」は、ニワトリβ-アクチン遺伝子(例えば、GenBankのEntrez遺伝子番号396526で示されるニワトリ(Gallus gallus)ベータアクチン)から誘導されたポリヌクレオチド配列を指す。「ニワトリβ-アクチンプロモーター」は、本明細書で使用される場合、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサーエレメントを含有するプロモーター、ニワトリβ-アクチン遺伝子のプロモーターならびに第1のエクソンおよびイントロン、ならびにウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプター、例えばMiyazaki,J.ら(1989)Gene 79(2):269~77に記載の配列を指す場合がある。用
語「CAGプロモーター」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用される場合がある。用語「CMV初期エンハンサー/ニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用される場合がある。
【0063】
用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価体」、または「ゲノムコピー」は、ウイルス力価への言及で使用される場合、感染力または機能性に関係なく、組換えAAVのDNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター調製物中のゲノム粒子の数は、本明細書の実施例、または例えばClarkら(1999)Hum.Gene Ther.、10:1031~1039;Veldwijkら(2002)Mol.Ther.、6:272~278に記載されるような手順によって測定することができる。
【0064】
用語「ベクターゲノム(vg)」は、本明細書で使用される場合、ベクター、例えばウイルスベクターの一連のポリヌクレオチド配列を含む1つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを指す場合がある。ベクターゲノムは、ウイルス粒子中にキャプシド化されていてもよい。特定のウイルスベクターに応じて、ベクターゲノムは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、または一本鎖RNA、もしくは二本鎖RNAを含んでいてもよい。ベクターゲノムは、特定のウイルスベクターに関連する内因性配列、および/または組換え技術を介して特定のウイルスベクターに挿入されたあらゆる異種配列を包含していてもよい。例えば、組換えAAVベクターゲノムは、プロモーターの端にある少なくとも1つのITR配列、スタッファー、目的の配列(例えば、RNAi)、およびポリアデニル化配列を包含していてもよい。完全なベクターゲノムは、ベクターのポリヌクレオチド配列の完全なセットを包含していてもよい。一部の実施形態において、ウイルスベクターの核酸の力価は、vg/mLを単位として測定することができる。この力価を測定するのに好適な方法は、当業界において公知である(例えば、定量PCR)。
【0065】
用語「阻害する」は、本明細書で使用される場合、特定の標的の存在または活性をブロックする、低減する、消去する、またはそれ以外の方法で拮抗する作用を指す場合がある。阻害は、部分的な阻害または完全な阻害を指す場合がある。例えば、遺伝子の発現を阻害するとは、その遺伝子の発現の遮断、低減、消去、または他のあらゆる拮抗作用、例えばmRNA量の低減(例えば、mRNA転写のサイレンシング)、mRNAの分解、mRNA翻訳の阻害などを引き起こすあらゆる作用を指す場合がある。一部の実施形態において、HTTの発現を阻害するとは、HTTの発現の遮断、低減、消去、または他のあらゆる拮抗作用、例えばHTTのmRNA量の低減(例えば、HTTのmRNA転写のサイレンシング)、HTTのmRNAの分解、HTTのmRNA翻訳の阻害などを指す場合がある。別の例として、細胞中のタンパク質の蓄積を阻害するとは、そのタンパク質の発現の遮断、低減、消去、または他の拮抗作用、例えばmRNA量の低減(例えば、mRNA転写のサイレンシング)、mRNAの分解、mRNA翻訳の阻害、タンパク質の分解などを引き起こすあらゆる作用を指す場合がある。一部の実施形態において、細胞中のHTTタンパク質の蓄積を阻害するとは、細胞中のHTTタンパク質の発現の遮断、低減、消去、または他の拮抗作用、例えばHTTのmRNA量の低減(例えば、HTTのmRNA転写のサイレンシング)、HTTのmRNAの分解、HTTのmRNA翻訳の阻害、HTTタンパク質の分解などを指す。
【0066】
用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」、または「複製単位」は、ウイルス力価への言及で使用される場合、例えばMcLaughlinら(1988)J.Virol.、62:1963~1973に記載されるような、複製中心のアッセイとしても公知の感染中心のアッセイによって測定した場合、感染性および複製能を有する組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0067】
用語「形質導入単位(tu)」は、ウイルス力価への言及で使用される場合、本明細書
の実施例、または例えばXiaoら(1997)Exp.Neurobiol.、144:113~124;またはFisherら(1996)J.Virol.、70:520~532(LFUアッセイ)に記載されるような機能アッセイで測定した場合、機能的な導入遺伝子産物の生産を引き起こす感染性の組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0068】
「逆方向末端反復」または「ITR」配列は、当業界でよく理解されている用語であり、逆方向でウイルスゲノムの末端で見出される相対的に短い配列を指す。
【0069】
「AAV逆方向末端反復(ITR)」配列は、当業界でよく理解されている用語であり、ネイティブの一本鎖AAVゲノムの両方の末端に存在するおよそ145ヌクレオチドの配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、異なるAAVゲノム間および単一のAAVゲノムの2つの末端の間に不均質性をもたらす2つの択一的な方向のいずれかに存在していてもよい。最も外側の125ヌクレオチドはまた、自己相補性を有する数種のより短い領域(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と指定される)も含有し、それによりITRのこの部分内で鎖内の塩基対形成を起こすことが可能になる。
【0070】
「末端分解配列」または「trs」は、ウイルスDNAの複製中にAAVのrepタンパク質によって切断されるAAVのITRのD領域における配列である。突然変異末端分解配列は、AAVのrepタンパク質による切断に対して耐性を有する。
【0071】
「AAVのヘルパー機能」は、AAVを宿主細胞により複製してパッケージ化することを可能にする機能を指す。AAVのヘルパー機能は、これらに限定されないが、AAV複製およびパッケージ化に役立つヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子などの多数の形態のいずれかで提供することができる。他のAAVのヘルパー機能は、遺伝毒性物質などの分野において公知である。
【0072】
AAVのための「ヘルパーウイルス」は、AAV(これは、欠陥パルボウイルスである)を宿主細胞により複製してパッケージ化することを可能にするウイルスを指す。ヘルパーウイルスは、AAVの複製を可能にする「ヘルパー機能」を提供する。このようなヘルパーウイルスが多数同定されており、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルス、例えばワクシニアおよびバキュロウイルスなどが挙げられる。アデノウイルスは、多数の異なるサブグループを包含するが、サブグループCのアデノウイルス5型(Ad5)が最も一般的に使用される。ヒト、ヒト以外の哺乳類および鳥類由来の数多くのアデノウイルスが公知であり、ATCCなどの受託機関より入手可能である。ATCCなどの受託機関より同様に入手可能なヘルペス科のウイルスとしては、例えば、単純疱疹ウイルス(HSV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。AAV複製に関するアデノウイルスのヘルパー機能の例としては、E1A機能、E1B機能、E2A機能、VA機能およびE4orf6機能が挙げられる。受託機関より入手可能なバキュロウイルスとしては、アウトグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)の核多角体病ウイルスが挙げられる。
【0073】
rAAVの調製は、感染性のAAV粒子と感染性のヘルパーウイルス粒子との比率が、少なくとも約10:1;少なくとも約10:1、少なくとも約10:1;または少なくとも約10:1であるかまたはそれより高い場合、ヘルパーウイルスを「実質的に含まない」と述べられる。一部の実施形態において、調製物も、それに相当する量のヘルパーウイルスタンパク質(すなわち、上記のヘルパーウイルス粒子の不純物が崩壊した形態で存在する場合、このようなレベルのヘルパーウイルスの結果として存在すると予想されるようなタンパク質)を含まない。ウイルスおよび/または細胞タンパク質の汚染は、SDSゲルにおけるクーマシー染色バンドの存在(例えば、AAVキャプシドタンパク質
VPl、VP2およびVP3に対応するバンド以外のバンドの出現)として一般的に観察することができる。
【0074】
参照ポリペプチドまたは核酸配列に対する「パーセント(%)配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性が達成されるように配列を並べ、必要に応じてギャップを導入した後の、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一な候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージと定義される。アミノ酸または核酸配列同一性のパーセントを決定する目的のためのアライメントは、当業界における能力の範囲内の様々な方法で、例えば、公共的に利用可能なコンピューターソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987)、増刊30、セクション7.7.18、表7.7.1に記載されるもの、およびBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどを使用して達成することができる。好ましいアライメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software、Pennsylvania)である。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大のアライメントを達成するのに必要なあらゆるアルゴリズムなど、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書に記載の目的のために、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(代替として、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する特定の%アミノ酸配列同一性を有するかまたは含む所与のアミノ酸配列Aと表すこともできる)は、以下のように計算される:100×分数X/Y(式中Xは、そのプログラムのAおよびBのアライメントにおいて、配列アライメントプログラムによって同一なマッチとスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性と等しくないと予想されることが理解される。本明細書に記載の目的のために、所与の核酸配列Dへの、それとの、またはそれに対する所与の核酸配列Cの%核酸配列同一性(代替として、所与の核酸配列Dへの、それとの、またはそれに対する特定の%核酸配列同一性を有するかまたは含む所与の核酸配列Cと表すこともできる)は、以下のように計算される:100×分数W/Z(式中Wは、そのプログラムのCおよびDのアライメントにおいて、配列アライメントプログラムによって同一なマッチとスコア付けされたヌクレオチドの数であり、Zは、D中のヌクレオチドの総数である)。核酸配列の長さCが核酸配列Dの長さに等しくない場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性と等しくないと予想されることが理解される。
【0075】
「単離された」分子(例えば、核酸またはタンパク質)または細胞は、それが、その天然の環境の要素から同定され分離および/または回収されていることを意味する。
【0076】
「有効量」は、臨床結果などの(例えば、症状の緩和、臨床評価項目の達成などの)有益な、または所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回またはそれ以上の投与で投与することができる。病状の観点から、有効量は、疾患を緩和する、安定化する、またはその発症を遅延させるのに十分な量である。
【0077】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、これらに限定されないが、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。ある特定の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0078】
「処置」は、本明細書で使用される場合、有益な、または所望の臨床結果を得るための
アプローチである。本発明の目的に関して、有益な、または所望の臨床結果としては、これらに限定されないが、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患の安定化された(例えば、悪化しない)状況、疾患の拡大(例えば、転移)の予防、疾患進行の遅延または減速、病状の緩和または一時的緩和、および寛解(部分的かまたは完全化かどうかにかかわらず)が挙げられる。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較した生存の延長を意味する場合もある。
【0079】
用語「予防的処置」は、本明細書で使用される場合、個体が、障害を有するかまたは障害を有するリスクを有することがわかっているかまたはその疑いがあるが、障害の症状がないかまたは最小の症状を示す場合の処置を指す。予防的処置を受けている個体は、症状の発病の前に処置される。
【0080】
「ハンチントン病(HD)」は、典型的にはHTT遺伝子(akaハンチンチン、HDまたはIT15)の突然変異によって引き起こされる進行性の脳障害を指す。ハンチントン病は、異常な動き(舞踏病と呼ばれる)、運動機能の段階的な損失、情緒的または精神医学的な疾患、および次第に損なわれていく認知力などの症状によって特徴付けることができる。ほとんどの症状は30代および40代で出現するが、疾患の若年型も観察されている。HDのさらなる説明に関しては、OMIM登録番号143100号を参照されたい。
【0081】
「ハンチンチン(HTT)」は、ハンチントン病のほとんどのケースと関連する遺伝子またはそれらのポリペプチド産物のどちらを指すこともできる。ハンチンチンの正常な機能は、十分に理解されていない。しかしながら、ハンチンチン遺伝子の突然変異は、HDを引き起こすことが公知である。これらの突然変異は、典型的には常染色体優性に遺伝し、HTT遺伝子におけるトリヌクレオチドCAGリピートの拡大をもたらし、Httタンパク質においてポリグルタミン(ポリQ)鎖を生じさせる。
【0082】
「RNAi」は、本明細書で使用される場合、細胞においてRNA干渉を誘導するあらゆるRNA分子を指す場合がある。RNAiの例としては、これらに限定されないが、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、および小ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられる。
【0083】
「miRNA足場」は、(i)RNAiによるノックダウンのための目的の遺伝子を標的化する二本鎖配列、および(ii)内因性miRNAのものと類似したステム-ループ構造を形成する追加の配列を含有するポリヌクレオチドを指す場合がある。RNAiのための目的の遺伝子を標的化する配列(例えば、短い、約20ntの配列)は、miRNA様のステム-ループを作り出す配列、およびポリヌクレオチドがmiRNA様の二次構造に組み立てられたときに、目的の配列と塩基対を形成して、二重鎖を形成する配列にライゲートすることができる。この二重鎖は、本明細書に記載される場合、不完全にハイブリダイズする、例えば、二重鎖は、1つまたはそれ以上の対合していないまたは誤って対合した塩基を含有していてもよい。このポリヌクレオチドがダイサーによって切断されると、この目的の遺伝子を標的化する配列を含有する二重鎖は、巻き戻されて、RISC複合体に取り込まれる可能性がある。miRNA足場は、miRNAそれ自体を指す場合もあるし、またはmiRNAをコードするDNAポリヌクレオチドを指す場合もある。miRNA足場の例は、miR-155配列である(Lagos-Quintana,M.ら(2002)Curr.Biol.12:735~9)。miRNA足場に配列をクローニングするための市販のキットが当業界において公知である(例えば、Life Technologies、Thermo Fisher Scientific;Waltham、MAからのInvitrogen(商標)BLOCK-iT(商標)Pol II miR RNAi発現ベクターキット)。
【0084】
「バルジ」は、本明細書で使用される場合、二重鎖核酸中のそれと反対側の核酸に非相補的な核酸の領域を指す。例えば、バルジは、二重鎖核酸中の反対側の核酸に非相補的な核酸配列であって、バルジに、二重鎖核酸中の反対側の核酸に相補的な核酸の領域が隣接するものを指す場合がある。一部の例において、バルジは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10塩基または10塩基より長い長さのいずれかであり得る。一部の例において、バルジは、誤った対合の結果であってもよいし(例えば、反対側の鎖が非相補的な塩基を含有する)、またはバルジは、対合しないことの結果であってもよい(例えば、反対側の鎖は、バルジに隣接する核酸に相補的な核酸を含むが、反対側の鎖は、バルジと反対側の核酸を含有しない)。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「センス」核酸は、導入遺伝子の全部または一部をコードする配列を含む核酸である。一部の例において、導入遺伝子の場合のmRNAは、センス核酸である。
【0086】
「アンチセンス」核酸は、本明細書で使用される場合、「センス」核酸に相補的な核酸の配列である。例えば、アンチセンス核酸は、導入遺伝子をコードするmRNAに相補的であってもよい。
【0087】
RNAiの「ガイド領域」は、本明細書で使用される場合、典型的には相補性に基づいて、標的mRNAと結合するRNAiの鎖である。相補性を有する領域は、ガイド領域の全部または一部を包含し得る。典型的には、相補性を有する領域は、少なくともシード領域を包含する。多くの場合において、RNAiのアンチセンス領域は、ガイド領域である。
【0088】
本明細書で使用される場合、RNAiの「パッセンジャー領域」、または「非ガイド領域」は、本明細書では同義的に使用されており、ガイド領域に相補的なRNAiの領域である。多くの場合において、RNAiのセンス領域は、パッセンジャー領域である。
【0089】
RNAi(例えば、miRNA)の「シード領域」は、本明細書で使用される場合、マイクロRNAの長さが約1~8ヌクレオチドの領域である。一部の例において、その標的mRNAのシード領域および3’-UTRは、RNAi認識における主要な決定要素であり得る。
【0090】
「オフターゲットの遺伝子サイレンシング」は、本明細書で使用される場合、RNAiのシード領域と意図されないmRNAの3’-UTR中の配列との対合を指し、それらの転写物の翻訳の抑制および不安定化を指示する(例えば、意図されないmRNAの発現を低減する)。
【0091】
本明細書における値またはパラメーターに「関して」という言及は、その値またはパラメーターそれ自体を対象とした実施形態を包含する(説明する)。例えば、「Xに関して」と言及されている説明は、「X」の説明を包含する。
【0092】
単数形の冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、複数形の指示対象も包含する。
【0093】
本明細書に記載の発明の態様および実施形態は、態様および実施形態を「含む」、「からなる」、および/または「本質的にからなる」ことを包含することが理解される。
【0094】
III.RNAi
一部の態様において、本発明は、改善されたRNAiを提供する。一部の実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または小ヘアピンRNA(shRNA)である。低分子阻害性または干渉RNA(siRNA)は、長さがおよそ19~25(例えば、19~23)塩基対の、細胞中でRNAiを誘導する二本鎖RNA分子として当業界で公知である。小ヘアピンRNA(shRNA)は、短いループ(例えば、約4~11ヌクレオチド)によって連結された二本鎖RNAのおよそ19~25(例えば、19~23)塩基対を含む、細胞中でRNAiを誘導するRNA分子として当業界で公知である。
【0095】
マイクロRNA(miRNA)は、ループによって連結された二本鎖RNAの短い(例えば、19~25塩基対の)配列を含み、1つまたはそれ以上のバルジ(例えば、誤って対合したまたは対合していない塩基対)を含む二本鎖RNAの1つまたはそれ以上の追加の配列を含有する、細胞中でRNAiを誘導するRNA分子として当業界で公知である。用語「miRNA」は、本明細書で使用される場合、内因性miRNAに加えて、外因性または異種miRNAも包含する。一部の実施形態において、「miRNA」は、プリmiRNAまたはプレmiRNAを指す場合がある。miRNAのプロセシング中に、プリmiRNAの転写が起こる。プリmiRNAは、ドローシャ-DGCR8によってプロセシングされて、5’フランキング領域、ガイド鎖、ループ領域、非ガイド鎖、および3’フランキング領域;または5’フランキング領域、非ガイド鎖、ループ領域、ガイド鎖、および3’フランキング領域を有するプレmiRNAが残るように1つまたはそれ以上の配列を切り出すことによってプレmiRNAが生産される。次いでプレmiRNAは細胞質に運び出され、ダイサーによってプロセシングされて、ガイド鎖および非ガイド(またはパッセンジャー)鎖を有するsiRNAが生じる。次いでガイド鎖は、RISC複合体によって使用され、例えばガイド鎖に相補的な標的RNA配列を認識することによって遺伝子サイレンシングを触媒する。miRNAのさらなる説明は、例えば、WO2008/150897で見出すことができる。miRNAによる標的配列の認識は、主として、標的と、miRNAのシード配列、例えばガイド鎖のヌクレオチド1~8(5’から3’)との対合によって決定される(例えば、Boudreau,R.L.ら(2013)Nucleic Acids Res.41:e9を参照)。
【0096】
プリ/プレmiRNA構造において、二重鎖中のガイド鎖:非ガイド鎖の境界は、部分的に相補的な塩基対形成(例えば、ワトソン-クリック塩基対形成)を介して形成される。しかしながら、一部の実施形態において、この相補的な塩基対形成は、二重鎖全体に及ばない。一部の実施形態において、境界中のバルジは、1つまたはそれ以上のヌクレオチド位置に存在し得る。用語「バルジ」は、本明細書で使用される場合、二重鎖中でそれと反対側の核酸に非相補的な核酸の領域を指す場合がある。一部の実施形態において、バルジは、中央の非相補的領域の領域は結合しないが、相補的核酸の領域が互いに結合するときに形成される。一部の実施形態において、バルジは、2つの相補的領域間に位置する核酸の2つの鎖が異なる長さを有する場合に形成される。後述するように、バルジは、1つまたはそれより多くのヌクレオチドであり得る。
【0097】
miRNAのプロセシング中に、miRNAは、ガイド鎖:非ガイド鎖の境界に隣接する切断部位で切断されることにより、ガイドおよび非ガイド鎖のsiRNA二重鎖を放出する。一部の実施形態において、miRNAは、切断部位に隣接するセンスまたはアンチセンス鎖中にバルジを含む。言い換えれば、一部の実施形態において、miRNAは、シード配列に隣接するガイドまたは非ガイド鎖中にバルジを含む。この位置におけるバルジは、図9Bに示される例示的な実施形態において、矢印で示される。
【0098】
一部の実施形態において、miRNAは、成熟非ガイド鎖の5’切断部位と反対側のガイド鎖中に、バルジを含む。一部の実施形態において、miRNAは、非ガイド鎖の5’
ヌクレオチドと反対側に、バルジを含む。一部の実施形態において、miRNAは、成熟ガイド鎖の3’切断部位と反対側のセンス鎖中に、バルジを含む。一部の実施形態において、miRNAは、ガイド鎖の3’ヌクレオチドと反対側に、バルジを含む。
【0099】
一部の実施形態において、RNAiは、第1の鎖および第2の鎖を含み、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し;b)第1の鎖は、少なくとも11塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基1~Nを含むシード領域を含み、N=7またはN=8であり;c)第2の鎖は、少なくとも11塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~(N+2)のいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含む。一部の実施形態において、N=7であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7、8、または9の反対側にある。他の実施形態において、N=8であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の反対側にある。
【0100】
一部の実施形態において、RNAiは、第1の鎖および第2の鎖を含み、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し;b)第1の鎖は、少なくとも10塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基1~Nを含むシード領域を含み、N=7またはN=8であり;c)第2の鎖は、少なくとも10塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~(N+1)のいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含む。一部の実施形態において、N=7であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7、または8の反対側にある。他の実施形態において、N=8であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7、8、または9の反対側にある。
【0101】
一部の実施形態において、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~Nのいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含む。一部の実施形態において、N=7であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6または7の反対側にある。他の実施形態において、N=8であり、バルジは、ガイド領域の塩基1、2、3、4、5、6、7または8の反対側にある。
【0102】
一部の実施形態において、RNAiは、第1の鎖および第2の鎖を含み、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し、b)第1の鎖は、少なくとも9塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基2~7または2~8を含むシード領域を含み、c)第2の鎖は、少なくとも9塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1または塩基9の反対側に、バルジ配列を含む。
【0103】
一部の実施形態において、RNAiは、第1の鎖および第2の鎖を含み、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し、b)第1の鎖は、少なくとも9塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基2~7または2~8を含むシード領域を含み、c)第2の鎖は、少なくとも9塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1の反対側に、バルジ配列を含む。
【0104】
一部の実施形態において、バルジは、ガイド領域における相補的な塩基が欠失した、二重鎖中の非ガイド鎖の1つまたはそれ以上の塩基によって形成され、バルジに、ガイド鎖と対合する塩基が隣接する。一部の実施形態において、バルジ配列は、約1~10ヌクレオチドを有する。一部の実施形態において、バルジ配列は、約2~15ヌクレオチドを有する。一部の実施形態において、バルジ配列は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、または約15ヌクレオチドを有する。
【0105】
RNAiベースの療法の安全性は、意図されないmRNAに結合してそれらの発現を低減する低分子阻害性RNA(siRNA)の能力、すなわちオフターゲットの遺伝子サイレンシングとして公知の作用によって妨害される。オフターゲティングは、主として、シード領域(低分子RNAのヌクレオチド2~8)が意図されないmRNAの3’-UTR中の配列と対合して、それらの転写物の翻訳の抑制および不安定化を指示するときに起こる。オフターゲティングが低減されたRNAiは、ガイドおよび非ガイド配列内の塩基を置換すること;例えばCpGモチーフを作り出すことによって、設計することができる。より有意に低いオフターゲットスコアをもたらす可能性がある置換は、SiSPOTRアルゴリズム、すなわちオフターゲティングの可能性および有力なサイレンシング能力が最小の候補配列を同定する特異性に焦点を当てたsiRNA設計アルゴリズムを使用して評価することができる(Boudreauら、Nucleic Acids Res.2013年1月;41(1)e9。SiSPOTRスコアの低減は、親のRNAi分子比較してより少数の可能性のあるヒトのオフターゲットを有する配列を予測する。本発明の一部の実施形態において、RNAiは、オフターゲットの遺伝子サイレンシングを低減するように改善されている。一部の実施形態において、RNAiは、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。一部の実施形態において、RNAiは、シード領域中に1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。
【0106】
一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNA(例えば、RNAリンカー)によって連結されている。一般的に当業界で公知のように、RNAループ構造(例えば、ステム-ループまたはヘアピン)は、RNA分子が、一緒に塩基対を形成しないRNA配列によって隔てられた一緒に塩基対形成する2つのRNA配列を含む場合に形成される。例えば、配列AおよびCが一緒に塩基対形成するようにそれらは相補的であるかまたは部分的に相補的であるが、配列B中の塩基は一緒に塩基対を形成しない場合、RNA分子A-B-Cでループ構造が形成される可能性がある。
【0107】
一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、4~50ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、13ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、ループを形成することが可能なRNA中のヌクレオチドの数は、4~50ヌクレオチドまたはその間のあらゆる整数である。一部の実施形態において、ループの0~50%が、ループの別の部分に相補的であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「ループ構造」は、核酸の2つの相補鎖をつなぐ配列である。一部の実施形態において、ループ構造の1~3ヌクレオチドは核酸の相補鎖に隣接しており、ループ構造の遠位部分の1~3ヌクレオチドに相補的であってもよい。例えば、ループ構造の5’末端における3つのヌクレオチドは、ループ構造の3’末端における3つのヌクレオチドに相補的であってもよい。
【0108】
一部の実施形態において、本発明の開示のRNAiをコードする核酸は、異種miRNA足場を含む。一部の実施形態において、異種miRNA足場の使用は、miRNA発現を調節する;例えば、miRNA発現を増加させる、またはmiRNA発現を減少させるために使用される。当業界において公知のあらゆるmiRNA足場を使用することができる。一部の実施形態において、miRNA足場は、miR-155足場から誘導される(例えば、Lagos-Quintana,M.ら(2002)Curr.Biol.12:735~9およびLife Technologies、Thermo Fisher
Scientific;Waltham、MAからのInvitrogen(商標)BLOCK-iT(商標)Pol II miR RNAi発現ベクターキットを参照)。
【0109】
IV.ハンチントン病およびその実験モデル
ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン遺伝子(HTT)のエクソン1におけるCA
Gリピートの拡大によって引き起こされる遺伝性神経変性疾患である。結果生じたN末端領域中のポリグルタミン鎖の伸長は、突然変異ハンチンチンタンパク質(mHtt)に毒性の機能獲得をもたらす。mHttの毒性は、不溶性mHttを含有する凝集体の形成、転写調節異常、およびタンパク質ホメオスタシスにおける不安定さに起因する可能性があり、これらは全て、ニューロンの死によって引き起こされる可能性がある(Saudouら(1998)Cell、95:55~66;Zuccatoら(2003)Nat.Genet.35:76~83;Schaffarら(2004)Mol.Cell.15:95~105;Bennら、(2008)J.Neurosci.28:10720~10733)。HDを有する患者における病理学的所見としては、皮質が薄くなること、および線条体ニューロンの著しい進行性消失が挙げられる(Rosasら、(2002)Neurology 58:695~701)。疾患の発病は、典型的には、人生の30代から40代の間に起こり、症状としては、舞踏病に似た動き、協調の損失、進行性認知症、および他の精神医学的障害が挙げられる(Vonsattelら、(1985)J.Neuropathol.Exp.Neurol.44:559~577)。ほとんどの場合、症状は、30歳から40歳の間に、運動技能、認知、および人格の潜行性の崩壊を伴って出現し始める。時間が経つにつれて、これらは、ぎくしゃくしたコントロール不可能な動きおよび筋肉のコントロールの損失、認知症、ならびにうつ病などの精神医学的な疾患、攻撃性、不安、ならびに強迫行動に進む。典型的には、症状発病から10~15年後に死に至る。HDのケースの10%未満は、より速い疾患の進行を特徴とする疾患の若年発症型を含む。米国人10,000人中およそ1人が、HDを有すると考えられる。
【0110】
ほぼ20年にわたりHDの遺伝学的基礎が認識されるようになってきたが、現行の療法は主として緩和的なものであり、疾患の根本的な原因に対処していない。これは、この疾患の原因論は複雑であり、多種多様の細胞プロセスで有害作用が観察されているという事実に一部起因する可能性が高い。したがって、医薬開発の焦点は、主要な厄介な誘因、すなわち突然変異HTT遺伝子それ自体に対処することに向けられてきた。
【0111】
HDのほとんどのケースは、HTT遺伝子におけるトリヌクレオチドCAGリピートの拡大に関連している。HTT遺伝子におけるCAGリピートの数は、HDの症状発現と強く相関する。例えば、35個またはそれ未満のリピートを有する個体は、典型的にはHDを発症しないが、27~35個のリピートを有する個体は、子孫がHDを有するより高いリスクを有する。36から40~42個のリピートを有する個体は、HDの不完全浸透を示し、それに対して40~42個より多くのリピートを有する個体は、完全浸透を示す。若年発症HDのケースは、60またはそれより多くのCAGリピートのサイズに関連する可能性がある。
【0112】
このCAGリピートの拡大の結果生じるポリQが拡大したHttタンパク質は、細胞の凝集体または封入体、タンパク質ホメオスタシスにおける不安定さ、および転写調節異常と関連する。これらの毒性の表現型は体の数々の部分と関連し得るが、最も典型的には、これらはニューロン性細胞の死と関連する。HD患者は、皮質が薄くなること、および線条体ニューロンの著しい進行性消失を示すことが多い。線条体は、脳中のHDに対して最も弱い領域(特に線条体の中型有棘ニューロン)と考えられており、初期の作用は被殻および尾状核で見られる。HD患者の脳では、線条体の有棘ニューロンにおける細胞死、星状細胞数の増加、および小グリア細胞の活性化が観察されている。またHDは、海馬、大脳皮質、視床、視床下部、および小脳の特定の領域に影響を与える可能性もある。
【0113】
Htt発現をブロックするための提唱されているアプローチとしては、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の使用に加えて、二重鎖RNA(dsRNA)または化学修飾された一本鎖RNA(ssRNA)のいずれかを使用するRNA干渉(RNAi)が挙げられる(Harperら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 102:5820~5825;DiFigliaら、(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:17204~17209;Boudreauら、(2009b)Mol.Ther.17:1053~1063;Drouetら、(2009)Ann.Neurol.65:276~285;Sahら、(2011)J.Clin.Invest.121:500~507;Matsuiら、(2012)Drug Discov.Today 17:443~450;Yuら、(2012)Cell
150:895~908)。しかしながら、ASOアプローチを診療施設に転用することへの障害としては、ASOのCNSへの繰り返しの長期にわたる点滴を容易にするためのデバイスを取り入れる必要があること、および大脳中の標的領域に薬物を適切に分布させる必要があることを挙げることができる。
【0114】
これらの起こり得るASOに関する問題を回避するために、安全性の増加、効率の増加、およびより長く続く効能をもたらす可能性があるRNAi(例えば、siRNA)のAAV媒介発現を採用することが有利な場合がある。HD患者は突然変異および野生型Htt対立遺伝子の両方を発現するため、siRNA標的配列の大部分は、両方の対立遺伝子を分解させる可能性が高いと予想される。しかしながら、HDマウスにおける対立遺伝子特異的ではないHttサイレンシングは、十分許容されることが示されており、突然変異Htt単独を低減するのと同じ利益をもたらすことができる(Boudreauら、(2009b)Mol.Ther.17:1053~1063;Drouetら、(2009)Ann.Neurol.65:276~285;Kordasiewiczら、(2012)Neuron 74(6):1031~1044)。さらに、AAV媒介RNAi後の非ヒト霊長類の被殻における野生型Httの部分的および持続的な抑制は、いかなる不都合な作用も有さなかったことが報告されており、これは、成体の脳は、低下したレベルの野生型Httを許容できることを示唆する(McBrideら、(2011)Mol.Ther.19:2152~2162;Grondinら、(2012)Brain 135:1197~1209)。
【0115】
考えられる治療戦略、例えば本発明の開示の組成物および方法を試験するために、HDの動物モデルを使用することができる。HDのマウスモデルが当業界において公知である。そのようなものとしては、突然変異HTTのフラグメントを有するマウスモデル、例えばR6/1およびN171-82Q HDマウスが挙げられる(Harperら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:5820~5825、Rodriguez-Lebronら、(2005)Mol.Ther.12:618~633、Machidaら、(2006)Biochem.Biophys.Res.Commun.343:190~197)。本明細書に記載のマウスHDモデルの別の例は、YAC128マウスモデルである。このモデルは、128個のCAGリピートを有する突然変異ヒトHTT遺伝子を発現する酵母人工染色体(YAC)を有し、YAC128マウスは、12月齢までに線条体において顕著な広範にわたるHtt凝集体の蓄積を示す(Slowら、(2003)Hum.Mol.Genet.12:1555~1567、Pouladiら、(2012)Hum.Mol.Genet.21:2219~2232)。
【0116】
HDの他の動物モデルも使用することができる。例えば、トランスジェニックラット(von Horsten,S.ら(2003)Hum.Mol.Genet.12:617~24)およびアカゲザル(Yang,S.H.ら(2008)Nature 453:921~4)モデルが説明されている。非遺伝的モデルも公知である。これらは、ほとんどの場合、げっ歯類または非ヒト霊長類において線条体ニューロンの細胞死を誘導するための、興奮毒性の化合物(例えばキノリン酸またはカイニン酸)またはミトコンドリアの毒素(例えば3-ニトロプロピオン酸およびマロン酸)の使用を含む(さらなる説明および参考文献については、Ramaswamy,S.ら(2007)ILAR J.48
:356~73を参照)。
【0117】
V.ハンチントン病を処置するための方法
一部の態様において、本発明は、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するための方法および組成物であって、本発明の開示の医薬組成物(例えば、本発明の開示のウイルス粒子を含む医薬組成物)を哺乳動物に投与することを含む、方法および組成物を提供する。一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法および組成物であって、本発明の開示の医薬組成物(例えば、本発明の開示のウイルス粒子を含む医薬組成物)を哺乳動物に投与することを含む、方法および組成物を提供する。一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法および組成物であって、本発明の開示の医薬組成物(例えば、本発明の開示のウイルス粒子を含む医薬組成物)を哺乳動物に投与することを含む、方法および組成物を提供する。
【0118】
一部の態様において、本発明は、HDの症状を緩和するための方法および組成物であって、本発明の開示のRNAiをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を哺乳動物の脳に投与することを含む、方法および組成物を提供する。一部の実施形態において、HDの症状としては、これらに限定されないが、舞踏病、硬直、コントロール不可能な体の動き、筋肉コントロールの損失、協調運動障害、情動不安、眼球運動の遅延、異常な身振り、不安定さ、失調歩行、異常な顔の表情、言語障害、咀嚼および/または嚥下の困難さ、睡眠障害、発作、認知症、認知障害(例えば、計画、抽象的思考、柔軟性、ルール獲得、対人感受性、自己コントロール、注意力、学習、および記憶に関する能力の減退)、うつ病、不安、人格の変化、攻撃性、強制行動、強迫行動、性欲過剰、精神病、無感動、興奮性、自殺念慮、体重の減少、筋萎縮、心不全、グルコース耐性の低下、精巣萎縮、および骨粗鬆症が挙げられる。
【0119】
一部の態様において、本発明は、HDの進行を予防するかまたは遅延させる方法を提供する。常染色体優性のHDは、遺伝子型解析することが可能な遺伝病である。例えば、HTT中のCAGリピートの数は、PCRベースのリピートのサイジングによって決定することができる。このタイプの診断は、人生のあらゆる段階で、若い個体または成体を直接試験すること(例えば、臨床症状の出現に合わせて)、出生前スクリーニングまたは出生前除外の検査(例えば、絨毛膜絨毛のサンプリングまたは羊水穿刺によって)、または胎芽の着床前スクリーニングを介して実行することができる。そのようなものとして、本明細書に記載の方法は、症状の発現前に診断を行うことができるため、HDの予防的処置として使用することができる。例えば、HDを遺伝子検査(出生前検査、出生時検査など)によって診断し、症状の発現(例えば、CNS細胞の損失)の前に予防的に処置して(例えば、本明細書に記載のrAAV粒子を使用して)、HDの症状の発現および/または進行を予防することができる。加えて、HDは、脳を撮像して、尾状核および/もしくは被殻の縮小ならびに/または空洞の拡大を探すことによって診断することができる。これらの症状は、HDの家族歴および/または臨床症状と組み合わせて、HDを示す可能性がある。
【0120】
HDの症状の緩和を決定するための手段は、当業界において公知である。例えば、ハンチントン病統一評価尺度(Unified Huntington’s Disease
Rating Scale;UHDRS)を使用して、運動機能、認知機能、行動異常、および機能的能力を評価することができる(例えば、Huntington Study Group (1996) Movement Disorders 11:136~42を参照)。この評価尺度は、HD日常生活動作尺度(HD Activities
and Daily Living Scale)、マースデンおよびクインの舞踏病重症度尺度(Marsden and Quinn’s chorea severit
y scale)、身体障害および自立性の尺度(Physical Disability and Independence scale)、HD運動性評価尺度(HD motor rating scale;HDMRS)、HD機能的能力尺度(HD functional capacity scale;HDFCS)、および定量的神経学的検査(quantitated neurological exam;QNE)などの試験からの要素を取り入れた、疾患の病理の様々な側面に関する一律の包括的試験を提供するために開発された。HDの症状の緩和を決定するのに有用な他の試験としては、これらに限定されないが、モントリオール認知評価検査(Montreal Cognitive Assessment)、脳の撮像(例えば、MRI)、カテゴリー流暢性検査(Category Fluency Test)、トレイルメイキングテスト、マップサーチ、ストループの文字読み取り検査(Stroop Word Reading Test)、加速タッピング課題(Speeded Tapping Task)、および符号数字モダリティー検査(Symbol Digit Modalities Test)を挙げることができる。
【0121】
本発明の一部の態様において、本方法および本組成物は、HDを有するヒトを処置するために使用される。上述したように、HDは、常染色体優性の方式で遺伝し、HTT遺伝子におけるCAGリピートの拡大によって引き起こされる。若年発症HDは、ほとんどの場合、父方から遺伝する。ハンチントン病様の表現型はまた、他の遺伝子座、例えばHDL1、PRNP、HDL2、HDL3、およびHDL4との相関も示されてきた。GRIN2A、GRIN2B、MSX1、GRIK2、およびAPOE遺伝子における突然変異など、他の遺伝子座がHDの症状の発現を改変する可能性があると考えられる。
【0122】
一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物においてhttのmRNAを標的化するための改善されたRNAiを提供する。一部の実施形態において、RNAiは、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含み、第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し、第2の鎖の配列番号2の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない。本明細書に記載のRNAi(例えば、rAAVベクターの一部として)は、とりわけハンチントン病の処置において用途を見出すことができる。
【0123】
本発明の一部の実施形態において、RNAiは、オフターゲットの遺伝子サイレンシングを低減するように改善されている。一部の実施形態において、RNAiは、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。一部の実施形態において、RNAiは、シード領域中に1つまたはそれ以上のCpGモチーフを含む。
【0124】
一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するための方法であって、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法であって、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、
ハンチントン病を有する哺乳動物の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法であって、配列5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号15)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCGAA-3’(配列番号16)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、第1の鎖は、配列番号15に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高い同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。一部の実施形態において、第2の鎖は、配列番号16に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高い同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。
【0125】
一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するための方法であって、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法であって、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法であって、配列5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号17)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUCGUCUAA-3’(配列番号18)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを哺乳動物に投与することを含み、第2の鎖の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、第1の鎖は、配列番号17に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高い同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。一部の実施形態において、第2の鎖は、配列番号18に対して、約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれかより高い同一性を有する核酸配列を含むが、CpGモチーフを維持する。
【0126】
一部の実施形態において、RNAiは、低分子阻害性RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または小ヘアピンRNA(shRNA)である。低分子阻害性または干渉RNA(siRNA)は、長さがおよそ19~25(例えば、19~23)塩基対の、細胞中でRNAiを誘導する二本鎖RNA分子として当業界で公知である。小ヘアピンRNA(shRNA)は、短いループ(例えば、約4~11ヌクレオチド)によって連結された二本鎖RNAのおよそ19~25(例えば、19~23)塩基対を含む、細胞中でRNAiを誘導するRNA分子として当業界で公知である。
【0127】
一部の実施形態において、miRNAは、配列番号1と約90%同一なガイド配列を含む。一部の実施形態において、miRNAは、配列番号1に、約90%同一、91%同一、92%同一、93%同一、94%同一、95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、99%同一、または100%同一のいずれかであるガイド配列を含む。
【0128】
一部の実施形態において、miRNAは、配列番号2と約90%同一な非ガイド配列を
含む。一部の実施形態において、miRNAは、配列番号2に、約90%同一、91%同一、92%同一、93%同一、94%同一、95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、99%同一、または100%同一のいずれかである非ガイド配列を含む。
【0129】
一部の実施形態において、第1の核酸の配列番号1の残基11および12におけるU残基は、第2の鎖中の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、二重鎖は、18~25塩基対の長さである。一部の実施形態において、第1および/または第2の鎖は、3’オーバーハング領域、5’オーバーハング領域、または3’および5’オーバーハング領域の両方をさらに含む。一部の実施形態において、本発明は、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiならびにそれらの使用のための方法および組成物であって、第1の鎖および第2の鎖は二重鎖を形成し、配列番号2の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成せず、第1の核酸の配列番号1の残基11および12におけるU残基は、第2の鎖中の残基と塩基対を形成しない、RNAiならびにそれらの使用のための方法および組成物を提供する。
【0130】
一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は、ループ構造を形成することが可能なRNAによって連結されている。一般的に当業界で公知のように、RNAループ構造(例えば、ステム-ループまたはヘアピン)は、RNA分子が、一緒に塩基対を形成しないRNA配列によって隔てられた一緒に塩基対形成する2つのRNA配列を含む場合に形成される。例えば、配列AおよびCが一緒に塩基対形成するようにそれらは相補的であるかまたは部分的に相補的であるが、配列B中の塩基は一緒に塩基対を形成しない場合、RNA分子A-B-Cでのループ構造が形成される可能性がある。
【0131】
一部の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、4~50ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、13ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、ループ構造を形成することが可能なRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、配列番号13の配列に、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のいずれかであるヌクレオチド配列を含む。
【0132】
一部の態様において、本発明は、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiを、哺乳動物(例えば、HDを有する哺乳動物)に投与することを含む方法であって、配列番号2の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない、方法を提供する。一部の実施形態において、第1の核酸の配列番号1の11位および12位におけるU残基は、第2の鎖の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、配列番号2の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成せず、第1の核酸の配列番号1の11位および12位におけるU残基は、第2の鎖の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、RNAiを含む。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、rAAVベクターをキャプシド化するAAV粒子、組換えアデノウイルスベクターをキャプシド化するアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルスベクターをキャプシド化するレンチウイルス粒子、または組換えHSVベクターをキャプシド化するHSV粒子であり、rAAVベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはHSVベクターは、RNAiをコードする。
【0133】
一部の実施形態において、組換えウイルス粒子の送達は、脳へのウイルス粒子の注射によってなされる。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子の送達は、線条体へのウイルス粒子の注射によってなされる。線条体内投与は、高度にHDの影響を受けている脳、線条体(被殻および尾状核を包含する)の領域に、組換えウイルス粒子を送達することである。それに加えて、理論に縛られることは望まないが、線条体に注射された組換えウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)は、これらに限定されないが、投射野(例えば、皮質)などの脳の他の領域に(例えば、逆行性輸送を介して)分散させることもできると考えられる。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、対流強化送達(例えば、線条体への対流強化送達)によって送達される。
【0134】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物におけるハンチントン病を処置するための方法であって、本発明の開示の医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物の細胞におけるhttの蓄積を阻害するための方法であって、本発明の開示の医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。一部の態様において、本発明は、ハンチントン病を有する哺乳動物におけるhttの発現を阻害するための方法であって、本発明の開示の医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、httは、突然変異htt(例えば、35個より多く、36個より多く、37個より多く、38個より多く、39個より多く、40個より多く、41個より多く、または42個より多くのCAGリピートを含むhtt)である。一部の実施形態において、野生型httの発現および/または蓄積も阻害される。本明細書に記載される場合、理論に縛られることは望まないが、HDを有する哺乳動物における突然変異httの発現および/または蓄積の阻害は、大いに有益であるが、副作用(例えば、本発明の開示のRNAiの)としての同じ哺乳動物における野生型httの発現および/または蓄積の阻害は、十分許容される可能性がある(例えば、意図されない副作用をほとんどまたは全く引き起こさない)と考えられる。
【0135】
一部の実施形態において、細胞は、ベクター(例えば、本発明の開示のRNAiをコードする発現コンストラクトを含むベクター)を含む。一部の実施形態において、ベクターは、rAAVベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクターまたは組換え単純疱疹ウイルス(HSV)ベクターである。一部の実施形態において、細胞は、中枢神経系(CNS)細胞である。
【0136】
一部の実施形態において、本発明の開示のRNAiをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を投与することにより、投与部位かまたはその近くでニューロン(例えば、有棘ニューロンなどの線条体ニューロン)が形質導入される。一部の実施形態において、ニューロンの約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または100%のいずれかより多くが形質導入される。一部の実施形態において、ニューロンの約5%~約100%、約10%~約50%、約10%~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%が形質導入される。miRNAを発現する組換えウイルス粒子が形質導入されたニューロンを同定する方法は、当業界において公知であり;例えば、免疫組織化学、RNA検出(例えば、qPCR、ノーザンブロッティング、RNA-seq、インサイチュハイブリダイゼーションなど)または強化緑色蛍光タンパク質などの共発現されたマーカーの使用が、発現を検出するのに使用することができる。
【0137】
本発明の一部の実施形態において、本方法は、HDを有する哺乳動物、例えばヒトを処置するための本発明の開示のRNAiをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子の有効量を哺乳動物の脳に投与することを含む。一部の実施形態において、組成物は、脳中の1つまたはそれ以上の場所に注射されて、少なくともそのニューロン中で本発明の開示
のRNAiを発現させる。一部の実施形態において、組成物は、脳中の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のいずれか1つまたは10個より多くの場所に注射される。一部の実施形態において、組成物は、線条体に注射される。一部の実施形態において、組成物は、背面の線条体に注射される。一部の実施形態において、組成物は、被殻に注射される。一部の実施形態において、組成物は、尾状核に注射される。一部の実施形態において、組成物は、被殻および尾状核に注射される。
【0138】
一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、脳の一方の半球に投与される。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、脳の両方の半球に投与される。
【0139】
一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、1つより多くの場所に同時または逐次的に投与される。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子の複数回の注射は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間または24時間以下の間隔があけられる。
【0140】
一部の実施形態において、本発明は、本発明の開示のRNAiをコードする組換えウイルスベクターを含む医薬組成物の有効量を投与して、突然変異HTTの活性を抑制することによる、HDを有するヒトを処置するための方法を提供する。一部の実施形態において、医薬組成物は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0141】
一部の実施形態において、本方法は、本発明の開示のRNAiをコードする組換えウイルスベクターを含む医薬組成物の有効量を投与して、突然変異HTTの活性を抑制することを含む。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、少なくとも約5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、10×1012、11×1012、15×1012、20×1012、25×1012、30×1012、または50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、約5×1012~6×1012、6×1012~7×1012、7×1012~8×1012、8×1012~9×1012、9×1012~10×1012、10×1012~11×1012、11×1012~15×1012、15×1012~20×1012、20×1012~25×1012、25×1012~30×1012、30×1012~50×1012、または50×1012~100×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、約5×1012~10×1012、10×1012~25×1012、または25×1012~50×1012ゲノムコピー/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、少なくとも約5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、10×10、11×10、15×10、20×10、25×10、30×10、または50×10形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、約5×10~6×10、6×10~7×10、7×10~8×10、8×10~9×10、9×10~10×10、10×10~11×10、11×10~15×10、15×10~20×10、20×10~25×10、25×10~30×10、30×10~50×10または50×10~100×10形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、約5×10~10×10、10×10~15×10、15×10~25×10、または25×10~50×10形質導入単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、少なくとも約5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、10×1010、11×1010、15×1010、20×1010、25×1010、30×
1010、40×1010、または50×1010感染単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、少なくとも約5×1010~6×1010、6×1010~7×1010、7×1010~8×1010、8×1010~9×1010、9×1010~10×1010、10×1010~11×1010、11×1010~15×1010、15×1010~20×1010、20×1010~25×1010、25×1010~30×1010、30×1010~40×1010、40×1010~50×1010、または50×1010~100×1010感染単位/mLのいずれかである。一部の実施形態において、ウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)のウイルスの力価は、少なくとも約5×1010~10×1010、10×1010~15×1010、15×1010~25×1010、または25×1010~50×1010感染単位/mLのいずれかである。
【0142】
一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重1kg当たり少なくとも約1×10~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の用量は、体重1kg当たり約1×10~約1×1013ゲノムコピーのいずれかである。
【0143】
一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の総量は、少なくとも約1×10~約1×1014ゲノムコピーのいずれかである。一部の実施形態において、個体に投与されるウイルス粒子の総量は、約1×10~約1×1014ゲノムコピーのいずれかである。
【0144】
本発明の一部の実施形態において、線条体に注射される組成物の体積は、約1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、もしくは1mLのいずれか1つ、またはその間のいずれかの量より多くである。
【0145】
一部の実施形態において、組成物の第1の体積が、脳の第1の領域に注射され、組成物の第2の体積が、脳の第2の領域に注射される。例えば、一部の実施形態において、組成物の第1の体積が、尾状核に注射され、組成物の第2の体積が、被殻に注射される。一部の実施形態において、組成物の1Xの体積が、尾状核に注射され、組成物の1.5X、2X、2.5X、3X、3.5X、または4Xの体積が、被殻に注射され、ここでXは、約1μl、2μl、3μl、4μl、5μl、6μl、7μl、8μl、9μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、75μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、もしくは1mLのいずれか1つ、またはその間のいずれかの量より多くの体積である。
【0146】
本発明の組成物(例えば、本発明の開示のRNAiをコードするベクターを含む組換えウイルス粒子)は、単独で、またはHDを処置するための1つまたはそれ以上の追加の治療剤と組み合わせてのいずれかで使用することができる。逐次的な投与間の間隔は、少なくとも数分、数時間、または数日(または代替としてそれ未満)の単位であってもよい。
【0147】
V.RNAi発現コンストラクトおよびベクター
本発明は、本明細書に記載のRNAiの発現のための発現コンストラクト、ベクターおよびウイルス粒子を提供する。
【0148】
一部の実施形態において、本発明の開示のRNAiをコードする核酸は、異種miRNA足場を含む。一部の実施形態において、異種miRNA足場の使用は、miRNA発現を調節する;例えば、miRNA発現を増加させるか、またはmiRNA発現を減少させ
るのに使用される。当業界において公知のあらゆるmiRNA足場を使用することができる。一部の実施形態において、miRNA足場は、miR-155足場から誘導される(例えば、Lagos-Quintana,M.ら(2002)Curr.Biol.12:735~9およびLife Technologies、Thermo Fisher
Scientific;Waltham、MAからのInvitrogen(商標)BLOCK-iT(商標)Pol II miR RNAi発現ベクターキットを参照)。一部の実施形態において、本発明の開示のRNAiをコードする核酸は、miRNA足場を含む。一部の実施形態において、miRNA足場は、配列番号14によって提供される。
【0149】
一部の実施形態において、RNAiは、障害に関連するポリペプチドをコードするRNAを標的化する。一部の実施形態において、障害は、CNS障害である。理論に縛られることは望まないが、RNAiは、機能獲得が障害との関連が示されているポリペプチドの発現および/または活性を低減または消去するのに使用できると考えられる。本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸によって処置可能な本発明のCNS障害の非限定的な例(標的化または供給される可能性がある例示的な遺伝子は、各障害につきかっこ内に示される)としては、卒中(例えば、カスパーゼ-3、ベクリン1、Ask1、PAR1、HIF1α、PUMA、および/またはFukuda,A.M.およびBadaut,J.(2013)Genes(Basel)4:435~456に記載の遺伝子のいずれか)、ハンチントン病(突然変異HTT)、てんかん(例えば、SCN1A、NMDAR、ADK、および/またはBoison,D.(2010)Epilepsia 51:1659~1668に記載の遺伝子のいずれか)、パーキンソン病(アルファ-シヌクレイン)、ルー・ゲーリッグ病(筋萎縮性側索硬化症としても公知;SOD1)、アルツハイマー病(タウ、アミロイド前駆タンパク質)、大脳皮質基底核変性症またはCBD(タウ)、大脳皮質基底核神経節変性症またはCBGD(タウ)、前頭側頭認知症またはFTD(タウ)、進行性核上麻痺またはPSP(タウ)、多系統萎縮症またはMSA(アルファ-シヌクレイン)、脳のがん(例えば、脳がんに関与する突然変異または過剰発現した腫瘍遺伝子)、およびリソソーム蓄積症(LSD)が挙げられる。本発明の障害としては、皮質の大部分、例えば、皮質の1つより多くの機能的な領域、皮質の1つより多くの葉、および/または皮質全体に関与する障害が挙げられる。本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸によって処置可能な本発明の障害の他の非限定的な例としては、外傷性脳損傷、酵素の機能不全に関する障害、精神障害(心的外傷後ストレス症候群など)、神経変性疾患、および認識障害(認知症、自閉症、およびうつ病など)が挙げられる。酵素の機能不全に関する障害としては、これらに限定されないが、白質萎縮症(カナバン病など)および後述するリソソーム蓄積症のいずれかが挙げられる。
【0150】
一部の実施形態において、導入遺伝子(例えば、本発明の開示のRNAi)は、プロモーターに機能するように連結されている。例示的なプロモーターとしては、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーターおよびCK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター;Niwaら、Gene、1991、108(2):193~9)、ならびに延長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーター(Kimら、Gene、1990、91(2):217~23およびGuoら、Gene Ther.、1996、3(9):802~10)が挙げられる。一部の実施形態において、プロモーターは、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターに連結
されたヒトβ-グルクロニダーゼプロモーターまたはサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成的、誘導性または抑制性プロモーターであってもよい。一部の実施形態において、本発明は、CBAプロモーターに機能するように連結した、本発明の開示の異種導入遺伝子をコードする核酸を含む組換えベクターを提供する。例示的なプロモーターおよび説明は、例えば、米国付与前公報第20140335054号で見出すことができる。一部の実施形態において、プロモーターは、CBAプロモーター、最小のCBAプロモーター、CMVプロモーターまたはGUSBプロモーターである。
【0151】
構成的プロモーターの例としては、これらに限定されないが、レトロウイルス性のラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVエンハンサーを有する)[例えば、Boshartら、Cell、41:521~530(1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、13-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEFlaプロモーター[Invitrogen]が挙げられる。
【0152】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の制御を可能にし、外因的に供給された化合物、温度などの環境要因、または具体的な生理学的条件の存在、例えば細胞の急性期、特定の分化状態によって制御される場合もあるし、または細胞の複製においてのみ制御される場合もある。誘導性プロモーターおよび誘導性の系は、これらに限定されないが、Invitrogen、ClontechおよびAriadなどの様々な商業的な供給源から入手可能である。他の多くの系が説明されており、当業者により容易に選択することができる。外因的に供給されたプロモーターによって制御される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(Noら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346~3351(1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547~5551(1992))、テトラサイクリン誘導性の系(Gossenら、Science、268:1766~1769(1995)が挙げられる。Harveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512~518(1998))、RU486誘導性の系(Wangら、Nat.Biotech.、15:239~243(1997)ならびにWangら、Gene Ther.、4:432~441(1997))およびラパマイシン誘導性の系(Magariら,J.Clin.Invest.、100:2865~2872(1997))も参照されたい。この状況において有用な可能性があるよりさらに他のタイプの誘導性プロモーターは、具体的な生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって制御されるか、または細胞の複製においてのみ制御されるものである。
【0153】
別の実施形態において、導入遺伝子にとってネイティブのプロモーター、またはそれらのフラグメントが使用されると予想される。導入遺伝子の発現がネイティブの発現を模擬することが望ましい場合、ネイティブのプロモーターが好ましい可能性がある。導入遺伝子の発現が、一時的もしくは発生的に、または組織特異的な方式で、または特異的な転写刺激に応答して制御されなければならない場合、ネイティブのプロモーターが使用される可能性がある。さらなる実施形態において、他のネイティブの発現コントロールエレメント、例えばエンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列も、ネイティブの発現を模擬するのに使用することができる。
【0154】
一部の実施形態において、制御配列は、組織特異的な遺伝子発現能をもたらす。一部のケースにおいて、組織特異的な制御配列は、組織特異的な方式で転写を誘導する組織特異
的な転写因子に結合する。このような組織特異的な制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)は当業界において周知である。例示的な組織特異的な制御配列としては、これらに限定されないが、以下の組織特異的なプロモーター:ニューロンの、例えばニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersenら、Cell.Mol.Neurobiol.、13:503~15(1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioliら、Proc.Natl.Acad.Sci.IDSA、88:5611~5(1991))、およびニューロン特異的なvgf遺伝子プロモーター(Piccioliら、Neuron、15:373~84(1995))が挙げられる。一部の実施形態において、組織特異的なプロモーターは、ニューロン核(NeuN)、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)、腺腫性結腸ポリポーシス(APC)、およびイオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba-1)から選択される遺伝子のプロモーターである。他の適切な組織特異的なプロモーターは、当業者に明らかであると予想される。一部の実施形態において、プロモーターは、ニワトリベータ-アクチンプロモーターである。
【0155】
一部の実施形態において、プロモーターは、CNSの細胞中で異種核酸を発現する。そのようなものとして、一部の実施形態において、本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸は、CNSの障害を処置するのに使用することができる。一部の実施形態において、プロモーターは、脳の細胞において異種核酸を発現する。脳の細胞は、これらに限定されないが、ニューロン(例えば感覚ニューロン、運動ニューロン、介在ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、中型有棘ニューロン、コリン作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、錐体ニューロンなど)、グリア細胞(例えば小グリア細胞、大グリア細胞、星状細胞、希突起膠細胞、上衣細胞、放射状グリアなど)、脳実質細胞、小グリア細胞、上衣細胞(ependemal cell)、および/またはプルキンエ細胞などの当業界において公知のあらゆる脳の細胞を指すことができる。一部の実施形態において、プロモーターは、ニューロンおよび/またはグリア細胞において異種核酸を発現する。一部の実施形態において、ニューロンは、尾状核の中型有棘ニューロン、被殻の中型有棘ニューロン、皮質第IV層のニューロンおよび/または皮質第V層のニューロンである。
【0156】
CNS細胞、脳の細胞、ニューロン、およびグリア細胞において転写物(例えば、異種導入遺伝子)を発現する様々なプロモーターは当業界において公知であり、本明細書で記載される。このようなプロモーターは、通常、選択された遺伝子または異種制御配列と連結された制御配列を含んでいてもよい。多くの場合、有用な異種制御配列としては、哺乳類またはウイルス遺伝子をコードする配列から誘導された配列が挙げられる。例としては、これらに限定されないが、SV40初期プロモーター、マウス乳がんウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)、単純疱疹ウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。加えて、マウスメタロチオネイン遺伝子などの非ウイルス遺伝子から誘導された配列も使用することができる。このようなプロモーター配列は、例えば、Stratagene(San Diego、CA)から市販されている。CNS特異的なプロモーターおよび誘導性プロモーターを使用してもよい。CNS特異的なプロモーターの例としては、これらに限定されないが、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、およびニューロン特異的エノラーゼ(NSE)などのCNS特異的な遺伝子から単離したプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターの例としては、とりわけエクジソン、テトラサイクリン、メタロチオネイン、および低酸素に関するDNA応答エレメントが挙げられる。
【0157】
本発明は、本明細書に記載されるRNAiをコードする1つまたはそれ以上の核酸配列を導入するため、またはAAVウイルス粒子にパッケージ化するための組換えウイルスゲ
ノムの使用を予期する。組換えウイルスゲノムは、RNAiの発現を確立するためのあらゆるエレメント、例えば、プロモーター、異種核酸、ITR、リボソーム結合エレメント、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、イントロン、ポリAシグナル、および/または複製起点を包含し得る。一部の実施形態において、rAAVベクターは、エンハンサー、スプライスドナー/スプライスアクセプター対、マトリックスアタッチメント部位、またはポリアデニル化シグナルの1つまたはそれ以上を含む。
【0158】
一部の実施形態において、RNAiをコードするベクターを含むrAAV粒子の有効量を投与することにより、投与部位(例えば、線条体および/または皮質)かもしくはその近くで、または投与部位からより遠位で細胞(例えば、CNS細胞、脳の細胞、ニューロン、および/またはグリア細胞)が形質導入される。一部の実施形態において、ニューロンの約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または100%のいずれかより多くが形質導入される。一部の実施形態において、ニューロンの約5%~約100%、約10%~約50%、約10%~約30%、約25%~約75%、約25%~約50%、または約30%~約50%が形質導入される。miRNAを発現する組換えウイルス粒子によって形質導入されたニューロンを同定する方法は、当業界において公知であり;例えば、免疫組織化学、RNA検出(例えば、qPCR、ノーザンブロッティング、RNA-seq、インサイチュハイブリダイゼーションなど)または強化緑色蛍光タンパク質などの共発現されたマーカーの使用が、発現を検出するのに使用することができる。
【0159】
一部の態様において、本発明は、組換え自己相補性ゲノム(例えば、自己相補的なrAAVベクター)を含むウイルス粒子を提供する。自己相補性ベクターゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補性AAVゲノムの使用方法は、米国特許第6,596,535号;7,125,717号;7,465,583号;7,785,888号;7,790,154号;7,846,729号;8,093,054号;および8,361,457号;ならびにWangZ.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111に記載されており、これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分的に相補的な配列(例えば、異種核酸の相補的なコードおよび非コード鎖)によって二本鎖DNA分子を迅速に形成すると予想される。一部の実施形態において、ベクターは、異種核酸をコードする第1の核酸配列およびその核酸の相補物をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2の核酸配列と鎖内の塩基対を形成することができる。
【0160】
一部の実施形態において、RNAiをコードする第1の異種核酸配列およびRNAiの相補物をコードする第2の異種核酸配列は、突然変異ITR(例えば、右のITR)によって連結される。一部の実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号12)を含む。突然変異ITRは、末端分解配列を含むD領域の欠失を含む。結果として、AAVウイルスゲノムの複製時に、repタンパク質は、突然変異ITRのところでウイルスゲノムを切断しないと予想され、そのようなものとして、以下のもの:AAVのITR、制御配列を包含する第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異したAAVのITR、第1の異種ポリヌクレオチドおよび第3のAAVのITRと逆方向の第2の異種ポリヌクレオチドを、5’から3’の順で含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスのキャプシド中にパッケージ化されると予想される。
【0161】
VI.ウイルス粒子およびウイルス粒子を生産する方法
本発明は、とりわけ、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えウイルス
粒子、加えて、哺乳動物における疾患または障害;例えばハンチントン病を処置するためのそれらの使用方法を提供する。
【0162】
ウイルス粒子
本発明は、本明細書で開示されるRNAiを含むウイルス粒子を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書で開示される本発明のRNAiを送達するためのウイルス粒子を提供する。例えば、本発明は、哺乳動物において疾患または障害を処置するためのRNAiを送達するための、組換えウイルス粒子を使用する方法;例えば、HDを処置するためのRNAiを含むrAAV粒子を使用する方法を提供する。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、組換えAAV粒子である。一部の実施形態において、ウイルス粒子は、1または2つのITRが隣接する本発明の開示のRNAiの配列を含む核酸を含む組換えAAV粒子である。核酸は、AAV粒子中にキャプシド化されている。またAAV粒子は、キャプシドタンパク質も含む。一部の実施形態において、核酸は、転写方向で構成要素に作動可能に連結された目的のコード配列(例えば、本発明の開示のRNAiの核酸)、転写開始および終結配列を包含する制御配列を含み、それにより発現カセットが形成される。発現カセットは、5’および3’末端に少なくとも1つの機能的なAAVのITR配列を有する。「機能的なAAVのITR配列」は、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージ化を目的としたITR配列機能を意味する。全て参照によってそれらの全体が本明細書に組み入れられる、Davidsonら、PNAS、2000、97(7)3428~32;Passiniら、J.Virol.、2003、77(12):7034~40;およびPechanら、Gene Ther.、2009、16:10~16を参照されたい。本発明の一部の態様を実施するために、組換えベクターは、少なくともキャプシド化に必須なAAVの配列の全て、およびrAAVによる感染のための物理的構造を含む。本発明のベクターで使用するためのAAVのITRは、野生型ヌクレオチド配列を有していなくてもよく(例えば、Kotin,Hum.Gene Ther.、1994、5:793~801で説明されている通り)、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変更されてもよく、またはAAVのITRは、数々のAAV血清型のいずれかからから誘導されてもよい。40種を超えるAAV血清型がこれまでに知られており、新しい血清型および既存の血清型のバリアントが同定され続けている。Gaoら、PNAS、2002、99(18):11854~6;Gaoら、PNAS、2003、100(10):6081~6;およびBossisら、J.Virol.、2003、77(12):6799~810を参照されたい。あらゆるAAV血清型の使用が、本発明の範囲内であるとみなされる。一部の実施形態において、rAAVベクターは、これらに限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド血清型ITRなどのAAV血清型から誘導されたベクターである。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド血清型ITRなどのITRを含む。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、本明細書に記載のRNAiをさらにコードする。例えば、AAVにおける核酸は、本明細書において予期されるあらゆるAAV血清型の少なくとも1つのITRを含んでいてもよく、第1の鎖および第2の鎖を含むRNAiをさらにコードしていてもよく、a)第1の鎖および第2の鎖は、二重鎖を形成し;b)第1の鎖は、少なくとも11塩基のガイド領域を含み、ガイド領域は、ガイド鎖の塩基1~Nを含むシード領域を含み、N=7またはN=8であり;c)第2の鎖は、少なくとも11塩基の非ガイド領域を含み、非ガイド領域は、二重鎖中のガイド領域の塩基1~(N+2)のいずれか1つまたはそれ以上の反対側に、バルジ配列を含む。一部の実施形態において、rAAVは、配列5’-UA
GACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含んでいてもよい。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、5’から3’へ、以下:ITR(例えば、AAV2のITR)、プロモーター、本明細書で開示されるRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、ならびにAAVのITR(例えば、AAV2のITR)をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、5’から3’へ、以下:ITR(例えば、AAV2のITR)、プロモーター、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル、ならびにAAVのITR(例えば、AAV2のITR)をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、5’から3’へ、以下:ITR(例えば、AAV2のITR)、CBAプロモーター、本明細書で開示されるRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンのポリA)、ならびにAAVのITR(例えば、AAV2のITR)をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、5’から3’へ、以下:ITR(例えば、AAV2のITR)、CBAプロモーター、配列5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)を含む第1の核酸を含む第1の鎖および配列5’-ACCGUGUGUCAUUGUCUAA-3’(配列番号2)を含む第2の核酸を含む第2の鎖を含むRNAiをコードする核酸、ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンのポリA)、およびAAVのITR(例えば、AAV2のITR)をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、第1の鎖および第2の鎖は二重鎖を形成し、第2の鎖の配列番号2の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、第1の鎖の配列番号1の残基11および12におけるU残基は、第2の鎖と塩基対を形成しない。一部の実施形態において、第2の鎖の配列番号2の残基18または残基19におけるA残基は、第1の鎖中の残基と塩基対を形成せず、第1の鎖の配列番号1の残基11および12におけるU残基は、第2の鎖と塩基対を形成しない。
【0163】
一部の実施形態において、ベクターは、スタッファー核酸を包含していてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、緑色蛍光タンパク質をコードしていてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、プロモーターとRNAiをコードする核酸との間に配置されていてもよい。一部の実施形態において、スタッファー核酸は、ヒトアルファ-1-アンチトリプシン(AAT)スタッファー配列またはC16P1第16染色体P1クローン(ヒトC16)のスタッファー配列であり得る。
【0164】
一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、配列番号13の核酸を含む。一部の実施形態において、AAVにおける核酸は、配列番号13と、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一な核酸を含む。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AA6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh8R、AAVrh.10、AAV11、AAV12のキャプシドタンパク質、またはこれらのキャプシドタンパク質の突然変異体を含む。一部の実施形態において、突然変異キャプシドタンパク質は、AAVキャプシドを形成する能力を維持する。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV5チロシン突然変異キャプシドを含む(Zhong L.ら、(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105(22):7827~7832)。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、クレードA~FからのAAV血清型のキャプシドタンパク質を含む(Gao、ら、J.Virol.2004、78(12):6381)。
【0165】
特定の標的細胞の形質導入を最適化するか、または特定の標的組織(例えば、罹患した組織)内の特異的な細胞型を標的化するのに、異なるAAV血清型が使用される。rAAV粒子は、同じ血清型または混成の血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1キャプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV2のITRを含んでいてもよいし、またはrAAV粒子は、AAV2キャプシドタンパク質および少なくとも1つのAAV1のITRを含んでいてもよい。rAAV粒子生産のためのAAV血清型のあらゆる組合せが、本明細書に各組合せが明示的に述べられているものとして本明細書で提供される。一部の実施形態において、本発明は、AAV1キャプシドおよび少なくとも1つのAAV2のITRが隣接する本発明の開示のrAAVベクター(例えば、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む発現カセット)を含むrAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、本発明は、AAV2キャプシドを含むrAAV粒子を提供する。
【0166】
一部の態様において、本発明は、組換え自己相補性ゲノムを含むウイルス粒子を提供する。自己相補性ゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己相補性AAVゲノムの使用方法は、米国特許第6,596,535号;7,125,717号;7,465,583号;7,785,888号;7,790,154号;7,846,729号;8,093,054号;および8,361,457号;ならびにWang Z.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111に記載されており、これらのそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。自己相補性ゲノムを含むrAAVは、その部分的に相補的な配列(例えば、導入遺伝子の相補的なコードおよび非コード鎖)によって二本鎖DNA分子を迅速に形成すると予想される。一部の実施形態において、本発明は、AAVゲノムを含むAAVウイルス粒子であって、rAAVゲノムは、第1の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、本発明の開示のRNAi)および第2の異種ポリヌクレオチド配列(例えば、本発明の開示のRNAiのアンチセンス鎖)を含み、第1の異種ポリヌクレオチド配列は、その長さのほとんどまたは全てにわたり、第2のポリヌクレオチド配列と鎖内の塩基対を形成することができる、AAVウイルス粒子を提供する。一部の実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、鎖内の塩基対形成を容易にする配列;例えば、ヘアピンDNA構造によって連結される。ヘアピン構造は、当業界において公知であり、例えばmiRNAまたはsiRNA分子である。一部の実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチド配列および第2の異種ポリヌクレオチド配列は、突然変異ITR(例えば、右のITR)によって連結される。一部の実施形態において、ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号12)を含む。突然変異ITRは、末端分解配列を含むD領域の欠失を含む。結果として、AAVウイルスゲノムの複製時に、repタンパク質は、突然変異ITRのところでウイルスゲノムを切断しないと予想され、そのようなものとして、以下のもの:AAVのITR、制御配列を包含する第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異したAAVのITR、第1の異種ポリヌクレオチドおよび第3のAAVのITRと逆方向の第2の異種ポリヌクレオチドを、5’から3’の順で含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスのキャプシド中にパッケージ化されると予想される。一部の実施形態において、本発明は、機能的なAAV2のITR、本発明の開示のRNAiをコードする第1のポリヌクレオチド配列、D領域の欠失を含み、機能的な末端分解配列が欠失した突然変異したAAV2のITR、第1のポリヌクレオチド配列の本発明の開示のRNAiをコードする配列に相補的な配列を含む第2のポリヌクレオチド配列、および機能的なAAV2のITRを含む組換えウイルスゲノムを含むAAVウイルス粒子を提供する。
【0167】
一部の実施形態において、ウイルス粒子は、アデノウイルス粒子である。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、組換えアデノウイルス粒子、例えば、2つのITR
間に本発明の開示のRNAiを含むポリヌクレオチドベクターである。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、1つまたはそれ以上のE1遺伝子を欠失しているか、またはその不完全なコピーを含有しており、それによりアデノウイルスの複製は不完全になる。アデノウイルスは、大きい(約950Å)エンベロープのない正二十面体のキャプシド内に直鎖状の二本鎖DNAゲノムを包含する。アデノウイルスは、30kbより大きい異種配列(例えば、E1および/またはE3領域の代わりに)を取り込むことができる大きいゲノムを有し、それによって、より大きい異種遺伝子との使用にそれらを固有に適合させる。これらはまた、分裂および非分裂細胞に感染して、宿主ゲノムに天然に統合しない(ハイブリッドバリアントがこの能力を有する可能性があるにもかかわらず)ことも公知である。一部の実施形態において、アデノウイルスベクターは、E1の代わりに異種配列を有する第1世代アデノウイルスベクターであり得る。一部の実施形態において、アデノウイルスベクターは、E2A、E2B、および/またはE4において追加の突然変異または欠失を有する第2世代アデノウイルスベクターであり得る。一部の実施形態において、アデノウイルスベクターは、全てのウイルス性コード遺伝子を欠失した、ITRおよびパッケージ化シグナルのみを保持し、複製およびパッケージ化のためのトランスにヘルパーアデノウイルスを必要とする第3世代またはguttedアデノウイルスベクターであり得る。アデノウイルス粒子は、哺乳類細胞の一過性トランスフェクションのためのベクターに加えて遺伝子治療用ベクターとして使用するために調査されている。さらなる説明については、例えば、Danthinne,X.およびImperiale,M.J.(2000)Gene Ther.7:1707~14およびTatsis,N.およびErtl,H.C.(2004)Mol.Ther.10:616~29を参照されたい。
【0168】
一部の実施形態において、ウイルス粒子は、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えアデノウイルス粒子である。いずれのアデノウイルス血清型の使用も、本発明の範囲内とみなされる。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、これらに限定されないが、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu5、AdHu7、AdHu11、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、およびブタAd3型などのアデノウイルス血清型から誘導されたベクターである。アデノウイルス粒子はまた、キャプシドタンパク質も含む。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、アデノウイルス粒子を、1つまたはそれ以上の外来ウイルスのキャプシドタンパク質と組み合わせて含む。このような組合せは、偽型組換えアデノウイルス粒子と称される場合もある。一部の実施形態において、偽型組換えアデノウイルス粒子で使用される外来ウイルスのキャプシドタンパク質は、外来ウイルスまたは別のアデノウイルス血清型から誘導される。一部の実施形態において、外来ウイルスのキャプシドタンパク質は、これらに限定されないが、レオウイルス3型などから誘導される。偽型アデノウイルス粒子で使用されるベクターおよびキャプシドタンパク質の組合せの例は、以下の参考文献に見出すことができる(Tatsis,N.ら(2004)Mol.Ther.10(4):616~629およびAhi,Y.ら(2011)Curr.Gene Ther.11(4):307~320)。特定の標的細胞の形質導入を最適化するか、または特定の標的組織(例えば、罹患した組織)内の特異的な細胞型を標的化するのに、異なるアデノウイルス血清型が使用される可能性がある。特異的なアデノウイルス血清型によって標的化される組織または細胞としては、これらに限定されないが、肺(例えばHuAd3)、脾臓および肝臓(例えばHuAd37)、平滑筋、滑膜細胞、樹状細胞、心臓血管細胞、腫瘍細胞株(例えばHuAd11)、ならびに樹状細胞(例えばレオウイルス3型で偽型化したHuAd5、HuAd30、またはHuAd35)が挙げられる。さらなる説明については、Ahi,Y.ら(2011)Curr.Gene Ther.11(4):307~320、Kay,M.ら(2001)Nat.Med.7(1):33~40、およびTatsis,N.ら(2004)Mol.Ther.10(4):616~629を参照さ
れたい。アデノウイルスベクターは、線条体内投与によって投与されている(例えば、Mittoux,V.ら(2002)J.Neurosci.22:4478~86を参照)。
【0169】
一部の実施形態において、ウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。一部の実施形態において、レンチウイルス粒子は、組換えレンチウイルス粒子、例えば、2つのLTR間に本発明の開示のRNAiをコードするポリヌクレオチドベクターである。レンチウイルスは、およそ10kbのゲノムを有するプラスセンスssRNAレトロウイルスである。レンチウイルスは、分裂および非分裂細胞のゲノムに統合されることが公知である。レンチウイルス粒子は、例えば、複数のプラスミド(典型的にはレンチウイルスのゲノムおよび複製および/またはパッケージ化に必要な遺伝子は、ウイルス複製を防ぐために分離されている)を、改変されたレンチウイルスのゲノムをレンチウイルス粒子にパッケージ化するパッケージング細胞株にトランスフェクトすることによって生産することができる。一部の実施形態において、レンチウイルス粒子は、エンベロープタンパク質を欠失した第1世代ベクターを指す場合がある。一部の実施形態において、レンチウイルス粒子は、gag/polおよびtat/rev領域を除いて全ての遺伝子を欠失した第2世代ベクターを指す場合がある。一部の実施形態において、レンチウイルス粒子は、内因性rev、gag、およびpol遺伝子のみを含有し、tat遺伝子非含有の形質導入のためのキメラLTRを有する第3世代ベクターを指す場合がある(Dull,T.ら(1998)J.Virol.72:8463~71を参照)。さらなる説明については、Durand,S.およびCimarelli,A.(2011)Viruses 3:132~59を参照されたい。
【0170】
一部の実施形態において、ウイルス粒子は、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えレンチウイルス粒子である。いずれのレンチウイルスベクターの使用も、本発明の範囲内とみなされる。一部の実施形態において、レンチウイルスベクターは、これらに限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス-2(HIV-2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジュンブラナ病ウイルス(Jembrana disease virus;JDV)、ビスナウイルス(VV)、およびヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)などのレンチウイルスから誘導される。レンチウイルス粒子はまた、キャプシドタンパク質も含む。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、レンチウイルスベクターを、1つまたはそれ以上の外来ウイルスのキャプシドタンパク質と組み合わせて含む。このような組合せは、偽型組換えレンチウイルス粒子と称される場合もある。一部の実施形態において、偽型組換えレンチウイルス粒子で使用される外来ウイルスのキャプシドタンパク質は、外来ウイルスから誘導される。一部の実施形態において、偽型組換えレンチウイルス粒子で使用される外来ウイルスのキャプシドタンパク質は、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-GP)である。VSV-GPは、遍在的な細胞受容体と相互作用し、偽型組換えレンチウイルス粒子に広範な組織親和性を提供する。加えて、VSV-GPは、偽型組換えレンチウイルス粒子により高い安定性を提供すると考えられる。他の実施形態において、外来ウイルスのキャプシドタンパク質は、これらに限定されないが、チャンディプラウイルス、狂犬病ウイルス、モコラウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス(SFV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、エボラウイルスレストン、エボラウイルスザイール、マールブルグウイルス、ラッサウイルス、トリ白血病ウイルス(ALV)、ヤーグジークテヒツジレトロウイルス(JSRV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、ネコ内因性レトロウイルス(RD114)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1(HTLV-1)、ヒトフォーミーウイルス、マエディビスナウイルス(MVV)、SARS-CoV、センダイウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒト
パラインフルエンザウイルス3型、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス、家禽ペストウイルス(FPV)、またはアウトグラファ・カリフォルニカ多重核多角体病ウイルス(Autographa californica multiple nucleopolyhedro virus;AcMNPV)などから誘導される。偽型レンチウイルス粒子で使用されるベクターおよびキャプシドタンパク質の組合せの例は、例えば、Cronin,J.ら(2005).Curr.Gene Ther.5(4):387~398に見出すことができる。特定の標的細胞の形質導入を最適化するか、または特定の標的組織(例えば、罹患した組織)内の特異的な細胞型を標的化するのに、異なる偽型組換えレンチウイルス粒子を使用することができる。例えば、特異的な偽型組換えレンチウイルス粒子によって標的化された組織としては、これらに限定されないが、肝臓(例えばVSV-G、LCMV、RRV、またはSeV Fタンパク質で偽型化された)、肺(例えばエボラ、マールブルグ、SeV FおよびHN、またはJSRVタンパク質で偽型化された)、膵島細胞(例えばLCMVタンパク質で偽型化された)、中枢神経系(例えばVSV-G、LCMV、狂犬病、またはモコラタンパク質で偽型化された)、網膜(例えばVSV-Gまたはモコラタンパク質で偽型化された)、単球または筋肉(例えばモコラまたはエボラタンパク質で偽型化された)、造血系(例えばRD114またはGALVタンパク質で偽型化された)、またはがん細胞(例えばGALVまたはLCMVタンパク質で偽型化された)が挙げられる。さらなる説明については、Cronin,J.ら(2005).Curr.Gene Ther.5(4):387~398およびKay,M.ら(2001)Nat.Med.7(1):33~40を参照されたい。
【0171】
一部の実施形態において、ウイルス粒子は、単純疱疹ウイルス(HSV)粒子である。一部の実施形態において、HSV粒子は、rHSV粒子、例えば、2つのTR間に本発明の開示のRNAiをコードするポリヌクレオチドベクターである。HSVは、およそ152kbのゲノムを有するエンベロープありの二本鎖DNAウイルスである。有利には、その遺伝子のおよそ半分は必須ではなく、異種配列を順応させるために欠失させてもよい。HSV粒子は、非分裂細胞に感染する。加えて、HSV粒子は、天然にニューロン中での潜伏を確立し、逆行性輸送によって移動し、シナプスを通過して移行させることができることから、それらをニューロンのトランスフェクションおよび/または神経系に関する遺伝子治療アプローチにとって有利にしている。一部の実施形態において、HSV粒子は、複製欠損であってもよいし、または複製能を有していてもよい(例えば、1つまたはそれ以上の後期遺伝子の不活性化を介して単一の複製サイクルの能力を有する)。さらなる説明については、Manservigi,R.ら(2010)Open Virol.J.4:123~56を参照されたい。
【0172】
一部の実施形態において、ウイルス粒子は、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含むrHSV粒子である。いずれのHSVベクターの使用も、本発明の範囲内とみなされる。一部の実施形態において、HSVベクターは、これらに限定されないが、HSV-1およびHSV-2などのHSV血清型から誘導される。HSV粒子はまた、キャプシドタンパク質も含む。一部の実施形態において、組換えウイルス粒子は、HSVベクターを、1つまたはそれ以上の外来ウイルスのキャプシドタンパク質と組み合わせて含む。このような組合せは、偽型rHSV粒子と称される場合もある。一部の実施形態において、偽型rHSV粒子で使用される外来ウイルスのキャプシドタンパク質は、外来ウイルスまたは別のHSV血清型から誘導される。一部の実施形態において、偽型rHSV粒子で使用される外来ウイルスのキャプシドタンパク質は、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質(VSV-GP)である。VSV-GPは、遍在的な細胞受容体と相互作用し、偽型rHSV粒子に広範な組織親和性を提供する。加えて、VSV-GPは、偽型rHSV粒子により高い安定性を提供すると考えられる。他の実施形態において、外来ウイルスのキャプシドタンパク質は、異なるHSV血清型由来であってもよい。例えば、HSV-1ベクターは、1つまたはそれ以上のHSV-2キャプシドタンパク質を含有していてもよい。特定
の標的細胞の形質導入を最適化するか、または特定の標的組織(例えば、罹患した組織)内の特異的な細胞型を標的化するのに、異なるHSV血清型を使用することができる。特異的なアデノウイルス血清型によって標的化された組織または細胞としては、これらに限定されないが、中枢神経系およびニューロン(例えばHSV-1)が挙げられる。さらなる説明については、Manservigi,R.ら(2010)Open Virol J 4:123~156、Kay,M.ら(2001)Nat.Med.7(1):33~40、およびMeignier,B.ら(1987)J.Infect.Dis.155(5):921~930を参照されたい。
【0173】
ウイルス粒子の生産
rAAV粒子は、当業界において公知の方法を使用して生産することができる。例えば、米国特許第6,566,118号;6,989,264号;および6,995,006号を参照されたい。本発明の実施において、rAAV粒子を生産するための宿主細胞としては、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、微生物および酵母が挙げられる。宿主細胞はまた、AAVベクターゲノムが安定して維持される宿主細胞またはプロデューサー細胞中でAAVのrepおよびcap遺伝子が安定して維持されるパッケージング細胞であってもよい。例示的なパッケージングおよびプロデューサー細胞は、293、A549またはHeLa細胞から誘導される。AAVベクターは、当業界において公知の標準的な技術を使用して精製され、製剤化される。
【0174】
当業界において公知のrAAVベクターを生産するための方法としては、これらに限定されないが、トランスフェクション、安定な細胞株の生産、ならびにアデノウイルス-AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス-AAVハイブリッド(Conway,JEら、(1997)J.Virology 71(11):8780~8789)およびバキュロウイルス-AAVハイブリッドなどの感染性のハイブリッドウイルスの生産系が挙げられる。rAAVウイルス粒子を生産するためのrAAV生産培養は全て、1)好適な宿主細胞、例えば、ヒトから誘導された細胞株、例えばHeLa、A549、または293細胞、または昆虫から誘導された細胞株、例えばバキュロウイルス生産系のケースではSF-9など;2)野生型または突然変異アデノウイルス(例えば温度感受性アデノウイルス)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミドコンストラクトによって提供される好適なヘルパーウイルス機能;3)AAVのrepおよびcap遺伝子および遺伝子産物;4)少なくとも1つのAAVのITR配列が隣接する核酸(例えば治療用核酸);ならびに5)rAAV生産を支持する好適な培地および培地成分を必要とする。一部の実施形態において、AAVのrepおよびcap遺伝子産物は、あらゆるAAV血清型由来でもよい。一般的に、ただし必須ではないが、rep遺伝子産物が複製されるように機能してrAAVゲノムをパッケージ化できる限りは、AAVのrep遺伝子産物は、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型を有する。rAAVベクターを生産するために、当業界において公知の好適な培地を使用することができる。これらの培地としては、これらに限定されないが、Hyclone LaboratoriesおよびJRHによって生産された培地、例えば改変イーグル培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)など、米国特許第6,566,118号に記載されたもの、ならびに米国特許第6,723,551号に記載されているようなSf-900 II SFM培地などの特注の調合物が挙げられ、これらのそれぞれは、特に組換えAAVベクターの生産で使用するための特注の培地調合物に関して、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。一部の実施形態において、AAVのヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。一部の実施形態において、AAVのヘルパー機能は、バキュロウイルスによって提供され、宿主細胞は、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞)である。
【0175】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、三重のトランスフェクション方法、例えば下記に示される例示的な三重のトランスフェクション方法によって生産することができる。簡単に言えば、rep遺伝子およびキャプシド遺伝子を含有するプラスミドを、ヘルパーアデノウイルスプラスミドと共に、(例えば、リン酸カルシウム方法を使用して)細胞株(例えば、HEK-293細胞)にトランスフェクトしてもよいし、さらに、ウイルスを収集し、場合により精製してもよい。そのようなものとして、一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、AAVのrepおよびcapをコードする核酸、およびAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の宿主細胞への三重のトランスフェクションによって生産されたものであり、宿主細胞への核酸のトランスフェクションは、rAAV粒子を生産することが可能な宿主細胞を生成する。
【0176】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、プロデューサー細胞株の方法、例えば下記に示される例示的なプロデューサー細胞株の方法によって生産することができる(Martinら、(2013)Human Gene Therapy Methods 24:253~269で参照されているものも参照されたい)。簡単に言えば、細胞株(例えば、HeLa細胞株)は、rep遺伝子、キャプシド遺伝子、およびプロモーター-異種核酸配列を含有するプラスミドで安定してトランスフェクトすることができる。細胞株をスクリーニングしてrAAV生産のためのリードクローンを選択してもよいし、次いでこれを生産バイオリアクターに拡大して、rAAV生産を開始させるためのヘルパーとしてアデノウイルス(例えば、野生型アデノウイルス)で感染させることもできる。その後ウイルスを回収してもよいし、アデノウイルスを不活性化させるか(例えば、熱によって)および/または除去してもよいし、rAAV粒子を精製してもよい。そのようなものとして、一部の実施形態において、rAAVベクターをコードする核酸、AAVのrepおよびcapをコードする核酸、ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の1つまたはそれ以上を含むプロデューサー細胞株によって、rAAV粒子を生産した。
【0177】
一部の態様において、本明細書で開示されるいずれかのrAAV粒子を生産するための方法であって、(a)rAAV粒子が生産される条件下で宿主細胞を培養する工程であって、宿主細胞は、(i)1つまたはそれ以上のAAVパッケージ遺伝子であって、前記AAVパッケージ遺伝子のそれぞれは、AAVの複製および/またはキャプシド化タンパク質をコードする、AAVパッケージ遺伝子;(ii)少なくとも1つのAAVのITRが隣接する本明細書に記載される本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含むrAAVプロベクター、および(iii)AAVのヘルパー機能を含む、工程;および(b)宿主細胞によって生産されたrAAV粒子を回収する工程を含む、方法が提供される。一部の実施形態において、RNAiは、配列番号7のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、前記少なくとも1つのAAVのITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAVキャプシド血清型ITRなどからなる群より選択される。一部の実施形態において、前記キャプシド化タンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6(例えば、野生型AAV6キャプシド、またはバリアントAAV6キャプシド、例えば米国付与前公報第2012/0164106号に記載のShH10)、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9(例えば、野生型AAV9キャプシド、または米国付与前公報第2013/0323226号に記載の改変されたAAV9キャプシド)、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、チロシンキャプシド突然変異体、ヘパリン結合キャプシド突然変異体、AAV2R471Aキャプシド、AAVAAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド(例えば、AAV-DJ/8キャプシド、AAV-DJ/9キャプシド、または米国付与前公報第2012/0066783号に記載のキャプシドの他のいずれか)、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシ
ド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、マウスAAVキャプシド、rAAV2/HBoV1キャプシド、または米国特許第8,283,151号もしくは国際公報WO/2003/042397号に記載のAAVキャプシドからなる群より選択される。一部の実施形態において、突然変異キャプシドタンパク質は、AAVキャプシドを形成する能力を維持する。一部の実施形態において、キャプシド化タンパク質は、AAV5チロシン突然変異キャプシドタンパク質である。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、クレードA~FからのAAV血清型のキャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1キャプシド、ならびにAAV2のITR、突然変異AAV2のITRおよび本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えゲノムを含む。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、精製される。用語「精製される」は、本明細書で使用される場合、rAAV粒子が天然に存在するかまたはそれから最初に調製されるときに存在する可能性もある他の要素の少なくとも一部を欠いているrAAV粒子の調製物を包含する。したがって、例えば、単離されたrAAV粒子は、培養溶解産物または生産培養上清などの源となる混合物からそれを富化するための精製技術を使用して調製することができる。富化は、様々な方法で、例えば、溶液中に存在するDNアーゼ耐性粒子(DRP)もしくはゲノムコピー(gc)の比率、または感染力などによって測定してもよいし、または富化は、源となる混合物中に存在する第2の干渉する可能性がある物質、例えば生産培養物の汚染物質などの汚染物質、またはヘルパーウイルス、培地の要素などの製造過程の汚染物質に関して測定することができる。
【0178】
アデノウイルスベクター粒子を生産するための数多くの方法が当業界において公知である。例えば、guttedアデノウイルスベクターの場合、アデノウイルスベクターゲノムおよびヘルパーアデノウイルスゲノムを、パッケージング細胞株(例えば、293細胞株)にトランスフェクトしてもよい。一部の実施形態において、ヘルパーアデノウイルスゲノムは、そのパッケージ化シグナルの端にある組換え部位を含有していてもよいし、ヘルパーアデノウイルスより効率的に目的のアデノウイルスベクターがパッケージ化されるように、両方のゲノムをリコンビナーゼ(例えば、Cre/loxP系が使用される可能性がある)を発現するパッケージング細胞株にトランスフェクトしてもよい(例えば、Alba,R.ら(2005)Gene Ther.12増刊1:S18~27を参照)。アデノウイルスベクターは、本明細書に記載の方法などの標準的な方法を使用して回収および精製してもよい。
【0179】
レンチウイルスベクター粒子を生産するための数多くの方法が当業界において公知である。例えば、第3世代レンチウイルスベクターの場合、gagおよびpol遺伝子を含む目的のレンチウイルスゲノムを含有するベクターを、rev遺伝子を含有するベクターと共にパッケージング細胞株(例えば、293細胞株)にコトランスフェクトしてもよい。目的のレンチウイルスゲノムはまた、Tatの非存在下で転写を促進するキメラLTRも含有する(Dull,T.ら(1998)J.Virol. 72:8463~71を参照)。レンチウイルスベクターは、本明細書に記載の方法を使用して回収および精製してもよい(例えば、Segura MMら、(2013)Expert Opin Biol Ther.13(7):987~1011)。
【0180】
HSV粒子を生産するための数多くの方法が当業界において公知である。HSVベクターは、本明細書に記載の方法などの標準的な方法を使用して回収および精製してもよい。例えば、複製欠損HSVベクターの場合、前初期(IE)遺伝子の全てを欠失した目的のHSVゲノムを、ICP4、ICP27、およびICP0などのウイルス生産に必要な遺伝子を提供する補完細胞株にトランスフェクトしてもよい(例えば、Samaniego,L.A.ら(1998)J.Virol.72:3307~20を参照)。HSVベクターは、報告されている方法(例えば、Goins,WFら、(2014)Herpes
Simplex Virus Methods in Molecular Biology 1144:63~79)を使用して回収および精製してもよい。
【0181】
本発明の開示のRNAiをコードする導入遺伝子を含む組換えウイルス粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物も本明細書で提供される。医薬組成物は、本明細書に記載のあらゆる投与様式に適している可能性がある。本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えウイルス粒子の医薬組成物は、脳に導入することができる。例えば、本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含む組換えウイルス粒子は、線条体内に投与することができる。rAAV、アデノウイルス、レンチウイルス、およびHSV粒子などの本発明の開示の組換えウイルス粒子のどれでも使用することができる。
【0182】
一部の実施形態において、本明細書に記載の本発明の開示のRNAiをコードする導入遺伝子を含む組換えウイルス粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、ヒトへの投与に好適である。このような担体は当業界において周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、1035~1038頁および1570~1580頁を参照)。一部の実施形態において、本明細書に記載のrAAVおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、哺乳動物の脳への注射に好適である(例えば、線条体内投与)。一部の実施形態において、本明細書に記載の組換えレンチウイルス粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、哺乳動物の脳への注射に好適である(例えば、線条体内投与)。一部の実施形態において、本明細書に記載の組換えアデノウイルス粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、哺乳動物の脳への注射に好適である(例えば、線条体内投与)。一部の実施形態において、本明細書に記載の組換えHSV粒子および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物は、哺乳動物の脳への注射に好適である(例えば、線条体内投与)。
【0183】
このような医薬的に許容される担体は、滅菌された液体、例えば水および油、例えば石油、動物、植物または合成由来の油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油などであってもよい。塩類溶液および水性デキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール溶液も、液体担体として、特に注射用溶液のために採用することができる。医薬組成物は、追加成分、例えば保存剤、緩衝液、等張化剤、抗酸化剤および安定剤、非イオン性の湿潤剤または清澄剤、増粘剤などをさらに含んでいてもよい。本明細書に記載の医薬組成物は、単回単位の剤形または複数回投与の剤形でパッケージ化することができる。組成物は、一般的に、滅菌された実質的に等張の溶液として製剤化される。
【0184】
VII.製造品およびキット
本明細書に記載の方法で使用するためのキットまたは製造品も提供される。態様において、キットは、好適なパッケージ中に、本明細書に記載の組成物(例えば、本発明の開示の組換えウイルス粒子、例えば本発明の開示のRNAiをコードする核酸を含むrAAV粒子)を含む。本明細書に記載の組成物(例えば線条体内用の組成物)のための好適なパッケージは、当業界において公知であり、例えば、バイアル(例えば密封バイアル)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、フレキシブルなパッケージ(例えば、密封したマイラーまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。これらの製造品は、さらに滅菌および/または密封してもよい。
【0185】
本発明はまた、本明細書に記載の組成物を含むキットも提供し、これは、組成物の使用方法、例えば本明細書に記載の使用に関する説明書をさらに含んでいてもよい。本明細書に記載のキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および本明細書に記載のいずれかの方法を実行するための説明を含む添付文書などの、商業的および使用者の観点から所望の他の材料をさらに包含していてもよい。例えば、一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載される哺乳動物から霊長類の脳に少なくとも1×10
ノムコピーを送達するための(例えば、線条体内投与を介して)本発明の開示のRNAiをコードする導入遺伝子を含む組換えウイルス粒子の組成物、霊長類の脳への注射に好適な医薬的に許容される担体、ならびに緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および霊長類の脳への注射(例えば、線条体内投与)を実行するための説明を含む添付文書の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載の組換えウイルス粒子と共に、ハンチントン病を処置するための説明書を含む。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載の方法のいずれか1つに従って本明細書に記載の組換えウイルス粒子を使用するための説明書を含む。
【実施例
【0186】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解される。しかしながら、これらは本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態は単に例示の目的のためであり、それらの観点で様々な改変または変化が当業者に示唆されると予想され、本出願の本質および趣旨ならびに添付の特許請求の範囲のうちに包含されることが理解される。
【0187】
実施例1:AAV2/1-miRNA-HttはインビトロでHtt発現を低減する。
ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン(Htt)タンパク質におけるポリグルタミン残基数の増加によって引き起こされる致死性の常染色体優性の神経変性疾患である。HDの根本的な基礎の同定に伴い、原因となる突然変異Httの発現を低減する療法が開発されつつある。このおよび類似の障害のための可能性のある治療戦略として、このような疾患を引き起こす薬剤の発現を選択的に低減しようとするRNA干渉(RNAi)が出現している。HDのマウスモデルでRNAi療法の長所を検査するために、これまでにマウスおよびヒトHttのmRNAを効果的に標的化することが示されている標的配列(McBrideら、(2008)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:5868~5873)を人工miRNA骨格に埋め込み、プレウイルスベクターにクローニングした。
【0188】
方法
動物
全ての手順を、Genzyme、Sanofi社における動物実験倫理委員会によって承認されたプロトコール(保健福祉省、NIH公報86-23)を使用して実行した。使用されたマウスは、YAC128マウス(純粋なFVB/NJバックグラウンドに128個のCAGリピートを含む全長ヒト突然変異HTT導入遺伝子を内包する酵母人工染色体)およびFVB/NJ同腹子マウス(Slowら、(2003)Hum.Mol.Genet.12:1555~1567;Van Raamsdonkら、(2005)Hum.Mol.Genet.3823~3835)を包含していた。YAC128マウスおよびFVB/NJ同腹子の両方を、Charles River Laboratoriesに収容されていたGenzymeのコロニーから得た。12時間の明/暗サイクルで食物および水を不断給餌してマウスを維持した。動物の明サイクル中に(午前8時から午後4時の間に)全ての行動試験を実行した。
【0189】
プラスミドおよびウイルスベクター
ハンチンチン遺伝子に対してmiRNAベースのヘアピンをコードする組換えAAV2/1血清型ベクター(AAV2/1-miRNA-Htt)を生成するために、ヒトHTTに関するmiRNAを、AAV2逆方向末端反復(ITR)、ウシ成長ホルモンのポリA、および1.6kbのサイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターを含有するシャトルプラスミドにクローニングした。miRNAのための足場を、Invitrogen(商標)BLOCK-iT(商標)Pol II miR RNAi発現ベクターキット(Life Technologies、Therm
o Fisher Scientific;Waltham、MA)からのものであった。対照ベクターは、空のベクター骨格のいずれか(AAV2/1-ヌル)を含有していたか、または同じプロモーター(AAV2/1-eGFP)のコントロール下で強化緑色蛍光タンパク質を発現した。これまでに述べられたように三重のプラスミドをヒト293細胞にコトランスフェクトすることによって全てのウイルスベクターを生成し(Xiaoら(1998)J.Virol.72:2224~2232)、これまでに述べられたように組換えビリオンをカラムで精製した(Passiniら、(2001)J.Virol.75:12382~12392)。得られたAAV2/1-miRNA-Httの力価は、4.5×1012vg/mlであると決定され、AAV2/1-ヌルの力価は、定量PCRを使用したところ2.3×1012vg/mlであった。
【0190】
外科手術
動物を3%イソフルランを使用して麻酔し、定位フレームに設置した。頭蓋内注射をこれまでに述べられたようにして実行した(Treleaven,C.M.ら(2012)Mol.Ther.20:1713~1723)。簡単に言えば、組換えウイルスベクター(AAV2/1-eGFPまたはAAV2/1-miRNA-Htt)2μlを、10μlハミルトンシリンジを0.5μl/分の速度で使用して線条体に注射した(AP、+0.50;ML、±2.00;DV、前頂および硬膜から-2.5;切歯棒、0.0)。針を、点滴完了後1分間、その場に残した。外科手術前の1時間および外科手術後の24時間に、無痛のためにマウスにケトプロフェン(5mg/kg)を皮下投与した。
【0191】
動物の潅流および組織収集
マウスをリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で心臓を介して潅流して、全ての血液を除去した。脳を中線に沿って矢状方向に切断し、左半球を4%パラホルムアルデヒド、それに続いて30%スクロース中で後固定し、次いでクライオスタットを使用して20μmの断片に断片化した。右半球を、マウス脳マトリックス(Harvard Apparatus、Holliston、MA)を使用して、冠状面の軸椎に沿って2mmのスラブに切断し、次いで液体窒素中で瞬間冷凍して、使用するまで-80℃で貯蔵した。Htt凝集の分析のために、脳を4%パラホルムアルデヒド中で48時間後固定し、PBSで洗浄して、次いでビブラトームを使用して40μmの環状断片に断片化した。
【0192】
細胞培養およびトランスフェクション
HEK293細胞を、5×109vgのAAV2/1-eGFPまたはAAV2/1-miRNA-Httのいずれかで感染させ、3日後に回収した。定量リアルタイムRT-PCRによってRNAレベルを測定した。TaqMan(登録商標)Cells-to-CT(商標)キット(Ambion)を使用して全RNAを単離した。Q-PCR反応を遂行し、上述したようにABI PRISM7500シーケンスデテクター(Applied Biosystems)で分析した(Kordasiewicz,H.B.ら(2012)Neuron 74:1031~1044)。発現レベルをPPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼ)のレベルに正規化した。
【0193】
定量リアルタイムPCR(TaqMan)
定量リアルタイムRT-PCRによってRNAレベルを測定した。全てのRT-PCR分析に、脳スラブ2からの脳組織サンプルを使用した。QIAGEN RNEasyミニキットを使用して全RNAを抽出し、次いで、TaqMan(登録商標)ワンステップRT-PCRマスターミックスキット(Applied Biosystems)を製造元の説明書に従って使用して、逆転写し、増幅した。マウスHttのmRNAを検出するために、以下のプローブセットを使用した:Mm01213820_m1(Life Technologiesカタログ番号4331182)。ヒトHttのmRNAを検出するために、以下のオリゴを使用した:5’-ctccgtccggtagacatgct-
3’(フォワードプライマー、配列番号9);5’-ggaaatcagaaccctcaaatgg-3’(リバースプライマー、配列番号10);および5’-tgagcactgttcaactgtgtgtatcggga-3’(プローブ、配列番号11)。定量RT-PCR反応を遂行し、ABI Prism(登録商標)7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)で分析した。HttのmRNAの発現レベルをヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(Hprt1)のmRNAレベルに正規化した。マウス脳cDNAの5倍連続希釈物を使用して標準曲線を作成した。各サンプルを2連で試行した。標準曲線またはΔΔCT方法を使用して、Hprt1のmRNAレベルに正規化することによって、相対的な遺伝子発現を決定した。
【0194】
ウェスタンブロッティング
完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含有するT-Per溶解緩衝液(Pierce)中50mg/mlの最終濃度で組織をホモジナイズした。ホモジネートを4℃における10,000×gで6分間の遠心分離によって清澄化した。BSAアッセイ(Pierce)を使用することによってタンパク質濃度を測定した。20から30マイクログラムのホモジネートを3~8%Novexトリス-アセテートゲルで分離し、次いでニトロセルロース膜に移した。膜に、マウス抗ハンチンチンモノクローナル抗体(Mab2166;1:2,000希釈物、Millipore)およびウサギポリクローナル抗β-チューブリン抗体(1:750希釈物、Santa Cruz Biotechnology)でプローブを付けた。次いで膜を赤外二次抗体(1:20,000希釈物、Rockland)と共にインキュベートし、Odyssey(LI-COR Biosciences)を使用して定量的な蛍光によりタンパク質を可視化した。ローディングの分散をコントロールするために、Httタンパク質をβ-チューブリンに正規化し、未処置または塩類溶液処置した動物のパーセンテージとして表した。タンパク質の同一性を検証するために分子量マーカーを使用した。
【0195】
フローサイトメトリーおよびセルソーティング(FCMセルソーティング)
Genzyme Flow Cytometry Core Facility(Sanofi社)において、100μmノズルを備えたFACS Aria IIセルソーター(BD Biosciences San Jose、CA)を使用して単一細胞の懸濁液を分析し、単離した。前方散乱(FWD-Sc)および側方散乱(SSC)でのゲーティングにより死細胞片から生きた単一細胞を識別することによって細胞の分析を実行した。530/30BPフィルター505LPを備えたデテクターEを使用してEGFP陽性細胞を収集した。EGFP蛍光データプロファイルは、単一パラメーターのヒストグラムとして表示され、ソーティング決定は、EGFPおよびEGFPに基づいていた。ソートされた細胞を5%ウシ胎児血清を含有する組織培養培地中に収集し、4ウェルのチャンバーを有するスライド(LabTek、Nalge Nunc International、Naperville、Ill)上で、細胞50000個/ウェルの濃度で平板培養した。
【0196】
免疫組織化学
ビブラトーム断片を、凝集したハンチンチンを優先的に認識する抗体であるEM48によって免疫染色のために処理した(Gutekunstら、(1999)J.Neurosci.19:2522~2534)。まず遊離の浮遊断片を、Dual Endogenous Enzyme Block(Dako)で30分処置して内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。次いでこれらを0.01MのPBSで洗浄し(3分間)、続いてPBS中0.5%Triton X-100で3回、各10分で洗浄した。断片をRodent Block M中で室温で1時間インキュベートすることによって非特異的な部位をブロックした。4℃の低温室において穏やかな振盪器で一晩インキュベートするこ
とによって、断片にEM48抗体(Millipore、PBSでの1:25希釈物)でプローブを付けた。次の日、断片を、室温で1時間、振盪器で、二次抗体(MM HRPポリマー、Biocare Medical)と共にインキュベートした。それぞれPBSで15分間で3回洗浄した後、DABペルオキシダーゼ基質キット(Vector)を使用してシグナルを検出した。洗浄後、断片をスーパーフロストプラススライドにマウントし、一晩乾燥させ、Acrytolマウント媒体と共にカバーガラスをかけた。
【0197】
行動に関する分析
加速ロータロッド試験:運動協調性および運動学習を、加速ロータロッド装置(AccuScan Instruments)で評価した。1日当たり3回の試験により3日連続でマウスをロータロッドで訓練した。最初の訓練日に、ロータロッドを、300秒かけて0から5RPMに加速するように設定した。300秒の期間を終える前にロッドから落下したマウスを、300秒の期間が完全に満了するまでロッド上に戻した。訓練の2および3日目に、ロータロッドを再度、300秒かけて0から40RPMに加速するように設定し、全てのマウスがロッド上で300秒を完全に終えるよう強制した。4日目(試験日)に、300秒かけて0から40RPMに加速するように設定されたロータロッド上にマウスを置いた。動物が落ちた後は再び置かず、落ちるまでの潜時を3回の試験にわたり記録した。落ちるまでの潜時は、動物がロータロッドから落ちるまでの経過時間によって定義された。
【0198】
ポーソルト水泳試験:ポーソルト水泳試験における無動を、げっ歯類におけるうつ状態の尺度として使用した(Porsoltら、(1977)Arch.Int.Pharmacodyn.Ther.229:327~336、Cryanら、(2002a)Trends Pharmacol.Sci.23:238~245、Cryanら、(2002b)Eur.J.Pharmacol.436:197~205)。23℃で高さ15cmまで水で満たされた個々のガラスシリンダー(高さ20cm×直径10cm)にマウスを置くことによって試験を遂行した。マウスを7分間にわたりシリンダーに置いた。この期間の最初の3分間を順化時間とみなし、その時間中はデータを収集しなかった。試験セッションの最後の4分間中に、盲検のオブザーバーにより、10秒間隔で優勢な挙動を格付けする時間サンプリング技術を使用してマウスの性能をスコア付けした。水泳および無動の挙動を毎回10秒の最後に測定して記録することにより、試験1回当たり24データポイントを得た。各マウスにつき無動状態に費やした時間のパーセンテージを計算した。
【0199】
統計
統計分析のために平均値を使用した。データを平均±SEMとして表した。2つのグループを使用した研究の場合、統計的比較のためにスチューデントのt検定を使用した。2つより多くのグループの比較の場合、一元配置ANOVA、続いてテューキーの多重比較事後検定(Prism GraphPad)を使用した。p<0.05を統計学的に有意な差とみなした。
【0200】
結果
プラスミドを、図1Aで例示されているようにニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーター(pSP70-CBA-EGFP)の転写コントロール下でHttを標的化するmiRNAおよび強化されたGFP(eGFP)レポーター遺伝子を発現するように操作した。候補標的配列は、Httコード領域から選択されたものであり、5’-TAGACAATGATTCACACGGT-3’(配列番号4)であった。標的配列をコードする高力価の組換えAAV2/1-血清型ベクター(AAV2/1-miRNA-Htt)および対照ベクター(AAV2/1-eGFPおよびAAV2/1-ヌル)を作製し、それらの遺伝子サイレンシング活性を、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞を感染させるこ
とによって試験した。細胞を5×10vgのAAVベクターで感染させた。蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析を使用して、この用量が、AAV-eGFP-miRNA-HTTで感染させた後、HEK293細胞において90%より高い感染効率をもたらしたことを確認した(図2A~D)。AAV2/1-eGFPで感染させた細胞は、感染後3日にリアルタイムPCRによって分析したところ、内因性Httレベルのいかなる低減も示さなかった;しかしながら、AAV2/1-miRNA-Httで感染させた細胞は、HttのmRNAレベルのおよそ40%の低減を示した(図1B)。
【0201】
実施例2:YAC128マウスへのAAV2/1-miRNA-Htt注射は、拡大した線条体の形質導入およびHttのmRNAの低減をもたらす。
インビトロでHttのmRNAレベルを抑制するAAV2/1-miRNA-Httの能力の検証後、このベクターの、YAC128マウスの線条体におけるHtt発現をサイレンシングする能力を評価した。AAV2/1-miRNA-Httを線条体内注射した後の線条体内の細胞の形質導入パーセントを決定するために、実施例1に記載の方法に従って蛍光活性化セルソーティング(FACS)を採用した。
【0202】
結果
成体YAC128マウスに、AAV2/1-eGFP-miRNA-Htt(4.5×1012vg/ml)または対照ベクター、AAV2/1-eGFP(5.6×1012vg/ml)の両側の線条体内注射を行った。注射後の1カ月に、各動物の線条体領域を顕微解剖し、eGFP含有細胞とeGFP非含有細胞とをソートし、FACS分析によって定量した(図3AおよびB)。データから、ソートされた線条体細胞の大部分のうちのeGFPの存在によって実証されたように、ベクターによって線条体の80%より多くが形質導入されたことが示された(図3C)。
【0203】
インビボでHttを低減するベクターの能力を評価して、応答の寿命をモニターするために、成体マウスに、AAV2/1-miRNA-Htt(4.5E12vg/ml)(タイムポイント1つ当たり、N=16、N=8+8)またはAAV2/1-ヌル対照ベクター(2.3E12vg/ml)(N=8)の両側の線条体内注射を行い、処置後1または5カ月に脳を分析した。両方のタイムポイントにおいてAAV2/1-miRNA-Httで処置したマウスからの脳断片の蛍光顕微鏡検査法による分析によれば、線条体全体にわたり脳領域を取り囲んで広範なeGFP蛍光が示され、これは、ほぼ完全な線条体の形質導入を示唆するFACS分析と一致していた(図3D)。処置後1カ月に達成されたマウスの脳におけるeGFP発現のレベルは、5カ月のタイムポイントで減退していないようであった(図3D)。突然変異ヒトHttのmRNAの線条体レベルは、AAV2/1-ヌルで処置された対照と比較した場合、AAV2/1-miRNA-Httが注射されたマウスにおいて有意に低減し、両方のタイムポイントで同程度の低減(およそ45%、p<0.01)を記録した(図3E)。内因性のマウスHttのmRNAの線条体レベルは、AAV2/1-ヌルで処置された対照と比較した場合、AAV2/1-miRNA-Httの後に有意に低減した。両方のタイムポイントで同程度の低減(およそ45%、p<0.01)を記録した(図4)。
【0204】
実施例3:YAC128マウスへのAAV2/1-miRNA-Htt注射は、脳中で明白な毒性を引き起こさない。
AAV2/1-miRNA-Httの注射およびその結果としてのHttの低減が神経毒性および炎症をもたらすかどうかを決定するために、線条体断片の細胞の形態および完全性を、実施例1に記載の方法に従ってヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色によって検査した。神経炎症マーカーであるグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP、星状細胞マーカー)およびIba-1(小グリア細胞マーカー)のレベルも、処置後1および5カ月に検査した。
【0205】
結果
H&Eによる分析から、注射された脳領域において著しい病理組織学的変化は示されなかった(図5A~C)。注射後1または5カ月において、AAV2/1-ヌルで処置した動物と比較した場合、GFAP陽性の星状細胞の数(免疫組織化学によって可視化された)またはGFAPのmRNAのレベル(QPCRによって定量した)のいずれかにおける特筆すべき増加は、注射された領域で観察されなかった(図5D~F;図5J)。しかしながら、注射後1カ月で、線条体におけるIba-1免疫染色(図5H)およびIba-1のmRNAレベルの増加によって証明されたように、活性化された小グリア細胞の数の増加が記録された(図5K)。興味深いことに、注射後5カ月で小グリア細胞の活性化は対照レベルに戻ったことから(図5Iおよび5K)、応答は一過性であったことが示唆される。理論に制限されることは望まないが、この研究で使用されたAAV2/1-ヌル対照ベクターはeGFP遺伝子を内包していなかったことから、AAV2/1-miRNA-HttからのeGFPの発現は一過性の小グリア細胞の活性化に関与する可能性があると考えられる。
【0206】
総合すると、これらの結果は、AAV2/1-miRNA-Httは、インビトロだけでなくYAC128マウスの線条体でも持続的なHttサイレンシングを媒介することが可能であるという発見を裏付け拡張する。さらに、最大5カ月のHttレベルの部分的な抑制は、マウス脳において明白な毒性または神経炎症を引き起こさなかった。
【0207】
実施例4:AAV2/1-miRNA-Httの線条体の送達は、YAC128マウスにおいて異常な行動および神経化学的なプロファイルを修正する。
HDのYAC128マウスモデルに存在するよく特徴付けられた表現型の欠陥に対するAAVが媒介する突然変異Httレベル低減の影響も、実施例1に記載の方法に従って検査した。YAC128マウスは、3月齢から始まる運動協調性の欠陥(これは、ロータロッド試験を使用して解明することができる)およびうつ状態の表現型(ポーソルト水泳試験を使用して)を示すことが報告されている(Slowら、(2003)Hum.Mol.Genet.12:1555~1567;Van Raamsdonkら、(2007)Neurobiol Dis 26:189~200)。
【0208】
結果
年齢を適合させた(2月齢)YAC128および野生型同腹子マウスに、AAV2/1-miRNA-HttまたはAAV2/1-ヌルベクターのいずれかの両側の線条体内注射を行い、次いで処置後の3カ月に殺した(図6A)。予想通りに、脳断片の分析から、これまで観察されたように線条体全体にわたり領域を取り囲んでeGFP発現が実証された(図6B)。脳ホモジネートのウェスタンブロット分析から、突然変異ヒトおよび内因性マウスHttタンパク質の両方のレベルが、AAV2/1-ヌルで処置された対照と比較した場合、AAV2/1-miRNA-Httが注射されたYAC128および野生型マウスの線条体において有意に低減した(およそ55%の低減、p<0.01)ことが示された(図6CおよびD)。リアルタイム定量PCR分析から、mRNAレベルにおける同程度の低減も達成されたことが示された。
【0209】
注射後2カ月におけるAAV2/1-ヌルで処置したYAC128マウスのロータロッド試験から、AAV2/1-ヌルまたはAAV2/1-miRNA-Httで処置した野生型同腹子と比較した場合、有意な運動協調性の欠陥が示された(ANOVA、p<0.01)(図6E)。しかしながら、AAV2/1-miRNA-Httで処置されたYAC128マウスは、野生型マウスの性能レベルと区別できないほどの性能レベルを示した(ANOVA、テューキーの事後検定;WT Htt対YAC128Htt、p=NS;WTヌル対YAC128ヌル、p<0.05)。したがって、突然変異Httレベルの部
分的な低下は、YAC128マウスの運動障害を修正するのに十分であった。AAV2/1-miRNA-Httを受けた野生型マウスとAAV2/1-ヌルを受けた野生型マウスとのロータロッド性能において有意差はなかった。
【0210】
以前の報告から、YAC128マウス(3月齢から始めて)は、ポーソルト水泳試験を使用して検出できるうつ状態の表現型を示すことが示された(Pouladiら、(2009)Brain 132:919~932)。水の容器中に置かれたとき動物が長期間無動である場合、動物は、うつ状態を示すとみなされる。基本的な水泳速度試験を使用して(この場合、プラットフォームに到達するまでの水泳潜時が測定された)、研究者は、このポーソルト水泳試験におけるうつ状態の表現型は、YAC128マウスの水泳能力と関連せず、このモデルで観察された十分に立証された運動協調性の欠陥から無関係であったことを実証した(Pouladiら、(2009)Brain 132:919~932)。2月齢のYAC128およびWT同腹子マウスに、AAV2/1-miRNA-Htt-またはAAV2/1-ヌルベクターを注射し、3カ月後、ポーソルト水泳試験で試験した。未処置YAC128マウスは、AAV2/1-miRNA-Httで処置したYACマウスまたはAAV2/1-ヌルで処置した野生型動物のいずれかと比較した場合、無動状態の期間が増加したことを示した(図6F;ANOVA、p<0.05)。この場合も、AAV2/1-miRNA-HttまたはAAV2/1-ヌルのいずれかを受けた野生型マウスの性能において有意差はなかった。AAV2/1-miRNA-Httが注射されたYAC128マウスは、AAV2/1-ヌルで処置された対照より有意に短い時間を無動状態に費やした。実際に、AAV2/1-miRNA-Httで処置したYAC128マウスの性能は、それらの野生型同腹子の性能と類似していたことから、この異常な表現型がほぼ完全に修正されたことが示唆される(ANOVA、テューキーの事後検定;YAC Htt対YACヌル、p<0.05)(図6F)。
【0211】
実施例5:AAV2/1-miRNA-Httを使用した処置は、YAC128マウスにおいてDARPP-32およびD1受容体の転写調節異常を部分的に修正する。
HDの脳において、線条体で富化されている多数の遺伝子の転写調節異常が観察されている(Richfielら、(1995)Ann.Neurol.37:335~343;Augoodら、(1997)Ann.Neurol.42:215~221;Sugarsら、(2004)J.Biol.Chem.279:4988~4999;Desplatsら、(2006)J.Neurochem.96:743~757)。この異常はまた、YAC128マウスにおいても、例示されたように、特定には、野生型動物のレベルと比較してそれらの有意に低いDARPP-32およびD1ドーパミン受容体の線条体のレベルによって明白である(Pouladiら、(2012)Mol.Genet.21:2219~2232)。YAC128マウスにおけるHttレベルの抑制がこの変更された転写プロファイルを修正したかどうかを検査するために、実施例1に記載の方法に従って2月齢のときにAAV2/1-miRNA-Httで処置して3カ月後に分析したYAC128マウスの線条体組織に、リアルタイム定量PCR分析を実行した。
【0212】
結果
AAV2/1-ヌルで処置したYAC128マウスの脳抽出物の分析から、DARPP-32およびD1ドーパミン受容体(D1R)のmRNAレベルが、年齢を適合させた野生型対照と比較して有意に低かったことが示された(ANOVA、テューキーの事後検定;WTヌル対YAC128ヌル、p<0.05)(図7AおよびB)。AAV2/1-miRNA-Httを投与したYAC128マウスは、AAV2/1-ヌルベクターで処置したものより高いレベルのDARPP-32およびD1RのmRNAを示した;しかしながら、これらのレベルはそれでもなお野生型対照で観察されたレベルより低かった(ANOVA、テューキーの事後検定;WTヌル対YAC Htt、p=NS)。したがって、YAC128マウスにおけるAAV2/1-miRNA-Httが媒介するHttレベル
の低減は、異常な線条体の転写プロファイルの部分的な修正をもたらした。その後のタイムポイント(処置後5カ月より後)における検査により、この異常なプロファイルのより完全な修正が明らかになる可能性がある。
【0213】
まとめると、これらの結果は、AAV2/1-miRNA-Httは、Httレベルの持続的な低下を媒介することが可能であるという初期のインビトロおよびインビボでの発見を裏付ける。重要なことに、このYAC128マウスにおける線条体のHttレベルの低減は、運動機能および挙動における測定可能な改善に加えて、線条体におけるよく特徴付けられた転写調節異常の部分的な修正をもたらすことが実証された。
【0214】
実施例6:AAV2/1-miRNA-Httの線条体の送達は、YAC128マウスの脳においてHttの凝集を低減する。
CNSにおけるHttの凝集体および封入体の出現は、HDの神経病理学的な特徴である。HDマウスにおいてこれらの凝集体のレベルを低くすることは、病理学における特筆すべき改善との相関が示されてきた(Harperら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:5820~5825;Rodriguez-Lebronら、(2005)Mol.Ther.12:618~633)。YAC128マウスモデルは、12月齢までに線条体においてHtt凝集体の有意な広範にわたる蓄積を示すことが報告されている(Slowら、(2003)Hum.Mol.Genet.12:1555~1567、Pouladiら、(2012)Hum.Mol.Genet.21:2219~2232)。YAC128マウスにおけるHtt凝集体に対するAAV2/1-miRNA-Htt送達の影響を実施例1に記載の方法に従って検査した。
【0215】
結果
抗Htt抗体EM48を使用した6、9、および24月齢のYAC128マウスの脳断片の免疫組織化学的染色から、6月齢もの早期において、時間と共に進行する線条体および皮質の両方での凝集体の証拠が示された(図8A)。12月齢の組織(16マイクロメートルの凍結断片)も分析したところ、24月齢コホートと類似の程度の凝集物があることが示されたが、凍結断片における非特異的なバックグラウンドの染色が、ビブラトーム断片より有意に多かった(データ示さず)。
【0216】
突然変異HttレベルのAAVが媒介する低減が、症候を示した後のYAC128マウス(7月齢)の脳におけるHtt凝集体蓄積の程度を低下させ、順に運動および行動の欠陥を修正するかどうかを検査するために、マウスに、AAV2/1-miRNA-HttまたはAAV2/1-GFPのいずれかの両側の線条体内注射を行った。注射後3カ月に(動物は10月齢であった)動物をロータロッドでの試験に供し、注射後5カ月で(マウスが12月齢のとき)殺した(図8B)。ロータロッド上のAAV2/1-miRNA-Httで処置したYAC128マウスは、それらの野生型同腹子の能力に匹敵する能力のレベルを示した(図8C;ANOVA、テューキーの事後検定;p=NS)。しかしながら、これらの結果は、研究で使用されたマウスの数が少なかったために統計的有意性に達しなかった(N=4匹のWT;N=6匹のYAC128)。EM48抗体を使用した線条体断片の免疫組織化学的染色は、AAV2/1-miRNA-Httで処置されたYAC128マウスにおいて、AAV2/1-GFPで処置されたYAC128マウスより有意に少ないHtt凝集体の存在を示した(図8D)。AAV-miRNA-Httで処置したYAC128マウスの脳は、野生型マウスの脳と本質的に区別できなかった。
【0217】
観察されたAAV2/1-miRNA-Httによる凝集体の低減はニューロンの損失または起こり得る神経毒性に起因するものではないことを確認するために、H&E染色に加えて、NeuN(ニューロンマーカー)、GFAP(星状細胞マーカー)、およびIba1(小グリア細胞マーカー)に関する免疫組織化学的染色を隣接する矢状方向の脳断片
に実行した。AAV-2/1-ヌルが注射された対照と比較して、AAV2/1-miRNA-Httが注射された動物は、蛍光顕微鏡法により、線条体において同じ存在度のNeuN陽性ニューロンを示した。光学顕微鏡を使用して、隣接する冠状の脳断片のH&E染色も正常であることが明らかになり、このニューロンの損失がないということを裏付ける証拠がもたらされた;しかしながら、立体解析学は実行されなかったため、これらの結果は定量できなかった。加えて、初期の研究で観察されたように、注射後5カ月のAAV2/1-miRNA-Httで処置したマウスにおけるGFAPまたはIba-1染色のいずれかの増加は検出されなかった。
【0218】
結論
本発明の研究から、突然変異Httレベルを低くすることは、HDの治療戦略であることが示され、線条体における突然変異Httの部分的な低減は、HDの完全トランスジェニックマウスモデルであるYAC128マウスモデルにおいて行動に関する、生化学的な、および神経病理学的な改善をもたらしたことが実証された。この治療戦略を評価することにおけるこれまでの試みは、突然変異HTT遺伝子のフラグメントを内包するマウスモデル、例えばR6/1およびN171~82Q HDマウス(Harperら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:5820~5825、Rodriguez-Lebronら、(2005)Mol.Ther.12:618~633、Machidaら、(2006)Biochem.Biophys.Res.Commun.343:190~197)で実行された。突然変異Httのレベルにおける部分的な低減は、N171~82Q HDマウスモデルなどのより重症のモデルの一部では適度な延命効果をもたらしたが、他のモデル(例えば、R6/1マウスモデル)ではそうではなかった(Harperら、(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:5820~5825、Rodriguez-Lebronら、(2005)Mol.Ther.12:618~633、Machidaら、(2006)Biochem.Biophys.Res.Commun.343:190~197)。ロータロッドおよび歩幅試験を使用したこれらの研究において、運動の改善も特筆された;しかしながら、これらのモデルの重症度のために、行動に関する、神経病理学的な、および生化学的な異常に対する処置の長期的評価は除外された。
【0219】
本発明の研究は、進行性の運動異常および年齢依存性の神経病理学的状態を発症するYAC128マウスモデル(このモデルは、128個のCAGリピートを含有する突然変異ヒトHTT遺伝子を内包する)を利用した。他のHDマウスモデルと比較して、YAC128マウスは、ヒト疾患の突出した遺伝学的および臨床的な特徴を再現するため、これらは治療効能を試験するのによく適している。YAC128マウスにおける自然な病歴関連の変化は明確であり、この動物は、表現型において動物間の変動が低い一様の疾患特徴を示す。YAC128マウスは、変更された線条体の転写プロファイルを展開するが、これは、BAC HDマウスなどの他の類似のマウスモデルで観察されない特色であり(Pouladiら、(2012)Hum.Mol.Genet.21:2219~2232)、年齢依存性の線条体の神経変性を示す。そのようなものとして、このモデルにおける治療的介入の試験および結果の測定は、臨床的な解釈のためのより高い予測的価値を有し得る(Slowら、(2003)Hum.Mol.Genet.12:1555~1567)。
【0220】
YAC128マウスを使用して、これらの研究から、突然変異ヒトHttを標的化するmiRNAのAAV2/1が媒介する発現は、HttのmRNAおよびタンパク質の線条体のレベルにおける有意な低減をもたらしたことが実証された。この厄介な物体を少なくすることは、処置後5カ月におけるロータロッドおよびポーソルト水泳試験を使用して評価されたように、機能における有意な改善に加えて、線条体内におけるHtt凝集体の有意な低減に関連していた。特筆すべきことに、これらの研究で観察されたHtt低減のレ
ベルは、対照のおよそ40%に過ぎなかったことから、突然変異Httの部分的な低減は、このマウスモデルにおいて有意な治療的な利益を生じさせるのに十分であったことが示される。さらに、AAVベクターでの線条体の80%の形質導入は、部分的なHttの低減のみをもたらした。類似の現象が培養中のHEK293細胞で見られ、この場合、およそ90~95%の形質導入効率は、内因性Httレベルにおける結果的な40~50%の低減のみをもたらした(図2A~Dを参照)。これらの発見は、匹敵するmiRNAベースのサイレンシング戦略を使用したところ、Httレベルの部分的な低減のみを示したげっ歯類および霊長類における以前の研究と一致する(McBrideら、(2008)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:5868~5873;Boudreauら、(2009b)Mol.Ther.17:1053~1063;McBrideら、(2011)Mol.Ther.19:2152~2162;Grondinら、(2012)Brain 135:1197~1209)。理論に制限されることは望まないが、なぜmiRNAのみが形質導入された領域で部分的な標的ノックダウンを生じるかに関して多数の考えられる仮説がある。Httサイレンシングを媒介するのに使用されるmiRNAステム-ループ様式は、機能的な低分子干渉RNAが生成される前に細胞によるプロセシングを必要とする。したがって、この細胞プロセシングに関する必要条件は、miRNAベースのヘアピンによってもたらされたRNAサイレンシングの程度に自然の制限を課す可能性がある。Boudreauらによる報告(Boudreauら、(2009a)Mol.Ther.17:169~175)は、哺乳類の脳における治療的サイレンシングのためのmiRNAベースのプラットフォームの改善された安全性を説明しており、従来の短鎖ヘアピン構造と比較してmiRNAの改善された毒性プロファイルを強調した。この安全性の改善は、内因性細胞プロセシングメカニズムへのmiRNAの依存に起因する可能性がある(Boudreauら、(2009a)Mol.Ther.17:169~175)。これらの提唱されている仮説にもかかわらず、脳におけるmiRNAベースのHttサイレンシングを支える正確なメカニズムに関しては未だにわかっていないが、本明細書で提示されたデータは、少なくともHDのマウスモデルにおいて、部分的なHttの低減が治療的な利益を達成できることを実証する。
【0221】
Httの機能的役割は不明瞭なままであるため、対立遺伝子特異的ではないサイレンシングをもたらす治療戦略の展開に伴う明白な懸念がある。本明細書で開示された研究から、最大5カ月にわたる野生型マウスに加えて罹患したYAC128マウスのCNSにおける内因性マウスHttの部分的な低下も同様に許容されることが示された。AAV-miRNA-Httの投与は、野生型マウスおよび突然変異ヒトHttをおよそ40%低下させたことから、突然変異毒性Httをサイレンシングする治療的な利益を維持しながらも野生型Httレベルの少なくとも60%の保存を可能にした。明白な毒性または異常な行動は観察されなかった。現在のデータは、HDマウスおよび野生型マウスにおける対立遺伝子特異的ではないHttをサイレンシングした後、処置後最大9カ月にわたり同様に毒性がなかったことを示す以前の研究と一致する(Boudreauら、(2009b)Mol.Ther.17:1053~1063)。野生型Httの部分的な抑制の安全性はまた、非ヒト霊長類でも報告されており(McBrideら、(2011)Mol.Ther.19:2152~2162;Grondinら、(2012)Brain 135:1197~1209)、正常なHttのレベルの部分的な低下は、有意な有害帰結を引き起こさない可能性があるというさらなる信頼性を提供する。この研究はさらに、YAC128マウスにおける突然変異および野生型Htt両方の部分的な抑制(約40%)は、それらの様々な行動試験に対する性能によって証明されるように治療効果があり、いかなる明白な有害問題にも関連しなかったことを実証する。以前の報告から、胚形成および出生後の神経形成におけるHttの役割が示唆された(Bhideら、(1996)J.Neurosci.16:5523~5535;Reinerら、(2003)Mol.Neurobiol.28:259~276;Cattaneoら、(2005)Nat.Rev.Neurosci.6:919~930)。しかしながら、これまでの数々の前
臨床研究から、成体の脳中で野生型Httレベルを部分的に低減することは、マウスおよび非ヒト霊長類の両方において十分許容されるようであることが実証される(Boudreauら、(2009b)Mol.Ther.17:1053~1063;McBrideら、(2011)Mol.Ther.19:2152~2162;Grondinら、(2012)Brain 135:1197~1209)。
【0222】
マウスモデルおよびヒト患者の両方におけるHD病理の特筆すべき特徴は、突然変異Htt免疫反応性(IR)の凝集体の存在である(DiFigliaら、(1997)Science 277:1990~1993;Scherzingerら、(1997)Cell 90:549~558)。HDにおける病態生理学的な事象のカスケードにおける凝集体の正確な役割は目下議論中であり(Lansburyら、(2006)Nature 443:774~779)、突然変異Httの凝集体と疾患との因果関係の示唆は、依然として論争の的になっている(Bates、(2003)Lancet 361:1642~1644;Arrasateら、(2004)Nature 431:805~810)。しかしながら、不溶性のタンパク質凝集体の形成は、細胞分解プロセスへの負担増加を引き起こすという意見は一致している(Yamamotoら、(2000)Cell 101:57~66)。本明細書で開示された研究から、YAC128マウスは、6月齢もの早期における(これまで報告されているものより早期における)広範にわたる線条体の凝集を示し、7月齢(凝集体がすでに形成された後)でのAAV2/1-miRNA-Httの注射は、線条体内のEM48陽性のHtt凝集体の数を、ほぼ野生型レベルに有意に低下させたことが実証された。これらのデータから、理論に制限されることは望まないが、AAV2/1-miRNA-Htt処置は、Httの利用可能なプールを減らす可能性があることから、有意に突然変異Htt凝集体の負担を軽減し、したがってこのマウスモデルにおいて指摘された機能的な改善に寄与する可能性があることが示唆される。
【0223】
Htt凝集体の実質的な除去に加えて、AAV-miRNA-Htt処置もYAC128マウスにおいて行動に関する利益をもたらした。YAC128マウスは、3月齢で開始したロータロッドで欠陥を示し始め、7カ月までに重度の障害を示す(Slowら、(2003)Hum.Mol.Genet.12:1555~1567)。7月齢(運動協調性が有意に損なわれていると予想されるとき)にAAV2/1-miRNA-Httで処置したYAC128マウスは、ロータロッド試験で改善を示したことから、確立された運動障害の逆転が達成されたことが示唆される。これまでにHtt凝集体の低減が報告されているが(N171およびR6/2フラグメントモデル)(Rodriguez-Lebronら、(2005)Mol.Ther.12:618~633;Machidaら、(2006)Biochem.Biophys.Res.Commun.343:190~197)、本発明の研究は、HDの全長マウスモデルにおいて凝集の緩和とそれに付随する行動に関する改善を実証する。線条体へのAAV-miRNA-Htt注射後のポーソルト水泳試験における有意な改善も観察された。これは、AAV-RNAi後におけるこのうつ状態の表現型における改善を示す最初の報告であり、重要なことに、これらの結果は、理論に制限されることは望まないが、線条体におけるHttレベルの低減は、YAC128モデルで示されたうつ状態の表現型を改善するのに十分であったことを示唆する。最終的に、7月齢のYAC128マウスをAAV-miRNA-Httで処置したとき(症候を示した後の処置)、線条体におけるHtt凝集体の有意な低減およびこのモデルによって示される運動協調性欠陥の起こり得る逆転が観察された。理論に制限されることは望まないが、これらのデータから、症候を示した後のAAV2/1-miRNA-Htt処置は、細胞中のmHttの負担を軽減する可能性があり、mHtt凝集体が形成された後でさえも治療的な利益を提供することが示される。
【0224】
線条体Httの抑制はまた、YAC128マウスおよびヒトHD患者において加齢に伴
い次第に衰退する2つの転写物であるDARPP-32およびD1受容体のmRNAレベルの適度な修正ももたらした。突然変異Httは、多数の細胞プロセスを混乱させてニューロンの機能不全および転写調節異常を引き起こすことが公知である(Cha、(2000)Trends Neurosci.23:387~392)。
【0225】
まとめると、これらの研究から、AAV媒介RNAiが、HDのYAC128マウスモデルにおいてHD関連の行動異常を有意に改善させることが実証される。さらには、Httを標的化するmiRNAのAAV媒介送達は、明白な毒性を起こすことなく、Httレベルの持続的な抑制、細胞および神経病理学的な異常の修正、ならびにHDのトランスジェニックマウスモデルにおける運動および行動の欠陥の改善をもたらすことができることも示される。
【0226】
shRNAの塩基対形成の改変によって改善されたRNAi
本発明の研究は、Htt遺伝子はmiRNA足場(miR-155)に埋め込まれたのに対して、短鎖ヘアピンをコードするのに組換えAAV2/1ベクターを利用した。使用されたshRNA配列は、以前の公開された配列の、マウスおよびヒトhtt転写物のエクソン2を標的化するmirR2.4から改変したものであった(McBrideら、(2008)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:5868~5873)。短鎖ヘアピンRNAの改変は、安定性および生物活性を増加させ、オフターゲット作用を最小化し、先天性免疫応答を低減するのに使用されてきた(Castanottoら、(2009)Nature 457:426~433;Jacksonら、(2010)Nature Rev. Drug Disc.9:57~67)。本発明の研究で使用された改変された配列は、miR2.4と同じガイド鎖配列を含有していた(図9A);しかしながら、シード配列の3’末端に、ガイド鎖に対応するチミンヌクレオチド(T)がない追加のアデニンヌクレオチド(A)を有するようにコンストラクトを操作した(図9B)。理論に制限されることは望まないが、熱力学的なモデリングから、ガイド鎖におけるシード配列の反対側の非ガイド鎖におけるバルジ配列の追加は、RNAi性能の態様を改善できることが示唆される。したがって、本発明者らは、様々な障害を処置するための新規の形質転換可能な核酸による療法を生み出すのに使用できる進歩も開発した。
【0227】
実施例7.オフターゲットの遺伝子サイレンシングの低減
RNA干渉(RNAi)は、多くのヒト疾患の処置のためのアプローチを提供する。しかしながら、RNAiベースの療法の安全性は、オフターゲットの遺伝子サイレンシングとして公知の作用である、意図されないmRNAに結合してそれらの発現を低減する低分子阻害性RNA(siRNA)の能力によって妨げられる可能性がある。オフターゲティングは主として、シード領域(低分子RNAのヌクレオチド2~8)が意図されないmRNAの3’-UTR中の配列と対合して、それらの転写物の翻訳の抑制および不安定化を指示するときに起こる。これまで、ほとんどの治療的RNAi配列は、主として遺伝子サイレンシング効能に関して選択され、安全性に関しては後で評価される。ここで、主要な神経変性障害であるハンチントン病(HD)を処置するためにsiRNAを設計することにおいて、マウス脳において有力なサイレンシングを示し、低いインシリコでのオフターゲットプロファイルを有する、最小のオフターゲティング能を有する2つの新しい配列(すなわち、全ての公知のヒトおよびアカゲザル3’-UTR内のシード相補物が希少なもの)を生成した。
【0228】
【表1】
【0229】
表1に、元のPS170XAのmiRNA配列およびこの配列の2つの改変された低オフターゲット型:170XAL1および170XAL2を示す。PS170XAの2つの低オフターゲット型を、七量体内の塩基を塩基2~8で置換してCpGモチーフを作り出すことによって設計した。(Boudreauら、2012)。170XAL1において2位の「A」をCに変更し(5’-UCGACAAUGAUUCACACGGU-3’)(配列番号15)、170XAL2において6位の「A」を「G」に変更した(5’-UAGACGAUGAUUCACACGGU-3’)(配列番号17)。これらの置換により、SiSPOTRアルゴリズム、すなわちオフターゲティングの可能性および有力なサイレンシング能力が最小の候補配列を同定する特異性に焦点を当てたsiRNA設計アルゴリズムを使用してより有意に低いオフターゲットスコアを得た(Boudreauら、Nucleic Acids Res.2013年1月;41(1)e9)。SiSPOTRスコアの低減により、新しい配列が元の170XA配列と比較してより少数の可能性のあるヒトのオフターゲットを有することが予測されると予想された。
【0230】
元のPS170XAのmiRNA配列は、5’-UAGACAAUGAUUCACACGGU-3’(配列番号1)である。ガイド鎖、改変されたmir-155内部ループ(マウス)、およびパッセンジャー鎖を包含する以下の配列を、発現ベクターにクローニングした:5’TAGACAATGATTCACACGGTGTTTTGGCCACTGACTGACACCGTGTGTCATTGTCTAA-3’(配列番号19)。追加の「A」は、3’末端に包含される。ガイドおよびパッセンジャー鎖は、太字で示され、ガイド鎖の塩基11および12は、パッセンジャー鎖において逆相補物を有さず、プロセシングされた成熟二重鎖中に小さい内部ループを作り出す。170XAL1において2位の「A」をCに変更し、170XAL2において6位の「A」を「G」に変更し、それ以外において170XAL1および170XAL2は、元のPS170XAと同じ構造を有していた。図10に構造を示す。
【0231】
インビトロでのヒト胎児腎臓(HEK293)細胞におけるHttの低減を媒介するAAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1および170XAL2の能力を試験した。AAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1および170XAL2発現プラスミドに加えて非コードmiRNA配列を含有する対照プラスミド(CTL3)で、HEK293細胞をトランスフェクトした(処置ごとに8つの複製)。Fugeneトランス
フェクション試薬を使用して細胞をトランスフェクトし、48時間後に回収した。TaqMan(登録商標)Cells-to-CT(商標)キット(Ambion)を使用して全RNAを単離した。定量リアルタイムRT-PCRによってRNAレベルを測定した(ABI Prism7500シーケンスデテクター(Applied Biosystems)で遂行し、分析した)。発現レベルをヒトPPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼ)に正規化した。170XAL2および170XAL2プラスミドの両方でのトランスフェクション後、ヒトHttのmRNAレベルは、CTL3および未処置対照と比較して低下したが、この低減は、統計的有意性に達しなかった(図11)。
【0232】
AAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1および170XAL2の、YAC128マウスの線条体におけるHtt発現をサイレンシングする能力を評価した。成体YAC128マウスは、AAV2/1-miRNA-Htt 170XA(2E10vg/部位)、AAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1(2E10vg/部位)、またはAAV2/1-miRNA-Htt 170XAL2(3E10vg/部位)の両側の線条体内注射を受けた。元のAAV2/1-miRNA-Htt 170XAは、陽性対照として役立ち、一方で別の未処置グループ(注射なし)は、陰性対照として役立てた。注射後の1カ月に、動物を殺し、PBSで潅流した。組織学および生化学分析のために脳を収集した。生化学分析のために、1つの半球の線条体領域を顕微解剖し、液体窒素中で急速冷凍した。突然変異ヒトおよびマウスHttのmRNAおよびタンパク質の線条体のレベルを、それぞれQPCRおよびウェスタンブロットによって評価した。突然変異ヒトHttおよびマウスHttのmRNAは、未処置対照動物と比較した場合、AAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1およびAAV2/1-miRNA-Htt 170XAL2が注射されたマウスにおいて有意に低減した(図12Aおよび12B)。PPIAは、全てのQPCRアッセイで正規化の対照遺伝子として役立てた。突然変異ヒトおよびマウスHttタンパク質は、未処置対照動物と比較した場合、全てのAAV2/1-miRNA-Httが注射されたマウスにおいて有意に低減し、全ての処置にわたり同程度の低減(およそ50%、p<0.05)を記録した(図12Cおよび12D)。
【0233】
本発明者らのAAV-miRNA-Httベクターの注射後にこれらの炎症性マーカー遺伝子が上方調節されたかどうかを決定するためのQPCRによる線条体におけるGFAPおよびIba1のmRNAレベルを評価した。GFAPは、アストログリオーシスのマーカーであり、Iba1は、小グリア細胞の活性化に関するマーカーとして役立つ。本発明者らは、AAV2/1-miRNA-Htt 170XAの線条体内注射は、注射1カ月の線条体におけるGFAPのmRNA(図13A)およびIba1のmRNA(図13B)レベルの有意な増加をもたらすことを実証した。AAV2/1-miRNA-Htt
170XAL1またはAAV2/1-miRNA-Htt 170XAL2の注射後、GFAPまたはIba1のいずれかの増加は観察されず、GFAPおよびIba1のmRNAレベルは未処置対照と同等であった。ヒトPPIAは、正規化の対照遺伝子として役立てた。値は平均±SEMとして示される。未処置の対照マウスと有意に異なる、p<0.05;ANOVA、続いてテューキーの事後検定。
【0234】
注射後の1カ月にAAV2/1-miRNA-Htt 170XAL1またはAAV2/1-miRNA-Htt 170XAL2で処置したYAC128マウスからの線条体の組織断片のGFAPおよびIba1免疫組織化学的染色から、注射後、線条体においてGFAPおよびIba1タンパク質レベルは上昇しなかったことが確認された(図14)。蛍光顕微鏡法を使用して、脳におけるGFAPおよびIba1免疫染色のレベルを評価した。AAV2/1-miRNA-Htt 170XAの線条体内注射は、蛍光顕微鏡法で見られるようにGFAPおよびIba-1免疫反応性の増加を引き起こしたが、本発明者らは、染色のレベルが未処置対照脳と同等であったAAV2/1-miRNA-Htt
170XAL1またはAAV2/1-miRNA-Htt 170XAL2の注射後、
GFAPまたはIba1免疫染色のどちらのいかなる増加も観察しなかった。スケールバー=50μM。
【0235】
配列
全てのポリペプチド配列は、別段の指定がない限りN末端からC末端として提示される。全ての核酸配列は、別段の指定がない限り5’から3’として提示される。
【0236】
miRNA httアンチセンス鎖
UAGACAAUGAUUCACACGGU(配列番号1)
miRNAパッセンジャー鎖の相補物
ACCGUGUGUCAUUGUCUAA(配列番号2)
センス標的配列
ACCGUGUGAAUCAUUGUCUAA(配列番号3)
miRNA httアンチセンス鎖DNA配列
TAGACAATGATTCACACGGT(配列番号4)
miRNAパッセンジャー鎖の相補物
ACCGTGTGTCATTGTCTAA(配列番号5)
センス標的配列
ACCGTGTGAATCATTGTCUTAA(配列番号6)
3A170のRNA配列
UGCUGUAGACAAUGAUUCACACGGUGUUUUGGCCACUGACUGACACCGUGUCAUUGUCUAACAGG(配列番号7)
3A170のDNA配列
TGCTGTAGACAATGATTCACACGGTGTTTTGGCCACTGACTGACACCGTGTCATTGTCTAACAGG(配列番号8)
ヒトHttのmRNAフォワードプライマー
Ctccgtccggtagacatgct(配列番号9)
ヒトHttのmRNAリバースプライマー
Ggaaatcagaaccctcaaatgg(配列番号10)
ヒトHttのmRNAプローブ
Tgagcactgttcaactgtgtgtatcggga (配列番号11)
scAAVベクターのためのバリアントAAVのITR
CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG(配列番号12)。
完全AAVベクターゲノムのDNA配列
ttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgggcgaccaaaggtcgcccgacgcccgggctttgcccgggcggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaactccatcactaggggttcctggaggggtggagtcgtgacaattcgcccttgggcctaggcaattggatcccggaccgtcgacattgattattgactagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctac
gtattagtcatcgctattaccatggtcgaggtgagccccacgttctgcttcactctccccatctcccccccctccccacccccaattttgtatttatttattttttaattattttgtgcagcgatgggggcggggggggggggggggcgcgcgccaggcggggcggggcggggcgaggggcggggcggggcgaggcggagaggtgcggcggcagccaatcagagcggcgcgctccgaaagtttccttttatggcgaggcggcggcggcggcggccctataaaaagcgaagcgcgcggcgggcgggagtcgctgcgcgctgccttcgccccgtgccccgctccgccgccgcctcgcgccgcccgccccggctctgactgaccgcgttactcccacaggtgagcgggcgggacggcccttctcctccgggctgtaattagcgcttggtttaatgacggcttgtttcttttctgtggctgcgtgaaagccttgaggggctccgggagggccctttgtgcggggggagcggctcggggggtgcgtgcgtgtgtgtgtgcgtggggagcgccgcgtgcggctccgcgctgcccggcggctgtgagcgctgcgggcgcggcgcggggctttgtgcgctccgcagtgtgcgcgaggggagcgcggccgggggcggtgccccgcggtgcggggggggctgcgaggggaacaaaggctgcgtgcggggtgtgtgcgtgggggggtgagcagggggtgtgggcgcgtcggtcgggctgcaaccccccctgcacccccctccccgagttgctgagcacggcccggcttcgggtgcggggctccgtacggggcgtggcgcggggctcgccgtgccgggcggggggtggcggcaggtgggggtgccgggcggggcggggccgcctcgggccggggagggctcgggggaggggcgcggcggcccccggagcgccggcggctgtcgaggcgcggcgagccgcagccattgccttttatggtaatcgtgcgagagggcgcagggacttcctttgtcccaaatctgtgcggagccgaaatctgggaggcgccgccgcaccccctctagcgggcgcggggcgaagcggtgcggcgccggcaggaaggaaatgggcggggagggccttcgtgcgtcgccgcgccgccgtccccttctccctctccagcctcggggctgtccgcggggggacggctgccttcgggggggacggggcagggcggggttcggcttctggcgtgtgaccggcggctctagagcctctgctaaccatgttcatgccttcttctttttcctacagctcctgggcaacgtgctggttattgtgctgtctcatcattttggcaaagaattcttcgaaagatctgctagcttaattaacccggtcgccaccatggtgagcaagggcgaggagctgttcaccggggtggtgcccatcctggtcgagctggacggcgacgtaaacggccacaagttcagcgtgtccggcgagggcgagggcgatgccacctacggcaagctgaccctgaagttcatctgcaccaccggcaagctgcccgtgccctggcccaccctcgtgaccaccctgacctacggcgtgcagtgcttcagccgctaccccgaccacatgaagcagcacgacttcttcaagtccgccatgcccgaaggctacgtccaggagcgcaccatcttcttcaaggacgacggcaactacaagacccgcgccgaggtgaagttcgagggcgacaccctggtgaaccgcatcgagctgaagggcatcgacttcaaggaggacggcaacatcctggggcacaagctggagtacaactacaacagccacaacgtctatatcatggccgacaagcagaagaacggcatcaaggtgaacttcaagatccgccacaacatcgaggacggcagcgtgcagctcgccgaccactaccagcagaacacccccatcggcgacggccccgtgctgct
gcccgacaaccactacctgagcacccagtccgccctgagcaaagaccccaacgagaagcgcgatcacatggtcctgctggagttcgtgaccgccgccgggatcactctcggcatggacgagctgtaccctggaggcttgctgaaggctgtatgctgttagacaatgattcacacggtgttttggccactgactgacaccgtgtgtcattgtctaacaggacacaaggcctgttactagcactcacatggaacaaatggccatgcatctagagggccctattctatagtgtcacctaaatgctagagctcgctgatcagcctcgactgtgccttctagttgccagccatctgttgtttgcccctcccccgtgccttccttgaccctggaaggtgccactcccactgtcctttcctaataaaatgaggaaattgcatcgcattgtctgagtaggtgtcattctattctggggggtggggtggggcaggacagcaagggggaggattgggaagacaatagcaggcatgctggggagctagagtcgaccggaccggtggaagtcctcttcctcggtgtccttgacttcaaagggtctctcccatttgcctggagagaggggaaggtgggcatcaccaggggtgagtgaaggtttggaagagtgtagcagaataagaaaccatgagtcccctccctgagaagccctgagcccccttgacgacacacatccctcgaggctcagcttcatcatctgtaaaaggtgctgaaactgaccatccaagctgccgaaaaagattgtgtggggataattcaaaactagaggaagatgcagaatttctacatcgtggcgatgtcaggctaagagatgccatcgtggctgtgcatttttattggaatcatatgtttatttgagggtgtcttggatattacaaataaaatgttggagcatcaggcatatttggtaccttctgtctaaggctccctgccccttgttaattggcagctcagttattcatccagggcaaacattctgcttactattcctgagagctttcctcatcctctagattggcaggggaaatgcagatgcctgagcagcctcccctctgccataccaacagagcttcaccatcgaggcatgcagagtggacaggggcctcagggacccctgatcccagctttctcattggacagaaggaggagactggggctggagagggacctgggcccccactaaggccacagcagagccaggactttagctgtgctgactgcagcctggcttgcctccactgccctcctttgcctcaagagcaagggagcctcagagtggaggaagcagcccctggccttgcctcccacctcccctcccctatgctgttttcctgggacagtgggagctggcttagaatgccctggggcccccaggaccctggcattttaacccctcaggggcaggaaggcagcctgagatacagaagagtccatcacctgctgtatgccacacaccatccccacagttacgtactagttcgaagccacgcgtccgaagggcgaattgtagataagtagcatggcgggttaatcattaactacaaggaacccctagtgatggagttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgggcgaccaaaggtcgcccgacgcccgggctttgcccgggcggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaa
(配列番号13)
miRNA足場のDNA配列
ctggaggcttgctggaggctgtatgctgttagacaatgattcacacggtgttttggccactgactgacaccgtgtgtcattgtctaacaggacacaaggcctgttactagcactcacatggaacaaatggcc(配列番号14)
170XAL1ガイド(アンチセンス)
UCGACAAUGAUUCACACGGU(配列番号15)
170XAL1非ガイド
ACCGUGUGUCAUUGUCGAA(配列番号16)
170XAL2ガイド(アンチセンス)
UAGACGAUGAUUCACACGGU(配列番号17)
170XAL1非ガイド
ACCGUGUGUCAUCGUCUAA(配列番号18)
170XA
TAGACAATGATTCACACGGTGTTTTGGCCACTGACTGACACCGTGTGTCATTGTCTAA(配列番号19)
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
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